(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】ペン型入力および/または出力デバイスならびに触覚信号を発生させる方法
(51)【国際特許分類】
G06F 3/0354 20130101AFI20230411BHJP
G06F 3/038 20130101ALI20230411BHJP
G06F 3/01 20060101ALI20230411BHJP
G06F 3/03 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
G06F3/0354 445
G06F3/038 320
G06F3/01 560
G06F3/03 400F
(21)【出願番号】P 2021500404
(86)(22)【出願日】2019-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2019066841
(87)【国際公開番号】W WO2020011526
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2021-03-02
(31)【優先権主張番号】102018116920.5
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102018120760.3
(32)【優先日】2018-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】クゲール, ゲオルク
(72)【発明者】
【氏名】カストル, ハーラルト
(72)【発明者】
【氏名】アフレンザー, ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】プチレイトナー, ローマン
【審査官】岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0018658(KR,A)
【文献】特開2009-169612(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016116763(DE,A1)
【文献】特開2015-115076(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0364167(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/01
G06F 3/03
G06F 3/033-3/039
G06F 3/041-3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電アクチュエータ(11)を有するアクチュエータユニットを有し、
前記圧電アクチュエータ(11)を触覚信号の発生に用いる再現モードにおいて、前記圧電アクチュエータ(11)を同時にセンサとして動作させ、前記圧電アクチュエータ(11)に存在する電圧をモニタリングするように構成されている
ペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項2】
前記圧電アクチュエータ(11)に電圧を印加するように構成された制御ユニット(10)を有する
請求項1に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項3】
前記制御ユニット(10)には、プロファイル、例えば表面プロファイルが保存されており、
前記制御ユニット(10)は、前記圧電アクチュエータ(11)を制御して、前記保存されたプロファイルの触感を発生させる信号を、前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)に発生させるように構成されている
請求項2に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項4】
前記圧電アクチュエータ(11)がセンサとして用いられ、前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)に対する操作により、前記圧電アクチュエータ(11)に電圧を発生させ、
前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)は、前記圧電アクチュエータ(11)に発生した電圧を識別し、前記発生した電圧の特徴を表す値を記憶するように構成された評価ユニット(12)を有するように構成されている、
請求項1~3のいずれか一項に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項5】
前記圧電アクチュエータ(11)が、センサとして用いられるとともに、振動の発生に用いられるように構成されている
請求項4に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項6】
前記制御ユニット(10)は、前記評価ユニット(12)に記憶された値に基づいて前記圧電アクチュエータ(11)を制御するように構成されている
請求項2
を引用する請求項4に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項7】
前記アクチュエータユニットに接続されたプローブ素子(8)を有する
請求項1~6のいずれか一項に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項8】
前記アクチュエータユニットは、前記圧電アクチュエータ(11)に固定された機械的強化素子(13a、13b)を有する
請求項1~7のいずれか一項に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項9】
前記機械的強化素子(13a、13b)は、前記圧電アクチュエータ(11)の第1方向(R1)における伸びの変化により変形することによって、前記機械的強化素子(13a、13b)の一部(17a、17b、20a、20b)が、前記圧電アクチュエータ(11)に対して前記第1方向(R1)に垂直な第2方向(R2)に沿って可動となるように構成および配置されている
請求項8に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項10】
前記圧電アクチュエータ(11)は、長さの変化によって、d31効果を利用して振動を発生させるように構成および配置され、
または、
前記圧電アクチュエータ(11)は、長さの変化によって、d33効果を利用して振動を発生させるように構成および配置されている
請求項1~9のいずれか一項に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項11】
傾角センサ(27)および/または距離センサ(30)および/または速度センサ(28)および/または加速度センサ(29)をさらに有する
請求項1~10のいずれか一項に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項12】
前記アクチュエータユニットに対する制御において、および/または前記アクチュエータユニットに発生した電圧に対する評価において、前記傾角センサ(27)によって検出された角度を考慮し、
かつ/または、
前記アクチュエータユニットに対する制御において、および/または前記アクチュエータユニットに発生した電圧に対する評価において、前記速度センサ(28)によって検出された速度を考慮し、
かつ/または、
前記アクチュエータユニットに対する制御において、および/または前記アクチュエータユニットに発生した電圧に対する評価において、前記加速度センサ(29)によって検出された加速度を考慮する
請求項11に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項13】
制御信号を識別するように構成されている
請求項1~12に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項14】
センサ情報に基づいて、適切なアルゴリズム識別によって制御信号を識別するように構成されている
請求項13に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項15】
起動信号を識別し、前記起動信号が識別された場合にのみ、前記アクチュエータユニットを作動させるように構成されている
請求項1~14のいずれか一項に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項16】
前記圧電アクチュエータ(11)に記録された電圧に基づいて加速度を確定するように構成されている
請求項1~15のいずれか一項に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項17】
前記圧電アクチュエータ(11)以外に、他のセンサを有しておらず、または
前記圧電アクチュエータ(11)以外に、他のセンサを多くとも2つ有する
請求項1~16のいずれか一項に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項18】
前記圧電アクチュエータ(11)は圧力センサとして用いられるように構成されている
