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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】UV照射器モジュールおよびその使用
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20230411BHJP
   A61L 9/20 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
A61L2/10
A61L9/20
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020542444
(86)(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2018084078
(87)【国際公開番号】W WO2019154542
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-08-06
(31)【優先権主張番号】102018102928.4
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】593129320
【氏名又は名称】ヘレーウス ノーブルライト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Noblelight GmbH
【住所又は居所原語表記】Heraeusstrasse 12-14, Hanau, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス クラフト
(72)【発明者】
【氏名】ズィルケ シュレンプ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ヴィンダリヒ
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0283279(US,A1)
【文献】実開昭60-092535(JP,U)
【文献】特開平03-060734(JP,A)
【文献】特開昭60-116358(JP,A)
【文献】特開2000-107263(JP,A)
【文献】特開平09-201401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/10
A61L 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外照射用のUV照射器モジュール(1)であって、
水密なハウジング(2)を備え、
前記ハウジング(2)は、それぞれ1つの長手方向軸線を有する複数の低圧水銀ランプ(21)を含む照射器アッセンブリ(20)を包囲し、かつ
前記ハウジング(2)は、下面(3)と、上面(4)と、前記下面(3)と前記上面(4)とを互いに結合する少なくとも2つの側壁(5;6)とを有し、さらに前記下面(3)には、ビーム出射窓(7)により閉じられたビーム出射開口を有する、
UV照射器モジュール(1)において、
前記ハウジング(2)内に、冷却空気の供給用の第1の空気案内ゾーン(9;31;41)と、前記第1の空気案内ゾーン(9;31;41)から隔てられた、温められた冷却空気の導出用の第2の空気案内ゾーン(10;32;44)とが形成されており、
前記低圧水銀ランプ(21)の前記長手方向軸線に対して垂直に前記ハウジング(2)を通る横断面において、前記下面(3)から前記上面(4)への視線方向で見て、前記ビーム出射窓(7)、前記照射器アッセンブリ(20)および前記空気案内ゾーン(9;31;41;10;32;44)は、順番に配置されており、
前記第1の空気案内ゾーン(9;31;41)は、供給空気通路(31)を有し、前記供給空気通路(31)は、冷却空気を前記照射器アッセンブリ(20)に供給する少なくとも1つの空気ガイド手段(41)を装備しており、
前記第2の空気案内ゾーン(10;32;44)は、排出空気通路(32)を有し、
前記第1の空気案内ゾーン(9;31;41)および前記第2の空気案内ゾーン(10;32;44)は、前記低圧水銀ランプ(21)の前記長手方向軸線の方向での前記ハウジング(2)の延在寸法の少なくとも一部にわたって、前記下面(3)から前記上面(4)へ向かう視線方向に重畳して延びている、
