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特許7260618自己適応化仮想発電所の分散型アーキテクチャ及びその経済的配分方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】自己適応化仮想発電所の分散型アーキテクチャ及びその経済的配分方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20230411BHJP
【FI】
H02J3/00 170
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021179297
(22)【出願日】2021-11-02
(65)【公開番号】P2022179294
(43)【公開日】2022-12-02
【審査請求日】2021-11-02
(31)【優先権主張番号】202110559796.4
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521481706
【氏名又は名称】上海交通大学
(73)【特許権者】
【識別番号】521481717
【氏名又は名称】国网上海市電力公司
(73)【特許権者】
【識別番号】521340953
【氏名又は名称】上海千貫節能科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100130993
【弁理士】
【氏名又は名称】小原 弘揮
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】何 光宇
(72)【発明者】
【氏名】董 聯▲きん▼
(72)【発明者】
【氏名】王 治華
(72)【発明者】
【氏名】高 峰
(72)【発明者】
【氏名】周 歓
(72)【発明者】
【氏名】范 帥
(72)【発明者】
【氏名】李 川江
【審査官】右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-040484(JP,A)
【文献】特開2021-052541(JP,A)
【文献】特開2018-148679(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0005474(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0109891(US,A1)
【文献】特開2022-028108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力網が仮想発電所に出力命令、即ち出力目標量XDを発行するステップS1と;
調整層が初期化調整信号、即ち増分コスト値λをゲートウェイに発行し、ゲートウェイが調整信号をオンラインのDERUに送信するステップS2と;
DERUが自身の出力サイズxl i(k)と感度1/λ’i(xi(k))を計算し、且つ出力制限値と比較し、出力制限値を超えない場合、DERUの出力サイズ及びその調整信号に対する感度をゲートウェイに報告し、出力制限値を超えた場合、DERU出力を出力制限値に制限し、その感度1/λ’i(xi(k))をゼロにリセットしてから、DERUの出力サイズと感度をゲートウェイに報告するステップS3と;
ゲートウェイが接続されたDERUの総出力値と総感度値を纏めて、メッセージキューを介して調整層に発行するステップS4と;
調整層が、すべてのDERUの総出力値及びステップサイズの上限を計算し、出力の誤差ΔX(k)、即ち出力目標量XDと総出力値の差値を計算するステップS5と、
出力誤差が十分に小さい場合、反復が終了し、調整層が統一された反復終了信号を発行し、各DERUが最終反復計算結果に従って出力し、仮想発電所は経済配分を完了し、出力誤差が大きい場合、調整信号の大きさを変更し、誤差が十分に小さくなるまで、ステップS2に戻って次の反復を行うステップS6と、
を含むことを特徴とする自己適応化仮想発電所の分散型経済配分方法。
【請求項2】
ステップS1では、調整層の仮想コーディネーターは障害が発生した場合、計算機器が新しい仮想コーディネーターとして再指定され、新しい仮想コーディネーターは、すべてのゲートウェイによって統計された出力サイズxlとステップサイズhlをサブスクライブし、ここで、lがゲートウェイ番号であることを特徴とする請求項に記載の自己適応化仮想発電所の分散型経済配分方法。
【請求項3】
