(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 7/54 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
A47C7/54 A
A47C7/54 E
(21)【出願番号】P 2015219085
(22)【出願日】2015-11-09
【審査請求日】2018-11-01
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】和田 光平
(72)【発明者】
【氏名】アーミン ザンダー
(72)【発明者】
【氏名】マーティン ポトリュコス
(72)【発明者】
【氏名】ハーマン ボック
【合議体】
【審判長】藤井 昇
【審判官】大谷 光司
【審判官】八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-107507(JP,U)
【文献】実開昭57-159758(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2011/0109145(US,A1)
【文献】実公平5-23089(JP,Y2)
【文献】特開2010-131246(JP,A)
【文献】特開平9-191973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C7/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脚支柱の上端に設けたベースにて座受け部材を支持し、前記座受け部材に、座が中間支持体を介して取り付けられていると共に、前記ベースには、背もたれが取り付く背支持フレームを後傾動可能に連結している構成であって、
前記中間支持体は、上面にリブを備えて上向きに開口したシェル状に形成されており、 前記座受け部材に、前記ベースに対して左右外側に張りだして前記中間支持体の下方に露出したサイド支持部を設けており、前記サイド支持部が、その下面に重ね配置したスペーサを介して肘掛け装置の内向き水平状部を下方から固定可能な肘掛け取り付け部になっている一方、
前記中間支持体には、前記ベースの左右両側において下方に突出した前後長手の下向き突部
が形成されており、前記中間支持体の下向き突部に、前記座受け部材のサイド支持部及び前記スペーサ並びに前記肘掛け装置の内向き水平状部が下方から入り込む凹部を形成している、
椅子。
【請求項2】
前記サイド支持部に、前記肘掛け装置の内向き水平状部を固定するためのタップ穴が前後方向に並べて複数形成されていると共に、前記スペーサがピンを介して位置決めされる位置決め穴が左右方向に並んで複数形成されている、
請求項1に記載した椅子。
【請求項3】
前記サイド支持部に対する内向き水平状部の取付け位置が左右方向の複数個所に選択可能である、
請求項1又は2に記載した椅子。
【請求項4】
脚支柱の上端に設けたベースにて座受け部材を支持し、前記座受け部材に、座が中間支持体を介して取り付けられていると共に、前記ベースには、背もたれが取り付く背支持フレームを後傾動可能に連結している構成であって、
前記中間支持体は、上面にリブを備えて上向きに開口したシェル状に形成されており、 前記座受け部材に、前記ベースに対して左右外側に張りだして前記中間支持体の下方に露出したサイド支持部を設けており、前記サイド支持部の下面に、スペーサを介して肘掛け装置の内向き水平状部が固定されている一方、
前記中間支持体には、前記ベースの左右両側において下方に突出した前後長手の下向き突部
が形成されており、前記中間支持体の下向き突部に、前記座受け部材のサイド支持部及び前記スペーサ並びに前記肘掛け装置の内向き水平状部が下方から入り込む凹部を形成している、
椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は椅子に関するものであり、特に、肘掛け装置の取り付け構造に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
椅子において、オプション品として肘掛け装置が使用されている。肘掛け装置は、肘当てを高さ調節できるものと、肘当てを高さ調節できない一体方式のものとに大別できるが、いずれにしても、座の下方に入り込む内向き水平状部を有しており、この内向き水平状部を椅子の本体に固定している。
【0003】
