(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-10
(45)【発行日】2023-04-18
(54)【発明の名称】ピロロベンゾジアゼピン-抗体複合体
(51)【国際特許分類】
A61K 47/68 20170101AFI20230411BHJP
A61K 31/551 20060101ALI20230411BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20230411BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230411BHJP
【FI】
A61K47/68
A61K31/551
A61K39/395 T ZNA
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2021572333
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2020065506
(87)【国際公開番号】W WO2020245283
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-11-08
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517182365
【氏名又は名称】アーデーセー セラピューティクス ソシエテ アノニム
(73)【特許権者】
【識別番号】506042265
【氏名又は名称】メディミューン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ファン ベルケル,パトリシウス ヘンドリクス コルネリス
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/146199(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/193105(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/68
A61P 35/00
A61K 45/00
A61K 39/395
A61K 31/551
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式ConjE:
【化1】
(式中、
Abは、腎臓関連抗原1(KAAG1)に結合する抗体であり;
前記抗体は、アミノ酸配列が配列番号5で表されるVH CDR1、アミノ酸配列が配列番号6で表されるVH CDR2、及びアミノ酸配列が配列番号7で表されるVH CDR3を含むVHドメインを含み、かつ、
薬物(D)の前記抗体(Ab)への薬物積載量(p)が1~8である)
で表される、複合体。
【請求項2】
前記抗体は、配列番号1で表される配列があるVHドメインを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
前記抗体は、アミノ酸配列が配列番号8で表されるVL CDR1、アミノ酸配列が配列番号9で表されるVL CDR2、及びアミノ酸配列が配列番号10で表されるVL CDR3を含むVLドメインを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
前記抗体は配列が配列番号2で表されるVLドメインを含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項5】
前記抗体は配列が配列番号3又は11で表される重鎖を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項6】
前記抗体は、配列が配列番号4、配列番号14、又は配列番号16で表される軽鎖を含む、請求項1に記載の複合体。
【請求項7】
前記抗体は完全な抗体である、請求項1に記載の複合体。
【請求項8】
前記抗体は、ヒト化、脱免疫化、又は再表面化されている、請求項1に記載の複合体。
【請求項9】
前記抗体は、完全ヒトモノクローナルIgG1抗体である、請求項1に記載の複合体。
【請求項10】
前記抗体は、IgG1、κである、請求項9に記載の複合体。
【請求項11】
薬物(D)の前記抗体(Ab)への薬物積載量(p)は1、2、3、又は4である、請求項1に記載の複合体。
【請求項12】
請求項1に記載の複合体と、薬学的に許容される希釈剤、担体又は賦形剤とを含む、組成物。
【請求項13】
抗体-薬物複合体化合物の混合物を含み、ここで、前記抗体-薬物複合体化合物の混合物中の抗体当たりの平均薬物積載量(p)は、約2~約5である、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
さらに、治療有効量の化学治療薬を含む、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
有効量の請求項1に記載の複合体を含む、腎臓関連抗原1(KAAG1)が過剰発現している患者のがんの治療のための医薬組成物。
【請求項16】
さらに、化学療法薬を、複合体と併用することを含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
がんは、卵巣がん、乳がん、前立腺がん、又は腎臓がんである、請求項15に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2019年6月7日に提出された英国出願番号GB1908128.0号に基づく優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、抗体に対するリンカーの形態において不安定なC2又はN10保護基があるピロロベンゾジアゼピン(PBD)に関する。
【背景技術】
【0003】
ピロロベンゾジアゼピン(PBD)の中には、DNAの特定配列を認識して結合する機能があるものがあり、好適な配列はPuGPuである。最初のPBD抗腫瘍抗生物質であるアントラマイシンは、1965に発見された(非特許文献1及び2)。それ以来、天然に存在するPBDがいくつか報告されており、多様な類似体を合成する10を超える合成経路が開発されている(非特許文献3及び4)。このファミリーに属するものとして、アベイマイシン(非特許文献5)、チカマイシン(非特許文献6),DC-81(特許文献1、非特許文献7及び8)、マゼトラマイシン(非特許文献9)、ネオトラマイシンA及びB(非特許文献10)、ポロトラマイシン(非特許文献11)、プロトラカルシン(非特許文献12及び13)、シバノマイシン(DC-102)(非特許文献14及び15)、シビロマイシン(非特許文献16)、並びにトママイシン(非特許文献17)があげられる。PBDは、以下の一般式:
【0004】
【0005】
PBDは、その芳香環A及びピロロ環Cともに、置換基の個数、種類、及び位置が異なるとともに、環Cの飽和度も異なる。環Bでは、N10-C11の位置が、イミン(N=C)、カルビノールアミン(NH-CH(OH))、又はカルビノールアミンメチルエーテル(NH-CH(OMe))ramのいずれかであり、ここがDNAアルキル化の原因となる求電子中心である。公知の天然産物は全て、キラルなC11a位に(S)型配置があり、このため、PBDを環Cから環Aに向かってみると、右巻きである。これにより、PBDでは、B型DNAの副溝との螺旋性一致(isohelicity)(イソらせん性)に適した三次元的形状が得られ、結合部位にぴったりフィットするようになる(非特許文献18及び19)。副溝で付加体を形成するPBDの機能により、PBDはDNAプロセシングに干渉することができ、したがって、PBDを抗腫瘍剤として用いることができる。
【0006】
特に有利なピロロベンゾジアゼピン化合物は、非特許文献20にて化合物1として、非特許文献21にて化合物4aとして記載されている。この化合物はSG2000としても知られており、以下に示す:
【0007】
【化2】
特許文献2には、細胞結合剤、例えば抗体に連結するためのリンカー基がある二量体PBD化合物の調製が記載されている。当該リンカーは、二量体の単量体PBDユニットを連結するブリッジ中に存在する。
【0008】
本発明者らは、特許文献3及び4に、抗体等の細胞結合剤に連結するためのリンカー基がある二量体PBD化合物を記載した。当該化合物中のリンカーは、C2位置を介してPBDコアに連結され、一般に、リンカー基上の酵素の作用により切断される。特許文献5では、当該化合物中のリンカーは、PBDコア上の利用可能なN10位置の1つに連結し、一般に、リンカー基に対する酵素の作用によって切断される。
【0009】
抗体-薬物複合体
抗体療法は、がん、免疫学的及び血管新生疾患がある被験体の標的治療として確立されている(非特許文献22)。抗体-薬物複合体(ADC)、すなわち免疫複合体を用いると、細胞毒性剤又は細胞増殖抑制剤、すなわち、がんの治療において腫瘍細胞を殺傷又は阻害する薬剤を局所的に送達し、薬物部分の腫瘍への送達及びそこでの細胞内蓄積を標的とするものの、当該非連結型薬物の全身投与は、正常細胞では許容できないレベルの毒性を生じうる(非特許文献23~31)。したがって、最小の毒性での最大効能が求められる。
【0010】
ADCを設計改良する研究は、モノクローナル抗体(mAb)の選択性、並びに薬物作用機序、薬物結合、薬物/抗体比(積載量)、及び薬物放出特性に集中されてきた(非特許文献32~39;特許文献6~8)。薬物部分は、チューブリン結合、DNA結合、プロテアソーム及び/又はトポイソメラーゼ阻害を含むメカニズムにより、それらの細胞毒性及び細胞増殖抑制効果を付与することができる。細胞毒性薬物の中には、大きな抗体又はタンパク質結合リガンドと結合すると、不活性になったり、活性が低下したりするものがある。
本発明者らは、特定のPBD二量体抗体複合体を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】日本特許第58-180487号
【文献】国際公開第2007/085930号パンフレット
【文献】国際公開第2011/130613号パンフレット
【文献】国際公開第2011/130616号パンフレット
【文献】国際公開第2011/130598号パンフレット
【文献】米国第特許第7521541号
【文献】米国第特許第7723485号
【文献】国際公開第2009/052249号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【文献】Leimgruber,et al.,J.AM.Chem.Soc.,87,5793-5795(1965)
【文献】Leimgruber,et al.,J.AM.Chem.Soc.,87,5791-5793(1965)
【文献】Thurston,et al.,Chem.Rev.1994,433-465(1994)
【文献】Antonow, D. and Thurston, D.E., Chem. Rev.111(4),2815-2864
【文献】Hochlowski,et al.,J.Antibiotics,40,145-148(1987)
【文献】Konishi,et al.,J.Antibiotics,37,200-206(1984)
【文献】Thurston,et al.,Chem.Brit.,26,767-772(1990)
【文献】Bose,et al.,Tetrahedron,48,751-758(1992)
【文献】Kuminoto,et al.,J.Antibiotics,33,665-667(1980)
【文献】Takeuchi,et al.,J.Antibiotics,29,93-96(1976)
【文献】Tsunakawa,et al.,J.Antibiotics,41,1366-1373(1988)
【文献】Shimizu,et al,J.Antibiotics,29,2492-2503(1982)
【文献】Langley and Thurston,J.Org.Chem.,52,91-97(1987)
【文献】Hara,et al.,J.Antibiotics,41,702-704(1988)
【文献】Itoh,et al.,J.Antibiotics,41,1281-1284(1988)
【文献】Leber,et al.,J.AM.Chem.Soc.,110,2992-2993(1988)
【文献】Arima,et al.,J.Antibiotics,25,437-444(1972)
【文献】Kohn,In Antibiotics III.Springer-Verlag,New York,pp.3-11(1975)
【文献】Hurley and Needham-VanDevanter,Acc.Chem.Res.,19,230-237(1986)
【文献】Gregson,et al.,Chem. Commun. 1999, 797-798
【文献】Gregson,et al.,J. Med. Chem. 2001, 44, 1161-1174
【文献】Carter, P. (2006) Nature Reviews Immunology 6:343-357
【文献】Xie et al(2006)Expert.Opin.Biol.Ther.6(3):281-291;
【文献】Kovtun et al(2006)Cancer Res.66(6):3214-3121;
【文献】Law et al(2006)Cancer Res.66(4):2328-2337;
【文献】Wu et al(2005)Nature Biotech.23(9):1137-1145;
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【文献】Hamann P.(2005)Expert Opin.Ther.Patents15(9):1087-1103;
【文献】Payne,G.(2003)Cancer Cell3:207-212;
【文献】Trail et al(2003)Cancer Immunol.Immunother.52:328-337;
【文献】Syrigos and Epenetos(1999)Anticancer Research19:605-614
【文献】Junutula, et al.,2008b Nature Biotech.,26(8):925-932
【文献】Dornan et al (2009) Blood 114(13):2721-2729
【文献】McDonagh (2006) Protein Eng. Design & Sel. 19(7): 299-307
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【文献】Sanderson et al (2005) Clin. Cancer Res. 11:843-852
【文献】Jeffrey et al (2005) J. Med. Chem. 48:1344-1358
【文献】Hamblett et al (2004) Clin. Cancer Res. 10:7063-7070
【発明の概要】
【0013】
要約
本開示の第1の態様は、 式L-(DL)pの複合体であり、ここで、DLは以下の式I又はII:
【0014】
【化3】
(式中、
Lは、KAAG1に連結する抗体(Ab)である抗体であり;
C2’とC3’の間が二重結合である場合、R
12は、以下の:
(ia)場合によっては、ハロ、ニトロ、シアノ、エーテル、カルボキシ、エステル、C
1-7アルキル、C
3-7ヘテロシクリル及びビス-オキシ-C
1-3アルキレンを含む群から選択される1又はそれ以上の置換基により置換される、C
5-10アリール基;
(ib)C
1-5飽和脂肪族アルキル;
(ic)C
3-6飽和シクロアルキル;
(id)以下の:
【0015】
【化4】
であって、ここで、R
21、R
22及びR
23は各々、独立して、H、C
1-3飽和アルキル、C
2-3アルケニル、C
2-3アルキニル及びシクロプロピルから選択され、ここで、R
12基の炭素原子の総数は5個以下であり;
(ie)以下の:
【0016】
【化5】
であって、ここで、R
25a及びR
25bの一方がHであり、他方が、ハロ、メチル、メトキシ、ピリジル、及びチオフェニルから選択される基によって、場合によっては置換されるフェニルであり;かつ、
(if)以下の:
【0017】
【化6】
であって、ここで、R
24が、H;C
1-3飽和アルキル;C
2-3アルケニル;C
2-3アルキニル;シクロプロピル;ハロ、メチル、メトキシ、ピリジル、及びチオフェニルから選択される基によって、場合によっては置換されるフェニル;及びチオフェニルから選択され;
からなる群から選択され;
C2’とC3’の間に単結合がある場合、R
12は、以下の:
【0018】
【化7】
であって、ここで、R
26a及びR
26bは、独立して、H、F、C
1-4飽和アルキル、C
2-3アルケニルから選択され、このアルキル及びアルケニル基は、場合によっては、C
1-4アルキルアミド及びC
1-4アルキルエステルから選択される基により置換され;又は、R
26a及びR
26bの一方がHである場合、他方は、ニトリル及びC
1-4アルキルエステルから選択され;
R
6及びR
9は、独立して、H、R、OH、OR、SH、SR、NH
2、NHR、NRR’、ニトロ、Me
3Sn、及びハロから選択され;
ここで、R及びR’は、独立して、場合によっては、置換された、C
1-12アルキル、C
3-20ヘテロシクリル、及びC
5-20アリール基から独立して選択され;
R
7は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH
2、NHR、NRR’、ニトロ、Me
3Sn、及びハロから選択され;
R’’は、C
3-12アルキレン基であり、鎖は、1又はそれ以上のヘテロ原子、例えばO、S、NR
N2(ここで、R
N2は、H又はC
1-4アルキルである)、及び/又は芳香環、例えばベンゼン又はピリジンによって中断されてよく;
Y、Y’はO、S、NHから選択され;
R
6’、R
7’、R
9’は各々、R
6、R
7、R
9と同じ基から選択され;
上記[式I]において、
R
L1’は抗体(Ab)に連結するリンカーであり;
R
11aは、OH、OR
A(式中、R
AはC
1-4アルキルである)、及びSOzM(式中、zは2又は3であり、Mは薬学的に許容される一価のカチオンである)から選択され;
R
20とR
21は、結合している窒素原子と炭素原子の間に二重結合を形成するか、又は;
R
20は、H及びR
Cから選択され、ここでR
Cはキャッピング基であり;
R
21は、OH、OR
A、SOzMから選択され;
C
2とC
3との間に二重結合がある場合、R
2は、以下の:
(ia)場合によっては、ハロ、ニトロ、シアノ、エーテル、カルボキシ、エステル、C
1-7アルキル、C
3-7ヘテロシクリル及びビス-オキシ-C
1-3アルキレンを含む群から選択される1又はそれ以上の置換基により置換されてよい、C
5-10アリール基;
(ib)C
1-5飽和脂肪族アルキル;
(c)C
3-6飽和シクロアルキル;
(id)以下の:
【0019】
【化8】
において、R
11、R
12及びR
13は各々、独立して、H、C
1-3飽和アルキル、C
2-3アルケニル、C
2-3アルキニル、及びシクロプロピルから選択され、ここで、R
2基中の炭素原子の総数は5個以下であり;
(ie)以下の
【0020】
【化9】
において、R
15a及びR
15bの一方がHであり、他方が、場合によっては、ハロ、メチル、メトキシで置換されてよいフェニル;ピリジル;及びチオフェニルから選択される基から選択され;かつ、
(if)以下の
【0021】
【化10】
において、R
14が、H;C
1-3飽和アルキル;C
2-3アルケニル;C
2-3アルキニル;シクロプロピル;場合によっては、ハロ、メチル、メトキシで選択される基によって置換され、フェニル;ピリジル;及びチオフェニルから選択される;
からなる群から選択され:
C
2とC
3の間に単結合がある場合、
R
2は、以下の
【0022】
【化11】
であって、ここで、R
16a及びR
16bは、独立して、H、F、C
1-4飽和アルキル、C
2-3アルケニルから選択され、このアルキル及びアルケニル基は、場合によっては、C
1-4アルキルアミド及びC
1-4アルキルエステルから選択される基によって置換されてよく;又は、R
16a及びR
16bの一方がHである場合、他方は、ニトリル及びC
1-4アルキルエステルから選択され;
上記[式II]の場合は、
R
22は、以下の式IIIa、式IIIb又は式IIIc:
(a)式IIIaは以下の、
【0023】
【化12】
であって、ここで、AはC
5-7アリール基であり、以下の:
(i)Q
1は単結合であり、Q
2は単結合及び-Z-(CH
2)
n-から選択され、ここで、Zは、単結合、O、S及びNHから選択され、nは1~3であり;又は
(ii)Q
1は-CH=CH-であり、Q
2は単結合であり;のいずれかであり;
(b)式IIIbは以下の、
【0024】
【化13】
であって、ここで、R
C1、R
C2及びR
C3は、独立して、H及び非置換のC
1-2アルキルから選択され;
(c)式IIIcは以下の、
【0025】
【化14】
であって、ここで、QはO-R
L2’、S-R
L2’及びNR
N-R
L2’から選択され、R
Nは、H、メチル及びエチルから選択される;であり、
Xは、O-R
L2’、S-R
L2’、CO
2-R
L2’、CO-R
L2’、NH-C(=O)-R
L2’、NHNH-R
L2’、CONHNH-R
L2’、
【0026】
【化15】
、NR
NR
L2’を含む群から選択され、ここで、R
Nは、H及びC
1-4アルキルを含む群から選択され;
R
L2’は、抗体(Ab)に連結するリンカーであり;
R
10とR
11はともに、結合している窒素原子と炭素原子との間に二重結合を形成するか;又は
R
10はHであり、R
11はOH、OR
A及びSOzMから選択され;
R
30及びR
31は、それらが結合している窒素原子と炭素原子との間に二重結合を形成するか、又は;
R
30はHであり、R
31はOH、OR
A及びSOzMから選択される)
で表される、複合体である。
【0027】
ある実施形態では、当該複合体は、以下の:
【0028】
【0029】
【0030】
他の実施形態では、複合体が式ConjA、ConjB、ConjC、ConjD及びConjEの複合体から選択されることが好ましい場合がある。
【0031】
式Iの添え字pは1~20の整数である。従って、複合体は、リンカーユニットによって少なくとも1つの薬物ユニットに共有結合的に連結された以下に定義される抗体(Ab)を含む。以下により詳細に記載されるリガンドユニットは、標的部分に結合する標的化剤である。従って、本開示はまた、例えば、様々ながん及び自己免疫疾患の治療方法を提供する。薬物積載量は、抗体あたりの薬物分子数pで表される。薬物積載量は、1抗体あたり1~20薬物単位(DL)である。組成物については、pは、組成物中の複合体の平均薬物積載量を表し、pは1~20の範囲である。
【0032】
本開示の第2の態様は、以下の式IL又はIIL:
【0033】
【化18】
で表される化合物を以下に定義される抗体(Ab)と複合体化することを含む、本開示の第1の態様による複合体の製造方法を提供し、ここで、
R
L1は、抗体(Ab)への連結に適したリンカーであり;
R
22Lは、以下の式IIIaL、式IIIbL又は式IIIcL:
【0034】
【化19】
(式中、
Q
LはO-R
L2、S-R
L2及びNR
N-R
L2から選択され、R
NはH、メチル及びエチルから選択され;
X
Lは、O-R
L2、S-R
L2、CO
2-R
L2、CO-R
L2、N=C=O-R
L2、NHNH-R
L2、CONHNH-R
L2、
【0035】
【化20】
NR
NR
Lを含む群から選択され、ここでR
Nは、H及びC
1-4アルキルを含む群から選択され;
R
L2は抗体(Ab)への連結に適するリンカーであり;
残りの全ての基は、第一の態様で定義されているとおりである)
である。
【0036】
つまり、第二の態様では、好ましくは、本開示は、で表される、ConjA、ConjB、ConjC、ConjD及びConjEからなる群から選択される複合体を作製する方法であって、以下のA、B、C、D及びE:
【0037】
【0038】
【化22】
から各々選択される化合物を以下に定義される抗体と複合させて複合体することを含む方法を提供する。
【0039】
国際公開第2011/130615号パンフレットには、以下の化合物26:
【0040】
【化23】
が記載されているが、これは、化合物Aの親化合物である。化合物Aは、細胞結合剤に連結するリンカーを備える、このPBDを含む。当該細胞結合剤は、多数のエチレングリコール部分を提供して、複合体の合成に有用な溶解度を提供する。
【0041】
国際公開第2010/043380号パンフレット及び特許文献3は以下の化合物30:
【0042】
【化24】
を開示する。
特許文献3も以下の化合物51:
【0043】
【0044】
化合物Bは、PBD部分の間に、放出されたPBD二量体の親油性を低下させる(CH2)5テザーではなく、(CH2)3テザーがある点で化合物30と異なる。連結基はメタ位ではなくパラ位のC2-フェニル基に連結する。
【0045】
特許文献3は以下の化合物93:
【0046】
【0047】
化合物(C)はこれと2つの点で異なっている。細胞結合剤は、増加した数のエチレングリコール部分を提供して、複合体の合成に有用な溶解度を提供し、フェニル置換基は、溶解度を促進する酸素原子を1つでなく、2つ提供する。化合物Cの構造はまた、それが副溝内でより強く結合することを意味することができる。
【0048】
化合物(A)、(B)及び(C)は、各C環に2つのsp2中心があり、各C環に1つのsp2中心しかない化合物よりも、DNAの副溝に強く結合できるようになっている。
【0049】
特許文献5は以下の化合物80:
【0050】
【0051】
化合物Dは、細胞結合剤に結合するためのヨードアセトアミド基を含む点でこれと異なる。この基は、細胞結合剤(下記参照)に結合した場合の安定性が、化合物80を超えるという利点を提供することができる。化合物80のオレイミド基は、細胞結合剤から非抱合型になる逆Michael反応を受けることができ、従って、アルブミン及びグルタチオン等の生体分子を含む他のチオールによるスカベンジングがおこらない。当該脱共役は化合物(A)とは起こらず、ヨードアセトアミド基は他の望ましくない副反応を回避できる。
【0052】
化合物Eは、より小さい、親油性の低いC2置換基、例えば4F-フェニル、プロピレンがあるため、C2-3末端二重結合がある薬物リンカーがある、公知のPBD二量体とは異なる。したがって、化合物B(後述)の複合体は、いったん合成されると凝集しにくい。当該複合体の凝集は、サイズ排除クロマトグラフィーにより測定することができる。
【0053】
化合物DもEも、各々C環に2つのsp2中心があり、各C環に1つのsp2中心しかない化合物よりも、DNAの副溝に強く結合することができる。
【0054】
国際公開第2010/043880号パンフレットや特許文献3~5に開示されている薬物リンカーは、本開示では用いることができ、参照により本明細書に援用される。本明細書に記載される薬物リンカーは、当該開示に記載されるように合成されることができる。
【0055】
好適な実施例
好ましい実施形態は、以下の構造:
【0056】
【化28】
(式中、抗体は、(i)
配列番号1の配列で表されるVHドメイン、及び(ii)アミノ酸配列が配列番号2の配列で表される
VLドメインを含む)
がある複合体である。
抗体は、(i)配列番号3の配列で表されるVHドメイン、及び(ii)配列番号4の配列で表されるVLドメインを含んでよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】本明細書に記載された複合体の生体外細胞毒性を示すグラフである。
【
図2】TNBC MDA-MB-231異種移植モデルにおける生体内効能試験の結果を示すグラフである。
【
図3】SN12C腎がん異種移植モデルにおける生体内効能試験の結果を示すグラフである。
【
図4】卵巣がんPDXモデルCTG-0703の生体内効能試験の結果を示すグラフである。
【
図5】各々、5A) 卵巣がんPDXモデルCTG-0252の生体内効能試験;5B) 卵巣がんPDXモデルCTG-1086の生体内効能試験;5C) 卵巣がんPDXモデルCTG-0711の生体内効能試験;5D) 卵巣がんPDXモデルCTG-1423の生体内効能試験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
本開示は、被験体の好ましい部位にPBD化合物を提供するのに用いるのに適する。
当該複合体により、リンカーのいかなる部分も保持していない活性PBD化合物が放出される。PBD化合物の反応性に影響を及ぼすスタブは存在しない。こうして、ConjAは以下の化合物RelA:
【0059】
【化29】
を放出する。
ConjBは以下の化合物RelB:
【0060】
【化30】
を放出する。
ConjCは以下の化合物RelCを放出する:
【0061】
【化31】
を放出する。
ConjDは以下の化合物RelD:
【0062】
【化32】
を放出する。
ConjEは以下の化合物RelEを放出する:
【0063】
【0064】
本開示では、PBD二量体と抗体との間の特定の連結は、好ましくは、細胞外で安定である。細胞への輸送又は送達の前に、抗体-薬物複合体(ADC)は、好ましくは安定であり、完全(インタクト)であり、すなわち、抗体は薬物部分に連結したままである。このリンカーは、標的細胞外で安定であり、細胞内である効率的速度で切断されることができる。有効なリンカーは、(i)抗体の特異的結合特性を維持し;(ii)複合体又は薬物部分の細胞内送達を可能にし;(iii)複合体がその標的部位に送達又は輸送されるまで、安定であり、すなわち切断されず;及び(iv)PBD薬物部分の細胞毒性、細胞死滅効果又は細胞静止効果を維持する。上記ADCの安定性は、標準的な分析技術(例えば、質量分析法、HPLC、及び分離/分析技術LC/MS)により測定されることができる。
【0065】
式RelA、RelB、RelC、RelD又はRelEの化合物の送達は、連結基、特にバリン-アラニンジペプチド部分に対するカテプシン等の酵素の作用によって、式ConjA、ConjB、ConjC、ConjD又はConjEの複合体の所望の活性化部位において達成される。
【0066】
抗体
一態様では、抗体は、KAAG1に結合する抗体である。
【0067】
抗体3A4
ある実施形態では、抗体は、アミノ酸配列が配列番号7であるVH CDR3があるVHドメインを含む。ある実施形態では、VHドメインは、アミノ酸配列が配列番号6であるVH CDR2、及び/又はアミノ酸配列が配列番号5であるVH CDR1をさらに含む。ある実施形態では、抗体は、アミノ酸配列が配列番号5であるVH CDR1、アミノ酸配列が配列番号6であるVH CDR2、及びアミノ酸配列が配列番号7であるVH CDR3があるVHドメインを含む。好ましい態様では、抗体は、アミノ酸配列が配列番号1によるVHドメインを含む。
【0068】
抗体はさらにVLドメインを含んでよい。ある実施形態では、抗体は、アミノ酸配列が配列番号10であるVL CDR3があるVLドメインを含む。ある実施形態では、VLドメインは、アミノ酸配列が配列番号9であるVL CDR2、及び/又はアミノ酸配列が配列番号8であるVL CDR1をさらに含む。ある実施形態では、抗体は、アミノ酸配列が配列番号8であるVL CDR1、アミノ酸配列が配列番号9であるVL CDR2、及びアミノ酸配列が配列番号10であるVL CDR3があるVLドメインを含む。好ましい実施形態では、抗体は、配列番号2、配列番号13、又は配列番号15の配列があるVLドメインを含む。
【0069】
好ましい実施形態では、抗体は、VHドメイン及びVLドメインを含む。好ましくは、VHは配列番号1の配列を含み、VLドメインは配列番号2、配列番号13、又は配列番号15の配列を含む。
【0070】
VH及びVLドメインは、KAAG1に連結する抗体抗原結合部位を形成するように対合してよい。
【0071】
ある実施形態では、抗体は、VLドメインと対合したVHドメインを含み、VH及びVLドメインは、配列番号2、配列番号13、若しくは配列番号15と対合した配列がある完全抗体である。
【0072】
ある実施形態では、抗体は、配列番号4、配列番号14、若しくは配列番号16の配列がある軽鎖と対合した配列番号3の配列がある重鎖を含む。ある実施形態では、抗体は、配列番号3の配列がある2つの重鎖を含み、各々が配列番号4、配列番号14、若しくは配列番号16の配列がある軽鎖と対合している完全抗体である。
【0073】
ある実施形態では、抗体は、配列番号4、配列番号14、若しくは配列番号16の配列がある軽鎖と対合した配列番号11の配列がある重鎖を含む。ある実施形態では、抗体は、配列番号11の配列がある2つの重鎖を含み、各々が配列番号4、配列番号14、若しくは配列番号16の配列がある軽鎖と対合している完全抗体である。
【0074】
1つの態様では、抗体は、以下に記載されるように修飾(又はさらなる修飾)された本明細書に記載されるような抗体である。ある実施形態では、抗体は、本明細書に開示された抗体はヒト化、脱免疫化、又は再表面化されている。
【0075】
用語
本明細書中の用語「抗体」は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二量体、多量体、多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)、完全抗体(「全長」抗体とも記載される)及び抗体断片を、それらが所望の生物学的活性、例えば、KAAG1への結合能を示す限り、最も広い意味で用いられ、かつ、特異的に包含する。(Miller et al(2003)Jour.of Immunology 170:4854-4861)。抗体は、マウス抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、又は他の種由来であってよい。抗体は、特異的抗原を認識し、それに結合しうる免疫系により生成されるタンパク質である。(Janeway,C.,Travers,P.,Walport,M.,Shlomchik(2001)Immuno Biology,5th Ed.,Garland Publishing,NewYork)。標的抗原には、一般に、エピトープともいう、多数の結合部位があり、複数の抗体上の相補性決定領域(CDR)により認識される。異なるエピトープ特異的に結合する抗体の構造は異なる。すなわち、1つの抗原には、対応する抗体が1を超える。抗体は、全長免疫グロブリン分子又は全長免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、関連する標的の抗原に免疫特異的に結合する抗原結合部位又はその部分を含む分子を含んでよく、当該標的としては、がん細胞又は自己免疫疾患と関連する自己免疫抗体を産生する細胞があげられるが、これらに限定されない。免疫グロブリンは、免疫グロブリン分子のいかなる系(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、及びIgA)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)若しくはサブクラス、又はアロタイプ(例えば、ヒトG1m1、G1m2、G1m3、非G1m1[すなわち、G1m1以外のいかなるアロタイプ]、G1m17、G2m23、G3m21、G3m28、G3m11、G3m5、G3m13、G3m14、G3m10、G3m15、G3m16、G3m6、G3m24、G3m26、G3m27、A2m1、A2m2、Km1、Km2、Km2、及びKm3)でありえる。
当該免疫グロブリンは、ヒト、マウス、又はウサギ由来を含む、いかなる種に由来しうる。
【0076】
