(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】車体前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20230412BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
B62D25/08 D
B60K11/04 H
(21)【出願番号】P 2022581573
(86)(22)【出願日】2022-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2022012329
【審査請求日】2022-12-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】山梨 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】原 隆之
【審査官】川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-7451(JP,A)
【文献】特開2014-43186(JP,A)
【文献】特開2014-104825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
B60K 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールハウスを形成する一対のフェンダシールドと、
前記一対のフェンダシールドに1つずつ接続され、上下方向に延在する一対のサポートブラケットと、
前記一対のサポートブラケットそれぞれに1つずつ接続され、車載機器が取り付けられて前記サポートブラケットと共に前記車載機器を支持する一対の支持部材と、
を備え、
前記サポートブラケットは、下端部で上下方向に開口する開口部を含み、
前記支持部材は、前記サポートブラケットの前記開口部を下側から塞ぐように、前記フェンダシールドおよび前記サポートブラケットにまたがって接続される
車体前部構造。
【請求項2】
前記支持部材は、前記サポートブラケットの前記開口部を下側から塞ぐように配置される下側部材と、前記下側部材を上側から覆い、前記車載機器が取り付けられる上側部材とを含む請求項1に記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記一対のフェンダシールドの間を車幅方向に延びる前部フレームを備え、
前記サポートブラケットは、前記前部フレームに接続され、
前記支持部材は、前記フェンダシールド、前記サポートブラケットおよび前記前部フレームにまたがって接続される
請求項1または請求項2に記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記支持部材は、前記サポートブラケットと同じ位置で前記フェンダシールドまたは前記前部フレームと接続される部分を含む請求項3に記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記サポートブラケットの前記開口部は、前記フェンダシールドの上下方向における中途に位置する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車体前部構造。
【請求項6】
前記サポートブラケットは、前記開口部よりも下方まで延び、前記フェンダシールドに接続される接続部を有する請求項5に記載の車体前部構造。
【請求項7】
前記車載機器は、ラジエータである請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の車体前部構造。
【請求項8】
ホイールハウスを形成する一対のフェンダシールドと、
前記一対のフェンダシールドの間を延びる前部フレームと、
前記一対のフェンダシールドに1つずつ接続されると共に、前記前部フレームに接続され、上下方向に延在する一対のサポートブラケットと、
前記一対のサポートブラケットに対応して設けられ、車載機器が取り付けられて前記サポートブラケットと共に前記車載機器を支持する一対の支持部材と、
を備え、
前記サポートブラケットは、下端が閉じられ、
前記支持部材は、前記フェンダシールド、前記サポートブラケットおよび前記前部フレームにまたがって接続される
