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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】電気エネルギーを用いた不要植物の防除
(51)【国際特許分類】
   A01M 21/04 20060101AFI20230411BHJP
   E01H 11/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
A01M21/04
E01H11/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021502804
(86)(22)【出願日】2019-07-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-11
(86)【国際出願番号】 EP2019068652
(87)【国際公開番号】W WO2020016088
(87)【国際公開日】2020-01-23
【審査請求日】2022-07-08
(31)【優先権主張番号】18184470.5
(32)【優先日】2018-07-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19160443.8
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591063187
【氏名又は名称】バイエル アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Bayer Aktiengesellschaft
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ボルケニング
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-000089(JP,A)
【文献】特開2003-250421(JP,A)
【文献】特公昭49-023089(JP,B1)
【文献】米国特許第04177603(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0265946(US,A1)
【文献】特開平06-022673(JP,A)
【文献】特開2000-152742(JP,A)
【文献】国際公開第2018/050143(WO,A4)
【文献】特開2017-158533(JP,A)
【文献】特開平08-056548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 21/04
E01H 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
少なくとも1つの接触電極と、
少なくとも1つの集電電極と、
前記少なくとも1つの接触電極と前記少なくとも1つの集電電極との間に電圧を印加する少なくとも1つの電圧源と、
前記システムを移動の方向に移動させる手段とを備え、
前記少なくとも1つの接触電極は吊り下げ方式で取り付けられ、
前記移動の方向とは反対の方向に前記少なくとも1つの接触電極に作用する外力に対する前記少なくとも1つの接触電極の曲げ剛性が、前記移動の方向と交差する方向に前記少なくとも1つの接触電極に作用する外力に対する前記少なくとも1つの接触電極の曲げ剛性未満である、システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの接触電極は長さLを持ち、前記少なくとも1つの接触電極はコイルに巻かれ、前記少なくとも1つの接触電極の前記長さLを、前記コイルから巻き出すことによって延長することができ、前記コイルに巻き取ることによって短縮することができる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの接触電極は、長さL、幅B及び厚さDを持ち、前記長さLは重力の方向に沿って延び、前記厚さDは前記移動の方向に沿って延び、前記幅Bは前記移動の方向と交差する方向に延び、前記長さLは前記幅Bの少なくとも10倍であり、前記幅Bは前記厚さDの少なくとも3倍である、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
システムを用意するステップであって、前記システムは、
少なくとも1つの接触電極と、
少なくとも1つの集電電極と、
前記少なくとも1つの接触電極と前記少なくとも1つの集電電極との間に電圧を印加する少なくとも1つの電圧源と、
前記システムを移動の方向に移動させる手段とを備え、
前記少なくとも1つの接触電極は吊り下げ方式で取り付けられ、
前記移動の方向とは反対の方向に前記少なくとも1つの接触電極に作用する外力に対する前記少なくとも1つの接触電極の曲げ剛性が、前記移動の方向と交差する方向に前記少なくとも1つの接触電極に作用する外力に対する前記少なくとも1つの接触電極の曲げ剛性未満である、ステップと、
前記少なくとも1つの接触電極と前記少なくとも1つの集電電極との間に電圧を印加するステップと、
植物が位置する地表の領域にわたって前記システムを移動させるステップと、その過程で、
前記少なくとも1つの接触電極を少なくとも1つの植物の少なくとも一部分に接触させるステップと、
前記少なくとも1つの集電電極を
a)前記少なくとも1つの植物が生えている地面、及び/又は
b)前記少なくとも1つの植物の別の部分、及び/又は
c)近隣にある植物の少なくとも一部分、に接触させるステップであって、
前記少なくとも1つの接触電極と前記少なくとも1つの集電電極との間に電流が流れ、少なくとも、前記少なくとも1つの植物の一部に電流が流れて前記植物を弱体化させるか破壊する、ステップとを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不要植物を防除するための本発明に係るシステム、方法及びシステムの使用に関し、特に、電気エネルギーを用いた軌道設備において不要植物を防除するための本発明に係るシステム、方法及びシステムの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
軌道設備での植物の防除は安全上の理由で不可欠である。特に、バラスト道床を覆う植物を除去しかつ/又は植物のない状態にしておかれなければならない。バラスト道床は通常柔軟性があり、静的な荷重も動的な荷重も均一に基盤に伝えるのに有用である。個々の石の間の有限個の隙間は、走行する列車の巨大な重量と衝撃とを緩衝物のように緩和する。
【0003】
石によって保持されている植物及び腐植が時間とともに間隙を塞ぐ可能性があり、これにより、列車の安全が相当程度に脅かされる可能性がある。したがって、安全上の理由により、すべての種類の植物を軌道設備から遠ざけておかなければならない。
【0004】
