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特許7260668第1のマップを生成するための方法および装置
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  • 特許-第1のマップを生成するための方法および装置 図1
  • 特許-第1のマップを生成するための方法および装置 図2a
  • 特許-第1のマップを生成するための方法および装置 図2b
  • 特許-第1のマップを生成するための方法および装置 図2c
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】第1のマップを生成するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/30 20060101AFI20230411BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
G01C21/30
G09B29/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021564962
(86)(22)【出願日】2020-04-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-29
(86)【国際出願番号】 EP2020059356
(87)【国際公開番号】W WO2020224878
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】102019206336.5
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100147991
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100201743
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 和真
(72)【発明者】
【氏名】アベリング,ペーター・クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ガオ,ミーン
(72)【発明者】
【氏名】ラスプ,フィリップ
【審査官】吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-049810(JP,A)
【文献】特表2003-509710(JP,A)
【文献】特許第3143927(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 - 99/00
G01C 21/00 - 21/36
B60W 10/00 - 60/00
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のマップを生成するための方法(300)であって、
少なくとも1つの所定の経路(100)を含む第2のマップを提供するステップ(310)と、
1つ以上の車両から受信された複数の軌道(200)の最適化をSLAM法を用いて行うことにより事前に生成された最適化軌道と少なくとも1つの他の対象物を表すマップデータを受信するステップ(320)と、
前記マップデータに基づいて前記第1のマップを生成するステップ(330)とを備え、
前記第1のマップを生成する当該ステップ(330)において、前記少なくとも1つの所定の経路(100)と前記最適化軌道との重ね合わせに基づく位置合わせが行われ、続いて前記位置合わせに基づいて前記少なくとも1つの他の対象物の座標位置の調整が行われる、方法(300)。
【請求項2】
交通経路の車線ごとに前記最適化軌道が1つ生成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法(300)。
【請求項3】
記第2のマップは少なくとも2つの所定の経路(100)を含み、前記位置合わせは、前記少なくとも2つの所定の経路(100)と、前記最適化軌道との重ね合わせに基づものであることを特徴とする、請求項1に記載の方法(300)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法(300)の全てのステップを実行するように構成されている装置、特に演算装置。
【請求項5】
コンピュータによって実行されると、前記コンピュータに請求項1から3のいずれか一項に記載の方法(300)を実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項6】
請求項5に記載のコンピュータプログラムが格納された、機械読み取り可能な記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、第2のマップを提供するステップと、マップデータを受信するステップと、第2のマップを用いてマップデータに基づいて第1のマップを生成するステップと、を含む、第1のマップを生成するための方法に関する。
【発明の概要】
【0002】
本発明に係る第1のマップを生成するための方法は、少なくとも1つの所定の経路を含む第2のマップを提供するステップと、少なくとも1つの軌道および少なくとも1つの他の対象物を表すマップデータを受信するステップと、マップデータに基づいて第1のマップを生成するステップとを備え、少なくとも1つの所定の経路と少なくとも1つの軌道との重ね合わせに基づく位置合わせ(アラインメント)が行われ、続いてその位置合わせに基づいて少なくとも1つの他の対象物の位置変更(変位)が行われるというものである。
【0003】
