IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 花王株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-肩の痛み改善剤 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】肩の痛み改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/20 20060101AFI20230412BHJP
   A23J 7/00 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 31/685 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 31/688 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 31/7008 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230412BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
A61K35/20
A23J7/00
A61K31/685
A61K31/688
A61K31/7008
A61P21/00
A61P29/00
A61P43/00 121
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2016146131
(22)【出願日】2016-07-26
(65)【公開番号】P2018016560
(43)【公開日】2018-02-01
【審査請求日】2019-06-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】播 さや香
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 陽子
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】岡崎 美穂
【審判官】井上 典之
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-516565(JP,A)
【文献】特開2001-158736(JP,A)
【文献】ミルクサイエンス(2009)vol.58,no.3,p.135-141
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K35
A61K31
A23L
PubMed
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS/WPIX(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳脂肪球皮膜を有効成分とする経口肩の痛み改善剤(但し、骨関節疾患による肩の痛みの改善剤としての使用を除く)。
【請求項2】
乳脂肪球皮膜が、リン脂質を5~100質量%含有する請求項1記載の経口肩の痛み改善剤。
【請求項3】
乳脂肪球皮膜が、スフィンゴミエリンを1~50質量%含有する請求項1記載の経口肩の痛み改善剤。
【請求項4】
剤型が固形製剤である請求項1~3のいずれか1項記載の経口肩の痛み改善剤。
【請求項5】
固形製剤が錠剤である請求項4記載の経口肩の痛み改善剤。
【請求項6】
成人1人あたり1日にスフィンゴミエリンを10~1500mg経口投与又は経口摂取するものである請求項1~5のいずれか1項記載の経口肩の痛み改善剤。
【請求項7】
乳脂肪球皮膜を有効成分とする肩の痛み改善用食品(但し、骨関節疾患による肩の痛みの改善用食品としての使用を除く)。
【請求項8】
乳脂肪球皮膜が、リン脂質を5~100質量%含有する請求項7記載の肩の痛み改善用食品。
【請求項9】
乳脂肪球皮膜が、スフィンゴミエリンを1~50質量%含有する請求項7記載の肩の痛み改善用食品。
【請求項10】
剤型が固形製剤である請求項7~9のいずれか1項記載の肩の痛み改善用食品。
【請求項11】
固形製剤が錠剤である請求項10記載の肩の痛み改善用食品。
【請求項12】
成人1人あたり1日にスフィンゴミエリンを10~1500mg経口投与又は経口摂取するものである請求項7~11のいずれか1項記載の肩の痛み改善用食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肩の痛みを改善する肩の痛み改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
