(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】有機単結晶ヘテロ接合複合膜、その作製方法及び用途
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20230412BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230412BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20230412BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
H10K30/50
H05B33/14 B
H05B33/10
H01L29/78 618B
(21)【出願番号】P 2021575373
(86)(22)【出願日】2020-12-05
(86)【国際出願番号】 CN2020134142
(87)【国際公開番号】W WO2021110162
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2021-12-17
(31)【優先権主張番号】201911237342.4
(32)【優先日】2019-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】李 寒▲いん▼
(72)【発明者】
【氏名】伍 瑞▲かん▼
【審査官】桂城 厚
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-500395(JP,A)
【文献】特表2010-537432(JP,A)
【文献】特開2009-060053(JP,A)
【文献】特開2014-067993(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0179968(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00-31/119
H01L 31/18-31/20
H10K 30/00-30/57
H10K 30/80-39/18
H02S 10/00-10/40
H02S 30/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機単結晶ヘテロ接合複合膜であって、
前記有機単結晶ヘテロ接合複合膜は、M種の有機材料を含み、Mは、2以上の正整数であり、
前記有機単結晶ヘテロ接合複合膜は、積層構造を含み、前記積層構造は、有機単結晶ヘテロ接合複合膜がN層の有機単結晶薄膜によって順に積み重ねられて構成され、Nは、2以上の正整数であり、前記有機単結晶薄膜は、有機単結晶アレイで構成され、前記MとNの値は、等しくてもよく、又は等しくなくてもよく、
前記有機単結晶ヘテロ接合複合膜は、少なくとも一つの有機単結晶高効率結合ユニットを含み、前記有機単結晶高効率結合ユニットは、有機単結晶薄膜M
Tと有機単結晶薄膜M
Bで構成され、高効率貼着性を有し、前記有機単結晶薄膜M
Tと有機単結晶薄膜M
Bとは貼着され、有機単結晶薄膜M
TとM
Bを構成する材料は異なり、前記有機単結晶高効率結合ユニットの高効率貼着性は、貼着面積比R≧50%であり、前記貼着面積比Rは、有機単結晶高効率結合ユニットを構成する二層の有機単結晶薄膜の間の貼着の面積A
totalと二層のうち、面積が比較的に大きい有機単結晶薄膜の面積A
largeとの比値であり、つまり、R=A
total/A
largeであり、
前記有機単結晶高効率結合ユニットにおいて、少なくとも一層の有機単結晶薄膜は、二次元高被覆であり、前記二次元高被覆は、結晶成長方向Vに沿う有機単結晶薄膜の垂直被覆率R
V≧80%であり且つ結晶成長に垂直な方向Hの水平被覆率R
H≧70%であり、前記垂直被覆率は、前記方向Vに、有機半導体単結晶薄膜連続の長さが基板の前記方向Vに占める比率であり、前記水平被覆率は、前記方向Hに、結晶幅の合計が基板の前記方向Hに占める比率である、ことを特徴とする有機単結晶ヘテロ接合複合膜。
【請求項2】
前記貼着面積比Rの検出方法は、前記有機単結晶高効率結合ユニットにおいて、二層のうち、面積が比較的に大きい有機単結晶薄膜M
Lにおけるm本の隣接する結晶をランダムに抽出しR=A
total/A
largeであり、A
largeは、前記m本の
隣接する結晶
の面積の合計であり、A
large=A
large1+A
large2+…+A
largemであり、そのうち、A
large1、A
large2、…A
largemは、それぞれ第1本~第m本の結晶の各自の面積であり、A
totalは、前記m本の
隣接する結晶
の貼着面積の合計であり、A
total=A
total1+A
total2+…+A
totalmであり、そのうち、A
total1、A
total2、…A
totalmは、それぞれ第1本~第m本の結晶の各自の貼着面積であり、mは、7以上の正整数である、ことを特徴とする、請求項1に記載の有機単結晶ヘテロ接合複合膜。
【請求項3】
前記垂直被覆率R
V=(l
1+l
2+…+l
n)/nLであり、そのうち、l
1、l
2、…、l
nは、それぞれ第1本~第n本の結晶が方向Vでの各自の長さであり、Lは、方向Vでの基板の長さであり、前記水平被覆率R
H=(w
1+w
2+…+w
n)/Wであり、そのうち、w
1、w
2、…、w
nは、それぞれ第1本~第n本の結晶が方向Hでの各自の幅であり、Wは、方向Hでの基板の幅であり、nは、7以上の正整数である、ことを特徴とする、請求項1に記載の有機単結晶ヘテロ接合複合膜。
【請求項4】
前記有機単結晶高効率結合ユニットにおいて、少なくとも一層の有機単結晶薄膜は、有機半導体分子から選択され、有機単結晶ヘテロ接合複合膜のうちの他の一層又は多層有機単結晶薄膜は、有機半導体分子、光電機能を有する有機分子、強誘電機能を有する有機分子のうちのいずれか一つ又は複数から選択されてもよい、ことを特徴とする、請求項1に記載の有機単結晶ヘテロ接合複合膜。
【請求項5】
前記有機半導体分子は、線形ベンゾ化合物及びその誘導体、線形ヘテロベンゾ化合物及びその誘導体、ベンゾチオフェン化合物及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、フラーレン及びその誘導体、アリール基ジイミド類化合物及びその誘導体、シアノ置換及びハロゲン置換化合物のうちのいずれか一つ又は複数から選択される、ことを特徴とする、請求項4に記載の有機単結晶ヘテロ接合複合膜。
【請求項6】
前記有機単結晶高効率結合ユニットは、積層結合性を有し、前記積層結合性は、有機単結晶薄膜M
Tと有機単結晶薄膜M
Bとの間との積層配向が一致することである、ことを特徴とする、請求項1-5のいずれか1項に記載の有機単結晶ヘテロ接合複合膜。
【請求項7】
前記積層配向が一致することは、積層配向度F
L≧0.625である、ことを特徴とする、請求項6に記載の有機単結晶ヘテロ接合複合膜。
【請求項8】
前記積層配向度F
Lの検出方法は、前記有機単結晶高効率結合ユニットにおいて、それぞれ有機単結晶薄膜M
TとM
Bにおいて、n本の結晶をサンプルとしてランダムに抽出しnは、7以上の正整数であり、結晶成長方向を参照方向として、M
Tにおける結晶C
Tの最長サイズc
Tの方向と前記参照方向とのなす角を配向角A
Tとして、取られたn本の結晶の配向角の平均値は、
であり、
M
Bにおいて各本の結晶C
B最長サイズc
Bの方向と前記参照方向とのなす角を配向角A
Bとして、取られたn本の結晶の配向角の平均値は、
であり、
積層配向度
であり、
そのうち、
であることである、ことを特徴とする、請求項7に記載の有機単結晶ヘテロ接合複合膜。
【請求項9】
有機単結晶高効率結合ユニットの作製方法であって、前記有機単結晶高効率結合ユニットは、積層結合成長法によって得られ、前記積層結合成長法は、有機単結晶高効率結合ユニットにおける有機単結晶薄膜M
Tと有機単結晶薄膜M
Bが結晶の成長方向に沿って協同成長を実現し、有機単結晶高効率結合ユニットを作製し、前記有機単結晶高効率結合ユニットは、有機単結晶薄膜M
Tと有機単結晶薄膜M
Bで構成され、高効率貼着性を有し、前記有機単結晶薄膜M
Tと有機単結晶薄膜M
Bとは貼着され、有機単結晶薄膜M
TとM
Bを構成する材料は異なり、前記有機単結晶高効率結合ユニットの高効率貼着性は、貼着面積比R≧50%であり、前記貼着面積比Rは、有機単結晶高効率結合ユニットを構成する二層の有機単結晶薄膜の間の貼着の面積A
totalと二層のうち、面積が比較的に大きい有機単結晶薄膜の面積A
largeとの比値であり、つまり、R=A
total/A
largeであり、
前記有機単結晶高効率結合ユニットにおいて、少なくとも一層の有機単結晶薄膜は、二次元高被覆であり、前記二次元高被覆は、結晶成長方向Vに沿う有機単結晶薄膜の垂直被覆率R
V≧80%であり且つ結晶成長に垂直な方向Hの水平被覆率R
H≧70%であり、前記垂直被覆率は、前記方向Vに、有機半導体単結晶薄膜連続の長さが基板の前記方向Vに占める比率であり、前記水平被覆率は、前記方向Hに、結晶幅の合計が基板の前記方向Hに占める比率である、ことを特徴とする、有機単結晶高効率結合ユニットの作製方法。
【請求項10】
前記積層結合成長法は、混合溶液に対してせん断を印加して有機単結晶高効率結合ユニットを作製し、前記せん断は、定常のせん断温度で混合溶液に対して定常方向に沿って定常の速度で溶液せん断を行い、前記混合溶液は、二つ又は複数の溶質が同時に溶解されている溶液であり、前記溶質の少なくとも一つは、有機半導体分子から選択され、前記二つ又は複数の溶質は、共同溶媒を有し、前記共同溶媒は、前記二つ又は複数の溶質が同時に溶解されている溶媒であり、前記二つ又は複数の溶質が共同溶媒での溶解度S≧0.05wt%であり、前記二つ又は複数の溶質の間は、相互反応がなく且つ共晶を形成せず、前記二つ又は複数の溶質間を制御して結晶成長プロセスの中間に不等速分相及び/又は異界面分相を実現させ、前記不等速分相は、異なる溶質間の結晶成長の速率が等しくないことであり、前記異界面分相は、異なる溶質間の成長界面が同じでないことであり、前記成長界面の類別は、気-液界面又は固-液界面から選択される、ことを特徴とする、請求項9に記載の有機単結晶高効率結合ユニットの作製方法。
【請求項11】
前記成長界面の類別は、有機単結晶薄膜の形態が基板で予め堆積されたナノ線障害物を横断する前後に明らかな変更が現れるか否かを観察することによって判断され、
前記成長界面の類別の判断方法は、結晶成長方向に沿ってナノ線障害物を横断する2p+1本の結晶をランダムに選択し、pは、1以上の正整数であり、前記2p+1本の結晶に出会うナノ線障害物と結晶成長に垂直な方向との間のなす角Aoの絶対値|Ao|≦45°であり、
前記ナノ線障害物の平均厚さ
と
結晶の平均厚さ
との間の差値は、20nm以下であり、つまり、
であり、
p+1本の結晶の形態がナノ線障害物を横断する前後にいずれも明らかな変更が現れない場合、その成長界面が気-液界面であり、p+1本の結晶の形態がナノ線障害物を横断する前後に明らかな変更が現れる場合、その成長界面が固-液界面である、ことを特徴とする、請求項10に記載の有機単結晶高効率結合ユニットの作製方法。
【請求項12】
1) 不等速分相及び/又は異界面分相を実現できる二つ又は複数の溶質を混合溶液に配合し、共同溶媒で前記二つ又は複数の溶質を溶解することにより、二つ又は複数の溶質を制御して混合溶液において積層結合成長を実現させるステップと、
2) 結晶成長プロセスにおいて、成長環境の温度と
成長環境の湿度を制御し、
前記成長環境の温度の偏差≦±2℃であり、
前記成長環境の湿度の偏差≦±3%であるステップと、
3) せん断ツールと基板との間の間隔を調整し、溶液貯留空間を作製し、前記溶液貯留空間は、せん断ツールの下面と基板との間に形成される空間であり、前記間隔は、50μm~300μmであり、且つせん断ツールの下面と基板との間の間隔の偏差≦10μmであることを確保するステップと、
4) ステップ1)で作製された混合溶液をステップ3)で作製された溶液貯留空間に充填し、充填が完了した後に1~30s静置するステップと、
5) せん断ツールを用いて定常のせん断温度で混合溶液に対して定常方向に沿って定常の速度で溶液せん断を行い、成膜した後に得られる有機単結晶高効率結合ユニットの各層は、いずれも有機単結晶薄膜であり、前記定常のせん断温度は、せん断プロセスにおけるせん断温度の偏差≦±1℃であり、前記定常の速度は、せん断プロセスにおける速度が速度の偏差と選択される速度との比値≦±10%であることを満たし、前記せん断温度は、0℃~200℃であり、前記速度は、10μm/s~2000μm/sであるステップと、を含む、ことを特徴とする、請求項9
に記載の有機単結晶高効率結合ユニットの作製方法。
【請求項13】
前記溶質は、有機半導体分子、光電機能を有する有機分子、強誘電機能を有する有機分子のうちのいずれか一つ又は複数から選択される、ことを特徴とする、請求項10
に記載の有機単結晶高効率結合ユニットの作製方法。
【請求項14】
前記有機半導体分子は、線形ベンゾ化合物及びその誘導体、線形ヘテロベンゾ化合物及びその誘導体、ベンゾチオフェン化合物及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、フラーレン及びその誘導体、アリール基ジイミド類化合物及びその誘導体、シアノ置換及びハロゲン置換化合物のうちのいずれか一つ又は複数から選択される、ことを特徴とする、請求項10
に記載の有機単結晶高効率結合ユニットの作製方法。
【請求項15】
有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法であって、前記作製方法は、請求項10に記載の方法に従って有機単結晶高効率結合ユニットを作製するステップを含む、ことを特徴とする、有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法。
【請求項16】
作製された一つ又は複数の有機単結晶高効率結合ユニットの基礎で、他の方法を利用して作製された単層又は多層有機単結晶薄膜を重ね合わせる、ことを特徴とする、請求項15に記載の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法。
【請求項17】
前記他の方法は、打設法、溶液せん断法、スピンコート法、ステンシル印刷法、蒸着法、移行法のうちのいずれか一つ又は複数から選択される、ことを特徴とする、請求項16に記載の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法。
【請求項18】
前記有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法は、後処理のステップをさらに含む、前記後処理は、有機単結晶ヘテロ接合複合膜全体に対して後処理を行い、及び/又は有機単結晶ヘテロ接合複合膜を構成する有機単結晶高効率結合ユニットに対して後処理を行い、及び/又は有機単結晶ヘテロ接合複合膜を構成する各層又は多層有機単結晶薄膜に対して後処理を行い、
前記後処理は、熱処理、真空処理、溶媒アニール処理、表面処理のうちのいずれか一つ又は複数から選択され、
前記表面処理は、紫外オゾン処理、プラズマ衝撃、赤外処理、レーザエッチングのうちのいずれか一つ又は複数から選択される、ことを特徴とする、請求項15に記載の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法。
【請求項19】
光電デバイスアレイであって、前記光電デバイスアレイは、P個の空間次元で統合して得られる一つ又は複数の光電デバイスを含み、Pは、1以上の正整数であり、前記光電デバイスは、請求項1-8のいずれか1項に記載の有機単結晶ヘテロ接合複合膜を含む、ことを特徴とする、光電デバイスアレイ。
【請求項20】
請求項1-8のいずれか1項に記載の有機単結晶ヘテロ接合複合膜、又は請求項19に記載の光電デバイスアレイの半導体デバイスの、交通物流、鉱業冶金、環境、医療器械、防爆検出、食品、水処理、制薬、及び生物分野のうちのいずれか一つ又は複数の分野における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体の技術分野に関し、具体的には有機単結晶ヘテロ接合複合膜、その作製方法及び用途に関する。
【背景技術】
【0002】
有機ヘテロ接合(Organic Heterojunction)は、二種類以上の異なる有機材料で構成される接合である。異なる成分(component)をともに合併して全体に統合して活性層(active layer)とすることにより、複数の電気的及び光電機能の協同作用を実現することができ、さらに特別な性能も生成することができる。有機ヘテロ接合は、有機電界効果トランジスタ、有機太陽電池、有機発光ダイオード、記憶メモリ等の半導体デバイスにおける最も重要な機能部分として、光電デバイスの性能向上及びより広範な応用に対して重要な影響を有する。有機ヘテロ接合において、二種類の異なる材料が接触する界面は、ヘテロ接合界面を形成し、光電デバイスにおいて重要な機能役割を果たし、有機太陽電池を例として、ドナーとレセプター材料で構成されるドナー-レセプターヘテロ接合活性層(活性層は、重要な機能役割を果たす層である)は、主に光発生励起子の分離に用いられ、光発生励起子が発生した後、励起子は、その寿命内にドナーとレセプター材料の界面に伝送されてこそ、正孔と電子に分離されることができず、励起子が分離された後の電子と正孔は、電極に収集されるまで、それぞれレセプターとドナー材料において伝送される。励起子分離距離、キャリアの伝送性能は、太陽電池デバイスの効率に大きく影響を与える。このため、ヘテロ接合の構成、構造秩序度などは、ヘテロ接合の品質と性能に対して非常に重要な作用を有する。現在では、有機半導体材料に対して、その構造の秩序性の程度に基づいて、無定形形態(amphorous form)と結晶形態(crystalline form)に分けられてもよく、そのうち、結晶形態は、また単結晶形態(single-crystalline form)と多結晶形態(polycrystalline form)に分けられる。活性層を構成する有機半導体材料の大部分は、無定形形態又は多結晶形態であり、巨大な欠陥が存在し、具体的にはそれぞれ以下のように表現されている。無定形形態のドナーとレセプターが積層して取得した平面ヘテロ接合(planar Heterojunction)と、ドナーとレセプターが三次元相互貫通ネットワークを形成するバルクヘテロ接合(bulk Heterojunction)との中に、分子秩序堆積度が低く、励起子分離距離が短いことを直接克服できないという問題が存在し(H.Li、C.Fan、and W.Fu、Angewandte Chemie International Edition、54、956(2015))、多結晶型のヘテロ接合は、ある程度の秩序度を高めたが、その乱雑な配向の多い粒界は、対応する電子デバイスの固有物理的性質の探究を阻害するだけでなく、さらに界面電荷の伝送性能を著しく低下させる。
【0003】
有機単結晶薄膜(organic single-crystalline thin film)は、有機単結晶(organic single crystals)で構成され、有機単結晶薄膜は、有機半導体デバイスの最も理想的な活性層材料であり、具体的には、以下のように表現されている。有機単結晶薄膜を構成する有機単結晶は、真性欠陥が少なく、粒界がなく、分子配列が長距離秩序を呈するという利点を有し、光電気学分野で優れた性能を示し、特に高い移動率であり、現在では、有機単結晶薄膜に基づいて作製された電界効果トランジスタの電子と正孔移動率は、いずれも10cm2V-1s-1を超えている(V.Podzorov、E.Menard、and A.Borissov、Physical Review Letter 93、086602(2004)、H.Li、B.C.K Tee、and J.J.Cha、Journal of the American Chemical Society、134、5(2012))。なお、有機単結晶薄膜は、規則的な形状を有し、特徴づけとデバイス作製に有利である。
【0004】