ことを特徴とするUV照射器モジュール。
【請求項2】
前記低圧水銀ランプ(21)の前記長手方向軸線に対して垂直に前記ハウジング(2)を通る前記横断面において、前記下面(3)から前記上面(4)への視線方向で見て、前記第1の空気案内ゾーン(9;31;41)は、前記第2の空気案内ゾーン(10;32;44)に対して前置されていることを特徴とする、請求項1記載のUV照射器モジュール。
【請求項3】
前記第1の空気案内ゾーン(9;31;41)は、供給空気通路中心軸線を有し、前記第2の空気案内ゾーン(10;32;44)は、排出空気通路中心軸線を有し、前記供給空気通路中心軸線と前記排出空気通路中心軸線とは、互いに平行に、前記ビーム出射窓(7)に対して垂直に延在する1つの共通のハウジング中央平面(M)内を延びていることを特徴とする、請求項1または2記載のUV照射器モジュール。
【請求項4】
前記ハウジング(2)は、前記ハウジング中央平面(M)に関して鏡面対称性を有することを特徴とする、請求項3記載のUV照射器モジュール。
【請求項5】
前記第1の空気案内ゾーン(9;31;41)は、供給空気通路内径を有し、前記第2の空気案内ゾーン(10;32)は、排出空気通路内径を有し、前記排出空気通路内径の、前記供給空気通路内径に対する偏差は、+/-10%未満であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のUV照射器モジュール。
【請求項6】
前記低圧水銀ランプ(21)の前記長手方向軸線に対して垂直に前記ハウジング(2)を通る前記横断面において、前記ハウジング上面(4)は湾曲を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のUV照射器モジュール。
【請求項7】
両前記側壁(5)は、前記上面(4)の前記湾曲に密着し、5~40度の範囲の角度を互いになすことを特徴とする、請求項6記載のUV照射器モジュール。
【請求項8】
前記ビーム出射開口は、周囲を取り巻くように延びる段部を有し、前記段部に前記ビーム出射窓(7)は接着されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載のUV照射器モジュール。
【請求項9】
前記低圧水銀ランプ(21)の前記長手方向軸線は、1つの共通の照射器平面(E2)内を延びており、前記照射器アッセンブリ(20)は、前記照射器平面(E2)から48mmの間隔を置いて測定して、少なくとも100mW/cmのUV照射強度が生じるように設計されていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のUV照射器モジュール。
【請求項10】
前記照射器アッセンブリ(20)は、前記照射器アッセンブリ(20)の、前記ビーム出射窓(7)から背離した側で、少なくとも部分的にリフレクタ(33)により包囲されていることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のUV照射器モジュール。
【請求項11】
前記ハウジング側壁(5)の少なくとも一方は、マーキング(8)が施された可視面を有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のUV照射器モジュール。
【請求項12】
請求項1から11までのいずれか1項記載のUV照射器モジュール(1)の、食物または医薬品用の包装材料の紫外照射用の消毒システムでの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術的背景
本発明は、サブストレート(Substrat)の紫外照射用のUV照射器モジュールであって、水密なハウジングを備え、ハウジングは、それぞれ1つの長手方向軸線を有する複数の低圧水銀ランプを含む照射器アッセンブリを包囲し、かつハウジングは、下面と、上面と、下面と上面とを互いに結合する少なくとも2つの側壁とを有し、さらに下面には、ビーム出射窓により閉じられたビーム出射開口を有する、UV照射器モジュールに関する。
【0002】
さらに本発明は、照射器モジュールの使用に関する。
【0003】
