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▶ レンスゲン、インコーポレイテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】調節式眼内レンズデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/16 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
A61F2/16
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021099928
(22)【出願日】2021-06-16
(62)【分割の表示】P 2018528019の分割
【原出願日】2016-12-01
(65)【公開番号】P2021137638
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2021-07-09
(31)【優先権主張番号】62/261,790
(32)【優先日】2015-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】313005019
【氏名又は名称】レンスゲン、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ブレイディ、ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シルベストリーニ、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ラオ、ラムゴパル
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-515019(JP,A)
【文献】特表2015-526178(JP,A)
【文献】特表2010-514507(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0180404(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調節式眼内レンズデバイスであって
外側部分と、該外側部分に対して内側に間隔を置いて配置された内側部分とを含むハプティック構成要素であって、前記外側部分は、水晶体嚢と係合するように構成され、前記内側部分は、前記調節式眼内レンズデバイスの光軸に向かって半径方向内側に延在する、前記ハプティック構成要素と、
前記調節式眼内レンズデバイスの外側に配置された第1の側を有する可撓性膜と、反対側に設けられたオプティックと、前記可撓性膜と前記オプティックとを結合する円周方向周縁エッジと、前記可撓性膜の第2の側、前記オプティック、および前記円周方向周縁エッジの間に配置された途切れのない内側貯蔵器とを含む屈折力レンズであって、前記円周方向周縁エッジが、第1の外面と、前記第1の外面に対して半径方向内側に配置された第2の外面とを含み、前記第1の外面および前記第2の外面は半径方向外側を向いており、前記第1の外面および前記第2の外面によって、前記屈折力レンズおよび前記ハプティック構成要素の一方の前記屈折力レンズおよび前記ハプティック構成要素の他方に対する前記光軸に沿った移動を制限するために、前記ハプティック構成要素の前記内側部分を少なくとも部分的に受け入れるように構成された空間が画定される、前記屈折力レンズと、を備える調節式眼内レンズデバイス。
【請求項2】
前記空間は、前記調節式眼内レンズデバイスの前記光軸の少なくとも一部の周りに延在するチャネルを含む、請求項1に記載の調節式眼内レンズデバイス。
【請求項3】
前記ハプティック構成要素の前記内側部分は、前記屈折力レンズの前記円周方向周縁エッジの前記第1の外面に対して半径方向内側に延在する、請求項1に記載の調節式眼内レンズデバイス。
【請求項4】
前記内側部分の前記光軸に平行な方向における厚さが、前記外側部分の前記光軸に平行な方向における厚さよりも小さい、請求項1に記載の調節式眼内レンズデバイス。
【請求項5】
前記ハプティック構成要素が、不完全なリングを含む、請求項1に記載の調節式眼内レンズデバイス。
【請求項6】
前記調節式眼内レンズデバイスの前記屈折力レンズは、単一の不完全なリングによって完全に支持されている、請求項1に記載の調節式眼内レンズデバイス。
【請求項7】
前記ハプティック構成要素は、前記内側部分の半径方向外側に配置された前記光軸に平行な方向における第1の厚さから、前記内側部分における前記光軸に平行な方向における第2のより小さい厚さまでテーパ状となっている、請求項1に記載の調節式眼内レンズデバイス。
【請求項8】
前記ハプティック構成要素は、前記外側部分と前記内側部分との間に配置された外側貯蔵器を含み、前記外側貯蔵器は前記内側貯蔵器と流体連通している、請求項1に記載の調節式眼内レンズデバイス。
【請求項9】
前記可撓性膜は、前記調節式眼内レンズデバイスの前側に配置され、前記オプティックは、前記調節式眼内レンズデバイスの後側に配置される、請求項1に記載の調節式眼内レンズデバイス。
【請求項10】
前記オプティックの後面は、前記調節式眼内レンズデバイスが眼内に埋め込まれたときに、前記後面を通過した光が眼を横断して網膜に達するまでに、前記調節式眼内レンズデバイスの他の構成要素を通過しないように、水晶体嚢の内面と対向する、請求項9に記載の調節式眼内レンズデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、調節式眼内レンズデバイス、より詳細には、対象の目の水晶体嚢または溝における移植のために構成された調節式眼内レンズデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
技術的進歩により幅広い種類の眼疾患に対処するための高機能の治療介入が可能になるにつれ、目の外科手術が増えている。そのような手術が一般的に安全であり、患者の生活の質を著しく向上させる結果を生むことが分かってきたため、患者の承諾が過去20年間で増加してきた。
【0003】
白内障手術が依然として最も一般的な外科手術の1つであり、1600万件を上回る白内障手術が世界で実施されている。平均余命が上昇し続けると、この数は増加し続けることが予想される。白内障は、典型的には、目から水晶体を除去し、その空間に眼内レンズ(「IOL:intraocular lens」)を移植することにより治療される。従来のIOLデバイスは主に遠視力のために焦点が合わされるため、それらは老眼を補正することができず、老眼鏡が依然として必要とされる。したがって、標準的なIOL移植を受ける患者は、白内障に由来する混濁をもはや経験しない一方、近方視から遠方視へ、遠方視から近方視へ、およびその間の距離に調節または変更することができない。
【0004】
目の屈折異常を治すための手術も極めて一般的となっており、そのうち、LASIKがかなりの人気を得ており、毎年700,000件超実施されている。屈折異常の罹患率が高いこと、およびこの手術が比較的安全で効果的であることを考えると、ますます多くの人々が、従来の眼鏡またはコンタクトレンズよりもLASIKまたは他の外科手術に注目することが予想される。近眼治療にあたってのLASIKの成功にもかかわらず、従来のLASIK手術によって治療し得ない老眼を治すための効果的な外科的治療介入に対する満たされていない要求が残っている。
【0005】
ほぼ全ての白内障患者は老眼にも罹っているため、これらの状態の両方を治療することに対して市場の需要が集中している。白内障の治療において移植可能な眼内レンズを用いることが医師および患者の間で一般的に受け入れられている一方、老眼を治すための同様の手術は、米国の白内障市場の5%を占めているのみである。したがって、高齢化する人口の増加において、眼の白内障および/または老眼の両方に対応する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態では、高プロファイルまたは低プロファイルの一方を有する調節式眼内レンズデバイスである。調節式眼内レンズデバイスは、ベース組立体と屈折力レンズとを含み得る。ベース組立体は、第1開放端と、ベースレンズに結合された第2端と、中央空洞を囲むハプティック(haptic)とを含み得る。ハプティックは、外周と、内面と、第1エッジと第2エッジとの間の高さとを含み得る。屈折力レンズは、第1側と、第2側と、第1側および第2側を結合する周縁エッジと、流体を収納するように構成された閉鎖空洞とを含み得る。屈折力レンズは、中央空洞内に嵌合するように構成され得る。屈折力レンズの第1側は、ハプティックの第1エッジから所定の距離に配置され得る。
【0007】
任意選択的な一態様において、調節式眼内レンズは高プロファイルを有してもよく、所定の距離は約0mm~約0.75mmの範囲にある。別の任意選択的な態様において、所定の距離は、外周の高さの約0.01%~約37%であってもよい。
【0008】
別の任意選択的な態様において、調節式眼内レンズは低プロファイルを有してもよく、所定の距離は約0.75mm~約1.5mmの範囲にある。さらなる任意選択的な態様によると、所定の距離は外周の高さの約38%~約75%であってもよい。
【0009】
別の任意選択的な態様において、ハプティックの内面は中央空洞の方を向いていてもよく、この内面は、屈折力レンズの周縁エッジの一部に係合するように構成された複数の離間された接点を含み得る。
【0010】
別の任意選択的な態様において、外側溝は、ハプティックの高さの少なくとも一部に沿って延在するように設けられてもよい。外側溝は、ハプティックが半径方向に圧縮されるか、半径方向に拡張されるか、またはその両方となることを可能にするように構成され得る。外側溝は、内面接点の反対側の外周に配置されてもよい。
【0011】
