(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】処理工具
(51)【国際特許分類】
B23B 31/107 20060101AFI20230411BHJP
B23C 3/12 20060101ALI20230411BHJP
B23D 79/00 20060101ALI20230411BHJP
B23B 31/22 20060101ALI20230411BHJP
B23Q 3/12 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
B23B31/107 B
B23C3/12 B
B23D79/00 A
B23B31/22 Z
B23Q3/12 D
(21)【出願番号】P 2021168775
(22)【出願日】2021-10-14
【審査請求日】2022-07-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000132161
【氏名又は名称】株式会社スギノマシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】柳原 裕介
(72)【発明者】
【氏名】武藤 充
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-015508(JP,A)
【文献】特開昭54-009074(JP,A)
【文献】特許第3609054(JP,B2)
【文献】実開昭48-067378(JP,U)
【文献】特開2016-203371(JP,A)
【文献】実公昭50-000305(JP,Y1)
【文献】特開2014-210337(JP,A)
【文献】特開2020-006460(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 31/02、08、107、22
B23Q 3/12
B23B 19/02
B23C 3/12
B23D 79/00
B24B 39/00
B24B 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボディ中心軸に沿って延びるボディであって、
前記ボディの内部に配置され、前記ボディ中心軸に沿って延びるシリンダ室であって、先端方向に開口を有する工具ホルダ保持穴を有するシリンダ室と、
径方向に前記ボディを貫通する回り止め体保持穴と、
を有するボディと、
前記ボディ中心軸に沿って延びるシャンクであって、前記ボディと接続されるシャンクと、
工具ホルダであって、前記工具ホルダの外周に形成される回り止め溝を有し、前記シリンダ室内に配置され、前記シリンダ室を往復する工具ホルダと、
前記シリンダ室内に配置され、前記工具ホルダを先端方向に付勢する第1弾性体と、
前記ボディの外側に配置され、前記ボディ中心軸に沿って着脱位置と加工位置とを往復可能なカバーであって、
前記加工位置において、前記回り止め体保持穴を覆う押さえ面と、
前記カバーの内側から径方向外側に凹む円周溝である逃がし部と、
を有するカバーと、
前記回り止め体保持穴に支持され、前記回り止め溝と前記押さえ面との間で移動する回り止め体であって、前記カバーが前記着脱位置に位置し、前記工具ホルダが前記工具ホルダ保持穴から引き抜かれるときに、前記逃がし部に収容される回り止め体と、
を有
し、
前記ボディは、前記回り止め体保持穴において、前記回り止め体を保持する回り止め体保持面であって、円筒面である回り止め体保持面を有し、
前記回り止め体保持面に配置され、前記回り止め体の抜け止めを防止する回り止め体抜け止め部を更に有し、
前記回り止め体抜け止め部は、前記回り止め体に沿った保持球面を有する、
前記回り止め体保持面は、前記回り止め体の中心を通り、前記ボディ中心軸と直交する線に対し、径方向の外側に向かって処理工具の回転方向に傾斜し、
前記回り止め体抜け止め部は、前記処理工具の回転方向逆側に位置する第1回り止め体抜け止め部と、前記処理工具の回転方向側に位置する第2回り止め体抜け止め部と、を有し、
前記第1回り止め体抜け止め部は、前記第2回り止め体抜け止め部よりも大きい、
処理工具。
【請求項2】
前記回り止め体が前記カバーの押さえ面と前記回り止め溝とに接している状態において、前記回り止め体の中心が前記回り止め体保持穴に位置する、
請求項
1に記載の処理工具。
【請求項3】
