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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】アンダーカット処理機構及び成形用金型
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/44 20060101AFI20230412BHJP
   B29C 45/33 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
B29C33/44
B29C45/33
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021527303
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 JP2019025946
(87)【国際公開番号】W WO2020261566
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】302067947
【氏名又は名称】株式会社テクノクラーツ
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【弁理士】
【氏名又は名称】專徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】反本 正典
【審査官】深草 祐一
(56)【参考文献】
【文献】仏国特許出願公開第02049960(FR,A1)
【文献】国際公開第2009/069568(WO,A1)
【文献】特開2014-198444(JP,A)
【文献】特開2010-214898(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/44,45/40-45/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面にアンダーカット部がある成形品を成形する、成形用金型の固定型又は可動型に取付け使用されるアンダーカット処理機構であって、
前記アンダーカット部がある部位の内面を成形する第1成形コアと、
前記第1成形コアを支持し成形用金型の型開き型閉じ方向に進退するセンターピンと、
前記第1成形コアの下方に位置し、前記アンダーカット部がある部位の内面及び前記アンダーカット部を成形する、前記センターピンの周囲に放射状に配される複数の分割コアで構成される第2成形コアと、
先端部に前記分割コアを有し、基端部を保持駒と摺動自在に連結する複数のスライド部材と、
前記スライド部材と摺動自在に連結し成形用金型の型開き型閉じ方向に進退する1つ又は複数の保持駒と、
前記固定型又は前記可動型に配置され又は前記固定型又は前記可動型に一体的に設けられ、前記第2成形コアが前記アンダーカット部から外れるように前記スライド部材を案内するガイド手段を有するホルダーと、
を備え、
前記第2成形コアは、前記分割コアが前記アンダーカット部がある部位の軸心に向ってスライドすることで前記アンダーカット部から外れ、
前記分割コアは、前記アンダーカット部がある部位の軸心に向ってスライドするときのスライド量が異なる2種類以上の分割コアで構成されることを特徴とするアンダーカット処理機構。
【請求項2】
前記第2成形コアは、成形用金型が型閉じ状態において前記分割コアが前記アンダーカット部がある部位の内周方向に隙間なく整列し、
前記アンダーカット部がある部位の軸心に向ってスライドするときのスライド量が最も大きい分割コアは、平面視において内側の周縁部が外側の周縁部に比較して長く、両側面の間隔が前記アンダーカット部がある部位の軸心に向かって広がっていることを特徴とする請求項1に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項3】
前記ガイド手段は、前記スライド部材が摺動自在に挿通する斜孔であり、
前記斜孔は、前記アンダーカット部がある部位の軸心に向ってスライドするときのスライド量が異なる2種類以上の分割コアに対応し、傾斜角度が異なることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項4】
前記ホルダーは、中心部に前記センターピンが挿通する貫通孔を有し、
前記斜孔は、前記貫通孔を取り囲むように前記貫通孔の周囲に放射状に配されていることを特徴とする請求項3に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項5】
前記スライド部材は、先端に備える分割コアの種類により前記保持駒との連結部の形態が異なることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項6】
前記センターピン及び前記保持駒は、前記成形品を突き出す成形用金型のエジェクタ機構に連結され、前記エジェクタ機構と一体的に進退することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項7】
前記センターピンの基端部及び前記保持駒の基端部を固定する固定部材を有し、
前記第1成形コアを先端部に備える前記センターピンが前記ホルダーの前記貫通孔に挿通され、先端部に前記分割コアを備える前記スライド部材が、前記ホルダーの前記斜孔に挿通され、
前記保持駒は、前記スライド部材と摺動自在に連結され、
前記センターピンの基端部及び前記保持駒の基端部が前記固定部材に固定され、
これらが1つのユニットとして構成されていることを特徴とする請求項4から請求項6のいずれか1項に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項8】
さらに成形品を取り出すストリッパープレートと、
前記ストリッパープレートを押し上げる押上シャフトと、
前記押上シャフトを固定する押上シャフト固定部材と、
を備え、
これらが前記ユニットに組み込まれ、1つのユニットとなっていることを特徴とする請求項7に記載のアンダーカット処理機構。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載のアンダーカット処理機構を1以上備える可動型又は固定型。
