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特許7260596細胞透過性タンパク質-抗体コンジュゲートおよび使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】細胞透過性タンパク質-抗体コンジュゲートおよび使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20230411BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230411BHJP
   C12N 5/00 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230411BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230411BHJP
   A61K 47/59 20170101ALI20230411BHJP
   A61K 47/55 20170101ALI20230411BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
C07K19/00
C07K16/46
C12N5/00
A61P37/02
A61P29/00
A61P3/00
A61P9/00
A61P1/16
A61P1/00
A61P31/00
A61P5/00
A61P35/00
A61P25/00
A61K47/59
A61K47/55
A61K39/395 N
A61K39/395 D
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K39/395 V
【請求項の数】 22
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021109873
(22)【出願日】2021-07-01
(62)【分割の表示】P 2018506182の分割
【原出願日】2016-08-05
(65)【公開番号】P2021167329
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2021-07-15
(31)【優先権主張番号】62/202,006
(32)【優先日】2015-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598004424
【氏名又は名称】シティ・オブ・ホープ
【氏名又は名称原語表記】City of Hope
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】ホワ・ユイ
【審査官】井関 めぐみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-525381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
C12N
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の非細胞透過性タンパク質を第2のタンパク質に結合しているホスホロチオエート核酸を含み、前記ホスホロチオエート核酸が、前記第1の非細胞透過性タンパク質と前記第2のタンパク質の細胞内送達を増強する、細胞透過性コンジュゲートであって、
前記第1の非細胞透過性タンパク質が、第1の抗体であり、前記第2のタンパク質が、第2の抗体であり、
前記ホスホロチオエート核酸が、5~50ヌクレオチド残基長であり、
前記ホスホロチオエート核酸のヌクレオチド間結合の50%以上が、ホスホロチオエート結合であり、
前記ホスホロチオエート核酸が、非特異的核酸であり、
前記第1の非細胞透過性タンパク質及び前記第2のタンパク質が、STAT3タンパク質、NFkBタンパク質、CTLA-4タンパク質、又はFoxP3タンパク質に独立して結合する、細胞透過性コンジュゲート。
【請求項2】
前記第2のタンパク質が、第2の非細胞透過性タンパク質である、請求項1に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【請求項3】
前記ホスホロチオエート核酸が、第2のホスホロチオエート核酸にハイブリダイズした第1のホスホロチオエート核酸を含み、前記第1のホスホロチオエート核酸が、前記第1の非細胞透過性タンパク質に結合し、前記第2のホスホロチオエート核酸が、前記第2のタンパク質に結合している、請求項1又は2に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【請求項4】
前記第1のホスホロチオエート核酸は、前記第1の非細胞透過性タンパク質に共有結合し、前記第2のホスホロチオエート核酸は、前記第2のタンパク質に共有結合している、請求項3に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【請求項5】
前記ホスホロチオエート核酸が、第1のリンカーを介して前記第1の非細胞透過性タンパク質に結合しており、第2のリンカーを介して前記第2のタンパク質に結合している、請求項1~4のいずれか一項に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【請求項6】
前記第1のリンカー及び前記第2のリンカーは、独立して、非共有結合性リンカーである、請求項5に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【請求項7】
前記ホスホロチオエート核酸が、20の長さの核酸残基である、請求項1~6のいずれか一項に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【請求項8】
前記第1の非細胞透過性タンパク質及び前記第2のタンパク質が、独立して、5kD50kDの分子量を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【請求項9】
前記第1の抗体及び前記第2の抗体が、独立して、scFvフラグメント、ヒト化抗体又は治療用抗体である、請求項1~8のいずれか一項に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【請求項10】
前記第1の非細胞透過性タンパク質が、前記第2のタンパク質とは異なる細胞内標的に結合する、請求項2に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【請求項11】
前記第1の非細胞透過性タンパク質が、前記第2のタンパク質に対して、細胞内標的上の異なるエピトープに結合する、請求項1~10のいずれか一項に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【請求項12】
前記細胞内標的が、自己免疫疾患、炎症性疾患、代謝障害、発達障害、心血管疾患、肝疾患、腸疾患、感染症、内分泌疾患、神経学的障害及びがんからなる群から選択される疾患の標的である、請求項1~11のいずれか一項に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【請求項13】
前記細胞内標的が、シグナル伝達分子又は転写因子である、請求項1~12のいずれか一項に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【請求項14】
前記第1の非細胞透過性タンパク質及び前記第2のタンパク質が、前記タンパク質に結合している標識、低分子又は機能性核酸をさらに含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【請求項15】
細胞内標的に結合した請求項1~14のいずれか一項に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【請求項16】
第1の非細胞透過性タンパク質に結合している第1のホスホロチオエート核酸を、第2の非細胞透過性タンパク質に結合している第2のホスホロチオエート核酸にハイブリダイズすることによって、細胞透過性コンジュゲートを作成することを含む、細胞透過性コンジュゲートを作成する方法であって、
前記第1の非細胞透過性タンパク質が、第1の抗体であり、第2の非細胞透過性タンパク質が、第2の抗体であり、
前記ホスホロチオエート核酸が、5~50ヌクレオチド残基長であり、
前記ホスホロチオエート核酸のヌクレオチド間結合の50%以上が、ホスホロチオエート結合であり、
前記ホスホロチオエート核酸が、非特異的核酸であり、
前記第1の非細胞透過性タンパク質及び前記第2のタンパク質が、細胞内標的に結合する、方法。
【請求項17】
前記ハイブリダイズする前に、
(i)前記第1の非細胞透過性タンパク質と前記第1のホスホロチオエート核酸とを接触させることによって、第1のタンパク質-ホスホロチオエート核酸複合体を作成することと;
(ii)前記第2の非細胞透過性タンパク質と前記第2のホスホロチオエート核酸とを接触させることによって、第2のタンパク質-ホスホロチオエート核酸複合体を作成することと;
(iii)前記第1のタンパク質-ホスホロチオエート核酸複合体と、前記第2のタンパク質-ホスホロチオエート核酸複合体とを接触させることと
をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか一項に記載の細胞透過性コンジュゲートを含む細胞。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか一項に記載の細胞透過性コンジュゲートと、医薬として許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項20】
請求項1~14のいずれか一項に記載の細胞透過性コンジュゲートを含む、細胞に非細胞透過性タンパク質を送達するための医薬組成物。
【請求項21】
請求項1~14のいずれか一項に記載の有効量の細胞透過性コンジュゲートを含む、疾患の治療を必要とする被験体の疾患を治療するための医薬組成物。
【請求項22】
前記疾患が、自己免疫疾患、発達障害、炎症性疾患、代謝障害、心血管疾患、肝疾患、腸疾患、感染症、内分泌疾患、神経学的障害及びがんからなる群から選択される、請求項21に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、この全体が全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、2015年8月6日に出願された米国仮出願第62/202,006号に対する優先権を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、National Institutes of HealthおよびNational Cancer Instituteによって付与された付与番号R01CA122976に基づく援助を用いてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
抗体は、低分子薬物などの他の種類の薬物と比較して、作成が容易であること、特異性および生体での耐久性(bio-durability)に起因して、有効な薬物様式であることがわかっている。現行の抗体療法は、細胞外分子のみを標的とすることができる。しかしながら、疾患治療および疾患診断のための多数の重要な標的は、細胞内にある。例えば、STAT3のような幾つかの転写因子は、がん治療の最も重要であり困難な標的の1つである。本明細書には、当該技術分野におけるこれらの必要性および他の必要性のための解決策が提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
細胞内分子を標的とするために、ペプチドおよびタンパク質(例えば抗体)を使用する必要がある。しかしながら、ペプチドおよびタンパク質(例えば抗体)が有効な様式で細胞内分子を標的とする能力は、困難であることが判明している。本明細書全体に記載され、以下の実施例で説明されるように、とりわけ、新規な細胞透過性組成物(例えば、抗体、抗体コンジュゲート)、およびこれらを製造する方法および使用する方法が、本明細書で提供される。本明細書で提供される組成物および方法は、広範囲の細胞内分子(例えば、タンパク質(例えば腫瘍形成タンパク質、細胞内に存在するウイルスタンパク質およびその他))の効果的に標的とすることを可能にし、例えば全身投与に有用である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
特に、本明細書で提供されるのは、細胞透過性コンジュゲートである。一態様において、細胞透過性コンジュゲートは、第1の非細胞透過性タンパク質を第2のタンパク質に結合しているホスホロチオエート核酸を含む。ホスホロチオエート核酸は、両タンパク質の細胞内送達を高める。
【0006】
別の態様において、細胞透過性コンジュゲートを形成する方法が提供される。この方法は、第1の非細胞透過性タンパク質に結合した第1のホスホロチオエート核酸を、第2のタンパク質に結合した第2のホスホロチオエート核酸にハイブリダイズすることによって、細胞透過性コンジュゲートを形成することを含む。
【0007】
別の態様において、実施形態を含む本明細書で提供される細胞透過性コンジュゲートを含む細胞が提供される。
【0008】
別の態様において、実施形態を含む本明細書で提供される細胞透過性コンジュゲートと医薬として許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0009】
別の態様において、実施形態を含む本明細書で提供される細胞透過性コンジュゲートまたは実施形態を含む本明細書に提供される医薬組成物と、使用説明書とを含むキットが提供される。
【0010】
別の態様において、実施形態を含む本明細書で提供される細胞透過性コンジュゲートと細胞とを接触させることを含む、細胞に非細胞透過性タンパク質を送達する方法が提供される。
【0011】
別の態様において、被験体の疾患を治療する方法が提供される。この方法は、実施形態を含む本明細書で提供される有効量の細胞透過性コンジュゲートを、疾患の治療を必要とする被験体に投与し、それによって、被験体の疾患を治療することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】付着したDNAオリゴのハイブリダイゼーションによる二重特異性抗体の生成を示すヒストグラム。ハイブリダイゼーションは、抗STAT3抗体(右上のパネル;STAT3-SAv-Biot-Cy5-PSアンチセンスオリゴ)、NFkB(p65)抗体(左上のパネル;NFkB/p65-SAv-Biot-Cy5-PSセンスオリゴまたはこれらの組み合わせ(左下のパネル;STAT3/NFkB/p65-SAv-Biot-Cy5-PS二本鎖オリゴおよび右下のパネル;STAT3/NFkB/p65-SAv-Biot-Cy5-FAM二本鎖オリゴ)を用いたゲル濾過を介して測定した。ハイブリダイゼーションによって、dsDNAに連結する抗体を確実に形成するために、NFkB(p65)の改変のためにフルオロフォアQuasar/Cy5を組み込み、STAT3の改変のためにFAMを組み込んだssDNAオリゴを選択した。首尾良くハイブリダイゼーションし、dsDNAに連結する抗体が形成したことは、bi-IgGと同時に両フルオロフォアが溶出することによって示される(右下のパネル)。示された全ての抗体をゲル濾過により精製し、タンパク質(280nm)、DNA(260nm)およびフルオロフォア(647nmおよび495nm)の最大振幅が重なり合った画分を、さらなる特性決定(図2)のために集めた。検出チャネルは、以下に示すようなλ[nm]での吸光度を得た。260nmは、DNAの吸収を示し、280nmは、タンパク質の吸収を示し、647nmおよび495nmはDNAオリゴに組み込まれたフルオロフォアによる吸収を示す。
図2】細胞内抗原であるSTAT3およびNFkB(p65)の、細胞透過性二重特異性抗体による同時認識を示すSDS pageゲルの写真画像である。ヒトリンパ腫Ly3細胞を、10mg/mlの示された精製抗体とともに2時間インキュベートすることによって評価した。NFkB(p65)タンパク質およびSTAT3タンパク質を検出するために、細胞破片を除去した全細胞溶解物にプロテインG-アガロースビーズを添加し、ウェスタンブロット分析を行った。
図3】改変された細胞内標的化抗体による細胞透過のフローサイトメトリー試験を示すヒストグラム。ヒトB細胞リンパ腫Ly3を、10μg/mlの示された改変抗体で2時間処理し(上のパネル)、10μg/mlの蛍光標識された改変抗体と共にインキュベートしたヒトB細胞リンパ腫細胞の共焦点顕微鏡試験を示す。スケール10μm(下側のパネル)。両試験によって、改変された単一の抗体と、オリゴ-センス/アンチセンスハイブリダイゼーションによって作られる二重特異性抗体とによる細胞透過を確認した。
図4A】B16メラノーマの二重特異性抗体治療。図4A:10万個のB16腫瘍細胞を皮下注射し、腫瘍を接種してから8日目から26日目まで、示した抗体(1μg/マウス)を1日おきに投与した。
図4B】B16メラノーマの二重特異性抗体治療。図4B:全てのマウスを28日目に安楽死させ、腫瘍の質量を秤量した。腫瘍の質量がグラム単位で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の様々な実施形態および態様が本明細書に示され、説明されているが、このような実施形態および態様が単なる例示として提供されていることは当業者には明らかであろう。本発明から逸脱することなく、当業者には数多くの変形、変更および置換が可能である。本明細書に記載された本発明の実施形態に対する様々な代替物が、本発明の実施において採用されてもよいことを理解されたい。
【0014】
本明細書で使用される章の見出しは、編成目的のみのためのものであり、記載される主題を限定するものと解釈されるべきではない。本出願に引用される全ての文書または文書の一部は、限定されないが、特許、特許出願、記事、書籍、マニュアル、および論文を含め、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0015】
本明細書で使用される略語は、化学分野および生物学分野の中での従来の意味を有する。本明細書に記載の化学構造および式は、化学分野で知られている化学原子価の標準規則に従って構築される。
【0016】
別に定義されない限り、本明細書に使用される技術用語および科学用語は、本発明の属する分野の当業者に共通して理解されるものと同じ意味を有する。例えば、Singletonら、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY 2nd ed.、J.Wiley & Sons(New York,NY 1994);Sambrookら、MOLECULAR CLONING、A LABORATORY MANUAL、Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor、NY 1989)を参照。本明細書に記載されたものと類似または等価な任意の方法、デバイスおよび材料を、本発明の実施において使用することができる。以下の定義は、本明細書において頻繁に使用される特定の用語の理解を容易にするために提供され、本開示の範囲を限定するものではない。
【0017】
本明細書で使用される「核酸」または「オリゴヌクレオチド」または「ポリヌクレオチド」または文法上の等価な語は、一緒に共有結合している少なくとも2つのヌクレオチドを意味する。「核酸」との用語は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、およびこれらの一重鎖形態または二本鎖形態のポリマーまたはこれらの相補体を指す。「ポリヌクレオチド」との用語は、ヌクレオチドの直鎖配列を指す。「ヌクレオチド」との用語は、典型的には、ポリヌクレオチドの1個の単位、即ちモノマーを指す。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはこれらの改変された態様であってもよい。本明細書で想定されるポリヌクレオチドの例としては、一本鎖および二本鎖のDNA、一本鎖および二本鎖のRNA(siRNAを含む)、および一本鎖および二本鎖のDNAとRNAの混合物を有するハイブリッド分子が挙げられる。この用語は、合成であるもの、天然に存在するもの、および天然に存在しないものであり、リファレンス核酸と同様の結合特性を有し、かつリファレンスヌクレオチドと同様の様式で代謝される、既知のヌクレオチドアナログまたは改変された骨格残基または連結を含む核酸も、包含する。このようなアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホロアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネートおよび2-O-メチルリボヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
「ホスホロチオエート核酸」との用語は、1つ以上のヌクレオチド間結合がホスホロチオエート部分(チオホスフェート)を介する結合である核酸を指す。ホスホロチオエート部分は、モノチオホスフェート(-P(O)(S)3--)またはジチオホスフェート(-P(O)(S) -)であってもよい。複数の実施形態において、ホスホロチオエート部分は、モノチオホスフェート(-P(O)(S)-)である。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、モノチオホスフェート核酸である。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸のヌクレオシドの1つ以上が、ホスホロチオエート部分(例えばモノチオホスフェート)を介して連結され、残りのヌクレオシドはホスホジエステル部分(-P(O) -)を介して連結される。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸のヌクレオシドの1つ以上が、ホスホロチオエート部分(例えばモノチオホスフェート)を介して連結され、残りのヌクレオシドはメチルホスホネート結合を介して連結される。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸の全てのヌクレオシドは、ホスホロチオエート部分(例えばモノチオホスフェート)を介して連結される。
【0019】
ホスホロチオエートオリゴヌクレオチド(ホスホロチオエート核酸)は、典型的には、約5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、40、50またはこれ以上から、約100ヌクレオチドまでの長さである。ホスホロチオエート核酸はまた、例えば、200、300、500、1000、2000、3000、5000、7000、10、000などの長さであってもよい。上述のように、特定の実施形態において、本明細書のホスホロチオエート核酸は、1つ以上のホスホジエステル結合を含む。他の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、代替的な骨格(例えば、当該技術分野で知られているようなホスホジエステルの模倣物またはアナログ、例えば、ボラノホスフェート、メチルホスホネート、ホスホロアミダートまたはO-メチルホスホロアミダート結合)を含む(Eckstein、Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach、Oxford University Pressを参照)。ホスホロチオエート核酸は、当該技術分野で知られている1つ以上の核酸アナログモノマー、例えば、ペプチド核酸モノマーもしくはポリマー、ロックされた核酸モノマーもしくはポリマー、モルホリノモノマーもしくはポリマー、グリコール核酸モノマーもしくはポリマーまたはトレオース核酸モノマーもしくはポリマーも含んでいてもよい。他のアナログ核酸は、陽イオン性骨格、非イオン性骨格、非リボース骨格を有するものを含み、米国特許第5,235,033号および第5,034,506号およびASC Symposium Series 580、Carbohydrate Modifications in Antisense Research、Chapter 6および7、Sanghui & Cook編集に記載されるものを含む。1つ以上の炭素環糖を含む核酸も、核酸の1つの定義の中に含まれる。リボース-リン酸骨格の改変は、様々な理由、例えば、生理学的環境において、またはバイオチップ上のプローブとしてこのような分子の安定性および半減期を増加させるために行うことができる。天然に存在する核酸とアナログの混合物を製造することができる。または、異なる核酸アナログの混合物、および天然に存在する核酸およびアナログの混合物を製造することができる。ホスホロチオエート核酸およびホスホロチオエートポリマー骨格は、直鎖であってもよく、または分枝鎖であってもよい。例えば、分枝鎖の核酸は、繰り返し分枝し、デンドリマーなどのような高次構造を形成する。
【0020】
複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、ホスホロチオエートポリマー骨格を含む。本明細書で使用される場合、「ホスホロチオエートポリマー骨格」は、少なくとも2つのホスホロチオエート結合(例えば、モノチオホスフェート)(例えば、糖サブユニット、環状サブユニットまたはアルキルサブユニットを一緒に連結する)を有する化学ポリマーである。ホスホロチオエートポリマー骨格は、ホスホロチオエート糖ポリマーであってもよく、これは、1つ以上の(または全ての)ペントース糖鎖が、核酸中に通常存在する塩基(核酸塩基)を欠くホスホロチオエート核酸である。ホスホロチオエートポリマー骨格は、2つ以上のホスホロチオエート結合を含んでいてもよい。ホスホロチオエートポリマー骨格は、5、6、7、8、9、10、12、15、25、30、40、50個またはもっと多い結合を含んでいてもよく、約100個までのホスホロチオエート結合を含んでいてもよい。ホスホロチオエートポリマー骨格はまた、例えば、200、300、500、1000、2000、3000、5000、7000、10000個などのより多数の結合を含んでいてもよい。
【0021】
