(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】動作条件に基づく適応型光モデム構成
(51)【国際特許分類】
H04B 10/079 20130101AFI20230411BHJP
H04B 10/077 20130101ALI20230411BHJP
H04B 10/25 20130101ALI20230411BHJP
【FI】
H04B10/079
H04B10/077
H04B10/25
(21)【出願番号】P 2020544887
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(86)【国際出願番号】 US2019026436
(87)【国際公開番号】W WO2019209518
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-03
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519382455
【氏名又は名称】シエナ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120684
【氏名又は名称】宮城 三次
(72)【発明者】
【氏名】チャールトン,ダグラス,ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】シャイナー,アンドリュー,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】マニロフ,エリック
(72)【発明者】
【氏名】フランケル,マイケル,ワイ.
【審査官】後澤 瑞征
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-223128(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第2882115(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第106788771(CN,A)
【文献】特開2014-183552(JP,A)
【文献】特開2018-207181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/079
H04B 10/077
H04B 10/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが光リンク(16、18)を介して通信するように構成されたトランスミッタ(102)およびレシーバ(104)と、
コントローラ(150)と、を備える光モデム(20)であって、前記コントローラ(150)は、
第1の動作設定で動作させることと、
前記光モデム(20)に関連する動作条件における外乱の検出または予測に応じて、前記外乱の統計的特性に基づいた期間にわたって、第2の動作設定で動作させることであって、前記期間が、前記第2の動作設定で動作させ続けるホールドオフ時間であることと、
前記外乱の後および前記ホールドオフ時間の満了の前に、あらたな外乱が検出されるごとに前記ホールドオフ時間をリセットすることと、を実行するように構成された、光モデム(20)。
【請求項2】
前記コントローラ(150)は、前記期間の後に前記第1の動作設定に復帰させるように構成される、請求項1に記載の光モデム(20)。
【請求項3】
前記外乱の前記統計的特性は、到着時間、周期性、大きさ、変化率、時間的および相関のうちの1つ以上を含み、
前記統計的特性は、経時的な測定を通じて決定される、請求項1~2に記載の光モデム(20)。
【請求項4】
前記コントローラ(150)は、前記外乱の条件付き確率に応じて、前記期間にわたって前記第2の動作設定で動作させ、前記条件付き確率が、外部データソースから決定されるように構成される、請求項1~3に記載の光モデム(20)。
【請求項5】
前記外乱は、偏波トランジェントである、請求項1~4に記載の光モデム(20)。
【請求項6】
前記統計的特性は、前記期間を決定するために使用される偏波トランジェントの到着時間統計を含む、請求項5に記載の光モデム(20)。
【請求項7】
前記外乱は、光周波数トランジェントおよび強度トランジェントのうちの1つ以上を含む、レーザ(110、132)に影響を与えるトランジェントである、請求項1~4に記載の光モデム(20)。
【請求項8】
前記外乱は、前記光モデム(20)を有するネットワーク要素内のクロック(140)に影響を与えるトランジェントである、請求項1~4に記載の光モデム(20)。
【請求項9】
前記第2の動作設定は、前記期間にわたって、前記第1の動作設定と比較してマージンを減少させる、請求項1~8に記載の光モデム(20)。
【請求項10】
光モデム(20)を動作させる方法であって、
第1の動作設定で動作させることと、
前記光モデム(20)に関連する動作条件における外乱の検出または予測に応じて、前記外乱の統計的特性に基づいた期間にわたって、第2の動作設定で動作させることであって、前記期間が、前記第2の動作設定で動作させ続けるホールドオフ時間であり、前記ホールドオフ時間が、前記統計的特性に基づいて設定されることと、
前記外乱の後および前記ホールドオフ時間の満了の前に、あらたな外乱が検出されるごとに前記ホールドオフ時間をリセットすることと、を含む方法。
【請求項11】
前記期間の後に前記第1の動作設定に戻すことを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記外乱の前記統計的特性は、到着時間、周期性、大きさ、変化率、時間的および相関のうちの1つ以上を含み、
前記統計的特性は、経時的な測定を通じて決定される、請求項10~11に記載の方法。
【請求項13】
前記外乱の条件付き確率に応じて、前記期間にわたって前記第2の動作設定で動作させることであって、前記条件付き確率が、外部データソースから決定されることを含む、請求項10~12に記載の方法。
【請求項14】
前記外乱は、i)偏波トランジェント、ii)光周波数トランジェントおよび強度トランジェントのうちの1つ以上を含む、レーザ(110、132)に影響を与えるトランジェント、およびiii)光モデム(20)を有するネットワーク要素のクロック(140)に影響を与えるトランジェント、のうちの1つである、請求項10~13に記載の方法。
【請求項15】
前記統計的特性は、フィールド測定値を取得するステップと、機械学習を利用して、取得した前記フィールド測定値または他のデータソースに基づいて前記統計的特性を決定するステップと、を実行するサーバ(200)によって決定される、請求項10~14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、光ネットワーキングのシステムおよび方法に関する。より具体的には、本開示は、動作条件に基づく適応型光モデム構成に関する。
【背景技術】
【0002】
光ネットワークは、ますます増大する帯域幅の要求に対応するために、偏波多重コヒーレント変調方式を使用している。光リンクは、光モデム(光トランシーバ、トランスポンダ、トランスミッタ/レシーバなどとも呼ばれる)を介して2つのノードまたはネットワーク要素間に形成される。
【0003】
モデムは通常、デバイスの予想される寿命など、指定された間隔で特定の信号品質を保証するために、十分な動作マージンを提供するように構成されている。多くの場合、これらの性能保証は、レシーバの順方向誤り訂正(FEC)回路の出力での最大許容ビット誤り率(BER)またはポストFEC BERで表される。所定のビット誤り率に対する信号対雑音比とデータ伝送の最大速度との間には強い関係がある。利用可能なSNRマージンは、モデムが動作しているSNRと、その値未満では許容できない数のビット誤りが予想されるSNRとの差である。ノイズが増加するとSNRは低下し、ノイズは、フィードバックループからの静止ノイズなどのトランシーバの内部やリンク内の光増幅器からのASEなどのトランシーバの外部のさまざまなソースから発生する。また、偏波、レーザ、およびクロックのトランジェントから発生するノイズなど、一時的なノイズソースもある。所定のリーチとデータレートに対して、トランシーバは、保証期間中に予測されるノイズソースの組み合わせに対する性能保証を満たす十分なマージンがあることを確実にするように構成する必要がある。
【0004】
光モデムの一態様として、偏波状態(SOP)トラッキング、バイアス制御、レーザトランジェントなど、動作のさまざまな態様に対処するために、さまざまな異なる動作モードで構成できることがある。本明細書に記載されるように、動作モードは、概して、信号品質を維持するためのフィードバックループ、制御ループなどの動作のための光モデムのいくつかの設定を指す。また、動作モードとマージン(dBQ)との間にはトレードオフがあり、それは、現在の動作条件に基づいて、任意の時点での動作モードの最適な設定は何かという疑問につながる。
【0005】
