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  • 特許-フィルム素材を用いたパーティション 図1
  • 特許-フィルム素材を用いたパーティション 図2
  • 特許-フィルム素材を用いたパーティション 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】フィルム素材を用いたパーティション
(51)【国際特許分類】
   A47G 5/00 20060101AFI20230412BHJP
   B32B 3/02 20060101ALI20230412BHJP
   E04B 2/74 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
A47G5/00 Z
B32B3/02
E04B2/74 561H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021030578
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131572
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2022-09-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)販売日:令和3年1月5日~令和3年1月25日、販売先リストの会社に販売 (2)発行日:令和3年1月15日 自社のパンフレットにて公開 (3)掲載日:令和3年1月22日 https://www.kyoto-shinsei.co.jp/product/tsuon.html 自社ホームページにて公開
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、権利譲渡・実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521034546
【氏名又は名称】株式会社新生工業
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 由雄
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3227488(JP,U)
【文献】登録実用新案第3228497(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 5/00
B32B 3/02
E04B 2/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムと、前記フィルムに張力が生じるように前記フィルムの四方を支持する金属製の枠状の固定支持部材と、前記固定支持部材の枠に沿って配置され、前記フィルムを前記固定支持部材に固定する両面テープとを備えており、
前記フィルムの厚みを5μm以上、30μm以下とし
前記両面テープは、発泡ポリマーからなるフィルム状の基材と、その両面に設けられた接着剤とからなり、
前記基材のショア硬度Dは、5以上、60以下であり、
前記基材の厚みは0.3mm以上、1mm以下である、パーティション。
【請求項2】
請求項1に記載のパーティションであって、前記フィルムの材質がポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ウレタン、塩化ビニール(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミドのいずれかを少なくとも1つ以上含有している事を特徴とするパーティション。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパーティションであって、前記フィルムの厚みが15μm以上、20μm以下である。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のパーティションであって、前記両面テープは、固定支持部材の枠に沿って隙間が1mm以下となるように配置されている。
【請求項5】
フィルムと、前記フィルムに張力が生じるように前記フィルムの四方を支持する金属製の枠状の固定支持部材と、前記固定支持部材の枠に沿って配置され、前記フィルムを前記固定支持部材に固定する両面テープとを備えており、
前記フィルムの厚みを5μm以上、30μm以下とし、
前記両面テープは、発泡ポリマーからなるフィルム状の基材と、その両面に設けられた接着剤とからなり、
前記基材のショア硬度Dは、5以上、60以下であり、
前記基材の厚みは0.3mm以上、1mm以下であるパーティションの製造方法であって、
前記固定支持部材の枠に沿って前記両面テープを配置し、
前記フィルムの四方を100g以上、15kg以下で引っ張りながら前記フィルムを前記固定支持部材に貼り付ける、パーティションの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロナウィルスなどによるウィルスの飛沫感染防止に用いられるパーティションに関する。
【背景技術】
【0002】
