IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユニバーサル製缶株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-ボトル缶の製造方法 図1
  • 特許-ボトル缶の製造方法 図2
  • 特許-ボトル缶の製造方法 図3
  • 特許-ボトル缶の製造方法 図4
  • 特許-ボトル缶の製造方法 図5
  • 特許-ボトル缶の製造方法 図6
  • 特許-ボトル缶の製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】ボトル缶の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 1/02 20060101AFI20230412BHJP
   B65D 1/16 20060101ALI20230412BHJP
   B21D 51/26 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
B65D1/02 210
B65D1/02 213
B65D1/16
B21D51/26 X
B21D51/26 Q
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018169604
(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公開番号】P2020040712
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-06-10
(73)【特許権者】
【識別番号】305060154
【氏名又は名称】アルテミラ製缶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和
(72)【発明者】
【氏名】実末 一
(72)【発明者】
【氏名】今野 史晴
(72)【発明者】
【氏名】南馬 孝之
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0264107(US,A1)
【文献】特開2011-194474(JP,A)
【文献】特開2004-123231(JP,A)
【文献】実開昭61-077311(JP,U)
【文献】特表2018-520008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
B65D 1/16
B21D 51/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の筒胴部と、該筒胴部の上端部から缶軸方向上側に向かうに従って縮径する下側傾斜部と、該下側傾斜部の上端から前記下側傾斜部の缶軸に対する角度よりも小さい1°以上20°未満の角度で缶軸方向上側に向かうに従って縮径する上側傾斜部と、前記上側傾斜部の缶軸方向上側に設けられる口部と、を備え、前記上側傾斜部には、缶軸方向下側から缶軸方向上側に向かって延びる複数のリブが全周にわたって形成されており、さらに前記リブは缶軸に直交する横断面でV字状に形成されているボトル缶の製造方法であって、
円筒状の筒体を形成する筒体形成工程と、前記筒体を缶軸方向上側に向かうに従って縮径させることにより、前記下側傾斜部及び前記上側傾斜部からなる縮径部を形成する縮径部成形工程を備え、
前記縮径部成形工程は、前記筒体に成形面の径が異なる複数の縮径用金型を押し付けて缶軸方向に相対移動させることにより、前記下側傾斜部と、該下側傾斜部の上端部から缶軸に沿って缶軸方向上側に直線状に延びる小円筒部と、を備えた中間成形体を成形する下側傾斜部形成工程と、
前記下側傾斜部形成工程により形成された前記小円筒部を傾斜させた後、その外面に前記複数のリブを形成するためのリブ成形用金型を押し付けて相対移動させることにより、前記複数のリブを有する前記上側傾斜部を形成する上側傾斜部形成工程と、を備え、
