(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】折り畳み式弦楽器
(51)【国際特許分類】
G10D 1/08 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
G10D1/08 100
(21)【出願番号】P 2020522730
(86)(22)【出願日】2018-10-19
(86)【国際出願番号】 US2018056802
(87)【国際公開番号】W WO2019079782
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-10-19
(32)【優先日】2017-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520133868
【氏名又は名称】チアリ ギターズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】スパングラー,ジョナサン,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】リー,ジェームス,コールマン
(72)【発明者】
【氏名】ポスター,マシュー
(72)【発明者】
【氏名】サザー,エリオット
(72)【発明者】
【氏名】ミッテルステット,クリストファー
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-072652(JP,A)
【文献】特開2010-122580(JP,A)
【文献】実開昭54-084921(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0053491(US,A1)
【文献】国際公開第2017/180177(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 1/00-3/22
G10H 1/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が近位端および遠位端ならびに略平坦な上面であって、前記上面の少なくとも
一部に沿って配置された複数の離間フレットを有する上面を有する下方ネック部分、上方ネック部分、および中間ネック部分を含むヒンジ式ネックアセンブリであって、前記下方ネック部分の前記遠位端は前記中間ネック部分の前記近位端にヒンジ結合され、前記中間ネック部分の前記遠位端は前記上方ネック部分の前記近位端にヒンジ結合され、前記下方ネック部分、前記中間ネック部分、および前記上方ネック部分はそれぞれ、前記下方ネック部分、前記中間ネック部分、および前記上方ネック部分が直線整列したときに互いに直線整列して延びる少なくとも1つの穴を有する、ヒンジ式ネックアセンブリと、
前記下方ネック部分、前記中間ネック部分、および前記上方ネック部分に対する直線移動に基づいて、前記下方ネック部分、前記中間ネック部分、および前記上方ネック部分にわたって延びる1組の弦を選択的に緊張させ、弛緩させるように構成された並進ブリッジアセンブリと、
前記下方ネック部分、前記中間ネック部分、および前記上方ネック部分が直線整列したときに、前記下方ネック部分、前記中間ネック部分、および前記上方ネック部分の各々の少なくとも1つの穴へと少なくとも1つの細長い要素を前進させるために前記下方ネック部分、前記中間ネック部分、および前記上
方ネック部分に対して選択的に直線移動されるように寸法決めされた並進トラスアセンブリであって、前記並進トラスアセンブリはさらに、前記下方ネック部分、前記中間ネック部分、および前記上方ネック部分の各々の前記少なくとも1つの穴から前記少なくとも1つの細長い要素を除去するために反対方向に選択的に移動されるように寸法決めされ、前記下方ネック部分、前記中間ネック部分、および前記上方ネック部分の前記上面が互いから離されて前記ヒンジ式ネックアセンブリの長さが低減されるように前記下方ネック部分、前記中間ネック部分、および前記上方ネック部分がヒンジ式に折り畳まれ得る、並進トラスアセンブリと
を備える折り畳み式弦楽器。
【請求項2】
前記少なくとも1つの細長い要素は、前記並進ブリッジアセンブリが前記1組の弦を弛緩させるように作動された後に
、前記中間ネック部分、および前記上方ネック部分の各々の前記少なくとも1つの穴から除去される、請求項1に記載の折り畳み式弦楽器。
【請求項3】
前記並進ブリッジアセンブリおよび前記並進トラスアセンブリを操作するように構成されたレバーをさらに含む、請求項1に記載の折り畳み式弦楽器。
【請求項4】
前記ヒンジ式ネックアセンブリに結合されるように寸法決めされたボディであって、前記下方ネック部分の前記近位端を受容するように寸法決めされたネック凹部
を含むボディをさらに含む、請求項3に記載の折り畳み式弦楽器。
【請求項5】
前記ヒンジ式ネックアセンブリは、前記下方ネック部分の前記遠位端と前記中間ネック部分の前記近位端との接合部付近における第1の継ぎ目と、前記中間ネック部分の前記遠位端と前記上方ネック部分の前記近位端との接合部付近における第2の継ぎ目とを含み、前記第1の継ぎ目および前記第2の継ぎ目の各々は、前記下方ネック部分、前記中間ネック部分、および前記上方ネック部分が折り畳み形態にあるときに前記1組の弦を収容するために前記略平坦な上面内に形成された複数の溝を含む、請求項1に記載の折り畳み式弦楽器。
【請求項6】
前記ヒンジ式ネックアセンブリに結合されるように寸法決めされたボディであって、前記下方ネック部分の前記近位端を受容するように寸法決めされたネック凹部を含むボディをさらに含
む、請求項1に記載の折り畳み式弦楽器。
【請求項7】
前記ボディ内に形成された凹部内に配置された取付プレートであって、前記並進ブリッジアセンブリを前記ボディに取り付けるように寸法決めされた取付プレートをさらに含む、請求項6に記載の折り畳み式弦楽器。
【請求項8】
少なくとも1つの内蔵電気部品と、前記少なくとも1つの内蔵電気部品と少なくとも1つの外部部品との間の電気通信を確立するための少なくとも1つの電気コネクタとをさらに備える、請求項1に記載の折り畳み式弦楽器。
【請求項9】
前記少なくとも1つの内蔵部品は、電力を供給するためのバッテリまたはバッテリパックと、演奏している前記弦から生成された電気信号を拾い上げるために前記弦の近くに配置された電気ピックアップと、演奏している前記弦から生成された振動を検知するための圧電センサと、演奏している前記弦から生成された音を伝達するために前記弦の近くに配置されたマイクロホンと、外部無線送信機からの無線通信を受信するための無線受信器と、前記弦を調弦するためのチューナと、演奏している前記弦および音波発生器の少なくとも1つから生成された音を再生するためのスピーカと、演奏している前記弦によって生成された音の修正および演奏している前記弦によって生成された音以外の音の生成のうちの少なくとも一方のためのエフェクトジェネレータとを含む、請求項8に記載の折り畳み式弦楽器。
【請求項10】
前記少なくとも1つのコネクタは、ヘッドフォンを接続するためのオーディオジャック、スマートフォンおよびタブレットコンピュータのうちの少なくとも一方を結合するための入力ジャック、および外部増幅器、外部スピーカ、ならびに外部ミキシングボードのうちの少なくとも1つに接続するための出力ジャックのうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の折り畳み式弦楽器。
【請求項11】
スマートフォンを受容するように寸法決めされた凹部をさらに含み、前記スマートフォンは、前記折り畳み式弦楽器に関連す
る動作、機能、および効果のうちの少なくとも1つを促進するためのアプリケーションを備える、請求項10に記載の折り畳み式弦楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2017年10月19日に出願された米国仮出願特許第62/574,246号の優先権を主張する国際特許出願(特許協力条約を介して出願されたもの)であり、本明細書に完全に記載されているかのように、その内容全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、全般に弦楽器に関し、より詳細には、任意の場所で演奏可能であるが、移動しやすくするためにおよび/またはコンパクトに収容するために小さい外形寸法を有するように構成された弦楽器(例えば、ギター)に関する。
【背景技術】
【0003】
ギターのような弦楽器は、楽器の中でも最も高い人気を享受している。ほとんどの弦楽器は、中空または中実のいずれかのボディに堅固に結合された中実ネックを有する。この構成は、予測可能な調弦および演奏の質を支援するが、特に付随するケース(ハードまたはソフト)の追加の嵩を考慮すると、この構成では、移動(例えば、飛行機、列車、自動等)に関しては多くの弦楽器は扱いにくい。様々な弦楽器において、弦楽器を持って移動する、または弦楽器を保管するのをより容易にし、および/またはより便利にすることが試みられたが、ほとんどの弦楽器は、従来のものを単に小さくした、またはスケールダウンしたバージョンに過ぎず、移動および/または予測可能な調弦ならびに演奏の質に関する課題が依然として存在する。本発明は、従来技術の不利点を克服すること、または少なくとも改善することを目的とする。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、小さい外形寸法を有するようにネック中間を折り畳むトラベルギターの形態(単なる例として)の折り畳み式弦楽器を提供することによって、上記目標を達成する。以下は、電気トラベルギターの文脈で説明するが、本発明の範囲は、ギターの枠にとどまらず、ほんの一例として、移動および/または保管を容易にする小さい外形寸法から利益を得る様々な弦楽器のいずれか(例えば、アコースティックギター、ベースギター、ウクレレ等)を含み得ることが理解されるであろう。一態様によれば、トラベルギターは、トラベルギターに関連する動作、機能、および/または効果を促すための1つまたは複数のアプリケーション(アプリ)を有するタブレットコンピュータ(例えば、Apple社製のiPad(登録商標))および/またはスマートフォン(例えば、Apple社製のiPhone(登録商標))を収容する、または受容する、または別の方法でこれらに結合するように構成され得る。一態様によれば、ネック中間の折り畳みは、小さい外形寸法のトラベルギターを構成するために、ネック内に配置された3部品のヒンジに関して対称に行われる。