【請求項10】
請求項1から8のいずれか1項に記載のアンダーカット処理機構を1以上備える成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーカット部を有する成形品を成形する成形用金型に取付け使用されるアンダーカット処理機構及び成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
成形品の内側に円周方向に拡がる様々な形状のアンダーカット部を容易に型抜きすることが可能なアンダーカット処理機構がある(例えば特許文献1参照)。特許文献1に記載のアンダーカット処理機構は、アンダーカット成形コアが、成形品のアンダーカット部の内周面に対応して、互いに全周方向に並ぶ複数の分割コアから成る。この各分割コアは、成形品の内側で円周方向に拡がるアンダーカット部の軸心に向かって縮径した際、互いに当接して内側に位置する内分割コアと、該内分割コアの外側に沿って互いに近接する外分割コアとが、交互に並んで形成される。
【0003】
これら分割コアは、それぞれがスライド部材の先端部に支持され、各スライド部材は、成形用金型の型閉じ(型締め)、成形品の突き出し操作に伴い、それぞれの先端部にある分割コア同士が互いに全周方向に並ぶ成形位置と、分割コア同士が互いにアンダーカット部の軸心に向かって縮径する離型位置となる。これにより成形品の内側に円周方向に拡がるアンダーカット部がある場合でも、無理抜きすることなく容易に型抜きすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-126120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図12は、筒状部の内周面にアンダーカット部P1を有する成形品Pを特許文献1に記載のアンダーカット処理機構で処理するときの様子を模式的に示す図である。図12(A)は、筒状部の長さが短い成形品P、図12(B)は、筒状部が深く(長い)上部内周面にアンダーカット部P1がある成形品P、図12(C)は、筒状部が深く(長い)下部内周面にアンダーカット部P1がある成形品Pである。
【0006】
特許文献1に記載のアンダーカット処理機構は、図12(A)及び(B)に示すような成形品Pに対しては優れた効果を発揮する。一方、図12(C)に示す成形品Pを、特許文献1に記載のアンダーカット処理機構を備える金型で成形しようとすると、アンダーカット部P1の上部に深い成形面があるため分割コアの上端部(図中a部)が狭くならざるを得ない。このような成形コア(分割コア)は、十分に縮径させることができず、また図中b部の厚さが薄くなるので強度不足となり易い。
【0007】
本発明の目的は、内面にアンダーカット部を有する成形品を容易に型抜きすることが可能であり、コンパクトなアンダーカット処理機構及び成形用金型を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内面にアンダーカット部がある成形品を成形する、成形用金型の固定型又は可動型に取付け使用されるアンダーカット処理機構であって、前記アンダーカット部がある部位の内面を成形する第1成形コアと、前記第1成形コアを支持し成形用金型の型開き型閉じ方向に進退するセンターピンと、前記第1成形コアの下方に位置し、前記アンダーカット部がある部位の内面及び前記アンダーカット部を成形する、前記センターピンの周囲に放射状に配される複数の分割コアで構成される第2成形コアと、先端部に前記分割コアを有し、基端部を保持駒と摺動自在に連結する複数のスライド部材と、前記スライド部材と摺動自在に連結し成形用金型の型開き型閉じ方向に進退する1つ又は複数の保持駒と、前記固定型又は前記可動型に配置され又は前記固定型又は前記可動型に一体的に設けられ、前記第2成形コアが前記アンダーカット部から外れるように前記スライド部材を案内するガイド手段を有するホルダーと、を備え、前記第2成形コアは、前記分割コアが前記アンダーカット部がある部位の軸心に向ってスライドすることで前記アンダーカット部から外れ、前記分割コアは、前記アンダーカット部がある部位の軸心に向ってスライドするときのスライド量が異なる2種類以上の分割コアで構成されることを特徴とするアンダーカット処理機構である。
【0009】
本発明のアンダーカット処理機構において、前記第2成形コアは、成形用金型が型閉じ状態において前記分割コアが前記アンダーカット部がある部位の内周方向に隙間なく整列し、前記アンダーカット部がある部位の軸心に向ってスライドするときのスライド量が最も大きい分割コアは、平面視において内側の周縁部が外側の周縁部に比較して長く、両側面の間隔が前記アンダーカット部がある部位の軸心に向かって広がっていることを特徴とする。
【0010】
本発明のアンダーカット処理機構において、前記ガイド手段は、前記スライド部材が摺動自在に挿通する斜孔であり、前記斜孔は、前記アンダーカット部がある部位の軸心に向ってスライドするときのスライド量が異なる2種類以上の分割コアに対応し、傾斜角度が異なることを特徴とする。
【0011】
本発明のアンダーカット処理機構において、前記ホルダーは、中心部に前記センターピンが挿通する貫通孔を有し、前記斜孔は、前記貫通孔を取り囲むように前記貫通孔の周囲に放射状に配されていることを特徴とする。
【0012】
本発明のアンダーカット処理機構において、前記スライド部材は、先端に備える分割コアの種類により前記保持駒との連結部の形態が異なることを特徴とする。
【0013】
本発明のアンダーカット処理機構において、前記センターピン及び前記保持駒は、前記成形品を突き出す成形用金型のエジェクタ機構に連結され、前記エジェクタ機構と一体的に進退することを特徴とする。
【0014】