たとえば、偏波多重変調方式では、信号のSOPを回復し、チャネルの寿命中に発生するすべての変化を追跡できる光レシーバが要求される。光レシーバへの信号のSOPの変化率は、チャネルが伝搬するリンクに応じて桁違いに変化する可能性がある。従来の方法では、SOPトラッキング回路を、トランシーバの耐用期間中のSOPの予想される最大変化率に基づいた寿命開始(SOL)でプロビジョニングする。レシーバの最大偏波トラッキング速度を増加させると、大抵はトラッキング回路からの静止ノイズが大きくなり、これにより、利用可能なSNRマージンが直接減少する。光モデムの静的プロビジョニングによるこの設定しっ放し(set and forget)アプローチは、トランジェントイベントが均一に分布していない場合には最適ではない。たとえば、照明によって引き起こされる偏波トランジェントの平均到着時間が中央値よりも桁違いに大きいケースが観察されている。このケースでは、トランジェントは束(bunches)で到着し、静的プロビジョニングは、トランジェントが発生する可能性が低い束の間の時間中に、過剰な帯域幅(ノイズ)でトラッキング回路を動作させる。たとえば、SOPトランジェント到着の統計は、Douglas Charlton他の「Field measurements of SOP transients in OPGW, with time and location correlation to lightning strikes」、Opt.Express 25、9689-9696(2017)に記載されている。また、従来の光モデムは、SOPトランジェントを検出して局在化させるためのハードウェアを含むことができる(たとえば、統合された偏波計など)。一例が、2017年9月26日に発行され、「SYSTEMS AND METHODS USING A POLARIMETER TO LOCALIZE STATE OF POLARIZATION TRANSITS ON OPTICAL FIBERS」と題され、譲受人に譲渡された米国特許第9,774,392号(その内容は参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【発明の概要】
【0006】
SOPやその他のトランジェントなど、コヒーレントモデムの動作に影響を与える外乱の基礎となる統計的特性について少なくともある程度の知識がある場合、それらの統計的特性を考慮してコヒーレントモデムの動作モードを更新することが望ましい。例として、トランジェントが最近観測されたときのトランジェントを観測する確率や、現在の気象条件のときのトランジェントを観測する確率などのケースが挙げられる。トランジェントを観測する確率がモデムの寿命全体で一定でない場合、静的プロビジョニングは我々にとって適切ではない。
【0007】
最適なプロビジョニングでは、モデムの現在の動作状態も考慮できる。たとえば、他のすべてのノイズソースによって引き起こされる障害に遭遇する確率が低いような過剰マージンがある場合は、トランジェントに遭遇する可能性も低い場合でも、高速トラッキングモードで動作するのが最適となり得る。
【0008】
一実施形態では、光モデムを動作させる方法は、第1の動作設定で動作させることと、光モデムに関連する動作条件における外乱の検出または予測に応じて、外乱の統計的特性に基づいた期間にわたって、第2の動作設定で動作させることと、を含む。方法は、期間の後に第1の動作設定に戻すことをさらに含むことができる。期間は、第2の動作設定で動作し続けるホールドオフ時間とすることができ、ホールドオフ時間は、統計的特性に基づいて設定でき、方法は、外乱の後およびホールドオフ時間の満了の前に、あらたな外乱が検出される毎にホールドオフ時間をリセットすることをさらに含むことができる。外乱の統計的特性は、到着時間、周期性、大きさ、変化率、時間的、および相関のうちの1つ以上を含むことができ、統計的特性は、経時的な測定を通じて決定することができる。
【0009】
方法は、外乱の条件付き確率に応じて、期間にわたって第2の動作設定で動作させることであって、条件付き確率が、外部データソースから決定されることを含むことができる。外乱は、偏波トランジェントとすることができる。統計的特性には、期間を決定するために使用される偏波トランジェントの到着時間統計を含めることができる。外乱は、光周波数トランジェントおよび強度トランジェントのうちの1つ以上を含むレーザに影響を与えるトランジェントとすることができる。外乱は、光モデムを使用するネットワーク要素のクロックに影響を与えるトランジェントとすることができる。第2の動作設定は、期間にわたって、第1の動作設定に比べてマージンを減少させることができる。統計的特性は、フィールド測定値を取得するステップと、機械学習を利用して、取得したフィールド測定値または他のデータソースに基づいて統計的特性を決定するステップとを実行するサーバによって決定することができる。
【0010】
別の実施形態では、光モデムは、それぞれが光リンクを介して通信するように構成されたトランスミッタおよびレシーバと、第1の動作設定で動作させ、光モデムに関連する動作状態における外乱の検出または予測に応じて、外乱の統計的特性に基づいた期間にわたって、第2の動作設定で動作させるように構成されたコントローラと、を備える。コントローラはさらに、期間の後に第1の動作設定に戻すように構成することができる。期間は、第2の動作設定で動作し続けるホールドオフ時間とすることができ、ホールドオフ時間は、統計的特性に基づいて設定され、コントローラは、外乱の後およびホールドオフ時間の満了の前に、あらたな外乱が検出される毎にホールドオフ時間をリセットするようにさらに構成することができる。
【0011】
外乱の統計的特性は、到着時間、周期性、大きさ、変化率、時間的、および相関のうちの1つ以上を含むことができ、統計的特性は、経時的な測定を通じて決定することができる。コントローラは、外乱の条件付き確率に応じて、期間の第2の動作設定で動作させ、条件付き確率が外部データソースから決定されるようにさらに構成することができる。外乱は、偏波トランジェントとすることができる。統計的特性には、期間を決定するために使用される偏波トランジェントの到着時間統計を含めることができる。第2の動作設定は、期間にわたって、第1の動作設定に比べてマージンを減少させることができる。
【0012】
さらなる実施形態では、光モデムは、それぞれが光リンクを介して通信するように構成されたトランスミッタおよびレシーバと、光リンク上の動作に関連する測定値を取得し、測定値に基づいて光リンクの統計的特性を決定し、決定された統計的特性に基づいてトランスミッタおよび/またはレシーバの動作設定を設定するように構成されたコントローラと、を備える。コントローラは、測定値からのトランジェントの検出または予測に基づいて、およびトランジェントの統計的特性に基づいて、動作設定を変更するようにさらに構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示は、以下に示すさまざまな図面を参照して本明細書で例示および説明され、同じ参照番号は適宜同じシステムコンポーネント/方法ステップを示すために使用される。
【0014】
【
図1】ファイバによって相互接続されてそれらの間で通信するための光モデムを有する2つのネットワーク要素を有する光ネットワークのネットワーク図である。
【0015】
【
図2】偏波計が内部に統合された光回線デバイスのブロック図である。
【0016】
【
図3A】概して、ファイバを介して互いに通信可能に結合されたトランスミッタおよびレシーバを含む光モデムの例示的な実装のブロック図である。
【0017】
【
図3B】二重偏波動作を備えた光モデムの別の例示的な実装のブロック図である。
【0018】
【
図4】時間軸に沿って大きさが増加するフィールド測定値からの偏波トランジェント間の時間の分布のグラフである。
【0019】
【
図5】フィールド測定値からの偏波トランジェント事象間の時間の分布のグラフである。
【0020】
【
図6】ホールドオフ時間に対する、高速トラッキングモードで費やされた時間のホールドオフ時間パーセンテージと、高速トラッキングモード中に遭遇したSOPトランジェントのパーセンテージのグラフである。
【0021】
【
図7】光モデムの動作モードを動的にプロビジョニングするための可変SOPトラッキングプロセスのフローチャートである。
【0022】
【
図8】ネットワーク管理システム(NMS)、要素管理システム(EMS)、ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)コントローラ、オーケストレーションプラットフォームなどを実現するために使用し得るサーバのブロック図である。
【0023】
【
図9】光モデムを動作させるプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
さまざまな実施形態では、本開示は、動作条件に基づく適応型光モデム構成に関する。本開示は、外乱の統計的特性の考慮に基づいて、ネットワーク要素の動作条件の外乱に応じて、光ネットワーク内のネットワーク要素を動的にプロビジョニングすることを含む。統計的特性には、到着時間、周期性、大きさ、変化率、時間的、または他の相関、外乱の他の特性、および/または外乱の原因となる他の観測量を含めることができる。統計的特性は、ネットワーク要素に固有または非固有とすることができる1つ以上の巻測量で条件付けられる確率である。統計的特性は、機械学習アルゴリズムを使用して決定でき、および/または統計的特性は、ネットワーク要素、ネットワーク、または外部環境の観測値に応じて更新される。また、分布の事前知識は、真の分布の初期推定値として使用してもよい。観測量としては、利用可能なマージン、ネットワーク要素または1つ以上の他のネットワーク要素での障害の発生、時期、天気、製造データ、同じタイプまたは異なるタイプの他のネットワーク要素の履歴、ネットワークトポロジを挙げることができ、および/または、ネットワークの構成と状態には、干渉チャネルの存在と特性が含まれる。本目的は、いわゆる設定しっ放し構成アプローチを克服し、外乱の統計的特性を考慮して現在の動作条件のときのより最適な動作モードを選択できるようにすることである。
【0025】
