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特許7260741ネットワークシステム、無線LAN中継装置、ネットワークの設定方法、および、コンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】ネットワークシステム、無線LAN中継装置、ネットワークの設定方法、および、コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 40/02 20090101AFI20230412BHJP
   H04W 40/12 20090101ALI20230412BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20230412BHJP
   H04W 84/20 20090101ALI20230412BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20230412BHJP
【FI】
H04W40/02 130
H04W40/12
H04W16/26
H04W84/20
H04W84/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018231240
(22)【出願日】2018-12-11
(65)【公開番号】P2020096240
(43)【公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-08-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 電子メール配信日:平成30年8月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】390040187
【氏名又は名称】株式会社バッファロー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】狩野 峻広
【審査官】伊藤 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-530835(JP,A)
【文献】特表2016-511585(JP,A)
【文献】特開2015-073193(JP,A)
【文献】特表2017-509169(JP,A)
【文献】特開2014-192899(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0277996(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0163513(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0036662(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0338059(US,A1)
【文献】特表2018-526856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線LAN中継装置を含むネットワークシステムであって、
前記複数の無線LAN中継装置は、マスターとして作動するマスター無線LAN中継装置と、前記マスター無線LAN中継装置の指示で動作を行うスレーブとして作動する1台以上のスレーブ無線LAN中継装置と、を含み、
各前記無線LAN中継装置は、無線通信部と処理部とを備え、
各前記スレーブ無線LAN中継装置の前記処理部は、前記無線通信部を介して、各前記無線LAN中継装置が接続する中継元の選択に使用される無線環境情報を前記マスター無線LAN中継装置に送信し、
前記無線環境情報は、前記無線LAN中継装置の周波数帯域に関する情報および前記無線LAN中継装置の受信電波強度に関する情報を含んでおり、
前記マスター無線LAN中継装置の前記処理部は、各周波数帯域毎に予め定められた範囲毎の受信電波強度と通信速度との対応関係をそれぞれ対応づけたテーブルと前記無線環境情報を用いて、起点とする無線LAN中継装置と各前記無線LAN中継装置との間における通信速度を特定し、前記通信速度に応じて各前記中継元を選択し、前記無線通信部を介して、選択した各前記中継元を各前記スレーブ無線LAN中継装置に通知し、各前記スレーブ無線LAN中継装置を前記通知した中継元に接続させる、ネットワークシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のネットワークシステムであって、
前記マスター無線LAN中継装置は、ゲートウェイとの接続に関する接続情報を用いて、前記ネットワークシステムの外部のネットワークと通信を行う無線LAN中継装置を前記起点とする無線LAN中継装置として特定する、ネットワークシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載のネットワークシステムであって、
前記マスター無線LAN中継装置は、各前記無線LAN中継装置に前記通信速度を含む速度情報を送信し、
各前記無線LAN中継装置は、受信した前記速度情報を発信し、
新たな無線LAN中継装置が当該ネットワークシステムに接続する場合に、前記新たな無線LAN中継装置の前記処理部は、各前記無線LAN中継装置が発信した前記速度情報のうち取得した各前記速度情報を用いて前記起点とする無線LAN中継装置と前記新たな無線LAN中継装置との間における通信速度を特定し、前記起点とする無線LAN中継装置と前記新たな無線LAN中継装置との間における通信速度に応じて選択した他の無線LAN中継装置に接続する、ネットワークシステム。
【請求項4】
請求項1から3のうちいずれか一項に記載のネットワークシステムであって、
前記マスター無線LAN中継装置は、少なくとも新たな無線LAN中継装置が当該ネットワークシステムに接続した場合および前記スレーブ無線LAN中継装置が当該ネットワークシステムから切断された場合のいずれか一方において、再度、前記通信速度を特定し、前記通信速度に応じて各前記中継元を選択し、前記無線通信部を介して、選択した各前記中継元を各前記スレーブ無線LAN中継装置に通知し、各前記スレーブ無線LAN中継装置の接続先を前記通知した中継元に変更させる、ネットワークシステム。
【請求項5】
請求項1から4のうちいずれか一項に記載のネットワークシステムであって、