前記上側傾斜部形成工程は、前記中間成形体に対して、加工径の異なる環状の成形面を有する複数個の縮径用金型を加工径の大きい側から押し付けて、缶軸方向に相対移動させることにより、缶軸を通る縦断面が上側に向かうに従って縮径する仮成形部を成形する仮成形部形成工程を備えていることを特徴とするボトル缶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部に金属製キャップが装着され、飲料等の内容物が充填されるボトル缶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料等の内容物が充填される容器として、ボトル形状の缶(ボトル缶)の開口部に、金属製キャップを装着して密封する容器が知られている。ボトル缶は、一般に、胴部と底部とを有する有底円筒状に形成され、その胴部の開口部側に上方へ向かうに従い漸次縮径する肩部、縮径部が設けられ、縮径部の上端に口部が設けられた構成とされている。このようなボトル缶は、金属板材(アルミニウム合金材料の板材)にカッピング工程(絞り工程)及びDI工程(絞りしごき工程、Drawing & Ironing)を施すことにより、胴部及び底部を有する有底円筒状の缶に形成され、その有底円筒状の缶の胴部に縮径加工を施すことにより肩部及び縮径部が形成される。
【0003】
このようなボトル缶として、例えば、特許文献1に記載のボトル缶や特許文献2に記載のボトル缶が知られている。これらのうち、特許文献1に記載のボトル缶は、底部と胴部と肩部と首部(縮径部)と口部とを備えており、縮径部の傾斜角βが50°~89°(缶軸方向を0°とした場合には、1°~40°)に設定されている。また、特許文献2に記載のボトル缶は、特許文献1に記載のボトル缶と同じ構成を備えており、肩部が胴部から略45°(上記缶軸方向を0°とした場合において45°)の角度で延出しており、縮径部の傾斜角が略6°に設定されている。これら特許文献1及び2に記載のボトル缶は、複数の成形金型を使用したダイネック加工により缶の胴部を逐次変形させながら、テーパ面状の滑らかな形状に成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5323757号公報
【文献】特表2017-526591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記形状のボトル缶では、肩部から首部にかけて滑らかな形状を得るためには、1回の加工量を小さくして、何回も縮径加工を施す必要がある。そして、その加工回数が増えると、製造ラインにおいて多くの成形金型を並べて配置する必要があり、その設置スペースも広く必要になる。このため、製造コストの増加を招く。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、製造工程の短縮を図ることができるとともに、意匠性に優れたボトル缶を製造できるボトル缶の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により製造されるボトル缶は、円筒状の筒胴部と、該筒胴部の上端部から缶軸方向上側に向かうに従って縮径する下側傾斜部と、該下側傾斜部の上端から前記下側傾斜部の缶軸に対する角度よりも小さい1°以上20°未満の角度で缶軸方向上側に向かうに従って縮径する上側傾斜部と、前記上側傾斜部の缶軸方向上側に設けられる口部と、を備え、前記上側傾斜部には、缶軸方向下側から缶軸方向上側に向かって延びる複数のリブが全周にわたって形成されており、さらに前記リブは缶軸に直交する横断面でV字状に形成されている。
【0008】
本発明では、上側傾斜部に缶軸方向下側から缶軸方向上側に向かって延びる複数のリブが形成されているので、ボトル缶の意匠性を向上できる。また、下側傾斜部の直上に上側傾斜部が設けられ、その上側傾斜部に複数のリブが形成されていることから、ボトル缶を把持したときに、指に凹凸が触れるので、グリップ感があり、滑り止めとなって把持し易い。加えて、上側傾斜部に複数のリブが形成されていることから、ボトル缶からグラス等内に内用液を注ぐ際に、該内用液が複数のリブの内面により攪拌された様になり、泡立ち性を向上できる。
【0009】
