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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】流動乾燥装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 17/10 20060101AFI20230412BHJP
   F23K 1/04 20060101ALI20230412BHJP
   F26B 3/08 20060101ALI20230412BHJP
   F26B 25/00 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
F26B17/10 C
F23K1/04
F26B3/08
F26B25/00 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019037281
(22)【出願日】2019-03-01
(65)【公開番号】P2020139715
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】谷 峻旭
(72)【発明者】
【氏名】一色 正治
(72)【発明者】
【氏名】岩橋 秀起
(72)【発明者】
【氏名】和田 慎太
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-289231(JP,A)
【文献】特開2018-054271(JP,A)
【文献】特開2004-150744(JP,A)
【文献】特開平11-011607(JP,A)
【文献】特開昭63-259382(JP,A)
【文献】実開平05-003891(JP,U)
【文献】特開2011-069609(JP,A)
【文献】特開2006-292262(JP,A)
【文献】特開2006-232891(JP,A)
【文献】特開昭63-065220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 17/10
F23K 1/04
F26B 3/08
F26B 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料を流動させて乾燥する乾燥室と、前記乾燥室の上流側の側壁に前記原料を前記乾燥室に投入する装入シュートと、前記乾燥室の床面に複数の乾燥ガスの吹出し口を備えた流動床と、を有する流動乾燥装置において、
前記装入シュートの終端部にシュート延長部を設け、
前記シュート延長部の終端部は、前記側壁から離れており、
前記シュート延長部の延長長さは、平面視で前記シュート延長部下方に、前記複数の吹出し口のうちの一部の吹出し口が位置する長さであり、
前記シュート延長部の終端部は前記流動床とは接しておらず、かつ前記シュート延長部の下方には空間が存在し
前記終端部よりも前記側壁に最も近い側に位置する吹出し口の吹出し開口部分は、そのすべてが、平面視で前記空間内に収まっている、ことを特徴とする、流動乾燥装置。
【請求項2】
前記シュート延長部の幅は前記流動床の幅の1/3以上の長さを有することを特徴とする、請求項1に記載の流動乾燥装置。
【請求項3】
前記シュート延長部は平板形状であることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の流動乾燥装置。
【請求項4】
前記シュート延長部は金属製であることを特徴とする、請求項3に記載の流動乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばコークスを製造する際には、石炭の乾留前に乾燥、分級、予熱することが行なわれている。そしてこれら乾燥、分級、予熱を行う装置として、流動乾燥装置が使用されている。流動乾燥装置は、投入された原料の石炭を流動させながら乾燥等を行う流動床を床面に有する乾燥室(フリーボード部)と、当該流動床の下面側に設けられたプレナム室とを備えている。流動床には、複数の吹出し口(目皿とも呼称される)が形成されている。そしてプレナム室に導入された高温の流動化ガス(乾燥ガス)が、前記吹出し口から乾燥室内に吹き出され、原料の石炭を乾燥、加熱すると共に、流動床上の石炭を流動させて、下流の排出口側へと移動させる。
【0003】
ここで、原料である石炭のフリーボード部内への投入は、流動乾燥装置の上流側の側壁に設けられた装入シュートを通じて行われる。装入シュートは、垂直な側壁との間でおりなす、例えば20度程度の傾斜角度を有する上面が平坦な通路である。したがって、装入シュートから投入された石炭は、装入シュートの終端から、投入初期速度、傾斜角度、シュート上の滑走距離、そして重力加速度等の関係から導き出される放物線を描いて、流動床上に落下する。落下した石炭は流動床上に流動層を形成し、前記吹出し口から吹出される流動化ガスによって加熱乾燥され、流動する。
【0004】
しかしながら、この種の流動乾燥装置では、装入シュートに入れる石炭の水分が増加すると、当該石炭がスラリー状(懸濁液)になったり、また質量が増加するなどして、側壁を伝ってそのままほぼ垂直に落下する。そうするとこのような状態の石炭では前記した流動層を維持できず、またシュート直下の流動床に原料が堆積し、流動床の吹出し口の目詰まりを引き起こしていた。
【0005】
