(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】ワーク搬送装置
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
B25J19/00 D
(21)【出願番号】P 2020201633
(22)【出願日】2020-12-04
【審査請求日】2021-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 祝仁
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-126807(JP,A)
【文献】特開昭60-099588(JP,A)
【文献】国際公開第2010/104157(WO,A1)
【文献】特開昭63-139683(JP,A)
【文献】特開2002-103256(JP,A)
【文献】特開2010-188475(JP,A)
【文献】特開昭60-052277(JP,A)
【文献】特開昭63-074582(JP,A)
【文献】特開2009-262304(JP,A)
【文献】特開2018-079542(JP,A)
【文献】特開2019-072804(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0013109(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/10-19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク(30)を把持するワーク搭載部(110)が設けられたバランサ(100)と、
前記バランサ(100)と協働して前記ワーク(30)を搬送するロボット(200)と、
前記ロボット(200)の動作を制御するロボット制御機構(210)と、
前記バランサ(100)の動作を制御すると共に、前記ロボット制御機構(210)を介して前記ロボット(200)の動作を制御する制御部(300)とを備え、
前記制御部(300)は、前記ロボット(200)が前記ワーク搭載部(110)を前記ワーク(30)の搬送開始位置に移動させたら、前記ワーク搭載部(110)に前記ワーク(30)を把持させた後、前記ロボット(200)に前記ワーク(30)を前記搬送開始位置の上方の負荷確認位置まで移動させ、当該負荷確認位置で前記バランサ(100)が有負荷状態であることを確認したら、前記ロボット(200)に前記ワーク(30)を搬送終了位置まで移動させるワーク搬送装置。
【請求項2】
請求項1のワーク搬送装置において、
前記制御部(300)は、前記負荷確認位置で前記バランサ(100)の有負荷状態が所定の時間以上継続したことを確認したら、前記ロボット(200)に前記ワーク(30)を前記搬送終了位置まで移動させるワーク搬送装置。
【請求項3】
請求項1又は2のワーク搬送装置において、
前記ワーク搭載部(110)が前記ワーク(30)を把持しているかどうかを検知するセンサー(112)をさらに備え、
前記制御部(300)は、前記ワーク搭載部(110)に前記ワーク(30)を把持させる指令を送信した後、前記ワーク搭載部(110)が前記ワーク(30)を把持していることを前記センサー(112)により検知したら、前記ロボット(200)に前記ワーク(30)を前記負荷確認位置まで移動させるワーク搬送装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つのワーク搬送装置において、
前記制御部(300)は、前記ロボット(200)に前記ワーク(30)を前記搬送終了位置まで移動させた後、前記バランサ(100)が無負荷状態であることを確認したら、前記ワーク搭載部(110)に前記ワーク(30)を開放させるワーク搬送装置。
【請求項5】
請求項4のワーク搬送装置において、
前記ロボット(200)は、前記搬送終了位置で前記バランサ(100)が有負荷状態であれば、前記ワーク(30)をさらに下方に移動させるワーク搬送装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1つのワーク搬送装置において、
前記ワーク(30)を撮影するカメラ(111)をさらに備え、
前記ロボット(200)は、前記カメラ(111)により撮影した情報に基づき、前記ワーク搭載部(110)を前記搬送開始位置に移動させるワーク搬送装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1つのワーク搬送装置において、
前記ロボット(200)が前記ワーク(30)を鉛直方向に昇降させるときの加減速値は、前記ロボット(200)が前記ワーク(30)を水平方向に移動させるときの加減速値よりも小さいワーク搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された搬送装置は、搬送対象物であるワークを保持するバランサと、バランサと協働してワークを搬送するロボットとを備える。バランサの先端には、ワークを把持するためのハンド装置が設けられる。ロボットの先端には接続機構が設けられ、当該接続機構と結合可能な被接続機構がバランサの先端に設けられる。ロボットの接続機構とバランサの被接続機構とを結合させてロボットを作動させると、バランサ先端のハンド装置はロボットに追従して移動し、これにより、ワークが搬送される。バランサによるワークの保持によって、ロボットは、ワークからの荷重をほぼ受けることなくワークを搬送することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来のワーク搬送装置では、ロボットと、バランサ及びハンド装置(ワーク搭載部)とが精密に協働しないと、ワークが落下してしまう恐れがある。また、ロボットと、バランサ及びワーク搭載部との連係動作がスムーズに行われないと、各ユニット又はそれらの連結部に負荷がかかり、故障してしまう恐れがある。このように、従来のワーク搬送装置には、搬送設備全体としての信頼性が低いという問題があった。
【0005】