一実施形態では、外乱は、偏波トランジェントとすることができ、統計的特性は、偏波トランジェントの到着時間統計である。別の実施形態では、外乱は、光周波数または強度トランジェントなどのネットワーク要素のレーザ源に影響を与えるトランジェントとすることができる。さらに別の実施形態では、外乱は、ネットワーク要素のクロックに影響を与えることができる。従来のアプローチでは、各タイプの外乱の制御ループは、各タイプの外乱に対処するように設計された制御ループによって発生する静止ノイズと、リンクの存続期間中に障害を発生させるのに十分な大きさの外乱を観測する確率と、の間の許容可能な妥協を与えるようにプロビジョニングされていた。動的プロビジョニングを使用すると、各タイプの外乱に対してトラッキング回路に割り当てられるマージンは、平均して減少し、そのタイプのトランジェントが発生する可能性が高いときにのみ増加する。さまざまなトランジェント事象の統計的特性についての一部の知識によれば、モデムは、静止ノイズとトラッキング能力との間の最適なトレードオフに近いところで動作でき、各タイプの外乱の基礎となる統計的特性が改善されるほどその最適値までの接近度は減少する。
【0026】
上述のように、光モデムにおけるフィードバック回路に対する従来のアプローチは、寿命始まり時の初期プロビジョニング(たとえば、手動)であり、ほとんどの場合、このプロビジョニングは、動作環境の変化に応じて変化しない。さらに、動作環境に関しては、照明によって引き起こされた偏波トランジェント事象が均一に分布されないと決定されていた。したがって、到着時間統計の知識を使用して、偏波トラッキングループ帯域幅を動的にプロビジョニングし、帯域幅が低く静止ノイズも低いモードで時間の大半を費やしながら、トラッキング帯域幅が高いモードでトランジェントに遭遇する確率を高くすることができる。具体的には、このアプローチは、SOPトラッキングの増加に伴うノイズペナルティの支払いを常に回避し、その代わりに、トラッキングの増加の必要性が予想される場合にのみそれ支払う。これは、追跡可能な偏波トランジェントを検出し、それらを使用してレシーバのトラッキングをより高速なモードに変更することでなし得る。さらに、ループは、利用可能なマージンの一部を動的に適用して、通常の動作での偏波トラッキングの速度を向上させ、孤立したまたは初期の偏波事象によるトラフィックへの影響の可能性を低減する。トラッキング速度を動的に変更することにより、リンクマージンの進展に合わせて偏波トラッキングを最適に変更できる。
【0027】
このアプローチは、SOPトラッキングを参照して説明されているが、外乱の統計的特性について少なくともある程度の知識がある当業者であれば、このアプローチが外乱の影響を緩和するように設計された任意の制御ループに適用でき、これらの統計的特性を使用して、モデム、たとえば、その動作マージン、トラッキング速度などをそれに応じて調整できることを認識するであろう。特定のタイプのトランジェントに割り当てられる平均ノイズマージンは、そのトランジェントの統計的特性についてのある程度の知識を用いて低減することができる。
【0028】
光回線システム
図1は、ファイバ16、18によって相互接続されてそれらの間で通信するための光モデム20を有する2つのネットワーク要素12、14を有する光ネットワーク10のネットワーク図である。当然のことながら、光ネットワーク10においては、中間ネットワーク要素、増幅器などを含む他の構成が可能である。ファイバ16、18を介して互いに接続されたネットワーク要素12、14は、光回線システムと呼ぶことができ、単一のスパン(または中間ネットワーク要素があった場合は複数のスパン)を表す。当然のことながら、当業者であれば、光ネットワーク10が追加のノード、ファイバ、バンドル、スパン、光増幅器サイト、アド/ドロップサイトなどを含むことができることを認識するであろう。ネットワーク要素12、14は、波長分割多重(WDM)端末、再構成可能な光アド/ドロップマルチプレクサ(ROADM)、スイッチ、ルータ、クロスコネクトなどを含むがこれらに限定されない任意のタイプの光ネットワーク要素とすることができる。光モデム20は、光トランシーバ、トランスポンダなどとも呼ばれ、トラフィック伝達チャネルの送信を提供するように構成されている。光ネットワーク10およびネットワーク要素12、14は、エルビウムドープファイバ増幅器(EDFA)、ラマン増幅器などのような光増幅器をさらに含み、ならびにスプリッタ、コンバイナ、波長選択スイッチ(WSS)などのマルチプレクサおよびデマルチプレクサコンポーネントを含んで、複数のモデム20からの複数のトラフィック伝達チャネルのWDMを実行することができる。また、ネットワーク要素12、14には、光増幅器などの光ノード間の通信を管理するための光サービスチャネル(OSC)、ファイバ16、18上の後方反射を測定する光時間領域反射率計(OTDR)、ラマン増幅器など、さまざまな他のコンポーネントを含むことができる。
【0029】
ネットワーク要素12、14内の前述のさまざまなコンポーネントは、ネットワーク要素12、14を形成するネットワーク要素内のハードウェアコンポーネントで物理的に実現することができる。ハードウェアコンポーネントは、ラインカード、ラインモジュール、プラガブルモジュール、高さが1~2ラックユニット(RU)などの小型フォームユニットである「ピザボックス」などに搭載することができる。ハードウェアコンポーネントは概して、ファイバ16、18を介した最終的な送受信のために、互いに光学的に接続される。本明細書で説明されるように、光回線デバイスは、ネットワーク要素12、14または中間ネットワーク要素の一部であり、その中に統合されたハードウェアデバイスである。光回線デバイスの例としては、ラマン増幅器モジュール、EDFA増幅器モジュール、OSCモジュール、OTDRモジュール、モデム20などが挙げられる。
【0030】
モデム20は、非ゼロ復帰(NRZ)、デュオバイナリ、直交振幅変調(QAM)、微分位相シフトキーイング(DPSK)、微分直交位相シフトキーイング(DQPSK)、直交周波数分割多重化(OFDM)、前述のいずれかを用いた偏波多重化、および他の任意のタイプの光変調および検出技術を含むことができる。重要なことに、モデム20は、高度な偏波多重コヒーレント変調/復調技術を利用するので、それらモデムは、SOPトランジェントおよび他の妨害の影響を受けやすい。二重偏波(DP)変調システムにおいて、モデム20内の光レシーバは、光信号のSOPを追跡する必要がある。場合によっては、非常に高速なSOPトランジェントが発生することが知られており、それは、レシーバの性能を低下させたり、最悪の場合にはビット誤りを引き起こしたりすることがある。
【0031】
ネットワーク要素12、14は、ネットワーク管理システム(NMS)、要素管理システム(EMS)、パス計算要素(PCE)、ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)コントローラ、コントロールプレーンなどの管理システムと通信できる。SOPトランジェント統計は、管理システムに提供されて、1)エラーの原因を特定して局在化させるためのトラブルシューティング、2)何というタイプのモデムを配備するかに関しての、またはプログラマブルモデムの場合にはどのタイプの構成(変調方式、スペクトル量など)かに関しての決定を行うこと、3)ファイバ16、18の必要なSOPトラッキング速度に基づいてモデムの性能を最適化すること、4)ネットワークの復元中にトラフィックを再ルーティングするときの決定を行うこと(たとえば、再ルーティング時の問題のあるスパンを回避すること)などのために使用することができる。さらに、本開示は、SOPトランジェント統計を使用して、光モデム20の動作モードに関する決定を行うこと、たとえば、SOPトランジェントを予期している最中に、たとえマージンが減少してもSOPトラッキングを増加させることを企図している。
【0032】
光回線デバイス/システム内の統合された偏波計
図2は、偏波計40が内部に統合された光回線デバイス30のブロック図である。注目すべきは、
図2の構成は、 2016年6月9日に出願され、「INTEGRATED POLARIMETER IN AN OPTICAL LINE SYSTEM」と題され、譲受人に譲渡された米国出願第15/177,982号(その内容は参照により本明細書に援用される)に記載されていることである。
図2において、光回線デバイス30は、その中に統合された偏波計40を含み、ファイバ16上の偏波計プローブ信号の送信およびファイバ18上の対応する偏波計プローブ信号の受信をサポートする。一実施形態では、光回線デバイス30を光ネットワーク10内のさまざまなノードで使用して、ファイバ16、18の両方で偏波計プローブ信号をサポートすることができる。変形としては、単一の偏波計プローブ信号のトランスミッタは調整可能とすることかできる。対向する光回線デバイス30からの単一の偏波計プローブ信号が逆伝播する場合、調整可能なトランスミッタは、偏波プローブ信号のそれぞれについて異なる波長に同調することができる。
【0033】
光回線デバイス30は、偏波計40に加えて、さまざまな光回線コンポーネント50、52を含む。光回線コンポーネント50は、ファイバ16上を送信するものとして示されている一方、光回線コンポーネント52は、ファイバ18から受信するものとして示されている。光回線コンポーネント50、52は、EDFA増幅器、ラマン増幅器、OSC、OTDR、モデム20またはトランシーバ、WSSなどのような光回線システム内に統合された任意のものとすることができる。光回線デバイス30は、偏波計プローブ信号をWDM信号、OSC信号、OTDR信号、ラマンポンプなどと多重化および逆多重化するためのフィルタ54、56を含む。光回線デバイス50において、フィルタ54は、偏波計40のトランスミッタの出力を光回線コンポーネント50の出力と組み合わせるように構成され、フィルタ56は、偏波計プローブ信号を偏波計40へと、その他の信号(WDM信号、OSC信号、OTDR信号、ラマンポンプなど)を光回線コンポーネント52へと分岐するように構成されている。