前記回り止め体は、ボールである、
請求項1
又は2に記載の処理工具。
【請求項4】
前記回り止め溝は、前記ボディ中心軸と平行に延びる、
請求項1~
3のいずれかに記載の処理工具。
【請求項5】
前記回り止め溝は、バリ取り工具の回転方向と逆方向の向きに、基端側に進む螺旋形状である、
請求項1~
4のいずれかに記載の処理工具。
【請求項6】
前記シリンダ室内を往復し、前記工具ホルダを先端方向に付勢するプッシャ、
を更に有する、請求項1~
5のいずれかに記載の処理工具。
【請求項7】
前記ボディと前記カバーの間に配置された弾性体室と、
前記弾性体室に配置され、前記カバーを前記着脱位置から前記加工位置に向かって付勢する第2弾性体と、を更に有する、
請求項1~
6のいずれかに記載の処理工具。
【請求項8】
前記工具ホルダは、工具を着脱可能である、
請求項1~
7のいずれかに記載の処理工具。
【請求項9】
前記ボディは、外周面の基端部に雄ねじ部を有し、
前記カバーは、内周面の基端部に、前記雄ねじ部と嵌まり合う雌ねじ部を有する、
請求項1~
6のいずれかに記載の処理工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理工具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、刃具のワークに対する押圧力を調整できるバリ取り工具が提案されている(例えば、特許第6025580号)。従来のバリ取り工具は、シャンクに対して軸方向に移動自在に内挿されたステムと、ステムに対して刃具保持手段を軸方向に移動自在に案内し回転方向に一体として回転する刃具案内手段と、刃具保持手段をステムに対してワークに押圧する方向に付勢するばね部材と、ばね部材の初期長を調整してばね部材による押圧力を調整する初期長調整手段とを有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、簡易な構造で、工具ホルダを脱着可能で、シャンクに対して工具を軸方向にスライド可能な処理工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの側面は、工具を着脱可能な処理工具であって、
シャンク軸に沿って延びるシャンクと、
前記シャンクと接続されるボディであって、
先端方向に開口を有し、前記シャンク軸に沿って延びるシリンダ室と、
径方向に前記ボディを貫通する回り止め体保持穴と、
先端方向に開口を有し、前記シャンク軸と平行に延びる工具ホルダ保持穴と、
を有するボディと、
前記シリンダ室内を往復するプッシャと、
前記シリンダ室内に配置され、前記プッシャを先端方向に付勢する第1弾性体と、
前記プッシャの先端方向に、着脱可能に当接する工具ホルダであって、
前記工具ホルダの外周に形成される回り止め溝と、
前記工具が着脱可能に嵌め込まれる工具保持穴と、
を有する工具ホルダと、
前記ボディの外側に配置され、前記シャンク軸に沿って着脱位置と加工位置とを往復可能なカバーであって、
前記加工位置において、前記回り止め体保持穴を覆う押さえ面と、
前記カバーの内側から径方向外側に凹む逃がし部と、
を有するカバーと、
前記回り止め体保持穴に支持され、前記回り止め溝と前記押さえ面との間で移動する回り止め体であって、前記カバーが前記着脱位置に位置し、前記工具ホルダが前記工具ホルダ保持穴から引き抜かれるときに、前記逃がし部に収容される回り止め体と、
を有する、処理工具である。
【0005】
処理工具は、例えば、バリ取り工具、穴あけ工具、ねじ切り工具、ブラシである。バリ取り工具は、加工機に取り付けられ、ワークに付着したバリを除去する。加工機は、例えば、旋盤、マシニングセンタ、ターニングセンタ、工具主軸を装着したロボットである。バリ取り工具のシャンクは、工具主軸やテールストックに装着され、バリ取り工具全体が工具主軸と共に回転する。
説明の都合上、刃具やブラシが取り付けられる側を先端側、シャンクが配置された側を基端側と呼ぶ。
【0006】
ボディ、プッシャ、工具ホルダ、工具は、シャンクの中心軸であるシャンク軸上に配置される。回り止め体は、回り止め体保持穴に保持される。回り止め体は、回り止め溝を介して、ボディに与えられた回転トルクを工具ホルダに伝達する。
第1弾性体の復元力によって、プッシャと工具ホルダが先端方向へ付勢される。
【0007】