前記通信速度は、前記周波数帯域におけるチャンネルの混雑度合いに応じて定められる、ネットワークシステム。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれか一項に記載のネットワークシステムであって、
前記通信速度は、前記周波数帯域が同一であり前記周波数帯域で使用されるチャンネルが同一の無線LAN中継装置間と前記周波数帯域が異なる無線LAN中継装置間とで異なる計算方法で定められる、ネットワークシステム。
【請求項7】
無線LAN中継装置であって、
他の無線LAN中継装置から中継元の選択に使用される無線環境情報を取得する無線通信部と、
処理部と、を備え、
前記無線環境情報は、前記無線LAN中継装置の周波数帯域に関する情報および前記無線LAN中継装置の受信電波強度に関する情報を含んでおり、
前記処理部は、各周波数帯域毎に予め定められた範囲毎の受信電波強度と通信速度との対応関係をそれぞれ対応づけたテーブルと前記無線環境情報を用いて、起点とする無線LAN中継装置と前記他の無線LAN中継装置との間における通信速度を特定し、前記通信速度に応じて前記他の無線LAN中継装置が接続する中継元を選択し、前記無線通信部を介して、選択した前記中継元を前記他の無線LAN中継装置に通知し、前記他の無線LAN中継装置を前記通知した中継元に接続させる、無線LAN中継装置。
【請求項8】
無線LAN中継装置であって、
他の無線LAN中継装置から起点とする無線LAN中継装置と前記他の無線LAN中継装置との間における通信速度を含む速度情報を取得する無線通信部と、
処理部と、を備え、
前記処理部は、ネットワークに接続する場合に、各周波数帯域毎に予め定められた範囲毎の受信電波強度と通信速度との対応関係をそれぞれ対応づけたテーブルと前記無線LAN中継装置の周波数帯域と前記無線LAN中継装置の受信電波強度とを用いて特定した前記無線LAN中継装置と前記他の無線LAN中継装置との間における通信速度と、前記速度情報と、を用いて前記起点とする無線LAN中継装置と前記無線LAN中継装置との間における通信速度を特定し、前記起点とする無線LAN中継装置との通信速度に応じて選択した他の無線LAN中継装置に接続する、無線LAN中継装置。
【請求項9】
複数の無線LAN中継装置を含むネットワークの設定方法であって、
前記複数の無線LAN中継装置は、マスターとして作動するマスター無線LAN中継装置と、前記マスター無線LAN中継装置の指示で動作を行うスレーブとして作動する複数のスレーブ無線LAN中継装置と、を含み、
各前記スレーブ無線LAN中継装置が、各前記無線LAN中継装置が接続する中継元の選択に使用される前記無線LAN中継装置の周波数帯域に関する情報および前記無線LAN中継装置の受信電波強度に関する情報を含む無線環境情報を前記マスター無線LAN中継装置に送信する工程と、
前記マスター無線LAN中継装置が各周波数帯域毎に予め定められた範囲毎の受信電波強度と通信速度との対応関係をそれぞれ対応づけたテーブルと前記無線環境情報を用いて、起点とする無線LAN中継装置と前記無線LAN中継装置との間における通信速度を特定する工程と、
前記マスター無線LAN中継装置が前記通信速度に応じて前記無線LAN中継装置が接続する中継元を選択する工程と、
前記マスター無線LAN中継装置が、各前記スレーブ無線LAN中継装置に選択した前記中継元を通知して、各前記スレーブ無線LAN中継装置を前記通知した中継元に接続させる工程と、を備える設定方法。
【請求項10】
無線LAN中継装置に備えられたコンピュータが実行するコンピュータプログラムであって、
他の無線LAN中継装置から起点とする無線LAN中継装置と前記他の無線LAN中継装置との間における通信速度を含む速度情報を取得する機能と、
各周波数帯域毎に予め定められた範囲毎の受信電波強度と通信速度との対応関係をそれぞれ対応づけたテーブルと前記無線LAN中継装置の周波数帯域と前記無線LAN中継装置の受信電波強度とを用いて特定した前記無線LAN中継装置と前記他の無線LAN中継装置との間における通信速度と、前記速度情報と、を用いて前記起点とする無線LAN中継装置と前記無線LAN中継装置との間における通信速度を特定する機能と、
前記起点とする無線LAN中継装置との通信速度に応じて選択した他の無線LAN中継装置に接続する機能と、をコンピュータに実現させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークシステム、無線LAN中継装置、ネットワークの設定方法、および、コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スマートフォンなどの携帯機器を用いた動画再生サービスや、IoT(Internet of Things)機器が増加しており、家庭内でも通信が安定したネットワーク環境が望まれている。そこで、複数の無線LAN中継機を備えたネットワーク環境が構築されている。複数の無線LAN中継装置を備えたネットワークシステムとして、無線LAN中継装置が通信経路を決定するものが知られている。例えば、特許文献1に記載のネットワークシステムでは、各無線LAN中継装置間の電波強度に基づいて通信経路を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-251316
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、無線LAN中継装置が複数の周波数帯域で通信可能な場合、周波数帯域毎に規格上の伝送速度も異なるため電波強度の弱い周波数帯域の無線LAN中継装置に接続した方が、電波強度の強い周波数帯域の無線LAN中継装置に接続するよりも、通信速度が速くなる場合があった。また、無線LAN中継装置の設置されている場所は配置等の周辺環境によって、電波強度だけでは最適な通信経路が決定できず、十分な通信速度が確保できない可能性があった。そのため、無線LAN中継装置間の通信速度を向上させることのできる技術が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本発明の一形態によれば、複数の無線LAN中継装置を含むネットワークシステムが提供される。