【0034】
統合に関して、光回線デバイス30は、ラインカード、ラマン増幅器モジュール、EDFA増幅器モジュール、OSCモジュール、OTDRモジュール、モデム20、プラガブルモジュール、ピザボックスなどとすることができる。また、統合された偏波計は、光回線システム内の別のハードウェアデバイスにプラグインするように構成されたプラガブルモジュールで実現できる。これらのハードウェアデバイスは、光回線システムの一部であり、統合された方法で動作する。すなわち、これらのハードウェアデバイスは、統一された管理と制御、すなわち、運用、管理、保守、プロビジョニング(OAM&P)をサポートする。偏波計40は、この統一された管理および制御、ならびにWDMトラフィック伝達チャネル、OSCチャネル、OTDR信号などを使用して動作することができる。
【0035】
偏波計40は、フィルタ54に結合されたトランスミッタと、フィルタ56に結合されたレシーバとを含む。なお、概して偏波計40は、試験信号の偏波を測定するように構成された受信デバイスである。当業者であれば、本明細書に記載された統合された偏波計が、試験信号、すなわち偏波プローブ信号のための受信デバイスおよびトランスミッタを含むことを認識するであろう。一実施形態では、トランスミッタは、単一の偏波、連続波(CW)またはパルスを提供するなどのために、分散フィードバックレーザ(DFB)とすることができる。トランスミッタは、WDMトラフィック伝達チャネル、OSCチャネル、OTDR信号などに干渉しない波長で偏波プローブ信号を提供する。たとえば、WDMトラフィック伝達チャネルは、約1528~1560nmなどのCバンド内にあってもよいし、当然のことながら、他の送信帯域も考えられる。ラマンポンプは典型的には、1400nmの範囲で1500nm未満である。OSCチャネル、OTDR波長などは、相互および偏波プローブ信号に干渉しないように選択できる。たとえば、OSCチャネルは、1510nm、1625nmなどとすることができる。一実施形態では、偏波プローブ信号は、ラマンポンプとの非線形相互作用を回避するために1591nmにある。当然のことながら、光回線システム内の他の信号と干渉しない限り、偏波計40および偏波計プローブ信号について他の値も考えられる。一実施形態では、偏波計40は、レーザをOTDRと共有することができる。
【0036】
光モデム
図3Aは、概して、ファイバ16を介して互いに通信可能に結合されたトランスミッタ102およびレシーバ104を含む光モデム20の例示的な実装のブロック図である。トランスミッタ102は典型的には、送信されるデジタル信号X(n)を、変調器108(たとえば、マッハツェンダ変調器(MZM))を駆動する駆動信号S(t)に変換するための信号発生器106を含む。変調器108は、(他の中心波長λ
2~λ
nのうち)所定の中心波長λ
1に同調されたレーザ110によって生成された狭帯域光キャリアを変調して、対応する光チャネル信号、すなわちデータ伝達信号を生成する。それにより得られた信号は、次に、マルチプレクサ112によって、光ファイバリンク16を介してレシーバ104に送信するための波長分割多重(WDM)信号に多重化されてもよい。典型的には、駆動信号S(t)は、無線周波数(RF)アナログ電気信号である。そのような場合、信号発生器106は、デジタル-アナログ変換器(DAC)116とカスケード接続されたデジタル信号プロセッサ(DSP)114を含んでもよい。DSP114は、デジタル信号X(n)を処理して、DAC116の性能および動作要件に従って設計された対応するデジタル駆動信号X’(m)を生成するように動作する。DAC116は、従来の方法で動作して、デジタル駆動信号X’(m)を、光キャリアへの変調のために必要なアナログRF駆動信号S(t)に変換する。
【0037】
光チャネル信号は、フィルタ型デマルチプレクサデバイスまたはWSSを使用して、光ネットワーク10を介して逆多重化およびルーティングすることができる。例示の目的で、レシーバ104は、インバウンドWDM信号からのチャネル信号をレシーバ104に通信可能に結合するように動作するWSS120のドロップポートに結合されるものとして示されている。
【0038】
レシーバ104は、光チャネル信号を光検出器ブロック124に供給するための光フロントエンド122を含み、光検出器ブロック124は、到来する光チャネル信号を検出し、高速信号S(t)に対応するスペクトル成分を含む電気光検出器電流を生成する。次に、光検出器電流は、アナログ-デジタル変換器(ADC)126によってサンプリングされ、さまざまなデジタル信号処理技術を使用してレシーバ104内の対応するDSP128によって処理されて、元のデジタル信号X(n)を復元する。
図3Aの設計では、光フロントエンド122は、ミキサ130によって提供することができ、ミキサ130は、到来する光学チャネル信号と、光学チャネル信号の中心波長λ
1に同調されたローカルレーザ132によって生成された狭帯域光とを合成する。この構成を使用して、光チャネル信号のコヒーレント検出を可能にしてもよい。
【0039】
図3Bは、二重偏波動作を備えた光モデム20の別の例示的な実装のブロック図である。
図3Bの光モデム20は、一組のM駆動信号156を生成するためにM次元コンステレーションを使用して一対のデータ信号(dxおよびdy)を符号化するための符号化154を備えたトランスミッタ102を含む。次に、駆動信号156は、駆動信号156に従って連続波(CW)光キャリアのそれぞれの次元を変調するための変調器158に供給される。
図3Aの例では、一対のデータ信号(dxおよびdy)は、M=4の駆動信号156として符号化されてもよく、次にこれらを使用して、光キャリアの各直交偏波の2つの次元(たとえば、位相および振幅、またはIおよびQ)を変調する。CWキャリアは典型的には、レーザ110によって生成され、変調器158は、位相変調器、可変光減衰器、マッハツェンダ干渉計などのさまざまな変調器デバイスのいずれかを使用して実装されてもよい。変調器の出力に現れる変調された光信号は、光ファイバリンク16を介してコヒーレントレシーバ104に送信される。
【0040】
レシーバ104は、送信されたデータ信号を受信および検出するように構成され、受信した光信号を受信したXおよびY偏波に分割するための偏波ビームスプリッタ166と、XおよびY偏波を局部発振器を用いて別々に混合するための光ハイブリッド168と、光ハイブリッド168によって生成された混合生成物のそれぞれの光パワーを検出するための1組の光検出器170と、を含む。アナログ-デジタル(A/D)変換器ブロック172は、各光検出器電流をサンプリングし、それにより得られたサンプルストリーム(それぞれが光キャリアフィールドの変調された次元のうちの1つを表す)は、M次元コンスタレーションに従ってデジタルシグナルプロセッサ(DSP)174で処理され、送信されたデータ信号dxおよびdyに対応する復元された信号RxおよびRyが生成される。
【0041】
コヒーレント検出は、光学フィールドに関する豊富な情報セットへのアクセスを提供する可能性を有する。これにもかかわらず、パフォーマンスバジェットとシステムの受け入れにおける現在の慣行は、dBQ2に変換された、寿命始まり(SOL)の事前順方向誤り訂正(Pre-FEC)ビット誤り率、またはその代えてSOL光信号雑音比(OSNR)にのみに注目しており、コヒーレント技術によって提供される測定値のセットを無視している。これは主に、光モデムの特性評価、寿命の終わり(EOL)の性能予測、および性能マージン測定のための従来の技術が、光学ノイズのローディングに大きく依存しており、そのローディングは、時間と費用のかかるプロセスであり、専門的なスキルと機器を必要とし、それほど実用的ではないからである。
【0042】
モデム20は、デュオバイナリ、QAM、DPSK、DQPSK、OFDM、前述のいずれかとの偏波多重化、およびその他のタイプのコヒーレント光変調および検出技術のいずれかを使用するように構成されてもよい。電子チャネル識別のために、調整可能なRxが必要であることが理解される。QAMおよびPSKでは、リニアレシーバ、すなわち局部発信機(LO)と到来する信号との間で周波数ミキシングが行われているレシーバを使用して実現される。LOは、ミキシングによる生成物が必要なすべてのフィルタリングが行われるベースバンドで存在できるような適切な周波数で同調される必要がある。レシーバが上記のように動作していない場合、光検出器の前に光学フィルタが必要となる。
【0043】
モデム20は、1)調整する基礎となるモデム20の能力と、2)波長によって運ばれるサービスの必要性とに基づいて最適化することができる。モデム20は、ソフトウェアでプログラマブル変調フォーマットを通じてさまざまな異なるボーレートをサポートすることができる。モデム20は、変化する位相および/または振幅の両方でプログラマブル変調またはコンステレーションをサポートすることができる。一実施形態では、モデム20は、たとえば、i)海底距離での100G用のデュアルチャネル、デュアル偏波(DP)バイナリ位相シフトキーイング(BPSK)、ii)超長距離での100G用のDP直交位相シフトキーイング(QPSK)、iii)都市部から地方(600km)に至る距離での200G用の16-QAM)、またはiv)都市部から地方に至る距離での400G用のデュアルチャネル16QAMなど、複数のコヒーレント変調フォーマットをサポートすることができる。したがって、一実施形態では、同じモデム20が100G~400Gをサポートすることができる。モデム20のハードウェアの関連するデジタル信号処理(DSP)により、ある変調フォーマットから別の変調フォーマットへの移行は完全にソフトウェアでプログラム可能である。