車体前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車体前部構造に関し、特に車載機器を支持するための車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載機器を支持するための車体前部構造に関する技術が知られている。例えば、特許文献1には、車載機器としてのラジエータを上下方向から支持する上下の横梁部と、上下の横梁部を支持する左右の縦柱部とを備えたラジエータサポートが記載されている。このラジエータサポートでは、上下の横梁部がボディ骨格に連結され、左右の縦柱部がサイドメンバにより支持される。そして、縦柱部のサイドメンバ近傍を四角筒状に形成することで、サイドメンバから縦柱部に加わる車幅方向の荷重、すなわち、サイドメンバに対して倒れる方向の荷重に対する強度を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車載機器を支持するために、ホイールハウスを形成するフェンダシールドに上下方向に延在するサポートブラケットおよび支持部材を接続し、支持部材に車載機器を取り付けることがある。この場合、路面からタイヤに入力される荷重が車体フレームなどを介してフェンダシールドへと伝達され、さらに、支持部材やサポートブラケットにも伝達されることになる。特に、上下方向の大きな荷重がフェンダシールドに入力されると、サポートブラケットは、フェンダシールドに対して車幅方向内側に向けて倒れる方向の大きな荷重を受ける。
ここで、例えば上記特許文献1に記載される縦柱部のように、中空状かつ下端部で開口したサポートブラケットでは、十分な剛性を確保することができず、フェンダシールドに対して倒れる方向の荷重を受けきれずに変形してしまう可能性がある。
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車載機器を支持する部材の剛性を良好に確保して変形を抑制し、安定的に車載機器を支持することが可能な車体前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の車体前部構造は、ホイールハウスを形成する一対のフェンダシールドと、前記一対のフェンダシールドに1つずつ接続され、上下方向に延在する一対のサポートブラケットと、前記一対のサポートブラケットそれぞれに1つずつ接続され、車載機器が取り付けられて前記サポートブラケットと共に前記車載機器を支持する一対の支持部材と、を備え、前記サポートブラケットは、下端部で上下方向に開口する開口部を含み、前記支持部材は、前記サポートブラケットの開口部を下側から塞ぐように、前記フェンダシールドおよび前記サポートブラケットにまたがって接続される。
【0006】
この構成により、車載機器が取り付けられる支持部材がサポートブラケットの下端部の開口を塞ぐようにフェンダシールドおよびサポートブラケットに接続されるため、サポートブラケットの剛性を高めることができる。その結果、フェンダシールドに上下方向の大きな荷重が入力され、サポートブラケットがフェンダシールドに対して車幅方向内側に向けて倒れる方向の大きな荷重を受けたとしても、サポートブラケットの変形を抑制可能となる。
【0007】
また、前記支持部材は、前記サポートブラケットの前記開口部を下側から塞ぐように配置される下側部材と、前記下側部材を上側から覆い、前記車載機器が取り付けられる上側部材とを含むことが好ましい。
【0008】
この構成により、上側部材により下側部材を覆うことで、下側部材の剛性を高めることができ、ひいては、支持部材が接続されるサポートブラケットの剛性をより高めることが可能となる。また、支持部材を下側部材と上側部材とに分割することで、下側部材および上側部材の形状設計の自由度を高めることができると共に、支持部材の容易な製造を図ることができる。
【0009】
また、前記一対のフェンダシールドの間を車幅方向に延びる前部フレームを備え、前記サポートブラケットは、前記前部フレームに接続され、前記支持部材は、前記フェンダシールド、前記サポートブラケットおよび前記前部フレームにまたがって接続されることが好ましい。
【0010】
この構成により、支持部材がフェンダシールドおよびサポートブラケットのみならず、前部フレームにもまたがって接続されるため、支持部材およびサポートブラケット全体の剛性をさらに高めることができる。また、フェンダシールドに入力された荷重を、支持部材を介して前部フレーム側に分散させることができるため、サポートブラケットに作用する荷重を低減させることが可能となる。
【0011】
また、前記支持部材は、前記サポートブラケットと同じ位置で前記フェンダシールドまたは前記前部フレームと接続される部分を含むことが好ましい。この構成により、支持部材とサポートブラケットとの接続点の数の増加を抑制しつつ、双方の部材の接続剛性を確保することができる。また、支持部材のコンパクト化を図ることができる。
【0012】
また、前記サポートブラケットの前記開口部は、前記フェンダシールドの上下方向における中途に位置することが好ましい。この構成により、開口を塞ぐように配置される支持部材の上下方向の位置が下側になりすぎないようにし、例えば支持部材をフェンダシールドに対して接続しやすくなる。
【0013】
また、前記サポートブラケットは、前記開口部よりも下方まで延び、前記フェンダシールドに接続される接続部を有することが好ましい。この構成により、サポートブラケットをフェンダシールドに対して容易に接続することができる。
【0014】