請求項1~17のいずれか一項に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項19】
前記圧電アクチュエータ(11)に発生した電圧に基づいて、前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)を手に取る操作または把持する操作を識別するように構成されている
請求項1~18のいずれか一項に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項20】
前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)内で前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)の表面の真下に配置された2つの前記圧電アクチュエータ(11)を有する
請求項1~19のいずれか一項に記載のペン型入力および/または出力デバイス(1)。
【請求項21】
圧電アクチュエータ(11)を含むアクチュエータユニットを有するペン型入力および/または出力デバイス(1)によって触覚信号を発生させる方法であって、
制御ユニット(10)が前記圧電アクチュエータ(11)に電圧を印加することによって、前記圧電アクチュエータ(11)の振動を励起し、前記振動によって触覚信号を発生させ、
前記圧電アクチュエータ(11)を触覚信号の発生に用いる再現モードにおいて、前記圧電アクチュエータ(11)を同時にセンサとして動作させ、前記圧電アクチュエータ(11)に存在する電圧をモニタリングするように構成されている方法。
【請求項22】
前記制御ユニット(10)が前記圧電アクチュエータ(11)に電圧を印加することによって、表面の触感を発生させる信号を、前記圧電アクチュエータ(11)の振動によって発生させる
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
第1ステップにおいて、前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)を表面に沿って移動させ、前記表面が前記アクチュエータユニットに接続された素子に作用することによって、前記圧電アクチュエータ(11)が、評価ユニット(12)によって識別される電圧を発生させ、前記評価ユニット(12)は、発生した電圧の特徴を表す値を記憶し、さらに表面プロファイルを記憶する
請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
第2ステップにおいて、前記制御ユニット(10)は、前記記憶されたプロファイルに基づいて前記圧電アクチュエータ(11)を制御する
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1ステップの間に、前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)と表面との間の角度を検出し、前記表面プロファイルを作成する過程で前記評価ユニット(12)によって前記角度を考慮し、
かつ/または
前記第1ステップの間に、前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)が表面上を移動するときの速度を検出し、前記表面プロファイルを作成する過程で前記評価ユニット(12)によって前記速度を考慮し、
かつ/または
前記第1ステップの間に、前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)が表面上を移動するときの加速度を検出し、前記表面プロファイルを作成する過程で前記評価ユニット(12)によって前記加速度を考慮する
請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)を、仮想現実アプリケーションまたは拡張現実アプリケーションに応用する
請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)の傾角を検出し、前記傾角を考慮する場合に、前記制御ユニット(10)が前記圧電アクチュエータ(11)に印加する電圧の大きさを調整し、
かつ/または
前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)の移動時の速度を検出し、前記速度を考慮する場合に、前記制御ユニット(10)が前記圧電アクチュエータ(11)に印加する電圧の大きさを調整し、
かつ/または
前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)にかかる加速度を検出し、前記加速度を考慮する場合に、前記制御ユニット(10)が前記圧電アクチュエータ(11)に印加する電圧の大きさおよび周波数を調整する
請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)によって、前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)から表面までの距離を識別する
請求項21~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)によって制御信号を識別する
請求項21~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記圧電アクチュエータ(11)で検出された電圧が予め定められた閾値を超えることによって、前記制御信号を識別する
請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記圧電アクチュエータ(11)で検出された電圧が所定の時間間隔内に前記予め定められた閾値を超える頻度に基づいて、異なる制御信号を識別する
請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記圧電アクチュエータ(11)で検出された電圧が前記予め定められた閾値を超える持続時間に基づいて、異なる制御信号を識別する
請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
前記ペン型入力および/または出力デバイスは、起動信号を識別し、前記起動信号を識別した場合に、前記アクチュエータユニットを作動させる
請求項21~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)を手に取ることによって、起動信号を発信し、または
前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)を表面に近づけることによって、起動信号を発信し、または
前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)で表面を叩くことによって、起動信号を発信する
請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ペン型入力および/または出力デバイス(1)は、前記圧電アクチュエータ(11)に記録された電圧に基づいて加速度を確定する
請求項21~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記ペン型入力および/または出力デバイスは特徴的な加速度パターンを識別することによって、定義された移動を検知し、前記移動は制御信号として解釈される
請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記圧電アクチュエータ(11)はセンサとして用いられるとともに、振動の発生に用いられる
請求項21~36のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペン型入力および/または出力デバイス、ならびに触覚信号を発生させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
仮想現実アプリケーションと拡張現実アプリケーションの分野において、ペンを使って表面をタッチすることが増えている。そこで、予め記憶された面においてペンが移動するイメージをユーザに伝えることが望まれる。表面プロファイルをリアルに再現するために、応答時間の短いアクチュエータが有利である。
【0003】
例えば、US8988445B2には、このようなペンが開示されている。このペンは振動コイルを含むリニアアクチュエータを有する。このようなアクチュエータは応答時間および減衰時間が長い。そのため、表面プロファイルのあらゆる細部を触覚で体験させることができない。また、US8988445B2に記載されたペンには複数のセンサが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、有利なペン型入力および/または出力デバイスを提供することにある。本発明の別の目的は、このような入力および/または出力デバイスによって触覚信号を発生させる有利な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、請求項1に記載のペン型入力および/または出力デバイス、および別の独立項に記載の方法によって達成される。
【0007】