【0044】
別の実施形態では、モデム20は、デュアルチャネルおよびデュアル偏波の有無にかかわらず、N-QAM変調フォーマットをサポートすることができる。ここで、Nは実数であり、必ずしも整数である必要はない。ここで、Nは整数ではなく実数、すなわち100G、200G、または400Gだけでなく、130G、270G、560Gなどの可変速度であるため、モデム20は非標準速度をサポートすることができる。これらの速度は、10Gb/秒の整数倍、1Gb/秒の整数倍、またはその他の値とすることができる。さらに、DSPおよびソフトウェアプログラミングにより、フレキシブル光モデム20の収容能力は、保証された速度に影響を与えないように、ヒットレス方式で上方または下方に調整することができる。さらに、モデム20は、スペクトルを調整および任意に選択することができるので、光学フィルタは必要ない。さらに、モデム20は、電気ドメインにおける非線形効果の軽減および分散補償(色モードおよび偏波モードの両方)のさまざまな態様をサポートすることができるので、外部分散補償デバイス、フィルタなどを排除することができる。モデムは、サービスレートとノイズ耐性のトレードオフのもう1つの方法として、使用される順方向誤り訂正(FEC)コーディングを適応させることもできる。
モデムの動作モード
【0045】
光モデム20は、さまざまな動作態様を制御するように構成されたコントローラ150を含むことができる。コントローラ150は、データを取得し、構成データを提供するために、光モデム20内のさまざまなコンポーネントに通信可能に結合することができる。コントローラ150は、
図3Aおよび3Bにおいて光モデム20の内部として示されているが、当業者であれば、コントローラ150が外部に存在することができることを認識するであろう。本明細書で説明するように、コントローラ150は、フィードバック回路を含み、制御ループまたはフィードバックループなどに参加することができる。本明細書で説明するように、動作モードは、動作用の光モデム20内のさまざまなコンポーネントに対する設定またはパラメータのなんらかの選択であり、その選択は、特定のトレードオフ、たとえば、光マージンを犠牲にしたより高速のSOPトラッキングを考慮して行われる。本開示は、動作条件の外乱の統計に基づいて、光モデム20の動作モードを動的に提供する。この場合も、本開示は、外乱としてのSOPトランジェントに関して例示される。しかしながら、当業者であれば、レーザ周波数エラー、クロックエラーなどの他のタイプの外乱も考えられることを理解するであろう。有利なことに、本開示は、設定しっ放しアプローチを回避し、改善された性能および外乱によるエラーを回避する能力を提供する動作設定に関してインテリジェンスを与える。このインテリジェンスは、SOPトラッキングを高速化するためにマージンを大幅に減らして運用するなど、設定しっ放しアプローチでは反直感的となりそうな決定を下すこともできるが、統計的特性に基づいて外乱が検出または予測される間は一時的なものにすぎない。
【0046】
この場合も、光モデム20は、信号品質を維持するために、動作条件の変化に適応しなければならない。信号帯域幅とデータレートが増加し続けるので、これは特に重要である。動作条件の一部の変更は、レーザ110、132、クロック140など、光モデム20の動作に必要な内部コンポーネントによるものである。この場合も、レーザ110、132は、それらの周波数および/または強度の点で外乱を経験することができる。動作条件の変更は、チャネルによって導入された偏波回転または他のトラフィック搬送チャネルからの干渉など、光モデム20の外部を起源としてもよい。
【0047】
コントローラ150(たとえば、フィードバック回路)は、目標動作点からの偏差に応答し、多くの場合、追跡可能な外乱の最大変化率とトラッキング回路またはアルゴリズムによって導入された静止ノイズとの間にはトレードオフの関係がある。この例は、Ciena Corporationから入手可能なWaveLogic 3(WL3)モデムであり、プログラマブル帯域幅のフィードバックループを使用して、受信したシンボルの偏波状態の変化を検出および補償する。これは、それぞれが関連する動作設定を有しかつ光学的マージンを犠牲にしてそれぞれ異なるトラッキング速度を持有する複数の異なるモードで動作できるSOPトラッキング技術である。第1のモードでは、光モデム20は、特定の値未満の回転速度で偏波トランジェントをトラッキングすることができ、第2のモードでは、その第1の値よりも速い第2の値未満の速度を含むように第1のモードに対して適度な光信号雑音比(OSNR)ペナルティでトラッキングが拡張され、第3のモードでは、第1の値と第2の値の両方よりも速い第3の値以下の回転速度でトランジェントのトラッキングを可能するように第1モードと第2モードに対してより大きなOSNRペナルティでトラッキングを拡張できる。この例では個別の動作モードについて説明しているが、概して、トラッキング速度とペナルティとの間でより細やかな最適化を実装することができる。すなわち、モードには動作設定があり、これらの動作設定は個別に設定することも、継続的に調整することもできる。
【0048】
偏波トラッキングの実施形態では、第1のモードは、公称のトラッキング能力および比較的低い静止ノイズで動作する。第2のモードと第3のモードは、第1のモードと同じでもよいが、ループ帯域幅が増加している。偏波トラッキングフィードバックループの帯域幅を増やすと、高速偏波トランジェントのトラッキングが可能になるが、ノイズがフィードバックループに混入し得る帯域幅も増える。フィードバックループに混入するノイズは、フィードバック回路の静止ノイズの一因となり、トランジェントが存在するか否かに関係なく、回路が動作している間は常に存在する。トラッキングモード間の移行には、単にループ帯域幅を変更するだけでなく、ループの動作を変更することを含めてもよい。例としては、偏波状態の変化が、復号された送信シンボルから検出されるモードと、同期シンボルのみが考慮されるモードとが挙げられる。
【0049】
さまざまなフィードバックループによって導入される静止ノイズと、トランジェント事象中に発生するペナルティとの間のトレードオフを理解して最適化することが重要である。マージンは、予想されるトランジェント中のペナルティが光モデム20の誤り訂正能力の範囲内になるように、モデムプロビジョニングを介して割り当てられる。フィードバックループの静止ノイズに割り当てられたマージン、ならびにトランジェント中に予想される追加のノイズにより、光モデム20で利用可能なノイズマージンが減少し、特定のデータレートでの光モデム20の最大到達距離が減少する。ただし、特定のリンクに対して外乱の例としてSOPトランジェントを利用すると、十分なマージンが存在する場合であってかつそうする理由がある場合、偏波トラッキング速度を上げることが望ましい。
【0050】
一実施形態では、光モデム20は、それぞれが光リンクを介して通信するように構成されたトランスミッタおよびレシーバと、第1の動作モードで動作させ、光モデムに関連する動作条件における外乱の検出に応じて、外乱の統計的特性に基づいた期間にわたって、第2の動作モードで動作させるように構成されたコントローラと、を備える。
動作条件に基づくSOPトラッキングの動的プロビジョニング
【0051】
光モデム20および上述の3つのSOPトラッキングモードを使用すると、光モデム20は、インストール時にこれらのモードのうちの1つに手動でプロビジョニングされる、すなわち、従来でいう設定しっ放しとなる。当然のことながら、偏波トラッキングの問題が確認された場合には、手動でモードを調整することができる。上記のように、第2モードおよび第3モードは、偏波トラッキングを改善するが、マージンを犠牲にする。一般化すると、第1のモードは低速トラッキングモードと呼ぶことができ、第3のモードは高速トラッキングモードと呼ぶことができる。
【0052】
一実施形態では、光モデム20は、たとえば、光モデム20が測定/利用可能なマージンに基づいて動作できる最大トラッキングで常に動作しているなど、通常動作でトラッキング/ペナルティを動的に調整することができる。これにより、通常の動作では、偏波に関連するトラフィックヒットが発生する可能性は低くなる。従来、SOPトランジェント事象の到着時間は均一に分布していると想定されている。したがって、光モデム20は、リンク上に配備されたときに、固定されたトラッキング能力/ノイズのトレードオフでプロビジョンされる。
【0053】
しかしながら、SOPトランジェント事象が均一に分布していない場合があることが測定に基づいてわかっていた。したがって、トランジェント事象の分布が均一でない場合、到着時間分布の知識(または推定)を使用して、トランジェントの検出に応じて光モデム20を動的にプロビジョニングすることで、トラッキング速度と静止ペナルティとの間のトレードオフを改善することができる。
【0054】
Douglas Charltonらの”Field measurements of SOP transients in OPGW, with time and location correlation to lightning strikes”では、光接地線(OGPW)を横断するリンクのSOPトランジェントが調査されている。この研究は、SOPトランジェントがリンク付近の落雷によって引き起こされる可能性が高いことを示している。これらのトランジェントは、リンク内で以前は可能と考えられていたよりもはるかに速い回転速度で発生し、場合によっては特定の動作モードの偏波トラッキング能力を超える可能性があるため、継続的な関心がある。