本明細書で用いる「KAAG1に結合する」とは、抗体が、ウシ血清アルブミン等の非特異的パートナー(BSA,Genbank受託番号CAA76847第CAA76847.1 GI:3336842版;記録更新日2011年1月7日、02:30 PM)よりも高い親和性でKAAG1に結合することを意味する。
【0077】
ある実施形態では、抗体は、生理学的条件で測定した場合、BSAに対する抗体の会合定数より少なくとも2、3、4、5、10、20、50、100、200、500、1000、2000、5000、104、105又は106倍高い会合定数(Ka)で、KAAG1と結合する。本開示の抗体は、高親和性でKAAG1に結合しうる。例えば、いくつかの実施形態では、当該抗体は、1×10-6、10-7、10-8、10-9、10-10、10-11、10-12、10-13又は10-14の1以下の、約10-6Mと等しいか又はそれ未満のKDでKAAG1と結合しうる。
【0078】
KAAG1(腎関連抗原1)は、精巣及び腎臓に発現し、低濃度では膀胱及び肝臓に発現する。黒色腫、肉腫、大腸がん等、様々な組織型の腫瘍の比率が高い。ある実施形態では、KAAG1ポリペプチドは、Genbank受託番号AAF23613第AAF23613.1版に対応する。一実施形態では、KAAG1ポリペプチドをコードする核酸はGenbank受託番号AF181722第AF181722.1版に対応する。ある実施形態では、KAAG1ポリペプチドの配列は、配列番号12である。
【0079】
「抗体断片」とは、全長抗体の部分、一般的には、その抗原結合領域若しくは可変領域を包含する。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、及びscFv断片;二重抗体;直鎖抗体;Fab発現ライブラリー、抗イディオタイプ(抗Id)抗体、CDR(相補性決定領域)、及びがん細胞抗原、ウイルス抗原又は微生物抗原、単鎖抗体分子に免疫特異的に結合する上記のいずれかのエピトープ結合断片によって産生される断片;及び抗体断片から形成される多重特異的抗体があげられる。
【0080】
本明細書で用いられる用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書中で用いられる場合、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体をいい、すなわち、集団を含む個々の抗体は、少量で存在しうる可能性のある天然に生じる突然変異を除いて同一である。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、1つの抗原性エピトープに対する。さらに、異なる決定因子(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定因子に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、それらが他の抗体によって汚染せずに合成できる点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質な抗体の集団から得られるという抗体の特徴を示しており、いかなる特定の方法による抗体の生産が必要であるとは解釈されない。例えば、本開示より用いられるモノクローナル抗体は、Kohlerら(1975)Nature256:495によって最初に記載されたハイブリドーマ法によって作製することができ、あるいは組換えDNA法(米国特許第4816567号参照)によって作製しうる。モノクローナル抗体はまた、Clacksonら(1991)Nature,352:624-628;Marksら(1991)J.Mol Biol.222:581-597に記載された技術を用いてファージ抗体ライブラリーから単離しうるか、又は完全ヒト免疫グロブリン系(Lonberg(2008)Curr Opinion20(4):450-459)があるトランスジェニックマウス由来である。
【0081】
本明細書中のモノクローナル抗体は、具体的には、重鎖及び/又は軽鎖の部分が、特定の種に由来する、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるか又はそれと相同であるが、鎖の残部は、それらが所望の生物学的活性を示す限り、他種に由来する、又は他の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一であるか又はそれと相同である「キメラ」抗体、並びに当該抗体の断片を含む(米国特許第4816567号;及びMorrisonら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855)キメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば、旧世界サル又は猿人類)に由来する可変ドメイン抗原結合配列及びヒト定常領域配列を含む「霊長類化」抗体を含む。
【0082】
本明細書において、「完全抗体」とは、VLドメイン及びVHドメイン、並びに軽鎖定常ドメイン(CL)及び重鎖定常ドメイン(CH1、CH2及びCH3)を含む。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列改変体であってよい。完全抗体は、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列改変体Fc領域)に起因する生物学的活性をいう、1又はそれ以上の「エフェクター機能」を備えてよい。当該抗体エフェクター機能の例としては、C1q結合;補体依存性細胞傷害性;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性;食作用;及びB細胞受容体及びBCR等の細胞表面受容体の下方制御があげられる。
【0083】
完全抗体は、重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列により、異なる「クラス」に割り当てることができる。完全抗体には、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMの5つの主要なクラスがあり、これらのいくつかは、さらに、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、及びIgA2等の「サブクラス」(アイソタイプ)に分類しうる。様々なクラスの抗体に対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ、及びμという。様々なクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び3次元構造は、周知である。
【0084】
抗体の修飾
本明細書に開示された抗体は、修飾されてよい。例えば、ヒト被験体に対する免疫原性を低下させるように、修飾されてよい。これは、当業者には公知の多くの技術のいかなる技術を用いて達成することができる。当該技術のいくつかは、以下により詳細に説明される。
【0085】
ヒト化
非ヒト抗体又は抗体断片の生体内免疫原性を低下させる技術には、「ヒト化」が含まれる。
【0086】
「ヒト化抗体」は、ヒト抗体の修飾された可変領域の少なくとも一部分を含むポリペプチドを示し、この可変領域の一部分、好ましくは完全なヒト可変ドメインより実質的に小さい部分が、非ヒト種由来の相当する配列で置換されており、かつこの修飾された可変領域は、他のタンパク質の少なくとも他の部分、好ましくはヒト抗体の定常領域と連結している。「ヒト化抗体」という表現は、1つ以上の相補性決定領域(「CDR」)アミノ酸残基及び/又は1つ以上のフレームワーク領域(「FW」又は「FR」)アミノ酸残基が齧歯類又は他の非ヒト抗体の類似部位由来アミノ酸残基で置換されているヒト抗体を含む。「ヒト化抗体」という表現は、実質的にヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列があるFR及び実質的に非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列があるCDRを含む免疫グロブリンアミノ酸配列変異型又はその断片も含む。
【0087】
「ヒト化」型の非ヒト(例えば、マウス)抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有するキメラ抗体である。すなわち、見方を変えると、ヒト化抗体とは、ヒト配列の代わりに非ヒト(例えばマウス)抗体から選択された配列も含有するヒト抗体である。ヒト化抗体は、保存的アミノ酸置換、すなわち抗体の結合及び/又は生物学的活性を大きく変えることのない同種又は異なる種由来の非天然の残基を含むことができる。そのような抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有するキメラ抗体である。
【0088】
様々なヒト化技法が存在し、そのような技法として、「CDRグラフト法」、「選択誘導法」、「脱免疫化」、「表面再構成(resurfacing)(「ベニアリング」としても知られる)、「複合抗体」、「ヒトストリング含有量最適化(Human String Content Optimisation)」、及びフレームワーク混合があげられる。
【0089】
CDRグラフト法
この技法では、ヒト化抗体は、レシピエント抗体の相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の性質がある、マウス、ラット、ラクダ、ウシ、ヤギ、又はウサギ等の非ヒト種(ドナー抗体)のCDR由来の残基で置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である(実際には、非ヒトCDRが、ヒトフレームワークに「移植」されている)。場合によっては、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、相当する非ヒト残基で置換されている(これは、例えば、特定のFR残基が抗原結合に対して大きな効果がある場合があげらえる)。
【0090】
そのうえさらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも、導入されるCDR又はフレームワーク配列にも見られない残基を含むことができる。こうした修飾を行うことで、抗体の性能をさらに洗練させて最大化することができる。したがって、一般に、ヒト化抗体は、全部で少なくとも1つ、及び1つの態様において2つの可変領域を含むことになり、この抗体において、全て又は全ての超可変ループは非ヒト免疫グロブリンのものに相当し、及び全て又は実質的に全てのFR領域はヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、随意に、ヒト免疫グロブリンの、免疫グロブリン定常部(Fc)の少なくとも一部分又は全部を含むことができる。
【0091】
選択誘導法
この方法は、特定のエピトープに対して特異的な所定の非ヒト抗体のVH又はVLドメインをヒトVH又はVLライブラリーと組み合わせることからなり、特異的ヒトVドメインは、注目している抗原に対して選択される。次いで、この選択されたヒトVHを、VLライブラリーと組み合わせて、完全なヒトVH×VLの組み合わせを作成する。この方法は、Nature Biotechnology(N.Y.)12,(1994)899-903に記載されている。
【0092】
複合抗体
この方法では、ヒト抗体由来のアミノ酸配列の2つ以上のセグメントを、最終抗体分子内で連結させる。最終抗体分子は、複数のヒトVH及びVL配列セグメントを、ヒトT細胞エピトープを制限又は回避する組み合わせで、最終複合抗体V領域内で連結させることにより、構築される。必要な場合、T細胞エピトープに寄与する又はこれをコードするV領域を、T細胞エピトープを回避する代替セグメントで交換することにより、T細胞エピトープを制限又は回避する。この方法は、米国特許出願公開第2008/0206239号に記載される。
【0093】
脱免疫化
この方法は、ヒト(又は他の二次種)T細胞エピトープを、治療用抗体(又は他の分子)のV領域から除去することを含む。治療用抗体V領域配列を、例えば、MHC結合モチーフのデータベース(www.wehi.edu.auがホストである「モチーフ」データベース等)と比較することで、MHCクラスII結合モチーフの存在について分析する。あるいは、MHCクラスII結合モチーフは、Altuviaらにより記載される方法(J.Mol.Biol.249 244-250(1995))等のコンピューターによるスレッド化法を用いて同定することができる。これらの方法では、V領域配列由来の連続重複ペプチドを、それらのMHCクラスIIタンパク質との結合エネルギーについて試験する。次いで、このデータを、連続して存在するペプチドと関連する他の配列特性についての情報(両親媒性、ロスバードモチーフ(Rothbard motif)、ならびにカテプシンB及び他のプロセシング酵素による切断部位等)とまとめることができる。
【0094】
いったん可能性のある二次種(例えばヒト)T細胞エピトープが同定されたら、1つ以上のアミノ酸を変更することで、それらを除去する。修飾されるアミノ酸は、通常、T細胞エピトープ自体内にあるが、タンパク質の一次又は二次構造に関してエピトープと隣接するものでよい(したがって、一次構造では隣接していなくてよい)。最も典型的には、変更は、置換によるものであるが、状況によっては、アミノ酸の付加又は欠失の方が適切なこともある。
【0095】
全ての変更は、十分に確立された方法(部位特異的突然変異誘発等)を用いて、組換え宿主で発現させることにより、最終分子を調製することができるように、組換えDNA技法により達成することができる。しかしながら、タンパク質化学反応又は任意の他の分子変更手段の利用も可能である。
【0096】
表面再構成
この方法は、以下を含む:
(a)非ヒト(例えば齧歯類)抗体(又はその断片)の可変領域の三次元モデルを構築することにより、非ヒト抗体可変領域の高次立体構造を決定する、
(b)十分な数の非ヒト及びヒト抗体の可変領域重鎖及び軽鎖でのX線結晶構造解析に基づく構造から、相対的到達性分布を用いて、配列アラインメントを作成して、重鎖及び軽鎖のフレームワーク位置の組を得る(この組において、アラインメント位置は、十分な数の非ヒト抗体重鎖及び軽鎖の98%において同一である)、
(c)ステップ(b)で作成したフレームワーク位置の組を用いて、ヒト化しようとする非ヒト抗体について、重鎖及び軽鎖の表面露出アミノ酸残基の組を定義する、
(d)ヒト抗体アミノ酸配列から、ステップ(c)で定義した表面露出アミノ酸残基の組との相同性が最も高い重鎖及び軽鎖の表面露出アミノ酸残基の組を同定する(この場合、ヒト抗体由来の重鎖及び軽鎖は、天然に対をなす又はなさない)、
(e)ヒト化しようとする非ヒト抗体のアミノ酸配列において、ステップ(c)で定義した表面露出アミノ酸残基の組を、ステップ(d)で同定した重鎖及び軽鎖の表面露出アミノ酸残基の組と置換する、
(f)ステップ(e)で指定される置換により得られる非ヒト抗体の可変領域の三次元モデルを構築する、
(g)ステップ(a)及びステップ(f)で構築した三次元モデルを比較することにより、ヒト化しようとする非ヒト抗体の相補性決定領域のいずれかの残基のいずれかの原子から5オングストローム内にあるいずれかのアミノ酸残基を、ステップ(c)又はステップ(d)で同定した組から同定する、及び
(h)ステップ(g)で同定したいずれかの残基を、ヒトアミノ酸残基から元々の非ヒトアミノ酸残基に交換し、それにより、表面露出アミノ酸残基の非ヒト抗体ヒト化の組を確定させる、ただし、ステップ(a)は、必ずしも最初に行う必要はないが、ステップ(g)の前に行わなければならない。
【0097】
超ヒト化
この方法は、非ヒト配列を、機能的ヒト生殖系列遺伝子レパートリーと比較する。これらのヒト遺伝子の中から、非ヒト配列と同一又は密接に関連する正準構造をコードするものを選択する。選択したこれらのヒト遺伝子の中から、CDR内で最も高い相同性を持つものをFRドナーとして選択する。最後に、非ヒトCDRをこれらのヒトFRに移植する。この方法は、国際公開第2005/079479号パンフレットに記載されている。
【0098】
ヒトストリング含有量最適化
この方法は、非ヒト(例えばマウス)配列を、ヒト生殖系列遺伝子のレパートリーと比較し、差異を、ヒトストリング含有量(HSC)として点数付けする。HSCは、潜在的MHC/T細胞エピトープのレベルで配列を定量する。次いで、標的配列を、全体的な相同性尺度を用いるのではなく、標的配列のHSCを最大にするようにヒト化することで、複数の多様なヒト化変異型を作成する(Molecular Immunology,44,(2007)1986-1998に記載されている)。
【0099】
フレームワークシャフリング
非ヒト抗体のCDRを、全ての既知の重鎖及び軽鎖のヒト生殖系列遺伝子フレームワークを包含するcDNAプールと、インフレームで融合させる。次いで、ヒト化抗体を、例えば、ファージ提示型抗体ライブラリーをパニングすることで選択する。この方法は、Methods 36,43-60(2005)に記載されている。
【0100】
定義
医薬として許容されるカチオン
薬学的に許容される一価カチオン及び二価カチオンの例は、Berge, et al.,J.Pharm.Sci.,66,1-19(1977)に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
薬学的に許容されるカチオンは、無機又は有機であってよい。
薬学的に許容される一価の無機カチオンの例は、限定されるものではないが、Na+及びK+等のアルカリ金属イオンを含む。薬学的に許容される二価の無機カチオンの例としては、Ca2+及びMg2+等のアルカリ土類カチオンがあげられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される有機カチオンの例としては、アンモニウムイオン(すなわち、NH4+)及び置換アンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2+、NHR3+、NR4+)があげられるが、これらに限定されない。いくつかの適当な置換アンモニウムイオンの例は、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、及びトロメタミン、並びにリジン及びアルギニン等のアミノ酸から誘導されるものである。一般的な第四級アンモニウムイオンの例は、N(CH3)4+である。
【0101】
置換基
本明細書で用いられる語句「場合によっては、置換された」は、非置換であってよい、又は置換されてよい親基に関する。
他に特定されていない限り、本明細書で用いられる用語「置換されている」は、1つ以上の置換基を持つ親基に関する。本明細書で用いられる用語「置換基」は従来の意味で用いられ、親基に、共有結合的に結合している、場合により縮合している化学的部分をいう。多種多様の置換基が周知であり、また、種々の親基の形成及びこれらへの導入方法も周知である。
【0102】
置換基の例を、より詳細に以下に記載する。
【0103】
C1-12アルキル:本明細書で用いられる用語「C1-12アルキル」、脂肪族であっても脂環式であってよく、また、飽和であっても不飽和(例えば、部分不飽和、完全不飽和)であってよい、炭素原子が1~12個である炭化水素化合物の1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる一価部分に関する。本明細書で用いられる用語「C1-4アルキル」は、脂肪族であっても脂環式であってよく、また、飽和であっても不飽和(例えば、部分不飽和、完全不飽和)であってよい、炭素原子が1~4個である炭化水素化合物の1つの炭素原子から1つの水素原子を除去することによって得られる一価部分に関する。ゆえに、本明細書で用いられる用語「アルキル」という用語は、以下に考察されている、サブクラスのアルケニル、アルキニル、シクロアルキル等を含む。
【0104】
飽和アルキル基の例として、メチル(C1)、エチル(C2)、プロピル(C3)、ブチル(C4)、ペンチル(C5)、ヘキシル(C6)及びヘプチル(C7)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
飽和直鎖アルキル基の例として、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、n-ブチル(C4)、n-ペンチル(アミル)(C5)、n-ヘキシル(C6)及びn-ヘプチル(C7)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
飽和分岐鎖アルキル基の例として、イソ-プロピル(C3)、イソ-ブチル(C4)、sec-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、イソ-ペンチル(C5)、及びネオ-ペンチル(C5)が挙げられる。
【0107】
C2-12アルケニル:本明細書で用いられる用語「C2-12アルケニル」は、1つ以上の炭素-炭素二重結合があるアルキル基に関する。
【0108】
不飽和アルケニル基の例として、エテニル(ビニル、-CH=CH2)、1-プロペニル(-CH=CH-CH3)、2-プロペニル(アリル、-CH-CH=CH2)、イソプロペニル(1-メチルビニル、-C(CH3)=CH2)、ブテニル(C4)、ペンテニル(C5)、及びヘキセニル(C6)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
C2-12アルキニル:本明細書で用いられる用語「C2-12アルキニル」という用語は、本明細書中で用いられる場合、1つ以上の炭素-炭素三重結合があるアルキル基に関する。
【0110】
不飽和アルキニル基の例として、エチニル(-C≡CH)及び2-プロピニル(プロパルギル、-CH2-C≡CH)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0111】
C3-12シクロアルキル:本明細書で用いられる用語「C3-12シクロアルキル」は、環式炭化水素(炭素環式)化合物の1つの脂環式環原子から1つの水素原子を除去することによって得られる一価部分であって、3~7個の環原子を含めた3~7個の炭素原子がある、上記部分であり、シクリル基でもあるアルキル基に関する。
【0112】
シクロアルキル基の例として、以下に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない:
飽和単環式炭化水素化合物:
シクロプロパン(C3)、シクロブタン(C4)、シクロペンタン(C5)、シクロヘキサン(C6)、シクロヘプタン(C7)、メチルシクロプロパン(C4)、ジメチルシクロプロパン(C5)、メチルシクロブタン(C5)、ジメチルシクロブタン(C6)、メチルシクロペンタン(C6)、ジメチルシクロペンタン(C7)及びメチルシクロヘキサン(C7)、
不飽和単環式炭化水素化合物:
シクロプロペン(C3)、シクロブテン(C4)、シクロペンテン(C5)、シクロヘキセン(C6)、メチルシクロプロペン(C4)、ジメチルシクロプロペン(C5)、メチルシクロブテン(C5)、ジメチルシクロブテン(C6)、メチルシクロペンテン(C6)、ジメチルシクロペンテン(C7)及びメチルシクロヘキセン(C7)、ならびに
飽和多環式炭化水素化合物:
ノルカラン(C7)、ノルピナン(C7)、ノルボルナン(C7)。
【0113】
C3-20ヘテロシクリル:本明細書で用いられる用語「C3-20ヘテロシクリル」は、複素環式化合物の1つの環原子から1つの水素原子を除去することによって得られる一価部分であって、3~20個の環原子を有し、このうち1~10個が環ヘテロ原子である、上記部分に関する。好ましくは、各環が、3~7個の環原子を有し、このうち1~4個が環ヘテロ原子である。
【0114】
この文脈において、接頭語(例えば、C3-20、C3-7、C5-6等)は、炭素原子又はヘテロ原子にかかわらず、環原子数又は環原子数の範囲を示す。例えば、本明細書で用いられる用語「C5-6ヘテロシクリル」という用語は、本明細書中で用いられる場合、5又は6個の環原子があるヘテロシクリル基に関する。
【0115】
単環式ヘテロシクリル基の例として、以下に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない:
N1:アジリジン(C3)、アゼチジン(C4)、ピロリジン(テトラヒドロピロール)(C5)、ピロリン(例えば、3-ピロリン、2,5-ジヒドロピロール)(C5)、2H-ピロール又は3H-ピロール(イソピロール、イソアゾール)(C5)、ピペリジン(C6)、ジヒドロピリジン(C6)、テトラヒドロピリジン(C6)、アゼピン(C7)、
O1:オキシラン(C3)、オキセタン(C4)、オキソラン(テトラヒドロフラン)(C5)、オキソール(ジヒドロフラン)(C5)、オキサン(テトラヒドロピラン)(C6)、ジヒドロピラン(C6)、ピラン(C6)、オキセピン(C7)、
S1:チイラン(C3)、チエタン(C4)、チオラン(テトラヒドロチオフェン)(C5)、チアン(テトラヒドロチオピラン)(C6)、チエパン(C7)、
O2:ジオキソラン(C5)、ジオキサン(C6)、及びジオキセパン(C7)、
O3:トリオキサン(C6)、
N2:イミダゾリジン(C5)、ピラゾリシン(ジアゾリジン)(C5)、イミダゾリン(C5)、ピラゾリン(ジヒドロピラゾール)(C5)、ピペラジン(C6)、
N1O1:テトラヒドロオキサゾール(C5)、ジヒドロオキサゾール(C5)、テトラヒドロイソオキサゾール(C5)、ジヒドロイソオキサゾール(C5)、モルホリン(C6)、テトラヒドロオキサジン(C6)、ジヒドロオキサジン(C6)、オキサジン(C6)、
N1S1:チアゾリン(C5)、チアゾリジン(C5)、チオモルホリン(C6)、
N2O1:オキサジアジン(C6)、
O1S1:オキサチオール(C5)及びオキサチアン(チオキサン)(C6)、ならびに、
N1O1S1:オキサチアジン(C6)。
【0116】
置換されている単環式ヘテロシクリル基の例として、環式形態の単糖類、例えば、フラノース(C5)、例えば、アラビノフラノース、リキソフラノース、リボフラノース、及びキシロフラノース、ならびにピラノース(C6)、例えば、アロピラノース、アルトロピラノース、グルコピラノース、マンノピラノース、グロピラノース、イドピラノース、ガラクトピラノース及びタロピラノースに由来するものが挙げられる。
【0117】
C5-20アリール:本明細書で用いられる用語「C5-20アリール」は、芳香族化合物の1つの芳香族環原子から1つの水素原子を除去することによって得られる一価部分であって、3~20個の環原子がある上記部分に関する。本明細書で用いられる用語「C5-7アリール」は、芳香族化合物の1つの芳香族環原子から1つの水素原子を除去することによって得られる一価部分であって、5~7個の環原子がある当該部分に関し、本明細書で用いられる用語「C5-10アリール」は、芳香族化合物の1つの芳香族環原子から1つの水素原子を除去することによって得られる一価部分であって、5~10個の環原子がある上記部分に関する。好ましくは、各環は、5~7個の環原子がある。
この文脈において、接頭語(例えば、C3-20、C5-7、C5-6、C5-10等)は、炭素原子又はヘテロ原子にかかわらず、環原子数又は環原子数の範囲を示す。例えば、本明細書で用いられる用語「C5-6アリール」という用語は、本明細書中で用いられる場合、5又は6個の環原子があるアリール基に関する。
【0118】
上記環原子は、「カルボアリール基」におけるように全て炭素原子であってよい。
【0119】
カルボアリール基の例として、ベンゼン(すなわちフェニル)(C6)、ナフタレン(C10)、アズレン(C10)、アントラセン(C14)、フェナントレン(C14)、ナフタセン(C18)、及びピレン(C16)に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0120】
縮合環を含み、その少なくとも1つが芳香族環であるアリール基の例として、インダン(例えば、2,3-ジヒドロ-1H-インデン)(C9)、インデン(C9)、イソインデン(C9)、テトラリン(1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン)(C10)、アセナフテン(C12)、フルオレン(C13)、フェナレン(C13)、アセフェナントレン(C15)、及びアセアントレン(C16)に由来する基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0121】
あるいは、上記環原子は、「ヘテロアリール基」におけるように1つ以上のヘテロ原子を含んでいてよい。単環式ヘテロアリール基の例として、以下に由来するものが挙げられるが、これらに限定されない:
N1:ピロール(アゾール)(C5)、ピリジン(アジン)(C6)、
O1:フラン(オキソール)(C5)、
S1:チオフェン(チオール)(C5)、
N1O1:オキサゾール(C5)、イソオキサゾール(C5)、イソキサジン(C6)、
N2O1:オキサジアゾール(フラザン)(C5)、
N3O1:オキサトリアゾール(C5)、
N1S1:チアゾール(C5)、イソチアゾール(C5)、
N2:イミダゾール(1,3-ジアゾール)(C5)、ピラゾール(1,2-ジアゾール)(C5)、ピリダジン(1,2-ジアジン)(C6)、ピリミジン(1,3-ジアジン)(C6)(例えば、シトシン、チミン、ウラシル)、ピラジン(1,4-ジアジン)(C6)、
N3:トリアゾール(C5)、トリアジン(C6)、及び、
N4:テトラゾール(C5)。
【0122】
縮合環を含むヘテロアリールの例として:
ベンゾフラン(O1)、イソベンゾフラン(O1)、インドール(N1)、イソインドール(N1)、インドリジン(N1)、インドリン(N1)、イソインドリン(N1)、プリン(N4)(例えば、アデニン、グアニン)、ベンズイミダゾール(N2)、インダゾール(N2)、ベンズオキサゾール(N1O1)、ベンズイソオキサゾール(N1O1)、ベンゾジオキソール(O2)、ベンゾフラザン(N2O1)、ベンゾトリアゾール(N3)、ベンゾチオフラン(S1)、ベンゾチアゾール(N1S1)、ベンゾチアジアゾール(N2S)に由来する(2つの縮合環を含む)C9、
クロメン(O1)、イソクロメン(O1)、クロマン(O1)、イソクロマン(O1)、ベンゾジオキサン(O2)、キノリン(N1)、イソキノリン(N1)、キノリジン(N1)、ベンゾキサジン(N1O1)、ベンゾジアジン(N2)、ピリドピリジン(N2)、キノキサリン(N2)、キナゾリン(N2)、シンノリン(N2)、フタラジン(N2)、ナフチリジン(N2)、プテリジン(N4)に由来する(2つの縮合環を含む)C10、
ベンゾジアゼピン(N2)に由来する(2つの縮合環を含む)C11、
カルバゾール(N1)、ジベンゾフラン(O1)、ジベンゾチオフェン(S1)、カルボリン(N2)、ペリミジン(N2)、ピリドインドール(N2)に由来する(3つの縮合環を含む)C13、ならびに、
アクリジン(N1)、キサンテン(O1)、チオキサンテン(S1)、オキサントレン(O2)、フェノキサチイン(O1S1)、フェナジン(N2)、フェノキサジン(N1O1)、フェノチアジン(N1S1)、チアントレン(S2)、フェナントリジン(N1)、フェナントロリン(N2)、フェナジン(N2)に由来する(3つの縮合環を含む)C14
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
上記基は、単独であるか、又は、他の置換基の一部であるかにかかわらず、それ自体が、それ自体及び以下に列挙するさらなる置換基から選択される1つ以上の基によって任意選択的に置換されてよい。
ハロ:-F、-Cl、-Br、及び-I。
ヒドロキシ:-OH。
エーテル:-OR、ここで、Rは、エーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルコキシ基とも称される、以下に考察されている)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルオキシ基とも称される)、又はC5-20アリール基(C5-20アリールオキシ基とも称される)、好ましくはC1-7アルキル基である。
【0124】
アルコキシ:-OR、ここで、Rは、アルキル基、例えば、C1-7アルキル基である。C1-7アルコキシ基の例として、-OMe(メトキシ)、-OEt(エトキシ)、-O(nPr)(n-プロポキシ)、-O(iPr)(イソプロポキシ)、-O(nBu)(n-ブトキシ)、-O(sBu)(sec-ブトキシ)、-O(iBu)(イソブトキシ)、及び-O(tBu)(tert-ブトキシ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
アセタール:-CH(OR1)(OR2)、ここで、R1及びR2は、独立して、アセタール置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、もしくはC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基であり、又は、「環式」アセタール基の場合、R1及びR2は、これらが結合している2つの酸素原子、及びこれらが結合している炭素原子とともに、4~8個の環原子がある複素環式環を形成している。アセタール基の例として、-CH(OMe)2、-CH(OEt)2、及び-CH(OMe)(OEt)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
ヘミアセタール:-CH(OH)(OR1)、ここで、R1は、ヘミアセタール置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。ヘミアセタール基の例として、-CH(OH)(OMe)及び-CH(OH)(OEt)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0127】
ケタール:-CR(OR1)(OR2)、ここで、R1及びR2は、アセタールについて定義されている通りであり、Rは、水素以外のケタール置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。ケタール基の例として、-C(Me)(OMe)2、-C(Me)(OEt)2、-C(Me)(OMe)(OEt)、-C(Et)(OMe)2、-C(Et)(OEt)2、及び-C(Et)(OMe)(OEt)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0128】
ヘミケタール:-CR(OH)(OR1)、ここで、R1は、ヘミアセタールについて定義されている通りであり、Rは、水素以外のヘミケタール置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。ヘミアセタール基の例として、-C(Me)(OH)(OMe)、-C(Et)(OH)(OMe)、-C(Me)(OH)(OEt)、及び-C(Et)(OH)(OEt)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
オキソ(ケト、-オン):=O。
チオン(チオケトン):=S。
イミノ(イミン):=NR、ここで、Rは、イミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくは水素又はC1-7アルキル基である。エステル基の例として、=NH、=NMe、=NEt、及び=NPhが挙げられるが、これらに限定されない。
ホルミル(カルボアルデヒド、カルボキシアルデヒド):-C(=O)H。
【0130】
アシル(ケト):-C(=O)R、ここで、Rは、アシル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアシルもしくはC1-7アルカノイルとも称される)、C3-20ヘテロシクリル基(C3-20ヘテロシクリルアシルとも称される)、又はC5-20アリール基(C5-20アリールアシルとも称される)、好ましくはC1-7アルキル基である。アシル基の例として、-C(=O)CH3(アセチル)、-C(=O)CH2CH3(プロピオニル)、-C(=O)C(CH3)3(t-ブチリル)、及び-C(=O)Ph(ベンゾイル、フェノン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
