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特許7260976吸収性物品の製造方法、検査方法及び検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】吸収性物品の製造方法、検査方法及び検査装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20230412BHJP
   G01N 21/892 20060101ALI20230412BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
A61F13/15 311Z
G01N21/892 C
G01N21/88 J
A61F13/15 370
A61F13/15 380
A61F13/15 390
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018163580
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020032117
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-06-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横堀 一男
(72)【発明者】
【氏名】豊田 浩二
【審査官】西尾 元宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-249943(JP,A)
【文献】国際公開第2017/125712(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
G01N 21/84-21/958
B65H 59/00-59/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる複数色、かつ、互いに異なる太さ又は同じ大きさを有する複数の弾性部材を一方向に搬送しながら、該弾性部材を、吸収性物品を構成するいずれかの材料に接合する工程を有する、吸収性物品の製造方法であって、
搬送過程にある複数色の前記弾性部材を撮像し、撮像された該弾性部材の画像データから色要素を抽出し、抽出された色要素と予め設定された色要素の閾値とを比較する工程と、
搬送過程にある複数の前記弾性部材を撮像し、撮像された該弾性部材の画像データから弾性部材の幅方向の画素数を基に該弾性部材の伸長率を求め、求められた伸長率と予め設定された伸長率の閾値とを比較する工程とをこの順で、又はこれと逆の順で行い、
前記弾性部材の画像データから検出された色が所期の色と一致するか否かから前記弾性部材が吸収性物品における所期の適正な位置に配置されているか否かを判定し、かつ、
前記弾性部材の伸長率が、前記閾値の範囲を超える場合には、該弾性部材の搬送速度を調整する、吸収性物品の製造方法。
【請求項2】
抽出される前記弾性部材の色要素は、HSV又はRGBである請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記閾値を外れた前記弾性部材の搬送経路をインターフェース上に表示する請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記弾性部材の伸長率又は太さを、撮像された該弾性部材の画像データの画素数によって検出する請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
伸長率の前記閾値を外れた前記弾性部材の搬送経路をインターフェース上に表示する請求項1ないし4のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収性物品の製造方法に関する。また本発明は吸収性物品の検査方法及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の一つである使い捨ておむつのギャザー部には、おむつを着用者の身体にフィットさせることを目的として、弾性部材である複数本の糸ゴムが配設されている。この種の使い捨ておむつの製造工程においては、複数本の糸ゴムが伸長状態を保って製造ラインを搬送され、おむつを構成するいずれかの部材に伸長状態で接合固定される。
【0003】