本開示の目的は、バランサとロボットとを備えるワーク搬送装置の信頼性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、バランサ(100)とロボット(200)とロボット制御機構(210)と制御部(300)とを備えるワーク搬送装置(10)である。前記バランサ(100)には、ワーク(30)を把持するワーク搭載部(110)が設けられる。前記ロボット(200)は、前記バランサ(100)と協働して前記ワーク(30)を搬送する。前記ロボット制御機構(210)は、前記ロボット(200)の動作を制御する。前記制御部(300)は、前記バランサ(100)の動作を制御すると共に、前記ロボット制御機構(210)を介して前記ロボット(200)の動作を制御する。前記制御部(300)は、前記ロボット(200)が前記ワーク搭載部(110)を前記ワーク(30)の搬送開始位置に移動させたら、前記ワーク搭載部(110)に前記ワーク(30)を把持させた後、前記ロボット(200)に前記ワーク(30)を前記搬送開始位置の上方の負荷確認位置まで移動させ、当該負荷確認位置で前記バランサ(100)が有負荷状態であることを確認したら、前記ロボット(200)に前記ワーク(30)を搬送終了位置まで移動させる。
【0007】
第1の態様では、ロボット(200)がワーク(30)の搬送を開始する前に、バランサ(100)が有負荷状態であるかどうかを制御部(300)が確認する。このため、制御部(300)を介してロボット(200)とバランサ(100)とが、ワーク(30)の持ち上げ動作を円滑に連係して行うことができる。従って、ワーク搬送装置(10)の信頼性が向上する。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様において、前記制御部(300)は、前記負荷確認位置で前記バランサ(100)の有負荷状態が所定の時間以上継続したことを確認したら、前記ロボット(200)に前記ワーク(30)を前記搬送終了位置まで移動させる。
【0009】
第2の態様では、ワーク搭載部(110)がワーク(30)を把持しているかどうかをより確実に確認することができる。
【0010】
本開示の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記ワーク搭載部(110)が前記ワーク(30)を把持しているかどうかを検知するセンサー(112)をさらに備え、前記制御部(300)は、前記ワーク搭載部(110)に前記ワーク(30)を把持させる指令を送信した後、前記ワーク搭載部(110)が前記ワーク(30)を把持していることを前記センサー(112)により検知したら、前記ロボット(200)に前記ワーク(30)を前記負荷確認位置まで移動させる。
【0011】
第3の態様では、ロボット(200)がワーク(30)を負荷確認位置まで移動させる前に、ワーク搭載部(110)がワーク(30)を把持しているかどうかをセンサー(112)により確認することができる。
【0012】
本開示の第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、前記制御部(300)は、前記ロボット(200)に前記ワーク(30)を前記搬送終了位置まで移動させた後、前記バランサ(100)が無負荷状態であることを確認したら、前記ワーク搭載部(110)に前記ワーク(30)を開放させる。
【0013】
第4の態様では、ロボット(200)がワーク(30)の搬送を終了するときに、バランサ(100)が無負荷状態であるかどうかを制御部(300)が確認する。このため、ワーク(30)が着座しないままワーク搭載部(110)がワーク(30)を開放しワーク(30)が落下してしまう事態を回避できる。従って、ワーク搬送装置(10)の信頼性がより向上する。
【0014】
本開示の第5の態様は、第4の態様において、前記ロボット(200)は、前記搬送終了位置で前記バランサ(100)が有負荷状態であれば、前記ワーク(30)をさらに下方に移動させる。
【0015】
第5の態様では、ワーク搭載部(110)がワーク(30)を開放する前に、ワーク(30)をより確実に着座させることができる。
【0016】
本開示の第6の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、前記ワーク(30)を撮影するカメラ(111)をさらに備え、前記ロボット(200)は、前記カメラ(111)により撮影した情報に基づき、前記ワーク搭載部(110)を前記搬送開始位置に移動させる。
【0017】
第6の態様では、カメラ(111)によってワーク(30)の位置を正確に検知してから、ロボット(200)によりワーク搭載部(110)をワーク(30)の搬送開始位置に移動させることができる。従って、ワーク搭載部(110)がワーク(30)をより確実に把持することができる。
【0018】
本開示の第7の態様は、第1~第6のいずれか1つの態様において、前記ロボット(200)が前記ワーク(30)を鉛直方向に昇降させるときの加減速値は、前記ロボット(200)が前記ワーク(30)を水平方向に移動させるときの加減速値よりも小さい。
【0019】
第7の態様では、ワーク(30)の昇降時にはバランサ(100)とロボット(200)との間の反応速度のズレが連係動作に影響しやすいところ、ワーク(30)の昇降時の加減速値を小さくするため、ワーク(30)の昇降を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施形態のワーク搬送装置の側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態のワーク搬送装置におけるワーク搭載部及びその周辺を拡大して示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態のワーク搬送装置においてロボットの接続機構とバランサの被接続機構とが結合する様子を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態のワーク搬送装置においてロボットの接続機構とバランサの被接続機構とが結合する様子を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、実施形態のワーク搬送装置の動作フローを示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態のワーク搬送装置の動作フローを示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態のワーク搬送装置の動作フローを示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態のワーク搬送装置の動作フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本開示の実施形態について図面を参照しながら説明する。尚、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0022】
