(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】盗難防止装置
(51)【国際特許分類】
E05B 73/00 20060101AFI20230412BHJP
A45C 13/22 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
E05B73/00 A
A45C13/22 Z
(21)【出願番号】P 2019102087
(22)【出願日】2019-05-31
【審査請求日】2022-04-04
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 東京都北区が主催する「北区ビジネスプランコンテスト」に、平成30年11月9日、「盗難防止装置」に係る発明を「登山用ロック」として応募した。
(73)【特許権者】
【識別番号】519197491
【氏名又は名称】株式会社トップブレイン
(74)【代理人】
【識別番号】100085110
【氏名又は名称】千明 武
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 学
【審査官】河内 悠
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-135166(JP,A)
【文献】特開2011-080268(JP,A)
【文献】特開平08-080204(JP,A)
【文献】実公昭60-041125(JP,Y2)
【文献】特公平03-035190(JP,B2)
【文献】特開昭62-246307(JP,A)
【文献】米国特許第05473917(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0223756(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
A45C 13/22
A44B 99/00
B65D 30/00-33/38
A63C 11/02
A44B 11/00-11/28
G09F 3/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に一本の索条を移動可能に収容した防止具本体を設け、該防止具本体の外側に索条を略U字状に突出した緊縛ループを形成可能に設け、該緊縛ループを伸縮可能に設けるとともに、該緊縛ループの内側に盗難防止品を収容した収納袋または盗難防止品を配置して緊縛可能にした盗難防止装置
において、前記防止具本体の内部に一対の索条通路と、該通路に斜状に交差する一対のガイド溝を設け、該ガイド溝に索条と係合可能なストッパを移動可能に収容し、かつ該ストッパを前記索条通路側へ移動可能に付勢し、前記ストッパと索条との係合を介して、索条を索条通路の周面に圧接可能に設けたことを特徴とする盗難防止装置。
【請求項2】
前記
一対の索条通路に配置した索条を緊縛ループと反対側へ移動可能に設け、該索条の前記移動時に緊縛ループを収縮可能に設け、該緊縛ループの内側の収納袋または盗難防止品を緊縛可能にした請求項
1記載の盗難防止装置。
【請求項3】
前記
一対の索条通路に配置した索条を緊縛ループ側へ移動不可能に設け、該緊縛ループを伸長不可能にした請求項
1記載の盗難防止装置。
【請求項4】
前記
防止具本体の緊縛ループと反対側に配置した一対の索条を、緊縛ループと反対側へ移動可能に設け、または緊縛ループ側へ移動不可能に設けた請求項
2または
3記載の盗難防止装置。
【請求項5】
前記
一対のガイド溝の間に操作プレートを索条通路と平行に移動可能に設け、該操作プ
レートの一端を前記ストッパに係合可能に設け、操作プレートの移動を介して、前記索条の圧接およびその解除を形成可能にした請求項
1記載の盗難防止装置。
【請求項6】
前記
操作プレートを緊縛ループと反対側へ移動して前記ストッパに係合可能に設け、前記索条の圧接を解除可能に設けるとともに、前記索条を緊縛ループ側へ移動可能に設けて緊縛ループを伸長可能にし、前記収納袋または盗難防止品の緊縛を解除可能にした請求項
5記載の盗難防止装置。
【請求項7】
前記
操作プレートに操作摘みを突設し、該操作摘みを防止具本体の表面に表出させた請求項
5記載の盗難防止装置。
【請求項8】
前記
操作プレートにロック孔を設けるとともに、防止具本体の端部に通孔を設け、前記ロック孔と通孔に錠前のロック杆を装着可能にした請求項