肘掛け装置の内向き水平状部をどこに取り付けるかは様々である。例えば、座板の下面に取り付ける、脚の上端に固定されたベースに取り付ける、ベースに後傾動自在に連結された背支持フレームに取り付ける、といった手段が採用されている。他方、例えば特許文献1に開示されているように、座を支持する座受け部材の下面に内向き水平状部を取り付けることも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
肘掛け装置の内向き水平状部をどこに取り付けるかは、椅子のデザインとの関連で決まるものであるが、ベースや背支持フレームに肘掛け装置の内向き水平状部を取り付けできない場合は、座受け部材は強度に優れているため、肘掛け装置の有望な取り付け対象部材になる。また、ロッキング時に座が背もたれに連動して後傾する椅子では、座受け部材もロッキング時に後傾するため、肘掛け装置を座受け部材に取り付けると、肘掛け装置も座受け部材と一緒に回動するため、着座した人の身体への追従性に優れているという利点もある。
【0006】
他方、座受け部材は、本来的には座の取り付けのための部材であるため、何らかの対策を施さないと、肘掛け装置をそのまま取り付けできない場合がある。例えば、座受け部材の周囲が座アウターシェルやカバーなどで囲われる場合などである。
【0007】
本願発明はこのような現状に鑑み成されたものであり、座受け部材を、肘掛け装置の取り付け対象部材として有効利用せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の椅子は、
「脚支柱の上端に設けたベースにて座受け部材を支持し、前記座受け部材に、座が中間支持体を介して取り付けられていると共に、前記ベースには、背もたれが取り付く背支持フレームを後傾動可能に連結している」
という基本構成である。
【0009】
そして、請求項1の発明では、上記基本構成において、
「前記中間支持体は、上面にリブを備えて上向きに開口したシェル状に形成されており、 前記座受け部材に、前記ベースに対して左右外側に張りだして前記中間支持体の下方に露出したサイド支持部を設けており、前記サイド支持部が、その下面に重ね配置したスペーサを介して肘掛け装置の内向き水平状部を下方から固定可能な肘掛け取り付け部になっている一方、
前記中間支持体には、前記ベースの左右両側において下方に突出した前後長手の下向き突部が形成されており、前記中間支持体の下向き突部に、前記座受け部材のサイド支持部及び前記スペーサ並びに前記肘掛け装置の内向き水平状部が下方から入り込む凹部を形成している」
という特徴を備えている。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1において、
「前記サイド支持部に、前記肘掛け装置の内向き水平状部を固定するためのタップ穴が前後方向に並べて複数形成されていると共に、前記スペーサがピンを介して位置決めされる位置決め穴が左右方向に並んで複数形成されている」
という構成になっている。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1又は2において、
「前記サイド支持部に対する内向き水平状部の取付け位置が左右方向の複数個所に選択可能である」
という構成になっている。
この請求項3において、サイド支持部に対する内向き水平状部の取付け位置を左右複数個所にずらす手段としては、ビスで内向き水平状部とスペーサとをサイド支持部に共締めしている場合であると、内向き水平状部のビス挿通穴を左右に複数設けるか、サイド支持部に設けているタップ穴を左右に複数設けるかしたらよい。
【0013】
請求項4の発明は、肘掛け装置を備えた椅子であり、上記基本構成において、
「前記中間支持体は、上面にリブを備えて上向きに開口したシェル状に形成されており、 前記座受け部材に、前記ベースに対して左右外側に張りだして前記中間支持体の下方に露出したサイド支持部を設けており、前記サイド支持部の下面に、スペーサを介して肘掛け装置の内向き水平状部が固定されている一方、
前記中間支持体には、前記ベースの左右両側において下方に突出した前後長手の下向き突部が形成されており、前記中間支持体の下向き突部に、前記座受け部材のサイド支持部及び前記スペーサ並びに前記肘掛け装置の内向き水平状部が下方から入り込む凹部を形成している」
という特徴を備えている。
【発明の効果】
【0015】
さて、肘掛け装置は肘支柱の上端に肘当てを設けた基本構造であり、肘支柱の下端に内向き水平状部を設けている。高さ調節式の場合は、肘支柱に昇降体が装着されていて、昇降体の上端に肘当てを取り付けている。そして、各メーカーとも、デザインは相違しても肘支柱の高さはおおむね一定に揃えていることが多い。高さ調節式の場合は、昇降体の昇降ストロークを必要寸法だけ確保する必要があるため、肘支柱の高さ(上下長さ)を揃える必要性は一層高くなると云える。
