IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 新日鐵住金株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-強度試験方法及び強度試験片 図1
  • 特許-強度試験方法及び強度試験片 図2
  • 特許-強度試験方法及び強度試験片 図3
  • 特許-強度試験方法及び強度試験片 図4
  • 特許-強度試験方法及び強度試験片 図5
  • 特許-強度試験方法及び強度試験片 図6
  • 特許-強度試験方法及び強度試験片 図7
  • 特許-強度試験方法及び強度試験片 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】強度試験方法及び強度試験片
(51)【国際特許分類】
   G01N 3/00 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
G01N3/00 Q
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019165549
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2021043077
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】窪田 紘明
(72)【発明者】
【氏名】相藤 孝博
(72)【発明者】
【氏名】吉田 博司
(72)【発明者】
【氏名】堀江 晃
(72)【発明者】
【氏名】岡田 徹
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-131902(JP,A)
【文献】特開2007-212416(JP,A)
【文献】特開平06-034521(JP,A)
【文献】中国実用新案第216955479(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
継手の強度を評価する強度試験方法であって、
棒状の第1試験片と、
前記第1試験片に重なり合う棒状の第2試験片と、
前記第1試験片と前記第2試験片とを接合する接合部と、を含む強度試験片を準備する準備工程と、
前記第1試験片及び前記第2試験片の長手方向における一端部を引張試験機の一方のチャックで把持し、前記第1試験片及び前記第2試験片の長手方向における他端部を前記引張試験機の他方のチャックで把持する把持工程と、
前記第1試験片及び前記第2試験片を前記長手方向に引っ張る引張工程と、を備え、
前記引張工程において、前記第1試験片を一方に引っ張る引張力と、前記第1試験片を他方に引っ張る引張力との合力は、前記第2試験片を一方に引っ張る引張力と前記第2試験片を他方に引っ張る引張力との合力とは異なる
ことを特徴とする強度試験方法。
【請求項2】
前記接合部は、溶接部である
ことを特徴とする請求項1に記載の強度試験方法。
【請求項3】
前記溶接部は、スポット溶接部である
ことを特徴とする請求項2に記載の強度試験方法。
【請求項4】
前記接合部から前記長手方向の両側に等距離までの隣接範囲における前記第1試験片及び前記第2試験片の前記長手方向に垂直な面での断面積は、他の部分における前記第1試験片及び前記第2試験片の前記長手方向に垂直な面での断面積より小さい
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の強度試験方法。
【請求項5】
前記引張工程において、前記第1試験片及び前記第2試験片に、前記第1試験片と前記第2試験片とを剥離する剥離力を加える
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の強度試験方法。
【請求項6】
前記準備工程において、前記接合部とは異なる位置での前記第1試験片と前記第2試験片との間に、スペーサを挟む
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の強度試験方法。
【請求項7】
前記第1試験片の一端部から前記接合部までの中間位置における前記長手方向に垂直な面での断面積は、前記第1試験片の他端部から前記接合部までの中間位置における前記長手方向に垂直な面での断面積より小さい
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の強度試験方法。
【請求項8】
前記第2試験片の一端部から前記接合部までの中間位置における前記長手方向に垂直な面での断面積は、前記第2試験片の他端部から前記接合部までの中間位置における前記長手方向に垂直な面での断面積より大きい
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の強度試験方法。
【請求項9】
前記第1試験片の引張強度と前記第2試験片の引張強度とは異なる
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の強度試験方法。
【請求項10】
継手の強度を評価するための強度試験片であって、
棒状の第1試験片と、
前記第1試験片に重なり合う棒状の第2試験片と、
前記第1試験片と前記第2試験片とを接合する接合部と、を備え、
前記第1試験片及び前記第2試験片は、引張試験機の一方のチャックで把持される長手方向における一端部を有し、前記引張試験機の他方のチャックで把持される長手方向における他端部を有し、
前記第1試験片を一方に引っ張る引張力と、前記第1試験片を他方に引っ張る引張力との合力は、前記第2試験片を一方に引っ張る引張力と前記第2試験片を他方に引っ張る引張力との合力とは異なる
ことを特徴とする強度試験片。