肩関節は、解剖学的には上腕骨骨頭と肩甲骨関節窩から構成される肩甲上腕関節を指すが、実際に肩関節の機能から見ると、肩鎖関節、胸鎖関節、第2肩関節及び肩甲胸郭関節をも包含する。肩関節は非常に可動性に優れている反面、関節面の接触面積が狭く不安定であり、腱板筋等の肩周囲組織が強度・安定性を高めている。そのため加齢に伴って周囲組織の退行性変化等が生じると、それに起因して、特に50歳代を中心とした中年以降、肩の痛みが生じるようになるといわれている。
【0003】
従来、肩の痛みを改善又は治療する方法として、安静、薬物療法、温熱療法等の保存療法、手術療法等の手法が適用される。肩痛を改善又は治療する薬剤としては、主に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が用いられる。その他、ヒアルロン酸注射や神経ブロック注射療法、グルコサミンやコンドロイチン等を配合したサプリメント、消炎鎮痛成分等を配合した湿布、ローション、クリーム、軟膏等の外用薬も用いられる(例えば、特許文献1)。しかしながら、効果は未だ不十分であったり、また、保存療法又は手術療法を実施するには医師及びその他の医療関係者の指導が必要であったりして、誰にでも起こりうる肩痛をより簡便な方法で改善する方法が望まれている。
【0004】
一方、乳脂肪球皮膜(Milk-fat Globule Membrane:MFGM)は、乳腺より分泌される乳脂肪球を被覆している膜成分で、バターミルクやバターセーラム等の乳複合脂質高含有画分に多く含まれることが知られている(非特許文献1)。乳脂肪球皮膜は、脂肪を乳汁中に分散させる機能を有するのみならず、マウスにおける運動機能向上作用や筋力向上作用等の生理機能を有することが報告されている(特許文献2)。
しかしながら、乳脂肪球皮膜が肩の痛みへ与える影響に関しては報告がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-114232号公報
【文献】特開2010-59155号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】三浦晋、FOOD STYLE21、2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、肩の痛みの改善に有用な医薬品、医薬部外品又は食品、或いはこれらに配合可能な素材又は製剤を提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討したところ、乳脂肪球皮膜が肩の痛みの改善に有用であることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、乳脂肪球皮膜を有効成分とする肩の痛み改善剤を提供するものである。
また、本発明は、乳脂肪球皮膜を有効成分とする肩の痛み改善用食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、肩の痛みを軽減し、肩の痛みの改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】VAS評価の結果を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で用いられる乳脂肪球皮膜は、乳脂肪球を被覆している膜、及び膜を構成する成分の混合物と定義される。乳脂肪球皮膜は、食経験が豊富で安全性が高い。
乳脂肪球皮膜は、一般的に、乾燥重量の約半分が脂質で構成され、当該脂質としては、トリグリセライドやリン脂質、スフィンゴ糖脂質が含まれることが知られている(三浦晋、FOOD STYLE21、2009及びKeenan TW、Applied Science Publishers、1983、pp89-pp130)。リン脂質としては、スフィンゴミエリン(SM)等のスフィンゴリン脂質、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)やホスファチジルセリン(PS)等のグリセロリン脂質が含まれることが知られている。
また、脂質以外の成分としては、ミルクムチンと呼ばれる糖タンパク質が含まれることが知られている(Mather、Biochim Biophys Acta、1978)。
【0013】
本発明で用いられる乳脂肪球皮膜は、生理効果の点から、乳脂肪球皮膜中の脂質の含有量が、10質量%以上、更に20質量%以上、更に30質量%以上であるのが好ましく、また、風味・ハンドリングの点から、100質量%以下、更に90質量%以下、更に60質量%以下であるのが好ましい。
【0014】
乳脂肪球皮膜は、生理効果の点から、乳脂肪球皮膜中のリン脂質の含有量が5質量%以上、更に8質量%以上、更に10質量%以上、更に15質量%以上であるのが好ましく、また、風味・ハンドリングの点から、100質量%以下、更に85質量%以下、更に70質量%以下、更に60質量%以下であるのが好ましい。
【0015】
