(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】自己免疫の機械的な免疫調節
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20230412BHJP
A61M 60/113 20210101ALI20230412BHJP
A61M 60/36 20210101ALI20230412BHJP
A61M 60/38 20210101ALI20230412BHJP
A61M 60/569 20210101ALI20230412BHJP
【FI】
A61M1/36 181
A61M1/36 119
A61M60/113
A61M60/36
A61M60/38
A61M60/569
(21)【出願番号】P 2021139003
(22)【出願日】2021-08-27
(62)【分割の表示】P 2018521185の分割
【原出願日】2016-07-07
【審査請求日】2021-09-27
(32)【優先日】2015-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518008378
【氏名又は名称】ハリール,ナシュア
【氏名又は名称原語表記】KHALIL, Nashwa
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】ハリール,ナシュア
【審査官】細川 翔多
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0088612(US,A1)
【文献】国際公開第2014/147028(WO,A1)
【文献】特開平1-136664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
A61M 60/113
A61M 60/36
A61M 60/38
A61M 60/569
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動脈系及び二次リンパ系を有する患者に治療的アフェレシスを行うためのシステムであって、
体外循環回路の部分を構成するアフェレシスデバイスと、
前記アフェレシスデバイスに接続された1つ以上のポンプとを備え、
前記1つ以上のポンプは、前記患者から動脈血液を前記体外循環回路内に引き込むために用いられ、
前記アフェレシスデバイスは、前記血液にアフェレシスを行って、前記血液から1つ以上の成分を除去するために用いられ、
前記システムは、前記血液の一部を前記体外循環回路から拍動流で前記患者の前記動脈系に戻すように構成され、
前記拍動流は前記患者からの脈波に基づくものであり、
前記アフェレシスと前記拍動流によって前記血液の一部を戻すこととの組み合わせは、前記二次リンパ系に変化を引き起こすことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記体外循環回路は、自動血液細胞分離器、センサ及び熱交換器のうちの1つ以上を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記拍動流は前記1つ以上のポンプによって発生される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記血液の一部は置換液を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記置換液は治療剤を含む、請求項
4に記載のシステム。
【請求項6】
前記拍動流は心室収縮と同時に起こす、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記拍動流は前記1つ以上のポンプからの排出によって開始され、心室収縮と同時に起こす、請求項2に記載のシステム。
【請求項8】
前記1つ以上のポンプのうちの少なくとも1つは全身の動脈遠位部から血液が充填され、血液を全身の動脈近位部に戻す、請求項2に記載のシステム。
【請求項9】
前記アフェレシスデバイスは、アフェレシス遠心分離器である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記体外循環回路は、自動血液細胞分離器、センサ及び熱交換器のうちの1つ以上を含む、請求項
9に記載のシステム。
【請求項11】
前記1つ以上のポンプは、拍動流を発生する、請求項
9に記載のシステム。
【請求項12】
前記血液の一部は、置換液を含む、請求項
9に記載のシステム。
【請求項13】
前記置換液は、治療剤を含む、請求項
12に記載のシステム。
【請求項14】