ステップS4では、調整層の仮想コーディネーターは障害が発生した場合、計算機器が新しい仮想コーディネーターとして再指定され、新しい仮想コーディネーターは、すべてのゲートウェイ統計の出力サイズxl及びステップサイズhlをサブスクライブし、新しい仮想コーディネーターは、データベース又はメッセージキューから、出力目標量XDと現在の反復の調整信号λ(k)及び各ゲートウェイによって発行されたすべての接続されたDERUの総出力値及び総感度値をダウンロードすることを特徴とする請求項に記載の自己適応化仮想発電所の分散型経済配分方法。
【請求項4】
ステップS6では、調整信号サイズを変更するルールは、総出力値が出力目標量XDより低い場合、次の反復での調整信号を増やし、総出力値が出力目標量XDより高い場合は、総出力値と出力目標量XDの差値が十分に小さくなるまで、次の反復での調整信号を減らしたら、反復が終了することを特徴とする請求項に記載の自己適応化仮想発電所の分散型経済配分方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気工学及びその自動化の技術分野に関し、特に適応化仮想発電所の分散型アーキテクチャ並びにその経済的配分方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電力網規模の拡大と分散型電源(Distributed Energy Resource, DER)の浸透率の日々増加に伴い、電力システムの安全性且つ信頼性の高い調整と経済的運用はますます重要になり、DERの合理的且つ効率的な管理と、電力システムの経済的運用への参加は、電力分野における研究の焦点と困難の1つになっている。仮想発電所(Virtual Power Plant 、VPP)は、進んでいる制御、計測、通信などの技術と管理メカニズムの助けを借りて、集約DERの理想的な構成形式である。
【0003】
既存の経済配分方法には、主に次の欠点がある。(1)集中型ディスパッチ方法では、最下層DERユニット(DERU)がそれぞれのパラメータと制約をアップロードする必要があり、中央制御装置は問題を纏めて解決し、最適解決策を得た後、各ユニットにディスパッチ命令を送信する。DERUが大量である分散的特性を有するため、集中型方法は通信帯域幅と中央ストレージ機器のパフォーマンスが高く要求され、ディスパッチセンターの単一障害点も、システムを麻痺させるおそれがある。そして、最下層のすべての情報をアップロードする必要があり、これは資源財産所有者のプライバシー保護に不利である。(2)エージェント技術の開発に伴い、一部の学者は、一定の計算及び通信機能を備えたDERUをエージェント(agent)と見なす分散型経済的配分方法を提案した。各エージェントのステータスは、ディスパッチセンターを必要とせずに平等であり、各ユニットは隣接するユニットと必要な情報を交換した後、得られた情報を統合して、独立した意思決定を行い、各ユニットの独立した意思決定能力と個体のインテリジェンスを発揮する。例えば、現在の典型的な方法――マルチエージェントの一貫性に基づく分散型経済配分方法は、各エージェントの出力の限界費用を一貫性変数として選択し、各ユニットの増分コストの一貫性が満たされると、地域全体の最適経済性を達成する。従来技術では、leader-followerの電力システム分散型経済配分戦略が提案されているが、leaderが毎回反復で地域全体の有効電力不足ΔPを収集する必要があり、これにより、集中型問題が発生し、且つ反復ステップサイズは収束パフォーマンスに大きな影響を与える。また、反復終了条件は、条件ΔP=0が満たされて、反復が終了する場合、各エージェントの限界費用は厳密に等しくない場合がある。従来の文献はまた、leaderを必要としない完全分散型経済配分方法を提供したが、DERU反復の初期総出力は、目標量と等しい必要がある。前記の分散型ディスパッチのアルゴリズムは、いずれも各エージェントの通信接続が強い連結グラフを形成する必要がある。したがって、実際のアプリケーションでは、情報サイロによりシステムの余分なワークロードが増加して、分散型リソースのプラグアンドプレイやシステムのオンラインフォールトトレランスへの不利を回避するために、初期化中及びエージェントが操作を終了するときに、システムの接続を確認する必要がある。また、分散型スディスパッチアルゴリズムの収束速度は通信トポロジの接続性に大きく依存し、且つ収束を達成するための反復回数はDERスケールの拡張に伴って大幅に増加するため、大量である分散型リソースのコンテキストでのアプリケーションは制限される。