第1のマップおよび/または第2のマップとは、例えば、記憶媒体に(マップ)データ値の形態で存在するデジタルマップであると理解できる。このマップは、例えば、1つまたは複数のマップ層が含まれるように構成されており、マップ層は、例えば鳥瞰図(道路、建物、風景などの経路や位置)を示す。これは、例えば、ナビゲーションシステムのマップに相当する。さらなるマップ層は、例えばレーダマップを含み、レーダマップでマッピングされた周辺環境特徴はレーダシグネチャ(レーダ信号)と共に格納される。さらなるマップ層は、例えばライダー(Lidar)マップを含み、ライダーマップによってマッピングされた周辺環境特徴は、ライダー点群および/またはライダー対象物と共に格納されている。さらなるマップ層は、例えばビデオマップを含み、ビデオマップによってマッピングされた周辺環境特徴は、ビデオセンサによって検知可能な対象物と共に格納される。
【0004】
一実施形態では、追加的または代替的に、第1のマップおよび/または第2のマップは、例えば車両を自動運転するのに適したマップであると理解できる。車両の自動運転とは、SAE(Society of Automotive Engineers)レベル1~5のいずれかに相当して、部分自動化、高度自動化、または完全自動化された方法で車両が運転されることであると理解できる(規格SAEJ3016参照)。ここで、マップを用いて車両を運転することは、例えば、車両の軌道を決定すること、および/または、横方向および/または縦方向の自動制御によってその軌道を走行すること、および/または、安全に関連する走行機能を実行することなどを含む。
【0005】
第2のマップを提供するとは、例えば、この第2のマップを記憶媒体または外部情報源からデータ値の形態で(ダウン)ロードして、本方法を実行するためにこの第2のマップを使用できるようにすることであると理解できる。
【0006】
所定の経路とは、例えば、第2のマップに含まれる車線内や車線に沿った特定の線であると理解できる。一実施形態では、第2のマップは、例えば複数車線の道路を含み、各車線は、固有の経路と、(例えば一定の幅および/または変動する幅の形態の)固有の広がりを有する。ここで、所定の経路は、例えばその車線の方向に中心を走る(つまり、車線の左端および右端から等距離またはそれと同等の距離を有する)線に対応する。一実施形態では、所定の経路とは、例えば経路に沿った正確な位置、または車線内もしくは車線外の所定の位置にある複数の点の連結であると理解できる。一実施形態では、所定の経路とは、例えば、車線の内側または外側の経路に沿った特定の位置に正確に配置された幾何学的な線であると理解できる。
【0007】
マップデータとは、例えば、少なくとも1つの軌道と少なくとも1つの他の対象物を表すデータであると理解できる。ここで、このデータは、例えば、少なくとも1つの車両により提供されるものであり、当該車両は、その軌道を走行すると同時にその車両に含まれる周辺環境センサシステムによって少なくとも1つの他の対象物を検出した車両をいう。
【0008】
一実施形態では、例えば、車両は軌道を走行し、この軌道は同時に位置特定装置によって、例えば、GNSS座標でのGPS位置として検出され保存される。さらに、車両は、周辺環境センサシステムによって車両の周辺環境を把握している。周辺環境センサシステムとは、少なくとも1つのビデオセンサ、および/または少なくとも1つのレーダセンサ、および/または少なくとも1つのライダー(Lidar)センサ、および/または少なくとも1つの超音波センサ、および/または周辺環境データ値の形態で車両の周辺環境を検出するように構成された少なくとも1つのさらなるセンサであると理解できる。
【0009】
車両の周辺環境とは、例えば、車両の周辺環境センサシステムによって検出可能な少なくとも1つの領域であると理解できる。また、周辺環境とは、道路区間、および/またはより広い領域(地区、地域など)であるとも理解できる。少なくとも1つの他の対象物とは、例えば、構造物(建物、トンネル、橋など)、および/または交通標識(信号機、標識など)、および/またはインフラ設備(ガードレール、路面標示など)、および/または景観特徴(山、湖、川、森林など)、および/またはその他の周辺環境特徴であると理解できる。
【0010】
ここで、少なくとも1つの他の対象物が検出されるが、これは、車両に対して少なくとも1つの他の対象物の相対的な距離および/または方向によって、例えば車両の位置を起点としてベクトルで決定される位置を有し、マップデータとして車両に保存されるものである。
【0011】
マップデータの受信とは、例えば、このマップデータを提供する車両から直接的にマップデータを受信すること、または、車両から直接的もしくは間接的にマップデータを事前に受信した別の演算装置から、送信ユニットおよび/または受信ユニットを用いてマップデータを受信することであると理解できる。1つの実施形態では、マップデータは事前に受信され、本方法を実行するために、例えば記憶媒体からロードされる。
【0012】
本発明に係る方法は、有利には、マップデータの信頼性と精度を向上させるという課題を解決する。このことは、特に自動運転のための第1のマップの使用に対して非常に重要であるが、これは、この種の第1のマップに依存した、より信頼性の高い、またはより安全な車両の運転がそれにより保証できるためである。このことは、自動運転の受け入れに対しても非常に重要であるが、これは、乗員と車両の安全の保証をそれによりさらに高め得るためである。本発明に係る方法は、請求された特徴によってこの課題を解決する。
【0013】
好ましくは、前記少なくとも1つの軌道は、SLAM(Simultaneous Localisation and Mapping)法を用いて複数の軌道から事前に算出される最適化軌道を表す。
【0014】
複数の軌道とは、例えば、複数の走行における複数の軌道であると理解でき、各軌道は、比較可能な走行に関し、例えば、同一区間に沿った交通経路の特定の車線に関する。これらの個々の軌道は、続いてSLAM(Simultaneous Localisation and Mapping)法を用いて互いに関連付けられ、続いて共に最適化される。これにより、有利には、最適化軌道は個々の軌道よりもより正確なものになる。これにより、例えば個々の軌道の誤った情報(例えば、これらの軌道の個々の位置座標に関連するもの)を回避または低減することができる。
