(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】排ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
F23G 7/08 20060101AFI20230411BHJP
G09B 9/00 20060101ALI20230411BHJP
F23G 7/06 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
F23G7/08 Z ZAB
G09B9/00 M
F23G7/06 101Z
(21)【出願番号】P 2021047258
(22)【出願日】2021-03-22
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】500561931
【氏名又は名称】JFEプロジェクトワン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】小山 斎
(72)【発明者】
【氏名】西本 奏
(72)【発明者】
【氏名】山口 博樹
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-034024(JP,A)
【文献】実開昭50-022236(JP,U)
【文献】特開平08-135945(JP,A)
【文献】特開平06-257727(JP,A)
【文献】米国特許第05643544(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 7/08
G09B 9/00
F23G 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可燃対象物の燃焼によって発生する濃煙を排ガスとして導入し、無煙無害化して大気放出する排ガス処理装置であって、
短火炎バーナーによる昇温によって前記排ガスを完全燃焼させ、無煙無害化させる燃焼炉を具備し、
前記燃焼炉の内部耐火材には、セラミックファイバーが使用されていることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
前記燃焼炉の炉内温度を測定する炉内温度センサと、
前記濃煙を前記排ガスとして導入する排ガス用ブロアと、
動作開始が指示された場合、前記炉内温度センサによって検出される前記炉内温度を監視しながら、前記
短火炎バーナーの火力及び前記排ガス用ブロアの風量を制御し、設定された昇温時間で前記炉内温度を動作温度に昇温させる制御装置と、を具備することを特徴とする請求項1記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記制御装置は、動作停止が指示された場合、前記炉内温度センサによって検出される前記炉内温度を監視しながら、前記
短火炎バーナーの火力及び前記排ガス用ブロアの風量を制御し、設定され降温時間で前記炉内温度を停止温度まで降温させることを特徴とする請求項2記載の排ガス処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実火災訓練等を目的として可燃対象物の燃焼により発生させた濃煙を排ガスとして処理する排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、消防関係者等の訓練対象者向けの火災訓練施設が存在する。
例えば、特許文献1を参照すると、火災現場に準じた臨場感で濃煙と熱気を体感させることができる濃煙熱気実火災訓練装置が記載されている。特許文献1の火災訓練装置は、安全性や汎用性にも配慮しつつ、消火技術向上や防災技術向上に資することができる。
【0003】
特許文献1の火災訓練装置は、濃煙を排煙として導入し、完全燃焼により無煙無害化されて大気放出する排煙処理装置を備えている。排煙処理装置は、導入された排煙を含むエアーが内部を流れる構造をなし、基端部側が該本体部の煙排気口に接続され、先端部側が大気放出口となると共に、バーナーと煙燃焼エリアと排煙ブロワが設けられている。バーナーは、導入された排煙を含むエアーを昇温せしめ、煙燃焼エリアでは、排煙が燃焼時間を確保されつつ完全燃焼される。排煙ブロワは、該本体部の濃煙つまり排煙を含むエアーを、煙排気口を介して排煙処理装置内へと導き、煙燃焼エリアは、排煙の完全燃焼に必要な滞留時間を確保するに足る距離寸法つまり長さ寸法に、排煙を含むエアーの流速を勘案しつつ、設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、火災訓練施設を建物内に設ける場合、排煙処理装置の重量によって設置場所が制約されてしまうため、排ガス処理装置の軽量化が求められている。