圧電アクチュエータを有するアクチュエータユニットを有するペン型入力および/または出力デバイスを提供する。一実施形態において、ペン型入力および/または出力デバイスは圧電アクチュエータをより多く有してもよい。
【0008】
圧電アクチュエータは異なる幾何学的形状で製造されてもよい。これによって、ペン型入力および/または出力デバイスの幾何学的形状に応じて圧電アクチュエータの幾何学的構成案を調整することができる。圧電アクチュエータを使用するもう一つの利点は、圧電アクチュエータの迅速な応答特性および減衰特性にある。圧電アクチュエータで発生させる振動の迅速な応答および減衰だけで、リアルな触覚信号を発生させることができる。
【0009】
広い周波数スペクトラムからの周波数によって圧電アクチュエータの振動を励起することができる。例えば、圧電アクチュエータに印加する入力電圧は5Hz~10KHzにある周波数を有してもよい。このように異なる周波数を使用することができるため、幅広い周波数範囲で圧電アクチュエータの振動を励起することができる。これによって、異なるテクスチャを持つ表面を模擬する異なる触感を発生させることができる。
【0010】
圧電アクチュエータに印加する信号は任意の形状の信号であってよい。圧電アクチュエータは、例えば正弦形状の入力信号に限定されない。
【0011】
圧電アクチュエータとして、単層アクチュエータまたは積層圧電素子のいずれも用いることができる。積層素子の場合、内部電極およびその間に設けられた圧電層は交互に上下に積層される。
【0012】
圧電アクチュエータによって異なる触覚信号を発生させることができる。圧電アクチュエータの振動の振幅および周波数はいずれも可変である。これによって、例えば表面の異なるテクスチャをリアルな触覚で体験させることができる。
【0013】
例えば仮想現実アプリケーションまたは拡張現実アプリケーションへの応用において、ペン型入力および/または出力デバイスは、入力デバイスとしても出力デバイスとしても用いることができる。入力デバイスとして用いる場合は、ユーザがペン型デバイスを特定の位置まで移動させることで入力することができる。これによって、ユーザは、例えば制御命令をアプリケーションに転送することができる。出力デバイスとして用いる場合は、アクチュエータユニットの振動によって触覚信号をユーザに転送するように、ペン型デバイスを介して出力する。ペン型デバイスは、入力デバイスのみとして、または出力デバイスのみとして、または組合せ型の入出力デバイスとして動作することができる。
【0014】
ペン型入力および/または出力デバイスは、圧電アクチュエータに電圧を印加するように構成された制御ユニットを有してもよい。圧電アクチュエータに印加する電圧によって、圧電アクチュエータの振動を励起することができる。ペン型入力および/または出力デバイスを掴むまたは把持するユーザにとって、前記振動は触覚信号であってもよい。圧電アクチュエータの振動の周波数および振幅によって、ユーザのために異なる触感を発生させることができる。
【0015】
制御ユニットには、プロファイルが保存されてもよい。制御ユニットは、圧電アクチュエータを制御して、保存されたプロファイルの触感を発生させる信号をペン型入力および/または出力デバイスに発生させるように構成されてもよい。プロファイルは、特に、表面プロファイルであってもよい。当該表面プロファイルは表面のテクスチャを再現することができる。例えば、触覚信号によって再現したい表面の粗さに応じて触覚信号を変更してもよい。
【0016】
ペン型入力および/または出力デバイスは、圧電アクチュエータがセンサとして用いられるように構成されてもよい。ペン型入力および/または出力ユニットに対する操作により、圧電アクチュエータに電圧を発生させることができる。ペン型入力および/または出力デバイスは、圧電アクチュエータに発生した電圧を識別し、当該発生した電圧の特徴を表す値を記憶するように構成された評価ユニットを有してもよい。入出力デバイスは、プロファイルが記憶された一つまたは複数の表面に沿ってデバイスを案内する読み込みモードで動作してもよい。
【0017】
前記ペン型入力および/または出力デバイスは、圧電アクチュエータがセンサとして用いられるとともに、振動の発生に用いられるように構成されてもよい。例えば、圧電アクチュエータが表面プロファイルを読み込むためのセンサとして用いられる読み込みモードで、アクチュエータによって振動を発生させることができる。例えば、読み込み操作期間において圧電アクチュエータに印加する力が定められた閾値を超えたと識別されると、これに基づいて電子制御装置によってアクチュエータの振動を励起することができる。当該振動は例えば動作モードを切り替えるようにユーザを指示するためのものである。代替の手段として、当該振動は損傷を防止するためにデバイスを待機モードに切り替えるようにユーザを指示するためのものであってもよい。
【0018】
圧電アクチュエータを触覚信号の発生に用いる再現モードにおいて、圧電アクチュエータは同時にセンサとして動作してもよい。ここで、圧電アクチュエータに存在する電圧をモニタリングしてもよい。これによって、例えばデバイスで表面を叩くことで発信する制御信号を識別することができる。代替または補充の手段として、これによって、ペン型入力および/または出力デバイスを表面へ押し付ける力が大きすぎる場合を識別することができる。この場合に、デバイスは損傷を回避するために自動的に遮断されるか、または待機モードに入ることが可能である。
【0019】
制御ユニットは、評価ユニットに記憶された値に基づいて圧電アクチュエータを制御するように構成されてもよい。これによって、制御ユニットは、予め保存されたプロファイル、またはペン型入力および/または出力デバイスによって読み込みモードで読み込まれたプロファイルに基づいて、圧電アクチュエータを制御する。
【0020】
ペン型入力および/または出力デバイスは、アクチュエータユニットに接続されたプローブ素子を有してもよい。デバイスのペン型形式について、プローブ素子は、ペン先に配置され、それに応じて実際または仮想の表面において案内されるように構成されてもよい。プローブ素子は先細り状であってもよい。プローブ素子は、特にプローブ先端部を有してもよい。プローブ素子は、ペン型入力および/または出力デバイスのベースに対して可動に配置されてもよい。それに応じて、プローブ素子は表面に接触するときに移動することができる。プローブ素子は、圧電アクチュエータによって振動するように構成されてもよい。プローブ素子の振動によって触覚信号を発生させることができる。
【0021】
アクチュエータユニットは、圧電アクチュエータに固定された機械的強化素子を有してもよい。機械的強化素子は、圧電アクチュエータの第1方向における伸びの変化により変形することによって、機械的強化素子の一部が、圧電アクチュエータに対して第1方向に垂直な第2方向に沿って可動となるように構成および配置されてもよい。
【0022】
機械的強化素子は、アクチュエータの移動を、大きな振幅を有する第2方向に沿った移動に変換するように構成されてもよい。振幅を大きくすることによって、触覚信号を強くすることができる。
【0023】
圧電アクチュエータは、長さの変化によって、d31効果またはd33効果を利用して振動を発生させるように構成および配置されてもよい。
【0024】
代替または補充の手段として、ペン型入力および/または出力デバイスは傾角センサを有してもよい。代替または補充の手段として、ペン型入力および/または出力デバイスは距離センサを有してもよい。代替および/または補充手段として、ペン型入力および/または出力デバイスは速度センサを有してもよい。代替または補充の手段として、ペン型入力および/または出力デバイスは加速度センサを有してもよい。代替および/または補充手段として、ペン型入力および/または出力デバイスは他のセンサを有してもよい。ここで述べられるセンサのうちのそれぞれはMEMS部品として実施してもよい。ここで述べられるセンサのうちのそれぞれは独立してセンサであってもよい。代替の手段として、ここで述べられるセンサのうちの2つまたは2つ以上は、複数の測定される変数を確定するように構成されている。
【0025】
ここで述べられるセンサによって、測定される変数、例えば傾角、速度、加速度または距離を確定することができ、アクチュエータユニットによって触覚信号を発生させる過程、および表面プロファイルを読み込む過程の両方において、これらの測定される変数を考慮してもよい。これによって、読み込まれた表面プロファイルの精度を向上させ、かつ/または、触覚信号のよりリアルな再現を実現することができる。しかし、ここで述べられるセンサを備えていなくても、またはここで述べられるセンサのうち一部しか備えていなくても、ペン型入力および/または出力デバイスは機能が完全である。したがって、センサは精度を向上させるためのものに過ぎず、デバイスの機能原理にとって必要不可欠なものではない。
【0026】
圧電アクチュエータは、例えば加速度を測定するセンサとして用いられてもよい。ここで、圧電アクチュエータに発生した電圧によって加速度を推定してもよい。これによって、圧電アクチュエータは加速度センサとして用いられてもよく、また、一実施例において独立した加速度センサを用いなくてもよい。ここで、圧電アクチュエータに接続された評価ユニットは、デバイスが読み込み対象表面上を移動し、圧電アクチュエータが表面から付勢されることによって発生した電圧と、デバイスに加速がかかり、アクチュエータに力が作用することにより発生した電圧とを区別するように構成されてもよい。2つのタイプの電圧は、評価ユニットによって識別可能な特徴的なパターンを有してもよい。