前記拍動流は、心室収縮と同時に起こす、請求項
9に記載のシステム。
【請求項15】
前記拍動流は、前記1つ以上のポンプからの排出によって開始され、心室収縮と同時に起こす、請求項
10に記載のシステム。
【請求項16】
前記1つ以上のポンプのうちの少なくとも1つは、全身の動脈遠位部から血液が充填され、血液を全身の動脈近位部に戻す、請求項
10に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己免疫の機械的な免疫調節に関する。
【背景技術】
【0002】
アフェレシスとは、ドナーまたは患者の血液が、1つ以上の成分を分離し残りを患者に戻す装置を通過するプロセスである。したがって、これは体外療法である。治療的アフェレシスは、末梢静脈系を利用して行われて3リットルの血漿を3リットルのアルブミン溶液と交換することができる。患者には、症候性疾患を抑制するために、患者の履歴データからの概算に基づいて、典型的には5~15回の治療的アフェレシスセッションが行われる。実際の免疫疾患プロセスが有効に処置されていないため、患者はこの方法で何年も処置を受ける。
【0003】
従来の血漿交換法は、静脈路の末梢脈管系を用いて行われる。血流内に浮遊する免疫因子のみが除去され、二次リンパ系内の免疫因子の濃度および移動は変化しない。したがって、患者の免疫学的疾患プロセスのシグナル経路は変化せず、患者の根本的な免疫学的疾患プロセスは変わらない。
【0004】
治療的アフェレシスの有効性を向上させる試みが数多くなされてきているが、今日まで、免疫因子の移動を有効に変化させるものはない。身体の組織、血管、およびリンパ系における他の免疫因子に関連する免疫因子の移動は、免疫系全体の機能に作用する。従来の治療的アフェレシスは、疾患プロセスの処置を伴わず症候的軽減のみを提供する程度のものである。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、概して、治療的アフェレシスシステムに関し、より具体的には、治療的アフェレシスを行うための方法および装置に関する。一実施形態では、本開示は、免疫系を調節する高効率形態の治療的アフェレシスを提供し、それにより1つ以上の免疫学的疾患プロセスの処置を行う。
【0006】
本開示の一実施形態による治療的アフェレシスは、体外循環回路からの血液の少なくとも一部を拍動流で患者に戻すものである。他の実施形態では、本開示の方法およびシステムは、中心動脈系を利用して、血漿量を交換し、疾患プロセスを免疫調節する。本開示は、心臓血管の実証されているコンセプトを利用するとともに、断続流および連続流の治療的アフェレシスのコンセプトを組み合わせることに部分的に基づいている。本開示の治療的アフェレシスの一有利性は、初期処置プロセス時だけでなく、患者の生涯にわたって、治療的アフェレシスセッションで患者が費やす時間を短縮することである。「患者」という用語は、ヒトおよび動物の両方を含むように本明細書では広く定義される。
【0007】
現在のところ従来の治療的アフェレシスを使用している、免疫プロセスがあるすべての疾患状態が、本明細書に記載の治療的アフェレシスシステムから利益を得ることができる。さらに、多臓器移植(免疫抑制・拒絶および誘導・脱感作を含む)、一般的感染、アレルギー、インバースワクチン(inverse vaccine)などのワクチン作業の必要性、および
がん状態などの、免疫調節で改善する他の免疫学的疾患プロセスは、本明細書に記載される治療的アフェレシスシステムから利益を得ることがある。
【0008】
この形態のアフェレシスの有効性を向上させることにより、免疫複合体傷害(例えば炎症)の回避および/または免疫因子・炎症の蓄積の抑止が有益である病的状態で使用され
得る。本開示の治療的アフェレシスは、例えば免疫病態が起こる心臓の状態においてなど、そのような状態によって引き起こされる結果的な損傷を防ぐことができる。
【0009】
本開示の特徴および利点は、以下の実施形態の説明を閲読の上で当業者には容易に明らかになるであろう。
【0010】
特許または出願ファイルには、カラーで作成された少なくとも1つの図面が含まれる。カラー図面を含む本特許または特許公報の写しは、請求および必要な手数料の支払いを受けて庁が提供する。
【0011】
本開示のいくつかの特定の例示的な実施形態は、以下の記載および添付の図面を部分的に参照することによって理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態による概略模式図である。
【
図2】
図2は、
図1の概略模式図の一部のさらなる詳細を示す概略模式図である。
【
図3】