本発明のアンダーカット処理機構は、前記センターピンの基端部及び前記保持駒の基端部を固定する固定部材を有し、前記第1成形コアを先端部に備える前記センターピンが前記ホルダーの前記貫通孔に挿通され、先端部に前記分割コアを備える前記スライド部材が、前記ホルダーの前記斜孔に挿通され、前記保持駒は、前記スライド部材と摺動自在に連結され、前記センターピンの基端部及び前記保持駒の基端部が前記固定部材に固定され、これらが1つのユニットとして構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明のアンダーカット処理機構は、さらに成形品を取り出すストリッパープレートと、前記ストリッパープレートを押し上げる押上シャフトと、前記押上シャフトを固定する押上シャフト固定部材と、を備え、これらが前記ユニットに組み込まれ、1つのユニットとなっていることを特徴とする。
【0016】
本発明は、前記アンダーカット処理機構を1以上備える可動型又は固定型である。
【0017】
本発明は、前記アンダーカット処理機構を1以上備える成形用金型である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、内面にアンダーカット部を有する成形品を容易に型抜きすることが可能であり、コンパクトなアンダーカット処理機構及び成形用金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態の成形用金型1の型閉じ時の断面図である。
図2】本発明の第1実施形態の成形用金型1の型開き時の断面図である。
図3】本発明の第1実施形態の成形用金型1の成形品Pの突き出し動作途中の断面図である。
図4】本発明の第1実施形態の成形用金型1の成形品Pの突き出し動作途中の断面図である。
図5】本発明の第1実施形態の成形用金型1に組み込まれる本発明のアンダーカット処理機構11を含む処理ユニット10の斜視図である。
図6】本発明の第1実施形態の成形用金型1に組み込まれる本発明のアンダーカット処理機構11を含む処理ユニット10の分解図である。
図7】本発明の第1実施形態の成形用金型1に組み込まれる本発明のアンダーカット処理機構11の第2成形コア30の斜視図である。
図8】本発明の第1実施形態の成形用金型1に組み込まれる本発明のアンダーカット処理機構11の第2成形コア30の動作を説明するための図である。
図9】本発明の第1実施形態の成形用金型1に組み込まれる本発明のアンダーカット処理機構11のスライド部材51、55及び保持駒81、85の形態及び動きを説明するための図である。
図10】本発明の第1実施形態の成形用金型1に組み込まれる本発明のアンダーカット処理機構11のスライド部材51、55及び保持駒81、85の形態及び動きを説明するための図である。
図11】本発明の第1実施形態の成形用金型1に組み込まれる本発明のアンダーカット処理機構11のスライド部材51、55及び保持駒81、85の形態及び動きを説明するための図である。
図12】従来のアンダーカット処理機構を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の第1実施形態の成形用金型1の型閉じ時の断面図、図2は、成形用金型1の型開き時の断面図、図3及び図4は、成形用金型1の成形品Pの突き出し動作途中の断面図である。図5及び図6は、成形用金型1に組み込まれる本発明のアンダーカット処理機構11を含む処理ユニット10の斜視図及び分解図である。図7は、成形用金型1に組み込まれる本発明のアンダーカット処理機構11の第2成形コア30の斜視図である。図8は、成形用金型1に組み込まれる本発明のアンダーカット処理機構11の第2成形コア30の動作を説明するための図であり、図8(A)は成形時、図8(B)は、アンダーカットを抜くときである。図9から図11は、成形用金型1に組み込まれる本発明のアンダーカット処理機構11のスライド部材51、55及び保持駒81、85の形態及び動きを説明するための図であり、いずれも図中(A)は成形時、図中(B)は、アンダーカットを抜くときである。
【0022】
本発明の第1実施形態の成形用金型1は、公知の射出成形用金型と同様、成形品Pの外面側を成形する固定型130と、成形品Pの内面側を成形する可動型150と、さらにアンダーカット処理機構11とを備える。便宜上、図1の固定型130側を上、可動型150側を下として説明する。また以下の説明において特に説明がない限り、左側とは図1における左側をいい、右側とはその反対側をいう。
【0023】
固定型130は、固定側型板131と固定側取付板138とを備える。固定側型板131は、成形品Pの外面側を成形する凹部135と成形品Pの上円筒部P5を成形する円柱コア137を備える。固定型130には、溶融樹脂を充填するためのスプルーブッシュ141、ロケートリング143が取付けられ、スプルー144、ランナー147、ゲート149を経由し、型締め状態で固定型130と可動型150とが形成するキャビティに溶融樹脂が充填される。
【0024】
可動型150は、可動側型板151と、可動側取付板165と、可動側型板151と可動側取付板165とを連結し、これらの間に空間部を確保するスペーサーブロック161とを備える。可動側型板151には、後述の処理ユニット10を構成するホルダー60が嵌り込む凹部155が設けられている。スペーサーブロック161には、後述のエジェクタ機構170の2段突き出しに作用する段部163が設けられている。可動側取付板165にはエジェクタロッド195が挿通する挿通孔167が設けられている。
【0025】
エジェクタ機構170は、第2成形コア30をアンダーカット部P1から外し、成形品Pを取り出し可能に押し上げる機構であり、可動側型板151と可動側取付板165との間の空間部に位置する。本実施形態のエジェクタ機構170は、上下に配置される2つのエジェクタ台板171、181を有し、上段のエジェクタ台板171と下段のエジェクタ台板181とは、マグネット191、192を介して着脱可能に連結する。
【0026】
上段のエジェクタ台板171は、上下2枚の台板175、177が連結されてなり、上台板175には、処理ユニット10の上固定部材121が嵌り込む収容部が設けられ、下台板177には、処理ユニット10の中固定部材111が嵌り込む収容部が設けられている。また上段のエジェクタ台板171には、底面に臨むようにマグネット191が取付けられている。
【0027】
