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  • 特許-焼結鉱の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】焼結鉱の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 1/26 20060101AFI20230412BHJP
   F27B 21/00 20060101ALI20230412BHJP
   F27B 21/08 20060101ALI20230412BHJP
   F27D 15/02 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
C22B1/26
F27B21/00 A
F27B21/08 Z
F27D15/02 G
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019105113
(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公開番号】P2020196941
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(72)【発明者】
【氏名】石山 理
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-349216(JP,A)
【文献】特開昭59-200730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
F27B 21/00-21/14
F27D 7/00-15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結機から排鉱された焼結鉱を、前記焼結機の終端部に配設されるフードの内部にある一次破砕機で破砕した後、冷却機で冷却することにより高炉装入用の焼結鉱を製造する焼結鉱の製造方法であって、
前記焼結機から排鉱された焼結鉱を、前記冷却機の入口に到達する前に散水冷却することを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【請求項2】
焼結鉱に対する散水量は、前記散水冷却による冷却領域を通過する焼結鉱1t当たり9kg以上27kg以下であることを特徴とする、請求項1に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項3】
前記フードの内部において、前記フードの内壁から延出する散水ノズルにより前記散水冷却を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項4】
前記一次破砕機は、一対の鬼歯及び受歯からなり、
前記鬼歯及び前記受歯のうち少なくとも一方に設けられた散水ノズルにより前記散水冷却を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項5】
前記一次破砕機と前記冷却機との間にホットスクリーンが設けられている場合、
前記ホットスクリーンの篩面上を流下する焼結鉱に向けて、前記散水冷却を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結鉱の製造方法。
【請求項6】
前記一次破砕機で破砕された焼結鉱を前記冷却機に向かって搬送するためのコンベア上において前記散水冷却を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の焼結鉱の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉に装入された焼結鉱は、500~600℃の温度域において、ヘマタイト(Fe)からマグネタイト(Fe)に還元され、体積膨張する。体積膨張したときに、焼結鉱の内部に歪或いはクラックが生成されるため、炉内で荷下がりする時の衝撃或いは摩耗によって、焼結鉱が粉化する。この現象は、一般的に還元粉化と呼ばれている。
【0003】
高炉に装入される原料の重要な品質のひとつとして、焼結鉱の還元粉化性は、焼結鉱の品質管理項目に広く採用されている。具体的には、JIS規格(JIS M8720)に定められた、焼結鉱還元粉化指数(以下、RDIともいう)と称される指標によって焼結鉱の還元粉化性は評価・管理されている。ここに、RDIの値が大きくなる程、還元粉化を起こしやすい。
【0004】
