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特許7260541卵特性を非侵略的に決定するためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】卵特性を非侵略的に決定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 43/00 20060101AFI20230411BHJP
   G01N 21/3581 20140101ALI20230411BHJP
【FI】
A01K43/00
G01N21/3581
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020524947
(86)(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-24
(86)【国際出願番号】 IL2018050814
(87)【国際公開番号】W WO2019021275
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】62/535,917
(32)【優先日】2017-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520026962
【氏名又は名称】テラヘルツ グループ エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】ガッバイ,エラン
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-523019(JP,A)
【文献】特開2011-242180(JP,A)
【文献】国際公開第2018/023105(WO,A1)
【文献】特表2016-538550(JP,A)
【文献】特開2006-105646(JP,A)
【文献】特開2012-231700(JP,A)
【文献】特開2003-274791(JP,A)
【文献】特開2006-145512(JP,A)
【文献】WEBSTER, Ben; HAYES, William; PIKE, Thomas W.,Avian Egg Odour Encodes Information on Embryo Sex, Fertility and Development,PLoS ONE,Vol. 10, Issue 1,Public Library of Science,2015年01月28日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 43/00 - 43/10
G01N 21/00 - 21/01
G01N 21/17 - 21/61
G01N 33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
孵化の前に1またはそれ以上の卵特性を決定するためのシステムであって、該システムは、
圧力透過性被膜を運ぶ少なくとも1つの真空グリッパであって、該真空グリッパは、吸引によって卵を保持するように構成されかつ動作可能であり、前記圧力透過性被膜は、前記卵によって放出された揮発性有機化合物の伝播経路に置かれており、前記圧力透過性被膜は、収集した揮発性有機化合物をトラップするように構成されかつ動作可能である、前記少なくも1つの真空グリッパと、
約100GHzの走査窓内で放射周波数を掃引する間THz範囲内の電磁気放射によって前記収集した揮発性有機化合物を保持する前記圧力透過性被膜を照射するように構成されかつ動作可能である放射送信ユニットと、前記THz放射に応答して前記収集した揮発性有機化合物によって出された電磁気放射を検出するように構成されかつ動作可能であり、前記出された放射を示すデータを生成する検出ユニットと、を含む分光アセンブリと、
前記THz範囲の前記電磁気放射に応答して前記収集した揮発性有機化合物によって出された電磁気放射を示すデータを受信して、少なくとも1つの卵特性を示す前記収集した揮発性有機化合物のTHzスペクトルシグネチャを識別するためにデータを処理して、少なくも1つの卵特性を示す情報データを生成するように、構成されかつ動作可能である制御ユニットと、
を備えるシステム。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記シグネチャのパターン認識を実行するように構成されかつ動作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記圧力透過性被膜は、5秒を超えない時間周期内で、前記収集した揮発性有機化合物をトラップするように動作可能であるように構成された、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記放射送信ユニットは、前記圧力透過性被膜からある距離だけ離れて置かれており、前記距離は、前記THz範囲の前記電磁気放射の波長よりも短い値を持つ、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記圧力透過性被膜は、前記THz範囲の前記電磁気放射の波長の少なくとも数倍である厚さを持つ、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
孵化の前に1またはそれ以上の卵の特性を決定するための方法であって、該方法は、
圧力透過性被膜によって卵から生じる揮発性有機化合物を収集してトラップし、
約100GHzの走査窓内で放射周波数を掃引する間THz範囲内の電磁気放射によって前記圧力透過性被膜に保持されている前記収集した揮発性有機化合物を照射し、前記THz放射による前記照射に応答して前記収集した揮発性有機化合物によって出される前記電磁気放射を検出し、前記出された電磁気放射を示すデータを生成し、
前記卵の性と多産の少なくとも1つを示す前記収集した揮発性有機化合物のTHzスペクトルシグネチャを識別するために前記出された電磁気放射を示す前記データを受信して処理する、
方法。
【請求項7】
前記処理は、前記シグネチャのパターン認識を実行することである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記圧力透過性被膜は、前記収集した揮発性有機化合物を、吸引によって5秒より短い時間周期でトラップするように動作する、請求項6または7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、卵特性を非侵略的に決定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今ここに開示された主題の背景として関連のある参考文献を以下にリストしている。
【0003】
ここでの参考文献の認知は、今ここに開示された主題の特許性に関連するいずれかの方法であることを意味することとして推察されない。
【0004】
家禽で住むために孵化されるべき卵は、透明で、腐敗し、かつ死んだ卵(ここでは纏めて「非生存卵」と呼ばれる)を識別するために、胚芽成長の間、典型的には、明かりにすかして調べられる。非生存卵は、利用可能な孵化器のスペースを増加するために孵化から取り除かれる。Hebrankによる特許文献1は、赤外線検出器を使用して、卵から出された赤外線放射で生存している卵を識別するための、検卵装置を記載している。van Asselt他による特許文献2は、複数の光源と対応する光検出器とが1つのアレイに置かれ、卵を光源と光検出器との間を通過させて、生存している卵を識別する、検卵装置を記載している。
【0005】
市販の孵化場において、卵は、典型的には、孵化の間、一抱きフラットに保持される。選択された時間で、典型的には、孵化の80日で、卵は、孵化器から取り外される。不適格な卵(すなわち、死んだ卵、腐った卵、空の卵、および透明な卵)は、識別されて、取り除かれ、生存している卵は処理され(すなわち、接種され)、それから、孵化バスケットへ転送される。
【0006】
孵化場管理において、性や、病気、遺伝子特性などの種々の特徴に基づいて、鳥を分離することが望ましい。例えば、雄鳥に特定のワクチンを接種し、雌鳥に異なるワクチンを接種することが望ましい。孵化時での鳥の性分離は、他の理由のためにも重要である。例えば、七面鳥は、雄七面鳥および雌七面鳥の成長速度や栄養上の要求の差のために、性によって慣例的に隔離されている。産卵鶏またはテーブル卵産業において、雌のみをのこして置くことが望ましい。ブロイラー産業において、飼料効率を増し、処理均一性を改善し、かつ製造コストを削減するために、性に基づいて鳥を隔離することが望ましい。
【0007】
不運にも、鳥の性別を判定する従来の方法は、費用がかかり、労力を必要とし、時間を消費し、典型的には専門化した技能を持つ訓練された人を必要とする。鳥の性別を判定する従来の方法は、房毛性別、総排泄口性別、およびDNAまたは血液性別を含む。約3,000羽のひなが、1羽当たり約0.7~2.5セントのコストで、1時間当たり房毛性別判定され得る。約1,500羽のひなが、1羽当たり約3.6~4.8セントで1時間当たり総排泄口性別判定される。DNAおよび血液性別は、一羽の鳥から収集された少ない血液サンプルを分析することによって実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第4955728号明細書
【文献】米国特許第4671652号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/050891号明細書
【文献】米国特許出願公開第2004/107912号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/091742号明細書
【文献】国際公開第2014/086335号
【文献】国際公開第2015/145435号
【非特許文献】
【0009】
【文献】“Gender Identification of Chicks Prior to Hatch” 50TH Annual National Breeders Roundtable St. Louis, Missouri May 3-4, 2001
【文献】Webster B, Hayes W, Pike TW (2015) “Avian Egg Odour Encodes Information on Embryo Sex, Fertility and Development.” PLoS ONE 10(1): e0116345.