下段のエジェクタ台板181は、上下2枚の台板185、187が連結されてなり、上台板185及び下台板187には、処理ユニット10の下固定部材101が嵌り込む収容部が設けられている。またエジェクタ台板181には、上面に臨むようにマグネット192が取付けられている。またエジェクタ台板181には、エジェクタロッド195が挿通する挿通孔184が設けられている。
【0028】
上段のエジェクタ台板171の大きさは、スペーサーブロック161の段部163に衝突することなく上昇することができるように設定されている。一方、下段のエジェクタ台板181の大きさは、上昇する際にスペーサーブロック161の段部163に衝突するように設定されている。このため下段のエジェクタ台板181は、段部163よりも下方でのみ移動することができる。
【0029】
本実施形態において成形品Pは、高さ/内径が大きい円筒体であり、内径の異なる2つの円筒部P5、P6を有する。上円筒部P5の下方に下円筒部P6が連通するように配され、上円筒部P5と下円筒部P6との境界は、段部P2となっている。上円筒部P5及び下円筒部P6は、離型性向上のために内面に抜き勾配が設けられている。アンダーカット部P1は、下円筒部P6の内面P7の下端近傍に設けられた凹部であり、成形品Pの型抜き方向(Z方向)に対して交差している。成形品Pの形状は、特に限定されるものではなく、成形品Pの素材もプラスチック等の合成樹脂に限らず、鉄や銅、アルミニウム等の金属でも良い。
【0030】
処理ユニット10は、成形品Pの下円筒部P6の内面P7を成形するとともに成形品Pを成形用金型1から型抜き可能とするアンダーカット処理機構11と、成形品Pの取り出しを可能とする取出し機構90とを含み、成形用金型1に組み込み可能にユニット化されている。
【0031】
アンダーカット処理機構11は、成形品Pの下筒部P6の内面P7を成形する成形コア15と、成形コア15を構成する第1成形コア21を支持するセンターピン25と、成形コア15を構成する内分割コア31、外内分割コア41を支持するスライド部材51、55と、スライド部材51、55と摺動自在に連結する保持駒81、85と、スライド部材51、55を案内するガイド手段を有するホルダー60とを含む。
【0032】
成形コア15は、成形品Pの下円筒部P6の内面(内周面)P7を成形する第1成形コア21及び第2成形コア30からなる。
【0033】
第1成形コア21は、下円筒部P6の内面(内周面)P7のうちアンダーカット部P1よりも上部を成形する成形コアであり、円柱形状を有し、センターピン25の先端に固定されている。
【0034】
第2成形コア30は、アンダーカット部P1及び下円筒部P6の内面(内周面)P7のうちアンダーカット部P1よりも下部を成形する成形コアであり、内分割コア31と外分割コア41とからなる。
【0035】
内分割コア31は、アンダーカット部P1を抜く際に、アンダーカット部P1の軸心Oにより近づく分割コアであり、同一の3つの分割コアからなる。各内分割コア31は、台部33を有し、台部33の上に内面P7を成形する成形部34が設けられ、その上にアンダーカット部P1を成形するアンダーカット成形部35が設けられている(図7図8参照)。
【0036】
アンダーカット成形部35は、アンダーカットの凹部形状に合致するように成形部34から外側に突出するように設けられている。内分割コア31は、台部33も含め平面視において内側の周縁部が外側の周縁部に比較して長く、内面と外面の端部同士を直線的に結ぶように側面36が設けられている。平面視において両側面36の間隔は、内側ほど大きく末広がりとなっている(図7図8参照)。
【0037】
外分割コア41は、アンダーカット部P1を抜く際に、内分割コア31よりも外側に位置する分割コアであり、同一の3つの分割コアからなる。各外分割コア41は、台部43を有し、台部43の上に内面P7を成形する成形部44が設けられ、その上にアンダーカット部P1を成形するアンダーカット成形部45が設けられている(図7図8参照)。
【0038】
アンダーカット成形部45は、アンダーカットの凹部形状に合致するように成形部44から外側に突出するように設けられている。外分割コア41は、台部43も含め平面視において、円柱材の一部を切り落としたような形状を有し、内側が直線状、外側が円弧状である。
【0039】
第2成形コア30は、内分割コア31と外分割コア41とが周方向に1つずつ交互に配置されている。第2成形コア30は、型締め状態において内分割コア31の側面36と外分割コア41の内面47とを接触させ隙間なく並ぶ(図8(A)参照)。一方、アンダーカット部P1を抜くときは、内分割コア31が外分割コア41に比べてより縮径する(図8(B)参照)。これにより外分割コア41が縮径するスペースが生じ、第2成形コア30全体が縮径し、アンダーカット部P1を抜くことができる。
【0040】
第2成形コア30は、スライド部材51、55の先端部に取付けられている。具体的には、3個の内分割コア31は3本のスライド部材51、3個の外分割コア41は3本のスライド部材55それぞれの先端部に取付けられている。内分割コア31とスライド部材51、外分割コア41とスライド部材55とは、一体的に形成されていても、別部材とし、スライド部材51、55の先端部に内分割コア31及び外分割コア41が固定されていてもよい。
【0041】
スライド部材51は、横断面が矩形の棒状体であり、先端部に内分割コア31を備える。スライド部材51の基端部は、保持駒81の先端部と摺動自在に連結する連結部となっており、本実施形態では蟻溝条(凸条)52が設けられている。スライド部材55もスライド部材51と同様に、横断面が矩形の棒状体であり、先端部に外分割コア41を備える。スライド部材55の基端部は、保持駒85の先端部と摺動自在に連結する連結部となっており、本実施形態では蟻溝56が設けられている。
【0042】
本実施形態のスライド部材51及びスライド部材55は、先端部に設けられる内分割コア31及び外分割コア41の大きさからスライド部材55の方が、横幅が僅かに大きくなっている。蟻溝条52は、蟻溝56に比較して必要とする横幅が狭くて済むため、スライド部材51には蟻溝条52が設けられている。
【0043】