【0005】
別の態様では、トラベルギターは、ブリッジアセンブリがギターのヘッドに対して長手方向に並進されることで、ギターの弦を十分に弛緩させることができ、小さい外形寸法を有するようにネックの上方部分をネックの下方部分および/またはボディから離れるように折り畳むことができるように構成され得る。演奏するためにトラベルギターを展開したい場合、ネックの上方部分が、ネックの下方部分および/またはボディと整列するように開かれ、ブリッジアセンブリが、ヘッドに対して長手方向に並進され、演奏するためにギターを調弦することができる位置でロックされ得る。ブリッジアセンブリの並進または移動は、手動で(例えば、ハンドル部材またはブリッジアセンブリに結合された他の手動作動機構を使用して)、および/または、作動されたときにギターのネックに対してブリッジアセンブリを移動させて弦を選択的に緊張および弛緩させる、ギターと共に配置されたサーボモータ(図示せず)を使用して行われ得る。(手動または自動の)いずれの実施形態においても、ブリッジアセンブリの物理的移動は、ブリッジアセンブリをボディ内の摺動レール(単数または複数)および/またはトラベルギターの表面上の摺動可能なプレート(単数または複数)に結合することによって行われ得る。
【0006】
別の態様では、トラベルギターは、より正確かつ持続的な調弦およびフレット調整のための強度および剛性を高めるために、ネックの少なくとも一部の中に収容された1つまたは複数の並進トラスロッドまたはトラスアセンブリを有するように構成され得る。一態様では、並進トラスロッドは、ロック位置とロック解除位置との間で上方ネック部分および/または下方ネック部分に形成された1つまたは複数の凹部または通路内で長手方向に並進され得る剛性の一体構造体である。ロック位置では、各々の一体型トラスロッドは、ネックの下方部分および上方部分の両方の中に少なくとも部分的に配置され、上方ネック部分を下方ネック部分と位置合わせしてロックする。ロック解除位置では、各々の一体型トラスロッドは、下方ネック部分および/またはボディ部分の中に配置され、上方ネック部分から除去され、上方ネック部分をロック解除し、そのことにより、上方ネック部分を小さい外形寸法になるように折り畳むことができるようになる。
【0007】
本明細書で説明されるように、各々のトラスロッドは、一体型の直線状の構造であり、並進ブリッジアセンブリと共に並進され得るか、または並進ブリッジアセンブリとは別個に並進され得る。各々のトラスロッドの並進は、ブリッジアセンブリの並進と同時に、または時間的にわずかにずらして行われ得る。小さい外形寸法にするための時間差の並進は、まず、ギター弦の張力を低減するためにギターのネックに対して(例えば、一態様によれば、離れる方向に)ブリッジアセンブリを並進させ、その後、上方ネック部分が下方ネック部分に向けて折り畳まれ得るように各々のトラスロッドをロック解除位置へと並進させることを含む。トラベルギターの展開時の時間差並進は、まず、上方ネック部分および下方ネック部分が長手方向に位置合わせされた後にロック位置へと各々のトラスロッドを並進させ、その後、調弦に備えてギター弦の張力を増すためにギターのネックに対してブリッジアセンブリを並進させることを含む。
【0008】
各々のトラスロッドは、これらに限定されないが、金属、炭素繊維等を含む、トラベルギターのネックの強度および剛性を高めるのに十分な特性を有する材料から構成され得る。各々のトラスロッドは、任意の数の中実断面形状(例えば、円形、楕円形、三角形等)および/または非中実断面形状(例えば、略三日月形、略V字形、略U字形等)を有するように製造され得る。非中実断面形状を有するように構成される場合、トラスロッドの「開口」側は、(フレットボードの方向に対して)概ねネックの下側を向くように、ネック内に配置され得る。この構成は、弦が調整された後に、ギター弦の緊張下でネックが曲がる傾向に抵抗するためにストラットの最大強度および剛性を提供する。
【0009】
一態様では、下方ネック部分、上方ネック部分、並進ブリッジアセンブリ、および並進トラスアセンブリを有する折り畳み式弦楽器が提供される。下方ネック部分は、上方ネック部分に移動可能に結合される。下方ネック部分および上方ネック部分はそれぞれ、上面の少なくともポートに沿って配置された複数の離間フレットを有するフレットボードを含む。各々のネック部分はさらに、下方ネック部分および上方ネック部分が直線整列されたときに直線整列するように寸法決定された少なくとも1つの細長い凹部を含む。並進ブリッジアセンブリは、下方ネック部分および上方ネック部分に対して直線的に選択可能に移動される並進テールピースを有するように構成される。並進ブリッジアセンブリの並進テールピースは、第1のネック部分および第2のネック部分へと延びる1組の弦の第1の端部を固定するように構成される。
【0010】
並進ブリッジアセンブリの並進テールピースの下方ネック部分および上方ネック部分に対する第1の方向への直線移動は、弦の緊張状態を生成するために弦に加えられる張力を増大させる。並進ブリッジアセンブリの並進テールピースの下方ネック部分および上方ネック部分に対する第2の方向への直線移動は、弦の弛緩状態を生成するために弦に加えられる張力を減少させる。並進トラスアセンブリは、第1のネック部分および第2のネック部分が直線整列しているときに、第1のネック部分および第2のネック部分の凹部内で選択的に直線移動されるように寸法決定される。並進トラスアセンブリは、前記下方ネック部分および上方ネック部分がネックヒンジを中心として互いに対して折り畳まれ得るようにネックヒンジアセンブリをロック解除するために、弦が弛緩状態にあるときに、第1の方向に直線移動可能である。並進トラスアセンブリはさらに、ネックヒンジを位置合わせしてロックして下方ネック部分および上方ネック部分を直線整列状態で維持するために、弦が前記弛緩状態にあるときに、第2の方向に直線移動可能である。
【0011】
別の態様では、並進ブリッジアセンブリの並進テールピースの第1の方向は、下方ネック部分および上方ネック部分から直線的に離れる方向であり、並進ブリッジアセンブリの並進テールピースの第2の方向は、下方ネック部分および上方ネック部分に直線的に向かう方向である。
【0012】
別の態様では、並進トラスアセンブリの第1の方向は、下方ネック部分および上方ネック部分から直線的に離れる方向であり、並進トラスアセンブリの第2の方向は、下方ネック部分および上方ネック部分に直線的に向かう方向である。
【0013】
別の態様では、下方ネック部分および上方ネック部分は、下方ネック部分のフレットボードの表面が上方ネック部分のフレットボードの表面の概ね反対側を向くように、下方ネック部分および上方ネック部分が互いに対して折り畳まれ得る形で移動可能に結合される。
【0014】
一態様では、弦は、並進ブリッジアセンブリが、弦を弛緩させるように作動された後に、適度な張力(例えば、1~5ポンド力(約4.448~約22.24N))を有するように構成され得る。このようにして、弦は、ネックヒンジアセンブリが折り畳み形態になると自動的に「折り目に追従し」、弦をネックから離脱させる任意の垂直方向および/または横方向の並進を回避する。
【0015】
一態様では、弦が弛緩状態にある間およびネックから離脱するときに垂直方向および/または横方向に移動してネックから離脱するのをさらに回避するために、1つまたは複数の補助弦バリアが使用され得る。補助弦バリアは、好ましくは、フレットボードに対して十分なクリアランス(例えば、フレットの上1/4インチ(0.06m))を有し、そのことにより、弦は折り畳みおよび展開プロセスの間に減衰される、または別の形で締め付けられるのではなく、ネックから離脱するのを防止するために単に垂直方向および/または横方向に拘束される。一態様では、補助弦バリアは、配置および除去を容易にするためにネックヒンジに隣接してネックに磁気的に結合され得る。例えば、補助弦バリア内には、ネックヒンジに隣接してネック内に配置された磁石または磁気吸引材料(例えば、鋼)に結合し得る磁石(またはその逆)が配置され得る。
【0016】
別の態様では、折り畳み式弦楽器は、少なくとも1つの内蔵電気部品と、少なくとも1つの内蔵電気部品と少なくとも1つの外部部品との間の電気通信を確立するための少なくとも1つの電気コネクタとを含む。
【0017】
別の態様では、折り畳み式弦楽器は、下方ネック部分に結合されたボディを含み、ボディは、並進トラスアセンブリおよび並進ブリッジアセンブリに結合されたハンドル部材を含む。一実施形態では、ハンドルは、並進ブリッジアセンブリの浮動テールピースおよび並進トラスアセンブリを第1の方向および第2の方向に直線移動させるために、使用者が並進ブリッジアセンブリおよび並進トラスアセンブリを作動させやすくなるような力学的なてこの支点(単数または複数)となる。一態様では、作動は、並進トラス要素がネックヒンジから除去されて演奏位置から折り畳み位置へと移行する前に弦が弛緩されるように、逆に、並進ブリッジアセンブリの並進テールピースが演奏のために完全な調弦状態に戻される前に並進トラス要素がネックヒンジに係合されるように、時間的にずらされる。
【0018】
別の態様では、折り畳み式弦楽器は、下方ネック部分に結合されたボディを含み、ボディは、並進ブリッジアセンブリ、並進トラスアセンブリ、折り畳みおよび展開プロセス中の弦格納に使用するための補助弦バリア、および並進ブリッジアセンブリならびに並進トラスアセンブリを選択的に作動させて弦楽器を演奏位置と折り畳み位置との間で移行させるためのハンドルのうちの少なくとも1つの態様を受容するように寸法決めされた少なくとも1つの凹部を含む。