このネットワークシステムにおいて、前記複数の無線LAN中継装置は、マスターとして作動するマスター無線LAN中継装置と、前記マスター無線LAN中継装置の指示で動作を行うスレーブとして作動する1台以上のスレーブ無線LAN中継装置と、を含み、各前記無線LAN中継装置は、無線通信部と処理部とを備え、各前記スレーブ無線LAN中継装置の前記処理部は、前記無線通信部を介して、各前記無線LAN中継装置が接続する中継元の選択に使用される無線環境情報を前記マスター無線LAN中継装置に送信し、前記無線環境情報は、前記無線LAN中継装置の周波数帯域に関する情報および前記無線LAN中継装置の受信電波強度に関する情報を含んでおり、前記マスター無線LAN中継装置の前記処理部は、各周波数帯域毎に予め定められた範囲毎の受信電波強度と通信速度との対応関係をそれぞれ対応づけたテーブルと前記無線環境情報とを用いて、起点とする無線LAN中継装置と各前記無線LAN中継装置との間における通信速度を特定し、前記通信速度に応じて各前記中継元を選択し、前記無線通信部を介して、選択した各前記中継元を各前記スレーブ無線LAN中継装置に通知し、各前記スレーブ無線LAN中継装置を前記通知した中継元に接続させる。また、本発明は、以下の形態としても実現できる。
【0006】
(1)本発明の一形態によれば、複数の無線LAN中継装置を含むネットワークシステムが提供される。このネットワークシステムにおいて、前記複数の無線LAN中継装置は、マスターとして作動するマスター無線LAN中継装置と、前記マスター無線LAN中継装置の指示で動作を行うスレーブとして作動する1台以上のスレーブ無線LAN中継装置と、を含み、各前記無線LAN中継装置は、無線通信部と処理部とを備え、各前記スレーブ無線LAN中継装置の前記処理部は、前記無線通信部を介して、各前記無線LAN中継装置が接続する中継元の選択に使用される無線環境情報を前記マスター無線LAN中継装置に送信し、前記マスター無線LAN中継装置の前記処理部は、前記無線環境情報を用いて、起点とする無線LAN中継装置と各前記無線LAN中継装置との間における通信速度を特定し、前記通信速度に応じて各前記中継元を選択し、前記無線通信部を介して、選択した各前記中継元を各前記スレーブ無線LAN中継装置に通知し、各前記スレーブ無線LAN中継装置を前記通知した中継元に接続させる。この形態のネットワークシステムによれば、通信速度に応じて各前記無線LAN中継装置が接続する中継元を選択するため、無線LAN中継装置間の通信速度を向上させることができる。
(2)上記形態のネットワークシステムにおいて、前記マスター無線LAN中継装置は、ゲートウェイとの接続に関する接続情報を用いて、前記ネットワークシステムの外部のネットワークと通信を行う無線LAN中継装置を前記起点とする無線LAN中継装置として特定してもよい。この形態のネットワークシステムによれば、ゲートウェイに接続された無線LAN中継装置を、起点とする無線LAN中継装置として特定するため、外部のネットワークへ通信を行う場合の通信速度を特定できる。
(3)上記形態のネットワークシステムにおいて、前記マスター無線LAN中継装置は、各前記無線LAN中継装置に前記通信速度を含む速度情報を送信し、各前記無線LAN中継装置は、受信した前記速度情報を発信し、新たな無線LAN中継装置が当該ネットワークシステムに接続する場合に、前記新たな無線LAN中継装置の前記処理部は、各前記無線LAN中継装置が発信した前記速度情報のうち取得した各前記速度情報を用いて前記起点とする無線LAN中継装置と前記新たな無線LAN中継装置との間における通信速度を特定し、前記起点とする無線LAN中継装置と前記新たな無線LAN中継装置との間における通信速度に応じて選択した他の無線LAN中継装置に接続してもよい。この形態のネットワークシステムによれば、新たな無線LAN中継装置の中継元を通信速度に応じて選択するため、各無線LAN中継装置の通信経路を再度組み直す場合に、中継元を変更する無線LAN中継装置の台数を抑制できる。
(4)上記形態のネットワークシステムにおいて、前記マスター無線LAN中継装置は、少なくとも新たな無線LAN中継装置が当該ネットワークシステムに接続した場合および前記スレーブ無線LAN中継装置が当該ネットワークシステムから切断された場合のいずれか一方において、再度、前記通信速度を特定し、前記通信速度に応じて各前記中継元を選択し、前記無線通信部を介して、選択した各前記中継元を各前記スレーブ無線LAN中継装置に通知し、各前記スレーブ無線LAN中継装置の接続先を前記通知した中継元に変更させてもよい。この形態のネットワークシステムによれば、ネットワークシステムに接続する無線LAN中継装置が増減する場合に各無線LAN中継装置の中継元を変更させるため、各無線LAN中継装置の通信速度を安定させることができる。
(5)上記形態のネットワークシステムにおいて、前記無線環境情報は、前記無線LAN中継装置の周波数帯域に関する情報を含んでおり、前記マスター無線LAN中継装置の前記処理部は、前記周波数帯域に関する情報を用いて前記通信速度を特定してもよい。この形態のネットワークシステムによれば、周波数帯域を考慮して通信速度を特定できる。
(6)上記形態のネットワークシステムにおいて、前記通信速度は、前記周波数帯域におけるチャンネルの混雑度合いに応じて定められてもよい。この形態のネットワークシステムによれば、より実測値に近い通信速度を特定できる。
(7)上記形態のネットワークシステムにおいて、前記通信速度は、前記周波数帯域が同一であり前記周波数帯域で使用されるチャンネルが同一の無線LAN中継装置間と前記周波数帯域が異なる無線LAN中継装置間とで異なる計算方法で定められてもよい。この形態のネットワークシステムによれば、より実測値に近い通信速度を特定できる。
(8)本発明の一形態によれば、無線LAN中継装置が提供される。無線LAN中継装置は、他の無線LAN中継装置から中継元の選択に使用される無線環境情報を取得する無線通信部と、処理部と、を備え、前記処理部は、前記無線環境情報を用いて、起点とする無線LAN中継装置と前記他の無線LAN中継装置との間における通信速度を特定し、前記通信速度に応じて前記他の無線LAN中継装置が接続する中継元を選択し、前記無線通信部を介して、選択した前記中継元を前記他の無線LAN中継装置に通知し、前記他の無線LAN中継装置を前記通知した中継元に接続させる。この形態の無線LAN中継装置によれば、通信速度に応じて、中継元を選択するため、無線LAN中継装置間の通信速度を向上させることができる。