(3)すべてのDERUに依存せずに強く接続されたグラフを構成するための方法について、従来の文献では、交互方向乗数法(ADMM)に基づく分散型計算法を提案し、エージェント間で情報を交換する必要がなく、情報サイロを効果的に回避できたが、アルゴリズムのペナルティ係数は収束に大きな影響を与え、且つその影響を確実に分析することは容易ではなく、ペナルティ係数は一般的に試行錯誤によって得られるため、その適用が制限される。また、前記のすべての方法は、出力電力の2次関数としていずれもDERUのコスト関数に依存しているため、方法の普遍性が制限された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、大量である分散型リソースを集約した仮想発電所に適した分散型の経済配分方法及びアーキテクチャを設立することを目的とする。本方法は、安定した収束条件と自己適応化調整の特性を持ち、DERUのプラグアンドプレイを実現でき、本方法は、コーディネーターの単一障害点問題を処理でき、計算と通信の効率を向上させ、プライバシーを保護すると同時に、強力なフォールトトレランスを備える。本方法は、DERUの増分コスト関数が一般的な単調増加関数である状況に適用できるため、普遍的な適用性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を実現させるために、技術的解決策として本発明は、
エージェント層、ゲートウェイ層、データベース、メッセージキューサーバー、調整層、及び電力網を含み;
前記エージェント層には、複数グループの分散型電源ユニット(DERU)が含まれ、前記DERUのユニットは、仮想発電所における最下層の電源装置又は調整可能な負荷であり、検知と計算の機能を備え、自身の増分コスト関数に従って調整信号に応答し、且つ最終出力命令を実行でき、出力制限値の範囲内で出力を連続的に調整でき;前記DERUは、エネルギーインターフェースを介して仮想発電所の電力バスに接続され、且つローカルのエネルギー情報ゲートウェイとの通信接続を確立し、1台のゲートウェイは数十台のDERUに接続でき;
前記ゲートウェイ層は中間層であり、エッジコンピューティング機能を備え、毎回の反復で最下層DERUの情報を纏めてアップロードし、調整層によって発行された調整信号をDERUに伝達し;
前記調整層には反復を促進するための反復管理サービスがあり、同時実行性の高い通信の負荷を軽減するために、毎回反復の時間枠では、すべてのメッセージの発行又はサブスクリプションは非同期であり;
必要に応じて読み取れるように、前記メッセージキューサーバーは、キュー内の重要な情報をデータベースに書き込むことができる自己適応化仮想発電所分散型アーキテクチャを提供する。
【0006】
電力網が仮想発電所に出力命令、即ち出力目標量XDを発行するステップS1と;
調整層が初期化調整信号、即ち増分コスト値λをゲートウェイに発行し、ゲートウェイは調整信号をオンラインDERUに送信するステップS2と;
DERUが自身の出力サイズxl i(k)と感度1/λ’i(xi(k))を計算し、且つ出力制限値と比較し、出力制限値を超えない場合、DERUの出力サイズ及びその調整信号に対する感度をゲートウェイに報告し;出力制限値を超えた場合、DERU出力を出力制限値に制限し、その感度1/λ’i(xi(k))をゼロにリセットしてから、DERUの出力サイズと感度をゲートウェイに報告するステップS3と;
ゲートウェイが接続されたDERUの総出力値と総感度値を集約し、メッセージキューを介して調整層に発行するステップS4と;
調整層が、すべてのDERUの総出力値及びステップサイズの上限を計算し、出力の誤差ΔX(k)、即ち出力目標量XDと総出力値の差値を計算するステップS5と、
出力誤差が十分に小さい場合、反復が終了し、調整層が統一された反復終了信号を発行し、各DERUが最終反復計算結果に従って出力し、仮想発電所は経済配分を完了し;出力誤差が大きい場合、調整信号の大きさを変更し、誤差が十分に小さくなるまで、ステップS2に戻って次の反復を行うステップS6と、
を含む自己適応化仮想発電所の分散型経済配分方法も提供される。
【0007】
ステップS1では、調整層の仮想コーディネーターが障害した場合、計算機器が新しい仮想コーディネーターとして再指定され、新しい仮想コーディネーターは、すべてのゲートウェイによって統計された出力サイズxlとステップサイズhlをサブスクライブし、lがゲートウェイ番号であってもよい。
【0008】
ステップS4では、調整層の仮想コーディネーターが障害した場合、計算機器が新しい仮想コーディネーターとして再指定され、新しい仮想コーディネーターは、すべてのゲートウェイ統計の出力サイズxl及びステップサイズhlをサブスクライブし、新しい仮想コーディネーターは、データベース又はメッセージキューから、出力目標量XDと現在の反復の調整信号λ(k)及び各ゲートウェイによって発行されたすべての接続されたDERUの総出力値及び総感度値をダウンロードしてもよい。