ところで、使い捨ておむつに使用されている糸ゴムは、使い捨ておむつの種類やサイズあるいは使用部位などに応じて色や太さが異なる場合がある。したがって、所期の部位に所期の糸ゴムを配置する必要があり、その目的のために、おむつの製造過程において糸ゴムの配置状態を監視することが必要とされる。
【0004】
糸ゴムの配置状態の監視に関し、特許文献1には、照明手段によって生じる糸条の走行面での反射光を撮像手段によって撮像し、得られた画像データから、走行方向に所定の期間の糸条部分と糸条周辺部の背景部分との差を鮮明化して糸条部分を抽出し、抽出したデータに順次データ処理を加えて、毛玉や毛羽などの欠陥の有無を判定する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-066668号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1において提案された方法では、糸ゴムなどの弾性部材の色や太さを検出し、これらの色や太さが所期のものであるか否かを判定することは不可能である。
【0007】
したがって本発明の課題は、吸収性物品の製造工程において搬送される弾性部材の色や伸長率又は太さに基づき吸収性物品の良否判定を正確に行うことができる方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、互いに異なる複数色の弾性部材を一方向に搬送しながら、該弾性部材を、吸収性物品を構成するいずれかの材料に接合する工程を有する、吸収性物品の製造方法であって、
搬送過程にある複数色の前記弾性部材を撮像し、撮像された該弾性部材の画像データから色要素を抽出し、抽出された色要素と予め設定された色要素の閾値とを比較する、吸収性物品の製造方法を提供するものである。
【0009】
また本発明は、互いに異なる太さ又は同じ太さを有する複数の弾性部材を一方向に搬送しながら、該弾性部材を、吸収性物品を構成するいずれかの材料に接合する工程を有する、吸収性物品の製造方法であって、
搬送過程にある複数の前記弾性部材を撮像し、撮像された該弾性部材の画像データから
弾性部材の幅方向の画素数を基に該弾性部材の伸長率又は太さを求め、求められた伸長率又は太さと予め設定された伸長率又は太さの閾値とを比較する、吸収性物品の製造方法を提供するものである。
【0010】
更に本発明は、互いに異なる複数色の弾性部材を一方向に搬送しながら、該弾性部材を、吸収性物品を構成するいずれかの材料に接合して製造される吸収性物品の良否を判定する検査方法であって、
搬送過程にある複数色の前記弾性部材を撮像し、撮像された該弾性部材の画像データから色要素を抽出し、抽出された色要素と予め設定された色要素の閾値とを比較することによって前記吸収性物品の良否を判定する吸収性物品の検査方法を提供するものである。
【0011】
更に本発明は、互いに異なる太さ又は同じ太さを有する複数の弾性部材を一方向に搬送しながら、該弾性部材を、吸収性物品を構成するいずれかの材料に接合して製造される吸収性物品の良否を判定する検査方法であって、
搬送過程にある複数の前記弾性部材を撮像し、撮像された該弾性部材の画像データから弾性部材の幅方向の画素数を基に該弾性部材の伸長率又は太さを求め、求められた伸長率又は太さと予め設定された伸長率又は太さの閾値とを比較することによって前記吸収性物品の良否を判定する吸収性物品の検査方法を提供するものである。
【0012】
また更に本発明は、吸収性物品の製造工程において搬送される弾性部材の色、伸長率又は太さによって前記吸収性物品の良否を判定する検査装置であって、
前記弾性部材を撮像する撮像手段と、
該撮像手段によって撮像された前記弾性部材の画像データから色要素を抽出し、あるいは前記弾性部材の伸長率又は太さを求める画像処理装置と、
前記画像処理装置によって抽出された前記弾性部材の色要素、あるいは求められた前記弾性部材の伸長率又は太さと、予め設定された閾値とを比較することによって前記吸収性物品の良否を判定する制御手段と、
を有する吸収性物品の検査装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、吸収性物品の製造工程において搬送される弾性部材の色に基づいて、該弾性部材が吸収性物品における所期の適正な位置に配置されているか否かを正確に判定し、吸収性物品を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に用いられる装置の一実施形態を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示す装置によって撮像された糸ゴムの画像の一例を示す図である。