また、前記車載機器は、ラジエータであることが好ましい。本発明の車体前部構造によれば、支持部材と共にラジエータを支持するサポートブラケットの剛性を良好に確保することができるため、車載機器として車両前部に配置されることが多く、その重量を確実に支えることが求められるラジエータを安定的に支持することができる。
【0015】
また、上記目的を達成するため、本発明の車体前部構造は、ホイールハウスを形成する一対のフェンダシールドと、前記一対のフェンダシールドの間を延びる前部フレームと、前記一対のフェンダシールドに1つずつ接続されると共に、前記前部フレームに接続され、上下方向に延在する一対のサポートブラケットと、前記一対のサポートブラケットに対応して設けられ、車載機器が取り付けられて前記サポートブラケットと共に前記車載機器を支持する一対の支持部材と、を備え、前記サポートブラケットは、下端が閉じられ、前記支持部材は、前記フェンダシールド、前記サポートブラケットおよび前記前部フレームにまたがって接続される。
【0016】
この構成により、支持部材がフェンダシールドおよびサポートブラケットのみならず、前部フレームにもまたがって接続されるため、支持部材およびサポートブラケット全体の剛性を高めることができる。また、フェンダシールドに入力された荷重を、支持部材を介して前部フレーム側に分散させることができるため、サポートブラケットに作用するフェンダシールドに対して車幅方向内側に向けて倒れる方向の荷重を低減させることが可能となる。その結果、フェンダシールドに上下方向の大きな荷重が入力されたとしても、サポートブラケットの変形を抑制可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車載機器を支持する部材の剛性を良好に確保して変形を抑制し、安定的に車載機器を支持することが可能な車体前部構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態にかかる車体前部構造を上側かつ車幅方向の外側から視た説明図である。
【
図2】実施形態にかかる車体前部構造を上側かつ後側から視た説明図である。
【
図3】実施形態にかかる車体前部構造の一部を後側から視た説明図である。
【
図4】
図1において破線で囲んだ範囲近傍を上側かつ車幅方向の内側から視た斜視図である。
【
図5】
図1において破線で囲んだ範囲近傍を下側かつ車幅方向の内側から視た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき本発明の一実施形態について説明する。以下の説明では、実施形態にかかる車体前部構造が適用された車両を基準として、車両の前後方向、車幅方向および上下方向を表現する。なお、車幅方向については、適宜、左右方向と称して説明する。
【0020】
図1は、実施形態にかかる車体前部構造を上側かつ車幅方向の外側から視た説明図である。
図2は、実施形態にかかる車体前部構造を上側かつ後側から視た説明図である。
図3は、実施形態にかかる車体前部構造の一部を後側から視た説明図である。また、
図4は、
図1において破線で囲んだ範囲近傍を上側かつ車幅方向の内側から視た斜視図であり、
図5は、
図1において破線で囲んだ範囲近傍を下側かつ車幅方向の内側から視た斜視図である。
【0021】
(車体前部構造)
実施形態にかかる車体前部構造1は、
図1から
図3に示すように、一対のフェンダシールド10と、一対のサポートコア20と、一対のサポートブラケット30と、一対のガセット(支持部材)40とを備える。
【0022】
(フェンダシールド)
一対のフェンダシールド10は、車幅方向に沿って並んで左右一対で設けられ、図示しない左右のタイヤが収納されるホイールハウスを形成する。一対のフェンダシールド10は、図示しないタイヤを上側から覆うアーチ状の上面部12と、上面部12の車幅方向内側の端部から下側に延在するように、当該上面部12に連結された側面部14とを含む。なお、本実施形態では、上面部12と側面部14とを別部材として互いに連結しているが、フェンダシールド10は、上面部12および側面部14が一体の部材であってもよい。各フェンダシールド10は、車幅方向外側の端部において、アッパーフレーム5に固定されたフェンダパネル6に連結されている。また、一対のフェンダシールド10は、前部において、前部フレーム2が後述するサポートコア20を介して連結されている。前部フレーム2は、一対のフェンダシールド10の間を車幅方向に延びる。
【0023】
さらに、フェンダシールド10の上面部12と側面部14との間には、
図3に示すように、キャビンを支持するための図示しないボディマウントを収容する収容部16が設けられている。図示しないボディマウントは、タイヤやサスペンションなどの各種機構を支持するサイドメンバといった車体フレーム(いずれも図示省略)によって支持されている。そのため、フェンダシールド10には、路面からタイヤに入力されて上記図示しない車体フレームに伝達された荷重が当該ボディマウントを介して伝達される。