軌道設備での植物の成長は通常除草剤を施用することによって抑制される。いわゆる散布列車とは、鉄道の区間の保線のための特別な列車である。この列車は、バラスト道床にわたって雑草が繁殖した状態にならないように除草剤を施用することを担う。
【0005】
除草剤の施用が意図しないものである、すなわち、たとえば耐性のために、意図する成果をもたらさない領域が存在する場合がある。軌道設備上の雑草の防除のための別の方法、たとえば電気エネルギーの使用が先行技術に記載されている(たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3を参照)。
【0006】
電気エネルギーを用いて不要植物を防除する場合、それぞれの植物を第1の電極(本説明では接触電極とも称する)に接触させる。通常、植物が生えている地面に第2の電極(本説明では集電電極とも称する)が接触している。電極間には電圧が印加される。植物が第1の電極に接触する場合、第1の電極から植物の少なくとも一部分を通って第2の電極に電流が流れる。流れることが可能な場合、電流によって根も包み込まれる。この電気ショックによって植物の弱体化や破壊がもたらされる。通常、電極は軌道に沿って移動する装置に取り付けられる。電極は、装置の移動中に軌道の領域で植物に接触するように配置される。接触の結果、電気エネルギーが植物に伝わることで、植物は無害になる。
【0007】
植物を効果的に防除して植物がさらに拡大するのを防ぐために、植物に注入される電気エネルギーの量を最小にすることが必要である。
【0008】
エネルギーの量は電圧及び/又は接触時間(植物が接触電極に接触している時間)を介して制御することができる。特に安全上の理由により電圧を任意に増大させることができないので、接触時間を任意に短縮することはできない。この結果、装置が軌道に沿って移動することができる速度が制限される。
【0009】
一方で、軌道区間で雑草防除が行われている期間中、通常、当該軌道区間は貨物輸送及び旅客輸送のために閉塞されるので、可能な範囲で最高の速度で防除することを目指すべきである。
【0010】
さらに別の課題は、一般的に軌道設備にある凹凸に関するものである。石、枕木及び軌道を含むバラスト道床並びに隣接するバラスト側面は凹凸の激しい地面を呈する。特許文献3には、電極をセンサ制御式高さ調節装置に取り付けるものが提案されている。しかし、このような高さの自動機械的適合方式では慣性が比較的大きくなり、速度に悪影響を及ぼす。
【0011】
バラストによって形成される粗く鋭利な表面によってさらに別の課題が生じる。この表面が電極に接触すると、激しい摩滅が生じる。特許文献3にて提案されているブラシ電極には高速時に非常に強い力が加わり、急激に摩損する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】欧州特許出願公開第0026248号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1256275号明細書
【文献】国際公開第2018/050143号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【文献】Fritzsche, G.ら(2005). TECHNISCHE MECHANIK, volume 25, issue 3-4, 190-207.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
説明されている先行技術に鑑みて、目的となる技術的課題は、防除中に高速を可能にし、摩滅の悪影響を最小にする不要植物の防除装置及び方法、特に軌道設備での不要植物の防除装置及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本課題は独立特許請求項の保護対象によって解決される。従属特許請求項及び本明細書の説明に好ましい実施形態が見出される。
【0016】
本発明の第1の対象は、システムであって、
少なくとも1つの接触電極と、
少なくとも1つの集電電極と、
少なくとも1つの接触電極と少なくとも1つの集電電極との間に電圧を印加する少なくとも1つの電圧源と、
システムを移動の方向に移動させる手段とを備え、
少なくとも1つの接触電極は吊り下げ方式で取り付けられ、
移動の方向とは反対の方向に少なくとも1つの接触電極に作用する外力に対する少なくとも1つの接触電極の曲げ剛性が、移動の方向と交差する方向に少なくとも1つの接触電極に作用する外力に対する少なくとも1つの接触電極の曲げ剛性未満である、システムである。
【0017】
本発明のさらに別の対象は、鉄道線路又は軌道設備上の植物を防除するための、本発明に係るシステムの使用である。
【0018】
本発明のさらなる対象は、
システムを用意するステップであって、システムは、
少なくとも1つの接触電極と、
少なくとも1つの集電電極と、
少なくとも1つの接触電極と少なくとも1つの集電電極との間に電圧を印加する少なくとも1つの電圧源と、
システムを移動の方向に移動させる手段とを備え、
少なくとも1つの接触電極は吊り下げ方式で取り付けられ、
移動の方向とは反対の方向に少なくとも1つの接触電極に作用する外力に対する少なくとも1つの接触電極の曲げ剛性が、移動の方向と交差する方向に少なくとも1つの接触電極に作用する外力に対する少なくとも1つの接触電極の曲げ剛性未満である、ステップと、
少なくとも1つの接触電極と少なくとも1つの集電電極との間に電圧を印加するステップと、
植物が位置する地表の領域にわたってシステムを移動させるステップと、その過程で、
少なくとも1つの接触電極を少なくとも1つの植物の少なくとも一部分に接触させるステップと、
少なくとも1つの集電電極を
a)少なくとも1つの植物が生えている地面、及び/又は
b)少なくとも1つの植物の別の部分、及び/又は
c)近隣にある植物の少なくとも一部分、に接触させるステップであって、
少なくとも1つの接触電極と少なくとも1つの集電電極との間に電流が流れ、少なくとも、少なくとも1つの植物の一部に電流が流れて少なくとも1つの植物を弱体化させるか破壊する、ステップとを含む方法である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は電極(接触電極及び/又は集電電極)を例として概略的に示す。図1(a)は電極の正面図を示し、図1(b)は電極の側面図を示す。
図2図2は電極(接触電極及び/又は集電電極)のさらに別の実施形態を例として概略的に示す。図1(a)は電極の側面図を示し図1(b)は電極の正面図を示す。図1(c)は電極のさらに別の側面図を示す。
図3図3は電極(接触電極及び/又は集電電極)の好ましい一実施形態を例として概略的に示す。
図4図4は複数の電極(場合によって接触電極かつ/又は場合によって集電電極)の好ましい配置の1つを例として概略的に示す。
図5図5は、接触電極が一方向に移動してその過程で植物に衝突する仕方の時系列を例として概略的に示す。
図6図6は本発明に係るシステムの一実施形態を例として概略的に示す。図6(a)はシステムの側面図を示す。図6(b)はシステムの正面図(システムが移動する方向(2)から見た図)を示す。