スライド部材55は、スライド部材51よりも幅広であるから基端部を蟻溝条52とすることも可能である。一方で、第2成形コア30は、内分割コア31と外分割コア41とが周方向に交互に配されるため、スライド部材51とスライド部材55とで連結部の形状を変えておけば組付け間違いが起こり難く好ましい。
【0044】
ホルダー60は、成形用金型1の型締め時に第2成形コア30を成形位置に、またエジェクタ機構170の一段突き出し時に第2成形コア30がアンダーカット部P1から外れるようにスライド部材51、55を案内する部材である。ホルダー60は、長方体状の上ホルダー61と長方体状の下ホルダー71とで構成され、これらが連結ボルトで連結されてなる。ホルダー60は、可動側型板151に設けられた凹部155に嵌め込まれボルトで固定されている。
【0045】
上ホルダー61には、中心部にセンターピン25が摺動自在に挿通する貫通孔67が設けられ、貫通孔67を中心に中心部を残した形で凹部64が設けられている。これにより中心に貫通孔67を有する軸心部66が形成される。凹部64は、ストリッパープレート91の収容部64であり、上ホルダー61の上面62に臨むように設けられている。
【0046】
上ホルダー61は、スライド部材51、55を案内するガイド手段である、凹部64の底面から上ホルダー61の底面63に貫通する斜孔68、69を有する。斜孔68、69は、横断面が矩形状であり、正面視において上部が下部に比較して下円筒部P6の軸心Oに近づくように傾斜し(図2図9図11参照)、軸心部66を取り囲むように放射状に配置されている(図6参照)。斜孔68にはスライド部材51が、斜孔69にはスライド部材55がそれぞれ摺動可能に挿通される。
【0047】
斜孔68は、エジェクタ機構170と同期して、スライド部材51の先端に設けられた内分割コア31がアンダーカット部P1から外れる方向にスライド部材51の移動方向を規制する。同様に斜孔69は、エジェクタ機構170と同期して、スライド部材55の先端に設けられた外分割コア41がアンダーカット部P1から外れる方向にスライド部材55の移動方向を規制する。ここで内分割コア31及び外分割コア41がアンダーカット部P1から外れる方向とは、下円筒部P6の軸心O方向である。
【0048】
スライド部材51が挿通される斜孔68の傾斜角度β1と、スライド部材55が挿通される斜孔69の傾斜角度β2とは異なり、斜孔68の傾斜角度β1方が斜孔69の傾斜角度β2よりも大きく設定されている(図9図11参照)。傾斜角度β1、β2は、図9図11に示されるように保持駒81、85の突出し方向に対する下円筒部P6の軸心O方向への傾きである。
【0049】
このように斜孔68及び斜孔69を設定すると、スライド部材51とスライド部材55とを同時に同量突き上げたとき、スライド部材51の先端に設けられた内分割コア31がスライド部材55の先端に設けられた外分割コア41に比較してより軸心O方向に近付く。これにより外分割コア41は内分割コア31にじゃまされることなく縮径することができる。
【0050】
軸心部66の外壁面は、成形用金型1の型締め時に3つの内分割コア31及び3つの外分割コア41それぞれの内面37、47が接するように形成されている。軸心部66は、このような構成を備えていなくてもよいが、以下の理由により軸心部66をこのように構成することが好ましい。
【0051】
スライド部材51、55は、斜孔68、69によりガイドされており、また成形用金型1の型締め時には、内分割コア31と外分割コア41とは互いに接触しているため内分割コア31及び外分割コア41は基本的に動くことはできない。一方で、溶融樹脂が射出される場合には、内分割コア31及び外分割コア41にも大きな力が加わるので、内分割コア31及び外分割コア41にがたつきがあると位置がずれ、成形面に不良が発生する。本実施形態のように軸心部66の外壁面を構成することで分割コア31、41の位置ずれをより確実に防ぐことができる。
【0052】
下ホルダー71は、センターピン25及びスライド部材51、55及び保持駒81、85が挿通可能な縦孔73を備える。この縦孔73には、センターピン25及びスライド部材51、55及び保持駒81、85をガイドする機能はなく、スライド部材51、55の逃がし穴の役目を果たす。
【0053】
但し、縦孔73を保持駒81、85が摺動可能に構成し、縦孔73に保持駒81、85のガイド機能を持たせてもよい。保持駒81、85は、固定部材100に堅固に固定されているため、特にガイドは必要としないが、保持駒81、85が長くなると撓み、ねじれが発生し易くなるので、保持駒81、85が長い場合には、縦孔73に保持駒81、85のガイド機能を持たせることは有用である。
【0054】
保持駒81、85は、スライド部材51、55に連結し、スライド部材51、55を進退させることで第2成形コア30を成形位置及びアンダーカット部P1が抜ける位置とする。保持駒81は、先端に内分割コア31を備えるスライド部材51と連結する保持駒であり、3本の保持駒81からなる。保持駒85は、先端に外分割コア41を備えるスライド部材55と連結する保持駒であり、3本の保持駒85からなる。保持駒81と保持駒85とは、先端部に設けられたスライド部材51、55との連結部の構造・形状を除き、同じ構造・形状からなる。
【0055】
保持駒81、85は、共に横断面が矩形の棒状体であり、下部に固定台84を有する。保持駒81の先端部には、スライド部材51の基端部に設けられた蟻溝条52が摺動自在に嵌り込む蟻溝83が、保持駒85の先端部には、スライド部材55の基端部に設けられた蟻溝56が摺動自在に嵌り込む蟻溝条87が設けられている。本実施形態では、保持駒81の蟻溝83とスライド部材51の蟻溝条52、保持駒85の蟻溝条87とスライド部材55の蟻溝56とで係合部を形成する。
【0056】
保持駒81とスライド部材51との係合部、保持駒85とスライド部材55との係合部は、スライド部材51及びスライド部材55が、保持駒81及び保持駒85に突き出されホルダー60に設けられた斜孔68及び斜孔69にガイドされ移動したとき、内分割コア31及び外分割コア41がアンダーカット部P1から外れるように設けられている。
【0057】