【文献】Opt Express. 2015 Feb 9;23(3):2048-57. doi: 10.1364/OE.23.002048 “Terahertz volatile gas sensing by using polymer microporous membranes.”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
孵化の前に、鳥の他の特徴ばかりでなく、鳥の性別を識別することが望ましい。孵化前性別識別は、家禽産業の種々のメンバのために著しくコストを削減し、不必要な雄ひなの殺害を減少しまたは削減すらする。従来の検卵技術は、生存卵と非生存卵との間を多少有効に弁別できるけれども、これらの従来の検卵技術は、孵化していない鳥の性や他の特徴を確実に決定することができない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、鳥類の性分類におけるテラヘルツ(THz)の使用に関する。「THz放射」という用語は、以下では、一般的に、約100GHzから30THzに広がる範囲にある、電磁気波周波数のいずれかを言う。特に、揮発性有機化合物および/または化合物を収集し、収集した化合物のシグネチャのTHzを基にした検出を適用して、卵特性を決定する、方法およびシステムを提供する。卵特性は、性および/または多産を含む。「揮発性物質」または「VOC」という用語は、以下では、一般的に、揮発性有機化合物および/または化合物を言う。
【0012】
発育する卵から放出される揮発性物質は、性と胚の発育状態とに加えて、卵多産の情報を伝える。特に、孵化の経過上で変化する、卵の揮発性物質は、多産卵と生殖能力のない卵との間で異なり、1日置かれた後すぐに、かつ孵化の前に、できるだけ早く胚の性を予測する。
【0013】
本発明の技術は、THz分光技術がPPB(10億分の1)より下の非常に低い濃度で材料/化合物の検出ができるので、卵の孵化の前に揮発性物質を検出することができる。
【0014】
THz技術は、1日での非多産の卵に加えて、雄胚と雌胚とを含む卵の間を識別できる。卵から生じて放出された揮発性有機化合物(VOC)は、多産と性についての情報を伝える。これらVOCは、多孔性の卵殻を通って収集される。各分離性と、非多産卵もまた、THz技術で識別されうる、VOCの特有の混合を有する。一般に、卵は真空吸引を使用してサンプルされ、VOCは圧力解放可能なキャパシタ内にトラップされる。収集システムは、圧力透過性被膜として構成される圧力解放可能なキャパシタを運ぶ真空グリッパを備え、卵が圧力グリッパによって保持(すなわち、吸引保持)されたとき、圧力解放可能なキャパシタは、卵殻を通して卵から放出されたVOCの伝播経路に置かれる。真空は、揮発性物質の流れを加速し、圧力解放可能なキャパシタの使用は、負圧力(すなわち、真空)を解き放つとき、薄膜内に収集された揮発性有機化合物をトラップすることを提供する。その後、卵はTHz波で走査され、各性および/または非多産卵に対する特定のVOCが、個々の指紋吸着に基づいて検出される。圧力解放可能なキャパシタは、その後、正または負圧力を含む動作によってトラップされた蒸気を放出/解放することができる。圧力(正または負)の印加なしで、圧力解放可能なキャパシタは、任意の材料をトラップまたは放出できないことに注意されたい。
【0015】
従って、本発明の広い態様によれば、孵化の前に、1つまたはそれ以上の卵特性を決定するためのシステムが提供される。このシステムは、圧力解放可能なキャパシタを運ぶ、少なくとも1つの真空グリッパと、THz範囲の電磁気放射で走査されて収集した揮発性有機化合物を示すデータを受信し、少なくとも1つの卵特性を示すシグネチャを識別するためにデータを処理して、それによって、少なくとも1つの卵特性を示す情報データを生成するように、構成されかつ動作可能である制御ユニットと、を備える。真空グリッパは、吸引により卵を保持するように構成されかつ動作可能であり、圧力解放可能なキャパシタは、卵によって放出された揮発性有機化合物の伝播経路に置かれる。圧力解放可能なキャパシタは、収集した揮発性有機化合物をトラップするように構成されかつ動作可能である。
【0016】
「圧力解放可能なキャパシタ」という用語は、負圧力を放出したときに、その中に揮発性化合物をトラップすることができ、望ましくは、正圧力を含む、圧力を印加したときに、そのトラップした揮発性化合物を放出/解放することできる、圧力透過性薄膜を言う。
【0017】
ある実施形態において、制御ユニットは、シグネチャのパターン認識を実行するように構成されかつ動作可能である。
【0018】
ある実施形態において、圧力解放可能なキャパシタは、卵をトレイからコンベヤに転送するためにかかる時間周期よりも短い時間周期内で、収集した揮発性有機化合物をトラップするように構成されかつ動作可能である。その時間周期は、5秒よりも短くてよい。
【0019】
ある実施形態において、システムは、約100GHzの走査窓内でTHzの範囲の電磁気放射を生成することによって、収集した揮発性有機化合物を保持する透過性キャパシタを走査するように構成されかつ動作可能である放射送信ユニットと、収集した揮発性有機化合物によって出された電磁波放射を検出するように構成されかつ動作可能である検出ユニットとを含む、分光アセンブリを更に備える。
【0020】
ある実施形態において、検出ユニットは、透過性キャパシタからある距離に置かれる。この距離は、電磁気放射の波長よりも短い値を持ってよい。
【0021】
ある実施形態において、圧力解放可能なキャパシタは、電磁気放射の波長の少なくとも数倍である厚さを持つ。
【0022】
本発明の広い態様によれば、孵化の前に1つまたはそれ以上の卵特性を決定するための方法を提供する。この方法は、THz範囲の電磁気放射で走査された収集した揮発性有機化合物を示すデータを受信することと、性と多産の少なくとも1つとを示すシグネチャを識別するためにデータを処理することと、を有する。
【0023】
ある実施形態において、シグネチャを識別するためにデータを処理するステップは、そのシグネチャのパターン認識を実行することから成る。
【0024】
ある実施形態において、この方法は、卵のTHz分光を実行することを更に有する。