【0024】
(サポートコア)
サポートコア20は、一対のフェンダシールド10それぞれに対応して左右一対で設けられた板状部材である。サポートコア20は、
図1および
図2に示すように、前部フレーム2とフェンダシールド10との間に介在し、図示しない複数のボルトおよびナットにより、前部フレーム2およびフェンダシールド10に連結される。また、サポートコア20は、前部フレーム2とサポートブラケット30との間にも介在し、図示しない複数のボルトおよびナットにより、前部フレーム2およびサポートブラケット30に連結される。
【0025】
(サポートブラケット)
一対のサポートブラケット30は、左右一対で設けられ、一対のフェンダシールド10の側面部14に1つずつ接続されて上下方向に延在する車体フレームである。なお、各サポートブラケット30は、図示しないヘッドランプを支持するヘッドランプサポートとしても機能する。また、各サポートブラケット30には、
図1に示すように、図示しないバンパビームを補強するバンパリーンフォース7が取り付けられている。各サポートブラケット30は、
図2に示すように、U字形状部32と、一対の固定部34とを含む水平方向断面がハット型形状を呈する部材である。
【0026】
U字形状部32は、上下方向に延在する基板部321と、基板部321の車幅方向の両端部から車両前側に延びる一対の側板部322とを有する。つまり、U字形状部32は、サポートブラケット30の取り付け状態で、車両後側に凸形状を描き、上端部30aおよび下端部30bにおいて上下方向に開口する。したがって、サポートブラケット30は、
図5に破線で示すように、一対の側板部322の間に車幅方向の空間部が形成され、当該空間部が上下方向に延在し、下端部30bで当該空間部と連通するように上下方向に開口する開口部31を含む。なお、U字形状部32は、上端部30a側に比べて、下端部30b側で車幅方向の幅が大きく形成されている。
【0027】
一対の固定部34は、車幅方向外側に位置する側板部322aから車幅方向外側にフランジ状に張り出す固定部34aと、車幅方向内側に位置する側板部322bから車幅方向外側にフランジ状に張り出す固定部34bとを含む。本実施形態において、サポートコア20には、
図2に示すように、車幅方向における中間部で前部フレーム2およびフェンダシールド10よりも上側に拡張された拡張部21が形成されている。各固定部34は、サポートコア20の拡張部21の幅内に収まる程度の大きさに形成されており、
図5および
図6に例示するように、サポートブラケット30をサポートコア20および前部フレーム2に連結するための複数の連結孔341が設けられている。
【0028】
以上のように構成されたサポートブラケット30は、
図2に示すように、車幅方向外側の側板部322aがフェンダシールド10の側面部14に当接すると共に、一対の固定部34がサポートコア20の後面に当接するように配置される。そして、サポートブラケット30は、一対の固定部34に形成された複数の連結孔341で、図示しない複数のボルトおよびナットによって、サポートコア20と共に前部フレーム2に連結により接続される。
【0029】
ここで、サポートブラケット30は、取り付け状態において、
図5に破線で示すように、開口部31がフェンダシールド10の側面部14の上下方向における中途部に位置するように構成されている。さらに、本実施形態において、サポートブラケット30の側板部322aには、開口部31よりも下方側まで上下方向に延びる接続部35が形成されている。サポートブラケット30は、接続部35に形成された連結孔351で、図示しないボルトおよびナットにより、フェンダシールド10の側面部14にも連結される。
また、サポートブラケット30の上端部30aには、
図1に示すように、車幅方向に延在するフロントエンドアッパーバー3が連結される。それにより、サポートブラケット30は、フロントエンドアッパーバー3の両端部から延びるアッパーサイド4を介して左右のアッパーフレーム5にも接続される。
【0030】
(ガセット)
一対のガセット40は、一対のサポートブラケット30それぞれに1つずつ接続され、
図3に破線で示す車載機器としてのラジエータ8をサポートブラケット30と共に支持する。ガセット40は、
図4および
図5に示すように、下側ガセット(下側部材)50と、下側ガセット50を上側から覆う上側ガセット(上側部材)60とを有している。
【0031】
(下側ガセット)
下側ガセット50は、
図5に示すように、下側基板部52と、下側立壁部54と、下側フランジ部56とを有する。下側立壁部54は、下側基板部52の車幅方向内側および後側を延びる周縁部から上方に延出される。なお、下側立壁部54は、板状部材を下側基板部52に対して折り曲げることで形成される。下側フランジ部56は、下側基板部52の車幅方向外側および前側を延びる周縁部と、下側立壁部54の車幅方向内側および後側を延びる周縁部とに形成される。下側フランジ部56は、下側基板部52および下側立壁部54により囲まれる側とは反対側に向けて張り出す。なお、下側フランジ部56も、下側立壁部54と同様に、板状部材を下側基板部52および下側立壁部54に対して折り曲げることで形成される。また、下側フランジ部56には、複数の連結孔561が形成されている。
