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特許7260817ワーク搬送具、熱間プレス装置、ワーク搬送方法及び熱間プレス方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】ワーク搬送具、熱間プレス装置、ワーク搬送方法及び熱間プレス方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 43/00 20060101AFI20230412BHJP
   B21D 43/08 20060101ALI20230412BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
B21D43/00 E
B21D43/08
B25J15/08 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021524817
(86)(22)【出願日】2020-05-29
(86)【国際出願番号】 JP2020021436
(87)【国際公開番号】W WO2020246396
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2021-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2019104321
(32)【優先日】2019-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 成彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利哉
(72)【発明者】
【氏名】上西 健太
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-240770(JP,A)
【文献】特開2004-025326(JP,A)
【文献】特開2004-261958(JP,A)
【文献】特開2018-039023(JP,A)
【文献】特開平07-156087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/00
B21D 43/08
B25J 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のアームと、
前記一対のアームを水平方向に開閉する開閉機構と、
前記一対のアームに設けられ、第一ワークが載置される一対の第一載置面と、
前記一対のアームに設けられ、前記第一ワークよりも幅が狭い第二ワークが載置される一対の第二載置面と、
を有するワーク搬送具であって、
前記一対のアームの先端部と基端部との間に設けられた一対の第一爪と、
前記一対のアームの先端部に設けられた一対の第二爪と、
を有し、
前記一対の第一爪は、前記一対の第一載置面を有し、
前記一対の第二爪は、前記一対の第二載置面を有し、
前記一対の第一爪及び前記一対の第二爪は、前記一対のアームの閉状態において水平方向に対向する前記一対のアームの互いに対向する側へ向けて延びており、
前記一対のアームの閉状態において、前記一対の第一爪の先端間隔は、前記一対の第二爪の先端間隔より広い、
ワーク搬送具。
【請求項2】
前記一対の第一爪のそれぞれの長さは、前記一対の第二爪のそれぞれの長さと異なる、
請求項に記載のワーク搬送具。
【請求項3】
前記開閉機構は、前記一対のアームをスイング可能に支持する回転軸を有する、
請求項1又は請求項2に記載のワーク搬送具。
【請求項4】
前記開閉機構は、前記一対のアームが、それぞれ鉛直方向に延びて互いに水平方向に対向する閉状態と、それぞれ水平方向に延びた開状態とを取り得るように、前記一対のアームを開閉可能に支持する、
請求項1~請求項のいずれか一項に記載のワーク搬送具。
【請求項5】
前記開閉機構は、前記一対のアームを水平方向にスライド可能に支持する伸縮機構を有する、
請求項1~請求項のいずれか一項に記載のワーク搬送具。
【請求項6】
請求項1~請求項のいずれか一項に記載のワーク搬送具と、
加熱炉と、
前記加熱炉に接続された搬送テーブルと、
前記第一ワークを熱間プレス成形して前記第二ワークを形成する第一プレス機と、
前記第二ワークを熱間プレス成形する第二プレス機と、
前記ワーク搬送具を移動させるマニピュレータと、
前記開閉機構及び前記マニピュレータを制御するコントローラと、
を備える熱間プレス装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記第一ワークが前記搬送テーブルから前記第一プレス機に搬送されるときの前記第一ワークの第一高さと、前記第二ワークが前記第一プレス機から前記搬送テーブルに搬送されるときの前記第二ワークの第二高さとが同じになるように、前記マニピュレータを制御する、
請求項に記載の熱間プレス装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記ワーク搬送具が移動して前記第一ワークが前記搬送テーブルから前記第一プレス機に搬送される場合、前記ワーク搬送具が移動して前記第二ワークが前記第一プレス機から前記搬送テーブルに搬送される場合、及び、前記ワーク搬送具が移動して前記第二ワークが前記搬送テーブルから前記第二プレス機に搬送される場合に、閉状態にある前記一対のアームが対向する方向に沿って前記ワーク搬送具が移動するように、前記マニピュレータを制御する、
請求項又は請求項に記載の熱間プレス装置。
【請求項9】
前記第一プレス機及び前記第二プレス機は、パンチ金型である下金型を備え、
前記下金型は、基部と、基部の上面から上側に突出したパンチ部とを備え、
前記基部の上面から前記パンチ部の頂面までの高さ方向の寸法は、前記第一載置面と前記第二載置面との間の寸法より小さい、
請求項~請求項のいずれか一項に記載の熱間プレス装置。
【請求項10】
前記搬送テーブルは、複数の搬送ロールを備え、
前記アームの幅は、前記搬送ロールの間隔より狭い、
請求項~請求項のいずれか一項に記載の熱間プレス装置。
【請求項11】
前記搬送テーブルは、天板面と、前記天板面に形成された溝とを備え、
前記アームの幅は、前記溝の幅より狭い、
請求項~請求項のいずれか一項に記載の熱間プレス装置。
【請求項12】
請求項1~請求項のいずれか一項に記載のワーク搬送具を用い、
前記一対のアームを閉じて前記一対の第一載置面に前記第一ワークを載置した状態とし、前記ワーク搬送具を移動させて前記第一ワークを搬送する第一搬送工程と、
前記一対のアームを閉じて前記一対の第二載置面に前記第二ワークを載置した状態とし、前記ワーク搬送具を移動させて前記第二ワークを搬送する第二搬送工程と、
を備えるワーク搬送方法。
【請求項13】
請求項~請求項11のいずれか一項に記載の熱間プレス装置を用い、
前記一対のアームを閉じて前記一対の第一載置面に前記第一ワークとしてのブランクを載置した状態とし、前記ワーク搬送具を前記搬送テーブルの上方に移動させ、前記一対のアームを開いて前記ブランクを前記搬送テーブル上に載置する加熱前搬送工程と、
前記搬送テーブル上に載置された前記ブランクを前記加熱炉内に移動させ、前記ブランクを前記加熱炉内で加熱した後、前記ブランクを前記加熱炉内から前記搬送テーブル上に移動させる第一加熱工程と、
前記一対のアームを閉じて前記一対の第一載置面に前記ブランクを載置した状態とし、前記ワーク搬送具を前記第一プレス機の下金型の上方に移動させ、前記一対のアームを開いて前記ブランクを前記第一プレス機の下金型にセットする第一加熱後搬送工程と、
前記第一プレス機の下金型と上金型とで前記ブランクを熱間プレス成形して前記ブランクから前記第二ワークとしての一次成形品を形成する第一プレス工程と、
前記一対のアームを閉じて前記一対の第二載置面に前記一次成形品を載置した状態とし、前記ワーク搬送具を前記搬送テーブルの上方に移動させ、前記一対のアームを開いて前記一次成形品を前記搬送テーブル上に載置する第一プレス後搬送工程と、
前記搬送テーブル上に載置された前記一次成形品を前記加熱炉内に移動させ、前記一次成形品を前記加熱炉内で加熱した後、前記一次成形品を前記加熱炉内から前記搬送テーブル上に移動させる第二加熱工程と、
前記一対のアームを閉じて前記一対の第二載置面に前記一次成形品を載置した状態とし、前記ワーク搬送具を前記第二プレス機の下金型の上方に移動させ、前記一対のアームを開いて前記一次成形品を前記第二プレス機の下金型にセットする第二加熱後搬送工程と、
前記第二プレス機の下金型と上金型とで前記一次成形品を熱間プレス成形して前記一次成形品から前記第二ワークとしての二次成形品を形成する第二プレス工程と、
を備える熱間プレス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワーク搬送具、熱間プレス装置、ワーク搬送方法及び熱間プレス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フォーク状の搬送具でワークを掬い上げて搬送する搬送装置が知られている(例えば、特開2017-47490号公報及び特開2017-074643号公報参照)。この搬送装置では、搬送具でワークを掬い上げて支持する構造上、ワークが水平方向に移動する虞があり、搬送速度を上げ難いという課題がある。
【0003】