カルボキシ(カルボン酸):-C(=O)OH。
チオカルボキシ(チオカルボン酸):-C(=S)SH。
チオロカルボキシ(チオロカルボン酸):-C(=O)SH。
チオノカルボキシ(チオノカルボン酸):-C(=S)OH。
イミド酸:-C(=NH)OH。
ヒドロキサム酸:-C(=NOH)OH。
【0132】
エステル(カルボキシラート、カルボン酸エステル、オキシカルボニル):-C(=O)OR、ここで、Rは、エステル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。エステル基の例として、-C(=O)OCH3、-C(=O)OCH2CH3、-C(=O)OC(CH3)3、及び-C(=O)OPhが挙げられるが、これらに限定されない。
【0133】
アシルオキシ(逆エステル):-OC(=O)R、ここで、Rは、アシルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。アシルオキシ基の例として、-OC(=O)CH3(アセトキシ)、-OC(=O)CH2CH3、-OC(=O)C(CH3)3、-OC(=O)Ph、及び-OC(=O)CH2Phが挙げられるが、これらに限定されない。
【0134】
オキシカルボイルオキシ:-OC(=O)OR、ここで、Rは、エステル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。エステル基の例として、-OC(=O)OCH3、-OC(=O)OCH2CH3、-OC(=O)OC(CH3)3、及び-OC(=O)OPhが挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
アミノ:-NR1R2、ここで、R1及びR2は、独立して、アミノ置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基(C1-7アルキルアミノもしくはジ-C1-7アルキルアミノとも称される)、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはH又はC1-7アルキル基であり、あるいは、「環式」アミノ基の場合、R1及びR2は、これらが結合している窒素原子とともに、4~8個の環原子がある複素環式環を形成している。アミノ基は、第一級(-NH2)、第二級(-NHR1)、又は第三級(-NHR1R2)であってよく、カチオン形態では、第四級(-+NR1R2R3)であってよい。アミノ基の例として、-NH2、-NHCH3、-NHC(CH3)2、-N(CH3)2、-N(CH2CH3)2、及び-NHPhが挙げられるが、これらに限定されない。環式アミノ基の例として、アジリジノ、アゼチジノ、ピロリジノ、ピペリジノ、ピペラジノ、モルホリノ、及びチオモルホリノが挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
アミド(カルバモイル、カルバミル、アミノカルボニル、カルボキサミド):-C(=O)NR1R2、ここで、R1及びR2は、独立して、アミノ基について定義されているアミノ置換基である。アミド基の例として、-C(=O)NH2、-C(=O)NHCH3、-C(=O)N(CH3)2、-C(=O)NHCH2CH3、及び-C(=O)N(CH2CH3)2、ならびに、R1及びR2が、これらが結合している窒素原子とともに、例えば、ピペリジノカルボニル、モルホリノカルボニル、チオモルホリノカルボニル、及びピペラジノカルボニルにおけるように複素環式構造を形成しているアミド基が挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
チオアミド(チオカルバミル):-C(=S)NR1R2、ここで、R1及びR2は、独立して、アミノ基について定義されているアミノ置換基である。アミド基の例として、-C(=S)NH2、-C(=S)NHCH3、-C(=S)N(CH3)2、及び-C(=S)NHCH2CH3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0138】
アシルアミド(アシルアミノ):-NR1C(=O)R2、ここで、R1は、アミド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくは水素又はC1-7アルキル基であり、R2は、アシル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくは水素又はC1-7アルキル基である。アシルアミド基の例として、-NHC(=O)CH3、-NHC(=O)CH2CH3、及び-NHC(=O)Phが挙げられるが、これらに限定されない。R1及びR2は、例えば、スクシンイミジル、マレイミジル、及びフタルイミジル:
【0139】
【化34】
におけるように、ともに環式構造を形成することができる。
【0140】
アミノカルボニルオキシ:-OC(=O)NR1R2、ここで、R1及びR2は、独立して、アミノ基について定義されているアミノ置換基である。アミノカルボニルオキシ基の例として、-OC(=O)NH2、-OC(=O)NHMe、-OC(=O)NMe2、及び-OC(=O)NEt2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0141】
ウレイド:-N(R1)CONR2R3、ここで、R2及びR3は、独立して、アミノ基について定義されているアミノ置換基であり、R1は、ウレイド置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくは水素又はC1-7アルキル基である。ウレイド基の例として、-NHCONH2、-NHCONHMe、-NHCONHEt、-NHCONMe2、-NHCONEt2、-NMeCONH2、-NMeCONHMe、-NMeCONHEt、-NMeCONMe2、及び-NMeCONEt2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0142】
グアニジノ:-NH-C(=NH)NH2。
【0143】
テトラゾリル:4個の窒素原子及び1個の炭素原子がある5員の芳香族環:
【0144】
【化35】
イミノ:=NR、ここで、Rは、イミノ置換基、例えば、例えば、水素、C
1-7アルキル基、C
3-20ヘテロシクリル基、又はC
5-20アリール基、好ましくはH又はC
1-7アルキル基である。イミノ基の例として、=NH、=NMe、及び=NEtが挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
アミジン(アミジノ):-C(=NR)NR2、ここで、各Rは、アミジン置換基、例えば、水素、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはH又はC1-7アルキル基である。アミジン基の例として、-C(=NH)NH2、-C(=NH)NMe2、及び-C(=NMe)NMe2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0146】
ニトロ:-NO2
ニトロソ:-NO
アジド:-N3
シアノ(ニトリル、カルボニトリル):-CN
イソシアノ:-NC
シアナト:-OCN
イソシアナト:-NCO
チオシアノ(チオシアナト):-SCN
イソチオシアノ(イソチオシアナト):-NCS
スルフヒドリル(チオール、メルカプト):-SH。
【0147】
チオエーテル(スルフィド):-SR、ここで、Rは、チオエーテル置換基、例えば、C1-7アルキル基(C1-7アルキルチオ基とも称される)、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。C1-7アルキルチオ基の例として、-SCH3及び-SCH2CH3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0148】
ジスルフィド:-SS-R、ここで、Rは、ジスルフィド置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基(本明細書においてC1-7アルキルジスルフィドとも称される)である。C1-7アルキルジスルフィド基の例として、-SSCH3及び-SSCH2CH3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0149】
スルフィン(スルフィニル、スルホキシド):-S(=O)R、ここで、Rは、スルフィン置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルフィン基の例として、-S(=O)CH3及び-S(=O)CH2CH3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0150】
スルホン(スルホニル):-S(=O)2R、ここで、Rは、スルホン置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくは、例えば、フッ素化もしくは過フッ素化C1-7アルキル基を含めたC1-7アルキル基である。スルホン基の例として、-S(=O)2CH3(メタンスルホニル、メシル)、-S(=O)2CF3(トリフリル)、-S(=O)2CH2CH3(エシル)、-S(=O)2C4F9(ノナフリル)、-S(=O)2CH2CF3(トレシル)、-S(=O)2CH2CH2NH2(タウリル)、-S(=O)2Ph(フェニルスルホニル、ベシル)、4-メチルフェニルスルホニル(トシル)、4-クロロフェニルスルホニル(クロシル)、4-ブロモフェニルスルホニル(ブロシル)、4-ニトロフェニル(ノシル)、2-ナフタレンスルホネート(ナプシル)、及び5-ジメチルアミノ-ナフタレン-1-イルスルホネート(ダンシル)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0151】
スルフィン酸(スルフィノ):-S(=O)OH、-SO2H。
スルホン酸(スルホ):-S(=O)2OH、-SO3H。
【0152】
スルフィナート(スルフィン酸エステル):-S(=O)OR;ここで、Rは、スルフィナート置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルフィナート基の例として、-S(=O)OCH3(メトキシスルフィニル;メチルスルフィナート)及び-S(=O)OCH2CH3(エトキシスルフィニル;エチルスルフィナート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0153】
スルホネート(スルホン酸エステル):-S(=O)2OR、ここで、Rは、スルホネート置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホネート基の例として、-S(=O)2OCH3(メトキシスルホニル;メチルスルホネート)及び-S(=O)2OCH2CH3(エトキシスルホニル;エチルスルホネート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0154】
スルフィニルオキシ:-OS(=O)R、ここで、Rは、スルフィニルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルフィニルオキシ基の例として、-OS(=O)CH3及び-OS(=O)CH2CH3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0155】
スルホニルオキシ:-OS(=O)2R、ここで、Rは、スルホニルオキシ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホニルオキシ基の例として、-OS(=O)2CH3(メシラート)及び-OS(=O)2CH2CH3(エシラート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0156】
サルフェート:-OS(=O)2OR、ここで、Rは、サルフェート置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。サルフェート基の例として、-OS(=O)2OCH3及び-SO(=O)2OCH2CH3が挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
スルファミル(スルファモイル、スルフィン酸アミド、スルフィンアミド):-S(=O)NR1R2、ここで、R1及びR2は、独立して、アミノ基について定義されているアミノ置換基である。スルファミル基の例として、-S(=O)NH2、-S(=O)NH(CH3)、-S(=O)N(CH3)2、-S(=O)NH(CH2CH3)、-S(=O)N(CH2CH3)2、及び-S(=O)NHPhが挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
スルホンアミド(スルフィナモイル、スルホン酸アミド、スルホンアミド):-S(=O)2NR1R2、ここで、R1及びR2は、独立して、アミノ基について定義されているアミノ置換基である。スルホンアミド基の例として、-S(=O)2NH2、-S(=O)2NH(CH3)、-S(=O)2N(CH3)2、-S(=O)2NH(CH2CH3)、-S(=O)2N(CH2CH3)2、及び-S(=O)2NHPhが挙げられるが、これらに限定されない。
【0159】
スルファミノ:-NR1S(=O)2OH、ここで、R1は、アミノ基について定義されているアミノ置換基である。スルファミノ基の例として、-NHS(=O)2OH及び-N(CH3)S(=O)2OHが挙げられるが、これらに限定されない。
【0160】
スルホンアミノ:-NR1S(=O)2R、ここで、R1は、アミノ基について定義されているアミノ置換基であり、Rは、スルホンアミノ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルホンアミノ基の例として、-NHS(=O)2CH3及び-N(CH3)S(=O)2C6H5が挙げられるが、これらに限定されない。
【0161】
スルフィンアミノ:-NR1S(=O)R、ここで、R1は、アミノ基について定義されているアミノ置換基であり、Rは、スルフィンアミノ置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基である。スルフィンアミノ基の例として、-NHS(=O)CH3及び-N(CH3)S(=O)C6H5が挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
ホスフィノ(ホスフィン):-PR2、ここで、Rは、ホスフィノ置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、又はC5-20アリール基である。ホスフィノ基の例として、-PH2、-P(CH3)2、-P(CH2CH3)2、-P(t-Bu)2、及び-P(Ph)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0163】
ホスホ:-P(=O)2。
【0164】
ホスフィニル(ホスフィンオキシド):-P(=O)R2、ここで、Rは、ホスフィニル置換基、例えば、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくはC1-7アルキル基又はC5-20アリール基である。ホスフィニル基の例として、-P(=O)(CH3)2、-P(=O)(CH2CH3)2、-P(=O)(t-Bu)2、及び-P(=O)(Ph)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
ホスホン酸(ホスホノ):-P(=O)(OH)2。
【0166】
ホスホナート(ホスホノエステル):-P(=O)(OR)2、ここで、Rは、ホスホナート置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、又はC5-20アリール基である。ホスホナート基の例として、-P(=O)(OCH3)2、-P(=O)(OCH2CH3)2、-P(=O)(O-t-Bu)2、及び-P(=O)(OPh)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0167】
リン酸(ホスホノオキシ):-OP(=O)(OH)2。
【0168】
ホスフェート(ホスホノオキシエステル):-OP(=O)(OR)2、ここで、Rは、ホスフェート置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、又はC5-20アリール基である。ホスフェート基の例として、-OP(=O)(OCH3)2、-OP(=O)(OCH2CH3)2、-OP(=O)(O-t-Bu)2、及び-OP(=O)(OPh)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0169】
亜リン酸:-OP(OH)2。
【0170】
ホスファイト:-OP(OR)2、ここで、Rは、ホスファイト置換基、例えば、-H、C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、又はC5-20アリール基である。ホスファイト基の例として、-OP(OCH3)2、-OP(OCH2CH3)2、-OP(O-t-Bu)2、及び-OP(OPh)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0171】
ホスホロアミダイト:-OP(OR1)-NR2
2、ここで、R1及びR2は、ホスホロアミダイト置換基、例えば、-H、(場合によっては、置換されている)C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、又はC5-20アリール基である。ホスホロアミダイト基の例として、-OP(OCH2CH3)-N(CH3)2、-OP(OCH2CH3)-N(i-Pr)2、及び-OP(OCH2CH2CN)-N(i-Pr)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0172】
ホスホロアミダート:-OP(=O)(OR1)-NR2
2、ここで、R1及びR2は、ホスホロアミダート置換基、例えば、-H、(場合によっては、置換されている)C1-7アルキル基、C3-20ヘテロシクリル基、又はC5-20アリール基、好ましくは-H、C1-7アルキル基、又はC5-20アリール基である。ホスホロアミダート基の例として、-OP(=O)(OCH2CH3)-N(CH3)2、-OP(=O)(OCH2CH3)-N(i-Pr)2、及び-OP(=O)(OCH2CH2CN)-N(i-Pr)2が挙げられるが、これらに限定されない。
【0173】
アルキレン
C3-12アルキレン:本明細書で用いられる用語「C3-12アルキレン」は、脂肪族であっても脂環式であってよく、また、飽和、部分不飽和、又は完全不飽和であってよい、3~12個の炭素原子(他に特定されない限り)がある炭化水素化合物の2つの水素原子であって、両方が同じ炭素原子からであるか、2つの異なる炭素原子のそれぞれからのものであるかのいずれかである当該2つの水素原子を除去することによって得られる二座部分に関する。ゆえに、用語「アルキレン」は、以下に考察されている、サブクラスのアルケニレン、アルキニレン、シクロアルキレン等が含まれる。
【0174】
直鎖飽和C3-12アルキレン基の例として、nが3~12の整数である-(CH2)n-、例えば、-CH2CH2CH2-(プロピレン)、-CH2CH2CH2CH2-(ブチレン)、-CH2CH2CH2CH2CH2-(ペンチレン)及び-CH2CH2CH2CH-2CH2CH2CH2-(ヘプチレン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0175】
分岐鎖飽和C3-12アルキレン基の例として、-CH(CH3)CH2-、-CH(CH3)CH2CH2-、-CH(CH3)CH2CH2CH2-、-CH2CH(CH3)CH2-、-CH2CH(CH3)CH2CH2-、-CH(CH2CH3)-、-CH(CH2CH3)CH2-、及び-CH2CH(CH2CH3)CH2-が挙げられるが、これらに限定されない。
【0176】
直鎖部分不飽和C3-12アルキレン基(C3-12アルケニレン、及びアルキニレン基)として、-CH=CH-CH2-、-CH2-CH=CH2-、-CH=CH-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-CH2-CH2-、-CH=CH-CH=CH-、-CH=CH-CH=CH-CH2-、-CH=CH-CH=CH-CH2-CH2-、-CH=CH-CH2-CH=CH-、-CH=CH-CH2-CH2-CH=CH-、及び-CH2-C≡C-CH2-が挙げられるが、これらに限定されない。
【0177】
分岐鎖部分不飽和C3-12アルキレン基(C3-12アルケニレン及びアルキニレン基)の例として、-C(CH3)=CH-、-C(CH3)=CH-CH2-、-CH=CH-CH(CH3)-及び-C≡C-CH(CH3)-が挙げられるが、これらに限定されない。
【0178】
脂環式飽和C3-12アルキレン基(C3-12シクロアルキレン)の例として、シクロペンチレン(例えば、シクロペンタ-1,3-イレン)、及びシクロヘキシレン(例えば、シクロヘキサ-1,4-イレン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0179】
脂環式部分不飽和C3-12アルキレン基(C3-12シクロアルキレン)の例として、シクロペンテニレン(例えば、4-シクロペンテン-1,3-イレン)、シクロヘキセニレン(例えば、2-シクロヘキセン-1,4-イレン、3-シクロヘキセン-1,2-イレン、2,5-シクロヘキサジエン-1,4-イレン)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0180】
カルバメート窒素保護基:用語「カルバメート窒素保護基」は、イミン結合中の窒素をマスクする部分に関し、当技術分野において周知である。当該基は、以下の:
【0181】
【化36】
(式中、R’10は、上記Rで定義されたとおりである)
の構造である。多数の適当な基は、Greene,T.W.and Wuts,G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Edition,John Wiley&Sons,Inc.,1999の503~549頁に記載されており、これは、その全体が本明細書に援用される。
【0182】
ヘミアミナール窒素保護基:用語「ヘミアミナール窒素保護基」は、以下の:
【0183】
【化37】
(式中、R’10は、上記Rで定義されたとおりである)
の構造である。多数の適当な基は、Greene,T.W.and Wuts,G.M.,Protective Groups in Organic Synthesis,3rd Edition,John Wiley&Sons,Inc.,1999の503~549頁に記載されており、これは、その全体が本明細書に援用される。
カルバメート窒素保護基及びヘミアミナール窒素保護基をあわせて「合成用窒素保護基」という場合がある。
【0184】
複合体
本開示は、リンカーユニットを介して抗体に連結されたPBD化合物を含む複合体を提供する。
一実施形態では、複合体は、スペーサー連結基に連結された抗体、トリガーに連結されたスペーサー、自己-非浸透性リンカーに連結されたトリガー、及びPBD化合物のN10位置に連結された自己-非浸透性リンカーを含む。当該複合体は以下に例示される:
【0185】
【化38】
ここで、Abは上記定義の抗体であり、PBDは本明細書に記載のピロロベンゾジアゼピン化合物(D)である。図は、本開示の特定の実施形態におけるR
L’、A、L
1及びL
2に対応する部分を示す。R
L’は、R
L1’又はR
L2’のいずれかであってよい。DはR
L1’又はR
L2’が除去されたD
Lである。
【0186】
本開示は、被験体の好ましい部位にPBD化合物を提供するのに用いるのに適する。
当該複合体により、リンカーのいかなる部分も保持していない活性PBD化合物が放出される。PBD化合物の反応性に影響を及ぼすスタブは存在しない。
【0187】
リンカーは、共有結合を介して抗体をPBD薬物部分Dに連結させる。リンカーは、1以上の薬物部分(D)及び抗体ユニット(Ab)を連結して抗体-薬物複合体(ADC)を形成するために用いることができる二官能性又は多官能性部分である。リンカー(RL’)は、細胞外、すなわち細胞外で安定であってよく、又は酵素活性、加水分解、又は他の代謝条件によって切断されてよい。抗体-薬物複合体は、薬物部分及び抗体への連結についての反応性官能性があるリンカーを用いて都合よく調製することができる。システインチオール、又は抗体(Ab)のアミン、例えばN末端又はリシン等のアミノ酸側鎖は、リンカー又はスペーサー試薬、PBD薬物部分(D)又は薬物-リンカー試薬(DL、D-RL)の官能基と連結を形成することができ、ここで、RLはRL1’又はRL2’であってよい。
【0188】
ADCのリンカーは、好ましくは、ADC分子の凝集を防止し、水性媒体中及び単量体状態でADCを自由に溶解し続ける。
【0189】
ADCのリンカーは、好ましくは、細胞外で安定である。細胞への輸送又は送達の前に、抗体-薬物複合体(ADC)は、好ましくは安定であり、完全であり、すなわち、抗体は薬物部分に連結したままである。このリンカーは、標的細胞外で安定であり、細胞内である効率的速度で切断されることができる。有効なリンカーは、(i)抗体の特異的結合特性を維持し;(ii)複合体又は薬物部分の細胞内送達を可能にし;(iii)複合体がその標的部位に送達又は輸送されるまで、安定であり、すなわち切断されず;及び(iv)PBD薬物部分の細胞毒性、細胞死滅効果又は細胞静止効果を維持する。上記ADCの安定性は、標準的な分析技術(例えば、質量分析法、HPLC、及び分離/分析技術LC/MS)により測定されることができる。
【0190】
上記抗体及び薬物部分の共有結合は、リンカーが2つの反応性官能基(すなわち、反応の意味において二価)があることを要する。ペプチド、核酸、薬物、毒素、抗体、ハプテン、及びレポーター基等の、2つ以上の機能的又は生物学的に活性な部分を付着させるのに有用な二価リンカー試薬が公知であり、方法はそれらの得られた複合体(Hermanson,G.T.(1996) Bioconjugate Techniques; Academic Press:New York,234-242頁)を記載する。
【0191】
他の実施形態では、リンカーは、凝集、溶解度又は反応性を調節する基で置換されてよい。例えば、スルホネート置換基は、試薬の水溶性を高めることができ、そしてリンカー試薬と抗体又は薬物部分とのカップリング反応を促進するか、又はADCの調製に用いられる合成経路に依存して、Ab-LとDL又はDL-LとAbとのカップリング反応を促進することができる。
【0192】
一実施形態では、L-RL’は以下の基:
【0193】
【化39】
(式中、星印は、PBDへの連結点を示し、Abは抗体であり、L
1は切断可能なリンカーであり、AはL
1を抗体に連結する連結基であり、L
2は共有結合であり、又は-OC(=O)と共に自己非浸透性リンカーを形成する)
である。
【0194】
好ましくは、L1は、酵素切断されうるため、切断用リンカーの活性化用のトリガーである。
【0195】
L1及びL2が存在する場合、それらの性質は、大きく異場合がある。当該基は、複合体が送達される部位の条件によって決定されることができる、切断特性に基づいて選択される。酵素の作用によって切断されるリンカーが好ましいが、pH(例えば、酸又は塩基不安定性)、温度、又は照射時(例えば、光不安定性)の変化によって切断されることができるリンカーを用いてよい。本開示では、また、還元又は酸化条件下で切断可能なリンカーであってよい。
【0196】
L1は、アミノ酸が連続した配列を含んでよい。アミノ酸配列は、酵素切断のための標的基質であってよく、それにより、N10位置からL-RL’が放出されることができる。
【0197】
一実施形態では、L1は、酵素の作用によって切断されてよい。一実施形態では、酵素はエステラーゼ又はペプチダーゼである。
【0198】
一実施形態では、L2は存在し、-OC(=O)と共に自己非浸透性リンカーを形成する。一実施形態では、L2は、酵素活性の基質であり、それにより、N10位置からL-RL’が放出されることができる。
【0199】
一実施形態では、L1は酵素の作用により切断可能であり、L2が存在する場合、酵素はL1とL2の間の連結を切断する。
【0200】
L1及びL2は、存在する場合、以下の:
-C(=O)NH-
-C(=O)O-、
-NHC(=O)-
-OC(=O)-、
-OC(=O)O-、
-NHC(=O)O-
-OC(=O)NH-及び
-NHC(=O)NH-
から選択される結合で接続されてよい。
【0201】
L2に結合するL1のアミノ基は、アミノ酸のN末端であってよく、又はアミノ酸側鎖のアミノ基、例えば、リジンアミノ酸側鎖に由来してよい。
L2に結合するL1のカルボキシル基は、アミノ酸のC末端であってよく、又はアミノ酸側鎖のカルボキシル基、例えば、グルタミン酸アミノ酸側鎖に由来してよい。
L2に結合するL1のヒドロキシル基は、アミノ酸側鎖のヒドロキシル基、例えば、セリンアミノ酸側鎖から誘導されることができる。
【0202】
用語「アミノ酸側鎖」は、(i)アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリン等の天然に存在するアミノ酸;(ii)オルニチン及びシトルリン等の少量のアミノ酸;(iii)天然に存在するアミノ酸の非天然アミノ酸、β-アミノ酸、合成類似体及び誘導体;並びに(iv)全てのエナンチオマー、ジアステレオマー、異性体濃縮、同位体標識(例えば、2H、3H、14C、15N)、保護形態、及びそれらのラセミ混合物中に見出されるそれらの基を含む。
【0203】
一実施形態では、-C(=O)O-及びL2は共に以下の基:
【0204】
【化40】
(式中、星印はN10位置への連結点を示し、波線はリンカーL
1への連結点を示し、Yは-N(H)-、-O-、-C(=O)N(H)-又は-C(=O)O-であり、nは0から3である。フェニレン環は、場合によっては、本明細書に記載されているように、1、2又は3個の置換基で置換されてよい)
を形成する。
一実施形態では、フェニレン基は、場合によっては、ハロ、NO
2、R又はORで置換されてよい。
一実施形態では、YはNHである。
一実施形態では、nは0又は1である。好ましくは、nは0である。
【0205】
YがNHであり、nが0である場合、自己-非移動性リンカーは、p-アミノベンジルカルボニルリンカー(PABC)という場合がある。
自己-非浸透性リンカーは、遠隔部位が活性化されると保護された化合物を放出させて、以下の:
【0206】
【化41】
(式中、L
*はリンカーの残りの部分の活性型である)
ように進行する(n=0)。当該基には、保護される化合物から活性化部位を分離させる利点がある。上記のように、フェニレン基は、場合によっては、置換されてよい。
【0207】
本明細書に記載される一実施形態では、基L*は、本明細書に記載されるリンカーL1であり、これはジペプチド基を含んでよい。
【0208】
他の実施形態では、-C(=O)O-及びL2は共に、以下の:
【0209】
【化42】
(式中、星印、波線、Y、及びnは、上記で定義されたとおりである)
から選択される基を形成する。各フェニレン環は、本明細書に記載されるように、場合によっては、1、2又は3個の置換基で置換されてよい。一実施形態では、Y置換基があるフェニレン環は、場合によっては、置換されてよく、Y置換基がないフェニレン環は非置換である。一実施形態では、Y置換基があるフェニレン環は非置換であり、Y置換基がないフェニレン環は、場合によっては、置換されてよい。
【0210】
他の実施形態では、-C(=O)O-及びL2は共に、以下の:
【0211】
【化43】
(式中、星印、波線、Y、及びnは上記で定義されたもの、EはO、S、又はNR、DはN、CH、又はCR、FはN、CH、又はCRである)
から選択される基を形成する。
一実施形態では、DはNである。
一実施形態では、DはCHである。
一実施形態では、EはO又はSである。
一実施形態では、FはCHである。
好ましい態様では、リンカーはカテプシン不安定リンカーである。
【0212】
一実施形態では、L1はジペプチドを含み、ジペプチドを-NH-X1-X2-CO-として表す場合、-NH-及び-COは各々、アミノ酸基X1及びX2のN-末端及びC-末端を表す。ジペプチド中のアミノ酸は、天然アミノ酸のいかなる組合せであってよい。リンカーがカテプシン不安定リンカーである場合、ジペプチドは、カテプシン媒介切断のための作用部位であってよい。
さらに、カルボキシル又はアミノ側鎖官能基、例えば、各々Glu及びLysがあるアミノ酸基について、CO及びNHは、その側鎖官能基を表してよい。
【0213】
一実施形態では、ジペプチド-NH-X1-X2-CO-における基-X1-X2-は、以下の:
-Phe-Lys-、
-Val-Ala-、
-Val-Lys-、
-Ala-Lys-
-Val-Cit-、
-Phe-Cit-、
-Leu-Cit-、
-Ile-Cit-、
-Phe-Arg-、及び
-Trp-Cit-
(式中、Citはシトルリンである)
から選択される。
【0214】
好ましくは、ジペプチド-NH-X1-X2-CO-における基-X1-X2-は、以下の:
-Phe-Lys-、
-Val-Ala-、
-Val-Lys-、
-Ala-Lys-
-Val-Cit-
から選択される。
【0215】
最も好ましくは、ジペプチド-NH-X1-X2-CO-における基-X1-X2-は、-Phe-Lys-、-Val-Ala-又は-Val-Cit-である。
【0216】
他のジペプチドの組み合わせは、Dubowchik et al., Bioconjugate Chemistry,2002,13,855-869に記載されているものを含めて、用いることができる。
【0217】
一実施形態では、アミノ酸側鎖は、必要に応じて誘導体化される。例えば、アミノ酸側鎖のアミノ基又はカルボキシ基を誘導体化することができる。
一実施形態では、リシン等の側鎖アミノ酸のアミノ基NH2は、NHR及びNRR’からなる群から選択される誘導体化された形態である。
一実施形態では、側鎖アミノ酸、例えばアスパラギン酸のカルボキシ基COOHは、COOR、CONH2、CONHR及びCONRR’からなる群から選択される誘導体化形態である。
【0218】
一実施形態では、アミノ酸側鎖は、必要に応じて化学的に保護される。側鎖保護基は、基RLに関して後述するような基であってよい。本発明者らは、保護されたアミノ酸配列が酵素により切断可能であることを立証した。例えば、Boc側鎖で保護されたLys残基を含むジペプチド配列がカテプシンにより切断可能であることが確立されている。
【0219】
アミノ酸の側鎖の保護基は当該分野で周知であり、Novabiochemカタログに記載されている。追加の保護基戦略は、有機合成、Greene及びWutsの保護基に記載されている。
反応性側鎖機能があるアミノ酸について考えられる側鎖保護基は以下の:
Arg:Z,Mtr,Tos;
アスタン:Trt,Xan;
Asp:Bzl,t-Bu;
Cys:Acm,Bzl,Bzl-OMe,Bzl-Me,Trt;
Glu:Bzl、t-Bu;
Gln:Trt、Xan;
His:Boc,Dnp,Tos,Trt;
Lys:Boc,Z-Cl,Fmoc,Z,Alloc;
Ser:Bzl,TBDMS,TBDPS;
Thr:Bz;
Trp:Boc;
Tyr:Bzl,Z,Z-Br.
