(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】無方向性電磁鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20230411BHJP
C22C 38/60 20060101ALI20230411BHJP
C21D 8/12 20060101ALI20230411BHJP
H01F 1/147 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C22C38/00 303U
C22C38/60
C21D8/12 A
H01F1/147 175
(21)【出願番号】P 2020536075
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(86)【国際出願番号】 KR2018016138
(87)【国際公開番号】W WO2019132377
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-06-29
(31)【優先権主張番号】10-2017-0179609
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュン スゥ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,デ‐ヒョン
【審査官】鈴木 毅
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0075250(KR,A)
【文献】特開2006-249555(JP,A)
【文献】特開2005-120403(JP,A)
【文献】特開平06-073511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00 - 38/60
C21D 8/12
H01F 1/147
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、Si:
3.12~4.0%、Al:0.1~1.5%、Mn:0.1~1.5%、C:0.005%以下(0%を除く)、N:0.005%以下(0%を除く)、Ti:0.005%以下(0%を除く)、S:0.001~0.005%、P:0.1%以下(0%を除く)、SnおよびSbのうちの1種以上を0.02~0.2%、さらにCu:0.05%以下(0%を除く)、Ni:0.05%以下(0%を除く)、Cr:0.05%以下(0%を除く)、Zr:0.01%以下(0%を除く)、Mo:0.01%以下(0%を除く)およびV:0.01%以下(0%を除く)のうちの1種以上を含み、残部はFeおよび不可避な不純物からなり、下記式1、式2、式3および式4を満たすことを特徴とする無方向性電磁鋼板。
[式1]
0.9≦[Al]+[Mn]≦2.1
[式2]
0.2≦([Si]+[Al]+[Mn]/2)*([P]+[Sn]+[Sb])≦0.4
[式3]
0.29≦(Gs
center-Gs
surface)/(Gs
center*t)≦0.5
[式4]
0.2≦(V
{012}<121>+V
{111}<112>)/(V
{001}<310>+V
{139}<310>)≦0.8
(式1および式2中、[Al]、[Mn]、[Si]、[P]、[Sn]および[Sb]は、それぞれ、Al、Mn、Si、P、SnおよびSbの含有量(重量%)を示し、
式3中、tは無方向性電磁鋼板の厚さ(mm)を示し、Gs
surfaceは無方向性電磁鋼板の厚さ方向を基準として0~t/4または3t/4~tでの平均結晶粒径(μm)を示し、Gs
centerは無方向性電磁鋼板の厚さ方向を基準としてt/4超過、3t/4未満での平均結晶粒径(μm)を示し、式4中、V
{012}<121>、V
{111}<112>、V
{001}<310>およびV
{139}<310>は、それぞれ、{012}<121>、{111}<112>、{001}<310>、{139}<310>で15°以内の方位を有する集合組織の体積分率を示す。)
【請求項2】
重量%で、Si:
3.12~4.0%、Al:0.1~1.5%、Mn:0.1~1.5%、C:0.005%以下(0%を除く)、N:0.005%以下(0%を除く)、Ti:0.005%以下(0%を除く)、S:0.001~0.005%、P:0.1%以下(0%を除く)、SnおよびSbのうちの1種以上を0.02~0.2%、さらにCu:0.05%以下(0%を除く)、Ni:0.05%以下(0%を除く)、Cr:0.05%以下(0%を除く)、Zr:0.01%以下(0%を除く)、Mo:0.01%以下(0%を除く)およびV:0.01%以下(0%を除く)のうちの1種以上を含み、残部はFeおよび不可避な不純物からなり、下記式1および式2を満たすスラブを加熱する段階、
前記スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、
前記熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階、および
前記冷延板を下記式5を満たすように冷延板焼鈍する段階、を含み、
前記冷延板焼鈍する段階で、850~1050℃の均熱温度で冷延板焼鈍し、
前記冷延焼鈍された鋼板は、下記式3および式4を満たすことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
[式1]
0.9≦[Al]+[Mn]≦2.1
[式2]
0.2≦([Si]+[Al]+[Mn]/2)*([P]+[Sn]+[Sb])≦0 .4