【0019】
本発明の多くの利点は、添付図面と併せて本明細書を読むことによって当業者には明らかであろう。添付図面において、同様の要素は同様の参照番号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一態様に係る、演奏位置および折り畳み位置における折り畳み式エレキギターの斜視図である。
【
図2】本発明の一態様に係る、演奏位置および折り畳み位置における折り畳み式エレキギターの斜視図である。
【
図3】本発明の一態様に係る、演奏位置における折り畳み式エレキギターの正面図、背面図、および側面図である。
【
図4】本発明の一態様に係る、演奏位置における折り畳み式エレキギターの正面図、背面図、および側面図である。
【
図5】本発明の一態様に係る、演奏位置における折り畳み式エレキギターの正面図、背面図、および側面図である。
【
図6】本発明の一態様に係る、折り畳み位置における折り畳み式エレキギターの斜視図および背面図である。
【
図7】本発明の一態様に係る、折り畳み位置における折り畳み式エレキギターの斜視図および背面図である。
【
図8】本発明の一態様に係る、弦経路を示した折り畳み位置における折り畳み式エレキギターの側面図、前端面図、および後端面図である。
【
図9】本発明の一態様に係る、弦経路を示した折り畳み位置における折り畳み式エレキギターの側面図、前端面図、および後端面図である。
【
図10】本発明の一態様に係る、弦経路を示した折り畳み位置における折り畳み式エレキギターの側面図、前端面図、および後端面図である。
【
図11】本発明の態様に係る、キャプティブ・ナット・アセンブリおよび任意選択のカポ式弦管理装置(インセット)が装備された折り畳み式エレキギターの正面図である。
【
図12】本発明の一態様に係る、完全に組み立てられた形態および分解された形態のキャプティブ・ナット・アセンブリの斜視図である。
【
図13】本発明の一態様に係る、完全に組み立てられた形態および分解された形態のキャプティブ・ナット・アセンブリの斜視図である。
【
図14】本発明の一態様に係る、一体構造のキャプティブ・ナット・アセンブリの斜視図である。
【
図15】本発明の一態様に係る、一体構造のキャプティブ・ナット・アセンブリの斜視図である。
【
図16】本発明の態様に係る、弦ローラアセンブリおよび任意選択の弦管理装置(ローラアセンブリの上の弦ガイド)の斜視図である。
【
図17】本発明の態様に係る、弦ローラアセンブリおよび任意選択の弦管理装置(ローラアセンブリの上の弦ガイド)の斜視図である。
【
図18】本発明の態様に係る、弦ローラアセンブリおよび任意選択の弦管理装置(ローラアセンブリの上の弦ガイド)の斜視図である。
【
図19】本発明の態様に係る、高さ調節可能ブリッジアセンブリおよび任意選択の弦管理装置(ブリッジアセンブリの上の弦カバー)の斜視図である。
【
図20】本発明の態様に係る、高さ調節可能ブリッジアセンブリおよび任意選択の弦管理装置(ブリッジアセンブリの上の弦カバー)の斜視図である。
【
図21】本発明の態様に係る、高さ調節可能ブリッジアセンブリおよび任意選択の弦管理装置(ブリッジアセンブリの上の弦カバー)の斜視図である。
【
図22】本発明の態様に係る、ギターボディ(ブリッジアセンブリを並進させるための背面凹部、ハンドル作動のための側面凹部、背面凹部から弦を貫通させるための上部凹部、および並進トラスロッドアセンブリのカプラガイドを受容するための背面のチャネルを含む)の正面斜視図および背面図である。
【
図23】本発明の態様に係る、ギターボディ(ブリッジアセンブリを並進させるための背面凹部、ハンドル作動のための側面凹部、背面凹部から弦を貫通させるための上部凹部、および並進トラスロッドアセンブリのカプラガイドを受容するための背面のチャネルを含む)の正面斜視図および背面図である。
【
図24】本発明の態様に係る、ギターボディおよび取付プレートの背面斜視図である。
【
図25】本発明の態様に係る、背面凹部用のカバーの斜視図である。
【
図26】ハンドル、並進ブリッジアセンブリ、および並進トラスアセンブリの態様を含む、本発明の一態様に係るロック形態または緊張形態の折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の斜視図、底面図、および側面図である。
【
図27】ハンドル、並進ブリッジアセンブリ、および並進トラスアセンブリの態様を含む、本発明の一態様に係るロック形態または緊張形態の折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の斜視図、底面図、および側面図である。
【
図28】ハンドル、並進ブリッジアセンブリ、および並進トラスアセンブリの態様を含む、本発明の一態様に係るロック形態または緊張形態の折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の斜視図、底面図、および側面図である。
【
図29】ハンドル、並進ブリッジアセンブリ、および並進トラスアセンブリの態様を含む、本発明の一態様に係るロック形態または緊張形態の折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の斜視図、底面図、および側面図である。
【
図30】ハンドル、並進ブリッジアセンブリ、および並進トラスアセンブリの態様を含む、本発明の一態様に係るロック解除形態または弛緩形態の折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の斜視図、上面図、および底面図である。
【
図31】ハンドル、並進ブリッジアセンブリ、および並進トラスアセンブリの態様を含む、本発明の一態様に係るロック解除形態または弛緩形態の折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の斜視図、上面図、および底面図である。
【
図32】ハンドル、並進ブリッジアセンブリ、および並進トラスアセンブリの態様を含む、本発明の一態様に係るロック解除形態または弛緩形態の折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の斜視図、上面図、および底面図である。
【
図33】ハンドル、並進ブリッジアセンブリ、および並進トラスアセンブリの態様を含む、本発明の一態様に係るロック形態とロック解除形態との間の移行状態における折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の斜視図、上面図、および底面図である。
【
図34】ハンドル、並進ブリッジアセンブリ、および並進トラスアセンブリの態様を含む、本発明の一態様に係るロック形態とロック解除形態との間の移行状態における折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の斜視図、上面図、および底面図である。
【
図35】ハンドル、並進ブリッジアセンブリ、および並進トラスアセンブリの態様を含む、本発明の一態様に係るロック形態とロック解除形態との間の移行状態における折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の斜視図、上面図、および底面図である。
【
図36】本発明の一態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の一部を形成する並進テールピースの斜視図および上面図である。
【
図37】本発明の一態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の一部を形成する並進テールピースの斜視図および上面図である。
【
図38】本発明の一態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の一部を形成するデータムブロックの斜視図および上面図である。
【
図39】本発明の一態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の一部を形成するデータムブロックの斜視図および上面図である。
【
図40】本発明の一態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の一部を形成するブリッジ圧縮部材の斜視図である。
【
図41】本発明の一態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の一部を形成するブリッジ圧縮部材の斜視図である。
【
図42】本発明の一態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の一部を形成する並進トラスロッドアセンブリの斜視図および上面図である。
【
図43】本発明の一態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の一部を形成する並進トラスロッドアセンブリの斜視図および上面図である。
【
図44】本発明の一態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の一部を形成する並進トラスロッドアセンブリの斜視図および上面図である。
【
図45】本発明の一態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の一部を形成する並進トラスロッドアセンブリのカプラガイドの斜視図である。
【
図46】本発明の一態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の一部を形成する並進トラスロッドアセンブリのカプラガイドの斜視図である。
【
図47】本発明の態様に係る、
図45および
図46のカプラガイドと共に使用される並進トラスアセンブリの部分側面断面図である。