搬送速度を上げやすい搬送装置としては、次の第一乃至第五の例示に係る搬送装置が挙げられる。第一の例示に係る搬送装置は、一対のアームでワークを把持して搬送する搬送装置(例えば、特開昭62-152688号公報)である。第二の例示に係る搬送装置は、吸着部でワークを吸着して搬送する搬送装置(例えば、特開平10-249771号公報)である。第三の例示に係る搬送装置は、複数の爪でワークを上下に掴んで搬送する搬送装置(例えば、特開2003-159686号公報)である。第四の例示に係る搬送装置は、一対の開閉式のアームに設けられた一対の爪にワークを載置して搬送する搬送装置(例えば、特開2017-185592号公報)である。第五の例示に係る搬送装置は、一対の開閉式のアームに設けられた複数の爪でワークを掴んで搬送する搬送装置(例えば、特表2019-514692号公報)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の第一乃至第五の例示に係る搬送装置では、保持できるワークの形状が制限される。
【0005】
本開示は、異なる形状のワークを保持できると共に、搬送速度を上げることが可能なワーク搬送具、熱間プレス装置、ワーク搬送方法及び熱間プレス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第一態様によれば、一対のアームと、前記一対のアームを水平方向に開閉する開閉機構と、前記一対のアームに設けられ、第一ワークが載置される一対の第一載置面と、前記一対のアームに設けられ、第二ワークが載置される一対の第二載置面とを有するワーク搬送具が提供される。
【0007】
前記ワーク搬送具は、前記一対のアームに設けられた一対の第一爪と、前記一対のアームに設けられた一対の第二爪と、を有し、前記一対の第一爪は、前記一対の第一載置面を有し、前記一対の第二爪は、前記一対の第二載置面を有していてもよい。
【0008】
前記一対の第一爪及び前記一対の第二爪は、前記一対のアームの閉状態において水平方向に対向する前記一対のアームの互いに対向する側へ向けて延びていてもよい。
【0009】
前記一対の第一爪は、前記一対のアームの先端部と基端部との間に設けられ、前記一対の第二爪は、前記一対のアームの先端部に設けられていてもよい。
【0010】
前記一対の第一爪のそれぞれの長さは、前記一対の第二爪のそれぞれの長さと異なっていてもよい。
【0011】
前記開閉機構は、前記一対のアームをスイング可能に支持する回転軸を有していてもよい。
【0012】
前記開閉機構は、前記一対のアームが、それぞれ鉛直方向に延びて互いに水平方向に対向する閉状態と、それぞれ水平方向に延びた開状態とを取り得るように、前記一対のアームを開閉可能に支持していてもよい。
【0013】
前記開閉機構は、前記一対のアームを水平方向にスライド可能に支持する伸縮機構を有していてもよい。
【0014】
本開示の第二態様によれば、前記ワーク搬送具と、加熱炉と、前記加熱炉に接続された搬送テーブルと、前記第一ワークを熱間プレス成形して前記第二ワークを形成する第一プレス機と、前記第二ワークを熱間プレス成形する第二プレス機と、前記ワーク搬送具を移動させるマニピュレータと、前記開閉機構及び前記マニピュレータを制御するコントローラとを備える熱間プレス装置が提供される。
【0015】
前記コントローラは、前記第一ワークが前記搬送テーブルから前記プレス機に搬送されるときの前記第一ワークの第一高さと、前記第二ワークが前記プレス機から前記搬送テーブルに搬送されるときの前記第二ワークの第二高さが同じになるように、前記マニピュレータを制御してもよい。
【0016】
前記コントローラは、前記第一ワークが前記搬送テーブルから前記第一プレス機に搬送されるときの前記第一ワークの第一高さと、前記第二ワークが前記第一プレス機から前記搬送テーブルに搬送されるときの前記第二ワークの第二高さとが同じになるように、前記マニピュレータを制御してもよい。
【0017】
前記コントローラは、前記ワーク搬送具が移動して前記第一ワークが前記搬送テーブルから前記第一プレス機に搬送される場合、前記ワーク搬送具が移動して前記第二ワークが前記第一プレス機から前記搬送テーブルに搬送される場合、及び、前記ワーク搬送具が移動して前記第二ワークが前記搬送テーブルから前記第二プレス機に搬送される場合に、閉状態にある前記一対のアームが対向する方向に沿って前記ワーク搬送具が移動するように、前記マニピュレータを制御してもよい。
【0018】
前記第一プレス機及び前記第二プレス機は、パンチ金型である下金型を備え、前記下金型は、基部と、基部の上面から上側に突出したパンチ部とを備え、前記基部の上面から前記パンチ部の頂面までの高さ方向の寸法は、前記第一載置面と前記第二載置面との間の寸法より小さくてもよい。
【0019】
前記搬送テーブルは、複数の搬送ロールを備え、前記アームの幅は、前記搬送ロールの間隔より狭くてもよい。
【0020】
前記搬送テーブルは、天板面と、前記天板面に形成された溝とを備え、前記アームの幅は、前記溝の幅より狭くてもよい。
【0021】
本開示の第三態様によれば、前記ワーク搬送具を用い、前記一対のアームを閉じて前記一対の第一載置面に前記第一ワークを載置した状態とし、前記ワーク搬送具を移動させて前記第一ワークを搬送する第一搬送工程と、前記一対のアームを閉じて前記一対の第二載置面に前記第二ワークを載置した状態とし、前記ワーク搬送具を移動させて前記第二ワークを搬送する第二搬送工程とを備えるワーク搬送方法が提供される。
【0022】
本開示の第四態様によれば、前記熱間プレス装置を用い、前記一対のアームを閉じて前記一対の第一載置面に前記第一ワークとしてのブランクを載置した状態とし、前記ワーク搬送具を前記搬送テーブルの上方に移動させ、前記一対のアームを開いて前記ブランクを前記搬送テーブル上に載置する加熱前搬送工程と、前記搬送テーブル上に載置された前記ブランクを前記加熱炉内に移動させ、前記ブランクを前記加熱炉内で加熱した後、前記ブランクを前記加熱炉内から前記搬送テーブル上に移動させる第一加熱工程と、前記一対のアームを閉じて前記一対の第一載置面に前記ブランクを載置した状態とし、前記ワーク搬送具を前記第一プレス機の下金型の上方に移動させ、前記一対のアームを開いて前記ブランクを前記第一プレス機の下金型にセットする第一加熱後搬送工程と、前記第一プレス機の下金型と上金型とで前記ブランクを熱間プレス成形して前記ブランクから前記第二ワークとしての一次成形品を形成する第一プレス工程と、前記一対のアームを閉じて前記一対の第二載置面に前記一次成形品を載置した状態とし、前記ワーク搬送具を前記搬送テーブルの上方に移動させ、前記一対のアームを開いて前記一次成形品を前記搬送テーブル上に載置する第一プレス後搬送工程と、前記搬送テーブル上に載置された前記一次成形品を前記加熱炉内に移動させ、前記一次成形品を前記加熱炉内で加熱した後、前記一次成形品を前記加熱炉内から前記搬送テーブル上に移動させる第二加熱工程と、前記一対のアームを閉じて前記一対の第二載置面に前記一次成形品を載置した状態とし、前記ワーク搬送具を前記第二プレス機の下金型の上方に移動させ、前記一対のアームを開いて前記一次成形品を前記第二プレス機の下金型にセットする第二加熱後搬送工程と、前記第二プレス機の下金型と上金型とで前記一次成形品を熱間プレス成形して前記一次成形品から前記第二ワークとしての二次成形品を形成する第二プレス工程と、を備える熱間プレス方法が提供される。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、異なる形状のワークを保持できると共に、搬送速度を上げることが可能なワーク搬送具、熱間プレス装置、ワーク搬送方法及び熱間プレス方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】第一実施形態に係る熱間プレス装置の概略を示す平面図である。
図2】第一実施形態に係るワーク搬送具及び搬送テーブルの要部を示す側面図である。
図3】第一実施形態に係るワーク搬送具及び搬送テーブルの要部を示す正面断面図である。
図4】第一実施形態に係るワーク搬送具でブランクを第一プレス機に搬送する様子を正面図で説明する説明図である。
図5】第一実施形態に係るワーク搬送具で一次成形品を第一プレス機から搬送する様子を正面図で説明する説明図である。
図6】第一実施形態に係るワーク搬送具の閉状態を示す正面図である。
図7】第一実施形態に係るワーク搬送具の閉状態を示す側面図である。
図8】第一実施形態に係るワーク搬送具の開状態を示す正面図である。
図9】第一実施形態に係るワーク搬送具でブランクを搬送するときの第一高さと一次成形品を搬送するときの第二高さとを正面図で比較する図である。
図10】第一爪又は第二爪を用いてブランクを搬送する例を示す正面図である。
図11】第一爪を用いてブランクを搬送するときの第一高さと第二爪を用いてブランクを搬送するときの第二高さとを正面図で比較する図である。
図12】第二実施形態に係るワーク搬送具及び搬送テーブルの要部を示す側面図である。
図13】第二実施形態に係るワーク搬送具及び搬送テーブルの要部を示す正面断面図である。
図14】第三実施形態に係るワーク搬送具の閉状態を示す正面図である。
図15】第三実施形態に係るワーク搬送具でブランクを搬送するときの第一高さと一次成形品を搬送するときの第二高さとを正面図で比較する図である。
図16】第四実施形態に係るワーク搬送具及び搬送テーブルの要部を示す正面断面図である。