ホスホロチオエート核酸およびホスホロチオエートポリマー骨格は、部分的または完全にホスホロチオエート化されていてもよい。例えば、ホスホロチオエート核酸のヌクレオチド間結合の50%以上が、ホスホロチオエート結合であってもよい。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸のヌクレオチド間結合の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%が、ホスホロチオエート結合である。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸のヌクレオチド間結合の50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%が、ホスホロチオエート結合である。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸のヌクレオチド間結合の75%、80%、85%、90%、95%または99%が、ホスホロチオエート結合である。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸のヌクレオチド間結合の90%、95%または99%が、ホスホロチオエート結合である。複数の実施形態において、残りのヌクレオチド間結合は、ホスホジエステル結合である。複数の実施形態において、残りのヌクレオチド間結合は、メチルホスホネート結合である。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸のヌクレオチド間結合の100%がホスホロチオエート結合である。同様に、ホスホロチオエートポリマー骨格中の糖間結合の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%が、ホスホロチオエート結合であってもよい。複数の実施形態において、ホスホロチオエートポリマー骨格中の糖間結合の50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または99%が、ホスホロチオエート結合であってもよい。複数の実施形態において、ホスホロチオエートポリマー骨格中の糖間結合の75%、80%、85%、90%、95%または99%が、ホスホロチオエート結合であってもよい。複数の実施形態において、ホスホロチオエートポリマー骨格中の糖間結合の90%、95%または99%が、ホスホロチオエート結合であってもよい。複数の実施形態において、残りのヌクレオチド間結合は、ホスホジエステル結合である。複数の実施形態において、残りのヌクレオチド間結合は、メチルホスホネート結合である。複数の実施形態において、ホスホロチオエートポリマー骨格の糖間結合の100%がホスホロチオエート結合である。
【0022】
核酸は、非特異的配列を含んでいてもよい。本明細書で使用される場合、「非特異的配列」との用語は、任意の他の核酸配列に相補的であるように設計されていないか、または部分的にしか相補的でない一連の残基を含む核酸配列を指す。一例として、非特異的核酸配列は、細胞または生物と接触したときに阻害性核酸として機能しない核酸残基の配列である。「阻害性核酸」は、標的核酸(例えば、タンパク質へと翻訳可能なmRNA)に結合し、標的核酸の転写(例えば、DNAからのmRNA)を減らすことができるか、または標的核酸(例えば、mRNA)の翻訳を減らすことができるか、または転写スプライシング(例えば、一本鎖モルホリノオリゴ)を変えることができる核酸(例えば、DNA、RNA、ヌクレオチドアナログのポリマー)である。
【0023】
「標識された核酸またはオリゴヌクレオチド」は、核酸に結合した検出可能な標識の存在を検出することによって核酸の存在を検出し得るように、リンカーまたは化学結合による共有結合によって、またはイオン結合、ファンデルワールス結合、静電結合または水素結合による非共有結合によって、標識に結合したものである。または、高アフィニテイの相互作用を用いる方法は、一対の結合パートナーの一方が他方に結合するという同じ結果、例えばビオチンストレプトアビジンを、達成することができる。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は、本明細書に開示され、一般に当該分野で公知の検出可能な標識を含む。
【0024】
「相補的」または「相補性」との用語は、ポリヌクレオチド中の核酸が、第2のポリヌクレオチド中の別の核酸と塩基対を形成する能力を意味する。例えば、配列A-G-Tは、配列T-C-Aに相補的である。相補性は、核酸の一部のみが塩基対形成によって一致する、部分的なものであってもよく、または全ての核酸が塩基対形成に従って一致する、完全なものであってもよい。
【0025】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係がある状態で配置される場合、「作動可能に連結される」。例えば、プレ配列または分泌リーダーのDNAは、ポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現する場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結される。プロモーターまたはエンハンサーは、配列の転写に影響を及ぼす場合、コード配列に作動可能に連結される。または、リボソーム結合部位は、翻訳を容易にするように配置される場合、コード配列に作動可能に連結される。一般に、「作動可能に連結される」とは、連結されているDNA配列が互いに近接しており、分泌リーダーの場合には、連続しており、リーディング相(reading phase)の中にあることを意味する。しかし、エンハンサーは、連続していなければならないわけではない。連結は、簡便な制限部位での連結によって達成される。このような部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプターまたはリンカーが、慣用的な手法に従って使用される。
【0026】
「遺伝子」との用語は、タンパク質の産生に関与するDNAのセグメントを意味する。この用語は、個々のコードセグメント(エキソン)間の介在配列(イントロン)と共に、コード領域の前後の領域(リーダーおよびトレーラー)も含む。リーダー、トレーラーおよびイントロンは、遺伝子の転写および翻訳の間に必要な制御エレメントを含む。さらに、「タンパク質遺伝子産物」は、特定の遺伝子から発現されるタンパク質である。
【0027】
本明細書において遺伝子に関連して使用される「発現」または「発現する」との用語は、この遺伝子の転写産物および/または翻訳産物を意味する。細胞内のDNA分子の発現レベルは、細胞内に存在する対応するmRNAの量、または細胞によって産生されるDNAによってコードされるタンパク質の量のいずれかに基づいて決定されてもよい。コードしない核酸分子(例えば、siRNA)の発現レベルは、当技術分野で周知の標準的なPCR法またはノーザンブロット法によって検出されてもよい。Sambrookら、1989 Molecular Cloning:A Laboratory Manual、18.1-18.88を参照。
【0028】
「組換え」との用語は、例えば細胞もしくは核酸、タンパク質、またはベクターに間して使用する場合、この細胞、核酸、タンパク質もしくはベクターが、異種核酸またはタンパク質の導入、または天然の核酸もしくはタンパク質の変化によって改変されているか、または細胞が、このように改変された細胞に由来することを示す。従って、例えば、組換え細胞は、細胞の天然の(非組換え)形態内には見出されない遺伝子を発現するか、さもなければ異常に発現されているか、低めに発現されているか、または全く発現されていないような天然遺伝子を発現する。トランスジェニック細胞および植物は、典型的には組換え方法の結果として異種遺伝子またはコード配列を発現するものである。
【0029】
核酸の一部に関して使用される場合、用語「異種」は、この核酸が、天然に互いに同じ関係では見出されない2つ以上の部分配列を含むことを示す。例えば、典型的には、新たな機能性核酸を作製するために並べられた無関係な遺伝子由来の2つ以上の配列、例えば、ある供給源由来のプロモーターおよび別の供給源由来のコード領域を有する核酸が、組換えによって産生される。同様に、異種タンパク質は、タンパク質が、天然に互いに同じ関係では見出されない2つ以上の部分配列を含むことを示す(例えば、融合)。
【0030】
「外因性」との用語は、所与の細胞または生物の外部に由来する分子または物質(例えば、化合物、核酸またはタンパク質)を指す。例えば、本明細書で言及する「外因性プロモーター」は、これが発現する細胞または生物に由来しないプロモーターである。逆に、「内因性」または「内因性プロモーター」との用語は、所与の細胞または生物体に固有であるか、またはこの中で生じる分子または物質を指す。
【0031】
「単離された」との用語は、核酸またはタンパク質に適用される場合、核酸またはタンパク質が、これが自然状態で会合している他の細胞成分を本質的に含まないことを意味する。これは、例えば、均質な状態であってもよく、乾燥状態または水溶液のいずれかであってもよい。純度および均一性は、典型的には、ポリアクリルアミドゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィーのような分析化学技術を用いて決定される。製剤中に存在する優勢な種であるタンパク質は、実質的に精製されている。
【0032】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」との用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書では互換的に用いられ、このとき、ポリマーは、複数の実施形態において、アミノ酸から構成されていない部分にコンジュゲートしていてもよい。この用語は、1つ以上のアミノ酸残基が、対応する天然に存在するアミノ酸の人工的化学模倣物であるアミノ酸ポリマー、ならびに天然に存在するアミノ酸ポリマーおよび天然に存在しないアミノ酸ポリマーに適用される。「融合タンパク質」は、単一部分として組換えにより発現される、2つ以上の別個のタンパク質配列をコードするキメラタンパク質を指す。
【0033】
「ペプチジル」および「ペプチジル部分」との用語は、一価ペプチドを意味する。
【0034】
「アミノ酸」との用語は、天然アミノ酸および合成アミノ酸、および天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸アナログおよびアミノ酸模倣物を指す。天然に存在するアミノ酸は、遺伝子コードによってコードされるアミノ酸、および後で改変されるアミノ酸、例えばヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタミン酸およびO-ホスホセリンである。アミノ酸アナログは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造、即ち水素、カルボキシル基、アミノ基およびR基(例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウム)に結合したα炭素を有する化合物を指す。このようなアナログは、改変されたR基(例えば、ノルロイシン)または改変ペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を保持する。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なるが、天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能する構造を有する化学化合物を指す。「天然に存在しないアミノ酸」および「非天然アミノ酸」との用語は、天然には見出されないアミノ酸アナログ、合成アミノ酸およびアミノ酸模倣物を指す。
【0035】
アミノ酸は、一般的に知られている3文字の記号またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される1文字の記号のいずれかによって、本明細書で言及されてもよい。同様に、ヌクレオチドは、一般に認められている一文字コードによって言及されてもよい。
【0036】
「保存的に改変された改変体」は、アミノ酸および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、「保存的に改変された改変体」は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸を指す。遺伝子コードの縮重のために、多くの核酸配列が、任意の所定のタンパク質をコードするであろう。例えば、コドンGCA、GCC、GCGおよびGCUは全て、アラニンというアミノ酸をコードする。従って、アラニンがコドンによって特定される全ての位置で、コードされたポリペプチドを変えることなく、記載されている対応するコドンのいずれかにコドンを変更することができる。このような核酸変異は、保存的に改変された変異の1種である「サイレント変異」である。ポリペプチドをコードする本明細書の全ての核酸配列は、核酸のあらゆる可能なサイレント変異も記載する。当業者は、核酸中の各コドン(通常はメチオニンの唯一のコドンであるAUGおよび通常はトリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)を改変し、機能的に同一の分子を得ることができることを認識するであろう。従って、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において、暗黙のものである。
【0037】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされる配列中の1個のアミノ酸または少ない割合のアミノ酸を変更、付加または欠失する、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列に対する個々の置換、欠失または付加が、改変によって、アミノ酸が、化学的に類似したアミノ酸へと置換される、「保存的に改変された改変体」であることを認識するだろう。機能的に類似のアミノ酸を与える保存的置換の表は、当技術分野で周知である。このような保存的に改変された改変体は、本発明の多型改変体、種間ホモログおよび対立遺伝子に加えられ、除外されない。
【0038】
以下の8つのグループはそれぞれ、互いに保存的置換であるアミノ酸を含む。
【0039】
(1)アラニン(A)、グリシン(G)。
【0040】
(2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)。
【0041】
(3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)。
【0042】
(4)アルギニン(R)、リシン(K)。
【0043】
(5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)。
【0044】
(6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)。
【0045】
(7)セリン(S)、スレオニン(T);および
(8)システイン(C)、メチオニン(M)
(例えば、Creighton、Proteins(1984)を参照)。
【0046】
2つ以上の核酸またはポリペプチド配列の文脈における「同一の」との用語または「同一性」の割合は、以下に記載するデフォルトパラメータを用い、BLASTまたはBLAST2.0配列比較アルゴリズムを用いて測定した場合、または手動で整列させ、視覚観察した場合に、同じであるか、または同じである特定の割合のアミノ酸残基またはヌクレオチドを有する(即ち、比較ウィンドウまたは指定の領域にわたる最大対応を比較し、整列させたとき、特定の領域にわたって約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはこれ以上の同一性を有する)2つ以上の配列または部分配列を指す(例えば、NCBIウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/などを参照)。このような配列は、「実質的に同一」であるといわれる。この定義は、試験配列の相補体も指すか、またはこれにも適用され得る。この定義には、欠失および/または付加を有する配列および置換を有する配列も含まれる。後述するように、好ましいアルゴリズムは、ギャップなどを説明することができる。好ましくは、同一性は、長さが少なくとも約25アミノ酸またはヌクレオチドである領域にわたって、より好ましくは長さが50から100アミノ酸またはヌクレオチドである領域にわたって存在する。
【0047】
本明細書中に記載される特定のタンパク質(例えば、NFkB、STAT3)については、命名されたタンパク質は、タンパク質の天然に存在する形態、またはタンパク質転写因子活性を維持する(例えば、天然タンパク質と比較して、少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性を有する)改変体またはホモログのいずれかを含む。幾つかの実施形態において、改変体またはホモログは、天然に存在する形態と比較して、配列全体または配列の一部(例えば、50、100、150または200個の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。他の実施形態において、タンパク質は、NCBI配列リファレンスによって同定されるタンパク質である。他の実施形態において、タンパク質は、NCBI配列リファレンスまたはその機能的フラグメントもしくはホモログによって同定されるタンパク質である。
【0048】
従って、本明細書で言及される「STAT3タンパク質」は、STAT3タンパク質活性を維持する転写体3(STAT3)タンパク質またはその改変体もしくはホモログ(例えば、STAT3と比較して、少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性)のシグナルトランスデューサおよびアクチベーターの組換え体または天然に存在する形態のいずれかを含む。幾つかの態様において、改変体またはホモログは、天然に存在するSTAT3ポリペプチドと比較して、配列全体または配列の一部(例えば、50、100、150または200個の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。複数の実施形態において、STAT3タンパク質は、UniProt参照番号P40763によって同定されるタンパク質と実質的に同一であるか、またはこれと実質的な同一性を有する改変体またはホモログである。
【0049】
本明細書で言及される「NFkBタンパク質」は、組換え体または天然に存在する形態のいずれかである、活性化B細胞の核因子κ軽鎖エンハンサー(NFkB)タンパク質またはNFkBタンパク質活性を維持する(例えば、NFkBと比較して、少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性を維持する)その改変体もしくはホモログを含む。幾つかの態様において、改変体またはホモログは、天然に存在するNFkBポリペプチドと比較して、配列全体または配列の一部(例えば、50、100、150または200個の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。複数の実施形態において、NFkBタンパク質は、UniProt参照番号P19838によって同定されるタンパク質と実質的に同一であるか、またはこれと実質的な同一性を有する改変体またはホモログである。複数の実施形態において、NFkBタンパク質は、UniProt参照番号Q04206によって同定されるタンパク質と実質的に同一であるか、またはこれと実質的な同一性を有する改変体またはホモログである。複数の実施形態において、NFkBタンパク質は、UniProt参照番号Q00653によって同定されるタンパク質と実質的に同一であるか、またはこれと実質的な同一性を有する改変体またはホモログである。複数の実施形態において、NFkBタンパク質は、UniProt参照番号Q01201によって同定されるタンパク質と実質的に同一であるか、またはこれと実質的な同一性を有する改変体またはホモログである。複数の実施形態において、NFkBタンパク質は、UniProt参照番号Q048648によって同定されるタンパク質と実質的に同一であるか、またはこれと実質的な同一性を有する改変体またはホモログである。
【0050】
本明細書で言及される「p65タンパク質」は、組換え体または天然に存在する形態のいずれかである、核因子NF-κ-B p65サブユニット(p65)タンパク質としても知られる転写因子p65またはp65タンパク質活性を維持する(例えば、p65と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性を維持する)この改変体またはホモログを含む。幾つかの態様において、改変体またはホモログは、天然に存在するp65ポリペプチドと比較して、配列全体または配列の一部(例えば、50、100、150または200個の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。複数の実施形態において、p65タンパク質は、UniProt参照番号Q04206によって同定されるタンパク質と実質的に同一であるか、またはこれと実質的な同一性を有する改変体またはホモログである。
【0051】
本明細書で提供される「CTLA-4」または「CTLA-4タンパク質」との用語は、組換え体または天然に存在する形態のいずれかである、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA-4)またはCTLA-4タンパク質活性を維持する(例えば、CTLA-4と比較して、少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性を維持する)この改変体またはホモログを含む。幾つかの態様において、改変体またはホモログは、天然に存在するCTLA-4ポリペプチドと比較して、配列全体または配列の一部(例えば、50、100、150または200個の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。複数の実施形態において、CTLA-4は、NCBI配列参照番号GI:83700231によって同定されるタンパク質、このホモログまたは機能的フラグメントである。
【0052】
本明細書で提供される「FOXP3」との用語は、組換え体または天然に存在する形態のいずれかである、フォークヘッドボックスP3(FOXP3)転写因子またはFOXP3タンパク質活性を維持する(例えば、FOXP3と比較して、少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性を維持する)この改変体またはホモログを含む。幾つかの態様において、改変体またはホモログは、天然に存在するFOXP3ポリペプチドと比較して、配列全体または配列の一部(例えば、50、100、150または200個の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。複数の実施形態において、FOXP3は、UniProt参照番号Q9BZS1によって同定されるタンパク質、このホモログまたは機能的フラグメントである。複数の実施形態において、FOXP3は、UniProt参照番号Q99JB6によって同定されるタンパク質、このホモログまたは機能的フラグメントである。
【0053】
「抗体」は、抗原に特異的に結合して認識する免疫グロブリン遺伝子由来のフレームワーク領域またはこのフラグメントを含むポリペプチドを指す。認識された免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、εおよびμ定常領域遺伝子および無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、κまたはλのいずれかに分類される。重鎖は、γ、μ、α、δまたはεに分類され、免疫グロブリンの種類IgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEをそれぞれ規定する。典型的には、抗体の抗原結合領域は、結合の特異性およびアフィニテイにおいて最も重要である。幾つかの実施形態において、抗体または抗体フラグメントは、ヒト、マウス、ラット、ハムスター、ラクダなどを含む様々な生物に由来していてもよい。本発明の抗体は、抗体の所望の機能(例えば、グリコシル化、発現、抗原認識、エフェクター機能、抗原結合、特異性など)を改善または調節するために、1つまたは複数のアミノ酸位置で改変または突然変異した抗体を含んでいてもよい。
【0054】
例示的な免疫グロブリン(抗体)の構造単位は、テトラマーを含む。各テトラマーは、2つの同一のポリペプチド鎖対からなり、各対は、片方が「軽」鎖(約25kD)を有し、片方が「重」鎖(約50から70kD)を有する。各鎖のN末端は、抗原認識に主に関与する約100から110、またはもっと多いアミノ酸の可変領域を規定する。可変軽鎖(VL)および可変重鎖(VH)との用語は、それぞれ、これらの軽鎖および重鎖を指す。Fc(即ち、フラグメント結晶化領域)は、免疫グロブリンの「基部」または「尾部」であり、典型的には、抗体の種類に応じて2つまたは3つの定常ドメインに寄与する2つの重鎖から構成される。特定のタンパク質に結合することにより、Fc領域は、各抗体が所与の抗原に対して適切な免疫応答を形成することを保証する。Fc領域は、Fc受容体などの様々な細胞受容体、および補体タンパク質などの他の免疫分子にも結合する。
【0055】