5記載の盗難防止装置。
【請求項9】
前記
防止具本体の緊縛ループと反対側の索条の端部に掛止ループを設け、該掛止ループ周辺の索条を捲回して係留ループを形成し、該係留ループを不動部材に巻き掛け可能に設けるとともに、前記掛止ループを前記ロック孔と通孔に配置し、これら掛止ループとロック孔と通孔に錠前のロック杆を装着可能にした請求項
8記載の盗難防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小形かつ軽量で持ち運びが至便であるとともに、簡単な構成で旅先や避難所、山小屋等において履物や携行品、所持品、貴重品、免許証、クレジットカード類等の保管を確実かつ迅速に行なえ、それらの盗難を防止できるとともに、保管後に簡便に回収でき、しかもその広範な利用と汎用性を得られるようにした盗難防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旅先やハイキング、避難所等では、履物や携行品、所持品、貴重品、免許証、クレジットカード類等の管理が難しく、しばしば盗難の惧れがあるため、その簡易な盗難防止装置が種々提案されている。
例えば、スノーボードやスキーのビンディングにワイヤーを通し、これを不動の棚や支柱に掛け止めて盗難を防止するものがあるが、この場合はビンディングのネジを取外してしまえば、スノーボードの板を盗まれてしまう問題がある。
そこで、スノーボードの板に装着したコ字形状の締め付け器具に、ベルトまたはワイヤを嵌め込んで軽く締め、締め付け器具とスノーボードの板を南京錠でロックして、これらの盗難を防止するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、前記盗難防止器具は、ベルトやワイヤを切断してしまうと、南京錠を付けたままスノーボードの板が盗まれてしまう問題がある。
【0004】
また、駐輪場に設けた自転車スタンドに自転車を係留する手段として、鞘管内に本体を収容し、該本体は所定長さのフレームの一端にフック状の係止手段を設け、他端に鋸歯状のスライドレールを配置し、該スライドレールにシリンダ錠ケースを係合かつ移動可能に設け、その移動位置で施錠可能に設けるとともに、本体の他端にワイヤ錠のワイヤを挿通可能な締結手段を設け、その使用時は、鞘管を保持して前記係止手段を自転車スタンドに引っ掛け、シリンダ錠を適宜位置に移動後、シリンダ錠を施錠し、締結手段にワイヤ錠のワイヤを挿通して自転車のフレームに繋ぎ、ロックするようにしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、前記係留手段の本体は大形で比較的大重量のため携行することができず、その利用が自転車スタンドを備えた駐輪場に限られ、汎用性に欠ける問題があった。
【0006】
また、駐輪場に自転車を係留する別の手段として、一端にリング部を設け、他端にロック用プラグを設けた拘束ワイヤと、一端に前記ロック用プラグを差し込み可能なロック機構を設け、他端にC字形状の開閉拘束手段を設けた延伸部を有するワイヤ錠を備え、前記延伸部の内部に操作棒を摺動可能に収容し、該操作棒をロック用プラグの差し込み時にスライド可能に設け、ワイヤ錠の使用時は、ワイヤを自転車の適宜箇所に巻き付け、そのリングにロック用プラグを通すとともに、前記開閉拘束手段を自転車のフレームに掛止し、他端のロック用プラグをロック機構に差し込んで操作棒をスライドし、開閉拘束手段の開放部を閉塞して自転車のフレームに掛け止め、自転車を係留するようにしたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
しかし、前記ワイヤ錠は、延伸部が大形で比較的大重量のため携行することができず、またその利用が自転車の係留に限られ、汎用性に欠ける問題があった。
【0008】
そこで、上記問題を解決するものとして、ケーブルを通す環状部のない、例えばコンピュータモニタ等の物品の盗難を防止する係止具として、一端が枢支されて連結された一対の係止プレートを備え、これらの係止プレートには、係止プレートを閉じた状態を施錠され、係止プレートの開きを阻止する係止部と、両係止プレートに夫々位置をずらして形成したケーブル挿通孔を備え、二つのケーブル挿通孔に両係止プレートを貫通するケーブルが挿通され、係止プレートを閉じることによって、ケーブル自体の変形度よりも、ケーブル挿通孔とケーブルとの間に作用する摩擦力の方が強く作用して、ケーブルは、一対の係止プレートに対して移動できなくなるようにして、ケーブルを両係止プレートに固定するようにしたものがある(例えば、特許文献4参照)。