【0025】
ある実施形態において、この方法は、約100GHzの走査窓内でTHz範囲の電磁気放射で収集した揮発性有機化合物を走査することを更に有する。
【0026】
ある実施形態において、この方法は、吸引により収集した揮発性有機化合物をトラップすることを更に有し、このトラップすることは、卵をトレイからコンベヤに転送するためにかかる時間周期よりも短い時間周期で実行される。
【0027】
ここに開示された主題をよりよく理解し、実際にどのように実行される方法を例示するために、実施形態を、制限されない例によって、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】孵化の前に卵特性を決定するための本発明のシステムのブロック図である。
図2A】本発明の真空グリッパを例示する映像である。
図2B】本発明の圧力解放可能なキャパシタを例示する映像である。
図3A】孵化の前に卵特性を決定するための技術を例示するフローチャートである。
図3B】本発明のある実施形態によるパターン認識のための技術を例示するフローチャートである。
図4A】雄用の卵から得られたTHzスペクトルを示す図である。
図4B】雌用の卵から得られたTHzスペクトルを示す図である。
図4C】基準キャパシタ用の卵から得られたTHzスペクトルを示す図である。
図5A】本発明の教示を使用して得られた雌THzシグネチャを示す図である。
図5B】本発明の教示を使用して得られた雄THzシグネチャを示す図である。
図6】本発明の教示を使用して得られた、パターン分類ステージと性の区分とを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の図示した実施形態は、ほとんどの部分に対して、当業者によって知られた電子構成要素および回路を使用して実現されるので、詳細については、本発明の基本的な概念の理解と応用のために、本発明の教示からわかりにくくならずまたそらされないように、上記に図示したように必要と考えられるよりも任意の多くの範囲については説明しない。
【0030】
方法に対する明細書における任意の参照は、方法を実施することができるシステムに必要な変更を加えて適用されるべきである。
【0031】
システムに対する明細書における任意の参照は、システムによって実施することができる方法に必要な変更を加えて適用されるべきである。
【0032】
図1を参照すると、ブロック図によって、卵内で孵化前に、卵特性を決定するように構成されかつ動作可能である、本発明のシステム100が図示されている。このシステム100は、圧力解放可能なキャパシタ104を運ぶ真空グリッパ102と、THz範囲の電磁気放射で走査された卵によって放出された揮発性有機化合物を示すデータを受信し、少なくとも1つの卵特性を示すTHzシグネチャを識別するためにデータを処理して、それによって少なくとも1つの卵特性を示す情報データを生成するように構成されかつ動作可能である制御ユニット106と、を含む。テラヘルツ(THz)放射は、回転または/および振動遷移レベルを介して磁極分子と相互作用することが知られている。これら相互作用は、放射エネルギーの減少として現れる。圧力解放可能なキャパシタを走査することよって得られる周波数THzスペクトルは、個々の特殊な指紋を持つ揮発性有機化合物を含む種々の化学材料を示す。
【0033】
以下において更により詳細に説明するように、制御ユニット106は、卵によって出された応答信号を受信して処理し、卵のTHzシグネチャを示すスペクトルの特殊な特徴を識別するように構成されている。例えば、THzシグネチャは、卵の性および/または多産の情報を含んでよい。したがって、THzシグネチャに含まれる情報は、分類する処理と関連づけられている。このシステム100は、THz分析による試験をするとき、THz検査によって識別可能な特性を持つ、少なくとも1つの卵で使用されるように構成され、卵の性および/または多産が識別されてよい。本発明者らは、卵の性(雄または雌)および/または多産が、それ自身のTHzシグネチャを持つことを発見した。
【0034】
ある実施形態において、制御ユニット106は、THzシグネチャのパターン認識を実行するように構成されかつ動作可能である。制御ユニット106は、一般的に、特に、データ入力ユーティリティ106A、データ出力ユーティリティ106B、メモリ106C、およびデータ処理ユーティリティ106Bのようなユーティリティを含む、コンピューティング/電子ユーティリティとして構成される。したがって、制御ユニット106のユーティリティは、以下に説明する方法200および/または300の動作を実現するように構成されたコンピュータ読取可能なコードを含む、適当な電気回路によって、および/またはソフトウェアおよび/またはハードウェア構成要素によって、実現されてよい。
【0035】
本発明の特徴は、以下に詳細に説明する、種々のコンピュータハードウェア構成要素を含む、汎用コンピュータシステムまたは専用コンピュータシステムを備えてよい。また、本発明の範囲内の特徴は、格納された、コンピュータ実行可能な命令、コンピュータ読取可能な命令、またはデータ構造を運ぶまたは持つ、コンピュータ読取可能な媒体を含んでもよい。そのようなコンピュータ読取可能な媒体は、汎用コンピュータシステムまたは専用コンピュータシステムによってアクセス可能な、任意の入手できる媒体であってよい。例えば、制限されないが、そのようなコンピュータ読取可能な媒体は、RAM、ROM、EPROM、フラッシュディスク、CD-ROM、または他の光学ディスク記憶装置、磁気ディスク記憶装置、または他の磁気記憶装置のような物理記憶媒体か、または、コンピュータ実行可能な命令、コンピュータ読取可能な命令、またはデータ構造の形式の所望のプログラムコード手段を運びまたは記憶するように使用され得、かつ、汎用コンピュータシステムまたは専用コンピュータシステムによってアクセスされ得る、任意の他の媒体を備えることができる。コンピュータ読取可能な媒体は、ワイドエリアネットワーク(WAN)、例えば、インターネットのような、ネットワークからコンピュータシステムにダウンロード可能な、コンピュータプログラムまたはコンピュータアプリケーションを含んでもよい。
【0036】