【請求項11】
前記接合部は、溶接部である
ことを特徴とする請求項10に記載の強度試験片。
【請求項12】
前記溶接部は、スポット溶接部である
ことを特徴とする請求項11に記載の強度試験片。
【請求項13】
前記接合部から前記長手方向の両側に等距離までの隣接範囲における前記第1試験片及び前記第2試験片の前記長手方向に垂直な面での断面積は、他の部分における前記第1試験片及び前記第2試験片の前記長手方向に垂直な面での断面積より小さい
ことを特徴とする請求項10から請求項12のいずれか1項に記載の強度試験片。
【請求項14】
前記強度試験片は、前記接合部とは異なる位置での前記第1試験片と前記第2試験片との間に、スペーサを備える
ことを特徴とする請求項10から請求項13のいずれか1項に記載の強度試験片。
【請求項15】
前記第1試験片の一端部から前記接合部までの中間位置における前記長手方向に垂直な面での断面積は、前記第1試験片の他端部から前記接合部までの中間位置における前記長手方向に垂直な面での断面積より小さい
ことを特徴とする請求項10から請求項14のいずれか1項に記載の強度試験片。
【請求項16】
前記第2試験片の一端部から前記接合部までの中間位置における前記長手方向に垂直な面での断面積は、前記第2試験片の他端部から前記接合部までの中間位置における前記長手方向に垂直な面での断面積より大きい
ことを特徴とする請求項10から請求項15のいずれか1項に記載の強度試験片。
【請求項17】
前記第1試験片の引張強度と前記第2試験片の引張強度とは異なる
ことを特徴とする請求項10から請求項16のいずれか1項に記載の強度試験片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強度試験方法及び強度試験片に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2枚の鋼板を重ね合わせ、重ね合わせた部分にスポット溶接をして形成した継手を試験片とし、スポット溶接部にせん断力が作用するように試験片を試験機にクランプして引っ張り、試験片が破断するまでの最大引張荷重からせん断強度を求めるせん断試験方法(日本工業規格JISZ3136:1999)があった。
また、スポット溶接部に引張力が作用するように試験片を試験機にクランプして引っ張り、試験片が破断するまでの最大引張荷重から引張強度を求める引張試験方法があった。
さらに、スポット溶接部に剥離力が作用するように試験片を試験機にクランプして引っ張り、試験片が破断するまでの最大引張荷重から十字引張力(剥離強度)を求める十字引張試験方法があった(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-125698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の強度試験方法は、それぞれ、特定の負荷状態にある継手の強度を評価するものであって、例えば、せん断力と引張力とが同時に作用するような、複合的な負荷状態にある継手の強度を適切に評価できなかった。
【0005】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑み、複合的な負荷状態にある継手の強度を適切に評価できる強度試験方法及び強度試験片を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は以下の通りである。
【0007】
(1)本発明の一態様に係る強度試験方法は、継手の強度を評価する強度試験方法であって、棒状の第1試験片と、前記第1試験片に重なり合う棒状の第2試験片と、前記第1試験片と前記第2試験片とを接合する接合部と、を含む強度試験片を準備する準備工程と、前記第1試験片及び前記第2試験片の長手方向における一端部を引張試験機の一方のチャックで把持し、前記第1試験片及び前記第2試験片の長手方向における他端部を前記引張試験機の他方のチャックで把持する把持工程と、前記第1試験片及び前記第2試験片を前記長手方向に引っ張る引張工程と、を備え、前記引張工程において、前記第1試験片を一方に引っ張る引張力と、前記第1試験片を他方に引っ張る引張力との合力は、前記第2試験片を一方に引っ張る引張力と前記第2試験片を他方に引っ張る引張力との合力とは異なる。
(2)上記(1)において、前記接合部は、溶接部であってよい。
(3)上記(2)において、前記溶接部は、スポット溶接部であってよい。
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、前記接合部から前記長手方向の両側に等距離までの隣接範囲における前記第1試験片及び前記第2試験片の前記長手方向に垂直な面での断面積は、他の部分における前記第1試験片及び前記第2試験片の前記長手方向に垂直な面での断面積より小さくてよい。
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、前記引張工程において、前記第1試験片及び前記第2試験片に、前記第1試験片と前記第2試験片とを剥離する剥離力を加えてよい。
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記準備工程において、前記接合部とは異なる位置での前記第1試験片と前記第2試験片との間に、スペーサを挟んでよい。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記第1試験片の一端部から前記接合部までの中間位置における前記長手方向に垂直な面での断面積は、前記第1試験片の他端部から前記接合部までの中間位置における前記長手方向に垂直な面での断面積より小さくてよい。