【0009】
しかし、前記係止具は、コンピュータモニタ等の物品の盗難防止に好適であるが、他の物品への利用が難しく汎用性に欠け、しかも係止プレートの構成が複雑で、製作費が高価になる問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2007-160074号公報
【文献】特開2018-193844号公報
【文献】特許第6031638号公報
【文献】特許第4477193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明はこのような問題を解決し、小形かつ軽量で持ち運びが至便であるとともに、簡単な構成で旅先や避難所、山小屋等において履物や携行品、所持品、貴重品、免許証、クレジットカード類等の保管を確実かつ迅速に行なえ、それらの盗難を防止できるとともに、保管後に簡便に回収でき、しかもその広範な利用と汎用性を得られるようにした盗難防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明は、内部に一本の索条を移動可能に収容した防止具本体を設け、該防止具本体の外側に索条を略U字状に突出した緊縛ループを形成可能に設け、該緊縛ループを伸縮可能に設けるとともに、該緊縛ループの内側に盗難防止品を収容した収納袋または盗難防止品を配置して緊縛可能にした盗難防止装置において、前記防止具本体の内部に一対の索条通路と、該通路に斜状に交差する一対のガイド溝を設け、該ガイド溝に索条と係合可能なストッパを移動可能に収容し、かつ該ストッパを前記索条通路側へ移動可能に付勢し、前記ストッパと索条との係合を介して、索条を索条通路の周面に圧接可能に設け、ストッパの動作によって索条通路の周面に索条を圧接し、索条の移動を拘束して緊縛ループの伸長ないし増大を防止し得るようにし、索条による緊縛を確実かつ強固に行えるようにし、旅先や避難所、山小屋、日常生活において履物や携行品、所持品、貴重品、免許証、クレジットカード類等の管理を簡便に行なえ、それらの盗難を防止できるようにして、その広範な利用と汎用性を得られるようにしている。
【0013】
請求項2の発明は、前記一対の索条通路に配置した索条を緊縛ループと反対側へ移動可能に設け、該索条の前記移動時に緊縛ループを収縮可能に設け、該緊縛ループの内側の収納袋または盗難防止品を緊縛可能にし、索条を緊縛ループと反対側へ引き動かすことによって、収納袋または盗難防止品を簡便に緊縛し防止具本体と一体化して、それらの盗難を防止し得るようにしている。
請求項3の発明は、一対の索条通路に配置した索条を緊縛ループ側へ移動不可能に設け、該緊縛ループを伸長不可能にして、緊縛ループによる収納袋または盗難防止品の緊縛を阻止し、誤操作による緊縛を防止し得るようにしている。
請求項4の発明は、防止具本体の緊縛ループと反対側に配置した一対の索条を、緊縛ループと反対側へ移動可能に設け、または緊縛ループ側へ移動不可能に設け、一対の索条を緊縛ループと反対側へ移動可能に設けることで、緊縛ループの収縮を容易かつ迅速に行なえ、盗難防止操作を簡便に行えるとともに、一対のワイヤを緊縛ループと反対側へ移動不可能に設けることで、誤操作を防止し使用上の安全を確保するようにしている。
【0014】
請求項5の発明は、一対のガイド溝の間に操作プレートを索条通路と平行に移動可能に設け、該操作プレートの一端を前記ストッパに係合可能に設け、操作プレートの移動を介して、前記索条の圧接およびその解除を形成可能にし、操作プレートによってワイヤの圧接およびその解除を容易に行なえるようにしている。
請求項6の発明は、操作プレートを緊縛ループと反対側へ移動して前記ストッパに係合可能に設け、前記索条の圧接を解除可能に設けるとともに、前記索条を緊縛ループ側へ移動可能に設けて緊縛ループを伸長可能にし、前記収納袋または盗難防止品の緊縛を解除可能にして、収納袋内の盗難防止品または直接緊縛した盗難防止品を速やかに回収し、その使用を図れるようにしている。
請求項7の発明は、操作プレートに操作摘みを突設し、該操作摘みを防止具本体の表面に表出させて、操作摘みによる操作プレートの操作を容易に行なえるようにしている。
【0015】