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消し、軽量化された排ガス処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の排ガス処理装置は、可燃対象物の燃焼によって発生する濃煙を排ガスとして導入し、無煙無害化して大気放出する排ガス処理装置であって、短火炎バーナーによる昇温によって前記排ガスを完全燃焼させ、無煙無害化させる燃焼炉を具備し、前記燃焼炉の内部耐火材には、セラミックファイバーが使用されていることを特徴とする。
さらに、本発明の排ガス処理装置において、前記燃焼炉の炉内温度を測定する炉内温度センサと、前記濃煙を前記排ガスとして導入する排ガス用ブロアと、動作開始が指示された場合、前記炉内温度センサによって検出される前記炉内温度を監視しながら、前記短火炎バーナーの火力及び前記排ガス用ブロアの風量を制御し、設定された昇温時間で前記炉内温度を動作温度に昇温させる制御装置とを具備しても良い。
さらに、本発明の排ガス処理装置において、前記制御装置は、動作停止が指示された場合、前記炉内温度センサによって検出される前記炉内温度を監視しながら、前記短火炎バーナーの火力及び前記排ガス用ブロアの風量を制御し、設定され降温時間で前記炉内温度を停止温度まで降温させても良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、設備の小型化・軽量化が可能になって設置スペースが小さくて済むため、設置場所の制約を軽減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る排ガス処理装置の実施の形態の構成を示す構成図である。
【
図2】
図1に示す制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
本実施形態の排ガス処理装置1は、実火災訓練室10で発生する濃煙を無煙無害化して大気放出する装置であり、
図1を参照すると、排ガス用ブロア2と、燃焼炉3と、熱交換器4と、煙突5と、制御装置6とを備えている。
【0011】
実火災訓練室10は、待機室11と、燃焼発煙室12とが扉で仕切られ、燃焼発煙室12の奥側に燃焼発煙コーナー13が設けられている燃焼発煙コーナー13では、可燃対象物を燃焼させて、濃煙と熱気とを発生させる。可燃対象物としては、濃煙を発して燃焼する木材等が使用される。代表的には実際の火災を模して、個体(木質パレット、廃材、合板、間伐材等)、液体(灯油、軽油、ペンタン等)が使用される。
【0012】
排ガス用ブロア2は、実火災訓練室10に接続されたガス管X1を介して、実火災訓練室10で発生する濃煙を排ガスとして導入し、ガス管X2を介して燃焼炉3に供給する。
【0013】
燃焼炉3は、炉内を昇温するバーナー31と、炉内温度を検出する炉内温度センサ32とが設けられ、バーナー31による昇温によって排ガスを完全燃焼させ、無煙無害化させる。燃焼炉3によって無煙無害化された排ガスは、ガス管X3を介して煙突5に供給され、大気中に排出される。
【0014】
燃焼炉3の内部耐火材33には、アルミナ(Al2O3)とシリカ(SiO2)を主成分としたセラミックファイバーが使用されている。
【0015】
内部耐火材33にセラミックファイバーを使用することで、以下の示す効果を奏する。
(1)燃焼炉3の軽量化が計れ、設置場所に軽量化が要求される場合に有効である。内部耐火材33に火煉瓦を使用した場合と比較すると、1/3程度の重量になり、かなりの軽量化が計れる。
(2)使用前の乾燥焚きが不要になり経済的である。設置後の試運転等に省力化が計れる利点がある。
(3)短時間での昇温が可能になり燃料の省エネが計れる。常温から800℃までの昇温に30分以下で昇温可能になる。
(4)昇温だけでなく短時間の降温も可能になり、効率的であり、省エネにもなる。
(5)短時間での昇温、降温が可能であり、且つ度々の運転(昇温、降温及びON-OFF)も可能であり、消防訓練等の設備使用に適している。
【0016】
バーナー31は、V字型もしくはダクト型の短火炎バーナーが用いられている。短火炎バーナーは、燃料を旋回器を通して噴射することにより、火炎を円弧状(ラッパ状)のバーナータイルに添って半径方向に拡げ盃状の短火炎を発生させる。バーナー31に使用される燃料は、可燃性気体(天然ガス、LPG、コークス炉ガス等)であれば特に制限はない。