【0016】
従って、肘掛け装置に設計変更の余地があるといっても、内向き水平状部の高さ位置は変更しにくい。他方、座受け部材は椅子の機能に基づいて設計されるものであり、他の部材との関係で高さ位置も設定される。このため、座受け部材が肘掛け装置の内向き水平状部よりも高くなることがある。この高さの相違に対応する手段としては、内向き水平状部に上向きの凸部を設けることも可能であるが、この場合は、肘支柱の製造が面倒になる問題や、椅子の機種ごとに座受け部材の高さが異なると、それに対応して多くの種類の肘支柱を製造せねばならず、すると、製造コストが嵩むのみならず、部材の管理にも手間が掛かるという問題が生じる。
【0017】
これに対して本願各発明では、肘掛け装置の内向き水平状部はスペーサを介して座受け部材に固定され得るため、肘掛け装置の内向き水平状部を従来と同様の基準高さに維持しつつ、座受け部材の高さとの乖離を解消することができる。従って、座受け部材を肘掛け装置の取り付け対象として有効利用することができる。また、座受け部材の設計の自由性も確保される。
【0018】
更に、本願発明のようにスペーサを使用すると、座受け部材の高さが相違する椅子が複数種類ある場合は、肘掛け装置は共通のものを使用して、スペーサだけを各機種ごとに製造したら足りるため、複数種類の椅子を用意するに当たってのコストを抑制できる。
【0020】
内向き水平状部を複数本のビスで座受け部材に固定する場合、ビスが左右方向に並んでいると、スペーサの左右横幅も大きくせねばならず、すると、コンパクトさに欠ける可能性がある。これに対して請求項3の構成を採用すると、ビスは前後に並んでいるため、スペーサの左右横幅をできるだけ小さくして、座の下方部をコンパクト化できる。
【0021】
また、請求項2の発明では、スペーサに設けた左右の位置決めピンを座受け部材の位置決め穴に嵌めることにより、肘当ての取り付け強度を向上できる利点もある。すなわち、肘当てに下向きの荷重がかかると、内向き水平状部は、椅子の正面視において、先端部を支点にして下向きに回動する傾向を呈し、これに伴って、スペーサも、内側の上端縁を支点にして下向きに回動しようとするが(つまり、椅子の正面視で外側の縁が座受け部材から離反しようとするが)、請求項2では、位置決めピンと位置決め穴とが左右に並んでいるため、位置決めピンがスペーサの回動に対して高い抵抗として作用するのであり、これにより、肘掛け装置の固定強度を格段に向上できるのである。
【0022】
従って、請求項2の発明では、肘掛け装置の取り付けの容易性を確保しつつ、固定強度を向上できる利点がある。また、請求項3の発明では、座に対する肘掛け装置の左右位置を調節できるため、例えば使用者の体格に応じて肘掛け装置の左右位置を変更することが可能になる。従って、ユーザーフレンドリーである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】実施形態に係る椅子の外観を示す図で、(A)は前から見た全体の斜視図、(B)は平面図、(C)は後ろから見た斜視図である。
【
図2】実施形態に係る椅子の外観を示す図で、(A)は正面図、(B)は背面図、(C)は側面図、(D)は背もたれのみの正面図である。
【
図4】(A)は背支持フレームの取り付け構造を示す分離斜視図、(B)は傾動ベースと固定ベースとの関係を示す分離斜視図である。
【
図5】(A)は座支持部材と傾動ベースとの関係を示す分離斜視図、(B)は傾動フレーム及び背支持フレームの動きを示す図である。
【
図6】(A)は座受け部材と座アウターシェルとの分離斜視図、(B)は座受け部材を装着した状態での座アウターシェルの斜視図である。
【
図7】(A)(B)とも、肘掛け装置を外した状態での下方からの斜視図である。
【
図8】肘掛け装置をついた状態で椅子を後部下方から見た斜視図である。
【
図9】肘掛け装置の取り付け構造を示す図で、(A)は上から見た分離斜視図、(B)は取り付け後の斜視図である。
【
図10】肘掛け装置の取り付け構造を示す図で、(A)は下から見た分離斜視図、(B)は取り付け後の正面図、(C)は肘支柱とスペーサとの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は,オフィス用に多用されている回転椅子に適用している。以下の説明で、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、これは、椅子に普通に腰掛けた人から見た状態として定義している。正面視は、椅子の着座者と対向した方向から見た状態である。
【0025】