図3は、ヒトの静脈系および動脈系の一部を示す概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、様々な変形および代替形態が可能であるが、特定の例示的な実施形態が図面に示されており、本明細書でより詳細に記載される。しかしながら、特定の例示的な実施形態の記載は、開示される所定の形態に本発明を限定することを意図するものではなく、むしろ、本開示は、添付の特許請求の範囲にある程度記載されたようなすべての変形および同等形を含む。
【0014】
本開示は、概して治療的アフェレシスシステムに関し、より具体的には、治療的アフェレシスを行うための方法および装置に関する。本開示のシステムおよび方法は、免疫系を調節する高効率形態の治療的アフェレシスを提供し、それにより1つ以上の免疫学的疾患プロセスの処置を行う。本開示の治療的アフェレシスは、血液を拍動流で患者に戻すことに少なくとも部分的に基づいている。本明細書で使用されるとき、「血液」という用語は、全血または全血の任意の置換成分を指す。
【0015】
本開示の方法およびシステムは、動脈灌流の速度および拍動性を増加させる。同時に、動脈血の血漿から免疫因子が除去され、免疫因子を欠乏させた血液が中心動脈系の上流で患者に戻される。この血液は、毛細管レベル・リンパ系に増加した速度およびパルスで戻される。血漿タンパク質の移行であるタンパク質の経血管流動のメカニズムは、リンパ流の増加を引き起こす血漿タンパク質濃度の減少に起因し、これは経血管タンパク質の透過性よりも大きい。結果として、血管外空間から血管内空間への免疫因子の移動がより多くなる。免疫因子は、一旦血管内空間に入ると、本開示の連続的な血漿交換プロセスによって除去されることができる。
【0016】
全体的に、本開示の方法およびシステムは、動脈流から免疫因子を除去するとともに、動脈流の血行動態を機械的に増大させることによって、体液調節経路を「リセット」することができる。患者の現在の疾患プロセスのシグナル経路に関与する二次リンパ系における免疫因子の流れや濃度が除かれると、体液性免疫が変化する。身体は、血管外の標準的な体液調節性に戻るために、移動経路の自然な様態をとる。
【0017】
本開示は、概して、患者から動脈血を摂取するように構成された体外循環回路を使用し、血液にアフェレシスを行って血液から1以上の成分を除去し、体外循環回路から血液の少なくとも一部分を拍動流で戻す方法およびシステムを対象とする。本明細書で使用され
るとき、「拍動流」は周期的な速度変化(例えば、ポンプ作動速度の変化)を伴う流れを指す。そうした方法およびシステムは、とりわけ、患者の免疫系における免疫調節作用を生じさせるために使用され得る。「免疫調節」という用語(およびその派生語)は、本明細書では、所望のレベルへの免疫応答の任意の調整、ならびに免疫系の改変を目的としたすべての治療的介入(例えば、患者の免疫系を誘発、増強、抑制および/または増大することによる)を含むように広く規定される。所定の実施形態では、本開示の治療的アフェレシスは、その使用または患者の処置に適した免疫抑制剤または他の治療剤などの根治療法処置と組み合わせることができる。
【0018】
体外循環回路は、患者の循環系に作動可能に接続される。大動脈に中心動脈アクセスするために、鎖骨下動脈を介してカテーテルを患者に挿入することができる。代替的に、大動脈への経路である大腿動脈にカテーテルを挿入することができる。カテーテルの動脈アクセスは、放射線学的に誘導することができ、血管手技のための標準的な動脈カテーテルアクセスに準じるとよい。同様に、処置を必要とする病的状態に応じて、大動脈の代わりに中心動脈系における1つ以上の主要な解剖学的分岐部にカテーテルを挿入することができる。この形態のアフェレシスの恩恵を受ける神経学的および/または整形外科的状態などの病的状態に応じ、中心動脈系にわたる種々の主要な解剖学的分岐部において、戻る血流の異なる速度を創出することができる。
【0019】
本開示の体外循環回路は自動血液細胞分離器を含む。自動血液細胞分離器は、流体のバランスを保ち、正常な血漿量を維持するために使用されることができる。アフェレシスには、連続流遠心分離法または断続流遠心分離法を用いることができる。一部の実施形態では、体外循環回路はアフェレシス遠心分離器を含む。
【0020】
所定の実施形態では、体外循環回路からの拍動流は1つ以上のポンプからの力によって得られる。他の実施形態では、体外循環回路からの拍動流は、心臓からの脈波を増強するための心臓への電気刺激によって得られる。そのような実施形態では、血液は、依然として所望の拍動流特性を有しながら、ほぼ一定の速度で患者に戻されることができる。
【0021】