(8)上記(1)から(7)のいずれかにおいて、前記第2試験片の一端部から前記接合部までの中間位置における前記長手方向に垂直な面での断面積は、前記第2試験片の他端部から前記接合部までの中間位置における前記長手方向に垂直な面での断面積より大きくてよい。
(9)上記(1)から(8)のいずれかにおいて、前記第1試験片の引張強度と前記第2試験片の引張強度とは異なってよい。
(10)本発明の一態様に係る強度試験片は、継手の強度を評価するための強度試験片であって、棒状の第1試験片と、前記第1試験片に重なり合う棒状の第2試験片と、前記第1試験片と前記第2試験片とを接合する接合部と、を備え、前記第1試験片及び前記第2試験片は、引張試験機の一方のチャックで把持される長手方向における一端部を有し、前記引張試験機の他方のチャックで把持される長手方向における他端部を有し、前記第1試験片を一方に引っ張る引張力と、前記第1試験片を他方に引っ張る引張力との合力は、前記第2試験片を一方に引っ張る引張力と前記第2試験片を他方に引っ張る引張力との合力とは異なる。
(11)上記(10)において、前記接合部は、溶接部であってよい。
(12)上記(11)において、前記溶接部は、スポット溶接部であってよい。
(13)上記(10)から(12)のいずれかにおいて、前記接合部から前記長手方向の両側に等距離までの隣接範囲における前記第1試験片及び前記第2試験片の前記長手方向に垂直な面での断面積は、他の部分における前記第1試験片及び前記第2試験片の前記長手方向に垂直な面での断面積より小さくてよい。
(14)上記(10)から(13)のいずれかにおいて、前記強度試験片は、前記接合部とは異なる位置での前記第1試験片と前記第2試験片との間に、スペーサを備えてよい。
(15)上記(10)から(14)のいずれかにおいて、前記第1試験片の一端部から前記接合部までの中間位置における前記長手方向に垂直な面での断面積は、前記第1試験片の他端部から前記接合部までの中間位置における前記長手方向に垂直な面での断面積より小さくてよい。
(16)上記(10)から(15)のいずれかにおいて、前記第2試験片の一端部から前記接合部までの中間位置における前記長手方向に垂直な面での断面積は、前記第2試験片の他端部から前記接合部までの中間位置における前記長手方向に垂直な面での断面積より大きくてよい。
(17)上記(10)から(16)のいずれかにおいて、前記第1試験片の引張強度と前記第2試験片の引張強度とは異なってよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の強度試験方法は、複合的な負荷状態にある継手の強度を適切に評価できる強度試験方法及び強度試験片を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る強度試験方法のモデルを示す概略図である。
図2】第1実施形態に係る強度試験片を示す斜視図である。
図3】第1実施形態に係る強度試験片を示す説明図である。
図4】第2実施形態に係る強度試験片を示す斜視図である。
図5】第2実施形態に係る強度試験片を示す説明図である。
図6】第3実施形態に係る強度試験片を示す斜視図である。
図7】第3実施形態に係る強度試験片を示す説明図である。
図8】第3実施形態に係る強度試験方法のモデルを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施形態に共通する強度試験方法は、継手の強度を評価する強度試験方法である。継手は、2以上の部材同士の接合部であり、例えば、車両等の製品における構造部材同士の接合部である。接合部は、溶接部であってよく、スポット溶接部であってよい。強度試験方法は、製品における継手を模擬した強度試験片を使用して、引張試験機(不図示)により行われる。
【0011】
引張試験機は、一方に強度試験片の一端部を把持する一方のチャックと、他方に強度試験片の他端部を把持する他方のチャックを備えている。引張試験機は、一方のチャックに強度試験片の一端部を把持し、他方のチャックに強度試験片の他端部を把持した状態で、一方のチャックと他方のチャックとを、互いに離れる方向に変位させるものである。そして、引張試験機は、強度試験片を引っ張って強度試験片に引張力を作用させる。引張試験機は、通常、強度試験片が破損又は破壊に至るまで、チャックに作用する試験荷重を測定する。
なお、以下、特に説明のない限り、荷重(力)は、他端部Qから一端部P(図1及び図8において右側)に向く力を正(+)とし、一端部Pから他端部Q(図1及び図8において左側)に向く力を負(-)とする。
【0012】
(第1実施形態)
図1から図3を参照しながら第1実施形態に係る強度試験方法及び強度試験片について説明する。
図1は、第1実施形態に係る強度試験方法のモデルを示す概略図である。図2は、第1実施形態に係る強度試験片を示す斜視図である。図3は、第1実施形態に係る強度試験片を示す説明図である。なお、図3において、上段中央図は強度試験片の正面図であり、上段左図は上段中央図における右向き矢視部の断面図であり、上段右図は上段中央図における左向き矢視部の断面図であり、中段中央図は第1試験片の正面図であり、中段左図は中段中央図における右向き矢視部の断面図であり、中段右図は中段中央図における左向き矢視部の断面図であり、下段中央図は第2試験片の正面図であり、下段左図は下段中央図における右向き矢視部の断面図であり、下段右図は下段中央図における左向き矢視部の断面図である。
【0013】
図1にモデルとして示すように、第1実施形態に係る強度試験方法は、引張試験機の一方のチャックCaに強度試験片10の一端部Pを把持させ、他方のチャックCbに強度試験片10の他端部Qを把持させた状態で、一方のチャックCaと他方のチャックCbとを、互いに離れる方向(図1において左右に離れる方向)に変位させるものである。一方のチャックCaと他方のチャックCbとを、互いに離れる方向に変位させると、強度試験片10の一端部P及び他端部Qに、試験荷重Fが作用する。