【0009】
ステップS6では、調整信号サイズを変更するルールは、総出力値が出力目標量XDより低い場合、次の反復での調整信号を増やし、総出力値が出力目標量XDより高い場合は、総出力値と出力目標量Xの差値が十分に小さくなるまで、次の反復での調整信号を減らしたら、反復が終了してもよい。
【0010】
ステップS6では、調整信号の更新ルールが次の通りであり、
【数1】
その中で、kが反復回数であり;hが正のスカラー、反復ステップサイズであり;XDがVPPの出力目標量であり、サイズが、
【数2】
であり、xiがi番目のDERUの出力であり、軽減できる負荷については、xがその負荷軽減量であり;xの出力制約式がxmin i≦xi≦xmax i i=1、2、…、Nであり、その中でxmin iとxmax iはそれぞれが、i番目のDERU出力の上限と下限であり;
【数3】
をi番目DERUの増分コストとし、出力制約式を考慮しない場合、等増分率法則(Equal incremental rate criterion )により、λ1=λ2=…λN=λ’ 且つ、
【数4】
を満たす場合、仮想発電所の出力コストが最も低く、経済配分を達成し;出力制約式を考慮する場合、ソルビングプロセスで出力制限を越えるDERU出力を対応する制限値に固定し、制限値に達しないDERUの増分コストが一致する場合、仮想発電所は経済配分を達成し;
毎回反復における目標量に対する仮想発電所の総出力の誤差を以下に定義し、
【数5】
DERU出力の更新ルールが、
【数6】
即ち、調整信号がDERUの出力範囲を超えると、出力は制限値に固定され、この時点で制限値に達したDERUは、調整信号の変化に応答し続けず;その中で、λ-1 i(・)がλi(・)の逆函数であってもよい。
【0011】
反復ステップサイズhには、以下の3つの収束条件があり、
(1)すべてのDERUのコスト関数が2次関数である場合:
DERUのコスト関数が従来の2次関数である場合:
【数7】
ここで、xiとfiのそれぞれがi番目のDERUの出力及び発電コストであり、削減できる負荷については、xiとfiはそれぞれがその負荷削減の量と調整コストであり、電力システムでのDERU発電又は調整コストは、限界費用の増加の法則を満たしているので、コスト関数fiが単調増加関数でありai、bi、ciはそれぞれが二次項、一次項係数及び定数項であり、いずれも正数であり、hが毎回の反復で変化せずに、DERUの出力制限が考慮されない場合、前記自己適応化仮想発電所の分散型経済配分方法が効果的に収束するための必要且つ十分な条件が以下の通りであり、
【数8】
この場合、調整ステップサイズhが任意の値を取ることができず、正数を取る必要があり、且つすべてのDERUのコスト関数の二次項係数にのみ関連する上限があり、一次項係数及び定数項とは関係ないので、ステップサイズの上限を以下に定義でき、
【数9】
したがって、前記の収束条件が以下の通りであり、
h=rhmax 0<r<1
この式は、即ちすべてのDERUのコスト関数が二次関数である場合の反復収束条件であり;
(2)DERUのコスト関数が一般的な増加関数である場合:
DERUのコスト関数の導関数、即ち増分コスト関数λi(xi)が増加関数であり、この時点でのステップ上限が以下の通りであり、
【数10】
式中、λ’i(xi)はxiに対するλi(xi)の一次導関数であり、即ちfiがxiに対する二次導関数であり;
(3)DERUが出力限界に達し、又は通信障害が発生した場合:
DERUが出力限界に達すると、DERUは調整信号の変化に応答できなくなり、したがってhmaxを計算するとき、それを無視するべきであり、したがって反復プロセスでは、ステップサイズの集中型更新ルールが、DERUの出力限界を考慮し、DERUの増分コスト関数が一般的な増加関数である場合、k番目の反復では、ステップサイズhの集中型更新ルールのアルゴリズムが以下の通りであり、
a1:ξ←0
a2:for i=1:N
a3:x(k)←max(min(λ‐1i(λ(k),xmax i),xmin i)
a4:if xmin i<x(k)<xmax i then ξ←ξ+1/λ' i(x(k))
a5:hmax(k)←2/ξ
a6:h(k)=rhmax(k)