本開示の体外循環回路は1つ以上のポンプを含む。一般に、ポンプは、体外循環回路からの血液の少なくとも一部を患者に戻すことができる。所定の実施形態では、ポンプはまた、拍動流で血液の一部を戻すこともできる。適切なポンプには、容積型ポンプ、ローラーポンプ、心室ポンプ、ピストンポンプ、カイネチックポンプ、遠心ポンプ、強制渦流ポンプ、磁気ポンプが含まれる。一実施形態では、ポンプは、留置カテーテル内に配置されることができる。所定の実施形態では、ポンプは、左心室の収縮流排出量に近似する排出量を有するとよい。所定の実施形態では、ポンプは、変化する容積、タイミング、及び充填/排出比制御を有することができる。血液が、約0.1リットル/分~1.5リットル/分、0.5リットル/分~1リットル/分、および0.3リットル/分~0.6リットル/分にもなる速度でポンピングされるように、ポンプは可変範囲内で動作するように構成されることができる。一実施形態では、1つ以上のポンプは、体外にあるか、または患者の大動脈もしくは中心動脈分岐部に配置され且つ軸流を送達するように構成される留置カテーテルの端部もしくはその付近に配置されることができる。
【0022】
ポンプは、コントローラに作動可能に接続される。コントローラは、ポンプに対して1つ以上の信号を生成するように構成され、各ポンプは、コントローラから受信する各信号に含まれる情報に従って動作するように構成される。コントローラはポンプを制御し、体外回路から患者に戻される血液の一部の拍動流を実現する。所定の実施形態では、コントローラは、心室収縮の開始と合致するようにポンプの容積流量を調節する。コントローラはまた、患者の固有の心電図またはペーシングされたリズムに関する入力を受け取ることができる。また、コントローラは、動脈系を介して患者に血液を戻すために1つ以上のポ
ンプに情報を提供することができる。コントローラは、患者の様々な圧力(例えば、血圧)を感知し、必要であれば補うためにポンプ速度を減少または増加させるように構成されることもできる。またコントローラは、生体インピーダンス、身体運動および/または心臓能パラメータなどの他の生理学的パラメータを感知して、患者への血流を最適化するためにポンプ速度を調整するように構成されることもできる。またコントローラは、本開示のシステムの他の構成要素に操作可能に接続されてもよい。例えば、コントローラは、自動血液細胞分離器、温度センサ、圧力センサ、空気塞栓センサ、パルスセンサ(例えば、ECG)および/または熱交換器から信号を生成および/または受信するように構成されてもよい。標準的な電力供給装置がコントローラと併用されて、システムおよび/または方法の運用を可能にする適切なワット数を供給することができる。
【0023】
一実施形態では、コントローラからの1つ以上の信号により、1つ以上のポンプが患者への血流を拍動することができる。より詳細には、1つ以上のポンプは、拍動血流が軸流で患者に戻るように、拍動血流を患者にポンピングする能力を有することが可能である。コントローラは、心臓のリズムもしくはペーシングされたリズムと同期して、または心臓のリズムと同期しないで、ポンプ速度を変化させることができる。換言すれば、拍動は患者の心臓のリズムを模倣することができる。患者の心拍数または標的の心拍数で患者への血流を再現しようとする試みは、処置の有効性を高めると考えられている。限定するものではなく説明として、数学モデルおよび物理モデルでは、同じ平均圧力で、拍動血流が非拍動流の約2.4倍のエネルギー含量を有し、それにより組織を通して著しく多くのエネルギーを散逸することが示された。拍動はリンパ系内の血流に直接的に影響を及ぼし、毛細管および組織における拍動流からのエネルギーは組織からリンパ系への物質に起こる作用と交換される。所定の実施形態では、コントローラは、ECGトレースによって測定されるような収縮の開始後約75ミリ秒未満または約75ミリ秒でポンプからの排出開始が起こるように構成される。コントローラはまた、送達されるECG信号に排出開始を同調させること可能にするためにプログラムされた遅延を含むことができる。
【0024】
一実施形態では、コントローラは、血液の温度についての情報を受信し、熱交換器を制御するように構成される。そうした熱交換器は、患者に戻される血液の温度を調整するために使用され得る。コントローラは、熱交換器とともに、現在の身体と一致させて、正常範囲の温度で、または温度を上昇させて、戻される血液温度を変化させる。熱交換器は、患者に戻される血液の温度が、後負荷抵抗を低減するのに適切な温度または許容可能な温度であるようにするために使用可能である。
【0025】