〈ワーク搬送装置〉
図1に示すように、本実施形態のワーク搬送装置(10)は、主に、バランサ(100)と、ロボット(200)と、ロボット(200)の動作を制御するロボット制御機構(210)と、制御部(300)とを備える。
【0023】
バランサ(100)の先端には、ワーク搭載部(110)が設けられる。ワーク搭載部(110)は、搬送対象物となる例えば熱交換器等のワーク(30)を把持する。ワーク搭載部(110)は、例えば、エアー機器により駆動するハンド装置である。
【0024】
ロボット(200)は、バランサ(100)と協働してワーク(30)の搬送を行う。ロボット(200)の動作は、ロボット制御機構(210)によって制御される。ロボット(200)の先端には接続機構(215)が設けられ、当該接続機構(215)と結合可能な被接続機構(109)がバランサ(100)の先端に設けられる。接続機構(215)は、例えばエアチャックである。被接続機構(109)は、例えば、ワーク搭載部(110)上に配置される。ロボット(200)の接続機構(215)とバランサ(100)の被接続機構(109)とを結合させてロボット(200)を作動させると、バランサ(100)先端のワーク搭載部(110)はロボット(200)に追従して移動する。これにより、ワーク搭載部(110)に把持させたワーク(30)の搬送が可能となる。また、バランサ(100)がワーク(30)の荷重を支えることによって、ロボット(200)は、ワーク(30)からの荷重をほぼ受けることなくワーク(30)を搬送することができる。
【0025】
制御部(300)は、バランサ(100)とロボット(200)との連携動作を制御する。制御部(300)は、ロボット制御機構(210)を介してロボット(200)の動作を制御する。制御部(300)は、例えばPLC(プログラマブルロジックコントローラ)である。本実施形態では、様々な種類のワーク(30)の搬送を可能とするために、制御部(300)は、バランサ(100)やロボット(200)を個別に制御する制御機構とは別体に設けられる。
【0026】
〈バランサ〉
バランサ(100)は、単体では動作せず、ロボット(200)の動作に追従して動く。バランサ(100)は、ワーク(30)の荷重と釣り合う力でワーク(30)を持ち上げる。重さが異なる複数種類のワーク(30)に対し、バランサ(100)のロードセル(荷重測定センサー)が各ワーク(30)の重量を検知し、例えばエアシリンダの空気圧を調整する等のバランス調整によって、ワーク(30)の荷重と釣り合う力でワーク(30)を持ち上げることができる。バランサ(100)は、例えば、複数のアーム(103,105,107)を接続して構成される。
【0027】
図1に示す構成例では、バランサ(100)は、主として、基台(101)と、本体部(102)と、第1アーム(103)と、第2アーム(105)と、第3アーム(107)とを備える。
【0028】
基台(101)は、床(20)に固定された柱状台である。本体部(102)は、基台(101)の上面に設けられる。本体部(102)は、鉛直軸周りに回転可能である。本体部(102)には、アーム(103,105,107)の駆動機構、バランサ(100)を制御する制御機構、ワーク(30)の荷重を支えるエアシリンダなどが収納される。第1アーム(103)の一端は、本体部(102)に支持される。第1アーム(103)の他端には、第1連結部(104)を介して第2アーム(105)の一端が取り付けられる。第1アーム(103)及び第2アーム(105)は、本体部(102)周りに鉛直面内で回転可能である。第2アーム(105)の他端には、第2連結部(106)を介して第3アーム(107)の一端が取り付けられる。第3アーム(107)は、鉛直方向に沿って延びると共に、鉛直軸周りに回転可能である。
【0029】
第3アーム(107)の他端には中継部(108)が設けられる。中継部(108)の下面には被接続機構(109)を挟んでワーク搭載部(110)が取り付けられる。被接続機構(109)は、ロボット(200)の接続機構(215)と結合可能に構成される。ワーク搭載部(110)の動作は、制御部(300)により制御される。
【0030】
ワーク搭載部(110)に把持されたワーク(30)をロボット(200)が移動させると、アーム(103,105,107)は、ワーク(30)の重量をバランスするために、ワーク(30)の高さや位置に合わせて駆動する。
【0031】
ワーク搭載部(110)には、カメラ(111)が取り付けられる。カメラ(111)は、ワーク(30)の位置を検出するために、ワーク(30)の撮影を行う。ワーク(30)の位置を検出することによって、ワーク(30)の位置のバラツキをロボット(200)に補正させることができる。ロボット(200)は、カメラ(111)により撮影した情報に基づき、例えば、ワーク搭載部(110)をワーク(30)の搬送開始位置に正確に移動させることができる。カメラ(111)の動作は、制御部(300)により制御される。
【0032】
バランサ(100)は、オートバランス中である(ワーク(30)の荷重に応じたバランス機能が正常動作している)ことを示す正常信号、ワーク(30)の荷重がかかっていないことを示す無負荷信号、バランサ(100)の異常を示す異常信号などを制御部(300)に常時出力可能に構成される。また、バランサ(100)は、制御部(300)又はオペレータ等から、バランサ(100)のチューニング開始の指示を常時入力可能に構成される。
【0033】
〈ロボット〉
ロボット(200)は、例えば6軸のモータを組み合わせたアクチュエータである。バランサ(100)は、従来、人が重量物搬送を行う際の助力装置として使用、操作されてきたが、本実施形態ではバランサ(100)をロボット(200)が人に代わって操作する。バランサ(100)とロボット(200)とを組合せてワーク搬送装置(10)を構成することにより、例えば、重量10kgのワーク搭載部(110)と重量90kgのワーク(30)とを合わせた合計重量100kgの搬送物を、最大可搬重量50kgのロボット(200)によって搬送できる。これにより、ワーク搬送装置(10)全体の小型化を図ることができる。
【0034】
図1に示す構成例では、床(20)に固定された支持部材(201)上にロボット(200)は載置される。ロボット(200)は、主として、基台(202)と、ヘッド(203)と、下部アーム(205)と、上部アーム(207)と、フランジ(209)と、ロボット制御機構(210)とを備える。