この明細書においておよび特許請求の範囲において、「制御ユニット」は、電子データの動作を実行するために互いに働く、1つまたはそれ以上のソフトウェアモジュール、1つまたはそれ以上のハードウェアモジュール、またはそれらの組み合せとして規定される。例えば、処理ユーティリティの定義は、パーソナルコンピュータのオペレーティングシステムのような、ソフトウェアモジュールだけでなく、パーソナルコンピュータのハードウェア構成要素をも含む。モジュールの物理的レイアウトは、関連がない。コンピュータシステムは、コンピュータネットワークを介して結合された1つまたはそれ以上のコンピュータを含んでよい。同様に、コンピュータシステムは、(メモリおよびプロセッサのような)内部モジュールが電子データの動作を実行するために互いに働く、単一の物理装置を含んでもよい。任意のコンピュータシステムがモバイルであってもよいとき、ここにおいて特に使用される、「モバイルコンピュータシステム」の用語や「モバイルコンピュータ装置」の用語は、ラップトップ型コンピュータ、ノートブック型コンピュータ、携帯電話、スマートフォン、無線電話、携帯情報端末、タッチ感知スクリーン付き携帯コンピュータ、等を含む。
【0037】
本発明の制御ユニット106は、単一処理センタの部分として、および/または携帯(すなわち、手のひらに乗る)THz読取り装置として、実現されてよい。データ入力ユーティリティ106Aは応答THz信号を受信ための通信モジュールを含み、動作データ出力ユーティリティ106Bは識別された卵に関連するデータを生成するためのものであり、メモリ(例えば、不揮発性コンピュータ読取可能媒体)106Cは学習データベース、例えば、卵対卵特性のTHzシグネチャを示す予め選択されたデータを記憶するためのものであり、データ処理ユーティリティ106Dは卵の性と多産とを識別するために適合される。データベースは、マイクロソフト・アクセス、サイベース、オラクルや他の適当な市販のデータベースシステムで実現されてよい。ある実施形態において、このシステム100は、クラウドを基にした構成において構成され、および/またはインターネットを基にしたコンピューティングを利用し、それで、処理ユーティリティ106Bおよび/またはメモリ106Cの部分は、多数の個別地理的な位置に存在していてもよい。THz応答信号を受信した後、データ処理ユーティリティ106Dは、その信号を処理することが可能である。信号処理ステップの結果は、表示されてよく、および/または、記憶装置に格納されてよく、および/または、分類装置へ転送するためにデータ通信部へ送信されてよい。メモリ106Cは、データ処理ユーティリティ106Dによって実行可能な命令を含んでよい。命令は、データ処理ユーティリティ106Dに対して、THz応答信号を受信させ、THz応答信号を処理させ、少なくとも1つの卵特性を識別させ、データ出力ユーティリティ106Bを介して卵の特性についての通知を出力させるのを可能とするように、動作可能であってよい。通知は、したがって、直接、卵を分類するための分類装置へ送出されてよい。メモリ106Cは、無線または有線接続を介して、外部装置によって中央データベースへ中継されてよい。
【0038】
ある実施形態において、制御ユニット106は、THzシグネチャを取得するように構成されかつ動作可能である、分光アセンブリ108を起動する。分光アセンブリ108は、本発明のシステムの一部であってもよいし、一部でなくてもよい。処理ユーティリティ106Dは、(THz放射の光学的経路内にある)圧力解放可能なキャパシタ104を通過してTHz放射を放出するために、THz放射送信ユニット108Aへ信号を送る。データ入力106Aは、放射検出ユニット108Bを介して放射信号パターンを受信する。放射信号パターンは、圧力解放可能なキャパシタ104によって吸収されない、放射である。放射信号パターンはTHzシグネチャを含む。処理ユーティリティ106Dは、データ出力ユーティリティ106Bを介し、データ通信を介して(例えば、セルラ方式のネットワークを介して)、中央コンピュータの通信モジュールへ、(性および/または多産のような)信号パターンに関するデータを送信してもよい。処理ユーティリティ106Dは、メモリ106Cの学習データベースに受信データを記録してもよく、および/または、学習データベースのデータで受信データを問い合わせ/相互参照して、卵特性を識別してもよく、および、処理ユーティリティ106Dが卵データに対応するメッセージを表示するために信号を送る、モバイル装置へそのような卵データを通信してもよい。この目的のために、学習データベースに格納された予め選択されたデータは、収集した揮発性有機化合物のTHzパターン/シグネチャと学習データベースに格納されている卵特性のシグネチャとを比較するために使用されてよい。
【0039】
真空グリッパ102は、吸引によって卵を保持するように構成されかつ動作可能である。圧力解放可能なキャパシタ104は、収集した揮発性有機化合物をトラップできる透過性キャパシタとして構成される。したがって、受精した卵は、真空をつくるために卵の外表面で負圧力にさらされる。吸引キャップのような、圧力キャップは、真空グリッパを含み、好ましくは、空気袋上に直接的に、外部殻表面上に配置され得る。それから、真空グリッパは、卵の方へ下方に動かされ、それから、負圧力真空が、圧力解放可能なキャパシタを通して加えられ、空気袋および卵の他の部分から揮発性物質をトラップする。使用されてもよい真空の仕事範囲は、短い時間周期間で約600mmHgである。これら真空の時間範囲は、約1秒から5秒まである。
【0040】
圧力解放可能なキャパシタ104は、繊維(たとえば、メッシュ)から成る高密圧縮された構造として構成された、圧力透過性薄膜であってよく、圧力透過性薄膜は、圧力解放可能なキャパシタとして真空の印加/解放に応答する。圧力解放可能なキャパシタは、基本材料の特性ではないが、その所望の構造からその特性を引き出す材料である、メタ材料薄膜として構成されてよい。メタ材料薄膜は、±10ミクロンの精度で製造される、プラスチックハウジング内でカプセルに包まれた、メタ材料の複数の層からなってよい。
【0041】