ここで、製造工程において、上側傾斜部を成形するには、下側傾斜部を成形した後に該下側傾斜部の上端から缶軸に沿って缶軸方向上側に直線状に延びる小円筒部を成形した後、小円筒部に複数の縮径用金型を押し付けて相対移動させることにより、上側傾斜部を形成する。この際、縮径用金型を用いた縮径回数が少ないと、ボトル缶の周方向に階段状の跡(横すじ)が残るため、さらに複数の縮径用金型を押し付けて相対移動させるリフォーム工程を実行するか、上記階段状の跡が残らないように多くの縮径用金型を用いて細かく成形する必要がある。これに対し、本発明では、小円筒部に縮径用金型を押し付けて相対移動させて該小円筒部を傾斜させた後、リブ成形用金型を押し付けて相対移動させることにより、複数のリブを形成するので、ボトル缶の周方向に上記階段状の跡が残っていても、複数のリブにより上記階段状の跡を目立たなくすることができる。従って、多くの縮径用金型を押し付けて細かく成形する場合やリフォーム工程を実行する場合に比べて、ボトル缶の製造工程を短縮できる。
【0010】
本発明のボトル缶の製造方法は、上記ボトル缶の製造方法であって、円筒状の筒体を形成する筒体形成工程と、前記筒体を缶軸方向上側に向かうに従って縮径させることにより、前記下側傾斜部及び前記上側傾斜部からなる縮径部を形成する縮径部成形工程を備え、前記縮径部成形工程は、前記筒体に成形面の径が異なる複数の縮径用金型を押し付けて缶軸方向に相対移動させることにより、前記下側傾斜部と、該下側傾斜部の上端部から缶軸に沿って缶軸方向上側に直線状に延びる小円筒部と、を備えた中間成形体を成形する下側傾斜部形成工程と、前記下側傾斜部形成工程により形成された前記小円筒部を傾斜させた後、その外面に前記複数のリブを形成するためのリブ成形用金型を押し付けて相対移動させることにより、前記複数のリブを有する前記上側傾斜部を形成する上側傾斜部形成工程と、を備え、前記上側傾斜部形成工程は、前記中間成形体に対して、加工径の異なる環状の成形面を有する複数個の縮径用金型を加工径の大きい側から押し付けて、缶軸方向に相対移動させることにより、缶軸を通る縦断面が上側に向かうに従って縮径する仮成形部を成形する仮成形部形成工程を備えている。
【0011】
本発明では、小円筒部を成形した後、該小円筒部を傾斜させてから上側傾斜部を形成する際に、下側傾斜部と同様の加工で複数のリブを成形リブ成形用金型できるので、製造工程を短縮でき、かつ、意匠性に優れたボトル缶を製造できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、製造工程の短縮を図ることができるとともに、意匠性に優れたボトル缶を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1実施形態に係るボトル缶の製造方法により製造されるボトル缶の正面図である。
図2】上記第1実施形態のボトル缶の製造方法のうち、カップを形成して筒体を形成するまでの工程を順に示す模式図であり、右半分については缶軸を通る縦断面にした正面図である。
図3】上記第1実施形態における下側傾斜部形成工程後の中間成形体を示す正面図である。
図4】上記第1実施形態における上側傾斜部形成工程中の中間成形体を示す正面図である。
図5】上記第1実施形態における傾斜部に複数のリブを形成するためのリブ成形用金型を示す断面図である
図6】上記第1実施形態における上側傾斜部形成工程後の中間成形体を示す正面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るボトル缶を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1実施形態に係るボトル缶の製造方法において製造されるボトル缶1の正面図である。このボトル缶1は、開口端部にキャップ(図示省略)が装着されることにより、飲料等を収容する容器として用いられる。図2図6は、本実施形態のボトル缶の製造方法の各工程を示す説明図である。これらのうち、図2はカップを成形して筒体41を形成するまでの工程を順に示す模式図、図4~6は縮径部成形工程を説明する図である。