【0055】
図4は、時間軸に沿って大きさが増加するフィールド測定値からの偏波トランジェント間の到着時間の差の分布のグラフである。落雷と光接地線(OPGW)リンクの偏波トランジェントとの間には強い相関があり、トランジェントの周波数の分布は、落雷の周波数の分布から推測できる。これらのフィールド測定値に基づいて、雷によって引き起こされたと見なされるSOPトランジェントの大部分は、光モデム20によって追跡可能であり、光モデム20に取得を失わせる任意のSOPトランジェントの確率は小さいが有限であることが観察された。このデータには、雷雨の季節の間に53日間にわたって偏波計で検出された3086のトランジェント事象が含まれている。この例では、トランジェント事象は、6μsで少なくとも0.18radの偏向があると定義されている。
【0056】
図5は、フィールド測定値からの偏波トランジェント間の時間の分布のグラフである。
図5は、別の時間軸で表示された、
図4と同じデータを含む。テストされたリンクの場合、落雷間の平均時間は144秒であった一方、中央値の時間は0.5秒であった(リンクから5km以内の90774落雷から計算)。つまり、落雷は、束になって到着する傾向があり、落雷間の時間の分布は尾長状である。本明細書で説明するように、一束は、時間的に厳密に一致するトランジェント事象の集まりである。
【0057】
なお、
図4および5のフィールド測定値は、SOPトランジェントの到着時間統計の例を示している。すなわち、履歴測定値を使用すれば、SOPトランジェントの到着時間などの特性の確率分布関数(PDF)を導出できる。動作中、継続的な測定を行うことができ、統計を経時的に更新することができる。また、本システムおよび方法は、ネットワーク管理システム(NMS)、要素管理システム(EMS)、ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)コントローラなどを使用して、継続中の測定を統合し、統計を精緻化することができる。次に、このデータは、動的プロビジョニングで使用するために光モデム20に提供できる。
【0058】
SOPトランジェントの到着時間が密にクラスタ化されているので、SOPトランジェント事象が観察されると、次にすぐに他の事象が続く可能性が高い。一束内のトラッキング速度と静止SNRペナルティとの間の最適なトレードオフは、束と束の間の場合とは異なる。到着時間PDFのおおよその知識があれば、トランジェントが観察されると、第2の動作モードまたは第3の動作モードなどで、より高いトラッキング能力について光モデム20を動的にプロビジョニングできる。事象間の予想される分離に匹敵するホールドオフ時間にわたってトランジェントが観察されない度に、光モデム20は、ノイズがより低くトラッキング能力が小さい動作モードに戻ることができる。到着時間PDFの信頼性が向上するにつれて、低速トラッキングモードおよび高速トラッキングモードについての最適な設定とともに、ホールドオフ時間の選択、ならびにそうしてリンクの使用可能なマージンが向上する。これは、コントローラ150内などの光モデム20の内部で、またはNMS、EMS、SDNコントローラなどの内部などのオーケストレーションレベルで、機械学習のためのアプリケーション空間を提供して、リンクの知識が発展するにともなってプロビジョニングを発展させる。
【0059】
図6は、高速トラッキングモードで費やされた時間のパーセンテージと、高速トラッキングモード中に遭遇したSOPトランジェントのパーセンテージのグラフであり、両方ともホールドオフ時間の関数として示されている。300秒のホールドオフ時間の場合、光モデム20は、SOPトランジェント中に高速トラッキングモードにある可能性が77%である一方、全時間に対しては6%だけが高速トラッキングモードにある。同様に、900秒のホールドオフでは、SOPトランジェントの86%が高速トラッキングモードで遭遇した一方、そのモードは全時間に対しては10%であった。
【0060】
これらの測定が雷の頻度の高い期間に行われたことを考慮すると、使用寿命期間全体にわたっては、高速トラッキングモードで費やされた時間のパーセンテージは低くなる。ここでのアプローチは、異なるリンク上のさまざまに異なるデバイスによっておよびさまざまな地理的位置において、経時的に測定されたデータを考慮して、それに基づいて統計およびそれに関連するホールドオフ時間を発展させることを期待するものである。
【0061】
この前述を考えると、特定のトランジェントが追跡可能であることと、すぐ後に他のトランジェントが続くこととの両方の可能性が高い。次に、光モデム20においては、一組内の最初のトランジェントを検出してから、より速いトラッキングモードに移行することが有用である。これは慎重な決定となる。なぜなら、個々のSOPトランジェントが追跡される可能性が高い一方で、一組内で多数のSOPトランジェントが発生した場合には、少なくとも1つが追跡されなくなる可能性があるからである。したがって、トランジェントが検出された場合、パラメータを調整して、マージンを通常の動作では使用されないレベルまで減らすことができるが、高速偏波事象の予想が高い場合には、トラフィックヒットの確率は最小になる。
【0062】
図7は、光モデム20の動作モードを動的にプロビジョニングするための可変SOPトラッキングプロセス180のフローチャートである。可変SOPトラッキングプロセス180は、ループトラッキング帯域幅内の摂動に応答するようにプロビジョニングされたフィードバックループである。ループ帯域幅を増やすと、より高速な事象のトラッキングが可能になるが、より高い静止ノイズを犠牲にする。トランジェント事象の予想到着時間統計の部分的な知識を導入することにより、可変SOPトラッキングプロセス180は、考慮されるリンクの観察された変化に応じて、動作モードのプロビジョニングを動的に適合させてもよい。
【0063】
到着時間統計は、その動作環境のときの光モデム20にとって典型的な値で初期化されてもよい。機械学習技術を使用して、光モデム20によって行われた測定値を、他の光モデム20、端末、および/または回線機器、ならびに履歴のおよび予測の気象データ、製造データ、輸送データなどの外部ソースによる測定値を含み得る他のデータソースとともに含めることにより、到着時間分布の推定を改善してもよい。
【0064】
本明細書に与えられた例は、偏波トランジェント事象の検出に応じた偏波トラッキングモード間の光モデム20の遷移を説明している。重要な態様は、ネットワーク要素の性能を低下させる事象の統計的特性の部分的な知識を使用して、その機器の動的プロビジョニングを条件付けできることを認識することである。この例のフィードバックループは、偏波の変化を補償しているが、クロック、レーザ、またはその他のトランジェントにも同様に適応できる。動的プロビジョニングは、偏波トラッキングモードなどの個別の状態間で行うことも、ループゲインまたはその他の制御パラメータや設定の連続的な変動を伴うこともある。
【0065】
可変SOPトラッキングプロセス180は、本明細書で説明されるような予想到着時間統計を利用する偏波トラッキングアルゴリズムを説明する。予想到着時間の統計は、トランジェント事象が検出された後、高速トラッキングモードを維持するための最適なホールドオフ時間を選択するために使用される。
【0066】
アルゴリズムのステップは、次のように要約される。可変SOPトラッキングプロセス180を開始する。十分なマージンがない場合(ステップ181)、ならびにSOPトラッキングがデフォルト速度(マージンへの影響が最小となる低速トラッキング速度など)に設定されていない場合(ステップ182)、可変SOPトラッキングプロセス180は、光モデム20での偏波トラッキングをデフォルト速度に設定すること(ステップ183)を含む、すなわち過剰マージンがないために、過剰マージンを消費しないように偏波トラッキングを動作させる。光モデム20は、偏波トランジェントが検出されるまでこのデフォルトモードで動作することができる(ステップ184)。トラッキング速度がデフォルト速度であり、かつ十分なマージンがある場合(ステップ185)、可変SOPトラッキングプロセス180は、偏波トラッキングをより速い速度に増加すること(ステップ186)、すなわち偏波トラッキングを改善する目的ですでに存在する過剰マージンを消費することを含むことができる。
【0067】
より高速なトラッキングモードに切り替える決定は、エラー信号の大きさや偏波トラッキング回路のタップ係数の変動、事前順方向誤り訂正(FEC)のビット誤り率(BER)の変動、受信したシンボルで検出されたノイズの変化など、偏波アクティビティと相関するパラメータの光モデム20内で行われた測定に基づく。その決定では、偏波計測定値、気象データ、または他のモデムからの観測値などの外部データソースを考慮することもできる。
【0068】
トランジェントが検出され(ステップ184)、大きさが閾値Yより大きい場合(ステップ187)、可変SOPトラッキングプロセス180は、偏波トラッキング速度を調整するかどうかを評価する。トラッキング速度がすでに高速(または最速)のトラッキング速度である場合(ステップ188)、十分な大きさのトランジェントが検出されているのでホールドオフ時間はリセットされ(ステップ189)、可変SOPトラッキングプロセス180は、ステップ181に戻る。
【0069】
タッキング速度が高速(または最速)のトラッキング速度ではない場合(ステップ188)、可変SOPトラッキングプロセス180は、十分なマージンがあるかどうかを判定し(ステップ185)、そうである場合、可変SOPトラッキングプロセス180は、偏波トラッキングをより速い速度に上昇させること(ステップ186)を含むことができる。