【0014】
(強度試験片)
強度試験片10は、継手の強度を評価するためのものである。図2及び図3に示すように、強度試験片10は、棒状の第1試験片11と、第1試験片11に重なり合う棒状の第2試験片12と、第1試験片11と第2試験片12とを接合する接合部J10と、を備えている。なお、第1試験片11及び第2試験片12は、それぞれ、板状であってよい。
【0015】
第1試験片11は、模擬する継手と同じ材質とすることが好ましく、例えば、鋼製である。図3に示すように、第1試験片11は、一方側11aと、他方側11bと、一方側11aと他方側11bとの間にある第1被接合部J11とを備えている。
【0016】
第2試験片12は、模擬する継手と同じ材質とすることが好ましく、例えば、鋼製である。第2試験片12は、一方側12aと、他方側12bと、一方側12aと他方側12bとの間にある第2被接合部J12とを備えている。
【0017】
なお、第1試験片11と第2試験片12とは、模擬する継手に合わせて、異なる材質(引張強度等の機械的性質が異なる鋼製部材同士、鋼とアルミ合金等の素材の種類が異なる部材同士等)であってよい。
【0018】
第1試験片11及び第2試験片12は、強度試験片10の長手方向(試験荷重Fの方向)に亘って、互いに重なり合っている。第1試験片11及び第2試験片12は、長手方向における一端部Pを、引張試験機の一方のチャックCaで把持され、長手方向における他端部Qを、引張試験機の他方のチャックで把持される。なお、第1試験片11及び第2試験片12は、一端部P及び他端部Qにおいて、スポット溶接等の結合手段Cによって、互いに接合されている。
【0019】
接合部J10は、第1試験片11と第2試験片12とを、ボルト、リベット等によって機械的に接合した機械接合部であってよく、溶接によって接合した溶接部であってよく、スポット溶接によって接合したスポット溶接部であってもよい。接合部J10は、第1試験片11の第1被接合部J11と第2試験片12の第2被接合部J12とが接合された部分である。接合部J10を溶接部とすることにより、製品の継手が溶接部である場合の継手を模擬した強度試験ができる。また、接合部J10をスポット溶接部とすることにより、製品の継手がスポット溶接部である場合の継手を模擬した強度試験ができる。
【0020】
第1試験片11における長手方向の引張剛性は、接合部J10を長手方向の境界として、一方側11aの引張剛性K1aより他方側11bの引張剛性K1bが大きくなっている。
【0021】
具体的には、第1試験片11の一方側11aは、他方側11bより、長手方向に垂直な面での断面積が小さくなっている。
より具体的には、第1試験片11の一方側11aは、長手方向に亘って板厚t11aが等しい。同様に、第1試験片11の他方側11bは、長手方向に亘って板厚t11bが等しい。第1試験片11の一方側11aは、板幅B11aが、他方側11bの板幅B11bより小さくなっている。第1試験片11の一方側11aの板幅B11aは、長手方向に亘って等しくなっている。同様に、第1試験片11の他方側11bの板幅B11bは、長手方向に亘って等しくなっている。
【0022】
すなわち、第1試験片11の一方側11aにおける長手方向に垂直な面での断面積は、長手方向に亘って等しくなっている。同様に、第1試験片11の他方側11bにおける長手方向に垂直な面での断面積は、長手方向に亘って等しくなっている。
第1試験片11の一方側11aの引張剛性K1aは、接合部J10から一端部Pまでの長さに比例している。同様に、第1試験片11の他方側11bの引張剛性K1bは、接合部J10から他端部Qまでの長さに比例している。
よって、第1試験片11の一方側11aの引張剛性K1a及び他方側11bの引張剛性K1bは、長さを調整することで可変となっている。
【0023】
図3に示すように、第1試験片11の一端部Pから接合部J10までの中間位置における長手方向に垂直な面での断面積A11aは、第1試験片11の他端部Qから接合部J10までの中間位置における長手方向に垂直な面での断面積A11bより小さい。
【0024】
これに対して、第2試験片12の一端部Pから接合部J10までの中間位置における長手方向に垂直な面での断面積A12aは、第2試験片12の他端部Qから接合部J10までの中間位置における長手方向に垂直な面での断面積A12bより大きい。なお、強度試験片10を単独で見た際に、一端部P又は他端部Qの位置が不明な場合、「一端部P」に換えて、「強度試験片10の一方における最端部」とし、「他端部Q」に換えて、「強度試験片10の他方における最端部」として、上述の「中間位置」を規定してよい。なお、強度試験片10を単独で見た際に、接合部J10の範囲が不明な場合、「接合部J10」に換えて、「強度試験片10の長手方向中央」として、上述の「中間位置」を規定してよい。
【0025】
これにより、図1に示すように、試験荷重Fは、引張剛性K1a及び引張剛性K2aの比率に応じて、第1試験片11の一方側11aにおける引張力F1a(=F×K1a/(K1a+K2a))と第2試験片12の一方側12aにおける引張力F2a(=F×K2a/(K1a+K2a))とに配分される。同様に、試験荷重Fは、引張剛性K1b及び引張剛性K2bの比率に応じて、第1試験片11の他方側11bにおける引張力F1bと第2試験片12の他方側12bにおける引張力F2bとに配分される。よって、引張力F1a及び引張力F1bの合力は負の値(図1において左向きの力が正の値)になり、正の値(図1において右向きの力が正の値)となる引張力F2a及び引張力F2bの合力とは異ならせることができる。