図17】第四実施形態に係るワーク搬送具でブランクを保持した状態と一次成形品を保持した状態とを正面図で比較する図である。
図18】第五実施形態に係るワーク搬送具及び搬送テーブルの要部を示す正面断面図である。
図19】第一変形例に係るワーク搬送具を示す正面図である。
図20】第二変形例に係るワーク搬送具を示す正面図である。
図21】第三変形例に係るワーク搬送具を示す正面図である。
図22】第四変形例に係るワーク搬送具を示す正面図である。
図23】第五変形例に係るワーク搬送具の第一動作例を示す正面図である。
図24】第五変形例に係るワーク搬送具の第二動作例を示す正面図である。
図25】第五変形例に係るワーク搬送具の第三動作例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
例えば、自動車部品等の部品には、熱間プレス成形された成形品が用いられる場合がある。熱間プレス成形された成形品は、靱性及び強度の向上が要求される。この要求を満足するために、例えば複数回の熱処理を実施することが考えられる。各熱処理では、加熱したワークを短時間でプレス機へ搬送する必要がある。
【0026】
しかしながら、従来の熱間プレス装置で用いるワーク搬送具では、ワークの回転や受け渡し動作が必要であり、搬送時間を短くすることが困難であった。また、ワークをフォーク形状のワーク搬送具で掬い上げて支持する場合には、ワークの熱がワーク搬送具へ逃げやすく、あるいは筋状の温度むらがワークに生じやすくなり、狙いとする熱履歴で成形できない部位がワークに生じる虞がある。
【0027】
また、ワークを熱処理する場合、加熱前と加熱後とではワークに温度差が生じる。さらに、ワークを熱間プレス成形する場合、成形前のワーク(ブランク)と成形後のワーク(成形品)とでは形状が異なる。このため、ワークの温度や形状に適したワーク搬送具を用意する必要がある。また、ワークの形状等に合わせて搬送方法を変更する必要があり、高速動作に支障をきたす場合がある。
【0028】
そこで、本開示の考案者は、以下の実施形態を案出するに至った。
【0029】
<第一実施形態>
以下、第一実施形態を図面に従って説明する。
【0030】
(熱間プレス装置)
はじめに、第一実施形態に係る熱間プレス装置10の構成について説明する。図1に示されるように、熱間プレス装置10は、テーブル12と、加熱炉14と、搬送テーブル16と、第一プレス機18と、第二プレス機20と、コントローラ22とを備えている。
【0031】
第一プレス機18と第二プレス機20とは、水平方向に離間して配置されており、第一プレス機18と第二プレス機20との間には、搬送テーブル16が配置されている。搬送テーブル16の第一端部は、加熱炉14の出入口14Aに接続されており、搬送テーブル16の第二端部の側には、テーブル12が配置されている。テーブル12には、プレス加工される前のブランク24が載置される。
【0032】
この熱間プレス装置10では、後に詳述するように、第一加熱工程と、第一プレス工程と、第二加熱工程と、第二プレス工程とが実行される。
【0033】
第一加熱工程では、テーブル12から加熱炉14に搬送されたブランク24が加熱炉14で加熱される。第一プレス工程では、加熱炉14から第一プレス機18に搬送されたブランク24が第一プレス機18で熱間プレス成形されて一次成形品120が形成される。第二加熱工程では、第一プレス機18から加熱炉14に搬送された一次成形品120が加熱炉14で加熱される。第二プレス工程では、加熱炉14から第二プレス機20に搬送された一次成形品120が第二プレス機20で熱間プレス成形されて二次成形品130が形成される。
【0034】
ブランク24は、一例として、所定の形状に切断された平板状の鋼板である。一次成形品120及び二次成形品130は、例えば、断面ハット形状等の立体的な形状を有する。以下の説明では、ブランク24、一次成形品120及び二次成形品130をワークと称する場合がある。ブランク24は、本開示における「第一ワーク」の一例であり、一次成形品及び二次成形品130は、それぞれ本開示における「第二ワーク」の一例である。
【0035】
(加熱炉)
加熱炉14は、ワークを加熱する装置である。加熱炉14としては、例えば、高周波加熱炉や抵抗加熱炉やガス加熱炉や赤外線加熱炉等が挙げられる。加熱炉14の内部には、図示しない駆動機構で回転駆動される複数のローラーが設けられている。加熱炉14では、複数のローラーの回転によってワークが出し入れされる。
【0036】
(搬送テーブル)
搬送テーブル16は、図示しない駆動機構で回転駆動される複数のローラー26を備えている。この複数のローラー26が加熱炉14内の複数のローラーと同期して回転することで、ワークが搬送テーブル16上と加熱炉14内との間で搬送される。
【0037】
複数のローラー26は、図2に示されるように、水平方向に間隔をおいて配置されている。図3に示されるように、搬送テーブル16の両側の側壁16Aには、ローラー26を回避した位置に複数の溝16Bが形成されている(図2も参照)。複数の溝16Bは、複数のローラー26が並ぶ方向に間隔をおいて形成されている。
【0038】
(第一プレス機)
図1に示されるように、第一プレス機18は、下金型28及び図示しない上金型を備えている。第一プレス機18は、熱間プレス成形の一例としてワークを浅絞りして一次成形する。下金型28は、一例としてパンチ金型で構成され、上金型は、一例としてダイ金型で構成されている。第一プレス機18の下金型28及び上金型には冷媒の流路が設けられている。第一プレス機18では、プレス時にワークから奪った熱が冷媒を介して放出される。第一プレス機18は、本開示における「プレス機」の一例である。
【0039】
(第二プレス機)
第二プレス機20は、下金型28及び図示しない上金型を備えている。第二プレス機20の下金型28は、便宜上、第一プレス機18の下金型と同じ符号とされている。図4図5では、便宜上、第一プレス機18の下金型28と第二プレス機20の下金型28とが同じ形状とされているが、第一プレス機18の下金型28と第二プレス機20の下金型28とは異なる形状である。
【0040】
第二プレス機20は、熱間プレス成形の一例としてワークを深絞りして二次成形する。下金型28は、一例としてパンチ金型で構成され、上金型は、一例としてダイ金型で構成されている。第二プレス機20の下金型28及び上金型には冷媒の流路が設けられている。第二プレス機20では、プレス時にワークから奪った熱が冷媒を介して放出される。
【0041】
第一プレス機18及び第二プレス機20の下金型28は、図4及び図5に示されるように、基部30と、基部30の上面30Aから突出したパンチ部32とを備えている。
【0042】
パンチ部32には、頂面32Aに開口する収容部34が形成されている。収容部34には、リフター36が昇降可能に収容されている。リフター36は、シャフト38で昇降される本体部36Aと、本体部36Aより上側へ突出したロケートピン36Bとを備えている。
【0043】
図4に示されるように、リフター36の本体部36Aが下降した状態では、本体部36Aの上面36Cとパンチ部32の頂面32Aとの高さが同じとなる。このとき、ロケートピン36Bが頂面32Aより上側に突出する。図5に示されるように、リフター36の本体部36Aが上昇した状態では、本体部36Aの上面36Cの高さがパンチ部32の頂面32Aよりも高くなる。
【0044】
(マニピュレータ)
図1に示されるように、第一プレス機18の角部の近傍には、第一マニピュレータ40が設けられている。第一マニピュレータ40は、第一プレス機18で熱間プレス成形された一次成形品120を取り出すことができる。第二プレス機20の角部の近傍には、第二マニピュレータ42が設けられている。第二マニピュレータ42は、第二プレス機20で熱間プレス成形された二次成形品130を取り出すことができる。
【0045】
第一プレス機18と第二プレス機20との間であって第二プレス機20の角部の近傍には、第三マニピュレータ44が設けられている。第三マニピュレータ44は、ワーク搬送具46に接続されている。第三マニピュレータ44は、ワーク搬送具46を用いてワークをテーブル12、搬送テーブル16、第一プレス機18及び第二プレス機20の間で搬送する。第三マニピュレータ44は、本開示における「ワーク搬送具を移動させるマニピュレータ」の一例である。
【0046】
(コントローラ)
コントローラ22は、加熱炉14、搬送テーブル16、第一プレス機18、第二プレス機20、第一マニピュレータ40、第二マニピュレータ42及び第三マニピュレータ44に制御信号を出力して熱間プレス装置10を作動させる。コントローラ22は、例えば、CPU、ROM及びRAM等を有するコンピュータによって構成される。
【0047】
(ワーク搬送具)
ワーク搬送具46は、図6及び図7に示されるように、平面視で四角枠状に形成されたベースフレーム48を備えている。ベースフレーム48は、互いに離間して配置された一対の縦部材50と、一対の縦部材50の第一端部同士及び第二端部同士を連結する一対の横部材52とを備えている。一対の縦部材50及び一対の横部材52は、いずれも断面矩形形状の筒体によって構成されている。縦部材50の長さは、横部材52より長くなっており、ベースフレーム48は、平面視で長方形枠状に形成されている。
【0048】