図7図7は本発明に係るシステムのさらに別の実施形態を示す。図7(a)はシステムの側面図を示す。図7(b)はシステムの正面図(システムが移動する方向(2)から見た図)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の対象(システム、使用、方法)を区別することなく、本発明を以下より詳細に説明する。さらに言えば、以下の説明では、説明が展開されている背景(システム、使用、方法)にかかわりなく、本発明のすべての対象に同様に適用可能であることを意図している。
【0021】
本説明又は特許請求項においてステップが所定の順序で記載されていても、このことは、本発明が記載されている順序に限定されることを必ずしも意味しない。さらに言えば、あるステップを別のステップに基づいて発現させることで、発現ステップがその後に実行されることが不可欠になる(ただし、これはいずれの場合でも明確になる)ことがない限りにおいて、ステップを異なる順序で実行するか、異なる順序でない場合、互いに並列に実行することもできると考えられる。したがって、記載されている順序は本発明の好ましい実施形態を表わす。
【0022】
少なくとも1つの接触電極と、少なくとも1つの集電電極と、接触電極と集電電極との間に電圧を印加する少なくとも1つの電圧源とが本発明を実施するのに必要である。
【0023】
さらに、防除しようとする少なくとも1つの植物が位置する地表(地面)の領域にわたって少なくとも1つの接触電極を移動させる手段が必要である。
【0024】
記載されている要素(接触電極、集電電極、電圧源、移動手段)は単一の装置の部分であることが可能である。本装置は鉄道車両であることが可能であるが、レール上又はレールに沿って移動させる手段(たとえば特許文献1の図1を参照)を有する路上車両(たとえばウニモグ)であることも可能である。
【0025】
記載されている要素(接触電極、集電電極、電圧源、移動手段)は、本発明に係る方法を実施するために組み合わされて1つにされる別体の物であることが可能である。特に、本発明に係るシステムを移動させる手段は自律的装置(車両)であることが可能である。たとえば、本発明に係るシステムが少なくとも1つの接触電極、少なくとも1つの集電電極及び少なくとも1つの電圧源を備える移設可能な装置(植物防除ユニット)を備えることが考えられる。鉄道車両又は、レール上若しくはレールに沿って移動することができ、かつ本発明に係るシステムの別体の部分である車両に植物防除ユニットを取り付けることができる。本発明に係るシステムが、本発明を実施するために鉄道車両又は、レール上若しくはレールに沿って移動することができる車両に個別に取り付けられる複数の別体の部分(要素)を備えることがさらに考えられる。電圧源はこのような要素であることが可能であり、1つの接触電極又は複数の接触電極がさらに別の要素であることが可能であり、1つの集電電極又は複数の集電電極がさらに別の要素であることが可能である。
【0026】
少なくとも1つの接触電極は、電気エネルギーを植物に注入することによって植物がさらに拡大するのを防止するために、植物に接触させる電極であり、植物は最良の場合には枯れ、そうでなくとも弱体化する。
【0027】
好ましくは複数の接触電極が存在する。接触電極の数は10~1000個であることが好ましい。
【0028】
本発明に係る少なくとも1つの接触電極は吊り下げ方式で取り付けられる。すなわち、接触電極の一部が本発明に係るシステムに取り付けられる(直接取り付けられるか、さらに別の要素として取り付けられるかのいずれか)一方で、接触電極の別の部分が重力のために地面の方向に引っ張られる。接触電極の長さに応じて、接触電極が地面よりも上で吊り下げられるか、接触電極の一部が地面に載置され、載置された先が端になる。
【0029】
少なくとも1つの接触電極を地面に触れるように実施することが考えられる一方で、少なくとも1つの接触電極を地面に触れないように実施することも考えられる。
【0030】
好ましくは、本発明に係る少なくとも1つの接触電極を、その長さを可変にすることができるように実施する。たとえば、接触電極をコイルに巻き、コイルから接触電極の部分を大きく巻き出したり小さく巻き出したりすることによって接触電極の長さを変更することができることが考えられる。接触電極の長さが可変であることにより、接触電極の下端(地面に面する)と地面との距離を変更することができたり(接触電極が地面に触れない場合)、地面に載りかかっている接触電極の領域の大きさを変更することができたり(接触電極が地面に触れる場合)する。さらに、接触電極の長さが可変であることにより、それぞれ、(植物の大きさに関して)どの植物が電極に囲まれて(及び/又は植物のどの部分が囲まれて)、どの植物が囲まれないのかを決めることができ、地面に面する接触電極の端が高すぎると、低い植物には届かない。
【0031】
好ましい一実施形態では、静止している装置(地表面に対して静止)の場合における、接触電極の(地面に面する)下端と、地面との距離が-0.5メートル~0.5メートルの範囲にある。この場合、負の距離(たとえば-0.5メートル)は、接触電極が地面に触れており、かつ地面に接触している接触電極の領域が対応する長さ(たとえば0.5メートルの長さ)を持つことを意味する。特に好ましくは、距離は-0.3メートル~0.05メートルである。
【0032】
少なくとも1つの接触電極を、可撓性を持つように実施する。このことは、接触電極の形状を外部から作用する力によって変更することができることを意味する。本体の可撓性をその剛性によって示すことができる。剛性により、外力又はモーメント(荷重に応じた曲げモーメント又はねじれモーメント)によって生じる弾性変形に対する本体の抗力が説明される。これらに応じて異なる種類の剛性がある。すなわち、伸び剛性、曲げ剛性、ねじり剛性である。剛性が大きいほど、本体の可撓性は小さい。
【0033】
ここでは、吊り下げ方式で実施される接触電極が地面に触れていると仮定する。このような接触電極を地面に対して移動の方向に移動させる場合、接触電極は地面を掃き越える。曲げ剛性が小さいほど、接触電極によって移動の方にもたらされる抗力が小さく、曲げ剛性が小さいほど、接触電極はより容易に障害物を逃れることができ、逃れることによって接触電極に作用する力が削減され、摩滅が抑えられる。
【0034】
このことは、装置の移動中に地面に触れずに植物/植物の部分にぶつかる接触電極にも同様に当てはまる。接触電極が大きい剛性を持つように実施される場合、植物にぶつかると、接触電極は移動の方に最大の抗力をもたらし、その結果、急激に摩損することになる。これに加えて、曲げ剛性が小さい(可撓性が大きい)ことには、本発明に係るシステムの移動中に接触電極が植物/植物の部分を掃き越え、その過程でより長い期間、植物に接触しているという効果がある。曲げ剛性が小さいことによって接触時間がこのように延びることは、その分、植物に注入されるエネルギーを減少させずに移動の速度を上げることができることを意味する。