有機ヘテロ接合を構成する成分がいずれも単結晶形態の有機ヘテロ接合は、有機単結晶ヘテロ接合と呼ばれる。有機単結晶ヘテロ接合(organic single-crystalline heterojunction)の優位性は、高度に秩序化される分子配列によってもたらされた高い電荷伝送性能と長い励起子分離距離であり(H.Najafov、B.Lee、and V.Podzorov、Nature Materials、9、938(2010))、且つ高度に秩序化される分子配列は、各成分の有機単結晶本体だけでなく、有機単結晶ヘテロ接合において二つの成分が緊密に接触する有機ヘテロ接合界面にも存在する。太陽電池にとって、光発生励起子の分離と、レセプター材料でのキャリアの高効率伝送に有利であり、太陽電池の効率を向上させることができる。有機電界効果トランジスタにとって、双極性伝送に有利であり、高性能の論理回路の作製に用いることができる。これに基づいて、多層多成分の有機単結晶ヘテロ接合は、より複雑な光電機能を実現する巨大な可能性を有する。
【0005】
しかし、有機単結晶薄膜を構成する有機単結晶自体は、その内部分子に対して周期的な配列を厳密に行うことが要求され、有機単結晶の成長を厳密に制御する必要があり、有機単結晶を作製することが非常に困難であり、これに基づいて、異なる有機単結晶を積層することがさらに困難であるため、従来技術で作製できる、有機単結晶ヘテロ接合を構成するために使用できる有機単結晶は少ない。単結晶(single-crystal/single-crystalline)の結晶形態であることが具体的に記載されていない材料は、すべて多結晶であることが当業者には周知である。
【0006】
ヘテロ接合を構成する二種類の異なる有機単結晶薄膜の間にヘテロ接合界面(heterojunction interface/heterogenous interface)を構成し、且つこの界面の両辺は、いずれも有機単結晶薄膜であるため、このヘテロ接合界面は、有機単結晶ヘテロ接合界面(
図1に示すように、有機単結晶ヘテロ接合界面と表記される)とも呼ばれ、有機単結晶ヘテロ接合におけるキャリアの伝送と励起子の分離は、いずれもこのヘテロ接合界面で発生する。ヘテロ接合界面の品質は、光電デバイスの性能と効率に対して決定的な役割を果たすため(N.Koch、Chem Phys Chem、8、10(2007))、ヘテロ接合界面の品質は、特に重要であり、ヘテロ接合界面の品質を正確に制御する必要がある。理想的な有機単結晶ヘテロ接合(organic single-crystalline heterojunction)の品質を正確に制御するには、ヘテロ接合界面の高度秩序性(highly-ordered)、ヘテロ接合界面の高効率貼着性、及び有機単結晶薄膜の二次元高被覆の三つの要求を同時に満たす必要がある。
【0007】
第一の態様で、高度秩序性を有するヘテロ接合界面は、有機単結晶ヘテロ接合を構成する有機単結晶薄膜を積み重ね/重ね合わせる(stack/laminate)ことによって構成され、有機単結晶自体の内部分子は、厳密な周期的配列を有するので、前記ヘテロ接合界面の高度秩序性を確保できるだけでなく、さらに前記ヘテロ接合界面の両側の有機単結晶薄膜自体の高度秩序性を加えることにより、有機単結晶ヘテロ接合全体の高度秩序性を実現することができ、複数種の電気的、光電機能の組み合わせを提供することができ、有機単結晶ヘテロ接合の独特で優れた光電機能を実現するための前提と基礎となる。二成分(bi-component)の有機単結晶ヘテロ接合を例にとると、二層の有機単結晶薄膜を共に積み重ね/重ね合わせて、積層構造(laminated construction/configuration/structure)を形成し、その高度に秩序化された有機単結晶ヘテロ接合界面は、キャリアの高効率伝送を実現することができるほか、隣接する二層の有機単結晶薄膜は、高度に秩序化された活性材料として、材料内の電荷伝送にも非常に有利である。有機単結晶薄膜、ヘテロ接合界面におけるいずれか一つの高度秩序性が破壊されると、いずれも有機単結晶ヘテロ接合全体の高度秩序性に深刻な損傷を与える。例えばヘテロ接合を作製するプロセスにおいて、界面に深刻な物理的損傷があれば、又は両側の有機単結晶薄膜が相互に影響を受け、そのうちの一層又は二層の有機単結晶薄膜の単結晶性を破壊し、一部の形態が多結晶又はアモルファス形態へと変化すると、有機単結晶ヘテロ接合全体の高度な秩序性が破壊され、高効率電荷伝送を実現できず、優れた光電特性を実現することが困難である。
【0008】
第二の態様で、高品質、高統合度、高効率の多様化した光電デバイスアレイを実現するために、ヘテロ接合界面の高度秩序性を確保する前提で、またヘテロ接合界面が高効率貼着性を有することを満たす必要があり、すなわち有機単結晶ヘテロ接合の貼着面積をできるだけ大きく確保する必要がある。前記貼着面積(lamination area)は、有機単結晶ヘテロ接合を構成する隣接する二層の有機単結晶薄膜の間の接触面積である。貼着面積は、有機単結晶ヘテロ接合界面の中で実際に動作状態にある部分を具現することができ、検出可能なキャリア数を決定するだけでなく、ターゲット光電現象を実現するために必要な動作電圧にも影響を与える。このため、ヘテロ接合界面への品質制御を実現するために、貼着面積の大きさを正確に制御し、貼着面積をできるだけ大きくする必要がある。
【0009】
さらに、貼着面積の大きさを正確に記述するために、貼着面積比R(lamination area ratio)を採用して貼着面積の大きさを評価し、貼着面積比が小さいほど、これは、この有機単結晶ヘテロ接合における貼着面積が小さいほど、取得できるキャリアの総数が減少することを意味し、これは、高感度検出、及び低エネルギ消費を実現するデバイス動作に極めて不利であり、例えば、光検出器に対して、顕著な光電流を得るために、印加される動作電圧の範囲を大きくする必要があり、エネルギ消費量が大幅に増加する(K.Park、K.Lee、and J.Baek、Angewandte Chemie International Edition、10429、128(2016))。前記貼着面積比R=A
total/A
largeであり、そのうち、A
totalは、有機単結晶ヘテロ接合を構成する二層の隣接する有機単結晶薄膜相貼着部分の面積であり、A
largeは、そのうち、二層のうち、面積が比較的に大きい有機単結晶薄膜M
Lの面積であり、(
図2に示すように(いずれも上視図の視角である)、有機単結晶高効率結合ユニットにおいて、面積が比較的に大きい有機単結晶薄膜は、M
Lであり、その面積は、A
largeであり、グレーで表され、面積が比較的に小さい有機単結晶薄膜は、MSであり、その面積は、A
smallであり、白い色で表され、
図2(a-c)は、二本の結晶のM
LとM
Sとの貼着の概略図であり、
図2(d)は、複数本の結晶が
図2(a)の形式で重畳する貼着面積概略図であり、
図2(e)は、複数本の結晶が
図2(c)の形式で重畳する貼着面積概略図である。A
totalは、貼着面積を表し、M
LとM
Sとの間の重ね合わせ部分の面積であり、A
largeとA
smallとの重ね合わせ部分であり、黒い色で表され、すなわちグレー部分と白い色部分との重ね合わせである。
図2(a)と
図2(d)において、貼着面積は、M
Sの面積に等しく、A
total=A
smallであり、上視図の視角であるので、ここで黒い色部分と白い色部分が重畳され、黒い色のみで表される)。内部秩序構造及び外部成長環境に対する有機単結晶自体の厳格な要求のため、従来技術は、有機単結晶ヘテロ接合の作製に対して非常に困難であり、有機単結晶ヘテロ接合界面を破壊しないという前提で、有機単結晶ヘテロ接合を構成する有機単結晶薄膜の間の貼着性の正確な制御を実現することは、さらに困難である。有機単結晶ヘテロ接合において、二種類の有機単結晶の間の貼着方式は、通常、交差貼着(cross-stacked、
図3(a))、積層貼着(bilayer、
図3(b))、側面貼着(lateral-stacked、
図3(c))、軸方向貼着(coaxial-stacked、
図3(d))、コアシェル貼着(core-shell stacked、
図3(e))及び樹枝状貼着(branched、(
図3(f))等の複数の方式を含むが、これらに限定されない。そのうち、交差貼着(
図3(a))、軸方向貼着(
図3(d))及び樹枝状貼着(
図3(f))で得られた貼着領域は、点状であり、側面貼着(
図3(c))で得られた貼着領域は、線状であり、いずれもナノスケールの範囲にあり、一般的には、数ナノメートルから数百ナノメートルのサイズであるが、有機単結晶の最長サイズは、一般的には、数ミクロンから数十ミクロンしいてはそれ以上であり、簡単なサイズ比較により、最終的に得られた貼着面積比Rがかなり小さく、50%よりも遥かに小さく、理想的な有機単結晶ヘテロ接合の要求を満たすことができないと推定することができる。コアシェル貼着(
図3(e))の有機単結晶ヘテロ接合では、一方の有機単結晶が他方の有機単結晶の外側に部分的に被覆されているが、このような有機単結晶ヘテロ接合の形態は、不規則な一次元ナノ線で、(Q.Cui、L.Jiang and C.Zhang、Advanced Materials、2332、24、(2012))におけるFigure1BとFigure2に示すように、不揃いの形態をピクチャではっきりと観察することができ、このような不規則な形態と基板に垂直に成長する性質は、コアシェルが貼着された有機単結晶ヘテロ接合が一定の長さまで成長した後に曲がりしいては折れが発生しやすいという現象を引き起こす可能性があり、高効率貼着性を有する有機単結晶ヘテロ接合を得ることができず、且つ有機単結晶ヘテロ接合の連続的な成長を実現できず、その後のデバイスの作製が困難になる。積層貼着(
図3(b))の方式で得られた有機単結晶ヘテロ接合の貼着領域は、面状であり、数百ミクロンしいてはそれ以上の貼着面積を実現でき、得られた貼着面積比も上記いくつかの貼着方式の中で最も大きいものであり、有機単結晶ヘテロ接合の高効率貼着性を実現するための最も理想的な貼着方式であり、積層貼着以外の貼着方式では、いずれも比較的に大きい貼着面積を得ることができず、さらに有機単結晶ヘテロ接合の高効率貼着性を実現することができない。
【0010】
なお、二種類の有機単結晶薄膜の間の積層配向が一致する(oriented lamination)ことを制御することにより、貼着面積比をさらに大きくすることができ、
図2(d)と
図2(e)の有機単結晶ヘテロ接合複合膜を例にとると、
図2(d)と図における二層の有機単結晶薄膜の間の積層配向は、一致し、ほぼ平行であり、
図2(e)において二層の有機単結晶薄膜の間の配向は、一致せず、二種類の有機単結晶アレイが交錯成長し(例えば文献J.K.Wu、C.C.Fan、and G.B.Xue、Advanced Materials、27、4476(2015)におけるFigure1iに示すように、その概略図が
図3(a)の交差貼着に近い)、
図2(d)に比べて貼着面積比が大幅に低下する。積層貼着結合配向が一致し、貼着面積比をできるだけ大きく確保することができ、さらに高品質の有機単結晶ヘテロ接合の光電現象を提供するための基礎を築く。高効率貼着性を有することを満たす有機単結晶ヘテロ接合を満たすことは、既に比較的に大きい優位性を有し、いくつかの優れた電気的及び/又は光起電力現象のために高品質のプラットフォームを提供することができる。
【0011】
第三の態様で、キャリアの高効率伝送にはチャネル(channel)の面積をできるだけ大きくする必要があるため、有機単結晶ヘテロ接合を構成する有機単結晶薄膜を正確に制御して二次元高被覆を実現させることができる必要がある。具体的には、有機単結晶薄膜は、基板(substrate)上で二つの次元の高被覆(二次元高被覆と略称され、two-dimensional high coverage)を実現できる必要があり、つまり垂直被覆率(vertical coverage ratio、RV)と水平被覆率(horizontal coverageratio、RH)がいずれも十分に大きいことを同時に満たす。前記垂直被覆率は、結晶成長の方向Vに沿って、有機単結晶薄膜の連続する長さが、基板の前記方向Vでの長さに占める比率であり、前記水平被覆率は、結晶成長に垂直な方向Hに、結晶幅の合計が、基板の前記H方向での幅に占める比率である。具体的には、前記二次元高被覆は、有機単結晶薄膜が、前記V方向と前記方向Hに十分に高い被覆率を同時に有することである。つまり、前記方向V上の垂直被覆率RV≧80%であり且つ前記方向H上の水平被覆率RH≧70%である時、前記二次元高被覆を満たし、有機単結晶薄膜に良質の電荷伝送チャネルを提供し、デバイス性能を決定する重要な要素の一つであると考えられてもよい。それだけでなく、垂直被覆率と水平被覆率が大きいほど、貼着面積比が一定の場合、有機単結晶ヘテロ接合界面の貼着面積が大きく、つまり、有機単結晶薄膜を正確に制御することにより、二次元高被覆を実現し、有機単結晶ヘテロ接合界面での高効率貼着性をさらに確保することができる。以上をまとめると、ヘテロ接合界面の高度秩序性、ヘテロ接合界面の高効率貼着性及び有機単結晶薄膜の二次元高被覆の三つの要素は、全体として協同作用し、分割することができず、一つが欠けてはならず、前の二つの条件を満たすと、性能が高い有機単結晶ヘテロ接合を得ることができ、三つの条件を同時に満たすことのみが、理想的な有機単結晶ヘテロ接合及び対応する光電デバイス、しいてはより高度なデバイスアレイを得るための重要な条件である。
【0012】
有機単結晶ヘテロ接合の各成分の結晶形態は、いずれも単結晶であり、単結晶自体の成長が制御しにくいため、内部の分子が三次元空間において規則的かつ周期的に配列される必要があり、したがって、有機単結晶の成長は、その多結晶形態及び無定形形態の生長に比べて遥かに難しく、有機単結晶形態への調整を実現したいと、非常に細かい制御(extraordinary control)が必要となり、実現が非常に困難である(M.Niazi、and A.Amassian、Advanced Functional Materials、26、2371(2016))。有機単結晶ヘテロ接合は、二種類以上の有機単結晶を得る必要があり、有機単結晶本体及びヘテロ接合界面の高度秩序性を同時に確保したいと、つまり、有機単結晶ヘテロ接合複合膜を構成する有機単結晶薄膜同士が接触する時に、破壊しないことが必要であるとともに、少なくとも二層の有機単結晶薄膜は、配向が一致する積層貼着方式で貼着することを確保しなければならず、且つ上記二種類又は複数種類の有機単結晶は、できるだけ大きな貼着面積比が必要であり、さらに、少なくとも一層の有機単結晶薄膜は、二次元高被覆を実現する必要があり、この三つの要素を正確に制御することは、従来技術では解決できない三つの大きな難題であり、理想的な形態を有する有機単結晶ヘテロ接合を得るために、この3つの要素は、互いに影響して促進し、共同で作用し、分割することができない。前の二つの要因に対する正確な制御を満たすと、高品質の有機単結晶ヘテロ接合複合膜を得ることができ、その形態とデバイス性能は、現在のレベルに比べて大幅に向上したが、この基礎で同時に三つの要因に対する正確な制御を実現してこそ、理想的な形態を有する有機単結晶ヘテロ接合複合膜を得ることができる。例えば、有機単結晶ヘテロ接合の界面と本体の高度秩序性に対する要求は、有機単結晶ヘテロ接合の作製プロセスを大幅に制限し、且つ結晶の成長プロセスに対して厳格な制御を行う必要があり、それによって、従来技術では、少なくとも一層の有機単結晶薄膜の二次元高被覆及び有機単結晶ヘテロ接合の高効率貼着性を実現することができず、また例えば、有機単結晶薄膜が二次元高被覆を実現できない場合、有機単結晶薄膜の被覆面積が非常に制限され、それによって、有機単結晶ヘテロ接合を構成する時、二層しいては多層の有機単結晶薄膜であっても十分に大きな貼着面積を得ることが困難であり、高効率貼着性を実現することができない。このため、最も理想的な形態を有する有機単結晶ヘテロ接合を作製するために、ヘテロ接合界面の高度秩序性、ヘテロ接合界面の高効率貼着性及び有機単結晶薄膜の二次元高被覆の三つの要因に対する精確な制御を同時に実現しなければならないが、従来技術では実現できない。
【0013】
現在では、従来技術は、主に物理移行法、気相エピタキシ法、溶液二段成長法及び溶液一段成長法によって有機単結晶ヘテロ接合を作製する。物理的移行法は、分離して成長した有機単結晶成分を物理的手段で組み合わせることにより作製する方法であり、例えば、重ね合わせ技術(lamination technique)、剥離移行技術などであり、重ね合わせ技術を採用して比較的に柔軟性のある有機単結晶を物理的移行によって重ね合わせて上下構造の有機単結晶ヘテロ接合を形成することが報告されており、このような技術では、下層の有機単結晶の表面が十分に平坦(sufficiently flat)であることが要求され、且つ上層の有機単結晶が、貼着(conform)を実現するために、十分な柔軟性(sufficiently flexible)を必要として、独立に分散(individual)した有機単結晶ヘテロ接合しか得られず、連続的な有機単結晶ヘテロ接合薄膜を形成することができず、H.Alves、A.S.Molinari、Nature materials、7、574(2008)においけるFigure 3に示される。なお、得られた有機単結晶ヘテロ接合において、二層の有機単結晶の間が互いに交錯し、分散して連続せず、その概略図は、本発明の
図2(b)に示され、H.Alves、A.S.Molinari、Nature materials、7、574(2008)におけるFigure3cを直接観測し、且つImageJなどの画像解析ソフトウェアを組み合わせて計算することにより、二つの有機単結晶の間の貼着面積比Rが非常に小さく、50%よりも遥かに小さい(オレンジ色の長い単結晶(TTF、tetrathiofulvalene)と黄色の正方形状の単結晶(TCNQ、7、7、8、8-tetracyanoquinodimethane)との間の貼着面積と面積の大きい黄色の単結晶との比率が約14である)ことが分かり、且つこの技術は、その後のデバイス作製に高精度で複雑な操作を要求する必要があり、大規模な生産を実現することはできず、且つ物理的に機械的に貼着しているので、二種類の有機単結晶間の貼着は、ヘテロ接合界面の高品質を確保することができず、貼着のプロセスにおいて単結晶自体への損傷により、ヘテロ接合界面の品質(特に秩序度)が低下する可能性が高く、さらに不純物が導入されることにより、ヘテロ接合界面の高度秩序性が破壊される可能性もある。物理移行法は、独立して成長した結晶を一緒に移行するという目的を実現することができるが、移行プロセスにおいて界面の完全性を維持する鍵の問題を解決することができず、さらにすでに成長が完了した有機単結晶薄膜を破壊しやすく、引き合わない。
【0014】
気相エピタキシ法(Epitaxial Growth from Vapors)は、有機単結晶ヘテロ接合の作製に用いることができ、しかし有機半導体単結晶は、通常、異方性の外形を有する上に、分子間の比較的に弱いファンデルワールス力が作用するため、有機単結晶でエピタキシャル成長を実現することが困難であり、特定の種類の有機分子のみに対して気相エピタキシャル成長を実現することができ、得られた有機単結晶ヘテロ接合の多くが不規則な一次元ナノ線であり(Q.H.Cui、L.Jiang、and C.Zhang、Advanced Materials、24、2332(2012))、二種類の有機単結晶の間の貼着面積比及び有効貼着面積がいずれも非常に小さい(そのうち、Q.H.Cui、L.Jiang、and C.Zhang、Advanced Materials、24、2332(2012)におけるFigure 1Dに基づき、画像解析ソフト(例えばImageJ)を利用してcopper phthalocyanine(CuPc)及び5、10、15、20-tetra(4-pyridyl)-porphyrin(H2TPyP)の二種類のナノ線の直径の比値を推定し、貼着面積比Rが5%未満と計算できる)。なお、気相エピタキシ法により得られた有機単結晶ヘテロ接合を構成する有機単結晶薄膜は、被覆面積が小さく、二次元高被覆を実現できず、且つ大面積の連続成長を実現できない。さらに、気相エピタキシ法は、エネルギ消費量が大きく、作製器具への要求が高く、製造コストが高く、工業化のニーズを満たすことができない。
【0015】