図6に示されるように、一対の横部材52の中央部には、連結部材54が架け渡されている。連結部材54の中央部には、第三マニピュレータ44(図1参照)に接続されるジョイント56が設けられている。
【0049】
横部材52は、連結部材54の端部に固定された中央部52Aと、中央部52Aの両端部にそれぞれ設けられた一対の伸縮機構52Bと、一対の伸縮機構52Bより縦部材50の側に延出した一対の延長部52Cとを備えている。延長部52Cの先端は、縦部材50に接続されている。
【0050】
伸縮機構52Bは、水平方向への延長部52Cのスライド量を調節する。伸縮機構52Bは、延長部52Cのスライド量を手動で調節する構造でも、自動で調節するアクチュエータ等を備える構造でもよい。これにより、横部材52の長さ、すなわち一対の縦部材50の離間距離を調節することができる。一対の伸縮機構52Bは、後述する一対のアーム70を水平方向にスライド可能に支持する機能を有する。
【0051】
図6図7に示されるように、ベースフレーム48には、4つの回転軸60が設けられている。この4つの回転軸60は、横部材52の長さ方向48A及び縦部材50の長さ方向50Aに互いに離間して配置されている。横部材52の長さ方向48A及び縦部材50の長さ方向50Aは、水平方向と平行である。
【0052】
この4つの回転軸60は、平面視で四角枠状に形成されたベースフレーム48の4つの角部の近傍に配置されている。4つの回転軸60のうち長さ方向48Aの第一側に位置する2つの回転軸60、すなわち、第一の縦部材50の両端側に位置する2つの回転軸60は、第一の縦部材50に対して固定されている。同様に、4つの回転軸60のうち長さ方向48Aの第二側に位置する2つの回転軸60、すなわち、第二の縦部材50の両端側に位置する2つの回転軸60は、第二の縦部材50に対して固定されている。
【0053】
(アーム)
図6及び図7に示されるように、ワーク搬送具46は、2組の一対のアーム70を有する。各組の一対のアーム70は、横部材52の長さ方向48Aに並んでいる。第一の一対のアーム70と、第二の一対のアーム70とは、縦部材50の長さ方向50Aに離間して配置されている。第一の一対のアーム70は、本開示における「一対のアーム」の一例である。同様に、第二の一対のアーム70は、本開示における「一対のアーム」の一例である。
【0054】
各アーム70の基端部(上端部)は、各回転軸60にスイング可能に支持されている。アーム70の基端部をスイング可能に支持する回転軸60の軸方向68は、縦部材50の長さ方向50Aと平行である。
【0055】
各アーム70は、図2に示されるように、回転軸60の軸方向68に沿った幅78を有する。このアーム70の幅78は、搬送テーブル16において隣接する第一のローラー26から第二のローラー26までの間隔80より狭い。また、このアーム70の幅78は、上述の搬送テーブル16の側壁16A(図3参照)に形成された溝16Bの幅82より狭い。
【0056】
ここで、アーム70の幅78は、後述する一対の第一爪100及び一対の第二爪102を含めた軸方向68の最大幅の寸法である。第一の一対のアーム70と第二の一対のアーム70との間隔は、二つの溝16Bの間隔とほぼ同じである。これにより、各アーム70を各アーム70に対応する溝16Bを通過させて一対の側壁16Aの内側へ移動させることができる(図3も参照)。
【0057】
(アーム駆動部)
図6に示されるように、縦部材50の回転軸60に対応する部位には、アーム駆動部88が設けられている。アーム駆動部88は、一例としてエアシリンダで構成されている。アーム駆動部88は、作動軸88Aを有している。アーム駆動部88は、作動軸88Aのスライド量を調節するように作動する。作動軸88Aの先端には、ピン88Bが設けられている。ピン88Bは、アーム70の基端部より斜め上側に延出したリンク部材90の長穴90Aに移動及び回転自在に挿入されている。
【0058】
図6に示されるように、作動軸88Aがアーム駆動部88の本体部の外側へスライドした場合には、一対のアーム70が垂れ下がり、一対のアーム70が閉状態92となる。一対のアーム70の閉状態92では、一対のアーム70がそれぞれ鉛直方向に延びて互いに水平方向に対向した状態になる。
【0059】
図8に示されるように、作動軸88Aがアーム駆動部88の本体部の内側へスライドした場合には、一対のアーム70が水平方向に拡がり、一対のアーム70が開状態94となる。一対のアーム70の開状態94では、一対のアーム70がそれぞれ水平方向に延びた状態になる。
【0060】
以下、一対のアーム70が閉状態92にあることを、ワーク搬送具46の閉状態という場合がある。同様に、一対のアーム70が開状態94にあることを、ワーク搬送具46の開状態という場合がある。
【0061】
一対のアーム70に対応する、伸縮機構52B、回転軸60、アーム駆動部88、ピン88B、リンク部材90は、一対のアーム70を水平方向に開閉する開閉機構62を構成している。このように、一対のアーム70は、閉状態92と開状態94とを取り得るように、開閉機構62によって水平方向に開閉可能に支持されている。この開閉機構62は、一対のアーム70を、回転軸60を中心にスイング可能に支持している。
【0062】
(爪)
図6に示されるように、一対のアーム70のそれぞれには、一対の第一爪100が設けられている。また、一対のアーム70のそれぞれには、一対の第二爪102が設けられている。一対の第一爪100は、一対のアーム70の先端部と基端部との間にそれぞれ設けられている。この一対の第一爪100は、一例として、一対のアーム70の先端部と基端部との間の中央部にそれぞれ設けられている。一対の第二爪102は、一対のアーム70の先端部にそれぞれ設けられている。
【0063】
第一実施形態では、一例として、一対のアーム70のそれぞれに一対の第一爪100及び一対の第二爪102が設けられた場合について説明するが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、一対のアーム70のそれぞれに一対の第三爪が追加で設けられてもよい。一対のアーム70のそれぞれに設けられる一対の爪の数は、いくつでもよい。
【0064】
一対の第一爪100は、閉状態92において水平方向に対向する一対のアーム70の内側、すなわち一対のアーム70が互いに対向する側へ向けて延びている。同様に、一対の第二爪102は、閉状態92において水平方向に対向する一対のアーム70の互いに対向する側へ向けて延びている。
【0065】
一対の第一爪100は、第一載置面100Aをそれぞれ有する。つまり、一対の第一爪100の上面は、それぞれ第一載置面100Aとして形成されている。同様に、一対の第二爪102は、第二載置面102Aをそれぞれ有する。つまり、一対の第二爪102の上面は、それぞれ第二載置面102Aとして形成されている。
【0066】
一対の第一爪100に形成された第一載置面100Aは、一対のアーム70の閉状態において同じ高さに位置する。同様に、一対の第二爪102に形成された第二載置面102Aは、一対のアーム70の閉状態において同じ高さに位置する。第一載置面100Aは、一対のアーム70の閉状態において第二載置面102Aよりも高い位置に位置する。
【0067】
一対の第一爪100は、一例として、同じ長さであり、一対の第二爪102は、一例として、同じ長さである。一対の第一爪100のそれぞれの長さは、一対の第二爪102のそれぞれの長さと異なる。
【0068】
一例として、第一爪100の基端から先端までの第一長さ寸法104は、第二爪102の基端から先端までの第二長さ寸法106より短い。これにより、閉状態92において、一対の第一爪100の先端間隔は、一対の第二爪102の先端間隔より広い。
【0069】
具体的に例を挙げて説明すると、第一爪100の第一長さ寸法104は、閉状態92において、一対の第一爪100の第一載置面100Aにブランク24の縁部を載置できる長さに設定されている。一次成形品120は、立体形状に形成された分、ブランク24よりも幅寸法が狭く高さ寸法が高い。第二爪102の第二長さ寸法106は、閉状態92において、一対の第二爪102の第二載置面102Aに一次成形品120の縁部を載置できる長さに設定されている。
【0070】
図4に示されるように、第二爪102の第二載置面102Aから第一爪100の第一載置面100Aまでの寸法108は、下金型28の基部30の上面30Aからパンチ部32の頂面32Aまでの高さ方向109の寸法110より大きい。換言すれば、下金型28における寸法110は、第二爪102の第二載置面102Aから第一爪100の第一載置面100Aまでの寸法108より小さい。この寸法108は、寸法110と、ロケートピン36Bの高さ方向の寸法112と、余裕代とを加算した寸法より大きい。
【0071】
つまり、後述する如く一次成形品120が第一プレス機18から搬送テーブル16に搬送されるときの一次成形品120の第二高さ124(図9参照)とブランク24が搬送テーブル16から第一プレス機18に搬送されるときのブランク24の第一高さ122(図9参照)とを同じにしても、ブランク24が下金型28にセットされる際にブランク24がロケートピン36Bと干渉することを抑制できる程度に、寸法108は確保されている。
【0072】
また、図3に示されるように、搬送テーブル16の両側の側壁16Aに形成された溝16Bの深さは、一対のアーム70が開閉する際に、溝16Bの底面にアーム70や第一爪100や第二爪102が干渉しない深さに設定されている。