請求項8の発明は、操作プレートにロック孔を設けるとともに、防止具本体の端部に通孔を設け、前記ロック孔と通孔に錠前のロック杆を装着可能にし、錠前の施錠によって、索条の圧接による拘束と相俟って、索条の移動を二重に拘束し、確実な盗難防止効果を得られるようにしている。
請求項9の発明は、防止具本体の緊縛ループと反対側の索条の端部に掛止ループを設け、該掛止ループ周辺の索条を捲回して係留ループを形成し、該係留ループを不動部材に巻き掛け可能に設けるとともに、前記掛止ループを前記ロック孔と通孔に配置し、これら掛止ループとロック孔と通孔に錠前のロック杆を装着可能にし、不動部材に係留ループを速やかに掛け止めて拘束し得るとともに、掛止ループとロック孔と通孔に錠前のロック杆を装着して簡便に二重ロックし得るようにしている。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明は、防止具本体の内部に一対の索条通路と、該通路に斜状に交差する一対のガイド溝を設け、該ガイド溝に索条と係合可能なストッパを移動可能に収容し、かつ該ストッパを前記索条通路側へ移動可能に付勢し、前記ストッパと索条との係合を介して、索条を索条通路の周面に圧接可能に設け、ストッパの動作によって索条通路の周面に索条を圧接し、索条の移動を拘束して緊縛ル-プの伸長ないし増大を防止しできるから、索条による緊縛を確実かつ強固に行なうことができ、旅先や避難所、山小屋、日常生活において履物や携行品、所持品、貴重品、免許証、クレジットカード類等の管理を簡便に行なえ、それらの盗難を防止できるようにして、その広範な利用と汎用性を得られる効果がある。
【0017】
請求項2の発明は、一対の索条通路に配置した索条を緊縛ループと反対側へ移動可能に設け、該索条の前記移動時に緊縛ループを収縮可能に設け、該緊縛ループの内側の収納袋または盗難防止品を緊縛可能にしたから、索条を緊縛ループと反対側へ引き動かすことによって、収納袋または盗難防止品を簡便に緊縛し防止具本体と一体化して、それらの盗難を防止することができる。
請求項3の発明は、一対の索条通路に配置した索条を緊縛ループ側へ移動不可能に設け、該緊縛ループを伸長不可能にしたから、緊縛ループによる収納袋または盗難防止品の緊縛を阻止し、誤操作による緊縛を防止することができる。
請求項4の発明は、防止具本体の緊縛ループと反対側に配置した一対の索条を、緊縛ループと反対側へ移動可能に設け、または緊縛ループ側へ移動不可能に設けたから、一対の索条を緊縛ループと反対側へ移動可能に設けることで、緊縛ループの収縮を容易かつ迅速に行なえ、盗難防止操作を簡便に行えるとともに、一対のワイヤを緊縛ループと反対側へ移動不可能に設けることで、誤操作を防止し使用上の安全を確保することができる。
【0018】
請求項5の発明は、一対のガイド溝の間に操作プレートを索条通路と平行に移動可能に設け、該操作プレートの一端を前記ストッパに係合可能に設け、操作プレートの移動を介して、前記索条の圧接およびその解除を形成可能にしたから、操作プレートによってワイヤの圧接およびその解除を容易に行なうことができる。
請求項6の発明は、操作プレートを緊縛ループと反対側へ移動して前記ストッパに係合可能に設け、前記索条の圧接を解除可能に設けるとともに、前記索条を緊縛ループ側へ移動可能に設けて緊縛ループを伸長可能にし、前記収納袋または盗難防止品の緊縛を解除可能にしたから、収納袋内の盗難防止品または直接緊縛した盗難防止品を速やかに回収し、その使用を図ることができる。
請求項7の発明は、操作プレートに操作摘みを突設し、該操作摘みを防止具本体の表面に表出させたから、操作摘みによる操作プレートの操作を容易に行なうことができる。
【0019】
請求項8の発明は、操作プレートにロック孔を設けるとともに、防止具本体の端部に通孔を設け、前記ロック孔と通孔に錠前のロック杆を装着可能にしたから、錠前の施錠によって、索条の圧接による拘束と相俟って、索条の移動を二重に拘束し、確実な盗難防止効果を得られる効果がある。
請求項9の発明は、防止具本体の緊縛ループと反対側の索条の端部に掛止ループを設け、該掛止ループ周辺の索条を捲回して係留ループを形成し、該係留ループを不動部材に巻き掛け可能に設けるとともに、前記掛止ループを前記ロック孔と通孔に配置し、これら掛止ループとロック孔と通孔に錠前のロック杆を装着可能にしたから、不動部材に係留ループを速やかに掛け止めて拘束し得るとともに、掛止ループとロック孔と通孔に錠前のロック杆を装着して簡便に二重ロックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明を適用した盗難防止装置を示す正面図である。