とおりである。
一実施形態では、側鎖保護は、存在する場合、キャッピング基として、又はその一部として提供される基に直交するように選択される。従って、側鎖保護基を除去しても、キャッピング基、又はキャッピング基の一部であるいかなる保護基官能性は除去されない。
【0220】
本開示の他の実施形態では、選択されるアミノ酸には、反応性側鎖機能がない。例えば、アミノ酸は、Ala、Gly、Ile、Leu、Met、Phe、Pro、及びValから選択されることができる。
一実施形態では、ジペプチドは、自己-非移動性リンカーと併用される。自己-非移動性リンカーは-X2-に連結されることができる。
【0221】
自己-非移動性リンカーが存在する場合、-X2-は自己-非移動性リンカーに直接連結される。好ましくは、基-X2-COはYに結合しており、YはNHであり、それによって基-X2-CO-NH-を形成する。
【0222】
-NH-X1-はAに直接接続されており、Aは-COにより-X1-のアミド結合を形成する官能基を含んでよい。
【0223】
一実施形態では、L1及びL2は、-OC(=O)と共にNH-X1-X2-CO-PABC-基を含む。PABC基はN10位置に直接接続される。好ましくは、自己-非浸透性リンカー及びジペプチドはともに以下の-NH-Phe-Lys-CO-NH-PABC-基:
【0224】
【化44】
(式中、(式中、星印はN10位置への連結点を示し、波線はリンカーL
1の残りの部分への連結点又はAへの連結点を示す)
を形成する。好ましくは、波線はAへの連結点を示す。Lysアミノ酸の側鎖は、例えば、上記のように、Boc、Fmoc、又はAllocで保護されることができる。
【0225】
あるいは、自己-非浸透性リンカー及びジペプチドはともに、以下の-NH-Val-Ala-CO-NH-PABC-基:
【0226】
【化45】
(式中、(式中、星印及び波線は、上記で定義されたとおりである)
を形成する。
【0227】
あるいは、自己-非浸透性リンカー及びジペプチドはともに、以下の-NH-Val-Cit-CO-NH-PABC-基:
【0228】
【化46】
(式中、星印及び波線は、上記で定義されたとおりである)
を形成する。
【0229】
一実施形態では、Aは共有結合である。したがって、L1と抗体は直接連結されている。例えば、L1が連続するアミノ酸配列を含む場合、配列のN-末端は抗体に直接連結してよい。
つまり、Aが共有結合である場合、抗体とL1との間の連結は、以下の:
-C(=O)NH-
-C(=O)O-、
-NHC(=O)-
-OC(=O)-、
-OC(=O)O-、
-NHC(=O)O-
-OC(=O)NH-
-NHC(=O)NH-
-C(=O)NHC(=O)-
-S-,
-S-S-、
-CH2C(=O)-、
=N-NH-
から選択されることができる。
【0230】
抗体に結合するL1のアミノ基は、アミノ酸のN末端であってよく、又はアミノ酸側鎖のアミノ基、例えばリジンアミノ酸側鎖に由来してよい。
抗体に結合するL1のカルボキシル基は、アミノ酸のC末端であってよく、又はアミノ酸側鎖のカルボキシル基、例えばグルタミン酸アミノ酸側鎖に由来してよい。
抗体に結合するL1のヒドロキシル基は、アミノ酸側鎖のヒドロキシル基、例えば、セリンアミノ酸側鎖から誘導されることができる。
抗体に結合するL1のチオール基は、アミノ酸側鎖のチオール基、例えば、セリンアミノ酸側鎖から誘導されることができる。
L1のアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びチオール基に関する上記記載は、抗体にも適用される。
【0231】
一実施形態では、L2は-OC(=O)とともに以下の:
【0232】
【化47】
(式中、星印はN10位置への連結点を示し、波線はL
1への連結点を示し、nは0~3であり、Yは共有結合又は官能基であり、Eは、例えば酵素作用又は光による活性化基であり、それによって、自己非浸透性ユニットを生成する)
のように表される。フェニレン環は、本明細書に記載されているように、場合によっては、1、2又は3個の置換基でさらに置換されてよい。一実施形態では、フェニレン基は、場合によっては、ハロ、NO
2、R又はORでさらに置換される。好ましくは、nは0又は1であり、最も好ましくは0である。
Eは、基が、例えば、光又は酵素の作用によって、活性化に対して感受性であるように選択される。Eは-NO
2又はグルコロン酸であってよい。前者はニトロレダクターゼの作用を受けやすく、後者はβグルコロニダーゼの作用を受けやすい。
この実施形態では、自己-非浸透性リンカーは、遠隔部位が活性化されると保護された化合物を放出させて、以下の:
【0233】
【化48】
(式中、星印はN10位置への連結点を示し、E*はEの活性型を示し、Yは上記の通りである)
ように進行する(n=0)。当該基には、保護される化合物から活性化部位を分離させるという利点がある。上記のように、フェニレン基は、場合によっては、さらに置換されてよい。
基YはL
1との共有結合であってよい。
基Yは、以下の:
-C(=O)-
-NH-
-O-
-C(=O)NH-
-C(=O)O-、
-NHC(=O)-
-OC(=O)-、
-OC(=O)O-、
-NHC(=O)O-
-OC(=O)NH-
-NHC(=O)NH-
-NHC(=O)NH、
-C(=O)NHC(=O)-及び、
-S-
から選択される官能基であってよい。
【0234】
L1がジペプチドである場合、Yは-NH-又は-C(=O)-であることが好ましく、それによってL1とYの間にアミド結合を形成する。
他の実施形態では、Aはスペーサー基である。したがって、L1と抗体は間接的に連結している。
L1とAは、以下の:
-C(=O)NH-
-C(=O)O-、
-NHC(=O)-
-OC(=O)-、
-OC(=O)O-、
-NHC(=O)O-
-OC(=O)NH-及び
-NHC(=O)NH-
から選択される結合で接続されてよい。
【0235】
一実施形態では、基Aは以下の:
【0236】
【化49】
(式中、星印はL
1への連結点を示し、波線は抗体への連結点を示し、nは0~6である)
で表される。一実施形態では、nは5である。
【0237】
一実施形態では、基Aは以下の:
【0238】
【化50】
(式中、星印はL
1への連結点を示し、波線は抗体への連結点を示し、nは0~6である)
で表される。一実施形態では、nは5である。
一実施形態では、A群は以下の通りである:
一実施形態では、基Aは以下の:
【0239】
【化51】
(式中、星印はL
1への連結点を示し、波線は抗体への連結点を示し、nは0又は1、mは0から30である)
で表される。好ましい実施形態では、nは1であり、mは0~10、1~8、好ましくは4~8、最も好ましくは4又は8である。他の実施形態では、mは10~30、好ましくは20~30である。あるいは、mは0~50である。この実施形態では、mは好ましくは10~40であり、nは1である。
【0240】
一実施形態では、基Aは以下の:
【0241】
【化52】
(式中、星印はL
1への連結点を示し、波線は抗体への連結点を示し、nは0又は1、mは0から30である)
で表される。好ましい実施形態では、nは1であり、mは0~10、1~8、好ましくは4~8、最も好ましくは4又は8である。他の実施形態では、mは10~30、好ましくは20~30である。あるいは、mは0~50である。この実施形態では、mは好ましくは10~40であり、nは1である。
【0242】
一実施形態では、抗体とAとの間の連結は、抗体のチオール残基及びAのマレイミド基を介する。
一実施形態では、抗体とAとの間の接続は、以下の:
【0243】
【化53】
(式中、星印は、Aの残りの部分への連結点を示し、波線は、抗体の残りの部分への連結点を示す)
ように表される。この態様では、S原子は、通常、抗体に由来する。
【0244】
上記実施形態の各々において、マレイミド由来の基の代わりに以下の:
【0245】
【化54】
(式中、波線は、上記同様抗体への連結点を示し、星印は、基Aの残りの部分への結合を示す)
に示す他の官能基を用いることができる。
【0246】
一実施形態では、マレイミド由来の基を以下の基:
【0247】
【化55】
(式中、波線は抗体への連結点を示し、星印は基Aの残りの部分への結合を示す)
で置換する。
【0248】
一実施形態では、マレイミド由来の基は、場合によっては、抗体とともに選択される、以下の基:
-C(=O)NH-
-C(=O)O-、
-NHC(=O)-
-OC(=O)-、
-OC(=O)O-、
-NHC(=O)O-
-OC(=O)NH-
-NHC(=O)NH-
-NHC(=O)NH、
-C(=O)NHC(=O)-
-S-,
-S-S-、
-CH2C(=O)-
-C(=O)CH2-、
=N-NH-、及び
-NH-N=
で置換される。
【0249】
一実施形態では、マレイミド由来の基は、場合によっては、抗体とともに選択される、以下の基:
【0250】
【化56】
(式中、波線は抗体への連結点又は基Aの残りの部分への連結点を示し、星印は抗体への連結点又は基Aの残りの部分への連結点のもう一方を示す)
で置換される。
L
1を抗体に接続するのに適した他の基は、国際公開第2005/082023号パンフレットに記載される。
【0251】
一実施形態では、連結基Aは存在し、トリガーL1は存在し、自己免疫性リンカーL2は存在しない。つまり、L1と薬物ユニットは、連結を介して直接接続される。同様に、この実施形態では、L2は連結体である。このことは、DLが式IIの場合に特に当てはまる。
L1とDは、以下の:
-C(=O)N<、
-C(=O)O-、
-NHC(=O)-
-OC(=O)-、
-OC(=O)O-、
-NHC(=O)O-
-OC(=O)N<、及び
-NHC(=O)N<、
(式中、N<又はOare部分はDの部分である)
から選択された連結体によって連結されることができる。
【0252】
一実施形態では、L1及びDは、好ましくは、以下の:
-C(=O)N<、
-NHC(=O)-
から選択された連結体によって連結されることができる。
【0253】
一実施形態では、L1はジペプチドを含み、ジペプチドの一端はDに結合している。上記のように、ジペプチド中のアミノ酸は、天然アミノ酸及び非天然アミノ酸のいかなる組み合わせであってよい。ある実施形態では、ジペプチドは、天然アミノ酸を含む。リンカーがカテプシン不安定リンカーである場合、ジペプチドはカテプシン媒介切断用の作用部位である。ジペプチドはつまりカテプシンの認識部位である。
【0254】
一実施形態では、ジペプチド-NH-X1-X2-CO-における基-X1-X2-は、以下の:
-Phe-Lys-、
-Val-Ala-、
-Val-Lys-、
-Ala-Lys-
-Val-Cit-、
-Phe-Cit-、
-Leu-Cit-、
-Ile-Cit-、
-Phe-Arg-、及び
-Trp-Cit-
から選択される。当該ジペプチド中、-NH-はX1のアミノ基、COはX2のカルボニル基である。
【0255】
好ましくは、ジペプチド-NH-X1-X2-CO-における基-X1-X2-は、以下の:
-Phe-Lys-、
-Val-Ala-、
-Val-Lys-、
-Ala-Lys-
-Val-Cit-
から選択される。
【0256】
最も好ましくは、ジペプチド-NH-X1-X2-CO-における基-X1-X2-は、-Phe-Lys-、-Val-Ala-又は-Val-Cit-である。
【0257】
目的の他のジペプチドの組み合わせには、以下の:
-Gly-Gly-
-Pro-Pro-、及び
-Val-Glu-
があげられる。
上記のものを含む他のジペプチドの組み合わせを用いることができる。
【0258】
一実施形態では、L1-Dは以下の:
【0259】
【化57】
(式中、-NH-X
1-X
2-CO-はジペプチド、-N<は薬物単位の一部、星印は薬物単位の残りの部分への連結点、波線はL
1の残りの部分への連結点又はAへの連結点を示す)
の通りである。
【0260】
一実施形態では、ジペプチドはバリン-アラニンであり、L1-Dは以下の:
【0261】
【化58】
(式中、星印、-N<、及び波線は、上で定義したとおりである)
の通りである。
【0262】
一実施形態では、ジペプチドはフェニルアルニン-リシンであり、L1-Dは以下の:
【0263】
【化59】
(式中、星印、-N<、及び波線は、上で定義したとおりである)
の通りである。
一実施形態では、ジペプチドはバリン-シトルリンである。
【0264】
一実施形態では、群A-L1は以下の:
【0265】
【化60】
(式中、星印はL
2又はDへの連結点を示し、波線はリガンドユニットへの連結点を示し、nは0~6である)
の通りである。一実施形態では、nは5である。
【0266】
一実施形態では、群A-L1は以下の:
【0267】
【化61】
(式中、星印はL
2又はDへの連結点を示し、波線はリガンドユニットへの連結点を示し、nは0~6である)
の通りである。一実施形態では、nは5である。
【0268】
一実施形態では、群A-L1は以下の:
【0269】
【化62】
(式中、星印は、L
2又はDへの連結点を示し、波線は、リガンドユニットへの連結点を示し、nは、0又は1であり、mは、0から30である)
の通りである。好ましい実施形態では、nは1であり、mは0~10、1~8、好ましくは4~8、最も好ましくは4又は8である。
【0270】
一実施形態では、群A-L1は以下の:
【0271】
【化63】
(式中、星印は、L
2又はDへの連結点を示し、波線は、リガンドユニットへの連結点を示し、nは、0又は1であり、mは、0から30である)
の通りである。好ましい実施形態では、nは1であり、mは0~10、1~7、好ましくは3~7、最も好ましくは3又は7である。
【0272】
一実施形態では、群A-L1は以下の:
【0273】
【化64】
(式中、星印はL
2又はDへの連結点を示し、波線はリガンドユニットへの連結点を示し、nは0~6である)
の通りである。一実施形態では、nは5である。
【0274】
一実施形態では、群A-L1は以下の:
【0275】
【化65】
(式中、星印はL
2又はDへの連結点を示し、波線はリガンドユニットへの連結点を示し、nは0~6である)
の通りである。一実施形態では、nは5である。
一実施形態では、グループA~L
1は以下の通りである:
一実施形態では、群A-L
1は以下の:
【0276】
【化66】
(式中、星印は、L
2又はDへの連結点を示し、波線は、リガンドユニットへの連結点を示し、nは、0又は1であり、mは、0から30である)
の通りである。好ましい実施形態では、nは1であり、mは0~10、1~8、好ましくは4~8、最も好ましくは4又は8である。
【0277】
一実施形態では、群A-L1は以下の:
【0278】
【化67】
(式中、星印は、L
2又はDへの連結点を示し、波線は、リガンドユニットへの連結点を示し、nは、0又は1であり、mは、0から30である)
の通りである。好ましい実施形態では、nは1であり、mは0~10、1~8、好ましくは4~8、最も好ましくは4又は8である。
【0279】
一実施形態では、群A-L1は以下の:
【0280】
【化68】
(式中、星印は、L
2又はDへの連結点を示し、Sは、リガンドユニットの硫黄基であり、波線は、リガンドユニットの残りの部分への連結点を示し、nは、0~6である)
の通りである。一実施形態では、nは5である。
【0281】
一実施形態では、群A-L1は以下の:
【0282】
【化69】
(式中、星印は、L
2又はDへの連結点を示し、Sは、リガンドユニットの硫黄基であり、波線は、リガンドユニットの残りの部分への連結点を示し、nは、0~6である)
の通りである。一実施形態では、nは5である。
【0283】
一実施形態では、群A1-L1群は以下の:
【0284】
【化70】
(式中、星印は、L
2又はDへの連結点を示し、Sは、リガンドユニットの硫黄基であり、波線は、リガンドユニットの残りの部分への連結点を示し、nは、0又は1であり、mは、0~30である)
の通りである。好ましい実施形態では、nは1であり、mは0~10、1~8、好ましくは4~8、最も好ましくは4又は8である。
【0285】
一実施形態では、群A1-L1群は以下の:
【0286】
【化71】
(式中、星印は、L
2又はDへの連結点を示し、波線は、リガンドユニットへの連結点を示し、nは、0又は1であり、mは、0から30である)
の通りである。好ましい実施形態では、nは1であり、mは0~10、1~7、好ましくは4~8、最も好ましくは4又は8である。
【0287】
一実施形態では、群A1-L1群は以下の:
【0288】
【化72】
(式中、星印は、L
2又はDへの連結点を示し、波線は、リガンドユニットの残りの部分への連結点を示し、nは、0~6である)
の通りである。一実施形態では、nは5である。
【0289】
一実施形態では、群A1-L1群は以下の:
【0290】
【化73】
(式中、星印は、L
2又はDへの連結点を示し、波線は、リガンドユニットの残りの部分への連結点を示し、nは、0~6である)
の通りである。ここで、。一実施形態では、nは5である。
【0291】
一実施形態では、群A1-L1群は以下の:
【0292】
【化74】
(式中、星印は、L
2又はDへの連結点を示し、波線は、リガンドユニットの残りの部分への連結点を示し、nは、0又は1であり、mは、0から30である)
の通りである。好ましい実施形態では、nは1であり、mは0~10、1~8、好ましくは4~8、最も好ましくは4又は8である。
【0293】
一実施形態では、群A1-L1群は以下の:
【0294】
【化75】
(式中、星印は、L
2又はDへの連結点を示し、波線は、リガンドユニットの残りの部分への連結点を示し、nは、0又は1であり、mは、0から30である)
の通りである。好ましい実施形態では、nは1であり、mは0~10、1~8、好ましくは4~8、最も好ましくは4又は8である。
【0295】
基RL’は、グループRLから導出される。基RLは、RLの官能基への抗体の連結により群RL’に変換されることができる。RLをRL’に変換するために、他の工程が行われてよい。当該工程が存在する場合、保護基の除去、又は適当な官能基の設置を含んでよい。
【0296】
RL
リンカーは、1以上のアミノ酸ユニットを含むプロテアーゼ切断可能なペプチド部分を含むことができる。ペプチドリンカー試薬は、t-BOC化学(Geiser et al “Automation of solid-phase peptide synthesis” in Macromolecular Sequencing and Synthesis,Alan R.Liss,Inc, 1988,pp.199-218)及びFmoc/HBTU化学(Fields,G.and Noble,R.(1990)“Solid phase peptide synthesis using 9-fluoroenylmethoxycarbonyl amino acids”,Int.J.Peptide Protein Res.J.Peptide Protein Res.35:161-214)等の、ペプチド化学の分野で周知の固相又は液相合成法(E.Schroeder and K.Luebke,The Peptides,volume 1,pp 76-136(1965)Academic Press)によって、Rainin Symphony Peptide Synthesizer(Protein Technologies,Inc.,Tucson,AZ)やModel 433(Applied Biosystems,Foster City,CA)等の自動合成機を用いて調製することができる。
【0297】
例示的なアミノ酸リンカーとしては、ジペプチド、トリペプチド、テトラペプチド又はペンタペプチドがあげられる。例示的なジペプチドとしては、バリン-シトルリン(vc又はval-cit)、アラニン-フェニルアラニン(af又はala-phe)があげられる。例示的なトリペプチドとしては、グリシン-バリン-シトルリン(gly-val-cit)及びグリシン-グリシン-グリシン(gly-gly-gly)があげられる。アミノ酸リンカー成分を含むアミノ酸残基には、天然に存在するもの、並びに少量のアミノ酸及び天然に存在しないアミノ酸類似体、例えばシトルリンが含まれる。アミノ酸リンカー成分は、特定の酵素、例えば、腫瘍関連プロテアーゼ、カテプシンB、C及びD、又はプラスミンプロテアーゼによる酵素切断に対してそれらの選択性において設計及び最適化することができる。
【0298】
アミノ酸側鎖には、天然に存在するもの、並びに少量のアミノ酸及び非天然アミノ酸類似体、例えばシトルリンが含まれる。アミノ酸側鎖としては、水素、メチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、ベンジル、p-ヒドロキシベンジル、-CH2OH、-CH(OH)CH3、-CH2CH2SCH3、-CH2COH2、-CH2COOH2、-CH2COOH、-(CH2)3NHC(=NH)NH2、-(CH2)3NHCH2、-(CH2)3NHCH3、-(CH2)3NHCHHO、-(CH2)4NHC(=NH)NH2、-(CH2)4NHCH3、-(CH2)4NHCH、-(CH2)4NHCONH2、-(CH2)4NHCONH2、-(CH2)4NHCONH2、-(CH2)CH2CH(OH)CH2NH2、2-ピリジルメチルがあげられる。-、3-ピリジルメチル-、4-ピリジルメチル-、フェニル、シクロヘキシル、及び以下の:
【0299】
【化76】
構造があげられる。アミノ酸側鎖が水素(グリシン)以外のものを含む場合、アミノ酸側鎖が結合している炭素原子はキラルである。アミノ酸側鎖が結合している炭素原子は、それぞれ独立に(S)又は(R)配置、あるいはラセミ混合物である。従って、薬物-リンカー試薬は、エナンチオマー的に純粋、ラセミ体、又はジアステレオマーであってよい。
【0300】
例示的実施形態では、アミノ酸側鎖は、アラニン、2-アミノ-2-シクロヘキシル酢酸、2-アミノ-2-フェニル酢酸、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、ノルロイシン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、γ-アミノ酪酸、α,α-ジメチルγ-アミノ酪酸、β,β-ジメチルγ-アミノ酪酸、オルニチン、及びシトルリン(Cit)を含む天然及び非天然アミノ酸の側鎖から選択される。
【0301】
パラ-アミノベンジルカルバモイル(PAB)自己非浸透性スペーサーがある抗体への連結用のリンカー-PBD薬物部分中間体を構築するのに有用な例示的バリン-シトルリン(val-cit又はvc)ジペプチドリンカー試薬は、以下の構造:
【0302】
【化77】
(式中、QはC
1~C
8アルキル、-O-(C
1~C
8アルキル)、-ハロゲン、-NO
2又は-CNであり、mは0~4の範囲の整数である)
を備える。
【0303】
p-アミノベンジル基がある例示的なphe-lys(Mtr)ジペプチドリンカー試薬は、Dubowchik,et al.(1997)Tetrahedron Letters,38:5257-60に従って調製することができ、以下の構造:
【0304】
【化78】
(式中、Mtrはモノ-4-メトキシトリチルであり、QはC
1~C
8アルキル、-O-(C
1~C
8アルキル)、-ハロゲン、-NO
2又は-CNであり、mは0~4の範囲の整数である)
を備える。
【0305】
「自己-非移動性リンカー」PAB(para-アミノベンジルオキシカルボニル)は、抗体薬物複合体中の抗体に薬物部分を結合する(Carl et al(1981)J. Med.Chem.24:479-480;Chakravarty et al(1983)J.Med.Chem.26:638-644;以下の米国特許第6214345号;米国特許出願公開第20030130189号;米国特許出願公開第20030096743号;米国特許第6759509号;米国特許出願公開第20040052793号;米国特許第6218519号;米国特許第6835807号;米国特許第6268488号;国際公開第98/13059号パンフレット;米国特許第6677435号米国特許第5621002号;米国特許出願公開第20040121940号;国際公開第2004/032828号パンフレット).PAB以外の自己非浸透性スペーサーの他の例としては、これらに限定されないが、以下の:(i)2-アミノイミダゾール-5-メタノール誘導体等のPAB基と電子的に類似する芳香族化合物(Hay et al.(1999)Bioorg.Med.Chem.Lett.9:2237)、チアゾール(米国特許第7375078号)、複数の細長いPAB単位(de Groot et al(2001)J.Org.Chem.66:8815-8830)。;及びオルト又はパラアミノベンジルアセタール;並びに(ii)ホモログ化スチリルPAB類似体(米国特許第7223837号)があげられる。置換及び非置換の4-アミノ酪酸アミド(Rodrigues et al(1995)Chemistry Biology 2:223)、適当に置換されたビシクロ[2.2.1]及びビシクロ[2.2.2]環系(Storm et al(1972)J.Amer.Chem.Soc.94:5815)及び2-アミノフェニルプロピオン酸アミド(Amsberry,et al(1990)J.Org.Chem.55:5867)等の、アミド結合加水分解によって環化するスペーサーを用いることができる。グリシンで置換されたアミン含有薬物の除去(Kingsbury et al(1984)J.Med.Chem.27:1447)はまた、ADCにおいて有用な自己非移動性スペーサーの例である。
【0306】
一実施形態では、バリン-シトルリンジペプチドPABアナログ試薬には、2,6ジメチルフェニル基があり、以下の構造:
【0307】
【0308】
本開示の抗体薬物複合体に有用なリンカー試薬には、限定はしないが、BMPEO、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、並びにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)、かつ、ビス-マレイミド試薬: DTME、BMB、BMDB、BMH、BMOE、1,8-ビス-マレイミドジエチレングリコール(BM(PEO)2)、及び1,11-ビス-マレイミドトリエチレングリコール(BM(PEO)3)があげられ、これらは、Pierce Biotechnology,Inc.、ThermoScientific、Rockford、IL、及び他の試薬供給者から市販されている。ビス-マレイミド試薬により、逐次的又は同時の様式で、チオール含有薬物部分、標識、又はリンカー中間体への、抗体のシステイン残基の遊離チオール基を連結することができる。抗体、PBD薬物部分、又はリンカー中間体のチオール基と反応性であるマレイミド以外の他の官能基は、ヨードアセトアミド、ブロモアセトアミド、ビニルピリジン、ジスルフィド、ピリジルジスルフィド、イソシアネート、及びイソチオシアネートがあげられる。
【0309】
【化80】
リンカー試薬の他の実施形態は、N-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタン酸塩(SPP)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP、Carlsson et al(1978)Biochem.J.173:723-737)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(塩酸ジメチルアジイミデート等)、活性エステル(ジスクシンイミジルスベラート等)、アルデヒド類(グルタルアルデヒド等)、ビスアジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン等)、ビスジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン等)、ジイソシアネート(トルエン2,6-ジイソシアネート等)、及びビス活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン等)等がある。
【0310】
また、有用なリンカー試薬は、Molecular Biosciences Inc.(Boulder,CO)などの市販品を利用するか、Toki et al(2002)J.Org.Chem.67:1866-1872;米国特許第6214345号;国際公開第02/088172号;米国特許第2003130189号;米国特許第2003096743号;国際公開第03/026577号;国際公開第03/043583号;及び国際公開第04/032828号に記載されている手順に従って合成することができる。
【0311】
リンカーは、枝分かれした多機能リンカー部分を介して2つ以上の薬剤部分を抗体に共有結合させるための樹状突起型リンカーであってよい(米国特許出願公開第2006/116422号及び同2005/271615号;de Groot et al(2003)Angew.Chem.Int.Ed.42:4490-4494;Amir et al(2003)Angew.Chem.Int.Ed.42:4494-4499;Shamis et al(2004)J.Am.Chem.Soc.126:1726-1731;Sun et al(2002)Bioorganic&Medicinal Chemistry Letters 12:2213-2215;Sun et al(2003)Bioorganic&Medicinal Chemistry 11:1761-1768;King et al(2002)Tetrahedron Letters43:1987-1990)。樹状型治療的目的リンカーは、抗体に対する薬物のモル比、すなわち充填率を高めることができ、これはADCの効力に関連する。このように、抗体に反応性システインチオール基が1つしかない場合、樹状又は分岐したリンカーを介して多数の薬物部位を結合させることができる。
【0312】
樹状型リンカーの1つの例示的実施形態は、以下の:
【0313】
【化81】
(式中、星印は、PBD部分のN10位置への連結点を示す)
構造を備える。
R
Cキャッピング基
本開示の第1の態様の複合体は、N10位置にキャッピング基R
Cがあってよい。化合物Eはキャッピング基R
Cがあってよい。
一実施形態では、複合体が二量体であり、各単量体が式(A)で示される場合、単量体ユニットの1つにおける基R
10は、キャッピング基R
Cであるか、又は基R
10である。
一実施形態では、複合体が二量体であり、各単量体が式(A)で示される場合、単量体ユニットの1つにおける基R
10はキャッピング基R
Cである。
一実施形態では、化合物Eが二量体であり、各単量体が式(E)で表される場合、単量体ユニットの1つにおけるR
L群は、キャッピング基R
Cであるか、又は抗体と結合するためのリンカーである。
一実施形態では、化合物Eが二量体であり、各単量体が式(E)で表される場合、単量体ユニットの1つにおける基R
Lはキャッピング基R
Cである。
【0314】
基RCは、PBD部分のN10位置から除去することができるが、N10-C11イミン結合、カルビノールアミン、置換されたカルビノールアミン(式中、QR11はOSO3M、重亜硫酸付加物、チオカルビノアミン、置換されたチオカルビノアミン、又は置換されたカルビナラミンである)は残存する。
【0315】
一実施形態では、RCは、N10-C11イミン結合、カルビノールアミン、置換カビノールアミン、又は、QR11がOSO3Mである場合には、重亜硫酸付加物を残存させるために除去される保護基であってよい。一実施形態では、RCは、N10-C11イミン結合を残存させるために除去されてよい保護基である。