【0073】
(熱間プレス方法)
続いて、第一実施形態に係る熱間プレス方法について説明する。第一実施形態に係る熱間プレス方法は、上述の熱間プレス装置10によって実行される。この熱間プレス方法は、二度焼き入れした成形品を形成する方法であり、加熱前搬送工程と、第一加熱工程と、第一加熱後搬送工程と、第一プレス工程と、第一プレス後搬送工程と、第二加熱工程と、第二加熱後搬送工程と、第二プレス工程と、第二プレス後搬送工程とを備える。
【0074】
以下に説明する熱間プレス方法は、コントローラ22によって、加熱炉14、搬送テーブル16、第一プレス機18、第二プレス機20、第二マニピュレータ42及び第三マニピュレータ44が制御されることによって実現される。
【0075】
(加熱前搬送工程)
加熱前搬送工程では、図1に示される第三マニピュレータ44によってワーク搬送具46がテーブル12の上方に移動される。このとき、ワーク搬送具46は、開状態とされる。そして、ワーク搬送具46の高さが調節された後、ワーク搬送具46が閉状態になり、テーブル12上のブランク24が一対の第一爪100に形成された第一載置面100Aに載置される(図6参照)。
【0076】
続いて、図1に示される第三マニピュレータ44によってワーク搬送具46が搬送テーブル16の上方に移動される。そして、ワーク搬送具46が開状態になり、図2に示されるように、ブランク24が搬送テーブル16上に載置される。
【0077】
ここで、アーム70の幅78は、隣接するローラー26の間隔80より狭い。また、アーム70の幅78は、搬送テーブル16の側壁16Aに形成された溝16Bの幅82より狭い。このため、アーム70が側壁16Aに干渉することなく、ワーク搬送具46を開状態にすることができる(図3参照)。ワーク搬送具46は、開状態とした位置で開状態のまま待機する。
【0078】
加熱前搬送工程は、本開示における「一対のアームを閉じて第一載置面に第一ワークを載置した状態とし、ワーク搬送具を移動させて第一ワークを搬送する第一搬送工程」の一例である。
【0079】
(第一加熱工程)
第一加熱工程では、図1に示される搬送テーブル16に設けられた複数のローラー26及び加熱炉14に設けられた複数のローラーが回転し、ブランク24が加熱炉14内に移動される。そして、ブランク24が加熱炉14内で加熱される。
【0080】
ブランク24が加熱された後、搬送テーブル16に設けられた複数のローラー26及び加熱炉14に設けられた複数のローラーが回転する。これにより、ブランク24が搬送テーブル16上に移動され、搬送テーブル16の上方で待機していたワーク搬送具46の下方にブランク24が配置される。
【0081】
(第一加熱後搬送工程)
第一加熱後搬送工程では、開状態のまま搬送テーブル16の上方で待機していたワーク搬送具46が高さを維持したまま閉状態になる。ここで、ワーク搬送具46は、上述の通り、加熱前搬送工程においてブランク24を搬送テーブル16に受け渡す際に、開状態とした位置で開状態のまま待機している。
【0082】
したがって、この第一加熱後搬送工程では、ワーク搬送具46の下降動作等をすることなく、ワーク搬送具46が高さを維持したまま閉状態になることで、搬送テーブル16上のブランク24を一対の第一爪100に形成された第一載置面100Aに載置することができる。これにより、ブランク24を加熱炉14から第一プレス機18に搬送するまでの時間を短縮できる。
【0083】
また、上述の通り、アーム70の幅78は、隣接するローラー26の間隔80より狭い。さらに、アーム70の幅78は、搬送テーブル16の側壁16Aに形成された溝16Bの幅82より狭い。このため、ワーク搬送具46が高さを維持したままでも、アーム70を対応する溝16Bを通過させて一対の側壁16Aの内側へ移動させることができ、一対の第一爪100をブランク24の下側に配置することができる(図3参照)。
【0084】
また、ブランク24は、後述する第一プレス機18で形成される一次成形品120(図5参照)と比較して横幅が広い。このため、一対の第二爪102のそれぞれよりも長さが短い一対の第一爪100の第一載置面100Aにブランク24を載置することができる。さらに、一対の第一爪100のそれぞれよりも長さが長い一対の第二爪102の第二載置面102Aにブランク24を載置する場合と比較して、ブランク24と一対の第一爪100との接触面積を小さくできる。これにより、一対の第一爪100を通じてブランク24の熱が逃げることを抑制することができる。
【0085】
続いて、第一加熱後搬送工程では、図1に示される第三マニピュレータ44によってワーク搬送具46が第一プレス機18に移動される。このとき、閉状態にある一対のアーム70が対向する方向に沿ってワーク搬送具46が移動するように、第三マニピュレータ44が作動する。これにより、ワーク搬送具46でブランク24を搬送する際に、ブランク24に水平方向の慣性力等が作用しても、ブランク24の水平方向の移動を一対のアーム70によって規制できるので、ワーク搬送具46の搬送速度を上げることができる。
【0086】
そして、第三マニピュレータ44は、図4に示されるように、ブランク24に形成されたロケート穴24Aを下金型28のロケートピン36Bに合わせた状態とする。続いて、ワーク搬送具46が開状態になり、ブランク24が第一プレス機18の下金型28にセットされる。つまり、ブランク24がパンチ部32の頂面32Aに載置され、ロケート穴24Aにロケートピン36Bが挿入される。
【0087】
このとき、複数のアーム駆動部88(図6参照)を制御して、一対のアーム70のスイング開始タイミングやスイング速度をずらすことにより、第一プレス機18の下金型28にセットされるブランク24の姿勢を安定化することができる。
【0088】
ここで、図4に示されるように、下金型28の基部30の上面30Aからパンチ部32の頂面32Aまでの高さ方向109の寸法110は、第二爪102の第二載置面102Aから第一爪100の第一載置面100Aまでの寸法108より小さい。この寸法108は、寸法110と、ロケートピン36Bの高さ方向の寸法112と、余裕代とを加算した寸法より大きい。
【0089】
したがって、後述する如く一次成形品120が第一プレス機18から搬送テーブル16に搬送されるときの一次成形品120の第二高さ124(図9参照)とブランク24が搬送テーブル16から第一プレス機18に搬送されるときのブランク24の第一高さ122(図9参照)とを同じにしても、ブランク24が下金型28にセットされる際にブランク24がロケートピン36Bと干渉することを抑制することができる。
【0090】
そして、ブランク24が第一プレス機18にセットされた後、ワーク搬送具46は、開状態94のまま上昇し第一プレス機18の近傍で待機する。
【0091】
第一加熱後搬送工程は、本開示における「一対のアームを閉じて第一載置面に第一ワークを載置した状態とし、ワーク搬送具を移動させて第一ワークを搬送する第一搬送工程」の一例である。
【0092】
(第一プレス工程)
第一プレス工程では、第一プレス機18の下金型28及び上金型でブランク24が熱間プレス成形される。このとき、ブランク24の熱が下金型28及び上金型で急速に奪われることで、第一回目の焼き入れが行われ、ブランク24から立体形状の一次成形品120が形成される。一次成形品120は、立体形状の一例として、断面ハット形状に形成される。
【0093】
第一プレス機18では、図5に示されるように、下金型28及び上金型が型開きされた後、一次成形品120がリフター36によって上昇させられる。
【0094】
(第一プレス後搬送工程)
第一プレス後搬送工程では、開状態94のまま第一プレス機18の近傍で待機していたワーク搬送具46が一次成形品120の上方に移動される。このとき、開状態94とされたワーク搬送具46は、一対のアーム70が水平方向に延びているので、一対のアーム70と下金型28等との干渉を抑制しつつ、水平移動が可能となる。このため、干渉回避のために移動経路を変更する場合と比較して、移動経路が少なくなるので、移動時間を短くすることができる。
【0095】
そして、ワーク搬送具46の高さが調節された後、ワーク搬送具46が閉状態92になる。これにより、リフター36によって上昇させられた一次成形品120が一対の第二爪102に形成された第二載置面102Aに載置される。このとき、一対のアーム70の先端が下金型28の基部30に干渉しないようにワーク搬送具46の高さが調節される。また、一対のアーム70の角度がそれぞれ調節されることで、一次成形品120が安定的に支持される。
【0096】
このように、一対のアーム70が閉方向にスイングするだけで、一対の第二爪102を一次成形品120の下側に挿入し、この一対の第二爪102の第二載置面102Aに一次成形品120を載置することができる。このため、例えば、一対のアーム70が水平方向にスライドするスライド式である場合と比較して、ワーク搬送具46の機構を簡素化できるとともに、一対のアーム70の開閉に要する時間を短くすることができる。
【0097】
また、立体形状の一次成形品120は、平板状のブランク24と比較して横幅が狭い。このため、第一爪100より長い第二爪102を用いることで、一対の第二爪102の第二載置面102Aに一次成形品120を載置することができる。
【0098】