一つ又は複数の回り止め溝が工具ホルダに形成される。回り止め溝は、工具ホルダの外周面に形成される。回り止め溝は、シャンク軸と平行、または螺旋状に形成される。回り止め溝は、回り止め体が摺動可能な形状を適宜選択して良い。複数の回り止め溝は、円周上に等間隔に配置される。好ましくは、複数の回り止め溝が工具ホルダに形成される。
【0008】
ボディは、回り止め体と同じ数の回り止め体保持穴を有する。回り止め体保持穴は、ボディを貫通する。
回り止め体保持穴は、回り止め体保持面を有する。回り止め体保持面の形状は、内周側に向かって縮径する円錐面または円筒面である。好ましくは、回り止め体保持面は、円筒面である。回り止め体保持面は、径方向から、工具の回転方向に沿って傾斜する。
ボディの外周面を覆うカバーを有しても良い。カバーは、シャンクに沿って、工具ホルダの着脱位置と工具ホルダを保持する加工位置とを往復する。カバーは、基端側、先端側いずれに設けて良い。望ましくは、カバーは、基端側に設ける。
【0009】
回り止め体保持穴は、回り止め体保持面の内周側開口部に、回り止め体抜け止め部を有する。好ましくは、回り止め体抜け止め部は、回り止め体に沿った曲面を有する。回り止め体抜け止め部は、回り止め体保持面と一体に形成されて良い。工具ホルダがボディから取り外されたときに、回り止め体抜け止め部は、回り止め体のボディ内側への回り止め体の脱落を防止する。
回り止め体は、回り止め体保持面と、カバーの内周の押さえ面と、回り止め溝とを移動する。好ましくは、カバーが加工位置にあるときに、回り止め体の直径の20~45%がボディから突出する。
【0010】
回り止め体は、好ましくは、ボール又はピン部材である。回り止め溝は、回り止め体と同数、又は回り止め体の数の自然数倍の数だけ配置される。回り止め体がピン部材の場合は、工具ホルダ側の端面を球面、カバー側の端面を球面又は平面として良い。
【0011】
工具ホルダは、回り止め溝に沿って摺動する。
工具は、例えば、バリ取り用の刃物、穴あけ用のドリル、ねじ切り用のタップ、ブラシである。工具の形状は、加工を行うワークの形状に合わせて、適宜選択される。
【0012】
逃がし部は、回り止め体が工具ホルダの回り止め溝から離れ、ボディの外周側に移動するために、カバーに設けた空間である。逃がし部は、カバーの内周面に配置されて良い。逃がし部は、例えば、円周溝や球面である。円周溝は、端面に向かって開口し、拡径しても良い。
処理工具は、ストッパを有しても良い。
【0013】
工具ホルダをボディに装着する場合、工具ホルダをボディに押し込み、回り止め体を回り止め溝に保持させる。
工具ホルダをボディから脱着する場合、カバーをスライドさせることで、回り止め体を逃がし部に移動させる。すると、回り止め体による工具ホルダの保持が解除される。そして、工具ホルダをピストンから取り外す。
【発明の効果】
【0014】
本発明の処理工具によれば、簡易な構造で、工具ホルダを脱着でき、シャンクに対して工具を上下方向にスライドできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1のバリ取り工具の加工時における縦断面図
【
図2】実施形態1の変形例の加工時における縦断面図
【
図3】(a)は
図1のIIIA-IIIA断面図、(b)は(a)のIIIB部分拡大図
【
図4】(a)は、実施形態の工具ホルダの斜視図、(b)は、変形例の工具ホルダの斜視図
【
図5】実施形態1のバリ取り工具の着脱時における縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
本発明の処理工具10は、例えば、バリ取り工具、穴あけ工具、ねじ切り工具、ブラシである。以下、本実施形態では、処理工具10の一例であるバリ取り工具10について説明する。
図1に示すように、本実施形態のバリ取り工具10は、シャンク11と、ボディ13と、工具ホルダ16と、回り止め体(ボール)37と、カバー31と、を有する。ここで、
図1の右半分は、工具ホルダ16がシャンク11の方向にスライドした状態を示す。
【0017】
シャンク11は、シャンク軸12に沿って延びる。ボディ13は、シャンク11に接続される。ボディ13は、円筒形状で、内部にシリンダ室15を有する。シリンダ室15には、第1弾性体21(圧縮コイルばね)と、プッシャ19とが配置される。
【0018】