【0026】
第1試験片11の一方側11aから接合部J10までの遷移部分においては、一端部Pから他端部Qに向かうにつれて、板幅B11aが大きくなっている。具体的には、該遷移部分においては、一端部Pから他端部Qに向かうにつれて、板幅B11aが連続的に大きくなっている。これにより、応力が集中しないようにでき、遷移部分を、接合部J10より先に破損しないようにできる。
【0027】
続いて、第2試験片12について説明する。第2試験片12における長手方向の引張剛性は、接合部J10を長手方向の境界として、一方側12aの引張剛性K2aより他方側12bの引張剛性K2bが小さくなっている。
【0028】
具体的には、第2試験片12の一方側12aは、他方側12bより、長手方向に垂直な面での断面積が大きくなっている。
【0029】
より具体的には、第2試験片12の一方側12aは、長手方向に亘って板厚t12aが等しい。同様に、第2試験片12の他方側12bは、長手方向に亘って板厚t12bが等しい。第2試験片12の一方側12aは、板幅B12aが、他方側12bの板幅B12bより大きくなっている。第2試験片12の一方側12aの板幅B12aは、長手方向に亘って等しくなっている。同様に、第2試験片12の他方側12bの板幅B12bは、長手方向に亘って等しくなっている。
【0030】
すなわち、第2試験片12の一方側12aにおける長手方向に垂直な面での断面積は、長手方向に亘って等しくなっている。同様に、第2試験片12の他方側12bにおける長手方向に垂直な面での断面積は、長手方向に亘って等しくなっている。
【0031】
第2試験片12の一方側12aの引張剛性K2aは、接合部J10から一端部Pまでの長さに比例している。同様に、第2試験片12の他方側12bの引張剛性K2bは、接合部J10から他端部Qまでの長さに比例している。
よって、第2試験片12の一方側12aの引張剛性K2a及び他方側12bの引張剛性K2bは、長さを調整することで可変となっている。
【0032】
第2試験片12の他方側12bから接合部J10までの遷移部分は、他端部Qから一端部Pに向かうにつれて、板幅B12bが大きくなっている。具体的には、該遷移部分においては、他端部Qから一端部Pに向かうにつれて、板幅B12bが連続的に大きくなっている。これにより、応力が集中しないようにでき、遷移部分を、接合部J10より先に破損しないようにできる。
【0033】
第1試験片11の引張強度と第2試験片12の引張強度とは異なってもよい。これにより、強度試験片10及び強度試験方法を、製品の継手に即して模擬したものにできる。
【0034】
第1試験片11及び第2試験片12は、長手方向に対称な形状(図3において左右対称形状)であってよい。これにより、同形状の第1試験片11及び第2試験片12を製作し、一方を長手方向に反転させて、長手方向に亘って両者を互いに重ね合わせるようにしてから強度試験片10を製作できるので、強度試験片10の製作コストを低減できる。
【0035】
このように、一実施形態に係る強度試験片10によれば、強度試験片10を構成する第1試験片11及び第2試験片12の形状を調整することで、接合部J10に、引張力とせん断力とを複合的に作用させた状態で、継手の強度試験を行うことができる。よって、複合的な負荷状態にある継手の強度を適切に評価できる。
【0036】
なお、第1試験片11及び第2試験片12の形状は、次のように調整してもよい。例えば、第1試験片11及び第2試験片12のそれぞれの板厚を異ならせて、第1試験片11及び第2試験片12のそれぞれの断面積を調整してよい。これにより、例えば、実際の車両の構造部材において継手を構成する板材の組み合わせを模擬することができ、より現実的な継手の評価が可能になる。
【0037】
(強度試験方法)
上述のような強度試験片10に対して、次のように、第1実施形態に係る強度試験方法を行う。以下、第1実施形態に係る強度試験方法を、強度試験片10への作用とともに説明する。
(1)まず、棒状の第1試験片11と、第1試験片11に重なり合う棒状の第2試験片12と、第1試験片11と第2試験片12とを接合する接合部J10と、を含む強度試験片10を準備する(準備工程)。
【0038】
(2)次に、第1試験片11及び第2試験片12の長手方向における一端部Pを引張試験機の一方のチャックCaで把持し、第1試験片11及び第2試験片12の長手方向における他端部Qを引張試験機の他方のチャックCbで把持する(把持工程)。
【0039】
(3)そして、第1試験片11及び第2試験片12を長手方向に引っ張る(引張工程)。
【0040】
この引張工程において、図1に示すように、第1試験片11を一方に引っ張る引張力F1aと、第1試験片11を他方側に引っ張る引張力F1bとの合力を、第2試験片12を一方に引っ張る引張力F2aと第2試験片12を他方側に引っ張る引張力F2bとの合力とは異なるようにする。これらの合力の関係は、(F1a+F1b)≠(F2a+F2b)で表すことができる。なお、第1試験片11を一方に引っ張る引張力F1aは、第1被接合部J11を第1試験片11の一方側11aが一端部Pに向けて引っ張る引張力である。第1試験片11を他方側に引っ張る引張力F1bは、第1被接合部J11を第1試験片11の他方側11bが他端部Qに向けて引っ張る引張力である。第2試験片12を一方側に引っ張る引張力F2aは、第2被接合部J12を第2試験片12の一方側12aが一端部Pに向けて引っ張る引張力である。第2試験片12を他方側に引っ張る引張力F2bは、第2被接合部J12を第2試験片12の他方側12bが他端部Qに向けて引っ張る引張力である。
【0041】