別の任意選択的な態様において、ハプティックは、空洞内へ半径方向内向きに延在する複数のタブをさらに含み得る。屈折力レンズは、複数のタブによってベース組立体に固定されてもよい。一態様において、複数のタブは、屈折力レンズの第1側に接触するように構成された底面を含む。複数のタブの底面は、ハプティックの第1エッジから約0mm~約0.75mmの距離に配置され得る。タブの底面はまた、ハプティックの第1エッジから、ハプティックの高さの約0.01%~約37%の距離に提供されてもよい。別の態様によると、複数のタブの底面は、ハプティックの第1エッジから約0.75mm~約1mmの距離に配置され得る。タブの底面はまた、ハプティックの第1エッジから、ハプティックの高さの約38%~約75%の距離に提供されてもよい。
【0012】
別の任意選択的な態様において、ハプティックは、空洞内へ半径方向内向きに延在する複数のテーブルをさらに含み得る。ベース組立体に屈折力レンズを固定するために、複数のタブと複数のテーブルとの間にチャネルが形成されてもよい。
【0013】
別の任意選択的な態様において、調節式眼内レンズデバイスは、ハプティックにベースレンズを結合する複数のアームをさらに含み得る。複数のアームは、ベースレンズを中央空洞から離れるにつれて湾曲させ得る。
【0014】
別の任意選択的な態様において、屈折力レンズの第1側は、可撓性膜およびオプティックの一方を含んでもよく、屈折力レンズの第2側は、可撓性膜およびオプティックの他方を含み得る。屈折力レンズは、オプティックを周縁エッジに結合するために、周縁エッジを起点として配置されたオプティック結合器をさらに含み得る。オプティック結合器は、可撓性膜に向かってオプティックを湾曲させるために角度付けられ得る。
【0015】
別の任意選択的な態様において、屈折力レンズの閉鎖空洞に含まれる流体は、シリコーン油、フッ素化シリコーン油、ポリフェニルエーテル、およびフッ素化ポリフェニルエーテルからなる群から選択される1つまたは組合せであってもよい。フッ素化ポリフェニルエーテルは、ペンタフルオロm-フェノキシフェニルエーテルおよびm(ペンタフルオロフェノキシ)フェニルm-フェノキシフェニルエーテルの1つまたは組合せであってもよい。
【0016】
別の実施形態において、調節式眼内レンズデバイスが提供される。調節式眼内レンズデバイスは、ベースと屈折力レンズとを含み得る。ベースは、外側部分と、内側部分と、外側部分と内側部分との間に画定された閉鎖空間とを含み得る。閉鎖空間は、流体を含むように構成された貯蔵器を含み得る。内側部分は、実質的に円形の空間に外接してもよい。屈折力レンズは、一方の側に可撓性膜と、反対側にオプティックと、可撓性膜およびオプティックを結合する円周方向周縁エッジとを含み得る。円周方向周縁エッジの一部は、ベースの内側部分の少なくとも一部に面しているように構成され得る。
【0017】
任意選択的な一態様において、ベースはリングとして形成されてもよい。
別の任意選択的な態様において、ベースはベースレンズを含み得る。
別の任意選択的な態様において、ベースは、2つの閉鎖端を有する不完全なリングとして形成され得る。貯蔵器は、ベースの外周の一部の周りに約90~約350度で延在し得る。
【0018】
別の任意選択的な態様において、内側部分の厚さは外側部分の厚さ未満である。
別の任意選択的な態様において、貯蔵器は流体を含む。流体は、シリコーン油、フッ素化シリコーン油、ポリフェニルエーテル、およびフッ素化ポリフェニルエーテルからなる群から選択される任意の1つまたは組合せであってもよい。フッ素化ポリフェニルエーテルは、ペンタフルオロm-フェノキシフェニルエーテルおよびm(ペンタフルオロフェノキシ)フェニルm-フェノキシフェニルエーテルの1つまたは組合せであってもよい。
【0019】
別の任意選択的な態様において、屈折力レンズは、膜を周縁エッジと結合するために、円周方向エッジから半径方向内向きに延在する膜結合器をさらに含み得る。
別の任意選択的な態様において、屈折力レンズは、オプティックを周縁エッジに結合するために、円周方向周縁エッジを起点として配置されたオプティック結合器をさらに含み得る。オプティック結合器は、可撓性膜に向かってオプティックを湾曲させるために角度付けられている。
【0020】
別の任意選択的な態様において、ベースは、上フランジおよび下フランジであって、半径方向内向きに延在し、かつ屈折力レンズの周縁エッジを収容するよう適合されたチャネルを形成する上フランジおよび下フランジをさらに含み得る。
【0021】
別の任意選択的な態様において、貯蔵器は、外側貯蔵器と、内側貯蔵器と、外側貯蔵器と内側貯蔵器との間の狭窄したチャネルとを含み得る。内側貯蔵器は支持構造または編組構造を含み得る。
【0022】
別の任意選択的な態様において、ベースの内側部分に面している円周方向周縁エッジは、内側部分と物理的に直接接触していてもよい。
別の任意選択的な態様において、可撓性膜、オプティック、および円周方向周縁エッジが屈折力レンズ内に閉鎖空洞を画定する。閉鎖空洞は、流体を含むように構成され得る。流体は、シリコーン油、フッ素化シリコーン油、ポリフェニルエーテル、およびフッ素化ポリフェニルエーテルからなる群から選択される任意の1つまたは組合せであってもよい。フッ素化ポリフェニルエーテルは、ペンタフルオロm-フェノキシフェニルエーテルおよびm(ペンタフルオロフェノキシ)フェニルm-フェノキシフェニルエーテルの1つまたは組合せであってもよい。
【0023】
別の実施形態において、調節式眼内レンズデバイスのためのトーリックのベース組立体が提供される。トーリックのベース組立体は、トーリックのベース組立体に接続した状態で提供され得る屈折力レンズをさらに含む二部式調節式眼内レンズデバイスの一部として使用され得る。トーリックのベース組立体は、トーリックのベース組立体内に中心に提供された屈折力レンズへの半径方向圧縮力の非対称伝達を提供する。トーリックのベース組立体は、したがって、ベース組立体であって、ベースレンズと、ベースレンズを囲む実質的に円形のハプティックとを含むベース組立体を含み得る。実質的に円形のハプティックは、外周と、少なくとも1つの領域であって、ハプティックの可撓性がハプティックの残りの領域における可撓性より大きい、少なくとも1つの領域とを有してもよい。半径方向圧縮力を付与することにより、実質的に円形のハプティックの非対称的変形を生じさせることができ、実質的に円形のハプティックの非対称的変形により、ベースレンズおよび屈折力レンズの一方または両方においてトーリック屈折力変化が提供され得る。
【0024】
任意選択的な一態様において、少なくとも1つの領域は、実質的に円形のハプティックの両側に2つの領域を含み得る。
別の任意選択的な態様において、より大きい構造的可撓性は、少なくとも1つの領域の厚さを低減することによって提供され得る。
【0025】
別の任意選択的な態様において、より大きい構造的可撓性は、少なくとも1つの領域において円形のハプティックに1つまたは複数の成形された切欠きを形成することによって提供され得る。
【0026】
別の任意選択的な態様において、円形のハプティックは、外周の半径方向外向きに延在する少なくとも1つの部分を含み得る。
別の任意選択的な態様において、円形のハプティックは、外周の半径方向外向きに延在する2つの部分を含み得る。2つの領域は、円形のハプティックの両側にあってもよい。
【0027】
別の任意選択的な態様において、少なくとも1つの領域において、実質的に円形のハプティックは、外周の半径方向外向きに延在する少なくとも1つの部分を含み得る。
別の任意選択的な態様において、調節式眼内レンズデバイスは、外周から半径方向内向きに延在する1つまたは複数のタブをさらに含み得る。
【0028】
別の任意選択的な態様において、調節式眼内レンズデバイスは、円形のハプティックに係合するように構成された屈折力レンズをさらに含み得る。
別の任意選択的な態様において、実質的に円形のハプティックの非対称的変形によって、ベースレンズおよび屈折力レンズの両方においてトーリック屈折力変化が提供される。
【0029】
別の実施形態において、調節式眼内レンズデバイスは、屈折力レンズおよびベース組立体が結合または相互係止することを可能にする保持システムを提供され得る。調節式眼内レンズデバイスは、ベース組立体であって、第1開放端と、ベースレンズを含む第2端と、ベースレンズを囲むハプティックとを含むベース組立体とを含み得る。ハプティックは、空洞を囲む外周を含み得る。屈折力レンズは、空洞内に嵌合するような大きさにされてもよく、保持システムは、空洞内に屈折力レンズを固定するために提供されてもよい。
【0030】
任意選択的な一態様において、保持システムは、ハプティックから、かつ空洞内へ半径方向内向きに延在する複数のタブを含み得る。
別の任意選択的な態様において、保持システムは、屈折力レンズの周縁エッジから延在する複数のフィンと、ハプティックの内周内に画定された複数の対応する凹部とを含み得る。複数の凹部は、隆起部と隆起部の少なくとも一方の側にある進入経路とによってそれぞれ画定され得る。
【0031】
別の任意選択的な態様において、保持システムは、屈折力レンズの周縁エッジから外向きに延在する一対のフランジと、チャネルとを含み得る。チャネルは、ハプティックの内周において形成され得る。チャネルはまた、ハプティックの内周から延在する一対の対向するタブの間に形成されてもよい。
【0032】
別の任意選択的な態様において、保持システムは、ベース組立体の第1開放端から半径方向内向きに延在する複数のタブを含み得る。
別の任意選択的な態様において、ハプティックは実質的に円形である。
【0033】