UV照射器モジュールは、例えば空調設備および飲料水設備ならびに食品生産において菌除去(Entkeimung)のために使用される。その際、食品、例えば果物および野菜に対して照射が行われる他、処理時に食品と接触する機械部品、包材、液体、空気および表面に対しても照射が行われる。微生物、例えば病原体、特に細菌またはウイルスは、紫外放射により不活化される。
【0004】
消毒(Desinfektion)と滅菌(Sterilisation)とは、所定のテスト法で求められた菌減少あるいは生存個体数により区別される。消毒とは、菌減少が少なくとも10-5になる場合をいい、滅菌の場合は、生存個体数が少なくとも10の6乗減少すること(10-6)が要求される。菌減少の度合いによらず、ここではかつ以下では、上位概念としての「菌除去」を使用する。
【0005】
菌除去に好適なUV照射器は、例えば水銀蒸気放電ランプであり、水銀蒸気放電ランプは、低圧照射器、中圧照射器または高圧照射器として構成されていることができる。長形のタイプの水銀蒸気放電ランプは、石英ガラスからなる円筒形のランプ管を有し、ランプ管は、内部に配置される2つの電極を有している。ランプ管は、両端部においてガス密に閉鎖、例えばピンチ部により閉鎖されており、ピンチ部には、電極の電気的な接点接続用の電流供給部が通されている。充填ガスは、水銀と、通例、希ガスである。さらにランプ管内には、純粋な水銀または水銀アマルガムで構成され得る、水銀だめがしばしば収容されている。水銀蒸気放電ランプは、254nm(UV-C放射)および場合によっては185nm(VUV放射)のところに特徴的な線を有する発光スペクトルを示す。
【0006】
照射器モジュールは、様々な周囲条件に対する適性に関して、照射器モジュールハウジングが有していなければならない封止の度合い(保護度)についてのガイドラインを基に等級分けされる。この分類は、2桁の特性数字を有するいわゆるIPコード(nternational rotection Code)で行われる。第1の特性数字は、異物、例えば塵埃粒子に対する保護度に関し、第2の特性数字は、水に対する保護度を表している。
【0007】
UV照射器を備える照射器モジュールが、例えば食物用の容器または包装の消毒に使用される場合、照射器モジュールは、塵埃に対して密であるハウジング内に格納されていなければならない。この場合、第1のIP特性数字は、例えば6である。さらにハウジングは、洗浄液体、例えば水、過酸化水素または苛性ソーダの侵入に対する保護を提供しなければならない。このことは、第2の特性数字によって表現され、第2の特性数字は、特にハウジングに設けられるビーム出射窓の封止の特性を表している。ここで、例えば保護度6「暴噴流水に対する保護」を遵守することが求められている場合、要求特性数字は、「IP66」である。
【0008】
従来技術
菌数の減少は、サブストレートに到来する照射線量に依存している。照射線量は、UV照射器モジュールの照射出力と、サブストレートがUV放射に曝されている時間とによって決まる。サブストレートがUV照射器モジュールに沿って動かされるシステムの場合、複数のUV照射器が、1つのUV照射器モジュールにまとめられて、1つの平坦な面状のアッセンブリをなすことで、照射時間の延長が得られる。
【0009】
消毒ステーションを有する消毒システムでの使用のために設計されたこの種のUV照射器モジュールの一実施の形態は、独国実用新案第202017101112号明細書に記載されており、この明細書からは、冒頭で述べた形式のUV照射器モジュールも公知である。
【0010】
金属ハウジング内には、円形の横断面を有するそれぞれ1つの照射器シース管を有する低圧水銀ランプの形態の計8つのUV照射器が配置されている。複数の照射器の長手方向軸線は、平行にかつ1つの共通の照射器平面内を延びているので、全体で1つの面状の照射器-アッセンブリを形成している。
【0011】
金属ハウジングは、上向きに膨らんだハウジング上側部分を有し、ハウジング上側部分には、ハウジング下側部分がねじ止めされており、ハウジング下側部分内には、ビーム出射窓として石英ガラス板が保持されている。石英ガラス板は、シールリングを介して、周囲を取り巻くように延びる段部に載置されており、機械的な押さえによりシールリングに圧接されている。この封止は、例えば食物産業の設備において一般的である暴噴流水による洗浄サイクルに何ら問題なく耐えるので、この照射器-モジュールは、衛生スタンダードIP66下での使用に持久的に好適である。