より具体的に説明すると、図9に示すようにアンダーカット部P1が型抜き方向に対して直交するように設けられている場合には、保持駒81は、スライド部材51を型抜き方向の直交方向に案内するようにスライド部材51と係合する。同様に保持駒85は、スライド部材55を型抜き方向の直交方向に案内するようにスライド部材55と係合する。型抜き方向を鉛直方向とすればスライド部材51は保持駒81に対して、スライド部材55は保持駒85に対して、水平方向にスライドする。
【0058】
図10に示すアンダーカット部P1は、内面P7側が高く外面側が低い下り勾配となっている。このため保持駒81及び保持駒85は、スライド部材51及びスライド部位55を突き上げる際に軸心O方向にスライドさせつつ上昇させるようにスライド部材51及びスライド部位55と係合する。一方、図11に示すアンダーカット部P1は、内面P7側が低く外面側が高い上り勾配となっている。このため保持駒81及び保持駒85は、スライド部材51及びスライド部位55を突き上げる際に軸心O方向にスライドさせつつ下降させるようにスライド部材51及びスライド部位55と係合する。
【0059】
要すれば保持駒81及び保持駒85は、内分割コア31及び外分割コア41をアンダーカットP1を抜く方向と平行にスライド可能に、スライド部材51及びスライド部位55と係合する。
【0060】
固定台84は、保持駒81、85の横断面よりも大きい矩形断面を有る高さの低い四角柱体であり、4角には面取りが施されている。保持駒81、85は、本体の基端部及び固定台84が下固定部材101に設けられた凹部108に嵌め込まれ固定される。保持駒81、85に固定台84を設けることで下固定部材101に堅固に固定することができる。また固定台84は、横断面が四角形であるので、保持駒81、85を確実に所定の位置・方向・角度にすることができ、また保持駒81、85の廻り止めとなる。
【0061】
取出し機構90は、成形品Pを取出し可能に突き出すストリッパープレート91と、ストリッパープレート91に連結しストリッパープレート91を押し上げる押上シャフト95とを含む。
【0062】
ストリッパープレート91は、成形品Pを取り出す際に押上シャフト95を介して成形品Pを突き出す部材であり、長方体形状を有し、中心部にセンターシャフト25及び第2成形コア30が入る円孔93が設けられている。
【0063】
押上シャフト95は、成形品Pを取り出す際にストリッパープレート91を押し上げる部材であり、先端部をストリッパープレート91の底面に突き当てた状態でストリッパープレート91とボルト結合されている。押上シャフト95は、基端部に鍔96を有する。
【0064】
固定部材100は、センターシャフト25、保持駒81、85、及び押上シャフト95を所定の位置に配置し固定するための部材であり、下固定部材101、中固定部材111、上固定板部材121で構成される。
【0065】
下固定部材101は、平面視が矩形の肉厚の部材であり、中心にセンターシャフト25が挿通する貫通孔106が設けられている。下固定部材101の底面105にはセンターシャフト25の鍔26が嵌り込む、貫通孔106につながる凹部が設けられている。また下固定部材101には、上面103に臨む6つの凹部108が設けられている。この凹部108は、貫通孔106を取り囲むように放射状に配置され、ここに保持駒81、85が嵌め込まれ、ボルトを介して下固定部材101に固定される。
【0066】
中固定部材111は、平面視が矩形の肉厚の部材であり、中心部に平面視において歯車形状の貫通孔113が設けられている。この貫通孔113は、下固定部材101に設けられた6つの凹部108のうち固定台84が嵌り込む部分を結び、その内側をくり抜いた形状からなり、6つの保持駒81、85が嵌り込み、センターピン25が挿通する。
【0067】
上固定部材121は、平面視が矩形の肉厚の部材であり、平面視において中心部に大きな円孔123が設けられている。この円孔123の直径は、放射状に配置された6つの保持駒81、85の外接円よりも大きく、6つの保持駒81、85は、この円孔123の内側に位置する。円孔123の周囲には、4本の押上シャフト95を取付けるための挿通孔125が設けられ、上固定部材121の底面122には押上シャフト95の鍔部96が嵌り込む、挿通孔125につながる凹部が設けられている。
【0068】
固定部材100によるセンターシャフト25、保持駒81、85、押上シャフト95の固定要領を説明する。下固定部材101は、センターシャフト25が下固定部材101の挿通孔106に挿通された状態で下段のエジェクタ台板181の収容部に嵌め込まれ、ここに固定される。センターシャフト25は、鍔26が下固定部材101と下段のエジェクタ台板181とで挟み込まれ固定される。
【0069】
保持駒81、85は、基端部及び固定台84を下固定部材101の凹部108に嵌め入れ、下固定部材101にボルト止めされる。下固定部材101は、下段のエジェクタ台板181に固定されるため、センターシャフト25と保持駒81、85とは下段のエジェクタ台板181と一体的に進退する。
【0070】
上固定部材121は、押上シャフト95が挿通孔125に挿通された状態で中固定部材111とボルトを介して連結される。押上シャフト95は、鍔96が中固定部材111と上固定部材121とで挟み込まれ固定される。押上シャフト95が取付けられ連結された上固定部材121と中固定部材111は、上段のエジェクタ台板171の収容部に嵌め込まれ、上段のエジェクタ台板171にボルト止めされる。
【0071】
次に、成形用金型1において成形品Pを射出成形によって成形する場合を例として、本実施形態の成形用金型1の動作、作用を説明する。成形品Pの成形時には、成形コア15は、センターシャフト25の周囲に内分割コア31及び外分割コア41が互いに隙間なく整列し、内分割コア31及び外分割コア41の上面が第1成形コア21の底面22に密接した成形位置である(図1図5(A)、図8(A)参照)。
【0072】
成形用金型1は、固定型130と可動型150とのパーティング面(PL面)が合わされた型締め状態において、溶融材料が射出され成形品Pの成形が行われる(図1参照)。溶融材料の射出、冷却の各工程が終了すると、型開きが行われるPL面が開く(図2参照)。