乳脂肪球皮膜は、生理効果の点から、乳脂肪球皮膜中のスフィンゴミエリン(SM)の含有量が、1質量%以上、更に2質量%以上、更に3質量%以上であるのが好ましく、また、風味・ハンドリングの点から、50質量%以下、更に30質量%以下、更に25質量%以下、更に20質量%以下であるのが好ましい。
同様の点から、乳脂肪球皮膜の全リン脂質中のスフィンゴミエリン含有量は、3質量%以上、更に5質量%以上、更に10質量%以上、更に15質量%以上であるのが好ましく、また、50質量%以下、更に40質量%以下、更に35質量%以下、更に30質量%以下であるのが好ましい。
尚、本明細書において、乳脂肪球皮膜中の脂質、リン脂質の含有量、並びに乳脂肪球皮膜の全リン脂質中のスフィンゴミエリンの含有量は、乳脂肪球皮膜の乾燥物に対する質量割合とする。
【0016】
乳脂肪球皮膜は、原料乳から遠心分離法や有機溶剤抽出法等の公知の方法により得ることができる。例えば、特開平3-47192号公報に記載の乳脂肪球皮膜の調製方法を用いることができる。また、特許第3103218号公報、特開2007-89535号公報に記載の方法等を用いることができる。
さらに、透析、硫安分画、ゲルろ過、等電点沈殿、イオン交換クロマトグラフィー、溶媒分画等の手法により精製することにより純度を高めたものを用いてもよい。
乳脂肪球皮膜の形態は、特に限定されず、室温(15~25℃)で液状、半固体状(ペースト等)、固体状(粉末、固形、顆粒等)等のいずれでもよく、これらを単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよいが、好ましくは固体状(粉末)である。
【0017】
乳脂肪球皮膜の原料乳としては、牛乳やヤギ乳等が挙げられる。なかでも、食経験が豊富であり、安価な点から、牛乳が好ましい。また、原料乳には、生乳、全粉乳や加工乳等の乳の他、乳製品も含まれ、乳製品としては、バターミルク、バターオイル、バターセーラム、ホエータンパク質濃縮物(WPC)等が挙げられる。
バターミルクは、牛乳等を遠心分離して得られるクリームからバター粒を製造する際に得られ、当該バターミルク中に乳脂肪球皮膜が多く含まれているので、乳脂肪球皮膜としてバターミルクをそのまま使用してもよい。同様に、バターオイルを製造する際に生じるバターセーラム中にも乳脂肪球皮膜が多く含まれているので、乳脂肪球皮膜としてバターセーラムをそのまま使用してもよい。
【0018】
乳脂肪球皮膜は、市販品を用いることもできる。斯かる市販品としては、メグレジャパン(株)「BSCP」、雪印乳業(株)「ミルクセラミドMC-5」、(株)ニュージーランドミルクプロダクツ「Phospholipid Concentrate シリーズ(500,700)」等が挙げられる。
【0019】
本発明の肩の痛み改善剤は、乳脂肪球皮膜による肩の痛み改善効果向上の点から、さらにグルコサミン又はその塩を含有してもよい。
グルコサミンは、分子式C613NO5で表される化合物である。グルコサミンは、D体であってもL体であってもよく、両異性体が混在するDL体であってもよいが、D体が好ましい。また、α型とβ型いずれであってもよい。
グルコサミンの塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、リンゴ酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩等の有機酸塩が挙げられ、好ましくは塩酸塩である。
これらのグルコサミン又はその塩は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
グルコサミン又はその塩は、カニやエビ等の甲殻等から得られるキチンの酵素処理、加水分解、微生物発酵、化学合成等の公知の方法により製造してもよいし、市販のものを用いることもできる。
【0020】
本発明において、乳脂肪球皮膜とグルコサミン又はその塩を組み合わせて用いる場合、その比率は、生理効果の点から、グルコサミン換算量に対する乳脂肪球皮膜の含有量(乾燥物換算)の質量比[乳脂肪球皮膜/グルコサミン]で、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.3以上、更に好ましくは0.5以上であり、また、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、より好ましくは1以下である。
【0021】
後記実施例に示すように、乳脂肪球皮膜は、肩の痛みを有意に改善する作用を有する。
従って、乳脂肪球皮膜は、肩の痛みの改善に有用な肩の痛み改善剤となり得、また、肩の痛み改善剤を製造するために使用することができる。すなわち、乳脂肪球皮膜は、肩の痛みが気になるヒトに適用して、肩の痛みの改善のために使用することができる。
ここで、「肩の痛み」とは、肩部の疼痛であり、肩関節の疼痛を包含する。尚、肩関節は、上腕骨骨頭と肩甲骨関節窩から構成される肩甲上腕関節と、肩鎖関節、胸鎖関節、第2肩関節及び肩甲胸郭関節を包含する。