ボディ13は、シリンダ室15と、工具ホルダ保持穴18と、2つの回り止め体保持穴(ボール保持穴)17と、を有する。ボディ13は、雄ねじ部14を有しても良い。雄ねじ部14は、ボディ13の基端側に配置される。ボディ13は、中空円筒状である。シリンダ室15は、ボディ13の内部空洞である。シリンダ室15は、シャンク軸12に沿って延びる。好ましくは、シリンダ室15は、円筒である。シリンダ室15は、先端に工具ホルダ保持穴18を有する。工具ホルダ保持穴18は、シャンク軸12に沿って延びる。
【0019】
なお、工具ホルダ保持穴18の径方向の大きさは、シリンダ室15の内径と同じか、又は小さくても良い。
図2は、工具ホルダ保持穴18の内径36の大きさを、シリンダ室15の内径38よりも小さくした変形例を示す。本変形例では、シリンダ室15内に段部45が形成される。
図2の右半分は、工具ホルダ16が先端方向にスライドした状態を示す。
図2の右半分に示すように、工具ホルダ16を取り外すとき、段部45は、第1弾性体21に押し出されたプッシャ19が脱落するのを防ぐ。
【0020】
図1に戻り、回り止め体保持穴17は、ボディ13の外周面から工具ホルダ保持穴18まで、ボディ13を径方向に貫通しても良い。各回り止め体保持穴17は、回り止め体保持面39を有し、1つの回り止め体37を保持する。
シリンダ室15は、その基端面(底面)中央部に、ばね保持穴24を有して良い。プッシャ19は、上面中央部に、ばね保持穴24を有して良い。各ばね保持穴24は、第1弾性体21を保持する。
【0021】
工具ホルダ16は、外筒面26と、2つの回り止め溝25と、工具保持穴28と、を有する。工具ホルダ16は、工具23を保持する。工具ホルダ16は、円筒状である。外筒面26は、シャンク軸12の方向に、工具ホルダ保持穴18と摺動する。
【0022】
好ましくは、工具ホルダ16は、複数(本実施形態では2つ)の回り止め溝25を有する。複数の回り止め溝25は、シャンク軸12に対して回転対称に配置される。回り止め溝25は、シリンダ室15の内周面で、シャンク軸12に平行に延びる。シャンク軸12の方向における回り止め溝25の長さは、除去するバリやワークの大きさに応じて、任意の長さに設定される。回り止め溝25の長さは、好ましくは、工具23の刃先長さ32の1~5倍、より好ましくは、1.2~3.5倍である。
図3(a)、(b)に示すように、回り止め溝25の横断面の形状は、U字形である。回り止め溝25は、回り止め体37の外周に沿うように形成される。回り止め溝25の幅は、回り止め体37の直径より小さい。
【0023】
なお、回り止め溝25は、
図4(a)に示すように、シャンク軸12に平行に延びる形状に限られない。回り止め体37が往復可能であり、シャンク11からの回転トルクを回り止め体37及び回り止め溝25を介して、工具ホルダ16に伝達可能であれば、任意の形状で良い。例えば、
図4(b)に示すように、回り止め溝25は、工具23の回転方向とは逆方向の向きに、基端側に進む螺旋(弦巻線)形状でもよい。
【0024】
図1に戻り、工具保持穴28は、工具ホルダ16の先端方向に開口し、シャンク軸12に沿って配置される。工具保持穴28に、工具23が挿入されて保持される。工具23は、バリの大きさや形状等に応じて、任意の工具が選択される。
【0025】
加工時には、プッシャ19は、ワークから工具ホルダ16に作用するスラスト力と、第1弾性体21の復元力のバランスにより、シリンダ室15内を自在に往復する。工具ホルダ16が取り外されたときは、第1弾性体21に押し出され、工具ホルダ16の先端に移動する。
【0026】
回り止め体37は、例えば、ボールである。
図3(a)、(b)に示すように、各回り止め体37は、回り止め体保持穴17の回り止め体保持面39と、押さえ面33に保持される。回り止め体37が回り止め溝25を移動することにより、工具ホルダ16は、シリンダ室15内を往復する。回り止め体37が回り止め溝25を移動できる範囲によって、プッシャ19の往復端が定まる。
【0027】
図3(b)に示すように、回り止め体保持面39は径方向に対して、工具23の回転方向に傾斜する。回り止め体保持面39は、円筒面である。回り止め体保持面39の工具ホルダ16側の先端部(半径方向内側)には、回り止め体抜け止め部41が設けられる。回り止め体抜け止め部41は、回転方向逆側に現れ、保持球面43を有する。例えば、回り止め体37は、直径の約40%がボディ13から突出する。回り止め体37は、押さえ面33と、回り止め体保持穴17の回り止め体保持面39(円筒面)とに押圧されることにより、シャンク11の回転トルクを回り止め溝25に伝達する。