【
図2】本発明に適用した防止具本体の拡大平面図である。
【
図3】本発明に適用した防止具本体の拡大底面図である。
【
図4】本発明を適用した盗難防止装置の分解斜視図である。
【
図5】本発明に適用したカバーの内側を拡大して示す平面図である。
【0021】
【0022】
【
図11】本発明を適用した防止具本体に索条としてワイヤを挿入する状況を示す平面図である。
【
図12】本発明を適用した防止具本体の組み立て後、操作プレートを操作して索条であるワイヤを側方へ圧接した状況を示す平面図である。
【
図13】本発明を適用した防止具本体の組み立て後、操作プレートを操作して索条であるワイヤの側方への圧接状態を緩和した状況を示す平面図である。
【
図14】本発明を適用した防止具本体に緊縛ループを形成後、貴重品等を収容した収納袋の開口側を緊縛ループの内側に配置して、緊縛ループを緊縛する直前の状況を示す斜視図である。
【0023】
【
図15】本発明を適用した防止具本体によって緊縛ループを緊縛し、貴重品等を収容した収納袋の開口側を緊縛後、掛止ループ周辺の索条を捲回した係留ループを不動部材に巻き掛け、掛止ループをロック孔と通孔に位置付けて錠前のロック杆を挿入し、施錠した状況を示す斜視図である。
【
図16】本発明を適用した防止具本体によって緊縛ループを緊縛して傘の柄の直下を緊縛後、掛止ループ周辺の索条を捲回した係留ループを不動部材に巻き掛け、掛止ループをロック孔と通孔に位置付けて錠前のロック杆を挿入し、施錠した状況を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を履物や携行品、所持品、貴重品、免許証、クレジットカード類等の盗難防止に適用した図示の実施形態について説明すると、
図1乃至
図16において1は盗難防止装置で、薄厚軽量の箱形の防止具本体2と、該防止具本体2に抜き差し可能に差し込んだ折り曲げ可能なワイヤやロープ等の索条3を備え、該索条3は表面の摩擦形成手段として、合成樹脂を被覆している。
実施形態の防止具本体2は、縦35mm、横60mm、厚さ12mm、重さ25gに構成され、また索条3としてワイヤを使用し、その太さは3mmΦ、長さ65mm、重さ20gに構成されている。
【0025】
前記防止具本体2は、実質的に略同一な合成樹脂製のケース4とカバー5の内面を接合して薄厚の箱形に形成し、その内部に合成樹脂製の操作プレート6を移動可能に収容している。
前記ケース4とカバー5は略横長矩形の板状に形成され、その内外面は略平坦面に形成され、その内面の一側に平面視台形状の凸状段部7,8が形成され、その両側にビス孔9,10が形成されている。
【0026】
前記ケース4とカバー5の内面の他側半部に、その長さ方向に沿って凸状の一対のプレートガイド11,12が平行に形成され、その端部にビス孔13,14が形成されている
前記プレートガイド11,12の内側に段部15,16が斜状に形成され、その開口縁に凸部17と凹部18が嵌合可能に形成されて、ケース4とカバー5の接合位置を位置決め可能にしている。
【0027】
前記凸状段部7,8とプレートガイド11,12を除く、ケース4とカバー5の内面は、凹状の平坦面に形成され、その略中央位置でプレートガイド11,12の間に長孔19,20が形成され、該長孔19,20の外側の開口縁にテーパ面19a,20aが形成されている。
前記長孔19,20の外側に、前記段部15,16に沿ってガイド溝21,22が平面視ハの字状に形成され、その一端がケース4とカバー5の内面の外側部に延設されている
【0028】
前記プレートガイド11,12の間の凹状面に、前記操作プレート6の両側面が摺動可能に収容され、該操作プレート6の一端に突設した操作摘み23,24が、前記長孔19,20に係合可能に収容されている。
【0029】
前記操作プレート6は平面視T字形状に形成され、その一端に板状のロックプレート25が形成され、その両側端部が前記凸状段部7,8に係合可能に配置されている。
図中、26は操作プレート6の他端部に形成されたロック孔で、後述する錠前である南京錠のロック杆を抜き差し可能にされている。
【0030】