(1).椅子の概要
まず、
図1~4に基づいて椅子の概要を説明する。椅子の基本構成は従来と同様であり、
図1に示すように、主要構成要素として脚装置1、座2、背もたれ3を備えている。また、オプション品として、肘掛け装置4とハンガー5とヘッドレスト6とを備えている。肘掛け装置4は左右一対で1セットであるが、図では片方しか表示していない。
【0026】
脚装置1はガスシリンダより成る脚支柱7を有しており、脚支柱7は、放射状に広がる複数本の枝アーム8で支持されている。各枝アーム8の先端にはキャスタを設けている。
図4に示すように、脚支柱7の上端には固定ベース9が取り付けられており、固定ベース9のうち脚支柱5よりも手前側の部位に、傾動ベース10が左右横長の支軸11によって連結されている。これら固定ベース9と傾動ベース10とを主要部材として、座2と背もたれ3とが取り付くベース部を構成している。本実施形態では、請求項のベースは、固定ベース9と傾動ベース10との両方を含んでいる。
【0027】
図3に示すように、固定ベース9と傾動ベース10とにより、座2が取り付く座受け部材12が支持されており、また、傾動ベース10に、背もたれ3が取り付く背支持フレーム13を固定している。従って、背もたれ3は、傾動ベース10と一緒にロッキングする。また、座受け部材12は、傾動ベース
10の後傾動に連動して後退及び後傾する。従って、座2は、背もたれ3の後傾動に連動して後退及び後傾する(シンクロする。)。肘掛け装置4は、座受け部材12に固定されている。
【0028】
図示していないが、固定ベース9の内部には、ロッキングに対して抵抗を付与するロッキングばねが配置されている。ロッキングばねの硬さは、例えば
図2に示す弾力調節ハンドル14の回転操作によって調節できる。弾力調節ハンドル14は着座者から見て右側に配置しており、支軸11と
同軸に配置されている。弾力調節ハンドル14と反対側には、脚支柱5の伸縮を制御する高さ調節ハンドル15が配置されている。高さ調節ハンドル15も、支軸11と同軸に配置されている。
【0029】
図3に示すように、座2は、合成樹脂製の座インナーシェル17に座クッション材18を張った構造である。座クッション材18の上面は、布地や合成皮革等の表皮材で覆われている。
図3では、座インナーシェル17と座クッション材18とを分離して表示しているが、本実施形態では、両者はインサート成形によって一体化されている。
【0030】
座2は、その下方に配置した座アウターシェル19に取り付けられている。座アウターシェル19は請求項に記載した中間支持体の例であり、座受け部材12に固定された座メインアウターシェル20と、座メインアウターシェル20に前後スライド自在に装着された座フロントアウターシェル21と、座メインアウターシェル20の後ろに配置された座リアアウターシェル22とで構成されている。従って、座2も、メイン部とフロント部とリア部との3つのパートが一体化した構造として観念できる。座リアアウターシェル22は、左右横長のピンにより、座メインアウターシェル20に上下回動自在に連結されている。
図3に示すように、座アウターシェル19を構成する各パートの上面にはリブが形成されている。
【0031】
他方、座インナーシェル17は、座メインアウターシェル20に固定された座メインインナーシェル17aと、座メインインナーシェル17aの前端に一体に連続した座フロントインナーシェル17bと、座メインインナーシェル17aの後端に一体に連続した座リアインナーシェル17cとで構成されている。座フロントインナーシェル17bは左右横長のスリットを有していて、下向きに巻き込み変形可能であり、座フロントウターシェル21が後退すると下向きに巻き込まれ、これにより、座2の前後長さ(奥行き)が小さくなる。
【0032】
座インナーシェル17の座リアインナーシェル17cは、その前端を中心にして上下回動するように座メインインナーシェル17aに連続している。そして、座リアインナーシェル17cの後端は、背もたれ3の下端に左右横長のピンによって連結されている。このため、背もたれ3がロッキングすると、座2は全体的に後退及び後傾しつつ、座リアインナーシェル17cは、座メインインナーシェル17aに対して、相対的に後傾する。
【0033】
背もたれ3は、樹脂製の背アウターシェル23の前面に背クッション材24を配置した構造であり、背クッション材24の前面は表皮材で覆われている。本実施形態では、背アウターシェル23と背クッション材24とは複数のエレメントに区分されていて、隣り合ったエレメントが相対回動し得るが、本願発明との関係はないので説明は省略する。
【0034】