溶液法は、大面積の有機単結晶の作製を実現することができ、溶液二段成長法を採用して、予め作製された第一層の有機単結晶の上に、第二層の有機単結晶を成長して形成することが報告されており、最も肝心なステップは、直交溶媒を使用して第二種の単結晶成長プロセスによる第一層の単結晶への損傷を防止する必要があり、比較的に代表的なものは、以下の通りである。(J.K.Wu、C.C.Fan、and G.B.Xue、Advanced Materials、27、4476(2015))、(X.Zhao and T.J.S.Dennis、ACS Applied Materials&Interfaces、10、42715(2018))は、流し込み法を採用して二層の単結晶を作製することを報告し、第二層の結晶が成長する時に、第一層の結晶を横断する必要があるので、第二層の結晶の成長は、第一層の結晶の厚さと結晶表面の物理化学的性質の影響を大きく受け、第二層の結晶の成長方向が乱された後、第一層の結晶の成長方向とは、一定の角度差を形成することにより、交錯して成長し、その成長概略図は、
図2(c)と
図2(e)に示され、例えばX.Zhao and T.J.S.Dennis、ACS Applied Materials&Interfaces、10、42715(2018)におけるFigure2(b)を直接観測することで、この有機単結晶ヘテロ接合の局所的形態を示すSEM図では、二本の有機単結晶の間の貼着面積が非常に小さいことが直接見られ、ヘテロ接合界面の貼着面積比Rも非常に小さく、有機単結晶ヘテロ接合を構成する有機単結晶薄膜の二次元高被覆を実現できないことは、非常に容易に直接推定することができる。中国特許(CN108342779A)は、正確にパターン化された基板を事前に準備する必要があり、エネルギー消費が大きく、作製コストが高い単結晶ミクロンリボンp-nヘテロ接合アレイの成長方法を開示する。且つ最終的に得られた有機単結晶ヘテロ接合薄膜の水平被覆率は低く、前に記載のような二次元高被覆の要求に達成できない。これは、基板がパターン化された後、文に「フォトレジストストライプ120が基板110上に間隔をおいて配置されており、疎水性の単分子層130が基板110上に形成されている」と言及されており、この特許の
図3と併せて、チャネルの面積がフォトレジストストライプで半分占められていることがはっきりと観察できるが、得られた有機単結晶ヘテロ接合薄膜は、パターン化されたテンプレート突起(フォトレジストストライプ)の谷縁に沿って成長しており、水平に被覆できる面積は、非常に制限され、チャネルにおいて二次元高被覆を実現する有機単結晶薄膜を得ることができないためである。光電デバイスにおける活性層(例えば、有機半導体分子で構成される有機単結晶薄膜)がチャネル内において効果的な電気的及び/又は光電効果を実現できることが当業者には公知である。基板上に、チャネルのほか、他の堆積物(例えば、フォトレジストストライプで構成されるパターン化されたテンプレート)がある可能性がある。また、中国特許(CN108342779A)の発明者が発表した論文(W.Deng and J.Jie、ACS Applied Materials & Interfaces、11、39(2019))によると、Figure 2eに示されるのは、局所範囲の小さな光学顕微鏡図であり、そのうち、グレーストライプは、パターン化されたテンプレート突起であり、グレーストライプに平行な方向は、結晶成長の方向Vであり、グレーストライプに垂直な方向は、方向Hである。画像解析ソフト、例えばImage Jを用いて解析し、前記方向Hに、結晶幅の合計がグレーストライプのない溝(ここでは、チャネル)に占める比率を溝における水平被覆率R
Hとして直接計算することができ、
channel<30%である。方向Hに、結晶幅の合計が基板全体(グレーストライプを含む)に占める比率を全体の水平被覆率R
H<15%として計算する。得られたのは、溝だけでの水平被覆率が比較的に低く、基板上での全体の水平被覆率がより低く、有機単結晶薄膜の二次元高被覆を実現することができず、デバイスアレイの性能を大きく制約する。別の態様で、溶液法で大面積有機単結晶を作製する時に、その構成材料である有機分子(溶質)の有機溶媒における溶解性が高いことが要求されるが、そうしないと溶質の伝送が制限され、結晶成長に影響を与える。二段法を利用して有機単結晶ヘテロ接合複合膜を作製する時、第一層の有機結晶を全く溶解せず、且つ第二層を構成する有機分子に対する溶解性が高い直交溶媒を探す必要があるため、材料と溶媒への選択が大きく制限され、選択できる材料の範囲が非常に狭く、二層以上の有機単結晶薄膜で構成される有機単結晶ヘテロ接合を作製することはほとんどできず、且つ、第二層の結晶の成長プロセスにおいて、第一層の結晶の上面に一定の損傷を与えることは避けられず、同様にヘテロ接合界面の品質に影響を与える。二段法以外に、二種類の有機半導体分子を一段法を採用して同一の混合溶液に調合し、直接的に一度に成長して有機単結晶ヘテロ接合を得ることができ、成長プロセスを簡略化するだけでなく、さらに二種類の有機単結晶の有機結合を実現することができ、移行時又は第二層の単結晶の作製時の第一層の結晶表面への損傷を回避することができ、その場での有機単結晶ヘテロ接合薄膜成長を実現することができる。本発明者らは、前期の探索において、液滴固定結晶法(Droplet-Pinned Crystallization、DPC法と略称される)を用いて有機単結晶ヘテロ接合複合膜を一段法で作製し、混合溶液を利用して二層の有機単結晶ヘテロ接合を得る試みがあったが(H.Li、C.Fan、and W.Fu、Angewandte Chemie International Edition、54、956(2015)、(H.Li and H.Li、Journal of the American Chemical Society、141、25(2019))、得られた有機ヘテロ接合単結晶薄膜の形態は、効果的に制御されておらず、依然として交錯して成長し、その概略図は、
図2(c)と
図2(e)に示され、交錯して成長する形態の有機単結晶ヘテロ接合において、上下層の結晶の間が常に完全に被覆されておらず、貼着には、はっきりと見える空隙が存在し(
図18(a)と(b)に示すように、結晶の間に空隙が存在する)、貼着面積比の最大値が制限され、理想的な有機単結晶ヘテロ接合に高効率貼着性を必要とする要求を満たすことができず、且つH.Li、C.Fan、and W.Fu、AngewandteChemie International Edition、54、956(2015)のFigure 2aとH.Li and H.Li、Journal of the American Chemical Society、141、25(2019)のFigure 5e(それぞれ本発明の
図18(a)および(b)に示される)において、有機単結晶ヘテロ接合トポグラフィを局所的に小範囲で特徴付ける光学顕微鏡図において、結晶形態の不規則性がはっきりと見え、前記結晶形態の不規則的な状況は、結晶配向の不均一、分岐、幅の変化などを含むが、これらに限定されない。H.Li、C.Fan、and W.Fu、Angewandte Chemie International Edition、54、956(2015)のFigure 2a(本発明の
図18(a)に示される)におけるC60結晶を画像解析ソフト(例えばImageJ)で統計した後、結晶成長に垂直な方向H(つまりFigure 2aでは薄い黄色ストライプに垂直な方向であり、薄い黄色ストライプは、C60結晶である)での結晶の幅の合計が基板に占める比率を求め、得られた面積の大きいC60結晶で構成される薄膜の水平被覆率R
Hが約67%程度である(別のDPP-PR結晶で構成される薄膜は、この図では4本しかなく、統計的に意味のあるデータを取得できない)。同様に、図像解析ソフトウェア(例えばImageJ)を利用してH.LiandH.Li、Journal of the American Chemical Society、141、25(2019)のFigure 5e(本発明の
図18(b)に示される)における唯一の結晶を計算した後(なお、この図では、結晶が6本しかなく、実際には統計的な意味を有するデータを得ることが困難であるので、ここで計算して得られたデータは、比較用としてのみ使用される)、結晶成長に垂直な方向H(つまりFigure 5eでは黄色ストライプに垂直な方向であり、黄色ストライプは、結晶である)での結晶の幅の合計が基板に占める比率を求め、得られた面積の大きい結晶薄膜の水平被覆率R
Hが約65%程度であり、液滴固定結晶法を利用して得られたこのような有機単結晶薄膜は、二次元高被覆成長を実現できないことを意味する。上記溶液法(二段法と一段法を含む)で有機単結晶ヘテロ接合を成長させることは、異なる種類の有機単結晶薄膜の組み合わせを良好に実現することができるが、有機単結晶ヘテロ接合薄膜の形態への正確な制御が不十分であり、理想的な有機単結晶ヘテロ接合薄膜形態を得ることができない。
【0016】
以上をまとめると、大規模工業化生産が可能な最も理想的な有機ヘテロ接合薄膜は、高度秩序性、高効率貼着性を有するヘテロ接合界面であり、且つ二次元高被覆を実現できる有機単結晶ヘテロ接合薄膜である。前記有機単結晶ヘテロ接合薄膜は、少なくとも二層が貼着され、異なる材料で構成される有機単結晶薄膜を含み、ヘテロ接合界面が最も理想的な高度秩序性を実現することを確保し、二層の隣接する有機単結晶薄膜の間の高効率貼着性は、貼着面積比が十分に大きいことを確保し、ヘテロ接合界面に高い収容量を備えさせ、前記有機単結晶ヘテロ接合薄膜に基づいて作製された光電デバイスに多様化した電気学、光電及び特別機能を実現させることができ、二次元高被覆の有機単結晶薄膜は、デバイス性能の最大化の要求を満たすことができ、工業的な生産と高度統合デバイスアレイの作製を実現することができる。しかし、従来技術では、前に記載のような有機単結晶ヘテロ接合薄膜を作製することができず、主に以下の3つの面の大きなチャレンジが存在する:1)有機ヘテロ接合薄膜の成長プロセスにおいて、二層の有機単結晶ヘテロ接合を例にとると、第二層の有機単結晶薄膜は、すでに作製された第一層の有機単結晶薄膜上で成長又は貼着する必要がある時、第一層の有機単結晶薄膜の表面に損傷を与えやすく、高品質で高度に秩序化されたヘテロ接合界面を得ることができず、2)有機単結晶薄膜は、その内部に厳しい周期的配列を必要とするため、成長環境に対する要求が非常に厳しく、第二層の有機単結晶の成長は、第一層の有機単結晶の厚さ及び結晶表面の物理的、化学的性質の深刻な影響を受け、成長方向が深刻な干渉を受け、結晶には交錯成長が現れやすく、結晶の品質が低下し、貼着面積比ができるだけ大きいヘテロ接合界面を得ることができず、3)有機単結晶薄膜の形態の制御が困難であり、隣接する二層がいずれも有機単結晶薄膜であることを確保するという前提で、少なくとも一層の有機単結晶薄膜の二次元高被覆を実現することができない。このため、どのように理想的な高度秩序性、高効率貼着性及び二次元高被覆の有機単結晶ヘテロ接合複合薄膜を取得するかは、巨大な技術的難題であり、有機単結晶ヘテロ接合複合膜に基づく光電デバイスの多機能化、統合化、工業化を実現する最大の障害でもある。従来技術は、上記障害を突破することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来技術の不足に対して、本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術の不足を克服し、高度秩序性、高効率貼着性を同時に有するヘテロ接合界面の高品質の有機単結晶ヘテロ接合複合膜を提供し、さらに、有機単結晶薄膜の二次元高被覆を実現し、上記三つの要求を同時に満たす、理想的なポグラフィを有する有機単結晶ヘテロ接合複合膜、その作製方法、及び該複合膜を含む光電デバイスアレイを得ることである。該有機単結晶ヘテロ接合複合膜は、高キャリア伝送性能と比較的に長い励起子伝送距離を同時に実現でき、一定の光電特性を統合することができ、且つ単結晶の形態を制御しやすく、安定性が高く、作製方法が簡便で、工業的大面積作製及びフレキシブル統合等を実現することができる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従来技術に存在する問題に基づいて、発明者は、多くの研究とたゆまぬ努力を経て、従来技術の幾重にもわたる障害を克服し、予想外に高品質の界面、高効率貼着性を有する「両高」高品質有機単結晶ヘテロ接合複合膜を作製し、有機単結晶ヘテロ接合複合膜の形態とデバイス性能が従来のレベルに比べて大幅に向上し、さらに、これに基づいて有機単結晶薄膜高被覆(二次元高被覆)を実現し、「三高」の理想的な形態を有する有機単結晶ヘテロ接合複合膜を得て、同時に従来の有機単結晶ヘテロ接合成長技術では解決できなかった3つの面の巨大なチャレンジを解決した。本発明で作製された有機単結晶ヘテロ接合複合膜は、形態と材料の理想的な状態を同時に満たし、これは、理想的な状態の工業化された多機能有機半導体光電デバイスを実現する鍵である:この有機単結晶ヘテロ接合複合膜は、電荷有効分離、キャリアの高効率伝送のための面積が最大化された高品質のチャネルを提供し、この有機単結晶ヘテロ接合複合膜に基づいて作製された有機半導体光電デバイスは、工業界で、キャリアの伝送性能が最も高く、励起子伝送距離が最も長く、統合度が最も高く、選択可能な材料範囲が最も広く、作製方法が最も簡単であり、柔軟に組み合わせやすく、その場での高被覆を実現できるなどの利点がある。同時に、ほぼ理想的な状態を有する上記有機単結晶ヘテロ接合薄膜及対応する半導体デバイスを大規模で工業的に作製するための堅牢な基礎を築き、従来技術の巨大な障害を打ち破る。
【0019】
本発明は、以下のような技術案を採用する。
【0020】
本発明の第一の目的は、有機単結晶ヘテロ接合複合膜(complex film of organic single-crystalline heterojunction)を提供することであり、前記有機単結晶ヘテロ接合複合膜は、M種の有機材料を含み、Mが2以上の正整数であり、前記有機単結晶ヘテロ接合複合膜は、積層構造(laminated construction/configuration/structure)を有し、前記積層構造は、有機単結晶ヘテロ接合複合膜がN層の有機単結晶薄膜によって順次積層されて構成され、Nが2以上の正整数であり、前記有機単結晶薄膜は、有機単結晶アレイ(organicsingle-crystallinearray)で構成され、前記有機単結晶アレイは、複数本の結晶で構成され、結晶の結晶化形態は、単結晶であり、前記有機単結晶ヘテロ接合複合膜には、少なくとも一つの有機単結晶高効率結合ユニット(organic single-crystalline efficiently coupled unit)が含まれ、前記有機単結晶高効率結合ユニットは、有機単結晶薄膜M
Tと有機単結晶薄膜M
Bで構成され、高効率貼着性(efficient lamination)を有し、前記高効率貼着性は、有機単結晶高効率結合ユニットが十分に高い貼着面積比を有することであり、前記有機単結晶薄膜M
Tと有機単結晶薄膜M
Bが貼着され、有機単結晶薄膜M
TとM
Bを構成する材料が異なる。その構造の平面概略図は、
図1に示される。
【0021】
前記有機単結晶ヘテロ接合複合膜は、積層構造を含み、具体的には、少なくとも一つの有機単結晶高効率結合ユニットにおける二層の有機単結晶薄膜が積層貼着(laminate together)の方式で(
図3(b)に示される)接触されることであり、N≧3である場合、多層多成分の有機単結晶ヘテロ接合複合膜に対して、第三層又は多層有機単結晶薄膜は、積層貼着(laminate together)または他の貼着方式で貼着することができ、例えば、
図3のうちのいずれか一つまたは複数の貼着方式を含むが、これらに限定されない。
図4に示すように、N=3である場合、三種類の有機単結晶薄膜が有機単結晶ヘテロ接合複合膜を構成する貼着方式は、以下を含むが、これらに限定されない。
【0022】
前記MとNの値は、等しくてもよく、又は等しくなくてもよく、MがNよりも小さい時、隣接する、接触する有機単結晶薄膜で構成される材料が異なるであることを確保する必要がある。N=3、M=2を例にして、有機単結晶ヘテロ接合複合膜の積層構造は、ABA又はBABであってもよい(そのうち、AとBは、それぞれ構成材料が異なる有機単結晶薄膜を表す)。
【0023】
有機単結晶ヘテロ接合複合膜には、少なくとも一つの前記有機単結晶高効率結合ユニットが含まれ、具体的には、有機単結晶ヘテロ接合複合膜において、有機単結晶高効率結合ユニットの数は、1以上であり、有機単結晶高効率結合ユニットの数は、高効率貼着性を実現できる隣接する二層の有機単結晶薄膜の数に依存し、最大ではCN
2であり(つまり、N層の中から二層の有機単結晶薄膜を任意に選択しても高効率貼着性を実現することができ、CN
2=N×(N-1)/(2×1))、N=2である場合、有機単結晶高効率結合ユニットの数は、1であり、N=3である場合、有機単結晶高効率結合ユニットの数は、1、2、3であってもよく、N=4である場合、有機単結晶高効率結合ユニットの数は、1、2、3、4、5、6である。有機単結晶ヘテロ接合複合膜は、一つの有機単結晶高効率結合ユニットのみで構成されてもよい。
【0024】
前記有機単結晶高効率結合ユニットの高効率貼着性は、貼着面積比R≧50%であり、前記貼着面積比Rは、有機単結晶高効率結合ユニットを構成する二層の有機単結晶薄膜の間の貼着の面積Atotalと二層のうち、面積が比較的に大きい有機単結晶薄膜の面積Alargeとの比値であり、つまり、R=Atotal/Alargeであり、好ましくは、R≧60%であり、好ましくは、R≧70%であり、好ましくは、R≧80%であり、好ましくは、R≧90%であり、最も好ましくは、R=100%である(つまり、Atotal=Alargeである)。
【0025】
さらに、前記貼着面積比Rの検出方法は、前記有機単結晶高効率結合ユニットにおいて、二層のうち、面積が比較的に大きい有機単結晶薄膜M
Lにおけるm本の隣接する結晶をランダムに抽出しR=A
total/A
large、A
largeは、前記m本の結晶面積の合計であり、A
large=A
large1+A
large2+…+Alargemであり、そのうち、A
large1、A
large2、…A
largemは、それぞれ第1本~第m本の結晶の各自の面積であり、A
totalは、前記m本の結晶貼着面積の合計であり、A
total=A
total1+A
total2+…+A
totalmであり、そのうち、A
total1、A
total2、…A
totalmは、それぞれ第1本~第m本の結晶の各自の貼着面積であり、mは、7以上の正整数である。
図2に示すように、有機単結晶高効率結合ユニットにおいて、面積が比較的に大きい有機単結晶薄膜は、M
Lであり、その面積は、A
largeであり、グレーで表され、面積が比較的に小さい有機単結晶薄膜は、M
Sであり、その面積は、A
smallであり、白い色で表され、
図2(a-c)は、二本の結晶のM
LとM
Sとの貼着の概略図であり、
図2(d)は、複数本の結晶が
図2(a)の形式で重畳する貼着面積概略図であり、
図2(e)は、複数本の結晶が
図2(c)の形式で重畳する貼着面積概略図である。A
totalは、貼着面積を表し、M
LとM
Sとの間の重ね合わせ部分の面積であり、A
largeとA
smallとの重ね合わせ部分であり、黒い色で表され、すなわちグレー部分と白い色部分との重ね合わせである。
図2(a)と
図2(d)において、貼着面積は、M
Sの面積に等しく、A
total=A
smallであり、ここで黒い色部分と白い色部分が重畳され、黒い色のみで表される。
【0026】
さらに、前記有機単結晶高効率結合ユニットにおいて、少なくとも一層の有機単結晶薄膜は、二次元高被覆であり、前記二次元高被覆は、結晶成長方向Vに沿う有機単結晶薄膜の垂直被覆率RV≧80%であり且つ結晶成長に垂直な方向Hの水平被覆率RH≧70%であり、前記垂直被覆率は、前記方向Vに、有機半導体単結晶薄膜連続の長さが基板の前記方向Vに占める比率であり、前記水平被覆率は、前記方向Hに、結晶幅の合計が基板の前記方向Hに占める比率であり、前記方向Vは、結晶成長に沿う方向であり、前記方向Hは、結晶成長に垂直な方向であり、好ましくは、RV≧85%であり、好ましくは、RV≧90%であり、好ましくは、RV≧95%であり、好ましくは、RV=100%であり、好ましくは、RH≧75%であり、好ましくは、RH≧80%であり、好ましくは、RH≧85%であり、好ましくは、RH≧90%である。前記連続は、前記方向Vに、有機単結晶薄膜を構成する結晶が完全に切断されていないことである。
【0027】
さらに、
図5に示すように、グレーストライプで表されるのは、有機単結晶アレイを構成する結晶であり、前記垂直被覆率R
V=(l
1+l
2+…+l
n)/nLであり、そのうち、l
1、l