【0016】
ボトル缶1は、アルミニウム又はアルミニウム合金等の薄板金属からなり、図1に示すように、円筒状をなす胴部(ウォール)10とドーム状をなす底部(ボトム)20とを備える有底円筒状に形成されている。図1に示すように、胴部10及び底部20は互いに同軸に配置されており、本実施形態において、これらの共通軸を缶軸Oと称して説明を行う。
【0017】
また、缶軸Oに沿う方向(缶軸O方向)のうち、胴部10の開口端部10aから底部20側へ向かう方向を下方、底部20から開口端部10a側へ向かう方向を上方とし、以下の説明においては、図1図7に示す向きと同様に上下方向を定めるものとする。また、缶軸Oに直交する方向を径方向といい、径方向のうち、缶軸Oに接近する向きを径方向の内側(内方)、缶軸Oから離間する向きを径方向の外側(外方)とする。また、缶軸O回りに周回する方向を周方向とする。
【0018】
胴部10は、図1に示されるように、底部20側において円筒状に形成された筒胴部11と、筒胴部11の上端部から缶軸O方向上側(開口端部10a側)に向かうに従って縮径する下側傾斜部12と、下側傾斜部12の上端から、下側傾斜部12の缶軸Oに対する角度よりも小さい角度で缶軸O方向上側に向かうに従って縮径する上側傾斜部14と、上側傾斜部14の缶軸O方向上側に設けられる口部16と、を備えている。なお、下側傾斜部12及び上側傾斜部14により本発明の縮径部が構成されている。
【0019】
図1に示すように、下側傾斜部12の缶軸Oに対する傾斜角度θ1は、20°以上60°以下に設定されており、上側傾斜部14の缶軸Oに対する傾斜角度θ2は、1°以上20°未満に設定されている。すなわち、下側傾斜部12の傾斜角度θ1は、上側傾斜部14の傾斜角度θ2よりも大きい角度に設定されており、上側傾斜部14が下側傾斜部12よりも缶軸O方向に立った形状に形成されている。なお、筒胴部11、下側傾斜部12、上側傾斜部14は、それぞれ胴部10の周方向全周にわたって延びる環状をなしている。
【0020】
また、これら筒胴部11と、下側傾斜部12と、上側傾斜部14とは、互いに滑らかに連なっており、互いの間に段差を形成することなく滑らかに接続されている。具体的には、筒胴部11と下側傾斜部12との間には、径方向外側かつ上側へ向けて凸となる凸曲面により構成される第1接続部12aが設けられ、この第1接続部12aにより筒胴部11と下側傾斜部12の下端部が接続されている。また、下側傾斜部12と上側傾斜部14との間には、径方向外側かつ下側に向けて凹となる凹曲面により構成される第2接続部12bが設けられ、この第2接続部12bにより下側傾斜部12の上端部と上側傾斜部14の下端部とが接続されている。
【0021】
また、胴部10の上部に配置された口部16は、上側傾斜部14の缶軸O方向上側に位置する凹部の上端で一旦拡径された大径部161と、大径部161の上端に形成されたねじ部162と、ねじ部162の上端の開口端部10aに形成されたカール部163とを有している。このように、口部16は、開口端部10aにより外部に開口しており、飲料等の内容物は口部16を通じてボトル缶1の内部に充填される。この口部16にキャップ(図示省略)を装着することにより、ボトル缶1の内部に充填された内容物が密封されるようになっている。
【0022】
これらのうち、上側傾斜部14には、缶軸O方向下側から缶軸O方向上側に向かって缶軸O方向に沿って直線状に延びる複数のリブ15を備えている。各リブ15の間は、溝部152となる。これら複数のリブ15のそれぞれは、径方向外側に向かって突出する部位であり、例えば、複数のリブ15は、上側傾斜部14の全周にわたって8個以上30個以下、好ましくは12個以上24個以下の数の範囲で形成されているとよい。例えば、図1に示す例では16個形成されている。このリブ15の数が少ないと、成形時にしわが生じ易く、多過ぎると加工しにくくなる。このリブ15は、缶軸Oに直交する横断面でV字状となるように形成されており、その底部は、缶軸O方向の下側から上側に向けて相互間隔が漸次小さくなるように形成される。
【0023】