【0017】
バーナー31に短火炎バーナーを用いることで、以下の示す効果を奏する。
(1)排ガス中の酸素濃度が16%以上あれば、排ガス中の酸素が燃料ガスの一次空気として使用可能となり、燃料の燃焼空気を供給する必要がなくなる。従って、燃焼用ブロワが不要であるため省設備化と共に省スペース化が計れる。その為設備設置時のコスト低減に寄与する。
(2)同時に、燃焼用ブロワが削減できるため、その周りの配管、計装品、電気品、システムもシンプルになり温度制御等も簡略化される。設置工事もシンプルになり設備費も減少し、それに付随してランニングコストも減少する。
(3)低NOx燃焼が可能になり、環境対策に寄与する。
(4)排ガスと火炎との接触効率が多くなり、排ガス処理が効率よく実施されるため、環境対策に寄与する。
(5)燃焼用ブロワを設ける場合でも、低風圧差で燃焼が可能なため、燃焼用ブロワの風圧が低くでき、安価な燃焼用ブロワを使用でき、動力、騒音も抑えられ、省エネ、さらには環境にも寄与される。
【0018】
熱交換器4は、ガス管X2(排ガス用ブロア2と燃焼炉3を接続)を流れる排ガスと、ガス管X3(燃焼炉3と煙突5を接続)を流れる排ガスとの間で熱交換を行い、燃焼炉3に導入する前の排ガスを、燃焼炉3から排出される排ガスにて昇温する。燃焼炉3で使用する燃料の省エネになる。また、大気に放出する排ガスの温度もマイルドになり、環境対策にも寄与する。なお、設備費節約のため、熱交換器4がなくても対応可能である。
【0019】
制御装置6は、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置であり、
図2を参照すると、操作部7と、制御部8とを備えている。
【0020】
操作部7は、実火災訓練室10の待機室11に設けられており、昇温時間設定部71と、降温時間設定部72と、運転開始ボタン73と、運転停止ボタン74と、ランプ等の表示部75と、音声出力部76とを備えている。
【0021】
昇温時間設定部71は、昇温時間が表示される昇温時間表示部711と、昇温時間の増減させる昇温時間設定キー712とを備え、昇温時間の設定を受け付ける。
【0022】
降温時間設定部72は、昇温時間が表示される降温時間表示部721と、降温時間の増減させる降温時間設定キー722とを備え、降温時間の設定を受け付ける。
【0023】
運転開始ボタン73は、排ガス処理装置1に対する運転開始の指示を受け付ける入力手段である。また、運転停止ボタン74と、排ガス処理装置1に対する運転停止の指示を受け付ける入力手段である。
【0024】
表示部75は、燃焼炉3の炉内温度が予め設定された動作温度(例えば、800℃)に到達し、準備が整ったことを視覚的に報知する報知手段であり、ランプ等で構成される。また、音声出力部76は、燃焼炉3の炉内温度が動作温度に到達し、準備が整ったことを視覚的に報知する報知手段であり、ブザー等で構成される。
【0025】
制御部8は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータ等の情報処理部である。ROMには排ガス処理装置1の動作制御を行うための制御プログラムが記憶されている。制御部8は、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、制御プログラムをRAMに展開させることで、昇温制御部81、炉内温度制御部82、降温制御部83として機能する。
【0026】
昇温制御部81は、操作部7の運転開始ボタン73が操作されると、炉内温度センサ32によって検出される炉内温度を監視しながら、バーナー31の火力及び排ガス用ブロア2の風量を制御し、昇温時間設定部71によって受け付けた昇温時間で炉内温度を動作温度(例えば、800℃)に到達させる。これにより、専門知識を有するオペレータは必要なく、ボタン1個で排ガス処理装置1の動作を開始させることができる。また、昇温時間の設定が容易に可変でき、ユーザーの要求に容易に対応可能である。
【0027】
そして、昇温制御部81は、炉内温度が目標温度に到達すると、準備が整ったことを表示部75や音声出力部76によって報知する。なお、燃焼炉3の炉内温度が動作温度に到達しないと、環境対策上燃焼ガスの無害化処理ができず、訓練を開始できない。そのため、燃焼炉3の昇温制御が自動化されている。これにより、ユーザーは、準備が整ったことをすぐに確認できるため、効率的に訓練を開始できる。
【0028】