【0035】
基台(202)は、支持部材(201)に固定された板状台である。ヘッド(203)は、基台(202)の上面に設けられる。ヘッド(203)は、鉛直軸周りに回転可能である。下部アーム(205)の一端は、下部連結部(204)を介してヘッド(203)に支持される。下部アーム(205)は、下部連結部(204)周りに鉛直面内で回転可能である。下部アーム(205)の他端には、上部連結部(206)を介して上部アーム(207)の一端が取り付けられる。上部アーム(207)は、上部連結部(206)周りに鉛直面内で回転可能である。また、上部アーム(207)は、アーム長軸周りに回転可能である。上部アーム(207)の他端には、先端連結部(208)を介してフランジ(209)の一端が取り付けられる。フランジ(209)は、先端連結部(208)周りに鉛直面内で回転可能である。また、フランジ(209)は、フランジ軸周りに回転可能である。
【0036】
ロボット制御機構(210)は、例えば、ロボット(200)本体とは別体に設けられたロボット制御盤(211)に収納される。ロボット制御盤(211)は、床(20)の上に配置される。ロボット制御機構(210)は、マイクロコンピュータ等のコンピュータを備えており、当該コンピュータがプログラムを実行することによって、ロボット制御機構(210)の各機能が実施される。コンピュータは、プログラムに従って動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わないが、例えば半導体集積回路(IC)又はLSI(large scale integration)を含む一つ又は複数の電子回路により構成されていてもよい。複数の電子回路は、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは一つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0037】
ロボット制御機構(210)は、例えば、ワーク(30)の搬送終了位置でバランサ(100)が有負荷状態であれば、ロボット(200)にワーク(30)をさらに下方に移動させてもよい。また、ロボット制御機構(210)は、ロボット(200)がワーク(30)を鉛直方向に昇降させるときの加減速値を、ロボット(200)がワーク(30)を水平方向に移動させるときの加減速値よりも小さく設定してもよい。尚、本開示において、「水平方向の移動」には、水平方向の速度成分に加え鉛直方向の速度成分を持つ「斜め方向の移動」を含めるものとする。
【0038】
〈バランサとロボットとの接続〉
図1に示すように、ロボット(200)の先端(フランジ(209)の先端)には、例えばエアチャック等の接続機構(215)が設けられる。接続機構(215)は、バランサ(100)先端の被接続機構(109)と結合可能である。被接続機構(109)は、例えば連結プレートである。ロボット(200)は、接続機構(215)を用いてバランサ(100)(ワーク搭載部(110))との連結/開放を行う。
【0039】
図2に示すように、被接続機構(109)は、例えば、ワーク搭載部(110)上に配置される。ワーク搭載部(110)には、ワーク(30)の位置を検出するためのカメラ(111)を取り付けてもよい。カメラ(111)は、制御部(300)により動作制御される。ワーク搭載部(110)上には、ワーク搭載部(110)がワーク(30)を把持しているかどうかを検知するセンサー(112)をさらに設けてもよい。センサー(112)からの出力信号は、制御部(300)に送信される。
【0040】
図3及び
図4に示すように、被接続機構(109)には、例えば連結穴(109a)が設けられる。接続機構(215)の先端には、例えばピン構造を持つ連結金具(215a)が設けられる。連結金具(215a)は、例えばエアー機器によってピン軸方向に前後駆動される。連結金具(215a)を連結穴(109a)に挿入することにより、バランサ(100)先端の被接続機構(109)と、ロボット(200)先端の接続機構(215)とが互いに結合される。
【0041】
〈制御部〉
制御部(300)は、搬送対象のワーク(30)の機種切替指令や移動指令などをロボット制御機構(210)を介してロボット(200)に送信する他、ワーク搭載部(110)等のアクチュエータの制御、バランサ(100)等との信号のやり取りなどを行う。バランサ(100)とロボット(200)とは、制御部(300)を介して連携動作を行う。例えば、バランサ(100)が正常に動作しているという信号がバランサ(100)から制御部(300)に送信されると、制御部(300)は、ロボット(200)(ロボット制御機構(210))に対して動作指令を送信する。制御部(300)によるロボット(200)の制御は、ロボット制御機構(210)を介して行われる。
【0042】
制御部(300)は、例えばPLCであってもよい。制御部(300)は、例えば、バランサ(100)やロボット(200)を個別に制御する制御機構とは別体に設けられてもよい。制御部(300)は、
図1に示すように、例えば、床(20)に配置されたシステム制御盤(310)に収納されてもよい。
【0043】
制御部(300)は、マイクロコンピュータ等のコンピュータを備えており、当該コンピュータがプログラムを実行することによって、制御部(300)の各機能が実施される。コンピュータは、プログラムに従って動作するプロセッサを主なハードウェア構成として備える。プロセッサは、プログラムを実行することによって機能を実現することができれば、その種類は問わないが、例えばIC又はLSIを含む一つ又は複数の電子回路により構成されていてもよい。複数の電子回路は、一つのチップに集積されてもよいし、複数のチップに設けられてもよい。複数のチップは一つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に備えられていてもよい。プログラムは、コンピュータが読み取り可能なROM、光ディスク、ハードディスクドライブなどの非一時的記録媒体に記録される。プログラムは、記録媒体に予め格納されていてもよいし、インターネット等を含む広域通信網を介して記録媒体に供給されてもよい。
【0044】
制御部(300)が記憶部を備える場合、当該記憶部しては、コンピュータが読み取り及び書き込みができる記録媒体、例えばRAM等を用いてもよい。制御部(300)が入力部を備える場合、当該入力部としては、例えばキーボード、マウス、タッチパッド等を用いてもよい。制御部(300)が表示部を備える場合、当該表示部としては、例えばCRTや液晶ディスプレイ等の画像表示可能なモニタを用いてもよい。