[式3]
0.29≦(Gs
center-Gs
surface)/(Gs
center*t)≦0.5
[式4]
0.2≦(V
{012}<121>+V
{111}<112>)/(V
{001}<310>+V
{139}<310>)≦0.8
[式5]
0.2≦v/s≦0.6
(式1および式2中、[Al]、[Mn]、[Si]、[P]、[Sn]および[Sb]は、それぞれ、Al、Mn、Si、P、SnおよびSbの含有量(重量%)を示し、
式3中、tは無方向性電磁鋼板の厚さ(mm)を示し、Gs
surfaceは無方向性電磁鋼板の厚さ方向を基準として0~t/4または3t/4~tでの平均結晶粒径(μm)を示し、Gs
centerは無方向性電磁鋼板の厚さ方向を基準としてt/4超過、3t /4未満での平均結晶粒径(μm)を示し、
式4中、V
{012}<121>、V
{111}<112>、V
{001}<310>およびV
{139}<310>は、それぞれ、{012}<121>、{111}<112>、{001}<310>、{139}<310>で15°以内の方位を有する集合組織の体積分率を示し、
式5中、vは650~750℃の開始温度から前記冷延板均熱温度までの平均加熱速度(℃/sec)を意味し、sは前記冷延板均熱温度で維持する均熱時間(sec)を意味する。)
【請求項3】
前記熱延板を製造する段階後、
前記熱延板を950~1150℃で熱延板焼鈍する段階、をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無方向性電磁鋼板およびその製造方法に係り、より詳しくは、鉄損が低く、板厚さ方向に結晶粒の大きさを制御して磁性に優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無方向性電磁鋼板は、モータ、発電機などの回転機器と小型変圧機などの電気機器で鉄心用材料として使用され、機械的エネルギーを電気的エネルギーに、または電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換するか、電気的エネルギー間の相互変換に重要な役割を果たす。無方向性電磁鋼板は、このようにエネルギー変換システムで電気機器のエネルギー効率を決定する非常に重要な素材であるため、エネルギー保存および節減のためには、より優れた特性を有する無方向性電磁鋼板、特に鉄損に優れた無方向性電磁鋼板の開発が持続的に要求されており、今後も継続的に特性向上の検討がなされるべき課題である。
【0003】
無方向性電磁鋼板の代表的な磁気的特性は、鉄損と磁束密度であるが、鉄損は電気機器の使用中に損失されるエネルギーに関連しており、磁束密度は電気機器のトルクに関連している。最近、電動機および発電機に要求される高効率特性のためには、低鉄損特性が非常に重要であるため、より低い鉄損特性を有する無方向性電磁鋼板が要求されている。鉄損を低くするための効率的な方法としては、無方向性電磁鋼板に添加される重要な必須合金元素であると共に、比抵抗が大きい元素であるSi添加量を増加させたり鋼板の厚さを薄くすることにある。電磁鋼板で鉄損は、履歴損失と渦流損失に分けられるが、このような方法は、渦流損失を低減させるのに非常に効果的であるといえる。
しかし、厚さが薄い鋼板は、加工性が落ちて加工費が増加するという短所がある。したがって、最高級製品では比抵抗増加を通じた追加的な鉄損低減のためにSi、Al、Mn添加量を増加させている。しかし、Si、Al、Mn添加量が増加するとして鉄損が無条件で減少することではなく、最適の組み合わせで制御されなければならない。また、Si、Al、Mn制御のみで鉄損が画期的に減少するとはいえないため、鉄損を画期的に向上させることができる技術は容易ではない。
【0004】
一方、モータや発電機に使用される無方向性電磁鋼板の場合、回転する電気機器の鉄心素材として使用されるため、圧延方向一方向の特性のみが重要な方向性電磁鋼板とは異なり、全ての方向に均一な特性を有することがよい。したがって、圧延方向と圧延垂直方向の鉄損偏差が小さいことが好まれるが、商業的な方法で生産される無方向性電磁鋼板は、ある程度の鉄損偏差を有しており、この偏差を低くする方法もまだ容易ではない状況である。
したがって、鉄損を向上させるために、REMなど特殊な添加元素を活用して集合組織を改善して磁気的性質を向上させる技術などが試みられている。しかし、このような技術は鉄損を向上させるために開発されたが、全て製造原価の上昇を招いたり、大量生産の困難さを伴うため、鉄損特性に優れると共に、商業的な生産が容易な技術開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的とするところは、Si、Al、Mn、P、Sn、Sb含有量の関係式を通じて成分を制御し、製造方法において平均加熱速度と均熱温度での均熱時間の比を通じて工程条件を制御することによって、磁性が向上し、集合組織特性が改善された無方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:1.5~4.0%、Al:0.1~1.5%、Mn:0.1~1.5%、C:0.005%以下(0%を除く)、N:0.005%以下(0%を除く)、Ti:0.005%以下(0%を除く)、S:0.001~0.005%、P:0.1%以下(0%を除く)、Sn、およびSbのうちの1種以上:0.02~0.2%、残部Feおよび不可避な不純物からなり、下記式1、式2および式3を満たすことを特徴とする。
[式1]
0.9≦[Al]+[Mn]≦2.1
[式2]
0.2≦([Si]+[Al]+[Mn]/2)*([P]+[Sn]+[Sb])≦0.4