さらに、立体形状の一次成形品120を支持する一対の第二爪102は、アーム70の先端部に設けられている。したがって、一対の第二爪102の上側のスペースを確保できるので、一次成形品120の高さ方向の寸法が大きくても対応することができる。
【0099】
続いて、第一プレス後搬送工程では、図1に示される第三マニピュレータ44によってワーク搬送具46が搬送テーブル16の上方に移動される。このとき、閉状態にある一対のアーム70が対向する方向に沿ってワーク搬送具46が移動するように、第三マニピュレータ44が作動する。これにより、ワーク搬送具46で一次成形品120を搬送する際に、一次成形品120に水平方向の慣性力等が作用しても、一次成形品120の水平方向の移動を一対のアーム70によって規制できるので、ワーク搬送具46の搬送速度を上げることができる。
【0100】
そして、ワーク搬送具46が搬送テーブル16の上方に移動されると、ワーク搬送具46が開状態になり、一次成形品120が搬送テーブル16上に載置される。ワーク搬送具46は、開状態とした位置で開状態のまま待機する。
【0101】
図9には、上述の第一加熱後搬送工程でブランク24が搬送されるときのワーク搬送具46の第一高さ122と、第一プレス後搬送工程で一次成形品120が搬送されるときのワーク搬送具46の第二高さ124とを比較する図が示されている。このように、第一プレス後搬送工程では、一次成形品120を第一加熱後搬送工程で搬送されるブランク24と同じ高さで搬送する。
【0102】
つまり、第一プレス後搬送工程では、第二載置面102Aの高さが第一加熱後搬送工程における第一載置面100Aの高さと同じに設定される。これにより、ブランク24が搬送テーブル16から第一プレス機18に搬送されるときのブランク24の第一高さ122と、一次成形品120が第一プレス機18から搬送テーブル16に搬送されるときの一次成形品120の第二高さ124とが同じとされる。
【0103】
この第一プレス後搬送工程では、第一プレス機18から一次成形品120を受け取る際に、一対の第一爪100よりも下側に位置する一対の第二爪102に一次成形品120を載置する。このため、例えば、一対の第一爪100に一次成形品120を載置する場合に比して、第一プレス機18から一次成形品120を受け取る際の降下距離を短縮できる。また、一次成形品120を搬送テーブル16に受け渡す際の降下動作を廃止できる。これにより、ワーク搬送具46の昇降時間、ひいては、一次成形品120を第一プレス機18から加熱炉14に搬送するまでの時間を短縮できる。
【0104】
第一プレス後搬送工程は、本開示における「一対のアームを閉じて第二載置面に第二ワークを載置した状態とし、ワーク搬送具を移動させて第二ワークを搬送する第二搬送工程」の一例である。
【0105】
(第二加熱工程)
第二加熱工程では、図1に示される搬送テーブル16に設けられた複数のローラー26及び加熱炉14に設けられた複数のローラーが回転し、一次成形品120が加熱炉14内に移動される。そして、一次成形品120が加熱炉14内で加熱される。
【0106】
一次成形品120が加熱された後、搬送テーブル16に設けられた複数のローラー26及び加熱炉14に設けられた複数のローラーが回転する。これにより、一次成形品120が搬送テーブル16上に移動され、搬送テーブル16の上方で待機していたワーク搬送具46の下方に一次成形品120が配置される。
【0107】
(第二加熱後搬送工程)
第二加熱後搬送工程では、開状態のまま搬送テーブル16の上方で待機していたワーク搬送具46が高さを維持したまま閉状態になる。ここで、ワーク搬送具46は、上述の通り、第一プレス後搬送工程においてブランク24を搬送テーブル16に受け渡す際に、開状態とした位置で開状態のまま待機している。
【0108】
したがって、この第二加熱後搬送工程では、ワーク搬送具46の下降動作等をすることなく、ワーク搬送具46が高さを維持したまま閉状態になることで、搬送テーブル16上の一次成形品120を一対の第二爪102に形成された第二載置面102Aに載置することができる。これにより、一次成形品120を加熱炉14から第二プレス機20に搬送するまでの時間を短縮できる。
【0109】
続いて、第二加熱後搬送工程では、図1に示される第三マニピュレータ44によってワーク搬送具46が第二プレス機20に移動される。このとき、閉状態にある一対のアーム70が対向する方向に沿ってワーク搬送具46が移動するように、第三マニピュレータ44が作動する。これにより、ワーク搬送具46で一次成形品120を搬送する際に、一次成形品120に水平方向の慣性力等が作用しても、一次成形品120の水平方向の移動を一対のアーム70によって規制できるので、ワーク搬送具46の搬送速度を上げることができる。
【0110】
そして、第三マニピュレータ44は、図5に示されるように、一次成形品120に形成されたロケート穴24Aを下金型28のロケートピン36Bに合わせた状態とする。そして、ワーク搬送具46が開状態になり、一次成形品120が第二プレス機20の下金型28にセットされる。つまり、一次成形品120がパンチ部32の頂面32Aに載置され、ロケート穴24Aにロケートピン36Bが挿入される。
【0111】
そして、一次成形品120が第二プレス機20にセットされた後、ワーク搬送具46は、初期の位置に戻される。
【0112】
第二加熱後搬送工程は、本開示における「一対のアームを閉じて第二載置面に第二ワークを載置した状態とし、ワーク搬送具を移動させて第二ワークを搬送する第二搬送工程」の一例である。
【0113】
(第二プレス工程)
第二プレス工程では、第二プレス機20の下金型28及び上金型で一次成形品120が熱間プレス成形される。このとき、一次成形品120の熱が下金型28及び上金型で急速に奪われることで、第二回目の焼き入れが行われ、一次成形品120から二次成形品130が形成される。この二次成形品130の形状は、最終形状であってもよい。
【0114】
第二プレス機20では、図5に示されるように、下金型28及び上金型が型開きされた後、二次成形品130がリフター36によって上昇させられる。
【0115】
(第二プレス後搬送工程)
第二プレス後搬送工程では、第二マニピュレータ42によって、二次成形品130が第二プレス機20から取り出され、次工程へ搬送される。
【0116】
なお、ワーク搬送具46の第一爪100及び第二爪102を用いて、平板状のブランク24と立体形状の一次成形品120及び二次成形品130を搬送する場合について説明したが、本開示はこれに限定されるものではない。
【0117】
例えば、図10に示されるように、ワーク搬送具46の第一爪100及び第二爪102を用いて、平板状のブランク24を搬送してもよい。この場合、図11に示されるように、ワーク搬送具46の搬送高さが変更されてもよい。
【0118】
また、上述の熱間プレス方法においては、目的とする二次成形品130の形状や特性により、第一加熱工程及び第二加熱工程のうちいずれかの加熱工程は省略されてもよい。
【0119】
(作用・効果)
次に、第一実施形態の作用効果を説明する。
【0120】
ワーク搬送具46は、一対のアーム70と、一対のアーム70を水平方向に開閉する開閉機構62とを有する。一対のアーム70のそれぞれには、ブランク24が載置される一対の第一爪100が設けられており、一対のアーム70のそれぞれには、一次成形品120又は二次成形品130が載置される一対の第二爪102が設けられている。したがって、ワーク搬送具46によって形状の異なるワーク(ブランク24と一次成形品120又は二次成形品130)を保持して搬送することができる。
【0121】
しかも、一対のアーム70は、水平方向に開閉される。したがって、一対のアーム70の閉状態では、一対の第一爪100に支持されたブランク24と一対のアーム70とが水平方向に並んだ状態となる。これにより、ワーク搬送具46でブランク24を搬送する際に、ブランク24に水平方向の慣性力等が作用しても、ブランク24の水平方向の移動を一対のアーム70によって規制できるので、ワーク搬送具46の搬送速度を上げることができる。
【0122】
同様に、一対のアーム70の閉状態では、一対の第二爪102に支持された一次成形品120と一対のアーム70とが水平方向に並んだ状態となる。これにより、ワーク搬送具46で一次成形品120を搬送する際に、一次成形品120に水平方向の慣性力等が作用しても、一次成形品120の水平方向の移動を一対のアーム70によって規制できるので、ワーク搬送具46の搬送速度を上げることができる。
【0123】
また、一対の第一爪100は、閉状態92において水平方向に対向する一対のアーム70の内側、すなわち一対のアーム70が互いに対向する側へ向けて延びている。したがって、一対の第一爪100でブランク24の縁部を支持した状態では、ブランク24の水平方向の両側に一対のアーム70が位置するので、ブランク24の水平方向の両側への移動を一対のアーム70で規制することができる。また、一対の第一爪100の長さに余裕代を持たせることにより、異なる幅のブランク24を一対の第一爪100で支持することが可能になる。
【0124】
同様に、一対の第二爪102は、閉状態92において水平方向に対向する一対のアーム70の互いに対向する側へ向けて延びている。したがって、一対の第二爪102で一次成形品120の縁部を支持した状態では、一次成形品120の水平方向の両側に一対のアーム70が位置するので、一次成形品120の水平方向の両側への移動を一対のアーム70で規制することができる。また、一対の第二爪102の長さに余裕代を持たせることにより、異なる幅の一次成形品120を一対の第二爪102で支持することが可能になる。