【0045】
制御部(300)は、ロボット(200)がワーク搭載部(110)をワーク(30)の搬送開始位置に移動させたら、ワーク搭載部(110)にワーク(30)を把持させた後、ロボット(200)にワーク(30)を搬送開始位置の上方の負荷確認位置まで移動させ、当該負荷確認位置でバランサ(100)が有負荷状態であることを確認したら、ロボット(200)にワーク(30)を搬送終了位置まで移動させてもよい。
【0046】
制御部(300)は、負荷確認位置でバランサ(100)の有負荷状態が所定の時間(例えば0.5秒)以上継続したことを確認したら、ロボット(200)にワーク(30)を搬送終了位置まで移動させてもよい。
【0047】
制御部(300)は、ワーク搭載部(110)にワーク(30)を把持させる指令を送信した後、ワーク搭載部(110)がワーク(30)を把持していることをセンサー(112)により検知したら、ロボット(200)にワーク(30)を負荷確認位置まで移動させてもよい。
【0048】
制御部(300)は、ロボット(200)にワーク(30)を搬送終了位置まで移動させた後、バランサ(100)が無負荷状態であることを確認したら、ワーク搭載部(110)にワーク(30)を開放させてもよい。
【0049】
〈ワーク搬送フロー〉
以下、
図5~
図8を参照しながら、本実施形態のワーク搬送装置(10)によるワーク(30)の搬送フローの一例について説明する。尚、
図5~
図8において、「ロボット」を「RB」、出力を「OUT」、入力を「IN」と表す場合がある。
【0050】
まず、ステップS101において、バランサ(100)は、異常が無いかどうか自己診断を行う。異常があれば、ステップS102において、バランサ(100)は稼働停止し、ステップS103において、バランサ(100)から制御部(300)に異常信号が出力される。当該異常信号は、ステップS201において、制御部(300)に入力される。尚、ステップS101のバランサ(100)の異常診断は常時実施される。
【0051】
ステップS101でバランサ(100)に異常が無いと判断された場合、ステップS104において、バランサ(100)は、キャリブレーションを開始する。次に、ステップS105において、バランサ(100)は、キャリブレーションが正常に行われたかどうか自己診断を行う。キャリブレーションに異常があれば、ステップS106において、バランサ(100)は稼働停止し、ステップS107において、バランサ(100)から制御部(300)に異常信号が出力される。当該異常信号は、ステップS201において、制御部(300)に入力される。
【0052】
ステップS107でバランサ(100)のキャリブレーションが正常に行われたと判断された場合、ステップS108において、バランサ(100)は、外部キャリブレーション信号がOFFになっているか確認する。外部キャリブレーション信号がOFFになっていなければ、ステップS104に戻る。尚、ステップS108の外部キャリブレーション信号のON/OFF確認は常時実施される。
【0053】
ステップS108で外部キャリブレーション信号がOFFになっていると確認された場合、ステップS109において、バランサ(100)は、オートバランス中であることを確認し、ステップS110において、バランサ(100)から制御部(300)にオートバランス中信号が出力される。当該信号は、ステップS202において、制御部(300)に入力され、ステップS203において、制御部(300)は、バランサ(100)がオートバランス中であることを確認する。次に、ステップS204において、制御部(300)からロボット制御機構(210)にオートバランス中信号が出力され、当該信号は、ステップS301において、ロボット制御機構(210)に入力される。尚、ステップS110のオートバランス中信号の出力は、バランサ(100)がオートバランス中である場合に常時実施される。
【0054】
次に、ステップS111において、バランサ(100)は、無負荷状態(ワーク(30)の荷重がかかっていない状態)であることを示すステータスがONになっているか確認する。ONになっていなければ、バランサ(100)は、ステップS111を繰り返し行う。
【0055】
ステップS111で無負荷状態を示すステータスがONになっていると確認された場合、ステップS112において、バランサ(100)は、無負荷状態であることを確認した後、ステップS113において、バランサ(100)から制御部(300)に無負荷信号が出力される。当該無負荷信号は、ステップS205において、制御部(300)に入力され、ステップS206において、制御部(300)は、バランサ(100)が無負荷状態あることを確認する。次に、ステップS207において、制御部(300)からロボット制御機構(210)に無負荷信号が出力され、当該無負荷信号は、ステップS302において、ロボット制御機構(210)に入力される。尚、ステップS113の無負荷信号の出力は、バランサ(100)が無負荷状態である場合に常時実施される。
【0056】
次に、ステップS114において、バランサ(100)は、ステップS101に戻る。すなわち、バランサ(100)は、電源を切らない限り、ステップS101~S113を継続的に繰り返し実施する。
【0057】
一方、制御部(300)においては、前述のステップS201~S207に続いて、ステップS208において、バランサ(100)から異常信号が入力されていたかどうかを確認する。異常信号が入力されていれば、ステップS2081において、制御部(300)は、ワーク搬送装置(10)のシステムを稼働停止させ、ステップS2082において、制御部(300)は、システム異常信号を外部に出力する。
【0058】
ステップS208でバランサ(100)から異常信号が入力されていないことが確認された場合、ステップS209において、制御部(300)は、バランサ(100)の異常無しを確認する。
【0059】
次に、ステップS210において、制御部(300)に設けられたオートチューニングボタンが操作者によって押下されたら、ステップS211において、制御部(300)からバランサ(100)に外部オートチューニング信号が出力される。当該信号は、ステップS115において、バランサ(100)に入力される。外部オートチューニング信号が入力されると、バランサ(100)は、外部キャリブレーション信号をONにし、ステップS108を経てステップS104に戻る。尚、ステップS210で手動によりオートチューニングボタンを押下することに代えて、制御部(300)が、予め定めたルールに従い、ステップS211で外部オートチューニング信号を出力してもよい。