ここで、焼結用原料には、発熱源としての炭材が含まれており、この炭材が燃焼することで焼結用原料を昇温、一部溶融させる。炭材燃焼により、主にCOガス、一部COガスが発生する。このCOガスによって、焼結用原料に含まれるヘマタイト(Fe)の一部がマグネタイト(Fe)に還元される。そして、このマグネタイト(Fe)が高炉に装入されるまでに再酸化され、再びヘマタイト(Fe)に戻る場合がある。再酸化されたヘマタイト(Fe)は、二次ヘマタイト或いは、骸晶状菱ヘマタイト等と呼ばれ、高炉でマグネタイト(Fe)に還元されるときに、通常のヘマタイト(Fe)よりも還元粉化を起こし易いことが知られている。また、焼結用原料の温度が高くなるほど、再酸化が起こり易くなることも知られている。
【0005】
特許文献1及び2には、焼結機における焼成進行中、或いは焼成完了直前に焼結原料を散水冷却する方法が開示されている。特許文献3には、冷却機において焼結鉱を散水冷却する方法が開示されている。特許文献4には、一次破砕後にホットスクリーンで篩分けされた返鉱を冷却する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-183287号公報
【文献】特開平4-147925号公報
【文献】特開平9-78147号公報
【文献】特開平5-9602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2は、焼成中に散水冷却する方法であるため、高温焼成を維持することが困難で、焼結の進行を遅らせたり、シンターケーキの強度が低下するおそれがある。また、焼成完了点を把握することは、一般的に困難であるため、焼成完了直前のタイミングを予測して、散水することも容易ではない。
【0008】
特許文献3は、焼結機から冷却機に到達するまでに時間(例えば、数分)を要するため、冷却機に到達する前に焼結鉱が再酸化され、RDIの改善効果が充分に得られないおそれがある。すなわち、焼結鉱の再酸化は、高い温度域において促進されるため、冷却を開始するまでの時間が長くなると、充分なRDI改善効果が得られない。また、特許文献3及び4には、そもそも焼結鉱の成品品質を改善するために、焼結鉱を冷却することは開示も示唆もされていない。
【0009】
本発明は、焼結機から排鉱された焼結鉱を早期に冷却して、焼結鉱のRDIを改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本願発明に係る焼結鉱の製造方法は、(1)焼結機から排鉱された焼結鉱を、前記焼結機の終端部に配設されるフードの内部にある一次破砕機で破砕した後、冷却機で冷却することにより高炉装入用の焼結鉱を製造する焼結鉱の製造方法であって、前記焼結機から排鉱された焼結鉱を、前記冷却機に到達する前に散水冷却することを特徴とする。
【0011】
(2)焼結鉱に対する散水量は、前記散水冷却による冷却領域を通過する焼結鉱1t当たり9kg以上27kg以下であることを特徴とする、上記(1)に記載の焼結鉱の製造方法。
【0012】
(3)前記フードの内部において、前記フードの内壁から延出する散水ノズルにより前記散水冷却を行うことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の焼結鉱の製造方法。
【0013】
(4)前記一次破砕機は、一対の鬼歯及び受歯からなり、前記鬼歯及び前記受歯のうち少なくとも一方に設けられた散水ノズルにより前記散水冷却を行うことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の焼結鉱の製造方法。
【0014】
(5)前記一次破砕機と前記冷却機との間にホットスクリーンが設けられている場合、前記ホットスクリーンの篩面上を流下する焼結鉱に向けて、前記散水冷却を行うことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の焼結鉱の製造方法。
【0015】
(6)前記一次破砕機で破砕された焼結鉱を前記冷却機に向かって搬送するためのコンベア上において前記散水冷却を行うことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の焼結鉱の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、焼結機から排鉱された焼結鉱を冷却機に到達する前に冷却できるため、焼結鉱の再酸化をより効果的に防止することができる。これにより、焼結鉱のRDIを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】焼結鉱の製造過程の一実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、焼結鉱の製造過程の一実施形態を示す概略図である。なお、図1における白抜きの矢印は、排鉱部10から排鉱された焼結鉱の搬送方向を示す。図1を参照して、本実施形態の焼結鉱の製造設備は、焼結鉱の搬送方向上流から下流に向かって、焼結機1、一次破砕機2、ホットスクリーン3、コンベヤ4及び冷却機5をこの順序で配設することにより構成されている。