抗体は、例えばインタクトな免疫グロブリンとして、または種々のペプチダーゼで消化することによって産生される多くの十分に特性決定されたフラグメントとして存在する。従って、例えば、ペプシンは、ヒンジ領域のジスルフィド結合の下にある抗体を消化して、F(ab)’2(ジスルフィド結合によってVH-CH1に結合した軽鎖それ自体であるFabのダイマー)を形成する。F(ab)’2を穏和な条件下で還元し、ヒンジ領域のジスルフィド結合を破壊することによってF(ab)’2ダイマーをFab’モノマーに変換してもよい。Fab’モノマーは、本質的に、ヒンジ領域の一部を有する抗原結合部位である(Fundamental Immunology(Paul編集、第3版、1993を参照)。種々の抗体フラグメントは、インタクトな抗体の消化という観点で定義されるが、当業者は、このようなフラグメントが化学的に、または組換えDNA方法論を使用して、新たに合成され得ることを理解するであろう。従って、抗体との用語は、本明細書中で使用される場合、抗体全体の改変によって産生される抗体フラグメント、または組換えDNA方法論を用いて新規に合成される抗体フラグメント(例えば一本鎖Fv)、またはファージディスプレイライブラリーを用いて同定される抗体フラグメントも含む(例えば、McCaffertyら、Nature 348:552-554(1990)を参照)。
【0056】
一本鎖可変フラグメント(scFv)は、典型的には、免疫グロブリンの重鎖(VH)および軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質であり、10から約25アミノ酸の短いリンカーペプチドに連結する。リンカーは通常、柔軟性のためにグリシンが豊富な場合があり、溶解性のためにセリンまたはスレオニンも豊富な場合がある。リンカーは、VHのN末端をVLのC末端に連結するか、またはこの逆でもよい。
【0057】
本発明の適切な抗体の調製および本発明による使用のための、例えば組換え抗体、モノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のために、当技術分野で公知の多くの技術を使用することができる(例えば、Kohler & Milstein、Nature 256:495-497(1975);Kozborら、Immunology Today 4:72(1983);Coleら、pp.77-96、Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy、Alan R.Liss,Inc.(1985);Coligan、Current Protocols in Immunology(1991);Harlow & Lane、Antibodies、A Laboratory Manual(1988);およびGoding、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(第2版、1986)を参照)。目的の抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子を細胞からクローニングすることができ、例えば、モノクローナル抗体をコードする遺伝子をハイブリドーマからクローニングし、組換えモノクローナル抗体を産生するために使用することができる。モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子ライブラリーを、ハイブリドーマまたは形質細胞から製造することもできる。重鎖および軽鎖の遺伝子産物のランダムな組み合わせは、異なる抗原特異性を有する抗体の大きなプールを生成する(例えば、Kuby、Immunology(第3版、1997)を参照)。一本鎖抗体または組換え抗体の製造技術(米国特許第4,946,778号、米国特許第4,816,567号)は、本発明のポリペプチドに対する抗体を生成するように適合させることができる。また、トランスジェニックマウスまたは他の哺乳動物などの生物を用いて、ヒト化抗体またはヒト抗体を発現させることができる(例えば、米国特許第5,545,807号;第5,545,806号;第5,569,825号;第5,625,126号;第5,633,425号;第5,661,016号、Marksら、Bio/Technology 10:779-783(1992);Lonbergら、Nature 368:856-859(1994);Morrison、Nature 368:812-13(1994);Fishwildら、Nature Biotechnology 14:845-51(1996);Neuberger、Nature Biotechnology 14:826(1996);およびLonberg & Huszar、Intern.Rev.Immunol.13:65-93(1995)を参照)。または、ファージディスプレイ技術を用いて、選択された抗原に特異的に結合する抗体およびヘテロマーFabフラグメントを同定することができる(例えば、McCaffertyら、Nature 348:552-554(1990);Marksら、Biotechnology 10:779-783(1992)を参照)。抗体は、二重特異性であってもよく、即ち、2つの異なる抗原を認識することができてもよい(例えば、WO93/08829号、Trauneckerら、EMBO J.10:3655-3659(1991);およびSureshら、Methods in Enzymology 121:210(1986)を参照)。抗体はまた、ヘテロコンジュゲート、例えば、2つの共有結合した抗体、または免疫毒素であってもよい(例えば、米国特許第4,676,980号、WO91/00360号;WO92/200373号および欧州特許第03089号を参照)。
【0058】
非ヒト抗体のヒト化または霊長類化のための方法は、当技術分野で周知である(例えば、米国特許第4,816,567号;第5,530,101号;第5,859,205号;第5,585,089号;第5,693,761号;第5,693,762号;第5,777,085号;第6,180,370号;第6,210,671号;および第6,329,511号;WO87/02671号;欧州特許出願第0173494号;Jonesら(1986)Nature 321:522;およびVerhoyenら(1988)Science 239:1534を参照)。ヒト化抗体は、例えば、WinterおよびMilstein(1991)Nature 349:293にさらに記載されている。一般に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、多くの場合、インポート残基と呼ばれ、典型的にはインポート可変ドメインから得られる。ヒト化は、本質的に、げっ歯類のCDRまたはCDR配列をヒト抗体の対応する配列に置き換えることによって、Winterおよび共同研究者らの方法に従って行うことができる(例えば、Morrisonら、PNAS USA、81:6851-6855(1984)、Jonesら、Nature 321:522-525(1986);Riechmannら、Nature 332:323-327(1988);MorrisonおよびOi、Adv.Immunol.、44:65-92(1988)、Verhoeyenら、Science 239:1534-1536(1988)およびPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)、Padlan、Molec.Immun.、28:489-498(1991);Padlan、Molec.Immun.、31(3):169-217(1994)を参照)。従って、このようなヒト化抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4,816,567号)、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に小さい部分が、非ヒト種由来の対応する配列によって置き換えられている。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、幾つかのCDR残基および場合によっては幾つかのFR残基が、げっ歯類抗体の類似部位に由来する残基によって置き換えられているヒト抗体である。例えば、ヒト化免疫グロブリンのフレームワーク領域をコードする第1の配列と、所望の免疫グロブリン相補性決定領域をコードする第2の配列セットとを含むポリヌクレオチドは、合成的に、または適切なcDNAとゲノムDNAセグメントとを組み合わせることによって製造することができる。ヒト定常領域DNA配列は、種々のヒト細胞から周知の方法に従って単離することができる。
【0059】
「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なっているかまたは改変された種類、エフェクター機能および/または種の定常領域に連結するように、またはキメラ抗体に新しい特性を与える全く異なる分子(例えば、酵素、毒素、ホルモン、成長因子、薬物など)に連結するように、定常領域またはこの一部が変更、置換または交換されているか;または(b)可変領域またはこの一部が、異なる抗原特異性または改変された抗原特異性を有する可変領域によって改変、置換または交換されている、抗体分子である。本発明の好ましい抗体、および本発明によって使用するための好ましい抗体には、ヒト化および/またはキメラモノクローナル抗体が含まれる。
【0060】
治療薬剤を抗体にコンジュゲートさせる技術は、周知である(例えば、Arnonら、「Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy」、Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy、Reisfeldら(編集)、pp.243-56(Alan R.Liss,Inc.1985);Hellstromら、「Antibodies For Drug Delivery」Controlled Drug Delivery(第2版)、Robinsonら(編集)、pp.623-53(Marcel Dekker,Inc.1987);Thorpe、「Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy:A Review」、Monoclonal Antibodies ’84:Biological And Clinical Applications、Pincheraら(編集)、pp.475-506(1985);およびThorpeら、「The Preparation And Cytotoxic Properties Of Antibody-Toxin Conjugates」、Immunol.Rev.、62:119-58(1982)を参照)。本明細書中で使用される場合、「抗体-薬物コンジュゲート」または「ADC」との用語は、抗体にコンジュゲートしているかまたはさもなければ共有結合している治療薬剤をいう。本明細書で言及する「治療薬剤」は、がんなどの疾患を治療または予防するのに有用な組成物である。複数の実施形態において、治療薬剤は抗体である。
【0061】
タンパク質またはペプチドに言及するとき、抗体に「特異的に(または選択的に)結合する」、または「特異的に(または選択的に)免疫反応性である」という句は、しばしばタンパク質および他の生物製剤の異種集合の中のタンパク質の存在を決定する結合反応を指す。従って、指定されたイムノアッセイ条件下で、特定の抗体は、バックグラウンドの少なくとも2倍、より典型的にはバックグラウンドの10倍から100倍を超えて、特定のタンパク質に結合する。このような条件下での抗体への特異的な結合は、特定のタンパク質に対する特異性について選択される抗体を必要とする。例えば、ポリクローナル抗体は、選択された抗原と特異的に免疫反応性であり、他のタンパク質とは特異的に免疫反応性ではない抗体のサブセットのみを得るように選択することができる。この選択は、他の分子と交差反応する抗体を差し引くことによって達成されてもよい。特定のタンパク質と特異的に免疫反応性の抗体を選択するために、様々なイムノアッセイフォーマットを使用することができる。例えば、固相ELISAイムノアッセイは、タンパク質に特異的に免疫反応性である抗体を選択するために慣用的に使用されている(例えば、特定の免疫反応性を決定するために使用可能なイムノアッセイのフォーマットおよび条件の記載については、Harlow&Lane、Using Antibodies、A Laboratory Manual(1998)を参照)。
【0062】
「リガンド」は、受容体に結合することができる薬剤、例えばポリペプチドまたは他の分子を指す。
【0063】
「標識」または「検出可能な部分」は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、化学的手段または他の物理的手段によって検出可能な組成物である。例えば、有用な標識には、32P、蛍光色素、電子密度の高い試薬、酵素(例えば、ELISAで一般的に使用されるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはハプテンおよびタンパク質、または(例えば標的ペプチドと特異的に反応するペプチドまたは抗体に放射能標識を組み込むことによって)検出可能にすることができる他の物体が含まれる。例えば、Hermanson、Bioconjugate Techniques 1996、Academic Press,Inc.、San Diegoに記載されている方法を用いて、標識に抗体をコンジュゲートさせるための当該分野で公知の任意の適切な方法を使用することができる。
【0064】
本明細書で提供される「ビオチン」との用語は、テトラヒドロチオフェン環と縮合したウレイド(テトラヒドロイミジザロン)環を特徴とする化合物を指す。従って、本明細書で提供される「ビオチン」は、5-[(3aS,4S,6aR)-2-オキソヘキサヒドロ-1H-チエノ[3,4-d]イミダゾール-4-イル]ペンタン酸を指し、通常の意味では、CAS登録番号58-85-5を指す。本明細書で使用する「ビオチン結合ドメイン」は、ビオチンに結合することができるタンパク質ドメインである。ビオチン結合ドメインの非限定的な例としては、アビジン、ストレプトアビジンおよびニュートラアビジンが挙げられる。複数の実施形態において、ビオチン結合ドメインは、ビオチンに非共有結合する。
【0065】
本明細書で提供される「アビジン」または「ストレプトアビジン」との用語は、天然に存在する形態のアビジンまたはストレプトアビジン、アビジンまたはストレプトアビジンの天然に存在する形態の活性を維持する(例えば、天然タンパク質と比較して少なくとも50%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の活性を維持する)、アビジンもしくはストレプトアビジンの、天然に存在する形態、ホモログ、改変体または誘導体(例えばニュートラアビジン)を含む。幾つかの実施形態において、改変体は、天然に存在する形態と比較して、配列全体または配列の一部(例えば、50、100、150または200個の連続したアミノ酸部分)にわたって少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%のアミノ酸配列同一性を有する。複数の実施形態において、アビジンは、UniProt配列参照番号P02701によって同定されるタンパク質、このホモログまたは機能的フラグメントである。複数の実施形態において、ストレプトアビジンは、UniProt配列参照番号P22629によって同定されるタンパク質、そのホモログまたは機能的フラグメントである。
【0066】
「接触」は、通常の意味に従って使用され、少なくとも2つの異なる種(例えば、生体分子または細胞を含む化学化合物)が、反応、相互作用、または物理的に接触するほど十分に近づくことを可能にする過程を指す。しかしながら、得られた反応形成物は、添加された試薬間の反応から、または反応混合物中で製造され得る1種以上の添加された試薬由来の中間体から直接的に製造することができることを理解されたい。
【0067】
「接触」との用語は、2つの種を反応させ、相互作用させ、または物理的に接触させることを含んでいてもよく、2つの種は、例えば、本明細書に記載のビオチンドメインと、ビオチン結合ドメインであってもよい。複数の実施形態において、接触は、例えば、本明細書に記載のビオチンドメインを、ビオチン結合ドメインと相互作用させることを含む。
【0068】
「コントロール」サンプルまたは値は、試験サンプルとの比較のために、リファレンス(通常は既知のリファレンス)として働くサンプルを指す。例えば、試験サンプルは、例えば試験化合物の存在下で、試験条件から採取され、例えば試験化合物の非存在下(ネガティブコントロール)、または既知の化合物の存在下(ポジティブコントロール)で、既知の条件から得たサンプルと比較することができる。コントロールは、多数の試験または結果から集められた平均値を表していてもよい。当業者は、任意の数のパラメータの評価のためにコントロールを設計できることを認識するであろう。例えば、薬理学的データ(例えば、半減期)または治療上の尺度(例えば、副作用の比較)に基づく治療上の利益を比較するためのコントロールを考案することができる。当業者は、所与の状況においてどのコントロールが有益であり、コントロール値との比較に基づいてデータを分析することができるかを理解するであろう。コントロールは、データの有意性を決定するのにも役立つ。例えば、与えられたパラメータの値がコントロールにおいて大きく変動している場合、試験サンプルにおける変動は有意でないと考えられる。
【0069】
「コントロール」または「標準コントロール」は、試験サンプル、測定または値との比較のために、リファレンス(通常は既知のリファレンス)として働くサンプル、測定または値を指す。例えば、試験サンプルは、所与の疾患(例えば、自己免疫疾患、炎症性自己免疫疾患、がん、感染症、免疫疾患、または他の疾患)の疑いがある患者から採取し、既知の正常な(罹患していない)個人(例えば、標準コントロール被験体)と比較することができる。標準コントロールは、所与の疾患を有していない同様の個人(例えば、標準コントロール被験体)、例えば、同様の医学的背景、同じ年齢、体重などを有する健康な個人の集合(すなわち、標準コントロール集団)から集めた測定または値の平均も表すことができる。標準コントロール値は、同じ個人からも得ることができ、例えば、疾患が発症する前の患者からの初期に得られたサンプルから得ることができる。当業者は、任意の数のパラメータ(例えば、RNAレベル、タンパク質レベル、特定の細胞の種類、特定の体液、特定の組織、滑膜細胞、滑液、滑膜組織、線維芽細胞様の滑膜細胞、マクロファージ様の滑膜細胞など)の評価のために、標準コントロールを設計することができることを認識するだろう。
【0070】
当業者は、所与の状況においてどの標準コントロールが最も適しており、標準コントロール値との比較に基づいてデータを分析することができるかを理解するであろう。標準コントロールは、データの有意性(例えば、統計的有意性)を決定するのにも役立つ。例えば、与えられたパラメータの値が標準コントロールにおいて大きく変動している場合、試験サンプルにおける変動は有意でないと考えられる。
【0071】
「患者」または「これを必要とする被験体」は、本明細書で提供される組成物または医薬組成物を投与することによって治療することができる疾患または状態に罹患しているかまたはこの傾向がある生物を指す。非限定的な例としては、ヒト、他の哺乳動物、ウシ、ラット、マウス、イヌ、サル、ヤギ、ヒツジ、ウシ、シカおよび他の非哺乳動物が挙げられる。幾つかの実施形態において、患者はヒトである。
【0072】
「疾患」または「状態」との用語は、本明細書で提供される化合物、医薬組成物または方法で治療することができる患者または被験体の状態または健康状態を指す。複数の実施形態において、疾患は、がん(例えば、肺がん、卵巣がん、骨肉腫、膀胱がん、子宮頸がん、肝臓がん、腎臓がん、皮膚がん(例えばメルケル細胞癌)、精巣がん、白血病、リンパ腫、頭頸部がん、結腸直腸がん、前立腺がん、膵臓がん、メラノーマ、乳がん、神経芽腫)である。この疾患は、自己免疫性、炎症性、がん性、感染性、代謝性、発達性、心血管性、肝臓、腸、内分泌腺、神経学的または他の疾患であってもよい。
【0073】
本明細書中で使用される場合、「がん」との用語は、白血病、リンパ腫、メラノーマ、神経内分泌腫瘍、癌腫および肉腫を含む、哺乳動物に見られるあらゆるタイプのがん、新生物または悪性腫瘍を指す。本明細書で提供される化合物、医薬組成物または方法で治療され得る例示的ながんとしては、リンパ腫、肉腫、膀胱がん、骨がん、脳腫瘍、子宮頸がん、結腸がん、食道がん、胃がん、頭頸部がん、腎臓がん、骨髄腫、甲状腺がん、白血病、前立腺がん、乳がん(トリプルネガティブ、ER陽性、ER陰性、化学療法抵抗性、ハーセプチン抵抗性、HER2陽性、ドキソルビシン抵抗性、タモキシフェン抵抗性、腺管癌、小葉癌、原発性、転移性)、卵巣がん、前立腺がん、肝臓がん(例えば、肝細胞癌)、肺がん(例えば、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞肺癌、腺癌、大細胞肺癌、小細胞肺癌、カルチノイド、肉腫)、多形神経膠芽腫、神経膠腫、メラノーマ、前立腺がん、去勢抵抗性前立腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、神経膠芽腫、卵巣がん、肺がん、扁平上皮癌(例えば、頭部、頸部または食道)、結腸直腸がん、白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫、または多発性骨髄腫が挙げられる。さらなる例としては、甲状腺がん、内分泌系がん、脳がん、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、頭頸部がん、食道がん、肝臓がん、腎臓がん、肺がん、非小細胞肺癌、メラノーマ、中皮腫、卵巣がん、肉腫、胃がん、子宮がんまたは髄芽腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、多形神経膠芽腫、卵巣がん、横紋筋肉腫、原発性血小板増加症、原発性マクログロブリン血症、原発性脳腫瘍、がん、悪性膵臓インスリノーマ、悪性カルチノイド、膀胱がん、前悪性肌、精巣がん、リンパ腫、甲状腺がん、神経芽細胞腫、食道がん、尿生殖器管がん、悪性高カルシウム血、子宮内膜がん、副腎皮質がん、膵臓内分泌または外分泌の新生物、髄様甲状腺がん、髄様甲状腺癌腫、メラノーマ、結腸直腸がん、結腸直腸がん、乳頭様甲状腺がん、肝細胞がん、乳頭のパジェット病、葉状腺腫瘍、小葉がん、腺管がん、膵臓星状細胞がん、肝星状細胞がんまたは前立腺がんが挙げられる。
【0074】
「白血病」との用語は、広く、血液形成器官の進行性悪性疾患を指し、一般に、血液および骨髄における白血球およびこの前駆体の増殖および発生の歪みを特徴とする。白血病は、一般に、(1)急性または慢性の疾患の期間および特徴、(2)関与する細胞の種類;骨髄(骨髄性)、リンパ球(リンパ性)または単球性;(3)血液白血病または無白血病(亜白血性)における異常細胞の数が増加していること、または増加していないことを基準として、臨床的に分類される。本明細書で提供される化合物、医薬組成物または方法で治療し得る例示的な白血病としては、例えば、急性非リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、急性顆粒球性白血病、慢性顆粒球性白血病、急性前骨髄球性白血病、成人T細胞白血病、非白血性白血病、白血球性白血病、好塩基球性白血病、芽球性白血病、ウシ白血病、慢性骨髄性白血病、皮膚白血病、胎生細胞性白血病、好酸球性白血病、グロス白血病、有毛細胞白血病、血芽球性白血病、血芽球細胞性白血病、組織球性白血病、幹細胞性白血病、急性単球性白血病、白血球減少性白血病、リンパ性白血病、リンパ芽球性白血病、リンパ細胞性白血病、リンパ行性白血病、リンパ様白血病、リンパ肉腫細胞性白血病、肥満細胞性白血病、巨核球性白血病、小骨髄芽球性白血病、単球性白血病、骨髄芽球性白血病、骨髄性白血病、骨髄顆粒球性白血病、骨髄単球性白血病、ネーゲリ白血病、形質細胞性白血病、多発性骨髄腫、形質細胞白血病、前骨髄球性白血病、リーダー細胞性白血病、シリング白血病、幹細胞性白血病、亜白血性白血病または未分化細胞性白血病が挙げられる。
【0075】
「肉腫」という用語は、胎芽の結合組織のような物質で形成され、原線維または同種の物質に埋め込まれた密に集まった細胞から一般的に構成される腫瘍を広く指す。本明細書で提供される化合物、医薬組成物または方法で治療し得る例示的な肉腫としては、軟骨肉腫、線維肉腫、リンパ肉腫、黒色肉腫、粘液肉腫、骨肉腫、アバーネシー肉腫、脂肪性肉腫、脂肪肉腫、胞状軟部肉腫、エナメル上皮肉腫、ブドウ状肉腫、緑色肉腫、絨毛上皮腫、胎芽性肉腫、ウィルムス腫瘍肉腫、子宮内膜肉腫、間質性肉腫、ユーイング肉腫、筋膜肉腫、線維芽細胞性肉腫、巨細胞肉腫、顆粒球性肉腫、ホジキン肉腫、特発多発性色素出血性肉腫、B細胞免疫芽球性肉腫、リンパ腫、T細胞免疫芽球性肉腫、イエンセン肉腫、カポージ肉腫、クップファー細胞肉腫、血管肉腫、白血肉腫、悪性間葉肉腫、傍骨性肉腫、網状赤血球性肉腫、ラウス肉腫、漿液嚢肉腫、滑膜肉腫または毛細血管拡張性肉腫が挙げられる。
【0076】
「メラノーマ」という用語は、皮膚および他の組織のメラノサイト系から生じる腫瘍を意味するのに用いられる。本明細書で提供される化合物、医薬組成物または方法で治療し得るメラノーマとしては、例えば、末端部黒子黒色腫、メラニン欠乏性黒色腫、良性若年性黒色腫、クラウドマン黒色腫、S91黒色腫、ハーディングパッセー黒色腫、若年性黒色腫、悪性黒子型黒色腫、悪性黒色腫、結節性黒色腫、爪下黒色腫および表在拡大型黒色腫が挙げられる。
【0077】
「癌腫」という用語は、周囲の組織に浸潤し、転移を引き起こしやすい上皮細胞で形成された悪性の新生物を指す。本明細書で提供される化合物、医薬組成物または方法で治療し得る例示的な癌腫としては、例えば、髄様甲状腺癌腫、家族性髄様甲状腺癌腫、腺房癌腫、腺癌腫、腺嚢胞癌腫、腺様嚢胞癌腫、癌腫腺腫、副腎皮質の癌腫、肺胞癌腫、肺胞細胞癌腫、基底細胞癌腫、基底細胞性癌腫、類基底細胞癌腫、基底扁平上皮癌腫、細気管支肺胞上皮癌腫、細気管支癌腫、気管支原生癌腫、大脳様癌腫、胆管細胞性癌腫、絨毛膜癌腫、膠様癌腫、コメド癌腫、コーパス癌腫、篩状癌腫、胴甲性癌腫、クタノイム癌腫、円柱状癌腫、円柱細胞性癌腫、腺管癌腫、導管性癌種、デュラム癌腫、胎生期癌腫、脳様癌腫、エピエルモイド癌腫、上皮腺様癌腫、外方増殖性癌腫、潰瘍性癌腫、線維性癌腫、ゼラチン状癌腫、ゼラチン様癌腫、巨細胞癌腫、巨細胞性癌腫、腺癌腫、顆粒膜細胞癌腫、毛母癌腫、血液様癌腫、肝細胞癌腫、ヒュルトレ細胞癌腫、硝子様癌腫、副腎様癌腫、幼児型胎児性癌腫、原位置癌腫、表皮内癌腫、上皮内癌腫、クロンペチャー癌腫、クルチツキー細胞癌腫、大細胞癌腫、レンズ状癌腫、レンズ様癌腫、脂肪腫性癌腫、小葉癌、リンパ上皮癌腫、骨髄癌腫、髄様癌腫、黒色癌腫、モル癌腫、粘液性癌腫、ミューシパーラム癌腫、粘液細胞癌腫、粘液性類表皮癌腫、粘膜癌腫、粘液癌腫、粘液腫性癌腫、鼻咽頭癌腫、燕麦細胞癌腫、骨化癌腫、類骨癌腫、乳頭状癌腫、門脈周囲性癌腫、転移前癌腫、有棘細胞癌腫、髄質様癌腫、腎臓の腎細胞癌腫、予備細胞癌腫、肉腫様癌腫、シュナイダー癌腫、硬癌腫、陰嚢癌腫、印環細胞癌腫、単純性癌腫、小細胞癌腫、ソラノイド癌腫、球状細胞癌腫、紡錘体細胞癌腫、海綿状癌腫、鱗状癌腫、扁平上皮癌腫、ストリング癌腫、毛細血管拡張性癌腫、毛細管拡張様癌腫、移行上皮癌腫、結節性癌腫、管状癌腫、結節状癌腫、ゆうぜい癌腫または絨毛性癌腫が挙げられる。