図3図3は、本発明の一実施形態における手順を示すフローチャートである。
図4図4は、太さの異なる2種の糸ゴムを示す図である。
図5図5は、糸ゴムの伸長率と太さとの関係を示す図である。
図6図6は、本発明の別の実施形態における複数本の糸ゴムの検査カメラによる撮像と太さ検出ウインドウを示す図である。
図7図7は、本発明の別の実施形態において撮像された糸ゴムの画像を示す図である。
図8図8は、本発明の別の実施形態における手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明は、互いに異なる複数色の弾性部材を一方向に搬送しながら、該弾性部材を、吸収性物品を
構成するいずれかの材料に接合して吸収性物品を製造する方法に関するものである。あるいは、本発明は、互いに異なる太さ又は同じ太さを有する複数の弾性部材を一方向に搬送しながら、該弾性部材を、吸収性物品を構成するいずれかの材料に接合して吸収性物品を製造する方法に関するものである。そして、吸収性物品の製造過程において弾性部材の搬送状態を監視して、該弾性部材が吸収性物品における所期の適正な位置に配置されているか否か、すなわち吸収性物品の良否を判定する。まず、吸収性物品の良否を判定する検査装置について説明する。
【0016】
[吸収性物品の検査装置]
図1は本発明に係る吸収性物品の検査装置の一実施形態を示す斜視図である。同図に示す検査装置1は、使い捨ておむつを始めとする各種の吸収性物品(図示せず)の製造ラインを、幅方向に適当な間隔で図示矢印方向に搬送される複数本(図示例では8本)の弾性部材2(本実施形態では、糸ゴム2)の色、伸長率又は太さを検出することによって、吸収性物品の良否を判定する装置である。
【0017】
なお、本実施形態では、吸収性物品として使い捨ておむつを例に挙げるが、使い捨ておむつのギャザー部には、弾性部材として複数本の糸ゴム2が所定の間隔で互いに略平行に配設されている。同じ種類の糸ゴム又は互いに異なる2種以上の糸ゴム2が配置されるギャザー部としては、例えばウエストギャザーが典型的なものとして挙げられるが、これに限られない。複数本の糸ゴム2は、使い捨ておむつのサイズ(S、M、Lサイズ)、使用箇所(ウエスト部、鼠蹊部など)、使用対象者(乳幼児、高齢者など)に応じて本数や色あるいは伸長率(太さ)が異なっている。したがって、所期の部位に所期の糸ゴム2を配置する必要があり、その目的のために、おむつの製造過程において糸ゴムの配置状態を監視する必要があることは前述のとおりである。
【0018】
そこで、本実施形態に係る検査装置1は、吸収性物品である使い捨ておむつの製造過程において図1の矢印方向に搬送される複数本の糸ゴム2の色、伸長率又は太さに基づき使い捨ておむつの良否を判定する。この目的のために、本検査装置1は次の構成を有している。
【0019】
すなわち、図1に示す検査装置1は、撮像手段である検査カメラ(例えばCCDカメラ)3と、該検査カメラ3による撮像によって得られた画像データを処理する画像処理装置4と、該画像処理装置4の画像処理によって得られた結果(糸ゴム2の色、伸長率又は太さ)を、予め設定された閾値と比較することによって使い捨ておむつの良否判定を行う制御手段としてのCPU(Central Processing Unit)5を含んで構成されている。
【0020】
検査カメラ3は、搬送過程にある複数本の糸ゴム2の垂直上方に設置されている。各糸ゴム2は、互いに所定間隔を隔て、平行に且つ同一の搬送面上を一方向に搬送される。糸ゴム2の搬送面に対して、検査カメラ3が設置された側(図1中、糸ゴム2の上方)には、糸ゴム2の検査カメラ3による撮像箇所を照明するための照明装置6が糸ゴム2の搬送面に対して所定角度だけ傾斜して設置されている。照明装置6の種類に特に制限はない。照明装置6として例えば複数個の発光ダイオードを直線状に配列してなるライン型照明を用いることができる。あるいは複数個の発光ダイオードをリング状に配列したリング型照明を用いることもできる。
【0021】
糸ゴム2の搬送面を境として検査カメラ3が設置された側(図1中、糸ゴム2の上方)と反対側(図1中、糸ゴム2の下側)には、背景板7が検査カメラ3に対向するように配置されている。背景板7は、検査カメラ3によって撮像される糸ゴム2と背景板7の画像のH(色度)、S(彩度)及びV(明度)の差を明確にするためのものである。背景板7は通常不透明且つ一色に着色されている。典型的には背景板7は黒色であるが、この色に
限定されるものではない。背景板7の寸法や形状に特に制限はなく、検査カメラ3の撮像視野をすべてカバーできる寸法及び/又は形状であればよい。