【0028】
カバー31は、押さえ面33と、逃がし部35と、雌ねじ部22と、を有する。カバー31は、内周面に雌ねじ部22を有する。カバー31は、全体として中空円筒状である。カバー31は、ボディ13の外周面を覆う。雌ねじ部22は、カバー31の内周面の基端部に配置される。雌ねじ部22は、雄ねじ部14とはまりあう。逃がし部35は、カバー31の内周面の先端部に配置される。逃がし部35は、例えば円周溝である。
【0029】
図5の右半分は、工具ホルダ16をボディ13から取り外した状態を示す。カバー31は、加工位置29と着脱位置27との間を移動可能である。加工位置29において、カバー31の押さえ面33は、回り止め体37と回り止め体保持穴17を覆う。回り止め体37が押さえ面33に抑えられるため、回り止め体37は、回り止め溝25内に保たれる。カバー31が着脱位置27に移動すると、シャンク軸12の方向において、逃がし部35の位置が回り止め体保持穴17の位置に一致する。このとき、回り止め体37は、逃がし部35に収納され、工具ホルダ保持穴18の半径方向外側に移動できる。
【0030】
加工位置29において、工具ホルダ16は、プッシャ19と当接する。加工位置29において、プッシャ19と工具ホルダ16は、第1弾性体21に押圧される。
【0031】
カバー31を着脱位置27まで移動させると、逃がし部35が回り止め体保持穴17の位置に移動する。工具ホルダ16は、プッシャ19を介して第1弾性体21に押圧される。そして、工具ホルダ16の回り止め溝25の基端側が、回り止め体37を先端側に押し出す。これにより、回り止め体37が逃がし部35に移動し、回り止め体37が工具ホルダ16の接続が解除される。第1弾性体21がプッシャ19を更に押圧することにより、工具ホルダ16が先端側に押し出される。このように、工具ホルダ16が取り外される。
【0032】
工具ホルダ16を装着する場合、カバー31を着脱位置27に移動し、工具ホルダ16を工具ホルダ保持穴18に挿入する。そして、回り止め溝25が回り止め体保持穴17の位置に来たところで、カバー31を加工位置29に移動する。これにより、逃がし部35から回り止め体37が回り止め体保持穴17と回り止め溝25に接触するように、回り止め体37が半径方向内側に移動する。そして、工具ホルダ16が回り止め体37と接続する。
【0033】
回り止め体保持穴17の回り止め体保持面39は径方向に対して、工具23の回転方向に傾斜することにより、回り止め体37の中心に対して押さえつけることが可能となる。これにより、より確実に効果的に、シャンク11の回転トルクを回り止め溝25に伝達できる。
【0034】
なお、
図6に示すように、回り止め体保持面39の形状は、円筒面に限られない。回り止め溝25へのトルク伝達が可能で、工具ホルダ16の取り外し時に回り止め体37が脱落しなければ、回り止め体保持面39は、任意の形状でよい。例えば、回り止め体保持面39は、
図6(a)、(b)に示すように、部分的に径方向に平行な面を有しても良い。
図6(c)に示すにように、シャンク軸12の方向に縮径する円錐面を有しても良い。また、
図6(d)に示すよう、工具23の回転方向と反対方向に傾斜しても良い。
【0035】
回り止め体37は、ボール形状に限られない。回り止め溝25を移動可能で、又、回り止め溝25へのトルク伝達と、工具ホルダ16の取り外し時に、逃がし部35に移動可能であれば、任意の形状で良い。例えば、
図7に示すように、回り止め体は、ピン42でも良い。ピン42の工具ホルダ16側の端面は半球面である。ピン42の押さえ面33に接する端面は、R面に面取りした形状である。ピン42は、回り止め体保持面39の傾斜に沿って配置される。工具ホルダ16をボディ13から取り外すとき、ピン42は回り止め体保持面39に沿って、逃がし部35に移動する。
【0036】
(実施形態2)
以下、本実施形態では、処理工具10の一例であるバリ取り工具100について説明する。
図8に示すように、本実施形態のバリ取り工具100は、ボディ113と、プッシャ119と、カバー131と、弾性体室146と、第2弾性体148(圧縮コイルばね)と、ストッパ147と、を有する。弾性体室146は、ボディ113とカバー131との間に設けられる。