【
図48】本発明の態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の折り畳み機構の一部を形成するヒンジアセンブリの分解斜視図である。
【
図49】本発明の態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の折り畳み機構のヒンジアセンブリの一部を形成するヒンジベースの様々な図である。
【
図50】本発明の態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の折り畳み機構のヒンジアセンブリの一部を形成するヒンジベースの様々な図である。
【
図51】本発明の態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の折り畳み機構のヒンジアセンブリの一部を形成するヒンジベースの様々な図である。
【
図52】本発明の態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の折り畳み機構のヒンジアセンブリの一部を形成するヒンジベースの様々な図である。
【
図53】本発明の態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の折り畳み機構のヒンジアセンブリの一部を形成する中間ヒンジ部材の様々な図である。
【
図54】本発明の態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の折り畳み機構のヒンジアセンブリの一部を形成する中間ヒンジ部材の様々な図である。
【
図55】本発明の態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の折り畳み機構のヒンジアセンブリの一部を形成する中間ヒンジ部材の様々な図である。
【
図56】本発明の態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の折り畳み機構のヒンジアセンブリの一部を形成する中間ヒンジ部材の様々な図である。
【
図57】本発明の態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の折り畳み機構のヒンジアセンブリの一部を形成する上部ヒンジ部材の様々な図である。
【
図58】本発明の態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の折り畳み機構のヒンジアセンブリの一部を形成する上部ヒンジ部材の様々な図である。
【
図59】本発明の態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の折り畳み機構のヒンジアセンブリの一部を形成する上部ヒンジ部材の様々な図である。
【
図60】本発明の態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の折り畳み機構のヒンジアセンブリの一部を形成する上部ヒンジ部材の様々な図である。
【
図61】本発明の態様に係る、直線的形態のヒンジアセンブリおよびネックサブアセンブリの分解斜視図である。
【
図62】本発明の態様に係る、直線的形態のヒンジアセンブリ、静的(従来の)トラスロッド、および並進トラスアセンブリの上面斜視図および底面斜視図である。
【
図63】本発明の態様に係る、直線的形態のヒンジアセンブリ、静的(従来の)トラスロッド、および並進トラスアセンブリの上面斜視図および底面斜視図である。
【
図64】本発明の態様に係る、折り畳み形態のヒンジアセンブリ、静的(従来の)トラスロッド、および並進トラスアセンブリの上面斜視図および底面斜視図である。
【
図65】本発明の態様に係る、折り畳み形態のヒンジアセンブリ、静的(従来の)トラスロッド、および並進トラスアセンブリの上面斜視図および底面斜視図である。
【
図66】本発明の態様に係る、製造段階におけるネックの斜視図である。
【
図67】本発明の態様に係る、製造段階におけるネックの斜視図である。
【
図68】本発明の態様に係る、製造段階におけるネックの斜視図である。
【
図69】本発明の態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の一部を形成する湾曲リンク機構の側面図である。
【
図70】本発明の態様に係る、折り畳み式フレット付き楽器の作動機構の一部を形成する偏心(非対称)ワッシャを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の例示的な実施形態について説明する。明確にするために、実際の実施態様の全ての特徴が本明細書に記載されているわけではない。当然のことながら、任意のこのような実際の実施形態の開発において、実施態様ごとに異なるシステム関連およびビジネス関連の制約の順守のような開発者の特定の目標を達成するために、多くの実施態様に固有の決定が行われなければならないことが理解されるであろう。さらに、そのような開発努力は複雑で時間がかかるものかもしれないが、本開示の利益を有する当業者にとっては日常的な業務であることが理解されるであろう。本明細書で開示されるトラベルギターは、特許保護を保証する様々な進歩性のある特徴および構成要素を、個別に、および組み合わせた形で有する。
【0022】
図1~
図10は、一態様に係る、直線的な演奏形態(
図1)および折り畳まれた移動形態(
図2)における折り畳み式エレキギター10を示す。エレキギター10は、ネック12とボディ14とを含み、ボディ14は、ネック12に結合されるかまたはネック12の一部を形成するヘッド18とボディ14に結合されるかまたはボディ14の一部を形成する並進ブリッジアセンブリ20との間に延びる複数のギター弦16を有する。ネック12は、複数のフレット22を有するそれぞれのフレットボードセクションを有する下方ネック部分30、上方ネック部分32、および中間ネック部分34を含み、これらのフレット22は、当技術分野で周知のように、使用時に、ギター10の演奏者が様々なフレット22の間の様々な弦16を押すことによって様々な音のいずれかを生み出すのを可能にする。ネック12はさらに、ヒンジベース38、中間ヒンジ40、および上部ヒンジ42を含むヒンジアセンブリ36を含む(
図4参照)。ヘッド18は、当技術分野で周知のように、弦16の調弦を可能にする多数の調弦器24と、後述するように、弦捕捉機能を有するナット44とを含む。
【0023】
並進ブリッジアセンブリ20は、使用者が弦16を選択的に緊張させ、弛緩させるのを可能にし、並進トラスアセンブリ46は、使用者がヒンジアセンブリ36を選択的にロックし、ロック解除するのを可能にする。より具体的には、並進トラスアセンブリ46は、
図3~
図5に示されている演奏直線位置にある間にヒンジアセンブリ36を選択的にロックして構造的完全性を高めるために、さらにヒンジアセンブリ36を選択的にロック解除して、ネック領域30、32、34がギター10を保管および移動に便利なように
図6~
図10に示されている折り畳み移動形態へと移行させることができるように、ネック部分30、32、34と協働する。
【0024】
一態様では、本発明の原理に従って並進ブリッジアセンブリ20および並進トラスアセンブリ46を作動させるために、ギター演奏者がボディ14の縁部に沿って配置されたハンドル48を簡単かつ容易に回転させることができるように、並進ブリッジアセンブリ20および並進トラスアセンブリ46は互いに結合され、さらに回転可能なハンドル48と結合される。ハンドル48は、
図1には、ボディ14の下方周縁に沿って形成された凹部50内に入れ子にされた形で示されている(例えば、
図3~
図5の演奏形態の間はボディ14の下方ローブにあり、
図6~
図10の折り畳み形態の間は切り欠き部52に隣接したボディ14の上方ローブ内にある)。切り欠き部52は、(例えば、リズムに対して主旋律を演奏するための)より高い音の範囲のいずれかを演奏するために、機能的に演奏者が上方フレット22にアクセスできるように、ネック12の下方部分30に隣接したボディ14の一部を除去することによって形成された空間である。
【0025】
ボディ14は、これらに限定されないが、弦16の振動を増幅源(例えば、増幅器、ヘッドフォン、スマートフォンスピーカ等)に伝送される電気信号に変換するための1つまたは複数のピックアップ54と、ネック12およびボディ14に対する弦16の高さを選択的に上下させるための高さ調整可能なブリッジ56と、ピックアップ54の一方または両方を作動させるためのセレクタスイッチ58と、電気信号の態様(例えば、音質および音量)を制御するための1つまたは複数のコントローラ60とを含む、任意の数の適切な特徴を含み得る。ボディ14はさらに、弦16をボディ14の背面に沿って形成された凹部64内に存在する並進ブリッジアセンブリ20に結合するために、弦16が(調整可能なブリッジ56の上を通過した後に)ギター10の上部から通過することができるように寸法決めされた開口部62を含む。図示されていないが、ギター10のボディ14または他の態様は、様々な内蔵電子機器(例えばチューナ、シンセサイザ、ピックアップ、バッテリ、AC/DC電源、増幅器用の入力ジャック等)のいずれかを備え得、トラベルギター10に関連した操作、機能および/または効果を促進するための1つまたは複数のアプリケーション(アプリ)を有するスマートフォンおよび/またはコンピュータタブレット(図示せず)に接続するおよび/または受信する機能をさらに含み得る。
【0026】