【0060】
次に、ステップS212において、制御部(300)に設けられた自動起動ボタンが操作者によって押下されたら、ステップS213において、制御部(300)は、自動運転開始のトリガーがかかったことを確認する。
【0061】
一方、ロボット(200)においては、前述のステップS301~S302に続いて、ステップS303において、ロボット制御機構(210)がロボット(200)に異常が無いかどうか自己診断を行う。異常があれば、ステップS304において、ロボット(200)は稼働停止し、ステップS305において、ロボット制御機構(210)から制御部(300)に異常信号が出力される。
【0062】
ステップS213で自動運転開始のトリガーを確認した状態で、ロボット制御機構(210)からの異常信号が制御部(300)に入力されると、ステップS214において、制御部(300)は、ワーク搬送装置(10)のシステムは正常ではないと判断し、ステップS215において、制御部(300)は、ワーク搬送装置(10)全体を稼働停止させる。
【0063】
ステップS214でシステムが正常であると判断した場合、ステップS216において、制御部(300)は、自動運転を開始することを確認する。
【0064】
一方、ロボット(200)において、ステップS303で異常が無いと判断された場合、ステップS306において、ロボット(200)は、バランサ(100)に設けたワーク搭載部(110)を所定のスタート位置に移動させる。前述のように、ロボット(200)の接続機構(215)は、ワーク搭載部(110)上の被接続機構(109)と結合され、これにより、ロボット(200)は、ワーク搭載部(110)を所望の位置に移動させることができる。
【0065】
次に、ステップS307において、ロボット制御機構(210)から制御部(300)にスタート位置情報が出力され、当該スタート位置情報は、ステップS217において、制御部(300)に入力され、ステップS218において、制御部(300)は、スタート位置を確認する。
【0066】
次に、ステップS219において、制御部(300)からロボット制御機構(210)にワーク(30)の機種の切替指令が出力され、当該指令は、ステップS308において、ロボット制御機構(210)に入力される。機種切替指令が入力されると、ステップS309において、ロボット制御機構(210)は、ロボット(200)の各種設定を新たな機種に対応して変更し、当該設定変更が完了したら、ステップS310において、ロボット制御機構(210)から制御部(300)に機種切替完了信号が出力される。当該信号は、ステップS220において、制御部(300)に入力され、ステップS221において、制御部(300)は、ロボット制御機構(210)での機種切替が完了したことを確認する。
【0067】
次に、ステップS222において、制御部(300)からロボット制御機構(210)に、ワーク(30)の位置を検出するカメラ(111)の位置の移動指令が出力され、当該指令は、ステップS311において、ロボット制御機構(210)に入力される。カメラ位置移動指令が入力されると、ステップS312において、ロボット(200)は、カメラ(111)が所定の位置に移動するように、カメラ(111)が取り付けられたワーク搭載部(110)を移動させる。当該移動が完了したら、ステップS313において、ロボット制御機構(210)から制御部(300)にカメラ位置移動完了信号が出力される。当該信号は、ステップS223において、制御部(300)に入力され、ステップS224において、制御部(300)は、ロボット(200)によるカメラ(111)の位置移動が完了したことを確認する。
【0068】
次に、ステップS225において、制御部(300)は、カメラ(111)にワーク(30)を撮影させる。次に、ステップS226において、制御部(300)は、カメラ(111)の撮像データに基づいて、ロボット制御機構(210)で処理可能な補正撮像データを算出し、算出した補正撮像データは、ステップS227において、制御部(300)からロボット制御機構(210)に出力される。
【0069】
次に、ステップS314において、カメラ(111)の補正撮像データがロボット制御機構(210)に入力されると、ステップS315において、当該補正撮像データに基づいて、ロボット制御機構(210)は、ワーク(30)の位置ズレに対する補正値を算出する。当該補正値の算出が完了すると、ステップS316において、ロボット制御機構(210)から制御部(300)に補正値演算完了信号が出力される。当該信号は、ステップS228において、制御部(300)に入力され、ステップS229において、制御部(300)は、ロボット制御機構(210)での補正値演算が完了したことを確認する。
【0070】
次に、ステップS230において、制御部(300)からロボット制御機構(210)に、ワーク(30)の取出移動指令が出力され、当該指令は、ステップS317において、ロボット制御機構(210)に入力される。ワーク取出移動指令が入力されると、ステップS318において、ロボット(200)は、ステップS315で算出した補正値に基づいて、ワーク搭載部(110)をワーク(30)の取り出し位置(搬送開始位置)に移動させる。当該移動が完了したら、ステップS319において、ロボット制御機構(210)から制御部(300)に取り出し位置移動完了信号が出力される。当該信号は、ステップS231において、制御部(300)に入力され、ステップS232において、制御部(300)は、ロボット(200)による取り出し位置移動が完了したことを確認する。
【0071】
次に、ステップS233において、制御部(300)は、ワーク(30)を把持させる指令をワーク搭載部(110)に送信し、ステップS234において、制御部(300)は、ワーク搭載部(110)がワーク(30)を把持する動作を行っていることを確認する。例えば、ワーク搭載部(110)がハンド装置であれば、制御部(300)は、ワークハンドを閉じさせる指令を送信した後、実際にワークハンドが閉じていることを確認する。
【0072】