詳述すると、複数のリブ15において、缶軸O方向下側の幅L5は、2mm~16mm、缶軸O方向上側の幅L6は2mm~12mmとされ、その高さ(溝部152の深さ)は、0.3mm以上6mm以下、好ましくは0.5mm以上4mm以下に設定されている。なお、これら複数のリブ15は、リブ成形用金型を複数回押し付けて移動させることにより成形されることから、各リブ15が下側傾斜部12の上端と上側傾斜部14の缶軸O方向上側に位置する凹部の下端とを結ぶテーパ面から径方向外側に突出しているわけではなく、溝部152が径方向内側に凹んでいることで、各リブ15の最も径方向外側に位置する部位151が径方向外側に突出しているように錯覚させるものである。このような複数のリブ15が形成されているので、ボトル缶1を把持したときに、指に凹凸が触れるので、グリップ感があり、滑り止めとなって把持し易くなるとともに、ボトル缶1の意匠性を向上できる。
【0024】
このように形成されるボトル缶1の底部20の底面からカール部163の上面までの高さ(ボトル缶1の高さ)L0は、110mm~240mmに設定されている。また、下側傾斜部12の缶軸O方向下側の端部から上側傾斜部14の缶軸O方向上側の端部までの長さL1は、35mm~100mmに設定され、より好ましくは40mm~70mmに設定されるとよい。また、下側傾斜部12の缶軸O方向下側の端部から缶軸O方向上側の端部までの距離、すなわち、下側傾斜部12の缶軸Oに沿う方向の長さL2は、10mm~30mmに設定され、より好ましくは15mm~25mmに設定されるとよい。また、上側傾斜部14の缶軸O方向下側の端部から缶軸O方向上側の端部、すなわち、上側傾斜部14の缶軸O方向に沿う距離L4は10mm~90mmに設定され、より好ましくは15mm~50mmに設定されるとよい。本実施形態では、複数のリブ15を備えた上側傾斜部14の距離を上記範囲とすることで、ボトル缶1のグリップ感をより高めている。
【0025】
このように構成されるボトル缶1のその他の諸寸法について一例を挙げると、ボトル缶1の缶軸Oを通る縦断面視において、製品となる筒胴部11の外径が140mm~220mm、上側傾斜部14の上端の外径(上側傾斜部14と口部16との接点の外径)は例えば60mm~120mmの範囲内とされる。ただし、上記寸法は、上記数値範囲に限られるものではない。
【0026】
このような下側傾斜部12及び複数のリブ15を有する上側傾斜部14を備えるボトル缶1は、以下に説明する製造方法により製造される。このボトル缶1の製造方法は、筒体形成工程、縮径部成形工程、及び口部形成工程を備える。
【0027】
[筒体形成工程]
まず、アルミニウム合金等のアルミニウム板材を打ち抜いて絞り加工することにより、図2(a)に示すように比較的大径で浅いカップ40を成形した後、このカップ40に再度の絞り加工及びしごき加工(DI加工)を加えて、図2(b)に示すように所定高さの有底円筒状の筒体41を成形し、その上端をトリミングにより切り揃える。このDI加工により、筒体41の底部は最終のボトル缶1としての底部20の形状に成形される。また、板厚は、プレス成形前の元板厚が0.250mm~0.500mmであり、図2(b)に示す筒体41の底部20側の板厚(ウォール厚)t1が0.100mm~0.250mmに形成され、開口端部側の板厚(フランジ厚)t2が0.200mm~0.400mmに形成される。
【0028】
[縮径部成形工程]
なお、縮径部成形工程は、下側傾斜部12及び缶軸O方向上側に缶軸Oに沿って直線状に延びる小円筒部140を成形する下側傾斜部形成工程と、複数のリブ15を有する上側傾斜部14を形成する上側傾斜部形成工程と、を備える。
【0029】
[下側傾斜部形成工程]
下側傾斜部形成工程では、図2(b)に示す状態まで形成した筒体41に、図2(b)に二点鎖線で示した加工径の異なる環状の成形面を有する複数個の縮径用金型70(ダイネッキング型)を加工径の大きい順で押し付けて、缶軸O方向に相対移動させることにより、缶軸Oに対する角度が20°以上60°以下であり、缶軸Oを通る縦断面が直線状の下側傾斜部12を成形し、下側傾斜部12の上端部から缶軸Oに沿って缶軸O方向上側に直線状に延びる小円筒部140を成形する。なお、図3に示した形状が、下側傾斜部12、及び小円筒部140を形成した中間成形体42である。