エレキギター10は、折り畳まれた状態の占有面積が16~19インチ(約0.406m~約0.483m)の長さ、2~4インチ(約0.051m~約0.102m)の高さ、および10~14インチ(約0.254m~約0.356m)の幅を有するように寸法決めされ得るが、これらの範囲は単なる例として記載されている。ギター10は、好ましくは、折り畳まれたときに、ブリーフケース、バックパック、持ち込み手荷物(航空機による移動用)等の中に収まるように寸法決めされる。ギター10は、折り畳み形態でギター10を安全に運ぶために、形状が適合し、パッド付きの凹部を有する保護シェルまたは容器が付属されていることが企図される。形状適合保護シェルまたは容器は、任意の数の他のバッグまたは手荷物(例えば、ブリーフケース、バックパック、持ち込み手荷物(航空機による移動の場合)等)の中に収まるように寸法決めされ得る。このように、ギター10は、航空機での移動時にバッグの検査を受ける必要が生じ得る別の手荷物を一緒に持って行く必要があるのとは対照的に、移動時に使用者が通常または既に使用しているどんな手荷物(例えば、ブリーフケース、バックパック、持ち込み手荷物)でも中に入れて運ぶことができる。このことは、ギターを荷物処理に送るときに発生するギターの損傷のリスク(例えば、貨物室の高所での0度を下回る温度、手荷物処理システムまたは要員による処理ミスまたは見逃しに起因する損傷等)、ならびに手荷物を検査する追加の費用を効果的に低減する。ギター10は、6~8ポンド(約2.721kg~約3.628kg)の重量であるが、それより軽い重量は、機構および材料選択を最適化する(すなわち、軽量の木材、炭素繊維のような非木材代替物等を使用する)ことによって実現され得る。
【0027】
エレキギター10はさらに、
図8~
図10に示されているような折り畳みプロセスおよび展開プロセスの間の的確かつ効果的な弦管理を行う。これは、いくつかの方法で実現されるが、その全ては、折り畳みプロセスの間または折り畳みプロセス後に弦16がネック12から離脱するまたは分離する原因となり得る弦16の垂直方向および/または横方向の移動の可能性を防止するか、または別の方法で最小限に抑えることが意図されている。これらの方法は、必ずしもこれらに限定されないが、(後述するように)折り畳みプロセスの間および折り畳みプロセス後に弦16に対して適度な張力を維持すること、および(後述するように)弦経路に沿った複数の位置で弦16を能動的に拘束することを含む。
【0028】
並進ブリッジアセンブリ20は、ギター10が折り畳み形態へと移行して維持された状態で、弦16上に適度な力(例えば、1~5ポンド(約4.448N~約22.242N)のみを加える1つまたは複数のばね66を含む。折り畳みプロセスの間、弦16上の適度な張力により、弦16は、「折り目に追従」し、
図8(弦16は破線で示されている)に示されている弦経路を取る。次に、このことについて、説明する。 弦16は、並進ブリッジアセンブリ20の一部を形成する浮動テールピース(図示せず)内に固定される。弦16は、このアンカー点から、ボディ14内に配置されたローラアセンブリ68(
図4)へと後方に向かって通過し、次いでローラアセンブリ68上の個々のローラの外側に沿って曲がり、ボディ14の開口部62を通って上方に角度をなして伸び、そこで、調弦器24へ向かう途中の調整可能なブリッジアセンブリ56の一部を形成する個々のローラの上を通過する。折り畳み形態では、弦16は、調整可能なローラアセンブリ68から、下方ネック部分30のフレットボードの上縁に沿って形成された弦溝76を通り、中間ネック部分34のフレットボードの下縁に沿って形成された弦溝45を通り、中間ネック部分34のフレットボードの上縁に沿って形成された弦溝47を通り、上方ネック部分32のフレットボードの下縁に沿って形成された弦溝49を通り、ヘッド18上の調弦器24に入る(好ましくは、ロックされる)前に、ナット44内に形成された開口部を通る必要がある。
図9に最も見やすく示されているように、弦16は、折り畳みプロセスの間または折り畳みプロセス後に垂直方向および/または横方向に移動してネック12から離脱する可能性がないように、様々な溝70、72、74、76内に効果的に位置合わせされる。
【0029】
弦管理は、当技術分野で周知のように、ロック式調弦器24を使用することによっても行われる。ロック式調弦器24は、弦16を調弦器24に物理的にロックするように調整され得る1つまたは複数の止めねじまたはナットを含み、標準的な非ロック式調弦器の周囲に巻き付けられた弦16から張力が除去される場合のように、弦が解かれるのを防止する。
【0030】
トラベルギター10はさらに、
図1~
図11に示されているように、弦16が調弦器24との係合に向かう際に弦16を捕捉または別の方法で拘束するのに役立つ、キャプティブ・ナット・システム44を備え得る。
図12~
図13により詳細に示されているように、キャプティブナット44は、ベース部材80とカバー部材82とを含む。ベース部材80は、典型的なナット材料(例えば、骨)から作られ、弦16を通過させるための典型的な弦スロット84を含む。理解しやすくするために、
図12~
図13の各々のスロット84は、通過する弦に対応する文字(EADGBC)で表されている。カバー部材82は、ベース部材80内に埋め込まれたねじ山付きブッシング88に対して機械ねじ86を適合させる、または取り外すことによって、ベース部材80から選択的に取り外し可能である。
【0031】
ベース部材80とカバー部材82との係合は、これらに限定されないが、ねじ山付きブッシング88を磁石で置き換えること、およびカバー部材82内に強磁性金属を埋め込む、またはカバー部材82を構成するのに強磁性金属(例えば、鉄、コバルト、ニッケル、鋼等)を使用することを含む、任意の他の好適な方法で実現され得ることが理解されよう。この構成では、使用者は、
図12および
図13に示されている実施形態でスクリュードライバを使用するのとは対照的に、弦16にアクセスするには(例えば、弦16を変えるには)カバー部材82を手動で引きはがすだけでよい。
図14および
図15は、折り畳み状態の間に弦16および弦管理拘束具を通過させるために形成された弦穴92を有する単一ナット90である、さらに別の変形形態を示す。上述したように、
図14および
図15の各々の穴92は、通過する弦に対応する文字(EADGBC)で表されている。
【0032】
弦管理はさらに、弦16の上でおよび/または弦16に対して横方向に弦捕捉機構を使用して実現され得るので、折り畳みプロセスの間および折り畳みプロセス後に弦16がネック12から離脱する恐れのある点に対して横方向および/または垂直方向に移動することができなくなる。
図11は、このような方法の1つ、すなわち、ルーズフィット型のカポ式弦管理装置94を使用した方法を示す。弦管理装置94は、クロスバー96と一対のサイドバー98とを含み、クロスバー96は、フレットボードの上に十分な距離離間して配置されるように構成されるので、弦16は標準的なカポによって挟まれるのではなく、弦16が折り畳みプロセスの間または折り畳みプロセス後にネック12から分離する、または離脱するのを防止するために横方向および垂直方向に(長手方向ではない)拘束される。弦管理装置94は、ネック12の長さに沿った任意の場所に位置決めされ得るが、ヒンジアセンブリ36に隣接しておよび/またはヒンジアセンブリ36の上(すなわち、下方ネック部分30の上端の上、上方ネック部分32の下端の上、および/または中間ネック部分34の上)に配置されたときに弦の移動および分離を防止する上で特に有用および有効であることが分かる。
【0033】
配置後に弦管理装置94を適切な位置で維持するのを助けるために、クロスバー96および/またはサイドバー98のうちの1つまたは複数には、概略的に102で示されているような1つまたは複数の磁石または磁気吸引材料(例えば、鋼)が取り付けられ得る。同様に、ネック12には、概略的に102で示されているような1つまたは複数の磁石または磁気吸引材料(例えば、鋼)が取り付けられ得る。このようにして1つまたは複数の磁石または磁気吸引材料が取り付けられることにより、弦管理装置94は、ネック12からの弦の離脱を防止するために、折り畳みプロセス前、折り畳みプロセスの間、および折り畳みプロセス後に、弦16の上に容易に配置され得る。図示されていないが、各々の弦管理装置94は、ギター10のボディ14内の磁気対応凹部内に保持され得ることも企図される。このようにして、弦管理装置94は、使用するまで(バッグ等の中に収納するのではなく)ギター10の一部として容易に収納され得、紛失または置き忘れの可能性が低い。
【0034】
これらに限定されないが、折り畳み状態もしくは展開状態の間、または折り畳みプロセスの後に、弦16がローラアセンブリ68(
図4)の上を通過する際に弦16の移動を拘束する、または別の方法で防止する、もしくは最小限に抑えることを含む、任意の数の追加の弦管理特徴が提供され得る。
図16~
図18を参照すると、弦管理は、ローラアセンブリ68に隣接して弦ガード104を位置決めすることによって行われ得る。ローラアセンブリ68は、第1の取付部材110と第2の取付部材110との間に架け渡された軸108を中心として回転可能に配置された複数のローラ106を含む。ローラ106は、そのローラ106に使用されるそれぞれのギター弦に対応する文字で表されている。軸108は、取付部材110へと延在し、止めねじ116を介してねじ山付き開口部114内に固定される、略平坦な端部領域112を含む。弦ガード104が使用される場合、弦16は、折り畳み状態もしくは展開状態の間、および/または折り畳みプロセス後に、弛緩状態でローラ106の上を通過するときに垂直方向に拘束されることになる。弦ガイド104は、純粋に任意選択であることが理解されるであろう。
【0035】
これらに限定されないが、折り畳み状態もしくは展開状態の間、または折り畳みプロセスの後に、弦16が高さ調整可能なブリッジ56の上を通過する際に弦16の移動を拘束する、または別の方法で防止する、もしくは最小限に抑えることを含む、さらに別の弦管理特徴が提供され得る。
図19~
図21は、ブリッジアセンブリ56と共に使用するためのブリッジ弦ガイド120を示す。ブリッジアセンブリ56は、任意の数の適切な調整可能なブリッジであり得る。ブリッジ弦ガイド120は、弦カバー122と、一対の高さ調整可能スタンドアセンブリ124と、スタンドアセンブリ123間に延在し、弦カバー122を貫通して長手方向に配置された内部開口部を通って延在する軸126とを含む。弦カバー122は、全ての弦16を横切る横断方向に位置決めされるのに十分な長さ、ブリッジアセンブリ56の幅の少なくとも半分を覆うのに十分な幅(