【0019】
<焼結機1について>
焼結機1は、ドワイト・ロイド式の焼結機であり、床敷鉱ホッパー11と、スウィングシュート12と、サージホッパー13と、ドラムフィーダー14と、パレット15と、点火炉16と、風箱17と、排風支管18aと、排風本管18bと、排ガス集塵機19と、吸引ブロワ20とを含む。床敷鉱ホッパー11には、床敷鉱が貯留されている。床敷鉱には、後述するように、予め焼結された焼結鉱を用いることができる。サージホッパー13には、焼結用原料が貯留されている。焼結用原料には、粉鉱石、炭材及び粉石灰石等が含まれている。
【0020】
床敷鉱ホッパー11は、焼結鉱の搬送方向において、サージホッパー13よりも上流側に配置されている。床敷鉱ホッパー11に貯留された床敷鉱がスウィングシュート12を介してパレット15上に落下供給されることにより、床敷層が形成される。この床敷層の上に、サージホッパー13に貯留された焼結用原料がドラムフィーダー14によって所定量ずつ切り出されて、堆積することにより、焼結用原料の充填層が形成される。この焼結用原料の充填層を焼結ベッドと表記する場合がある。
【0021】
焼結ベッドをパレット15上に直接形成した場合、焼成時に焼結ベッドがパレット15に固着するおそれがある。一方、床敷鉱は、後述するように、冷却機5の下流に配置されたコールドスクリーンによってふるい分けされた焼結鉱であるため、焼結機1での焼成時に焼結反応をほとんど起こさない。したがって、床敷層を形成しておくことで、焼成時に焼結ベッド及びパレット15が互いに固着することを抑制できる。
【0022】
焼結ベッドは加圧ローラやカットプレート(不図示)により上面がならされた後、点火炉16の直下に進入する。点火炉16は、焼結ベッドの上面を加熱して、炭材を点火させる。風箱17は、パレット15の下側に配設されており、焼結機1の機長方向に沿って多数配列されている。排風支管18aは、各風箱17から延びて、排風本管18bに接続されている。
【0023】
排ガス集塵機19は、排風本管18bを介して排出されるガスの集塵処理を行う。吸引ブロワ20は、排風本管18bにおける排ガス集塵機19のガス下流側に配設されており、焼結ベッドの上面から下面に向かってガスを吸引するための動力を生成する。
【0024】
焼結ベッドでは、パレット15が下流に進むにしたがって、乾燥、溶融、凝固という一連の焼結反応が下層に進行し、最終的に全体が焼成されてシンターケーキとなる。このシンターケーキが焼結機1の終端に形成された排鉱部10から排鉱される。このとき、シンターケーキは、パレット1台分の大きさに割れながら一次破砕機2へ落下する。ここで、分断されたシンターケーキのサイズは、例えば、4m×1m×0.5mの略直方体となる。
【0025】
<一次破砕機2について>
一次破砕機2は、排鉱部10から排鉱されたシンターケーキ(床敷層を含む)の落下軌跡上に位置する。一次破砕機2は、鬼歯21と、鬼歯21の下方に位置する受歯22と、から構成される。鬼歯21は、回転軸21aと、回転軸21aの周方向に等間隔に配設され、回転軸21aの径方向外側に向かって突出する複数の回転歯21bと、から構成される。これらの回転歯21bは、回転軸21aの軸方向に沿って等間隔に複数組設けられている。受歯22は、短冊状に形成されており、回転動作する回転歯21bを通過させるためのスリットを、回転歯21bの組の数だけ有している。
【0026】
排鉱部10から排鉱されたシンターケーキは、受歯22の上に落下し、回転軸21a周りに回転する回転歯21bに対して接触することにより、剪断破砕される。破砕されたシンターケーキは、フード7の下部から落下して、シュート6に供給される。なお、以下の説明において、破砕されたシンターケーキを、焼結鉱と表記する場合がある。
【0027】
<フード7について>
排鉱部10では、シンターケーキが割れる際に発塵が生じる。また、一次破砕機2では、シンターケーキを破砕した際に発塵が生じる。そのため、排鉱部10及び一次破砕機2をフード7で覆うことにより、外部へのダスト漏れを抑制している。フード7からフード外部に延びる排気管71には、排ガス集塵機72と、吸引ブロワ73と、が配置されている。排ガス集塵機72は、排風管71を介して排出されるガスの集塵処理を行う。吸引ブロワ73は、排気管71における排ガス集塵機72のガス下流側に配設されており、ガスを吸引するための動力を生成する。