[式3]
(Gscenter-Gssurface)/(Gscenter*t)≦0.5
(式1および式2で、[Al]、[Mn]、[Si]、[P]、[Sn]および[Sb]は、それぞれ、Al、Mn、Si、P、SnおよびSbの含有量(重量%)を示し、式3中、tは無方向性電磁鋼板の厚さ(mm)を示し、Gssurfaceは無方向性電磁鋼板の厚さ方向を基準として0~t/4または3t/4~tでの平均結晶粒径(μm)を示し、Gscenterは無方向性電磁鋼板の厚さ方向を基準としてt/4超過、3t/4未満での平均結晶粒径(μm)を示す。)
【0007】
前記無方向性電磁鋼板は、Cu:0.05%以下(0%を除く)、Ni:0.05%以下(0%を除く)、Cr:0.05%以下(0%を除く)、Zr:0.01%以下(0%を除く)、Mo:0.01%以下(0%を除く)およびV:0.01%以下(0%を除く)のうちの1種以上をさらに含むことができる。
無方向性電磁鋼板は、下記式4を満たすことがよい。
[式4]
0.2≦(V{012}<121>+V{111}<112>)/(V{001}<310>+V{139}<310>)≦0.8
(式4中、V{012}<121>、V{111}<112>、V{001}<310>およびV{139}<310>は、それぞれ、{012}<121>、{111}<112>、{001}<310>、{139}<310>で15°以内の方位を有する集合組織の体積分率を示す。)
【0008】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板の製造方法は、重量%で、Si:1.5~4.0%、Al:0.1~1.5%、Mn:0.1~1.5%、C:0.005%以下(0%を除く)、N:0.005%以下(0%を除く)、Ti:0.005%以下(0%を除く)、S:0.001~0.005%、P:0.1%以下(0%を除く)、Sn、Sbのうちの1種以上:0.02~0.2%、残部Feおよび不可避な不純物からなり、下記式1および式2を満たすスラブを加熱する段階、前記スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、前記熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階、および前記冷延板を下記式5を満たすように冷延板焼鈍する段階、を含むことを特徴とする。
[式1]
0.9≦[Al]+[Mn]≦2.1
[式2]
0.2≦([Si]+[Al]+[Mn]/2)*([P]+[Sn]+[Sb])≦0.4
[式5]
0.2≦v/s≦0.6
(式1および式2中、[Al]、[Mn]、[Si]、[P]、[Sn]および[Sb]は、それぞれ、Al、Mn、Si、P、SnおよびSbの含有量(重量%)を示し、式5中、vは650~750℃の開始温度から冷延板均熱温度までの平均加熱速度(℃/sec)を意味し、sは冷延板均熱温度で維持する均熱時間(sec)を意味する。)
【0009】
前記スラブは、Cu:0.05%以下(0%を除く)、Ni:0.05%以下(0%を除く)、Cr:0.05%以下(0%を除く)、Zr:0.01%以下(0%を除く)、Mo:0.01%以下(0%を除く)およびV:0.01%以下(0%を除く)のうちの1種以上をさらに含むことができる。
前記冷延板焼鈍する段階で、850~1050℃の均熱温度で冷延板焼鈍することが好ましい。
前記熱延板を製造する段階後、前記熱延板を950~1150℃で熱延板焼鈍する段階、をさらに含むことがよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、本発明による無方向性電磁鋼板およびその製造方法は、Si、Al、Mn、P、Sn、Sb含有量の関係式を通じて成分を制御し、製造方法において平均加熱速度と均熱温度での均熱時間の比を通じて工程条件を制御することによって、磁性が向上する効果を期待することができる。
また、磁性に有利な集合組織の改善効果と厚さ方向を基準として表面部と中心部間の平均結晶粒径の偏差が少なくなる効果を期待することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1、第2および第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これら用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためだけに使用される。したがって、以下で記述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションとして言及され得る。
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数の形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
ある部分が他の部分の「上に」あると言及する場合、これは他の部分の直上にあるか、またはその間に他の部分が介され得る。対照的に、ある部分が他の部分の「直上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介されない。
【0012】
異なって定義していないが、ここで使用される技術用語および科学用語を含む全ての用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が一般に理解する意味と同一の意味を有する。通常使用される辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有するものに追加解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味に解釈されない。