(9)本発明の一形態によれば、無線LAN中継装置が提供される。無線LAN中継装置は、他の無線LAN中継装置から起点とする無線LAN中継装置と前記他の無線LAN中継装置との間における通信速度を含む速度情報を取得する無線通信部と、処理部と、を備え、前記処理部は、ネットワークに接続する場合に、前記速度情報を用いて前記起点とする無線LAN中継装置と前記無線LAN中継装置との間における通信速度を特定し、前記起点とする無線LAN中継装置との通信速度に応じて選択した他の無線LAN中継装置に接続する、無線LAN中継装置。この形態の無線LAN中継装置によれば、新たな無線LAN中継装置の中継元を通信速度に応じて選択するため、無線LAN中継装置間の通信速度を向上させることができる。
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、無線LAN中継装置の制御方法や、複数の無線LAN中継装置を含むネットワークの設定方法、これらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム等の形態で実現することができる。コンピュータプログラムは、コンピュータが読み取り可能な一時的でない有形の記録媒体に記録されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ネットワークシステム構成の概要を示す説明図である。
図2】第1無線LAN中継装置の機能を示すブロック図である。
図3】中継元決定機能によって実現される処理の一例を示すシーケンス図である。
図4】中継元選択処理の一例を示したフローチャートである。
図5】各周波数帯域における電波強度と通信速度との関係を示したテーブルの一例である。
図6】通信速度に応じて各中継元を選択していく一例を示した図である。
図7図6における各通信経路の通信速度を示した図である。
図8】通信速度に応じて各中継元を選択していく一例を示した図である。
図9図8における各通信経路の通信速度を示した図である。
図10】通信速度に応じて各中継元を選択していく一例を示した図である。
図11図10における各通信経路の通信速度を示した図である。
図12】中継元を変更したネットワークシステムの構成の説明図である。
図13】第2実施形態におけるネットワークシステム構成の概要を示す説明図である。
図14】接続先決定処理の一例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
A.第1実施形態:
図1は、本発明の一実施形態におけるネットワークシステム構成の概要を示す説明図である。本実施形態において、ネットワークシステム100は、第1無線LAN中継装置10と、第2無線LAN中継装置20と、第3無線LAN中継装置30と、第4無線LAN中継装置40と、を備えるローカルエリアネットワーク(LAN)のネットワークシステムである。本実施形態において、無線LAN中継装置10~40は、それぞれ無線通信により接続されている。本明細書において、無線LAN中継装置をアクセスポイントまたはAPとも呼ぶ。
【0009】
第1無線LAN中継装置10は、ケーブルを介してインターネットINTに接続されており、ルータとしての機能を有している。第1無線LAN中継装置10とインターネットINTの間には図示しないゲートウェイ装置が接続されており、第1無線LAN中継装置10は、ゲートウェイ装置を介してインターネットINTに接続されている。なお、第1無線LAN中継装置10にゲートウェイ装置が内蔵されていてもよい。第2無線LAN中継装置20、第3無線LAN中継装置30および第4無線LAN中継装置40は、それぞれ第1無線LAN中継装置10に直接的に無線接続されており、第1無線LAN中継装置10を介してインターネットINTに接続されている。各無線LAN中継装置10~40には、図示しない無線端末が無線接続される。
【0010】
本実施形態において、第1無線LAN中継装置10はマスター無線LAN中継装置として作動し、第2無線LAN中継装置20、第3無線LAN中継装置30および第4無線LAN中継装置40は、マスター無線LAN中継装置の指示で動作を行うスレーブ無線LAN中継装置として作動する。本明細書において、マスター無線LAN中継装置を単にマスター、スレーブ無線LAN中継装置を単にスレーブとも呼ぶ。
【0011】
図2は、本発明の一実施形態における第1無線LAN中継装置10のブロック図である。第1無線LAN中継装置10は、無線通信部110と、処理部120と、書き換え可能なROM130と、有線ポート140と、を備える。
【0012】
無線通信部110は、例えば、IEEE802.11規格に基づき、他の装置、例えば無線LAN中継装置20~40との間で通信を行う。無線通信部110は、無線通信回路とアンテナとを含む。本実施形態において、無線通信部110は、複数の周波数帯域を用いて同時に通信可能である。具体的には、無線通信部110は、2.4GHz周波数帯と5.0GHzの低周波数帯(例えば、5.2/5.3GHz周波数帯)と5.0GHzの高周波数帯(例えば、5.6GHz周波数帯)の3つの周波数帯のうち、少なくとも1つ以上の周波数帯を用いて通信可能である。
【0013】
処理部120は、無線LAN中継装置20~40が接続する中継元となる無線LAN中継装置10~40を決定する機能(以下、「中継元決定機能」という)を有する。本実施形態において「中継元」とは、ネットワークシステム100における情報の通信の中継を行う装置であり、各無線LAN中継装置がインターネットINTに接続するために中継する接続先である。また、処理部120は、インターネットINTとLAN間におけるルーティングを行う機能を有する。処理部120は、CPUとメモリとを備えるコンピュータとして構成されており、CPUがROM130に記憶されたコンピュータプログラムとしてのファームウェアをメモリにロードして実行することで、上述した機能が実現される。ファームウェアは、メモリーカードや光ディスクなどのコンピュータが読み取り可能な一時的でない有形の記録媒体に記録されていてもよい。また、これらの各部の機能の一部又は全部をハードウェア回路で実現してもよい。
【0014】
有線ポート140は、ゲートウェイ装置が有線接続されるケーブルが接続されるポートである。他の無線LAN中継装置20~40も、図2に示した第1無線LAN中継装置10と同じ構成を有する。ただし、無線LAN中継装置20~40は、有線ポート140およびルーティング機能を有していなくてもよい。