所定の実施形態では、コントローラはまた、患者に戻される血液の脈波を増強するために、心臓への1つ以上のペーシング信号(例えば、電気刺激)を生成するように構成されたパルス発生器をも含む。こうした実施形態では、コントローラは、心臓上または心臓内に配置され、かつ留置カテーテルの端部に遠位に配置された1つ以上のリード線に操作可能に接続されるとよい。コントローラは、リード線から感知信号を受信し(例えば、ECGイベント)、コントローラ内のパルス発生器は、感知信号に基づいてリード線への1つ以上のペーシング信号を生成するように構成される。そうした構成では、体外循環回路から患者への血液の戻り部分の拍動流は、機械的なポンプ脈動流がなくても作用を受け、患者の二次リンパ系におけるリンパ循環を依然として刺激する。
【0026】
一実施形態では、患者に戻される血流の速度振幅は、ベースラインパルス周波数を維持、増加または減少させながら、ベースラインから変更(例えば、増加および/または減少)させることができる。このようにして、免疫調節に作用する成分の移動における変化を生じさせるために、戻り血流において異なる速度を得ることができる。
【0027】
本開示のシステムおよび方法はまた、1つ以上の圧力センサ、熱センサ、パルスセンサ
(例えば、心電図検査(electrocardiography、EKG)機器)、またはそれらの任意の
組み合わせを含むとよい。また1つ以上の熱交換器を使用することができる。適切な熱交換器は、血液の少なくとも一部を、正常な体温範囲を超えて華氏5度まで加熱することができるものである。所定の実施形態では、リザーバシステムを使用して、血漿交換に関する血液および得られる成分の処理を容易にすることができる。さらに、コントローラおよび/またはモニター盤が、血液の特性などの1つ以上の患者の入力情報を受け取り、患者に戻される血液の一部の血液特性を追跡および/または表示することができる。
【0028】
一実施形態では、コントローラは、アルゴリズムを介して、患者に戻される血液の所望の特性を算出するように構成される。アルゴリズムの目的は、所望の血液特性の増強、変化または変更を評価することである。このアルゴリズムは、患者のニーズ、または例えば患者の生理学的プロファイルおよび/もしくは疾患に基づいた血漿交換特性に応じて変更されることができる。血漿交換特性は、拍動性、流速および/または温度に関する血液特性に関連する。
【0029】
血液または他の流体を移動させるための、本開示のシステムおよび/または方法で使用されるチューブまたはカテーテルは、任意の適切な生体適合性または生体材料で作製されることができる。例えば、必要な強度および生体適合特性を有し、方向性流動の機能を可能にするものなどのプラスチック材料を使用することができる。剛性生体材料または可撓性生体材料は、代替的または追加的にその構成に利用され得る。適切なチューブ材料の例には、アフェレシス、血液透析、心肺バイパス、および体外膜型酸素化装置(extracorporeal membrane oxygenation、ECMO)などの体外循環に一般に使用されるものが含まれる
。
【0030】
一実施形態では、本開示のシステムおよび方法では、低誘電率、低摩擦係数、非反応性、またはそれらの組み合わせを有するチューブ材料が使用される。適切なチューブ材料の例としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびペルフルオロアルコキシ(PFA
)が含まれる。
【0031】
上述のように、本開示のシステムおよび方法にはアフェレシスのための体外循環回路を含む。所定の実施形態では、そうしたアフェレシスには、血液に置換液を添加することが含まれる。置換液は、新鮮凍結血漿(FFP)および/または所定のパーセンテージのアル
ブミン溶液および/または生理食塩水であり得る。ヘパリンおよび/または生理食塩水は、患者のニーズに応じて置換液に添加されることができる。生理食塩水および/またはヘ
パリンは、処置の前および/または処置中に処置に加えることができる。しかしながら、生理食塩水およびヘパリンは、システムに添加される必要はなく、あるいは末梢静脈血管系を介して添加されることができる。一実施形態では、生理食塩水は、当業者に理解されるように、業界標準の治療に適した量で添加され、水分補給に使用されることができる。一実施形態では、患者には、血管および血漿交換処置時に標準的な抗凝固に従ってヘパリンを投与する。クエン酸系抗凝固剤による低カルシウム血症は治療的アフェレシスの一般的な軽度有害事象であるが、クエン酸ナトリウムは、健康なドナーではよりよく対応可能なことから、広く受け入れられている。より病気の重い個体群にはヘパリンがより適切である。ヘパリンを使用することで、カルシウムイオン活性の静的状態が保たれる。クエン酸系抗凝固剤はカルシウムイオンと結合する。カルシウムイオンの減少は、不整脈などの心臓の有害事象の増加をもたらし得る。この理由から、ヘパリンは心臓への適用において長年にわたって安全に使用されている。ヘパリンは、血管処置を受けている患者にとって標準治療である。