別の実施形態において、屈折力レンズがベース組立体に取り付け可能であるか、または取り付けられている調節式眼内レンズデバイスが提供される。調節式眼内レンズデバイスは、ベース組立体と屈折力レンズとを含み得る。ベース組立体は、第1開放端と、第2開放端と、ベースレンズを囲む実質的に円形のハプティックとを含み得る。実質的に円形のハプティックは、外周と、空洞に向いている内周とを含み得る。屈折力レンズは、空洞内に嵌合するような大きさにされ得る。屈折力レンズは円周方向周縁エッジを含んでもよく、円周方向周縁エッジの少なくとも一部は、実質的に円形のハプティックの内周と係合し得る。
【0034】
任意選択的な一態様において、ベース組立体は、屈折力レンズの他にオプティックもレンズも含まない。
別の任意選択的な態様において、屈折力レンズの一部は、実質的に円形のハプティックに取り付けられ得る。屈折力レンズの、実質的に円形のハプティックに取り付けられる一部は、屈折力レンズの円周方向周縁エッジまたは後方エッジの一方または両方であり得る。
【0035】
別の任意選択的な態様において、屈折力レンズは、接着およびインサート成形からなる群から選択される1つまたは組合せにより、実質的に円形のハプティックに取り付けられ得る。
【0036】
説明された好ましい実施形態の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細の説明から当業者に明らかとなる。しかしながら、詳細な説明および特定の例は、本発明の好ましい実施形態を説明していると同時に、限定ではなく例証のために与えられていることを理解されたい。本発明の趣旨から逸脱することなく、本発明の範囲内にある多くの変化形態および修正形態がなされ得、本発明はそのような修正形態を全て含む。
【0037】
ここで、本開示の例示的な実施形態が添付図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1A】本開示の実施形態による、液体充填式のベース組立体の斜視図を示す。
図1B図1Aの液体充填式のベース組立体の断面図を示す。
図1C図1Aの液体充填式のベース組立体に挿入されている屈折力レンズの分解斜視図を示す。
図2A】本開示の実施形態による、液体充填式の開放ベースリングの斜視図を示す。
図2B図2Aの液体充填式の開放ベースリングの上面図を示す。
図2C図2Aの液体充填式の開放ベースリングの断面図を示す。
図3A】本開示の実施形態による、液体充填式の閉鎖されたベースリングの斜視図を示す。
図3B図3Aの液体充填式の閉鎖されたベースリングの上面図を示す。
図3C図3Aの液体充填式の閉鎖されたベースリングに結合された屈折力レンズの分解斜視図を示す。
図4A】本開示の実施形態による、液体充填式の閉鎖されたベースリングに結合された屈折力レンズの斜視図を示す。
図4B】本開示の実施形態による、液体充填式の開放ベースリングに連結された屈折力レンズの斜視図を示す。
図5A】本開示の実施形態による流体伝達システムを有する屈折力レンズの斜視図を示す。
図5B】本開示の実施形態による流体伝達システムの詳細図である。
図6A】本開示の実施形態によるトーリックのベース組立体の斜視図を示す。
図6B図6Aのトーリックのベース組立体の上面図を示す。
図7A】本開示の実施形態によるトーリックのベース組立体の斜視図を示す。
図7B図7Aのトーリックのベース組立体の上面図を示す。
図8A】本開示の実施形態によるベース組立体の斜視図を示す。
図8B図8Aのベース組立体の上面図を示す。
図8C図8Aのベース組立体の断面図を示す。
図9A】本開示の実施形態による、ベース組立体のベースレンズのより近くに屈折力レンズを配置するように構成された調節式IOLの斜視図を示す。
図9B図9Aの調節式IOLの上面図を示す。
図9C図9Aの調節式IOLの断面図を示す。
図10A】本開示の実施形態による、低プロファイル調節式IOLの分解斜視図を示す。
図10B図10Aの低プロファイル調節式IOLの斜視図を示す。
図10C図10Aの低プロファイル調節式IOLの上面図を示す。
図10D図10Aの低プロファイル調節式IOLの斜視断面図を示す。
図11A】本開示の実施形態による、ベース組立体とフィンロックを有する屈折力レンズとを含む調節式IOLの斜視図を示す。
図11B図11Aの分解調節式IOLの斜視図を示す。
図11C図11Aの調節式IOLの上面図を示す。
図11D図11Aの調節式IOLの断面図を示す。
図12A】本開示の実施形態による、ベース組立体とプレートハプティックを備えた屈折力レンズとを有する分解調節式IOLの斜視図を示す。
図12B図12Aの調節式IOLの分解平面図を示す。
図12C図12Aの調節式IOLの屈折力レンズの上面図を示す。
図12D図12Aの調節式IOLの上面図を示す。
図12E図12Aの調節式IOLの断面図を示す。
図12F図12Aの調節式IOLの底部斜視図を示す。
図13A】本開示の実施形態による、拡張されたタブを有するベース組立体の斜視図を示す。
図13B図13Aのベース組立体の上面図を示す。
図13C図13Aのベース組立体の断面図を示す。
図14A】本開示の実施形態による、ベースリングの斜視図を示す。
図14B図14Aのベースリングの上面図を示す。
図14C図14Aのベースリングの断面図を示す。
図14D図14Aのベースリングの代替的断面図を示す。
図14E図14Dのベースリングに組み込まれ得るメッシュ編織物の斜視図を示す。
図15A】本開示の実施形態による、一部片ベース組立体と屈折力レンズとを有する調節式IOLの斜視図を示す。
図15B図15Aの調節式IOLの上面図を示す。
図15C図15Aの調節式IOLの断面図を示す。
図15D図15Aの調節式IOLの底部斜視図を示す。
図16A】本開示の実施形態による間隙なしベース組立体を有する調節式IOLの斜視図を示す。
図16B図16Aの調節式IOLの側面平面図を示す。
図16C図16Aの調節式IOLにおいて用いられ得る間隙なしベース組立体の斜視図を示す。
図16D図16Aの調節式IOLにおいて用いられ得る屈折力レンズの斜視図を示す。
図16E図16Aの調節式IOLの上面図を示す。
図16F図16Aの調節式IOLの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
同様の符号が、いくつかの図面にわたって同様の構成要素を指す。
ここで、本発明の特定の非限定的な実施形態が図面を参照して説明される。そのような実施形態は一例であり、本発明の範囲内にあるごく少数の実施形態を例示するためのものに過ぎないことを理解されたい。本発明が関連する技術分野の当業者に明らかな様々な変化形態および修正形態は、本発明の趣旨、範囲および意図内にあるとみなされる。
【0040】
本明細書において説明された調節式眼内レンズ(IOL)の様々な実施形態、およびベースレンズに関連した屈折力レンズの屈折力変化特徴部を含み得る。任意選択的な一実施形態において、IOLの屈折力変化特徴部は、可撓性膜とレンズまたはオプティックとを含む屈折力レンズの閉鎖容積内の流体オプティックにより駆動される。この実施形態の1つの大きい利点は、可撓性膜およびレンズから離間した屈折力レンズの閉鎖容積が実質的に一定の容積を保ち、したがって、実質的な容積変化、すなわち、流体が貯蔵器から室内へ供給されることを必要とする流体オプティックIOLと関連する問題の多くを回避するという点である。変化する容積を有する流体オプティックにより呈される多くの欠点には、不均一な屈折力変化およびバックリングが含まれる。本明細書において開示されたIOLおよび屈折力レンズの特定の実施形態は、屈折力変化の範囲全体にわたって良好な光学品質を維持すると同時に実質的に一定の容積を維持することにより、そのような問題を回避または緩和することができる。追加的に、本明細書において説明されたとおり屈折力レンズおよびベース組立体の二部式組立体を含むIOLの様々な実施形態は、移植のために必要な切り込み大きさが実質的により小さくなるように、より小さい送達プロファイル、より小さい移植プロファイル、またはその両方を提供する。これには、同様に、より大きいIOLの送達および移植に関連する生体適合性問題を減らすという付随する利点があってもよく、より速い治癒およびより安定的な屈折を生じさせ得る。
【0041】
本明細書において開示されたIOLはいくつもの方法で構成され得る。概して、IOLは、ベース組立体と、ベース組立体内で結合され得る屈折力レンズとを含み得る。一実施形態において、移植されたIOLに印加された半径方向圧縮力は、可撓性膜に曲率を変化させるように、屈折力レンズの可撓性膜上に集中し得る。屈折力レンズのレンズまたはオプティックは、その曲率の変化に応じて可撓性膜に向かって軸方向に移動するように構成され得る。この軸方向変位は、オプティックが浮遊することを可能にする方法でIOLの周縁エッジにオプティックを結合することにより容易になり得る。屈折力レンズの可撓性膜の曲率が変化すると、流体の粘性または表面張力が、屈折力レンズのオプティックまたはレンズを可撓性膜に向かって引くことができる。別の実施形態において、屈折力レンズに印加された半径方向圧縮力は、オプティックを軸方向に変位させ、かつ可撓性膜の曲率の変化を達成するためにオプティックの軸方向変位と同じ方向に可撓性膜を押すように、オプティックに集中され得る。なおさらなる実施形態において、屈折力レンズへの半径方向圧縮力は、オプティックおよび可撓性膜の両方に、それぞれ軸方向変位および曲率の変化を引き起こすために付与されてもよい。
【0042】
さらなる実施形態において、屈折力レンズに印加された半径方向圧縮力は、半径方向圧縮中に一定の容積を保ちつつ、可撓性膜の曲率の変化を引き起こすため、および可撓性膜に向かってのオプティックの軸方向変位を引き起こすために、可撓性膜およびオプティックの一方または両方に加えられ得る。
【0043】