【0027】
加速度センサとして用いられる圧電アクチュエータによって識別される加速度は、例えばペン型入力および/または出力デバイスによる表面に対する叩打によって発生するものであってもよい。ユーザによる制御命令を示すペン型入力および/または出力デバイスの他の移動も、加速度センサとして用いられる圧電アクチュエータによって識別される加速度と関連付けてもよい。
【0028】
ペン型入力および/または出力デバイスの表面における移動速度を変更するほか、圧電アクチュエータに力を作用させるようなペン型入力および/または出力デバイスの移動を変更することによって、ペン型入力および/または出力デバイスに加速度を加えてもよい。圧電アクチュエータに接続された評価ユニットは、表面における移動によって発生したサンプリング信号と、ペン型入力および/または出力デバイスに加速度を加える他の移動とを区別するように構成されてもよい。アクチュエータユニットに対する制御において、および/またはアクチュエータユニットに発生した電圧に対する評価において、傾角センサによって検出された角度を考慮してもよい。アクチュエータユニットに対する制御において、および/またはアクチュエータユニットに発生した電圧に対する評価において、速度センサによって検出された速度を考慮してもよい。アクチュエータユニットに対する制御において、および/またはアクチュエータユニットに発生した電圧に対する評価において、加速度センサによって検出された加速度を考慮してもよい。
【0029】
ペン型入力および/または出力デバイスは、制御信号を識別するように構成されてもよい。ここで、当該制御信号は、例えばボタンまたはタッチスクリーンの操作素子によって発生させるものではなく、ペン型入力および/または出力デバイスの特定の移動によって発生させるものであってもよい。特に、センサ情報に基づいて、適切なアルゴリズムによって制御信号を識別してもよい。好ましい実施例において、ペン型入力および/または出力デバイスは、ユーザに操作させるための制御信号を発信する操作素子を有していない。
【0030】
例えば、ペン型入力および/または出力デバイスで表面を1回または複数回叩くこと、および/またはペン型入力および/または出力デバイスを特定時間、表面へ押し付けること、および/またはペン型入力および/または出力デバイスを特定の方式で移動させ、特徴的な加速度パターンを加えることによって、制御信号を発信してもよい。制御命令を示すデバイスの移動の例として、デバイスの揺動またはデバイスの円状移動がある。また、ペン型入力および/または出力デバイスを手に取ることによって制御信号を発信してもよい。
【0031】
上記制御信号に関する例は、いずれも圧電アクチュエータに力を印加することである。デバイスで表面を叩くまたはデバイスを表面へ押し付ける場合に、デバイスのプローブ素子は圧電アクチュエータに作用してそれを変形させることができるため、アクチュエータに電圧が発生する。ペン型入力および/または出力デバイスを特定の方式で移動させると、この移動の特徴を表す加速度パターンがデバイスに印加される。圧電アクチュエータは、同様に加速度によって変形し、圧電アクチュエータに電圧が発生する。圧電アクチュエータに接続された回路は、圧電アクチュエータに発生した電圧に基づいて制御信号を識別するように構成されてもよい。
【0032】
例えば、ペン型入力および/または出力デバイスは起動信号を識別し、起動信号が識別された場合にのみ、アクチュエータユニットを作動させるように構成されてもよい。このように、省エネルギー動作を実現するペン型入力および/または出力デバイスを構成することができる。予想外の作動を回避し、デバイスのエネルギー源、例えばバッテリに対する不必要な負荷を防止することができる。
【0033】
起動信号は上記制御信号の一例である。その他の想定される制御信号として、動作モードを切り替えるための制御信号、または、デバイスをシャットダウンもしくは待機モードに切り替えるためのシャットダウン信号であってもよい。
【0034】
代替または補充の手段として、ペン型入力および/または出力デバイスは、ユーザがデバイスを手に取る場合に、ユーザによってペン型入力および/または出力デバイスに印加される機械的圧力を識別するように構成されてもよい。ここで、例えば、ペン型入力および/または出力デバイスが手に取られたと識別されることを起動信号として解釈してもよい。圧電アクチュエータは圧力センサとして用いられてもよい。このため、ペン型入力および/または出力デバイスに印加される圧力によって圧電アクチュエータに発生した電圧を読み出すことができる。圧電アクチュエータがペン型入力および/または出力デバイスの表面の真下に配置されることが好ましい。ここで、圧電アクチュエータは、ペン型入力および/または出力デバイスを把持するユーザの指が通常位置する箇所に配置されることが好ましい。また、圧電アクチュエータは、圧電アクチュエータに発生した電圧に基づいてデバイスに対する把持を識別するように構成されてもよい。
【0035】
一実施形態において、ペン型入力および/または出力デバイスは、表面の真下に配置されるとともに、それぞれにデバイスを把持するユーザの指が通常位置する箇所に配置されている2つの圧電アクチュエータを有してもよい。この2つの圧電アクチュエータは、圧力センサとして用いられ、手に取ることを識別するように構成されてもよい。
【0036】
ペン型入力および/または出力デバイスは、圧電アクチュエータ以外、他のセンサを有していなくてもよい。ペン型入力および/または出力デバイスを再現モードに応用するために、センサは一切必要ない。読み込みモードに応用するために、圧電アクチュエータだけで十分であり、それは、この圧電アクチュエータをセンサとして用い、圧電アクチュエータに発生した電圧に基づいて読み込み対象表面プロファイルを推定することができるためである。
【0037】
他のセンサを採用しないため、簡単かつ低コストのペン型入力および/または出力デバイスを構成することができる。また、センサを採用しないことはデバイスの小型化に寄与する。
【0038】
代替の手段として、別の実施例において、デバイスは圧電アクチュエータ以外に、他のセンサを多くとも2つ有してもよい。この2つの他のセンサは、例えば、傾角センサ、速度センサ、距離センサ、および加速度センサのうちの2つであってもよい。他のセンサを用いることによって、触覚信号を発生させる過程、および、表面プロファイルを読み込む過程において精度を向上させることができる。他の代替の実施例において、デバイスはセンサを2つ以上有してもよい。
【0039】
別の態様によれば、本発明は、圧電アクチュエータを含むアクチュエータユニットを有するペン型入力および/または出力デバイスによって触覚信号を発生させる方法に関する。当該ペン型入力および/または出力デバイスは、上記のペン型入力および/または出力デバイスであってもよい。前記デバイスについて開示されたすべての構造的特徴および機能的特徴は、同様に上記方法に適用される。前記方法について開示されたすべての構造的特徴および機能的特徴は、上記デバイスに適用される。
【0040】
前記方法においては、制御ユニットが圧電アクチュエータに電圧を印加することによって、圧電アクチュエータの振動を励起し、前記振動によって触覚信号を発生させる。したがって、この方法は、圧電アクチュエータをアクチュエータユニットに応用することによって生じる利点を有する。その利点のうち、応答時間の短さおよび減衰時間の短さによって、リアルな触覚信号を発生させる。圧電アクチュエータの幾何学的構成案は適応性が高く、様々なペン型入出力デバイスへの応用を実現する。また、高い帯域幅で触覚信号を発生させることができる。
【0041】
制御ユニットが圧電アクチュエータに電圧を印加することによって、表面の触感を発生させる信号を、圧電アクチュエータの振動によって発生させることができる。ここで、圧電アクチュエータに印加する信号の周波数および/または振幅の変化により、異なる表面を感じ取らせることができる。
【0042】
第1ステップにおいて、ペン型入力および/または出力デバイスを表面に沿って移動させ、当該表面がアクチュエータユニットに接続された素子に作用することによって、圧電アクチュエータが、評価ユニットによって識別される電圧を発生させる。当該評価ユニットは、発生した電圧の特徴を表す値を記憶し、さらに表面プロファイルを記憶する。これによって、圧電アクチュエータをセンサとして用いることができる。当該アクチュエータユニットに接続された素子はプローブ素子であってもよい。
【0043】
第2ステップにおいて、制御ユニットは、記憶されたプロファイルに基づいて圧電アクチュエータを制御することができる。
【0044】
第1ステップの間に、ペン型入力および/または出力デバイスと表面との間の角度を検出し、表面プロファイルを作成する過程で評価ユニットによって当該角度を考慮してもよい。当該角度は傾角であってもよい。代替または補充の手段として、第1ステップの間に、ペン型入力および/または出力デバイスが表面上を移動するときの速度を検出し、表面プロファイルを作成する過程で評価ユニットによって当該速度を考慮してもよい。代替または補充の手段として、第1ステップの間に、ペン型入力および/または出力デバイスが表面上を移動するときの加速度を検出し、表面プロファイルを作成する過程で評価ユニットによって当該加速度を考慮してもよい。それぞれに対応するセンサによって角度、速度および加速度を確定してもよい。