2、…、l
nは、それぞれ第1本~第n本の結晶が方向Vでの各自の長さであり、Lは、方向Vでの基板の長さであり、前記水平被覆率R
H=(w
1+w
2+…+w
n)/Wであり、そのうち、w
1、w
2、…、w
nは、それぞれ第1本~第n本の結晶が方向Hでの各自の幅であり、Wは、方向Hでの基板の幅であり、nは、7以上の正整数である。
【0028】
本発明によって提供される有機単結晶ヘテロ接合複合膜は、多層多成分の構造を有し、高性能有機半導体デバイスの多機能化を実現するための基礎を提供し、単一デバイス上で多種の電気、光電機能の統合を実現することができ、空間資源の節約を実現するのに有利である。有機単結晶ヘテロ接合複合膜を構成するのは、有機単結晶薄膜であるため、有機単結晶自体は、すべての材料形態の中で長距離秩序性が最も高く、純度が高く、欠陥が少ないなどという利点を有するため、任意の二層の隣接する有機単結晶薄膜の間に高度に秩序化され、粒界のないヘテロ接合界面を提供し、正孔-電子の複合及び分離、キャリアの注入と抽出などの電気的/光電的機能を実現する最適なチャネルとなる。有機単結晶ヘテロ接合複合膜における隣接する二層の有機単結晶薄膜M
TとM
Bとの間の貼着面積比は、実際に動作する機能領域の面積に影響を与え、貼着面積比が小さすぎると、光電デバイスの実際の動作性能は、大きく制限される。このため、貼着面積比が大きいほど、実際に動作する領域の面積が大きくなり、デバイスが実現できる光電特性が高い。本発明における有機単結晶高効率結合ユニットにおいて、少なくとも二層の有機単結晶薄膜の間に採用されているのは、積層貼着方式であるので(その構造概略図は、
図2(a)、
図2(d)及び
図3(b)、
図4(b)に示され、そのうち、
図2(a)及び
図2(d)は、平面上視図であり、
図3(b)、
図4(b)は、立体概略図であり、二層又は複数層の有機単結晶が重ね合わせて有機単結晶ヘテロ接合が形成されていることが観察できる)、十分に高い貼着面積比を有し(
図10を例にとると、そのうち、
図10(b)は、
図10(a)の概略図であり、計算を経て、その貼着面積比が50%を超えることを得ることができる)、高効率貼着性を実現し、ヘテロ接合界面で発生する電気的/光電現象を可能な限り最大化することを確保し、前記有機単結晶ヘテロ接合複合膜に基づいて作製された半導体デバイスに優れた電気的/光電特性を取得させることができる。有機単結晶高効率結合ユニットにおいて、少なくとも一層の有機単結晶薄膜は、二次元高被覆を実現することができ、同時に高い垂直と水平被覆率を有し、キャリアの高効率伝送のために良質なチャネルを提供し、デバイス内で実際に動作するキャリアの数を大幅に増加させ、さらに一枚の有機単結晶ヘテロ接合複合膜上で複数のデバイスの高度統合を実現するのに有利であり、さらに有機単結晶ヘテロ接合複合膜の電気的/光電特性を最終的に工業に応用できる可能性をさらに向上させる。
【0029】
さらに、前記有機単結晶高効率結合ユニットにおいて、少なくとも一層の有機単結晶薄膜は、有機半導体分子から選択され、有機単結晶ヘテロ接合複合膜のうちの他の一層又は多層有機単結晶薄膜は、有機半導体分子、光電機能を有する有機分子、強誘電機能を有する有機分子のうちのいずれか一つ又は複数から選択されてもよい。好ましくは、前記有機半導体分子のコアは、共役系を有する。
【0030】
さらに、前記有機半導体分子は、線形ベンゾ化合物及びその誘導体、線形ヘテロベンゾ化合物及びその誘導体、ベンゾチオフェン化合物及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、フラーレン及びその誘導体、アリール基ジイミド類化合物及びその誘導体、シアノ置換及びハロゲン置換化合物のうちのいずれか一つ又は複数から選択される。前記誘導体は、ある化合物の分子における原子又は原子団が他の原子又は原子団に置換されて生成された生成物である。例えばメタン(CH4)を母体とすると、メタノール(CH3OH)、塩化メチル(CH3Cl)は、いずれもその誘導体である。前記一定の光電又は強誘電機能を有する有機分子は、いずれか一つ又は複数の光電効果又は強誘電効果を有する有機材料である。
【0031】
好ましくは、前記隣接する二層の有機単結晶薄膜は、それぞれp型及びn型の有機半導体分子から選択され、前記有機半導体分子のコアは、一定の共役構造を含み、一定の長さのアルカン鎖又はシラン鎖側基を有し、同一の溶媒において溶解性が高く、前記同一の溶媒は、単一の溶媒であってもよく、複数成分の混合溶媒であってもよい。異なるタイプの有機半導体分子を選択することにより、双極性のキャリア伝送を実現でき、ヘテロ接合の界面で多様化の光電機能を実現できる。好ましくは、有機単結晶高効率結合ユニットを構成する二層の有機単結晶薄膜の二種類の分子の同一溶媒における結晶化速度の間に一定の速度差があり、一方の分子を先に核形成して積み重ね成長させて結晶化させた後、他方の分子を既に成形された結晶上で核形成して成長させることが容易である。
【0032】
そのうち、前記有機半導体分子は、導電率が有機導電体と有機絶縁体との間に介在する材料である。前記共役系とは、共役π結合を形成できる系である。線形ベンゾ化合物及びその誘導体、線形ヘテロベンゾ化合物及びその誘導体、ベンゾチオフェン化合物及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、フラーレン及びその誘導体、アリール基ジイミド類化合物及びその誘導体等の材料分子のコアは、一定の共役構造を含み、結晶性が高く、高品質の有機半導体単結晶薄膜を容易に取得し、6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)と2,7-ジオクチル[1]ベンゾチエノ[3,2-b]ベンゾチオフェン(C8-btbt)を例とすると、一定の長さのシラン鎖又はアルカン鎖側基を有し、有機溶媒における溶解性が高く、有機単結晶薄膜の二次元高被覆成長を実現することに有利であり、大面積の高品質の有機単結晶薄膜を取得でき、さらに有機単結晶高効率結合ユニットにおいて二層の有機単結晶薄膜間の高効率貼着性を実現できる。
【0033】
さらに、前記有機単結晶高効率結合ユニットは、積層結合性を有し、前記積層結合性は、有機単結晶薄膜MTと有機単結晶薄膜MBとの間との積層配向が一致する(well-aligned/uniformlyorientated)。
【0034】
さらに、前記積層配向が一致することは、積層配向度F
L≧0.625であり、好ましくは、F
L≧0.70であり、好ましくは、F
L≧0.75であり、好ましくは、F
L≧0.80であり、好ましくは、F
L≧0.85であり、好ましくは、F
L≧0.90であり、好ましくは、F
L≧0.95であり、より好ましくは、F
L=1。である。積層配向度が1に近いほど、その積層配向度は、平行に近くなり、F
L=1である場合、有機単結晶薄膜M
Tと有機単結晶薄膜M
Bとの間に配向が完全に一致し、
図2(a)と
図2(d)に示すように、二層の有機単結晶アレイは、互いに平行である(有機単結晶アレイは、有機単結晶薄膜で構成される)。
【0035】
前記配向角の検出方法は、画像の画素点を解析できるソフトウェア(例えば、Image Jソフトウェア、Matlab、Photoshop、Adobe Illustratorなどであり、本発明はImage Jソフトウェアを例にとる)を利用して、光学顕微鏡の写真における有機単結晶薄膜の形態と微細構造を解析することにより配向角の値を求め、且つ後続の計算ステップを行って積層配向度を得ることができる。
【0036】
本発明の第二の目的は、有機単結晶高効率結合ユニットの作製方法を提供することであり、前記有機単結晶高効率結合ユニットは、積層結合成長法(laminating coupled growth method)によって得られ、前記積層結合成長法は、有機単結晶高効率結合ユニットにおける有機単結晶薄膜MTと有機単結晶薄膜MBが結晶の成長方向に沿って協同成長(synergistic growth)を実現し、有機単結晶高効率結合ユニットを作製し、前記有機単結晶高効率結合ユニットは、有機単結晶薄膜MTと有機単結晶薄膜MBで構成され、高効率貼着性を有し、前記有機単結晶薄膜MTと有機単結晶薄膜MBとは貼着され、有機単結晶薄膜MTとMBを構成する材料は異なり、前記有機単結晶高効率結合ユニットの高効率貼着性は、貼着面積比R≧50%であり、前記貼着面積比Rは、有機単結晶高効率結合ユニットを構成する二層の有機単結晶薄膜の間の貼着の面積Atotalと二層のうち、面積が比較的に大きい有機単結晶薄膜の面積Alargeとの比値であり、つまり、R=Atotal/Alargeであり、好ましくは、R≧60%であり、好ましくは、R≧70%であり、好ましくは、R≧80%であり、好ましくは、R≧90%であり、最も好ましくは、R=100%である。前記貼着は、有機単結晶薄膜を重ね合わせ/積み重ねて積層構造を形成することである。
【0037】
前記協同成長とは、有機単結晶ヘテロ接合を構成する異なる種類の有機分子を速度、成長界面などの面で正確に制御することにより、異なる種類の有機単結晶薄膜の間で相互に干渉しない成長を実現し、高効率貼着性を有する有機単結晶ヘテロ接合を得ることである。具体的には、前記協同成長は、有機単結晶薄膜MTを構成する結晶CTと有機単結晶薄膜MBを構成する結晶CBの成長方向が基本的に一致し、第二層に位置する結晶CTが第一層に位置する結晶CBの上に最大程度で重ね合わせることができ、それにより貼着面積比の最大化を実現し、さらに有機単結晶高効率結合ユニットの高効率貼着性の実現を推進する。
【0038】
さらに、前記積層結合成長法は、混合溶液に対してせん断を印加して有機単結晶高効率結合ユニットを作製し、前記せん断は、定常のせん断温度で混合溶液に対して定常方向に沿って定常の速度で溶液せん断を行い、前記混合溶液は、二つ又は複数の溶質が同時に溶解されている溶液であり、前記溶質は、少なくとも有機半導体分子から選択され、前記二つ又は複数の溶質は、共同溶媒を有し、前記共同溶媒は、前記二つ又は複数の溶質が同時に溶解されている溶媒であり、前記共同溶媒は、一つ又は複数の溶媒を含んでもよく、前記二つ又は複数の溶質が共同溶媒での溶解度S≧0.05wt%であり、前記二つ又は複数の溶質の間は、相互反応がなく且つ共晶を形成せず、前記二つ又は複数の溶質間は、結晶成長プロセスの中間に不等速分相(horizontal phase separation)及び/又は異界面分相(verticalphase separation)を実現し、前記不等速分相は、異なる溶質間の結晶成長の速率が完全に等しくないことであり、前記異界面分相は、異なる溶質間の成長界面が完全に同じでなく、前記成長界面は、結晶の成長プロセスにおいて、結晶核形成成長を誘発する界面であり、前記成長界面の類別は、気-液界面(air-liquid interface)又は固-液界面(solid-liquid interface)から選択され、好ましくは、溶解度S≧0.1wt%であり、好ましくは、溶解度S≧0.2wt%であり、好ましくは、溶解度S≧0.3wt%であり、好ましくは、溶解度S≧0.4wt%であり、好ましくは、溶解度S≧0.5wt%である。前記溶解度は、溶媒に溶解されている溶質分子と溶液との質量百分率である。
【0039】
さらに、せん断力の導入は、溶液における有機単結晶の成長前線に対して単一誘導の誘導作用を有し、有機分子を印加してせん断力の方向に沿って成長させることにより、最終的な有機単結晶の均一な配向の積層結合成長を実現する。積層結合を利用して成長した有機単結晶ヘテロ接合複合膜は、配向が一致するという特徴を有し、交差し、分岐し、乱雑に配向する薄膜に比べて、一方、欠陥と粒界がキャリアにもたらすトラップ作用を回避し、電荷の高品質の伝送を確保し、前記有機単結晶ヘテロ接合複合膜に基づいて得られた半導体デバイスの電気的/光電特性を大幅に向上させ、他方、配向が一致するヘテロ接合薄膜は、後続のデバイス作製時の不均一性を大幅に低減させ、有機単結晶ヘテロ接合複合膜の配向方向に基づいて対応する電極を直接作製することができ、それにより統合度が高く、均一な複数の多機能デバイスアレイを得ることができる。
【0040】
説明すべきことは、二種類又は複数種類の溶質を共通溶媒に十分に溶解して混合溶液を作製することにより、一段法によって直接成長して有機単結晶ヘテロ接合複合膜を得ることを確保でき、他の方法を採用するプロセス(例えば物理的移行、直交溶媒成長などのプロセス)において既に成長した有機単結晶薄膜への破壊を回避することができる。共通溶媒を選択して二種類又は複数種類の溶質を溶解することは、現在に合成されている多くの溶解しやすく、溶解性が類似している有機半導体小分子系とマッチングし、溶液法による有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製体系の選択範囲を広げる。二種類又は複数種類の溶質を共通の溶媒に十分に溶解するように制御することができ、前記十分な溶解は、混合溶液への後処理ステップ、例えば、加熱、撹拌、超音波振動のうちのいずれか一つまたは複数を含み、溶媒揮発プロセスにおいて、結晶成長の前線に十分な質量が伝達されることを確保し、結晶の連続的成長に十分な原料を提供し、垂直方向と水平方向の二つ次元での高被覆を得ることができる。
【0041】
前記二種類又は複数種の溶質間で相互反応がなく、且つ共結晶が形成されないということは、一方、溶質間で反応が発生して膜が形成されないことを避け、他方、単結晶形態が現れない固溶液結晶(solid solution crystal)又は共結晶(co-crystal)が形成されることを避けることである。二種類又は複数種類の溶質が混合溶液において成長する時に、相互に干渉又は影響しないことを確保するために、二種類又は複数種類の溶質が混合溶液において成長する速度及び/又は成長する界面が異なる。成長速度が異なることは、有機単結晶の核形成と成長が一定の時間スケールでのギャップを得て、不等速分相を形成し、後に成長した有機単結晶が先に成長した有機単結晶で形成された「軌道」に沿って成長し、それにより積層貼着された有機単結晶ヘテロ接合複合膜を得ることができることを確保できる。前記不等速分相の検出方法は、同じ環境(せん断温度、せん断速度、溶媒が同じである場合)での異なる溶質分子の結晶前線での位置を動的撮影(例えば光学顕微鏡による撮影)して観察することにより、その結晶速度を判断することができ、同じ時間帯内に、結晶前線が現れる時間が早いほど、結晶速度が速い。溶液法による結晶のプロセスにおいて、溶媒の揮発に伴い、空気-溶液-基板の三相界面では、溶質が析出して結晶化して核形成して成長し、その成長傾向に基づいて分類することができ、空気-溶液界面で成長する傾向と溶液-基板界面で成長する傾向の有機単結晶に分類することができ、前者は、気-液界面(air-liquid interface)を持つ成長パターンと考えられてもよく、後者は、固-液界面(solid-liquid interface)を持つ成長パターンと考えられてもよい。異なる成長パターンを持つ溶質は、同一の混合溶液中で基板に垂直な方向での異界面分相を実現することができ、つまり、一部の溶質は、液滴の底部(固-液界面)で核形成して成長し、他の一部の溶質は、同時に液滴の頂部(気-液界面)で核形成して成長し、互いに干渉せず、最終的に高効率貼着性を有する大面積の高被覆の有機単結晶ヘテロ接合複合膜を得ることができる。
【0042】
共通溶媒の中に同時に存在する溶質の種類数Pが2以上である場合、有機半導体材料のほか、(P-2)種の溶質は、結晶成長及び/又は結晶光電特性を修飾する補助剤から選択されてもよく、好ましくは、前記溶質は、ドーパント、染料、ゲルから選択される。
【0043】
さらに、前記成長界面の類別は、有機単結晶薄膜の形態が基板で予め堆積したナノ線障害物を横断する前後に明らかな変更が現れるか否かを観察することによって判断され、好ましくは、前記成長界面の類別の判断方法は、2p+1本の結晶成長方向に沿ってナノ線障害物を横断する結晶をランダムに選択し、pは、1以上の正整数であり、前記2p+1本の結晶に出会うナノ線障害物と結晶成長に垂直な方向との間のなす角Aoの絶対値|Ao|≦45°であり、
【0044】
説明すべきことは、前記成長界面の分類法では、有機単結晶薄膜が基板上に予備堆積したナノ線障害物を横断する前後の形態は、光学顕微鏡(OM)、原子間力顕微鏡(AFM)及び走査型電子顕微鏡(SEM)などによって微細構造を抽出できる方式で観察でき、選択されたナノ線障害物と結晶成長方向に垂直な方向とのなす角Aoは、絶対値Ao≦45°であり、
図6(b)に示され、特定の範囲のなす角は、ナノ障害物が結晶の進行成長のプロセスにおいて、障害の作用を果たすことを確保でき、Ao=0°である場合、ナノ障害物は、結晶の進行方向と完全に垂直であり、障害物の作用を最大限に発揮することは、結晶の成長界面をより明確に判断するのに役立ち、Ao≧45°である場合、溶質は、結晶化して核形成するプロセスにおいて、ナノ線障害物の方向に沿って成長する可能性が高く、障害の作用を果たすことができず、結晶成長方向の小幅な変化を引き起こすだけである。半数以上の結晶がナノ線障害物を横断する前後の形態が明らかに変化しないか否かに基づき、その成長界面の種類を判断することができ、半数以上の結晶がナノ線障害物を横断する前後に形態が明らかに変化しない場合、結晶が成長のプロセスにおいて液滴の頂部の界面のみで、つまり空気-溶液の界面で成長してこそ、完全な形態の結晶を形成することができ、溶媒の揮発に伴い、最終的に得られた結晶がナノ線障害物の上に落下し、結晶形態の完全性を確保できることを意味し、
図7に示される。半数以上の結晶がナノ線障害物を横断する前後の形態が明らかに変化する時、
図8に示すように、結晶が溶液-基板の界面に沿って成長することを意味し、成長プロセスにおいて、結晶の厚さに相当するナノ線障害物の阻害を受け、結晶の成長前線が阻害を受け、溶質の伝送が遮断されるため、結晶は、ナノ線障害物を横断して完全な形態の成長を保証し続けることができず、ある場合、一部の溶質だけが前進し続けることができ、得られたナノ線障害物を横断する前後の結晶形態が明らかに変化し、それが固-液界面成長パターンと考えられてもよい。前記結晶形態の変更は、有機半導体単結晶アレイを構成する各本の結晶の結晶成長方向、結晶幅、結晶形状等の結晶成長のいずれか一つのパラメータが変化することであってもよい。成長界面を分類し、異なる成長速度と組み合わせることにより、多成分の溶質核形成結晶成長を分離し、相互干渉を回避し、最終的に積層結合成長を実現することができる。好ましくは、前記ナノ線障害物は、銀、金などの不活性金属から選択され、溶媒による腐食作用を回避する。好ましくは、前記ナノ線障害物は、ナノ線障害物を含む懸濁液をスピンコートする方法によって作製されることができる。光学顕微鏡検出を例にして、結晶とナノ線の障害物の領域を光学顕微鏡で観察可能な適切な倍数に拡大すると、何十倍、何百倍に拡大してもよく、ナノ線を横断する前後の結晶の形態の変化を観察し、
図7に示すように(100倍に拡大する)、結晶の形態は、ナノ線の障害を横断する前後でほとんど変化せず、結晶の成長界面が気-液界面であることを意味することができ、
図8に示すように(100倍に拡大する)、結晶がナノ線障害物と出会った後に形態が明らかに変化し、結晶の幅が急激に狭くなり、さらに結晶の成長が不連続になったりする現象が発生し、形態が変化したことから、結晶が基板に沿って成長し、その成長界面が固-液界面であることを意味することができる。前記有機単結晶薄膜の形態は、具体的には、有機単結晶薄膜を構成する結晶の形態であり、前記結晶形態の明らかな変化は、ナノ障害物を横断する前後の結晶の形態に配向の乱れ、分岐、屈曲、変形のいずれか一つ又は複数の変化が現れることであり、
図8に示すように、結晶形態が変形する。
【0045】
同一種類の結晶の成長環境を制御することにより、成長界面の制御を実現することができる。前記成長環境への制御は、結晶の成長プロセスにおいて結晶が結晶化して核形成する方式に影響を与える環境要素のみへの制御にすぎず、溶媒分子と溶媒分子、溶媒分子と溶質分子、溶質分子と基板修飾層分子、溶媒分子と基板修飾層分子との間の相互作用力を制御することによって、結晶成長への制御を実現でき、具体的な制御方式は、溶媒の種類及び/又は混合溶媒の比率、基板修飾層の種類、せん断温度、せん断速度のうちのいずれか一つ又は複数を変更することを含み、溶媒の種類の変更を例に説明し、異なる種類の溶媒を選択して同一の種類の結晶の成長界面を変更し、有機溶液がトルエン溶媒を選択して調合すると、結晶がナノ線障害物と出会っても形態がほとんど変化しないことが現れ(