一実施形態において、「一定の容積」という用語は、その静止状態から約1%以下、その静止状態から約2%以下、その静止状態から約3%以下、その静止状態から約4%以下、その静止状態から約5%以下、その静止状態から約10%以下、その静止状態から約15%以下、その静止状態から約20%以下、その静止状態から約25%以下、その静止状態から約30%以下、その静止状態から約35%以下、その静止状態から約40%以下、その静止状態から約45%以下、その静止状態から約50%以下、その静止状態から約55%以下、その静止状態から約60%以下、その静止状態から約65%以下、その静止状態から約70%以下、およびその静止状態から約75%以下だけ変化する容積を含む。別の実施形態において、「一定の容積」という用語は、前述の値の任意の2つを含むこれらの間の範囲において変化する容積を指す。「静止状態」という用語は、半径方向圧縮力がIOLまたは屈折力レンズに付与されていないときのIOLまたは屈折力レンズの構成を説明するものである。
【0044】
本明細書で使用される際、「屈折力レンズ」という用語は、半径方向に圧縮または拡張する力を付与することに応じてある範囲の調節または屈折補正を提供する組立体を指してもよい。一実施形態において、屈折力レンズは、約1ディオプトリ、約2ディオプトリ、約3ディオプトリ、約4ディオプトリ、約5ディオプトリ、約6ディオプトリ、約7ディオプトリ、約8ディオプトリ、約9ディオプトリ、約10ディオプトリ、約11ディオプトリ、約12ディオプトリ、約13ディオプトリ、約14ディオプトリ、約15ディオプトリ、約16ディオプトリ、約17ディオプトリ、約18ディオプトリ、約19ディオプトリ、または約20ディオプトリの調節の範囲を提供し得る。別の実施形態において、屈折力レンズは、前述の値の任意の2つを含むこれらの間の調節の範囲を提供し得る。「屈折力レンズ」という用語はまた、組立体であって、第1側と、第2側と、第1側および第2側を結合する周縁エッジと、流体を収納するように構成された閉鎖空洞とを含む組立体を含み得る。一態様において、第1側および第2側は可撓性膜であってもオプティックであってもよい。別の態様によると、第1側は可撓性膜またはオプティックの一方であってもよく、第2側は可撓性膜またはオプティックの他方であってもよい。さらなる態様において、屈折力レンズは、調節の範囲全体にわたって一定の容積を有する液体充填式の閉鎖された空洞を有するとしてさらに特徴付けられてもよい。
【0045】
本明細書において開示された二部式調節式IOLデバイスの特定の実施形態は、それらの個別の二部構造を原因とするいくつかの利点を提供し得る。二部IOLデバイスの移植は、著しく縮小された切込みの大きさを必要とし得るが、これは、IOLデバイスの2つの部分(例えば、ベース組立体および屈折力レンズ)が別個に移植され、したがって、移植のための送達プロファイルを著しく低減させるためである。縮小された切込みの大きさは、麻酔および切り込み部位を閉じるための縫合の必要性をなくすことを含むいくつかの利点とより良い手術結果とを提供し得る。一実施形態において、二部式調節式IOLデバイスを移植するのに必要とされる切込みの大きさは、約5mm未満、約4mm未満、約3mm未満、または約2mm未満である。換言すると、二部式調節式IOLデバイスの各部は、約5mm未満、約4mm未満、約3mm未満、または約2mm未満の送達プロファイルを有する送達状態で提供され得る。二部式調節式IOLデバイスの各部の送達状態は、送達のためにその大きさを縮小させるために各部が巻かれるか、折り畳まれるか、またはそうでなければ圧縮されるときに提供され得る。送達状態になるように折りたたむか巻くのを円滑にするために、ヒンジまたは所定の折り目がベース組立体および屈折力レンズの一方または両方に提供され得る。
【0046】
追加的に、手術中のIOLの大きさ決めおよび屈折力の調整に関して、より大きい制御が得られる。水晶体嚢内にベース組立体を移植することは、医師に患者の水晶体嚢の大きさに関する印象を提供し、したがって、後にベース組立体に実装されることになる屈折力変更レンズの正しい大きさを選択することを促進することになる。
【0047】
図1Aは、調節式IOLの液体充填式のベース組立体100の実施形態の斜視図を示す。図1Bは、液体充填式のベース組立体100の断面図を提供する。図1A~1Bに示されたベース組立体100は、ベースレンズ110と、ベースレンズ110の周りに実質的に円周方向に配置されたハプティックシステム120とを含み得る。ハプティックシステム120は、個別の屈折力レンズ、例えば、それぞれ図1Cおよび3Cに示される屈折力レンズ195、350を受承するような大きさにされ、かつそのように構成され得る。屈折力レンズ195、350は、二部式調節式IOLデバイスを形成するためにベース組立体100内に挿入され得る。
【0048】
一実施形態において、ハプティックシステム120は、ハプティックシステム120の少なくとも一部を通って延在する貯蔵器130を含み得る。一態様によると、貯蔵器130は、図2A~2Cおよび4Bに示されるとおり、貯蔵器130が、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも120、少なくとも130、少なくとも140、少なくとも150、少なくとも160、少なくとも170、少なくとも180、少なくとも190、少なくとも200、少なくとも210、少なくとも220、少なくとも230、少なくとも240、少なくとも250、少なくとも260、少なくとも270、少なくとも280、少なくとも290、少なくとも300、少なくとも310、少なくとも320、少なくとも330、少なくとも340、少なくとも350、または約360度を有するように、ハプティックシステム120の外周の一部の周りに延在し得る。別の態様によると、貯蔵器130は、任意の2つの前述の値、例えば180度~270度の間にあり、それらを含む範囲内において、ハプティックシステム120の外周の一部の周りに延在し得る。別の態様によると、貯蔵器130は、図1A~1Cに示された実施形態において提供されるとおり、ハプティックシステム120の外周全体の周り、例えば360度にわたって延在し得る。
【0049】
貯蔵器130は、内側領域180および外側領域150により画定または境界付けられ得る。貯蔵器130は流体(例えば、液体または気体)を含むように構成される。特定の実施形態において、流体は、シリコーン油、フッ素化シリコーン油、ポリフェニルエーテル、およびフッ素化ポリフェニルエーテルからなる群から選択され得る。フッ素化ポリフェニルエーテルは、ペンタフルオロm-フェノキシフェニルエーテルおよびm(ペンタフルオロフェノキシ)フェニルm-フェノキシフェニルエーテルの1つまたは組合せであってもよい。貯蔵器130に含まれる流体は、ハプティックシステム120の外側領域150に印加された力を内側領域180に分配するように機能し得る。例えば、貯蔵器130に含まれる流体は、ハプティックシステム120の外側領域150に印加された圧縮力、例えば毛様筋の弛緩から生じた力を内側領域180に実質的に均等に伝達するために使用され得る。内側領域180に伝達された力は、続いて、ベース組立体100内の中央に結合された屈折力レンズ(それぞれ図1Cおよび3Cに示された195、350)に伝達され得る。代替的にまたは加えて、内側領域180に伝達された力は、ベースレンズ110に伝達され得る。
【0050】
液体充填式のベース組立体100は、上フランジ160および下フランジ170であって、ハプティックシステム120から、少なくともハプティックシステム120の外周の一部に沿って内向きに延在する上フランジ160および下フランジ170とを含み得る。上フランジ160および下フランジ170は、液体充填式のベース組立体100へ屈折力レンズ195を固定するように構成されたチャネルを画定する。図1Cは、ベース組立体100に挿入されている屈折力レンズ195の分解斜視図を示し、屈折力レンズ195の周縁エッジ197は、上フランジおよび下フランジ160、170により画定されたチャネル内に嵌合するよう構成される。追加的に、周縁エッジ197の全体ではなくても周縁エッジ197の少なくとも一部は、調節を提供するために、内側領域180に伝達された力を屈折力レンズ195の第1側および第2側196、199の一方または両方に効果的に伝達するために、内側領域180に係合するか、または直接接触するように構成される。上で説明されたとおり、第1側および第2側は可撓性膜またはオプティックであってもよく、または代替的に、第1側は可撓性膜またはオプティックの一方であってもよく、第2側は可撓性膜またはオプティックの他方であってもよい。
【0051】
図2Aは、調節式IOLの液体充填式の開放ベースリング200の斜視図を示す。図2Bおよび2Cは、液体充填式の開放ベースリング200のそれぞれ上面図および断面図を示す。液体充填式の開放ベースリング200は、図1A~1Cを参照して上で検討された液体充填式のベース組立体100の代替的実施形態を示し、かつ図1Cに関して示された屈折力レンズ195に関連して使用され得る。液体充填式の開放ベースリング200は、ハプティックシステム210を含む。液体充填式の開放ベースリング200は、液体充填式の開放ベースリング200がベースレンズを含まないという点で図1のベース組立体100と異なる。したがって、任意の視覚的矯正は、液体充填式の開放ベースリング200に、図1Cに関連して示された方法により挿入された屈折力レンズ195によって提供されなければならない。
【0052】