背支持フレーム13には、背もたれ3の後ろにおいて上向きに延びる背支柱13aが一体に設けられており、背支柱13aの上端部が、背アウターシェル23の上下中途部に左右横長のピンで連結されている。従って、背もたれ3と背支柱13aとは相対回動する。また、背アウターシェル23の下端は、座リアアウターシェル22の後端に左右横長のピンで連結されている。
【0035】
(2).ベース部
次に、
図5以下の図面も参照して、ベース部を説明する。既述のとおり、ベース部は固定ベース9と傾動ベース10とを主要部材としている。このうち固定ベース9は、
図4(B)から理解できるように、ダイキャスト品又は鋳造品であり、左右の側板9aと底部とを有する上向き開口の浅い箱状に形成されている。後部に設けた上下開口の筒状ボス部27に、脚支柱7の上端が下方から嵌着している。固定ベース9の前部は、手前に向けて高くなるように側面視で傾斜している。
【0036】
他方、
図4(B)に示すように、傾動ベース10は、左右側板10aと後面板10bとを有して上下に開口しており、後面板10bには、上向きに開口した背支持部28が固定されている。背支持部28は左右の側板を有する上向き開口の樋状に形成されており、その内部に背支持フレーム13の前端部が嵌め入れられている。
図4(A)のとおり、背支持フレーム13は、背支持部28に複数本のボルト29で固定されている。
【0037】
傾動ベース10は金属板製であり、その側板10aが固定ベース9の側板9aの外側に位置するようにして配置されている。すなわち、傾動ベース10は、固定ベース9に外側から被さっている。そして、
図4に示すように、傾動ベース10の側板10aの前端寄り部位が、支軸11によって固定ベース9に連結されている。
【0038】
図4に示すように、傾動ベース10の左右側板10aの前部上端は、左右横長のフロントジョイント30によって連結されている。フロントジョイント30の下方には、前部固定ばね受け31が配置されている。この前部固定ばね受け31は、支軸11によって固定ベース9と傾動ベース10とに連結されている。ばねの支持構造は本願発明とは直接の関連がないので、省略する。
【0039】
例えば
図4,5に示すように、固定ベース9の前端部には、固定ベース9の上方に延びるフロントリンク32が、左右横長の第1軸33によって連結されている。従って、フロントリンク32は、その下端部を中心にして前後方向に回動し得る。そして、フロントリンク32の上端に、座受け部材12の前部が左右横長の第2軸34によって連結されている。
【0040】
図5(A)や
図9,10に示すように、座受け部材12は、前後長手の左右縦長フレーム35を有している。左右縦長フレーム35は、上端に上フランジ35aを形成した逆L形の板金加工品であり、左右の上フランジ35aに、左右横長のフロントステー36とリアステー37とを溶接で固着している。従って、座受け部材12は上下に開口した枠構造になっている。フロントステー36及びリアステー37は、縦長フレーム35の左右外側にはみ出ている。
【0041】
そして、左右縦長フレーム35の前部がフロントリンク32の上端に第2軸34で連結されて、左右縦長フレーム35の後部が、傾動ベース10の後端部に左右横長の第3軸38で連結されている。従って、傾動ベース10が後傾すると、座受け部材12は後退しつつ後傾する。但し、座受け部材12の後傾角度は傾動ベース10の後傾角度よりは小さい。
【0042】
リアステー37は平板構造であるが、フロントステー36は下向き開口の樋状の形態を成している。また、フロントステー36には、縦長フレーム35の上フランジ35aと略同じ高さの段落ち部36aを形成している。他方、縦長フレーム35のうちリアステー37を固定している部分は下向きの凹所39になっている。このため、リアステー37の上面と上フランジ35aとが略同じ高さになっている。
【0043】
(3).肘掛け装置及びその取り付け構造
リアステー37には肘掛け装置が固定されるため、板厚は縦長フレーム35やフロントステー36よりも厚くなっている。肘掛け装置4はこのリアステー37に固定されている。この点を、主として
図9,10に基づいて説明する。
【0044】
本実施形態の肘掛け装置4は高さ調節自在であり、
図2に表示しているように、肘掛け装置4は、上下長手の肘支柱40と、肘支柱40に昇降自在に装着した昇降体41と、昇降体41の上端に設けた前後長手の肘当て42とを有している。なお、肘支柱40は少し前傾している。
【0045】