また、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
本発明の一実施例で追加元素をさらに含むことの意味は、追加元素の追加量の分、残部である鉄(Fe)を代替して含むことを意味する。
以下、本発明の実施例について本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。しかし、本発明は、多様な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。
【0013】
無方向性電磁鋼板
本発明の一実施例では、無方向性電磁鋼板内の組成、添加成分であるSi、Al、Mnの範囲を最適化し、同時にP、SnおよびSbのような結晶粒界偏析元素を調節して磁性を顕著に向上させることができる。
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、重量%で、Si:1.5~4.0%、Al:0.1~1.5%、Mn:0.1~1.5%、C:0.005%以下(0%を除く)、N:0.005%以下(0%を除く)、Ti:0.005%以下(0%を除く)、S:0.001~0.005%、P:0.1%以下(0%を除く)、Sn、Sbのうちの1種以上:0.02~0.2%、残部Feおよび不可避な不純物を含む。
【0014】
まず、下記では無方向性電磁鋼板の成分限定の理由を説明する。
Si:1.5~4.0重量%
シリコン(Si)は、材料の比抵抗を増加させて鉄損中の渦流損失を低める役割を果たし、過度に少なく添加される場合、鉄損改善効果が足りないことがある。反面、過度に多く添加される場合、磁束密度を減少させ、圧延性を低下させることがある。したがって、前述した範囲でシリコン(Si)を添加すること好ましい。
【0015】
Al:0.1~1.5重量%
アルミニウム(Al)は、Siと共に材料の比抵抗を増加させて鉄損を低める役割を果たし、磁気異方性を減少させて圧延方向と圧延垂直方向の磁性偏差を減少させる元素である。過度に少なく添加される場合、微細な窒化物を形成し、圧延方向と圧延垂直方向の鉄損偏差を増加させることがある。反面、過度に多く添加される場合、窒化物が過多に形成されて磁束密度を大きく低下させることがある。したがって、前述した範囲でアルミニウム(Al)を添加することが好ましい。
【0016】
Mn:0.1~1.5重量%
マンガン(Mn)は、材料の比抵抗を増加させて鉄損を低める役割を果たし、集合組織を向上させる元素である。少なく添加される場合、鉄損改善効果が足りないことがある。反面、過度に多く添加される場合、MnSが過多に析出され、磁束密度が大きく低下することがある。したがって、前述した範囲でマンガン(Mn)を添加することが好ましい。
【0017】
C:0.005重量%以下
炭素(C)は、Tiなどの元素と結合して炭化物を生成するため、過度に多く添加される場合、磁性を低下させ、電気製品として加工以降、使用時に磁気時効により鉄損を高めることがある。したがって、前述した範囲で炭素(C)を添加することが好ましい。
【0018】
N:0.005重量%以下
窒素(N)は、Al、Tiなどの元素と強く結合して窒化物を形成するため、過度に多く添加される場合、結晶粒成長を抑制して磁性を悪化させることがある。したがって、前述した範囲で窒素(N)を添加することが好ましい。
Ti:0.005重量%以下
【0019】
チタニウム(Ti)は、C、Nと結合して炭化物および窒化物を形成するため、過度に多く添加される場合、結晶粒成長を抑制し、炭化物と窒化物により集合組織がよくなくなり、磁性が悪くなることがある。したがって、前述した範囲でチタニウム(Ti)を添加することが好ましい。
【0020】
S:0.001~0.005重量%
硫黄(S)は、磁気的特性に有害なMnS、CuSおよび(Cu、Mn)Sなどの硫化物を形成する元素である。過度に少なく添加される場合、集合組織の形成に不利で磁性が低下することがある。反面、過度に多く添加される場合、微細な硫化物の増加により磁性が低下することがある。したがって、前述した範囲で硫黄(S)を添加することが好ましい。
【0021】
P:0.1重量%以下
リン(P)は、比抵抗を増加させて鉄損を低める役割を果たし、結晶粒界に偏析して集合組織を向上させる元素である。過度に多く添加される場合、結晶粒成長を抑制し、冷間圧延性を低下させることがある。したがって、前述した範囲でリン(P)を添加することが好ましい。
【0022】
Sn、Sbのうちの1種以上:0.02~0.2重量%
スズ(Sn)およびアンチモン(Sb)は、結晶粒界偏析元素であって、結晶粒界を通じた窒素の拡散を抑制し、集合組織であるγファイバー(gamma fiber)の形成を抑制して磁気的特性を向上させる元素である。過度に少なく添加される場合、磁気的特性の向上効果が微々であり、過度に多く添加される場合、結晶粒成長を抑制して磁性を低下させ、圧延性および表面品質を低下させることがある。したがって、前述した範囲でスズ(Sn)、アンチモン(Sb)のうちの1種以上を添加することができる。スズ(Sn)またはアンチモン(Sb)を単独で含む場合、Snを0.02~0.2重量%、Sbを0.02~0.2重量%含むことができる。スズ(Sn)またはアンチモン(Sb)を同時に含む場合、SnおよびSbの合計量で0.02~0.2重量%含むことが好ましい。
【0023】
不純物元素