【0035】
本発明に係る少なくとも1つの接触電極は、ある寸法の曲げ剛性の方が別の寸法の曲げ剛性よりも小さいことを特徴とする(曲げ剛性に関する異方性)。本発明の説明上、本説明では寸法及び方向が主に本発明に係るシステムの移動の方向に関して定められている。
【0036】
好ましくは、本発明に係るシステムの移動の方向とは反対の方向に接触電極に作用する力に対する曲げ剛性はDIN 53 121にしたがって15°、10mmで測定して10mNを超え、200kNmm2未満である(測定方法については、非特許文献1を参照)。様々な試験標本の曲げ剛性を定量するさらに別の測定方法については、たとえばDE19531858A1及びDE102010042443A1並びに本明細書で引用されている刊行物で説明されている。
【0037】
好ましい一実施形態では、接触電極は、移動の方向の方向に接触電極に作用する力に対する接触電極の曲げ剛性が移動の方向とは反対の方向に作用する力に対する接触電極の曲げ剛性に相当するように対称的に実施される。これにより、本発明に係るシステムをレール上で対向する2つの移動方向(前方及び後方)に動作させることができる。
【0038】
本発明に係る接触電極の曲げ剛性については、移動の方向とは反対の方向に接触電極に作用する力に対するものよりも、移動の方向と交差する方向に接触電極に作用する力に対するものの方が大きい。本願においては、用語「移動の方向と交差する」は、平面上の経路において、移動の方向と、移動の方向とは反対の方向とが、互いに対して180°で延び、いずれの場合においても重力に垂直に延びるように定義されている。このような場合において、「移動の方向と交差する」方向は、移動の方向に垂直に(移動の方向に対して90°又は270°の角度で)延び、重力に垂直に(重力に対して90°又は270°の角度で)延びる。移動の方向、重力の方向及び移動の方向と交差する方向はデカルト座標系を形成する。
【0039】
移動の方向と交差する方向(移動の方向に対して90°又は270°の角度の方向)の外力に対する曲げ剛性の増大には、カーブを通過するときに接触電極がその釣合い位置から遠心力により僅かにしか反れないという効果がある。これにより、カーブを通過するときに接触電極が軌道、本発明に係るシステムの部分及び/又は軌道設備に位置する可能性がある他の物(たとえばポール)に接触するリスクが抑えられる。したがって、本発明に係るシステムの移動中、吊り下げ方式で実施された接触電極は主に前後(移動の方向と、移動の方向とは反対の方向)に回動し、側方(移動の方向と交差する方向)には僅かな程度にしか回動しない。
【0040】
好ましくは、本発明に係るシステムの移動の方向と交差する方向に接触電極に作用する外力に対する少なくとも1つの接触電極の曲げ剛性は、本発明に係るシステムの移動の方向とは反対の方向に接触電極に作用する外力に対する接触電極の曲げ剛性よりも少なくとも10倍大きい。特に好ましくは少なくとも20倍大きく、さらにより好ましくは少なくとも30倍大きく、さらにより好ましくは少なくとも40倍大きく、きわめて特に好ましくは少なくとも50倍大きい。
【0041】
好ましくは、本発明に係るシステムの移動の方向と交差する方向に接触電極に作用する外力に対する少なくとも1つの接触電極の曲げ剛性は200kNmm2を超える(測定方法については、非特許文献1を参照)。
【0042】
好ましくは、曲げ剛性は接触電極の形状を通じて少なくとも比例関係を保ちつつ決められる。接触電極は帯状であることが好ましい。帯は、長さL、幅B及び厚さDを持つ平行六面体の物か、ほぼ平行六面体の物であり、長さLは幅Bの所定倍であり、幅Bは厚さDを超える。本発明に係る接触電極の本例では、長さは重力の方向に沿って延び(少なくとも、地面に触れていない自由状態で吊り下げられた接触電極の場合)、厚さは移動の方向に沿って延び、幅は移動の方向と交差する方向に延びる。本発明に係る接触電極の本例では、長さLは幅Bの少なくとも10倍であり、幅Bは厚さDの少なくとも3倍である。
【0043】
好ましい一実施形態では、少なくとも1つの接触電極は、長さL、幅B及び厚さDを持つ物であり、L≧10・BかつB≧3・D、かつ幅の方向の力に対して接触電極によってもたらされる抗力が、厚さの方向の力に対して接触電極によってもたらされる抗力よりも少なくとも10倍大きく、好ましくは少なくとも20倍大きく、さらにより好ましくは少なくとも30倍大きく、さらにより好ましくは少なくとも40倍大きく、最も好ましくは少なくとも50倍大きい。
【0044】
好ましい一実施形態では、接触電極は、編まれかつ/又はよられた金属ワイヤで構成されている本体を備える。
【0045】
さらに好ましい実施形態では、接触電極は、金属板で構成されている本体を備える。
【0046】
編まれかつ/又はよられた金属ワイヤと1つ以上の金属板との組合せも考えられる。
【0047】
好ましくは、複数の接触電極が(カーテン状の場合のように)(移動の方向と交差する方向に、又は移動の方向に対して斜めに)隣り合って(薄板のように)配置される。この場合、接触電極が互いに離間(等距離又は異なる距離で離間)したり、互いの端が同一面内にあったり、互いに部分的に重なったりするように接触電極を配置することができる。様々に組み合わせた形状も考えられる。用語「移動の方向に対して斜めに」は、移動の方向にも移動の方向と交差する方向にも一致しないすべての方向を含む。好ましくは、「移動の方向に対して斜めの」方向は、移動の方向と移動の方向と交差する方向とで張られる平面内にある。
【0048】
隣り合って配置される複数の接触電極の長さは同じであることが可能であるが、異なることも可能である。
【0049】
隣り合って配置される複数の接触電極は移動の方向と交差する方向及び/若しくは反対の方向並びに/又は移動の方向に同じ曲げ剛性を持つことができるが、曲げ剛性は異なることも可能である。
【0050】
隣り合って配置される複数の接触電極は同じ厚さを持つことができるが、厚さは異なることも可能である。
【0051】
隣り合って配置される複数の接触電極は同じ幅を持つことができるが、幅は異なることも可能である。
【0052】
隣り合って配置される複数の接触電極は同じ形状を持つことができるが、形状は異なることも可能である。
【0053】
隣り合って配置される複数の接触電極は同じ材料を含むことができるが、材料は異なることも可能である。
【0054】
好ましい一実施形態では、複数の接触電極が(移動の方向と交差する方向に、又は移動の方向に対して斜めに)隣り合って薄板のように配置され、接触電極の各々は、静止している装置(地表面に対して静止)の場合における、接触電極の(地面に面する)下端と、地面との距離が-0.5メートル~0.5メートルの範囲にあるように決められている長さを持つ。この場合、負の距離(たとえば-0.5メートル)は、接触電極が地面に触れており、かつ地面に接触している接触電極の領域が対応する長さ(たとえば0.5メートルの長さ)を持つことを意味する。特に好ましくは、距離は-0.3メートル~0.05メートルである。