【0015】
本実施形態において、スレーブ無線LAN中継装置20~40の処理部120は、無線通信部110を介して、各無線LAN中継装置10~40が接続する中継元の選択に使用される無線環境情報をマスター無線LAN中継装置10に送信する。マスター無線LAN中継装置10の処理部120は、無線環境情報を用いて、起点とする無線LAN中継装置と各無線LAN中継装置10~40との間における通信速度を特定する。そして、マスター無線LAN中継装置10の処理部120は、特定した通信速度に応じて各中継元を選択し、無線通信部110を介して、選択した各中継元を各スレーブ無線LAN中継装置20~40に通知し、各スレーブ無線LAN中継装置20~40を通知した中継元に接続させる。各処理内容の詳細については後述する。
【0016】
図3は、処理部120によって実行される中継元決定機能によって実現される処理の一例を示すシーケンス図である。図3において、第1無線LAN中継装置10はマスターとして作動し、第2無線LAN中継装置20および第3無線LAN中継装置30はスレーブとして作動する。第4無線LAN中継装置40は省略している。
【0017】
まず、マスターである第1無線LAN中継装置10が、スレーブである他の無線LAN中継装置に対して、無線環境情報の送信要請を定期的に送信する。「無線環境情報」とは、各無線LAN中継装置のホップ段数や、周波数帯域に関する情報等を含む情報である。「周波数帯域に関する情報」とは、例えば、現在無線通信で使用している周波数帯域やチャンネル、チャンネルにおける混雑度、受信電波強度(RSSI)、規格上の伝送速度等を含む情報である。
【0018】
次に、スレーブである第2無線LAN中継装置20は、イベントE200において、ネットワークシステム100内にある接続可能な各無線LAN中継装置が発信するビーコンをスキャンすることでビーコンから無線環境情報の一部を取得し、取得した情報に第2無線LAN中継装置20自身が有する情報(例えば、ホップ段数やESSID名等)を加えた無線環境情報をマスターである第1無線LAN中継装置10に送信する。同様に、スレーブである第3無線LAN中継装置30は、イベントE205において、ネットワークシステム100内にある接続可能な各無線LAN中継装置が発信するビーコンをスキャンすることでビーコンから無線環境情報の一部を取得し、取得した情報に第3無線LAN中継装置30自身が有する情報を加えた無線環境情報をマスターである第1無線LAN中継装置10に送信する。本実施形態において、「発信」とは、非特定の他の装置に、情報を直接伝送することであり、「送信」とは、指定した他の装置に、情報を直接または別の装置を介して間接的に伝送することである。
【0019】
続いて、第1無線LAN中継装置10は、イベントE210において、受信した無線環境情報を用いて、起点とする無線LAN中継装置と各無線LAN中継装置との間における通信速度を特定し、ネットワークシステム100全体としてスループットが早くなるよう、各無線LAN中継装置の各中継元を選択する。中継元選択処理の詳細については後述する。
【0020】
続いて、第1無線LAN中継装置10は、イベントE210において選択した各無線LAN中継装置の中継元を通知する。より具体的には、選択した各中継元の情報を含む中継元情報をスレーブである他の無線LAN中継装置20、30に送信する。第2無線LAN中継装置20および第3無線LAN中継装置30は、中継元情報を受信した後、受信が完了したことを第1無線LAN中継装置10に送信する。マスターである第1無線LAN中継装置10は、スレーブである他の無線LAN中継装置20、30から受信完了したことを受信した後、スレーブである他の無線LAN中継装置20、30に中継元変更を行う指示をする。第2無線LAN中継装置20は、イベントE220において中継元を変更する。イベントE220では、例えば、図1に示した第2無線LAN中継装置20の中継元が第1無線LAN中継装置10から第3無線LAN中継装置30に変更される。第3無線LAN中継装置30は、イベントE225において、受信した中継元情報における新たな中継元が、現在の中継元と同一の無線LAN中継装置であるため、中継元を変更しない。なお、マスター無線LAN中継装置は、中継元選択処理において選択したある無線LAN中継装置の中継元が以前の中継元と同一である場合、中継元情報をその無線LAN中継装置に送信することを省略してもよい。
【0021】
図4は、中継元選択処理の一例を示したフローチャートである。この処理は、マスターである第1無線LAN中継装置10の処理部120によって行われる処理である。まず、第1無線LAN中継装置10は、ステップS100において、スレーブである他の無線LAN中継装置20、30、40から送信された無線環境情報を取得する。
【0022】
次に、第1無線LAN中継装置10は、ステップS110において、ステップS100で取得した各無線環境情報を用いて、起点とする無線LAN中継装置と各無線LAN中継装置との間における通信速度を特定する。本実施形態において、「起点とする無線LAN中継装置」は、ネットワークシステム100の外部のネットワークと通信を行う無線LAN中継装置であり、第1無線LAN中継装置10である。本明細書において、起点とする無線LAN中継装置を起点装置とも呼ぶ。マスターは、ゲートウェイとの接続に関する接続情報を用いて、(1)ゲートウェイに有線接続されており、ブリッジとして動作している無線LAN中継装置、または、(2)ネットワークシステム100の外部のネットワークに接続されており、ゲートウェイ機能が実装されており、ルータとして動作している無線LAN中継装置、または、(3)ネットワークシステム100の外部のネットワークに接続されており、ゲートウェイ機能が実装されており、デフォルトゲートウェイのIPアドレスを持つ無線LAN中継装置、を起点装置として特定する。「接続情報」とは、例えば、ゲートウェイ装置と有線で接続しているか否かや、ルータとして動作しているか否か、デフォルトゲートウェイのIPアドレス等を含む情報である。接続情報は、無線環境情報に含まれていてもよい。「起点とする無線LAN中継装置と無線LAN中継装置との間における通信速度」は、無線LAN中継装置が直接起点とする無線LAN中継装置と通信を行う場合の通信速度だけでなく、他の無線LAN中継装置を介して起点とする無線LAN中継装置と通信を行う場合の通信速度も含む。