次に、ステップS235において、制御部(300)は、ワーク(30)の把持を検知するセンサー(112)から出力されるワーク有無信号がON(ワーク有)になっているかを確認する。ワーク有無信号がONになっていなければ、ステップS236において、制御部(300)は、ワーク(30)の検出異常と判断し、ワーク搬送装置(10)を稼働停止させる。
【0073】
ステップS235でワーク有無信号がONになっていれば、ステップS237において、制御部(300)からロボット制御機構(210)に、ワーク(30)の持上移動指令が出力され、当該指令は、ステップS320において、ロボット制御機構(210)に入力される。持上移動指令が入力されると、ステップS321において、ロボット(200)は、ワーク(30)を前述の取り出し位置(搬送開始位置)から、その上方の持上位置(負荷確認位置)まで移動させる。当該移動が完了すると、ステップS322において、ロボット制御機構(210)から制御部(300)に持上移動完了信号が出力され、当該信号は、ステップS238において、制御部(300)に入力される。尚、取り出し位置に対する持上位置の高さは、バランサ(100)にワーク(30)からの負荷が生じる高さであれば、特に制限されないが、安全性のためには、持ち上げ位置は、なるべく低いことが好ましい。例えば、持ち上げ位置においてワーク(30)が部分的に着座していてもよい。
【0074】
次に、ステップS239において、制御部(300)は、前述の負荷確認位置でバランサ(100)が有負荷状態(バランサ負荷ON)であるかどうかを確認する。具体的には、制御部(300)は、無負荷信号(ステップS302)の入力が所定の時間(例えば0.5秒間)以上に亘って停止しているかどうかを確認する。バランサ(100)が有負荷状態になっていなければ、ステップS240において、制御部(300)は、ワーク(30)の持ち上げ異常と判断し、ワーク搬送装置(10)を稼働停止させる。
【0075】
ステップS239でバランサ(100)が有負荷状態であることが確認できた場合、ステップS241において、制御部(300)は、ワーク(30)の持ち上げが正常に完了したと判断する。
【0076】
次に、ステップS242において、制御部(300)からロボット制御機構(210)、ワーク(30)の搭載位置移動指令が出力され、当該指令は、ステップS323において、ロボット制御機構(210)に入力される。搭載位置移動指令が入力されると、ステップS324において、ロボット(200)は、ワーク(30)を前述の持上位置(負荷確認位置)から所定の搭載位置(搬送終了位置)まで移動させる。このとき、ロボット(200)は、ワーク(30)を持上位置から、搭載位置の上方まで水平移動させた後、ワーク(30)を垂直下方に搭載位置まで下降させてもよい。また、ワーク(30)を水平方向に移動させるときの加減速値と比べて、ワーク(30)を下降させるときの加減速値や、ステップS321でワーク(30)を取り出し位置から持上位置まで上昇させるときの加減速値を小さくしてもよい。
【0077】
次に、ステップS325において、ロボット制御機構(210)は、バランサ(100)が無負荷状態であるかどうかを確認する。具体的には、ロボット制御機構(210)は、無負荷信号(ステップS302)が入力されている(ONになっている)かどうかを確認する。ワーク(30)が所定の搭載位置(搬送終了位置)に正常に着座していれば、バランサ(100)は無負荷状態となる。
【0078】
ステップS325でバランサ(100)が無負荷状態でないことが確認された場合、ステップS326において、ロボット(200)は、ワーク(30)をさらに下方に移動させる。続いて、ステップS327において、ロボット制御機構(210)は、バランサ(100)が無負荷状態であるかどうかを再確認し、バランサ(100)が無負荷状態でなければ、ステップS328において、ロボット制御機構(210)は、ワーク(30)の搭載異常と判断して、ロボット(200)を稼働停止させる。尚、ステップS326でのワーク(30)の再下降距離は、安全性を考慮して、なるべく小さくすることが好ましい。また、ステップS326及びステップS327の動作を複数回繰り返し行ってもよい。
【0079】
ステップS325又はS327でバランサ(100)が無負荷状態であることが確認された場合、ステップS329において、ロボット制御機構(210)から制御部(300)に搭載位置移動完了信号が出力され、当該信号は、ステップS243において、制御部(300)に入力される。
【0080】
次に、ステップS244において、制御部(300)は、バランサ(100)が無負荷状態であるかどうかを確認する。具体的には、制御部(300)は、無負荷信号(ステップS302)が所定の時間(例えば0.5秒間)以上に亘って入力されている(ONになっている)かどうかを確認する。バランサ(100)が無負荷状態になっていなければ、ステップS245において、制御部(300)は、ワーク(30)の搭載異常と判断し、ワーク搬送装置(10)を稼働停止させる。
【0081】
ステップS244でバランサ(100)が無負荷状態であることが確認された場合、ステップS246において、制御部(300)は、ワーク(30)を開放させる指令をワーク搭載部(110)に送信する。続いて、ステップS247において、制御部(300)は、ワーク搭載部(110)がワーク(30)を開放する動作を行っていることを確認する。例えば、ワーク搭載部(110)がハンド装置であれば、制御部(300)は、ワークハンドを開かせる指令を送信した後、実際にワークハンドが開いていることを確認する。
【0082】
尚、ステップS243で搭載位置移動完了信号が制御部(300)に入力されている場合は、ステップS325又はS327でバランサ(100)が無負荷状態であることが既に確認されているので、ステップS244を省略して、ステップS243からステップS246に進んでもよい。
【0083】
次に、ステップS248において、制御部(300)は、ワーク(30)の搭載(搬送)が正常に完了したことを確認する。続いて、ステップS249において、制御部(300)からロボット制御機構(210)にスタート位置移動指令が出力され、当該指令は、ステップS330において、ロボット制御機構(210)に入力される。
【0084】
スタート位置移動指令が入力されると、ステップS331において、ロボット(200)は、ワーク搭載部(110)を所定のスタート位置に移動させる。当該移動が完了したら、ステップS332において、ロボット制御機構(210)から制御部(300)にスタート位置移動完了信号が出力される。その後、ステップS333において、ロボット(200)は、ステップS301に戻る。すなわち、ロボット(200)は、電源を切らない限り、ステップS301~S332を継続的に繰り返し実施する。