前記の元素以外にもCu、Ni、Cr、Zr、MoおよびVなどの不可避に混入される不純物元素が含まれてもよい。Cu、Ni、Crの場合、不純物元素と反応して微細な硫化物、炭化物および窒化物を形成して磁性に有害な影響を与えることがあり、Zr、Mo、Vの場合、強力な炭窒化物の形成元素であるため、Cu:0.05重量%以下、Ni:0.05重量%以下、Cr:0.05重量%以下、Zr:0.01重量%以下、Mo:0.01重量%以下、V:0.01重量%以下に管理されなければならない。
前記組成以外に残りはFeおよびその他不可避な不純物で組成される。
【0024】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、下記式1を満たす。
[式1]
0.9≦[Al]+[Mn]≦2.1
(式1中、[Al]および[Mn]は、それぞれ、AlおよびMnの含有量(重量%)を示す。)
AlおよびMnは、全て比抵抗を増加させて鉄損を低める役割を果たす元素である。そのために、その合計量でAlおよびMnの含有量を管理することができる。一般に、鉄損は低く、磁束密度は高いスペックの無方向性電磁鋼板の製造のためには、適正量以上のSi、Al、Mnの添加が必要であるが、[Al]+[Mn]が0.9未満である場合、相対的にSiの含有量が高くなるため、圧延性を低下させて生産性を落とす点から致命的な問題になり得る。反面、2.1を超える場合、飽和磁束密度の減少により磁束密度が急激に減少することがある。
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、下記式2を満たす。
[式2]
0.2≦([Si]+[Al]+[Mn]/2)*([P]+[Sn]+[Sb])≦0.4
(式2中、[Al]、[Mn]、[Si]、[P]、[Sn]および[Sb]は、それぞれ、Al、Mn、Si、P、SnおよびSbの含有量(重量%)を示す。)
【0025】
Si、Al、Mnは、無方向性電磁鋼板の鉄損を減少させるために添加される合金元素であり、低鉄損の特性のためには一定量以上必須で添加されなければならない。しかし、無方向性電磁鋼板の磁性は低鉄損の特性も重要である分、高磁束密度の特性も重要である。
Si、Al、Mn添加により低鉄損特性を達成することができるが、磁束密度の低下を避けることができず、高磁束密度の特性は達成しにくいため、集合組織改善を通じた鉄損および磁束密度の同時向上が必要である。
したがって、そのために前記の式2を通じて粒界偏析元素として集合組織を向上させることができるP、SnおよびSbを添加するが、P、SnおよびSbの含有量は磁束密訴と関連した元素であるSi、Al、Mnの含有量と共に考慮されなければならない。これによって、低鉄損特性と高磁束密度特性を同時に確保することが可能である。
([Si]+[Al]+[Mn]/2)*([P]+[Sn]+[Sb])が0.2未満である場合、P、SnおよびSbの含有量が相対的に少なくて集合組織の改善効果が大きくないことから、高磁束密度の特性を確保することが難しいこともある。
【0026】
反面、([Si]+[Al]+[Mn]/2)*([P]+[Sn]+[Sb])が0.4を超える場合、P、SnおよびSbの含有量が相対的に多くて結晶粒成長を過度に抑制させるため、結晶粒が微細化される。そのために、低鉄損特性を確保することが難しいこともある。
【0027】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、下記式3を満たす。
[式3]
(Gscenter-Gssurface)/(Gscenter*t)≦0.5(mm-1)
(式3中、tは無方向性電磁鋼板の厚さ(mm)を示し、Gssurfaceは無方向性電磁鋼板の厚さ方向を基準として0~t/4または3t/4~tでの平均結晶粒径(μm)を示し、Gscenterは無方向性電磁鋼板の厚さ方向を基準としてt/4超過、3t/4未満での平均結晶粒径(μm)を示す。)
例えば、Gssurfaceは無方向性電磁鋼板の厚さをtという時、無方向性電磁鋼板の下面からt/4の間に存在する結晶粒の粒径または3t/4から無方向性電磁鋼板の上面の間に存在する結晶粒の粒径を意味し得る。つまり、無方向性電磁鋼板の表面部の平均結晶粒径を意味し得る。Gscenterはt/4超過、3t/4未満になる範囲に存在する結晶粒の粒径を意味し得る。つまり、無方向性電磁鋼板の中心部の平均結晶粒径を意味し得る。
【0028】
(Gscenter-Gssurface)/(Gscenter*t)の数値が低いほど、GscenterとGssurfaceの偏差が小さくて鋼板の厚さ方向での表面部と中心部の結晶粒の大きさが均一であることを意味し得る。
【0029】
鉄損は、最適の結晶粒の大きさで履歴損失と渦流損失の合計が最小になるが、平均の結晶粒の大きさは同一であるとしても、厚さ方向の結晶粒径偏差が大きい場合、結晶粒径偏差が小さく、均一な場合に比べて鉄損が増加するため、厚さ方向での表面部と中心部の結晶粒の大きさは偏差が小さいほどよい。
(Gscenter-Gssurface)/(Gscenter*t)≦0.5(mm-1)を満たすために、無方向性電磁鋼板の製造工程で冷延板焼鈍時、加熱速度および均熱時間の制御を通じて集合組織をより改善させることができる。これについては後述する。
【0030】
本発明の一実施例による無方向性電磁鋼板は、下記式4を満たす。
[式4]
0.2≦(V{012}<121>+V{111}<112>)/(V{001}<310>+V{139}<310>)≦0.8
(式4中、V{012}<121>、V{111}<112>、V{001}<310>およびV{139}<310>は、それぞれ、{012}<121>、{111}<112>、{001}<310>、{139}<310>で15°以内の方位を有する集合組織の体積分率を示す。)