人と人とが対面もしくは近接して会話する際、コロナウィルスなどによるウィルスの飛沫感染防止のために用いられるパーティションは、光の透過率が60%以上ある透明アクリル板、透明ポリカーボネート板、透明塩化ビニール板(以下透明樹脂板という)を用いて構成されている(図3参照)。例えば、特許文献1が挙げられる。それら樹脂板は、光の透過率を60%以上あるものを用いることで、人と人とが対面もしくは近接して会話する際、会話する相手の表情を見ながら会話をすることができる構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3228986号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的に使用される樹脂板は厚みが1mm以上と厚いため、話し手が発声した声が相手(聞き手)の耳に届く前に、これら樹脂板でできたパーティションに声が反射もしくは、樹脂板が振動し吸収されることで、声の音量が減衰し、聞き手の耳に届く音量が小さくなってしまう。その結果、
・会話を行う際、相手の声を聞きとれないので、何度も同じことを確認する。
・聞き取れないので、わかった振りをする。
・聞き手に聞き取りやすいよう大きな声で発声して会話する。
・パーティションを一時的に取り除く、もしくは、パーティションに開口部を設けて声が相手に届きやすくする。
といった行動や様式をとるようになる場合がある。
しかしながら、これらの行動や様式には、
・会話時間が長くなり、人と人が近接する時間が長くなる。
・意思疎通が十分に行えない。
・大きな声で話すため、発声時の唾液の飛沫量が増大する。
・パーティションを一時的に取り除くもしくは、パーティションに開口部を設けることで、発生時の唾液の飛沫が会話の相手に届いてしまう。
といったコロナウィルスなどによるウィルスの飛沫感染防止という観点では、逆の行動や様式となってしまっている。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みなされたもので、パーティションの窓部の素材に、薄膜のフィルムを採用することで、声を通りやすくすることで、透明樹脂板を用いたパーティションと比べて、会話時間を極力短時間で終わらせることができ、小声で話し、発生時の唾液の飛沫量を極力少なくすることができ、パーティションを一時的に取り除くことを少なくすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のパーティションは、フィルムと、前記フィルムの四方を固定する枠状の固定支持部材とを備えており、前記フィルムの厚みを5μm以上30μm以下としたことを特徴としている。ここで「フィルムの四方を固定」とは、フィルムの上下、左右に所定の張力が生じるように固定することをいう。なお、日常使用時の定期ふき取り清掃での耐久性と声の聞こえやすさを考慮した場合、10μm以上、25μm以下、特に、15μm以上、20μm以下であることが望ましい。
本発明のパーティションであって、前記フィルムの材質がポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ウレタン、塩化ビニール(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミドのいずれかを少なくとも1種類以上含有しているものが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のパーティションは、フィルムの厚さを5μm以上30μm以下としているため、会話時に話し手が発声する声の音量が減衰しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のパーティションの実施形態を示す図面である。
図2】実験結果を示す図である。
図3】従来のパーティションを示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図1を用いて説明する。
図1のパーティション1は、窓部5と、その窓部5の下方に設けられた書類受渡口6と、パーティションを設置面4に設置するための脚7とを有する。そして、窓部5は、フィルム2と、アルミニウムを主成分とした金属でできた枠状の固定支持部材3とを備えている。図1のパーティション1と、図3の従来例との主要な構成上の差異は、図1のパーティション1は、固定支持部材3に窓部5の開口を設け、窓部5にフィルム2を配置したことである。
【0010】
フィルム2は、厚みが5μm以上、30μm以下であり、好ましくは10μm以上、25μm以下であり、特に好ましくは、15μm以上、20μm以下である。
フィルム2は、矩形とするのが好ましいが、その形状は特に限定されるものではない。
フィルム2の材質としては、金属、木材、紙、合成樹脂などが挙げられ、合成樹脂が好ましい。特に、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ウレタン、塩化ビニール(PVC)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリイミドのいずれかを少なくとも1種類以上含有しているものが好ましい。特に、安価に調達できるポリエチレンテレフタレート(PET)が好ましい。
フィルム2は、透明であっても、不透明であってもよいが、透明であるのが好ましい。さらに、フィルム2の上に染料もしくは、顔料を使用した着色塗料を用いて図形もしくは文字が設けたり、抗菌塗料を設けてもよい
【0011】