一実施形態において、液体充填式の開放ベースリング200は開放リングであり、すなわち、これは完全なリングではない。一実施形態において、液体充填式の開放ベースリング200は、2つの閉鎖端210A、210Bであって、その外周が360度未満である2つの閉鎖端210A、210Bを有するC字形として提供される。別の実施形態において、流体で満たされた開放ベースリング200は、実質的に約360度の円形状として提供されるが、一対の閉鎖端を含んでおり、内側空洞250が連続的な外周容積ではなく一対の閉鎖端を有する円周方向の容積を含むようになっている。両方の実施形態は、液体充填式の開放ベースリング200が、ハプティック210の中央領域内に定義された直径を拡大させ、かつ様々な直径の屈折力レンズを収容することを可能にする。屈折力レンズの周辺部の一部が、液体充填式の開放ベースリング200により接触されず、したがって、屈折力レンズの周辺部の接触されていない一部が、液体充填式の開放ベースリング200により印加された半径方向内向きの力を受けないことになることから、C字形の、すなわち不完全なリング構成は、また屈折力レンズのトーリック変形または不均一な変形を可能にする。したがって、一実施形態において、液体充填式の開放ベースリング200内に実装された屈折力レンズ195の非対称半径方向圧縮を提供するために、液体充填式の開放ベースリング200は、液体充填式の開放ベースリング200内に提供または結合された屈折力レンズ195の外周(周縁エッジ197)の所定の一部のみの周りに半径方向圧縮力を伝達することができる。
【0053】
一実施形態において、液体充填式の開放ベースリング200は、少なくとも180、少なくとも190、少なくとも200、少なくとも210、少なくとも220、少なくとも230、少なくとも240、少なくとも250、少なくとも260、少なくとも270、少なくとも280、少なくとも290、少なくとも300、少なくとも310、少なくとも320、少なくとも330、少なくとも340、少なくとも350、または360度を有する。前述の実施形態の各々において、流体で満たされた開放ベースリングは、前述の値の任意の2つの間の範囲で提供された角度を画定する外周を有する。
【0054】
液体充填式の開放ベースリング200は、上フランジおよび下フランジ220および230であって、その間にチャネル240を形成する上フランジおよび下フランジ220および230を含む。チャネル240は、屈折力レンズを受けかつ固定するように構成され得る。ハプティックシステム210は、貯蔵器250であって、ハプティックシステム210の少なくとも一部を通って、例えば実質的にハプティックシステム210全体の周りに延在する貯蔵器250(図2C参照)を含む。ハプティックシステム210は、貯蔵器250を画定する内側壁260と外側壁270とを含み得る。一実施形態において、内側壁260は外側壁270の厚さ未満の厚さを有してもよい。内側壁260の厚さは、外側壁270の厚さの約90%、約80%、約70%、約60%、約50%、約40%、約30%、約20%、約10%および約5%であってもよい。内側壁260の厚さはまた、前述の値の任意の2つを含むこれらの間の範囲内にあってもよい。
【0055】
貯蔵器250は、流体を含むように構成され得る。特定の実施形態において、流体は、シリコーン油、フッ素化シリコーン油、ポリフェニルエーテル、およびフッ素化ポリフェニルエーテルからなる群から選択されてもよい。フッ素化ポリフェニルエーテルは、ペンタフルオロm-フェノキシフェニルエーテルおよびm(ペンタフルオロフェノキシ)フェニルm-フェノキシフェニルエーテルの1つまたは組合せであってもよい。貯蔵器250に含まれる流体は、ハプティックシステム210の外側壁270に印加された力を内側壁240に分配するために機能し得る。例えば、貯蔵器250に含まれる流体は、ハプティックシステム210の周辺部に印加された圧縮力、例えば、毛様筋の収縮および/または弛緩から生じた力を実質的に均等に伝達するために使用されてもよい。内側壁260に伝達された力は、その後、チャネル240に含まれる屈折力レンズに伝達されてもよい。
【0056】
図3Aは、本開示の別の実施形態による、液体充填式のベースリング300の斜視図を示す。図3Bは、液体充填式のベースリング300の上面図である。液体充填式のベースリング300は、図2A~Cの液体充填式の開放ベースリング200と実質的に同様であり、主な違いは、液体充填式のベースリング300が開放リングではなく、閉鎖リングであるという点である。液体充填式のベースリング300はまた、リング形のハプティックシステム310を含み得る。液体充填式のベースリング300はまた、ハプティックシステム310から半径方向内向きに延在する上フランジ320と下フランジ330とを含み得る。上フランジ320および下フランジ330は一緒に、液体充填式のベースリング300の中央部分内に屈折力レンズを固定するように構成されたチャネルを画定する。内側壁340が、上フランジ320と下フランジ330との間に画定される。図1および2の実施形態で上述のとおり、ハプティックシステム310の外側壁に(例えば、目の毛様筋により)印加された外部力は、液体充填式のベースリング300を通ってハプティックシステム310の内側壁340(チャネル)に伝達され、チャネルに挿入された屈折力レンズに力が印加され得る。
【0057】
図3Cは、液体充填式のベースリング300に結合されるように構成された屈折力レンズ350の分解斜視図を示す。液体充填式のベースリング300は、調節式IOLを形成するために屈折力レンズ350を固定するように構成される。
【0058】
様々な実施形態において、屈折力レンズ350は、一方の側に可撓性膜352、反対側にオプティック354、および可撓性膜とオプティック354とを結合する円周方向周縁エッジ358を含む。周縁エッジ358に膜352を結合するために、膜結合器356が、円周方向周縁エッジ358の内側から半径方向内向きに延在し得る。任意選択的な一態様によると、周縁エッジ358の少なくとも一部は、液体充填式のベースリング300の内側壁340と直接接触する。別の任意選択的な態様によると、周縁エッジ358全体が、液体充填式のベースリング300の内側壁340と直接接触する。周縁エッジ358にオプティック354を結合するために、屈折力レンズ350が、円周方向周縁エッジ358の内側から半径方向内向きに延在するオプティック結合器360を含み得る。好ましくは、オプティック結合器360は、可撓性膜352に向かってオプティック354が湾曲するように、可撓性膜352に向かって角度付けられている。例えば、図9Cの屈折力レンズ920および図10Dの屈折力レンズ1020を例示的な断面図として参照。したがって、一実施形態において、屈折力レンズ350は、図9Cの屈折力レンズ920または図10Dの屈折力レンズ1020と同一であり得る。
【0059】
調節式IOLの他の例が、調節式眼内レンズ(Accommodating Intraocular Lens)という名称の米国特許出願公開第2013/0053954号明細書、調節式眼内レンズ(Accommodating Intraocular Lens)という名称の米国特許出願公開第2014/0180403号明細書、移植された眼内レンズの屈折力を調整するための方法およびシステム(Method and System for Adjusting the Refractive Power of an Implanted Intraocular Lens)という名称の米国特許出願公開第2015/0105760、および調節式眼内レンズ(Accommodating Intraocular Lens)という名称の米国特許出願公開第14/447,621号明細書において開示されており、これらの全ての内容は、あたかも本明細書において完全に説明されているかのようにそれらの全体が参照により組み込まれる。上で引用された参照文献において調節式眼内レンズに関して開示された特徴の任意のものが、本明細書において開示されたベース組立体、屈折力レンズ、または調節式IOLのいずれかに適用され得る。例えば、米国特許出願公開第2013/0053954号明細書、同第2014/0180403号明細書、および同第2015/0105760号明細書において公開された様々な一部片調節式IOL実施形態が屈折力レンズ350として用いられ得る。米国特許出願公開第14/447,621号明細書は、ベース組立体とベース組立体に挿入された屈折力レンズとを用いる二部式調節式IOLを開示する(調節式IOLまたはIOLと呼ばれることもある)。様々な実施形態が可能であることを理解されたい。
【0060】
図4Aは、液体充填式のベースリング300に結合された屈折力レンズ350の斜視図を示す。図4Bは、液体充填式の開放ベースリング200に結合された屈折力レンズ350の斜視図を示す。一態様によると、円周方向周縁エッジ358の少なくとも一部のみが、液体充填式のベースリング200、300の内側壁240、340と物理的に直接接触している(例えば、図4B)。別の態様によると、円周方向エッジ358全体が、液体充填式のベースリング300の内側壁340と直接接触する(例えば、図4A)。
【0061】
図5Aは、本開示の実施形態による流体交換屈折力レンズ500の斜視図を提供する。図5Aに示される屈折力レンズ500は、例えば図3Cに示された屈折力レンズ350に関して説明されたとおりのコンポーネントを含み得る。様々な実施形態において、屈折力レンズ500は、貯蔵器であって、調節式IOLの一部を形成する液体充填式のベース組立体に移送させられ得る流体を格納するための貯蔵器を含む。屈折力レンズ500は、液体充填式のベース組立体に着脱可能に結合されるように構成された流体伝達バルブ510を含む(図5B参照)。流体伝達バルブ510は、屈折力レンズ500と図1~4に示されるベース組立体との間に流体連通を提供するために機能する。
【0062】