図19)、および弦16に対して回転可能に調整可能な湾曲横断面を有する。高さ調節可能なスタンドアセンブリ124は、回転可能な回転ダイヤル130を有するねじ山付きポスト128を含む。ねじ山付きポスト128は、軸78に回転可能に結合される。弦カバー120が使用される場合、弦16は、折り畳み状態もしくは展開状態の間、および/または折り畳みプロセス後に、弛緩状態で高さ調整可能なブリッジ56のローラの上を通過するときに垂直方向に拘束されることになる。弦カバー120は、純粋に任意選択であり、必要でない場合があることが理解されるであろう。
【0036】
弦カバー120が使用されるか否かに関係なく、ブリッジアセンブリ56は、本発明の一態様に係る傾斜後縁132を含む。より具体的には、傾斜後縁132の角度により、ローラアセンブリ68を、背面キャビティ64の背壁の近くまたは背壁に隣接して位置決めするのではなく、浮動ブリッジアセンブリ20(
図4)に概ね隣接して位置決めすることができる。このことは、次に、ギター10が折り畳み状態にあるときにヘッド18を受容するためにキャビティ64内の空間を利用可能にする。このことはまた、弦16(
図19)のための鋭いブレークアングルを有するというさらなる利点を有し、これは、演奏中にサステインを伸ばすのに役立つ。
【0037】
図22~
図23に示されているように、ボディ14は、典型的なギターハードウェア(例えば、ピックアップ54、コントロールノブ60、ピックアップ・セレクタ・スイッチ58、高さ調整可能なサドル56等)を取り付けるのに必要な様々な開口部を含み、さらに本発明の作動機構に必要な様々な開口部および凹部を含むように製造される。これらは、並進ブリッジアセンブリ20およびトラスアセンブリ46用にボディ14の背面に形成された凹部64と、レバー48用にボディ14の下方周縁に沿って形成された側面凹部50と、凹部64内に位置する並進ブリッジアセンブリ20から弦を通過させるように高さ調節可能サドル56に隣接して位置する弦開口部62とを含む。
【0038】
図23および
図24に最もわかりやすく示されているように、並進ブリッジアセンブリ20の取り付けを助けるために、背面凹部64内に形成された凹部136内にプレート134が設けられている。好ましくは、凹部136の外周は、本発明に従う組立精度および品質管理のために確実に公差が厳しくなるように、プレート134の外周と厳密に一致する。プレート134の高さは、好ましくは、プレート134の上面と背面凹部64内の周囲面とが確実に面一になるように、凹部136の深さと一致しなくてはならない。プレート134は、好ましくは、凹部136内の適切な位置に接着されるが、ねじの使用を含む任意の好適な方法で付着され、または貼り付けられ得る。プレート134は、並進ブリッジアセンブリ20および弦ローラアセンブリ68に形成された開口部または穴を通過する機械ねじを受容するための複数のねじ穴を含む。より具体的には、穴138は、並進ブリッジアセンブリ20を取り付けるためのものであり、穴140は、(取付部材110を通して配置された機械ねじを介して)弦ローラアセンブリ68を取り付けるためのものである。このようにして、並進ブリッジアセンブリ20は、ギター10の組立中に、迅速に、容易に、かつ堅牢に凹部64内に取り付けられ得る。この剛性固定は、ボディ14とプレート134との強い機械的嵌合に基づいて、使用中のギター10のサステインおよび音質を向上させるというさらなる利点を有する。
【0039】
図24~
図25に示されているように、背面凹部64内に配置された機構の大部分を取り囲むために、背面カバー142が設けられる。そのためには、背面カバー142は、ボディ14の背面に形成された凹部144と同じ近似輪郭で成形された外周を有する。背面カバー142は、好ましくは、カバー142の外周に沿った対応する位置に取り付けられた磁石または強磁性要素150(例えば、鉄、コバルト、ニッケル、および鋼のラグまたはBB)と協働する、カバー凹部144内に形成された穴148内に取り付けられた磁石146を使用して、ボディ14に結合される。このようにして、例えば、弦を変えるか、または作動機構を作動させるために、背面カバー142を迅速かつ容易に取り外すことができる。背面カバー142は、これらに限定されないが、本発明の折り畳みシステムを形成する内部機構を使用者が視覚的に検査する、または眺めることができるように、アクリルまたは他の透視可能な材料を含む、任意の適切な材料で作られ得る。後壁の構造的完全性を高めるのを目的として、凹部64の後壁へ取り付けるための湾曲プレート152がさらに設けられ、このことは、衝撃に対して後壁を補強するのに有用であり得る。
【0040】
ハンドル48、並進ブリッジアセンブリ20、および並進トラスアセンブリ46に関連付けられた作動機構について、
図26~
図35を参照しながら説明する。
図26~
図29は、ロック形態または緊張形態の機構200を示しており、
図30~
図32は、ロック解除形態または弛緩形態の機構200を示しており、
図33~
図35は、ロック形態とロック解除形態との間の移行状態の機構200を示している。後述するように、ハンドル48は、ボディ14の凹部50内に(概ね長手方向の中間点に)回転可能に配置されるので、ボディ14と同一平面内で回転する。ギター10が演奏位置にあるとき(
図3~
図5参照)、ハンドル48は、凹部50の下方部分の中に(一般に、ギター10の端部に向かって後方を向いて)配置され、機構200は、
図26~
図29に示されているように構成される。ギター10が折り畳み位置にあるとき(
図6~
図10参照)、ハンドル48は、凹部50の上方部分の中に(一般に、ヘッド18の方を向いて)配置され、機構200は、
図30~
図32に示されているように構成される。
【0041】
折り畳み状態(
図1)から演奏状態(
図2)へと移行するためには、ネック12は、ボディ16に対して真っ直ぐにされ、その後、ハンドル48は、
図33~
図35に示されているように(ヘッド18から離れるように)下方に回転され、機構200は、
図6~
図10に示されている形態から
図3~
図5に示されている形態へと移動し、並進テールピース202をデータムブロック204と直接またはほぼ当接させる。
図3~
図5の完全展開形態にあるとき、ギター10は、調弦され、演奏され得る。演奏状態(
図1)から折り畳み状態(
図2)へと移行するためには、ハンドル48は、上方に(ヘッド18に向けて)回転され、そのことにより、並進テールピース202は解除され、ブリッジ・データム・ブロック204から離れて、
図30~
図32に示されている形態を取る。並進テールピース202は、折り畳み状態および移行状態の間にギター弦に対して作用する一定の張力(1~5ポンド(約4.448N~約22.242N))を付与する一対のばね198を介してデータムブロック204に結合される。このようにして、弦は、常に適度な張力を有し、この張力により、弦が移行の間および折り畳み状態の間に「折り目に追従」し、ネック12内の溝70、72、74、76内に収まり、さらに移行の間および折り畳み状態の間にローラアセンブリ68のローラ106上にとどまることができる。
【0042】
並進ブリッジアセンブリ20は、並進テールピース202(
図36および
図37)、ブリッジ・データム・ブロック204(
図38および
図39)、およびブリッジ圧縮部材206(
図40および
図41)を含む。並進テールピース202(
図36および
図37)は、弦16のためのアンカーであり、より具体的には、弦16を受容するようにギター10の長手方向軸に対して略平行に延びる複数の弦開口部203を含む。弦16が
図8~
図10を参照して上述した弦経路を生成するように張られるのは、このアンカー点からである。並進テールピース202は、シャフト212a、212bの内側に沿って並進または移動するように構成されたローラ210a、210bを含むクロスバー208に結合するための開口部205を含む。
【0043】
ブリッジ・データム・ブロック204(
図38および
図39)は、ボディ14内で固定され、移動不可能であり、弦16が演奏可能状態へと調弦され得るように並進テールピース202が直接またはほぼ当接する表面となる。ブリッジ圧縮部材206は、シャフト212a、212bの外側に沿って並進または移動するように構成されたローラ216a、216bを有するクロスバー214に結合される。データムブロック204は、データムブロック204の本体209と一体形成された剛性のスタンドオフ延長部207を含む。スタンドオフ延長部207は、中空であり、機械ねじをキャリッジ220へ、または代替形態では、背面凹部64内に取り付けられたプレート134へ通すように寸法決めされた開口部を含む。実際に、並進ブリッジアセンブリ46の構成要素の全てがプレート134に直接取り付けられ得、このことにより重量およびコストが低減され、製造および組立が簡略化され得ることが企図される。データムブロック204はさらに、ハンドル48に回転可能に結合するための開口部213を備えた延長部211を含む。データムブロック204はさらに、キャリッジ220に取り付けるための開口部215を含むが、さらに、本発明の範囲から逸脱することなく、データムブロック204がボディ14および/またはプレート134に直接取り付けられ得ることが企図される。さらに、データムブロック204は、リンク機構に回転可能に結合するための開口部217と、最後に、スタンドオフ延長部207を通って延在する開口部219とを含む。
【0044】
ブリッジ・データム・ブロック204はさらに、
図70に示されているような偏心ワッシャ231を受容するためのねじ山付き開口部227を含む。偏心ワッシャ231は、ワッシャ231の中心軸に対して軸外にまたは非対称に配置された開口部233を含む。使用時に、偏心ワッシャ231は、例えば、機械ねじ等を介して、ねじ山付き開口部227内に固定される。偏心ワッシャ231は、軸外形態に基づいて、機械ねじを中心として非対称に回転することができる。ワッシャ231の目的は、使用者またはセットアップ技術者が、