【0031】
集合組織{012}<121>および{111}<112>は磁化が難しい方位であるため、磁性に不利な集合組織であり、{001}<310>および{139}<310>は、それぞれ、<100>//ND-fiberの一部分であるか、または類似の方位として磁性に有利な集合組織である。したがって、(V{012}<121>+V{111}<112>)/(V{001}<310>+V{139}<310>)が低いほど集合組織が改善されたことを意味する。
成分の含有量制御により磁性に有利な集合組織{001}<310>および{139}<310>の比率を増加させることができる。(V{012}<121>+V{111}<112>)/(V{001}<310>+V{139}<310>)が0.2未満である場合、集合組織の改善効果が大きくなく、0.8を超える場合、集合組織が劣位になって改善効果がないといえる。
【0032】
無方向性電磁鋼板の製造方法
重量%で、Si:1.5~4.0%、Al:0.1~1.5%、Mn:0.1~1.5%、C:0.005%以下(0%を除く)、N:0.005%以下(0%を除く)、Ti:0.005%以下(0%を除く)、S:0.001~0.005%、P:0.1%以下(0%を除く)、Sn、Sbのうちの1種以上:0.02~0.2%、残部Feおよび不可避な不純物を含み、前記式1および式2を満たすスラブを加熱する段階、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、熱延板を冷間圧延して冷延板を製造する段階および冷延板を式5を満たすように冷延板焼鈍する段階を含む。
【0033】
以下、各段階別に具体的に説明する。
まず、スラブを加熱する。スラブ内の各組成の添加比率を限定した理由は、前述した無方向性電磁鋼板の組成限定の理由と同一であるため、繰り返される説明を省略する。後述する熱間圧延、熱延板焼鈍、冷間圧延、冷延板焼鈍などの製造過程でスラブの組成は実質的に変動しないため、スラブの組成と無方向性電磁鋼板の組成が実質的に同一である。
また、スラブの組成と無方向性電磁鋼板の組成が実質的に同一であるため、スラブは前記の式1および式2を満たす。式1および式2を満たすことによる効果は前記の説明で代わりをする。
【0034】
スラブを加熱炉に装入して1200℃以下に加熱する。加熱温度が1200℃超過である場合、スラブ内に存在するAlN、MnSなどの析出物が再固溶された後、熱間圧延時、微細析出されて結晶粒成長を抑制し、磁性を低下させるため、加熱温度を1200℃以下に制限する。
加熱されたスラブを熱間圧延して熱延板として製造する。熱間圧延時、仕上圧延での仕上げの圧延は、板形状矯正のために最終圧下率を20%以下に実施する。その後、熱延板を700℃下で巻取り、空気中で冷却することができる。
【0035】
次に、熱延板を熱延板焼鈍することができる。この時、熱延板焼鈍温度は950~1150℃であってもよい。熱延板焼鈍温度が950℃未満であれば組織が成長しないか、微細に成長して磁性に有利な集合組織を得るのが容易でなく、焼鈍温度が1150℃を超えれば結晶粒が過度に成長し、板の表面欠陥が過多になり得る。
次に、熱延板を酸洗し、所定の板厚さになるように冷間圧延する。最終厚さが0.10~0.70mmの厚さになるように冷間圧延して冷延板を製造することができる。必要な場合、磁性改善のために1次冷間圧延と中間焼鈍後、2次冷間圧延することができ、最終圧下率は50~95%の範囲にすることができる。
【0036】
冷延板焼鈍する段階で、下記式5を満たすように冷延板焼鈍する。
[式5]
0.2≦v/s≦0.6
(式5中、vは650~750℃の開始温度から冷延板均熱温度までの平均加熱速度(℃/sec)を意味し、sは冷延板均熱温度で維持する均熱時間(sec)を意味する。)
冷延板焼鈍時、発生する微細組織および集合組織変化を決定する重要な冶金学的な変化は再結晶および結晶粒成長である。冷間圧延により変形された組織の焼鈍時、再結晶および結晶粒成長に重要な影響を与える因子としては、平均加熱速度、均熱温度、均熱温度での均熱時間などが挙げられる。
【0037】
無方向性電磁鋼板では鉄損が最小化される適正の結晶粒の大きさが存在する。これは結晶粒の大きさが増加するほど、鉄損中、履歴損失は減少するが、渦流損失は増加するためである。
したがって、無方向性電磁鋼板全体の平均結晶粒径も重要であるが、鋼板厚さ方向への結晶粒の大きさの均一性も鉄損において回転する電気機器の鉄心素材として使用されることから、全ての方向に均一な特性を持たなければならないため、制御されなければならない非常に重要な因子である。このために、冷延板焼鈍時、加熱速度および均熱温度での均熱時間が適正な条件に制御されれば厚さ方向への結晶粒の大きさの均一性を確保することができ、集合組織も冷延板焼鈍時、平均加熱速度および均熱温度での均熱時間により大きく影響を受けるため、この二つの条件を適切に制御する場合、磁性が画期的に向上することができる。
【0038】
v/sが0.2未満である場合、平均加熱速度が過度に遅いか、焼鈍時、均熱時間が過
度に長いため、磁性に不利な集合組織の分率が高くなることがある。
v/sが0.6を超える場合、加熱速度が過度に速いか、均熱時間が過度に短くて結晶粒成長が円滑でないため、結晶粒微細化により磁性が低下することがある。
したがって、0.2≦v/s≦0.6を満たす場合、無方向性電磁鋼板の(Gscenter-Gssurface)/(Gscenter*t)が0.5(mm-1)以下になるようにできる。