図7に示される)、成長界面は、気-液界面であり、溶媒がn-ヘプタンに変更される時、溶媒の表面張力が変更し、n-ヘプタンは、沸点がより低く、より揮発しやすく、且つ分子構造は、長鎖アルカンであり、トルエンのπ共役構造がなく(トルエンの分子構造には一つの芳香環が含まれる)、溶質分子と溶媒分子との間、溶媒分子と溶媒分子との間、溶媒分子と基板修飾層分子との間の相互作用力が変化し、この時に結晶がナノ線障害物と出会って大きく変化し、さらには連続して成長することができず、この時に成長界面が固-液界面に変更され、結晶の結晶化核形成の方式が変化し、従来の均一核形成からヘテロ核形成へと変化し、核形成密度とその後の成長は、基板の表面の形態の影響を受け、平均直径が結晶の厚さに相当するナノ線障害物と出会った場合に、成長を横断することができず、さらにはこのため溶質の質量伝送が阻害され、結晶の断続が現れる(
図8に示される)。
【0046】
さらに、前記有機単結晶高効率結合ユニットの作製方法は、
1) 不等速分相及び/又は異界面分相を実現できる二つ又は複数の溶質を混合溶液に配合し、共同溶媒で前記二つ又は複数の溶質を溶解することにより、二つ又は複数の溶質を制御して混合溶液において積層結合成長を実現させるステップと、
2) 成長環境の温度と湿度を制御し、安定的な成長環境を取得し、結晶成長プロセスにおいて、前記環境温度の偏差≦±2℃であり、前記環境湿度の偏差≦±3%であり、好ましくは、前記環境温度範囲は、10℃~35℃から選択され、好ましくは、前記環境温度範囲は、15℃~30℃から選択され、好ましくは、前記環境温度範囲は、20℃~25℃から選択され、好ましくは、前記環境湿度≦55%であり、好ましくは、前記環境湿度≦50%であり、好ましくは、前記環境湿度≦45%であり、より好ましくは、前記環境湿度≦40%であるステップと、
3) せん断ツールと基板との間の間隔を調整し、溶液貯留空間を作製し、前記溶液貯留空間は、せん断ツールの下面と基板との間に形成される空間であり、前記間隔は、50μm~300μmであり、且つせん断ツールの下面と基板との間の間隔の偏差≦10μmであることを確保し、好ましくは、前記せん断ツールと基板との間の間隔は、100μm~150μmであり、好ましくは、せん断ツールの下面と基板との間は、基本的に平行するステップと、
4) ステップ1)で作製された混合溶液をステップ3)で作製された溶液貯留空間に充填し、充填が完了した後に1~30s静置するステップと、
5) せん断ツールを用いて定常のせん断温度で混合溶液に対して定常方向に沿って定常の速度で溶液せん断を行い、成膜した後に得られる有機単結晶高効率結合ユニットの各層は、いずれも有機単結晶薄膜であり、前記定常のせん断温度は、せん断プロセスにおけるせん断温度の偏差≦±1℃であり、前記定常の速度は、せん断プロセスにおける速度が速度の偏差と選択される速度との比値≦±10%であることを満たし、前記せん断温度は、0℃~200℃であり、前記速度は、10μm/s~2000μm/sであり、好ましくは、前記速度は、速度の偏差と選択される速度との比値≦±2%であることを満たし、好ましくは、前記せん断温度は、20℃~150℃であり、好ましくは、前記せん断温度は、30℃~100℃であり、好ましくは、前記速度は、30μm/s~1500μm/sであり、好ましくは、前記速度は、50μm/s~1000μm/sであるステップと、を含む。
【0047】
具体的には、前記ステップ1)では、有機溶液を調合する時、選択された溶質に対する溶媒の溶解度を考慮する必要があり、好ましくは、前記共通溶媒が選択された多成分溶質を十分に溶解できることを確保するために、溶媒揮発速度が結晶成長およびその後の成長温度範囲の選択に与える影響を考慮する必要もある。好ましくは、沸点が比較的に高く、一定の共役系を有する有機溶媒を選択して有機溶液を調合し、沸点が比較的に高い溶媒は、成長温度の範囲がより広く、環境温度の影響を受けにくく、一定の共役系を有する有機溶媒は、同様に共役系を含む有機半導体小分子との間で一定のπ-π相互作用が生成することができ、選択された溶質の溶解性を向上させるのに役立ち、最も好ましくは、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、塩素化ナフタレンなどのベンゼン溶媒を選択することができ、有機単結晶半導体層の作製プロセスにおける溶液の揮発速度度を制御し、それによって得られた結晶及び有機単結晶ヘテロ接合複合膜の形態に対してより正確な制御を実現する。単一の溶媒を選択することに加えて、複数種類の溶媒を選択して一定の比率で混合して多溶媒系の溶液を調合することもでき、例えば、非極性のアルカン又はハロゲンを含む有機溶媒と混合してもよく、それにより溶液の極性、揮発速度、さらには結晶形態の次元へのより細かい制御を実現し、例えばフラーレン単結晶は、純粋なm-キシレンで成長すれば得られたのは、針状の一次元形態結晶であり、m-キシレンと四塩化炭素の混合溶媒で成長すれば得られたのは、帯状の二次元形態結晶であり、溶媒を調整することにより、異なる層の有機単結晶薄膜の間で高効率貼着性を実現する確率を高めることができる。なお、選択された多成分溶質が有機溶媒での十分な溶解を確保するために、例えば高温ステージで一晩撹拌することにより、又は加熱超音波の方式で、有機半導体分子を十分に拡散させ、且つ混合溶液全体に均一に分布させることができる。溶解が不十分なためにヘテロ核形成点が過剰になり、結晶粒のサイズが小さすぎて、さらにはいくつかの溶解できない溶質は、溶液中に直接的に早期に析出する可能性があり、最終的に得られた有機単結晶薄膜に多くの固体ヘテロ点が発生することを回避し、一方では、有機単結晶ヘテロ接合複合膜の欠陥となり、他方では、結晶の配向成長に深刻な影響を与え、得られたデバイスの電気的/光電伝送性能を低下させ、デバイスの不均一性を向上させる。
【0048】
選択された多成分溶質の間には、同じ混合溶液の中で異なる成長速度及び/又は成長界面が存在し、混合溶液の一段成長プロセスにおいて分相を実現できることを確保し、成長速度の異なる溶質については、共通溶媒の中で溶質が核形成して析出する速度が異なることは、大きな原因となり、急速に析出する溶質は、まず核形成して成長し、ゆっくり析出する溶質は、後に核形成して成長し、不等速分相を実現する。成長界面が異なる溶質については、一部が気-液界面で成長し、他の一部が固-液界面で成長することにより、結晶の核形成による成長が異なる界面で発生し、異界面分相を実現する。不等速分相と異界面分相の溶質が互いに干渉することなく核形成結晶成長することができ、さらに積層結合成長を実現するために保証を提供し、貼着面積比ができるだけ大きい有機単結晶ヘテロ接合複合膜を実現するのに有利である。
【0049】
前記ステップ2)において、比較的に安定した成長環境を取得するために、成長環境の温度と湿度を正確に制御する必要がある。湿度が高すぎると、通常、水分子は、容易に基板の表面に吸着される。一方、混合溶液が基板上で敷いて展開する時に、溶液の濡れ性に影響を与えることがあり、溶質分子の核形成及びその後の成長に影響を与え、他方、湿度が高すぎると、成長して得られた結晶の表面に一定の水分子がその上に吸着しやすくなることにより、最終的に得られる有機単結晶ヘテロ接合複合膜の電気的/光電特性に影響を与え、特にキャリア伝送のプロセスで負に帯電した電子を捕捉するトラップとなりやすく、n型の移動率が大幅に低下し、さらにその後に作製して得られるデバイスの不活性化を引き起こす可能性がある。このような水分は、通常、除去が困難であり、高温高真空の処理状況であっても、完全に除去することはできない。なお、比較的に高い湿度は、有機単結晶ヘテロ接合複合膜を取得する安定性に影響を及ぼしやすい。成長環境の温度は、せん断プロセスにおける有機半導体溶媒の揮発速度、溶質濃度の勾配拡散に一定の影響を与え、かつ得られた有機単結晶薄膜と基板の間の熱膨張係数の違いから、環境温度が高すぎたり低すぎたりすると、有機単結晶薄膜は、切れ目が発生しやすく、これらの切れ目は、同様に欠陥として作用し、高性能の電気的/光電特性の実現を阻害する。
【0050】
前記ステップ3)において、適切な溶液貯留空間を提供するために、せん断ツールと基板との間の間隔を正確に制御する必要がある。この空間内で、溶質の拡散と交換が実現可能であり、溶液貯留空間は、加熱された基板上に位置するので、溶液貯留空間内に温度勾配が存在し、溶質の拡散を引き起こす濃度勾配を引き起こし、間隔が大きすぎると溶液貯留空間が高くなり、空気との接触面積が大幅に増加し、溶媒が揮発しやすくなることにより、溶質の拡散勾配が影響を受け、結晶成長の前線に供給された原料が不足し、結晶成長が連続しなくなったり、途切れたり、得られた有機単結晶薄膜の厚さが不均一になったりする現象が現れる。小さすぎる間隔は、十分な溶液貯留空間がないことをもたらし、一方では十分に貯留する溶液量がなく、得られた有機単結晶薄膜の垂直被覆率を低下させ、一方、せん断ツールから受けるせん断作用が大きく増強し、且つ有機単結晶薄膜の厚さが影響を受け、かつ基板に垂直な方向の溶液の空間が狭すぎ、空間制限効果が生じ、結晶相には準安定状態から安定状態に変化するための十分な空間がなく、その結果、得られた有機単結晶薄膜には準安定状態があり、有機単結晶薄膜及び有機単結晶ヘテロ接合複合膜の全体的な品質が低下する。同様に、平行でないせん断ツールは、溶液が受けるせん断作用が不均一になり、有機単結晶薄膜の規則的なモフォロジーの形成を阻害し、異なる層の有機単結晶薄膜間の全体的な貼着面積を低下させ、且つ最終的に取得される有機単結晶ヘテロ接合複合膜の品質を低下させる。前記速度偏差は、せん断プロセスにおいて、実際の速度値が設定速度値からずれる差値であり、速度の偏差が小さいほど、速度が安定し、有機分子の結晶配向成長により有利である。同様に、前記環境温度の偏差、環境湿度の偏差、せん断温度の偏差、間隔の偏差も、実際値と設定値との差値である。
【0051】
より好ましくは、使用される溶液せん断ツールは、スキージ、ブレード、平滑棒、コイル棒、ブラシなど、基板との間に一定の体積の溶液貯留空間を形成できるツールから選択される。より好ましくは、前記せん断ツールは、平滑棒又はコイル棒を採用し、溶液貯留空間の体積の大きさを調整するために用いられ、それにより溶液のメニスカスに対する露出時間の制御を実現し、有機単結晶薄膜の成長速度を実現する。
【0052】
前記ステップ4)では、前記溶液貯留空間において混合溶液を充填する必要があり、そうしないと、得られた有機単結晶薄膜の水平被覆率が大幅に低下し、一部の領域の有機単結晶薄膜が欠落するという現象が発生し、一定の期間放置することは、適切な量の核形成点を取得できることを確保し、異なる層の有機単結晶薄膜間で高効率貼着比を有することを実現する確率を高め、有機単結晶ヘテロ接合複合膜を連続的に高被覆で成長させることができるためである。静置時間が長すぎると、溶媒が過剰に揮発し、溶質が早期に析出し、結晶形態の制御不能性が上昇する。
【0053】
前記ステップ5)において、せん断条件を正確に制御する必要があり、せん断ツールが静置後の混合溶液に対してせん断を行うことは、定常のせん断温度で混合溶液に対して定常方向に沿って定常の速度で溶液せん断を行うという「三つの定常」条件を同時に満たす必要がある。「三つの一定」条件を満たすせん断は、有機単結晶ヘテロ接合複合膜の成長プロセスのために安定した状態を維持することができ、有機単結晶薄膜の成長には非常に厳しい条件を必要とするため、比較的に小さな不安定であっても混合溶液における有機単結晶の成長に乱れを与え、得られた結晶が不連続になったり、形態が変化したりして、その単結晶性を保証することが困難になる。したがって、安定的な状態を維持すれば、このような不安定的な干渉を最小限に抑えることができ、個々の溶質が自体の不等速分相又は異界面分相の傾向に従って、混合溶液において干渉することなく核形成結晶成長を実現することに有利であり、高効率貼着性を有する有機単結晶ヘテロ接合複合膜を得る。一定方向のせん断力が混合溶液に指向性の補助作用を与え、積層結合成長を実現し、積層貼着された有機単結晶ヘテロ接合複合膜を得る。せん断のプロセスは、適切なせん断速度とせん断温度の範囲で行われ、結晶の核形成成長速度に合わせるために、せん断温度は、せん断速度にマッチングする必要がある。せん断温度とせん断速度の条件は、実際の状況に基づいて調整することができ、せん断温度が低すぎ、溶液をせん断するときに溶媒の揮発速度が遅すぎると、成長によって得られる有機単結晶薄膜が高度配向を実現するのに不利であることにより、有機単結晶薄膜におけるキャリアの伝送効率が低下する。せん断温度が高すぎ、溶媒の揮発速度が速すぎると、有機半導体分子は、せん断ツールの下と基板の間に形成された溶液貯留領域で長時間停滞する可能性があり、取得された単結晶は、連続しなく、有機単結晶薄膜の被覆率が低下し、同時に、せん断温度が高すぎると、取得された有機単結晶薄膜の亀裂又は他の形式の破壊が発生し、取得された有機単結晶ヘテロ接合複合膜の性能が低下する。同様に、せん断速度が遅すぎると、溶液へのせん断効果が明らかでなく、結晶形態をより良く制御できず、配向の乱れが発生しやすく、積層結合成長を実現できない可能性があり、速度が速すぎると、溶液へのせん断効果が強すぎ、結晶は、完全な溶液貯留領域をまだ成長させていないうちに、せん断ツールによって引っ張られ、結晶の厚さが薄すぎ、結晶の表面粗さが増加し、結晶の品質が低下し、良好な形態を有する有機単結晶ヘテロ接合複合膜を取得できない可能性があり、最終的に、後続に作製されたデバイスは、正常に動作できない。このため、適切な範囲内のせん断速度とせん断温度で混合溶液に対して一定方向のせん断作用を実施してこそ、有機単結晶ヘテロ接合複合膜の厚さ、配向、貼着面積及び被覆率に対する正確な制御を実現でき、理想的な形態を有する有機単結晶ヘテロ接合複合膜を得ることができる。
【0054】
さらに、有機単結晶高効率結合ユニットの作製方法において、前記溶質は、有機半導体分子、光電機能を有する有機分子、強誘電機能を有する有機分子のうちのいずれか一つ又は複数から選択される。
【0055】
さらに、有機単結晶高効率結合ユニットの作製方法において、前記有機半導体分子は、線形ベンゾ化合物及びその誘導体、線形ヘテロベンゾ化合物及びその誘導体、ベンゾチオフェン化合物及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、フラーレン及びその誘導体、アリール基ジイミド類化合物及びその誘導体、シアノ置換及びハロゲン置換化合物のうちのいずれか一つ又は複数から選択される。
【0056】
本発明の第三の目的は、前のようないずれか一つの方式に従って有機単結晶高効率結合ユニットを作製するステップを含む有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法を提供することである。
【0057】
さらに、前記有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法は、作製された一つ又は複数の有機単結晶高効率結合ユニットの基礎で、他の方法を利用して作製された単層又は多層有機単結晶薄膜を重ね合わせることを含む。
【0058】
さらに、前記他の方法は、打設法、溶液せん断法、スピンコート法、ステンシル印刷法、蒸着法、移行法のうちのいずれか一つ又は複数から選択される。前記他の方法は、有機単結晶高効率結合ユニット作製方法以外の他の方法である。
【0059】
さらに、前記有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法は、後処理のステップをさらに含む、前記後処理は、有機単結晶ヘテロ接合複合膜全体に対して後処理を行い、及び/又は有機単結晶ヘテロ接合複合膜を構成する有機単結晶高効率結合ユニットに対して後処理を行い、及び/又は有機単結晶ヘテロ接合複合膜を構成する各層又は多層有機単結晶薄膜に対して後処理を行い、好ましくは、前記後処理は、熱処理、真空処理、溶媒アニール処理、表面処理のうちのいずれか一つ又は複数から選択され、好ましくは、前記表面処理は、紫外オゾン処理、プラズマ衝撃、赤外処理、レーザエッチングのうちのいずれか一つ又は複数から選択される。前記後処理は、物理化学的方法を採用して作製された有機単結晶薄膜の形態及び/又は性能をさらに向上させる処理であり、例えば熱処理を経た後、有機単結晶薄膜の安定性が向上する。
【0060】
本発明の第四の目的は、光電デバイスアレイを提供することであり、前記光電デバイスアレイは、P個の空間次元において統合されて得られた一つまたは複数の光電デバイスを含み、Pは、1以上の正整数で、その構造概略図は、
図9に示され、Pが1である場合、前記光電デバイスアレイは、一つの次元に展開され、前記光電デバイスアレイは、一つ又は複数の光電デバイスがx軸方向に統合して得られたものであってもよく、Pが2である場合、前記光電デバイスアレイは、一つ又は複数の光電デバイスがxy平面上に統合して得られたものであってもよく、Pが3である場合、前記光電デバイスアレイは、一つ又は複数の光電デバイスがxyz空間上に統合して得られたものであってもよく、前記光電デバイスは、前に記載のようないずれか一つの形式の有機単結晶ヘテロ接合複合膜、前に記載のようないずれか一つの形式の方法で作製された有機単結晶ヘテロ接合複合膜を含むことを特徴とする。
【0061】
さらに、前記光電デバイスは、有機薄膜結晶管、有機光起電電池、有機発光ダイオード、有機相補回路、有機センサと有機記憶メモリのうちのいずれか一つ又は複数から選択される。
【0062】
本発明の第五の目的は、前に記載のいずれか一つの形式の有機単結晶ヘテロ接合複合膜、前に記載のいずれか一つの形式の光電デバイスアレイ(その概略図は、
図17に示される)の半導体デバイス、交通物流、鉱業冶金、環境、医療器械、防爆検出、食品、水処理、制薬、生物分野のうちのいずれか一つ又は複数の分野における応用を提供することである。
【発明の効果】
【0063】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0064】
本発明によって提供される作製方法は、技術的偏見を克服し、理想的な有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製を現実に変更し、ヘテロ接合界面の高度秩序性、高効率貼着性の二つの条件を同時に満たす高品質の有機単結晶ヘテロ接合複合膜を初めて得て、その性能は、現在のレベルに比べて大幅に向上し、その上で、さらに有機単結晶薄膜の二次元高被覆の要求を満たし、最終的に上記三つの条件を同時に満たす理想的な形態の有機単結晶ヘテロ接合複合膜を得て、本発明によって提供される方法に基づいて有機単結晶ヘテロ接合複合膜の形態が規則的で、連続的で、配向が一致し、高効率貼着性を有する有機単結晶ヘテロ接合界面を作製し、高性能の電気的/光電現象を実現するために理想的な界面を提供し、且つ垂直と水平の二つの方向にいずれも高被覆を有する二次元高被覆を実現できる有機単結晶薄膜を少なくとも一層を含み、大規模な作製が容易であり、その後の対応する光電デバイスの作製プロセスを簡略化し、統合しやすく、大面積の工業的生産を実現するのに有利である。
【0065】
有機ヘテロ接合複合膜の場合、最も理想的な材料形態(有機単結晶薄膜)では、高品質の有機単結晶複合膜の作製(高度に秩序化されたヘテロ接合界面、高効率貼着性という二つの条件を同時に満たす)を実現することは、非常に困難であり、最も理想的な形態(高度に秩序化されたヘテロ接合界面、高効率貼着性及び有機単結晶薄膜の二次元高被覆の三つの条件を同時に満たす)を実現することは、現在で最大のボトルネックであり、本発明は、有機ヘテロ接合膜の成長プロセスにおいて、第二層の有機単結晶薄膜が既に作製された第一層の有機単結晶薄膜の表面に損傷を与えやすいという困難性を克服し、混合溶液積層結合成長の方式を採用して高品質の高度に秩序化されたヘテロ接合界面を得て、電荷の伝送のために高品質のチャネルを提供する。なお、本発明は、異なる溶質が混合溶液の中で不等速分相及び/又は異界面分相の傾向を十分に利用し、複数種の溶質が共通溶媒の中で核形成して結晶化成長する相互干渉を大幅に低減させ、第二層の有機単結晶薄膜の成長時の第一層の有機単結晶薄膜の厚さ及び結晶表面の物理化学的性質による深刻な影響を回避し、結晶成長方向への干渉を低減させ、貼着面積ができるだけ大きい積層貼着有機単結晶ヘテロ接合複合膜を得て、ヘテロ接合界面で電気的/光電現象が発生するプラットフォームに最大化を実現させ、その後の優れた性能のデバイス作製の要求を満たすことができる。本発明は、有機単結晶薄膜の形態に対する正確な制御をさらに実現し、隣接する二層がいずれも有機単結晶薄膜であることを確保するという前提で、有機単結晶ヘテロ接合複合膜のうち、少なくとも一層の有機単結晶薄膜の二次元高被覆を実現し、その後に作製されるデバイス及びデバイスアレイの統合度を大幅に向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】有機単結晶ヘテロ接合複合膜及びその有機単結晶高効率結合ユニットの構造概略図である。