【0028】
<ホット―スクリーン3及びコンベヤ4について>
シュート6に落下供給された焼結鉱は、ホットスクリーン3に排鉱され、粗粒と細粒とに分級される。分級点は特に限定しないが、例えば、5mmに設定することができる。分級された焼結鉱のうち篩下の細粒は、原料槽のホット返鉱槽(不図示)に返鉱され、篩上の粗粒は、コンベヤ4によって冷却機5に搬送される。コンベア4は、焼結鉱が高温のために、金属製のパン型あるいはチェーン型が使用される。なお、本実施形態では、ホットスクリーン3から冷却機5に向かって焼結鉱を搬送する搬送手段として、パン型あるいはチェーン型のコンベヤ4が好ましいが、本発明はこれに限るものではなく、他の搬送コンベアを用いてよい。
【0029】
<冷却機5について>
コンベヤ4によって搬送された焼結鉱は冷却機5に装入され、冷却機5に備えられたトラフ(不図示)に充填される。このトラフを冷却機5の軸回りに回転させながら、トラフに充填された焼結鉱の熱を抜熱することにより、焼結鉱が連続的に冷却される。
【0030】
冷却機5の下流には、3段式のコールドスクリーン(不図示)が設けられている。冷却された焼結鉱は、一次コールドスクリーンにおいて所定の粒度に分級される。一次コールドスクリーンの篩上の焼結鉱は二次破砕機にて破砕された後、一次コールドスクリーンの篩下の焼結鉱とともに二次コールドスクリーンに送られ、所定の粒度に分級される。二次コールドスクリーンの篩上の焼結鉱の一部は床敷鉱ホッパー11に返鉱される。二次コールドスクリーンの篩下の焼結鉱は三次コールドスクリーンに送られ、所定の粒度に分級される。三次コールドスクリーンの篩下の焼結鉱は、原料槽の返鉱槽(コールド返鉱槽)に返鉱される。一方、三次コールドスクリーンの篩上の焼結鉱は、高炉に供給される。
【0031】
本発明者は、焼結機から排鉱された焼結鉱を早期に冷却する方法として、以下の冷却方法1~4を知見した。なお、以下の冷却方法1~4の全てを必ずしも実施する必要はなく、少なくとも一つを実施すればよい。
>冷却方法1<
冷却方法1では、フード7の天井部に散水ノズル70を配設して、排鉱部10から分断された焼結鉱の直上から冷却水を散水する。この方法によれば、排鉱部10で分断された焼結鉱の断面に対して散水することができるため、より効率的に焼結鉱を冷却することができる。また、一次破砕機2の上流側で散水することにより、一次破砕時における発塵を、より効果的に抑制することができる。本例では、フード7の天井部に散水ノズル70を配設したが、本発明はこれに限るものではなく、排鉱部10から分断された焼結鉱が一次破砕機2に到達する前に散水冷却することができる適宜の位置(例えば、フード7の側壁)に散水ノズル70を配設してもよい。
【0032】
>冷却方法2<
冷却方法2では、回転歯21bの先端に散水ノズル21cを配設して、一次破砕機2に搬送された焼結鉱を冷却する。ここで、回転軸21aには、焼結鉱の熱を受熱することによる高温化を防止するために、水冷管が設けられている場合があり、この水冷管を回転歯21bの先端まで引き回すことにより、回転歯21bの先端に散水ノズル21cを配設することができる。本例では、回転歯21bに散水ノズル21cを配設したが、本発明はこれに限るものではなく、受歯22に散水ノズル21cを配設してもよい。また、回転歯21b及び受歯22の双方に散水ノズル21cを配設してもよい。
【0033】
>冷却方法3<
冷却方法3では、ホットスクリーン3の上方に散水ノズル31を配設して、篩面上を流下する焼結鉱を冷却する。
【0034】
>冷却方法4<
冷却方法4では、コンベヤ4の上方に散水ノズル41を配設して、コンベヤ4上で焼結鉱を冷却する。
【0035】
このように、冷却方法1~4では、排鉱部10から切り出された焼結鉱を、冷却機5に到達する前に散水冷却しているため、焼結鉱を早期に温度低下させることができる。したがって、冷却機5に到達してから冷却する方法と比較して、焼結鉱の再酸化が抑制されるため、RDIの低い焼結鉱を提供することができる。
【0036】
焼結鉱に対する散水量は、好ましくは、焼結鉱1t当たり9kg以上27kg以下である。散水量が、焼結鉱1t当たり9kg未満に低下すると、焼結鉱を十分に冷却できなくなり、焼結鉱の再酸化が促進されるおそれがある。一方、散水量が、焼結鉱1t当たり27kgを超えると、焼結鉱が過冷却されるため、焼結鉱の強度が低下して粉率が増大する可能性がある。
【0037】