基RCは、例えば、N10-C11イミン結合、カルビノールアミン等を生成するために、基R10を除去するのに必要な条件と同じ条件下で除去できることを意図した。キャッピング基は、N10位置で意図した官能基に対する保護基として作用する。キャッピング基は、抗体に対して反応性でないことが意図される。たとえば、RCはRLと同じでない。
【0316】
キャッピング基がある化合物は、イミン単量体がある二量体の合成の中間体として用いることができる。あるいは、キャッピング基がある化合物を複合体として用いることができ、ここで、キャッピング基を標的位置で除去して、イミン、カルビノールアミン、置換カビノールアミン等を得る。従って、この実施形態では、キャッピング基は、本発明者らの以前の出願国際公開第00/12507号パンフレットに定義されているように、治療的に除去できる窒素保護基という場合がある。
【0317】
一実施形態では、基RCは、基R10のリンカーRLを切断する条件下で除去できる。従って、一実施形態では、キャッピング基は、酵素の作用によって切断できる。
他の実施形態では、キャッピング基は、リンカーRLの抗体への結合の前に除去できる。この実施形態では、キャッピング基は、リンカーRLを切断しない条件下で除去できる。
化合物が、抗体への連結を形成する官能基G1を含む場合、キャッピング基は、G1の付加又は非マスキングの前に除去できる。
キャッピング基は、二量体中の単量体単位の1つのみが抗体に確実に連結されるための保護基戦略の一部として用いることができる。
【0318】
キャッピング基は、N10-C11イミン結合のマスクとして用いることができる。キャッピング基は、化合物においてイミン官能性が必要になる時期に除去されることができる。キャッピング基はまた、上記のように、カルビノールアミン、置換カビノールアミン、及び重亜硫酸付加物用のマスクでもある。
【0319】
RCは、N10保護基、例えば、本発明者の先の出願、国際公開第00/12507号パンフレットに記載されている基であってよい。一実施形態では、RCは、本発明者らの先の出願、国際公開第00/12507号パンフレットに定義されているように、治療的に除去できる窒素保護基である。
一実施形態では、RCはカルバメート保護基である。
一実施形態では、カルバメート保護基は、以下の:
Alloc,Fmoc,Boc,Troc,Teoc,Psec,Cbz及びPNZ
から選択される。
場合によっては、カルバメート保護基は、Mocからさらに選択される。
一実施形態では、RCは、抗体へ連結するための官能基がないリンカー基RLである。
【0320】
本出願は、特に、カルバメートであるRC基に関する。
一実施形態では、RCは以下の:
【0321】
【化82】
(式中、星印は、N10位置への連結点を示し、G
2は終結基であり、L
3は、共有結合であるか、又は切断可能なリンカーL
1、L
2は、共有結合であるか、又はOC(=O)とともに自己-非修飾性リンカーを形成する)
基である。
L
3及びL
2がともに共有結合である場合、G
2及びOC(=O)は共に、上記定義のようにカルバメート保護基を形成する。
L
1は、R
10に関して上記で定義されたものである。
L
2は、R
10に関して上記で定義される通りである。
周知の保護基に基づくものを含む、様々な終結基が以下に記載される。
【0322】
一実施形態では、L3は、切断可能なリンカーL1であり、L2は、OC(=O)と共に、自己-非修飾性リンカーを形成する。この実施形態では、G2は、Ac(アセチル)若しくはMoc、又は以下の:
Alloc,Fmoc,Boc,Troc,Teoc,Psec,Cbz及びPNZ
から選択される。
場合によっては、カルバメート保護基は、Mocからさらに選択される。
【0323】
他の実施形態では、G2はアシル基-C(=O)G3であり、ここでG3はアルキル(シクロアルキル、アルケニル及びアルキニルを含む)、ヘテロアルキル、ヘテロシクリル及びアリール(ヘテロアリール及びカルボアリールを含む)から選択される。当該基は場合によっては置換されてよい。適当な場合、L3又はL2のアミノ基と共にアシル基がアミド結合を形成してよい。アシル基は、L3又はL2のヒドロキシ基と共に、適当な場合、エステル結合を形成することができる。
【0324】
一実施形態では、G3はヘテロアルキルである。ヘテロアルキル基はポリエチレングリコールを含んでよい。ヘテロアルキル基には、アシル基に隣接するO又はN等のヘテロ原子があってよく、それにより、適当な場合、基L3又はL2に存在するヘテロ原子があるカルバメート又は炭酸基を形成する。
【0325】
一実施形態では、G3はNH2、NHR及びNRR’から選択される。好ましくは、G3はNRR’である。
一実施形態では、G2は、以下の:
【0326】
【化83】
(式中、星印はL
3への連結点を示し、nは0~6であり、G
4はOH、OR、SH、SR、COOR、CONH
2、CONHR、CONRR’、NH
2、NHR、NRR’、NO
2、及びハロから選択される。OH、SH、NH
2、NHRは保護されている)で表される。一実施形態では、nは1~6であり、好ましくはnは5である。一実施形態では、G
4は、OR、SR、COOR、CONH
2、CONHR、CONRR’、及びNRR’である。一実施形態では、G
4はOR、SR、及びNRR’である。好ましくは、G
4はOR及びNRR’から選択され、最も好ましくはG
4はORである。最も好ましくは、G
4はOMeである。
【0327】
一実施形態では、グループG2は以下の:
【0328】
【化84】
(式中、星印はL
3への連結点を示し、n及びG
4は上で定義したとおりである)
で表される。
【0329】
一実施形態では、グループG2は以下の:
【0330】
【化85】
(式中、星印はL
3への連結点を示し、nは0又は1、mは0から50、G
4はOH、OR、SH、SR、COOR、CONH
2、CONHR、CONRR’、NH
2、NHR、NRR’、NO
2、及びハロから選択される)
で表される。好ましい実施形態では、nは1であり、mは0~10、1~2、好ましくは4~8、最も好ましくは4又は8である。他の実施形態では、nは1であり、mは10~50、好ましくは20~40である。OH、SH、NH
2、NHRは保護されている。一実施形態では、G
4は、OR、SR、COOR、CONH
2、CONHR、CONRR’、及びNRR’である。一実施形態では、G
4はOR及びNRR’である。好ましくは、G
4はOR及びNRR’から選択され、最も好ましくはG
4はORである。好ましくは、G
4はOMeである。
【0331】
一実施形態では、グループG2は以下の:
【0332】
【化86】
(式中、星印はL
3への連結点を示し、n、m、及びG
4は上で定義したとおりである)
で表される。
【0333】
一実施形態では、グループG2は以下の:
【0334】
【化87】
(式中、nは1~20、mは0~6であり、G
4はOH、OR、SH、SR、COOR、CONH
2、CONHR、CONRR’、NH
2、NHR、NRR’、NO
2、及びハロから選択される)
で表される。一実施形態では、nは1~10である。他の実施形態では、nは10~50、好ましくは20~40である。一実施形態では、nは1である。一実施形態では、mは1である。OH、SH、NH
2、NHRは保護されている。一実施形態では、G
4は、OR、SR、COOR、CONH
2、CONHR、CONRR’、及びNRR’である。一実施形態では、G
4はOR、SR、及びNRR’である。好ましくは、G
4はOR及びNRR’から選択され、最も好ましくはG
4はORである。好ましくは、G
4はOMeである。
【0335】
一実施形態では、グループG2は以下の:
【0336】
【化88】
(式中、星印はL
3への連結点を示し、n、m、及びG
4は上で定義したとおりである)
で表される。
上記の実施形態の各々において、G
4は、OH、SH、NH
2及びNHRであってよい。当該基は好ましくは保護される。
一実施形態では、OHはBzl、TBDMS、又はTBDPSで保護される。
一実施形態では、SHは、Acm、Bzl、Bzl-OMe、Bzl-Me、又はTrtで保護される。
一実施形態では、NH
2又はNHRはBoc、Moc、Z-Cl、Fmoc、Z、又はAllocで保護される。
一実施形態では、基G
2は、基L
3と組み合わせて存在し、その基はジペプチドである。
【0337】
キャッピング基は抗体との結合を意図したものではない。従って、二量体中に存在する他の単量体は、リンカーを介して抗体への連結点として有用である。従って、キャッピング基に存在する官能基が抗体との反応に利用できないことが好ましい。従って、OH、SH、NH2、COOH等の反応性官能基は好ましくは回避される。しかしながら、当該官能基は、上記のように保護された場合には、キャッピング基中に存在してよい。
【0338】
実施形態
本開示の実施形態は、抗体は上記で定義されるConjAを含む。
本開示の実施形態は、抗体は上記で定義されるConjBを含む。
本開示の実施形態は、抗体は上記で定義されるConjCを含む。
本開示の実施形態は、抗体は上記で定義されるConjDを含む。
本開示の実施形態は、抗体は上記で定義されるConjEを含む。
上記のように、本開示のいくつかの実施形態は、ConjA、ConjB、ConjC、ConjD及びConjEが除外される。
【0339】
薬物積載量
薬物積載量(p)は、抗体当たりの平均PBD薬物数、例えば抗体である。本発明の化合物がシステインと結合している場合、薬物積載量は、細胞結合剤あたり1~8つの薬物(D)の範囲が可能である、すなわち1、2、3、4、5、6、7、及び8つの薬物部分が細胞結合剤と共有結合している。複合体の組成として、1~8つの範囲の薬物と複合している細胞結合剤(例えば抗体)を集めたものが含まれる。本発明の化合物がリシンと結合している場合、薬物積載量は、細胞結合剤あたり1~80つの薬物(DL)の範囲であってよいが、上限を40、20、10、又は8とするのが好適であり得る。複合体の組成として、1~80、1~40、1~20、1~10、又は1~8の範囲の薬物と連結された抗体のコレクションを含む。
【0340】
複合化反応からADCを調製する場合の抗体当たりの薬物の平均数は、UV、逆相HPLC、HIC、質量分析法、ELISAアッセイ、及び電気泳動などの従来法で特性決定することができる。pに関するADCの定量的分布も測定することができる。ELISAにより、ADCの特定の調製物におけるpの平均値を測定することができる(Hamblett et al(2004)Clin.Cancer Res.10:7063-7070、Sanderson et al(2005)Clin.Cancer Res.11:843-852)。しかしながら、p(薬物)値の分布を、抗体抗原結合及びELISAの検出限界により識別することはできない。同じく、抗体薬物複合体を検出するためのELISAアッセイは、薬物部分が抗体のどこに結合しているのか、例えば重鎖又は軽鎖断片なのか、あるいは特定のアミノ酸残基なのかを明らかにはしない。場合によっては、pがある特定の値である均一なADCを、薬物積載量が異なるADCから分離、精製、及び特性決定することは、逆相HPLC又は電気泳動などの手段により達成できる。そのような技法は、他の型の複合体にも応用可能である。
【0341】
抗体薬物複合体によっては、pは、抗体にある連結部位の個数により制限される場合がある。例えば、抗体は、システインチオール基が1つだけであっても、複数であってもよく、又は、リンカーが連結できる十分に反応性のあるチオール基が1つだけあっても、複数あってもよい。薬物積載量が大きくなる(例えばp>5)ほど、特定の抗体薬物複合体は、凝集、不溶性、毒性をおこす、又は細胞透過性が喪失される場合がある。
【0342】
通常、複合化反応の間に、最大理論値より少ない個数の薬物部分を抗体と連結させる。抗体は、例えば、薬物リンカーともリンカー試薬とも反応しないリシン残基を多数含有してよい。最も反応性の高いリシン基のみが、アミン反応性リンカー試薬と反応することができる。同じく、最も反応性の高いシステインチオール基のみが、チオール反応性リンカー試薬と反応することができる。一般に、抗体は、薬物部分と連結することができる遊離反応性システインチオール基を、たとえ含んでいたとしても、多くは含まない。化合物の抗体にあるほとんどのシステインチオール残基は、ジスルフィド架橋として存在し、部分又は全還元条件下で、還元剤(ジチオスレイトール(DTT)又はTCEPなど)を用いて還元しなければならない。ADCの積載量(薬物/抗体比)は、複数の異なる様式で制御することができ、そのような様式として以下の:(i)抗体に対して薬物リンカーのモル過剰量を制限する、(ii)複合化反応時間又は温度を制限する、及び(iii)システインチオール修飾の部分的又は制限的還元条件;があげられる。
【0343】
ある特定の抗体には、還元できる鎖間ジスルフィド、すなわちシステイン架橋がある。抗体は、DTT(ジチオスレイトール)などの還元剤で処理することにより、リンカー試薬との複合化に反応できるようになる。こうして、各システイン架橋は、理論的には、2つの反応性チオール求核剤になる。リシンと2-イミノチオラン(トラウト試薬)の反応によりアミンをチオールに変換することで、抗体にさらなる求核基を導入することができる。1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれより多いシステイン残基を操作する(例えば、1つ以上の非天然システインアミノ酸残基を含む変異抗体を調製する)ことにより、抗体(又はその断片)に反応性チオール基を導入することができる。特許文献6は、反応性システインアミノ酸の導入による抗体の操作を教示する。
【0344】
抗体の反応性部位にあり、鎖間又は分子間ジスルフィド架橋を形成しないシステインアミノ酸は、操作することができる(非特許文献32及び33;特許文献6~8)。操作されたシステインチオールは、チオール反応性求電子基(マレイミド又はα-ハロアミドなど)を有する本発明のリンカー試薬又は薬物リンカー試薬と反応して、システイン操作された抗体部分及びPBD薬物部分を持つADCを形成することができる。したがって、薬物部分の配置は、設計し、制御し、公知であってよい。薬物積載量は、制御することができる。なぜなら、操作されたシステインチオール基は、通常、高収率で、チオール反応性のリンカー試薬又は薬物リンカー試薬と反応するからである。IgG抗体を操作して、重鎖又は軽鎖の1カ所で置換によりシステインアミノ酸を導入することにより、対称抗体に2つの新たなシステインを与える。2に近い薬物積載量が、複合化生成物ADCの近均一性とともに達成できる。
【0345】
あるいは、部位特異的結合は、Axupら((2012)、Proc Natl Acad Sci U.S.A.109(40):16101-16116)に記載されているように、その重鎖及び/又は軽鎖中に非天然アミノ酸を含むように抗体を操作することによって達成することができる。非天然アミノ酸により、直交化学がリンカー試薬及び薬物を結合するように設計されることができるという付加的な利点がもたらされる。
【0346】
上記抗体の1つより多い求核又は求電子基が薬物リンカー中間体、又はリンカー試薬と反応し、続いて薬物部分試薬と反応すると、得られる生成物は、抗体に結合した薬物部分に分布がある(例えば1、2、3など)ADC化合物混合物になる。重合体逆相(PLRP)及び疎水的相互作用(HIC)などの液体クロマトグラフィー法は、薬物積載量の値で混合物から化合物を分離することができる。単一の薬物積載量値(p)を持つADCの調製物を単離することができるものの、そうした単一の薬物積載量値のADCであっても、依然として不均一混合物である可能性がある。なぜなら、複数の薬物部分は、リンカーを介して、抗体の異なる部位に結合する可能性があるからである。
【0347】
したがって、本開示の抗体薬物複合体組成物は、抗体は1以上のPBD薬物部分を有し、薬物部分が様々なアミノ酸残基において抗体に連結されることができる抗体-薬物複合体化合物の混合物を含む。薬物部分は、抗体に、様々なアミノ酸残基で連結してよい。
一実施形態では、抗体当たりの二量体ピロロベンゾジアゼピン基の平均数は、1~20の範囲である。いくつかの実施形態では、この範囲は、1~8、2~8、2~6、2~4、及び4~8から選択される。
ある実施形態では、抗体当たり1つの二量体ピロロベンゾジアゼピン基が存在する。
【0348】
含まれる他の形態
特に指定しない限り、上記に含まれるのは、周知のイオン性、塩、溶媒和物、及び保護された形態の当該置換基である。例えば、カルボン酸(-COOH)への言及はまた、アニオン(-COO-)形態、その塩又は溶媒和物、並びに従来の保護形態を含む。同様に、アミノ基への言及は、プロトン化された形態(-N+HR1R2)、アミノ基の塩又は溶媒和物、例えば、塩酸塩、並びにアミノ基の従来の保護形態を含む。同様に、ヒドロキシル基への言及はまた、アニオン型(-O-)、その塩又は溶媒和物、並びに従来の保護型を含む。
【0349】
塩類
活性化合物の対応する塩、例えば、薬学的に許容される塩を調製、精製、及び/又は取り扱うことが都合よく、又は望ましい場合がある。薬学的に許容される塩の例は、Bergeら、J. Pharmに記載されている。科学66, 1-19(1977)
例えば、化合物がアニオン性であるか、又はアニオン性であってよい官能基(例えば、-COOHは-COO-であってよい)がある場合、塩は、適当なカチオンと共に形成されることができる。適当な無機カチオンの例としては、Na+及びK+等のアルカリ金属イオン、Ca2+及びMg2+等のアルカリ土類カチオン、並びにAl+3等の他のカチオンがあげられるが、これらに限定されない。薬学的に許容される有機カチオンの例としては、アンモニウムイオン(すなわち、NH4+)及び置換アンモニウムイオン(例えば、NH3R+、NH2R2+、NHR3+、NR4+)があげられるが、これらに限定されない。いくつかの適当な置換アンモニウムイオンの例は、エチルアミン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン、ベンジルアミン、フェニルベンジルアミン、コリン、メグルミン、及びトロメタミン、並びにリジン及びアルギニン等のアミノ酸から誘導される。一般的な第四級アンモニウムイオンの例は、N(CH3)4+である。
【0350】
化合物がカチオン性であるか、又はカチオン性であってよい官能基(例えば、-NH2は-NH3+であってよい)がある場合、適当なアニオンがある塩が形成されてよい。好適な無機アニオンの例としては、以下の無機酸:塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、リン酸、及びリン酸から誘導されるものがあげられるが、これらに限定されない。
【0351】
適当な有機アニオンの例としては、以下の有機酸:2-アセトキシ安息香酸、酢酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、桂皮酸、クエン酸、エデト酸、エタンジスルホン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルチェプト酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシマレイン酸、ヒドロキシナフタレンカルボン酸、イセチオン酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、パントテン酸、フェニル酢酸、フェニルスルホン酸、プロピオン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、スルファニル酸、酒石酸、トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、吉草酸から誘導されるものがあげられるが、これらに限定されない。適当な高分子有機アニオンの例としては、以下の高分子酸:タンニン酸、カルボキシメチルセルロースから誘導されるものがあげられるが、これらに限定されない。
【0352】
溶媒和物
活性化合物の対応する溶媒和物を調製、精製、及び/又は取り扱うことが便利又は望ましい場合がある。用語「溶媒和物」は、本明細書において、溶質(例えば、活性化合物、活性化合物の塩)と溶媒との複合体をいう、従来の意味で用いられる。溶媒が水である場合、溶媒和物は、便宜的に、水和物、例えば、一水和物、二水和物、三水和物等という場合がある。
【0353】
本開示は、以下:
【0354】
【化89】
に示すように、溶媒がPBD部分のイミン結合を横切って付加する化合物を包含し、これは、溶媒が水又はアルコール(R
AOH、R
AはC
1-4アルキル)である場合がある。
【0355】
当該形態は、PBDのカルビノールアミン及びカルビノールアミンエーテル形態(上記のR10に関する節に記載されているように)という場合がある。このような平衡のバランスは、化合物が見出される条件及び部分自体の性質による。
当該特定の化合物は、例えば凍結乾燥により、固体形態で単離することができる。
【0356】
異性体
本開示の特定の化合物は、1つ以上の特定の幾何学的、光学的、エナンチオマー、ジアステレオマー、エピメリック、アトロピック、立体異性体、互変異性体、立体配座、又はシスー及びトランス体であってこれらに限定されないアノマー体;E-及びZ-体;c-、t-及びr-体;エンド-及びエキソ-体;R-、S-及びメソ-体;D-及びL-体;d-及びl-体;(+)及び(-)体;ケト、エノール-及びエノレート-体;シン-及びアンチ-体;向斜-体;α-及びβ-体;アキシアル及びエクアトリアル-形態;舟形、椅子形、ツイスト状、エンベロープ、及びハーフチェア-形態;並びにそれらの組み合わせで存在することができる(以下、総称して「異性体」というが、これらに限定されない)。
【0357】
用語「キラル」とは、鏡像パートナーの重ね合わせできない特性がある分子をいう一方で、用語「アキラル」とは、それらの鏡像パートナーが重ね合わせできる分子をいう。
【0358】
用語「立体異性体」は、同一の化学組成があるが、原子又は基の空間配置が異なる化合物をいう。
「ジアステレオマー」とはキラル性の中心を2つ以上があるが、その分子は相互に鏡像ではない立体異性体をいう。ジアステレオマーは、異なる物理的特性(例えば、融点、沸点、スペクトル特性、及び反応性)がある。ジアステレオマーの混合物は、高分離能分析手順(例えば、電気泳動及びクロマトグラフィー)の下で分離してよい。
「エナンチオマー」とは、互いに鏡像を重ね合わせられない化合物の立体異性体をいう。
【0359】
本明細書で用いられる立体化学の定義及び規約は、一般に、S.P.Parker,Ed.,McGraw-Hill Dictionary of Chemical Terms(1984) McGraw-Hill Book Company,New York;及びEliel,E.and Wilen,S.,“Stereochemistry of Organic Compounds”,John Wiley&Sons,Inc.,New York,1994に準じる。本開示の化合物は、不斉中心又はキラル中心を含んでよく、従って、異なる立体異性体形態で存在する。本開示の化合物のすべての立体異性体形態は、ジアステレオマー、エナンチオマー及びアトロピオマー、並びにラセミ混合物等のそれらの混合物を含むが、これらに限定されない、本開示の一部を形成することが意図される。多くの有機化合物が光学活性形態で存在し、即ちそれらは面偏光の面を回転させる機能がある。光学的に活性中郷物を記載するにあたって、接頭辞D及びL、又はR及びSは、そのキラル中心について分子の絶対配置を示すために用いられる。接頭辞d及びl又は(+)及び(-)は、その化合物による平面偏光の回転のしるしを示すように示される。(-)又はlは、その化合物が左旋性であることを意味する。接頭辞(+)又はdがある化合物が右旋性である。所定の化学構造に関し、当該立体異性体はそれらが相互に鏡像であること以外は同一である。特定の立体異性体は又エナンチオマーといい、当該異性体の混合物はしばしばエナンチオマー混合物という。エナンチオマーの50:50混合物はラセミ混合物、又はラセメートといい、これらは、化学反応又は過程において立体選択性又は立体特異性がなかった場合に生じる場合がある。用語「ラセミ混合物」及び「ラセメート」は光学活性がない2つのエナンチオマー種の等モル混合物をいう。
【0360】
以下に互変異性体について考察する場合を除き、本明細書で用いる用語「異性体」というから特に除外されているのは、構造(又は構造)異性体(すなわち、原子間の結合が原子の空間配置だけではなく、異なる異性体)であることに注意されたい。例えば、メトキシ基-OCH3への言及は、その構造異性体、ヒドロキシメチル基-CH2OHへの言及として解釈されるべきではない。同様に、オルト-クロロフェニルへの言及は、その構造異性体であるメタ-クロロフェニルへの言及とは解釈されない。しかしながら、あるクラスの構造への言及は、そのクラスに属する構造異性体形態(例えば、C1~7アルキルはn-プロピル及びイソ-プロピルを含み、ブチルはn-、iso-、sec-及びtert-ブチルを含み、メトキシフェニルはオルト-、メタ-及びパラ-メトキシフェニルを含む)を十分に含んでよい。
【0361】
上記の除外は互変異性体形態、例えば、ケト-、エノール-、及びエノラート-形態、例えば、以下の互変異性体対:ケト/エノール(以下に示す)、イミン/エナミン、アミド/イミノアルコール、アミジン/アミジン、ニトロソ/オキシム、チオケトン/エンチオール、N-ニトロソ/ヒドロキシアゾ、及びニトロ/アシ-ニトロには関係しない。
【0362】
【化90】
用語「互変異性体」又は「互変異性体」とは、低エネルギー障壁を介して相互変換できる、異なるエネルギーの構造異性体をいう。例えば、プロトン互変異性体(プロトトロピック互変異性体としても知られる)は、ケト-エノール及びイミン-エナミン異性化等のプロトンの移動による相互変換を含む。原子価互変異性体としては、いくつかの結合電子の再編成による相互変換があげられる。
【0363】
用語「異性体」に特に含まれる化合物は、1つ以上の同位体置換がある化合物であることに留意されたい。例えば、Hは、1H、2H(D)、及び3H(T)を含むいかなる同位体形態であってよく;Cは、12C、13C及び14Cを含むいかなる同位体形態であってよく;Oは、16O及び18Oを含むいかなる同位体形態であってよい;等であってよい。
【0364】
本開示の化合物に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、及び塩素の同位体、例えば、2H(重水素、D)、3H(トリチウム)、12C、13C、14C、15N、18F、31P、32P、35S、36Cl、及び125Iがあげられるが、これらに限定されない。本開示の様々な同位体標識された化合物、例えば、3H、13C、及び14C等の放射性同位体が組み込まれる化合物。当該同位体標識化合物は、代謝研究、反応速度論的研究、ポジトロン放射断層撮影(PET)又は薬物若しくは基質組織分布アッセイを含む単一光子放射型コンピュータ断層撮影(SPECT)等の検出又は画像技術、又は患者の放射性治療において有用であってよい。本開示の重水素標識又は置換治療化合物は、分布、代謝、及び排泄に関連して、DMPK(薬物代謝及び薬物動態)特性を改善することができる。重水素等のより重い同位体による置換は、より大きな代謝安定性、例えば、生体内での半減期の増加又は必要な用量の減少から生じる、ある種の治療上の利点を提供してよい。18F標識化合物は、PET又はSPECT検査に有用である。本開示の同位体標識された化合物及びそのプロドラッグは、一般に、非同位体標識された試薬を容易に利用可能な同位体標識された試薬に置き換えることによって、スキーム又は以下に記載される実施例及び調製物に開示される手順を実施することによって調製することができる。さらに、より重い同位体、特に重水素(すなわち、2H又はD)による置換は、より大きな代謝安定性、例えば、生体内での半減期の増加、又は必要な投与量の減少、又は治療指数の改善の結果として、ある種の治療上の利点を与えることができる。この文脈において、重水素は置換基とみなされることが理解される。当該より重い同位体、特に重水素の濃度は、同位体濃縮係数によって決定される。本開示の化合物において、特定の同位体として具体的に示されていない原子は、その原子の安定な同位体を表すことを意味する。
【0365】
別段の規定がない限り、特定の化合物への言及は、(全部又は部分的に)ラセミ体及びそれらの他の混合物を含む、すべての当該異性体形態を含む。当該異性体の調製(例えば、不斉合成)及び分離(例えば、分別結晶化及びクロマトグラフィー手段)のための方法は、当技術分野で公知であるか、又は本明細書で教示された方法、又は公知の方法を公知の方法に適合させることによって容易に得られる。
【0366】
生物活性
生体外細胞増殖アッセイ
一般に、抗体-薬物複合体(ADC)の細胞傷害性活性又は細胞増殖抑制活性は、細胞培養培地中で受容体タンパク質がある哺乳動物細胞をADCの抗体に曝露すること;細胞を約6時間~約5日間培養すること;及び細胞生存率を測定することによって決定される。細胞系の生体外アッセイは、本開示のADCの生存性(増殖)、細胞毒性、及びアポトーシスの誘導(カスパーゼ活性化)の測定に用いられる。
【0367】
抗体-薬物複合体の生体外での効力は、細胞増殖アッセイによって測定することができる。CellTiter-Glo(登録商標)ルシフェラーゼの組換え発現に基づく均一なアッセイ法であるCellTiter-Glo(登録商標)ルミネセンス細胞生存性アッセイは、市販されている(Promega Corp.、Madison、WI)(米国特許第5583024号、同5674713号及び5700670号)。この細胞増殖アッセイは、代謝的に活性な細胞の指標であるATPの定量に基づいて培養中の生存細胞数を決定する(Crouch et al (1993)J.Immunol.Meth.160:81-88;米国特許第6602677号)。CellTiter-Glo(登録商標)アッセイは、自動ハイスループットスクリーニング(HTS)による96ウェルフォーマットで実施される(Cree et al(1995)AntiCancer Drugs 6:398-404)。均一アッセイ法では、血清添加培地で培養した細胞に単一試薬(CellTiter-Glo(登録商標)試薬)を直接加える。細胞洗浄、培地の除去、及び複数のピペッティング工程は必要ない。このシステムは、試薬を加え、混合してから10分間で、384ウェルの形式で、わずか15細胞/ウェルを検出する。細胞はADCで連続的に処理することができるか、あるいはそれらは処理し、ADCから分離することができる。一般に、簡易にすなわち、3時間処理した細胞は連続的に処理した細胞と同一の効力効果を示した。
【0368】
均一な「add-mix-measure」フォーマットは、細胞を溶解し、ATPの量に比例する発光シグナルを発生させる。ATPの量は、培養液中に存在する細胞の数に直接比例する。CellTiter-Glo(登録商標)アッセイは、ルシフェラーゼ反応によって生成される「グロー型」発光シグナルを発生させる。ルシフェラーゼ反応の半減期は、用いる細胞の種類と培地によって異なり、通常5時間を超える。生存細胞は相対発光単位(RLU)に反映される。基質である、Beetleルシフェリンは、ATPのAMPへの変換と、光子の生成と同時に、組換えホタルルシフェラーゼにより、酸化的に脱炭酸される。
【0369】
抗体-薬物複合体の生体外での効力は、細胞毒性アッセイによっても測定することができる。培養した付着細胞をPBSで洗浄し、トリプシンで分離し、完全培地で希釈し、10% FCSを含有し、遠心分離し、新鮮な培地に再懸濁し、血球計数器で計数する。懸濁培養物は直接カウントする。計数に適した単分散細胞懸濁液は、細胞凝集体を破壊するために、繰り返し吸引による懸濁液の撹拌があってよい。
【0370】