固定支持部材3は、フィルム2の四方を支持し、固定するものである。フィルム2に張力が生じるように四方を支持することができれば、固定箇所は特に限定されるものではないが、特に、フィルム2の全周囲を支持し、固定するものが好ましい。このようにフィルム2に張力が生じるように四方を支持することにより、フィルム2にしわ等の発生を防止し、光の乱反射を抑制できる。
フィルム2の固定方法としては、特に限定されるものではないが、フィルムの両面に粘着剤あるいは接着剤を設けた両面テープや、接着剤や、固定支持部材での挟持などが挙げられる。特に、アルミニウムを主成分とした金属でできた枠状の固定支持部材3に対しては、フィルム状の基材の両面に粘着剤あるいは接着剤を設けた両面テープを具備したものが好ましい。
固定支持部材3の形状および大きさは、特に限定されるものではないが、例えば、幅900mm高さ637mmの長方形状の枠体が挙げられる。また下部に書類受渡口6を形成しているが、書類受渡口6はなくてもよい。
【0012】
次に、パーティション1の製造方法について説明する。
初めに、アルミニウムでできた矩形・枠状の固定支持部材3を用意し、その固定支持部材3の枠の4辺に沿って両面テープ8を隙間が1mm以下になるように配置する。
両面テープ8は、発泡ポリマーからなるフィルム状の基材と、その両面に設けられた接着剤からなる。
基材のショア硬度Dは、5以上、60以下、好ましくは50以下、40以下、特に、30以下である。基材の厚みは、0.3mm以上、1mm以下、好ましくは0.4mm以上、0.8mm以下、特に好ましくは0.5mm以上、0.7mm以下である。このように基材に所定の柔軟性と厚みを持たせることにより、フィルム2の貼り付け時のフィルム2にかかる張力の偏りを緩和できる。
接着材としては、フィルム2の材質に応じて適宜決定される。しかし、アクリル系接着剤が好ましい。
【0013】
次いで、固定支持部材3にフィルム2を貼りつけてパーティション1を組み立てる。この場合、フィルム2の四方を引っ張りながらしわが生じないように貼りつける。引っ張る力の下限としては、100g以上、500g以上、好ましくは1kg以上、特に好ましくは2kg以上であり、引っ張る力の上限としては、15kg以下、10kg以下、好ましくは8kg以下、特に好ましくは7kg以下である。強く引っ張る場合、温度や湿度の環境変化によって、フィルム2が収縮してしわの発生が生じやすくなる。一方、弱く引っ張る場合、フィルム2に所定の張力を与えることができず、しわが生じやすくなる。
このようにフィルム2を貼りつけることにより、パーティション越しに会話する際の視界の視認性の良好さを保ちながら、会話時に話し手が発声する声の音量が減衰しにくいパーティションを提供することができる。
【0014】
図1のパーティション1は、フィルム2の厚さが5μm以上30μm以下であるため、音声(空気の振動)がフィルム2に到達した際、フィルム2が薄く軽いためフィルム2が振動し、効率よく聞き手側の空気を振動させ、結果として聞き手側の耳に音声(空気の振動)を届けることができる。
【実施例
【0015】
材質がポリエチレンテレフタレート(PET)であり、厚みが19μmのフィルム2を、アルミニウム製の固定支持部材3で支持した窓部4を有するパーティション1を準備した。枠状の固定支持部材3の全周囲に両面テープ8(コニシ株式会社製の製品名:WF720)を設け、フィルム2の四方を5kgで引っ張りながら固定支持部材3に貼り付けた(実施例1:図1)。
材質が透明アクリル樹脂であり、厚みが3mmの透明樹脂板で構成されたパーティションを準備した(比較例1:図3)。
【0016】
次の条件下で、本発明のパーティションの声の聞こえやすさを評価した。
(測定環境)無響室
(使用音)雑音発生器(RION社製 SF-06)を用いて、ピンクノイズをスピーカ(YAMAHA製DBR12)により発生させた。
(分析方法)精密騒音計(RION製NA28)を用いて1/3オクターブ分析を実施。
(評価方法)パーティションが無い状態で精密騒音計に到達する音圧レベルに比べて、従来の透明樹脂板方式のパーティション、本発明のパーティションそれぞれを介した音圧レベルを測定評価した。その結果を図2に示す。
比較例1:図3の従来の透明樹脂板を使用したパーティション(ここではアクリル材質を使用した)での細い点線で示す測定結果は、パーティションを介さない状態の実線で示す測定結果と比べて、630Hz以上の高い周波数の音(いわゆる高い音)が、平均で15.5dB(最大で約20dB)低下している。しかしながら、500dB以下の周波数の音(いわゆる低い音)は、低下していない。これにより、人の聞こえ方として「こもった声」に聞こえる原因となっている。
実施例1の本発明のパーティションの丸い点線で示す測定結果では、パーティションを介さない状態の実線で示す測定結果と比べて、630Hz以上の高い周波数の音(いわゆる高い音)が、平均で2.3dB(最大で約5dB)の低下となっている。500dB以下の周波数の音(いわゆる低い音)も低下していない。
つまり、実施例1のパーティションは、比較例1のパーティションに比べ高い周波数(いわゆる高い音)を通す性能が、平均で13dB差改善していることがわかる。この結果、会話時に話し手が発声する声の音量がパーティションで減衰することなく、聞き手の耳に届かせることができていることがわかる。
【符号の説明】
【0017】
1 パーティション
1Cパーティション
2 フィルム
3 固定支持部材
4 設置面
5 窓部
5C透明樹脂板
6 書類受渡口
7 脚
8 両面テープ
図1
図2
図3