【0023】
図5は、各周波数帯域における電波強度と通信速度との関係を示したテーブルの一例である。図5に示すテーブルは、予めROM130に記憶されている。本実施形態において、第1無線LAN中継装置10は、ステップS110(図4)において、無線環境情報に含まれる周波数帯域に関する情報である、各無線LAN中継装置が現在使用している周波数帯域と受信電波強度とを用いて、図5に示すテーブルを参照し、起点とする無線LAN中継装置と各無線LAN中継装置との間の通信速度を特定する。図5に示すテーブルには、通信速度が、電波強度が強いほど速くなるよう設定されている。また、このテーブルには、通信速度が、周波数帯域が2.4GHz、5.0GHzの低周波数、5.0GHzの高周波数の順で速くなるよう設定されている。実際の通信速度は、IEEE802.11の通信規格の違いや、無線LAN中継装置が備えるアンテナの本数等によっても異なるため、本実施形態では、テーブル中のこれらの値を、実験や経験に基づき簡易的に定めている。このように、テーブルを用いて、電波強度及び周波数帯域に応じて通信速度を特定すると、実測によって通信速度を特定する場合よりも処理時間で短くできる。なお、第1無線LAN中継装置10は、予め定められた容量のデータを各無線LAN中継装置20~40に送信して、その送信完了までの時間を測定することにより、実測によって各無線LAN中継装置20~40までの通信速度を特定してもよい。この場合、壁や障害物等の無線LAN中継装置の設置場所の周辺環境を考慮して通信速度が特定できる。なお、1つの周波数帯域でのみ通信可能な無線LAN中継装置であっても、第1無線LAN中継装置10は、図5に示すテーブルを用いて、起点とする無線LAN中継装置とその無線LAN中継装置はとの間の通信速度を特定できる。
【0024】
続いて、第1無線LAN中継装置10は、ステップS120(図4)において、ステップS110で特定した通信速度に応じて各中継元を選択する。本実施形態において、第1無線LAN中継装置10は、ステップS110で特定した通信速度が最も速くなる通信経路となる無線LAN中継装置の中継元を選択する。中継元の選択の詳細については後述する。
【0025】
最後に、第1無線LAN中継装置10は、ステップS130において、ネットワークシステム100内の全ての無線LAN中継装置の中継元を選択したか否か判定する。全ての中継元を選択した場合、中継元選択処理を終了する。一方、全ての中継元を選択していない場合、ステップS110の処理に戻る。つまり、全ての無線LAN中継装置の中継元を選択するまで、ステップS110~S130の処理を繰り返す。
【0026】
図6図7図8図9図10図11および図12は、処理部120がそれぞれ通信速度に応じて各中継元を選択していく一例を順に示した図である。図6および図7に示すように、本実施形態において、起点装置は第1無線LAN中継装置10である。第1無線LAN中継装置10と第2無線LAN中継装置20との間における通信速度V12は、100Mbpsであり、第1無線LAN中継装置10と第3無線LAN中継装置30との間における通信速度V13は、350Mbpsであり、第1無線LAN中継装置10と第4無線LAN中継装置40との間における通信速度V14は、600Mbpsである。これらの通信速度は、図5に示したテーブルに基づき特定される。図7に示すように、各通信経路における通信速度V12、V13、V14のうち最も速い通信速度は通信速度V14であるため、まず、第4無線LAN中継装置40の中継元として第1無線LAN中継装置10が選択される。
【0027】
次に、図8に示すように、中継元が確定された第4無線LAN中継装置40を介した場合の起点装置10と各無線LAN中継装置との間における通信速度が特定される。第4無線LAN中継装置40と第2無線LAN中継装置20との間における通信速度V24は、200Mbpsであり、第4無線LAN中継装置40と第3無線LAN中継装置30との間における通信速度V34は、400Mbpsである。
【0028】
本実施形態において、使用される周波数帯域およびチャンネルが同一の無線LAN中継装置間の通信速度と、使用される周波数帯域が異なる無線LAN中継装置間の通信速度とは異なる計算方法で定められる。これにより、マスターである第1無線LAN中継装置10は、より実測値に近い通信速度を特定できる。例えば、使用される周波数帯域およびチャンネルが同一の場合は、次の式(1)で定められ、使用される周波数帯域が異なる場合は、次の式(2)で定められる。
【0029】
Vac = Vab × Vbc / (Vab + Vbc) …(1)
Vac = min (Vab , Vbc) …(2)
ここで、Vacは無線LAN中継装置Aと無線LAN中継装置Cとの間の通信速度である。無線LAN中継装置Aと無線LAN中継装置Cとは、無線LAN中継装置Bを介して通信する。Vabは無線LAN中継装置Aと無線LAN中継装置Bとの間の通信速度であり、Vbcは無線LAN中継装置Bと無線LAN中継装置Cとの間の通信速度であり、minは最小値を選択することを示す。
【0030】
無線LAN中継装置A、B、Cが同一の周波数帯域およびチャンネルで通信を行う場合、無線LAN中継装置Aと無線LAN中継装置Bとが通信を行う間、無線LAN中継装置Bと無線LAN中継装置Cとは通信を行うことができない。同様に、無線LAN中継装置Bと無線LAN中継装置Cとが通信を行う間、無線LAN中継装置Aと無線LAN中継装置Bとは通信が行うことができない。そのため、無線LAN中継装置Bは、無線LAN中継装置Aと無線LAN中継装置Cとに対して時分割で動作する。従って、それぞれ無線LAN中継装置Aと無線LAN中継装置Cとに待ち時間が発生し、通信するタイミングを調整して通信する必要があるため、通信速度が遅くなる。無線LAN中継装置A、B、Cで使用される周波数帯域が異なる場合、つまり、異なるチャンネルを使用する場合は、時間調整をする必要がないため、通信速度は遅くならない。しかし、無線LAN中継装置Bが無線LAN中継装置Aと無線LAN中継装置Cとを中継するため、VabとVbcとの速度のうち、遅い方の通信速度が最高速度となる。式(1)によって通信速度が定められる原理をより具体的に説明する。一般的に、通信速度は、次の式(3)で求められる。
【0031】
[通信速度] = [伝送するデータ量] / [データ量の伝送完了にかかる時間]…(3)