【0012】
技術的な課題設定
UV照射器モジュールは、少なくとも照射範囲において、サブストレートの照射が、予め決められた最低照射線量で実施されるように、消毒システム内に配置されている。コスト上の観点から、高出力のUV照射器の使用を優先してUV照射器の数をできる限り少なく保とうとする傾向が存在し、それどころかしばしば、スペース上の理由から、このことは要求として存在している。
【0013】
しかし、消毒システムの総合効率は、主に放射野の均一性によって決まる。それというのも、照射強度の局所的な上昇は、通例、害はないが、局所的に減じられた強度は、不十分な処理に至る可能性があり、有害であるからである。それゆえ、高い菌除去効率という意味において、放射強度のできる限り均一な分布が有益である。
【0014】
一方では、提供される小さな構造空間に基づくUV照射器モジュールのコンパクト性についての要求、他方では、UV照射の均一性、ひいては効率についての要求は、それゆえ相反した性質であり、簡単には同時に満たし得ない。
【0015】
さらに、照射器モジュールを食物産業のプロセスで使用する場合には、衛生スタンダード、例えば米国の3A認証(「AAA Hygienic Design」または「3-A Sanitary Standards」)、EHEDGガイドライン(uropean ygienic ngineering and esign roup)または規格DIN EN 1672-2が遵守されねばならない。これらには、対応する関連機器の構造的な詳細が、可食製品の製造、洗浄および包装との関連において定められている。その際、材料選択、表面品質、製造面での精確性、溶接シームの位置および数、ギャップサイズは、重要な役割を担っている。
【0016】
それゆえ本発明の課題は、冒頭で述べた形式のUV照射器モジュールを、衛生スタンダードを遵守しながら、同時に均一性およびコンパクト性に関して改善することである。
【0017】
さらに本発明の根底にある課題は、UV照射器モジュールの好適な使用を提示することである。
【0018】
発明の概説
上記課題は、本発明において、ハウジング内に、冷却空気の供給用の第1の空気案内ゾーンと、第1の空気案内ゾーンから特に流動に関して隔てられた、温められた冷却空気の導出用の第2の空気案内ゾーンとが形成されており、低圧水銀ランプの長手方向軸線に対して垂直にハウジングを通る横断面において、下面から上面への視線方向で見て、ビーム出射窓、照射器アッセンブリおよび空気案内ゾーンが、順番に配置されており、第1の空気案内ゾーンは、供給空気通路を有し、供給空気通路は、冷却空気を照射器アッセンブリに供給する少なくとも1つの空気ガイド手段を装備していることにより解決される。
【0019】
本発明に係るUV照射器モジュールにおいて、特に以下の態様が有利である:
1.照射器アッセンブリのUV照射器の少なくとも一部、好ましくは、照射器アッセンブリのすべての照射器が、低圧水銀ランプである。低圧水銀ランプは、中圧水銀ランプまたは高圧水銀ランプと比較してより高いエネルギ効率を有している。さらに低圧水銀ランプは、全発光スペクトルにおける254nmの波長領域のUV放射の割合が比較的大きいという意味において、より高い菌除去効率を示す。254nmの波長領域のUV放射は、菌除去に際し、特に有効であることがわかっている。
2.照射器アッセンブリの冷却のために、ハウジングは、冷却空気の供給用の供給空気通路を有し、それゆえ冷却空気源への接続部を有している。基本的には、低圧水銀ランプの冷却は不要である。しかし、本発明に係るUV照射器モジュールにおいて接続可能な冷却は、多くの面で上述の技術的な課題の解決に有用であることが判明した:
a.冷却は、比較的高い出力を有する低圧水銀ランプの使用および運転を照射器アッセンブリの過熱の危険なしに可能にする。過熱時には、UV照射出力の減少を伴う、UV発光のスペクトル成分、特に254nmの波長領域付近のスペクトル成分の低下が生じる。
而して、例えば複数の低圧水銀ランプの長手方向軸線が1つの共通の照射器平面内を延びている本発明に係るUV照射器モジュールの特に好適な一実施の形態において、比較的高い出力を有する低圧水銀ランプの使用および運転により、照射器アッセンブリは、照射器平面から48mmの間隔を置いて測定して、少なくとも100mW/cm、好ましくは、少なくとも120mW/cmのUV照射強度が生じるように設計され得る。