このような事態が発生すると、乾燥不全が継続するため、設備を停止して原料詰りの除去作業が必要となる。このような設備停止によって、生産能力は低下し、また詰り除去に労力もかかるため、多大なデメリットを被っていた。
【0006】
そこでこのような事態の発生を防止するため、特許文献1では、装入シュート自体を多数の細孔を形成したパンチングプレートで構成し、それと共に当該パンチングプレートに対して、流動乾燥装置の側壁から別途熱風を吹出させることが提案されている
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実開平5-3891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、流動乾燥装置の側壁から熱風を吹出すようにするため、流動乾燥装置自体の大幅な改造が必要となる。そのため既存設備に対して容易には適用できない。
【0009】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、既存の設備に対しても容易に適用が可能で、投入する石炭をはじめとするこの種の原料の水分が増加しても既述した流動床上での流動層を維持し、適切な乾燥、流動を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明は、原料を流動させて乾燥する乾燥室と、前記乾燥室の上流側の側壁に前記原料を前記乾燥室に投入する装入シュートと、前記乾燥室の床面に複数の乾燥ガスの吹出し口を備えた流動床と、を有する流動乾燥装置において、前記装入シュートの終端部にシュート延長部を設け、前記シュート延長部の終端部は、前記側壁から離れており、前記シュート延長部の延長長さは、平面視で前記シュート延長部下方に、前記複数の吹出し口のうちの一部の吹出し口が位置する長さであり、前記シュート延長部の終端部は前記流動床とは接しておらず、かつ前記シュート延長部の下方には空間が存在し、前記終端部よりも前記側壁に最も近い側に位置する吹出し口の吹出し開口部分は、そのすべてが、平面視で前記空間内に収まっている、ことを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、前記装入シュートの終端部にシュート延長部を設け、シュート延長部の終端部は、前記側壁からは離れているようにしたので、シュート延長部を伝って落下する原料は、乾燥室の上流側の側壁から離れた位置に落下する。しかも装入シュートからそのまま落下させる場合と比べて、水平方向への速度が速くなるから、流動床に落下した原料は乾燥室の下流側へと流動しやすくなっている。したがって、投入する原料の水分が増加してスラリー状になったり、質量が増加しても、側壁を伝ってそのまま垂直に落下して、そのまま堆積してしまうことは防止される。また前記したように乾燥室の下流側へと流動しやすくなっているから、流動性を維持して、所定の乾燥状態、温度を維持することが可能である。
そして、本発明を実施するには、装入シュートの終端部にシュート延長部を設けるだけでよいので、既存の設備に対して適用することが極めて容易である。
【0012】
さらにまた本発明では、前記シュート延長部の延長長さは、平面視で前記シュート延長部の下方に、前記吹出し口の一部が位置する長さとし、前記シュート延長部の終端部が前記流動床とは接しておらず、かつ前記シュート延長部の下方には空間が存在しているように構成されている。
【0013】
このような構成を採ることで、前記シュート延長部下方に位置する吹出し口からの乾燥ガスは、シュート延長部に衝突したのち、シュート延長部の下面に沿ってシュート延長部の終端部側、すなわち下流側と流れる。したがってこの乾燥ガスの下流側方向の流れによって、シュート延長部から落下した原料は、さらに下流側へと流れやすくなる。しかも落下している間は、乾燥ガスによって乾燥が促進されるので、さらに流動性が増加する。
【0014】
前記シュート延長部の幅は前記流動床の幅の1/3以上の長さを有するように設定してもよい。かかる幅を有することで、装入シュートから伝って滑落していく原料を、幅方向でより広い範囲で流動床に落下させることができる。また前記シュート延長部下方に位置する吹出し口からの乾燥ガスについても、より広範囲に亘って、シュート延長部の終端部から落下する原料に供給することができる。
【0015】
前記シュート延長部は平板形状であるようにしてもよい。これによって、シュート延長部の下面側に吹き出された乾燥ガスが、シュート延長部の下面側と接している時間が長くなり、また接触している面積も増加するから、シュート延長部自体が加熱され、シュート延長部上の原料を予熱することができ、原料中の水分を低減することができる。
【0016】
かかる作用効果に鑑みれば、前記シュート延長部は、一般的に熱伝導性が良好な金属で構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、既存の設備を大きく改変することなく、原料の水分が増加しても流動床上での流動層を維持して、適切な乾燥、流動を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施の形態にかかる流動乾燥装置の概要を側面から模式的に示した説明図である。
図2図1の流動乾燥装置におけるシュート延長部の構成を側面から模式的に示した説明図である。