細胞懸濁液を希釈して所望の播種密度にし、黒色96ウェルプレートに分注する(ウェル当たり100μl)。接着細胞株のプレートを一晩インキュベートして、接着できるようにする。懸濁細胞培養は播種当日に用いることができる。
【0371】
ADC(20μg/ml)の保存溶液(1ml)を、適当な細胞培養培地中で調製する。100μlから900μlの細胞培養培地を連続的に移すことで、15ml遠心チューブ中で、ストックADCの連続的な10倍希釈を行う。
各ADC希釈液(100μl)の4つの反復ウェルを、細胞懸濁液(100μl)をあらかじめ平板培養した96ウェルブラックプレートに分注し、最終容量200μlとする。対照ウェルには細胞培養培地(100μl)を投与する。
細胞系の倍加時間が30時間を超える場合、ADCインキュベーションは5日間であり、さもなければ4日間インキュベーションする。
【0372】
インキュベーション終了時に、Alamar blueアッセイを用いて細胞生存率を評価する。AlamarBlue(Invitrogen)をプレート全体(ウェル当たり20μl)に分注し、4時間インキュベートする。アラマーブルー蛍光は、励起570nm、発光585nmで、Varioskanフラッシュプレートリーダーで測定する。細胞生存率は、対照ウェルにおける平均蛍光と比較したADC処理ウェルにおける平均蛍光から計算される。
【0373】
用途
本開示の複合体を用いて、標的位置にPBD化合物を提供することができる。
標的位置は、好ましくは増殖性細胞集団である。抗体は、増殖性細胞集団に存在する抗原に対する抗体である。
【0374】
一実施形態では、抗原は、増殖性細胞集団、例えば腫瘍細胞集団中に存在する抗原の量と比較して、非増殖性細胞集団中には存在しないか、又は低レベルで存在する。
【0375】
標的位置では、リンカーは、RelA、RelB、RelC、RelD又はRelE化合物を放出するように切断されることができる。従って、複合体を用いて、化合物RelA、RelB、RelC、RelD又はRelEを標的位置に選択的に提供することができる。
リンカーは、標的位置に存在する酵素によって切断されることができる。
標的位置は、生体外、生体内又はエクスビボであってよい。
【0376】
本開示の抗体-薬物複合体化合物は、抗がん活性についての有用性がある化合物を含む。特に、化合物は、PBD薬物部分、即ち、毒素に複合体された、すなわち、リンカーによって共有結合的に連結された抗体を含む。薬物が抗体に抱合されていない場合、PBD薬物は細胞毒性作用がある。従って、PBD薬物部分の生物学的活性は、抗体への複合によって調節される。本開示の抗体-薬物複合体(ADC)は、有効量の細胞毒性薬剤を腫瘍組織に選択的に送達し、それにより、選択性がより大きく、すなわち、有効量がより少ない薬剤が達成されることができる。
従って、1つの態様では、本開示は、治療用の本明細書に記載される複合体化合物を提供する。
【0377】
さらなる態様では、増殖性疾患の治療に用いる、本明細書に記載される複合体化合物も提供される。本開示の第2の態様は、増殖性疾患の治療用医薬の製造における複合体化合物の使用を提供する。
当業者は、候補複合体がいずれかの特定の細胞型について増殖状態を治療するか否かを容易に決定することができる。例えば、特定の化合物によって提供される活性の評価に有利に用いられることができるアッセイは、以下の実施例に記載される。
【0378】
用語「増殖性疾患」は、生体外又は生体内にかかわらず、腫瘍性又は過形成性増殖等の望ましくない過剰又は異常な細胞の望ましくない又は制御されない細胞増殖に関する。
【0379】
増殖性状態の例としては、限定されるものではないが、良性、前悪性、及び悪性の細胞増殖が挙げられ、これには、新生物及び腫瘍(例えば、組織細胞腫、神経膠腫、星状細胞腫、骨腫)、がん(例えば、肺がん、小細胞肺がん、消化管がん、大腸がん、結腸がん、胸部カリノーマ、卵巣がん、前立腺がん、精巣がん、肝臓がん、腎臓がん、膀胱がん、膵臓がん、脳がん、肉腫、骨肉腫、カポジ肉腫、黒色腫)、リンパ腫、白血病、乾癬、骨疾患、線維増殖性疾患(例えば、結合組織の線維性疾患)、及びアテローム性動脈硬化症があげられるが、これらに限定されない。特に興味深いがんとしては、白血病及び卵巣がんがあげられるが、これらに限定されない。
いかなる治療されうる細胞としては、肺、胃腸(例えば、腸、結腸を含む)、乳房(乳房)、卵巣、前立腺、肝臓(肝臓)、腎臓(腎臓)、膀胱、膵臓、脳、及び皮膚を含むが、これらに限定されない。
【0380】
転移性がん及び転移性がん細胞(例えば、循環腫瘍細胞)を含むがんであって、血液又はリンパ液等の体液中を循環していることが見出されることができるものを含む。特に興味深いがんには、卵巣がん、乳がん、前立腺がん及び腎がんが含まれる。
【0381】
関心のある他の疾患には、KAAG1が過剰発現される、又はKAAG1拮抗が臨床的利益を提供するいかなる症状が含まれる。これらには、免疫障害、心血管障害、血栓症、糖尿病、免疫チェックポイント障害、線維性障害(線維症)、又はがん、特に転移性がん等の増殖性疾患が含まれる。
【0382】
本開示の抗体-薬物複合体(ADC)は、様々な疾患又は症状、例えば腫瘍抗原の過剰発現を特徴とする疾患又は疾患の治療に用いられうることが企図される。例示的な状態又は過剰増殖性疾患には、良性腫瘍又は悪性腫瘍;白血病、血液学的悪性腫瘍及びリンパ性悪性腫瘍が含まれる。その他としては、ニューロン、グリア、星状細胞、視床下部、腺、マクロファージ、上皮、間質、胞胚腔、炎症性、血管新生、及び自己免疫疾患を含む免疫学的疾患があげられる。
【0383】
一般に、治療すべき疾患又は疾患は、がん等の過剰増殖性疾患である。本明細書で治療されるがんの例としては、以下の:がん種、リンパ腫、芽腫、肉腫及び白血病、又は、リンパ球性悪性腫瘍があげられるがこれらに限定されない。当該がんのより特定の例としては、扁平上皮がん(例えば、上皮性扁平上皮がん)、肺がん(小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺腺がん及び肺扁平上皮がん、腹膜がん、肝細胞がん、胃がん(消化管がん、膵がん、膠芽腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝がん、膀胱がん、肝細胞がん、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、子宮内膜がん、唾液腺がん、腎臓がん、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝がん、肛門がん、陰茎がん、並びに頭頸部がんがあげられる。
【0384】
ADC化合物を治療に用いることができる自己免疫疾患には、リウマチ性疾患(例えば、関節リウマチ、シェーグレン症候群、強皮症、SLE及びループス腎炎等のループス、多発性筋炎/皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、抗リン脂質抗体症候群、及び乾癬性関節炎)、変形性関節症、自己免疫性胃腸疾患及び肝疾患(例えば、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病)、自己免疫性胃炎及び悪性貧血、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、及びセリアック病)、血管炎(例えば、チャーグ-ストラウス血管炎を含むANCA関連血管炎、ウェゲナー)が含まれる。多発性動脈炎、多発性硬化症、眼球クローヌス・ミオクローヌス症候群、重症筋無力症、視神経脊髄炎、パーキンソン病、自己免疫性多発神経疾患等の自己免疫神経疾患、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、ベルジェ病等の腎疾患、皮膚疾患(例えば、乾癬、蕁麻疹、じんま疹、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、皮膚エリテマトーデス)、血液疾患(例えば、血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、輸血後紫斑病、自己免疫性溶血性貧血)、アテローム性動脈硬化症、ブドウ膜炎、自己免疫性難聴(例えば、内耳疾患及び聴力低下)、ベーチェット病、レイノー症候群、臓器移植、移植片対宿主病(GVHD)、自己免疫性内分泌疾患(例えば、インスリン依存性糖尿病(IDDM)、アジソン病、自己免疫性甲状腺疾患(例えば、グレーブス病及び甲状腺炎)等の糖尿病関連自己免疫疾患)があげられる。当該疾患としては、より好ましくは、例えば、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎、ANCA関連血管炎、ループス、多発性硬化症、シェーグレン症候群、グレーブス病、IDDM、悪性貧血、甲状腺炎、及び糸球体腎炎があげられる。
【0385】
治療方法
本開示の複合体は、治療方法で用いることができる。また、治療が必要な被験体に、本開示の複合体化合物の治療有効量を投与することを含む、治療方法が提供される。用語「治療有効量」は、患者が利益を示すのに十分な量である。当該有益性は、少なくとも1つの症状の改善であってよい。実際に投与される量、及び投与の速度及び時間経過は、治療されるものの性質及び重症度による。治療薬の処方、例えば投与量の決定は、一般開業医及び他の医師の責任の範囲内である。
【0386】
本開示の化合物は、治療される状態に依存して、同時に又は順次に、単独投与又は他の治療との併用投与ができる。治療及び治療の例としては、化学療法(化学治療薬等の薬物を含む活性剤の投与);手術;及び放射線療法が化学治療薬あげられるが、これらに限定されない。
【0387】
「化学治療薬」とは、作用機序にかかわらず、がんの治療に有用な化合物であり、アルキル化剤、代謝拮抗剤、紡錘体毒素植物アルカロイド、細胞傷害性/抗腫瘍性抗生物質、トポイソメラーゼ阻害剤、抗体、光増感剤、キナーゼ阻害剤等があるが、これらに限定されない。化学治療薬には、「標的療法」及び従来の化学療法に用いられる化合物がある。
【0388】
化学治療薬の例としては、エルロチニブ(TARCEVA(登録商標)、ジェネンテック/OSI Pharm.)、ドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Sanofi-Aventis)、5-FU(フルオロウラシル、5-フルオロウラシル、CAS No.51-21-8)、ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標)、Lilly)、PD-0325901(CAS No.391210-10-9,Pfizer)、シスプラチン(cis-diamine,dichloroplatinum(II)、CAS No.15663-27-1)、カルボプラチン(CAS No.41575-94-4)、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb Oncology、Princeton、N.J.)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、ジェネンテック)、テモゾロミド(4-メチル-5-oxo2,3,4,6,8-pentazabicyclo[4.3.0])CAS No.85622-93-1、TEMODAR(登録商標)、TEMODAL(登録商標)、Schering Plough、タモキシフェン((Z)-2-[4-(1,2-ジフェニルブタ-1-エニル)フェノキシ]-N,N-ジメチルエタンアミン、NOLVADEX(登録商標)、ISTUBAL(登録商標)、VALODEX(登録商標)、ドキソルビシン(ADRIAMYCIN(登録商標))、Akti-1/2、HPPD、ラパマイシン、があげられる。
【0389】
化学療法薬のさらなる例としては、オキサリプラチン(ELOXATIN(登録商標)、サノフィ)、ボルテゾミブ(ベルケード(登録商標)、ミレニアム・ファーム)、スーテント(SUNITINIB(登録商標)、SU11248、ファイザー)、レトロゾール(FEMARA(登録商標)、ノバルティス)、メシル酸イマチニブ(GLEEVEC(登録商標)、ノバルティス)、XL-518(Mek阻害剤、Exelixis、WO 2007/04515)、ARRY-886(Mek阻害剤、AZD6244、Array BioPharma アストラゼネカ)、SF-1126(PI3K阻害剤、Semafore Pharmaceuticals)、BEZ-235(PI3K阻害剤、ノバルティス)、XL-147(PI3K阻害剤)Exelixis、PTK787/ZK 222584(ノバルティス)、フルベストラント(FASLODEX(登録商標)、アストラゼネカ)、ロイコボリン(フォリン酸)、ラパマイシン(シロリムス、RAPAMUNE(登録商標)、ワイス)、ラパチニブ(TYKERB(登録商標)、GSK572016、Glaxo Smith Kline)、ロナファリニブ(SARASAR(登録商標)、SCH 66336、Schering Plough)、ソラフェニブ(NEXAVAR(登録商標)、Bayer Labs)、ゲフィチニブ(IRESSA(登録商標)、アストラゼネカ)、イリノテカン(CAMPTOSAR(登録商標)、CPT-11、Pfizer)、チピファルニブ(ZARNESTRA(商標)、Johnson&Johnson)、ABRAXANE Paclitaxel (American Pharmaceutical Partners, Schaumberg, Il)、バンデタニブ(rINN,ZD6474,ZACTIMA(登録商標),アストラゼネカ)、クロラムブシル、AG1478, AG1571(Sugen;Sugen)、テムシロリムス(TORISEL(登録商標),ワイス)、パゾパニブ(GlaxoSmithKline)、カンホスファミド(TELCYTA(登録商標),Telik)、チオテパ及びシクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標),NEOSAR(登録商標))、ブスルファン、インポスルファン、ピポスルファン等のアルキルスルホネート、ベンゾドパ等のアジリン類カルボクオン、メトレドパ及びウレドパ;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホラミド、トリエチレンチオホスホラミド及びトリメチロメラミンを含むエチレンイミン及びメチルアミン;アセトゲニン(特に、ブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成アナログのトポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(アドゼルシン、カルゼルシン及びビゼルシン合成アナログを含む);クリプトフィシン(特に、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成を含む)アナログ、KW-2189及びCB1-TM1;エレウテロビン;パンクラチスタチン;サルコディチン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロロナファジン、クロロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン等の窒素マスタード塩酸オキシド、メルファラン、ノベビキン、フェンエステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ランヌスチン等のニトロソウレア;エネジイン系抗生物質(カリケアマイシン、カリケアマイシンγ1I、カリケアマイシンωI1(Angew Chem.Intl.Ed.Engl.(1994)33:183-186);ダイネミシン、ダイネミシンA;クロドロネート等のビスホスホネート;エスペラミン;ネオカルジノスタチン発色団及び関連するクロモプロテイン、エンジイン抗生物質発色団;アクラシノミシン、アクリノマイシン アクトラマイシン、アザセシン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシン、エピルビシン、エストルビシン、イダルビシン、ネモルビシン、マリセロマイシン、マイトマイシンC等のマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン ユビキチン、ジノスタチン、ゾルビシン等の代謝拮抗薬 メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU);デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキセート等の葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニン等のプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン等のピリミジン類似体;カルバステロン、ドロモスタノロンプロピオン酸塩、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトン等のアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタン等の抗副腎剤;フロリン酸補充剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルラシル;アミノレブリン酸;アミノレサリン;ベストラブシル ビサントレン、エダトラキセート、デフェコルシン、ジアジコン、エルフォニチン、エポチロン、エトグルシド、硝酸ガリウム、ヒドロキシ尿素、レンチナン、ロニダニン、メイタンシノイド(メイタンシン、アンサミトシン)、ミトキサントロン、モピダンモル、ニトラエリン、ペントスタチン、フェナメト、ピラルビシン、ロサントロン、ポドフィリン酸、2-エチルヒドラジド、プロカルバジン、PSK(登録商標)ポリサッカリド複合体(JHS Natural ProductsEugene OR)、ラゾキサン、リゾキシン、シゾフィラン、スピロゲルマニウム、テヌアゾン、トリアジコン、2,2’ 2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA及びアンギジン);尿素;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;プラチナ類似体(シスプラチン及びカルボプラチンなど);ビンブラスチン;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン(NAVELBINE);ノバントロン;テニポシド;エダトロマイシン;ダウノプテリン;アミノプテリン;カペシタビン(XELOD(登録商標)、Roche);イバンドロン酸;CPT-11;トポイソメラーゼ阻害剤RFS 2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)レチノイド、例えば、レチノイン酸;及び上記のいずれかの医薬上許容される塩、酸及び誘導体があげられる。
【0390】
また、「化学療法薬」の定義には以下の:(i)抗エストロゲン薬及び選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)等の腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン薬であって、例えば、タモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)、クエン酸タモキシフェンを含む)、ラロキシフェン、ドロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びFARESTON(登録商標)(クエン酸トレミファイン);(ii)酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害薬であって、例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)(メゲストロール酢酸塩)、AROMASIN(登録商標)(エキセメスタン、ファイザー、ホルメスタニー、ファメスタニー、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)(ボロゾール)、FEMARA(登録商標)(レトロゾール;ノバルティス)及びARIMIDEX(登録商標)(アナストロゾール;アストラゼネカ);(iii)フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、リュープロライド、ゴセレリン等の抗アンドロゲン剤;及びトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシン類似体);(iv)MEK阻害剤等のプロテインキナーゼ阻害剤(国際公開第2007/04515号)(v)脂質キナーゼ阻害剤、(vi)アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に異常細胞増殖に関与するシグナル伝達経路における遺伝子の発現を阻害する、例えば、PKC-α、Raf及びH-Ras、例えば、オブリメルセン(GENASENSENSE(登録商標)Genta Inc.)、(vii)VEGF発現阻害剤(例えば、ANGIOZYME(登録商標))及びHER2発現阻害剤等のリボザイム、(viii)遺伝子治療ワクチン、例えば、ALLOVECTIN(登録商標)、LEUCTIN(登録商標)及びVAXID(登録商標)、PROLEUKIN(登録商標)rIL-2、トポイソメラーゼ1阻害剤、例えば、LURTOTECAN(登録商標)、ABARELIX(登録商標)rmRH、(ix)抗血管新生剤、例えば、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、ジェネンテック)、並びに薬学的に許容される上記いずれかの塩、酸及び誘導体;も含まれる。
【0391】
また、「化学療法薬」の定義には、アレムツズマブ(Campath)、ベバシズマブ(AVASTIN(登録商標)、ジェネンテック)、セツキシマブ(ERBITUX(登録商標)、Imclone)、パニツムマブ(VECTIBIX(登録商標)、Ammen)、リツキシマブ(RITUXAN(登録商標)、ジェネンテック/BiogenIdec)、オファツムマブ(ARZERRA(登録商標)、GSK)、ペルツズマブ(PERJETM、OMNITARG(商標)、2C4、ジェネンテック)、トラスツズマブ(HERCEPTIN(登録商標)、ジェネンテック)、トシツモマブ(Bexxar、Corixia)、MDX-060(Medarex)及び抗体薬物複合体、ゲムツズマブオゾガミシン(MYLOTARG(登録商標)、ワイス)等の治療用抗体も含まれる。
【0392】
本開示の複合体と組み合わせた化学療法剤としての治療可能性があるヒト化モノクローナル抗体としては、アレムツズマブ、アポリズマブ、アセリズマブ、アトリズマブ、バピネウズマブ、ベバシズマブ、ビバツズマブメルタンシン、カンツズマブメルタンシン、セデリズマブ、セトリズマブペゴール、シドフシツズマブ、シドツズマブ、ダクリズマブ、エクリズマブ、エファリズマブ、エプラツズマブ、エルリズマブ、フェルビズマブ、フォントリズマブ、ゲムツズマブ・オゾガミシン、イツマブオゾガミシン、イピリムマブ、ラベツズマブ、リンツズマブ、マツズマブ、メポリズマブ、モタビズマブ、モトビズマブ、ナタリズマブ、ニモツズマブ、ノロビズマブ、ヌマビズマブ、オクレリズマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パコリズマブ、ペクフシツズマブ、ペクツズマブ、ペクツズマブ、ペクテリズマブ、ペクテリズマブ、ペクテリズマブ、ペクテリズマブ、ラリズマブ、ラリビズマブ、レスリズマブ、レスシビズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、シロツズマブ、シプリズマブ、ソンツズマブ、タカツズマブテトラキセタン、タドシズマブ、タリズマブ、テトリバズマブ、トシリズマブ、トラスツズマブ、ツコツズマブ、セルモロイキン tucusituzumab、umavizumab、urtoxazumab、visilizumabがあげられる。
【0393】
本開示による、及び本開示による使用のための医薬組成物は、活性成分、すなわち、複合体化合物に加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝液、安定剤、又は当業者に周知の他の材料を含んでよい。当該物質は毒性がなく、有効成分の有効性を妨げてはならない。担体又は他の物質の正確な性質は、経口、又は例えば皮膚、皮下、又は静脈内注射による投与経路に依存するであろう。
【0394】
経口投与用の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末剤又は液体剤であってよい。錠剤は、固体担体又はアジュバントを含んでよい。液体医薬組成物は、一般に、水、石油、動植物油、鉱油又は合成油等の液体担体を含む。生理食塩水、デキストロース又は他の糖類溶液、又はエチレングリコール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール等のグリコールを含んでよい。カプセルは、ゼラチン等の固体担体を含んでよい。
【0395】
静脈内、皮膚若しくは皮下注射、又は罹患部位への注射の場合、活性成分は、発熱物質を含まず、適当なpH、等張性及び安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形態であろう。当業者は、例えば、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸リンゲル注射液等の等張ビヒクルを用いて適当な溶液を調製しうる。必要に応じて、保存剤、安定剤、緩衝剤、酸化防止剤及び/又は他の添加剤が含まれてよい。
【0396】
製剤
複合体化合物を単独で用いること(例えば、投与)ができるが、しばしば、それを組成物又は処方物として提示することが好ましい。
一の実施形態では、当該組成物は、本明細書に記載されるような複合体化合物、及び薬学的に許容される担体、希釈剤、又は賦形剤を含む医薬組成物(例えば、処方、調製、薬剤)である。
【0397】
経口投与用の医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、粉末剤又は液体剤であってよい。錠剤は、固体担体又はアジュバントを含んでよい。液体医薬組成物は、一般に、水、石油、動植物油、鉱油又は合成油等の液体担体を含む。生理食塩水、デキストロース又は他の糖類溶液、又はエチレングリコール、プロピレングリコール又はポリエチレングリコール等のグリコールが含まれてよい。カプセルは、ゼラチン等の固体担体を含んでよい。
一実施形態では、組成物は、本明細書に記載される少なくとも1つの複合体化合物と、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、アジュバント、充填剤、緩衝剤、防腐剤、抗酸化剤、滑沢剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、香味剤、及び甘味剤を含むが、これらに限定されない、当業者に周知の1つ以上の薬学的に許容される成分とを含む医薬組成物である。
【0398】
一実施形態では、組成物は、他の活性剤、例えば、他の治療剤又は予防剤をさらに含む。
適当な担体、希釈剤、賦形剤等は、標準的な薬学的テキストに記載されている。例えば、Handbook of Pharmaceutical Additives,2nd Edition(eds.M.Ash and I.Ash),2001(Synapse Information Resources,Inc.,Endicott,New York,USA),Remington’s Pharmaceutical Sciences,20th edition,pub.Lippincott,Williams & Wilkins,2000;及びHandbook of Pharmaceutical Excipients,2nd edition,1994である。
【0399】
本開示の他の態様は、本明細書で定義される少なくとも1つの[11C]放射性標識複合体又は複合体様化合物を、当業者に周知の1つ以上の他の薬学的に許容される成分、例えば担体、希釈剤、賦形剤等と混合することを含む医薬組成物の製造方法に関する。別個の単位(例えば、錠剤等)として処方される場合、各単位は、所定量(用量)の活性化合物を含有する。
【0400】
本明細書中で用いられる用語「薬学的に許容される」は、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴わずに、問題の被験体(例えば、ヒト)の組織と接触して用いるのに適した化合物、成分、材料、組成物、剤形等に関し、各担体、希釈剤、賦形剤等はまた、製剤の他の成分と適合性があるという意味で「許容される」ものでなければならない。
【0401】
製剤は、薬学の分野で周知のいかなる方法によって調製することができる。当該方法には、活性化合物を1つ以上の補助成分を構成する担体と連結させる工程が含まれる。一般に、製剤は、活性化合物を担体(例えば、液体担体、微細に分割された固体担体等)と均一かつ密接に会合させた後、必要に応じて生成物を成形することによって調製される。
【0402】
処方物は、急速放出又は緩徐放出;即時放出、遅延放出、時機放出、又は持続放出;又はそれらの組み合わせを提供するように調製されることができる。
【0403】
非経口投与(例えば、注射による)に適した製剤としては、水性又は非水性、等張、パイロジェンフリー、無菌液体(例えば、溶液、懸濁液)があげられ、活性成分は溶解、懸濁、又は、例えば、リポソーム又は他の微粒子中で、提供される。当該液体はさらに、抗酸化剤、緩衝剤、保存剤、安定剤、静菌剤、懸濁剤、増粘剤、及び製剤を意図されたレシピエントの血液(又は他の関連する体液)と等張にする溶質等の他の薬学的に許容される成分を含んでよい。賦形剤の例としては、例えば、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油等があげられる。当該製剤に用いるのに適した等張キャリアの例としては、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、乳酸リンゲル注射液等があげられる。通常、液体中の活性成分の濃度は、約1ng/ml~約10μg/ml、例えば約10ng/ml~約1μg/mlである。製剤は、単位用量又は複数用量の密封容器、例えば、アンプル及びバイアル中に提供することができ、使用直前に、無菌液体担体、例えば、注射用水のみを添加するように、凍結乾燥(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時注射溶液及び懸濁液は、滅菌粉末、顆粒、及び錠剤から調製されることができる。
【0404】
投与(投薬)量
複合体化合物、及び複合体化合物を含む組成物の適当な投与量は、患者によって変化してよいことが当業者によって理解されるであろう。最適な投与量を決定するには、一般に、治療的効果のレベルとあらゆるリスク又は有害な副作用とのバランスをとる必要がある。選択される投薬量レベルは、様々な要因に依存し、そのような要因として、特定化合物の活性、投与経路、投与時間、化合物の排泄速度、治療期間、併用される他の薬物、化合物、及び/又は材料、症状の重篤度、ならびに被験体の種、性別、年齢、体重、状態、全身の健康状態、及び過去の病歴が挙げられるが、これらに限定されない。化合物の量及び投与経路は、最終的に、医師、獣医師、又は臨床医の判断に任されるが、一般に、投薬量は、実質的に有害な又は危険な副作用を引き起こさずに所望の効果を達成する局所濃度を作用部位で達成するように選択される。