昇降体41は筒状の形態であり、肘支柱40に外側から嵌まっている。昇降体41の上部の内側面には、高さ調節に際してロックを解除するボタン(図示せず)を設けている。肘当て42は昇降体41に固定されていてもよい。或いは、前後スライドすることと、左右スライドすること、及び水平旋回(回動)することとのうち、1つ又は複数の動きを行うように取り付けることができる。また、肘掛け装置4は、可動式でなくて高さを変更できない一体構造品を採用することも可能である。
【0046】
肘支柱40は、例えば樹脂成形品又はアルミダイキャスト品であり、ベース部に向かう内向き水平状部(或いは内向き部)43が一体に形成されている。また、肘支柱40は、起立部も内向き水平状部43も略偏平な断面になっている。
【0047】
他方、座受け部材12を構成するリアステー37には、ベース9,10の左右外側にはみ出したサイド支持部37aを設けており、肘支柱40における内向き水平状部43の先端部43aは、ブロック状のスペーサ45を介してビス(ボルト)46でサイド支持部37aの下面に固定されている。従って、サイド支持部37aが肘掛け取り付け部になっており、ビス46がねじ込まれる前後2のねじ穴47を空けている。座受け部材12のサイド支持部37aは、スペーサ45と略同じ前後幅の平面視角形形状であり、従って、肘支柱40の内向き水平状部43とも同じ程度の前後幅になっている。
【0048】
ビス46は、前後に2本配置されている。ビス46を左右に2本配置することも可能であるが、この場合は、スペーサ45の左右横幅が大きくなって、コンパクト性に欠けるおそれがある。これに対して実施形態では、ビス46は前後に配置されているため、スペーサ45の左右横幅も小さくできる。その結果、スペーサ45の周辺部もコンパクト化することができる。
【0049】
図10(C)に示すように、肘支柱40の内向き水平状部43は、手前が低くて後ろが高くなるように側面視で傾斜している。他方、リアステー37は側面視で水平姿勢になっている。このため、スペーサ45は、手前が厚くて後ろが薄くなるように、側面視で台形状の形態になっている。
【0050】
また、
図10(A)に示すように、スペーサ45の下面に前後一対の下部位置決め突起48aが下向きに突設されている一方、
図9(A)に示すように、内向き水平状部43には、下部位置決め突起48aが嵌まる前後一対の係合溝48bを形成している。この場合、内向き水平状部43には、係合溝48bは左右一対ずつ形成しており、また、ビス挿通穴49も左右一対ずつ形成している。このため、肘掛け装置4の取り付け位置を左右にずらすことができる。
図10(A)に示すように、下部位置決め突起47はスペーサ45の側に寄せて設けているが、左右中間部に設けてもよい。
【0051】
スペーサ45の上面には、左右一対の上部位置決め突起50が上向きに突設されている。これに対応して、リアステー37のサイド支持部37aには、上部位置決め突起50が嵌まる位置決め穴51を空けている。肘支柱40に作用した下向きのモーメントは、スペーサ45に対して、正面視において、ベース9,10に近い縁部を中心にして下向きに回転させるような力として作用するので、実施形態のように左右に離して上部位置決め突起50を設けると、内向き水平状部43に作用したモーメントに対して、上部位置決め突起50が位置決め穴51に対して強い抵抗として作用するため、ビス46を前後に配置した場合であっても、高い締結強度を確保できる。
【0052】
また、肘支柱40は前傾しているため、肘当て42に作用した下向きの力により、肘支柱40には前に倒す外力が作用し、すると、肘支柱40には、側面視で回転させるような(或いはねじるような)外力が作用する。しかして、実施形態のように、前後に下部位置決め突起47を設けると、肘支柱40が軸心回りに回転することに対して、前後の下部位置決め突起47が抵抗として作用する。この面でも、高い締結強度を確保できる。
【0053】
(4).スペーサと座アウターシェルとの関係
図8に明示するように、座メインアウターシェル20の左右両側部には、概ね前後全長にわたって延びる
前後長手の下向き突部53を形成している。この下向き突部53は座フロントアウターシェル21を前後動可能にガイドするためのものであり、座フロントアウターシェル21の左右両側部に設けたガイド部が上から嵌まっている。
【0054】
そして、例えば
図7から理解できるように、ベース9,10は座メインアウターシェル20の左右下向き突部53の間に配置されており、従って、座受け部材12も、基本的には、座メインアウターシェル20の左右下向き突部53の間の空間に嵌まり込んでおり、
図6(A)に符号54で示す線から理解できるように、座メインアウターシェル20は4本のビスで座受け部材12に固定されている。
【0055】