図3図1の流動乾燥装置におけるシュート延長部の作用を示す説明図である。
図4図1の流動乾燥装置におけるシュート延長部の作用を示す説明図である。
図5図1の流動乾燥装置におけるシュート延長部の作用を示す説明図である。
図6図1の流動乾燥装置におけるシュート延長部の作用を示す斜視図である。
図7】シュート延長部を有さない流動乾燥装置における石炭の含有水分の時系列変化に伴う層厚、生産性の変化を示し、(a)は石炭の含有水分の時系列変化、(b)は層厚の変化、(c)は生産性の変化を示している。
図8】シュート延長部を有する動乾燥装置における石炭の含有水分の時系列変化に伴う層厚、生産性の変化を示し、(a)は石炭の含有水分の時系列変化、(b)は層厚の変化、(c)は生産性の変化を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は実施の形態にかかる流動乾燥装置1の概要を側面から示した説明図であり、この流動乾燥装置1は、コークスを製造する際の原料である石炭を、乾留前に乾燥、分級、予熱する装置として構成されている。流動乾燥装置1は、原料である石炭を流動させて乾燥する乾燥室2を有している。乾燥室2の上面には、流動乾燥の際に生ずる微粉炭を室外に排出する複数の微粉炭排出口3が設けられている。
【0020】
乾燥室2の床面は、流動床4で構成されている。この流動床4の下面側には、プレナム室5が設けられており、石炭を流動乾燥させる高温の乾燥ガスが導入される。プレナム室5に導入された乾燥ガスは、流動床4に設けられた目皿と呼称される多数の吹出し口6から、乾燥室2内に吹き出される。吹出し口6は、流動乾燥装置1において乾燥室2の一側壁を構成する側壁7と、他側壁を構成する側壁8間の流動床4の全面に形成されている。側壁8は乾燥室2内を流動する石炭の上流側の側壁を構成し、側壁8は下流側の側壁を構成する。
【0021】
側壁7には、原料である石炭を乾燥室2内に投入するための装入シュート11が設けられている。装入シュート11は、図2に示すように、側壁7とでおり成す角度θが20度前後となるように傾斜している。
【0022】
そして装入シュート11の終端部には、シュート延長部12が設けられている。このシュート延長部12は、金属製のプレートによって構成され、本実施の形態ではステー13によって側壁7と固定されている。なおシュート延長部12と装入シュート11の表面は、傾斜角度が同一の連続する斜面を形成している。
【0023】
前記したように、シュート延長部12は平板状の金属プレートであり、ステー13によって側壁7と固定されているので、シュート延長部12と側壁7との間には、縦断面が三角形の空間S1が形成されている。そして空間S1の下面側には、縦断面が四角形の空間S2が空間S1に連続して形成されている
【0024】
シュート延長部12の長さは、図2に示したように、平面視でシュート延長部12の下方に、最も側壁7に近い吹出し口6aが位置するように設定されている。もちろん吹出し口6aの下流側に位置する他の吹出し口6bが、平面視でシュート延長部12の下方に位置するものであってもよい。
【0025】
かかる構成、設置によるシュート延長部12の終端部12aの位置は、側壁7からは離れており、また流動床4とは接していない。
【0026】
実施の形態にかかる流動乾燥装置1は、以上の構成を有しており、次にその作用効果等について説明する。図3に示したように、装入シュート11の終端部にシュート延長部12が連続して設けられ、シュート延長部12の終端部12aは、側壁7からは離れているので、装入シュート11から投入された石炭は、シュート延長部12の終端部12aから実線で示した放物線に沿って流動床4の上に落下する。したがって破線で示したシュート延長部12のない場合の落下と比較すると、従来よりも側壁7から離れた位置に落下する。
【0027】
したがって、図4に示したように、シュート延長部12のない従来技術と比較すると、投入された石炭が仮に含有分が多い場合であっても、図4の実線で示したように、側壁7から離れた位置に落下し、しかもシュート延長部12のない場合と比べて、水平方向の速度が大きいので、図4の矢印Aで示す流動方向に付勢される。この点、シュート延長部12のない場合には、図4の破線で示したように、側壁7の壁際に滞留する。それゆえ、シュート延長部12のない場合と比べて落下した石炭の流動性がよく、また側壁7の壁際に滞留することは防止される。
【0028】
しかも本実施の形態では、既述したように、最も側壁7に近い吹出し口6aは、平面視でシュート延長部12の下方に位置するようにシュート延長部12の長さが設定されているので、落下した石炭は吹出し口6aの位置に落下することなく、吹出し口6aよりも側壁7から離れた吹出し口6b、あるいはさらに離れた吹出し口6c付近に落下する。また、最も側壁7に近い吹出し口6aは、平面視でシュート延長部12の下方に位置しているから、仮にシュート延長部12の終端部12aから垂直に落下しても、吹出し口6a上に落下することはない。
【0029】
そのため、吹出し口6aは全く目詰まりすることはなく、図5図6に示したように、常に上方に乾燥ガスを吹出すことができる。そうすると、吹出し口6aから吹出された乾燥ガスは、シュート延長部12の下面側に突き当たり、その後は、シュート延長部12の下面に沿って、下流側(図5中の矢印A側)に向かって流れる。一方で他の吹出し口6b、6cから吹出された乾燥ガスは、吹出し口6aから吹出された下流側(図5中の矢印A側)に向かって流れる乾燥ガスの影響で、その流れが下流側に向けられる。