【0405】
投与は、一つの用量で実現可能であり、その用量は治療課程を通じて連続的又は断続的(例えば、適切な間隔を開けた分割用量)である。投与の最も効果的な手段及び投薬量を決定する方法は、当業者に周知であり、治療に使用される配合物、治療目的、治療される標的細胞(複数可)、及び治療される対象に合わせて変化する。一回又は複数投与は、担当医師、獣医師、又は臨床医により選択された用量レベル及びパターンに合わせて行うことができる。
【0406】
一般に、各々の活性化合物の適切な用量は、1日あたり、対象の体重1キログラムあたり、約100ng~約25mg(より典型的には、約1μg~約10mg)の範囲である。活性化合物が、塩、エステル、アミド、プロドラッグ等である場合、投与量は、親化合物に基づいて計算され、そのため使用される実際の質量は、比例して増加する。
【0407】
一実施形態では、各々の活性化合物は、約100mg、1日3回の投与方法に従ってヒト患者に投与される。
【0408】
一実施形態では、各々の活性化合物は、約150mg、1日2回の投与方法に従ってヒト患者に投与される。
【0409】
一実施形態では、各々の活性化合物は、約200mg、1日2回の投与方法に従ってヒト患者に投与される。
【0410】
しかしながら、一実施形態では、各々の複合体化合物は、約50又は約75mg、1日3回又は4回以下の投与方法に従ってヒト患者に投与される。
【0411】
一実施形態では、複合体化合物は、約100mg又は約125mg、1日2回の投与方法に従ってヒト患者に投与される。
【0412】
上記の投与量は、複合体(PBD部分及び抗体に対するリンカーを含む)又は、例えばリンカーの切断後に放出される化合物の量を提供するPBD化合物の有効量に適用することができる。
【0413】
疾患の予防又は治療のために、本開示のADCの適当な用量は、上記で定義したように、治療される疾患のタイプ、疾患の重症度及び経過、分子が予防目的又は治療目的で投与されるかどうか、以前の治療、患者の臨床歴及び抗体に対する応答、並びに主治医の裁量に依存する。分子は、一度に、又は、一連の処置にわたって、患者に適当に投与される。疾患の型及び重篤度に依存して、例えば、1回以上の別々の投与によるものであっても、連続注入によるものであっても、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1~20mg/kg)の分子が、患者に対する投与の最初の候補投薬量である。代表的な毎日の投薬量は、上記の要因に依存して、約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲であってよい。患者に投与されるADCの例示的な投薬量は、患者の体重1kgあたり、約0.1mg~約10mgの範囲である。数日以上にわたる反復投与については、状態に依存して、所望の疾患症状の抑制が生じるまで、処置が持続される。例示的な投与計画は、約4mg/kgの初期積載量用量を投与し、その後、ADCの週1回、2週間、又は3週間の追加投与を行うコースを含む。他の投薬レジメンが有用であってよい。この治療の前進は、従来的な技術及びアッセイにより容易にモニターされる。
【0414】
治療
本明細書で用いる用語「治療」は、病状を治療するという文脈で用いられる場合、一般的には、ヒトであろうと動物(例えば、獣医学的用途)であろうと、所望の治療効果、例えば、病状の進行の抑制が達成される治療及び治療に関するものであり、進行速度の低下、進行速度の停止、病状の退縮、病状の改善、及び病状の治癒を含む。予防手段(すなわち、予防、予防)としての治療も含まれる。
【0415】
本明細書で用いる用語「治療有効量」は、活性化合物の量、又は活性化合物を含む材料、組成物、若しくは用量に関し、これは、所望の治療レジメンに従って投与される場合、合理的な利益/リスク比に見合った、所望の治療効果を生み出すのに有効である。
【0416】
同様に、本明細書で用いる用語「予防的に有効な量」は、活性化合物の量、又は活性化合物を含む物質、組成物、若しくは用量に関し、この物質、組成物、又は用量は、所望の治療レジメンに従って投与される場合、合理的な利益/リスク比に見合った、所望の治療効果を生み出すのに有効である。
【0417】
薬物複合体の調製
抗体薬物複合体は、有機化学反応、条件、及び薬物-リンカー試薬との抗体の求核性基の反応を含む当業者に公知の試薬を用いて、いくつかの経路によって調製することができる。この方法は、本開示の抗体-薬物複合体の調製に用いることができる。
【0418】
抗体上の求核性基としては、側鎖チオール基、例えばシステインなどがあげられるが、これらに限定されない。チオール基は、求核性であり、本開示のもの等のリンカー部分上に求電子性基と反応して、共有結合を形成することができる。特定の抗体には、還元性鎖内ジスルフィド(すなわち、システイン架橋)がある。
抗体は、DTT(クレランド試薬、ジチオスレイトール)やTCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩Getz et al(1999)Anal.Biochem.Vol 273:73-80;Soltec Ventures,Beverly,MA)等の還元剤で処理することで、リンカー試薬との連結に対して反応性を付与することができる。このように、各システインのジスルフィドブリッジは、理論的には2つの反応性チオール求核基を形成する。リジンを2-イミノチオラン(Traut試薬)と反応させ、アミンをチオールに変換することで、抗体に追加の求核基を導入することができる。
被験体/患者
被験体/患者は、動物、哺乳類、胎盤哺乳類、有袋類(例えば、カンガルー、ウォンバット)、単孔類(例えば、アヒル科カモノハシ)、げっ歯類(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ科(例えば、マウス)、ラゴモルフ(例えば、ウサギ)、鳥類(例えば、トリ)、イヌ類(例えば、イヌ)、ネコ類(例えば、ネコ)、ウマ類(例えば、馬)、ブタ類(例えば、ブタ)、羊類(例えば。ヒツジなど)、ウシ類(牛など)、霊長類、類人猿(サルや猿など)、サル(マーモセット、ヒヒなど)、猿(ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、ジボンなど)、又はヒトであってよい。
さらに、被験体は、その発生形態、例えば胎児のいずれであってよい。好ましい一実施形態では、被験体はヒトである。
【0419】
その他の好ましい実施形態
以下の好ましい態様は、上記のように、本開示のすべての態様に適用されることができるか、又は単一の態様に関連してよい。好ましくは、いかなる組み合わせで組み合わせることができる。
ある実施形態では、R6’、R7’、R9’、及びY’は、好ましくは、それぞれ、R6、R7、R9、及びYと同一である。
【0420】
二量体結合
Y及びY’は好ましくはOである。
R’’は、好ましくは、置換基がないC3-7アルキレン基であり、より好ましくは、C3、C5又はC7アルキレンである。最も好ましくは、R’’はC3又はC5アルキレンである。
【0421】
R6~R9
R9は好ましくはHである。
R6は、好ましくはH、OH、OR、SH、NH2、ニトロ及びハロから選択され、より好ましくはH又はハロであり、最も好ましくはHである。
R7は、好ましくは、H、OH、OR、SH、SR、NH2、NHR、NRR’、及びハロから選択され、より好ましくは、独立して、H、OH及びORから選択され、ここで、Rは、好ましくは、場合によっては置換されたC1~7アルキル、C3~10ヘテロシクリル及びC5~10アリール基から選択される。Rはより好ましくはC1-4アルキル基であり得、これは置換されていてもされなくてよい。対象となる置換基は、C5-6アリール基(例えば、フェニル)であり、7位の特に好ましい置換基は、OMe及びOCH2Phである。特に対象となる他の置換基は、ジメチルアミノ(すなわち、-NMe2);-(OC2H4)qOMe(式中、qは0~2である);窒素含有C6ヘテロシクリル(モルホリノ、ピペリジニル及びN-メチルピペラジニルを含む)である。
これ好ましい実施形態は各々R9’、R6’及びR7’に当てはまる。
【0422】
R
12
C2’とC3’の間に二重結合が存在する場合、R12は以下の中から選択される:
(a)ハロ、ニトロ、シアノ、エーテル、C1~7アルキル、C3~7ヘテロシクリル及びビス-オキシ-C1~3アルキレンを含む群から選択される1つ以上の置換基によって置換されてよいC5~10アリール基;
(b)C1-5飽和脂肪族アルキル;
(c)C3-6飽和シクロアルキル;
(d)
【0423】
【化91】
(式中、R
21、R
22及びR
23は各々、独立して、H、C
1~3飽和アルキル、C
2-3アルケニル、C
2-3アルキニル及びシクロプロピルから選択され、ここで、R
12基中の炭素原子の総数は5個以下である;
(e)
【0424】
【化92】
(式中、R
25a及びR
25bの一方がHであり、他方が、ハロメチル、メトキシ、ピリジル、及びチオフェニルから選択される基によって場合によっては置換されてよいフェニルから選択され;
(f)
【0425】
【化93】
(式中、R
24は、H;C
1-3飽和アルキル;C
2-3アルケニル;C
2-3アルキニル;シクロプロピル;フェニル、当該フェニルは、ハロメチル、メトキシ;ピリジル;及びチオフェニルから選択される基によって場合により置換されている)。
【0426】
R12がC5-10アリール基である場合、それはC5-7アリール基であってよい。C5-7アリール基は、フェニル基又はC5-7ヘテロアリール基、例えば、フラニル、チオフェニル及びピリジルであってよい。ある実施形態では、R12は好ましくはフェニルである。他の実施形態では、R12は、好ましくはチオフェニル、例えば、チオフェン-2-イル及びチオフェン-3-イルである。
【0427】
R12がC5-10アリール基である場合、それはC8-10アリール、例えばキノリニル又はイソキノリニル基であってよい。キノリニル又はイソキノリニル基は、いかなる利用可能な環位置を介してPBDコアに結合されることができる。例えば、キノリニルは、キノリン-2-イル、キノリン-3-イル、キノリン-4-イル、キノリン-5-イル、キノリン-6-イル、キノリン-7-イル及びキノリン-8-イルであってよい。当該キノリン-3-イル及びキノリン-6-イルが好ましい。イソキノリニルは、イソキノリン-1-イル、イソキノリン-3-イル、イソキノリン-4-イル、イソキノリン-5-イル、イソキノリン-6-イル、イソキノリン-7-イル及びイソキノリン-8-イルであってよい。当該イソキノリン-3-イル及びイソキノリン-6-イルが好ましい。
R12がC5-10アリール基である場合、それにはいかなる数の置換基があってよい。好ましくは、1~3つの置換基があり、1及び2つがより好ましく、単置換基が最も好ましい。置換基は、いかなる位置であってよい。
【0428】
R12がC5-7アリール基である場合、単一の置換基は、好ましくは、化合物の残りの部分との結合に隣接しない環原子上にある、すなわち、好ましくは、化合物の残りの部分との結合に対してβ又はγである。したがって、C5-7アリール基がフェニルである場合、置換基は好ましくはメタ-又はパラ位にあり、より好ましくはパラ位にある。
【0429】
R12がC8-10アリール基、例えばキノリニル又はイソキノリニルである場合、キノリン又はイソキノリン環のいかなる位置にいかなる数の置換基があってよい。ある実施形態では、それには、1つ、2つ又は3つの置換基があり、これらは、近位環及び遠位環、又は(2個以上の置換基があれば)両方のいずれかにあってよい。
【0430】
R12がC5-10アリール基である場合、R12置換基
R12がC5-10アリール基である場合のR12上の置換基がハロである場合、それは好ましくはF又はCl、より好ましくはClである。
R12がC5-10アリール基である場合のR12上の置換基がエーテルである場合、それは、いくつかの実施形態では、アルコキシ基、例えば、C5-7のアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ)であってよく、又はいくつかの実施形態では、それは、C5-7アリールオキシ基(例えば、フェノキシ、ピリジルオキシ、フラニルオキシ)であってよい。アルコキシ基はそれ自体、例えばアミノ基(例えば、ジメチルアミノ)によってさらに置換されてよい。
R12がC5-10アリール基である場合のR12上の置換基がC1-7アルキルである場合、それは好ましくはC1-4アルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル)であってよい。
【0431】
R12がC5-10アリール基である場合のR12上の置換基がC3-7ヘテロシクリルである場合、ある実施形態では、それはC6窒素含有ヘテロシクリル基、例えばモルホリノ、チオモルホリノ、ピペリジニル、ピペラジニルであってよい。当該基は、窒素原子を介してPBD部分の残りの部分に結合されることができる。当該基は、例えば、C1-4アルキル基によってさらに置換されてよい。C6窒素含有ヘテロシクリル基がピペラジニルである場合、前記さらなる置換基は第二の窒素環原子上にあってよい。
R12がC5-10アリール基である場合のR12上の置換基がビス-オキシ-C1-3アルキレンである場合、これは好ましくはビス-オキシ-メチレン又はビス-オキシ-エチレンである。
R12がC5-10アリール基である場合のR12上の置換基がエステルである場合、これは好ましくはメチルエステル又はエチルエステルである。
R12がC5-10アリール基である場合の特に好ましい置換基としては、メトキシ、エトキシ、フルオロ、クロロ、シアノ、ビス-オキシ-メチレン、メチル-ピペラジニル、モルホリノ及びメチル-チオフェニルがあげられる。R12の他の特に好ましい置換基は、ジメチルアミノプロピルオキシ及びカルボキシである。
【0432】
R12がC5-10アリール基である場合、特に好ましい置換R12基としては、4-メトキシ-フェニル、3-メトキシフェニル、4-エトキシ-フェニル、3-エトキシ-フェニル、4-フルオロ-フェニル、4-クロロ-フェニル、3,4-ビスオキシメチレン-フェニル、4-メチルチオフェニル、4-シアノフェニル、4-フェノキシフェニル、キノリン-3-イル及びキノリン-6-イル、イソキノリン-3-イル及びイソキノリン-6-イル、2-チエニル、2-フラニル、メトキシナフチル、及びナフチルがあげられるが、これらに限定されない。他の可能な置換R12基は4-ニトロフェニルである。特に興味深いR12基は、4-(4-メチルピペラジン-1-イル)フェニル及び3,4-ビソキシメチレン-フェニルを含む。
【0433】
R12がC1-5飽和脂肪族アルキルである場合、それはメチル、エチル、プロピル、ブチル又はペンチルであってよい。ある実施形態では、それは、メチル、エチル又はプロピル(n-ペンチル又はイソプロピル)であってよい。ある実施形態では、それはメチルであってよい。他の実施形態では、直鎖状又は分枝鎖状のブチル又はペンチルであってよい。
【0434】
R12がC3-6飽和シクロアルキルである場合、それはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル又はシクロヘキシルであってよい。ある実施形態では、それはシクロプロピルであってよい。
R12が以下の:
【0435】
【化94】
で表される場合、R
21、R
22及びR
23は各々、独立して、H、C
1-3飽和アルキル、C
2-3アルケニル、
C2-3アルキニル及びシクロプロピルから選択され、ここで、R
12基中の炭素原子の総数は5以下である。ある実施形態では、R
12基の炭素原子の総数は、4個以下又は3個以下である。
【0436】
ある実施形態では、R21、R22及びR23の1つはHであり、他の2つの基はH、C1-3飽和アルキル、C2-3アルケニル、C2-3アルキニル及びシクロプロピルから選択される。
他の実施形態では、R21、R22及びR23の2つはHであり、他の基はH、C1-3飽和アルキル、C2-3アルケニル、C2-3アルキニル及びシクロプロピルから選択される。
ある実施形態では、Hでない基は、メチル及びエチルから選択される。ある実施形態では、Hでない基はメチルである。
ある実施形態では、R21、及びはHである。
ある実施形態では、R22はHである。
ある実施形態では、R23はHである。
ある実施形態では、R21及びR22はHである。
ある実施形態では、R21及びR23はHである。
ある実施形態では、R22及びR23はHである。
特に関心のある基R12グループは以下の:
【0437】
【0438】
R12が以下の:
【0439】
【化96】
で表される場合、R
25a及びR
25bの一方はHであり、他方は、フェニルから選択される:このフェニルは、ハロ、メチル、メトキシ;ピリジル;及びチオフェニルから選択される基によって場合によっては置換される。ある実施形態では、Hでない基は場合によっては置換されたフェニルである。フェニル置換基がハロである場合には、好ましくはフルオロである。ある実施形態では、フェニル基は非置換である。
【0440】
R12が以下の:
【0441】
【化97】
で表される場合、R
24は、H;C
1-3飽和アルキル;C
2-3アルケニル;C
2-3アルキニル;シクロプロピル;フェニルから選択され、フェニルは、ハロメチル、メトキシ;ピリジル;及びチオフェニルから選択される基によって場合によっては置換される。フェニル置換基がハロである場合には、好ましくはフルオロである。ある実施形態では、フェニル基は非置換である。
ある態様では、R
24は、H、メチル、エチル、エテニル及びエチニルから選択される。ある実施形態では、R
24はH及びメチルから選択される。
【0442】
C2’とC3’の間に単結合がある場合、R12は以下の:
【0443】
【化98】
で表され、ここで、
R
12は、R
26a及びR
26bが独立してH、F、C
1-4飽和アルキル、C
2-3アルケニルから選択され、このアルキル及びアルケニル基は、C
1-4アルキルアミド及びC
1-4アルキルエステルから選択される基によって場合によっては置換されてよい;又は、R
26a及びR
26bの一方がHである場合、他方は、ニトリル及びC
1-4アルキルエステルから選択される。
ある実施形態では、R
26a及びR
26bはともにHであるのが好ましい。
他の実施形態では、R
26a及びR
26bはともにメチルであるのが好ましい。
さらなる実施形態では、R
26a及びR
26bの1つはHであり、他方はC
1-4飽和アルキル、C
2-3アルケニルから選択され、アルキル及びアルケニル基は場合によっては置換されてよい。これらのさらなる実施形態では、Hでない基がメチル及びエチルから選択されることがさらに好ましい。
【0444】
R2
R12の上記の好ましい実施形態は、R2に等しく適用される。
【0445】
R22
ある実施形態では、R22は式IIaである。
式IIaの場合、R22中のAは、フェニル基又はC5-7ヘテロアリール基、例えば、フラニル、チオフェニル及びピリジルであってよい。ある実施形態では、Aは好ましくはフェニルである。
【0446】
Q2-Xは、C5-7アリール基の利用可能な環原子のいずれか上にあってよいが、好ましくは、化合物の残りの部分との結合に隣接しない環原子上にあってよく、すなわち、好ましくは、化合物の残りの部分との結合に隣接しないβ又はγである。したがって、C5-7アリール基(A)がフェニルである場合、置換基(Q2-X)は好ましくはメタ位又はパラ位にあり、より好ましくはパラ位にある。
【0447】
ある実施形態では、Q1は、単結合である。当該実施形態では、Q2は、単結合及び-Z-(CH2)n-から選択され、ここで、Zは、単結合、O、S及びNHから選択され、1~3である。ある実施形態では、Q2は単結合である。他の実施形態では、Q2は-Z-(CH2)n-である。当該実施形態では、ZはO又はSであってよく、nは1又はnは2であってよい。当該実施形態の他では、Zは単結合であってよく、nは1であってよい。
他の実施形態では、Q1は-CH=CH-である。
【0448】
他の実施形態では、R22は式IIbである。当該実施形態では、RC1、RC2及びRC3は、独立して、H及び非置換C1~2アルキルから選択される。ある好ましい実施形態では、RC1、RC2及びRC3は全てHであり、他の実施形態では、RC1、RC2及びRC3は全てメチルである。特定の実施形態では、RC1、RC2及びRC3は、独立してH及びメチルから選択される。
【0449】
Xは、O-RL2’、S-RL2’、CO2-RL2’、CO-RL2’、NH-C(=O)-RL2’、NHNH-RL2’、CONHNH-RL2’、
【0450】
【化99】
、NR
NR
L2’を含むリストから選択される群であって、R
Nは、H及びC
1-4アルキルを含む群から選択される。Xは、好ましくは、OH、SH、CO
2H、-N=C=O又はNHR
Nであってよく、より好ましくは、O-R
L2’、S-R
L2’、CO
2-R
L2’、-NH-C(=O)-R
L2’又はNH-R
L2’であってよい。特に好ましい基としては、O-R
L2’、S-R
L2’及びNH-R
L2’があげられ、NH-R
L2’が最も好ましい基である。
【0451】
ある実施形態では、R22は式IIcである。当該実施形態では、好ましくは、QはNRN-RL2’である。他の実施形態では、QはO-RL2’である。さらなる態様では、QはS-RL2’である。RNは、好ましくは、H及びメチルから選択される。ある実施形態では、RNはHである。他の実施形態では、RNはメチルである。
【0452】
ある実施形態では、R22は、-A-CH2-X及び-A-Xであってよい。当該実施形態では、Xは、O-RL2’、S-RL2’、CO2-RL2’、CO-RL2’及びNH-RL2’であってよい。特に好ましい態様では、Xは、NH-RL2’であってよい。
【0453】
R10、R11
ある実施形態では、R10及びR11は、それらが結合している窒素原子及び炭素原子の間にともに二重結合を形成する。
ある実施形態では、R11はOHである。
ある実施形態では、R11はOMeである。
ある実施形態では、R11は、SOzMであり、ここで、zは2又は3であり、Mは、薬学的に許容される一価のカチオンである。
【0454】
R11a
ある実施形態では、R11aはOHである。
ある実施形態では、R11aはOMeである。
ある実施形態では、R11aはSOzMであり、ここでzは2又は3であり、Mは薬学的に許容される一価のカチオンである。
【0455】
R20、R21
ある実施形態では、R20及びR21は共に、それらが結合している窒素原子及び炭素原子の間に二重結合を形成する。
ある実施形態では、R20はHである。
ある実施形態では、R20はRCである。
ある実施形態では、R21はOHである。
ある実施形態では、R21はOMeである。
ある実施形態では、R21は、SOzMであり、ここで、zは2又は3であり、Mは、薬学的に許容される一価のカチオンである。
【0456】
R30、R31
ある実施形態では、R30及びR31は、共に、それらが結合している窒素原子と炭素原子との間に二重結合を形成する。
ある実施形態では、R31はOHである。
ある実施形態では、R31はOMeである。
ある実施形態では、R31は、SOzMであり、ここで、zは2又は3であり、Mは、薬学的に許容される一価のカチオンである。
【0457】
M及びz
Mは、薬学的に許容される一価のカチオンであるのが好ましく、より好ましくはNa+である。
zは、好ましくは3である。
【0458】
本開示の第1の態様の好ましい複合体は、以下の式Ia:
【0459】
【化100】
(式中、
R
L1’、R
20及びR
21は、上記定義の通りであり;
nは1又は3;
R
1aは、メチル又はフェニルであり;
R
2aは、以下の:
【0460】
【化101】
から選択される)
で表されるDLがあってよい。
【0461】
本開示の第1の態様の好ましい複合体は、式Ib:
【0462】
【化102】
(式中、
R
L1’、R
20及びR
21は、上記定義の通りであり;
nは1又は3であり、
R
1aはメチル又はフェニル)
で表されるDLがあってよい。
【0463】
本開示の第1の態様の好ましい複合体は、式Ic:
【0464】
【化103】
(式中、
R
L2’、R
10、R
11、R
30及びR
31は、上記定義の通りであり;
nは1又は3であり、
選択されたR
12aは、以下の:
【0465】
【化104】
から選択され、
アミノ基はフェニル基のメタ位かパラ位にある)
で表されるDLがあってよい。
【0466】
本開示の第1の態様の好ましい複合体は、式Id:
【0467】
【化105】
(式中、
R
L2’、R
10、R
11、R
30及びR
31は、上記定義の通りであり;
nは1又は3であり;
R
1aはメチル又はフェニルであり;
R
12aは、以下の:
【0468】
【化106】
から選択される)
で表されるDLがあってよい。
【0469】
本開示の第1の態様の好ましい複合体は、式Ie:
【0470】
【化107】
(式中、
R
L2’、R
10、R
11、R
30及びR
31は、上記定義の通りであり;
nは1又は3であり;
R
1aはメチル又はフェニルであり;
R
12aは、以下の:
【0471】
【化108】
から選択される)
で表されるDLがあってよい。
【0472】
配列
【0473】
【0474】
【化110】
開示の記載
1.、 式L-(D
L)pの複合体であり、ここで、D
Lは以下の式I又はII:
【0475】
【化111】
(式中、
Lは、KAAG1に連結する抗体(Ab)である抗体であり;
C2’とC3’の間が二重結合である場合、R
12は、以下の:
(ia)場合によっては、ハロ、ニトロ、シアノ、エーテル、カルボキシ、エステル、C
1-7アルキル、C
3-7ヘテロシクリル及びビス-オキシ-C
1-3アルキレンを含む群から選択される1又はそれ以上の置換基により置換される、C
5-10アリール基;
(ib)C
1-5飽和脂肪族アルキル;
(ic)C
3-6飽和シクロアルキル;
(id)以下の:
【0476】
【化112】
であって、ここで、R
21、R
22及びR
23は各々、独立して、H、C
1-3飽和アルキル、C
2-3アルケニル、C
2-3アルキニル及びシクロプロピルから選択され、ここで、R
12基の炭素原子の総数は5個以下であり;
(ie)以下の:
【0477】
【化113】
であって、ここで、R
25a及びR
25bの一方がHであり、他方が、ハロ、メチル、メトキシ、ピリジル、及びチオフェニルから選択される基によって、場合によっては置換されるフェニルであり;かつ、
(if)以下の:
【0478】
【化114】
であって、ここで、R
24が、H;C
1-3飽和アルキル;C
2-3アルケニル;C
2-3アルキニル;シクロプロピル;ハロ、メチル、メトキシ、ピリジル、及びチオフェニルから選択される基によって、場合によっては置換されるフェニル;及びチオフェニルから選択され;
からなる群から選択され;
C2’とC3’の間に単結合がある場合、R
12は、以下の:
【0479】
【化115】
であって、ここで、R
26a及びR
26bは、独立して、H、F、C
1-4飽和アルキル、C
2-3アルケニルから選択され、このアルキル及びアルケニル基は、場合によっては、C
1-4アルキルアミド及びC
1-4アルキルエステルから選択される基により置換され;又は、R
26a及びR
26bの一方がHである場合、他方は、ニトリル及びC
1-4アルキルエステルから選択され;
R
6及びR
9は、独立して、H、R、OH、OR、SH、SR、NH
2、NHR、NRR’、ニトロ、Me
3Sn、及びハロから選択され;
ここで、R及びR’は、独立して、場合によっては、置換された、C
1-12アルキル、C
3-20ヘテロシクリル、及びC
5-20アリール基から独立して選択され;
R
7は、H、R、OH、OR、SH、SR、NH
2、NHR、NRR’、ニトロ、Me
3Sn、及びハロから選択され;
R’’は、C
3-12アルキレン基であり、鎖は、1又はそれ以上のヘテロ原子、例えばO、S、NR
N2(ここで、R
N2は、H又はC
1-4アルキルである)、及び/又は芳香環、例えばベンゼン又はピリジンによって中断されてよく;
Y、Y’はO、S、NHから選択され;
R
6’、R
7’、R
9’は各々、R
6、R
7、R
9と同じ基から選択され;
上記[式I]において、
RL
1’は抗体(Ab)に連結するリンカーであり;
R
11aは、OH、OR
A(式中、R
AはC
1-4アルキルである)、及びSOzM(式中、zは2又は3であり、Mは薬学的に許容される一価のカチオンである)から選択され;
R
20とR
21は、結合している窒素原子と炭素原子の間に二重結合を形成するか、又は;
R
20は、H及びR
Cから選択され、ここでR
Cはキャッピング基であり;
R
21は、OH、OR
A、SOzMから選択され;
C
2とC
3との間に二重結合がある場合、R
2は、以下の:
(ia)場合によっては、ハロ、ニトロ、シアノ、エーテル、カルボキシ、エステル、C
1-7アルキル、C
3-7ヘテロシクリル及びビス-オキシ-C
1-3アルキレンを含む群から選択される1又はそれ以上の置換基により置換されてよい、C
5-10アリール基;
(ib)C
1-5飽和脂肪族アルキル;
(c)C
3-6飽和シクロアルキル;
(id)以下の:
【0480】
【化116】
において、R
11、R
12及びR
13は各々、独立して、H、C
1-3飽和アルキル、C
2-3アルケニル、C
2-3アルキニル、及びシクロプロピルから選択され、ここで、R
2基中の炭素原子の総数は5個以下であり;
(ie)以下の
【0481】
【化117】
において、R
15a及びR
15bの一方がHであり、他方が、場合によっては、ハロ、メチル、メトキシで置換されてよいフェニル;ピリジル;及びチオフェニルから選択される基から選択され;かつ、
(if)以下の
【0482】
【化118】
において、R
14が、H;C
1-3飽和アルキル;C
2-3アルケニル;C
2-3アルキニル;シクロプロピル;場合によっては、ハロ、メチル、メトキシで選択される基によって置換され、フェニル;ピリジル;及びチオフェニルから選択される;
からなる群から選択され:
C
2とC
3の間に単結合がある場合、
R
2は、以下の
【0483】
【化119】
であって、ここで、R
16a及びR
16bは、独立して、H、F、C
1-4飽和アルキル、C
2-3アルケニルから選択され、このアルキル及びアルケニル基は、場合によっては、C
1-4アルキルアミド及びC
1-4アルキルエステルから選択される基によって置換されてよく;又は、R
16a及びR
16bの一方がHである場合、他方は、ニトリル及びC
1-4アルキルエステルから選択され;
上記[式II]の場合は、
R
22は、以下の式IIIa、式IIIb又は式IIIc:
(a)式IIIaは以下の、
【0484】
【化120】
であって、ここで、AはC
5-7アリール基であり、以下の:
(i)Q
1は単結合であり、Q
2は単結合及び-Z-(CH
2)
n-から選択され、ここで、Zは、単結合、O、S及びNHから選択され、nは1~3であり;
(ii)Q
1は-CH=CH-であり、Q
2は単結合であり;のいずれかであり;
(b)式IIIbは以下の、
【0485】
【化121】
であって、ここで、R
C1、R
C2及びR
C3は、独立して、H及び非置換のC
1-2アルキルから選択され;
(c)式IIIcは以下の、
【0486】
【化122】
であって、ここで、QはO-R
L2’、S-R
L2’及びNR
N-R
L2’から選択され、R
Nは、H、メチル及びエチルから選択される;であり、
Xは、O-R
L2’、S-R
L2’、CO
2-R
L2’、CO-R