なお、ここで、第1試験片11を一方に引っ張る引張力F1aと、第1試験片11を他方側に引っ張る引張力F1bとの合力が、第2試験片12を一方に引っ張る引張力F2aと第2試験片12を他方側に引っ張る引張力F2bとの合力とは異なるとは、引張力を算出するためのひずみの測定誤差、強度試験片10の形状誤差等を考慮して、実質的には、1%以上異なることを意味することとする。
【0042】
例えば、引張力F1a、引張力F1b、引張力F2a及び引張力F2bが、それぞれ、50kN、-200kN、250kN、-100kNであった場合、引張力F1aと引張力F1bとの合力は、-150kNであり、引張力F2aと引張力F2bとの合力は、+150kNである。よって、引張力F1a及び引張力F1bの合力と、引張力F2a及び引張力F2bの合力とは異なる。すなわち、(F1a+F1b)≠(F2a+F2b)となる。
【0043】
このように、第1試験片11及び第2試験片12を長手方向に試験荷重Fで引っ張ると、第1試験片11の一方側11a及び他方側11b並びに第2試験片12の一方側12a及び他方側12bにおける各引張剛性K1a,K1b,K2a,K2bの大きさが異なるので、接合部J10の第1被接合部J11に作用する引張力の合力と第2被接合部J12に作用する引張力の合力には、アンバランスが生じる。
【0044】
すると、第1被接合部J11には、第1試験片11を一方に引っ張る引張力F1aと第1試験片11を他方に引っ張る引張力F1bとを比較してスカラー量の大きい引張力F1bに相当する引張力が作用する。
【0045】
また、第2被接合部J12には、第2試験片12を一方に引っ張る引張力F2aと第2試験片12を他方に引っ張る引張力F2bとを比較してスカラー量の大きい引張力F2aに相当する引張力が作用する。
【0046】
同時に、接合部J10には、すなわち、第1被接合部J11と第2被接合部J12との間には、第1試験片11を一方に引っ張る引張力F1aと、第1試験片11を他方に引っ張る引張力F1bとの合力(F1a+F1b)に相当するせん断力τが作用する。また、第2試験片12を一方に引っ張る引張力F2aと第2試験片12を他方に引っ張る引張力F2bとの合力(F2a+F2b)に相当するせん断力τが作用する。
このように、一実施形態に係る強度試験方法によれば、接合部J10に、引張力とせん断力とを複合的に作用させた状態で、継手の強度試験を行うことができる。よって、複合的な負荷状態にある継手の強度を適切に評価できる。
【0047】
なお、強度試験片10を構成する第1試験片11の一方側11a及び他方側11b並びに第2試験片12の一方側12a及び他方側12bのそれぞれの引張力F11a,F11b,F12a,F12bは、強度試験片10に試験荷重Fが作用していない状態でそれぞれの部材の材軸方向のひずみを測定するゲージを貼付しておき、強度試験片10に試験荷重Fを作用させた際に測定されたひずみに、ゲージを貼付した部分の材軸方向に垂直な面の断面積と、部材の弾性係数(ヤング率)とを掛け合わせることで、算出できる。
【0048】
特に、引張力F11aは、第1試験片11の一端部Pから接合部J10までの中間位置にゲージを貼付し、その中間位置でのひずみと、その中間位置における長手方向に垂直な面での断面積を用いて算出するとよい。引張力F11bは、第1試験片11の他端部Qから接合部J10までの中間位置にゲージを貼付し、その中間位置でのひずみと、その中間位置における長手方向に垂直な面での断面積を用いて算出するとよい。引張力F12aは、第2試験片12の一端部Pから接合部J10までの中間位置にゲージを貼付し、その中間位置でのひずみと、その中間位置における長手方向に垂直な面での断面積を用いて算出するとよい。引張力F12bは、第2試験片12の他端部Qから接合部J10までの中間位置にゲージを貼付し、その中間位置でのひずみと、その中間位置における長手方向に垂直な面での断面積を用いて算出するとよい。
【0049】
この他、強度試験片10を構成する第1試験片11の一方側11a及び他方側11b並びに第2試験片12の一方側12a及び他方側12bのそれぞれの単体に対して、材軸方向のひずみを測定するゲージを貼付しておき、それぞれの単体に引張力を作用させた際に測定されたひずみと引張力との関係式を求めておき、強度試験片10に試験荷重Fを作用させた際に測定されたひずみと、求めた関係式から、引張力F11a,F11b,F12a,F12bを算出してもよい。
【0050】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る強度試験方法について説明する。第2実施形態に係る強度試験方法は、第1実施形態に係る強度試験方法と比べて、主に、強度試験片の構造が異なっている。以下、第1実施形態と共通する部分については、説明が省略される場合がある。
図4は、第2実施形態に係る強度試験片を示す斜視図である。図5は、第2実施形態に係る強度試験片を示す説明図である。なお、図5において、上段中央図は強度試験片の正面図であり、上段左図は上段中央図における右向き矢視部の断面図であり、上段右図は上段中央図における左向き矢視部の断面図であり、中段中央図は第1試験片の正面図であり、中段左図は中段中央図における右向き矢視部の断面図であり、中段右図は中段中央図における左向き矢視部の断面図であり、下段中央図は第2試験片の正面図であり、下段左図は下段中央図における右向き矢視部の断面図であり、下段右図は下段中央図における左向き矢視部の断面図である。
【0051】
第2実施形態に係る強度試験片20は、継手の強度を評価するためのものである。図4及び図5に示すように、第2実施形態に係る強度試験片20は、棒状の第1試験片21と、第1試験片21に重なり合う棒状の第2試験片22と、第1試験片21と第2試験片22とを接合する接合部J20と、を備えている。なお、第1試験片21及び第2試験片22は、それぞれ、板状であってよい。