【
図2】有機単結晶ヘテロ接合複合膜の形態概略図であり、そのうち、(a-c)は、それぞれ異なる形態の有機単結晶ヘテロ接合複合膜貼着面積の概略図であり、(a)と(d)は、配向が一致する積層貼着された有機単結晶ヘテロ接合複合膜であり、(b)は、独立して分散する有機単結晶ヘテロ接合複合膜であり、(c)と(e)は、交錯して成長する有機単結晶ヘテロ接合複合膜である。
【
図3】有機単結晶ヘテロ接合における二種類の有機単結晶の間の異なる貼着方式であり、そのうち、(a)は、交差貼着であり、(b)は、積層貼着であり、(c)は、側面貼着であり、(d)は、軸方向貼着であり、(e)は、コアシェル貼着であり、(f)は、樹枝状貼着である。
【
図4】(a-i)有機単結晶ヘテロ接合を構築する際の三種類の有機単結晶の間の異なる貼着方式であり、異なる色は、異なる種類の有機単結晶を表す。
【
図5】本発明の有機単結晶薄膜概略図であり、そのうち、l
1、l
2・・・l
nは、結晶成長方向に沿う結晶の長さをそれぞれ表し、w
1、w
2・・・w
nは、結晶成長に垂直な方向での結晶の幅をそれぞれ表し、Lは、基板の長さであり、Wは、基板の幅である。
【
図6】6(a)本発明の有機単結晶ヘテロ接合薄膜における二層の有機単結晶の間の配向角概略図であり、そのうち、A
Lは、重ね配向角であり、(b)は、本発明によって提供される成長界面検出方法においてナノ線障害物と結晶成長に垂直な方向との間のなす角概略図であり、そのうち、Aoは、なす角である。
【
図7】気-液界面成長を実現する有機単結晶薄膜の光学顕微鏡図である。
【
図8】固-液界面成長を実現する有機単結晶薄膜の光学顕微鏡図である。
【
図9】本発明の光電デバイスの統合アレイの効果の概略図である。
【
図10】実施例1の有機単結晶ヘテロ接合薄膜の光学顕微鏡図(a)と概略図(b)である。
【
図11】実施例1の有機単結晶ヘテロ接合薄膜の光学顕微鏡図(a)と偏光顕微鏡図(b)である。
【
図12】実施例1の有機単結晶ヘテロ接合薄膜の走査型電子顕微鏡図である。
【
図13】実施例1の有機単結晶ヘテロ接合薄膜に基づいて作製された双極性有機単結晶電界効果トランジスタであり、V
DS=-120V、V
G=-120Vの動作電圧で得られた一つの典型的なデバイスの正孔と電子伝送特性曲線である。
【
図14】比較例3の有機ヘテロ接合薄膜の偏光顕微鏡図である。
【
図15】比較例7の有機ヘテロ接合薄膜の光学顕微鏡図である。
【
図16】比較例10の有機ヘテロ接合薄膜の光学顕微鏡図である。
【
図17】光電デバイスへの、光電デバイス統合アレイへの本発明の有機単結晶ヘテロ接合複合薄膜の概略図である。
【
図18】文献において有機単結晶ヘテロ接合形態が特徴づけられている光学顕微鏡図であり、(a)は、H.Li、C.Fan、and W.Fu、Angewandte Chemie International Edition、54、956(2015)のFigure 2a であり、(b)は、H.Li and H.Li、Journal of the American Chemical Society、141、25(2019)のFigure 5eである。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下に実施例及び図面を参照しながら本発明を詳しく説明する。なお、以下の実施例は、本発明を説明するためのものだけであるが、本発明の範囲を限定するものではない。また、本発明の教示を読んだ後、当業者は本発明に対して様々な変更又は修正を行うことができ、これらの同等の形態も本出願の添付の特許請求の範囲によって定義される範囲内にあることを理解すべきである。
【0068】
本発明の説明では、用語「上」、「下」、「左」、「右」、「垂直」、「平行」、「内」、「外」、「前」、「後」などに示される方位又は位置関係は、図面に基づいて示される方位又は位置関係であり、本出願を容易に説明及び簡略化するためのものだけであり、言及された装置又は素子が必ず特定の方位を有し、特定の方位で構築及び操作することを示し又は暗示するためのものではなく、したがって、本発明を制限するためのものと理解されるべきではない。
【0069】
図1に示すように、本発明は、有機単結晶ヘテロ接合複合膜を提供し、前記有機単結晶ヘテロ接合複合膜は、M種の有機材料を含み、Mは、2以上の正整数であり、前記有機単結晶ヘテロ接合複合膜は、積層構造を有し、前記積層構造は、有機単結晶ヘテロ接合複合膜が下から上へとN層の有機単結晶薄膜によって順に積み重ねられて構成され、Nは、2以上の正整数であり、前記有機単結晶薄膜は、有機単結晶アレイで構成され、
図2(a)、
図2(d)、
図5、
図10(a-b)と
図11(a-b)に示すように、有機単結晶アレイを構成する結晶は、基本的には単結晶形態であり、前記有機単結晶ヘテロ接合複合膜には、少なくとも一つの有機単結晶高効率結合ユニットがあり、前記有機単結晶高効率結合ユニットは、有機単結晶薄膜M
Tと有機単結晶薄膜M
Bで構成され、そのうち、有機単結晶薄膜M
Tと有機単結晶薄膜M
Bの構成材料は異なり、且つ有機単結晶薄膜M
Tは、上層に位置し、有機単結晶薄膜M
Bは、下層に位置する。前記有機単結晶高効率結合ユニットは、高効率貼着性を有し、
図2(a)、
図2(d)、
図3(b)、
図10(a-b)、
図11(a-b)と
図12に示すように、上記光学顕微鏡、偏光顕微鏡、走査型電子顕微鏡と概略図において、二層の有機単結晶薄膜の間に比較的に大きい貼着面積比を有し、二層の有機単結晶の間が密着し、高品質な有機単結晶ヘテロ接合界面が形成されていることを観測できる。
【0070】
図9に示すように、本発明によって提供される光電デバイスは、さらに一次元又は複数の次元で統合して光電デバイス統合アレイを得ることができ、前記光電デバイス統合アレイは、検出器、インバーター、発振器、発光ダイオードの制御回路バックプレーンなどに広く使用されてもよい。
【0071】
直交偏光子を備えた光学顕微鏡、原子間力顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、レーザー共焦点ラマン分光計、単結晶回折計などの微細構造を分析するための器械によって有機単結晶薄膜を検出することができ、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、レーザー共焦点ラマン分光計、X線回折計、赤外分光計、気相クロマトグラフィー、液相クロマトグラフィーなどの要素構成を分析できる器械によって有機単結晶薄膜を構成する種類を検出することができ、光学顕微鏡、原子間力顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などによって有機単結晶ヘテロ接合複合膜及び有機単結晶高効率結合ユニットの構造と形態を検出することができ、半導体パラメータアナライザ、正孔効果テスター、走査型プローブ顕微鏡、強誘電体テスター、量子効率テスター、過渡分光計、太陽電池テスター、光電検出システム、マイクロ蛍光分光計、スペクトルテスター、導電率測定システムなどの光電特性を分析できる機器によって半導体デバイスの関連機能を検出することができる。
【0072】
有機単結晶高効率結合ユニットの形態を特徴づけるために、光学顕微鏡を使用して観測する。本発明によって提供される有機単結晶高効率結合ユニットの機能性を特徴づけるために、本発明によって提供される有機単結晶高効率結合ユニットを含む有機単結晶ヘテロ接合複合膜に基づいて、電界効果トランジスタを作製し、半導体パラメータアナライザでその電界効果の電気的性能をテストする。
【0073】
実施例1:
2,8-ジフル-5,11-ビス[2-(トリエチルシリル基)エチニル]-アントラジチオフェン(Dif-tes-adt)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)に基づく有機単結晶ヘテロ接合複合膜及びこの複合膜に基づく有機電界効果トランジスタの製作方法は、以下のステップを含む。
(1) 重ドープp+-Si/SiO2基板をゲート/ゲート絶縁層として、そのうち、SiO2の厚さが300nmであり、基板上で厚さが10nmとなる架橋ポリスチレン(c-PS)を基板修飾層としてスピンコートし、
(2) 直径が40nmとなAgナノ線が堆積されている基板上で、単一のp型半導体分子Dif-tes-adtとn型半導体分子Tips-tapをそれぞれ成長させ、光学顕微鏡で、有機単結晶薄膜の形態がAgナノ線を横断する時に明らかな変更が発生するか否かを判断し、Dif-tes-adtとTips-tapの成長界面の類別を判断し、Dif-tes-adtとTips-tapの動的成長のプロセスを顕微鏡でそれぞれ観測してその成長速度を判断する。
(3) 総溶質質量分率が1wt%となり、p型半導体分子Dif-tes-adtとn型半導体分子Tips-tapの化学計量比が1:1となるペンタセンメシチレン溶液を調合し、50℃の高温ステージ上で撹拌して十分に溶解し、
(4) 成長環境の温度を20±1℃に制御し、成長環境の湿度を50±3%に調整する。
(5) せん断ツールと基板との間の間隔を200±5μmに調整し、
(6) ステップ(2)で作製された混合溶液をステップ(4)で作製された溶液貯留空間に充填し、充填が完了した後に5s静置し、
(7) せん断ツールを用いて60℃で400±5um/sの速度で混合溶液に対して定常方向に沿ってせん断コーティングを行い、二層の有機単結晶ヘテロ接合複合膜を作製し、
(8) 熱蒸着の方式でAu電極を有機単結晶ヘテロ接合複合膜上で堆積し、有機電界効果トランジスタを作製する。
【0074】
基板は、一般に使用される有機半導体デバイス基板から選択されてもよく、前記基板は、例えばシリコン基板(Si/SiO2)、金属酸化物基板(AlOx)などの硬質基板であってもよいし、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)ポリエチレンテレフタレートなどの柔軟なポリマー基板であってもよい。基板修飾層は、混合溶液によって溶解又は腐食されない有機ポリマー又は小分子修飾層から選択されてもよい。好ましくは、ポリマーは、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)及びその架橋物(c-PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)及びその架橋物(c-PVA)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)及びその架橋物(c-PVAc)、ポリイミド(PI)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニリデン共重合体(P(VDF-HFP))、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン-クロロフルオロエチレン(P(VDF-TrFE-CFE))、ポリスチレン(PS)及びその架橋物(c-PS)、ポリ-α-メチルスチレン(PαMS)、ポリビニルピロリドン(PVP)及びその架橋物(c-PVP)、ポリパラキシリレン(パリレンParylene)、ベンゾシクロブテン(BCB)、パーフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー(CYTOP)、シアノエチルプロパン(CYEP)のいずれかの一つ又は複数の混合/重ね合わせから選択されてもよい。好ましくは、小分子は、シラン基、リン酸基、チオール基を含む小分子自己組織化層から選択されてもよく、より好ましくは、小分子は、1H、1H、2H、2H-パーフルオロオクチルトリクロロシラン(F-TS)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(NH2-TS)、フェニルトリメトキシシラン(PTS)、3-ブロモプロピルトリメトキシシラン(Br-TS)、3-クロロプロピルトリクロロシラン(Cl-TS)、3-シアノプロピルトリメトキシシラン(CN-TS)、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(SH-TS)、3-ヨードフェニルトリメトキシシラン(I-TS)、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)、オクタデシルホスホン酸(ODPA)から選択されてもよい。
【0075】
有機単結晶ヘテロ接合複合膜の形態と構造を特徴づけるために、光学顕微鏡と走査型電子顕微鏡を採用して観測する。本発明によって提供される有機半導体単結晶薄膜の品質を特徴づけるために、本発明によって提供される有機単結晶ヘテロ接合複合膜に基づいて、電界効果トランジスタを作製し、半導体パラメータアナライザでその電界効果の電気的性能をテストする。
【0076】
実施例2:
2,8-ジフル-5,11-ビス[2-(トリエチルシリル基)エチニル]-アントラジチオフェン(Dif-tes-adt)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)に基づく有機単結晶ヘテロ接合複合膜及びこの複合膜に基づく有機電界効果トランジスタの製作方法である。
【0077】
実施例2の電界効果トランジスタデバイスの作製方法は、実施例1を参照し、配合及びプロセスパラメータは、表1及び表2に示される。形態、構造及び性能特徴付け方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。得られたデバイス性能は、表4に示される。
【0078】
実施例3:
2,8-ジフル-5,11-ビス[2-(トリエチルシリル基)エチニル]-アントラジチオフェン(Dif-tes-adt)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)に基づく有機単結晶ヘテロ接合複合膜及びこの複合膜に基づく有機電界効果トランジスタの製作方法である。
【0079】
実施例3の電界効果トランジスタデバイスの作製方法は、実施例1を参照し、配合及びプロセスパラメータは、表1及び表2に示される。形態、構造及び性能特徴付け方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。得られたデバイス性能は、表4に示される。
【0080】
実施例4:
2,8-ジフル-5,11-ビス[2-(トリエチルシリル基)エチニル]-アントラジチオフェン(Dif-tes-adt)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)に基づく有機単結晶ヘテロ接合複合膜及びこの複合膜に基づく有機電界効果トランジスタの製作方法である。
【0081】
実施例4の電界効果トランジスタデバイスの作製方法は、実施例1を参照し、配合及びプロセスパラメータは、表1及び表2に示される。形態、構造及び性能特徴付け方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。得られたデバイス性能は、表4に示される。
【0082】
実施例5:
2,8-ジフル-5,11-ビス[2-(トリエチルシリル基)エチニル]-アントラジチオフェン(Dif-tes-adt)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)に基づく有機単結晶ヘテロ接合複合膜及びこの複合膜に基づく有機電界効果トランジスタの製作方法である。
【0083】
実施例5の電界効果トランジスタデバイスの作製方法は、実施例1を参照し、配合及びプロセスパラメータは、表1及び表2に示される。形態、構造及び性能特徴付け方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。得られたデバイス性能は、表4に示される。
【0084】
実施例6:
2,8-ジフル-5,11-ビス[2-(トリエチルシリル基)エチニル]-アントラジチオフェン(Dif-tes-adt)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)に基づく有機単結晶ヘテロ接合複合膜及びこの複合膜に基づく有機電界効果トランジスタの製作方法である。
【0085】
実施例6の電界効果トランジスタデバイスの作製方法は、実施例1を参照し、配合及びプロセスパラメータは、表1及び表2に示される。形態、構造及び性能特徴付け方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。得られたデバイス性能は、表4に示される。
【0086】
実施例7:
6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(Tips-pentacene)と2,7-ジオクチル[1]ベンゾチエノ[3,2-b]ベンゾチオフェン(C8-btbt)に基づく有機単結晶ヘテロ接合複合膜の製作方法。
【0087】
実施例7の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法は、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合とプロセスパラメータは、表1と表2に示される。形態と構造の特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。
【0088】
実施例8:
6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(Tips-pentacene)と2,7-ジオクチル[1]ベンゾチエノ[3,2-b]ベンゾチオフェン(C8-btbt)に基づく有機単結晶ヘテロ接合複合膜の製作方法。
【0089】
実施例8の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法は、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合とプロセスパラメータは、表1と表2に示される。形態と構造の特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。
【0090】
実施例9:
ペリレン(Perylene)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)に基づく有機単結晶ヘテロ接合複合膜及びこの複合膜に基づく有機電界効果トランジスタの製作方法である。
【0091】
実施例9の電界効果トランジスタデバイスの作製方法は、実施例1を参照し、配合及びプロセスパラメータは、表1及び表2に示される。形態、構造及び性能特徴付け方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。得られたデバイス性能は、表4に示される。
【0092】
実施例10:
ペリレン(Perylene)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)に基づく有機単結晶ヘテロ接合複合膜及びこの複合膜に基づく有機電界効果トランジスタの製作方法である。
【0093】
実施例10の電界効果トランジスタデバイスの作製方法は、実施例1を参照し、配合及びプロセスパラメータは、表1及び表2に示される。形態、構造及び性能特徴付け方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。得られたデバイス性能は、表4に示される。
【0094】
実施例11:
6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(Tips-pentacene)と9,10-ジフェニルアントラセン(9,10-DPA)に基づく有機単結晶ヘテロ接合複合膜の製作方法。
【0095】
実施例11の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法は、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合とプロセスパラメータは、表1と表2に示される。形態と構造の特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。