前記段部15,16の一端にコイルバネ27,28が収容され、該コイルバネ27,28の他端にバネ受29,30の軸部が挿入され、該バネ受29,30の端部に凹曲面状のピン受31,32が形成されている。
前記ピン受31,32に円筒状のストッパー33,34が係合可能に収容され、該ストッパー33,34に前記ロックプレート25が係合可能に配置されている。
【0031】
前記ケース4とカバー5の内面の側端部に側壁35,36が形成され、該側壁35,36とプレートガイド11,12の他側半部と凸状段部7,8との間、およびガイド溝21,22の開口部に亘って、索条通路を形成する索条収容溝37,38が形成され、該索条収容溝37,38に前記索条3を摺動可能に収容している。
【0032】
前記コイルバネ27,28の弾性は、ストッパー33,34およびストッパ受29,30を介してロックプレート25に作用し、常時はストッパー33,34をワイヤ収容溝37,38側へ突出可能に付勢し、かつ側壁35,36の内周面にワイヤ3,3を押し付けて、該ワイヤ3,3の後述する緊縛ループ側への移動を阻止可能にしている。
【0033】
前記ワイヤ3は、
図11のように防止具本体2の片側のワイヤ収容溝37,38の一方、すなわち前記緊縛ループの反対側から挿入され、前記緊縛ループへ引き出し後、該ワイヤ3を防止具本体2の他側のワイヤ収容溝37,38に挿し込み、防止具本体2の他方に所定大の略U字形状の緊縛ループ39を形成後、他側のワイヤ収容溝37,38から引き出されている。
【0034】
図中、40はワイヤ3の一端部に湾曲形成した小形の掛止ループで、該ループ40は端部を例えば固定管41でかしめて固定し、該掛止ループ40を含む周辺のワイヤ3を捲回して係留ループ42を形成し、該係留ループ42を不動の枠体または支柱56に簡便に掛け止め可能にしている。
【0035】
この他、図中、43,44はケース4とカバー5の端部に形成した通孔で、該通孔43,44と前記ロック孔26を位置合わせし、これらに錠前45である南京錠のロック杆46を抜き差し可能にしている。
前記南京錠は複数のナンバーリング45aを備え、各ナンバーリング45aに設定したロック暗証番号を揃えることで錠前45のロックを解除し、ロック孔26および通孔44に差し込んだロック杆46を取り外し可能にしている。
【0036】
図中、55はケース4のビス孔9の外側開口部に収容したナット、47はカバー5のビス孔10に挿入するビスで、前記ナット55にねじ込み可能にしており、48は不透明かつ有底の柔軟な収納袋で、内部に例えば貴重品である財布49やクレジットカード50を収容している。
この他、51,52は側壁35,36の外面に複数形成した摩擦形成用の凹凸部、53,54は凸状段部7,8の外面に複数形成した摩擦形成用の凹凸部で、これらは防止具本体2の円滑な使用を図るようにしている。
【0037】
このように構成した盗難防止装置は、主要な構成部材として防止具本体2と、防止具本体2に組み込むワイヤ3と操作プレート6、市販の錠前45とを有し、防止具本体2とワイヤ3と操作プレート6は製作を要する。
このうち、前記ワイヤ3は合成樹脂を被覆した所定径の線材を所定長さに切断し、その一端をル-プ状に折り曲げ、その端末に固定管41をかしめて、掛止ループ40を形成する。
【0038】
前記防止具本体2は、ケース4とカバー5を実質的に略同一に樹脂成形し、該ケース4とカバー5の外面を平坦面に形成し、その略中央位置に長孔19,20を形成し、その開口部の外周にテーパ面19a,20aを形成する。
また、ケース4とカバー5の両端部に各一対のビス孔9,10,13,14を形成し、長さ方向の一端部に通孔43,44を形成し、更に外側周面に摩擦形成用の凹凸部51,52、53,54を形成する。
【0039】
前記ケース4とカバー5の内面の一端に、平面視台形状の凸状段部6,7を形成し、その他端部に各一対のプレートガイド11,12を平行に形成し、この凸状段部7,8とプレートガイド11,12を除く内面を、凹状の平坦面に形成する。
そして、前記凹状の平坦面にガイド溝21,22を平面視ハの字状に形成し、その一端部をワイヤ収容溝37,38の端部側に延設し、ガイド溝21,22の他端に段部15,16を形成し、その開口縁に凸部17と凹部18を形成する。
【0040】
前記操作プレート6を平面視T字形状に樹脂成形し、その一端にロックプレート25を形成し、その中央位置に操作摘み23,24を厚さ方向に突設し、他端部にロック孔26を形成する。