【0015】
好ましくは、マップデータは少なくとも2つの軌道を含み、第2のマップは少なくとも2つの所定の経路を含み、位置合わせ(アラインメント)は、少なくとも2つの所定の経路と少なくとも2つの軌道との重ね合わせに基づいており、特に各所定の経路および各軌道は、交通経路の車線にそれぞれ対応付けられている。
【0016】
これには、位置合わせをより正確に定めることができ、ひいては第1のマップの品質または精度を向上できるという利点がある。
【0017】
本発明に係る装置、特に演算装置は、方法請求項の1つに係る方法の全てのステップを実行するように構成されている。
【0018】
一実施形態では、装置は、演算装置(プロセッサ、メインメモリ、ハードディスク)と、方法請求項の1つに係る方法を実行するための適切なソフトウェア(コンピュータプログラム)とを含む。一実施形態では、装置は、特に車両、および/または外部サーバ、および/またはクラウドと、(マップ)データ値を交換するように構成された送信ユニットおよび/または受信ユニットを含む。別の実施形態では、装置は、サーバまたはクラウド(すなわち、サーバまたは演算装置の組合せ)として構成されている。
【0019】
さらに、コンピュータによって実行されると、コンピュータに方法請求項のうち一項に記載の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムが請求される。
【0020】
さらに、コンピュータプログラムが格納された機械読み取り可能な記憶媒体が請求される。
【0021】
本発明の有利な改善形態は、従属請求項において記載され、明細書において実施されている。
【0022】
本発明の実施例を図示し、以下の説明において詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】フローチャートの形態の、本発明に係る方法の一実施例である。
図2図2a~図2cは、本発明に係る方法の実施例である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、フローチャートの形態の、本発明に係る方法の一実施例である。ここで、以下、特に、例えばマップデータに基づいた第1のマップの生成330がどのように行われるかを説明する。
【0025】
ステップ301では、方法300が開始する。
【0026】
ステップ310では、第2のマップが提供され、第2のマップは、少なくとも1つの所定の経路(100)を含む。
【0027】
考えられる一実施形態では、第2のマップは、例えば、道路区間に関する意味的な情報(車線間の接続性、車線の分類など)を含む、いわゆる計画マップである。第1のマップは、例えばいわゆる位置特定マップであり、このマップを用いて車両が高精度に位置特定できるように構成されている。高精度な位置特定とは、例えば、数cm未満(最大±10cm)の精度で行われるGNSS座標での位置決定であると理解できる。これは、例えば、方法300の実行後に第1および第2のマップが互いに位置合わせされている場合、両方のマップを使用して、(自動)車両の位置を特定することと、計画マップ内の位置決定をすることが同時に可能であるという利点がある。
【0028】
ステップ320では、マップデータが受信され、マップデータは、少なくとも1つの軌道(200)と少なくとも1つの他の対象物とを表すものである。
【0029】
第1のマップを生成できるように、少なくとも1つの軌道(200)が必要であり、この目的のために、当該軌道(200)は、例えば車両から受信されるものである。考えられる一実施形態では、例えば、複数の軌道(200)が受信され、これら複数の軌道(200)は、例えば一群の車両(Fahrzeugflotte)によって走行されるものであり、本発明に係る方法300の実施のために、保存され、本発明に係る装置に直接的または間接的に伝送される。続いて、当該複数の軌道(200)に基づいて、特にSLAM法を用いて複数の軌道(200)の最適化が行われ、これにより、最適化軌道が生成される。考えられる一実施形態では、例えば、交通経路の車線ごとに1つの最適化軌道が生成される。
【0030】
ステップ330では、マップデータに基づいて第1のマップが生成される。ここで、少なくとも1つの所定の経路(100)と、少なくとも1つの軌道(200)との重ね合わせに基づく位置合わせ(アラインメント)が行われる。続いて、その位置合わせに基づいて、少なくとも1つの他の対象物の位置変更(変位)が実行される。これは、例えばベクトル加算によって、少なくとも1つの他の対象物の座標を調整することであると理解できる。
【0031】
上記調整および位置変更は、最終的に、第1のマップが第2のマップと位置合わせされるように第1のマップを生成する役目を果たす。その位置合わせは、例えば、第1のマップおよび第2のマップの内容が結合されるべきなので行われるものである。別の実施形態では、その位置合わせは、マップデータの存在し得る誤った部分データセットを修正できるようにするために行われるものである。
【0032】
ステップ340では、方法300が終了する。
【0033】
図2は、少なくとも1つ(ここでは例示的に3つ)の軌道(200)[図2a]を、少なくとも1つ(ここでも例示的に3つ)の所定の経路(100)[図2b]と位置合わせする例を示すものである。これは、例えば、少なくとも1つの軌道(200)を少なくとも1つの所定の経路(100)[図2c]と最適に位置合わせする適切なアルゴリズムまたは適切なソフトウェア(例えば数学的最適化手法に基づくもの)を用いて行われる。この位置合わせは、近似的なものである。というのも、例えば、少なくとも1つの軌道(200)と少なくとも1つの所定の経路(100)とが完全に同一ではないか、または完全に同一の経路を有していないからである。その位置合わせに基づいて、位置変更、すなわち、例えば第1のマップと第2のマップとの相互調整を行うことができる。以下では、例えば両方のマップを併用することができる。
図1
図2a
図2b
図2c