【0045】
ペン型入力および/または出力デバイスは、仮想現実アプリケーションまたは拡張現実アプリケーションに応用することができる。
【0046】
ペン型入力および/または出力デバイスの傾角を検出してもよい。ここで、当該傾角を考慮する場合に、制御ユニットが圧電アクチュエータに印加する電圧の大きさを調整してもよい。ペン型入力および/または出力デバイスの移動時の速度を検出してもよい。ここで、当該速度を考慮する場合に、制御ユニットが圧電アクチュエータに印加する電圧の大きさを調整してもよい。ペン型入力および/または出力デバイスに加えられる加速度を検出してもよい。ここで、当該加速度を考慮する場合に、制御ユニットが圧電アクチュエータに印加する電圧の大きさおよび周波数を調整してもよい。
【0047】
ペン型入力および/または出力デバイスから表面までの距離をデバイスによって識別してもよい。例えば、超音波または光学測定に基づく距離センサを使用することによって実現してもよい。
【0048】
ペン型入力および/または出力デバイスによって制御信号を識別してもよい。特に、センサ情報に基づいて、適切なアルゴリズムによって制御信号を識別してもよい。圧電アクチュエータで検出された電圧が予め定められた閾値を超えることで制御信号を識別してもよい。デバイスによる表面の叩打が、閾値を超える原因となり得る。
【0049】
圧電アクチュエータで検出された電圧が所定の時間間隔内に予め定められた閾値を超える頻度に基づいて、異なる制御信号を識別することができる。これによって、一回の叩打と複数回の叩打を区別することができる。一回の叩打と複数回の叩打を異なる制御信号に関連付けてもよい。
【0050】
圧電アクチュエータで検出された電圧が予め定められた閾値を超える持続時間に基づいて、異なる制御信号を識別することができる。閾値を超える時間が長くなれば、例えばデバイスが表面を長押ししていると推定することができる。
【0051】
ペン型入力および/または出力デバイスは、起動信号を識別し、起動信号を識別した場合に、アクチュエータユニットを作動させるように構成されてもよい。デバイスを手に取ること、デバイスを表面に近づけること、またはデバイスで表面を叩くことによって、起動信号を発信してもよい。
【0052】
ペン型入力および/または出力デバイスは、圧電アクチュエータに記録された電圧に基づいて、加速度を確定するように構成されてもよい。これにより、圧電アクチュエータを加速度センサとして用いることができる。代替または補充の手段として、ペン型入力および/または出力デバイスは、独立した加速度センサを有してもよい。デバイスは、特徴的な加速度パターンを識別することによって、定義された移動を検知するように構成されてもよい。このように、デバイスの特定の移動により発信される制御信号を識別することができる。例えば、デバイスの揺動または周回によって、特定の制御信号を発信してもよい。
【0053】
圧電アクチュエータは、センサとして用いられるとともに、振動の発生に用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
次に、図面を参照して本発明の好ましい実施例を説明する。
【
図1】
図1は、第1実施例に係るペン型入力および/または出力デバイスの横断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すペン型入力および/または出力デバイスの透視図である。
【
図3】
図3は、第2実施例に係る入力および/または出力デバイスの一部を示す図である。
【
図4】
図4は、2つの機械的強化素子を含む圧電アクチュエータを示す図である。
【
図5】
図5は、別の実施例に係るペン型入力および/または出力デバイスを示す図である。
【
図6】
図6は、さらに別の実施例に係るペン型入力および/または出力デバイス1を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1はペン型入力および/または出力デバイス1の横断面図である。
図2はペン型入力および/または出力デバイス1の透視図である。
【0056】
ペン型入力および/または出力デバイス1は、ユーザに触覚信号を伝えるために仮想現実アプリケーションまたは拡張現実アプリケーションに応用することができる。このようにして、ユーザに触感を感じさせることができる。例えば、ペン型入力および/または出力デバイス1が表面上を移動しているイメージをユーザに持たせることができる。このため、ペン型入力および/または出力デバイス1は、振動を発生させるように構成されたアクチュエータユニットを有し、上記振動によってペン型入力および/または出力デバイス1が表面上を移動する触感をユーザに伝える。
【0057】
ペン型入力および/または出力デバイス1は2つの異なる動作モードで使用することができる。第1動作モードは「再現モード」とも呼ばれる。ここでは、上記アクチュエータユニットによって振動を発生させ、この振動によってユーザに触感を伝える。第2動作モードは「読み込みモード」とも呼ばれる。ここでは、表面に沿ってペン型入力および/または出力デバイス1を案内する。この場合に、当該表面からペン型入力および/または出力デバイス1に加えられる力は、ペン型入力および/または出力デバイス1によって識別され、これにより表面プロファイルを算出して記憶する。「再現モード」においては、例えば「読み込みモード」で記憶された表面プロファイルを再現する触覚信号を発生させることができる。
【0058】
上記アクチュエータユニットは圧電アクチュエータ11を有する。
図1および
図2に示す実施例において、圧電アクチュエータ11は積層圧電素子であり、d31効果を利用して振動を発生させる。したがって、圧電アクチュエータ11の伸びは分極方向および電界に対して横方向に変化する。代替の実施例において、圧電アクチュエータ11は長手方向のアクチュエータとして動作してもよい。この場合、d33効果によって振動を発生させる。長手方向のアクチュエータにおいて、分極方向に平行な圧電層22に電界を印加する。これによって、分極方向に沿った延出または偏向を誘導する。
【0059】
図1および
図2に示すように、圧電アクチュエータ11は積層圧電素子である。当該積層圧電素子は、交互に上下に積層される複数の内部電極21および圧電層22を有する。代替の手段として、圧電アクチュエータ11は、1つの圧電層および2つの外部電極を有する単層アクチュエータであってもよい。
【0060】
ペン型入力および/または出力デバイス1はベース2を有する。ベース2は管状である。圧電アクチュエータ11およびペン型入力および/または出力デバイス1の他の素子はベース2に配置されている。ベース2はプラスチックまたは金属を有してもよい。
【0061】
ベース2は、その形状によって入力および/または出力デバイス1のペン型の構成案を定義する。ペン型入力および/または出力デバイス1は、ペン先を模倣した第1末端3と、第2末端4とを有する。第2末端4は、第1末端3と対向し、ペン型入力および/または出力デバイス1の通常ユーザによって把持される末端を構成する。
【0062】
ペン型入力および/または出力デバイス1は、さらにプローブ素子5を有する。プローブ素子5は圧電アクチュエータ11に接続されている。ペン型入力および/または出力デバイス1の第1末端3に向けられた圧電アクチュエータ11の第1末端6は、例えば接着によって、特にプローブ素子5に固定されている。代替の実施例において、プローブ素子5はスプリング付勢による接続によって上記圧電アクチュエータに接続されてもよい。
【0063】
プローブ素子5は、圧電アクチュエータ11とは反対側に、先細りの形状を有する。上記先細りの形状は、ペン型入力および/または出力デバイス1においてペン先を模したものである。プローブ素子5はプローブ先端部8を構成している。触覚信号によってプローブ素子5、特にプローブ先端部8が表面上を移動するイメージをユーザに伝えることができる。プローブ先端部8は尖っていても丸められていてもよい。
【0064】
圧電アクチュエータ11を振動させると、振動はプローブ素子5に伝達される。これによってプローブ素子5の振動を励起し、この振動が、プローブ素子5が表面上を移動する触感を発生させる。
【0065】
プローブ素子5はベース2の内部に配置され、上記先細りの末端が構成するプローブ先端部8はベース2から延出する。プローブ素子5はベース2に対して可動である。プローブ先端部8は、特にプローブ素子5が振動するときにベース2に対して可動である。
【0066】
ペン型入力および/または出力デバイス1は、さらに保持素子9を有する。保持素子9には、圧電アクチュエータ11の第1末端6と対向する圧電アクチュエータ11の第2末端7が固定されている。ここで、圧電アクチュエータ11の第2末端7は、圧電アクチュエータ11の振動が保持素子9に伝達されないように保持素子9に固定されている。保持素子9は例えば射出成形体であってもよい。代替の手段として、保持素子9は制御ユニット10および/または評価ユニット12が形成されているプリント回路基板であってもよい。