【0032】
上述のように形成される下側ガセット50は、
図5に示すように、下側基板部52がサポートブラケット30の開口部31と対向しつつ、下側フランジ部56がフェンダシールド10の側面部14およびサポートコア20の後面に当接するように配置される。下側ガセット50は、上記配置状態で、車幅方向内側の下側立壁部54がサポートブラケット30の側板部322bに車幅方向内側から当接するように構成されている。また、サポートコア20と当接する下側フランジ部56の一部は、サポートブラケット30の固定部34と前後方向に重なると共に、固定部34の連結孔341と下側フランジ部56の連結孔561aとが前後方向に重なるように構成されている。さらに、フェンダシールド10の側面部14に当接する下側フランジ部56の一部は、
図5に細い破線で示すサポートブラケット30の接続部35と車幅方向に重なると共に、接続部35の連結孔351と下側フランジ部56の連結孔561bとが車幅方向に重なるように構成されている。すなわち、下側ガセット50は、サポートブラケット30と同じ位置でフェンダシールド10の側面部14、前部フレーム2と接続される部分を含む。
【0033】
下側ガセット50は、上記配置状態で、複数の連結孔561において、図示しないボルトおよびナットにより、サポートブラケット30と共にフェンダシールド10の側面部14に連結され、サポートコア20を介して前部フレーム2にも連結される。これにより、下側ガセット50は、サポートブラケット30の開口部31が下側から塞ぐように、フェンダシールド10の側面部14、サポートブラケット30および前部フレーム2にまたがって接続される。なお、下側ガセット50の下側基板部52と開口部31との間には、隙間が設けられている。
【0034】
(上側ガセット)
上側ガセット60は、
図4に示すように、上側基板部62と、上側立壁部64と、上側フランジ部66とを有する。上側基板部62には、
図3に破線で示すラジエータ8に設けられたボス部8aが取り付けられる支持孔65が形成されている。上側立壁部64は、上側基板部62の車幅方向内側および後側を延びる周縁部から下方に延出される。なお、上側立壁部64は、板状部材を上側基板部62に対して折り曲げることで形成される。また、上側立壁部64には、複数の連結孔641が形成されている。上側フランジ部66は、上側基板部62の車幅方向外側および前側を延びる周縁部と、上側立壁部64の後側を延びる周縁部とに形成される。なお、上側フランジ部66も、上側立壁部64と同様に、板状部材を上側基板部62および上側立壁部64に対して折り曲げることで形成される。上側フランジ部66には、複数の連結孔661が形成されている。
【0035】
上述のように形成される上側ガセット60は、
図4に示すように、上側フランジ部66がフェンダシールド10の側面部14およびサポートブラケット30の基板部321に当接するように配置される。上側ガセット60は、上記配置状態で、上側立壁部64が下側ガセット50の下側立壁部54の上部を覆うように構成されている。また、上側立壁部64の前側部分は、サポートブラケット30の側板部322bに当接する位置まで延出され、当該前側部分に形成された連結孔641aが下側立壁部54の連結孔541と車幅方向に重なるように構成されている。さらに、上側フランジ部66の後側部分は、下側フランジ部56の一部と車幅方向に重なる位置に延出され、当該後側部分に形成された連結孔661aが下側フランジ部56の連結孔561cと車幅方向に重なるように構成されている。
【0036】
上側ガセット60は、上記配置状態で、複数の連結孔641において、図示しないボルトおよびナットにより、下側ガセット50に連結される。また、上側ガセット60は、連結孔641および複数の連結孔661において、図示しないボルトおよびナットにより、下側ガセット50と共にフェンダシールド10の側面部14に連結され、かつ、サポートブラケット30にも連結される。これにより、上側ガセット60は、下側ガセット50を上側から覆いつつ、フェンダシールド10の側面部14およびサポートブラケット30にまたがって接続される。
【0037】
(実施形態の効果)
以上説明したように、実施形態にかかる車体前部構造1は、ホイールハウスを形成する一対のフェンダシールド10と、一対のフェンダシールド10に1つずつ接続され、上下方向に延在する一対のサポートブラケット30と、一対のサポートブラケット30それぞれに1つずつ接続され、車載機器が取り付けられてサポートブラケット30と共に車載機器を支持する一対のガセット40(支持部材)と、を備え、サポートブラケット30は、下端部30bで上下方向に開口する開口部31を含み、ガセット40は、サポートブラケット30の開口部31を下側から塞ぐように、フェンダシールド10およびサポートブラケット30にまたがって接続される。