【0039】
最終冷間圧延された冷延板は、冷延板焼鈍を実施する。冷延板焼鈍時、均熱温度は850~1050℃になることができる。均熱温度が過度に低ければ再結晶が十分に発生せず、均熱温度が過度に高ければ結晶粒の急激な成長が発生して磁束密度と高周波鉄損が低下することがある。
以下、本発明の具体的な実施例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の具体的な一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
【実施例】
【0040】
[実施例1]
真空溶解を通じて下記表1のように組成されるスラブを製造してSi、Mn、Al、P、Sn、Sbの量を変化させて成分元素、成分添加量関係および冷延板焼鈍時、700℃から均熱温度までの平均加熱速度v(℃/sec)と均熱温度での均熱時間s(sec)の関係が磁性に及ぼす影響を確認した。
各スラブは1200℃で加熱し、2.5mmの厚さに熱間圧延した後、巻き取った。空気中で巻取り、冷却した熱延鋼板を1060℃で熱延板焼鈍および酸洗した後、0.35mm厚さに冷間圧延し、最終的に冷延板焼鈍を実施した。
この時、冷延板焼鈍目標温度は1000℃で実施し、700℃から均熱温度までの平均加熱速度v(℃/sec)と均熱温度1000℃での均熱時間s(sec)をそれぞれ制御してv/sの変化が磁性に及ぼす影響を確認した。
【0041】
それぞれの試片に対してEBSD、X-ray pole figure testを通じて集合組織の体積分率を測定し、板厚さ方向に中心部および表面部のgrain sizeをintercept methodを使用して測定し、鉄損(W15/50)と磁束密度(B50)も測定してその結果を下記表2に示した。
【0042】
【0043】
【0044】
前記表1でそれぞれの数値は重量%を意味する。
前記表2で式1は[Al]+[Mn]の数値を意味し、式2は([Si]+[Al]+[Mn]/2)*([P]+[Sn]+[Sb])の数値を意味し、[Al]、[Mn]、[Si]、[P]、[Sn]および[Sb]は、それぞれ、Al、Mn、Si、P、SnおよびSbの含有量(重量%)を示す。
前記表2で式3は(Gscenter-Gssurface)/(Gscenter*t)の数値を意味する。tは無方向性電磁鋼板の厚さ(mm)を示し、Gssurfaceは無方向性電磁鋼板の厚さ方向を基準として0~t/4または3t/4~tでの平均結晶粒径(μm)を示し、Gscenterは無方向性電磁鋼板の厚さ方向を基準としてt/4超過、3t/4未満での平均結晶粒径(μm)を示す。前記表2の式3で括弧内の数値は左側からGscenterとGssurfaceを示す。
【0045】
実施例1でtは0.35mmであるため、Gssurfaceは無方向性電磁鋼板の下面を厚さが0である地点とする時、下面から上方に0.0875mmの厚さまでの領域または0.2625mmの厚さから上方に上面までの領域内の平均結晶粒径を示す。Gscenterは無方向性電磁鋼板の0.0875mm超過、0.2625mm未満までの領域内の平均結晶粒径を示す。
前記表2で式4は(V{012}<121>+V{111}<112>)/(V{001}<310>+V{139}<310>)の数値を意味し、V{012}<121>、V{111}<112>、V{001}<310>およびV{139}<310>は、それぞれ、集合組織{012}<121>、{111}<112>、{001}<310>、{139}<310>の体積分率を示す。
【0046】
集合組織を分析するための方法としては、X-ray pole figure testおよびEBSD testを実施した。冷延板焼鈍後の試片で圧延方向に平行な試片の表面を厚さの3/4tになる部分まで研磨後、EBSD測定およびX-ray回折分析器で(110)、(200)、(211)pole figureを測定し、その結果、{012}<121>、{111}<112>、{001}<310>、{139}<310>集合組織の分率(volume fraction)V{012}<121>、V{111}<112>、V{001}<310>、V{139}<310>を計算した。結晶粒の大きさは線分法、面積法など通常使用される方法で測定した。
【0047】
前記表2で式5はv/sの数値を意味する。vは650~750℃の開始温度から冷延板均熱温度までの平均加熱速度(℃/sec)を意味し、sは冷延板均熱温度で維持する均熱時間(sec)を意味する。前記表2の式5で括弧内の数値は左側からvとsを示す。
前記表2で鉄損(W15/50)は50Hz周波数で1.5Teslaの磁束密度が誘起された時の圧延方向と圧延垂直方向の平均損失(W/kg)であり、磁束密度(B50)は5000A/mの磁場を付加した時、誘導される磁束密度の大きさ(Tesla)である。
【0048】
鋼の成分範囲と式1、式2、式5を満たす発明例であるA1、A2、A5、A8、A10、A11は、鉄損と磁束密度が非常に優秀に示された。厚さ方向の結晶粒偏差が0.5以下に小さく、集合組織の改善効果も優秀に示された。
A3は鋼の成分範囲を満たさず、鉄損と磁束密度が発明例よりよくなく、A4は式2を満たさず、鉄損と磁束密度が発明例よりよくなかった。A6は鋼の成分範囲および式5を満たさず、鉄損と磁束密度が発明例よりよくなく、A7は式1および式2を満たしたにも拘らず製造過程で式5を満たさず、厚さ方向の結晶粒偏差が0.5を超えた。
A9は式2および式5を満たさず、鉄損と磁束密度が発明例よりよくなかった。A12は式1を満たさず、鉄損と磁束密度が発明例よりよくなかった。
【0049】
[実施例2]