ある実施形態において、このシステム100は、THz周波数放射を生成するように構成されかつ動作可能である放射送信ユニット108Aと、収集した揮発性有機化合物によって出された電磁気放射を検出するように構成されかつ動作可能である検出装置108Bとを含む、分光アセンブリ108を含む。特に、放射送信ユニット108Aは、約100GHzから30THzまで広がる範囲における波長を持つ放射に卵をさらすために動作可能であり、約100GHzの走査窓で、収集した揮発性有機化合物を保持する透過性キャパシタを走査する。明確化のために、放射送信ユニット108Aと検出ユニット108Bとは、2つの別々の物理要素として表されているけれども、それらは、同じ物理的要素に、または、同じハウジングに、合体され得る。特に非制限の例において、放射送信装置108Aは、実質的に同じ周波数内容の検査および基準電磁気放射成分を生成して、その周波数をスイープし/走査するように構成されかつ動作可能である。検出ユニット108Bは、圧力解放可能なキャパシタ104を通過した後の検査放射成分の第1の経路内と、送信ユニット108Aから直接伝達する基準放射成分の第2の経路内とに置かれてよい。分光アセンブリ108は、検出ユニット108Bで相互に作用する、検出放射成分および基準放射成分の周波数間の予め定められた周波数差を誘導するように構成されてよく、検査成分と基準成分との間の相互作用からの結果として生じる信号は、検査放射が卵と相互作用するところの位置で、卵の1つまたはそれ以上の特性を示す。例えば、分光アセンブリ108は、本発明と同じ譲受人に譲渡された、米国特許第9,279,723号明細書に記載されている、分光アセンブリによって実現されてよい。本発明のシステム100は、上述のような分光アセンブリ108を備えてよく、または、上述したような、または、この分野において従来から使用されているような、外部分光アセンブリによって得られた収集した揮発性有機化合物によって出されたデータを直接的に受信してもよい。例えば、1つの分光方法は、卵殻それ自身上に直接的に、THz波を放射して、指紋特徴や応答信号としてパルスの減衰(decay)信号のような、それらのスペクトル情報を取得する。分光システムは、光学混合、ヘテロダイン検出、およびチャープパルスTHz分光を含む
。他の分光方法が、フォトニック結晶、導波管装置または周波数混合器における、THz共振分野を使用することである。
【0042】
圧力解放可能なキャパシタ104は、揮発性有機化合物の伝播経路に置かれている。また、圧力解放可能なキャパシタ104は、送信ユニット108Aによって放たれた電磁気放射の光学経路内に置かれている。
【0043】
例えば、圧力解放可能なキャパシタ104は、光学アセンブリ108から空間的に離れていてよい。圧力解放可能なキャパシタ104は、真空グリッパから隔てられた、ある位置で光学アセンブリ108によってデータを得て、THzシグネチャを運ぶ応答信号は、有線/無線接続を介してまたは通信ネットワークを介して制御ユニット106に送信される。その代わりに、圧力解放可能なキャパシタ104は、分光アセンブリ108の一部であってよい。この場合、分光アセンブリ108は、圧力解放可能なキャパシタ108が置かれて試験される、サンプル容器を備える。
【0044】
ある実施形態において、このシステムは、制御ユニット106に外付けの、ホストコンピュータで通信ネットワークに接続可能である。その代わりに、また、分光アセンブリ108は、任意の型の結合要素を使用することによって制御ユニット106に付着され得る。制御ユニット106は、分光アセンブリ108の動作とまたオプションで真空グリッパ102の動作を制御するように、構成されかつ動作可能である。制御ユニット106は、分光アセンブリ108内に合体されてもよく、または、有線または無線通信を介して分光アセンブリ108と通信する分離した要素であってもよい。もし制御ユニット106が分光アセンブリ108内に合体されているなら、THzシグネチャ識別は、任意の型の電子構成要素、回路またアンテナを必要としないかまたは使用しない。信号交換と通信は、適切な有線または無線のおかげでシステムのモジュール間で可能であることは、詳細には示されていないが、正しく認識されるべきである。例えば、分光アセンブリ108と制御ユニット106とは、IR(赤外)、RF(Bluetooth(登録商標)を含むラジオ周波数)、またはケーブル制御によって接続され得る。もし分光アセンブリ108と制御ユニット106とが同じ物理的ハウジング内に合体されているなら、THzシグネチャは、制御ユニット106内に格納される。ここで述べたような接続は、それぞれのノード、ユニットまたは装置からまたはそれらへ、例えば、中間の装置を介して信号を転送するのに適した、任意の型の接続であってよい。したがって、もし必要とされまたは定まったのと異なっていないなら、接続は、例えば、直接接続または間接接続であってよい。接続は、単一接続、複数の接続、定方向接続、または双方向接続であると関連して図示されまたは説明されてよい。しかしながら、異なる実施形態は、接続の実現を変更してもよい。例えば、単独の定方向接続は、双方向接続よりも使用されてもよく、逆もまた同様である。また、複数接続は、多数の信号を直列に転送するか、または、時間多重方法で転送する、単一接続に取り替えられてもよい。同様に、多数の信号を運ぶ単一接続は、それら信号のサブセットを運ぶ種々の異なる接続に分離されてもよい。したがって、多くのオプションが、信号を転送するために存在する。
【0045】
送信ユニット108Aは、透過性キャパシタ104上にある距離で置かれる。送信ユニット108Aと透過性キャパシタ104との間の距離は、電磁気放射の波長よりも短い接近した付近であるとして選択されてよい。例えば、この距離は、約400GHz~500GHzの範囲内の放射に対して、1mm以下として選択されてよい。特定の非制限の例において、送信ユニット108Aと透過性キャパシタ104との間の距離は、約0.599~0.749mmの範囲内であるとして選択される。この点について、THz範囲内の伝播経路のため、もし送信ユニット108Aと透過性キャパシタ104との間の距離が、電磁気放射の波長よりも短くなるように選択されたなら、結果信号は、環境から守られ(たとえば、湿度、温度などの変化のような周囲の変化によって影響されず)、制御された環境(たとえば、フードのようなクリーンルームや、窒素またはヘリウムガスでのクリーニングを含む不活性条件下)において応答信号の取得を実行する必要性を除去すると、理解すべきである。更に、送信ユニット108Aと透過性キャパシタ104との間の短い距離は、環境によるTHz信号の吸収を除去する。