【0022】
なお、本実施形態では、撮像手段である検査カメラ3を糸ゴム2の垂直上方に配置したが、この検査カメラ3を照明装置6と同様に糸ゴム2の搬送面に対して所定角度だけ傾けて配置してもよい。また、本実施形態では、検査カメラ3と照明装置6を糸ゴム2の搬送面の上側に配置し、背景板7を糸ゴム2の搬送面の下側に配置したが、これとは逆に検査カメラ3と照明装置6を糸ゴム2の搬送面の下側に配置し、背景板7を糸ゴム2の搬送面の上側に配置してもよい。
【0023】
次に、以上のように構成された検査装置1を用いて実施される本発明に係る吸収性物品の検査方法及び製造方法について説明する。
【0024】
[吸収性物品の検査方法及び製造方法]
<実施形態1>
本発明に係る検査方法及び製造方法の実施形態1を図2及び図3に基づいて以下に説明する。図2は本発明の実施形態1に係る検査方法及び製造方法において検査カメラによって撮像された糸ゴムの画像を示す図であり、図3は本実施形態1に係る検査方法及び製造方法の手順を示すフローチャートである。
【0025】
図2に示す糸ゴム2の撮像画像は、図1に示す検査装置1において、照明装置6によって糸ゴム2の撮像箇所を照明しつつ、検査カメラ3が糸ゴム2からの反射光を撮像することによって得られる。
【0026】
本実施形態においては、使い捨ておむつの製造工程において搬送される複数本の糸ゴム2の色によって使い捨ておむつの良否を判定する。詳細には、複数本の糸ゴム2を撮像し、撮像された各糸ゴム2の画像データから色要素を抽出し、この抽出された色要素と、予め設定された色要素の閾値とを比較することによって各糸ゴム2の配置状態を判定し、使い捨ておむつの良否を判定する。
【0027】
ところで、本実施形態においては、検査対象である使い捨ておむつに配設される複数本の糸ゴム2の色は互いに異なる2色、例えば青と白に着色されている。糸ゴム2の使用本数を図2に示すとおり例えば8本とした場合、同図中、左右3本の糸ゴム2を青に着色されたものすることができ、中央の2本の糸ゴム2を白に着色されたものとすることができる。したがって、8本の糸ゴム2の各色の配列が正しく行われている場合には、検査カメラ3による撮像によって得られる図2に示す糸ゴム2の8本の画像において、左右3本の糸ゴム2の画像の色は青、中央の2本の糸ゴム2の画像の色は白である。8本の糸ゴム2は、所定の張力を保ちながら伸長状態下に図1の矢印方向に搬送される。
【0028】
したがって、本実施形態に係る検査方法においては、製造ラインを搬送されている8本の各糸ゴム2の色(青か白)が所期の色(青か白)であるか否かを画像処理によって検出することによって、製品である使い捨ておむつ中での各糸ゴム2の配置状態を判定し、各糸ゴム2がおむつにおける所期の適正な位置に配置されているか否か、すなわちおむつの良否を判定するようにしている。その検査手順を図3に示すフローチャートに従って以下に説明する。
【0029】
検査が開始されると、制御手段であるCPU5は、所定の時間間隔(インターバル)又は各糸ゴム2が巻装されたロール(図示せず)を装置にセットした後の所定のタイミングで、撮像手段である検査カメラ3に撮像開始のトリガ信号を発信する(図3のステップS1)。このとき、照明装置6は点灯状態にあって、搬送中の糸ゴム2の撮像箇所を照明し
ている。
【0030】
CPU5からのトリガ信号を受信した検査カメラ3は、撮像を開始し(ステップS2)、照明装置6から光の照射を受ける糸ゴム2からの反射光を撮像する。この結果、図2に示す計8本の糸ゴム2の撮像画像が得られる。撮像画像のデータは、画像処理装置4に送信されて該画像処理装置4によって画像処理される(ステップS3)。画像処理装置4においては、各糸ゴム2の画像データから色要素をそれぞれ抽出する。具体的には、図2に示すように、各糸ゴム2に対する撮像画像に矩形枠状の色抽出ウインドウW1をそれぞれ設定し、各色抽出ウインドウW1に表示される撮像画像に対して色抽出が実施される。図2に示す符号8は、糸ゴム2の搬送をガイドするためのガイドローラである。各色抽出ウインドウW1は、各糸ゴム2の振れが小さいガイドローラ8の近くに設定されることが有利である。本実施形態においては、図1に示すように、糸ゴム2の搬送面を境として検査カメラ3に対向する下側に背景板7を配置しており、背景板7と各糸ゴム2とのコントラストが高くなっているので、各糸ゴム2の撮像画像から色要素を高精度に抽出できる。
【0031】