【0030】
[上側傾斜部形成工程]
上側傾斜部形成工程は、小円筒部140を缶軸O方向上側に向けて漸次縮径するテーパ面状に成形する仮成形部形成工程と、仮成形部形成工程により形成された仮成形部を必要に応じてリフォームして滑らかに傾斜させるリフォーム工程と、その外面にリブ成形用金型複数のリブを形成するためのリブ成形用金型を押し付けて相対移動させることにより、複数のリブを形成するリブ成形工程と、を備える。
【0031】
(仮成形部形成工程)
仮成形部形成工程では、図3に示した形状の中間成形体42に対して、加工径の異なる環状の成形面を有する複数個(例えば、4個)の縮径用金型を加工径の大きい側から押し付けて、缶軸O方向に相対移動させることにより、缶軸Oを通る縦断面が上側に向かうに従って縮径する仮成形部を成形する。この工程においては、仮成形部は、缶軸O方向上側に向けて階段状に縮径するものであってもよい。また、仮成形部形成工程では、仮成形部の上端部から缶軸Oに沿う上側に直線状に延び、かつ、小円筒部140より径の小さい口部用円筒部16aも併せて形成する。
【0032】
(リフォーム工程)
リフォーム工程では、仮成形部の外面に加工径の異なる環状の成形面を有する複数個(例えば、3個)の縮径用金型を押し付けて相対移動させることにより、仮成形部を滑らかにリフォームして、缶軸Oに対する角度が1°以上20°未満であり、缶軸Oを通る縦断面が直線状の傾斜部14aを成形する。
【0033】
(リブ成形工程)
リフォーム工程を経て、図4に示す状態となった中間成形体42の傾斜部14aの外面に対して、図5に示すリブ成形用金型60を用いて、複数のリブ15を形成する。このリブ成形用金型60は、全体として筒状に形成され、その内周部の先端部が、先端方向に向かうにしたがって漸次拡径するテーパ状に形成されていることにより、軸方向の先端部にテーパ状成形部61、基端部に円筒状案内部62が形成されている。そして、そのテーパ状成形部61に、その傾斜方向に沿って延びる凸条が周方向に相互間隔をおいて等間隔で複数形成されている。そして、図5に示すように、このリブ成形用金型60の軸C2と中間成形体42の缶軸Oとを一致させた状態で、リブ成形用金型60のテーパ状成形部61を中間成形体42の開口端に対向配置し、これらを缶軸O方向に接近させることにより、傾斜部14aの下端部から上端部までを成形するように缶軸O方向に押圧する。これにより、傾斜部14aの全周にわたって複数のリブ15が形成され、上側傾斜部14となる。
【0034】
[口部形成工程]
そして、図6に示す状態の中間成形体42の口部用円筒部16aに対して、図1に示すように、上側傾斜部14の上端よりも大径の大径部161を形成し、この大径部161を形成した後にキャップのねじ部(図示省略)が螺合するねじ部162を形成する。そして、最後に、口部用円筒部16aの上端部に対してカーリング加工を施してカール部163を形成し、口部16を有するボトル缶1を製造する。
【0035】
なお、このようにして製造されたボトル缶1の内部には、飲料等の内容物が充填され、口部16にキャップ(図示省略)が巻き締められ、内部が密封された容器が製造される。
【0036】
以上説明した本実施形態に係るボトル缶1は、上側傾斜部14に缶軸O方向下側から缶軸O方向上側に向かって延びる複数のリブ15が形成されているので、ボトル缶1の意匠性を向上できる。また、下側傾斜部12の直上に上側傾斜部14が設けられ、その上側傾斜部14に複数のリブ15が形成されていることから、ボトル缶1を把持したときに、指に凹凸が触れるので、グリップ感があり、滑り止めとなって把持し易い。加えて、上側傾斜部14に複数のリブ15が形成されていることから、ボトル缶1からグラス等内に内用液を注ぐ際に、該内用液が複数のリブ15の内面により攪拌された様になり、泡立ち性を向上できる。
【0037】