特殊な場合の処理:調整信号が対応する出力値が一部のDERUの上限より大きく、残りのDERUの下限より小さい場合、反復でデッドゾーンが発生し、このとき、ステップサイズの更新は、分母が0の状況が発生し、即ちアルゴリズムa5行のξ=0、この状況が発生した場合、アルゴリズムa4行の制限値の判定は片側のみを取ってもよく、即ち、誤差ΔX(k)がプラスである場合、上限のみを判断し、誤差ΔX(k)がマイナスである場合、下限のみを判断する;即ち、分母ξは出力が誤差方向に調整できるDERUによって総合的に決定できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、従来の技術に比較して以下の有益な効果を有する。本発明の一実施形態に係る分散型経済配分方法は、自己適応性を持ち、仮想発電所内の分散型リソースの大量性と、変動性との特性に適応できる。ステップサイズのアルゴリズムのデカップリングと階層的分散型アーキテクチャは、分散型リソースの分散特性に適応でき、分散型リソースのプラグアンドプレイを実現できる。
【0013】
1)ステップサイズ上限の理論値の存在により、方法は高い収束を確実に持ち、同時に、方法の自己適応性は、大量で、分散型リソースの経済配分問題を効果的に解決できる。
2)軽量化の設計により、システムの計算と通信の圧力が分散され、仮想発電所の運用効率と調整速度を大幅に向上する。
3)単一障害点が発生した場合のコーディネーターのホスティング処理方法を提案し、分散型リソースをサポートするプラグアンドプレイ機能と組み合わせて、方法全体が高いフォールトトレランスを備える。
4)パラメータ更新機能と階層アーキテクチャにより、分散型リソースのパラメータ情報が保護され、プライバシーが保護される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】メッセージキュー送信メカニズムに基づく仮想発電所の分散型アーキテクチャである。
図2】仮想発電所の分散型経済配分方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態における技術的解決策は、本発明の実施形態における図面と併せて以下に明確且つ完全に説明されるが、明らかに、記載された実施形態は、本発明の実施形態の一部にすぎず、すべての実施形態ではない。本発明の実施形態に基づいて、創造的な作業なしに当業者によって得られた他のすべての実施形態は、本発明の保護範囲に含まれる。
【0016】
(一、仮想発電所経済配分モデル)
仮想発電所の経済配分とは、仮想発電所の総出力目標と各分散型リソースの出力範囲を満たした条件下で、総発電コストを最小化するために、各発電機グループの出力を合理的に配置することを指す。
【0017】
【数11】
【0018】
【数12】
【0019】
min i≦xi≦xmax i i=1,2,…,N (式1c)
【0020】
式中、xiとfiは、それぞれi番目のDERUの発電出力と発電コストであり、削減可能な負荷の場合、xiとfiは、それぞれがその負荷削減量と調整コストである。電力システムにおけるDERU発電又は調整コストは、限界費用増加法則を満たしているので、fi(コスト関数)は単調増加関数である。NがDERUの総数、Fが仮想発電所の総発電コスト、XDはVPPの出力目標量、xmin iとxmax iはそれぞれがi番目のDERUの出力電力の上限と下限である。
【数13】
をi番目DERUの増分コスト(Incremental Cost, IC)とする。出力制約(1c)を考慮しない場合、等増分率法則(Equal incremental rate criterion )により、λ1=λ2=…λN=λ’ 且つ(1b)を満たす場合、VPPの出力コストが最も低く、経済配分を達成する。式(1c)を考慮する場合の制約と最適化問題については、ソルビングプロセスで出力制限値を越えたDERU出力を対応する制限値に固定し、制限値に達しないDERUの増分コストが一致する場合、VPP(仮想発電所)は経済配分を達成した。
【0021】
(二、仮想発電所の分散型経済配分方法の説明)
分散型ディスパッチ方法については、各ユニット間の直接通信がないため、各ユニットの反復方向を調整するための上位層の主体が必要であり、本方法では、調整の役割を仮想コーディネーター(virtual coordinator, VC)として定義する。また、分散型アーキテクチャ設計により、計算負荷負荷が分散されるので、従来の中央コントローラと比較してコーディネーターは、パフォーマンスへの要求が大幅に削減されて、ローカルのエネルギー情報ゲートウェイが負担することもできる。したがって、この方法は、適切なアーキテクチャとプロセス設計を通じてVCの機能への要求を弱め、それにより、すべての(又はほとんどの)エッジインテリジェンスを備えた中間層の主体はコーディネーターの役割を果たすことができ、すべてのユニット全体が1つのトータルタスクを最適に終了するようにさせる。また、システムが軽量で、VCパフォーマンスへの要求が高くないため、VCに障害が発生した場合、調整機能をより便利にホストでき、ある程度のフォールトトレランスを実現できる。