【0041】
こうして製作した構成部材を用いて盗難防止装置を組み立てる場合は、例えば防止具本体2のケース4の内側の一方のガイド溝21にコイルバネ27を収容し、該バネ27の先端部にバネ受29の軸部を挿入し、その端部のピン受31にストッパー33を係合して配置する。
また、ケース4の内側の他方のガイド溝21にコイルバネ28を収容し、該バネ28の先端部にバネ受30の軸部を挿入し、その端部のピン受32にストッパー34を係合して配置する。この状況は
図4のようである。
【0042】
こうしてケース4の内側のガイド溝21,21に、コイルバネ27,28とバネ受29,30とストッパー33,34配置後、それらの上方から操作プレート6を配置し、その操作摘み23を長孔19に挿入する。
【0043】
そして、カバー5の内側をケース4の上方に配置し、該カバー5をケース4に重合して、操作摘み24を長孔20に挿入し、カバー5側の凹部18をケース4の凸部17に係合して位置合わせする。
この後、カバー5の外側からビス47をビス孔10,14に挿入し、その螺軸をケース4のビス孔9,13の外側に配置したナット55にねじ込んで緊締する。この組み込み状況は
図11のようである。
【0044】
この組み込み時は、ストッパー33,34がコイルバネ27,28の弾性によって、ガイド溝21,21の一端側へ付勢され、ワイヤ収容溝37,38に突出して位置している
また、前記ストッパー33,34がロックプレート25の両端部に係合し、操作プレート6の一端が凸状段部7,8の内側端面に係合し、その他端がプレートガイド11,12間に位置して防止具本体2内に収容されている。
【0045】
このような状況の下で、ワイヤ3の端部をケース4とカバー5のワイヤ収容溝37,38で形成するワイヤ通路に挿入する。
その際、ストッパー33,34がワイヤ収容溝37,38に突出して位置しているため、ワイヤ収容溝37,38を開放する必要がある。
【0046】
そこで、操作摘み24を保持し、操作プレート6をコイルバネ27,28の弾性に抗して
図11上右方へ押し動かし、コイルバネ27,28を圧縮してストッパー33,34を同方向へ移動し、操作プレート6の端部を防止具本体2の外側へ突出させる。この状況は
図12,13のようである。
【0047】
このようにすると、ストッパー33,34がガイド溝21,21に沿って、ワイヤ収容溝37,37の内側へ移動し、ワイヤ3の挿入路を開放する。
そこで、前記ワイヤ3の挿入路の開放状態を維持しながら、つまり操作摘み24を保持しながら、ワイヤ3を防止具本体2の外側から前記挿入路へ挿入する。その際、ワイヤ収容溝37,38は開放されているから、ワイヤ3が円滑かつ速やかに挿入される。
なお、前記操作摘み24の保持操作は、緊縛ループ39を形成後、ワイヤ3を他側のワイヤ収容溝37,38へ挿入して外側へ引き出すまで行なわれる。
【0048】
こうしてワイヤ3を所定寸法挿入し、防止具本体2の外側に所定大の緊縛ループ39を形成後、操作摘み24の押圧操作を解除すると、ストッパー33,34がコイルバネ27,28の弾性によって押し戻され、操作プレート6の端部が防止具本体2の内側へ若干引き戻される。
そして、前記ストッパー33,34がワイヤ3との間の摩擦力が拮抗した位置で静止し、該ストッパー33,34にロックプレート25が係合する。この状況は
図12のようである。
【0049】
この場合、ストッパー33,34はコイルバネ27,28の弾性によって、ガイド溝21の凹部18と反対側へ移動してワイヤ3の一側面と係合し、該ワイヤ3の他側面がワイヤ収容溝38の壁面に押し付けられて、ストッパー33,34とワイヤ収容溝37,38の壁面に圧接される。
【0050】
したがって、このような状況ではワイヤ3の
図12上X矢視方向への移動、つまり緊縛ループ39の伸長ないし増径方向への移動は、ストッパー33,34とワイヤ3との間の摩擦力によって、ストッパー33,34がワイヤ収容溝37,38の外側へ移動し、ワイヤ収容溝37,38が狭小になってワイヤ3の挟圧力が増強されるため、X矢視方向への移動を阻止する。
【0051】
一方、ワイヤ3の
図12上Y矢視方向への移動、つまり緊縛ル-プ39の縮小ないし緊縛方向への移動は、ストッパー33,34とワイヤ3との間の摩擦力によって、ストッパー33,34がワイヤ収容溝37,38の内側へ変位して拡幅し、該収容溝37,38によるワイヤ3の圧接力を緩和して、Y矢視方向への移動を可能にする。すなわち、ワイヤ3による緊縛ループ39の収縮および緊縛の増強を行なえる。