【0078】
本明細書で使用される場合、「転移」、「転移性」および「転移性癌」との用語は互換的に使用することができ、ある器官または別の隣接していない器官または身体の一部からの増殖性の疾患または障害(例えば、がん)の広がりを指す。がんは、原発部位、例えば乳房で起こり、この部位は原発腫瘍、例えば原発性乳がんと呼ばれる。原発腫瘍または原発部位の幾つかのがん細胞は、局所領域の周囲の正常組織に透過して浸潤する能力、および/またはリンパ系もしくは血管系を貫通し、これらの系を通って体内の他の部位および組織に循環する能力を獲得する。原発腫瘍のがん細胞から形成された第2の臨床的に検出可能な腫瘍は、転移性または二次性腫瘍と呼ばれる。がん細胞が転移するとき、転移性腫瘍およびこの細胞は、元の腫瘍のものと類似していると推定される。従って、肺がんが乳房に転移する場合、乳房の部位の二次性腫瘍は、異常な肺細胞からなり、異常な乳房細胞は含まれない。胸部の二次性腫瘍は、転移性肺がんと呼ばれる。従って、転移性がんという語句は、被験体が原発腫瘍を有しているかまたは過去に有しており、1つ以上の二次性腫瘍を有する疾患を指す。非転移性がんまたは転移性ではないがんを有する被験体との句は、被験体が原発腫瘍を有するが、1つ以上の二次性腫瘍を有さない疾患を指す。例えば、転移性肺がんとは、原発性肺腫瘍を有するか、またはその病歴を有する被験体における疾患、および例えば乳房における第2の位置または複数の位置に1つ以上の二次的腫瘍を有する疾患を指す。
【0079】
本明細書で使用される場合、「自己免疫疾患」は、例えば被験体の体内に通常存在する組織および/または細胞の物質に対し、変化した免疫反応から被験体の免疫系によって生じる疾患または障害を指す。自己免疫疾患としては、限定されないが、関節炎、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性特発性関節炎、強皮症、全身性強皮症、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス(SLE)、重症筋無力症、若年性糖尿病、1型糖尿病、ギランバレー症候群、橋本脳炎、橋本甲状腺炎、強直性脊椎炎、乾癬、シェーグレン症候群、血管炎、糸球体腎炎、自己免疫甲状腺炎、ベーチェット病、クローン病、潰瘍性大腸炎、水疱性類天疱瘡、サルコイドーシス、乾癬、魚鱗癬、グレーブス眼症、炎症性腸疾患、アジソン病、白斑、喘息およびアレルギー性喘息が挙げられる。
【0080】
本明細書中で使用される場合、「炎症性疾患」は、異常な炎症または変化した炎症に関連する疾患または障害を指す。炎症は、病原体、損傷した細胞もしくは組織または刺激物に応答する治癒過程の一部として、免疫系によって開始される生物学的応答である。慢性炎症は、様々な病気につながる可能性がある。炎症性疾患には、アテローム性動脈硬化症、アレルギー、喘息、慢性関節リウマチ、移植拒絶反応、セリアック病、慢性前立腺炎、炎症性腸疾患、骨盤炎症性疾患および炎症性ミオパチーが含まれるが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書で使用される場合、「代謝障害」とは、例えば、炭水化物、アミノ酸および有機酸を含む様々な分子および物質の異常な代謝を伴う疾患または障害をいう。代謝障害としては、限定されないが、炭水化物代謝障害(例えばグリコーゲン貯蔵疾患)、フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿病、グルタル酸血症1型および尿素サイクル障害または尿素サイクル欠陥(例えば、カルバモイルホスフェートシンテターゼI欠乏症)などのアミノ酸代謝障害、有機酸代謝障害(有機酸尿症)(例えば、アルカプトン尿症)、脂肪酸酸化およびミトコンドリア代謝の障害(例えば、中鎖アシル補酵素Aデヒドロゲナーゼ欠損症)、ポルフィリン代謝障害(例えば、急性間欠性ポルフィリン症)、プリンまたはピリミジンの代謝障害(例えば、レッシュナイハン症候群)、ステロイド代謝障害(例えば、脂肪性先天性副腎過形成、先天性副腎過形成)、ミトコンドリア機能の障害(例えば、カーンズセイヤー症候群)、ペルオキシソーム機能の障害(例えば、ツェルウエーガー症候群)ならびにリソソーム蓄積障害(例えば、ゴーシェ病およびニーマンピック病)が挙げられる。
【0082】
本明細書で使用される場合、「発達障害」は、言語障害、学習障害、運動障害および神経発達障害に関連する小児期にしばしば起きる疾患または障害を指す。例には、自閉スペクトラム障害および注意欠陥障害が含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
本明細書で使用される場合、「心血管疾患」は、心臓、血管またはこの両方に関連する疾患を指す。心血管疾患には、冠動脈心疾患、心筋症、高血圧性心疾患、心不全、心臓不整脈、炎症性心疾患、末梢動脈疾患、脳血管疾患および炎症性心疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
本明細書で使用される場合、「肝疾患」は、肝臓および/または肝機能の異常に関連する疾患を指す。肝疾患としては、肝炎、アルコール性肝疾患、脂肪肝疾患、肝硬変、バッドキアリ症候群、ギルバート症候群およびがんが挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
本明細書で使用される場合、「腸疾患」との用語は、腸(小腸または大腸)の異常に関連する疾患または障害を指す。腸疾患には、胃腸炎、大腸炎、回腸炎、虫垂炎、セリアック病、クローン病、エンテロウイルス、過敏性腸症候群および憩室疾患が含まれるが、これらに限定されない。
【0086】
本明細書で使用される場合、「内分泌疾患」との用語は、内分泌腺低分泌、内分泌腺過分泌および腫瘍を含む内分泌系の疾患または障害を指す。内分泌疾患としては、限定されないが、アジソン病、糖尿病、コン症候群、クッシング症候群、糖質コルチコイド反応性アルドステロン症、低血糖、甲状腺機能低下症、甲状腺機能低下症、甲状腺炎、下垂体機能亢進症、性腺機能低下症および副甲状腺疾患が挙げられる。
【0087】
本明細書中で使用される場合、「神経学的障害」との用語は、構造的、生化学的または電気的な異常を含む、身体の神経系の疾患または障害を指す。神経障害としては、限定されないが、脳損傷、脳機能障害、脊髄障害、末梢神経障害、脳神経障害、自律神経系障害、発作障害、運動障害(例えばパーキンソン病)、および多発性硬化症および中枢神経障害が挙げられる。
【0088】
本明細書で使用される場合、「感染症」との用語は、宿主被験体における病原体の感染、存在および/または増殖に関連する疾患または障害を指す。感染性病原体には、ウイルス、細菌、真菌、原生動物、多細胞寄生虫および異常タンパク質(例えばプリオン)が含まれるが、これらに限定されない。感染症に関連するウイルスとしては、限定されないが、単純ヘルペスウイルス、サイトメガロウイルス、エプスタインバーウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ヘルペスウイルス、水疱性口内炎ウイルス、肝炎ウイルス、ライノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、麻疹ウイルス、ポリオーマウイルス、ヒトパピローマウイルス、呼吸系発疹ウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、デングウイルス、ムンプスウイルス、ポリオウイルス、狂犬病ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、黄熱病ウイルス、エボラウイルス、シミアン免疫不全ウイルス、ヒト免疫不全ウイルスが挙げられる。感染症に関連する細菌には、限定されないが、M.tuberculosis、Salmonella種、E.coli、Chlamydia種、Staphylococcus種、Bacillus種およびPseudomonas種が含まれる。
【0089】
疾患(例えば、糖尿病、がん(例えば、前立腺がん、腎臓がん、転移性がん、メラノーマ、去勢抵抗性前立腺がん、乳がん、トリプルネガティブ乳がん、神経膠芽腫、卵巣がん、肺がん、扁平上皮癌(頭部、頸部または食道)、結腸直腸がん、白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫、B細胞リンパ腫、または多発性骨髄腫)に関連する物質または物質の活性もしくは機能という文脈で、「関連する」または「と関連する」との用語は、物質または物質の活性もしくは機能によって、疾患(例えば、肺がん、卵巣がん、骨肉腫、膀胱がん、子宮頸がん、肝臓がん、腎臓がん、皮膚がん(例えばメルケル細胞癌)、精巣がん、白血病、リンパ腫、頭頸部がん、結腸直腸がん、前立腺がん、膵臓がん、メラノーマ、乳がん、神経芽細胞腫)が(全体的または部分的に)引き起こされるか、または疾患の症状が(全体的または部分的に)引き起こされることを意味する。
【0090】
本明細書で使用する「異常」との用語は、正常とは異なることを指す。酵素活性を記載するために使用される場合、異常とは、正常コントロールまたは疾患のない正常なコントロールサンプルの平均よりも大きい活性または小さい活性を指す。異常な活性は、疾患を引き起こす活性の量を指してもよく、この場合、(例えば、本明細書に記載の方法を用いることによって)異常な活性を正常な量または疾患のない状態に関連する量に戻すと、疾患または1つ以上の疾患の症状が低減する。
【0091】
本明細書で使用される場合、「細胞を透過する」または「細胞透過性」との用語は、分子(例えば、抗体)が細胞外環境から有意な量または有効量で細胞内を通過する能力を指す。従って、細胞透過性コンジュゲートは、細胞外環境から、細胞の膜を通過して細胞に入る分子である。
【0092】
本明細書で使用される場合、「細胞を透過しない」または「非細胞透過性」との用語は、分子(例えば、抗体)が細胞外環境から有意な量または有効量で細胞に通過することができないことを指す。従って、非細胞透過性ペプチドまたはタンパク質は、一般的に、細胞、臓器または生物の集合に対して有意な生物学的効果を達成するために、細胞外環境から細胞膜を通って細胞に入ることができない。この用語は、1つ以上の少数のペプチドまたはタンパク質が細胞に入る可能性を除外するものではない。しかし、この用語は、一般に、細胞外環境から有意な程度まで細胞に入ることができない分子を指す。非細胞透過性分子および物質の例には、高分子量タンパク質(例えば、抗体)などの大きな分子が含まれるが、これに限定されない。ペプチドまたはタンパク質は、当業者に公知の方法を用いて非細胞透過性であると判定することができる。一例として、ペプチドまたはタンパク質を蛍光標識することができ、ペプチドまたはタンパク質の細胞外環境から細胞へと通過する能力は、フローサイトメトリー分析または共焦点顕微鏡法によってin vitroで決定することができる。幾つかの実施形態において、「非細胞透過性タンパク質」とは、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に結合した同じタンパク質よりも少なくとも約2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、10000または100000分の1少なく細胞に透過するタンパク質(例えば、抗体)を指す。幾つかの実施形態において、「非細胞透過性タンパク質」は、細胞に測定可能な程度に透過しないタンパク質をいう。
【0093】
本明細書で使用される場合、「分子量」(M.W.)または「分子質量」は、分子中の全ての原子の原子量の合計を指す。分子に関し、高分子量の分子は、典型的には25kDa以上の分子量を有する。一例として、高分子量タンパク質は、約25kDaから1000kDa、またはもっと大きなM.W.を有することができる。
【0094】
本明細書中で使用される場合、用語「細胞内」は、細胞の内側を意味する。本明細書中で使用される場合、「細胞内標的」は、細胞の内側に位置し、本明細書で提供される非細胞透過性タンパク質が結合する標的であるような標的、例えば核酸、ポリペプチドまたは他の分子(例えば炭水化物)である。結合は、直接的であってもよく、または間接的であってもよい。複数の実施形態において、非細胞透過性タンパク質は、細胞内標的に選択的に結合する。選択的に結合する(selectively bind)、選択的に結合すること(selectively binding)または特異的に結合すること(specifically binding)とは、ある薬剤(例えば、細胞内標的)に結合する薬剤(例えば、非細胞透過性タンパク質)を指し、他の薬剤を部分的または完全に除外する。結合することとは、アッセイ法のバックグラウンドの少なくとも約1.5倍の検出可能な結合を意味する。選択的または特異的な結合の場合、このような検出可能な結合は、所与の薬剤では検出することができるが、コントロール薬剤では検出することができない。これに代えて、またはこれに加えて、結合の検出は、下流にある分子または事象の存在をアッセイすることによって決定することができる。
【0095】
本明細書で使用される場合、用語「コンジュゲート」は、原子間または分子間の会合を指す。会合は、直接的であってもよく、または間接的であってもよい。例えば、核酸(例えば、ホスホロチオエート核酸)とタンパク質(例えば、本明細書で提供される抗体)との間のコンジュゲートは、直接的(例えば、共有結合による)であってもよく、または間接的(例えば、非共有結合(例えば、静電相互作用(例えば、イオン結合、水素結合、ハロゲン結合)、ファンデルワールス相互作用(例えば、双極子-双極子、双極子によって誘発される双極子、ロンドン分散力)、環のスタッキング(π効果)、疎水性相互作用など)による)であってもよい。コンジュゲートが非共有結合コンジュゲートである場合、非細胞透過性タンパク質とホスホロチオエート核酸は、非共有結合性リンカーを介して結合している。複数の実施形態において、非共有結合性リンカーは、ビオチン結合ドメインおよびビオチンドメインを含む。複数の実施形態において、コンジュゲートは、限定されないが、求核置換(例えば、アミンおよびアルコールとハロゲン化アシル、活性エステルとの反応)、求電子置換(例えば、エナミン反応)および炭素-炭素および炭素-ヘテロ原子の多重結合への付加(例えば、マイケル反応、Diels-Alder付加)を含む、コンジュゲート化学を用いて作られる。これらの反応および他の有用な反応は、例えば、March、ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY、第3版、John Wiley & Sons、New York、1985;Hermanson、BIOCONJUGATE TECHNIQUES、Academic Press、San Diego、1996;およびFeeneyら、MODIFICATION OF PROTEINS;Advances in Chemistry Series、Vol.198、American Chemical Society、Washington、D.C.、1982にて考察される。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸、ホスホロチオエート骨格ポリマーまたは非細胞透過性タンパク質は、ホスホロチオエート核酸の成分であるホスホロチオエート骨格ポリマー(例えば、モノチオホスフェート)または非細胞透過性タンパク質と、ビオチン結合ドメインまたはビオチンドメイン(例えば、アミノ酸)の成分との間の非共有化学反応によって、ビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに非共有結合している。他の実施形態において、ホスホロチオエート核酸、ホスホロチオエート骨格ポリマーまたは非細胞透過性タンパク質は、本明細書に記載されるような1つ以上の反応性部分、例えば、共有結合性反応性部分(例えば、ビニルスルホン部分-S(O)CH=CHのようなアミノ酸反応性部分)である。1つ以上の反応性部分は、ビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインの第2の反応性部分と反応することによって共有結合を形成し得る。限定されないが、ビオチンドメインまたはビオチン結合ドメインの反応性部分は、非細胞透過性タンパク質の一級アミン、スルフヒドリル部分、カルボキシル部分、炭水化物部分、チロシン側鎖もしくはヒスチジン側鎖、またはホスホロチオエート核酸もしくはホスホロチオエート骨格ポリマーのグアニジン塩基もしくはシトシン塩基と反応してもよい。ビオチン化(ビオチンドメインとの結合)またはアビジン化(ビオチン結合ドメインとの結合)および他の有用な反応の反応化学は、例えば、Nelson WM、Wojnar WA.The use of photobiotinylated PCR primers for magnetic bead-based solid phase sequencing.Human Genome III October 21-23、1991 San Diego、CA.Poster no.T41;およびThermo ScientificAvidin-Biotin Technical Handbook(2009年3月に1601675_AvBi_HB_INTL.pdfとして発行)にて考察されている。
【0096】
本明細書のコンジュゲート化学に使用される共有結合性反応性部分または官能基を含む有用な反応性部分には、例えば、以下のものが挙げられる。
【0097】
(a)限定されないが、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、N-ヒドロキシベンゾトリアゾールエステル、酸ハロゲン化物、アシルイミダゾール、チオエステル、p-ニトロフェニルエステル、アルキル、アルケニル、アルキニルおよび芳香族エステルを含むカルボキシル基およびこの種々の誘導体;
(b)エステル、エーテル、アルデヒドなどに変換することができるヒドロキシル基;
(c)ハロゲン化物を後で、例えば、アミン、カルボン酸アニオン、チオールアニオン、カルバニオン、またはアルコキシドイオンなどの求核基に置き換えることによって、ハロゲン原子の部位に新しい基を共有結合させることができるハロアルキル基;
(d)例えば、マレイミド基のようなDiels-Alder反応に関与することができるジエノフィル基;
(e)カルボニル誘導体(例えば、イミン、ヒドラゾン、セミカルバゾンまたはオキシム)の生成によって、またはGrignard付加またはアルキルリチウム付加のような機構によって、その後の誘導体化が可能なアルデヒドまたはケトン基;
(f)例えばスルホンアミドを形成するためのその後のアミンとの反応のためのハロゲン化スルホニル基;
(g)ジスルフィドに変換することができ、ハロゲン化アシルと反応させるか、または金などの金属に結合させることができるチオール基;
(h)例えば、アシル化、アルキル化または酸化することができる、アミン基またはスルフヒドリル基;
(i)例えば、環付加、アシル化、マイケル付加などを行うことができるアルケン;
(j)例えば、アミン化合物およびヒドロキシル化合物と反応させることができるエポキシド;
(k)核酸合成に有用なホスホラミダイトおよび他の標準的な官能基;
(l)金属ケイ素酸化物結合;
(m)反応性リン基(例えば、ホスフィン)に結合し、例えば、リン酸ジエステル結合を形成する、金属;および
(n)スルホン、例えば、ビニルスルホン。
【0098】
反応性官能基は、本明細書に記載されるタンパク質の化学的安定性に関与しないように、またはこれに干渉しないように選択することができる。一例として、核酸は、ビニルスルホンまたは他の反応性部分を含んでいてもよい。例えば、ビニルスルホン反応性部分を含む核酸は、S-S-R部分を含み、Rが-(CH-OHである核酸から形成することができる。ビニルスルホンを含む核酸は、末端ホスフェート(PS)を含む核酸からさらに形成されてもよい。
【0099】
「コントロール」または「標準コントロール」は、試験サンプル、測定または値との比較のために、リファレンス(通常は既知のリファレンス)として働くサンプル、測定または値を指す。例えば、試験サンプルは、所与の疾患(例えば、自己免疫疾患、炎症性自己免疫疾患、がん、感染症、免疫疾患、または他の疾患)の疑いがある患者から採取し、既知の正常な(罹患していない)個人(例えば、標準コントロール被験体)と比較することができる。標準コントロールは、所与の疾患を有していない同様の個人(例えば、標準コントロール被験体)、例えば、同様の医学的背景、同じ年齢、体重などを有する健康な個人の集合(すなわち、標準コントロール集団)から集めた測定または値の平均も表すことができる。標準コントロール値は、同じ個人からも得ることができ、例えば、疾患が発症する前の患者からの初期に得られたサンプルから得ることができる。当業者は、任意の数のパラメータ(例えば、RNAレベル、タンパク質レベル、特定の細胞の種類、特定の体液、特定の組織、滑膜細胞、滑液、滑膜組織、線維芽細胞様の滑膜細胞、マクロファージ様の滑膜細胞など)の評価のために、標準コントロールを設計することができることを認識するだろう。
【0100】
当業者は、所与の状況においてどの標準コントロールが最も適しており、標準コントロール値との比較に基づいてデータを分析することができるかを理解するであろう。標準コントロールは、データの有意性(例えば、統計的有意性)を決定するのにも役立つ。例えば、与えられたパラメータの値が標準コントロールにおいて大きく変動している場合、試験サンプルにおける変動は有意でないと考えられる。
【0101】
「診断」との用語は、疾患(例えば、自己免疫性、炎症性自己免疫性、がん性、感染性、免疫性または他の疾患)が被験体に存在する相対的な確率を指す。同様に、「予後」との用語は、ある疾患状態に関し、被験体において、ある将来の結果が起こり得る相対的な確率を指す。例えば、本発明の文脈において、予後は、個体が疾患(例えば、自己免疫性、炎症性自己免疫性、がん性、感染性、免疫性または他の疾患)を発症する可能性、または疾患の重篤度(例えば、疾患の持続時間)の可能性を指す。これらの用語は、医療診断の分野の当業者によって理解されるように、絶対的なものであることを意図するものではない。
【0102】
「生体サンプル」または「サンプル」は、被験体または患者から得られるか、または被験体または患者に由来する材料を指す。生体サンプルは、生検および剖検サンプルのような組織切片および組織学的目的のために採取された凍結切片を含む。このようなサンプルには、血液および血液画分または血液製剤(例えば、血清、血漿、血小板、赤血球など)、痰、組織、培養細胞(例えば、初代培養、外植片および形質転換細胞)、便、尿、滑液、関節組織、滑膜組織、滑膜細胞、線維芽細胞様滑膜細胞、マクロファージ様滑膜細胞、免疫細胞、造血細胞、線維芽細胞、マクロファージ、T細胞などが含まれる。生体サンプルは、典型的には、真核生物、例えば霊長類、例えばチンパンジーまたはヒト;ウシ;イヌ;ネコ;例えばモルモット、ラット、マウスなどのげっ歯類;ウサギのような哺乳動物;または鳥;爬虫類;または魚から得られる。
【0103】
本明細書で使用される「細胞」は、ゲノムDNAを保存または複製するのに十分な代謝または他の機能を実行する細胞を指す。細胞は、例えば、インタクトな膜の存在、特定の色素による染色、子孫細胞を産生する能力、または配偶子の場合には、第2配偶子と結合し、生存可能な子孫を産生する能力を含め、当技術分野で周知の方法によって同定することができる。細胞は、原核細胞および真核細胞を含んでいてもよい。原核細胞としては、細菌が挙げられるが、これに限定されない。真核細胞としては、酵母細胞および植物および動物由来の細胞、例えば哺乳動物、昆虫(例えばスポドプテラ)およびヒト細胞が挙げられるが、これらに限定されない。細胞は、天然では非接着性であるか、または例えばトリプシン処理によって表面に付着しないように処理されている場合に、有用であり得る。
【0104】
細胞透過性コンジュゲート
本明細書では、とりわけ、第1の非細胞透過性タンパク質と、第2のタンパク質と、ホスホロチオエート核酸分子とを含む細胞透過性コンジュゲートが提供される。本明細書で提供される第2のタンパク質は、非細胞透過性タンパク質であってもよい。複数の実施形態において、第2のタンパク質は、抗体である。本明細書に提供されるコンジュゲートは、第1の非細胞透過性タンパク質(例えば、第1の抗体)を第2の非細胞透過性タンパク質(例えば、第2の抗体)に結合しているホスホロチオエート核酸を含み、ホスホロチオエート核酸が、第1の非細胞透過性タンパク質と第2の非細胞透過性タンパク質の細胞内送達を高める。第1の非細胞透過性タンパク質と第2の非細胞透過性タンパク質は、同じ標的(例えば、細胞内タンパク質または表面で発現したタンパク質)に結合してもよく、または異なる標的に結合してもよい。第1の非細胞透過性タンパク質と第2の非細胞透過性タンパク質が、同じ標的に結合する場合、第1の非細胞透過性タンパク質は、第2の非細胞透過性タンパク質とは異なるエピトープに結合してもよい。第1の非細胞透過性タンパク質と第2の非細胞透過性タンパク質に対するホスホロチオエート核酸の共有結合または非共有結合(例えば、非共有結合性リンカーを介する)は、本明細書に提供される非細胞透過性タンパク質を、透過を介して細胞に入り込むことができるように形成する。本明細書で提供されるコンジュゲートは、とりわけ、抗体の細胞内送達および治療目的および診断目的のための細胞内標的(例えばシグナル伝達タンパク質)の標的化に有用である。
【0105】