撮像画像から抽出される色要素としては、例えばHSV又は色の三原色であるRGB(赤(R)、緑(G)、青(B))を用いることが、色要素を高精度に抽出できる観点から有利である。画像処理装置4における画像データの処理に際しては、必要に応じて各種フィルター処理が実施される。
【0032】
画像処理装置4によって抽出された各糸ゴム2の色要素(HSV又はRGB)はCPU5へと送信され、CPU5において各糸ゴム2の画像データから抽出された色要素と、予め設定された色要素の閾値とが比較される。この比較結果に基づいて各糸ゴム2の色(青又は白)を検出し、検出された色が所期の色(青又は白)と一致するか否かを判定する(ステップS4)。この判定の結果、搬送中の各糸ゴム2の色(青又は白)が所期の色(青又は白)と一致する場合(ステップS4:Yes)には、CPU5は判定信号としてOK(合格)信号を出力する(ステップS5)。その後、各糸ゴム2は使い捨ておむつを構成するいずれかの部材、例えば不織布等の各種シートに接合され、おむつの所定位置に組み込まれる。
【0033】
他方、搬送中の各糸ゴム2の色(青又は白)が所期の色(青又は白)と一致しない場合(ステップS4:No)には、CPU5は、判定信号としてNG(不合格)信号を出力する(ステップS6)とともに、所期の色と異なる色の糸ゴム2、すなわち閾値を外れた糸ゴム2の搬送経路を液晶表示パネル等のインターフェース(図示せず)上に表示し(ステップS7)、必要な場合には糸ゴム2の搬送を停止する。
【0034】
以上の一連の処理によって使い捨ておむつに対する検査が完了する(図3のステップS8)。以後、製造ラインにおける使い捨ておむつに対する検査が同様の方法によって連続的に行われる。
【0035】
以上のように、本実施形態に係る検査方法及び製造方法によれば、製造ラインを搬送されている複数本の糸ゴム2を撮像し、撮像された各糸ゴム2の画像データから色要素を抽出し、この抽出された色要素と、予め設定された色要素の閾値とを比較することによって、各糸ゴム2が使い捨ておむつにおける所期の適正な位置に配置されているか否かの良否判定を正確に行うことができる。
【0036】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2を、図4ないし図8に基づいて以下に説明する。図4は太さの異なる2種の糸ゴムを示す図であり、図5は糸ゴムの伸長率と太さとの関係を示す図であり、図6は走行中の複数本の糸ゴムの検査カメラによる撮像と太さ検出ウインドウを示
す図であり、図7は本発明の実施形態2に係る検査方法において検査カメラによって撮像された糸ゴムの画像を示す図であり、図8は本実施形態2に係る検査方法の手順を示すフローチャートである。
【0037】
本実施形態においては、使い捨ておむつの製造工程において搬送される複数本(図示例では6本)の糸ゴム2の伸長率又は太さ(以下、両者を総称して単に「太さ」という。)に基づいて使い捨ておむつの良否を判定する。
【0038】
本実施形態においては、糸ゴムとして、互いに太さの異なるものが使用される。図4においては太い糸ゴム21と、それよりも繊度の小さい細い糸ゴム22の2種類が示されている。糸ゴム21,22の太さは、該糸ゴム21,22の伸長率に依存する。詳細には図5に示すように、伸長率が1倍、1.25倍、1.5倍と大きくなるしたがって糸ゴム2の太さ(外径)d1,d2,d3は、この順に小さくなる(d1>d2>d3)。したがって、搬送過程にある糸ゴム2の伸長率を調整することで、該糸ゴム2の太さをコントロールできる。このことを踏まえ、本実施形態に係る検査方法及び製造方法を図8に示すフローチャートに従って以下に説明する。
【0039】
検査が開始されると、制御手段であるCPU5(図1参照)は、所定の時間間隔(インターバル)又は各糸ゴム2が巻装されたロール(図示せず)を装置にセットした後の所定のタイミングで、撮像手段である検査カメラ3に対して撮像開始のトリガ信号を発信する(図8のステップS11)。
【0040】
CPU5からのトリガ信号を受信した検査カメラ3は、撮像を開始し(ステップS12)、照明装置6から光の照射を受ける6本の糸ゴム2からの反射光を撮像する。具体的には、図6に示す矩形の領域Rにおいて6本の糸ゴム2が撮像される。撮像によって例えば図7に示すような画像が得られる。その画像データは、図1に示す画像処理装置4へと送信されて画像処理される(ステップS13)。この画像処理によって各糸ゴム2の太さが求められる。具体的には、図7に示すように、糸ゴム2の撮像画像には、各糸ゴム2に跨る矩形の6つの太さ検出ウインドウW2が設定され、各太さ検出ウインドウW2における画像データの画素数(ピクセル数)に基づき各糸ゴム2の太さが求められる。画像処理装置4における画像データの処理に際しては、必要に応じて各種フィルター処理が実施される。