【0073】
続いて成形品Pの突き出し動作が行われる。型開き後、図示を省略した突き出し装置を介してエジェクタロッド195が押し出され、エジェクタ台板171、181が上方(Z方向)に移動する(図3参照)。上段のエジェクタ台板171と下段のエジェクタ台板181とは、マグネット191、192を介して連結されているので一体となって上方に移動する。
【0074】
エジェクタ台板171、181の上方への移動に伴い、エジェクタ台板171、181上に立設されたセンターピン25、保持駒81、85及び押上シャフト95が上方に移動し成形品Pが突き出される。このときセンターピン25と押上シャフト95とは同じ量だけ上昇するので、成形品Pと第1成形コア21との位置関係は型締め時と同じである(図5(B)参照)。
【0075】
一方、第2成形コア30は、次のように動作する。保持駒81、85が上方に移動することで、これに連結するスライド部材51、55、さらにはそれらの先端部に設けられた内分割コア31及び外分割コア41も上昇する。このときスライド部材51、55は、図1に示す成形位置から上ホルダー61に設けられた斜孔68、69に沿って移動する。これにより内分割コア31及び外分割コア41は、上昇するとともに下円筒状部P6の軸心O方向にも移動する(図8(B)参照)。
【0076】
内分割コア31は、外分割コア41に比較して軸心O方向への移動量が大きいため外分割コア41よりも先に軸心O側に移動する。さらに内分割コア31は、平面視において内側の周縁部が外側の周縁部に比較して長く、側面36が傾斜しているため内分割コア31が軸心O方向に移動することで外分割コア41が軸心O方向に移動できるスペースが生まれる。外分割コア41は、このスペースを埋めるように内分割コア31の側面36に内面47を摺動させながら軸心O方向に移動する。これらの動きにより第2成形コア30がアンダーカットP1から外れる(図3図9(B)、図10(B)、図11(B)参照)。第2成形コア30がアンダーカットP1から外れる動作は、下段のエジェクタ台板181が、スペーサーブロック161の段部163に衝突する前に完了する。
【0077】
上段及び下段のエジェクタ台板171、181が上昇し、下段のエジェクタ台板181が、スペーサーブロック161の段部163に衝突すると、上段及び下段のエジェクタ台板171、181との連結が解かれ、上段のエジェクタ台板171のみが上昇する。上段のエジェクタ台板171が上昇するとストリッパープレート91が上昇し、成形品Pを押し上げる。成形コア15は、下段のエジェクタ台板171に連結されているため、成形品Pが成形コア15から外れ取出し可能となる(図4図5(C)参照)。
【0078】
成形品Pの取り出し後、次の成形品Pを成形すべく、再度、成形用金型1の型締めが行われる。型締め時は、上記成形品Pの取出し動作が逆の順番に行われる。型締めが完了すると、成形材料が射出され次の成形品Pが成形される。成形用金型1の型開き状態から型締めへの基本動作は、従来のアンダーカット処理機構を備える成形用金型と同じである。
【0079】
以上のように第1実施形態の成形用金型1のアンダーカット処理機構11は、成形品Pの内面及びアンダーカットP1を成形する成形コア15を、それぞれ独立して動作させることができる第1成形コア21及び第2成形コア30で構成するので、深い筒状部の内面下部にアンダーカット部P1を有するような成形品Pであっても容易に型抜きすることができる。
【0080】
また第1実施形態の成形用金型1のアンダーカット処理機構11は、第2成形コア30を縮径サイズの異なる内分割コア31と外分割コア41とで構成するので、第2成形コア30がコンパクトとなり、アンダーカット処理機構11及び成形用金型をコンパクト化することができる。
【0081】
また第1実施形態の成形用金型1のアンダーカット処理機構11は、アンダーカット処理機構11を1つのユニットとすることができるため成形用金型1への取付けが容易である。第1実施形態の成形用金型1のアンダーカット処理機構11は、部品数が多いためこれらをユニット化することのメリットは大きい。
【0082】
さらに第1実施形態では、アンダーカット処理機構11と成形品Pの取出し機構90とを1つの処理ユニットとするので、2つの処理機構を備える成形用金型1であっても容易に製造可能であり、またコンパクト化を実現できる。
【0083】
以上、第1実施形態の成形用金型1を用いて、本発明のアンダーカット処理機構、成形用金型及び成形品を説明したが、本発明のアンダーカット処理機構、成形用金型及び成形品は、上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変形して使用することができる。
【0084】
本発明のアンダーカット処理機構で対応可能なアンダーカット部P1は、下円筒部の内面全周に設けられたもののみならず、下円筒部の内面に部分的に設けられたものであってもよい。またアンダーカット部P1は、凹部に限定されるものではない。アンダーカット部P1は、凸部でもよくまた凹部と凸部とが混在してもよい。またアンダーカットは、成形品の型抜き方向に直交する場合のみならず、成形品の型抜き方向に対して下向きに交差しても、または上向きに交差していてもよい(図10図11参照)。
【0085】
また上記実施形態では、第2成形コアを内分割コアと外分割コアで構成するが、第2成形コアを縮径したとき径の大きさが異なる3種類の分割コアで構成してもよい。例えば、第2成形コアを内分割コア、中間分割コア、外分割コアの3種類とし、アンダーカットを抜く際に、内分割コアが移動したスペースを利用して中間分割コアが移動し、さらに中間分割コアが移動したスペースを利用して外分割コアが移動するように構成してもよい。
【0086】
また上記実施形態では、内分割コア及び外分割コアがそれぞれ3つの分割コアで構成されるが、内分割コア及び外分割コアの個数は2個、又は4個以上であってもよい。スライド部材及び保持駒はそれに応じた個数とすればよい。
【0087】