【0052】
こうして、防止具本体2の外側に緊縛ループ39を形成し、ワイヤ3の先端部を他方のワイヤ収容溝37,38へ挿入して、緊縛ループ39と反対側へ引き出し後、防止具本体2の実質的な使用が可能になる。
【0053】
すなわち、例えば収納袋48に財布49やクレジットカード50を収容し、その開口部を緊縛ループ39の内側に位置付け、防止具本体2の他側の一または両方のワイヤ3をY矢視方向へ引っ張ると、前述のようにワイヤ3の圧接力が緩和されてワイヤ3が外側に引き出され、緊縛ル-プ39が縮小して収納袋48の開口部を緊縛する。
【0054】
このため、収納袋48が防止具本体2に密着して開口部を密閉し、内部の財布49やクレジットカード50の盗難を防止する。
その際、収納袋48は、緊縛ループ39と凸状段部7,8の外端部の複数の凹凸部53,54の間に挟持されて、確実かつ強固に緊縛されて開口部を閉塞される。
【0055】
この後、前記の盗難防止状況の確実を期す場合は、掛止ループ40周辺のワイヤ3を捲回して係留ループ42を形成し、該係留ループ42を不動部材56に巻き付けて係留するとともに、その先端部の掛止ループ40をロック孔26と通孔43,44の同心上に位置付ける。
一方、これと前後して、操作摘み24を保持して緊縛ループ39側へ移動し、操作プレート6を防止具本体2内に移動し、そのロック孔26をケース4およびカバー5の通孔43,44に位置合わせする。
【0056】
そして、前記ロック孔26とケース4およびカバー5の通孔43,44に錠前45のロック杆46を挿入し、これを係合孔(図示略)に差し込んでナンバーリング45aを操作し、暗証番号を入力して錠前45をロックする。
【0057】
このようにすると、操作プレート6とストッパー33,34の移動が拘束され、ワイヤ3がストッパー33,34との摩擦力による拘束動作と、錠前45による操作プレート6のロック作動とで二重に拘束され、収納袋48の緊縛ループ39からの離脱が強力に阻止される。
【0058】
なお、前述の実施形態では収納袋48に財布49やクレジットカード50を収容し、その開口部を緊縛ループ39で緊縛しているが、例えば
図16のように緊縛ループ39に盗難防止品である傘56の柄57の直下を直接挿入して緊縛することで、収納袋48の使用を省略し、簡便な使用を図ることができる。
その際、掛止ループ40周辺のワイヤ3を捲回して係留ループ42を形成し、該係留ループ42を不動部材56に巻き付けて係留し、その掛止ループ40をロック孔26と通孔43,44に位置付け、錠前45のロック杆46を挿入して施錠し、二重にロックすることが望ましい。
【0059】
一方、緊縛ループ39に束縛した収納袋48や傘56の柄57の緊縛を解除する場合は、錠前45を解錠し、ロック孔26と通孔43,44からロック杆46を取り外し、操作プレート6の作動を解放する。
この後、操作摘み23,24を保持し、操作プレート6をコイルバネ27,28の弾性に抗して
図12上右方へ押し動かし、ストッパー33,34をワイヤ3の周面から避退させて、ワイヤ収容溝37,38を拡開し、ワイヤ3の圧接力を緩和する。
【0060】
このため、ワイヤ3を
図12上X方向へ円滑に押し動かすことが可能になり、緊縛ループ39が増大して収納袋48や傘56の柄57の束縛が解除され、収納袋48を取り外して内部の財布49やクレジットカード50を回収でき、また緊縛ループ39から傘56の柄57を取り外して使用が可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の盗難防止装置は、小形かつ軽量で持ち運びが至便であるとともに、簡単な構成で旅先や避難所、山小屋等において履物や携行品、所持品、貴重品、免許証、クレジットカード類等の保管を確実かつ迅速に行なえ、それらの盗難を防止できるとともに、保管後に簡便に回収でき、しかもその広範な利用と汎用性を得られる。
【符号の説明】
【0062】
2 防止具本体
3 索条(ワイヤ)
6 操作プレート
21,22 ガイド溝
23,24 操作摘み
26 ロック孔
33,34 ストッパ
37,38 索条通路(ワイヤ通路)
【0063】
39 緊縛ループ
40 掛止ループ
42 係留ループ
43,44 通孔
48 収納袋
49,50,56 盗難防止品
53,54 凹凸部
56 不動部材