b.面状の照射器アッセンブリの過熱の危険は、特に照射器アッセンブリの中央の領域で高く、縁部領域で低い。冷却空気の引き込みにより低圧水銀ランプを強制的に冷却することで、照射器アッセンブリの長さおよび幅にわたって比較的均一な温度プロファイルが調整可能であり、これに伴い、発せられるUV放射の場所に関して均一な照射プロファイルも調整可能である。
照射器アッセンブリの過熱を回避する目的で、冷却空気の冷却能力は、それゆえ、好ましくは、照射器アッセンブリ上において最大温度が150℃未満、特に好ましくは、120℃未満となるように設計される。
3.ハウジングは、閉鎖されており、水密である。水密性は、少なくとも、上で規定したIPコードの保護度6に相当し、すなわち、暴噴流水による洗浄サイクルに持久的に耐える。
ハウジング内には、冷却空気用の少なくとも1つの供給空気通路と、温められた冷却空気の導出用の少なくとも1つの排出空気通路とが延びている。冷却空気は、空気ガイド手段、例えば1つまたは複数の開口または管路を介して、照射器アッセンブリに達し、照射器アッセンブリを冷却し、これにより温められる。ハウジングは閉鎖されているので、全冷却空気体積は、温められた冷却空気としてハウジングから排出空気通路を介して、規定されてかつ再現可能に排出される。このことは、衛生要求に鑑みて有利な措置をなしている。
通路は、例えばチューブまたはパイプとして構成されており、ハウジング出口には、接続要素が設けられていることができる。その際、空気は、技術的に最も簡単なかつ最も低コストの冷却媒体をなしている。空気に代えてまたは空気に加えて、別のガスまたは液体も、冷却媒体として使用可能であることは、自明である。
4.以下では、低圧水銀ランプの長手方向軸線の方向でのハウジングの延在寸法を「ハウジング長さ」、上で規定した視線方向での延在寸法を「ハウジング高さ」、残りの空間方向での延在寸法を「ハウジング幅」と称呼する。これらの称呼はもちろん、ハウジングの説明との関連で使用する位置表示、例えば「上面」または「下面」、および場所を表す副詞、例えば「上方」、「上下」、「上」、「上側」等も、ハウジングの、実施例に示す方向付けに関するものであって、コンポーネント相互の相対的な方向付けを規定するためだけに用いられ、規定通り使用したときのハウジングおよび該当するコンポーネントの特定の空間的な方向付けを確定するものではない。
第1の空気案内ゾーンと第2の空気案内ゾーンとは、ハウジング内で互い特に流動に関して隔てられているので、まだ冷たい冷却空気と、既に温められた冷却空気とがハウジング内で混ざり合ってしまうことはない。冷たい冷却空気の引き込み用の第1の空気案内ゾーンは、供給空気通路を有し、供給空気通路は、他方、冷たい冷却空気を照射器アッセンブリに規定された状態で供給する少なくとも1つの空気ガイド手段を装備している。温められた冷却空気は、排出空気として第2の空気案内ゾーンを介して排出空気通路またはガス出口に達し、排出空気通路またはガス出口を介してハウジングから導き出される。
ハウジング高さの方向で見て、第1および第2の空気案内ゾーンは、ハウジング長さの少なくとも一部にわたって上下に重畳して延びている。その際、好ましくは、低圧水銀ランプの長手方向軸線に対して垂直にハウジングを通る横断面において、下面から上面への視線方向で見て、第1の空気案内ゾーンは、第2の空気案内ゾーンに対して前置されている。すなわち、冷却空気を運ぶ供給空気通路は、照射器アッセンブリの近傍を延びているので、冷却空気は、供給空気通路から空気ガイド手段を介して比較的簡単に照射器アッセンブリに向かって導き出され得る。
ビーム出射窓、照射器アッセンブリおよび両空気案内ゾーンの「重畳配置」により、ハウジング長さの少なくとも一部にわたって、図式としては以下の、上下に重畳して配置される4つの平面が生じる:
(i)窓平面。窓平面内にはビーム出射窓が配置されている。
(ii)照射器平面。照射器平面内には、低圧水銀ランプの長手方向軸線が延びている。
(iii)下側の空気案内平面。下側の空気案内平面内には、好ましくは、供給空気通路の長手方向軸線が延びている。
(iv)上側の空気案内平面。上側の空気案内平面内には、好ましくは、排出空気通路またはハウジングガス出口の長手方向軸線が延びている。