【0070】
なお、トランジェント事象が予想される場合、十分なマージンは、標準の動作マージンより低く設定されてもよい。その目的は、静止ノイズプロセスからの寄与ならびにトランジェント事象によって引き起こされるエラーに依存する総エラー確率を最小化することである。
【0071】
十分なマージンがない場合(ステップ185)、それは、偏波トラッキングを増やすことがより多くのエラーにつながる可能性があるので得策ではないことになり、可変SOPトラッキングプロセス180は、ステップ184に戻ることを含む。
【0072】
トランジェントを検出せず(ステップ184)、Tより大きい大きさのトランジェントを経験せずに(ステップ187)、又はホールドオフ時間をリセットした後(ステップ189)に、十分なマージンがある場合(ステップ181)、可変SOPトラッキングプロセス180は、トラッキング速度を再び変更する前に、ホールドオフ時間が満了するのを待つ(ステップ190)。したがって、可変SOPトラッキングプロセス16は、チャネルを維持するために、切り替え前およびホールドオフが満了する前に十分なマージンをチェックして、FECの限界値を超えたOSNRマージンの低下を防ぐ。この場合、SOPトランジェントが原因でチャネルに断続的な障害が発生する可能性があるが、これは完全な障害よりも望ましい方法である。
【0073】
SOPトランジェントの検出率に関する統計を使用して、ネットワークのより高いレベルでの決定と、より高速なSOPトラッキングモードのいずれをラッチすべきかを通知してもよい。また、ホールドオフ時間は、フィールド測定値に関連する統計に基づいてもよい。
【0074】
動作モード/設定を変更する目的
この場合も、1つのアプローチとして、さまざまな動作モードを単に設定しっ放しにして、すべての使用可能なマージンを消費してもよい。たとえば、マージンが使用可能な場合は、常により高速な偏波トラッキングモードで動作させてもよい。ここでの問題は、これがさまざまな外乱に対処するための追加のマージンを残さないことである。当然のことながら、より高速な偏波トラッキングモードで費やす時間を少なくすれば、マージンが空き、他の外乱(レーザトランジェント、偏波依存損失(PDL)の実現など)の組み合わせを処理するだけでなく、容量マイニング(たとえば、ボーレートや変調フォーマットなどを増やして過剰な容量をマイニングする)をサポートする。
【0075】
本開示の価値は、かなりまれであり、一般に相関されておらず、異なる時間に発生する可能性が高いものなど、複数の外乱ソースを処理することである。たとえば、ある時間に一つの偏波バーストが存在してもよい。別の時間にレーザ周波数がジャンプすることがあってもよい。さらに別の時間に、非線形またはOSNRの変化を引き起こす電力トランジェントが存在してもよい。この場合、トランジェントが起こりそうにない時間の間に、個々の制御ループを低ノイズ条件にリセットすることが間違いなく役立つだろう。したがって、余分のマージンは、発生の確率が特定の時点で高くなる外乱のいずれかに割り当てることができる。
【0076】
マージンの低下として現れるリンクで問題が発生する可能性のある多くのものがある(たとえば、WSSピクセル、EDFA、挟まれたパッチコードなどの問題)。議論のために、これらの低下の原因をまとめて「ハードウェア障害」と呼ぶ。これらの問題は、修正可能な性質のものであり、サービスにしばらく時間がかかるため、次の状態を取りうる。
【0077】
まず、ハードウェア障害は、次のSOPトランジェントの到着時までには修復されない。SOPトラッキングは、より高速なトラッキングモードに切り替えることができずに、ヒットが発生する可能性があるが、追加のマージンが利用できない場合には、ヒットはより早く発生することになる。
【0078】
ハードウェア障害により、レシーバのFEC限界値のポイントを超えてOSNRが侵食され、チャネルが動作不能になってしまう可能性がある。リンクの動作不能状態を考えると、一部のフィードバックループのトラッキング能力を公称設定よりも低くして、これらの回路の静止ノイズを減らすことが望ましい場合がある。この条件では、SOPトランジェントなどの事象(トラッキングモードが低い場合に経験するものでさえ)が断続的な障害を表すため、動作不能なチャネルの代わりに断続的なもの(依然として望ましくないが一つの改善である)が存在する。
【0079】
したがって、ここでの目的は、一時的な期間に必要に応じて使用可能なマージンを利用することである。たとえば、使用中の光モデム20にヒットレスの変調形式の切り替えがある場合、追加のマージンを活用して、より高いカーディナリティの変調形式でほとんどの時間動作し、SOPトランジェントが予想されるときに、より低いカーディナリティの変調形式に切り替えてより高速なSOPトラッキングモードを使用するのに必要なマージンを空けることができる。
【0080】
一部のリンクでは、SOPトランジェントの到着率は、高速トラッキングモードで永続的に動作することがネットワークエラーを最小限に抑えるための正しいオプションであるという性質を持つことができる。この結果は、上記の確率分布を考慮したレシーバのプロビジョニングをなお有効にする。
【0081】
前述の説明は、SOPトランジェントに基づいて例示されている。当業者であれば、システムおよび方法が、他の検出されたトランジェントおよびそれらの統計的特性に基づいて動作モードを変更することを企図していると認識するであろう。また、動作モード(または条件)は、光増幅器などの光モデム以外の他のデバイスで変更されてもよい。たとえば、レーザ強度のトランジェントは、増幅された回線システムを起源としてもよい。その起点は、到来する信号のパワーを乱すファイバの曲がりなどの機械的なものであってもよいし、計画された再構成または計画外の中断など、回線システムでの光チャネルのアド/ドロップ事象に起因してもよい。増幅された回線システムは、レーザ強度のトランジェントの検出および関連する統計的特性に基づいて、その動作モードを一時的に変更できる(たとえば、ホールドオフ時間を使用できるなど)。別の例では、レーザ周波数の変動が、送信側または受信側の制御ループの問題に起因してもよいし(送信側または受信側はコヒーレントシステムであるため)、急速なシステム熱のトランジェントや不十分に抑制された後方反射などの外部システムの問題に起因してもよい。同様に、光モデムは、レーザ周波数の変動の検出および統計に基づいて動作モードを調整できる。
【0082】
レーザ周波数のトランジェントは、オペレータが隣接するカードを棚に収容したときや、オペレータが機器と物理的に相互作用する他のメンテナンス事象中に、送信レーザまたは受信レーザが受ける機械的衝撃によって引き起こされ得る。カードは、数時間のメンテナンスまたはインストールウィンドウの間に複数の機械的衝撃を受けて、その後数ヶ月の比較的静かな状態が続き得る。回線機器と相互作用するオペレータの物理的存在によって引き起こされるトランジェントは、オペレータが存在しない、すなわち統計的特性を持っている場合に、メンテナンス動作中に低い確率で、束で発生する事象の例である。機械的衝撃によって引き起こされたレーザ周波数のトランジェントなどのトランジェントが検出されると、次の数時間にわたる追加のトランジェントを検出する確率が増加し、光モデム20にとっては、静止ノイズの増加を犠牲にしても、トランジェントに対処するための増加した容量でプロビジョニング(動作設定)を選択することが有益になり得る。
サーバ
【0083】
図8は、NMS、EMS、SDNコントローラ、オーケストレーションプラットフォームなどを実現するために使用され得るサーバ200のブロック図である。一実施形態では、光モデム20の構成、ならびに統計、動作モードなどの更新は、光モデム20に通信可能に結合されたサーバを介して編成することができる。
【0084】
サーバ200は、ハードウェアアーキテクチャに関して、概してプロセッサ202、入出力(I/O)インターフェース204、ネットワークインターフェース206、データストア208、およびメモリ210を含むデジタルコンピュータであってもよい。当業者であれば、
図8が、過度に単純化した方法でサーバ200を示しており、実際の実施形態は、本明細書で詳細に説明していない既知または従来の動作機能をサポートする追加のコンポーネントおよび適切に構成された処理ロジックを含み得るということを理解するはずである。コンポーネント(202、204、206、208、および210)は、ローカルインターフェース212を介して通信可能に結合される。ローカルインターフェース212は、たとえば、当技術分野で知られているように、1つ以上のバスまたは他の有線または無線接続としてもよいが、これらに限定されない。
【0085】
プロセッサ202は、ソフトウェア命令を実行するためのハードウェアデバイスである。プロセッサ202は、任意の特注のまたは市販のプロセッサ、中央処理装置(CPU)、サーバ200に関連するいくつかのプロセッサのうちの補助プロセッサ、(マイクロチップまたはチップセットの形態の)半導体ベースのマイクロプロセッサ、または概してソフトウェア命令を実行するための任意のデバイスであり得る。サーバ200が動作中であるとき、プロセッサ202は、メモリ210内に格納されたソフトウェアを実行し、メモリ210との間でデータを通信し、ソフトウェア命令に従ってサーバ200の動作を総括的に制御するように構成される。I/Oインターフェース204は、1つ以上のデバイスまたはコンポーネントからのユーザ入力を受信するため、および/または1つ以上のデバイスまたはコンポーネントへのシステム出力を提供するために使用され得る。
【0086】