一態様において、第1の非細胞透過性タンパク質を第2の非細胞透過性タンパク質に結合しているホスホロチオエート核酸を含む、細胞透過性コンジュゲートが提供される。ホスホロチオエート核酸は、第1の非細胞透過性タンパク質および第2の非細胞透過性タンパク質の細胞内送達を増強する。別の態様において、第1の非細胞透過性タンパク質を第2の非細胞透過性タンパク質に結合しているホスホロチオエートポリマー骨格を含む、細胞透過性コンジュゲートが提供される。ホスホロチオエートポリマー骨格は、第1の非細胞透過性タンパク質および第2の非細胞透過性タンパク質の細胞内送達を増強する。上述のように、ポリマー骨格は、このポリマー骨格が核酸配列中に通常存在する塩基を欠いていることを除き、核酸配列と同じ構造を含む(即ち、連結して一緒になった2つ以上の糖残基の鎖を含む)。従って、本明細書で提供される全ての実施形態および態様について、ホスホロチオエートポリマー骨格は、本明細書に記載のホスホロチオエート核酸の代わりに、またはこれと組み合わせて使用されてもよい。
【0106】
第1の非細胞透過性タンパク質および第2の非細胞透過性タンパク質は、ホスホロチオエート核酸に共有結合または非共有結合していてもよい。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、第1の非細胞透過性タンパク質および第2の非細胞透過性タンパク質に共有結合している。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、第1の非細胞透過性タンパク質および第2の非細胞透過性タンパク質に非共有結合している。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、第1の非細胞透過性タンパク質に共有結合し、第2の非細胞透過性タンパク質に非共有結合している。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、第1の非細胞透過性タンパク質に非共有結合し、第2の非細胞透過性タンパク質に共有結合している。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、第1の非細胞透過性タンパク質のリシン、アルギニン、システイン、またはヒスチジンに、独立して結合している。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、第2の非細胞透過性タンパク質のリシン、アルギニン、システイン、またはヒスチジンに、独立して結合している。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、第1の非細胞透過性タンパク質のシステインに結合している。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、第2の非細胞透過性タンパク質のシステインに結合している。
【0107】
複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、第1のリンカーを介して第1の非細胞透過性タンパク質に結合し、第2のリンカーを介して第2の非細胞透過性タンパク質に結合している。本明細書で提供される第1のリンカーおよび第2のリンカーは、化学リンカーであってもよい。複数の実施形態において、化学リンカーは、共有結合性リンカーまたは非共有結合性リンカーである。複数の実施形態において、共有結合性リンカーは、結合、置換もしくは非置換のアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロアルキレン、置換もしくは非置換のシクロアルキレン、置換もしくは非置換のヘテロシクロアルキレン、置換もしくは非置換のアリーレンまたは置換もしくは非置換のヘテロアリーレン、またはこれらの任意の組み合わせである。従って、本明細書で提供される化学リンカーは、複数の化学部分を含んでいてもよく、ここで、複数の部分は、それぞれ、化学的に異なる。
【0108】
ホスホロチオエート核酸は、非共有結合性リンカーを介して、第1の非細胞透過性タンパク質および第2の非細胞透過性タンパク質に結合していてもよい。本明細書で提供される非共有結合性リンカーは、ビオチン結合対の第1の結合要素と、ビオチン結合対の第2の結合要素とを含んでいてもよい。ビオチン結合対の第1の結合要素は、ビオチン結合ドメイン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)またはビオチンドメイン(例えば、ビオチン)であってもよい。ビオチン結合対の第2の結合要素は、ビオチン結合ドメイン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)またはビオチンドメイン(例えば、ビオチン)であってもよい。非共有結合性リンカーは、ビオチン結合対の第1の結合要素とビオチン結合対の第2の結合要素との間の非共有結合によって形成される。複数の実施形態において、ビオチン結合対の第1の結合要素は、ビオチン結合ドメイン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)であり、ビオチン結合対の第2の結合要素は、ビオチンドメイン(例えばビオチン)である。複数の実施形態において、ビオチン結合対の第1の結合要素は、ビオチンドメイン(例えば、ビオチン)であり、ビオチン結合対の第2の結合要素は、ビオチン結合ドメイン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)である。
【0109】
複数の実施形態において、第1のリンカーは、非共有結合性リンカーである。複数の実施形態において、第1のリンカーは、共有結合性リンカーである。複数の実施形態において、第2のリンカーは、非共有結合性リンカーである。複数の実施形態において、第2のリンカーは、共有結合性リンカーである。複数の実施形態において、第1のリンカーは非共有結合性リンカーであり、第2のリンカーは共有結合性リンカーである。複数の実施形態において、第1のリンカーは共有結合性リンカーであり、第2のリンカーは非共有結合性リンカーである。複数の実施形態において、第1のリンカーまたは第2のリンカーは、結合である。複数の実施形態において、第1のリンカーは結合である。複数の実施形態において、第2のリンカーは結合である。
【0110】
複数の実施形態において、第1のリンカーは、非共有結合性リンカーである。本明細書で提供される非共有結合性リンカーは、第2結合ドメイン(例えば、ビオチン結合ドメインまたはビオチンドメイン)に非共有結合した第1結合ドメイン(例えば、ビオチンドメインまたはビオチン結合ドメイン)を含むリンカーである。従って、非共有結合性リンカーは、第1の結合ドメインと第2の結合ドメインとの間の非共有結合によって形成される。
【0111】
複数の実施形態において、第1のリンカーは、第1の結合ドメインと第2の結合ドメインとを含む。複数の実施形態において、第2のリンカーは、第3の結合ドメインと第4の結合ドメインとを含む。第1の結合ドメイン、第2の結合ドメイン、第3の結合ドメインおよび第4の結合ドメインは、同じであってもよく、または独立して異なっていてもよい。複数の実施形態において、第1の結合ドメインは、第1のビオチン結合ドメイン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)である。複数の実施形態において、第2の結合ドメインは、第1のビオチンドメイン(例えば、ビオチン)である。複数の実施形態において、第3の結合ドメインは、第2のビオチン結合ドメイン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)である。複数の実施形態において、第4の結合ドメインは、第2のビオチンドメイン(例えば、ビオチン)である。複数の実施形態において、第1の結合ドメインは、第1のビオチンドメイン(例えば、ビオチン)である。複数の実施形態において、第2の結合ドメインは、第1のビオチン結合ドメイン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)である。複数の実施形態において、第3の結合ドメインは、第2のビオチンドメイン(例えば、ビオチン)である。複数の実施形態において、第4の結合ドメインは、第2のビオチン結合ドメイン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)である。複数の実施形態において、第1のリンカーは、第1のビオチンドメインに非共有結合した第1のビオチン結合ドメインを含む。複数の実施形態において、第2のリンカーは、第2のビオチンドメインに非共有結合した第2のビオチン結合ドメインを含む。
【0112】
第1のビオチン結合ドメイン、第2のビオチン結合ドメイン、第1のビオチンドメインおよび第2のビオチンドメインは、第1の非細胞透過性タンパク質または第2のタンパク質(例えば、第2の非細胞透過性タンパク質)にそれぞれ共有結合していてもよく、または非共有結合していてもよい。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質は、第1のビオチン結合ドメイン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)に共有結合しており、ホスホロチオエート核酸は、第1のビオチンドメイン(例えばビオチン)に共有結合している。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質は、第1のビオチンドメイン(例えば、ビオチン)に共有結合しており、ホスホロチオエート核酸は、第1のビオチン結合ドメイン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)に共有結合している。複数の実施形態において、第2のタンパク質(例えば、第2の非細胞透過性タンパク質)は、第2のビオチン結合ドメイン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)に共有結合しており、ホスホロチオエート核酸は、第2のビオチンドメイン(例えば、ビオチン)に共有結合している。複数の実施形態において、第2のタンパク質(例えば、第2の非細胞透過性タンパク質)は、第2のビオチンドメイン(例えば、ビオチン)に共有結合しており、ホスホロチオエート核酸は、第2のビオチン結合ドメイン(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)に共有結合している。
【0113】
本明細書で提供される第1のリンカーおよび第2のリンカーは、共有結合性リンカーであってもよい。本明細書で提供されるリンカー(例えば、第1のリンカー、第2のリンカー)は、当技術分野で周知の方法を適用し、リンカーおよび第1の非細胞透過性タンパク質および第2のタンパク質(例えば、第2の非細胞透過性タンパク質)の組成に適合するように、第1の非細胞透過性タンパク質または第2のタンパク質(例えば、第2の非細胞透過性タンパク質)に共有結合していてもよい。本明細書で提供されるリンカーは、第1の非細胞透過性タンパク質への結合点で、ホスホロチオエート核酸への結合点で、または第2のタンパク質(例えば、第2の非細胞透過性タンパク質)への結合点で、反応性基(例えば、アルキン、アジド、マレイミドまたはチオール反応性部分)のコンジュゲート生成物を含んでいてもよい。従って、本明細書で提供されるリンカーは、多価であってもよく、コンジュゲート化学技術によって形成されてもよい。本明細書で提供される組成物および方法に有用なリンカー(例えば、第1のリンカー、第2のリンカー)の非限定的な例としては、短いアルキル基、エステル、アミド、アミン、エポキシ基およびエチレングリコール、またはこれらの誘導体を含むアルキル基(置換アルキル基およびヘテロ原子部分含有アルキル基を含む)が挙げられる。本明細書で提供されるリンカー(例えば、第1のリンカー、第2のリンカー)は、スルホンアミドを生成するスルホン基、エステル基またはエーテル基(例えば、トリエチルエーテル)を含んでいてもよい。
【0114】
複数の実施形態において、第1のリンカーは、第1のビオチンドメインに非共有結合した第1のビオチン結合ドメインを含む。複数の実施形態において、第1のビオチン結合ドメインは、第1のアビジンドメインである。複数の実施形態において、第1のビオチン結合ドメインは、第1のストレプトアビジンドメインである。複数の実施形態において、第1のストレプトアビジンドメインは、複数の第1のビオチンドメインに結合している。複数の実施形態において、第1のストレプトアビジンドメインは、約4個の第1のビオチンドメインに結合している。
【0115】
複数の実施形態において、第1のビオチン結合ドメインは、第1の非細胞透過性タンパク質に結合している。複数の実施形態において、第1のビオチン結合ドメインは、第1の非細胞透過性タンパク質に共有結合している。複数の実施形態において、第1のビオチン結合ドメインは、第1の非細胞透過性タンパク質に非共有結合している。複数の実施形態において、複数の第1のビオチン結合ドメインが、第1の非細胞透過性タンパク質に結合している。複数の実施形態において、第1のビオチン結合ドメインは、ホスホロチオエート核酸に結合している。複数の実施形態において、第1のビオチン結合ドメインは、ホスホロチオエート核酸に共有結合している。複数の実施形態において、第1のビオチン結合ドメインは、ホスホロチオエート核酸に非共有結合している。複数の実施形態において、複数のホスホロチオエート核酸が、第1のビオチン結合ドメインに結合している。
【0116】
複数の実施形態において、第1のビオチンドメインは、ホスホロチオエート核酸に結合している。複数の実施形態において、第1のビオチンドメインは、ホスホロチオエート核酸に共有結合している。複数の実施形態において、第1のビオチンドメインは、ホスホロチオエート核酸に非共有結合している。複数の実施形態において、複数のホスホロチオエート核酸が、第1のビオチンドメインに結合している。複数の実施形態において、第1のビオチンドメインは、第1の非細胞透過性タンパク質に結合している。複数の実施形態において、第1のビオチンドメインは、第1の非細胞透過性タンパク質に共有結合している。複数の実施形態において、第1のビオチンドメインは、第1の非細胞透過性タンパク質に非共有結合している。複数の実施形態において、第1のビオチン結合ドメインは、第1のビオチンドメインに非共有結合することによって、第1のリンカーを形成する。
【0117】
複数の実施形態において、第1のリンカーまたは第2のリンカーは、共有結合性リンカーである。複数の実施形態において、第2のリンカーは、共有結合性リンカーである。複数の実施形態において、第1のリンカーは、共有結合性リンカーである。複数の実施形態において、第1のリンカーは結合である。複数の実施形態において、第2のリンカーは結合である。複数の実施形態において、第1のリンカーは共有結合性リンカーであり、第2のリンカーは共有結合性リンカーである。複数の実施形態において、第1のリンカーは非共有結合性リンカーであり、第2のリンカーは非共有結合性リンカーである。複数の実施形態において、第1のリンカーは共有結合性リンカーであり、第2のリンカーは非共有結合性リンカーである。複数の実施形態において、第1のリンカーは非共有結合性リンカーであり、第2のリンカーは共有結合性リンカーである。さらなる実施形態において、第2のリンカーは、結合である。
【0118】
複数の実施形態において、第2のリンカーは、第2のビオチンドメインに非共有結合した第2のビオチン結合ドメインを含む。複数の実施形態において、第2のビオチン結合ドメインは、第2のアビジンドメインである。複数の実施形態において、第2のビオチン結合ドメインは、第2のストレプトアビジンドメインである。複数の実施形態において、第2のストレプトアビジンドメインは、複数の第2のビオチンドメインに結合している。複数の実施形態において、第2のストレプトアビジンドメインは、約4個の第2のビオチンドメインに結合している。
【0119】
複数の実施形態において、第2のビオチン結合ドメインは、第2のタンパク質(例えば、第2の非細胞透過性タンパク質)に結合している。複数の実施形態において、第2のビオチン結合ドメインは、第2のタンパク質(例えば、第2の非細胞透過性タンパク質)に共有結合している。複数の実施形態において、第2のビオチン結合ドメインは、第2のタンパク質(例えば、第2の非細胞透過性タンパク質)に非共有結合している。複数の実施形態において、複数の第2のビオチン結合ドメインが、第2のタンパク質(例えば、第2の非細胞透過性タンパク質)に結合している。複数の実施形態において、第2のビオチン結合ドメインは、ホスホロチオエート核酸に結合している。複数の実施形態において、第2のビオチン結合ドメインは、ホスホロチオエート核酸に共有結合している。複数の実施形態において、第2のビオチン結合ドメインは、ホスホロチオエート核酸に非共有結合している。複数の実施形態において、複数のホスホロチオエート核酸が、第2のビオチン結合ドメインに結合している。
【0120】
複数の実施形態において、第2のビオチンドメインは、ホスホロチオエート核酸に結合している。複数の実施形態において、第2のビオチンドメインは、ホスホロチオエート核酸に共有結合している。複数の実施形態において、第2のビオチンドメインは、ホスホロチオエート核酸に非共有結合している。複数の実施形態において、複数のホスホロチオエート核酸が、第2のビオチンドメインに結合している。複数の実施形態において、第2のビオチンドメインは、第2のタンパク質(例えば、第2の非細胞透過性タンパク質)に結合している。複数の実施形態において、第2のビオチンドメインは、第2のタンパク質(例えば、第2の非細胞透過性タンパク質)に共有結合している。複数の実施形態において、第2のビオチンドメインは、第2のタンパク質(例えば、第2の非細胞透過性タンパク質)に非共有結合している。複数の実施形態において、第2のビオチン結合ドメインは、第2のビオチンドメインに非共有結合することによって、第2のリンカーを形成する。
【0121】
ビオチン結合対の第1の結合要素およびビオチン結合対の第2の結合要素は、第1の非細胞透過性タンパク質または第2の非細胞透過性タンパク質、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に共有結合していてもよく、または非共有結合していてもよい。複数の実施形態において、非細胞透過性タンパク質は、ビオチン結合対の第1の結合要素(例えば、アビジン、ストレプトアビジン)に共有結合し、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は、ビオチン結合対の第2の結合要素(例えば、ビオチン)に共有結合している。
【0122】
複数の実施形態において、ビオチン結合ドメインは、アビジンドメインである。複数の実施形態において、ビオチン結合ドメインは、ストレプトアビジンドメインである。複数の実施形態において、ストレプトアビジンドメインは、複数のビオチンドメインに結合する。複数の実施形態において、ストレプトアビジンドメインは、約4個のビオチンドメインに結合する。複数の実施形態において、ビオチン結合ドメインは、非細胞透過性タンパク質に結合している。複数の実施形態において、ビオチン結合ドメインは、第1の非細胞透過性タンパク質に共有結合している。複数の実施形態において、ビオチン結合ドメインは、第2の非細胞透過性タンパク質に共有結合している。複数の実施形態において、ビオチン結合ドメインは、第1の非細胞透過性タンパク質に非共有結合している。複数の実施形態において、ビオチン結合ドメインは、第2の非細胞透過性タンパク質に非共有結合している。複数の実施形態において、複数のビオチン結合ドメインが、第1の非細胞透過性タンパク質に結合している。複数の実施形態において、複数のビオチン結合ドメインが、第2の非細胞透過性タンパク質に結合している。複数の実施形態において、ビオチン結合ドメインは、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に結合している。複数の実施形態において、ビオチン結合ドメインは、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に共有結合している。複数の実施形態において、ビオチン結合ドメインは、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に非共有結合している。複数の実施形態において、複数のビオチン結合ドメインが、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に結合している。複数の実施形態において、ビオチン結合ドメインは、ビオチンドメインに非共有結合することによって、非共有結合性リンカーを形成する。
【0123】
複数の実施形態において、ビオチンドメインは、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に結合している。複数の実施形態において、ビオチンドメインは、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に共有結合している。複数の実施形態において、ビオチンドメインは、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格に非共有結合している。複数の実施形態において、複数のホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格が、ビオチンドメインに結合している。複数の実施形態において、ビオチンドメインは、第1の非細胞透過性タンパク質に結合している。複数の実施形態において、ビオチンドメインは、第2の非細胞透過性タンパク質に結合している。複数の実施形態において、ビオチンドメインは、第1の非細胞透過性タンパク質に共有結合している。複数の実施形態において、ビオチンドメインは、第2の非細胞透過性タンパク質に共有結合している。複数の実施形態において、ビオチンドメインは、第1の非細胞透過性タンパク質に非共有結合している。複数の実施形態において、ビオチンドメインは、第2の非細胞透過性タンパク質に非共有結合している。複数の実施形態において、複数のビオチンドメインが、第1の非細胞透過性タンパク質に結合している。複数の実施形態において、複数のビオチンドメインが、第2の非細胞透過性タンパク質に結合している。複数の実施形態において、ビオチンドメインは、ビオチン結合ドメインに非共有結合することによって、非共有結合性リンカーを形成する。
【0124】
上述のように、核酸、例えばホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は、ビオチン結合ドメイン(例えば、アビジンまたはストレプトアビジン)およびビオチンドメインを含む非共有結合性リンカーを介し、第1の非細胞透過性タンパク質または第2の非細胞透過性タンパク質に結合していてもよい。核酸、例えば、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は、様々な機構によって、ビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに結合していてもよい。同様に、第1の非細胞透過性タンパク質または第2の非細胞透過性タンパク質は、様々な機構によって、ビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに結合していてもよい。ホスホロチオエート核酸、ホスホロチオエートポリマー骨格または第1の非細胞透過性タンパク質または第2の非細胞透過性タンパク質は、ビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに共有結合していてもよく、または非共有結合していてもよい。第1の非細胞透過性タンパク質または第2の非細胞透過性タンパク質は、ビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに共有結合していてもよい。第1の非細胞透過性タンパク質または第2の非細胞透過性タンパク質が、ビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに共有結合している場合、ビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインは、タンパク質のアミノ酸に共有結合している。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質または第2の非細胞透過性タンパク質は、共有結合性反応性部分(上に記載)を含み、この反応性部分は、ビオチン結合性ドメインまたはビオチン化ドメインと反応性である。複数の実施形態において、ビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインは、共有結合性反応性部分を含み、この反応性部分は、第1の非細胞透過性タンパク質または第2の非細胞透過性タンパク質と反応性である。
【0125】
複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は、共有結合性反応性部分を含み、この反応性部分は、ビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインと反応性である。上述のように、共有結合性反応性部分は、タンパク質のリシン、アルギニン、システインまたはヒスチジン(例えば、アミノ酸側鎖)と反応性であってもよい。複数の実施形態において、共有結合性反応性部分は、システインと反応性である。共有結合性反応性部分は、ビニルスルホンであってもよい。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は、式S-S-R(式中、Rは保護基である)を有する反応性部分を含む。複数の実施形態において、Rは、ヘキサノール(1価の置換基)である。本明細書で使用される場合、ヘキサノールとの用語は、式C13OHを有する化合物を含み、1-ヘキサノール、2-ヘキサノール、3-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、3-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、3-メチル-2-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-メチル-3-ペンタノール、3-メチル-3-ペンタノール、2,2-ジメチル-1-ブタノール、2,3-ジメチル-1-ブタノール、3,3-ジメチル-1-ブタノール、2,3-ジメチル-2-ブタノール、3,3-ジメチル-2-ブタノールおよび2-エチル-1-ブタノールを含む。複数の実施形態において、Rは、1-ヘキサノールである。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、ビオチン結合ドメインまたはビオチンドメインに共有結合している。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、反応性部分を含む。複数の実施形態において、反応性部分は、上述のように、ビニルスルホンまたは式S-S-Rを有する反応性部分である。複数の実施形態において、Rは、ヘキサノール、例えば1-ヘキサノールである。