【0096】
実施例12:
6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(Tips-pentacene)と9,10-ジフェニルアントラセン(9,10-DPA)に基づく有機単結晶ヘテロ接合複合膜の製作方法。
【0097】
実施例12の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法は、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合とプロセスパラメータは、表1と表2に示される。形態と構造の特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。
【0098】
実施例13:
テトラセン(Tetracene)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)に基づく有機単結晶ヘテロ接合複合膜の製作方法である。
【0099】
実施例13の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法は、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合とプロセスパラメータは、表1と表2に示される。形態と構造の特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。
【0100】
実施例14:
テトラセン(Tetracene)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)に基づく有機単結晶ヘテロ接合複合膜の製作方法である。
【0101】
実施例14の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法は、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合とプロセスパラメータは、表1と表2に示される。形態と構造の特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。
【0102】
実施例15:
6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)とジチエノ[2,3-B:3’,2’-D]チオフェン(Dp-dtt)に基づく有機単結晶ヘテロ接合複合膜の製作方法。
【0103】
実施例15の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法は、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合とプロセスパラメータは、表1と表2に示される。形態と構造の特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。
【0104】
実施例16:
ルブレン(Rubrene)とフラーレン(C60)に基づく有機単結晶ヘテロ接合複合膜の製作方法である。
【0105】
実施例16の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法は、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合とプロセスパラメータは、表1と表2に示される。形態と構造の特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。
【0106】
実施例17:
ルブレン(Rubrene)、フラーレン(C60)及び6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(Tips-pentacene)に基づく多層の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の製作方法である。以下のステップを含む。
(1) 重ドープp+-Si/SiO2基板をゲート/ゲート絶縁層として、そのうち、SiO2の厚さが300nmであり、基板上で厚さが10nmとなる架橋ポリスチレン(c-PS)を基板修飾層としてスピンコートし、
(2) 総溶質質量分率が0.2wt%となり、RubreneとC60との化学計量比が1:1となるクロロベンゼン溶液を調合し、50℃の高温ステージ上で撹拌して十分に溶解し、質量分率が0.1wt%となるTips-pentaceneの4-メチル-2-ペンタノン溶液を調合し、
(3) 成長環境の温度を20±1℃に制御し、成長環境の湿度を50±3%に調整する。
(4) せん断ツールと基板との間の間隔を200±5μmに調整し、
(5) ステップ(2)で作製された混合溶液をステップ(4)で作製された溶液貯留空間に充填し、充填が完了した後に5s静置し、
(6) せん断ツールを用いて60℃で400±5um/sの速度で混合溶液に対して定常方向に沿ってせん断コーティングを行い、二層の有機単結晶ヘテロ接合複合膜を作製し、
(7) (6)で作製されたRubrene-C60二層の有機単結晶ヘテロ接合複合膜上でせん断ツールを用いて30℃で200±1um/sの速度でTips-pentaceneの4-メチル-2-ペンタノン溶液に対して定常方向に沿ってせん断コーティングを行い、三層有機単結晶ヘテロ接合複合膜を作製する。
【0107】
実施例17で作製された有機単結晶ヘテロ接合複合膜の形態と構造の特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。
【0108】
比較例1:
ペリレン(perylene)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)に基づく有機ヘテロ接合複合膜及びこの複合膜に基づく有機電界効果トランジスタの製作方法である。以下のステップを含む。
(1) 重ドープp+-Si/SiO2基板をゲート/ゲート絶縁層として、そのうち、SiO2の厚さが300nmであり、基板上で厚さが10nmとなる架橋ポリスチレン(c-PS)を基板修飾層としてスピンコートし、
(2) 溶質質量分率がいずれも0.5wt%となるTips-tapのペンタセンメシチレン溶液を調合し、50℃の高温ステージ上で撹拌して十分に溶解し、
(3) 成長環境の温度を20±1℃に制御し、成長環境の湿度を50±3%に調整する。
(4) せん断ツールと基板との間の間隔を200±5μmに調整し、
(5) ステップ(2)で作製されたTips-tap溶液をステップ(4)で作製された溶液貯留空間に充填し、充填が完了した後に5s静置し、
(6) せん断ツールを用いて60℃で400±5um/sの速度Tips-tap溶液に対して定常方向に沿ってせん断コーティングを行い、Tips-tapの有機単結晶薄膜を作製し、
(7) Tips-tap有機単結晶薄膜上でperyleneの有機多結晶薄膜を蒸着し、
(8) 熱蒸着の方式でAu電極を有機単結晶-多結晶ヘテロ接合複合膜上で堆積し、有機電界効果トランジスタを作製する。
【0109】
比較例1で得られた有機電界効果トランジスタの性能特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。得られたデバイス性能は、表4に示される。顕微鏡観測によってperylene薄膜が有機多結晶薄膜であると判断することができる。
【0110】
比較例2:
ペリレン(perylene)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)に基づく有機ヘテロ接合複合膜及びこの複合膜に基づく有機電界効果トランジスタの製作方法である。以下のステップを含む。
(1) 重ドープp+-Si/SiO2基板をゲート/ゲート絶縁層として、そのうち、SiO2の厚さが300nmであり、基板上で厚さが10nmとなる架橋ポリスチレン(c-PS)を基板修飾層としてスピンコートし、
(2) 溶質質量分率がいずれも0.5wt%となるTips-tapのトルエン溶液を調合し、50℃の高温ステージ上で撹拌して十分に溶解し、
(3) 成長環境の温度を20±1℃に制御し、成長環境の湿度を50±3%に調整する。
(4) 基板上でTips-tapのトルエン溶液をスピンコートし、Tips-tapの有機多結晶薄膜を取得し、
(5) Tips-tap有機多結晶薄膜上でperyleneの有機多結晶薄膜を蒸着し、
(6) 熱蒸着の方式でAu電極を有機多結晶-多結晶ヘテロ接合複合膜上で堆積し、有機電界効果トランジスタを作製する。
【0111】
比較例2で得られた有機電界効果トランジスタの性能特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。得られたデバイス性能は、表4に示される。同様に、顕微鏡観測によってTips-tap薄膜とperylene薄膜がいずれも有機多結晶薄膜であると判断することができる。
【0112】
比較例3:
2,8-ジフル-5,11-ビス[2-(トリエチルシリル基)エチニル]-アントラジチオフェン(Dif-tes-adt)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(Tips-pentacene)に基づく有機ヘテロ接合複合膜及びこの複合膜に基づく有機電界効果トランジスタの製作方法である。
【0113】
比較例3の有機ヘテロ接合複合膜の作製方法は、実施例1を参照し、配合とプロセスパラメータは、表1と表2に示される。形態と構造の特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。
【0114】
比較例4:
2,8-ジフル-5,11-ビス[2-(トリエチルシリル基)エチニル]-アントラジチオフェン(Dif-tes-adt)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)に基づく有機ヘテロ接合複合膜及びこの複合膜に基づく有機電界効果トランジスタの製作方法である。以下のようなステップを含む。
(1) 重ドープp+-Si/SiO2基板をゲート/ゲート絶縁層として、そのうち、SiO2の厚さが300nmであり、基板上で厚さが10nmとなる架橋ポリスチレン(c-PS)を基板修飾層としてスピンコートし、
(2) 総質量分率が1w%となり、Dif-tes-adtとTips-tapとの化学計量比が1:1となる1-ブタノール溶液を調合し、30min超音波した後に濾過し、溶解されていない粒子を濾過し、
(3) 成長環境の温度を20±1℃に制御し、成長環境の湿度を50±3%に調整する。
(4) せん断ツールと基板との間の間隔を200±5μmに調整し、
(5) ステップ(2)で作製された混合溶液をステップ(4)で作製された溶液貯留空間に充填し、充填が完了した後に5s静置し、
(6) せん断ツールを用いて60℃で400±5um/sの速度で混合溶液に対して定常方向に沿ってせん断コーティングを行い、二層の有機ヘテロ接合複合膜を作製し、
(7) 熱蒸着の方式でAu電極を有機単結晶ヘテロ接合複合膜上で堆積し、有機電界効果トランジスタを作製する。
【0115】
比較例4で得られた有機ヘテロ接合複合膜の形態、構造及び性能特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。得られたデバイス性能は、表4に示される。
【0116】
比較例5:
2,8-ジフル-5,11-ビス[2-(トリエチルシリル基)エチニル]-アントラジチオフェン(Dif-tes-adt)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)に基づく有機ヘテロ接合複合膜の製作方法である。
【0117】
比較例5の有機ヘテロ接合複合膜の作製方法は、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合とプロセスパラメータは、表1と表2に示される。形態と構造の特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。
【0118】
比較例6:
2,8-ジフル-5,11-ビス[2-(トリエチルシリル基)エチニル]-アントラジチオフェン(Dif-tes-adt)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)に基づく有機ヘテロ接合複合膜の製作方法である。
【0119】
比較例6の有機ヘテロ接合複合膜の作製方法は、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合とプロセスパラメータは、表1と表2に示される。形態と構造の特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。
【0120】
比較例7:
2,8-ジフル-5,11-ビス[2-(トリエチルシリル基)エチニル]-アントラジチオフェン(Dif-tes-adt)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)に基づく有機ヘテロ接合複合膜の製作方法である。
【0121】
比較例7の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法は、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合とプロセスパラメータは、表1と表2に示される。形態と構造の特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。得られた有機単結晶ヘテロ接合形態パラメータは、表3に示される。得られたデバイス性能は、表4に示される。
【0122】
比較例8:移行法成長
2,8-ジフル-5,11-ビス[2-(トリエチルシリル基)エチニル]-アントラジチオフェン(Dif-tes-adt)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)に基づく有機ヘテロ接合複合膜及びこの複合膜に基づく有機電界効果トランジスタの製作方法である。以下のステップを含む。
(1) 重ドープp+-Si/SiO2基板をゲート/ゲート絶縁層として、そのうち、SiO2の厚さが300nmであり、基板上で厚さが10nmとなる架橋ポリスチレン(c-PS)を基板修飾層としてスピンコートし、
(2) それぞれ溶質質量分率が0.5wt%となるDif-tes-adtトルエン溶液とTips-tapのトルエン溶液を調合し、
(3) 成長環境の温度を25±1℃に制御し、成長環境の湿度を40±3%に調整する。
(4) せん断ツールと基板との間の間隔を200±5μmに調整し、
(5) ステップ(2)で作製されたTips-tapのトルエン溶液をステップ(4)で作製された溶液貯留空間に充填し、充填が完了した後に5s静置し、
(6) せん断ツールを用いて60℃で400±5um/sの速度Tips-tapのトルエン溶液に対して定常方向に沿ってせん断コーティングを行い、(1)において作製された基板上でTips-tap有機単結晶薄膜を作製して、
(7) ステップ(2)で作製されたDif-tes-adtのトルエン溶液をステップ(4)で作製された溶液貯留空間に充填し、充填が完了した後に5s静置し、
(8) せん断ツールを用いて60℃で400±5um/sの速度Dif-tes-adtのトルエン溶液に対して定常方向に沿ってせん断コーティングを行い、ポリジメチルシロキサン(PDMS)上で、Dif-tes-adt有機単結晶薄膜を作製して、
(9) PDMS上で作製されたDif-tes-adt有機単結晶薄膜をステップ(6)で作製されたTips-tap有機単結晶薄膜上に移行し、
(10) 熱蒸着の方式でAu電極を有機単結晶ヘテロ接合複合膜上で堆積し、有機電界効果トランジスタを作製する。
【0123】
比較例8の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の形態、構造及び性能特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。得られたデバイス性能は、表4に示される。
【0124】
比較例9:
2,8-ジフル-5,11-ビス[2-(トリエチルシリル基)エチニル]-アントラジチオフェン(Dif-tes-adt)とフラーレン(C60)に基づく有機ヘテロ接合複合膜及びこの複合膜に基づく有機電界効果トランジスタの製作方法である。以下のステップを含む。
(1) 重ドープp+-Si/SiO2基板をゲート/ゲート絶縁層として、そのうち、SiO2の厚さが300nmであり、基板上で厚さが10nmとなる架橋ポリスチレン(c-PS)を基板修飾層としてスピンコートし、
(2) それぞれ溶質質量分率が0.1wt%となるDif-tes-adtのノルマルヘキサン溶液とC60のクロロベンゼン溶液を調合し、
(3) 成長環境の温度を25±1℃に制御し、成長環境の湿度を40±3%に調整する。
(4) せん断ツールと基板との間の間隔を200±5μmに調整し、
(5) ステップ(2)で作製されたC60のクロロベンゼン溶液をステップ(4)で作製された溶液貯留空間に充填し、充填が完了した後に10s静置し、
(6) せん断ツールを用いて80℃で200±5um/sの速度でC60のクロロベンゼン溶液に対して定常方向に沿ってせん断コーティングを行い、(1)において作製された基板上でC60有機単結晶薄膜を作製して、
(7) ステップ(2)で作製されたDif-tes-adtのトルエン溶液をステップ(4)で作製された溶液貯留空間に充填し、充填が完了した後に5s静置し、
(8) せん断ツールを用いて30℃で200±5um/sの速度Dif-tes-adtのノルマルヘキサン溶液に対して定常方向に沿ってせん断コーティングを行い、ステップ(6)で作製されたC60有機単結晶薄膜上でDif-tes-adt有機単結晶薄膜を成長させて得て、
(9) 熱蒸着の方式でAu電極を有機単結晶ヘテロ接合複合膜上で堆積し、有機電界効果トランジスタを作製する。
【0125】
比較例9の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の形態、構造及び性能特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。得られたデバイス性能は、表4に示される。
【0126】
比較例10:
2,8-ジフル-5,11-ビス[2-(トリエチルシリル基)エチニル]-アントラジチオフェン(Dif-tes-adt)と6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)-5,7,12,14-テトラアゾペンタセン(Tips-tap)に基づく有機ヘテロ接合複合膜及びこの複合膜に基づく有機電界効果トランジスタの製作方法である。
【0127】
本発明に基づく有機単結晶ヘテロ接合薄膜の製作方法は、以下のステップを含む。
(1) 重ドープp+-Si/SiO2基板をゲート/ゲート絶縁層として、そのうち、SiO2の厚さが300nmであり、基板上で厚さが10nmとなるc-PSを修飾層としてスピンコートし、
(2) 総溶質質量分率が0.1wt%とり、Dif-tes-adtとTips-tapとの化学計量比が1:1となるトルエン溶液を調合し、
(3) 40℃で、液滴固定結晶法(DPC)を採用し、固定シリコンウェーハが載置される基板上に溶液を滴下し、溶媒が完全に揮発した後、二層の有機単結晶ヘテロ接合薄膜を作製し、
(4) 熱蒸着の方式でAu電極を有機単結晶ヘテロ接合複合膜上で堆積し、有機電界効果トランジスタを作製する。
【0128】
比較例10の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の形態、構造及び性能特徴づけ方法は、実施例1の方法と同じである。得られたデバイス性能は、表4に示される。
【0129】