従って、式(1)は式(3)を用いて次の式(4)で表すことができる。
【0032】
Vac = D1 / Tac
= D1 / (D1 / Vab + D1 / Vbc) …(4)
ここでD1は伝送するデータ量であり、Tacはデータ量の伝送完了にかかる時間である。
【0033】
図8および図9に示すように、第4無線LAN中継装置40を介した第1無線LAN中継装置10と第2無線LAN中継装置20との間における通信速度V124は、第1無線LAN中継装置10と第4無線LAN中継装置40とが5.0GHzの周波数帯域で通信を行い、第2無線LAN中継装置20と第4無線LAN中継装置40とが2.4GHzの周波数帯域で通信を行うため、上述した式(2)を用いて定める事ができ、通信速度V14と通信速度V24とのうち遅い方の速度である200Mbpsである。第4無線LAN中継装置40を介した第1無線LAN中継装置10と第3無線LAN中継装置30との間における通信速度V134は、第1無線LAN中継装置10と第3無線LAN中継装置30と第4無線LAN中継装置40とが同一の周波数帯域およびチャンネルで通信を行うため、上述した式(1)を用いて定めることができ、240Mbpsである。図9に示すように、各通信経路における通信速度V12、V13、V124、V134のうち最も速い通信速度は通信速度V13であるため、第3無線LAN中継装置30の中継元として第1無線LAN中継装置10が選択される。
【0034】
最後に、図10および図11に示すように、中継元が確定された第3無線LAN中継装置30を介した場合の起点装置10と各無線LAN中継装置との間における通信速度が特定される。第3無線LAN中継装置30と第2無線LAN中継装置20との間における通信速度V23は300Mbpsである。第3無線LAN中継装置30を介した第1無線LAN中継装置10と第2無線LAN中継装置20との間における通信速度V123は、第1無線LAN中継装置10と第3無線LAN中継装置30とが5.0GHzの周波数帯域で通信を行い、第2無線LAN中継装置20と第3無線LAN中継装置30とが2.4GHzの周波数帯域で通信を行うため、上述した式(2)を用いて定める事ができ、通信速度V13と通信速度V23とのうち遅い方の速度である300Mbpsである。図11に示すように、各通信経路における通信速度V12、V123、V124のうち最も速い通信速度は通信速度V123であるため、第2無線LAN中継装置20の中継元として第3無線LAN中継装置30が選択される。
【0035】
図12は、図1の状態から中継元を変更したネットワークシステム100の構成の説明図である。図1に示したネットワーク構成では、全ての無線LAN中継装置20、30、40が第1無線LAN中継装置10に直接的に接続されていたが、図12では、第2無線LAN中継装置20が第3無線LAN中継装置30を介して第1無線LAN中継装置10に接続されており、第4無線LAN中継装置40が第1無線LAN中継装置10に接続されている。各無線LAN中継装置10~40には、無線端末が接続可能である。このように、無線LAN中継装置同士が相互に通信を行うことにより、網の目状に形成されたネットワークをメッシュネットワークという。
【0036】
以上で説明した本実施形態によれば、マスター無線LAN中継装置である第1無線LAN中継装置10は、通信速度に応じて無線LAN中継装置20~40の各中継元を選択するため、無線LAN中継装置10~40間の通信速度を向上させることができる。また、ゲートウェイ装置に接続された第1無線LAN中継装置10を起点とする無線LAN中継装置に特定するため、外部のネットワークへ通信を行う場合の通信速度を特定できる。
【0037】
B.第2実施形態:
図13は、第2実施形態におけるネットワークシステム構成の概要を示す説明図である。本実施形態においてネットワークシステム100は、新たな無線LAN中継装置である第5無線LAN中継装置50が接続される点が第1実施形態と異なり、他の構成は同一である。また、第5無線LAN中継装置50の構成は、スレーブ無線LAN中継装置として作動し、第1実施形態における無線LAN中継装置20~40の構成と同一である。
【0038】
図14は、接続先決定処理の一例を示したフローチャートである。接続先決定処理は、新たな無線LAN中継装置がネットワークに接続する場合に実行される処理である。この処理は、新たな無線LAN中継装置である第5無線LAN中継装置50の処理部120によって行われる。まず、第5無線LAN中継装置50の処理部120は、ステップS200において、他の無線LAN中継装置10、20、30、40から速度情報を取得する。「速度情報」とは、マスターである第1無線LAN中継装置10によって各無線LAN中継装置に送信された、起点装置と無線LAN中継装置との間の通信速度を含む情報である。本実施形態では、図3において説明したように、速度情報は、マスターからスレーブに送信される中継元情報に含まれている。速度情報は、中継元情報とは別にマスターからスレーブに送信されてもよい。各無線LAN中継装置は、マスターから受信した速度情報を、例えばビーコンによって定期的に発信する。
【0039】
次に、第5無線LAN中継装置50の処理部120は、ステップS210において、ステップS200で各無線LAN中継装置が発信した速度情報のうち、取得した各速度情報を用いて、起点装置10と第5無線LAN中継装置50との間における通信速度を特定する。第5無線LAN中継装置50の処理部120は、取得した速度情報である、各無線LAN中継装置の起点装置との間における通信速度と、図5に示したテーブルを用いて特定した自身と各無線LAN中継装置との間における通信速度と、上述した式(1)および(2)とを用いて、起点装置10と第5無線LAN中継装置50との間における通信速度を特定する。なお、ステップS200において、取得出来なかった速度情報があったとしても、その速度情報は、第5無線LAN中継装置50と直接通信することができない無線LAN中継装置の速度情報であるため、通信速度の特定において用いることができなくてもよい。
【0040】