【0041】
画像処理装置4によって求められた各糸ゴム2の太さは、CPU5へと送信される。CPU5は、画像処理によって求められた各糸ゴム2の太さと、予め設定された太さの閾値とを比較し、求められた各糸ゴム2の太さが所期の太さと一致するか否かを判定する(ステップS14)。例えば、図7に示す撮像画像において、太い4本の糸ゴム2(2a)の画像の画素数(ピクセル数)が例えば10pixである場合にはOK(一致)と判定し、細い残り2本の糸ゴム2(2b)の画像の画素数(ピクセル数)が例えば7pixである場合にはOK(一致)と判定する。
【0042】
前記判定の結果、搬送中の各糸ゴム2の太さが所期の太さと一致する場合(ステップS14:Yes)には、CPU5は、判定信号としてOK(合格)信号を出力する(ステップS15)。
【0043】
他方、搬送中の各糸ゴム2の太さが所期の太さと一致しない場合(ステップS14:No)には、CPU5は、判定信号としてNG(不合格)信号を出力する(ステップS16)とともに、所期の太さと異なる太さの糸ゴム2、すなわち閾値を外れた糸ゴム2の搬送経路をインターフェース(図示せず)上に表示する(ステップS17)。更に必要に応じ、閾値の範囲を超えた糸ゴム2の搬送速度を調整する(ステップS18)。糸ゴム2の搬
送速度の調整は、駆動源であるサーボモータなどの可変速モータの回転速度を加減速させることによって行われる。具体的には、糸ゴム2の太さが所期の太さよりも太い場合には、該糸ゴム2の搬送速度を上げて、図5に示すとおり糸ゴム2を細くする。逆に糸ゴム2の太さが所期の太さよりも細い場合には、該糸ゴム2の搬送速度を下げて、図5に示すとおり糸ゴム2を太くする。
【0044】
以上の一連の処理によって使い捨ておむつに対する検査が完了する(図8のステップS19)。以後、製造ラインにおける使い捨ておむつに対する検査が同様の方法によって連続的に行われる。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、製造ラインを搬送されている複数本の糸ゴム2を撮像し、撮像された各糸ゴム2の画像データから太さを求め、求められた太さと予め設定された太さの閾値とを比較することによって、各糸ゴム2が使い捨ておむつにおける所期の適正な位置に配置されているか否かの良否判定を正確に行うことができる。
【0046】
以上の説明では、糸ゴム2の太さに基づき該糸ゴム2の配置状態を判定して使い捨ておむつの良否を検査したが、糸ゴム2の太さに代えて、図5に示す関係を用いて糸ゴム2の伸長率に基づき該糸ゴム2の配置状態を判定して使い捨ておむつの良否を検査することもできる。この場合には、糸ゴム2の太さと伸長率との関係を示す検量線を予め作成しておくことが有利である。
伸長率は弾性部材の種類によってあらかじめ設定される画素数を基に画素数が少なければ伸長率が低く、画素数が多ければ伸長率を高いと判定する。
【0047】
なお実施形態2に関し特に説明しない点については、実施形態1に関する説明が適宜適用される。
【0048】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば本発明においては、実施形態1及び実施形態2のうちのいずれか一方を選択的に行うことができ、あるいは実施形態1及び実施形態2をこの順で、又はこれと逆の順で連続的に行うこともできる。
【0049】
また前記実施形態は、使い捨ておむつのウエストギャザーを形成するために糸ゴムを配置することに係るものであったが、糸ゴムの配置はウエストギャザーの形成のためだけではなく、使い捨ておむつにおける他の部位にギャザーを形成するために行うこともできる。例えば使い捨ておむつにおける胴回りギャザー、レッグギャザー、防漏カフの形成のために糸ゴムを配置することができる。
【0050】
また前記実施形態は、本発明を特に使い捨ておむつの検査・製造に適用したものであるが、本発明は、糸ゴム等の弾性部材が使用される他の任意の吸収性物品、例えば生理用ナプキンや失禁パッドなどの検査・製造に対しても同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 検査装置
2 糸ゴム(弾性部材)
3 検査カメラ(撮像手段)
4 画像処理装置
5 CPU(制御手段)
6 照明装置
7 背景板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8