【0046】
更に、ある実施形態において、圧力解放可能なキャパシタ104の厚さは、電磁気放射の少なくとも数倍(たとえば、少なくとも4倍)であるとして選択されてよい。この厚さは、識別可能なTHzシグネチャを提供する分析を実行するのを可能にする、十分な量の不揮発性有機化合物を獲得することができる、十分な広さに選択されるべきである。例えば、圧力解放可能なキャパシタ104の厚さは、約400GHz~500GHzの範囲内の放射に対して、3~4mmに選択されてよい。
【0047】
ある実施形態において、このシステム100は、コンベヤによって支持される複数の卵の上部に置かれたトレイによって運ばれる、複数の真空グリッパ102を備える。複数の真空グリッパ102と複数の卵とは、各検査周期で、複数の真空グリッパを運ぶトレイ(たとえば、線形に配置されるか、または、行列状に配列される)が複数の卵へ向かって下方へ移動するように配列され、それによって、各真空グリッパは、吸引によって、一度に1つの卵を保持する。この場合において、制御ユニット106は、THzシグネチャと一緒に、後で適した分類を可能するために、コンベヤ上の卵の位置を受信する。
【0048】
ある実施形態において、分光アセンブリ108と真空グリッパ102とは、同じ検査室内に置かれ、それによって、揮発性有機化合物の分析が、実時間で実行される。その代わりに、圧力解放可能なキャパシタ104は、真空グリッパ102から外されて、揮発性有機化合物のトラップの後に、独立した検査室において検査されてもよい。
【0049】
ある実施形態において、透過性キャパシタ104は、卵をトレイからコンベヤへ転送するために費やす時間周期よりも短い時間周期内で、収集した揮発性有機化合物をトラップするように構成されかつ動作可能である。この点について、THzシグネチャを識別するためのシステムの能力は、家禽産業における商業上の使用に対する重要なパラメータである、速い検査速度を提供する。上述したように、収集した揮発性有機化合物がPPB以下の非常に低い密度における蒸気収集であるときでさえ、THz放射は、識別可能なシグネチャを提供することができる、と理解されるべきである。換言すれば、THzシグネチャは、上記化合物における低い変化に敏感であって、高分解能での検出を提供する。THzシグネチャの高分解能は、異なる性のシグネチャ間を区別可能とする。もしシグネチャの分解能が十分によくないなら、THzシグネチャは重複し、それらの間の区別は不可能である。対照してみると、赤外線放射の使用は、識別可能な信号を提供しない。気体の収集と異なる化学化合物の分離とを含む赤外線放射を使用する分光分析は、貧弱な結果を生む。更に、赤外線分光によって必要とされる気体配送の高速度は、小さい領域におけるキャリアの収集と分離した化合物とを可能にしない。更にまた、赤外線放射を使用することによって分光学的に分析され得る、ある量の揮発性有機化合物を収集するための時間周期は、非常に長い。例えば、識別可能な赤外線スペクトルデータを得ることができるために費やされる時間は、1時間の約半分である。加えて、上記アプローチにおける揮発性有機化合物の密度は、十分な量の赤外線吸収を得るためには余りにも低すぎる。換言すれば、より高い密度が、識別可能な信号を得るために必要である。ラマン技術の使用は、揮発性有機化合物の低い密度でさえも識別可能な信号を提供することができるけれども、しかしながら、データ収集時間が、本発明の技術よりもより長くなり、従って、卵分類の速度が重要なパラメータである商業上の使用には適さない。更に、THz分光を使用する技術において使用される知られた技術は、収集した揮発性有機化合物の各化学組成のスペクトル分析を提供するが、各収集した揮発性有機化合物の密度の存在を分離して示すには長い時間を費やす。識別可能なシグネチャを提供するために十分な密度である、ある最小な量の収
集した揮発性有機化合物をトラップするために使われる時間周期は、卵をトレイからコンベヤに転送するために使われる時間周期よりも短いので、本発明の技術は、典型的な転送プロセスのトータルの時間を増加しない。例えば、分類され孵化器へ運ばれる前に、卵の転送用の真空ハンドリングが、5秒より短い(たとえば、3秒)であるなら、最小な量の収集した揮発性有機化合物をトラップするために使われる時間周期も、また5秒より短く(たとえば、3秒)、孵化の前に卵の分類プロセス内でまとめられ得る。
【0050】
制御ユニット106は、出口コンベヤの端に置かれた転換装置を制御する分類機を備える。分類機は、メモリに格納された学習データベースにおける卵の1つまたはそれ以上の特性を示す処理ユーティリティ106Dによって生成されたデータをアクセスし、そのデータを使用して分類を実行する。このデータは、また、分類パラメータと、比較の結果を含んでもよい。一度データが学習データベースに格納されると、そのようなデータは、例えば、Microsoft SQLのような、クリエ言語のような、知られたデータベース分析を使用して分析されてよい。分類機は、この比較に従って、どの卵が雌または雄かを決定し、もし卵が雌なら、それらが多産かを決定する。従って、分類機は、処理ユーティリティ106Dから通信モジュールを介して、1つまたはそれ以上の卵特性を示すデータを受信して、選択的に、分類した卵を転換するための転換装置の動作を制御するように構成される。それから、分類機は、卵を識別して、転換装置を起動してよい。転換装置は、卵を、連続トラックから異なるトラックまたは収集手段へ転換する。転換装置は、トラックの連続かまたはトラック上の障壁を形成するように、刻み目がされたソレノイドのシャフトの形状を取ってよい。分類機の機能は、単一のユニットを形成する処理ユーティリティ106Dによって実行されてよい。
【0051】