図5Bは、屈折力レンズと調節式IOLの液体充填式のベース組立体との間で流体を移動させるための流体伝達システムの実施形態を示す。流体伝達バルブ510は、液体充填式のベース組立体の内側壁(例えば、それぞれ図1B、2A、3Aの180、240、340)に配置された受け入れバルブ520と相互作用するように構成される。様々な実施形態において、流体伝達バルブ510は、屈折力レンズ500の一部として実装することができ、受け入れバルブ520は、液体充填式のベース組立体590の一部として実装することができ、または逆も同様である。流体伝達バルブ510は、一方向バルブ540に至る管530を含む。受け入れバルブ520は、バルブ開放管550を含む。受け入れバルブ520はそれ自体の一方向バルブ560を含む。流体伝達バルブ510および受け入れバルブ520が単独で動作するとき、一方向バルブ530、560の両方は閉鎖され、流体は、屈折力レンズ500からも液体充填式のベース組立体590からも流出しない。流体伝達バルブ510の管530が液体充填式のベース組立体590の一方向バルブ560に挿入されると、管530の力は、一方向バルブ560を開く。同様に、バルブ開放管550の力は、一方向バルブ540を開く。結果として、一方向バルブ540、560の両方が押し開かれ、流体が、屈折力レンズ500と液体充填式のベース組立体590との間を自由に流れることができる。
【0063】
図6および図7は、トーリックのベース組立体600、700の実施形態を示す。ベース組立体600、700は、ベースレンズ610、710と、外周と異なる可撓性を有する少なくとも2つの領域とを有する実質的に円形のハプティックシステム620、720を含む。少なくとも2つの領域は、ハプティックシステム620、720の残りの領域よりも大きい可撓性640、730を有するため、ハプティックシステム620、720の外周へ半径方向圧縮力を付与することにより、より可撓性が大きい領域640、730におけるハプティックシステム620、720の非対称的変形が生じる。換言すると、可撓性がより大きい領域640、730は、ハプティックシステム620、720の残りの領域よりもより大きい程度に半径方向に圧縮されるか、または圧縮可能である。この非対称的変形は、同様に、ベースレンズ610、710およびハプティックシステム620、720に設けられた屈折力レンズの一方または両方におけるトーリック屈折力変化を提供し得る。
【0064】
図6A~6Bはトーリックのベース組立体600の一実施形態を示す。図6Aは、本開示の実施形態による調節式トーリックIOLのトーリックのベース組立体600の斜視図を示す。図6Bは、トーリックのベース組立体600の上面図を提供する。トーリックのベース組立体600は、ベースレンズ610と実質的に円形のハプティックシステム620とを含む。トーリックのベース組立体600は、挿入された屈折力レンズ(図示せず)に係合するための複数のタブ630を含む。ハプティックシステム620の外周は、ハプティックシステム620の半径方向内向きに圧縮を引き起こすために、目の毛様筋により引き起こされた変形力を受けるように構成される。これらの力は、次いで、ベースレンズ610および/またはベース組立体600に挿入され得る屈折力レンズの一方または両方に伝達される。図6Aおよび6Bに示された実施形態において、ハプティックシステム620の一部はより大きい構造的可撓性を有し、ハプティックシステム620の様々な部分により、半径方向内向きに印加された力の不均一な伝達を招く。図示の実施形態において、切欠き640がハプティックシステム620に形成されて、切欠き640に近い大きな可撓性を作り出す。切欠き640は、ハプティック620の、残りの領域よりも薄い領域を提供するために形成され得る。結果として、より大きい圧縮力が、切欠き640に近接するハプティックシステム620によって印加され、これにより、結果的にベースレンズ610および挿入された屈折力レンズの一方または両方のトーリック変形が生じる。
【0065】
図7Aおよび7Bは、本開示の実施形態による、代替的なトーリックのベース組立体700のそれぞれ斜視図および上面図を提供する。トーリックのベース組立体700は、ベースレンズ710とハプティックシステム720とを含む。図7Aおよび7Bに示されたトーリックのベース組立体700において、ハプティックシステム720の特定の領域においてより大きい可撓性を生じるために切欠き740を有することに加えて、ハプティックシステム720は、ハプティックシステム720により画定された外周を越えて延在する2つの拡張された領域730を含む。拡張された領域730および切欠き740は圧縮力の不均等な分布を引き起こし、ベースレンズ710および挿入された屈折力レンズの一方または両方のトーリック変形を生じさせる。
【0066】
調節式IOLには、様々なプロファイルを可能にするベース組立体が提供され得る。様々なプロファイルは、屈折力レンズがベースレンズからさらに遠くに置かれる(すなわち、高プロファイル)か、ベースレンズのより近くに置かれる(すなわち、低プロファイル)ように、ベース組立体を構成することによって提供され得る。
【0067】
図8A~8Cは、高プロファイルIOLベース組立体800の実施形態を示す。図8Aはベース組立体800の斜視図を示し、図8Bおよび8Cは、ベース組立体800のそれぞれ上面図および断面図を示す。
【0068】
ベース組立体800は、第1開放端800Aと、ベースレンズ830を任意選択的に含んでもよい第2端800Bとを含む。ハプティックシステム810は、外周と、中央空洞に向く内面とを含む。内面は、複数の離間した接点862であって、ベース組立体800の中央空洞内に嵌合するように提供され得る実装される屈折力レンズ(図示せず)の周縁エッジの一部に係合するように構成された複数の離間した接点862を含み得る。複数のタブ840が、空洞850内へ延在するように、および屈折力レンズの周縁エッジの一部を保持するために空洞850内に複数の凹部860を作り出すように提供され得る。複数のテーブル870が、空洞850の周辺部の一部に沿って、ベース組立体800の底部から空洞850内へ延在する。テーブル870は、テーブル870の上面が凹部860の底面により形成された平面と実質的に同じ平面にあるような高さまで持ち上がっている。テーブル870は、凹部860との組合せにおいて、挿入された屈折力レンズがベースレンズ830に対して空洞850内で望ましい位置に固定されることを確実にする。
【0069】
ハプティックシステム810は、その外周の第1エッジと第2エッジとの間に高さhを有する。屈折力レンズは、第1側と、第2側と、第1側および第2側を結合する周縁エッジとを含む。屈折力レンズは、流体を収納するように構成された閉鎖空洞をさらに含み得る。屈折力レンズの第1側は、ハプティックシステム810の第1エッジから所定の距離hで配置される。この所定の距離hがベース組立体800のプロファイルを決定する。例示的な一実施形態において、所定の距離hは約0mm~約0.75mmの範囲にあってもよい。別の実施形態によると、所定の距離hは、ハプティックの高さhの約0.01%~約37%の範囲にあってもよい。図8Cに示されるとおり、所定の距離は、屈折力レンズの第1側を固定するために使用される複数のタブ840の底面を参照することにより計測され得る。したがって、この実施形態によると、タブの底面は、ハプティックシステム810の第1エッジから約0mm~約0.75mmの距離に、またはハプティックシステム810の第1エッジから、ハプティックシステム810の高さhの約0.01%~約37%の距離に配置され得る。
【0070】
ハプティックシステム810は、複数の外側溝820を備えた実質的に円形であってもよい。外側溝820は、ハプティックシステム810の高さの少なくとも一部に沿って延在し得る。外側溝820は、ハプティックが半径方向に圧縮されるか、半径方向に拡張されるか、またはその両方であることを可能にするように構成され得る。一実施形態において、外側溝820は、内面接点862の反対側のハプティックシステム810の外周に配置され得る。
【0071】
図9および10は低プロファイルベース組立体の実施形態を示す。
図9Aは、ベース組立体900と、ベース組立体910に結合された屈折力レンズ920とを含む調節式眼内レンズ900の斜視図を示す。図8Aのベース組立体800と比べると、調節式IOL900のベース組立体900は、屈折力レンズ920をベース組立体910内のより深く、ベース組立体910のベースレンズのより近くに配置するように構成される。図9Bは調節式IOLの上面図を提供し、図9Cは、ベース組立体900と屈折力レンズ920とを含む調節式IOLの断面図を提供する。調節式IOLは、屈折力レンズ920であって、ベース組立体900に固定され、部分的に、ベース組立体900からベース組立体900内の中央空洞内へ半径方向内向きに延在する複数のタブ930により適所に保持された屈折力レンズ920を含む。タブ930の底面は、図8Cの場合と同様に、屈折力レンズの第1側920に接触する。図9Cにおいて最も明らかに見ることができるとおり、屈折力レンズ920はベースレンズ940に近接して配置される。図示の実施形態において、屈折力レンズ920は、可撓性膜950と、屈折力レンズオプティック960とを含む。可撓性膜950および屈折力レンズオプティックは離間されており、流体が2つの間の空間を充填する。屈折力レンズオプティック960およびベースレンズ940は互いに近接している。
【0072】
ハプティックシステム910は、その外周の第1エッジと第2エッジとの間に高さhを有する。屈折力レンズは、第1側、第2側と、第1側および第2側を結合する周縁エッジとを含む。屈折力レンズは、流体を収納するように構成された閉鎖空洞をさらに含み得る。屈折力レンズの第1側は、ハプティックシステム910の第1エッジから所定の距離hに配置される。この所定の距離hは、ベース組立体900のプロファイルを決定する。例示的な一実施形態において、所定の距離hは約0mm~約0.75mmの範囲にあり得る。別の実施形態によると、所定の距離hは、ハプティックの高さhの約0.01%~約37%の範囲にあり得る。図9Cに示されるとおり、所定の距離は、屈折力レンズの第1側を固定するのに使用される複数のタブ930の底面を参照することにより計測される。したがって、この実施形態によると、タブの底面は、ハプティックシステム810の第1エッジから約0.75mm~約1.5mmの距離に、またはハプティックシステム910の第1エッジから、ハプティックシステム910の高さhの約38%~約75%の距離に配置され得る。