【0022】
経済配分の等増分率法則を満たすために、毎回の反復で、VCは調整信号として統一された増分コスト値λを発行し、各DERUはそれに応じて自身の出力を計算して報告する。式(2)のパワーバランス制約を満たすために、フィードバックのアイデアに基づいて、VCは集約したDERU総出力を目標値XDと比較して、XDより低い場合、次の反復での調整信号を増やし、XDより高い場合は、VPPにおけるDERUの総出力と目標値XDの間の誤差が十分に小さくなるまで、調整信号を減らしたら、反復が終了し、VCは統一された反復終了信号を発行し、各DERUは最終的な反復計算結果に従って出力し、VPPは経済配分を完了する。フォールトトレランスを確保するために、毎回の反復で、システムはDERUのオンラインの状況と実行ステータスに応じて、ステップサイズを下から上に自己適応的に調整し、収束の速度を確保する。
【0023】
(三、パラメータの反復更新ルール)
調整信号の更新ルールは次の通りである。
【0024】
【数14】
【0025】
式中、kは反復回数であり;hは正のスカラー、反復ステップサイズであり、収束性に重要な影響を及ぼす。毎回反復における目標量に対するVPP総出力の誤差を以下に定義する。
【0026】
【数15】
DERU出力の更新ルールは次の通りである。
【0027】
【数16】
【0028】
即ち、調整信号がDERUの出力範囲を超えると、出力は制限値に固定され、この時点で制限値に達したDERUは、調整信号の変化に応答し続けない。その中でλ-1 i(・)がλi(・)逆函数である。
【0029】
(四、収束条件)
((1)すべてのDERUのコスト関数が2次関数である)
DERUのコスト関数が従来の2次関数:
【0030】
【数17】
【0031】
である場合(ai、bi、ciはそれぞれが二次項、一次項係数、及び定数項であり、いずれも正数である)、hが毎回の反復で変化せずに、DERUの出力制限が考慮されない場合、前記のプロセスが効果的に収束するための十分・必要条件は次の通りである。
【0032】
【数18】
【0033】
式中、調整ステップサイズhは任意の値を取ることができず、正数を取る必要があり、且つすべてのDERUのコスト関数の二次項係数にのみ関連する上限があり、一次項係数及び定数項とは関係ない。したがってステップサイズの上限を以下に定義できる。
【0034】
【数19】
【0035】
したがって、前記の収束条件は次の通りである。
【0036】
h=rhmax 0<r<1
【0037】
この式は、即ちすべてのDERUのコスト関数が二次関数である場合の反復収束条件である。
【0038】
((2)DERUのコスト関数が一般的な増加関数である)
さらに一般的に、DERUのコスト関数の導関数、即ち増分コスト関数λi(xi)が増加関数であり、この時点でのステップ上限は次の通りである。
【0039】
【数20】
【0040】
式中、λ’i(xi)はxiに対するλi(xi)の一次導関数であり、即ちfi対xiの二次導関数である。
【0041】
((3)DERUが出力限界に達し、又は通信障害が発生した場合)
DERUが出力限界に達すると、DERUは調整信号の変化に応答できなくなり、したがってhmaxを計算するとき、それを無視するべきであり、したがって反復プロセスでは、ステップサイズの集中型更新ルールは次の通りである。
【0042】
(アルゴリズム1:DERUの出力限界を考慮し、DERUの増分コスト関数が一般的な増加関数である場合、k番目の反復では、ステップサイズhの集中型更新ルール)
入力:すべてのDERUの増分コスト関数λi(x)i、調整信号λ(k);
出力:今回反復における調整信号の変化したステップサイズh(k)
【数21】
【0043】
DERUで通信障害が発生した場合、反復中に自身のパラメータ値をアップロードせず、且つ最終的にVCによって発行された反復終了信号を受信されずに、元の作業点に従って出力し、他のDERUの反復プロセスには影響しないため、アルゴリズム1のステップサイズ更新ルールも収束を保証できる。物理的な意味では、1/λ’i(xi(k))はk番目の反復における、i番目のDERUの出力の調整信号に対する感度である。感度が高いほど、出力制限範囲内で、DERUの調整信号に対する応答能力が強くなることを意味し、即ち、DERU出力変化マイクロ増分と調整信号変化マイクロ増分の比率が大きいことを意味する。アルゴリズム1と組み合わせて見ると、ステップサイズには自己適応の特徴があり、応答機能のあるDERUの数が多いほど、各DERUの出力感度が大きく、そうするとステップサイズが小さくなり、オーバー調整の可能性が小さくなる。逆に、応答性のあるDERUの数が少なく、各DERUの出力感度が小さいほど、ステップサイズが大きくなり、アンダー調整の可能性が小さくなる。