【0038】
上述したように、フェンダシールド10には、路面からタイヤに入力されて図示しない車体フレームに伝達された荷重がボディマウントを介して伝達され、当該荷重がガセット40やサポートブラケット30にも伝達される。特に、上下方向の大きな荷重がフェンダシールド10に入力されると、サポートブラケット30は、フェンダシールド10に対して車幅方向内側に向けて倒れる方向の大きな荷重を受けることになる。本実施形態の車体前部構造1では、車載機器としてのラジエータ8が取り付けられるガセット40がサポートブラケット30の下端部30bの開口を塞ぐようにフェンダシールド10およびサポートブラケット30に接続されるため、サポートブラケット30の剛性を高めることができる。その結果、フェンダシールド10に上下方向の大きな荷重が入力され、サポートブラケット30がフェンダシールド10に対して車幅方向内側に向けて倒れる方向の大きな荷重を受けたとしても、サポートブラケット30の変形を抑制可能となる。したがって、実施形態にかかる車体前部構造1によれば、車載機器を支持する部材の剛性を良好に確保して変形を抑制し、安定的に車載機器を支持することが可能となる。
【0039】
また、ガセット40は、サポートブラケット30の開口部31を下側から塞ぐように配置される下側ガセット50(下側部材)と、下側ガセット50を上側から覆い、車載機器としてのラジエータ8が取り付けられる上側ガセット60(上側部材)とを含む。
【0040】
この構成により、上側ガセット60により下側ガセット50を覆うことで、下側ガセット50の剛性を高めることができ、ひいては、ガセット40が接続されるサポートブラケット30の剛性をより高めることが可能となる。また、ガセット40を下側ガセット50と上側ガセット60とに分割することで、下側ガセット50および上側ガセット60の形状設計の自由度を高めることができると共に、ガセット40の容易な製造を図ることができる。
【0041】
また、一対のフェンダシールド10の間を車幅方向に延びる前部フレーム2を備え、サポートブラケット30は、前部フレーム2に接続され、ガセット40は、フェンダシールド10、サポートブラケット30および前部フレーム2にまたがって接続される。
【0042】
この構成により、ガセット40がフェンダシールド10およびサポートブラケット30のみならず、前部フレーム2にもまたがって接続されるため、ガセット40およびサポートブラケット30全体の剛性をさらに高めることができる。また、フェンダシールド10に入力された荷重を、ガセット40を介して前部フレーム2側に分散させることができるため、サポートブラケット30に作用する荷重を低減させることが可能となる。
【0043】
また、ガセット40は、サポートブラケット30と同じ位置でフェンダシールド10、前部フレーム2と接続される部分を含む。すなわち、下側ガセット50の下側フランジ部56の一部がサポートブラケット30の固定部34と前後方向に重なると共に、固定部34の連結孔341と下側フランジ部56の連結孔561aとが前後方向に重なる。また、下側フランジ部56の一部がサポートブラケット30の接続部35と車幅方向に重なると共に、接続部35の連結孔351と下側フランジ部56の連結孔561bとが車幅方向に重なる。
【0044】
この構成により、下側ガセット50とサポートブラケット30との接続点の数の増加を抑制しつつ、双方の部材の接続剛性を確保することができる。また、下側ガセット50の下側フランジ部56を車幅方向により大きく張り出す必要がなく、ひいてはガセット40のコンパクト化を図ることができる。なお、本実施形態では、上述したように、上側ガセット60の上側フランジ部66の後側部分と下側フランジ部56の後側部分とが車幅方向に重なり、連結孔661aと連結孔561cとが車幅方向に重なる。それにより、下側ガセット50と上側ガセット60との接続点の数の増加を抑制ししつつ、ガセット40の接続剛性を確保することができる。
【0045】
また、サポートブラケット30の開口部31は、フェンダシールド10の上下方向における中途に位置する。この構成により、開口部31を塞ぐように配置されるガセット40の上下方向の位置が下側になりすぎないようにし、例えばガセット40をフェンダシールド10に対して接続しやすくなる。また、実施形態の構成においては、ガセット40(下側ガセット50)を前部フレーム2に対しても接続しやすくなる。
【0046】
また、サポートブラケット30は、開口部31よりも下方まで延び、フェンダシールド10に接続される接続部35を有する。この構成により、サポートブラケット30をフェンダシールド10に対して容易に接続することができる。
【0047】