【0126】
一実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質は第1の抗体であり、第1のリンカーは第1のビオチン結合ドメインおよび第1のビオチンドメインを含み、第1のビオチン結合ドメインはアビジンドメインであり、第2の非細胞透過性タンパク質は第2の抗体であり、第2のリンカーは第2のビオチン結合ドメインおよび第2のビオチンドメインを含み、第2のビオチン結合ドメインはアビジンドメインである。さらなる一実施形態において、第1の抗体は抗STAT3抗体であり、第2の抗体は抗NFkB抗体である。さらなる一実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、二本鎖核酸である。
【0127】
一実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質は第1の抗体であり、第1のリンカーは共有結合性リンカーであり、第2の非細胞透過性タンパク質は第2の抗体であり、第2のリンカーは、第2のビオチン結合ドメインと第2のビオチンドメインとを含み、前記第2のビオチン結合ドメインは、アビジンドメインである。さらなる一実施形態において、第1の抗体は抗STAT3抗体であり、第2の抗体は抗NFkB抗体である。さらなる一実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、二本鎖核酸である。
【0128】
一実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質は第1の抗体であり、第1のリンカーは、第1のビオチン結合ドメインと第1のビオチンドメインとを含み、第1のビオチン結合ドメインはアビジンドメインであり、第2の非細胞透過性タンパク質は第2の抗体であり、第2のリンカーは共有結合性リンカーである。さらなる一実施形態において、第1の抗体は抗STAT3抗体であり、第2の抗体は抗NFkB抗体である。さらなる一実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、二本鎖核酸である。
【0129】
一実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質は第1の抗体であり、第1のリンカーは共有結合性リンカーであり、第2の非細胞透過性タンパク質は第2の抗体であり、第2のリンカーは共有結合性リンカーである。さらなる一実施形態において、第1の抗体は抗STAT3抗体であり、第2の抗体は抗NFkB抗体である。さらなる一実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、二本鎖核酸である。
【0130】
一実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質は第1の抗体であり、第1のリンカーは第1のビオチン結合ドメインおよび第1のビオチンドメインを含み、第1のビオチン結合ドメインはアビジンドメインであり、第2の非細胞透過性タンパク質は第2の抗体であり、第2のリンカーは第2のビオチン結合ドメインおよび第2のビオチンドメインを含み、第2のビオチン結合ドメインはアビジンドメインである。さらなる一実施形態において、第1の抗体は抗CTLA-4抗体であり、第2の抗体は抗FOXP3抗体である。さらなる一実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、二本鎖核酸である。
【0131】
一実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質は第1の抗体であり、第1のリンカーは共有結合性リンカーであり、第2の非細胞透過性タンパク質は第2の抗体であり、第2のリンカーは、第2のビオチン結合ドメインと第2のビオチンドメインとを含み、前記第2のビオチン結合ドメインは、アビジンドメインである。さらなる一実施形態において、第1の抗体は抗CTLA-4抗体であり、第2の抗体は抗FOXP3抗体である。さらなる一実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、二本鎖核酸である。
【0132】
一実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質は第1の抗体であり、第1のリンカーは、第1のビオチン結合ドメインと第1のビオチンドメインとを含み、第1のビオチン結合ドメインはアビジンドメインであり、第2の非細胞透過性タンパク質は第2の抗体であり、第2のリンカーは共有結合性リンカーである。さらなる一実施形態において、第1の抗体は抗CTLA-4抗体であり、第2の抗体は抗FOXP3抗体である。さらなる一実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、二本鎖核酸である。
【0133】
一実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質は第1の抗体であり、第1のリンカーは共有結合性リンカーであり、第2の非細胞透過性タンパク質は第2の抗体であり、第2のリンカーは共有結合性リンカーである。さらなる一実施形態において、第1の抗体は抗CTLA-4抗体であり、第2の抗体は抗FOXP3抗体である。さらなる一実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、二本鎖核酸である。
【0134】
複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、一本鎖核酸である。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、二本鎖核酸である。ホスホロチオエート核酸が二本鎖核酸である場合、ホスホロチオエート核酸は、第2のホスホロチオエート核酸にハイブリダイズした第1のホスホロチオエート核酸を含み、第1のホスホロチオエート核酸は、第1の非細胞透過性タンパク質に結合しており、第2のホスホロチオエート核酸は、第2の非細胞透過性タンパク質に結合している。複数の実施形態において、第1のホスホロチオエート核酸は、第2のホスホロチオエート核酸に相補的である。第1のホスホロチオエート核酸は、第2のホスホロチオエート核酸に相補的な核酸に対して少なくとも50%の配列同一性を有する。第1のホスホロチオエート核酸は、第2のホスホロチオエート核酸に相補的な核酸に対して約50%の配列同一性を有する。第1のホスホロチオエート核酸は、第2のホスホロチオエート核酸に相補的な核酸に対して少なくとも60%の配列同一性を有する。第1のホスホロチオエート核酸は、第2のホスホロチオエート核酸に相補的な核酸に対して少なくとも70%の配列同一性を有する。第1のホスホロチオエート核酸は、第2のホスホロチオエート核酸に相補的な核酸に対して少なくとも80%の配列同一性を有する。第1のホスホロチオエート核酸は、第2のホスホロチオエート核酸に相補的な核酸に対して少なくとも90%の配列同一性を有する。第1のホスホロチオエート核酸は、第2のホスホロチオエート核酸に相補的な核酸に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。第1のホスホロチオエート核酸は、第2のホスホロチオエート核酸に相補的な核酸に対して少なくとも98%の配列同一性を有する。
【0135】
複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100の核酸残基の長さであるか、またはもっと長い。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は、約10から約30核酸残基の長さである。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格酸は、約20核酸残基の長さである。複数の実施形態において、各核酸またはポリマー骨格の長さは、少なくとも約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100個、またはもっと多い核酸残基または糖残基の長さであってもよい。複数の実施形態において、各ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は、独立して、5から50、10から50、15から50、20から50、25から50、30から50、35から50、40から50、45から50、5から75、10から75、15から75、20から75、25から75、30から75、35から75、40から75、45から75、50から75、55から75、60から75、65から75、70から75、5から100、10から100、15から100、20から100、25から100、30から100、35から100、40から100、45から100、50から100、55から100、60から100、65から100、70から100、75から100、80から100、85から100、90から100、95から100個、またはもっと多い残基の長さである。複数の実施形態において、各ホスホロチオエート核酸またはホスホロチオエートポリマー骨格は、独立して、10から15、10から20、10から30、10から40または10から50個の残基の長さである。
【0136】
複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質および第2の非細胞透過性タンパク質は、独立して、25kDを超える分子量を有する。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質および第2の非細胞透過性タンパク質は、独立して、約25kDから約750kDの分子量を有する。従って、第1の非細胞透過性タンパク質および第2の非細胞透過性タンパク質は、独立して、少なくとも約25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、500、505、510、515、520、525、530、535、540、545、550、555、560、565、570、575、580、585、590、595、600、605、610、615、620、625、630、635、640、645、650、655、660、665、670、675、680、685、690、695、700、705、710、715、720、725、730、735、740、745、750、またはこれ以上のキロダルトン(kD)の分子量を有する。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質および第2の非細胞透過性タンパク質は、独立して、少なくとも約25から100kD、少なくとも約25から150kD、少なくとも約25から200kD、少なくとも約25から250kD、少なくとも約25から300kD、少なくとも約25から350kD、少なくとも約25から400kD、少なくとも約25から450kD、少なくとも約25から500kD、少なくとも約25から550kD、少なくとも約25から600kD、少なくとも約25から650kD、少なくとも約25から700kDまたは少なくとも約25から750kDの分子量を有する。
【0137】
複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質および第2の非細胞透過性タンパク質は、独立して抗体である。上にさらに詳細に記載されるように、抗体は、IgG、IgA、IgM、IgDまたはIgE抗体などの全長抗体、またはこのフラグメントであってもよい。複数の実施形態において、抗体は、IgG抗体またはこのフラグメントである。複数の実施形態において、抗体は、IgG抗体またはこのフラグメントである。複数の実施形態において、抗体は、scFvフラグメントまたはヒト化抗体である。複数の実施形態において、抗体は、IgA、IgM、IgDまたはIgE抗体である。複数の実施形態において、抗体は、scFvフラグメントである。複数の実施形態において、抗体は、ヒト化抗体である。従って、ホスホロチオエート核酸を介して接続した第1の抗体および第2の抗体が提供され、ホスホロチオエート核酸は、第1の抗体および第2の抗体の細胞への送達を増強する。複数の実施形態において、第1の抗体または第2の抗体は、治療用抗体、即ち疾患の治療に使用される抗体である。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質(例えば、抗体)または第2の非細胞透過性タンパク質(例えば、抗体)は、細胞内標的に結合する。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質(例えば、抗体)および第2の非細胞透過性タンパク質(例えば、抗体)は、細胞内標的に結合する。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質は、第2の非細胞透過性タンパク質とは異なる細胞内標的に結合する。従って、複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質は第1の細胞内標的に結合し、第2の非細胞透過性タンパク質は第2の細胞内標的に結合する。複数の実施形態において、第1の細胞内標的は、シグナル伝達分子(例えば、STAT3タンパク質)である。複数の実施形態において、第2の細胞内標的は、転写因子(例えば、NFkBタンパク質)である。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質は、前記細胞内標的上で、第2の非細胞透過性タンパク質とは異なるエピトープに結合する。
【0138】
細胞内標的は、例えば共焦点顕微鏡法によって画像化されるべき治療標的または診断標的、または細胞内に位置する他の目的の標的、例えば標的または構造、例えばヒストンであってもよい。かくして、細胞内標的に結合した細胞透過性コンジュゲートが提供される。複数の実施形態において、細胞内標的は、自己免疫疾患、炎症性疾患、代謝障害、発達障害、心血管疾患、肝疾患、腸疾患、感染症、内分泌疾患、神経学的障害およびがんからなる群から選択される疾患の標的である。細胞内標的の例としては、限定されないが、STAT3、Myc、NFkB、AP1、HIF、突然変異体p53を含む発がん性転写因子;限定されないが、Ras、MAPK、PI3キナーゼ、AKT、BTK、JAKs、SRCファミリーメンバーを含むがんタンパク質;FOXp3、T-BET、GATA3、STAT1、2、3、4、5、6を含む免疫調節分子が挙げられる。疾患の標的は、診断標的または治療標的、または疾患に関連する他の目的の標的であってもよい。例示的ながんの細胞内標的としては、限定されないが、STAT(例えば、STAT3)、NFkB、PKB/Akt、Mycファミリーメンバー、ステロイドホルモン受容体(例えばエストロゲン受容体)、ステロイドホルモン受容体のリガンド(例えばサイクリンD1)、受容体チロシンキナーゼ(RTK)、EGFR、VEGFR、PDGFR、Srcファミリーメンバー、Ras、Abl、BCR-Abl、NPM-Alk、Janusキナーゼ(JAK)、Brutunチロシンキナーゼ(BTK)およびウイルス性がんタンパク質(例えば、EBVタンパク質、またはHPVタンパク質、例えば、E6およびE7)が挙げられる。複数の実施形態において、感染症の細胞内標的はウイルスタンパク質またはウイルス転写物である。従って、細胞内標的は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、エプスタインバーウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトパピローマウイルスまたは肝炎ウイルスのウイルスタンパク質またはウイルス転写物であってもよい。複数の実施形態において、細胞内標的は、限定されないが、転写因子、転写エンハンサー、転写リプレッサー、ヒストンまたは翻訳後修飾ヒストンを含むDNA結合タンパク質である。複数の実施形態において、細胞内標的は、後成的に改変されたDNA、例えば、メチル化またはヒドロキシメチル化されたシトシン(5mCまたは5hmC)、5-ホルミルシトシン(5fC)および5-カルボキシシトシン(5caC)である。複数の実施形態において、細胞内標的は、核酸、例えばRNA転写物または核酸である。例えば、細胞内標的は、感染性病原体、例えば、寄生虫、ウイルスまたは細菌の核酸であってもよい。
【0139】
複数の実施形態において、細胞内標的は、シグナル伝達分子または転写因子である。複数の実施形態において、シグナル伝達分子は、ホスファターゼまたはキナーゼである。複数の実施形態において、転写因子は、活性化B細胞の核因子κ軽鎖エンハンサー(NFkB)タンパク質である。複数の実施形態において、NFkBタンパク質は、p65である。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質はSTAT3タンパク質に結合し、第2の非細胞透過性タンパク質はNFkBタンパク質に結合する。複数の実施形態において、細胞内標的はがん標的であるか、またはがん細胞内に位置する。複数の実施形態において、細胞内標的はSTATタンパク質、例えばSTAT3またはexportin7である。複数の実施形態において、細胞内標的は、STAT3、NFkBおよびSrcからなる群より選択される。複数の実施形態において、細胞内標的は、STAT3である。複数の実施形態において、細胞内標的は、NFkBである。複数の実施形態において、非細胞透過性タンパク質は、標識、低分子またはタンパク質に結合した機能性核酸をさらに含む。複数の実施形態において、細胞透過性コンジュゲートは、細胞内標的に結合する。
【0140】
細胞組成物
別の態様において、実施形態を含む本明細書で提供される細胞透過性コンジュゲートを含む細胞が提供される。提供された細胞透過性コンジュゲートの1つ以上を含む細胞が提供される。例えば、細胞は、複数の細胞透過性コンジュゲートを含んでいてもよい。複数の実施形態において、コンジュゲートは、細胞内で細胞内標的に結合する。例えば、細胞は、ホスホロチオエート核酸またはポリマー骨格を介して連結された第1の非細胞透過性タンパク質および第2の非細胞透過性タンパク質を含むことができる。第1の非細胞透過性タンパク質および第2の非細胞透過性タンパク質は、細胞内で細胞内標的に結合していてもよい。複数の実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は、前記細胞内標的上で、第1の非細胞透過性タンパク質とは異なるエピトープに結合する。複数の実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は、第2の細胞内標的に結合する。複数の実施形態において、第1および/または第2の非細胞透過性タンパク質は、抗体である。従って、第1の非細胞透過性タンパク質と第2の非細胞透過性タンパク質は、同じタンパク質であってもよく、または異なるタンパク質であってもよい。
【0141】
医薬組成物
実施形態を含む本明細書で提供される細胞透過性コンジュゲートと、医薬として許容される担体とを含む医薬組成物が、本明細書で提供される。提供される組成物は、とりわけ、in vitroまたはin vivoでの処方および投与に適している。適切な担体および賦形剤ならびにこれらの製剤は、The Science and Practice of Pharmacy、第21版、David B.Troy編集、Lippicott Williams & Wilkins(2005)に記載されている。医薬として許容される担体とは、生物学的に、または他の点で望ましくないものではない物質を意味する。即ち、この物質は、望ましくない生物学的効果を引き起こさずに、またはそれが含まれる医薬組成物の他の成分と有害な様式で相互作用をせずに、被験体に投与される。被験体に投与される場合、担体は、場合により、活性成分の分解を最小限にし、被験体における有害な副作用を最小限に抑えるように選択される。
【0142】
本発明によって提供される医薬組成物は、活性成分(例えば、実施形態または実施例を含む本明細書に記載の組成物)が治療有効量、即ち意図された目的を達成するのに有効な量で含まれる組成物を含む。特定の用途に有効な実際の量は、とりわけ、治療される状態に依存する。疾患を治療するための方法において投与される場合、本明細書に記載の組換えタンパク質は、所望の結果(例えば、標的分子の活性を調節し、および/または疾患の症状の進行を低減するか、なくすか、または遅らせる)を達成するために有効な量の活性成分を含む。本発明の化合物の治療有効量の決定は、特に本明細書の詳細な開示を考慮して、十分に当業者の能力の範囲内にある。
【0143】
別の態様において、実施形態を含む本明細書で提供される細胞透過性コンジュゲートと医薬として許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質または第2の非細胞透過性タンパク質は、細胞内標的に結合する。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質および第2の非細胞透過性タンパク質は、細胞内標的に結合する。複数の実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は、前記細胞内標的上で、第1の非細胞透過性タンパク質とは異なるエピトープに結合する。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質は、第1の細胞内標的に結合する。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質は、抗体である。複数の実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は、第2の細胞内標的に結合する。複数の実施形態において、第2の非細胞透過性タンパク質は、抗体である。第1の非細胞透過性タンパク質と第2の非細胞透過性タンパク質は、同じタンパク質であってもよく、または異なるタンパク質であってもよい。
【0144】
投与のための組成物は、一般に、医薬として許容される担体、好ましくは水性担体に溶解した、本明細書に記載の薬剤を含む。種々の水性担体、例えば緩衝食塩水などを使用することができる。これらの溶液は無菌であり、一般的に、望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌されてもよい。組成物は、適切な生理学的条件に必要な医薬として許容される補助物質、例えば、pH調整剤およびバッファー、毒性調整剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを含んでいてもよい。これらの製剤中の活性薬剤の濃度は様々に変化してもよく、選択される特定の投与様式および被験体の必要性に応じて、主として液量、粘度、体重などに基づいて選択される。
【0145】
遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物中、および油中で調製することもできる。通常の貯蔵条件および使用条件で、これらの製剤は、微生物の増殖を防止するための防腐剤を含んでいてもよい。
【0146】
医薬組成物は、鼻腔内用または吸入可能な溶液またはスプレー、エアロゾルまたは吸入剤によって送達することができる。鼻用溶液は、点鼻またはスプレーで鼻腔に投与されるように設計された水溶液であってもよい。鼻用溶液は、鼻の分泌物と多くの点で似ているように調製することができる。従って、鼻用水溶液は、通常、等張性であり、5.5から6.5のpHを維持するために、わずかに緩衝化される。さらに、必要に応じて、眼用製剤および適切な薬物安定剤に使用されるものと同様の抗菌防腐剤が、製剤に含まれていてもよい。様々な市販の鼻用製剤が知られており、例えば、抗生物質および抗ヒスタミン剤を含んでいてもよい。
【0147】
経口製剤は、例えば医薬グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの賦形剤を含むことができる。これらの組成物は、溶液、懸濁物、錠剤、丸薬、カプセル、持続放出製剤または散剤の形態をとる。幾つかの実施形態において、経口医薬組成物は、不活性希釈剤または同化可能な食用担体を含むか、または硬質または軟質ゼラチンカプセルに封入されてもよく、または錠剤に圧縮してもよく、または食用の食べ物に直接組み込まれてもよい。経口治療用投与の場合、活性化合物は賦形剤と共に組み込まれ、摂取可能な錠剤、バッカル錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁物、シロップ、ウエハースなどの形態で使用されてもよい。このような組成物および製剤は、少なくとも0.1%の活性化合物を含有すべきである。組成物および製剤の割合は、もちろん変えることができ、便宜的に単位重量の約2から約75%、好ましくは25から60%の間であってもよい。このような組成物中の活性化合物の量は、適切な投与量が得られるような量である。
【0148】
例えば、水溶液での非経口投与のためには、溶液は適切に緩衝化されるべきであり、液体希釈剤はまず十分な生理食塩水またはグルコースで等張性にされるべきである。水溶液、特に滅菌水性媒体は、静脈内、筋肉内、皮下および腹腔内の投与に特に適している。例えば、1回の投与量を1mlの等張性NaCl溶液に溶解し、1000mlの皮下注入液に添加するか、または提案された注入部位に注入することができる。
【0149】