しかし、座受け部材12のリアステー37に設けた左右のサイド支持部37aはベース9,10の外側にはみ出ているので、
図8から理解できるように、座メインアウターシェル20の下向き突部53には、サイド支持部37a及びスペーサ45並びに肘掛け装置4の内向き水平状部43が入り込む凹部55を形成している。従って、座受け部材12のサイド支持部37aとスペーサ45と肘掛け装置4の内向き水平状部43とは、座メインアウターシェル20の下向き突部53によって前後から囲われている。
【0056】
座メインアウターシェル20における下向き突部53の凹部55にサイド支持部37a及びスペーサ45並びに肘掛け装置4の内向き水平状部43が入り込んでいるため、図8に示すように、座メインアウターシェル20における下向き突部53の下面と肘掛け装置における内向き水平状部43の先端部43aの下面とはほぼ同じ高さになっている。このため、内向き水平状部43が座メインアウターシェル20の一部であるかのように見えて、美観に優れている。
図7(B)に示すように、肘掛け装置4を取り付けない場合は、座メインアウターシェル20の凹部55はキャップ56で塞がれている。
【0058】
図6に明示するように、座メインアウターシェル20の下向き突部53には、凹部
55の手前に位置した側面視半円状の逃がし溝57が形成されている。この逃がし溝57は、
図8から理解できるように、ハンドル14,15の回転操作の邪魔にならないようにするためのものである。また、座受け部材12のフロントステー36も縦長フレーム35の外側にはみ出ているが、
図6に示すように、座メインアウターシェル20の下向き突部53には、フロントステー36を逃がすための切り欠き部58を形成している。
【0059】
上記の実施形態では、サイド支持部を37aはリアステー37を単に横向きに延長させた状態になっており、このためスペーサ45を使用したが、
参考例として図10(B)に一点鎖線で示すように、サイド支持部37aをベース9の外側に段落ちさせた状態に形成して、このサイド支持部37aに内向き水平状部43aを直接取り付けることも可能である。
【0060】
なお、図では、サイド支持部37aと内向き水平状部43aとの間に若干の間隔が開いた状態に描いているが、これは、線を明瞭に表示するための便宜的な措置であり、実際には、サイド支持部37aは通常の高さ位置の内向き水平状部43aが下方から重なる高さになっている。
【0061】
サイド支持部37aを段落ち構造にする場合、側面視での姿勢は、内向き水平状部43aの上面の側面視形状に合わせたらよい。従って、側面視水平姿勢であることには限らず、側面視で前向に傾斜した姿勢や後ろに傾斜した姿勢、或いは、山形の姿勢などがあり得る。サイド支持部37aは、リアステー37等の部材に曲げ形成してもよいし、別部材で製造してから溶接で固定してもよい。
【0062】
(5).その他
上記の実施形態では、座受け部材12は左右の縦長フレーム35と前後ステー36,37とからなる枠状に構成したが、平板状の構造であってもよい。また、板金加工品に代えて、樹脂の成形品や金属ダイキャスト品なども使用できる。サイド支持部は前後方向に長く延びる状態であってもよい。
【0063】
高さ調節式でない肘掛け装置の場合、前後2本の肘支柱を有することがあるが、この場合、前後の肘支柱に形成された内向き水平状部を、スペーサを介して座受け部材のサイド支持部に固定したらよい。この場合は、スペーサは前後に分離していてもよいし、1つのスペーサを前後の肘支柱の取り付けに共用してもよい。
【0064】
また、本願発明は、ロッキング時に座が背もたれにシンクロしない椅子にも適用できる。従って、ベース部が固定ベースのみで構成されている場合にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本願発明は、実際に椅子に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0066】
1 脚装置
2 座
3 背もたれ
4 肘掛け装置
7 脚支柱
9 固定ベース
10 傾動ベース
11 支軸
12 座受け部材
13 背支持フレーム
19 中間支持体の例としての座アウターシェル
20 座メインアウターシェル
35 座受け部材の縦長フレーム
36 座受け部材のフロントステー
37 座受け部材のリアステー
37a サイド支持部(肘掛け取り付け部)
40 肘支柱
41 昇降体
42 肘当て
43 内向き水平状部
45 スペーサ
46 ビス
47 ねじ穴
48a 下部位置決め突起
48b 下部位置決め溝
50 上部位置決め突起
51 位置決め穴
53 座メインアウターシェルの下向き突部
55 凹部