【0055】
好ましい一実施形態では、(移動の方向と交差する方向に、又は移動の方向に対して斜めに)隣り合って薄板のように配置される接触電極の複数の列(少なくとも2列、好ましくは3~20列)が、移動の方向に互いに離間するように配置される。この場合、本発明に係る装置が軌道設備上の植物の所定区域にわたって通過するときに、前列の接触電極が植物にまさに接触しそこなった時点で後列の接触電極が植物に接触するように接触電極を構成することができる。このようにして接触電極が移動の方向に並び、その結果、個々の接触電極と植物との連続的な接触が起こることによって総接触時間(すなわち電気エネルギーの累積入力値)が延長される。好ましい一実施形態では、接触電極の列が互いに平行に配置される。
【0056】
本発明に係る接触電極が用いられる場合、時間とともに接触電極が摩損するのが通常である。使用時には時間の経過とともに接触電極の長さが減少するのが通常である。接触電極の材料が摩滅のために消耗すると考えられ、接触電極の一部が引き裂かれると考えられる。
【0057】
本発明の特に好ましい一実施形態では、接触電極の長さが減少した場合に接触電極材を送り出す供給装置が存在する。たとえば、接触電極をコイルに巻くことが考えられる。接触電極の長さが摩損のために減少していた場合、元の長さに戻るまで、巻きつけられた接触電極の一部をコイルによって巻き出す。
【0058】
摩損を補償するための接触電極材の送り出しを、手動で行うことができる(本発明に係るシステムのユーザが行う)。たとえば、本発明に係るシステムの使用の後に個々の接触電極の長さをチェックすることが考えられる。当該接触電極の長さが摩損のために減少していた場合、長さが元の長さに相当する長さに戻るまで、接触電極材を送り出す。接触電極の下部には摩滅のために大きな応力がかかり、機能が制限されたり短期間で脱落する恐れがあったりするため、接触電極の下部を分離することも考えられる。下部の分離後、接触電極材を送り出すことによって元の長さにセットし直す。
【0059】
好ましい一実施形態では、接触電極材の送り出しを自動的に行う。センサが個々の接触電極の長さを検出し、摩損のために長さが減少していた場合には接触電極材を送り出す。センサがこのような摩損を検出した場合、接触電極の摩損した下部を自動的に分離することも考えられる。
【0060】
適切なセンサには、たとえば光学センサ(たとえば1つ以上のカメラ又はライトカーテン(light barrier))が含まれる。断裂した場合に減少する接触電極の重量を測定するセンサも考えられる。接触電極を流れる電流を測定することも考えられる。測定された電流で接触電極の長さの変化が判明する場合もある。
【0061】
基本的には、少なくとも1つの接触電極とまったく同じように、また、本記載で説明されているのとまったく同じように少なくとも1つの集電電極を構成することができる。同様に、複数の接触電極とまったく同じように、また、本記載で説明されているのとまったく同じように複数の集電電極を構成することができる。本記載で1つ以上の接触電極に関して説明されているすべてが1つ以上の集電電極にも考えられ、適用可能である。
【0062】
好ましくは、少なくとも1つの集電電極が地面又はレールのうちの1つ又は両方のレールに接触する。
【0063】
好ましい一実施形態では、複数の集電電極が(移動の方向と交差する方向に、又は移動の方向に対して斜めに)隣り合って配置され、集電電極が装置に吊り下げ方式で取り付けられ、かつ/又は集電電極が、移動の方向と交差する方向の曲げ剛性よりも小さい曲げ剛性を移動の方向とは反対の方向に持ち、かつ/又は集電電極が地面に触れるように構成され、かつ/又は集電電極の長さが可変にされかつ/若しくは集電電極材を送り出す/送り出すことができる供給装置が存在する。
【0064】
好ましくは、少なくとも1つの集電電極が移動の方向に少なくとも1つの接触電極の後ろに配置される。
【0065】
少なくとも1つの集電電極及び/又は少なくとも1つの接触電極の各々には、電気絶縁体として用いられて、少なくとも1つの集電電極と少なくとも1つの接触電極とが互いに触れる場合の短絡を防止することを意図している被覆を部分的に設けることができる。このような被覆は、少なくとも1つの集電電極及び/又は少なくとも1つの接触電極の上部領域から少なくとも1つの集電電極及び/又は少なくとも1つの接触電極の中央領域又は下部領域まで延びることが好ましく、少なくとも1つの集電電極及び/又は少なくとも1つの接触電極の最下領域には変わらず被覆がないままである。
【0066】
さらに好ましい実施形態では、少なくとも1つの集電電極が1つのレール又は両方のレールに接触している。たとえば、集電電極をレール上で動作する車輪として実施することが考えられる。この場合、集電電極材の摩損がきわめて小さい。この場合、電流は、接触電極から、接触電極に接触している植物の一部を介し、地面の領域を介してレールに流れ、そこから集電電極に流れる。
【0067】
電圧源は発電機によって駆動される電圧源であることが可能である。充電式バッテリの使用も考えられる。好ましい一実施形態では、電圧は架空線から得られる。この場合、集電器は架空線に良好な状態で接触していることが可能である本発明に係るシステムの一部であり、その後の箇所で、少なくとも1つの接触電極と少なくとも1つの集電電極との間で電圧が形成される。
【0068】
少なくとも1つの接触電極と少なくとも1つの集電電極との間の電圧は直流電圧であったり交流電圧であったりすることが可能である。交流電圧が好ましい。
【0069】
好ましい一実施形態では、気化物状、液滴状及び/又は1以上の噴射物状に1以上の液を施用するノズルが本発明に係るシステムの前方領域に存在する。好ましくは、このような液は、電気伝導率の上昇をもたらす物質を添加することができる水である。作物保護剤(たとえば除草剤)の添加も考えられる。
【0070】
好ましくは、少なくとも1つの接触電極と少なくとも1つの集電電極との間に流れる電流が定量される。システムの移動中に少なくとも1つの接触電極に接触する植物が多いのにもかかわらず電流が過小である場合には、植物が位置する地表の領域及び/又は植物が乾燥過多であることが考えられる。電流の強さが極端に小さい場合において、軌道設備の軌道区間に液を施用する際に、本発明に係るシステムの移動中に、対応する軌道領域に少なくとも1つの接触電極が到達する前に施用する制御装置を設けることが考えられる。軌道区間の湿潤の程度を別のセンサ、たとえば光学センサによって定量することも考えられる。
【0071】
好ましくは、装置の後方領域に消火装置を取り付ける。植物を電気エネルギーを用いて防除する場合、スパークが起こる場合があり、これにより、軌道設備が乾燥状態にある場合に発火する場合がある。スパーク及び/又は火炎を検出して、対応する信号を制御ユニットに渡すセンサを装置に取り付けることが好ましい。制御ユニットは、対応する信号が渡された場合に消火装置に消火剤を施用させるように構成されている。適切なセンサには、特に、スパーク及び/又は火炎から電磁輻射線が輻射されるのを検出する光学センサ(たとえばカメラ)が含まれる。