真空溶解を通じて下記表3のように組成されるスラブを製造してSi、Mn、Al、P、Sn、Sbの量を変化させて成分元素、成分添加量関係および冷延板焼鈍時、700℃から均熱温度までの平均加熱速度v(℃/sec)と均熱温度での均熱時間s(sec)の関係が磁性に及ぼす影響を確認してみようとした。
各スラブは1200℃で加熱し、2.7mmの厚さに熱間圧延した後、巻き取った。空気中で巻取り、冷却した熱延鋼板を1000℃で熱延板焼鈍および酸洗した後、0.50mm厚さに冷間圧延し、最終的に冷延板焼鈍を実施した。
この時、冷延板焼鈍目標温度は1020℃で実施し、700℃から均熱温度までの平均加熱速度v(℃/sec)と均熱温度1020℃での均熱時間s(sec)をそれぞれ制御してv/sの変化が磁性に及ぼす影響を確認した。
【0050】
それぞれの試片に対してEBSD、X-ray pole figure testを通じて集合組織の体積分率を測定し、板厚さ方向に中心部および表面部のgrain sizeをintercept methodを使用して測定し、鉄損(W15/50)と磁束密度(B50)も測定してその結果を下記表4に示した。
【0051】
【0052】
【表4】
前記表3でそれぞれの数値は重量%を意味する。
【0053】
前記表4で式1は[Al]+[Mn]の数値を意味し、式2は([Si]+[Al]+[Mn]/2)*([P]+[Sn]+[Sb])の数値を意味し、[Al]、[Mn]、[Si]、[P]、[Sn]および[Sb]は、それぞれ、Al、Mn、Si、P、SnおよびSbの含有量(重量%)を示す。
前記表4で式3は(Gscenter-Gssurface)/(Gscenter*t)の数値を意味する。tは無方向性電磁鋼板の厚さ(mm)を示し、Gssurfaceは無方向性電磁鋼板の厚さ方向を基準として0~t/4または3t/4~tでの平均結晶粒径(μm)を示し、Gscenterは無方向性電磁鋼板の厚さ方向を基準としてt/4超過、3t/4未満での平均結晶粒径(μm)を示す。前記表4の式3で括弧内の数値は左側からGscenterとGssurfaceを示す。
【0054】
実施例2でtは0.50mmであるため、Gssurfaceは無方向性電磁鋼板の下面を厚さが0である地点とする時、下面から上方に0.125mmの厚さまでの領域または0.375mmの厚さから上方に上面までの領域内の平均結晶粒径を示す。Gscenterは無方向性電磁鋼板の0.125mm超過、0.375mm未満までの領域内の平均結晶粒径を示す。
前記表4で式4は(V{012}<121>+V{111}<112>)/(V{001}<310>+V{139}<310>)の数値を意味し、V{012}<121>、V{111}<112>、V{001}<310>およびV{139}<310>は、それぞれ、集合組織{012}<121>、{111}<112>、{001}<310>、{139}<310>の体積分率を示す。
【0055】
集合組織を分析するための方法としては、X-ray pole figure testおよびEBSD testを実施した。冷延板焼鈍後の試片で圧延方向に平行な試片の表面を厚さの3/4tになる部分まで研磨後、EBSD測定およびX-ray回折分析器で(110)、(200)、(211)pole figureを測定し、その結果、{012}<121>、{111}<112>、{001}<310>、{139}<310>集合組織の分率(volume fraction)V{012}<121>、V{111}<112>、V{001}<310>、V{139}<310>を計算した。結晶粒の大きさは線分法、面積法など通常使用される方法で測定した。
【0056】
前記表4で式5はv/sの数値を意味する。vは650~750℃の開始温度から冷延板均熱温度までの平均加熱速度(℃/sec)を意味し、sは冷延板均熱温度で維持する均熱時間(sec)を意味する。前記表4の式5で括弧内の数値は左側からvとsを示す。
前記表4で鉄損(W15/50)は50Hz周波数で1.5Teslaの磁束密度が誘起された時の圧延方向と圧延垂直方向の平均損失(W/kg)であり、磁束密度(B50)は5000A/mの磁場を付加した時、誘導される磁束密度の大きさ(Tesla)である。
【0057】
鋼の成分範囲と式1および式2、式5を満たす発明例であるB1、B3、B4、B6、B7、B10は、鉄損と磁束密度が非常に優秀に示された。厚さ方向の結晶粒偏差が0.5以下に小さく、集合組織も改善効果も優秀に示された。
B2は鋼の成分範囲および式1を満たさず、鉄損と磁束密度が発明例よりよくなく、B5は式1および式2を満たしたにも拘らず、製造過程で式5を満たさず、厚さ方向の結晶粒偏差が0.5を超えた。
B8は鋼の成分範囲、式1および式2を満たさず、鉄損と磁束密度が発明例よりよくなかった。B9は式2および式5を満たさず、厚さ方向の結晶粒偏差が0.5を超え、鉄損と磁束密度が発明例よりよくなく、B11は式1および式2を満たさず、鉄損と磁束密度が発明例よりよくなかった。
B12は式1および式2を満たしたにも拘らず、製造過程で式5を満たさず、厚さ方向の結晶粒偏差が0.5を超えた。
【0058】
本発明は、前記実施形態および/または実施例に限定されるのではなく、互いに異なる多様な形態に製造可能であり、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に実施可能であることを理解できるはずである。したがって、以上で記述した実施形態および/または実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解しなければならない。