図30~
図35に示されているように、折り畳みまたは再作動の準備のための作動機構200のロック解除プロセスの間、L字形リンク機構222の物理的移動を調整できるようにすることである。換言すれば、偏心ワッシャ231は、リンク機構を過度に伸ばして再作動できなくする恐れがある過回転を停めるために、リンク機構223を物理的に当接させて、停止させるように選択的に位置決めされ得る。
【0045】
ブリッジ圧縮部材206(
図40および
図41)は、L字形アームリンク機構222の遠位端に、さらに細長いロッド150の近位端に回転可能に結合され、細長いロッド150は、後述するように、並進トラスロッドアセンブリ46に結合される。そのためには、圧縮部材206は、細長いロッド150に結合するための開口部221と、L字形アームリンク機構222に回転可能に結合するための開口部223とを含む。L字形アームリンク機構222は、
図33~
図35に示されているような開口部221を通って延在するピンまたはポストを中心として枢動する。圧縮部材206はさらに、弦16が常に、すなわち、ギター10の弦張り、演奏、および折り畳みの際に、通過する一対の弦開口部225を含む。
【0046】
並進ブリッジアセンブリ20および並進トラスアセンブリ46に関連付けられた機構200は、多数の構成要素、リンク機構、結合機構(例えば、ナット、ボルト、ワッシャ等)を含む。一対の細長いL字形リンク機構222の遠位端は、クロスバー214に回転可能に結合され、近位端は、リンク機構224に回転可能に結合され、リンク機構224は、湾曲リンク機構234(
図69)に回転可能に結合される。湾曲リンク機構234は、ハンドル48に回転可能に連結される。
図69に最も見やすく示されているように、湾曲リンク機構234は、L字形リンク機構222に回転可能に結合された短いリンク機構224に回転可能に結合するための第1の開口部228を含む。湾曲リンク機構234は、第2の開口部226を含み、ハンドル48に回転可能に結合される。ハンドル48は、湾曲リンク機構234の第3の開口部230内に受容されるように寸法決定されたピン(図示せず)を含む。このようにして、ハンドル48は、ハンドル48を凹部50から除去するのを容易にするために、大きな抵抗を受けることなく、ロック位置(凹部50内の後方に向く)からロック解除位置に向かって部分的に回転され得る。
【0047】
第3の開口部230は、遠位端に戻り止め231を有するアーム235を画定する間隙233を含む。戻り止め231およびアーム235は、ハンドル48のピンがアーム235を変形させ、ピンが開口部230の長さの端部に達するように、ピンと協働する。このことは、使用者にとっての触感、ならびに可聴のはじける音を生成し、これは、有利には、ハンドル48が
図3~
図5に示されている完全なロック位置へと伸ばされたか、または上述したような折り畳みプロセスを開始するためにロック位置から外されたことを明確に示す。さらに、
図33に最も見やすく示されているように、作動機構200は、このように構成された湾曲リンク機構234(すなわち、ハンドル48のピンと協働する戻り止め231、間隙233、アーム235を有する)を使用しており、ハンドル48が完全なロック位置および完全なロック解除位置にある場合に、この触覚かつ可聴のフィードバックを提供する。さらに、このことは、有利には、演奏状態および折り畳み状態の両方において、ハンドル48を側面凹部50内で維持する。
【0048】
ピン(図示せず)が第3の開口部230の端部に当たると、ピンは、その後、回転力を湾曲リンク機構234に伝達して、湾曲リンク機構234を回転させる。この回転により、リンク機構224は、L字形リンク機構222をギター10の端部(ヘッド18の反対側)に向かって移動させ、L字形リンク機構222は、回転クロスバー214および付随するブリッジ圧縮部材206を回転クロスバー208上に配置された並進テールピース202から離れる方向に移動させる。ブリッジ圧縮部材206の除去は、ブリッジ・データム・ブロック204に当接する、または隣接するロック位置からテールピース202を効果的にロック解除する。このことにより、テールピース202は、弦16の緊張下で、回転クロスバー208を介してデータムブロック204から離れることができる。
【0049】
弦16は、この最初の弛緩プロセスの間、約1~2インチ(約0.025m~約0.051m)の範囲内で移動し得る。1つまたは複数のばね198は、弦を減衰させて弦の弛緩の程度を制御するために浮動テールピース202に結合され、弦16が垂直方向および/または横方向に移動するのを防止するために、折り畳みプロセスの前、折り畳みプロセスの間、および折り畳みプロセス後に、弦16に適度な張力を付与するが、そうでなければ弦16はネック12から外れる、または離脱し得る。弦16は、1~2インチ(約0.025m~約0.051m)の範囲で、折り畳みプロセスの間(すなわち、上方ネック部分32を演奏位置から離れる方向に移動させているとき)に、追加の距離を移動し得る。
【0050】
図8~
図10を参照して上述したように、弦16は、(弦16を固定する)並進テールピース202がギター10のボディ14の背面に形成された凹部64内に配置されていることを考慮すると、ギター10の背面から経路付けされる必要がある。そのためには、ローラアセンブリ68(
図17および
図18)は、ボディ14の背面凹部64内の凹部144内に固定されたプレート134上に取り付けられる。ローラアセンブリ68は、プレート134内の穴140に螺合された機械ねじを介してプレート134に固定された一対の取付ブラケット110間に延在するシャフト108に沿って回転可能に配置された複数の弦ローラ106(各々の弦16につき1つ、例えば、6本の弦のギターの場合は6つ)を含む。ローラアセンブリ68は、ギターの張弦プロセスの間に弦16を案内するのを助けるために、さらに折り畳みプロセスの前、折り畳みプロセスの間、および折り畳みプロセス後に、弦16がローラアセンブリ68内の位置および個々のローラ106内のそれぞれの位置から移動しないように、弦16を維持するために、任意選択のバッキングプレート104(
図16)を備え得る。
【0051】
シャフト212a、212bは、複数のグロメット218を介してキャリッジ220に結合され得る。グロメット218は、採用される場合、シャフト212がキャリッジ220に対して6自由度で浮動することを可能にするのに十分な可撓性を有するゴムまたはポリマーから構成される。この「意図的な傾斜」は、シャフト212がキャリッジ220に対して固定されて柔軟性がなくなった場合、またはずれた場合に生じ得るように、ローラ210、216がシャフト212に沿って付着または別の方法で結合するのを防止するであろう。
【0052】
図42および
図43に示されているように、並進トラスアセンブリ46は、ブリッジ圧縮部材106に形成された中央延長部材とデュアル・トラスロッド・アセンブリ300との間に延在する細長いロッド150を含む。デュアル・トラスロッド・アセンブリ300は、カプラ152と、トラスロッド取付ブロック302と、カプラ152とトラスロッド取付ブロック302とを回転可能に相互接続するリンク304と、取付ブロック302から長手方向に離れる方向に延びる2つのトラスロッド306とを含む。カプラ152は、2つの開口部308を有する細長いロッド150の端部に取り付けられる。より具体的には、カプラ152の下側は、開口部308を貫通して細長いロッド150をカプラ152に固定するための機械ねじを螺合するように寸法決めされた2つのねじ穴(図示せず)を備える。トラスロッド306は、直線的形態または演奏形態にあるときに、ヒンジアセンブリ36を完全に貫通して延在するように寸法決めされる。そのように延長されたときに、ヒンジアセンブリ36は、ギター10を演奏することができるように弦16を調整することができるように、固定され、ロックされる。
【0053】
トラスロッド306は、取付ブロック302に剛性固定され得る、または取付ブロック302に対して浮動するように取り付けられ得る。単なる例として、
図44を参照すると、所望の浮動は、各々のトラスロッド306の近位領域310をカプラ152の関連する穴312の直径よりも小さい直径にし、さらに環状凹部314を形成することによって実現され得る。波形ワッシャ316は、近位領域310および環状凹部314内の適切な場所にスナップ留めされる外側クリップリング316の上に位置決めされ得る。そのようにすることで、トラスロッド306は、トラスロッド306がヒンジアセンブリ36の穴内により容易に前進できるようにカプラ152の穴内に適度に移動することができる。
【0054】
カプラ152はさらに、ボディ14の背面に形成されたチャネル322(
図23)内に取り付けられたカプラガイド320(
図45および
図46)内で摺動するように設計されたポスト318を含む。カプラガイド320は、
図4および
図47においては、ボディ14内に取り付けられた状態で示されている。カプラガイド320は、カプラ152の幅より大きく、ポスト318の長さより短い間隙を有する一対の平行な摺動面326を有する凹部324を含む。換言すれば、カプラ152のポスト318は、摺動面324上に乗り、並進トラスアセンブリ46が使用時に前後に移動されるときに、カプラ152は間隙内で自由に並進する。このようにして、カプラガイド320およびポスト318は協働して、動きを妨げることなく、垂直方向に拘束し、水平方向に力を印加する。このことにより、確実に2つのトラスロッド306はヒンジアセンブリ36内に形成された穴の中へと直線的に前進する。
【0055】
次に、
図48~
図50を参照しながらヒンジアセンブリ36について説明する。
図48はヒンジアセンブリ36の分解組立図である。
図49~
図52は、ヒンジベース38を詳細に示しており、