挙げた平面は、互いに傾いて延びていてもよいが、最も好ましい場合、互いに平行に延びている。これらのコンポーネントの「重畳配置」は、ハウジング高さの方向では嵩張るものの、特に小さなハウジング幅を可能にする。比較的小さなハウジング幅は、構造空間が狭いときに有益であることができ、とりわけ複数のUV照射器モジュールがサブストレートの搬送方向で順番に配置されている場合に、照射範囲内での放射の均一性に寄与する。
【0020】
特に、できる限り小さなハウジング幅と、これに伴う、複数のUV照射器モジュールをこのように順番に配置したときの放射野の高い均一性とに鑑みて、UV照射器モジュールの以下の実施の形態も好ましい:
(a)供給空気通路が、供給空気通路中心軸線を有し、第2の空気案内ゾーンが、排出空気通路中心軸線を有し、供給空気通路中心軸線と排出空気通路中心軸線とが、互いに平行に、ビーム出射窓に対して垂直に延在する1つの共通のハウジング中央平面内を延びている実施の形態。
排出空気通路中心軸線は、場合によっては設けられる排出空気通路の長手方向軸線あるいはハウジングガス出口の中心軸線に相当する。供給空気用の空気案内ゾーンと、排出空気用の空気案内ゾーンとは、この場合、視線方向で見て順番に延びるだけでなく、供給空気通路の軸線と、排出空気通路あるいはガス出口の軸線とは、ハウジング中央平面内で上下にも重畳して延びている。これにより特に小さなハウジング幅が得られる。
(b)ハウジングが、ハウジング中央平面に関して鏡面対称性を有する実施の形態。
(c)第1の空気案内ゾーンが、供給空気通路内径を有し、第2の空気案内ゾーンが、排出空気通路内径を有し、排出空気通路内径の、供給空気通路内径に対する偏差は、+/-10%未満であり、好ましくは、排出空気通路内径と供給空気通路内径とは同じである実施の形態。
内径が同じである場合、冷却空気および排出空気に関して同じ流動速度が生じ、同じガス圧が生じる。これに対して、排出空気通路内径の方が小さい場合は、供給空気通路におけるよりも大きな流動抵抗が生じ、冷却空気流動の狭窄箇所として機能する。
【0021】
UV照射器モジュールの特に有利な一実施の形態では、ハウジング上面が、湾曲、具体的には、低圧水銀ランプの長手方向軸線に対して垂直にハウジングを通る横断面において、湾曲を有している。
【0022】
外向きに湾曲したハウジング上面は、液体の流出、例えば照射器モジュールの洗浄時の液体の流出を容易にする。この措置は、残留物なしの洗浄を容易にし、衛生スタンダードの遵守および改善に寄与する。
【0023】
照射器モジュールの残留物なしの洗浄に関する、湾曲した上面の作用は、両側壁が、上面の湾曲に密着し、その際、(両側壁の仮想の延長線上において)5~40度の範囲の角度を互いになすと、さらに強化される。
【0024】
飛沫水に対するハウジングの密封性にとっては、特にハウジングへのビーム出射窓の取り付けが重要である。上で既に引用した独国実用新案第202017101112号明細書では、このために機械的な措置を提案している。しかし、機械的な措置は、手間あるいはコストを要する。本発明に係るUV照射器モジュールの別の好ましい一実施の形態では、ビーム出射開口が、周囲を取り巻くように延びる段部を有し、段部にビーム出射窓が接着されていることにより、密封性が保証される。
【0025】
本発明に係るUV照射器モジュールの別の有利な一実施の形態では、照射器アッセンブリが、照射器アッセンブリの、ビーム出射窓から背離した側で、少なくとも部分的にリフレクタにより包囲されている。
【0026】
リフレクタは、ハウジング長さおよびハウジング幅の方向で照射器平面と下側の空気通路平面との間を延在しており、照射器アッセンブリを好ましくは完全に覆っている。リフレクタは、照射強度の上昇に寄与し、放射野の均一性を改善する。
【0027】
本発明に係るUV照射器モジュールの別の一実施の形態では、ハウジング側壁の少なくとも一方が、マーキングが施された可視面を有し、マーキングは、レーザ彫刻により生成されており、続いて可視面は、電解研磨により平滑化されている。
【0028】
電解研磨は、マーキング生成時に場合によっては生じる残留物を取り除き、衛生スタンダードに関する改善に寄与する。方法ステップの順序は、レーザ彫刻、電解研磨の順であり、電解研磨後、彫刻の領域には、彫刻されていない表面とは異なる性状の表面が生じるので、マーキングは可視のまま残されることが判明した。可視面のマーキングは、例えば文字、ロゴまたは数字を含んでいる。