最後に、第5無線LAN中継装置50の処理部120は、ステップS220において、ステップS210で特定した通信速度に応じて中継元を決定する。本実施形態において、第5無線LAN中継装置50の処理部120は、ステップS210で特定した通信速度のうち、通信速度が最も速くなる無線LAN中継装置を中継元として決定し、決定した中継元である無線LAN中継装置に接続する。以上で説明した接続先決定処理が完了した後に、つまり、新たな無線LAN中継装置である第5無線LAN中継装置50がネットワークシステム100に接続した後に、マスターである第1無線LAN中継装置10は、図3において説明した中継元決定機能によって実現される処理を再度行ってもよい。こうすることにより、第5無線LAN中継装置50を含めて通信速度を特定し、各無線LAN中継装置20~50の中継元を変更させるため、各無線LAN中継装置20~50の通信速度を安定させることができる。
【0041】
以上で説明した本実施形態によれば、新たな無線LAN中継装置である第5無線LAN中継装置50の処理部120は、各無線LAN中継装置10~40が発信した速度情報のうち、取得した各速度情報を用いて、起点装置と新たな無線LAN中継装置との間における通信速度を特定し、起点装置と新たな無線LAN中継装置との間における通信速度に応じて選択した他の無線LAN中継装置に接続する。そのため、無線LAN中継装置間の通信速度を向上させることができる。また、マスター無線LAN中継装置が各無線LAN中継装置の通信経路を組み直す場合には、第5無線LAN中継装置50の中継元として、通信速度が最も速くなる無線LAN中継装置に選択していた場合、中継元を変更する可能性が低いため、中継元を変更する無線LAN中継装置の台数を抑制できる。
【0042】
C.その他の実施形態:
(C1)上述した実施形態において、第1無線LAN中継装置10は、マスターとして動作するとともに、スレーブとしても作動してもよい。より具体的には、中継元決定機能に関して、マスターとして、他のスレーブに加えてスレーブとして作動する自分自身に動作を指示するとともに、スレーブとして、マスターとして作動する自分自身の指示に従って動作してもよい。例えば、第1無線LAN中継装置10は、マスターとして、自身に無線環境情報を取得するよう要請を行い、スレーブとして、他の無線LAN中継装置の発信するビーコンから無線環境情報を取得する。こうすれば、各中継装置がマスターとしてもスレーブとしても作動することができるので、ネットワークの構築の自由度が高まる。
【0043】
(C2)上述した実施形態において、ネットワークシステム100は、起点装置を1つ備えているが、2つ以上備えていてもよい。この場合、マスター無線LAN中継装置は、複数の起点装置と各無線LAN中継装置との間の通信速度において、最も速い通信速度を、中継元を選択するために用いる通信速度として特定することが好ましい。
【0044】
(C3)上述した実施形態において、通信速度は、周波数帯域におけるチャンネルの混雑度合いに応じて定められてもよい。混雑度合いは、同一チャンネルを使用している無線LAN中継装置の数や、TXOP(Transmission Opportunity(送信機会))をビーコンやプローブレスポンスから取得し、それらの値を用いて定める事ができる。通信速度は、例えば、一定期間におけるチャンネルの混雑度合いが大きい程、通信速度が遅くなるように定められた係数を、上述した式(1)または(2)で定められた通信速度に乗算して定められてもよい。この形態によれば、より実測値に近い通信速度を特定できる。
【0045】
(C4)上述した実施形態において、マスター無線LAN中継装置は、各無線LAN中継装置が現在使用している周波数帯域に応じて通信速度を特定し、中継元を選択している。この代わりに、マスター無線LAN中継装置は、各無線LAN中継装置が使用可能な周波数帯域毎に起点装置との間の通信速度を特定し、その中で、例えば、最も通信速度が速くなる周波数帯域を、中継元とともに、使用する周波数帯域として選択してもよい。
【0046】
(C5)上述した実施形態において、各無線LAN中継装置は、ビーコンをスキャンして無線環境情報および速度情報を取得している。この代わりに、ネットワークが一旦構築された後であれば、各無線LAN中継装置がプローブリクエストによって無線環境情報および速度情報を取得してもよい。また、ビーコンにSSID情報を含めないステルス機能を実行している無線LAN中継装置がある場合には、各無線LAN中継装置は、プローブリクエストによって無線環境情報および速度情報を取得する。プローブリクエストを受信した各無線LAN中継装置は、プローブレスポンスにおいて無線環境情報および速度情報をプローブリクエストの送信元に送信する。
【0047】
(C6)上述した第2実施形態において、マスター無線LAN中継装置は、新たな無線LAN中継装置が当該ネットワークシステムに接続した場合に、再度、図3において説明した中継元決定機能によって実現される処理を行っている。この代わりに、マスター無線LAN中継装置は、スレーブ無線LAN中継装置がネットワークシステム100から切断された場合に、図3において説明した中継元決定機能によって実現される処理を再度行ってもよい。また、マスター無線LAN中継装置は、新たな無線LAN中継装置が当該ネットワークシステムに接続した場合と、スレーブ無線LAN中継装置がネットワークシステム100から切断された場合の、両方の場合において、図3において説明した中継元決定機能によって実現される処理を再度行ってもよい。また、例えば、一定期間毎や、無線LAN中継装置の通信速度が閾値以下になった場合、無線LAN中継装置に接続している通信機器の台数が閾値以上になった場合等の予め定められた条件を満たす場合に、再度中継元決定機能を実行するようにしてもよい。
【0048】
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述した課題を解決するために、あるいは上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜削除することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
10…第1無線LAN中継装置、20…第2無線LAN中継装置、30…第3無線LAN中継装置、40…第4無線LAN中継装置、50…第5無線LAN中継装置、100…ネットワークシステム、110…無線通信部、120…処理部、130…ROM、140…有線ポート、INT…インターネット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図13
図14