【0067】
保持素子9はベース2の内部に配置されている。ここで、保持素子9はベース2に固定接続されている。圧電アクチュエータ11の振動はベース2に伝達されない。保持素子9とベース2は慣性質量を形成し、その振動を圧電アクチュエータ11によって励起しにくくしてもよい。代替の手段として、ダンピングによって、圧電アクチュエータ11の振動がベース2伝達されるのを防止してもよい。このように、ベース2と圧電アクチュエータ11とは機械的に分離される。
【0068】
ペン型入力および/または出力デバイス1は、さらに上記制御ユニット10を有する。制御ユニット10は圧電アクチュエータ11と接続可能な電子装置である。
図1は制御ユニット10を模式的に示す。ここで示される実施例では、制御ユニット10は保持素子9に形成されている。圧電アクチュエータ11は制御ユニット10に接続されている。
【0069】
制御ユニット10は、電圧、特に交流電圧を圧電アクチュエータ11に印加するように構成されている。これによって、圧電アクチュエータ11の振動を励起することできる。制御ユニット10によって圧電アクチュエータ11に印加される交流電圧は、広い周波数スペクトラムからの周波数を有してもよい。制御ユニット10は、例えば、1Hz~10kHzの間の周波数を有する交流電圧を圧電アクチュエータ11に印加するように構成されてもよい。印加される交流電圧の周波数に応じて、圧電アクチュエータ11の振動、ならびにペン型入力および/または出力デバイス1のユーザに発生する触感が変化する。異なる周波数を印加することによって、異なる表面の異なるテクスチャの触感を発生させることができる。
【0070】
圧電アクチュエータ11は、さらに、「読み込みモード」の動作モードでセンサとして用いられてもよい。ペン型入力および/または出力デバイス1は評価ユニット12を有してもよい。
図1は評価ユニット12を模式的に示す。例えば、上記の制御ユニット10を形成する電子装置は、評価ユニット12を形成することもできる。
【0071】
ペン型入力および/または出力デバイス1を表面上を移動させると、当該表面がプローブ素子8に作用し、プローブ素子8から圧電アクチュエータ11に力が加えられる。この圧電アクチュエータ11に加えられる力によって、圧電アクチュエータ11において圧電効果で電圧が発生する。評価ユニット12は、圧電アクチュエータ11に接続され、発生した電圧を識別する。評価ユニット12は評価ユニット12が識別した信号に対して前処理を行い、また、評価ユニット12は、圧電アクチュエータ11が検出した電圧の特徴を表す値を記憶する。これによって、評価ユニット12は表面プロファイルを作成することができる。当該作成された表面プロファイルを評価ユニット12によって記憶する。
【0072】
その後のある時点で、評価ユニット12に記憶されたプロファイルを制御ユニット10によって使用することで、圧電アクチュエータ11に対応する電圧を印加し、圧電アクチュエータの振動を励起することができる。これによって、予め記憶された表面において、ペン型入力および/または出力デバイス1を案内するような触感を発生させることができる。
【0073】
図3は第2実施例に係るペン型入力および/または出力デバイス1の一部を示す。ペン型入力および/または出力デバイス1は、同様に圧電アクチュエータ11を含むアクチュエータユニットを有する。圧電アクチュエータはここではシート状である。アクチュエータユニットは機械的強化素子13aをさらに有する。機械的強化素子13aは圧電アクチュエータ11に固定されており、圧電アクチュエータ11の長さの変化を強化させるように構成されている。機械的強化素子13aは
図3に示されず、
図4を参照して説明する。
【0074】
ペン型入力および/または出力デバイス1は、同様にプローブ素子5および保持素子9をさらに有する。プローブ素子5は
図1および
図2に示すプローブ素子5にほぼ対応する。プローブ素子5は圧電アクチュエータ11によって振動するように構成されている。プローブ素子5は保持素子9および
図3に示されていないベース2に対して自在に可動する。
【0075】
保持素子9は圧電アクチュエータ11に固定接続されている。ここで、圧電アクチュエータ11とベース2とは機械的に分離されているため、圧電アクチュエータ11の振動はベース2に伝達されない。
【0076】
第2実施例に係るペン型入力および/または出力デバイス1は、さらに制御ユニット10を有する。第2実施例において、圧電アクチュエータ11は表面プロファイルを読み込むためのセンサとして用いられてもよい。ここで、ペン型入力および/または出力デバイスは第1実施例で説明した評価ユニット12に対応する評価ユニット12を有してもよい。
【0077】
図4、
図5および
図6は第2実施例に応用可能な2つの機械的強化素子13a、13bを含む圧電アクチュエータ11を示す。当該圧電アクチュエータ11は、本発明の触覚信号を発生させるためのペン型入力および/または出力デバイスに応用することができる。代替の手段として、機械的強化素子13a、13bを有さない、または圧電アクチュエータとプローブ素子との間に配置された機械的強化素子13aのみを有するアクチュエータを使用してもよい。
【0078】
圧電アクチュエータ11は複数の圧電層22および内部電極21を含む焼結部材である。圧電アクチュエータ11は、特に、積層体を構成するように交互に配置された複数の圧電層または活性層22を有する。圧電層22の間に内部電極21が配置されている。ここで、極性の異なる内部電極21が交互に配置されている。
【0079】
圧電層22は積層方向Sを有する。積層方向はアクチュエータ11の端面または側面24に沿って延在する。圧電層22は、特にアクチュエータ11の垂直の伸びまたは厚さに沿って積層される。
【0080】
アクチュエータ11の一つの端面24の領域において、一方の極性の内部電極21のみがアクチュエータ11の対応する端面24まで延在している。上記領域はアクチュエータ11の接触に利用可能である。例えば、端面24に電気的接触のための外部電極23が配設されてもよい。
【0081】
アクチュエータ11は、電圧が印加される場合にアクチュエータ11が変形するように構成されている。ここで言及するのは、アクチュエータ11の第1方向R1における伸びの変化である。圧電層22は特に、内部電極21の間に印加された電圧によってアクチュエータ11に横方向の収縮が生じ、アクチュエータ11の積層方向Sに垂直な長さが変化するように分極される。したがって、アクチュエータ11の伸びは分極方向および電界に対して横方向に変化する(d31効果)。
【0082】
積層方向Sの長さの変化の効果をさらに強化するために、上記装置は2つの機械的強化素子13a、13bを有しており、アクチュエータ11に電圧が印加されると、機械的強化素子13a、13bは、アクチュエータ11の伸びの変化によって少なくとも一部が変形する。以下に詳しく説明する。
【0083】
アクチュエータ11は機械的強化素子13a、13bの間に配置されている。機械的強化素子13a、13bは、少なくとも一部がアクチュエータ11の上側25または下側26に位置する。対応する機械的強化素子13a、13bの幅はアクチュエータ11の幅と等しいことが好ましい。機械的強化素子13a、13bの長さについても同様である。
【0084】
対応する機械的強化素子13a、13bは一体的に構成されている。対応する機械的強化素子13a、13bは矩形形状を有する。対応する機械的強化素子13a、13bはストライプ状である。対応する機械的強化素子13a、13bは湾曲またはカール状である。対応する機械的強化素子は、例えば帯板を有し、上記帯板は湾曲している。以下に詳しく説明する。
【0085】
一体式の機械的強化素子13a、13bのそれぞれは、複数の領域または区間に区画されている。これによって、対応する機械的強化素子13a、13bは中間領域17a、17bを有する。
【0086】
対応する機械的強化素子13a、13bは、それぞれに2つの接続領域20a、20bをさらに有する。対応する機械的強化素子13a、13bの2つの接続領域20a、20bは対応する機械的強化素子13a、13bの中間領域17a、17bと直接接続されている。言い換えれば、対応する機械的強化素子13a、13bの中間領域17a、17bは両側に向かう方向において2つの接続領域20a、20bで囲まれている。
【0087】
対応する機械的強化素子13a、13bは、さらにそれぞれ2つの末端領域18a、18bを有する。末端領域18a、18bは対応する増強素子13a、13bの接続領域20a、20bに直接に接続されている。言い換えれば、接続領域20a、20bのそれぞれは、一方の末端領域18a、18bと増強素子13a、13bの中間領域17a、17bとを接続している。
【0088】
対応する機械的強化素子の2つの末端領域18a、18bはアクチュエータ11の表面に直接に密接する。これによって、第1機械的強化素子13aの第1および第2末端領域18aはアクチュエータ11の上側25の一部に密接する。また、第2機械的強化素子13bの第1および第2末端領域18bはアクチュエータ11の下側26の一部に密接する。
【0089】
末端領域18a、18bは、アクチュエータ11の表面に分離不能に接続されることが好ましい。末端領域18a、18bは、特にアクチュエータ11の表面に接着によって接続される。
【0090】