炉内温度制御部82は、動作中に、燃焼炉3の炉内温度が動作温度を下回ることなく、燃焼炉3の炉内に排ガスの滞留時間が設定時間(例えば、2分)以上になるように、バーナー31の火力及び排ガス用ブロア2の風量を制御する。
【0029】
降温制御部83は、操作部7の運転停止ボタン74が操作されると、炉内温度センサ32によって検出される炉内温度を監視しながら、バーナー31の火力及び排ガス用ブロア2の風量を制御し、降温時間設定部72によって受け付けた降温時間で炉内温度を予め設定された停止温度(例えば、50℃)に降温させる。なお、訓練終了後も訓練室内の有害物質を排出するために時間を要するため、動作温度を維持する時間を勘案した降温が実施される。これにより、専門知識を有するオペレータは必要なく、ボタン1個で排ガス処理装置1の動作を停止させることができる。また、降温時間の設定が容易に可変でき、ユーザーの要求に容易に対応可能である。
【0030】
本実施の形態の排ガス処理装置1により、燃焼炉3から排出されるガスは以下の通り、環境規制値以下での排ガス処理が可能である。
・硫黄酸化物(SOx):許容排出量(Nm3/h)=K×10-3×2He{Kは地域別に定める定数(一般排出基準はK=3.0~17.5)、Heは補正された排出口の高さ(煙突実高+煙上昇高)}
・ばいじん(C):一般排出基準=0.04~0.5g/Nm3
・窒素酸化物(NOx):60~950ppm(施設、規模ごとの排出基準)
・塩化水素(HCl):700mg/Nm3(施設ごとの排出基準)
・ダイオキシン類:5ng-TEQ/Nm3(施設規模:焼却能力2t/h未満)、1ng-TEQ/Nm3(施設規模:焼却能力2t/h-4t/h)、0.1ng-TEQ/Nm3(施設規模:焼却能力4t/h以上)
・排ガスの臭気に対しても処理可能(地域条例により悪臭基準を規定している地域あり。敷地境界線における規制基準の範囲としては、調香師による嗅覚試験を基礎として6段階臭気強度表示法によるものとし、その下限は臭気強度2.5に対する濃度とし、その上限は、地域の自然的、社会的条件により悪臭に対する順応がみられる場合があることを考慮し、臭気強度3.5に対する濃度としている。)
【0031】
以上説明したように、本実施の形態は、可燃対象物の燃焼によって発生する濃煙を排ガスとして導入し、無煙無害化して大気放出する排ガス処理装置1であって、バーナー31による昇温によって排ガスを完全燃焼させ、無煙無害化させる燃焼炉3を具備し、燃焼炉3の内部耐火材33には、セラミックファイバーが使用されている。
この構成により、設備の小型化・軽量化が可能になって設置スペースが小さくて済むため、設置場所の制約を軽減できる。
【0032】
さらに、本実施形態において、燃焼炉3の炉内温度を測定する炉内温度センサ32と、濃煙を排ガスとして導入する排ガス用ブロア2と、動作開始が指示された場合、炉内温度センサ32によって検出される炉内温度を監視しながら、バーナー31の火力及び排ガス用ブロア2の風量を制御し、設定された昇温時間で炉内温度を動作温度に昇温させる制御装置6とを備えても良い。
この構成により、専門知識を有するオペレータは必要なく、動作開始をボタン1個で指示するだけで排ガス処理装置1の動作を開始させることができる。
【0033】
さらに、本実施形態において、制御装置6は、動作停止が指示された場合、炉内温度センサ32によって検出される炉内温度を監視しながら、バーナー31の火力及び排ガス用ブロア2の風量を制御し、設定され降温時間で炉内温度を停止温度まで降温させても良い。
この構成により、専門知識を有するオペレータは必要なく、動作停止をボタン1個で指示するだけで排ガス処理装置1の動作を停止させることができる。
【0034】
さらに、本実施形態において、バーナー31は、短火炎バーナーでも良い。
この構成により、燃焼用ブロワが削減できるため、その周りの配管、計装品、電気品、システムもシンプルになり温度制御等も簡略化される。
【0035】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0036】
1 排ガス処理装置
2 排ガス用ブロア
3 燃焼炉
4 熱交換器
5 煙突
6 制御装置
7 操作部
8 制御部
10 実火災訓練室
11 待機室
12 燃焼発煙室
13 燃焼発煙コーナー
31 バーナー
32 炉内温度センサ
33 内部耐火材
71 昇温時間設定部
72 降温時間設定部
73 運転開始ボタン
74 運転停止ボタン
75 表示部
76 音声出力部
81 昇温制御部
82 炉内温度制御部
83 降温制御部
711 昇温時間表示部
712 昇温時間設定キー
721 降温時間表示部
722 降温時間設定キー
X1、X2、X3 ガス管