【0072】
好ましくは、軌道設備の写真を撮影して評価ユニットに渡す1つ以上のカメラを装置の前方領域に取り付ける。評価ユニットは、写真を解析して軌道設備上の植物及び/又は植物類の認識/識別を行うように構成されている。写真中の植物の大きさを定量することが好ましい。解析の結果は制御ユニットに送り込まれる。制御ユニットによって接触電極及び/又は集電電極の長さを植物の大きさに適合させることが考えられる。好ましくは、軌道設備上で植物が識別された場合、かつ/又は軌道設備で植物の量の下限が識別された場合、かつ/又は大きさの下限を持つ植物が識別された場合、かつ/又は既定の植物類が識別された場合に、少なくとも1つの接触電極と少なくとも1つの集電電極との間に電圧を印加する。識別されたものに電気パラメータ(特に電圧及び/又は周波数)を適合させることも考えられる。
【0073】
好ましくは、前方に位置する軌道設備の構成及び/又は形状を検出して、制御ユニットに信号を送るセンサが装置の前方領域に存在する。制御ユニットが少なくとも1つの接触電極及び/若しくは少なくとも1つの集電電極の長さ並びに/又は電圧パラメータ(特に電圧及び/又は周波数)を、前方に位置する軌道設備の構成及び/若しくは形状に適合させる。
【0074】
本発明の好ましい実施形態は以下である。
1.装置であって、
装置を移動の方向に移動させる手段と、
少なくとも1つの接触電極と、
少なくとも1つの集電電極と、
少なくとも1つの接触電極と少なくとも1つの集電電極との間に電圧を印加する少なくとも1つの電圧源とを備え、
少なくとも1つの接触電極は装置に吊り下げ方式で取り付けられ、
少なくとも1つの接触電極は、移動の方向と交差する方向の曲げ剛性よりも小さい曲げ剛性を移動の方向とは反対の方向に持つ、装置。
【0075】
2.装置は鉄道車両、又はレール上若しくはレールに沿って移動させる手段を有する車両である、実施形態1に係る装置。
【0076】
3.植物防除ユニット及び鉄道車両、又はレール上若しくはレールに沿って移動することができる車両を備え、植物防除ユニットは、鉄道車両/車両に着脱可能に接続される、実施形態1に係る装置。
【0077】
4.複数の接触電極を備え、好ましくは10~1000個の接触電極を備える、実施形態1から3のいずれかに係る装置。
【0078】
5.少なくとも1つの接触電極の長さを可変にすることができる、実施形態1から4のいずれかに係る装置。
【0079】
6.少なくとも1つの接触電極はコイルに巻かれ、少なくとも1つの接触電極の長さを、巻き出すことによって延長することができ、巻き取ることによって短縮することができる、実施形態1から5のいずれかに係る装置。
【0080】
7.少なくとも1つの接触電極は、長さL、幅B及び厚さDを持ち、長さLは重力の方向に沿って延び、厚さDは移動の方向に沿って延び、幅Bは移動の方向と交差する方向に延び、長さLは幅Bの少なくとも10倍であり、幅Bは厚さDの少なくとも3倍である、実施形態1から6のいずれかに係る装置。
【0081】
8.少なくとも1つの接触電極は、編まれかつ/又はよられた金属ワイヤで構成されている本体を備える、実施形態1から7のいずれかに係る装置。
【0082】
9.複数の接触電極が移動の方向と交差する方向に、又は移動の方向に対して斜めに薄板のように隣り合って配置される、実施形態1から8のいずれかに係る装置。
【0083】
10.少なくとも1つの接触電極は、静止している装置の場合における、接触電極の、地面に面する下端と、地面との距離が-0.5メートル~0.5メートルの範囲にあるように決められている長さLを持ち、負の距離は、接触電極が地面に触れており、かつ地面に接触している接触電極の領域が対応する長さを持つことを意味する、実施形態1から9のいずれかに係る装置。
【0084】
11.移動の方向と交差する方向に、又は移動の方向に対して斜めに隣り合って薄板のように配置される接触電極の複数の列が、移動の方向に互いに離間するように配置される、実施形態1から10のいずれかに係る装置。
【0085】
12.接触電極の長さが減少した場合に接触電極材を送り出す供給装置を備える、実施形態1から11のいずれかに係る装置。
【0086】
13.摩損した接触電極材を分離する分離装置を備える、実施形態1から12のいずれかに係る装置。
【0087】
14.移動の方向と交差する方向に、又は移動の方向に対して斜めに隣り合って配置される複数の集電電極を備え、集電電極は装置に吊り下げ方式で取り付けられかつ/又は集電電極は、移動の方向と交差する方向の曲げ剛性よりも小さい曲げ剛性を移動の方向とは反対の方向に持ちかつ/又は集電電極は地面に触れるように構成されかつ/又は集電電極の長さを可変にすることができかつ/又は摩損した集電電極材を送り出す供給装置が存在し、かつ/又は摩損した集電電極材を分離する分離装置が存在する、実施形態1から13のいずれかに係る装置。
【0088】
15.少なくとも1つの集電電極は移動の方向に少なくとも1つの集電電極の後ろに配置される、実施形態1から14のいずれかに係る装置。
【0089】
16.少なくとも1つの集電電極は1つのレール又は両方のレールに接触している、実施形態1から15のいずれかに係る装置。
【0090】
17.電圧源は発電機及び/又は充電式バッテリである、実施形態1から16のいずれかに係る装置。
【0091】
18.電圧は架空線から得られる、実施形態1から17のいずれかに係る装置。
【0092】
19.装置の後方領域にある消火装置と、スパーク及び/又は火炎を検出する1つ以上のセンサと、1つ以上のセンサによってスパーク及び/又は火炎が検出される場合に消火装置に消火剤を放出させる制御ユニットとを備える、実施形態1から18のいずれかに係る装置。
【0093】
20.少なくとも1つの接触電極及び/又は少なくとも1つの集電電極の長さ及び/又は摩損の程度を測定する1つ以上のセンサを備える、実施形態1から19のいずれかに係る装置。
【0094】
21.前方に位置する軌道設備の構成及び/又は形状を測定する1つ以上のセンサと、少なくとも1つの接触電極及び/若しくは少なくとも1つの集電電極の長さ並びに/又は電圧パラメータを、前方に位置する軌道設備の構成及び/若しくは形状に適合させるように構成されている制御ユニットとを備える、実施形態1から20のいずれかに係る装置。
【0095】
22.鉄道線路上の雑草を防除するための、実施形態1から21のいずれかに係る装置の使用。
【0096】
23.装置を用意するステップであって、装置は、
装置を移動の方向に移動させる手段と、
少なくとも1つの接触電極と、
少なくとも1つの集電電極と、
少なくとも1つの接触電極と少なくとも1つの集電電極との間に電圧を印加する少なくとも1つの電圧源とを備え、
少なくとも1つの接触電極は装置に吊り下げ方式で取り付けられ、