【0029】
本発明に係るUV照射器モジュールの使用に関して、上述の課題は、本発明により、UV照射器モジュールが、食物または医薬品用の包装材料の紫外照射用の消毒システムで使用されることにより解決される。好ましくは、UV照射器モジュールは、その際、同一構造の複数のUV照射器モジュールが、照射すべきサブストレートの搬送方向で見て順番に配置されているモジュール群で使用される。
【0030】
実施例
以下に本発明について図面および一実施例を基に詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明に係るUV照射器モジュールの一実施例の立体図である。
図2】ビーム出射窓を上にして、部分的に切り欠くことで照射器アッセンブリを視認できるようにしたUV照射器モジュールの技術的平面図である。
図3図2に示した線B-Bに沿ったUV照射器モジュールの拡大横断面図である。
図4図2に示した線A-Aに沿ったUV照射器モジュールの部分縦断面図である。
図5】UV照射器モジュールの列置の概略図である。
【0032】
図1に示すUV照射器モジュール1の実施の形態は、金属のハウジング2を備え、ハウジング2は、下面3と、外向きに湾曲した上面4と、2つの平らな側壁5と、互いに反対側に位置する2つの端面の閉鎖壁6とを有している。ハウジング長さは、約1050mmであり、ハウジング高さは、約300mmであり、下面3における最大のハウジング幅は、約160mmである。
【0033】
下面3の大部分は、長方形の開口によって占められ、開口は、856×142mmの寸法を有する石英ガラスプレートの形態のビーム出射窓7により水密に閉鎖されている。
【0034】
上面4の湾曲は、約90mmの半径を有し、ハウジング長さ全体にわたって一方の閉鎖壁6から他方の閉鎖壁6へと延在している。
【0035】
平らな両側壁5は、下面3から上面4へと延びており、上面4の湾曲に密着している。両側壁5は、互いに接近するように斜めに延びており、その際、両側壁5の仮想の延長線上において14度の角度を互いになしている。側壁5および湾曲した上面4は、金属薄板片から製造されている。一方の側壁5の可視面には、レーザにより文字8が彫り込まれており、彫り込み後、側壁は、完全に電解研磨されている。
【0036】
一方の閉鎖壁6からは、冷却空気をハウジング2内に供給する供給空気通路(図3;符号31)の下側の接続部9と、これとは別の、温められた冷却空気をハウジング2から導出する排出空気通路(図3;符号32)の上側の接続部10とが突出している。同じ閉鎖壁6からは、図2に看取可能な4つのUV照射器21の電気的な接続に用いられるケーブルも引き出されている。
【0037】
UV照射器21は、石英ガラスからなる円筒形のランプ管と、ランプ管内において互いに反対側に位置する電極とを有する低圧水銀ランプである。ランプ管は、28mmの外径を有し、両端部においてガス密にピンチ部により閉鎖されている。ピンチ部には、通常通り電極の電気的な接点接続用の電流接続部が通されている。ランプ管には、水銀アマルガムとネオンとが充填されている。各ランプ管は、アマルガムだめを有している。これらのUV照射器21は、面状の照射器-アッセンブリ20を形成しており、面状の照射器-アッセンブリ20内において、複数の照射器長手方向軸線が互いに平行に、かつ1つの共通の平面(図3;照射器平面E2)内を延びている。照射器アッセンブリ21は、ハウジング2の対称平面Mの両側に均等に延在している(より良好に図3に看取可能)。照射器長手方向軸線間の間隔は、36mmである。個々の水銀蒸気放電ランプの公称接続電力は、580Wである。放射束は、150Wまでであり得る。低圧水銀ランプ21が示す発光スペクトルは、254nmのところで特徴的な輝線の高い効率を有する。照射器平面E2から48mmの間隔を置いたところ(ハウジング下縁3の下方20mmのところ)で、140mW/cmのUV照射強度が生じる。
【0038】
図3の断面図には、ハウジング2内におけるUV照射器モジュール1の主要なコンポーネントの鉛直方向の配置が良好に看取可能である。ビーム出射窓7の上面は、窓平面E1内を延び、その上を4つのUV照射器21の面状のアッセンブリ20が延び、4つのUV照射器21の長手方向軸線は、照射器平面E2を画定している。平面E1とE2との間の間隔は、21mmである。UV照射器21のアッセンブリ20は、台形の輪郭を有するリフレクタ金属薄板33により上方および側方で包囲されている。その上を冷却空気用の供給空気通路31が延びており、供給空気通路31の中心軸線は、水平平面E3を規定している。そしてその上を排出空気通路32が延びており、排出空気通路32は、2cmの長さの短管として構成されているだけであり、排出空気通路32の中心軸線は、水平平面E4を規定している。