上記実施形態に示す成形品Pは、円筒体であり、アンダーカット部P1が下円筒部P6の内面P7の下端近傍に設けられた凹部である。第2成形コアは、複数の内分割コア及び外分割コアで構成され、アンダーカットを抜く際に複数の内分割コアが同時に下円筒部P6の軸心O(中心)方向に移動するため縮径と表現した。外分割コアも同様である。
【0088】
本発明のアンダーカット処理機構で対応可能なアンダーカット部P1は、円筒部を含め筒状部の内面に設けられたものに限定されるものではない。例えば、周方向に間隔をあけて部材が配置されてなる部位を有し、その部位の内面にアンダーカット部があるような成形品であっても本発明のアンダーカット処理機構で対応することができる。このような筒状部材ではない、アンダーカット部P1を有する部材又は部位を成形する第2成形コアも、アンダーカットP1を抜く際には、円筒部材と同様に内分割コア及び外分割コアが軸心O方向に移動(スライド)する。
【0089】
以上のように本発明のアンダーカット処理機構は、筒状部材に限定されることなく部材の内面にアンダーカット部P1を有する部位の内面を、第1成形コアとアンダーカット部P1を有する部位の軸心方向にスライドするスライド量が異なる2種類以上の分割コアで構成される第2成形コアとで成形することができる。内面にアンダーカット部P1を有する部位とは、成形品の一部にこのような部位を含む他、成形品自体(成形品全体)がこのような部位である場合を含む。
【0090】
上記実施形態では、各スライド部材に対応するように複数の保持駒が独立して設けられているが、各スライド部材に対応する保持駒を1つの保持駒として形成してもよい。
【0091】
上記実施形態では、2段突き出しが可能なエジェクタ機構としてマグネットを使用した機構を採用するが、2段突き出しが可能なエジェクタ機構の構成は特に限定されるものではない。例えば、特開2009-126120号(日本の公開公報)の段落0034、0035及び図1~4に示される2段突出し用ユニットを用いたものであってもよい。要すれば、予め設定された位置までは上下段のエジェクタ台板が一緒に上昇し、以降、上段のエジェクタ台板のみが単独で上昇するものであればよい。
【0092】
上記実施形態では、成形品Pの取出しにストリッパープレートを使用するが、成形品Pの取出しにロボットを使用してもよい。この場合には、ストリッパープレートさらにはそれを突き上げる機構も不要となるため、エジェクタ機構は、1段の突き出し用であればよい。
【0093】
上記実施形態では、アンダーカット処理機構を1つのユニットとして構成しているが、アンダーカット処理機構をユニット化することなく、アンダーカット処理機構を構成する部品を直接成形用金型に組み込んでもよい。上記実施形態ではホルダーと可動型とが別体であり、ホルダーは、可動型に設けられた凹部に嵌め込まれるが、可動型に直接ホルダーを設けてもよい。
【0094】
上記実施形態では、アンダーカット処理機構が可動型に組み込まれるが、可動型に代えて固定型に組み込むことも可能である。また上記実施形態では、ホルダー、ストリッパープレート、固定部材の外形を長方体とするが、これらの外形形状はこれに限定されるものではない。
【0095】
上記実施形態ではセンターピン25が挿通する軸心部66が上ホルダー61に一体的に設けられているが、軸心部66を上ホルダー61と別体とし、軸心部66を上ホルダー61と下ホルダー71とで挟み固定してもよい。また上記実施形態ではストリッパープレート91の収容部として上ホルダー61に凹部64を設けるが、凹部64を設けることなく上ホルダー61の上面62にストリッパープレート91を配するようにしてもよい。
【0096】
また本発明のアンダーカット処理機構において、互いに嵌合又は係合する斜孔、凸条、蟻溝、蟻溝条、嵌合部又は係合部の断面形状は、図に示した矩形であるものに限定されるものではなく断面が円形、三角形等であってもよい。また本発明のアンダーカット処理機構において、ホルダーに設けられるガイド手段は、上記実施形態のものに限定されるものではなく、例えば、リニアガイド等を用いてもよい。
【0097】
本発明のアンダーカット処理機構及び成形用金型において、各構成部材の角及び側稜にR面取りやC面取り等が施されていてもよい。本発明のアンダーカット処理機構及び成形用金型に使用される各構成部材の材質は、特定の材質に限定されるものではなく、公知のアンダーカット処理機構及び成形用金型に使用される部材の材質と同様のものを適宜用いればよい。ただし各構成部材における摺動面は、摺動性の良好な材質又は摺動性の良好な表面処理が施された材料を用いることが好ましい。なお各摺動面は、面接触であるものに限定されるものではなく、線接触や点接触であってもよい。
【0098】
また本発明のアンダーカット処理機構は、水平、垂直又はその他の方向に開閉する成形用金型に適用可能である。本発明のアンダーカット処理機構は、成形用金型に1つ組み込まれていても、2つ、3つ以上組み込まれていてもよい。本発明のアンダーカット処理機構を2つ以上備える成形用金型であっても1つのエジェクタ機構で対応できる。
【0099】
また本発明のアンダーカット処理機構及び成形用金型は、射出成形金型以外にダイカスト金型のようなモールド金型、モールドプレス成形金型などに好適に使用することができる。
【0100】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
【符号の説明】
【0101】
1 成形用金型
10 処理ユニット
11 アンダーカット処理機構
15 成形コア
21 第1成形コア
25 センターピン
30 第2成形コア
31 内分割コア
41 外分割コア
51 スライド部材
52 蟻溝条
55 スライド部材
56 蟻溝
60 ホルダー
68 斜孔
69 斜孔
81 保持駒
83 蟻溝
85 保持駒
87 蟻溝条
90 取出し機構
91 ストリッパープレート
95 押上シャフト
100 固定部材
101 下固定部材
121 上固定部材
130 固定型
150 可動型
170 エジェクタ機構
171 上段のエジェクタ台板
181 下段のエジェクタ台板
P 成形品
P1 アンダーカット部
P6 下円筒部
P7 内面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12