少なくとも1つの接触電極は、移動の方向と交差する方向の曲げ剛性よりも小さい曲げ剛性を移動の方向とは反対の方向に持ち。
少なくとも1つの接触電極と少なくとも1つの集電電極との間に電圧を印加するステップと、
植物が位置する地表の領域にわたって装置を移動させるステップと、その過程で、
少なくとも1つの接触電極を少なくとも1つの植物に接触させるステップであって、接触電極と少なくとも1つの集電電極との間に電流が流れ、植物に少なくとも部分的に電流が流れる、ステップとを含む方法。
【0097】
24.用意される装置は、請求項1から22のいずれか一項に記載の装置である、実施形態23に係る方法。
【0098】
25.少なくとも1つの接触電極と少なくとも1つの集電電極との間に流れる電流の強さを測定するステップと、
変更された電流の強さが所望の範囲に対応することが実現されるように、少なくとも1つの接触電極又は少なくとも1つの集電電極の長さを変更するステップと
をさらに含む、実施形態23又は24に係る方法。
【0099】
26.軌道区間の湿潤の程度を測定するステップと、
湿潤の程度が所望の範囲未満である場合に、軌道区間に液を施用するステップと
をさらに含む、実施形態23から25のいずれかに係る方法。
【0100】
27.システムであって、
少なくとも1つの接触電極と、
少なくとも1つの集電電極と、
少なくとも1つの接触電極と少なくとも1つの集電電極との間に電圧を印加する少なくとも1つの電圧源と、
システムを移動の方向に移動させる手段とを備え、
少なくとも1つの接触電極の上部がシステムに取り付けられる一方で、下部が重力のために地面の方向に引っ張られることを利用する吊り下げ方式で少なくとも1つの接触電極はシステムに取り付けられ、
少なくとも1つの接触電極は、長さL、幅B及び厚さDを持ち、
長さLは重力の方向に沿って延び、厚さは移動の方向に沿って延び、幅は移動の方向と交差する方向に延び、
長さLは幅Bの少なくとも10倍であり、幅Bは厚さDの少なくとも3倍である、システム。
【0101】
28.少なくとも1つの接触電極の長さは可変である、実施形態27に係るシステム。
【0102】
29.少なくとも1つの接触電極の下端と地面との距離が可変である、実施形態27に係るシステム。
【0103】
30.少なくとも1つの接触電極の下部は、
地面に触れ、又は
その端が地面から所定距離にあり、地面に触れず、地面からの下部の領域の距離がゼロメートルを超えかつ0.5メートル未満である、実施形態27に係るシステム。
【0104】
31.システムであって、
隣り合って配置される複数の接触電極と、
少なくとも1つの集電電極と、
少なくとも1つの接触電極と少なくとも1つの集電電極との間に電圧を印加する少なくとも1つの電圧源と、
システムを移動の方向に移動させる手段とを備え、
接触電極はシステムに吊り下げ方式で取り付けられ、
接触電極は可撓性を持つ、システム。
【0105】
32.隣り合って配置される少なくとも2列の接触電極を備え、列は、移動の方向に互いに離間するように配置される、実施形態27から31のいずれかに係るシステム。
【0106】
33.消火装置と、制御ユニットと、少なくとも1つのセンサとを備え、消火装置は移動の方向に接触電極の後ろに配置され、少なくとも1つのセンサは、スパーク及び/又は火炎を検出し、スパーク信号及び/又は火炎信号を制御ユニットに伝えるように構成され、制御ユニットは、スパーク信号及び/又は火炎信号が伝えられた場合に消火装置に消火剤を放出させるように構成されている、実施形態27から32のいずれかに係るシステム。
【0107】
34.制御ユニットと、評価ユニットと、少なくとも1つのカメラとを備え、少なくとも1つのカメラは、移動の方向にシステムの前方に位置する領域の写真を撮影し、写真を評価ユニットに渡し、評価ユニットは、写真の特性パラメータを決め、特性パラメータを制御ユニットに伝えるように構成され、制御ユニットは、特性パラメータを受け取り、特性パラメータに制御パラメータを適合させるように構成されている、実施形態27から32のいずれかに係るシステム。
【0108】
35.特性パラメータは少なくとも1つの植物の高さであり、制御パラメータは少なくとも1つの接触電極の長さ、又は少なくとも1つの接触電極の下端と地面との距離である、実施形態34に係るシステム。
【0109】
36.特性パラメータは植物類であり、制御パラメータは電圧及び/又は交流電圧周波数である、実施形態34に係るシステム。
【0110】
37.特性パラメータは地面の種類であり、制御パラメータは電圧及び/又は交流電圧周波数である、実施形態34に係るシステム。
【0111】
38.特性パラメータは地面の湿潤の程度であり、制御パラメータは電圧及び/又は交流電圧周波数及び/又は領域に施用される液の量である、実施形態34に係るシステム。
【0112】
39.少なくとも1つの接触電極は地面に触れず、少なくとも1つの集電電極は地面に触れ、電気絶縁体として機能する被覆が少なくとも1つの集電電極の周囲に取り付けられ、被覆は少なくとも、少なくとも1つの接触電極の長さに対応する長さにわたって延び、地面に接触している少なくとも1つの集電電極の下部領域には被覆がない、実施形態27から38のいずれかに係るシステム。
【0113】
以下、図面を参照してより詳細に本発明を説明するが、本発明が図面に示されている特徴及び特徴の組合せに限定されることは一切意図されていない。
【0114】
図1は電極(接触電極及び/又は集電電極)を例として概略的に示す。図1(a)は電極の正面図を示し、図1(b)は電極の側面図を示す。電極(1)は帯状である。電極(1)は、長さL、幅B及び厚さDを持つ。
【0115】
電極の長さLは幅Bよりも所定倍大きく、幅Bは厚さDよりも所定倍大きい。この形状には、電極によって外力に対してもたらされる抗力の大きさが、電極に力が作用する方向に依存するという効果がある。力が電極に幅の方向(2-1)に作用する場合、この力に対して電極によってもたらされる抗力は、厚さの方向(2-2)に電極に作用する力に対して電極によってもたらされる抗力を超える。
【0116】
電極(1)は対称的に実施される。対称性には2つの鏡面が存在する。すなわち、長さLと幅Bとによって第1の鏡面が張られ、長さLと厚さDとによって第2の鏡面が張られる。第1の鏡面に対する対称性には、方向(2-2)に電極に作用する力に対する電極(1)の曲げ剛性が、方向(2-2)とは反対の方向に電極に作用する同等の力に対する電極(1)の曲げ剛性とまったく同じ大きさの曲げ剛性であるという効果がある。第2の鏡面に対する対称性には、方向(2-1)に電極に作用する力に対する電極(1)の曲げ剛性が、方向(2-1)とは反対の方向に電極に作用する同等の力に対する電極(1)の曲げ剛性とまったく同じ大きさの曲げ剛性であるという効果がある。
【0117】
図2は電極(接触電極及び/又は集電電極)のさらに別の実施形態を例として概略的に示す。図1(a)は電極の側面図を示し図1(b)は電極の正面図を示す。図1(c)は電極のさらに別の側面図を示す。
【0118】