滅菌注射用溶液は、必要な量の活性化合物または構築物を適切な溶媒に組み込み、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、種々の滅菌された活性成分を、基本的な分散媒体を含む滅菌ビヒクル中に組み込むことによって調製される。有効成分に加え任意の追加の所望な成分の粉末を得る真空乾燥および凍結乾燥技術を用い、滅菌注射溶液を再構築するための滅菌粉末を調製することができる。直接注射のために、さらに濃縮された、または高度に濃縮された溶液の調製も想定されている。DMSOは、非常に迅速な透過のための溶媒として使用することができ、高濃度の活性薬剤を小さな面積に送達する。
【0150】
化合物の製剤は、アンプルおよびバイアルのような単位用量または複数用量の密封容器で提供することができる。従って、組成物は単位剤形であってもよい。このような形態では、製剤は、適切な量の活性成分を含む単位用量に細分される。従って、組成物は、投与方法に依存して種々の単位剤形で投与することができる。例えば、経口投与に適した単位剤形には、粉末、錠剤、丸薬、カプセルおよびロゼンジが含まれるが、これらに限定されない。
【0151】
哺乳動物に投与される投与量および頻度(単回投与または複数回投与)は、種々の因子、例えば当該哺乳動物が別の疾患に罹患しているかどうか、および投与経路;レシピエントの大きさ、年齢、性別、健康、体重、体格指数、ボディマス指数および食餌;治療される疾患の症状の性質および程度(例えば、がんの症状およびこのような症状の重篤度);同時治療の種類、治療される疾患による合併症または他の健康関連の問題に依存して、様々であってもよい。他の治療計画または薬剤を、本発明の方法および化合物と共に使用することができる。確立された投与量(例えば、頻度および持続時間)の調節および操作は、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0152】
本明細書に記載される任意の組成物(例えば、提供される細胞透過性コンジュゲート)について、治療有効量は、細胞培養アッセイから最初に決定することができる。目標濃度は、本明細書に記載の方法を用いて測定するか、または当該分野で公知の方法を用いて測定したとき、本明細書に記載の方法を達成することができる活性化合物の濃度である。当技術分野で周知のように、ヒトにおける使用のための有効量は、動物モデルから決定することもできる。例えば、ヒトのための用量は、動物において有効であることがわかっている濃度を達成するように製剤化することができる。ヒトの用量は、有効性をモニタリングし、上述のように用量を上側または下側に調節することによって調整することができる。上述の方法および他の方法に基づいてヒトにおいて最大の効力を達成するために用量を調節することは、十分に当業者の能力の範囲内である。
【0153】
投与量は、患者および使用される化合物の要求に応じて変わり得る。本発明の文脈において患者に投与される用量は、時間の経過と共に患者における有益な治療応答に影響を及ぼすのに十分な量であるべきである。用量の大きさは、有害な副作用の存在、性質および程度によっても決定される。特定の状況のための適切な投与量の決定は、医師の技術の範囲内である。一般に、治療は、化合物の最適用量よりも低い、より少ない用量で開始される。その後、状況の下で最適な効果に達するまで、用量を少しずつ増加させる。
【0154】
投与量および間隔は、治療される特定の臨床適応症に有効な投与化合物のレベルを提供するために、個々に調整することができる。これにより、個体の疾患状態の重篤度に見合った治療計画を提供する。
【0155】
本明細書で提供される教示を利用して、実質的な毒性を引き起こさず、しかも特定の患者によって示された臨床症状を治療するのに有効であるような、有効な予防的または治療的な処置計画を計画することができる。この計画には、化合物の効力、相対的なバイオアベイラビリティ、患者の体重、有害な副作用の存在および重症度などの要因を考慮して、活性化合物の慎重な選択が必要である。
【0156】
「医薬として許容される賦形剤」および「医薬として許容される担体」は、被験体に対する有効な薬剤の投与および被験体による吸収を助け、患者に重大で有害な毒性作用を引き起こさずに、本発明の組成物に含めることができる物質を指す。医薬として許容される賦形剤の非限定的な例には、水、NaCl、通常の生理食塩水、乳酸Ringer液、通常のショ糖、通常のグルコース、結合剤、充填剤、崩壊剤、滑沢剤、コーティング剤、甘味料、風味剤、塩溶液(例えば、Ringer液)、アルコール、油、ゼラチン、ラクトース、アミロースまたはデンプンなどの炭水化物、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリジンおよび色素などが挙げられる。このような製剤は、滅菌され、必要に応じて、滑沢剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響する塩、バッファー、着色剤および/または芳香物質などの本発明の化合物と有害な反応を起こさない補助剤と混合されてもよい。当業者は、他の医薬賦形剤が本発明において有用であることを認識するであろう。
【0157】
「医薬として許容される塩」との用語は、当技術分野で周知の様々な有機および無機の対イオンから誘導される塩を指し、単なる例として、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムなどを含み、分子が塩基性官能基を含む場合、塩酸塩、臭化水素酸塩、酒石酸塩、メシル酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、シュウ酸塩などの有機または無機酸の塩が挙げられる。
【0158】
「製剤」との用語は、担体としてカプセル化材料を用い、他の担体を含むかまたは含まない活性成分が担体に囲まれ、これにより担体と会合するカプセルをもたらす、活性化合物の製剤を含むことを意図している。同様に、カシェ剤およびロゼンジ剤も含まれる。錠剤、散剤、カプセル、丸剤、カシェ剤およびロゼンジ剤は、経口投与に適した固体剤形として使用することができる。
【0159】
コンジュゲートを作成する方法
別の態様において、細胞透過性コンジュゲートを作成する方法が提供される。この方法は、第1の非細胞透過性タンパク質に結合している第1のホスホロチオエート核酸を、第2の非細胞透過性タンパク質に結合している第2のホスホロチオエート核酸にハイブリダイズすることによって、細胞透過性コンジュゲートを形成することを含む。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、第1のホスホロチオエート核酸または第2のホスホロチオエート核酸に共有結合している。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、第1のホスホロチオエート核酸または第2のホスホロチオエート核酸に非共有結合している。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、非共有結合性リンカーを介して第1のホスホロチオエート核酸または第2のホスホロチオエート核酸に結合している。複数の実施形態において、ホスホロチオエート核酸は、共有結合性反応性部分を含む。複数の実施形態において、この方法は、ハイブリダイズの前に、(i)第1の非細胞透過性タンパク質を第1のホスホロチオエート核酸と接触させることによって、第1のタンパク質ホスホロチオエート核酸複合体を形成することを含む。第2の非細胞透過性タンパク質を第2のホスホロチオエート核酸と接触させることによって、第2のタンパク質-ホスホロチオエート核酸複合体を形成する。さらに、第1のタンパク質ホスホロチオエート核酸複合体と第2のタンパク質ホスホロチオエート核酸複合体とを接触させる。
【0160】
送達方法
別の態様において、実施形態を含む本明細書で提供される非細胞透過性タンパク質を細胞に送達する方法が提供される。複数の実施形態において、非細胞透過性タンパク質は、細胞質中の核タンパク質に結合することによって、第1の非細胞透過性タンパク質-核タンパク質複合体を形成する。複数の実施形態において、非細胞透過性タンパク質は、細胞質中の核タンパク質に結合することによって、第2の非細胞透過性タンパク質-核タンパク質複合体を形成する。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質-核タンパク質複合体および前記第2の非細胞透過性タンパク質-核タンパク質複合体は、細胞の核に入り込むことができない。
【0161】
複数の実施形態において、細胞透過性コンジュゲートは、被験体の疾患を診断するために使用される。従って、本明細書に記載の有効量の細胞透過性コンジュゲート、または細胞透過性コンジュゲートを含む組成物を被験体に投与することを含む、被験体の疾患を診断する方法が提供される。コンジュゲートの投与は、被験体において疾患または疾患の1つ以上の症状を診断する。開示された方法は、試験サンプルからのバイオマーカー(例えば、疾患の細胞内標的)のレベルまたは活性を、コントロールサンプルと比較することを含む。上述のように、コントロールサンプルまたは値は、試験サンプルとの比較のために、リファレンス(通常は既知のリファレンス)として働くサンプルを指す。コントロールは、同様の個人(例えばがん患者、または同様の医療背景、同じ年齢、体重などを有する健康な個人)の集合から集められた平均値を表すこともできる。コントロール値は、同じ個人からも得ることができ、例えば、疾患が発症する前または治療前の患者からの初期に得られたサンプルから得ることができる。上で考察したように、診断は、疾患(例えば、自己免疫性、炎症性自己免疫性、癌性、感染性、免疫性または他の疾患)が被験体に存在する相対的な確率を指す。
【0162】
疾患リスク因子の決定に関して、比較する、相関関係にある、関連するとの用語は、ある個人におけるリスク因子の存在または量(例えば、疾患の細胞内標的の量)を、疾患を患っていることがわかっている個人、または疾患のリスクがあることがわかっている個人、または疾患がないことがわかっている個人における存在または量と比較し、アッセイ結果に基づき、ある個人に、疾患を患う/発症する可能性が高いか、低いかを割り当てることを指す。
【0163】
検出方法
実施形態を含む本明細書で提供される細胞透過性コンジュゲートと細胞とを接触させ、細胞内標的に対する細胞透過性コンジュゲートの結合を検出することを含む、細胞において細胞内標的を検出する方法も、本明細書で提供される。上述のように、細胞透過性コンジュゲートは、細胞内標的または2つの細胞内標的に結合し得、2つの細胞内標的は、独立して異なっていてもよい。細胞は、固定された細胞であってよく、または生存細胞であってもよい。複数の実施形態において、細胞は、in vitroまたはin vivoで配置される。結合は、直接的または間接的に検出することができる。本明細書では、細胞内標的に対する細胞透過性コンジュゲートの結合を検出するために、多くの方法を使用し得ることが理解され、想定されている。例えば、結合は、細胞透過コンジュゲートとこの細胞内標的との間のカップリングをアッセイすることによって直接検出することができる。結合は、例えば、以下に記載するように、共免疫沈降アッセイ、共局在アッセイ、または蛍光偏光アッセイからなる群からのアッセイを選択することによって、決定することができる。アッセイは、当技術分野で公知である(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、第3版、Cold Spring Harbor Press、Cold Spring Harbor、NY(2001);Dickson、Methods Mol.Biol.461:735-44(2008);Nickels、Methods 47(1):53-62(2009);およびZinchukら、Acta Histochem.Cytochem.40(4):101-11(2007)を参照)。
【0164】
複数の実施形態において、結合は、画像検査法または画像検査システムによって決定される。従って、実施形態を含む本明細書で提供される細胞透過性コンジュゲートは、画像検査用途、または細胞内標的のレベルおよび/または活性を分析するための他の用途で使用することもできる。例えば、提供された細胞透過コンジュゲートは、目的の細胞内標的のin vitroまたはin vivoでの画像検査に使用することができる。複数の実施形態において、細胞透過性コンジュゲートは、生きた細胞の画像検査に使用される。例えば、生きた細胞の画像検査は、生きた細胞内の細胞内標的の分布および/または動態をモニタリングするために使用することができ、標的相互作用のモニタリングにも適用することができる。例えば、細胞透過コンジュゲートは、免疫沈降および共免疫沈降アッセイにおいて、細胞内(複数の実施形態において、生きた細胞内)のタンパク質-タンパク質相互作用を調べるために使用することができる。複数の実施形態において、細胞透過性コンジュゲートは、フローサイトメトリーによる細胞内標的の分析に使用される。画像検査用途では、細胞透過性コンジュゲートは、使用される用途に応じて適切に標識される。上述のように、標識または検出可能な部分は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、化学的手段または他の物理的手段によって検出可能な組成物である。有用な標識には、限定されないが、32P、蛍光色素、電子密度の高い試薬、酵素(例えば、ELISAで一般的に使用されるもの)、ビオチン、ジゴキシゲニン、またはハプテンおよびタンパク質、または(例えば標的ペプチドと特異的に反応するペプチドまたは抗体に放射能標識を組み込むことによって)検出可能にすることができる他の物体が含まれる。例えば、Hermanson、Bioconjugate Techniques 1996、Academic Press,Inc.、San Diegoに記載されている方法を用いて、標識に抗体をコンジュゲートさせるための当該分野で公知の任意の方法を使用することができる。
【0165】
治療方法
実施形態を含む本明細書で提供される細胞透過コンジュゲートおよび実施形態を含む本明細書に記載の細胞透過コンジュゲートを含む組成物は、予防的処置および治療的処置の両方に有用である。予防的使用のために、治療有効量の本明細書に記載の薬剤を、初期の発症前または発症中(例えば、自己免疫疾患の初期徴候および症状のとき)に被験体に投与する。治療的処置は、疾患の診断または発症の後に、治療有効量の本明細書に記載される薬剤を被験体に投与することを含む。従って、別の態様において、疾患の治療を必要とする被験体において、疾患を治療する方法が提供される。この方法は、実施形態を含む本明細書で提供される有効量の細胞透過性コンジュゲートを被験体に投与することによって、被験体の疾患を治療することを含む。
【0166】
複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質および第2の非細胞透過性タンパク質は、抗体である。複数の実施形態において、疾患は、自己免疫疾患、発達障害、炎症性疾患、代謝障害、心血管疾患、肝疾患、腸疾患、感染症、内分泌疾患、神経障害およびがんからなる群から選択される。複数の実施形態において、疾患は、自己免疫疾患である。複数の実施形態において、疾患は、発達障害である。複数の実施形態において、疾患は、炎症性疾患である。複数の実施形態において、疾患は、代謝障害である。複数の実施形態において、疾患は、心血管疾患である。複数の実施形態において、疾患は、肝疾患である。複数の実施形態において、疾患は、腸疾患である。複数の実施形態において、疾患は、感染症である。複数の実施形態において、疾患は、内分泌疾患である。複数の実施形態において、疾患は、神経障害である。複数の実施形態において、疾患は、がんである。複数の実施形態において、がんは、リンパ腫である。複数の実施形態において、がんは、メラノーマである。
【0167】
複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質または第2の非細胞透過性タンパク質は、細胞内標的に結合する。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質および第2の非細胞透過性タンパク質は、細胞内標的に結合する。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質は、第2の非細胞透過性タンパク質とは異なる細胞内標的に結合する。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質は、細胞内標的上で、第2の非細胞透過性タンパク質とは異なるエピトープに結合する。複数の実施形態において、細胞内標的は、STAT3、NFkBタンパク質またはSrcである。複数の実施形態において、細胞内標的は、p65である。複数の実施形態において、細胞内標的は、STAT3である。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質はSTAT3に結合し、第2の非細胞透過性タンパク質はNFkBタンパク質に結合する。複数の実施形態において、コンジュゲートの第1の非細胞透過性タンパク質は、STAT3に特異的に結合する抗体であり、第2の非細胞透過性タンパク質は、STAT3の別のエピトープに特異的に結合する抗体である。
【0168】
提供される治療方法では、治療される疾患に適した追加の治療薬剤を使用することができる。従って、幾つかの実施形態において、提供される治療方法は、第2の治療薬剤を被験体に投与することをさらに含む。適切なさらなる治療薬剤には、限定されないが、鎮痛薬、麻酔薬、蘇生薬、コルチコステロイド、抗コリン薬、抗コリンエステラーゼ、抗痙攣薬、抗腫瘍薬、アロステリック阻害薬、同化ステロイド、抗リウマチ薬、精神治療薬、神経ブロック薬、抗炎症薬、駆虫薬、抗生物質、抗凝固剤、抗真菌剤、抗ヒスタミン薬、抗ムスカリン剤、抗ミコバクテリア剤、抗原虫剤、抗ウイルス剤、ドーパミン作動剤、血液学的薬剤、免疫学的薬剤、ムスカリン、プロテアーゼ阻害剤、ビタミン、成長因子、ホルモンが挙げられる。薬剤および投与量の選択は、治療される所与の疾患に基づいて当業者が容易に決定することができる。
【0169】
薬剤または組成物の組み合わせを、併用して(例えば、混合物として)、別個にではあるが同時に(例えば、別個の静脈ラインを介して)、または逐次的に(例えば、一方の薬剤が最初に投与され、続いて第2の薬剤が投与される)投与してもよい。従って、「組み合わせ」との用語は、2種以上の薬剤または組成物の併用、同時投与または逐次投与を指すために使用される。治療の経過は、被験体の特定の特徴および選択された治療の種類に応じて、個々の基準で最善に決定される。本明細書に開示されているような治療は、毎日、1日に2回、2週間に1回、1ヶ月に1回、または治療に有効な任意の適用可能な回数で被験体に投与することができる。治療は、単独で、または本明細書に開示されるかもしくは当該分野で公知の他の治療と組み合わせて、投与されてもよい。さらなる治療は、第1の治療と同時に、異なる時間に、または全く異なる治療スケジュールで(例えば、第1の治療は毎日、さらなる治療は週に1回であってもよい)投与することができる。
【0170】
本明細書で提供される方法によれば、被験体は、有効量の本明細書で提供される1つ以上の薬剤を投与される。有効量および有効投与量との用語は、互換的に使用される。有効量との用語は、所望の生理学的応答(例えば、炎症の軽減)を生じるのに必要な任意の量として定義される。薬剤を投与するための有効量およびスケジュールは、当業者によって経験的に決定されてもよい。投与のための投与量の範囲は、疾患または障害の1つ以上の症状が影響を受ける(例えば、軽減するかまたは遅れる)所望の効果を生じるのに十分な範囲である。この投与量は、望ましくない交差反応、アナフィラキシー反応などの実質的な有害な副作用を引き起こすほど大きくすべきではない。一般に、投与量は、年齢、状態、性別、疾患の種類、疾患または障害の程度、投与経路、または他の薬物が投薬計画に含まれるかどうかによって変わり、当業者が決定することができる。投与量は、なんらかの禁忌がある場合には、個々の医師が調整することができる。投与量は変化してもよく、毎日1回以上、1日から数日間にわたって投与してもよい。所与の種類の医薬品のための適切な投与量については、文献で指針を見つけることができる。例えば、所与のパラメータについて、有効量は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、または少なくとも100%の増加または減少を示す。有効性は、何「倍」の増加または減少として表すこともできる。例えば、治療有効量は、コントロールに対して少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍またはこれ以上の効果を有し得る。実際の投与量および製剤は、治療の目的に依存し、既知の技術を用い、当業者によって確認できるだろう(例えば、Lieberman、Pharmaceutical Dosage Forms(vol.1-3、1992);Lloyd、The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、Gennaro,Editor(2003)およびPickar、Dosage Calculations(1999)を参照)。
【0171】
開示された方法および組成物のために使用することができ、開示された方法および組成物と組み合わせて使用することができ、開示された方法および組成物の調製に使用することができ、または開示された方法および組成物の生成物である材料、組成物および構成要素が開示される。これらの材料および他の材料は本明細書に開示されており、これらの材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示されているとき、これらの化合物の様々な個々の組み合わせおよび集合的な組み合わせおよび順列の具体的な言及が、明示的に開示されていない場合でも、それぞれが具体的に想定され、本明細書に記載されていることを理解されたい。例えば、ある方法が開示され、議論され、この方法を含む多くの分子に対してなされ得る多数の改変が議論される場合、方法のそれぞれの全ての組み合わせおよび順列および可能な改変は、矛盾する内容が具体的に想定されていない限り、具体的に想定される。同様に、これらの任意のサブセットまたは組み合わせも具体的に想定され、開示される。この概念は、開示される組成物を使用する方法における工程を含むが、これに限定されない、本開示の全ての態様に適用される。従って、実行可能な多岐にわたる追加の工程が存在する場合、これらの追加の工程は、それぞれ、開示された方法の任意の特定の方法の工程または方法の工程の組み合わせで実行され得ること、およびこのような組み合わせまたはサブセットのそれぞれが具体的に想定されており、開示されているとみなすべきであることを理解されたい。
【0172】
「被験体」、「患者」、「個人」などの用語は、限定することを意図するものではなく、一般的に互換的に使用することができる。即ち、「患者」として記載された個人は、必ずしも所与の疾患を有するとは限らず、単に医学的な助言を求めるだけのものであってもよい。
【0173】
本明細書で使用される場合、状態、疾患または障害、または状態、疾患または障害に関連する症状を「治療する」または「治療」は、臨床結果を含む有益な結果または望ましい結果を得るための手法を指す。有益な臨床結果または望ましい臨床結果としては、限定されないが、部分的であれ全体的であれ、1つ以上の症状または状態の緩和または改善、状態、障害または疾患の程度の低下、状態、障害または疾患の状態の安定化、状態、障害または疾患の発症の進行の予防、状態、障害または疾患の広がりの予防、状態、障害または疾患の進行を遅らせるか、ゆっくりにすること、状態、障害または疾患の発症を遅らせるか、ゆっくりにすること、状態、障害または疾患の状態の改善または緩和、および緩解が挙げられる。「治療する」とは、治療をしていないときに予想される以上に被験体の生存を延長することも意味することができる。「治療する」とは、状態、障害または疾患の進行を阻害すること、状態、障害または疾患の進行を一時的に遅らせることを意味することもあるが、場合によっては、状態、障害または疾患の進行を永久に停止させることを含む。本明細書で使用される場合、治療、治療する、または治療すること、との用語は、プロテアーゼの発現によって特徴付けられる疾患もしくは状態の1つ以上の症状の影響、またはプロテアーゼの発現によって特徴付けられる疾患もしくは状態の症状を軽減する方法を指す。従って、開示された方法において、治療は、確立された疾患、状態、またはこの疾患もしくは状態の症状の重篤度の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%軽減を指していてもよい。例えば、疾患を治療するための方法は、コントロールと比較して、被験体における疾患の1つ以上の症状の10%の軽減がある場合に、治療であると考えられる。従って、この軽減は、天然のレベルまたはコントロールレベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、または10%から100%の任意の割合の軽減であってもよい。治療は、疾患、状態、または疾患もしくは状態の症状の治癒または完全な除去を必ずしも意味しないことが理解される。さらに、本明細書で使用される場合、軽減する、減少する、または阻害するとの言及は、コントロールレベルと比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはもっと大きな変化を含み、このような用語は、完全な除去を含んでいてもよいが、必ずしも含むわけではない。
【0174】
組み合わせ治療が想定される場合、本明細書に記載される薬剤(即ちリボ核酸化合物)が、組み合わせの特定の性質によって制限されることは意図されていない。例えば、本明細書に記載の薬剤は、単純な混合物および化学ハイブリッドとして、組み合わせて投与することができる。後者の例は、薬剤が標的担体または活性医薬に共有結合している場合である。共有結合は、限定されないが、市販の架橋剤の使用など、多くの方法で達成することができる。
【0175】
本明細書中で使用される場合、用語「医薬として許容される」は、「生理学的に許容される」および「薬理学的に許容される」と同義的に用いられる。医薬組成物は、一般に貯蔵中にバッファーおよび保存剤を含み、投与経路に応じて適切な送達のためのバッファーおよび担体を含むことができる。
【0176】