【0032】
一実施形態では、患者に戻る血液内の置換液は、薬剤、免疫因子、細胞、ナノ粒子、および/またはベクターなどの1つ以上の治療剤を含むことができる。治療剤を含む置換液
は、そのような治療剤の送達を増大させることができる。治療剤を含む置換液は、全量交換または全量未満の任意の量の交換で交換されることができる。この治療的アフェレシスシステムにおいて処置当たりの時間、交換量、交換比率、および戻される構成成分・置換液内の因子の濃度は、なかでも、疾患プロセスの重症度および病態ならびに特定の治療剤によって決まるものである。
【0033】
図1および
図2は本開示の一実施形態を示す。特に、血液は、患者の大動脈または中心動脈分岐部から受け取り、これは概して10に示され、体外循環回路におよび/または体外循環回路を介して送達され、概して12に示される。温度(T)、圧力(P)、速度(V)、加速度(A)、所定の血液細胞(BC)の数および/もしくはタイプ、ヘパリン(H)レベル、ならびに/または血漿(PI)レベルなどの所定の血液特性は、この送達時に、および/または血液が体外循環回路12に送られる前に、測定または分析される。上述のように、置換液(RP)は、血液が体外循環回路12に送達される前または後に血液に加えることができる。血圧、パルス、および/または心拍数などの患者についての所定の情報は、体外循環回路12、そのなかのコントローラ14に伝達または提供される。
【0034】
体外循環回路12を出た血液は、例えば患者10の大動脈または中心動脈分岐部に送り返される。温度(T)、圧力(P)、速度(V)、加速度(A)、所定の血液細胞(BC)の数および/もしくはタイプ、ヘパリンレベル(H)、ならびに/または血漿レベル(PI)などの所定の血液特性は、体外循環回路12から患者10の大動脈または中心動脈分岐部への血液送達時に測定または分析される。コントロールまたはモニター盤14では、上述のアルゴリズムが使用されて、1つ以上のポンプ16の作動を制御し、それにより、血液が体外循環回路12を出て患者に戻るときに血液を拍動させる。
図2に示されるように、血液の様々なパラメータまたは特性(例えば、温度)は、体外循環回路12を介した送達にわたってモニターまたは測定される。
【0035】
一実施形態では、処置を施すために、カテーテルは、脊髄神経系への血液供給の神経刺激の恩恵を得るように、患者の胸椎においてできるだけ高い位置に配置されることができる。そのような配置は腎動脈の上方でもあり、腎臓系へ血液供給するという利益をもたらす。拍動流の振幅は、腎臓における血流の増大と直接的に関連し、このため、処置と処置の間の身体機能を高める改善された臓器機能が得られる。
【0036】
一実施形態において、処置当たりの交換時間および交換量は、免疫学的ニッチに作用するために必要とされる免疫学的プロセスの重症度および病態によって決まるものである。これは、ニッチにおけるこれらの免疫学的プロセスの自己永続化サイクルが、さらなる免疫因子を構築することができる前に破壊されるようにするということである。処置当たりの時間をより長くすることで、身体の時間がフィブリノーゲンに追いつくことを助けるかもしれないが、交換される量を多くすることでFFPを必要とすることがある。この処置では、必要に応じて標準的な1~1.5容量を超えるものを置き換えることができる。
【0037】
本発明の広い範囲を示す数値範囲およびパラメータのいずれも近似値であるが、特定の例に示された数値は可能な限り正確に示されている。しかし、任意の数値は、それぞれの試験測定で算出された標準偏差から必然的に生じる特定の誤差を本質的に含む。
【0038】
本開示のシステムおよび/または装置は、独立型であってもよく、または任意の他の医療もしくは健康管理のシステムもしくは装置とは別に、区別されて作動されてもよい。代替的に、本開示のシステムおよび/または装置は、1つ以上の血液透析、心肺バイパス、体外膜型酸素化装置(ECMO)および/またはアクアフェレシス(aquapheresis)とともに運用可能である。
【0039】
ゆえに、本発明は、上述した目的および利点や、内在する目的および利点を達成するために非常に適したものである。当業者によって多くの変更が行われることが可能であるが、そうした変更は、部分的に添付の特許請求の範囲によって示されるように、本発明の意図内に包含される。