【0030】
そうすると、図5図6に示したように、装入シュート11にから次々と投入されてシュート延長部12から落下していく石炭Cの流れに対して、これらの乾燥ガスが衝突し、石炭Cに下流側への力が加わり、さらに下流側へと流れやすくなる。
【0031】
また含有水分率が高く、水分の多い石炭CC(図5)は、装入シュート11、シュート延長部12を伝って流れて行く際に、概して装入シュート11、シュート延長部12の表面側に位置していき、その結果シュート延長部12から落下した時点では、側壁7側に近い位置を占める傾向にある。したがって、前記した石炭Cの流れに対して側壁7方向から直接吹き付けられる吹出し口6a、6b、6cからの乾燥ガスは、この水分の多い石炭CCに吹き付けられる。したがって石炭の流動性を失わせる水分の多い石炭は、流動床4に落下した時点で、水分が低減しているので、この点からも落下した石炭Cの流動性は良好なものとなる。
【0032】
さらにまた前記実施の形態では、シュート延長部12の下面側の空間S1には、常に吹出し口6aからの高温の乾燥ガスが吹き付けられているので、それによってシュート延長部12が加熱される。したがって、石炭Cがシュート延長部12上を伝って落下していく間、石炭Cはシュート延長部12によって予熱されることになる。それゆえかかる点からも、流動床4上に落下した石炭は流動性をより維持しやすくなっている。また前記実施の形態におけるシュート延長部12は、金属製のプレートであるから、熱伝導性が良好であり、シュート延長部12上の石炭Cに対する加熱効率がよい。
【0033】
そしてそのような効果を奏じさせた実施の形態にかかる流動乾燥装置1は、装入シュート11の終端部に、シュート延長部12を設けただけで実現できるので、既存の設備を大きく改造することなく実施可能である。
【0034】
以上説明したように、実施の形態にかかる流動乾燥装置1によれば、既存の設備を大きく改造することなく、石炭をはじめとするこの種の原料の水分が増加しても流動床上での流動層を維持し、適切な乾燥、流動性を実現することが可能である。
【0035】
なお前記実施の形態では、最も側壁7に近い吹出し口6aだけが、平面視でシュート延長部12の下方に位置するようにシュート延長部12の長さを設定していたが、もちろんこれら限らず、吹出し口6aから順次離れた吹出し口6b、6cもシュート延長部12の下方に位置するようにシュート延長部12の長さを調節してもよい。
【0036】
次に実施の形態にかかる流動乾燥装置の効果を実証した結果について説明する。図7は、装入シュートの終端部にシュート延長部を設けない従来型の流動乾燥装置の結果を示し、図8は同じ装置に対して装入シュートの終端部にシュート延長部を設けた流動乾燥装置の結果を示している。図7図8のいずれも、(a)は、原料となる石炭の含有水分の時系列変化を示している。この場合の時系列とは、流動乾燥室に投入した石炭の投入日ごとの変化を示している。水分の変動は天候、外気の湿度によって左右されるので、測定日毎に水分含有率の値は異なっている。また図7図8との間で水分含有率の変動、値が異なっているのは、実施日(測定日)が異なっているためである。
【0037】
また図7図8における各(b)は、そのときのA層層厚を示している。A層層厚とは、乾燥室を4つのブロックに便宜上区画し、装入シュートが設けられた側壁にもっとも近いブロックの流動床に形成された石炭の層を意味している。層厚の単位はkPaで示したが、これは層厚の厚さの実測が困難であるため、プレナム室のガスの圧力と乾燥室の石炭の層を抜けてくるガスの圧力の差、すなわち石炭の層による圧損で代用したものであり、数値が高いほど層厚が大きい、すなわち流動せずに滞留していることを意味する。
【0038】
図7図8における(c)は、流動乾燥装置によって処理されてその後コークスを製造する場合の生産性を示すグラフであり、数値が高いほど生産性が良好であることを意味する。
【0039】
これら図7図8からわかるように、装入シュートの終端部にシュート延長部を設けない従来型の流動乾燥装置では、石炭の含有水分が高くなるにつれて、A層層厚が厚くなり、流動性が低下していく。そして流動性が低下した結果、流動乾燥装置を停止せざるを得なくなり、コークス炉に装入する石炭の温度が低くなるため、その後のコークスの生産性が低下していることがわかる。
【0040】
これに対して同じ装置に対して装入シュートの終端部にシュート延長部を設けた流動乾燥装置によれば、図8に示したように、石炭の含有水分が高くなっても、A層層厚は殆ど変化せず、したがってその後のコークスの生産性も最高レベルを維持している。これによって本発明の有効性が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、石炭をはじめとする各種原料の流動乾燥に有用である。
【符号の説明】
【0042】
1 流動乾燥装置
2 乾燥室
3 微粉炭排出口
4 流動床
5 プレナム室
6、6a、6b、6c 吹出し口
7、8 側壁
11 装入シュート
12 シュート延長部
12a 終端部
13 ステー
C 石炭
CC 水分の多い石炭
S1、S2 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8