「有効量」は、記載された目的を達成する(例えば、投与の目的の効果を達成し、疾患を治療し、酵素活性を低下させ、疾患または状態の1以上の症状を軽減する)のに十分な量である。「有効量」の一例は、疾患の1つまたは複数の症状の治療、予防、または軽減に寄与するに十分な量であり、これは「治療有効量」とも呼ばれる場合がある。1つまたは複数の症状の「軽減」(およびこの句の文法上の同等語)は、1つまたは複数の症状の重症度または頻度の減少、または1つまたは複数の症状をなくすことを意味する。薬物の「予防上有効な量」は、被験体に投与されたときに、意図された予防効果、例えば、損傷、疾患、病理または状態の発症(または再発)を予防または遅延させる薬物の量であるか、または損傷、疾患、病理、または状態、またはこれらの症状の発症(または再発)の可能性を減少させる薬物の量である。完全な予防効果は、必ずしも1回の用量の投与によって生じるわけではなく、一連の用量の投与後にのみ生じてもよい。従って、1回以上の投与で、予防有効量を投与してもよい。本明細書で使用される「活性低下量」は、アンタゴニストの非存在下と比較して、酵素またはタンパク質の活性を低下させるのに必要なアンタゴニストの量を指す。本明細書で使用される「機能破壊量」は、アンタゴニストの非存在下と比較して酵素またはタンパク質の機能を破壊するのに必要なアンタゴニストの量を指す。所与の種類の医薬品のための適切な投与量については、文献で指針を見つけることができる。例えば、所与のパラメータについて、有効量は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、40%、50%、60%、75%、80%、90%、または少なくとも100%の増加または減少を示す。有効性は、何「倍」の増加または減少として表すこともできる。例えば、治療有効量は、コントロールに対して少なくとも1.2倍、1.5倍、2倍、5倍またはこれ以上の効果を有し得る。正確な量は、治療の目的に依存し、既知の技術を用い、当業者によって確認できるだろう(例えば、Lieberman、Pharmaceutical Dosage Forms(vol.1-3、1992);Lloyd、The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compounding(1999);Pickar、Dosage Calculations(1999);およびRemington:The Science and Practice of Pharmacy、第20版、2003、Gennaro編集、Lippincott,Williams & Wilkinsを参照)。
【0177】
本明細書で使用する「投与する」との用語は、経口投与、坐剤としての投与、局所的接触、静脈内、腹腔内、筋肉内、病巣内、髄腔内、鼻腔内もしくは皮下投与、または徐放装置、例えばミニ浸透圧ポンプを被験体に移植することを意味する。投与は、非経口および経粘膜(例えば、頬側、舌下、口蓋、歯肉、鼻、膣、直腸または経皮)を含む、任意の経路による。非経口投与には、例えば、静脈内、筋肉内、細動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内および頭蓋内が含まれる。他の送達様式には、リポソーム製剤の使用、静脈内注入、経皮パッチなどが含まれるが、これらに限定されない。「共投与する」とは、本明細書に記載の組成物が、1つ以上の追加療法(例えば、化学療法、ホルモン療法、放射線療法または免疫療法などのがん療法など)の投与と同時に、投与直前に、または投与直後に投与されることを意味する。本発明の化合物は、単独で投与することもでき、または患者に同時投与することもできる。同時投与は、化合物を個別に、または組み合わせて(1つより多い化合物)、同時に、または逐次的に投与することを含むことを意味する。従って、必要に応じて、他の(例えば、代謝分解を減少させるための)活性物質と組み合わせることもできる。本発明の組成物は、アプリケータスティック、溶液、懸濁物、エマルション、ゲル、クリーム、軟膏、ペースト、ゼリー、ペイント、粉末およびエアロゾルとして製剤化され、経皮的に、局所経路によって送達することができる。
【0178】
本発明の組成物は、持続放出および/または快適性を提供するための成分をさらに含んでいてもよい。このような成分には、高分子量、アニオン性の粘膜模倣性ポリマー、ゲル化多糖類および細分化された薬物担体基質が含まれる。これらの成分は、米国特許第4,911,920号、第5,403,841号、第5,212,162号および第4,861,760号にさらに詳細に記載される。これらの特許の全内容は、全ての目的のためにこの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明の組成物は、体内で徐々に放出するためにミクロスフェアとして送達することもできる。例えば、ミクロスフェアは、皮下に徐々に放出される薬物含有マイクロスフェアの皮内注射によって投与することができ(Rao、J.Biomater Sci.Polym.Ed.7:623-645、1995を参照)、生分解性の注射用ゲル製剤として投与することができ(例えば、Gao Pharm.Res.12:857-863、1995を参照)、または経口投与のためのミクロスフェアとして投与することができる(例えば、Eyles、J.Pharm.Pharmacol.49:669-674、1997を参照)。複数の実施形態において、本発明の組成物の製剤は、細胞膜と融合するか、またはエンドサイトーシスされるリポソームの使用によって、即ち、エンドサイトーシスを生じる細胞の表面膜タンパク質受容体に結合するリポソームに結合した受容体リガンドを使用することによって、送達することができる。特にリポソーム表面が標的細胞に特異的な受容体リガンドを有する場合、またはさもなければ特定の器官に優先的に向かう場合、リポソームを用いることにより、本発明の組成物の送達をin vivoで標的細胞に集中させることができる。(例えば、Al-Muhammed、J.Microencapsul.13:293-306、1996;Chonn、Curr.Opin.Biotechnol.6:698-708、1995;Ostro、Am.J.Hosp.Pharm.46:1576-1587、1989を参照。)本発明の組成物は、ナノ粒子として送達することもできる。
【0179】
本明細書で提供される教示を利用して、実質的な毒性を引き起こさず、しかも特定の患者によって示された臨床症状を治療するのに有効であるような、有効な予防的または治療的処置計画を計画することができる。この計画には、化合物の効力、相対的なバイオアベイラビリティ、患者の体重、有害な副作用の存在および重症度、好ましい投与様式および選択された薬剤の毒性プロフィールなどの因子を考慮して、活性化合物を慎重に選択することが必要である。
【0180】
「抗がん剤」は、通常の意味に従って使用され、抗腫瘍特性または細胞の成長もしくは増殖を阻害する能力を有する組成物(例えば、化合物、薬物、アンタゴニスト、阻害剤、モジュレーター)を指す。複数の実施形態において、抗がん剤は、化学療法剤である。複数の実施形態において、抗がん剤は、がんを治療する方法において有用性を有する、本明細書において特定される薬剤である。複数の実施形態において、抗がん剤は、がんを治療するために、FDAまたは米国以外の国の同様の規制当局によって承認された薬剤である。
【0181】
キット
別の態様において、実施形態を含む本明細書で提供される細胞透過性コンジュゲートまたは実施形態を含む本明細書に提供される医薬組成物と、使用説明書とを含むキットが提供される。複数の実施形態において、第1の非細胞透過性タンパク質、第2の非細胞透過性タンパク質、第1のホスホロチオエート核酸および第2のホスホロチオエート核酸は、別々の容器内にある。複数の実施形態において、キットは、疾患の1つ以上の症状を治療または予防するための1つ以上のさらなる薬剤を含む。複数の実施形態において、キットは、組成物を投与する手段、例えば注射器、針、管、カテーテル、パッチなどを含む。キットはまた、使用前に滅菌および/または希釈を必要とする製剤および/または物質を含んでいてもよい。
【実施例
【0182】
以下の実施例は、細胞内抗原を標的化する目的のために抗体に結合したホスホロチオエート化センス/アンチセンスDNAオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによる、細胞透過性の二重特異性抗体-抗体コンジュゲートの生成、および診断的検出/治療介入を記載する。
【0183】
[実施例1]結合しているDNAオリゴのハイブリダイゼーションによる二重特異性抗体の生成。
【0184】
以下にさらに詳細に記載されるように、二本鎖ホスホロチオエート化DNAオリゴヌクレオチドを抗体にコンジュゲートさせることにより、抗体が細胞を透過し、細胞内抗原を認識し、結合することが可能になることが示される。さらに、出願人らは、この戦略が、2つの意図された細胞内標的タンパク質を認識して結合することができる細胞透過二重特異性抗体の生成を可能にすることを示す。一例として、出願人らは、それぞれ、抗STAT3抗体および抗NFkB(p65)抗体に対してセンスおよびアンチセンスであるホスホロチオエート化DNAオリゴを結合させることにより、選択された核酸配列のハイブリダイゼーションが可能であることを示した。ハイブリダイゼーション手順が完了したら、予想される分子量の増加によって、単一のIgG抗体と比較し、結合した抗体を精製した(図1)。
【0185】
2つの異なる抗体(例えば、抗NFkBおよび抗STAT3)に結合したホスホロチオエート化オリゴセンスおよびオリゴアンチセンスを選択することにより、抗STAT3-抗STAT3または抗NFkB-抗NFkBの形成を除外することができる。得られた二重特異性抗体の集合は、純粋な二重特異性である。過剰のオリゴおよび/または抗体タンパク質は、ゲル濾過によって除外される。
【0186】
注目すべきことに、センスおよびアンチセンスのDNAオリゴ鎖のハイブリダイゼーションによって、選択された抗体に連結する二本鎖(ds)ホスホロチオエート化DNAオリゴが生成される。DNAオリゴのホスホロチオエート化は、細胞内送達の実体として働く。
【0187】
[実施例2]細胞透過性二重特異性抗体による細胞内抗原、STAT3およびNFkB(p65)の認識。
【0188】
ヒトリンパ腫Ly3細胞を、ホスホロチオエート化一本鎖(ss)DNAオリゴで改変されたSTAT3またはNFkB(p65)に対するいずれかの単一抗体と共にインキュベートし、細胞内標的の認識を達成する(図2)。NFkB(p65)IgGは、ホスホロチオエート化センスssDNAオリゴで改変され、STAT3 IgGは、ホスホロチオエート化アンチセンスssDNAオリゴで改変されているため、出願人らは、この核酸配列が細胞内抗原の認識のための前提条件である細胞内送達には重要ではないと結論付けている。
【0189】
しかし、ヒトリンパ腫Ly3細胞を、ハイブリダイゼーションしたホスホロチオエート化dsDNA-オリゴによって一緒に連結した二重特異性抗STAT3-抗NFkB(p65)と共にインキュベートすると、細胞内STAT3タンパク質およびNFkB(p65)タンパク質が同時に認識される。
【0190】
全ての改変抗体をゲル濾過により精製し、10μg/mlで、細胞上で37℃で2時間インキュベートした。注目すべきことに、10μgの生成された二重特異性抗体は、ウェスタンブロッティングにおける検出によって示されるように、10μgでそれぞれの単一抗体の50%しか有しておらず、この結果、標的の認識が低下する。
【0191】
フローサイトメトリー試験はさらに、改変された細胞内抗体による細胞透過を、蛍光標識された改変抗体の画像と共に裏付けている(図3)。
【0192】
実施形態
実施形態1.第1の非細胞透過性タンパク質を第2のタンパク質に結合しているホスホロチオエート核酸を含み、前記ホスホロチオエート核酸が、前記第1の非細胞透過性タンパク質と前記第2のタンパク質の細胞内送達を高める、細胞透過性コンジュゲート。
【0193】
実施形態2.前記第2のタンパク質が、第2の非細胞透過性タンパク質である、実施形態1に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0194】
実施形態3.前記ホスホロチオエート核酸が、一本鎖核酸である、実施形態1に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0195】
実施形態4.前記ホスホロチオエート核酸が、第2のホスホロチオエート核酸にハイブリダイズした第1のホスホロチオエート核酸を含み、前記第1のホスホロチオエート核酸が、前記第1の非細胞透過性タンパク質に結合しており、前記第2のホスホロチオエート核酸が、前記第2のタンパク質に結合している、実施形態1に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0196】
実施形態5.前記ホスホロチオエート核酸が、前記第1の非細胞透過性タンパク質および前記第2の非細胞透過性タンパク質に共有結合している、実施形態1から4のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0197】
実施形態6.前記ホスホロチオエート核酸が、前記第1の非細胞透過性タンパク質のリシン、アルギニン、システインまたはヒスチジンに独立して結合している、実施形態1から5のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0198】
実施形態7.前記ホスホロチオエート核酸が、前記第1の非細胞透過性タンパク質のシステインに結合している、実施形態6に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0199】
実施形態8.前記ホスホロチオエート核酸が、前記第2の非細胞透過性タンパク質のリシン、アルギニン、システインまたはヒスチジンに独立して結合している、実施形態1から7のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0200】
実施形態9.前記ホスホロチオエート核酸が、前記第2の非細胞透過性タンパク質のシステインに結合している、実施形態8に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0201】
実施形態10.前記ホスホロチオエート核酸が、第1のリンカーを介して前記第1の非細胞透過性タンパク質に結合しており、第2のリンカーを介して前記第2のタンパク質に結合している、請求項1または4に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0202】
実施形態11.前記第1のリンカーおよび前記第2のリンカーは、独立して、非共有結合性リンカーである、実施形態10に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0203】
実施形態12.前記ホスホロチオエート核酸が、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100の核酸残基またはこれ以上の長さである、実施形態1から11のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0204】
実施形態13.前記ホスホロチオエート核酸が、約10から約30の核酸残基の長さである、実施形態12に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0205】
実施形態14.前記ホスホロチオエート核酸が、約20の核酸残基の長さである、実施形態13に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0206】
実施形態15.前記第1の非細胞透過性タンパク質および前記第2の非細胞透過性タンパク質が、独立して、25kDを超える分子量を有する、実施形態1から14のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0207】
実施形態16.前記第1の非細胞透過性タンパク質および前記第2の非細胞透過性タンパク質が、独立して、約25kDから約750kDの分子量を有する、実施形態1から15のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0208】
実施形態17.前記第1の非細胞透過性タンパク質および前記第2の非細胞透過性タンパク質が、独立して抗体である、実施形態1から16のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0209】
実施形態18.前記抗体がIgG抗体である、実施形態17に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0210】
実施形態19.前記抗体が、IgA、IgM、IgDまたはIgE抗体である、実施形態17に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0211】
実施形態20.前記抗体がscFvフラグメントである、実施形態17の細胞透過性コンジュゲート。
【0212】
実施形態21.前記抗体がヒト化抗体である、実施形態17から20のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0213】
実施形態22.前記抗体が治療用抗体である、実施形態17から20のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0214】
実施形態23.前記第1の非細胞透過性タンパク質または前記第2の非細胞透過性タンパク質が、細胞内標的に結合する、実施形態1から22のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0215】
実施形態24.前記第1の非細胞透過性タンパク質および前記第2の非細胞透過性タンパク質が、細胞内標的に結合する、実施形態23に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0216】
実施形態25.前記第1の非細胞透過性タンパク質が、前記第2の非細胞透過性タンパク質とは異なる細胞内標的に結合する、実施形態24に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0217】
実施形態26.前記第1の非細胞透過性タンパク質が、前記第2の非細胞透過性タンパク質に対して、前記細胞内標的上の異なるエピトープに結合する、実施形態24に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0218】
実施形態27.前記細胞内標的が、自己免疫疾患、炎症性疾患、代謝障害、発達障害、心血管疾患、肝疾患、腸疾患、感染症、内分泌疾患、神経学的障害およびがんからなる群から選択される疾患の標的である、実施形態23から26のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0219】
実施形態28.前記細胞内標的が、シグナル伝達分子または転写因子である、実施形態23から27のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0220】
実施形態29.前記シグナル伝達分子が、ホスファターゼまたはキナーゼである、実施形態28に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0221】
実施形態30.前記転写因子が、活性化B細胞の核因子κ軽鎖エンハンサー(NFkB)タンパク質である、実施形態28に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0222】
実施形態31.前記NFkBタンパク質がp65である、実施形態30に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0223】
実施形態32.前記第1の非細胞透過性タンパク質がSTAT3タンパク質に結合し、前記第2の非細胞透過性タンパク質がNFkBタンパク質に結合する、実施形態28から31のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0224】
実施形態33.前記細胞内標的が癌標的である、実施形態23から26のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0225】
実施形態34.前記細胞内標的が、STAT3、NFkBおよびSrcからなる群から選択される、実施形態23から26のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0226】
実施形態35.前記細胞内標的がSTAT3である、実施形態34に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0227】
実施形態36.前記細胞内標的がp65である、実施形態35に記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0228】
実施形態37.前記第1の非細胞透過性タンパク質および前記第2の非細胞透過性タンパク質が、前記タンパク質に結合した標識、低分子または機能性核酸をさらに含む、実施形態1から36のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0229】
実施形態38.細胞内標的に結合した、実施形態1から37のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲート。
【0230】
実施形態39.第1の非細胞透過性タンパク質に結合した第1のホスホロチオエート核酸を、第2の非細胞透過性タンパク質に結合した第2のホスホロチオエート核酸にハイブリダイズすることによって、細胞透過性コンジュゲートを作成することを含む、細胞透過性コンジュゲートを作成する方法。
【0231】
実施形態40.前記ハイブリダイズする前に、(i)前記第1の非細胞透過性タンパク質と前記第1のホスホロチオエート核酸とを接触させることによって、第1のタンパク質-ホスホロチオエート核酸複合体を作成することと;(ii)前記第2の非細胞透過性タンパク質と前記第2のホスホロチオエート核酸とを接触させることによって、第2のタンパク質-ホスホロチオエート核酸複合体を作成することと;(iii)前記第1のタンパク質-ホスホロチオエート核酸複合体と、前記第2のタンパク質-ホスホロチオエート核酸複合体とを接触させることとをさらに含む、実施形態39に記載の方法。
【0232】
実施形態41.実施形態1から38のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲートを含む細胞。
【0233】
実施形態42.実施形態1から38のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲートと、医薬として許容される担体とを含む医薬組成物。
【0234】
実施形態43.実施形態1から38のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲートまたは実施形態42に記載の医薬組成物と、使用説明書とを含むキット。
【0235】
実施形態44.前記第1の非細胞透過性タンパク質、前記第2の非細胞透過性タンパク質、前記第1のホスホロチオエート核酸および前記第2のホスホロチオエート核酸が別々の容器内にある、実施形態43に記載のキット。
【0236】
実施形態45.実施形態1から38のいずれかに記載の細胞透過性コンジュゲートと細胞とを接触させることを含む、前記細胞に非細胞透過性タンパク質を送達する方法。
【0237】
実施形態46.前記第1の非細胞透過性タンパク質が細胞質中の核タンパク質に結合することによって、第1の非細胞透過性タンパク質-核タンパク質複合体を形成する、実施形態45に記載の方法。
【0238】
実施形態47.前記第2の非細胞透過性タンパク質が細胞質中の核タンパク質に結合することによって、第2の非細胞透過性タンパク質-核タンパク質複合体を形成する、実施形態46に記載の方法。
【0239】
実施形態48.前記第1の非細胞透過性タンパク質-核タンパク質複合体および前記第2の非細胞透過性タンパク質-核タンパク質複合体が、前記細胞の核に入り込むことができない、実施形態47に記載の方法。
【0240】
実施形態49.実施形態1から38のいずれかに記載の有効量の細胞透過性コンジュゲートを被験体に投与することによって、前記被験体の疾患を治療することを含む、これを必要とする被験体の疾患を治療する方法。
【0241】
実施形態50.前記疾患が、自己免疫疾患、発達障害、炎症性疾患、代謝障害、心血管疾患、肝疾患、腸疾患、感染症、内分泌疾患、神経学的障害およびがんからなる群から選択される、実施形態49に記載の方法。
【0242】
実施形態51.前記疾患ががんである、実施形態50に記載の方法。
【0243】
実施形態52.前記第1の非細胞透過性タンパク質または前記第2の非細胞透過性タンパク質が、細胞内標的に結合する、実施形態49に記載の方法。
【0244】
実施形態53.前記第1の非細胞透過性タンパク質および前記第2の非細胞透過性タンパク質が、細胞内標的に結合する、実施形態52に記載の方法。
【0245】
実施形態54.前記第1の非細胞透過性タンパク質が、前記第2の非細胞透過性タンパク質とは異なる細胞内標的に結合する、実施形態53に記載の方法。
【0246】
実施形態55.前記第1の非細胞透過性タンパク質が、前記細胞内標的上で、前記第2の非細胞透過性タンパク質とは異なるエピトープに結合する、実施形態53に記載の方法。
【0247】
実施形態56.前記細胞内標的が、STAT3、NFkBタンパク質またはSrcである、実施形態52から55のいずれかに記載の方法。
【0248】
実施形態57.前記細胞内標的が、p65である、実施形態56に記載の方法。
【0249】
実施形態58.前記細胞内標的が、STAT3である、実施形態57に記載の方法。
【0250】
実施形態59.前記第1の非細胞透過性タンパク質がSTAT3に結合し、前記第2の非細胞透過性タンパク質がNFkBタンパク質に結合する、実施形態52に記載の方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B