【0052】
ここで、接合部J20から長手方向の両側に等距離までの隣接範囲Eにおける第1試験片21及び第2試験片22の長手方向に垂直な面での断面積A21a、A21b、A22a、A22bは、他の部分における第1試験片21及び第2試験片22の長手方向に垂直な面での断面積より小さい。これにより、接合部J20から長手方向の両側に隣接する部分に応力を最も集中させることができるので、強度試験片20の他の部分が破損又は破壊するより先に、接合部J20を破損又は破壊させるまで引っ張ることができる。
【0053】
第1試験片21における長手方向の引張剛性は、接合部J20を長手方向の境界として、一方側21aの引張剛性K1aより他方側21bの引張剛性K1bが大きくなっている。
【0054】
具体的には、第1試験片21の一方側21aは、他方側21bより、長手方向に垂直な面での断面積が小さい長手方向の区間が長くなっている。
【0055】
より具体的には、第1試験片21の一方側21aは、長手方向に亘って板厚t21aが等しい。同様に、第1試験片21の他方側21bは、長手方向に亘って板厚t21bが等しい。第1試験片21の一方側21aの板幅は、一端部Pから他端部Qに向けて、比較的短い範囲で等しく、そこから段階的に小さくなり、第1被接合部J21の位置まで比較的長い範囲で等しい板幅B21aになっている。反対に、第1試験片21の他方側21bの板幅は、他端部Qから一端部Pに向けて、比較的長い範囲で等しく、そこから段階的に小さくなり、第1被接合部J21の位置まで比較的短い範囲で等しい板幅B21bになっている。
【0056】
第2試験片22における長手方向の引張剛性は、接合部J20を長手方向の境界として、一方側22aの引張剛性K2aより他方側22bの引張剛性K2bが小さくなっている。
【0057】
具体的には、第2試験片22の一方側22aは、他方側22bより、長手方向に垂直な面での断面積が小さい長手方向の区間が短くなっている。
【0058】
より具体的には、第2試験片22の一方側22aは、長手方向に亘って板厚t22aが等しい。同様に、第2試験片22の他方側22bは、長手方向に亘って板厚t22bが等しい。第2試験片22の一方側22aの板幅は、一端部Pから他端部Qに向けて、比較的長い範囲で等しく、そこから段階的に小さくなり、第2被接合部J22の位置まで比較的短い範囲で等しい板幅B22aになっている。反対に、第2試験片22の他方側22bの板幅は、他端部Qから一端部Pに向けて、比較的短い範囲で等しく、そこから段階的に小さくなり、第2被接合部J22の位置まで比較的長い範囲で等しい板幅B22bになっている。
【0059】
第1試験片21及び第2試験片22は、長手方向に対称な形状(図5において左右対称形状)であってよい。これにより、同形状の第1試験片21及び第2試験片22を製作し、一方を長手方向に反転させて、長手方向に亘って両者を互いに重ね合わせるようにしてから強度試験片20を製作できるので、強度試験片20の製作コストを低減できる。
【0060】
このように、一実施形態に係る強度試験片20によれば、強度試験片20を構成する第1試験片21及び第2試験片22の形状を調整することで、接合部J20に、引張力とせん断力とを複合的に作用させた状態で、継手の強度試験を行うことができる。さらに、接合部J20の隣接範囲Eを接合部J20に次ぐ最も脆弱な部分としたので、接合部J20より強度試験片20の他の部分が破損又は破壊しないようにできる。よって、複合的な負荷状態にある継手の強度を適切に評価できる。
【0061】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る強度試験方法について説明する。第3実施形態に係る強度試験方法は、第1実施形態及び第2実施形態に係る強度試験方法と比べて、主に、強度試験片の構造が異なっている。以下、第1実施形態及び第2実施形態と共通する部分については、説明が省略される場合がある。
図6は、第3実施形態に係る強度試験片を示す斜視図である。図7は、第3実施形態に係る強度試験片を示す説明図である。図8は、第3実施形態に係る強度試験方法のモデルを示す概略図である。なお、図7において、上段中央図は強度試験片の正面図であり、上段左図は上段中央図における右向き矢視部の断面図であり、上段右図は上段中央図における左向き矢視部の断面図であり、中段中央図は第1試験片の正面図であり、中段左図は中段中央図における右向き矢視部の断面図であり、中段右図は中段中央図における左向き矢視部の断面図であり、下段中央図は第2試験片の正面図であり、下段左図は下段中央図における右向き矢視部の断面図であり、下段右図は下段中央図における左向き矢視部の断面図である。
【0062】
第3実施形態に係る強度試験片30は、継手の強度を評価するためのものである。図6及び図7に示すように、第3実施形態に係る強度試験片30は、棒状の第1試験片31と、第1試験片31に重なり合う棒状の第2試験片32と、第1試験片31と第2試験片32とを接合する接合部J30と、を備えている。なお、第1試験片31及び第2試験片32は、それぞれ、板状であってよい。
【0063】
第3実施形態に係る強度試験片30は、さらに、接合部J30とは異なる位置での第1試験片31及び第2試験片32との間に、スペーサ33,34を備えている。
スペーサ33,34は、強度試験片30に試験荷重Fが作用した場合に、板厚方向に潰れて大きく変形しない程度の剛性を有している。スペーサ33,34は、例えば、鋼製であってよい。
【0064】
スペーサ33は、第1試験片31の一方側31aと第2試験片32の一方側32aとの間に挟まれるように配置された状態で、第1試験片31の一方側31a及び第2試験片32の一方側32aと一体となるように固定されている。
【0065】