図8の右半分は、工具ホルダ16をボディ113から取り外した状態を示す。
【0037】
図9は、本実施形態のバリ取り工具100を
図8に対してシャンク軸12の周りに90度回転した縦断面図である。
図10は、
図9のX-X断面図である。
図9、
図10に示すように、ボディ113は、2つの長穴149を有する。各長穴149は、シャンク軸12に平行に延びる。長穴149は、ボディ113を貫通する貫通孔でもよい。長穴149は、ボディ113の内面に形成された溝でもよい。
なお、回り止め溝25が螺旋形状である場合は、長穴149も同様の螺旋形状とする。
【0038】
プッシャ119は、径方向に貫通するピン部材151を有する。ピン部材151の両端が、長穴149を摺動する。ピン部材151は、例えば、プッシャ119に固定される。ピン部材151の往復ストロークが長穴149の軸方向の長さに規制されることで、プッシャ119が、ボディ113からの脱落することを防ぐことができる。
【0039】
カバー131は、全体として中空円筒状である。カバー131は、ボディ113の外周面を覆う。カバー131の内面は、ボディ113の外周面と摺動する。圧縮コイルばね148は、弾性体室146に収容される。カバー131は、圧縮コイルばね148により先端方向に押圧される。ストッパ147は、カバー131の脱落を防止する。
本実施形態のバリ取り工具100のその他の構成は、第1実施形態のバリ取り工具10と同一である。
【0040】
工具ホルダ16をバリ取り工具100から取り外す場合、カバー131を加工位置129から基端側に押し込み、着脱位置127に移動する。着脱位置127において、カバー131は、逃がし部35を回り止め体保持穴17及び回り止め体37まで移動させる。このとき、工具ホルダ16を先端側に引くと、回り止め溝25によって回り止め体37が逃がし部35に押し出される。これにより、回り止め体37による工具ホルダ16の保持が解除され、工具ホルダ16をボディ113から取り外し可能となる。
【0041】
工具ホルダ16を装着する場合、カバーを着脱位置127に移動し、工具ホルダ16を工具ホルダ保持穴18に挿入する。そして、回り止め溝25が回り止め体保持穴17の位置に来たところで、カバー131を加工位置129に移動する。これにより、逃がし部35から回り止め体37が回り止め体保持穴17と回り止め溝25に移動し、工具ホルダ16が回り止め体37と係合する。
【0042】
本発明は前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。前記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者ならば、本明細書に開示の内容から、各種の代替例、修正例、変形例あるいは改良例を実現することができ、これらは添付の特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
10、100 バリ取り工具
11 シャンク
12 シャンク軸
13、113 ボディ
14 雄ねじ部
15 シリンダ室
16 工具ホルダ
17 回り止め体保持穴
18 工具ホルダ保持穴
19、119 プッシャ
21 第1弾性体
22 雌ねじ部
23 工具
24 ばね保持穴
25 回り止め溝
26 外筒面
27、127 着脱位置
28 工具保持穴
29、129 加工位置
31、131 カバー
33 押さえ面
35 逃がし部
37 回り止め体
39 回り止め体保持面
147 ストッパ
148 第2弾性体
149 長穴
151 ピン部材
【要約】
【課題】簡易な構造で、工具ホルダを脱着可能で、シャンクに対して工具を軸方向にスライド可能な処理工具を提供する。
【解決手段】バリ取り工具は、シャンク11と、シリンダ室15と、回り止め体保持穴17と工具ホルダ保持穴18とを有するボディ13と、プッシャ19と、プッシャ19を先端方向に付勢する第1弾性体21と、回り止め溝25と工具保持穴28とを有する工具ホルダ16と、ボディ13の外側に配置され、シャンク軸12に沿って着脱位置27と加工位置29とを往復可能なカバー31であって、加工位置29において、回り止め体保持穴17を覆う押さえ面33と、逃がし部35とを有するカバー31と、カバー31が着脱位置27に位置し、工具ホルダ16が工具ホルダ保持穴18から引き抜かれるときに、逃がし部35に収容される回り止め体37とを有する。
【選択図】
図1