「改善」とは、症状又は状態の好転、症状又は状態の悪化の防止、抑制又は遅延、あるいは症状又は状態の進行の逆転、防止、抑制又は遅延をいう。
「使用」は、ヒトへの投与又は摂取であり得、また治療的使用であっても非治療的使用であってもよい。「非治療的」とは、医療行為を含まない概念、すなわち人間を手術、治療又は診断する方法を含まない概念、より具体的には医師又は医師の指示を受けた者が人間に対して手術、治療又は診断を実施する方法を含まない概念である。
【0022】
本発明の肩の痛み改善剤は、ヒトを含む動物に摂取又は投与した場合に肩の痛み改善効果を発揮する医薬品、医薬部外品又は食品となり、また当該肩の痛み改善剤は、当該医薬品、医薬部外品又は食品に配合して使用される素材又は製剤となり得る。
【0023】
当該食品には、肩の痛みの改善をコンセプトとし、必要に応じてその旨の表示が許可された食品(特定保健用食品、機能性表示食品)が含まれる。これらの食品は機能表示が許可された食品であるため、一般の食品と区別することができる。
【0024】
上記医薬品(医薬部外品も含む、以下同じ)の投与形態としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、トローチ剤、シロップ剤等による経口投与が挙げられる。
このような種々の剤型の製剤は、本発明の乳脂肪球皮膜、又は他の薬学的に許容される担体、例えば、賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、界面活性剤、滑沢剤、分散剤、緩衝剤、保存剤、嬌味剤、香料、被膜剤、担体、希釈剤等や、乳脂肪球皮膜以外の薬効成分を適宜組み合わせて調製することができる。
なかでも、好ましい剤型は経口投与用の固形製剤であり、錠剤が好ましい。
【0025】
医薬品中の乳脂肪球皮膜の含有量(乾燥物換算)は、一般的に0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、更に好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0026】
上記食品の形態としては、清涼飲料水、茶系飲料、コーヒー飲料、果汁飲料、炭酸飲料、ゼリー、ウエハース、ビスケット、パン、麺、ソーセージ等の飲食品や栄養食等の各種食品組成物の他、さらには、上述した経口投与製剤と同様の形態(錠剤、カプセル剤、トローチ剤等の固形製剤)の栄養補給用組成物が挙げられる。なかでも、固形製剤が好ましく、錠剤がより好ましい。
【0027】
種々の形態の食品は、乳脂肪球皮膜、又は他の食品材料や、溶剤、軟化剤、油、乳化剤、防腐剤、酸味料、甘味料、苦味料、香科、安定剤、着色剤、酸化防止剤、保湿剤、増粘剤、乳脂肪球皮膜以外の有効成分等を適宜組み合わせて調製することができる。
【0028】
食品中の乳脂肪球皮膜の含有量(乾燥物換算)は、その使用形態により異なるが、飲料の形態では、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0029】
錠剤や加工食品等の固形食品の形態では、乳脂肪球皮膜の含有量(乾燥物換算)は、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0030】
本発明の肩の痛み改善剤の投与量又は摂取量は、投与又は摂取対象者の体重、性別、年齢、状態又はその他の要因に従って変動し得る。投与の用量、経路、間隔、及び摂取の量や間隔は、当業者によって適宜決定され得るが、通常、成人1人(60kg)に対して1日あたり、乳脂肪球皮膜(乾燥物換算)として、好ましくは0.1g以上、より好ましくは0.3g以上、更に好ましくは1g以上であり、また、好ましくは30g以下、より好ましくは20g以下、更に好ましくは10g以下である。
また、通常、成人1人(60kg)に対して1日あたり、スフィンゴミエリンとして、好ましくは10mg以上、より好ましくは20mg以上、更に好ましくは40mg以上であり、また、好ましくは1500mg以下、より好ましくは1000mg以下、更に好ましくは500mg以下、更に好ましくは250mg以下である。
【0031】
本発明では斯かる量を1日に1回~複数回で投与又は摂取するのが好ましい。
【0032】
上記製剤は、任意の計画に従って投与又は摂取され得る。
投与又は摂取期間は特に限定されないが、反復・連続して投与又は摂取することが好ましく、5日間以上連続して投与又は摂取することがより好ましく、15日間以上連続して投与又は摂取することが更に好ましい。
【0033】
投与又は摂取対象者としては、肩の痛みを抱え、肩の痛みの改善を必要とする若しくは希望するヒトであれば特に限定されないが、肩痛の自覚があるヒトにおける投与又は摂取が有効である。
【実施例
【0034】
〔錠剤の調製〕
日本薬局方(製剤総則「錠剤」)に準じて、下記表1に示す組成の錠剤(実施例1:353mg/錠、比較例1:450mg/錠)を調製した。
【0035】
【表1】
【0036】