中間領域17a、17bと接続領域20a、20bおよびアクチュエータ11の下側26または上側25との間に自由領域が設けられている。自由領域16の高さは自由領域16に沿って変化する。これにより、中間領域17a、17bはアクチュエータ11の表面に平行に延在するように構成されている。したがって、自由領域16の高さは、中間領域17a、17bの領域において最も高くなる。対応する接続領域20a、20bは、アクチュエータ11の表面に対して傾斜して延在する。言い換えれば、対応する接続領域20a、20bとアクチュエータ11の上側25または下側26とは所定の角度をなす。この角度は45°以下が好ましい。したがって、自由領域16の高さは、中間領域17a、17bから、対応する機械的強化素子13a、13bの末端領域18a、18bに向かって小さくなる。したがって、対応する機械的強化素子13a、13bは湾曲形状を有する。
【0091】
対応する機械的強化素子13a、13bは少なくとも1つの薄肉部14、好ましくは複数の薄肉部14を有し、これによって、機械的強化素子13a、13bに必要な柔軟性を確保することができる。
【0092】
アクチュエータ11に電圧が印加されると、対応する増強素子13a、13bの中間領域17a、17bおよび接続領域20a、20bはアクチュエータ11に対して第2方向R2に沿って移動する。第2方向R2は第1方向R1に垂直である。第2方向R2は積層方向Sに沿って延びる。これによって、中間領域17a、17bおよび接続領域20a、20bは、アクチュエータ11の第1方向R1における伸びが変化する場合に、アクチュエータ11に対して第2方向R2に沿って移動する機械的強化素子13a、13bの一部を構成する。
【0093】
特に、中間領域17a、17bは第2方向R2に沿って移動する。ここで、対応する機械的強化素子13a、13bは、中間領域17a、17bと接続領域20a、20bとの間、および接続領域20a、20bと末端領域18a、18bとの間の薄肉部14に位置する箇所で湾曲する。
【0094】
末端領域18a、18bの第2方向R2に沿う移動は、アクチュエータ11との接着によって妨害される。具体的には、末端領域18a、18bはアクチュエータ11に従って第1方向R1に沿って移動する。したがって、末端領域18a、18bと一部17a、17bとの間で相対的移動が発生する。
【0095】
機械的強化素子は他の構成手段としてもよい。
図5は別の実施例に係るペン型入力および/または出力デバイス1を示す。
【0096】
ペン型入力および/または出力デバイス1は、表面プロファイルを読み込む過程においてペン型入力および/または出力デバイス1の精度を向上させることができるセンサを有する。また、センサによって測定された測定データに基づいて、ペン型入力および/または出力デバイス1によって表面のリアルな触覚信号を発生させることができる。
【0097】
上記センサの一つは傾角センサ27である。傾角センサ27はペン型入力および/または出力デバイス1の傾角を識別するように構成されている。当該傾角は、特にペン型入力および/または出力デバイス1の縦軸と現実表面または仮想表面との間の角度であってもよい。代替の手段として、ペン型入力および/または出力デバイス1の地面に向かう方向に対する傾きを確定してもよい。
【0098】
傾角センサ27によって測定された傾角は、制御ユニット10によって圧電アクチュエータ11を制御する過程において考慮されてもよい。ペンが表面に垂直であるか、または表面と平坦に近い傾角をなすように配置されているかによって、表面上でペンを案内する間に発生する触感が異なる。ペン型入力および/または出力デバイス1と現実または仮想表面との間の傾角を識別し、圧電アクチュエータ11に対する制御において角度を考慮することによって、現実的な触感を発生させることができ、さらに、デバイスの表面に対する傾きも考慮され、触覚体験によって再現が可能になる。触覚信号は、特に傾角に応じて変化することができる。ここで、アクチュエータユニットによって振動を発生させる動作モード「再現モード」において、圧電アクチュエータ11が発生させた振動が、傾角センサ27によって測定された傾角に応じて変化する触感をユーザに伝える。
【0099】
圧電アクチュエータ11がセンサとして用いられる動作モード「読み込みモード」では、傾角センサに記録された傾角に関するデータを考慮してもよい。圧電アクチュエータ11が表面プロファイルを読み込むセンサとして用いられると、傾角センサ27によってペン型入力および/または出力デバイス1と対応する表面との間の傾角を同時に測定するとともに、プロファイルを作成するときにこの傾角を考慮することができる。このようにすれば、ペン型入力および/または出力デバイス1の読み込み対象表面に対する角度に関係なく、プロファイルを記録することができる。
【0100】
傾角センサ27によって、例えば表面を読み込み、また、ペン型入力および/または出力デバイス1を表面に対する第1の傾角で保持することができる。プロファイルを記憶するときにこの傾角を考慮してプロファイルを記憶することによって、この傾角を読み込み過程での傾角と無関係にする。その後、動作モード「再現モード」で、記憶されたプロファイルを使用し、かつペン型入力および/または出力デバイス1が第1の角度と異なる第2の角度で表面に配置される場合に、第2の角度で表面を読み込んでいないにもかかわらず、デバイスのレイアウトに対する現実的な触感をその角度で発生させることができる。
【0101】
表面を読み込む間に、例えば、ユーザがデバイスの握り方を変えたために、表面とペン型入力および/または出力デバイス1との間の傾角が変化した場合は、傾角センサ27によってこの変化を識別し、表面プロファイルを作成する過程で傾角の変化を考慮してもよい。
【0102】
上記センサのもう一つは速度センサ28である。速度センサ28は、特にペン型入力および/または出力デバイス1が表面上を移動するときの速度を測定することができる。
【0103】
速度センサ28によって測定された速度情報は、ペン型入力および/または出力デバイス1の2つの動作モードに応用することができる。「再現モード」では、ペン型入力および/または出力デバイス1が移動するときの速度を考慮する場合に発生する触覚信号を調整することができる。これによって、触覚信号の変化をリアルに再現し、ペンが表面上をゆっくりまたは素早く移動するときに、その変化を発生させることができる。
【0104】
ペン型入力および/または出力デバイス1が「読み込みモード」に応用された場合は、ペン型入力および/または出力デバイス1が読み込み対象表面上を移動するときの速度を考慮することによって、ペン型入力および/または出力デバイス1が表面上を移動するときの速度と関係なく、表面プロファイルを読み込むことができる。その後、そのプロファイルを、触感を発生させるためのテンプレートとして用いると、触感はプロファイルを読み込むときの速度と無関係になる。
【0105】
速度センサ28および傾角センサ27は同じセンサによって形成されてもよい。ここで示される実施例では、互いに独立した2つのセンサを示す。
【0106】
上記センサのもう一つは、ペン型入力および/または出力デバイス1の加速度を測定する加速度センサ29である。デバイスを用いて触感を発生させるときであっても、デバイスで表面プロファイルを読み込むときであっても、加速度情報を考慮することができる。再現モードでは、ペン型入力および/または出力デバイス1に加えられる加速度の変化に応じて、発生する触覚信号を変えてもよい。読み込みモードでは、プロファイルを読み込む過程で、上述したように加速度を考慮することによって、読み込み期間にペン型入力および/または出力デバイス1に加えられる加速度と関係なく、プロファイルを記憶することができる。
【0107】
また、例えばペン型入力および/または出力デバイス1の動作モードを切り替えるために、ユーザは入力および/または出力デバイス1の揺動、あるいは入力および/または出力デバイス1で表面を1回以上叩くことによって、制御命令を発信することができる。これらの動きは、いずれも加速度センサ29によって識別可能な特徴的な加速度パターンを有する。したがって、加速度センサ29を制御命令の識別に用いることができる。
【0108】
ここで示される実施例において、加速度センサ29は独立したセンサである。独立した加速度センサ29の代替または補充手段として、アクチュエータユニットの圧電アクチュエータ11を加速度センサとして用いてもよい。
【0109】
ペン型入力および/または出力デバイスに加速度が加えられることによって、圧電アクチュエータ11に力が印加されると、圧電アクチュエータ11に電圧が発生する。これによって、圧電アクチュエータ11が発生させた電圧に応じて加速度を確定することができる。したがって、圧電アクチュエータ11は加速度センサとして動作させることができる。動作モード「読み込みモード」で、圧電アクチュエータ11に発生した電圧を連続して確定する。圧電アクチュエータ11に接続された評価ユニット12は、ペン型入力および/または出力デバイス1を表面に沿って案内することによって発生する電圧と、上記動きの特徴的加速度を体現することによって発生する電圧とを区別することができる。「再現モード」においても、圧電アクチュエータ11に発生した電圧を連続してモニタリングすることによって、ペン型入力および/または出力デバイス1に加えられた加速度を確定してもよい。