【0085】
ステップS332でロボット制御機構(210)から出力されたスタート位置移動完了信号は、ステップS250において、制御部(300)に入力され、これにより、ステップS251において、制御部(300)は、ワーク搬送の1サイクルが完了したことを確認する。その後、ステップS252において、制御部(300)は、ステップS201に戻る。すなわち、制御部(300)は、電源を切らない限り、ステップS201~S251を継続的に繰り返し実施する。
【0086】
-実施形態の効果-
本実施形態のワーク搬送装置(10)は、バランサ(100)と、ロボット(200)及びロボット(200)を制御するロボット制御機構(210)と、制御部(300)とを備える。バランサ(100)には、ワーク(30)を把持するワーク搭載部(110)が設けられる。ロボット(200)は、バランサ(100)と協働してワーク(30)を搬送する。制御部(300)は、バランサ(100)の動作を制御すると共に、ロボット制御機構(210)を介してロボット(200)の動作を制御する。制御部(300)は、ロボット(200)がワーク搭載部(110)をワーク(30)の搬送開始位置に移動させたら、ワーク搭載部(110)にワーク(30)を把持させた後、ロボット(200)にワーク(30)を搬送開始位置の上方の負荷確認位置まで移動させる。制御部(300)は、負荷確認位置でバランサ(100)が有負荷状態であることを確認したら、ロボット(200)にワーク(30)を搬送終了位置まで移動させる。
【0087】
本実施形態のワーク搬送装置(10)によると、ロボット(200)がワーク(30)の搬送を開始する前に、バランサ(100)が有負荷状態であるかどうかを制御部(300)が確認する。このため、制御部(300)を介してロボット(200)とバランサ(100)とが、ワーク(30)の持ち上げ動作を円滑に連係して行うことができる。例えば、ワーク搭載部(110)がワーク(30)を把持していないのにロボット(200)がワーク(30)を搬送しようとして、故障や事故等が発生する事態を回避することができる。従って、ワーク搬送装置(10)の信頼性が向上する。
【0088】
また、本実施形態のワーク搬送装置(10)において、制御部(300)は、負荷確認位置でバランサ(100)の有負荷状態が所定の時間以上継続したことを確認したら、ロボット(200)にワーク(30)を搬送終了位置まで移動させてもよい。このようにすると、ワーク搭載部(110)がワーク(30)を把持しているかどうかをより確実に確認することができる。
【0089】
また、本実施形態のワーク搬送装置(10)において、ワーク搭載部(110)がワーク(30)を把持しているかどうかを検知するセンサー(112)をさらに備えてもよい。この場合、制御部(300)は、ワーク搭載部(110)にワーク(30)を把持させる指令を送信した後、ワーク搭載部(110)がワーク(30)を把持していることをセンサー(112)により検知したら、ロボット(200)にワーク(30)を負荷確認位置まで移動させてもよい。このようにすると、ロボット(200)がワーク(30)を負荷確認位置まで移動させる前に、ワーク搭載部(110)がワーク(30)を把持しているかどうかをセンサー(112)により確認することができる。
【0090】
また、本実施形態のワーク搬送装置(10)において、制御部(300)は、ロボット(200)にワーク(30)を搬送終了位置まで移動させた後、バランサ(100)が無負荷状態であることを確認したら、ワーク搭載部(110)にワーク(30)を開放させてもよい。このようにすると、ロボット(200)がワーク(30)の搬送を終了するときに、バランサ(100)が無負荷状態であるかどうかを制御部(300)が確認するため、ワーク(30)が着座しないままワーク搭載部(110)がワーク(30)を開放しワーク(30)が落下してしまう事態を回避できる。従って、ワーク搬送装置(10)の信頼性がより向上する。
【0091】
また、本実施形態のワーク搬送装置(10)において、ロボット(200)は、搬送終了位置でバランサ(100)が有負荷状態であれば、ワーク(30)をさらに下方に移動させてもよい。このようにすると、ワーク搭載部(110)がワーク(30)を開放する前に、ワーク(30)をより確実に着座させることができる。
【0092】
また、本実施形態のワーク搬送装置(10)において、ワーク(30)を撮影するカメラ(111)をさらに備え、ロボット(200)は、カメラ(111)により撮影した情報に基づき、ワーク搭載部(110)を搬送開始位置に移動させてもよい。このようにすると、カメラ(111)によってワーク(30)の位置を正確に検知してから、ロボット(200)によりワーク搭載部(110)をワーク(30)の搬送開始位置に移動させることができる。従って、ワーク搭載部(110)がワーク(30)をより確実に把持することができる。
【0093】
また、本実施形態のワーク搬送装置(10)において、ロボット(200)がワーク(30)を鉛直方向に昇降させるときの加減速値は、ロボット(200)がワーク(30)を水平方向に移動させるときの加減速値よりも小さくてもよい。このようにすると、ワーク(30)の昇降時にはバランサ(100)とロボット(200)との間の反応速度のズレが連係動作に影響しやすいところ、ワーク(30)の昇降時の加減速値を小さくするため、ワーク(30)の昇降を円滑に行うことができる。
【0094】
《その他の実施形態》
前記実施形態では、ロボット制御機構(210)とは別体に、ワーク搬送装置(10)の制御部(300)を設けたが、これに代えて、ロボット制御機構(210)と制御部(300)とを一体に構成してもよい。但し、ワーク搬送装置(10)を様々な機種のワーク(30)に対応させるためには、ロボット制御機構(210)と制御部(300)とを別体に構成した方が好ましい。
【0095】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。さらに、以上に述べた「第1」、「第2」、・・・という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本開示は、ワーク搬送装置について有用である。
【符号の説明】
【0097】
10 ワーク搬送装置
30 ワーク
100 バランサ
110 ワーク搭載部
111 カメラ
112 センサー
200 ロボット
210 ロボット制御機構
300 制御部