同様に、スペーサ34は、第1試験片31の他方側31bと第2試験片32の他方側32bとの間に挟まれるように配置された状態で、第1試験片31の他方側31b及び第2試験片32の他方側32bと一体となるように固定されている。
【0066】
このように、接合部J30においては第1被接合部J31と第2被接合部J32とが直接的に接した状態で接合されているのに対して、接合部J30とは異なる位置での第1試験片31及び第2試験片32との間に、スペーサ33,34が配置される。すると、図6に示すように、接合部J30からスペーサ33及びスペーサ34までの領域にかけて、第1試験片31及び第2試験片32の一部が試験荷重Fの方向に対して傾斜する。すなわち、図8に示すように、F1a、F2a、F1b及びF2bのそれぞれの力の方向が試験荷重Fの方向に対して傾斜する。したがって、F1aとF1bとの合力(ベクトル)に剥離方向(試験荷重Fの方向と垂直な方向)の成分が生じ、同様に、F2aとF2bとの合力に剥離方向の成分が生じる。よって、接合部J30に、剥離方向の力である剥離力R(第1被接合部J31と第2被接合部J32とが離れる方向の力)を作用させることができる。また、模擬(再現)したい剥離力に合わせて、スペーサ33,34の板厚、スペーサ33,34における接合部J30側の位置を可変することで、剥離力を調整できる。なお、模擬(再現)したい剥離力に合わせて、スペーサ33又はスペーサ34のいずれかのみを備えるものとしてよい。
【0067】
このように、一実施形態に係る強度試験片30によれば、強度試験片30を構成する第1試験片31及び第2試験片32の間にスペーサ33,34を備えることで、接合部J30に、引張力及びせん断力に更に剥離力を加えて複合的に作用させた状態で、継手の強度試験を行うことができる。よって、複合的な負荷状態にある継手の強度を適切に評価できる。
【0068】
(その他の実施形態)
上述の実施形態においては、本発明の一態様に係る強度試験片10,20,30を説明したが、強度試験片は、これらに限られない。
例えば、第1実施形態に係る強度試験片10は、第3実施形態に係る強度試験片30のスペーサ33,34を備えてよい。
例えば、強度試験片は、第1試験片を一方に引っ張る引張力と、第1試験片を他方に引っ張る引張力との合力は、第2試験片を一方に引っ張る引張力と第2試験片を他方に引っ張る引張力との合力とが異なるものであればよい。言い換えると、強度試験片は、引張力F1a,F1b,F2a,F2bの関係が、(F1a+F1b)≠(F2a+F2b)を満たすものであればよい。すなわち、引張剛性K1a,K1b,K2a,K2bの関係が、{K1a/(K1a+K2a)+K1b/(K1b+K2b)}≠{K2a/(K1a+K2a)+K2b/(K1b+K2b)}を満たすものであればよい。
【0069】
(効果)
本発明の一態様によれば、継手の強度を評価する強度試験方法であって、棒状の第1試験片と、第1試験片に重なり合う棒状の第2試験片と、第1試験片と第2試験片とを接合する接合部と、を含む強度試験片を準備する準備工程と、第1試験片及び第2試験片の長手方向における一端部を引張試験機の一方のチャックで把持し、第1試験片及び第2試験片の長手方向における他端部を引張試験機の他方のチャックで把持する把持工程と、第1試験片及び第2試験片を長手方向に引っ張る引張工程と、を備え、引張工程において、第1試験片を一方に引っ張る引張力と、第1試験片を他方に引っ張る引張力との合力は、第2試験片を一方に引っ張る引張力と第2試験片を他方に引っ張る引張力との合力とは異なる。これにより、強度試験片を構成する第1試験片及び第2試験片のそれぞれの両端部を把持して引張試験機で引っ張ることで、接合部に、引張力及びせん断力を同時に作用させられる。よって、複合的な負荷状態にある継手の強度を適切に評価できる強度試験方法を提供できる。
本発明の一態様によれば、継手の強度を評価するための強度試験片であって、棒状の第1試験片と、第1試験片に重なり合う棒状の第2試験片と、第1試験片と第2試験片とを接合する接合部と、を備え、第1試験片及び第2試験片は、引張試験機の一方のチャックで把持される長手方向における一端部を有し、引張試験機の他方のチャックで把持される長手方向における他端部を有し、第1試験片を一方に引っ張る引張力と、第1試験片を他方に引っ張る引張力との合力は、第2試験片を一方に引っ張る引張力と第2試験片を他方に引っ張る引張力との合力とは異なる。これにより、強度試験片を構成する第1試験片及び第2試験片のそれぞれの両端部を把持して引張試験機で引っ張ることで、接合部に、引張力及びせん断力を同時に作用させられる。よって、複合的な負荷状態にある継手の強度を適切に評価できる強度試験片を提供できる。
【符号の説明】
【0070】
10,20,30 強度試験片
11,21,31 第1試験片
12,22,32 第2試験片
11a,12a,21a,22a,31a,32a 一方側
11b,12b,21b,22b,31b,32b 他方側
33,34 スペーサ
A11a,A11b,A12a,A12b 断面積
A21a,A21b,A22a,A22b 断面積
B11a,B11b,B12a,B12b 板幅
B21a,B21b,B22a,B22b 板幅
C 結合手段
Ca,Cb チャック
E 隣接範囲
F 試験荷重
F1a,F1b,F2a,F2b 引張力
J10,J20,J30 接合部
J11,J21,J31 第1被接合部
J12,J22,J32 第2被接合部
K1a,K1b,K2a,K2b 引張剛性
P 一端部
Q 他端部
R 剥離力
t11a,t11b,t21a,t21b,t22a,t22b 板厚
τ せん断力
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8