【0044】
特殊な場合の処理:調整信号に対応する出力値が一部のDERUの上限より大きく、残りのDERUの下限より小さい場合、反復にデッドゾーンが発生し、このとき、ステップサイズの更新は、分母が0の状況が発生する(アルゴリズム1の5行目のξ=0)。この状況が発生した場合、アルゴリズム1の4行目の制限値の判定は片側のみを取ってもよく、即ち、誤差ΔX(k)がプラスである場合、上限のみを判断し、誤差ΔX(k)がマイナスである場合、下限のみを判断する。即ち、分母ξは出力を誤差方向に調整できるDERUによって総合的に決定できる。
【0045】
アルゴリズム1は、集中型の状況でのステップサイズの更新ルールを説明し、実験によると、r=0.5の場合、収束速度が最も速くなる。さらに、分散型仮想発電所の内部アーキテクチャとデカップリングを計算することにより、それを分散型ステップサイズの更新方式として設計できる。毎回の反復で、各DERUは自身の出力xi(k)と1/λ’i(xi(k))を計算するため、各ユニットの独立した意思決定と個体のインテリジェンスが発揮されて、計算負荷が分散される。また、「DERU-ゲートウェイ-VC」の階層化分散型アーキテクチャにより、ゲートウェイは中間層の個体として、接続されている数十のDERUのパラメータ情報を集約して、合計された中間データをアップロードする。VCの計算負荷がさらに弱まり、単一のDERUのパラメータ情報がVCから保護され、プライバシーが保護される。フォールトトレランス方面では、DERUで通信障害が発生した場合、アルゴリズム1でステップサイズを計算することにより、収束の信頼性と速度が保証される。VCに通信障害が発生した場合、ホストすることで調整機能を他の計算機器でホストでき、反復プロセス中に必要なデータが保持され、すべてのゲートウェイが新しいVCとの通信接続を確立して反復を続行できる。したがって、ステップサイズの自己適応性と組み合わせたVCホスティングメカニズムは、システム全体の高いフォールトトレランスと高可用性を実現できる。
【0046】
(五、仮想発電所分散型アーキテクチャ)
分散型経済配分方法の説明と収束条件から、仮想発電所の上位層のVCは、毎回反復での合計DERU出力と必要なパラメータ情報をカウントするために必要となり、ステップサイズを更新し、統一調整信号を計算した後、発行される。すべてのDERUは、調整信号に従って自身の出力をフィードバックし、このようにして、DERUの総出力と出力コマンドターゲット間の誤差が許容範囲内になるまでフィードバックする。図1に示すように、異なる部分をデカップリングし、且つシステムのスケーラビリティとフォールトトレランスを強化するために、メッセージキュー送信メカニズムに基づく仮想発電所の分散型アーキテクチャが設計された。仮想発電所内部では、DERUは最低層(エージェント層)の電源装置又は調整可能な負荷であり、検知及び計算機能を備え、自身の増分コスト関数に従って調整信号に応答し、最終出力コマンドを実行し、出力制限内で電力出力を継続的に調整できる。DERUは、エネルギーインターフェースを介して仮想発電所の電力バスに接続され、ローカルエネルギー情報ゲートウェイとの通信接続を確立し、1台のゲートウェイで数十台のDERUを接続できる。真ん中のゲートウェイ層は、エッジコンピューティング機能があり、毎回反復で、最下層DERUの情報纏めて、アップロードし、DERUにVCによって発行された調整信号を伝達する。調整層のVCは、論理的に、すべてのゲートウェイとの通信接続を確立し、ステップサイズと調整信号を更新して、仮想発電所の総出力を調整し、最終的に電力網の出力コマンドを満たす。調整層には、反復を促進するための反復管理サービスがあり、毎回反復の時間枠では、すべてのメッセージの公開又はサブスクリプションが非同期であり、同時実行性の高い通信の圧力を軽減する。メッセージキューサーバーは、キュー内の重要な情報をデータベースに書き込んで、必要に応じて読み取れるように準備する。
【0047】