図53~
図56は、中間ヒンジ40を詳細に示しており、
図57~
図60は、上部ヒンジ42を詳細に示している。ヒンジアセンブリ36は、ヒンジベース38、中間ヒンジ33、および上部ヒンジ42を含む。ヒンジアセンブリ36は、これらに限定されないが、金属(例えば、アルミニウム)、炭素繊維、プラスチック等を含む、任意の数の適切な材料から構成され得、これらに限定されないが、機械加工、成形、3D印刷等を含む任意の適切な技術を用いて製造され得る。
【0056】
ヒンジベース38は、上面に複数のねじ穴350を含み、これらのねじ穴350は、ネック12が完全に組み立てられた後にヒンジベース38をネック凹部354(
図22)内に取り付けるために(
図23の開口部352を通して)機械ねじを受容するように寸法決めされる。ヒンジベース38はさらに、第1のピン360を介して中間ヒンジ40の近位凹部358内で回転可能に結合するための結合延長部356を含み、第1のピン360は、結合延長部356と整列したときに第1の凹部358を垂直方向に通過する穴362を通って延びる。ヒンジベース38はさらに、スリーブ軸受364を受容するように寸法決めされた2つの細長い穴(図示せず)を含み、スリーブ軸受364は、使用中にヒンジアセンブリ36をロックおよびロック解除するためにトラスロッド306を摺動可能に受容するように寸法決めされる。ヒンジベース38と中間ヒンジ40との間の回転を容易にするために、ナイロンまたはテフロン(登録商標)含浸ワッシャ366が、結合延長部356の両側に形成された凹部368内に配置され得る。
【0057】
中間ヒンジ40は、近位凹部358と遠位凹部370とを含む。近位凹部358は、ヒンジベース38の結合延長部356と整列したときに近位凹部358を垂直方向に通過する穴362を通って延びる第1のピン360を介して、ヒンジベース38の結合延長部356に回転可能に係合するように寸法決めされる。遠位凹部370は、上部ヒンジ42の結合延長部372と整列したときに遠位凹部370を垂直方向に通過する穴376を通って延びる第2のピン374を介して、上部ヒンジ42の結合延長部372に回転可能に結合するように寸法決めされる。中間ヒンジ40は、スリーブ軸受378を受容するように寸法決めされた2つの細長い穴を有し、スリーブ軸受378は、使用中にヒンジアセンブリ36をロックおよびロック解除するためにトラスロッド306を摺動可能に受容するように寸法決めされる。上部ヒンジ42は、スリーブ軸受380を受容するように寸法決めされた2つの穴(ヒンジベース33および中間ヒンジ40の穴よりも短い)を有し、スリーブ軸受380は、使用中にヒンジアセンブリ36をロックおよびロック解除するためにトラスロッド306を摺動可能に受容するように寸法決めされる。中間ヒンジ40と上部ヒンジ42との間の回転を容易にするために、ナイロンまたはテフロン(登録商標)含浸ワッシャ382が、上部ヒンジ42の結合延長部372の両側に形成された凹部384内に配置され得る。
【0058】
上部ヒンジ42は、結合延長部372と、段差面386と、中央凹部388とを含む。連結延長部372は、上述したように、中間ヒンジ40の遠位凹部370内に回転可能に係合するように動作する。段差面386は、上面390に平行であり、上面から離間しており、2つのねじ穴392を含む。垂直面394は、追加の2つの穴396を含む。
図57~
図61をまとめて参照すると、上部ヒンジ42は、段差面386のねじ穴392の中への機械ねじ402を挿入して、ネックサブアセンブリ400に固定されるように寸法決めされる。この結合体の剛性を高めるのを助けるために、水平方向穴からネックサブアセンブリ400の当接面に形成された対応する穴へと延びる位置合わせピン404、および当接面上の膠または他の接着剤がさらに使用される。中央凹部388は、標準構造の調整可能なトラスロッド306の端部を受容するように寸法決めされ、トラスロッド306は、ネック12のヘッド18に隣接して位置するボルト要素212の回転によって上方ネック部分32の湾曲または位置合わせを変更するように操作され得る。
【0059】
図62~
図64は、ヒンジアセンブリ36とトラスロッドアセンブリ300との間のロックおよびロック解除の相互作用を示している。
図62および
図63では、トラスロッドアセンブリ300は、取付ブロック302がヒンジベース38の端壁に当接するか、または隣接するように、ヒンジベース38の中へ完全に前進している。この状態で、トラスロッド306は、ヒンジアセンブリ36を通って完全に前進し、1つの例示的な実施形態では、ヒンジベース38、中間ヒンジ40、および上部ヒンジ42のそれぞれの中のスリーブ軸受364、378、380を通って前進する。使用時にこれを実現するために、ハンドル48および作動機構200は、
図26~
図29に示されている状態になり、その結果、トラスロッド306がヒンジアセンブリ36を通って延びるように、(カプラ152に取り付けられた)細長いロッド150がトラスロッドアセンブリ300を押し込むことになる。
図64および
図65では、トラスロッドアセンブリ300は、トラスロッド306がヒンジアセンブリ36から除去されるまで、ヒンジベース38の端壁から離れる方向に並進される(移動される)。使用時にこれを実現するために、ハンドル48および作動機構200は、
図30~
図32に示されている状態になり、その結果、トラスロッド306がヒンジアセンブリ36から完全に除去されるように、(カプラ152に取り付けられた)細長いロッド150がトラスロッドアセンブリ300をヒンジベース38の端壁から離れる方向に引っ張ることになる。
【0060】
図66~
図68に示されているように、ヒンジアセンブリ36が組み立てられ、調整可能なトラスロッド410がネックサブアセンブリ400の上部チャネル440内に位置決めされた後、フレットボード442は、ネックサブアセンブリ400の上面、ヒンジベース38の上面、中間ヒンジ40の上面、および上部ヒンジ42の上面に接着され得る(
図66)。その後、フレットボード442は、下方フレットボードセクション444、中間フレットボードセクション446、および上方フレットボードセクション448をそれぞれ作成するために機械加工され得、これらのセクションは、フレットボード442内の近位接合部450および遠位接合部452を画定する(
図67)。 最後に、
図68に示されているように、近位接合部450および遠位接合部452は、近位フレットボード接合部450および遠位フレットボード接合部452に及ぶ略「V字形」の切り欠き領域454を形成するために、各々のギター弦経路の領域内で機械加工される。
図8~
図9に最も見やすく示されているように、切り欠き領域は、ギター10の折り畳みによって分離されると、ギター10が折り畳み状態にある間に弦16の望ましくない移動を防止するまたは最小限に抑えるために弦16を受容するように寸法決めされる。この場合も、弦16は、折り畳みが開始され得る前の浮動ブリッジアセンブリ20の解放により、適度な張力を受けた状態になる。テールピース202に結合された弦16、およびテールピース202とデータムブロック204との間に延在する一対のばね198からの適度な張力(1~5ポンド(約4.448N~約22.242N))下のテールピース202により、弦16は、緩やかに「折り目に追従」し、的確な弦管理のために切り欠き領域454内の適切な位置に留まることになる。
【0061】
並進ブリッジアセンブリ20の動作は、並進トラスアセンブリ46の動作に対して時間的にずらされ、その結果、弦16は、並進トラスアセンブリ46がネック12のヒンジアセンブリ36をロック解除するように動作する前に、並進ブリッジアセンブリ20によって弛緩される。より具体的には、ハンドル48が
図26~
図29に示されている完全なロック位置からロック解除位置(凹部50の上部領域内に入れ子になる)まで作動されると、並進ブリッジアセンブリ20内の浮動テールピースは、ネック12のヘッド18から離れる方向に移動し、その結果、弦16は、調弦状態(弦16に最大150ポンド(約667.26N)の力が加わった状態)から弛緩状態へと移行する。
【0062】
弛緩状態において、弦16に作用する主な力は、並進ブリッジアセンブリ20の一部を形成する1つまたは複数のばねにより加わる力であり、ばねは、弦16上に適度な力(例えば、1~5ポンド(約4.448N~約22.242N)であり、3ポンド(約13.345N)が好ましい)のみを加えるように構成される。弦経路(
図8~
図10では点線で示されている)に沿った摩擦を最小限に抑えるまたは排除するために様々な摩擦低減技術が用いられ、そのため、折り畳み形態において弦16に作用する主な力はばね16の力になる。
【0063】
上記の実施形態および変形形態の特徴または特性のいずれも、上述の実施形態および変形形態の他の特徴および特性のいずれとも、必要に応じて組み合わせて使用され得る。
【0064】
本明細書に記載のトラベルギターは、移動しやすくするための小さい外形寸法および予測可能な調弦ならびに素晴らしいギター演奏を提供することによって、従来技術の欠点を克服するか、または少なくとも改善するものである。さらに、市販のコンピュータタブレットおよび/またはスマートフォンを使用することによって、トラベルギターの有効コストは、これらのデバイスが他の用途で利用可能であるため、使用者にとっては低減される。
【0065】
前述の開示内容および特定の好ましい実施形態の詳細な説明から、真の範囲および精神から逸脱することなく、様々な修正、追加および他の代替的な実施形態が可能であることも明らかである。詳述されている実施形態は、本発明の原理およびその実際の適用の最適な例を示すために選択され、記載されており、したがって、当業者は、本発明を様々な実施形態で、および企図された特定の用途に適した様々な修正を加えて利用することができる。全てのそのような修正および変形は、それらが公正に、合法的に、および公平に権利が与えられる利益に従って解釈される場合、添付の特許請求の範囲によって決定される本発明の範囲内にある。