【0039】
ハウジング2は、対称平面Mに関して略鏡面対称である。ビーム出射窓7は、4mmのプレート厚さを有し、側壁5の縁曲げ部に載置されて、そこに水密に接着されている。リフレクタ金属薄板33は、UV照射器-アッセンブリ20の全長にわたって延びている。供給空気通路31は、85mmの内径を有している。供給空気通路31の中心軸線は、対称平面M内に位置している。供給空気通路31は、ハウジング長さに沿って端面の接続部9から、ハウジング中央に配置されるガス分配チャンバ(図4;符号41)まで延在している。排出空気通路32も、85mmの内径を有し、排出空気通路32の中心軸線は、同じく対称平面M内に位置している。看取可能であるように、排出空気通路32は、ハウジング上面4の湾曲を定め、この湾曲を略完全に満たしている。
【0040】
図4には、供給空気通路31がガス分配チャンバ41に開口していることが看取可能である。ガス分配チャンバ41には、ガス分配チャンバ41の、リフレクタ金属薄板33に対面する側に、多数の開口43が設けられている。開口43を通して冷却空気は、UV照射器21のアッセンブリ20が存在する空間に流入する。ガス分配チャンバ41の開口43で第1の空気案内ゾーンが終端している。第1の空気案内ゾーンは、供給空気通路接続部9から照射器アッセンブリ20に至る冷たい冷却空気の空気案内を定めている。
【0041】
排出空気通路接続部10に至る温められた冷却空気の空気案内は、第2の空気案内ゾーンにより規定される。その際、温められた冷却空気体積は、照射器アッセンブリ20からハウジング2のフリースペースとしての内室44を介して、排出空気通路32の、ハウジング2内に突入している端部に供給され、排出空気通路接続部10を介してハウジング2から完全に除去される。その際、冷たい冷却空気との混合は、第2の空気案内ゾーンが第1の空気案内ゾーンから特に流動に関して隔てられているため、起こらない。
【0042】
冷却空気の冷却能力は、照射器アッセンブリ20上において最大温度が110℃未満となるように設計される。そして、できる限り場所に関して均一なUV照射プロファイルの分布を達成すべく、冷却空気の冷却能力と場所に関する分布とは、照射器アッセンブリ20の個々の低圧水銀ランプ21の水銀だめにおける最大温度と最小温度との間の温度差が10℃未満となるように設計される。
【0043】
低圧水銀ランプ21の簡単な保守および交換のために、UV照射器モジュール1は、引き出し状に開放される。この場合、金属ハウジング2は、両端面の壁6の一方と、ビーム出射窓7とを含めて、不動にその場にとどまる。反対側に位置する、接続ケーブル11が設けられた端面の壁6は、この壁6に機械的に結合されたコンポーネント、例えば低圧水銀ランプ21、ガス分配チャンバ41および供給空気通路31とともに引き出される。この「引き出し」の、ハウジング2内に突入する端部には、電気的なプラグが設けられており、プラグは、再押し込みの際に、ホルダ42内に設けられた対応するソケットに嵌合し、電気的な差し込み接続を形成する。
【0044】
本発明に係る照射器-モジュールは、冒頭で述べた衛生スタンダードの高い要求も充足し、IP66に則した封止の度合いを満たしている。
【0045】
図5に概略的に示すように、同一構造の複数のUV照射器モジュール1を密に列置(理論的には間隙なし;ただし、実際の使用では、液体が流下できるように、小さな間隙が有意義である)したとき、隣り合うモジュール1のUV照射器21間には、13.7mmにすぎない空いた間隔と、55.4mmの中心軸線の間隔とが生じる。本発明に係るUV照射器モジュール1は、それゆえ、食物または医薬品用の包装材料51の紫外照射用の消毒システムでの使用に特に好適である。この場合、照射すべき包装材料51の搬送方向52で、複数のUV照射器モジュール1は、低圧水銀ランプの中心軸線が互いに平行にかつ搬送方向52に対して横方向に延びるように順番に配置されている。
図1
図2
図3
図4
図5