圧力解放可能なキャパシタを運び、吸引により卵を保持するために構成された、真空グリッパ102を例示する画像を示す、図2Aを参照する。図2Bは、卵から卵殻を通して放出されるVOCの伝播経路に置かれる、圧力透過性薄膜として構成される圧力解放可能なキャパシタ104を例示する画像を示す。上述しように、圧力解放可能なキャパシタ104は、負圧力を放っているとき、収集した揮発性有機化合物を薄膜内にトラップするために構成される。
【0052】
THzスペクトルシグネチャを識別し、孵化の前に卵の1つまたはそれ以上の特性を決定するための、本発明の制御ユニット106を利用する上記システム100によって実行される方法を例示するフローチャート200を示す、図3Aを参照する。このフローチャートは、卵特性データを生成するためのシステム動作を例示する。この方法200は、ステップ202においてTHz範囲内の電磁気放射で走査された、収集した揮発性有機化合物を示すデータを受信するステップと、ステップ204において性および多産の少なくとも1つを示すシグネチャを識別するためにデータを処理するステップと、を有する。処理のステップ204は、シグネチャのパターン認識を実行するステップ206を有してよい。
【0053】
ある実施形態において、収集した揮発性有機化合物を示すデータを受信するステップ202の前に、この方法200は、ステップ210において卵のTHz分光を実行することを更に有してよい。これは、約100GHzの走査窓内のTHz範囲の電磁気放射で圧力解放可能なキャパシタ内に獲得された収集した揮発性有機化合物を走査することによって(たとえば、500個の測定値を収集することによって)、実現されてよい。この狭い走査窓は、卵の速い走査を実行して、検査プロセスを実行するために必要な時間周期を減少することを可能とする。更に、この狭い走査窓は、また、速い雑音消去と、測定値の精度の増加とを可能にする。
【0054】
ある実施形態において、卵のTHz分光を実行するステップ210の前に、この方法200は、吸引によって収集した揮発性有機化合物をトラップするステップ208を有してよく、このトラッピングは、上述したように、卵をトレイからコンベヤに転送するために使用される時間周期よりも短い時間周期内で実行される。
【0055】
ある実施形態において、吸引によって収集した揮発性有機化合物をトラップするステップ208の前に、この方法200は、ステップ210において使用される同じ解放可能な/透過性キャパシタである、基準クリーン解放可能な/透過性キャパシタのTHz分光を実行することによって、基準スペクトルを取得するステップ214を有してよい。ある実施形態において、この方法200は、正圧力/負圧力を印加することによって、更なる使用のためにトラップされた揮発性化合物を持つ解放可能な/透過性キャパシタをきれいにするステップを有してよい。
【0056】
特殊で非制限の例において、THz分光を実行することは、キャパシタを走査し、500個の測定物を収集することによって実現される。ステップ204において、スペクトルデータが処理され、ステップ210において透過性キャパシタに満たされた卵VOCによって得られた卵のスペクトルが、ステップ214において得られた基準スペクトルデータと比較される。
【0057】
ある実施形態において、方法200は、学習データベースにTHzシグネチャを記録するステップ212を更に有する。学習データベースは、1つまたはそれ以上の卵特性と関連付けられたTHz指紋/シグネチャを提供するように構成されてよい。例えば、方法200は、学習データベースに、信号のシグネチャおよび/またはシグネチャを持つ卵の特性を示す、予め選択されたデータを格納することを含んでよい。データを処理するステップ204は、受信したTHzデータと学習データベースのデータとを比較することを更に含んでよい。受信したTHzデータは、学習データベースにログされてよい。ログされた受信したTHzデータは、未来の卵の未来の分析のために使用されてよい。オプションとして、データを処理するステップ204は、学習データベースデータに基づいて、卵の1つまたはそれ以上の特性をアクセスすることを更に含んでもよい。1つまたはそれ以上の特性をアクセスすることは、受信したTHzデータを学習データベースのTHzデータと比較して、統計比較を実行する、統計分析を使用して実行されてよい。もし予め定めたレベルの類似を示すなら、THzデータは、ある特性を持つと考えられる。THz分光を実行するステップ210の後、キャパシタは、VOCの脱着と真空の解放または高圧力流れとを含む、種々の方法を介してVOCの内容が解放されてよい。
【0058】
THzスペクトルシグネチャを識別して、パターン認識に基づいて孵化の前に卵の1つまたはそれ以上の特性を決定する、本発明の制御ユニット106を利用する上記システム100によって実行される方法を例示するフローチャート300を示す、図3Bを参照する。特に、制御ユニット106の処理は、ニューラルネットワーク加速アルゴリズム(NNA)のような学習アルゴリズムに基づいて、パターン認識の数学的解釈を提供するステップを有する。パターン認識の解釈は、主ピークと側ピークの識別、主ピークと側ピークの数、ピークの幅とそれらの間の間隔のような、パターンの特定の特徴の識別に基づく。
【0059】
ある実施形態において、上記方法200の処理ステップ204は、次のステップ、すなわち、測定値に存在する不適切なスペクトル傾向を除去して、ランダムな測定雑音を取り除くように構成されたオプションの事前処理ステップ310と、主成分分析を使用してデータを規定する最も適切なベクトルを推定するように構成された特徴抽出ステップ312と、組み合わされた線形および非線形パターン認識アプローチを使用するパターン分類ステップ314と、を有してよい。
【0060】
特殊で非制限の例において、オプションの事前処理ステップ310は、学習データベースを確立するステップを含んでよい。学習データベースを確立するステップは、スキャンを収集するステップと、上述したようにスキャンを事前処理するステップと、結果に対してフーリエ変換を実行するステップと、を有してよい。事前処理ステップ310は、上記ステップ214において得られた、基準スペクトルデータと、上記ステップ210において得られた、卵スペクトルデータと、に対して実行される。特徴抽出ステップ312は、サンプル処理データから基準処理データを減じるステップを含んでよい。結果として得られるデータは、(圧力解放可能なキャパシタに関連するデータがなく)卵関連情報のみに属するかまたは表す。サンプル処理データ(すなわち、卵サンプル結果)から基準処理データ(すなわち、圧力解放可能なキャパシタ結果)を減じるステップの後には、卵関連情報に対して第2のフーリエ変換を実行して、特定の卵関連信号、それらの間の性区分信号を提供するステップが続いてよい。