メッセージキュー送信メカニズムでは、ゲートウェイ層と調整層のすべてのデバイスがメッセージキューサーバーとの接続を確立するだけでよく、各デバイスはリスナーを介して必要なメッセージをサブスクライブする。ゲートウェイ層のゲートウェイは、VCによって発行されたインセンティブ信号情報をサブスクライブする必要があり、VCは、すべてのゲートウェイのパラメータの纏めた情報をサブスクライブする必要がある。すべてのDERUは、調整信号に応じるために、自身の出力を個別に計算し、また、ゲートウェイ層の集約後、VCの通信と計算負荷が軽減される。VCは、アルゴリズム1と式(1)を使用して、ステップサイズと励起信号を更新し、階層化及び分散型アーキテクチャと通信デカップリング設計により、VCの通信と計算が非常に軽量化になるため、VCはゲートウェイ装置からも負担できる。単一障害点が発生した場合、VCの機能は他のゲートウェイにホストでき、すべてのゲートウェイは新しいVCとのみ通信することで反復を再開できる。軽量化の設計であるため、VCはゲートウェイ層のいずれかのゲートウェイで直接負担できる。VCに障害が発生した場合、調整機能ホスティングメカニズムを触発するために、プロベートメッセージが発行される。調整機能が他のゲートウェイ又は計算サーバでホストされた後、新しいVCは、反復関連のパラメータ情報のみをメッセージキュー又はデータベースからダウンロードしてから、反復を構成し続ける。したがって、データベース又はメッセージキューは、反復を再開するために、総出力命令と今回反復での一部の情報を保持するだけでよいので、記憶負荷が比較的小さい。
【0048】
(六、方法フローの設計)
分散型経済配分方法の基本フローは図2に示すとおりである。ここで、lはゲートウェイ番号、Lはゲートウェイ層内のゲートウェイ数である。l番目のゲートウェイに接続されているDERUの数がn1である。即ち
【数22】
である。xl iは、l番目のゲートウェイに接続されたi番目のDERUの出力である。Xlとhlは、それぞれがl番目のゲートウェイに接続されているすべてのDERUの総出力と、増分コスト関数の導関数の逆数の合計である。VCは、すべてのゲートウェイによって発行されたXlとhl情報をサブスクライブする必要がある。方法は、ステップサイズの更新及び計算プロセスをデカップリングし、且つVCホスティングメカニズムを介してVC単一障害点を解決し、方法のフォールトトレランスと可用性を向上させる。VCに障害が発生した場合、新しいVCは今回反復でのXl、hl、λ及びXDをダウンロードする必要があり、そして同じフローを通じてVCの機能を実行して反復を復元できるため、コーディネーターの単一障害点の問題が解決される。DERU又はゲートウェイに障害が発生し、又はオフラインになった場合、ステップサイズの計算はそれを無視する。反復プロセスでDERUを追加する場合、収束条件を満たすようにステップサイズも下から上に更新されるため、収束パフォーマンスに影響を与えることなく、分散型リソースのプラグアンドプレイを実現できる。
【0049】
仮想発電所の分散型アーキテクチャと方法フローはいずれも高度なデカップリングが特徴であり、ゲートウェイは、最下層の情報を纏めて、合計計算の後に中間結果を調整層にアップロードするので、毎回の反復で、コーディネーターは個々のDERU装置の具体的なパラメータやステータス情報を知らないので、プライバシーを保護する特徴がある。さらに、アーキテクチャを改善でき、例えば多層中間層の設計、同じ層の各本体のデカップリング、上位層が下位層の情報を纏めてアップロードして、各デバイスの通信と計算をより軽量化にすることができる。
【0050】
本明細書の説明において、「一実施形態」、「示例」、「特定の示例」などの用語を参照する説明は、実施形態又は例と組み合わせて説明される特定の特徴、構造、材料又は特性は本発明の少なくとも1つの実施形態又は示例に含まれている。本明細書では、前記の用語の概略性説明、必ずしも同じ実施形態又は例を指すとは限らない。また、記載された特定の特徴、構造、材料、又は特性は、任意の1つ又は複数の実施形態又は示例において適切な方法で組み合わせることができる。
【0051】
上に開示された本発明の好ましい実施形態は、本発明を説明するのを助けるためにのみ使用される。好ましい実施形態は、すべての詳細を詳細に説明したわけではなく、また、本発明を説明された特定の実施形態のみに限定するものでもない。もちろん、この明細書の内容に応じて、多くの修正や変更を加えることができる。本明細書は、当業者が本発明を十分に理解して使用できるように、本発明の原理及び実際の用途をよりよく説明するために、これらの実施形態を選択し、具体的に説明した。本発明は、特許請求の範囲及びそれらの全範囲及び同等物によってのみ制限される。
図1
図2