乳脂肪球皮膜(MFGM)は牛乳から調製したものを使用した。
MFGMの含水量は3.6質量%であった。MFGMの組成は、乾燥物換算で、炭水化物:11.3質量%、脂質:25.1質量%、タンパク質:53.6質量%であった。また、MFGM中、リン脂質の含有量は乾燥物換算で16.6質量%であり、スフィンゴミエリンの含有量は3.6質量%であった。
【0037】
上記MFGMの分析は次のとおり行った。
(1)タンパク質の分析
タンパク質量はケルダール法を用いて、窒素・タンパク質換算係数6.38として求めた。
【0038】
(2)脂質の分析
脂質量は酸分解法で求めた。試料を1g量りとり、塩酸を加え分解した後、ジエチルエーテル及び石油エーテルを加え、攪拌混和した。エーテル混合液層を取り出し、水洗した。溶媒を留去させ、乾燥させた後、重量を秤量することで脂質量を求めた。
【0039】
(3)炭水化物の分析
炭水化物量は試料の質量から試料中のタンパク質量、脂質質量、灰分量、及び水分量を除くことにより求めた。なお、灰分量は直接灰化法(550℃で試料を灰化させ重量測定)、水分量は常圧加熱乾燥法(105℃4時間乾燥させ重量測定)により求めた。
【0040】
(4)リン脂質の分析
試料1gを量りとり、クロロホルム及びメタノールの2:1(V/V)混液150mL、100mL、及び20mL中でホモジナイズ後、0.88質量%(W/V)塩化カリウム水溶液93mLを添加し、一晩室温で放置した。脱水ろ過、溶媒留去後、クロロホルムを添加し総量を50mLとした。そのうち2mLを分取し、溶媒留去後、550℃16時間加熱処理により灰化した。灰分を6M塩酸水溶液5mLに溶解後、蒸留水を添加し、総量を50mLとした。3mLを分取し、モリブデンブルー発色試薬5mL、5質量%(W/V)アスコルビン酸水溶液1mL及び蒸留水を添加し総量を50mLとし、710nmの吸光度を測定した。リン酸2水素カリウムを用いた検量線からリン量を求め、リン量に25.4をかけた値をリン脂質量とした。
【0041】
(5)スフィンゴミエリンの分析
試料1gを量りとり、クロロホルム及びメタノールの2:1(V/V)混液150mL、100mL、及び20mL中でホモジナイズ後、0.88質量%(W/V)塩化カリウム水溶液93mLを添加し、一晩室温で放置した。脱水ろ過、溶媒留去後、クロロホルムを添加し総量を50mLとした。そのうち10mLを分取し、シリカカートリッジカラムに添加した。カラムをクロロホルム20mLで洗浄後、メタノール30mLでリン脂質を溶出し、溶媒留去後クロロホルム1.88mLに溶解した。シリカゲル薄層プレートに20μLを負荷し、1次元展開溶媒としてテトラヒドロフラン:アセトン:メタノール:水=50:20:40:8(V/V)、2次元展開溶媒としてクロロホルム:アセトン:メタノール:酢酸:水=50:20:10:15:5(V/V)を用いて2次元展開を行った。展開後の薄層プレートにディトマー試薬を噴霧し、スフィンゴミエリンのスポットをかきとり、3質量%(V/V)硝酸含有過塩素酸溶液2mL添加後、170℃3時間の加熱処理を行った。蒸留水5mL添加後モリブデンブルー発色試薬5mL、5質量%(W/V)アスコルビン酸水溶液1mL及び蒸留水を添加し総量を50mLとし、710nmの吸光度を測定した。リン酸2水素カリウムを用いた検量線からリン量を求め、リン量に25.4をかけた値をスフィンゴミエリン量とした。
【0042】
〔二重盲検無作為割付パラレルデザインによる比較検証試験〕
(1)対象者及び試験方法
50~70歳代の健常男女をMFGM群、プラセボ群の2つに群分けし(各群22名)、MFGM群にはMFGMを含む実施例1の錠剤(計10粒)を、プラセボ群にはMFGMを含まない比較例1の錠剤(計7粒)を6週間、毎日好きなタイミングで摂取させた。
【0043】
(2)肩の痛み改善効果の評価
肩の痛み改善効果の評価は、肩の痛みの程度を尋ねる視覚的アナログスケール(VAS)により評価した。具体的には、試験開始前(0週目)と試験開始から6週間後に、100mmの直線の左端0mmを「痛みなし」(数値0)、右端100mmを「これまでに経験した最も激しい痛み」(数値100)の感覚として、それぞれ数日間の肩の痛みの程度を、直線の左右両端に示した感覚を参考に100mmの直線上にマーキングさせた。
【0044】
(3)統計と結果
試験開始前(0週目)に肩に痛みがあると答えたMFGM群の17名、プラセボ群の20名を最終解析対象者とした。
最終解析対象者37名の6週間後の数値(VAS値)について、各群、初期値との差(Δ値)を算出し図1に示した。
得られた数値は平均値±標準誤差で示した。統計は、student‘sのt検定を用い、有意水準は5%とした。
図1より、試験開始前に対する試験終了後の肩の痛み程度は、MFGM群でプラセボ群に比して有意差は認められなかったが、改善傾向が認められた(p=0.07)。このことから、MFGMによって肩の痛みが顕著に改善されることが確認された。
図1