また、小円筒部140の上側に縮径用金型を押し付けて相対移動させて該小円筒部140を傾斜させた後、リブ成形用金型60を押し付けて相対移動させることにより、複数のリブ15を形成するので、ボトル缶1の周方向に仮成形部形成工程により生じた階段状の跡が残っていても、複数のリブ15により上記階段状の跡を目立たなくすることができる。従って、多くの縮径用金型を押し付けて細かく成形する場合やリフォーム工程を実行する場合に比べて、ボトル缶1の製造工程を短縮できる。
【0038】
また、本実施形態のボトル缶1の製造方法では、小円筒部140を成形した後、上側傾斜部14を形成する際に、下側傾斜部12と同様の加工、すなわち、従来のボトル缶における縮径部を形成するダイネッキング加工と同様の加工方法で複数のリブ15を成形できるので、製造工程を短縮でき、かつ、意匠性に優れたボトル缶1を製造できる。
【0039】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図面を用いて説明する。図7は、第2実施形態に係るボトル缶1Aを示す正面図である。このボトル缶1Aは、上側傾斜部14Aの複数のリブ15Aが上記第1実施形態の複数のリブ15と異なっている。具体的には、第1実施形態の複数のリブ15のそれぞれが缶軸O方向下側から上側に向けて缶軸O方向に沿って直線状に延びているのに対し、複数のリブ15Aのそれぞれは、図7に示すように缶軸O方向下側から上側に向けて、上側傾斜部14Aの缶軸Oを通る縦断面において、該上側傾斜部14Aの上端(缶軸O方向上側に位置する凹部の下端部)と下端(下側傾斜部12の上端)とを結ぶ線(上側傾斜部14Aに概説する円錐面の母線)に対して1°以上65°以下の範囲で傾斜して延びている。
【0040】
また、これら各リブ15Aは、上記リブ15と同様に、各リブ15A間は、溝部152Aとなっている。これら複数のリブ15Aは、上側傾斜部14Aの全周にわたって8個以上30個以下、好ましくは12個以上24個以下の数の範囲で形成されているとよく、例えば図7に示す例では15個形成されている。なお、本実施形態の複数のリブ15Aは、上述した第1実施形態の複数のリブ15と同様に傾斜部14aに対してリブ成形金型を押し付けて形成されるが、各リブ15Aが上述したように傾斜しているため、傾斜部14aの缶軸Oに対する傾斜角度は、10°以上50°以下であることが好ましい。
【0041】
本実施形態では、複数のリブ15Aが缶軸O方向下側から上側に向けて缶軸Oに対して傾斜して延びているので、ボトル缶1Aの美観をさらに高めることができるとともに、ボトル缶1Aのグリップ感をより高めることができる。
【0042】
なお、本発明は上記各実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、ボトル缶として、予め有底円筒状の筒体41を形成して、その開口端部を成形したが、筒体は底部を有していないものも含むものとし、縮径部を成形した後に、筒体の胴部に、別に形成した底部を巻き締めるようにしてもよい。
【0043】
上記各実施形態では、上側傾斜部形成工程は、仮成形部形成工程と、リフォーム工程と、リブ成形工程と、を備えることとしたが、これに限らない。例えば、上側傾斜部形成工程では、仮成形部形成工程後にリフォーム工程を行うことなく、リブ成形工程を実行することとしてもよい。また、上側傾斜部形成工程は、複数の縮径用金型を押し付けて小円筒部の上記部位を細かく成形して滑らかな傾斜部14aを成形した後、仮成形部形成工程を経ることなくリブ成形工程を実行することとしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 1A ボトル缶
10 胴部
10a 開口端部
11 筒胴部
12 下側傾斜部
12a 第1接続部
12b 第2接続部
14 14A 上側傾斜部
14a 傾斜部
15 15A リブ
151 部位
152 溝部
16 口部
16a 口部用円筒部
20 底部
40 カップ
41 筒体
42 中間成形体(筒体)
60 リブ成形用金型
70 縮径用金型
140 小円筒部
161 大径部
162 ねじ部
163 カール部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7