また、車載機器は、ラジエータ8である。実施形態にかかる車体前部構造1によれば、ガセット40と共にラジエータ8を支持するサポートブラケット30の剛性を良好に確保することができるため、車載機器として車両前部に配置されることが多く、その重量を確実に支えることが求められるラジエータ8を安定的に支持することができる。
【0048】
(変形例)
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、サポートブラケット30は、U字形状部32と一対の固定部34とを含むハット型断面形状部材としたが、サポートブラケット30の形状はこれに限られない。例えば、サポートブラケット30は、U字形状部32が上下方向に延びる中空の筒状部材であってもよい。また、サポートブラケット30およびガセット40は、側面部14に限らず、フェンダシールド10のいずれかの位置に接続されるものであってもよい。
【0049】
また、本実施形態では、ガセット40の下側フランジ部56がサポートコア20の後面に当接し、サポートブラケット30と共に前部フレーム2に連結されるものとした。ただし、ガセット40は、サポートブラケット30の開口部31を下側から塞ぐようにフェンダシールド10およびサポートブラケット30に接続されれば、前部フレーム2に接続されるものでなくともよい。すなわち、下側ガセット50の下側フランジ部56のうち、サポートコア20に当接すると共に前部フレーム2に連結される部分が省略されてもよい。その場合、下側ガセット50とサポートブラケット30の側板部322bとの連結部を実施形態で示した例よりも増加させてもよい。
【0050】
また、本実施形態では、ガセット40をサポートブラケット30の開口部31を下側から塞ぐように配置するものとした。ただし、ガセット40がフェンダシールド10、サポートブラケット30および前部フレーム2にまたがって接続される場合には、ガセット40が開口部31を塞ぐように配置されるものでなくてもよい。すなわち、下側ガセット50の底板部51の少なくとも一部を省略してもよい。なお、ガセット40全体の剛性、強度およびガセット40とフェンダシールド10、サポートブラケット30、前部フレーム2との接続剛性を確保できる場合に限ることは、いうまでもない。
【0051】
また、サポートブラケット30は、下端が閉じられたもの、すなわち、開口部31を有さないものであってもよい。そのように、サポートブラケット30が開口部31を有さない場合にも、ガセット40がフェンダシールド10、サポートブラケット30および前部フレーム2にまたがって接続されるものであれば、ガセット40およびサポートブラケット30全体の剛性を高めることができる。また、フェンダシールド10に入力された荷重を、ガセット40を介して前部フレーム2側に分散させることができるため、サポートブラケット30に作用するフェンダシールド10に対して車幅方向内側に向けて倒れる方向の荷重を低減させることが可能となる。その結果、フェンダシールド10に上下方向の大きな荷重が入力されたとしても、サポートブラケット30の変形を抑制可能となる。
【0052】
また、ガセット40は、下側ガセット50と上側ガセット60とが一体の部材として製造されてもよい。
【0053】
また、ガセット40は、サポートブラケット30と同じ位置でフェンダシールド10または前部フレーム2と接続される部分を含むものでなくともよい。
【0054】
また、サポートブラケット30の開口部31は、当該開口部31を塞ぐように配置されるガセット40が他の部材と干渉することなく、かつ、ガセット40を少なくともフェンダシールド10に接続できれば、フェンダシールド10の上下方向における下端よりも下方に延在してもよい。
【0055】
また、サポートブラケット30の接続部35は、省略されてもよい。例えば、開口部31よりも上方側で、サポートブラケット30の側板部322aにフェンダシールド10と連結するための連結孔を設けておくことが考えられる。
【符号の説明】
【0056】
1 車体前部構造
2 前部フレーム
8 ラジエータ(車載機器)
10 フェンダシールド
12 上面部
14 側面部
20 サポートコア
30 サポートブラケット
30a 上端部
30b 下端部
31 開口部
32 U字形状部
34,34a,34b 固定部
35 接続部
40 ガセット(支持部材)
50 下側ガセット(下側部材)
60 上側ガセット(上側部材)
【要約】
車体前部構造は、ホイールハウスを形成する一対のフェンダシールド10と、一対のフェンダシールド10の車幅方向内側に1つずつ接続され、上下方向に延在する一対のサポートブラケット30と、一対のサポートブラケット30それぞれに1つずつ接続され、車載機器が取り付けられてサポートブラケット30と共に車載機器を支持する一対のガセット40(支持部材)と、を備え、サポートブラケット30は、下端部30bで上下方向に開口する開口部31を含み、ガセット40は、サポートブラケット30の開口部31を下側から塞ぐように、フェンダシールド10の側面部14およびサポートブラケット30にまたがって接続される。