ネットワークインターフェース206は、サーバ200が、広域ネットワーク(WAN)、ローカルエリアネットワーク(LAN)などのようなネットワークを介して通信することを可能にするために使用され得る。たとえば、ネットワーク要素12、14は、ネットワークインターフェース206を介してサーバ200と通信することができる。データストア208は、揮発性メモリ要素(たとえば、ランダムアクセスメモリ(DRAM、SRAM、SDRAMなどのRAM))、不揮発性メモリ要素(たとえば、ROM、ハードドライブ、テープ、CDROMなど)、およびそれらの組み合わせのいずれかを含み得る。さらに、データストア208は、電子的、磁気的、光学的、および/または他のタイプの記憶媒体を組み込み得る。
【0087】
メモリ210は、揮発性メモリ要素(たとえば、ランダムアクセスメモリ(DRAM、SRAM、SDRAMなどのRAM))、不揮発性メモリ要素(たとえば、ROM、ハードドライブ、テープ、CDROMなど)、およびそれらの組み合わせのいずれかを含み得る。さらに、メモリ210は、電子的、磁気的、光学的、および/または他のタイプの記憶媒体を組み込み得る。なお、メモリ210は、さまざまなコンポーネントが互いに離れて配置されているが、プロセッサ202によってアクセスすることができる分散型アーキテクチャを有してもよい。メモリ210内のソフトウェアは、1つ以上のソフトウェアプログラムを含んでもよく、そのそれぞれは、論理機能を実装するための実行可能な命令の順序付きリストを含む。メモリ210内のソフトウェアは、適切なオペレーティングシステム(O/S)214および1つ以上のプログラム216を含む。オペレーティングシステム214は、1つ以上のプログラム216などの他のコンピュータプログラムの実行を本質的に制御し、スケジューリング、入出力制御、ファイルおよびデータ管理、メモリ管理、ならびに通信制御および関連サービスを提供する。1つ以上のプログラム216は、本明細書で説明されるさまざまなプロセス、アルゴリズム、方法、技法などを実装するように構成されてもよい。
【0088】
サーバ300は、それぞれが1つ以上の光モデムを備える1つ以上のネットワーク要素に通信可能に結合されたネットワークインターフェースと、ネットワークインターフェースに通信可能に結合されたプロセッサと、実行時にプロセッサに、1つ以上のネットワーク要素からの外乱に関連する測定値を取得させ、外乱の統計的特性を決定および更新することと、外乱を考慮して1つ以上の光モデムの動作のための1つ以上のネットワーク要素にホールドオフ時間を提供することとのうちの1つ以上を行わせる命令を格納したメモリと、を含むことができる。
【0089】
一実施形態では、サーバ300を介していくつかの予測機能が存在し得る。たとえば、サーバ200は、外部データソースおよびフィードなどを介して、天候を監視することができる。雷が発生しやすい日があることがわかっている場合は、偏波トラッキングを積極的に適応させることができる。ネットワークで光の再構成またはチャネルの再ルーティングもしくは追加を行う予定がある場合、光パワーの変化に反応する制御ループを、より高速な応答へと積極的に設定できる。
【0090】
別の実施形態では、サーバ200は、特定の光リンクまたはファイバ16、18までを含む特定の地理に相関する外乱関連データを受信し、統計を作成するように構成することができる。次に、これらは、最適な動作のためにそれぞれの光モデム20に提供することができる。
【0091】
本明細書で説明するように、外乱の統計的特性は、ネットワーク要素に固有または非固有の1つ以上の観測量で条件付けられる条件付き確率とすることができる。これらには、利用可能なマージン、この上のまたは他のネットワーク要素での障害の発生、時期、天気、製造データ、同じタイプまたは異なるタイプの他のネットワーク要素の履歴、ネットワークトポロジを挙げることができ、ネットワークの構成と状態には、干渉チャネルの存在と特性が含まれる。
【0092】
光モデム20を動的にプロビジョニングする決定は、先験的な情報がサーバ200を介して外部ソースから到来することができる条件付き確率に基づくことができる。たとえば、プロビジョニングは、ハリケーン中などの雷のトランジェントを検出する確率に基づくことができる。
【0093】
光モデム動作プロセス
図9は、光モデム20を動作させるプロセス300のフローチャートである。プロセス300は、第1の動作設定で動作させることと(ステップ301)、光モデムに関連する動作条件における外乱の検出または予測に応じて、外乱の統計的特性に基づいた期間にわたって、第2の動作設定で動作させることと(ステップ302)、を含む。プロセス300は、その期間の後に第1の動作設定に戻すこと(ステップ303)をさらに含むことができる。その期間は、第2の動作設定で動作し続けるホールドオフ時間とすることができ、ホールドオフ時間は、統計的特性に基づいて設定し、プロセス300は、外乱の後およびホールドオフ時間の満了の前に検出された追加の外乱毎にホールドオフ時間をリセットすること(ステップ304)をさらに含むことができる。プロセス300は、外乱の条件付き確率に応じて、期間にわたって第2の動作設定で動作させることであって、条件付き確率が、内部および外部データソースの任意の組み合わせから決定されることをさらに含むことができる。
【0094】
外乱の統計的特性は、到着時間、周期性、大きさ、変化率、時間的、および相関のうちの1つ以上を含むことができ、統計的特性は、経時的な測定を通じて決定することができる。外乱は、偏波トランジェントとすることができ、統計的特性には、期間を決定するために使用される偏波トランジェントの到着時間統計を含めることができる。
【0095】
外乱は、光周波数トランジェントおよび強度トランジェントのうちの1つ以上を含むレーザに影響を与えるトランジェントとすることができる。外乱は、光モデムを使用するネットワーク要素のクロックに影響を与えるトランジェントとすることができる。第2の動作設定は、期間にわたって、第1の動作設定に比べてマージンを減少させることができる。統計的特性は、フィールド測定値を取得するステップと、機械学習を利用して、取得したフィールド測定値に基づいて統計的特性を決定するステップとを実行するサーバによって決定することができる。
【0096】
本明細書で説明されるいくつかの例示的な実施形態は、マイクロプロセッサなどの1つ以上の汎用または専用プロセッサ(「1つ以上のプロセッサ」);中央処理装置(CPU);デジタルシグナルプロセッサ(DSP);ネットワークプロセッサ(NP)またはネットワークプロセッシングユニット(NPU)、グラフィックプロセッシングユニット(GPU)などのカスタマイズされたプロセッサ;フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA);その他同様なものを、その制御のための特有の格納されたプログラム命令(ソフトウェアおよびファームウェアの両方を含む)とともに含んで、特定の非プロセッサ回路と組み合わせて、本明細書に記載の方法および/またはシステムの機能の一部、大部分、またはすべてを実装してもよいことが理解されよう。あるいは、一部またはすべての機能は、プログラム命令が保存されていないステートマシンによって、または1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)によって実装されてもよく、そこでは、各機能または特定の機能のいくつかの組み合わせがカスタムロジックまたは回路として実装される。当然のことながら、前述のアプローチの組み合わせを使用してもよい。本明細書で説明するいくつかの例示的な実施形態では、ハードウェア内の、および任意選択でソフトウェア、ファームウェア、およびそれらの組み合わせを有する、対応するデバイスを、「~するように構成されたまたは適合した回路」、「~するように構成されたまたは適合したロジック」などと称し、さまざまな例示的な実施形態について本明細書で説明するデジタルおよび/またはアナログ信号に対する操作、ステップ、方法、プロセス、アルゴリズム、機能、技法などのセットを実行することができる。
【0097】
さらに、いくつかの例示的な実施形態は、コンピュータ、サーバ、アプライアンス、デバイス、プロセッサ、回路などをプログラミングするためのコンピュータ可読コードが格納された非一時的なコンピュータ可読記憶媒体を含んで、本明細書で説明されおよび請求された機能を実行してもよい。そのようなコンピュータ可読記憶媒体の例として、ハードディスク、光学記憶デバイス、磁気記憶デバイス、ROM(読み取り専用メモリ)、PROM(プログラマブル読み取り専用メモリ)、EPROM(消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ)、EEPROM(電気的消去可能プログラマブル読み取り専用メモリ)、フラッシュメモリなどが挙げられるが、これらに限定されない。非一時的コンピュータ可読媒体に格納される場合、ソフトウェアは、プロセッサまたはデバイスによって実行可能な命令(たとえば、任意のタイプのプログラマブル回路またはロジック)を含むことができ、その命令は、そのような実行に応じて、プロセッサまたはデバイスに、さまざまな例示的な実施形態について本明細書で説明されているように、操作、ステップ、方法、プロセス、アルゴリズム、機能、技法などのセットを実行させる。
【0098】
本開示は、好ましい実施形態およびその特定の例を参照して本明細書で図示および説明されたが、他の実施形態および例が同様の機能を実行し、および/または同様の結果を達成し得ることは当業者には容易に明らかであろう。そのような同等の実施形態および例はすべて、本開示の要旨および範囲内にあり、それによって企図され、以下の請求の範囲によってカバーされることが意図されている。