電極(1)はコイル芯(4)にコイル(3)の形状に巻かれる。コイルから電極材を巻き出すことによって電極の長さを延長することができる。電極材をコイルに巻き取ることによって電極の長さを短縮することができる。摩損として失われた電極材を、コイルから電極材を巻き出した分だけ入れ替えることができる。図2を作成するのに用いられた作図プログラムが螺旋を生成することができなかったため、コイル巻回体が同心円のように見える点に留意するべきである。とはいえ、コイルの正しい外観は当業者には明らかである。図2は、その他の図も同様であるが、本発明を説明するのに用いられるのにすぎず、設計を目的とする技術的な図面を構成しない。
【0119】
図3は電極(接触電極及び/又は集電電極)の好ましい一実施形態を例として概略的に示す。電極(1)は金属ワイヤを編んだものとして実施される。
【0120】
図4は複数の電極(場合によって接触電極かつ/又は場合によって集電電極)の好ましい配置の1つを例として概略的に示す。電極は隣り合って等間隔に薄板のように配置される。電極はコイル芯(4)に巻かれており、互いとは無関係に巻き取り及び巻き出しを行うことができる。
【0121】
図5は、接触電極が一方向に移動してその過程で植物に衝突する仕方の時系列を例として概略的に示す。
【0122】
図5は5つの独立した図(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)を備える。個々の図は、時系列(a)→(b)→(c)→(d)→(e)を表わすべきものである。ある個別図から次の個別図に進む場合に接触電極(1)が方向(2-2)に移動し、その過程で、静止している(移動しない)植物(5)に衝突する。図5(a)では接触電極(1)が未だ植物(5)から所定距離にあり、植物(5)に向かって移動している。図5(b)では接触電極(1)が植物(5)に衝突する。接触電極(1)が方向(2-2)に移動している一方で、植物(5)が移動しないことから、移動の方向とは反対の方向(2-1)に接触電極(1)に外力が作用する。接触電極には、この力に対する抗力をもたらす特有の曲げ剛性がある。その一方で、この曲げ剛性は、接触電極(1)が植物(5)に接触する際に変形する程度に小さい。図5(c)では接触電極(1)が方向(2-2)にさらに幾分移動している。接触電極(1)の変形が増大している。図5(d)では接触電極(1)が方向(2-2)にさらに幾分移動している。接触電極(1)の変形がさらに増大している。接触電極(1)が植物(5)を掃き越える。図5(e)では、接触電極(1)が方向(2-2)にさらに幾分移動している。接触電極(1)は植物(5)にもはや触れていない。接触電極(1)がその元の形状(図5(a)で持っていた形状)を取り戻している。図5(b)から図5(d)までの期間、接触電極が植物(5)に接触しており、エネルギーを植物(5)に電流として注入することができる。
【0123】
図6は本発明に係るシステムの一実施形態を例として概略的に示す。図6(a)はシステムの側面図を示す。図6(b)はシステムの正面図(システムが移動する方向(2)から見た図)を示す。
【0124】
システムは、車輪(9)によって移動の方向(2)である少なくとも一方向に地面(10)の上を移動することができる車両(8)として実施される。
【0125】
車両(8)には複数の接触電極(1)が取り付けられている。接触電極(1)は車両(8)に吊り下げ方式で取り付けられている。接触電極(1)は隣り合って等間隔に薄板状のように配置されている。接触電極(1)は移動の方向(2)と交差する方向(90°又は270°の角度の方向)に配置されている。接触電極(1)は、所定の長さ、幅及び厚さを持つ。長さは地球の重力の方向に延びる。厚さは移動の方向の方向(2)に延びる。幅は移動の方向(2)と交差する方向(90°又は270°の角度の方向)に延びる。接触電極(1)はその曲げ剛性に関して異方性を持つ。移動の方向(2)とは反対の方向に接触電極(1)に作用する外力(2-2-2)に対する接触電極(1)の曲げ剛性は、移動の方向(2)と交差する方向に接触電極(1)に作用する外力(2-1-2)に対する接触電極(1)の曲げ剛性未満である。移動の方向の方向(2)に接触電極(1)に作用する力(2-2-1)に対する曲げ剛性が、移動の方向(2)とは反対の方向に接触電極(1)に作用する力(2-2-2)に対する曲げ剛性とまったく同じ大きさの曲げ剛性であるように対称的に接触電極(1)が実施され、同様に、力(2-1-1)に対する曲げ剛性が、力(2-1-2)に対する曲げ剛性とまったく同じ大きさの曲げ剛性である。
【0126】
異方性を持つ曲げ剛性には、接触電極が移動の方向と交差する方向よりも容易に移動の方向と、それとは反対の方向とに変形することができるという効果がある。
【0127】
接触電極(1)は地面(10)に触れない。接触電極(1)の下端と地面(10)との間が離れている。
【0128】
車両(8)は集電電極(6)をさらに有する。集電電極(6)は移動の方向(2)に接触電極(1)の後ろに配置されている。少なくとも1つの集電電極(6)が地面(10)に触れる。車輪(9)がさらに別の集電電極として機能することが考えられる。
【0129】
車両(8)は電圧源(7)をさらに有する。電圧源(7)は接触電極(1)と少なくとも1つの集電電極(6)との双方に電線(11)を介して接続される。電圧源(7)を用いて接触電極(1)と少なくとも1つの集電電極(6)との間に電圧を印加することができる。
【0130】
図7は本発明に係るシステムのさらに別の実施形態を示す。図7(a)はシステムの側面図を示す。図7(b)はシステムの正面図(システムが移動する方向(2)から見た図)を示す。
【0131】
システムは車両(8)として実施されている。車両(8)は図6に示されている車両に対応するが、本図において、2列の接触電極(1)(1-1,1-2)が互いに平行になって一方が移動の方向(2)に他方の後ろにある状態で車両(8)に取り付けられ、さらに、2列の集電電極(6-1,6-2)が互いに平行になって一方が移動の方向(2)に他方の後ろにある状態で車両(8)に取り付けられ、上部において電気絶縁体として機能する被覆が集電電極(6)に設けられている一方で、集電電極(6)が地面(10)に接触する下部で絶縁されないという違いがある。接触電極が集電電極の方向に後方に跳ね飛ばされて、集電電極に接触する場合、絶縁によって短絡が防止される。
【0132】
車輪(9)がさらに別の集電電極として機能することが考えられる。
【符号の説明】
【0133】
1 電極、接触電極
1-1 接触電極
1-2 接触電極
2 移動の方向
2-1 方向
2-2 方向
2-1-1 力
2-1-2 力
2-2-1 力
2-2-2 力
3 コイル
4 コイル芯
5 植物
6 集電電極
6-1 集電電極
6-2 集電電極
7 電圧源
8 車両
9 車輪
10 地面
11 電線
図1
図2
図3
図4
図5(a)】
図5(b)】
図5(c)】
図5(d)】
図5(e)】
図6(a)】
図6(b)】
図7(a)】
図7(b)】