【0125】
また、一対の第一爪100又は一対の第二爪102でワークを下側から支持することにより、ワーク搬送具46でワークを保持することができる。このため、例えば、ワークを吸着したり磁着したりすることによりワークを保持する構成と比較して、高温のワークを保持することができる。
【0126】
また、平板状のブランク24を支持する一対の第一爪100は、一対のアーム70の先端部と基端部との間にそれぞれ設けられており、立体形状の一次成形品120を支持する一対の第二爪102は、一対のアーム70の先端部にそれぞれ設けられている。これにより、例えば、立体形状の一次成形品120を一対の第一爪100で支持する場合に比して、一対の第二爪102の上側のスペースを確保できるので、一次成形品120の高さ方向の寸法が大きくても、この一次成形品120をワーク搬送具46で保持して搬送することができる。
【0127】
また、一対の第一爪100のそれぞれの長さは、一対の第二爪102のそれぞれの長さと異なる。これにより、ブランク24の幅に応じた適切な長さを有する一対の第一爪100でブランク24を支持できるので、加熱炉14で加熱されたブランク24を一対の第一爪100で支持して搬送する際に、ブランク24と一対の第一爪100との接触面積を小さくできる。これにより、一対の第一爪100を通じてブランク24の熱が逃げることを抑制することができるので、ブランク24に温度むらが生じることを抑制できる。
【0128】
同様に、一次成形品120の幅に応じた適切な長さを有する一対の第二爪102で一次成形品120を支持できるので、加熱炉14で加熱された一次成形品120を一対の第二爪102で支持して搬送する際に、一次成形品120と一対の第二爪102との接触面積を小さくできる。これにより、一対の第二爪102を通じて一次成形品120の熱が逃げることを抑制することができるので、一次成形品120に温度むらが生じることを抑制できる。
【0129】
また、開閉機構62は、一対のアーム70をスイング可能に支持する回転軸60を有する。したがって、一対のアーム70の開状態では、一対のアーム70が水平方向に延びた状態になるので、ワーク搬送具46が移動する際に、一対のアーム70が下金型28等と干渉することを抑制できる。これにより、ワーク搬送具が干渉回避のために移動経路を変更する場合と比較して、移動経路が少なくなるので、移動時間を短くすることができる。
【0130】
特に、開閉機構62は、一対のアーム70が、それぞれ鉛直方向に延びて互いに水平方向に対向する閉状態と、それぞれ水平方向に延びた開状態とを取り得るように、一対のアーム70を開閉可能に支持する。これにより、一対のアーム70によるワークの移動規制と、一対のアーム70の下金型28等への干渉をより効果的に両立させることができる。
【0131】
また、開閉機構62は、一対のアーム70を水平方向にスライド可能に支持する伸縮機構52Bを有する。したがって、一対のアーム70の水平方向の間隔を調節することができる。これにより、異なる幅のブランク24をワーク搬送具46で搬送することができると共に、異なる幅の一次成形品120をワーク搬送具46で搬送することができる。
【0132】
また、第一プレス後搬送工程では、第二載置面102Aの高さが第一加熱後搬送工程における第一載置面100Aの高さと同じに設定される。これにより、ブランク24が搬送テーブル16から第一プレス機18に搬送されるときのブランク24の第一高さ122と、一次成形品120が第一プレス機18から搬送テーブル16に搬送されるときの一次成形品120の第二高さ124とが同じとされる。
【0133】
この第一プレス後搬送工程では、第一プレス機18から一次成形品120を受け取る際に、一対の第一爪100よりも下側に位置する一対の第二爪102に一次成形品120を載置する。このため、例えば、一対の第一爪100に一次成形品120を載置する場合に比して、第一プレス機18から一次成形品120を受け取る際の降下距離を短縮できる。また、一次成形品120を搬送テーブル16に受け渡す際の降下動作を廃止できる。これにより、ワーク搬送具46の昇降時間、ひいては、一次成形品120を第一プレス機18から加熱炉14に搬送するまでの時間を短縮できる。
【0134】
なお、第一実施形態では、ワーク搬送具46の横部材52に設けられる伸縮機構52Bによって縦部材50に支持される一対のアーム70の間隔が変更可能とされているが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば、回転軸60の取り付け位置が複数設けられた取付位置調節機構をベースフレーム48に設け、回転軸60の取付位置を変更することで、一対のアーム70の間隔が変更可能とされてもよい。また、横部材52は、長さが一定な棒状部材で構成されてもよい。
【0135】
また、第一実施形態では、ワーク搬送具46が、2組の一対のアーム70を有するが、一対のアーム70の数は、いくつでもよい。
【0136】
また、一対の第一爪100のそれぞれの長さは、一例として、一対の第二爪102のそれぞれの長さよりも短いが、一対の第二爪102のそれぞれの長さよりも長くする必要がある場合には、一対の第二爪102のそれぞれの長さより長くてもよい。
【0137】
また、一対の第一爪100は、一例として、同じ長さであるが、異なる長さでもよい。同様に、一対の第二爪102は、一例として、同じ長さであるが、異なる長さでもよい。
【0138】
<第二実施形態>
図12及び図13は、第二実施形態を示す図である。第二実施形態において、第一実施形態と同一又は同等部分については、同符号を付して説明を省略するとともに、第一実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0139】
第二実施形態では、第一実施形態の搬送テーブル16がローラー26を備えない搬送テーブル140に変更されている。この搬送テーブル140は、加熱炉14の出入口に接続されている。搬送テーブル140の天板面142は、平坦に形成されており、天板面142には、第一実施形態の搬送テーブル16の溝16B(図2図3参照)に対応する位置に溝144が形成されている。
【0140】
各溝144の幅146は、ワーク搬送具46における一対のアーム70の幅78より広い。すなわち、一対のアーム70の回転軸60の軸方向68の幅78は、各溝144の幅146より狭い。
【0141】
第二実施形態では、一対のアーム70の回転軸60の軸方向68の幅78が、搬送テーブル140の各溝144の幅146より狭い。このため、一対のアーム70を対応する溝144へ挿入することで、一対の第一爪100を搬送テーブル140上に配置されたブランク24の下側に配置することができる。
【0142】
第二実施形態において、第一実施形態と同一又は同等部分については、第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0143】
なお、搬送テーブル140の天板面142に溝144を形成することで、図13に示されるように、溝144の中央部にセンサ148を設置してもよい。このセンサ148としては、搬送テーブル140上のワーク(例えばブランク24)の有無を検出する在荷センサや、ワークの温度を測定する温度センサや、ワークの荷重を測定する荷重センサ等が挙げられる。
【0144】
<第三実施形態>
図14及び図15は、第三実施形態を示す図である。第三実施形態において、第一実施形態と同一又は同等部分については、同符号を付して説明を省略するとともに、第一実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0145】
第三実施形態では、ベースフレーム48に形状センサ150及び温度センサ152が設けられている。また、一対の第一爪100及び一対の第二爪102には、ワークの保持位置を位置決めする位置決めガイド154が設けられている。
【0146】
ベースフレーム48の縁部側に設けられた形状センサ150は、ワークの形状を判別するためのセンサであり、一例として、ワークまでの距離を測定する距離センサが挙げられる。距離センサは、ワークまでの距離が短い場合は、ワークがブランク24であると判別し、ワークまでの距離が長い場合は、ワークが成形品(例えば一次成形品120)であると判別する。ベースフレーム48の中央部に設けられた温度センサ152は、ワークの温度を測定する。
【0147】
また、形状センサ150による判別結果に基づいて、図15に示されるように、ワーク搬送具46の搬送高さを定めることができる。そして、温度センサ152で測定したワークの温度に基づいてワークの熱膨張率を演算し、ワークの熱膨張を考慮して一対のアーム70の回転角度を調節することができる。これにより、位置決めガイド154による位置決め精度を向上させることができる。
【0148】
第三実施形態において、第一実施形態と同一又は同等部分については、第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0149】
<第四実施形態>