L2’、NH-C(=O)-R
L2’、NHNH-R
L2’、CONHNH-R
L2’、
【0487】
【化123】
、NR
NR
L2’を含む群から選択され、ここで、R
Nは、H及びC
1-4アルキルを含む群から選択され;
R
L2’は、抗体(Ab)に連結するリンカーであり;
R
10とR
11はともに、結合している窒素原子と炭素原子との間に二重結合を形成するか;又は
R
10はHであり、R
11はOH、OR
A及びSOzMから選択され;
R
30及びR
31は、それらが結合している窒素原子と炭素原子との間に二重結合を形成するか、又は;
R
30はHであり、R
31はOH、OR
A及びSOzMから選択される)
で表される、複合体である。
【0488】
2.以下の:
【0489】
【0490】
【化125】
で表される複合体ではない、1に記載の複合体。
【0491】
3.R7は、H、OH及びORから選択される、1又は2のいずれか一項に記載の複合体。
4.R7は、C1-4アルキルオキシ基である、3に記載の複合体。
5.YはOである、1~4のいずれか一項に記載の複合体。
6.R”は、C3-7アルキレンである、1~5のいずれか一項に記載の複合体。
7.R9はHである、1~6のいずれか一項に記載の複合体。
8.R6は、H及びハロから選択される、1~7のいずれか一項に記載の複合体。
9.C2’とC3’の間に二重結合があり、R12がC5-7アリール基である、1~8のいずれか一項に記載の複合体。
10.R12がフェニルである、9に記載の複合体。
11.C2’とC3’の間に二重結合があり、R12がC8-10アリール基である、1~8のいずれか一項に記載の複合体。
12.R12に1~3個の置換基がある、9~11のいずれか一項に記載の複合体。
13.置換基が、メトキシ、エトキシ、フルオロ、クロロ、シアノ、ビス-オキシ-メチレン、メチル-ピペラジニル、モルホリノ及びメチル-チオフェニルから選択される、9~12のいずれか一項に記載の複合体。
14.C2’とC3’の間に二重結合があり、R12がC1-5飽和脂肪族アルキル基である、1~8のいずれか一項に記載の複合体。
15.R12は、メチル、エチル又はプロピルである、16に記載の複合体。
16.C2’とC3’の間に二重結合があり、R12がC3-6飽和シクロアルキル基である、1~8のいずれか一項に記載の複合体。
17.R12は、シクロプロピルである、16に記載の複合体。
18.C2’とC3’の間に二重結合があり、R12は、以下の:
【0492】
【化126】
で表される基である、1~8のいずれか一項に記載の複合体。
19.R
12基中の炭素原子の総数が4個以下である、18に記載の複合体。
20.R
12基中の炭素原子の総数が3個以下である、19に記載の複合体。
21.R
21、R
22及びR
23の1つがHであり、他の2つの基は、H、C
1-3飽和アルキル;C
2-3アルケニル;C
2-3アルキニル及びシクロプロピルから選択される、18~20のいずれか1項に記載の複合体。
22.R
21、R
22及びR
23の2つがHであり、残りの1つの基は、H、C
1-3飽和アルキル;C
2-3アルケニル;C
2-3アルキニル及びシクロプロピルから選択される、18~20のいずれか1項に記載の複合体。
23.C
2’とC
3’の間に二重結合があり、R
12は、以下の:
【0493】
【化127】
で表される基である、1~8のいずれか一項に記載の複合体。
24.R
12は、以下の:
【0494】
【化128】
で表される基である、1~8のいずれか一項に記載の複合体。
25.C
2’とC
3’の間に二重結合があり、R
12は、以下の:
【0495】
【化129】
で表される基である、1~8のいずれか一項に記載の複合体。
26.R
24は、H、メチル、エチル、エテニル及びエチニルから選択される、25に記載の複合体。
27.R
24は、H、メチル又はエチルである、26に記載の複合体。
28.C
2’とC
3’の間に単結合があり、R
12は、以下の:
【0496】
【化130】
で表される基であり、R
26a及びR
26bは、ともにHである、1~8のいずれか一項に記載の複合体。
29.C
2’とC
3’の間に単結合があり、R
12は、以下の:
【0497】
【化131】
で表される基であり、R
26a及びR
26bは、ともにメチルである、1~8のいずれか一項に記載の複合体。
30.C
2’とC
3’の間に単結合があり、R
12は、以下の:
【0498】
【化132】
で表される基であり、R
26a及びR
26bの一方はHであり、他方はC
1-3飽和アルキル;C
2-3アルケニルから選択され、ここで、場合によっては、前記アルキル及びアルケニル基は置換されてよい、1~8のいずれか一項に記載の複合体。
【0499】
[式I]
31.C2とC3の間に二重結合があり、R2がC5-7アリール基である、1~30のいずれか一項に記載の複合体。
32.R2がフェニルである、31に記載の複合体。
33.C2とC3の間に二重結合があり、R2がC8-10アリール基である、1~30のいずれか一項に記載の複合体。
34.R2に1~3個の置換基がある、31~33のいずれか一項に記載の複合体。
35.置換基が、メトキシ、エトキシ、フルオロ、クロロ、シアノ、ビス-オキシ-メチレン、メチル-ピペラジニル、モルホリノ及びメチル-チオフェニルから選択される、31~34のいずれか一項に記載の複合体。
36.C2とC3の間に二重結合があり、R2がC1-5飽和脂肪族アルキル基である、1~30のいずれか一項に記載の複合体。
37.R2は、メチル、エチル又はプロピルである、36に記載の複合体。
38.C2とC3の間に二重結合があり、R2がC3-6飽和シクロアルキル基である、1~30のいずれか一項に記載の複合体。
39.R2は、シクロプロピルである、38に記載の複合体。
40.C2とC3の間に二重結合があり、R2は、以下の:
【0500】
【化133】
で表される基である、1~30のいずれか一項に記載の複合体。
41.R
2基中の炭素原子の総数が4個以下である、40に記載の複合体。
42.R
2基中の炭素原子の総数が3個以下である、41に記載の複合体。
43.R
11、R
12及びR
13の1つがHであり、他の2つの基は、H、C
1-3飽和アルキル;C
2-3アルケニル;C
2-3アルキニル及びシクロプロピルから選択される、40~42のいずれか1項に記載の複合体。
44.R
11、R
12及びR
13の2つがHであり、残りの1つの基は、H、C
1-3飽和アルキル;C
2-3アルケニル;C
2-3アルキニル及びシクロプロピルから選択される、40~42のいずれか1項に記載の複合体。
45.C
2とC
3の間に二重結合があり、R
2は、以下の:
【0501】
【化134】
で表される基である、1~30のいずれか一項に記載の複合体。
46.R
2は、以下の:
【0502】
【化135】
で表される基である、1~30のいずれか一項に記載の複合体。
47.C
2とC
3の間に二重結合があり、R
2は、以下の:
【0503】
【化136】
で表される基である、1~30のいずれか一項に記載の複合体。
48.R
14は、H、メチル、エチル、エテニル及びエチニルから選択される、48に記載の複合体。
49.R
14は、H、メチル又はエチルである、48に記載の複合体。
50.C
2とC
3の間に単結合があり、R
2は、以下の:
【0504】
【化137】
で表される基であり、R
16a及びR
16bは、ともにHである、1~30のいずれか一項に記載の複合体。
51.C
2とC
3の間に単結合があり、R
2は、以下の:
【0505】
【化138】
で表される基であり、R
16a及びR
16bは、ともにメチルである、1~30のいずれか一項に記載の複合体。
52.C
2とC
3の間に単結合があり、R
2は、以下の:
【0506】
【化139】
で表される基であり、R
16a及びR
16bは、の一方はHであり、他方はC
1-3飽和アルキル;C
2-3アルケニルから選択され、ここで、場合によっては、前記アルキル及びアルケニル基は置換されてよい、1~30のいずれか一項に記載の複合体。
53.R
11aがOHである、1~52のいずれか一項に記載の複合体。
54.R
21がOHである、1~53のいずれか一項に記載の複合体。
55.R
21がOMeである、1~53のいずれか一項に記載の複合体。
56.R
20がHである、1~55のいずれか一項に記載の複合体。
57.R
20がR
Cである、1~55のいずれか一項に記載の複合体。
58.R
Cが、Alloc、Fmoc、Boc、Troc、Teoc、Psec、Cbz及びPNZからなる群より選択される、57に記載の複合体。
60.R
Cが以下の:
【0507】
【化140】
(式中、星印は、N10位置への連結点を示し、G
2は、終結基であり、L
3は、共有結合であるか、又は切断可能なリンカーL
1、L
2は、共有結合であるか、又はOC(=O)と共に自己-非修飾性リンカーを形成する)
で表される基である、57に記載の複合体。
61.G
2は、Ac若しくはMocであるか、又はAlloc、Fmoc、Boc、Troc、Teoc、Psec、Cbz及びPNZからなる群より選択される、60に記載の複合体。
62.R
20及びR
21が共に、それらが結合している窒素原子と炭素原子との間に二重結合を形成する、1~53のいずれか一項に記載の複合体。
【0508】
[式II]
63.R22は、式IIIaであり、Aがフェニルである、1~30のいずれか一項に記載の複合体。
64.R22は、式IIaであり、Q1が単結合である、1~30及び63のいずれか一項に記載の複合体。
65.Q2は単結合である、63に記載の複合体。
66.Q2は-Z-(CH2)n
-であり、ZがO又はSであり、nが1又は2である、63に記載の複合体。
67.R22は式IIIaであり、Q1は-CH=CH-である、1~30及び63のいずれか一項に記載の複合体。
68.R22は、式IIIbであり、かつ、RC1、RC2及びRC3は、独立して、H及びメチルから選択される、1~30のいずれか一項に記載の複合体。
69.RC1、RC2及びRC3は、全てHである、68に記載の複合体。
70.RC1、RC2及びRC3は、全てメチルである、68に記載の複合体。
71.R22は式IIIa又は式IIIbであり、Xは、O-RL2’、S-RL2’、CO2-RL2’、-N-C(=O)-RL2’及びNH-RL2’から選択される、1~30及び63~70のいずれか一項に記載の複合体。
72.XがNH-RL2’である、71に記載の複合体。
73.R22が式IIIcであり、QがNRN-RL2’である、1~30のいずれか一項に記載の複合体。
74.RNは、H又はメチルである、73に記載の複合体。
75.R22が式IIIcであり、QがO-RL2’又はS-RL2’である、1~30のいずれか一項に記載の複合体。
76.R11がOHである、1~30及び63~75のいずれか一項に記載の複合体。
77.R11がOMeである、1~30及び63~75のいずれか一項に記載の複合体。
78.R10がHである、1~30及び63~77のいずれか一項に記載の複合体。
79.R10及びR11は共に、それらが結合する窒素及び炭素原子の間に二重結合を形成する、1~30及び63~75のいずれか一項に記載の複合体。
80.R31がOHである、1~30及び63~79のいずれか一項に記載の複合体。
81.R31がOMeである、1~30及び63~79のいずれか一項に記載の複合体。
82.R30がHである、1~30及び63~81のいずれか一項に記載の複合体。
83.R30及びR31は共に、それらが結合する窒素及び炭素原子の間に二重結合を形成する、1~30及び63~79のいずれか一項に記載の複合体。
84.R6’、R7’、R9’、及びY’は、R6、R7、R9、及びYと同一である、1~83のいずれか一項に記載の複合体。
85.L-RL1’又はL-RL2’は以下の:
【0509】
【化141】
(式中、星印は、PBDへの連結点を示し、Abは抗体であり、L
1は切断可能なリンカーであり、AはL
1を抗体に連結する連結基であり、L
2は共有結合であり、又は-OC(=O)と共に自己非浸透性リンカーを形成する)
である、1~84のいずれか一項に記載の複合体。
86.L
1は、酵素により切断されうる、85に記載の複合体。
87.L
1は、アミノ酸が連続した配列を含む、85又は86に記載の複合体。
88.L
1はジペプチドを含み、かつ、ジペプチド-NH-X
1-X
2-CO-における基-X
1-X
2-は、以下の:
-Phe-Lys-、
-Val-Ala-、
-Val-Lys-、
-Ala-Lys-
-Val-Cit-、
-Phe-Cit-、
-Leu-Cit-、
-Ile-Cit-、
-Phe-Arg-、及び
-Trp-Cit-
から選択される、87に記載の複合体。
89.ジペプチド-NH-X
1-X
2-CO-における基-X
1-X
2-は、以下の:
-Phe-Lys-、
-Val-Ala-、
-Val-Lys-、
-Ala-Lys-
-Val-Cit-
から選択される、88に記載の複合体。
90.ジペプチド-NH-X
1-X
2-CO-における基-X
1-X
2-は、-Phe-Lys-、-Val-Ala-又は-Val-Cit-である、89に記載の複合体。
91.基X
2-COは、L
2に結合している、88~90のいずれか一項に記載の複合体。
92.基NH-X
1-はAに連結されている、88~91のいずれか一項に記載の複合体。
93.OC(=O)とL
2はともに自己-非移動性リンカーを形成する、88~92のいずれか一項に記載の複合体。
94.C(=O)OとL
2は共に以下の基:
【0510】
【化142】
(式中、星印はPBDへの連結点を示し、波線はリンカーL
1への連結点を示し、YはNH、O、C(=O)NH又はC(=O)Oであり、nは0から3である)
を形成する、93に記載の複合体。
95.YはNHである、94に記載の複合体。
96.nが0である、94又は95に記載の複合体。
97.L
1及びL
2はOC(=O)-とともに以下の:
【0511】
【化143】
(式中、星印はPBDへの連結点を示し、波線はリンカーL
1の残りの部分への連結点又はAへの連結点を示す)
のどちらかである、95に記載の複合体。
98.波線は、Aへの連結点を示す、97に記載の複合体。
99.Aは、以下の:
(i)
【0512】
【化144】
(式中、星印はL1への連結点、波線は抗体への連結点を示し、nは0~6である)
又は、
(ii)
【0513】
【化145】
(式中、星印はL1への連結点を示し、波線は抗体への連結点を示し、nは0又は1、mは0から30である)
で表される、85~98のいずれか一項に記載の複合体。
【0514】
100.以下の式:
【0515】
【0516】
【化147】
で表されるConjA、ConjB、ConjC、ConjD又はConjEの1に記載の複合体。
【0517】
101.抗体は、アミノ酸配列が配列番号5で表されるVH CDR1、アミノ酸配列が配列番号6で表されるVH CDR2、及びアミノ酸配列が配列番号7で表されるVH CDR3を含むVHドメインを含み、場合によっては、VHドメインの配列は、配列番号1で表される、1~100のいずれか一項に記載の複合体。
102.抗体は、アミノ酸配列が配列番号8で表されるVL CDR1、アミノ酸配列が配列番号9で表されるVL CDR2、及びアミノ酸配列が配列番号10で表されるVL CDR3を含むVLドメインを含む、1~101のいずれか一項に記載の複合体。
103.抗体は、配列が配列番号2、配列番号13、又は配列番号15で表されるVLドメインを含む、1~102のいずれか1項に記載の複合体。
104.抗体は配列が配列番号2で表されるVLドメインを含む、1~102のいずれか一項に記載の複合体。
105.抗体は配列が配列番号3で表される重鎖を含む、1~104のいずれか一項に記載の複合体。
106.抗体は配列が配列番号11で表される重鎖を含む、1~104のいずれか一項に記載の複合体。
107.抗体は、配列が配列番号4、配列番号14、又は配列番号16で表される軽鎖を含む、1~106のいずれか一項に記載の複合体。
108.抗体は配列が配列番号4で表される軽鎖を含む、1~106のいずれか一項に記載の複合体。
109.抗体は完全な抗体である、1~108のいずれか一項に記載の複合体。
110.抗体は、ヒト化、脱免疫化、又は再表面化されている、1~109のいずれか一項に記載の複合体。
111.抗体は、完全ヒトモノクローナルIgG1抗体、好ましくはIgG1、κである、1~108のいずれか一項に記載の複合体。
【0518】
112.薬物(D)の抗体(Ab)への薬物積載量(p)が1~約8の整数である、1~111のいずれか1項に記載の複合体。
113.pが1、2、3又は4である、112に記載の複合体。
114.抗体-薬物複合体化合物の混合物中の抗体当たりの平均薬物積載量は、約2~約5である、抗体-薬物複合体化合物の混合物を含む、112に記載の複合体。
【0519】
115.治療で用いるための、1~114のいずれか一項に記載の複合体。
116.被験体における増殖性疾患の治療で用いるための、1~114のいずれか一項に記載の複合体。
117.疾患ががんである、116記載の複合体。
【0520】
118.1~114のいずれか一項に記載の複合体と、薬学的に許容される希釈剤、担体又は賦形剤とを含む、医薬組成物。
119.治療有効量の化学治療薬をさらに含む、118に記載の医薬組成物。
120.被験体における増殖性疾患の治療で用いるための医薬の調製における1~114のいずれか一項に記載の複合体の使用。
【0521】
121.118に記載の医薬組成物を患者に投与することを含む、がんを治療する方法。
122.患者に、複合体と化学治療薬が併用投与される、121記載の方法。
【0522】
〔実施例〕
薬物-リンカー及び放出される化合物の調製及び特性に関する実験的方法
薬物-リンカー及び本明細書に開示された放出される化合物の合成及び特性に関する詳細な例は、例えば、国際公開第号パンフレットWO2014/05719(第106頁以降の実施例の項目、特に実施例1~10を参照のこと)に見出すことができる。
当該実施例は、本明細書で参照され、かつ、参考として援用される。
【実施例1】
【0523】
複合体の形成
ADCの生成
抗KAAG1抗体3A4(各々配列番号1及び2であるVH及びVL配列がある)を、薬物リンカーEと連結させて、以下の方法によりADCxKAAG1を得た。
30mMヒスチジン、200mMスクロース、pH6.0中の3A4を、500mM Tris、25mM EDTA、pH 8.5を用いてpH 7.5に調整し、18~22℃で1.24モル当量のTCEPを添加することにより90分間還元した。
4モル当量の10mM SG3249(別名、薬物リンカーE)をDMAに90分間、18~22℃で添加し、反応を、8モル当量のN-アセチルシステインを30分間、18~22℃で添加することによりクエンチした。
400mM ヒスチジン-HCl、pH 4.0を添加してpHを6.2に調節し、そして複合体を0.2μMフィルターを通して濾過した。複合体を、ペリコン3 Ultracell膜を用いて、30mMヒスチジン、175mMショ糖、pH 6.0の12のダイアボリュームを用いて透析濾過した。
ADCを30mMヒスチジン、175mMスクロース、pH 6.0で5mg/mlの最終タンパク質濃度に希釈し、Tween-20を0.02%(v/v)の最終濃度に加えた。最終的にバルクを0.2μMフィルターを通して濾過し、-70℃以下で保存した。
薬物-リンカーEと連結されたB12抗HIVgp120抗体を用いて、上記と同様の方法により対照非KAAG1標的ADCを生成した。
【0524】
DAR定量・純度分析
HICによって測定したADCxKAAG1の最終DARは2.2であり、%単量体はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定した場合で95%であった。
【実施例2】
【0525】
ADCの生体外細胞毒性
細胞培養
PC3、SN12C、SKOV3細胞を用いた。
【0526】
生体外細胞毒性試験
コンフルエンスが80~90%で対数増殖した細胞をPBSで洗浄し、トリプシン-EDTA(0.25%)で分離(適宜)し、細胞特異的培地に再懸濁した。次いで、細胞を6×104細胞/mlに希釈し、50μl/ウェルを、標識した白色96ウェルの平らな底部白色透明プレートにアリコートした。
各ADCの400μlストック溶液を、細胞増殖培地中でフィルター滅菌したADCの希釈によって20μg/μlの濃度にした。
この原液を用いて、1:5倍希釈範囲を作製し、7種類の希釈セットを作製し、各ADC希釈液(原液を含む)50μlを、細胞懸濁液50μlを含有する標識白色96ウェル平底プレートの2つの反復ウェルに分注した。
培地対照:100μlの細胞増殖培地を2つの反復ウェルに分注した。
細胞株対照:50μlの細胞増殖培地+50μlの細胞懸濁液を2つの反復ウェルに分注した。
次いで、プレートを、細胞株特異的曝露時間;PC3及びSN12Cについては3日間、SKOV3については4日間、CO2ガスインキュベーター中で37℃でインキュベートした。
【0527】
インキュベーション期間の終了時に、CellTiterGloアッセイ(Promega)により細胞生存率を測定した。プレートをインキュベーターから取り出し、室温に10分間平衡させ、次いで100μl/ウェルのCellTiter-Gloをウェルに添加した。次いで、プレートを軌道シェーカー上に2分間置き(穏やかに振盪)、次いで、10分間安定化させた。細胞発光は、Envisionプレートリーダーを用いて測定した。
【0528】
細胞生存率は、ADC処理細胞の平均ルミネセンス(2つの反復ウェルを用いて)及び無処理細胞の平均ルミネセンス(細胞対照ウェル)から計算した。細胞生存率は、ADC処理細胞の平均(2つの複製ウェルを使用)及び無処理細胞の平均(細胞対照ウェル)から計算した。各反復について非線形曲線適合アルゴリズムを用いてグラフパッドプリズムを用いて用量-反応データからIC50を求め、そこから平均IC50を計算した。実験を3回繰り返した。
【0529】
結果
【0530】
【表1】
IC50値は、
図1に示されたプロットから導かれる。
【実施例3】
【0531】
TNBC MDA-MB-231異種移植モデルにおける生体内効能試験
雌の無胸腺ヌードマウス(Crl:NU(Ncr)‐Foxn1nu、Charles River)は8週齢であり、試験1日目に体重(BW)は20.7~31.2gであった。各マウスに、5×106細胞のMDA-MB-231腫瘍細胞を右側腹部に皮下(s.c.)注射した。
腫瘍はキャリパーを用いて二次元で測定し、体積は式を用いて計算した:
腫瘍体積(mm3) = w2×l/2
(式中、w=腫瘍の幅、l=長さ、単位mmである)
腫瘍質量は、1mgが腫瘍体積の1mm3に相当すると仮定すると推定される。
16日後、試験の1日目に指定されたマウスを、個々の腫瘍体積が108~144mm3の範囲で、腫瘍体積が113~124mm3の群平均である治療群(n=8)に分類した。
試験第1日に、薬物を単回注射(1日1回×1回)で静脈内(i.v.)投与した。投与量は体重20g当たり0.2mL(10mL/kg)とし、各個体の体重に合わせた。
腫瘍は、1週間に2回、キャリパーを用いて測定し、各動物は、腫瘍がエンドポイントの体積1500mm3に達した時点又は試験終了(59日目)のいずれか早い方で安楽死させた。
【0532】
【実施例4】
【0533】
SN12C腎がん異種移植モデルにおける生体内効能試験
雌の重症複合免疫不全マウス(Fox Chase SCID(登録商標)、CB17/Icr-Prkdcscid/IcrIcoCrl、Charles River)は9週齢であり、試験1日目の体重(BW)は15.4~22.2gであった。腫瘍移植日に、各試験マウスに5×10
6個のSN12C細胞(50%マトリゲル(登録商標)マトリックスリン酸緩衝生理食塩水に0.1mLの細胞懸濁液)を右側腹部に皮下移植した。
腫瘍はキャリパーを用いて二次元で測定し、体積は式を用いて計算した:
腫瘍体積(mm
3) = w2×l/2
(式中、w=腫瘍の幅、l=長さ、単位mmである)
腫瘍質量は、1mgが腫瘍体積の1mm
3に相当すると仮定すると推定される。
腫瘍成長は、平均サイズが100~150mm
3の目標範囲に近づくにつれてモニターされた。試験の1日目と指定された腫瘍移植から23日後に、動物を個々の腫瘍体積が108~172mm
3、腫瘍体積が129mm
3の群(n=8)に分類した。
試験第1日に、薬物を単回注射(1日1回×1回)で静脈内(i.v.)投与した。投与量は体重20g当たり0.2mL(10mL/kg)とし、各個体の体重に合わせた。
腫瘍は、1週間に2回、キャリパーを用いて測定し、各動物は、腫瘍がエンドポイントの体積1000mm
3に達した時点又は試験の終了のいずれか早い方で安楽死させた。試験は60日目に終了した。
結果を
図3に示す。
【実施例5】
【0534】
卵巣がんPDXモデルCTG-0703の生体内効能試験
雌の無胸腺Nude-Foxn1nu (Envigo; Indianapolis,In,USA)は少なくとも8週齢で、投与開始時の体重は約20gであった。ストックマウスにPDXモデルCTG-0703由来の腫瘍細胞を移植した。
腫瘍が1000~1500mm
3に達した後、それらを回収し、腫瘍断片を雌マウスの左側腹部に皮下移植した。各動物に特定の継代ロット(継代7)を移植し、記録した。
腫瘍の成長をデジタルキャリパーを用いて週2回モニターし、腫瘍体積(TV)を式(0.52×[長さ×幅2])を用いて計算した。
TVが約150~300mm
3に達したら、動物を腫瘍サイズでマッチさせ、溶媒対照群(n=8)又は治療群(n=8)に割り付け、0日目に投与を開始した。薬物は静脈内(i.v.)に単回注射(qd×1)で投与した。投与量は体重20g当たり0.2mL(10mL/kg)であった。
0日目の投与開始後、動物の体重をデジタルスケールを用いて週2回測定し、テレビを週2回測定し、試験最終日又は瀕死状態の動物を安楽死させた日にも測定した。
溶媒対照群の平均腫瘍容積が約1500mm
3に達した時点、又は49日目までのいずれか早い方で試験を終了した。腫瘍サイズが1700mm
3を超える個体を試験から除外し、安楽死させた。
結果を
図4に示す。
【実施例6】
【0535】
4つのさらなる卵巣がんPDXモデルにおける生体内効能試験
方法論研究PDXモデルCTG-0252
雌の無胸腺マウス(Nude-Foxn1nu、Envigo)は、投与開始時の体重が18g以上の6~8週齢であった。各マウスに、左側腹部に腫瘍断片(約5×5×5mm3)を皮下(皮下)に移植した。腫瘍の成長をデジタルキャリパーを用いて週2回モニターし、腫瘍体積(TV)を式(0.52×[長さ×幅2])を用いて計算した。
【0536】
TVが約100~200mm
3(平均群TV 200mm
3)に達したら、腫瘍サイズをマッチングさせ、溶媒対照群と治療群(n=5/群)に無作為に割り付けた。試験の0日目に投与を開始し、薬物を単回注射(1日1回×1回)で静脈内(i.v.)投与した。投与量は体重20g当たり0.2mL(10mL/kg)とし、各個体の体重に合わせた。腫瘍は、キャリパーを用いて週2回測定し、腫瘍がエンドポイントの体積2000mm
3に達した時点又は試験終了(58日目)のいずれか早い方で、各動物を安楽死させた。
結果を
図5Aに示す。
【0537】
方法論研究PDXモデルCTG-1086
雌の無胸腺マウス(Nude-Foxn1nu、Envigo)は、投与開始時の体重が18g以上の6~8週齢であった。各マウスに、左側腹部に腫瘍断片(約5×5×5mm3)を皮下(皮下)に移植した。腫瘍の成長をデジタルキャリパーを用いて週2回モニターし、腫瘍体積(TV)を式(0.52×[長さ×幅2])を用いて計算した。
【0538】
TVが約100~200mm
3(平均群TV 140mm
3)に達したら、腫瘍の大きさをマッチングさせ、溶媒対照群と治療群(n=5/群)に無作為に割り付けた。試験の0日目に投与を開始し、薬物を単回注射(1日1回×1回)で静脈内(i.v.)投与した。投与量は体重20g当たり0.2mL(10mL/kg)とし、各個体の体重に合わせた。腫瘍は、キャリパーを用いて週2回測定し、腫瘍がエンドポイントの体積2000mm
3に達した時点又は試験終了(61日目)のいずれか早い方で、各動物を安楽死させた。
結果を
図5Bに示す。
【0539】
方法論研究PDXモデルCTG-0711
雌の無胸腺マウス(Nude-Foxn1nu、Envigo)は、投与開始時の体重が18g以上の6~8週齢であった。各マウスに、左側腹部に腫瘍断片(約5×5×5mm
3)を皮下(皮下)に移植した。腫瘍の成長をデジタルキャリパーを用いて週2回モニターし、腫瘍体積(TV)を式(0.52×[長さ×幅2])を用いて計算した。
TVが約100~200mm
3(平均群TV 148mm
3)に到達した時点で、腫瘍サイズをマッチングさせ、溶媒対照群と治療群(n=5/群)に無作為に割り付けた。試験の0日目に投与を開始し、薬物を単回注射(1日1回×1回)で静脈内(i.v.)投与した。投与量は体重20g当たり0.2mL(10mL/kg)とし、各個体の体重に合わせた。腫瘍は、キャリパーを用いて週2回測定し、各動物は、腫瘍がエンドポイントの体積2000mm
3に達した時点又は試験終了(63日目)のいずれか早い方で安楽死させた。
結果を
図5Cに示す。
【0540】
方法論研究PDXモデルCTG-1423
雌の無胸腺マウス(Nude-Foxn1nu、Envigo)は、投与開始時の体重が18g以上の6~8週齢であった。各マウスに、左側腹部に腫瘍断片(約5×5×5mm
3)を皮下(皮下)に移植した。腫瘍の成長をデジタルキャリパーを用いて週2回モニターし、腫瘍体積(TV)を式(0.52×[長さ×幅2])を用いて計算した。
TVが約100~200mm
3(平均群TV 204mm
3)に達したら、腫瘍サイズをマッチングさせ、溶媒対照群と治療群(n = 5/群)に無作為に割り付けた。試験の0日目に投与を開始し、薬物を単回注射(1日1回×1回)で静脈内(i.v.)投与した。投与量は体重20g当たり0.2mL(10mL/kg)とし、各個体の体重に合わせた。腫瘍は、キャリパーを用いて週2回測定し、腫瘍がエンドポイントの体積2000mm
3に達した時点又は試験終了(55日目)のいずれか早い方で、各動物を安楽死させた。
結果を
図5Dに示す。
略語
Ac アセチル
Acm アセトアミドメチル
Alloc アロッアリルオキシカルボニル
Boc ジ-tert-ブチルジカーボネート
t-Bu tert-ブチル
Bzl Bzl-OMeがメトキシベンジル、Bzl-Meがメチルベンゼンであるベンジル
Cbz又はZ Z-Cl及びZ-Brがそれぞれクロロ-及びブロモベンジルオキシカルボニルであるベンジルオキシカルボニル
DMF N,N-ジメチルホルムアミド
Dnp ジニトロフェニル
DTT ジチオスレイトール
Fmoc 9H-フルオレン-9-イルメトキシカルボニル
imp N-10イミン保護基:3-(2-メトキシエトキシ)プロパノエート-Val-Ala-PAB
MC-OSu マレイミドカプロイル-O-N-スクシンイミド
Moc メトキシカルボニル
MP マレイミドプロパナミド
Mtr 4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニル
PAB パラアミノベンジルオキシカルボニル
PEG エチレンオキシ
PNZ p-ニトロベンジルカルバメート
Psec 2-(フェニルスルホニル)エトキシカルボニル
TBDMS tert-ブチルジメチルシリル
TBDPS tert-ブチルジフェニルシリル
Teoc 2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル
Tos トシル
Troc 2,2,2-トリクロロエトキシカルボニルクロリド
Trt トリチル
Xan キサンチル
【配列表】