【0073】
ハプティックシステム910は、複数の外側溝920を備えた実質的に円形であり得る。外側溝920は、ハプティックシステム910の高さの少なくとも一部に沿って延在し得る。外側溝920は、ハプティックが半径方向に圧縮されるか、半径方向に拡張されるか、またはその両方であることを可能にするように構成され得る。一実施形態において、外側溝920は、内面接点962の反対側のハプティックシステム910の外周に配置され得る。
【0074】
図10に関して以下でより詳細に説明されるとおり、調節式IOLのより低いプロファイルは、調節式IOL900による屈折力変化を増幅させる。
図10A~10Dは、低プロファイル調節式IOL1000の別の実施形態を示し、ここで低プロファイルベース組立体1010は、特定のIOL構成で可能なより大きい範囲の光学的屈折力を作り出すために、屈折力レンズ1020をベース組立体1010内のより深く、ベースレンズ1030に近接して置くように構成される。低プロファイル調節式IOL1000は、ベース組立体1010と、ベース組立体1010内に固定されるように構成された屈折力レンズ1020とを含む。ベース組立体1010は、ハプティック部分1015を含み、ハプティック部分1015は、ハプティック部分1015の周辺部に印加された力を屈折力レンズ1020に伝達する。
【0075】
図10Dの断面において見られ得るとおり、屈折力レンズ1020は、可撓性膜1050と屈折力レンズオプティック1040とを含み、一方、ベース組立体1010は、ハプティック部分1015を含み、ハプティック部分1015は、ハプティック部分1015の周辺部に印加された力を屈折力レンズ1020およびベースレンズ1030に伝達する。ベースレンズ1030および屈折力レンズオプティック1040は互いに近接しており、調節式IOLのプロファイルが低いほど屈折力レンズ1020による屈折力変化を増幅する。調節式IOL1000による屈折力の変化は、大部分が屈折力レンズ1020の調節により生じる。さらに、屈折力レンズ1020の調節は、屈折力レンズオプティック1040へよりもむしろ膜1050へ力を付与することにより最も効果的に生じる。したがって、調節式IOL1000の屈折力変化は、ハプティック1015の周辺部に印加された力が膜1050に効率的に伝達されるときに最も効率的である。
【0076】
低プロファイル調節式IOL1000は、ハプティック1015からの力を膜1050へいくつかの方法で効果的に伝達する。第1に、ハプティック1015内より深くへの屈折力レンズ1020の配置は、ハプティック1015からの力の、屈折力レンズ1020(膜1050を含む)へのより効率的な伝達を生じさせる。これは、少なくとも部分的に、屈折力レンズ1020がハプティック1015内でより高いところに配置されると、ハプティック1015の周辺部に及ぼされる力のより大きい部分が、屈折力レンズ1020よりむしろベースレンズ1030へ分配されるという事実を原因とする。ベースレンズ1030に分配される力の一部は、調節および/または屈折力変化にそれほど影響を及ぼさず、したがって、調節式IOL1000による屈折力変化に影響を及ぼすために効果的に用いられない。屈折力レンズ1020をハプティック1015内のより低いところへ移動させることにより、力のより大きい部分が、ベースレンズ1030へ失われるよりむしろ、屈折力レンズ1020に分配される。さらに、ベースレンズ1030に近接して屈折力レンズ1020を配置することは、屈折力レンズ1020がヒンジ部分1090とより近接することを可能にし、これは、ベースレンズ1030へ分配されている力の少なくとも一部を屈折力レンズ1020に伝達する。
【0077】
上で検討されたとおり、屈折力レンズ1020に力が加えられる場合であっても、力が屈折力レンズオプティック1040よりむしろ膜1050に付与される場合、調節は最大化される。屈折力レンズ1020の周辺部の下部分の切欠き1080は、屈折力レンズオプティック1040よりむしろ膜1050に伝達される力を生じさせる。屈折力レンズ1020の周辺部の下部分を除去することにより(切欠き1080)、ハプティック1015は、主に、屈折力レンズ1020の周辺部の上部分1070と係合し、力が、屈折力レンズオプティック1040(これは屈折力レンズ1020の下部分にある)よりむしろ、主に膜1050(これは屈折力レンズ1020の上部分にある)に付与され、それにより、屈折力レンズ1020におけるより大きい屈折力変化に影響を及ぼす。
【0078】
図8A~8Cに示される実施形態において、調節式眼内レンズは、図9および10に示される実施形態と比べてより高いプロファイルを有し得る。換言すると、高プロファイル実施形態において、屈折力レンズは、ハプティックシステム810の開放端のより近く、およびベースレンズ830からより離れて配置され(図8A~8C)、低プロファイル実施形態において、屈折力レンズ920、1020は、開放端からより遠くに、およびベースレンズ940、1030のより近くに置かれる(図9A~9Cおよび図10A~10D)。屈折力レンズの位置は、ハプティックの外周の第1エッジからの屈折力レンズの周縁エッジの距離hを参照して図8Cおよび10Dに表される。
【0079】
したがって、一態様によると、屈折力レンズは、図8Cおよび10Dにおいてhにより表されるとおり、ハプティックの外周の第1エッジから所定の距離に配置される。一態様において、所定の距離hは、約0mm、約0.1mm、約0.15mm、約0.2mm、約0.25mm、約0.30mm、約0.35mm、約0.40mm、約0.45mm、約0.50mm、約0.55mm、約0.60mm、約0.65mm、約0.70mm、約0.75mm、約0.80mm、約0.85mm、約0.90mm、約0.95mm、約1mm、約1.1mm、約1.15mm、約1.2mm、約1.25mm、約1.3mm、約1.35mm、約1.4mm、約1.45mm、約1.5mm、約1.55mm、約1.6mm、約1.65mm、約1.7mm、約1.75mm、約1.8mm、約1.85mm、約1.9mm、約1.95mm、および約2mmであり得る。別の態様によると、所定の距離hは、前述の値の任意の2つを含むこれらの間の範囲内に提供され得る。さらなる態様において、高プロファイル調節式IOLのための所定の距離hは、約0mm~約0.75mmの範囲にあり得る。なおさらなる態様において、低プロファイル調節式IOLのための所定の距離hは、0.75mm~約1mmの範囲にあり得る。
【0080】
所定の距離hはまた、ハプティックシステム810、1015の外周の全高hの割合として提供され得る。一態様において、所定の距離hは、ハプティックシステム810、1015の外周の全高hの約0.01%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、および約90%であり得る。別の態様によると、所定の距離hは、前述の値の任意の2つを含むこれらの間の範囲内で提供され得る。さらなる態様において、高プロファイル調節式IOLのための所定の距離hは、ハプティックシステム810、1015の外周の全高hの約0.01%~約37%であり得る。なお、さらなる態様において、高プロファイル調節式IOLのための所定の距離hは、ハプティックシステム810、1015の外周の全高hの約38%~約75%であり得る。
【0081】
図11Aは、本開示の実施形態によるベース組立体1110と屈折力レンズ1120とを含む調節式IOLの斜視図1100を示す。図11Bは調節式IOL1100の分解図を提供し、図11Cは調節式IOL1100の上面図を提供し、図11Dは調節式IOL1100の断面図を提供する。ベース組立体1110は、ハプティックシステム1130を含む。図11Cにおいて最も明らかに見られるとおり、ハプティックシステム1130は、屈折力レンズ1120の周縁エッジから延在する1つまたは複数のフィン1150を受け入れるための、ハプティックシステム1130の内周内に画定された複数の凹部または切欠き1140を含む。複数の凹部または切欠き1140は、隆起部またはタブ1160および隆起部の少なくとも一方の側にある進入経路により画定され得る。屈折力レンズ1120は、フィン1150の各々が複数の切欠き1140の1つを介して入るように、ベース組立体1110内へ降下される。屈折力レンズ1120は、次いで、各フィン1150が切欠き1140の1つの中にもはや配置されず、むしろ、複数のタブ1160の1つの下に配置されるように、回転させられる。各フィン1150(またはフィン1150の少なくとも1つ)がタブ1160の下に配置されると、屈折力レンズ1120はベース組立体1110に固定されるようになる。特定の実施形態において、ユーザが、屈折力レンズ1120を回転させることを支援するために、工具を1つまたは複数の操作穴に挿入することを可能にするために、操作穴が屈折力レンズ1120に作り出され得る。
【0082】
図12A~12Fは、本開示の実施形態による、本開示の調節式IOL1200の様々な図を提供する。この実施形態において、調節式IOL1200は、ベース組立体1210と屈折力レンズ1220とを含む。ベース組立体1210はベースレンズ1290を含む。屈折力レンズ1220は、可撓性膜1230と、オプティック1235と、屈折力レンズ1220の周縁エッジから外向きに延在するフランジ1240と含む。フランジ1240は、複数の上タブ1260および下タブ1270によりベース組立体1240またはハプティックの内周において形成されたチャネル1250に挿入され得る。屈折力レンズ1220の前部分に向かってフランジ1240を配置することは、フランジ1240およびフランジ1240を固定するタブ1260が、それらが調節式IOLの視覚的要素、すなわち、可撓性膜1230、オプティック1235、およびベースレンズ1290と干渉しないように、配置されるという点で、有利であり得る。したがって、フランジおよびタブ1260、1270により引き起こされる視覚的アーチファクトまたは光の歪みは、共に最小化されるか、または除去される。ベース組立体1210への屈折力レンズ1220の挿入をより容易にすることを可能にするために、フランジ1240は、領域1280では屈折力レンズ1220を越えて延在しない。