図16及び図17は、第四実施形態を示す図である。第四実施形態において、第一実施形態と同一又は同等部分については、同符号を付して説明を省略するとともに、第一実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0150】
第四実施形態において、開閉機構62は、一対のアーム70を水平方向にスライド可能に支持する伸縮機構64を有する。伸縮機構64は、水平方向にスライドするスライド軸64Aを有する。伸縮機構64は、スライド軸64Aをスライドさせることが可能な構成である。このような伸縮機構64としては、例えば、電動アクチュエータ、空圧アクチュエータ及び油圧アクチュエータ等が挙げられる。スライド軸64Aは、アーム70の基端部に接続されている。この開閉機構62では、スライド軸64Aがスライドすることで一対のアーム70が水平方向に開閉される。
【0151】
第四実施形態では、一対のアーム70が閉じる際に、一対の第一爪100が水平に移動するので、リフターによる下金型からのブランク24の押上げ高さが低くても、ブランク24の下側に一対の第一爪100を挿入できる。同様に、リフターによる下金型からの一次成形品120の押上げ高さが低くても、一次成形品120の下側に一対の第二爪102を挿入できる。
【0152】
また、一対のアーム70が開く際にも、一対の第一爪100が水平に移動するので、ブランク24を下金型に受け渡す際に、一対の第一爪100からのブランク24の落下距離を短くすることができる。同様に、一次成形品120を下金型に受け渡す際にも、一対の第二爪102からの一次成形品120の落下距離を短くすることができる。
【0153】
第四実施形態においても、第一実施形態と同一又は同等部分については、第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0154】
<第五実施形態>
図18は、第五実施形態を示す図である。第五実施形態において、第一実施形態と同一又は同等部分については、同符号を付して説明を省略するとともに、第一実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0155】
第五実施形態において、開閉機構62は、上述の第四実施形態における伸縮機構64と回転軸60とを組み合わせた構成とされている。また、開閉機構62は、例えば、上述の第一実施形態におけるアーム駆動部88(図6参照)を有している。これにより、開閉機構62は、一対のアーム70をスイングかつ水平方向にスライドさせることができるようになっている。
【0156】
第五実施形態では、一対のアーム70の開状態では、一対のアーム70がスイングすることにより水平方向に延びた状態になるので、ワーク搬送具46の退避時の上昇距離を短くすることができる。
【0157】
また、ブランク24の下側に一対の第一爪100を挿入するときには、一対のアーム70を水平方向にスライドさせることで、リフターによる下金型からのブランク24の押上げ高さが低くても、ブランク24の下側に一対の第一爪100を挿入できる。同様に、リフターによる下金型からの一次成形品120の押上げ高さが低くても、一次成形品120の下側に一対の第二爪102を挿入できる。
【0158】
また、一対のアーム70が開く際にも、一対のアーム70をスライドさせることにより、一対の第一爪100が水平に移動するので、ブランク24を下金型に受け渡す際に、一対の第一爪100からのブランク24の落下距離を短くすることができる。同様に、一次成形品120を下金型に受け渡す際にも、一対の第二爪102からの一次成形品120の落下距離を短くすることができる。
【0159】
第五実施形態においても、第一実施形態と同一又は同等部分については、第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0160】
(変形例)
次に、第一乃至第五実施形態の変形例を説明する。
【0161】
第一乃至第五実施形態において、ワーク搬送具46は、2組の一対のアーム70を有するが、一対のアーム70の数は、いくつでもよい。
【0162】
また、一対の第一爪100のそれぞれの長さは、一例として、一対の第二爪102のそれぞれの長さよりも短いが、一対の第二爪102のそれぞれの長さよりも長くする必要がある場合には、一対の第二爪102のそれぞれの長さより長くてもよい。
【0163】
また、一対の第一爪100は、一例として、同じ長さであるが、異なる長さでもよい。同様に、一対の第二爪102は、一例として、同じ長さであるが、異なる長さでもよい。
【0164】
また、図19に示されるように、一対のアーム70は、屈曲した形状でもよい。さらに、図20に示されるように、一対のアームは、湾曲した形状でもよい。一対のアーム70の屈曲した形状又は湾曲した形状は、部品や金型との干渉を回避する形状でもよい。
【0165】
また、一対の第一爪100の代わりに、図21図22に示されるように、一対のアーム70に一対の段部が形成され、この一対の段部に一対の第一載置面100Aが形成されてもよい。また、図22に示されるように、一対のアーム70は、板を折り曲げて形成した板金製でもよい。
【0166】
図21に示されるように、一対のアーム70に一対の第一載置面100Aが一体的に形成されていると、部品点数を削減することでき、ワーク搬送具46を軽量化できる。また、図22に示されるように、一対のアーム70に一対の第一載置面100A及び一対の第二載置面102Aが一体的に形成されていると、部品点数をより削減することでき、ワーク搬送具46をより軽量化できる。
【0167】
また、図23図25に示されるように、一対のアーム70には、ブランク24が載置される一対の第一爪100と、一次成形品120が載置される一対の第二爪102と、二次成形品130が載置される一対の第三爪103が設けられていてもよい。
【0168】
また、図23図25に示されるように、ブランク24を一対の第一爪100で支持する場合と、一次成形品120を一対の第二爪102で支持する場合と、二次成形品130を一対の第三爪103で支持する場合とで、一対のアーム70の傾斜角度及び間隔が制御されてもよい。このようにすると、第一爪100、第二爪102及び第三爪103で、ブランク24、一次成形品120及び二次成形品130をそれぞれ効率よく支持できるので、第二爪102及び第三爪103を小型化することができ、ひいては、アーム70を軽量化できる。
【0169】
また、このようにすると、ブランク24を一対の第一爪100で支持して搬送する際のワーク搬送具46の高さと、一次成形品120を一対の第二爪102で支持して搬送する際のワーク搬送具46の高さと、二次成形品130を一対の第三爪103で支持して搬送する際のワーク搬送具46の高さを統一させることができる。これにより、ワーク搬送具46の昇降頻度を削減できる。
【0170】
以上、本開示の第一乃至第五実施形態を説明したが、本開示は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0171】
なお、日本国特許特願2019-104321の開示はその全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0172】
また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願、および技術規格は、個々の文献、特許出願、および技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0173】
10…熱間プレス装置、12…テーブル、14…加熱炉、14A…出入口、16…搬送テーブル、16A…側壁、16B…溝、18…第一プレス機、20…第二プレス機、22…コントローラ、24…ブランク、24A…ロケート穴、26…ローラー、28…下金型、30…基部、30A…上面、32…パンチ部、32A…頂面、34…収容部、36…リフター、36A…本体部、36B…ロケートピン、36C…上面、38…シャフト、40…第一マニピュレータ、42…第二マニピュレータ、44…第三マニピュレータ、46…ワーク搬送具、48…ベースフレーム、48A…横部材の長さ方向、50…縦部材、50A…縦部材50の長さ方向、52…横部材、52A…中央部、52B…伸縮機構、52C…延長部、54…連結部材、56…ジョイント、60…回転軸、62…開閉機構、64…伸縮機構、64A…スライド軸、68…軸方向、70…アーム、78…アームの幅、80…ローラーの間隔、82…溝の幅、88…アーム駆動部、88A…作動軸、88B…ピン、90…リンク部材、90A…長穴、92…閉状態、94…開状態、100…第一爪、100A…第一載置面、102…第二爪、102A…第二載置面、103・・・第三爪、104…第一爪の長さの寸法、106…第二爪の長さの寸法、108…第二載置面から第一載置面までの寸法、109…高さ方向、110…頂面の高さの寸法、112…ロケートピンの高さの寸法、120…一次成形品、130…二次成形品、140…搬送テーブル、142…天板面、144…溝、146…溝の幅、148…センサ、150…形状センサ、152…温度センサ、154…ガイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
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図19
図20
図21
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