具体的には、1時間当たりに通過する焼結鉱の量A(t/hour)に基づき、散水量を規定することができる。ここで、焼結鉱を冷却方法1及び2に基づき冷却する場合、1時間当たりに通過する焼結鉱の量A(t/hour)は下記の式によって算出される。
A=B×C+D・・・式(1)
Bは、1時間当たりに焼結機1に装入される焼結用原料の量(t/hour)である。Cは、焼成歩留である。Dは、1時間当たりに排鉱部10から排出される床敷層の量(t/hour)である。
【0038】
焼結鉱を冷却方法3に基づき冷却する場合、1時間当たりに通過する焼結鉱の量A(t/hour)は、下記の式によって推算される。
A=B×C+D-E×0.5・・・式(2)
Eは、1時間当たりにホットスクリーン3の篩下となる焼結鉱(すなわち、ホットスクリーンでの返鉱)の量(t/hour)を表す。
【0039】
冷却方法4を実施する場合、1時間当たりに通過する焼結鉱の量A(t/hour)は、下記の式によって算出される。
A=B×C+D-E・・・式(3)
【実施例
【0040】
本発明について、実施例を示して、好ましい散水量を規定した根拠と散水によるRDI改善効果とを説明する。なお、以下の実施例は、オフラインによる試験結果である。
(配合原料の準備)
表1に示す条件にしたがって、複数銘柄の鉱石および副原料、炭材を配合した。配合された原料(配合原料)を、ドラムミキサーを用いて混合(2min)し、水分が7.0mass%となるように水を添加したのち、同様にドラムミキサーで造粒(5min)した。
【0041】
【表1】
【0042】
(配合原料の焼成と冷却)
前記配合原料50kgを直径300mm高さ500mmの鍋に装入し、LPGを用いてフレーム先端の温度を1300℃に設定して60秒点火したのち、一定の吸引負圧-1300mmAqで焼成した。ここで焼成完了点は、鍋下に設置した熱電対にて排ガス温度を計測し、排ガス温度が極大となる位置に設定した。
焼成完了後、直ちにシンターケーキ(焼成体)を金床上に取り出し、ハンマーで軽く破砕した。破砕後、焼結鉱の表面温度を赤外線温度計で測定しながら、所定の温度まで大気放冷を行った。
【0043】
(焼結鉱表面温度に応じた冷却)
散水処理をせずに、大気温度20℃の大気中で放冷した場合をベースとした。実施例1~3では、散水量をそれぞれ、焼結ケーキ1t当たり9kg、27kg、45kgとして、焼結鉱表面温度が500℃(ハンマー破砕の直後)に低下した時に散水冷却を実施した。実施例4では、焼結鉱表面温度が400℃となった時に散水冷却を実施した。実施例5では、焼結鉱表面温度が300℃となった時に散水冷却を実施した。比較例では、焼結鉱表面温度が200℃となった時に散水冷却を実施した。実施例4、5、比較例における散水量は、焼結ケーキ1t当たり27kgとした。散水手段として、霧吹きを使用した。
【0044】
(粉率及びRDI値の測定)
冷却後の焼結鉱を2m×4回落下させて破砕し、粉率(破砕後の焼結鉱の-10mmの質量比率)も測定した。さらに、15~19mmの焼結鉱を採取し、JIS-M8720低温還元後強度試験方法に準拠して、RDIの値を測定した。
【0045】
(実験結果)
実験条件及び実験結果を表2に示す。実施例1、2、4、5は、ベースに対し、RDIの値が大きく改善され、かつ粉率にほとんど差がないため、評価を「◎」とした。また、実施例3では、ベースに対し、RDIの値が大きく改善された一方、散水過多による過冷却となり、脆弱に粉化した結果、粉率が増大した。そのため、評価を「○」とした。一方、比較例では、RDIの値がベースとほとんど変わらなかったため、評価を「×」とした。比較例では、時間をかけて焼結表面温度を低下させた後に、散水冷却しているため、RDI改善効果が小さくなったと考えられる。すなわち、300~500℃の表面温度を有する焼結鉱において、散水によるRDI改善効果が確認された。
【0046】
【表2】
【0047】
ここで、焼結工程における焼結鉱の温度は、概ね、ホットスクリーン3上では400℃(実施例4の焼結鉱表面温度に相当)、コンベヤ4上では300℃(実施例5の焼結鉱表面温度に相当)、冷却機5の入口では200℃(比較例の焼結鉱表面温度に相当)であった。したがって、実機での冷却過程において焼結鉱のRDIを低下させるためには、焼結機から排鉱された焼結鉱を、冷却機に到達する前に散水冷却することが効果的であることがわかった。
【0048】
(変形例1)
上述の実施形態においては、焼結鉱の製造過程においてホットスクリーン3が配置されているが、本発明は、ホットスクリーン3がない焼結鉱の製造方法にも適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 焼結機 5 冷却機 10 排鉱部



図1