【0061】
パターン分類ステップ314は、得られたすべの結果と学習データベースとを比較するステップを含んでよい。学習データベースが確立されたとき、同じサンプルされた卵は、性決定のためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法によって生物学的に試験される。数学的プロセスによって得られたベクトルと、サンプル間の変動(すなわち、数学的に計算された差異)との全ては、図6に図示されるように、性決定と2つのグループへの区別に「翻訳」される。
【0062】
学習データベースを確立した後、次に測定された卵データの全ては、同じ数学的プロセスを使用することによって、データベースと比較される。雄(4A)用の卵、雌(4B)用の卵、および基準(4C)を使用した非使用キャパシタから、それぞれ、得られたTHzスペクトルを示す、図4A図4Cを参照する。走査プロセスは、100GHzの窓上で、390GHz~490GHzの範囲で、トータルで500点を得るための0.2GHzのステップで、なされる。特に、図4Cのグラフは、本発明の教示に従って照合基準として使用される、隣接する校正スペクトルと共に得られる、卵のスペクトルを示す。
【0063】
本発明の教示に従って、上記図3Bに関連して説明した処理識別技術を使用することによって、雌(5A)用の卵および雄(5B)用の卵から、それぞれ、得られたTHzシグネチャを示す、図5A図5Bを参照する。特に、図5Aは、測定値にある不適切なスペクトル傾向の除去と、ランダムな測定雑音の取り除きの後に、上述したようにステップ204の平均成果を示す。X軸は500個の測定点を表し、Y軸はフーリエ変換の強度を表す。上記グラフにおけるスパイク(ピーク)のための計算は、次の通りである。
周波数=400GHz+100GHz/500点
【0064】
図5A図5Bから明らかに示されるように、本発明の技術は、卵の異なる特性を示す、異なるTHzシグネチャを得ることができる。例えば、雌用のTHzシグネチャは、140測定点のあたりの後に、1つの主ピークを有する。雄用のTHzシグネチャは、少なくとも140および180測定点当たりの後に、複雑なTHzシグネチャを規定する複数のピーク(約5)を有する。例えば、パターン分類ステップは、主ピークの数を識別することによって、卵の性を識別することを含む。特殊で非制限の例において、3つのピークが識別されたとき、卵の性は雄と関連している。2つのピークが識別されたとき、卵の性は雌と関連している。本発明者らは、パターン信号は、主ピーク間の比例した距離が各性に対して一定であるようなTHzシグネチャを規定している、ことを発見した。特に、雄卵、雌卵、および非多産卵の間の差は、VOCの内容の比における差異に起因している。一般に、多産卵は、同じ化合物を含むがより低い密度である、非多産卵と比較して、より多くの(高い密度の)アルコールおよび芳香族化合物を含む。雌卵と雄卵とは、同じVOCを含むが、それらの間の比において再び差がある。雌卵は、高密度の、長鎖ケトン、芳香族アルコール、およびアルデヒドを含む。VOCの各混合またはブレンドは、本発明の教示を使用して、フーリエ変換の別個のピークに翻訳され得る、個別のTHzシグネチャを持つ。したがって、ピークの数、主ピーク間の距離、主ピークと側ピークとの識別、ピークの幅のような、パターンの特定の特徴の識別は、卵の特性を規定することが可能である。換言すれば、本発明者らは、異なる卵特性のTHzシグネチャ間の比を得ることが、これらの特性の識別を可能とし、各密度ばかりでなく各VCO成分の特定の識別が、卵特性を識別するために必要でない、ことを発見した。本発明のシステムのこの能力は、それが卵特性の識別の時間を著しく減少するので、家禽産業において注目に値する。
【0065】
パターン分類ステージと、上記方法300のパターン分類ステップ314を使用することによって得られた性区分を示す、図6を参照する。この図において明らかに示されるように、本発明の技術は、性を区別することができる。特に、X軸は卵の数を表し、Y軸は上記方法300のステップ312によって抽出された雄ベクトルと雌ベクトルとの間の距離を表す。
【0066】
特許請求の範囲において、「備える」の単語は、特許請求の範囲において列挙されたもの以外の要素やステップの存在を除外しない。さらに、ここに使用されているような、「1つの」の用語は、1つまたは1以上よりも多いものとして規定される。また、特許請求の範囲における「少なくとも1つ」および「1またはそれ以上」のような前置き句の使用は、たとえ同じ特許請求の範囲が「1またはそれ以上」または「少なくとも1つ」の前置き句を含み、そのような「1つの」物品を規定してないとしても、未定義の物品による他の特許請求の範囲の要素への「1つの」の導入が、たった1つのそのような要素を含む発明にそのように導入された特許請求の範囲の要素を含む任意の特定の特許請求の範囲を制限するということを、暗に意味するものと解釈されるべきでない。同じことが、定義した物品の使用に対しても真である。その他の点で述べられていない限り、「第1の」および「第2の」のような用語は、そのような用語を記載する要素間を任意に識別するために使用される。従って、それら用語は、そのような用語の一時のまたは他の優先順位を示すことを必ずしも意図しない。ある手段が相互に異なる特許請求の範囲において列挙されているにすぎないという事実は、それら手段の組合せが好都合に使用され得ないことを示さない。
【0067】
本発明のある特徴を、ここで図示し説明したけれども、多くの設計変更、置換、変更、および均等物が、当業者においてなされるだろう。従って、添付の特許請求の範囲は、発明の本当の精神内に入るそのような設計変更および変更のすべてをカバーすることを意図していると、理解されるべきである。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6