【0083】
図13A~13Cは、調節式IOLのための拡張されたタブを備えたベース組立体1300の実施形態を示す。ベース組立体1300は、ハプティックシステム1310と、屈折力レンズを受け入れるための空洞1320とを含む。拡張されたタブ1330は、ハプティックシステム1310の外周の一部にわたって空洞内へ延在する。拡張されたタブ1330は、ベース組立体1310内に屈折力レンズを固定するために使用される。特定の実施形態において、各タブ1330は、外周の、各タブ1330により囲まれた一部を示す角度範囲により計測され得る。特定の実施形態において、各タブ1330は30度~180度にわたり得る。各タブ1330はまた、ベース組立体の中心に向かってどのくらい遠くまでタブ1330が延在するかを示す幅寸法を含み得る。本開示において説明されたハプティックシステム1310および適用可能なハプティックシステムの外縁は、厚さがおよそ1mmであり得る。
【0084】
図14A~14Dは、本開示の実施形態による、非点収差のないベースリング1400の様々な図を示す。非点収差のないベースリング1400は、図1Cおよび3Cを参照して示された態様で屈折力レンズを受承するように構成された液体充填式のベースリングである。非点収差のないベースリング1400は、ハプティックシステム1410を含み、かつ領域1420を囲むように形成されたリングとして提供されてもよい。屈折力レンズが領域1420に挿入されて調節式IOLを形成し得る。非点収差のないベースリング1400は、上フランジ1430と、下面1435とを含み、屈折力レンズを上フランジ1430と下面1435との間に固定する。
【0085】
図14Cは、非点収差のないベースリング1400の断面図を提供する。非点収差のないベースリング1400は、外側貯蔵器1440と内側貯蔵器1450とを含み得る。外側貯蔵器1440および内側貯蔵器1450は流体を含んでもよく、互いに流体連通してもよい。一実施形態において、外側貯蔵器1440および内側貯蔵器1450は、外側貯蔵器1440および内側貯蔵器1450の少なくとも一方よりも狭いチャネル1460を通じて互いに流体連通された状態で提供され得る。狭窄したチャネル1460を通じて互いに流体連通した状態の2つの貯蔵器1440、1450の使用は、半径方向圧縮力がハプティックシステム1410の周辺部に加えられると、上フランジ1420と下面1435との間に位置するベースリング1400の内面に半径方向圧縮力をより均等に分配する。したがって、より均一な非トーリック変形が調節式IOLにおいて作り出される。
【0086】
図14Dは、非点収差のないベースリング1400の代替的実施形態の断面図を提供する。特定の実施形態において、メッシュ編織物(mesh braid)、例えば図14Eに示されるものが、内側貯蔵器1450に組み込まれてもよい。特定の実施形態において、メッシュ編織物はニチノール編織物を含み得る。メッシュ編織物(図14E)は、内側貯蔵器のための追加的な構造支持体を提供しつつ、内側貯蔵器および外側貯蔵器1450、1440間を流体が流れることを可能にすることができ、それにより、非点収差のないベースリング1400に印加される均一な力の分配が可能となる。したがって、一実施形態において、上述のベースリング1400は、内側貯蔵器1450の一部または全体に沿って配置され得る多孔支持構造またはメッシュ編織物、例えば図14Eに示されるものをさらに含み得る。
【0087】
図15Aは、接着またはインサート成形により互いに取り付けられるか、または取り付け可能であるベース組立体および屈折力レンズを有する調節式IOL1500の斜視図を示す。図15Bは調節式IOL1500の上面図を提供する。図15Cは、調節式IOL1500の断面図を示す。図15Dは、調節式IOLの底部斜視図1500を示す。調節式IOL1500は、製造中に屈折力レンズ1520に取り付けられたハプティックベース組立体1510を含む。取付けは、接着またはインサート成形の一方または両方により達成されてもよく、ここで、ベース組立体1510および屈折力レンズ1520の一方が整形され、次いでベース組立体1510および屈折力レンズ1520の他方が第1成形部品(すなわち、ベース組立体1510または屈折力レンズ1520)上に直接成形される。屈折力レンズ1520の、ベース組立体1510に取り付けられる部分は、屈折力レンズ1520の円周方向周縁エッジ1522の一部または後方エッジ1524の一方または両方であってもよい。次いで、調節式IOL1500全体が、患者に挿入され得る。接着されたベースおよび屈折力レンズの嵩を減らすために、屈折力補正が屈折力レンズ1520からのみに由来するように、調節式IOL1500は単一のオプティックのみを含み得る。したがって、一実施形態において、ベース組立体1510自体は、屈折補正を提供するオプティックを含まず、IOL1500は屈折補正を提供するために屈折力レンズ1520のみを含む。
【0088】
図16A~16Fは、間隙なしベース組立体1610と屈折力レンズ1620とを含む様々な間隙なし調節式IOL1600を示す。間隙なしベース組立体1610は、ベースレンズ1630とハプティックシステム1640とを含む。ベースレンズ1630およびハプティックシステム1104は、一緒に固定されるため、屈折力レンズ1620へ至る間隙は形成されない。これは、屈折力レンズ1620が間隙なしベース組立体1610に挿入されるときに、セルが、ベースレンズ1630と屈折力レンズ1620との間の空洞1670に流入する能力を制限する。様々な実施形態において、同様の効果は、屈折力レンズとベースレンズとの間の空洞を出入りするセルの移動を防ぐために、間隙を有するベース組立体にパリレンコーティングを施すことにより有することができる。
【0089】
様々な実施形態において、本明細書において説明されたベース組立体は、屈折力補正の一部を提供し得る。結果として、ベース組立体を設置し、設置に適切な屈折力レンズを選択して、1/4ディオプトリ以内の補正を可能にすることができる。さらに、様々な実施形態において、ベース組立体のオプティックは、患者の目に入るUVを吸収するためのUV吸収器またはUV吸収剤コーティングを含み得る。様々な実施形態において、屈折力レンズまたはベース組立体を調整して調節式IOLの設備中にそれらが適切に設置されることを確実にするために、プルキンエ像が使用され得る。
【0090】
様々な実施形態において、屈折力レンズおよびベース組立体、例えば、本開示において説明されたベース組立体の使用を通じて、本明細書において開示された二部式調節式IOLは、製品のより効率的なカタログ作成を可能にする。例えば、4つのベース組立体および9つの屈折力レンズが、半ディオプトリのステップで12~27.5ディオプトリの範囲をカバーするのに必要である。単一のレンズを使用することは、32個の異なるレンズを必要とする。4つのベース組立体および9個の屈折力レンズのみが必要であるため、32個の異なる最小在庫管理単位(以降、「SKU(stock keeping unit)」と呼ばれる)とは対照的に、13個のみのSKUが屈折力レンズおよびベース組立体を保管および構築するのに必要である。これは、置き間違いの機会を減らし、かつ簡単に構成することを可能にする。この効率の向上は、トーリックレンズに関して一層大きいものとなる。例えば、32個の単一のレンズタイプについて4つの異なるトーリック屈折力を想定すると、128個のSKUがレンズを構築するために必要である。しかしながら、二部式調節式IOLでは、ベース組立体の4つの異なるトーリック屈折力を仮定すると、単一のトーリックレンズのために必要な128個のSKUより著しく少ない合計25個のSKUのために、16個のベース組立体および9個の屈折力レンズのみが必要とされる。
【0091】
様々な実施形態において、本明細書において検討されたベース組立体のタブおよびフランジは、外科医が、屈折力レンズがいつベース組立体に正しく挿入されたかを分かり得るように、屈折力レンズと異なる色にされ得る。様々な実施形態において、屈折力レンズまたは屈折力レンズのエッジは、ベース組立体への屈折力レンズの挿入をさらに支援するために着色され得る。様々な実施形態において、ベース組立体のベースレンズまたはハプティックシステムは着色され得る。着色は、前述のコンポーネントの任意のものの外側表面へ粗さまたはコーティングを追加することにより達成され得る。
【0092】
様々な実施形態において、ベース組立体内への屈折力レンズの調整および配置を支援するために、プルキンエ像が用いられ得る。画像は、移植後に最良にフィットするように、屈折力レンズおよびベースレンズを調整するために使用され得る。このアプローチは、外科医にとって、顕微鏡の接眼部を通じた即時かつ単純なフィードバックを与える。例えば、外科医が顕微鏡を覗いたときに完璧な円を見ることができる場合に、外科医はベースレンズ内に屈折力レンズが正しく配置されているという表示を受けることができる。円が少しでも変形しているかまたはいびつな形状である場合、外科医は屈折力レンズを引き続き調整しなければならないことが分かる。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図10D
図11A
図11B
図11C
図11D
図12A
図12B
図12C
図12D
図12E
図12F
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図15A
図15B
図15C
図15D
図16A
図16B
図16C
図16D
図16E
図16F