実施例1~17及び比較例1~10で得られた有機単結晶半導体層の形態を光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡で特徴付けて、デバイスの性能を半導体パラメータ分析器でテストする。光学顕微鏡法は、有機半導体単結晶薄膜の形態を観測するための簡単で効果的な方法である。有機単結晶は、その内部分子が高度に秩序化して周期的に配列しているため、異方性がある。光学顕微鏡の直交直線偏光下では、異方性物体は、複屈折の性質を示し、結晶成長の方向が偏光角に垂直又は平行である場合、均一な色と明暗の変化が発生するか否かを観察することで、結晶軸が視野内で高度に配向されているか否かを判断し、それによってその単結晶性を判断する(A.Yamamura、T.Okamoto and J.Takeya、Science Advancas、4、eaao5758、(2018))。偏光顕微鏡の写真では、色やグレースケールが不均一(non-uniform)であったり、又は色が変化したりした場合、得られた結晶が単結晶ではないことを意味し、文献報告C.W.Sele、J.E.Anthony、and G.H.Gelinck、Advance Materials、21、4926(2009)におけるFigure1(a)に示すように、色やグレースケールの不均一であり、粒界密度が非常に大きく、得られた有機薄膜が多結晶形態であることが見られ、文献報告C.Kim、H.Hlaing、and I.Kymissis、ACS Applied Materirals Interfaces、5、3716、(2013)におけるFigure 2(d-g)に示すように、得られた有機薄膜における結晶が円形に類似した形状であることが見られ、円形内部の明暗差が大きく、黒十字消光現象が示され、得られた結晶が球晶であることを意味する。結晶の色やグレースケールがほぼ均一(uniform)である状態が得られると、結晶は、単結晶であり、
図11(b)に示すように、明るい区画の中で、各本の結晶の色やグレースケールは、ほぼ均一で、同じ区画の中で、異なる本の結晶の間で色やグレースケールもほぼ同じで、典型的な有機単結晶薄膜が得られたことを意味し、説明すべきことは、図において現れた大面積の明暗の区画は、多結晶が現れているのではなく、異なる区画の間での結晶における分子の長軸の配向がわずかに差があり(K.Sakamoto、and K.Miki、Applied Physics Letter、100、123301、(2012))、偏光子の偏光軸との角度差が明暗の区画を引き起こす。走査型電子顕微鏡は、二層又は多層の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の構造をミクロスケールで良好に観測することができる。
【0130】
図10及び
図11は、実施例1で作製された有機単結晶ヘテロ接合薄膜の形態図であり、
図10において配向の良い二層の有機単結晶ヘテロ接合複合膜が見られ、
図10(a)は、光学顕微鏡で100倍に拡大した時に観測された形態図であり、そのうち、幅で比較的に細いストライプ状がDif-tes-adt結晶であり、幅で比較的に太いストライプ状がTips-tap結晶である。
図10(b)は、
図10(a)に対応する形態概略図であり、
図10(b)における濃いグレーのストライプは、Tips-tap結晶であり、
図10(b)における薄いグレーのストライプは、Dif-tes-adt結晶である。二層の有機単結晶のモフォロジーが均一であり、結晶の幅と隙間の変化が補正され、厚さを含む全体的なモフォロジーが良好に制御されていることが分かる。
図11(a)は、Dif-tes-adtとTips-tap二層の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の光学顕微鏡でのより大きな範囲(20倍拡大)の観測結果であり、
図11(b)は、対応する偏光顕微鏡図であり、得られた有機単結晶ヘテロ接合複合膜は、高効率貼着比を有する積層結合成長を実現することができ、且つ二次元高被覆と大面積連続成長を同時に実現することが見られる。光学顕微鏡では、色が均一であることは、厚さが良好に制御されていることが再度証明され、且つ
図11(b)の偏光顕微鏡では、得られたヘテロ接合複合薄膜が複屈折性を示すことが表明され、その単結晶性が示され、得られた二層ヘテロ接合薄膜が有機単結晶ヘテロ接合複合膜であることが証明される。画像の画素点を解析できるソフトウェア(例えば、Image Jソフトウェア、Matlab、Photoshop、Adobe Illustratorなどであり、本発明ではImage Jソフトウェアを例にとる)を利用して、光学顕微鏡の写真における有機単結晶薄膜の形態と微細構造を解析することにより、
図10を例とする、Dif-tes-adt有機単結晶薄膜とTips-tap有機単結晶薄膜との間の貼着面積比を算出することができ、面積が相対的に比較的に大きい有機単結晶薄膜Tips-tapにおける隣接する7本の隣接する結晶をランダムに抽出し、選択領域図は、
図10(a-b)に示され、A
large=1432.59μm
2+1384.30μm
2+1471.49μm
2+1561.36μm
2+1625.75μm
2+1191.15μm
2+1239.44μm
2=9906.08μm
2であり、そのうち、A
largeは、7本のTips-tap結晶の面積の合計であり、A
total=(901.41μm
2+692.15μm
2+949.70μm
2+885.30μm
2+997.99μm
2+820.92μm
2+788.72μm
2)=6036.19μm
2であり、そのうち、A
totalは、選択された7本のTips-tap結晶と面積が比較的に小さい有機単結晶薄膜Dif-tes-adtにおける7本のDif-tes-adt結晶との貼着面積の合計であり、それによって貼着面積比R=A
total/A
large=55.8%を算出することができ、貼着面積率が50%以上である必要があるという要求を満たし、有機単結晶高効率結合ユニットの高効率貼着性を実現することができる。隣接する7本のTips-tap結晶を選択して解析することにより、有機単結晶薄膜Tips-tapの垂直被覆率R
V=((87.73μm+87.73μm+87.73μm+87.73μm+87.73μm+87.73μm+87.73μm)/7)/87.73μm=100%を算出することができ、方向Vに垂直の完全被覆が実現されると考えられてもよく、水平被覆率R
H=(16.51μm+15.96μm+16.70μm+16.70μm+18.72μm+13.39μm+13.03μm)/117.25μm=94.68%であり、H方向に非常に高い被覆を有し、良好な二次元高被覆を実現し、ほぼフル被覆に近いと言っても過言ではなく、キャリアの伝送に大面積のチャネルを提供する。Dif-tes-adt有機単結晶薄膜における7本の結晶を取り、基準方向が方向Vと同じであり、取られた7本のDif-tes-adt結晶の配向角の平均値は、A
T=((-0.74°)+(-1.19°)+0.55°+1.70°+0.99°+0.45°+1.61°)/7=0.48°であり、Tips-tap有機単結晶薄膜における7本の結晶を取り、取られた7本のTips-tap結晶の配向角の平均値は、(A
B=(0.45°+0.82°+1.79°+2.87°+1.25°+1.79°+1.17°)/7=1.45°であり、積層配向角A=((A
T-(A
B)=-0.97°であり、積層配向度F
L=0.5*(3*cos
2A-1)=0.999であり、1に非常に近く、ほぼ完全に平行な配向を実現することができ、積層結合性(つまり、積層配向が一致する)を有する二層有機単結晶ヘテロ接合複合膜が得られることが証明され、二層有機単結晶の協同成長が実現され、その後のデバイス作製に利便性を提供し、高性能の電気的/光電現象を実現することができると考えられてもよい。Dif-tes-adt単結晶薄膜は、Tips-tap単結晶薄膜の上方に成長して得られ、二種類の有機単結晶は、積層貼着の方式により結合され(
図3(b)に示すように)、明確な構造の二層の単結晶ヘテロ接合を形成し、
図12に示される走査型電子顕微鏡写真に示すように、Dif-tes-adt単結晶がTips-tap単結晶の上面に選択的に成長し、得られた二層単結晶ヘテロ接合薄膜の間が完全に貼着し、高品質のヘテロ接合界面の形成に有利であり、有機単結晶高効率結合ユニットの要求を満たす。
図13に示されるのは、実施例1で作製された有機単結晶ヘテロ接合薄膜から作製された一つの典型的な双極性有機電界効果トランジスタがV
DS=-120V、V
G=-120Vの動作電圧での正孔と電子伝送特性曲線であり、平衡する正孔と電子伝送性能を表現する。計算を経て、飽和領域での移動率正孔と電子は、いずれも0.1cm
2V
-1s
-1を超え、表3に示すように、良好な双極性キャリア伝送を実現する。
【0131】
積層結合成長のプロセスにおいて、二種類の有機分子の構造が異なるため(例えば、Dif-tes-adtの含有コアにはS原子が含まれ、側鎖にはF原子があり、分子間にはF-FとF-Sの作用力がある)、基板修飾層分子、溶媒分子の間の相互作用力とは異なり、さらに、溶液がせん断力作用を受けると同時に、二種類の有機分子の結晶化速度が全く同じではないため、二層の有機単結晶薄膜の積層結合成長の方式は、表1に示すように、同時に不等速分相と異界面分相が存在する可能性がある。
図7と
図8を例にとると、異界面分相を検出する方法は、結晶がナノ線障害物を横断する時に形態が変化するか否かを観察することであり、
図7では、結晶成長方向が銀ナノ線の障害物を横断する7本の結晶を選択し、ImageJソフトウェア解析により、銀ナノ線と結晶とが出会う時、銀ナノ線と結晶成長に垂直な方向とのなす角(
図6(b)に示すように、|Ao|が17.50°、14.66°、3.50°、23.39°、9.35°、13.02°、21.74°である)は、いずれも45°よりも少なく、ナノ線障害物の要求に合わせ、
【0132】
実施例2~17で得られた有機単結晶ヘテロ接合複合膜の形態は、
図10と
図11と類似し、結晶の厚さ、幅、間隙がわずかに変化し、ここでは説明を省略する。そのうち、実施例2~6及び実施例9~10で得られた有機電界効果トランジスタは、いずれも明らかな双極性伝送性能を表現し、具体的な正孔移動率と電子移動率を取得し、表4に示すように、エレクトロルミネセンスデバイス及び相補統合回路に応用することができる
【0133】
本発明によって提供される有機単結晶ヘテロ接合複合膜は、高度に秩序化されたヘテロ接合界面を有することを説明するために、比較例1と比較例2は、二種類の類型が異なる有機半導体小分子(p型のperyleneとn型のTips-tap)を原料として採用し、溶液法と蒸着法とを組み合わせた作製方法を利用し、有機単結晶-多結晶ヘテロ接合複合膜を作製し、光学顕微鏡の特徴づけにより、多結晶薄膜に対して判断を行うことができる。そのうち、比較例1で得られたのは、有機単結晶-有機多結晶ヘテロ接合複合膜であり、比較例2で得られたのは、有機多結晶-多結晶ヘテロ接合複合膜である。上記二種類の非有機単結晶ヘテロ接合複合膜に基づいて作製された有機電界効果トランジスタの性能は、表4に示され、正孔移動率と電子移動率及び二層は、いずれも有機単結晶薄膜の有機単結晶ヘテロ接合複合膜(実施例1を例とする)に比べて、ほぼ一つの数量レベルが低下し、比較例1で正孔移動率が0.007cm2V-1s-1であり、電子移動率が0.04cm2V-1s-1であり、比較例2での正孔移動率が0.008cm2V-1s-1であり、電子移動率が0.02cm2V-1s-1であり、有機単結晶-有機多結晶又は有機多結晶-有機多結晶を選択して形成されたヘテロ接合界面の秩序性が大幅に低下し、二種類のキャリアに対する伝送性能に大きな影響を与えることが十分に示された。
【0134】
不等速分相又は異界面分相を得るために、混合溶液における異なる溶質の間で成長速度及び/又は成長界面が異なるであることを制御必要があり、異なる溶質が核形成結晶成長時に相互干渉を生じることにより、有機単結晶ヘテロ接合複合膜の形態に影響を与えることを避けることを説明するために、比較例3は、二種類の成長界面がいずれも気-液界面にあり、且つ成長速度がほぼ同じである溶質を選択して比較する。得られたヘテロ接合複合膜の形態は、
図14に示すように、偏光顕微鏡画像では、結晶の色又はグレースケールが非常に不均一であることが見られ、得られた有機薄膜の結晶形態が多結晶であり、異なる種類の有機薄膜のそれぞれの形態を識別することさえできないことが示される。これは、異なる溶質が混合される時に、明らかな不等速分相又は異界面分相が現れないためであり、従って結晶の核形成成長に深刻な干渉を与えることにより、単結晶形態の薄膜を得ることができず、さらに積層結合性を有する有機単結晶高効率複合ユニットを得ることができず、後続の光電デバイスの作製に不利である。
【0135】
溶質が混合溶液に十分に溶解する必要があることを説明するために、比較例4は、選択された溶質分子に対する溶解度が低い1-ブタノールを溶媒として選択し、この溶媒における二種類の溶質の溶解度が十分に高くないので、安定条件での溶解度S<0.05wt%であり、このため、最終的に基板上に対応する有機単結晶ヘテロ接合複合膜がほとんど得られておらず、これは、溶液が揮発するプロセスにおいて、溶媒の揮発速度が速く、それ自体の溶解度が十分に高くない溶質は、更に析出しやすく、せん断力の作用で、結晶は、成長する前にすでに溶液貯留領域の原料の供給を使い果たし、最終的にいくつかの固体残留物しか得られないためである。
【0136】
本発明によって提供される有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法において、個々の成長条件を厳密に制御する必要があることを説明するために、比較例5~7は、実施例1と同じ材料、基板修飾層、溶媒及び成長温度を採用するが、成長条件を正確に制御していないので、静置時間が長すぎ又は短すぎ、せん断ツールと基板との間の間隔が大きすぎ、せん断速度が速すぎ又は遅すぎ、環境温度が高すぎ、環境湿度が大きすぎるなどの要素は、いずれも溶質堆積速度、溶媒揮発の速度及びメニスカス移動速度がマッチングしないという問題を引き起こし、結晶が安定して成長する環境を提供できないため、理想的な形態を有する有機単結晶ヘテロ接合複合膜が得られず、そのうち、比較例7で得られた有機ヘテロ接合複合膜の形態は、
図15の光学顕微鏡画像に示され(比較例5と6は、比較例7の形態と類似している)、乱雑し、屈曲し且つ不連続な結晶が多く現れ(積層配向度が0.389である)、結晶の被覆率が低い(R
V=76.41%、R
H=54.90%)、同様に、二層の結晶の間の貼着面積比もかなり低く(R=23.55%)、規則的な結晶形態がないので、成長条件を制御せずに得られた二層の結晶は、後続の光電デバイスを作製するのに用いることが困難であり、且つ形態の不確実性のため、得られた電気的/光電現象を補正することができず、真の性能反映が得られず、そのうち比較例7の中で唯一作製して得られたデバイスの性能も非常に低いレベルにある(p型の移動率が0.0003cm
2V
-1s
-1であり、n型の移動率すら測定できない)。
【0137】
有機単結晶ヘテロ接合複合膜の形態制御を得ることに対する、本発明によって提供される有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法の利点を説明するために、比較例8は、移行法を採用して有機単結晶ヘテロ接合複合膜を作製し、PDMS上に作製されたDif-tes-adt薄膜を物理静電吸着法により、既に作製されたTips-tap薄膜に移行してヘテロ接合複合膜を作製し、まず、このような手作業によるポジショニングの難しさのため大量に移行できないため、このヘテロ接合複合膜は、貼着に成功した比率が低く、さらに、自体のDif-tes-adt有機単結晶薄膜の厚さが20nm程度しかないため、物理的な移行のプロセスにおいて結晶の表面に応力作用を受けて多くの切れ目が現れ、結晶の品質が著しく破壊され、且つ二層の薄膜の間の積層配向度を制御しにくいため、最終的に得られた二層の薄膜の間の積層配向が一致せず、二層の薄膜の間の貼着面積が低下し、伝送の双極性に深刻な影響を与え、得られた性能が表4に示され、デバイスがp型を示さず、0.13cm
2V
-1s
-1電子移動率しか得られない。比較例9は、二段直交溶媒法を採用して二層の有機単結晶を成長させ、第二層のDif-tes-adtの有機単結晶薄膜を成長させる時、すでに成長したTips-tap有機単結晶薄膜は、成長路上の障害となっているため、Dif-tes-adtが成長する時に配向が乱され、結晶は、分岐、屈曲した形態が現れやすく、一部の結晶は、成長が進むプロセスにおいて、成長前線が阻害されて成長が停止し、最終的に得られた有機ヘテロ接合薄膜の形態が不均一になる。一方、第二層のDif-tes-adt有機単結晶薄膜を成長させる時、成長したTips-tap有機単結晶薄膜上に溶液が広がり、Tips-tap有機単結晶薄膜の表面に損傷を与え、得られた有機ヘテロ接合界面の品質が低下し、作製された有機電界効果トランジスタの性能は、表4に示され、0.10cm
2V
-1s
-1の正孔移動率と0.003cm
2V
-1s
-1の電子移動率により、Tips-tap単結晶薄膜表面が損傷を受けていることが証明された。比較例10は、文献報告におけるDPC法(H.Li、B.C.K.Tee、and G.Giri、Advanced Materials、24、2588(2012))を採用して混合溶液を用いて有機単結晶ヘテロ接合複合膜を作製し、実施例1と同じ材料を選択し、
図16の光学顕微鏡図に示すように、方向性のせん断作用が欠けるため、得られた有機ヘテロ接合複合膜は、適切な形態を得ることができず、二種類の有機結晶を区別することは、ほとんど困難であり、その後の光電機能の実現が阻害され、このようなヘテロ接合薄膜の形態を区別することが困難であるため、ある有機半導体分子の性能が発現しない可能性が高く、有機ヘテロ接合双極性伝送の機能が実現できず、得られたデバイス性能は、表4に示すように、0.06cm
2V
-1s
-1の正孔移動率しか表現せず、電子伝送性能が得られなかった。
【0138】
以上をまとめると、比較例1~10によって、本発明によって提供される有機単結晶ヘテロ接合複合膜の作製方法を採用し、有機単結晶高効率結合ユニットを実現する積層結合成長を採用することにより、高いヘテロ接合界面の品質、高効率貼着性、及び少なくとも一層の有機単結晶薄膜が二次元高被覆を実現する理想的な形態を有する有機単結晶ヘテロ接合複合膜を得ることを意味することができる。
【0139】
実施例1~17と比較例1~10によって、理想的な材料形態、形態、構造を有する有機ヘテロ接合複合膜及びその光電デバイスの作製を実現するために、以下の3つの条件を満たす必要があることを説明することができる。1)前記有機ヘテロ接合複合膜において、各成分がいずれも有機単結晶形態であることを確保するという条件で、高品質のヘテロ接合界面を実現し、2)前記二層又は多層の有機単結晶薄膜の間は、積層結合成長により、高効率貼着性を実現し、すなわち貼着面積比ができるだけ大きい積層有機単結晶ヘテロ接合複合膜構造を実現することができ、3)前記有機単結晶ヘテロ接合複合膜のうち、少なくとも一層の有機単結晶薄膜は、二次元高被覆を実現することができる。前の二つの条件を満たす時、高品質の有機単結晶ヘテロ接合複合膜を得ることができ、その形態とデバイス性能は、従来のレベルに比べて大幅に向上し、理想的な形態の有機単結晶ヘテロ接合複合膜にとって、本発明の目的を実現するために、前記3つの条件が全体的に協働し、共同で作用する必要がある。
【0140】
表1 実施例1~17と比較例3~7の配合とプロセスパラメータA(基板、基板修飾層、溶質及びその比率、溶媒、せん断温度、せん断速度)
**実際に使用されるプロセスパラメータ(せん断温度及びせん断速度を含む)と表に示されているパラメータは±2%の偏差が許容される。
【0141】
表2 実施例1~17と比較例3~7の配合とプロセスパラメータB(静置時間、環境温度、環境湿度、間隔、溶質の溶解度S及び二層の有機単結晶薄膜の間の積層結合成長の方式)
**実際に使用されるプロセスパラメータ(静置時間、環境温度、環境湿度、間隔と溶質の溶解度Sを含む)と表に示されているパラメータは±2%の偏差が許容される。
【0142】
表3 実施例1~17と比較例5~7の有機単結晶ヘテロ接合複合膜の形態パラメータ
**実際に得られた結晶形態パラメータ(貼着面積比R、積層配向度F
L、有機単結晶薄膜M
L垂直方向被覆率R
V及びM
L水平方向被覆率R
Hを含む)と表に示されている、検出して得られたパラメータは、±3%の偏差が許容される。
【0143】
表4 実施例1~6、実施例9~10及び比較例1~2、比較例4及び比較例7~10の有機単結晶電界効果トランジスタがV
DS=-120V、V
G=-120Vの動作電圧で得られた飽和領域正孔移動率と電子移動率の性能統計