【0110】
傾角センサ27、速度センサ28および加速度センサ29はそれぞれMEMS部品であってもよい。
【0111】
ここで述べたセンサ27、28、29を使用することによって、表面プロファイルを読み込む過程、および触覚信号をリアルに発生する過程において精度を向上させることができる。しかし、ここで述べたセンサ27、28、29を備えなくても、ペン型入力および/または出力デバイス1は機能が完全である。情報を収集して読み込み対象表面のプロファイルを作成するためには、圧電アクチュエータ11に発生する電圧に基づくだけでも十分である。
【0112】
ペン型入力および/または出力デバイス1の制御ユニット10および/または評価ユニット12は、制御信号、例えば起動信号または他の制御信号を識別するように構成されている。
【0113】
起動信号が識別された場合にのみ、例えば、圧電アクチュエータ11に電圧を印加することによってアクチュエータユニットを作動させてもよい。異なる手段によって当該起動信号を識別してもよい。例えば、制御ユニット10は、ユーザがいつペン型入力および/または出力デバイス1を手に取ったかを識別することができる。その場合、手に取ることが起動信号として解釈される。この起動信号が識別された場合にのみ、圧電アクチュエータ11に電圧を印加することによってアクチュエータユニットを作動させることができる。
【0114】
例えば、上記センサ27、28、29のうちの一つまたは複数の測定値に基づいて、手に取ったことを確定してもよい。例えば、ペン型入力および/または出力デバイス1を手に取ることは、特徴的な動き、さらに特徴的な加速度パターンと関連付けられている。加速度センサによる測定および/または圧電アクチュエータ11に発生する電圧に基づいて、この加速度パターンを識別してもよい。このため、ペン型入力および/または出力デバイス1の待機モードにおいても、圧電アクチュエータ11に発生する電圧をモニタリングしてもよい。
図6に示すように、圧電アクチュエータ11に発生した電圧を読み出し、この圧電アクチュエータを圧力センサとして用いることによって、手に取ることを識別してもよい。
【0115】
代替または補充の手段として、ペン型入力および/または出力デバイス1は距離センサ30を有してもよい。ペン型入力および/または出力デバイス1と現実または仮想表面との間の距離を確定する距離センサ30によって、起動信号を識別することができる。距離が所定の最小距離以下になった場合にのみ、この表面に近付ける操作が起動信号として解釈され、アクチュエータユニットに対する電圧の印加が開始される。
【0116】
距離センサ30はMEMS部品であってもよい。距離センサ30は、例えば光学測定または超音波測定に基づいて距離を確定することができる。対応するソフトウェアによって仮想表面との距離を確定してもよい。
【0117】
代替または補充の手段として、ペン型入力および/または出力デバイス1の表面との接触を起動信号として解釈してもよい。圧電アクチュエータ11における電圧の発生によって、表面に対する接触を識別してもよい。代替の手段として、距離センサ30が距離ゼロを測定することによって、表面に対する接触を識別してもよい。
【0118】
代替または補充の手段として、ペン型入力および/または出力デバイス1で表面を叩打することによって、起動信号を発信してもよい。その場合、圧電アクチュエータ11が受けた衝撃によって、高電圧を有する短い電圧パルスが発生する。この電圧が所定の閾値を超えれば、この衝撃が制御信号として識別され、デバイスが作動モードに移行する。
【0119】
同様に、ペン型入力および/または出力デバイス1で表面を叩打することによって、制御信号を発信してもよい。その場合、叩打操作回数によって異なる制御信号を発信してもよい。マウスでダブルクリックするように、制御ユニット10は、1回の叩打と2回の叩打を区別することができる。そのため、予め定められた期間内に、圧電アクチュエータ11に発生する電圧の閾値を超える頻度を確定する。例えば、閾値を1回超えれば、1回の叩打と見なすことができる。1回叩打することで、ペン型入力および/または出力デバイス1は第1動作モード、例えば再現モードまたは読み込みモードに移行してもよい。例えば、閾値を2回超えれば、二重叩打と見なすことができる。2回の叩打は、第2動作モード(例えば読み込みモードまたは再現モード)を選択するための制御信号と解釈してもよい。
【0120】
例えば、ペン型入力および/または出力デバイス1を表面に長押しすることによって、他の制御信号を発信してもよい。ここで、圧電アクチュエータ11に発生する電圧が閾値よりも高い時間幅を検出する。例えば、ペン型入力および/または出力デバイス1が、予め定められた時間幅、例えば数秒間表面に長押しされた場合、制御ユニット10はこれを制御信号として理解する。例えば、このような長押しによってデバイスを作動モードから待機モードに移行させてもよい。
【0121】
上述したように、入力および/または出力デバイス1は読み込みモードで動作することができ、このモードで、一つまたは複数の表面に沿ってデバイスを案内し、上記表面のプロファイルを記憶する。このモードでは、電圧を識別するためのセンサとして圧電アクチュエータ11を用いる。
【0122】
読み込みモードにおいても、圧電アクチュエータ11によって振動を発生させてもよい。例えば、ユーザが過度に力を入れてデバイスを読み込み対象表面へ押し付けていることが識別され、デバイスが損傷するおそれがある場合、読み込みモードであっても、圧電アクチュエータ11は振動を発生させてもよい。この場合に、アクチュエータ11は短く振動することによってユーザに警告し、デバイスを待機状態に切り替えるようユーザに指示することで、損傷を回避することができる。
【0123】
また、上記デバイスは再現モードに応用することもできる。このモードでは、アクチュエータユニットは振動を発生させて、ユーザに触感を伝える。再現モードにおいても、圧電アクチュエータ11をセンサとして用いることができる。特に、アクチュエータ11を、デバイスに印加する過大圧力を識別するためのセンサとして用いてもよい。再現モードでは、アクチュエータ11によって制御信号としての力強い押圧または特徴的な加速度パターンを識別してもよい。これによって、圧電アクチュエータ11をセンサとして用いるとともに、振動の発生に用いることが可能である。
【0124】
図5に示す実施例では、距離センサ30はプローブ素子5に配置されている。
図5に示す実施例では、傾角センサ27、速度センサ28および加速度センサ29がいずれも保持素子9に配置されている。センサ27、28、29および30のそれぞれは、ペン型入力および/または出力素子の他の任意の位置に配置されてもよい。
【0125】
図6は、さらに別の実施例に係るペン型入力および/または出力デバイス1を示す。ペン型入力および/または出力デバイス1は、デバイス内でデバイス1の表面の真下に配置された2つの圧電アクチュエータ11を有する。
図6の模式的な図示においては、簡潔に図示するために、デバイス1の外部に位置するように圧電アクチュエータ11を示したが、
図6は圧電アクチュエータ11の位置を簡潔に示すためのものであり、圧電アクチュエータ11は実際にはデバイス1の内部に配置されている。
【0126】
2つの圧電アクチュエータ11はそれぞれにペン型入力および/または出力デバイス1を掴むまたは把持するユーザの指100、101が通常位置する箇所に配置されている。
【0127】
この2つの圧電アクチュエータ11は圧力センサとして用いられる。圧電アクチュエータ11において指100、101で印加される圧力によって生じる電圧を読み出し、そうすることで、ペン型入力および/または出力デバイス1を手に取る操作および把持する操作を識別することができる。
【0128】
2つのアクチュエータ11はベース2の長手方向Lに沿って配置されている。ここで、長手方向Lは、ペン型デバイス1の第1末端3から第2末端4まで延在する。代替の手段として、長手方向Lに垂直に配置される圧電アクチュエータ11を、1つだけ設けてもよい。長手方向に延在する2つのアクチュエータを使用することで、指100、101による接触をより確実に識別することができる。アクチュエータ11を1つだけ使用する利点は省スペースにある。
【0129】
ペン型入力および/または出力デバイス1を、タッチ機能を有するスクリーンと組み合わせて使用すれば、スクリーンのタッチ機能によってデバイス1の第1末端3の位置を測定し、その情報をデバイスにワイヤレスで転送することができる。
【符号の説明】
【0130】
1 ペン型入力および/または出力デバイス
2 ベース
3 入力および/または出力デバイスの第1末端
4 入力および/または出力デバイスの第2末端
5 プローブ素子
6 圧電アクチュエータの第1末端
7 圧電アクチュエータの第2末端
8 プローブ先端部
9 保持素子
10 制御ユニット
11 圧電アクチュエータ
12 評価ユニット
13a、13b 機械的強化素子
14 薄肉部
16 自由領域
17a、17b 中間領域
18a、18b 末端領域
20a、20b 接続領域
21 内部電極
22 圧電層
23 外部電極
24 端面
25 上側
26 下側
27 傾角センサ
28 速度センサ
29 加速度センサ
30 距離センサ
100、101 指
L 長手方向
R1 第1方向
R2 第2方向
S 積層方向