(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】油中水型乳化化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20230412BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230412BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20230412BHJP
A61K 8/891 20060101ALI20230412BHJP
A61K 8/29 20060101ALI20230412BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/06
A61K8/27
A61K8/891
A61K8/29
A61K8/894
(21)【出願番号】P 2018172563
(22)【出願日】2018-09-14
【審査請求日】2021-08-25
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栃岡 沙希
(72)【発明者】
【氏名】石川 和宏
(72)【発明者】
【氏名】永井 裕子
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-116701(JP,A)
【文献】特開2008-208045(JP,A)
【文献】特開平08-126833(JP,A)
【文献】特開2016-153437(JP,A)
【文献】特開平09-202722(JP,A)
【文献】特開2014-172837(JP,A)
【文献】特開2020-045293(JP,A)
【文献】特開2019-099468(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0269374(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/90
A61Q 1/00- 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F):
(A)少なくともアルキルアルコキシシランで表面処理された着色顔料 3~30質量%、
(B)揮発性油 5~60質量%、
(C)水 0.1~60質量%、
(D)第四級アンモニウムイオンで置換されたカチオン変性粘土鉱物 0.01~5質量%、
(E)非イオン界面活性剤 0.8質量%以下、
(F)微粒子酸化亜鉛 0.1~20質量%
を含有
し、成分(D)に対する成分(A)の質量割合(A)/(D)が、2~20である油中水型乳化化粧料。
【請求項2】
成分(F)に対する成分(D)の質量割合(D)/(F)が、0.01~0.8である請求項1記載の油中水型乳化化粧料。
【請求項3】
成分(B)中における直鎖状ジメチルポリシロキサンの質量割合(直鎖状ジメチルポリシロキサン/(B))が、0.5~1である請求項
1又は2記載の油中水型乳化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油中水型乳化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油中水型乳化化粧料においては、配合されている界面活性剤の乳化作用により、水性成分と油性成分が安定に混合されている。しかし、界面活性剤はべたつきの強い物質であるため、良好な使用感を得るには、この配合量を減らすことが望ましい。
界面活性剤を用いず、粉末を界面に吸着させることにより製造されるエマルジョンは、ピッカリングエマルジョンとして知られている。従来、このようなピッカリングエマルジョンを利用した化粧料が検討されている。
例えば、特許文献1には、水に分散しない粉末成分1~40質量%、親水性界面活性剤0.001~1質量%、油相成分及び水相成分を含有する油中水型乳化組成物が、乳化安定性に優れ、べたつき感が少ないことが記載されている。また、引用文献2には、(A)フッ素系油剤、(B)フッ素化合物を含む化合物により被覆された粉体、(C)成分(A)と相溶しない油剤、(D)有機変性粘土鉱物、及び(E)水相成分を特定の割合で含み、フッ素系油剤と相溶しない油剤を含む油相中に、フッ素系油剤を含む相と水相とが分散されてなる(F+W)/O型エマルジョンが、界面活性剤の使用を必須とすることなく、乳化安定性に優れ、化粧効果の持続性が高く、皮膚に塗布する際にみずみずしい使用感を与えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-208045号公報
【文献】特開2017-190300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなピッカリングエマルジョンの油中水型乳化化粧料は、界面活性剤の含有量が少ないので、塗布後の肌のべたつきが低減される。
しかしながら、本発明者は、指やスポンジで塗布するときに、化粧料が肌に均一に付着しづらくムラ付きし、密着感に劣り、明るい仕上がりが得られないという課題を見出した。
また、化粧料がキメのきわにつきやすく、キメが目立つという課題もあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、非イオン界面活性剤の含有量を0.8質量%以下に抑え、疎水化処理された着色顔料、揮発性油、カチオン変性粘土鉱物及び微粒子酸化亜鉛を特定の割合で組合わせ、ピッカリング乳化で得られた油中水型乳化化粧料が、塗布時の肌のべたつきが低減され、ムラづきせず均一に塗布することができ、密着感があり、塗布後は明るい仕上がりで、肌のキメが目立ちにくいことを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F):
(A)疎水化処理された着色顔料 3~30質量%、
(B)揮発性油 5~60質量%、
(C)水 0.1~60質量%、
(D)第四級アンモニウムイオンで置換されたカチオン変性粘土鉱物 0.01~5質量%、
(E)非イオン界面活性剤 0.8質量%以下、
(F)微粒子酸化亜鉛 0.1~20質量%
を含有する油中水型乳化化粧料に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の油中水型乳化化粧料は、塗布時の肌のべたつきが低減され、ムラづきせず均一に塗布することができ、密着感があり、明るい仕上がりを得ることができる。また、塗布後の肌のキメが目立ちにくいものである。
塗布時のべたつきとは、指またはスポンジ等に油中水型乳化化粧料を取り、肌に塗布した時に、指またはスポンジ等が肌に貼り付く感じがあり、伸びが重くなることを示し、密着感とは、塗布後の肌が、粉体が浮き上がって見えず、見た目で滑らかに感じられることを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明で用いる成分(A)は、疎水化処理された着色顔料である。
着色顔料としては、通常の化粧料に用いられるもので、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アルミニウム、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、紺青、群青、酸化クロム、水酸化クロム等の金属酸化物、マンガンバイオレット、チタン酸コバルト等の金属錯体、更にカーボンブラック等の無機顔料;タール系色素、レーキ顔料等の有機顔料、カルミン等の天然色素などが挙げられる。ただし、後に記載する成分(F)の微粒子酸化亜鉛は含まれない。
着色顔料としては、肌をきれいなメイクアップ効果で仕上げる観点から、酸化チタン、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラ、酸化亜鉛から選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのが好ましく、酸化チタン、黄酸化鉄、黒酸化鉄、ベンガラから選ばれる少なくとも1種又は2種以上を含むのがさらに好ましい。
【0009】
これらの着色顔料の疎水化処理としては、シリコーン処理、フッ素処理、脂肪酸処理、N-アシルアミノ酸処理等が挙げられる。シリコーン処理としては、メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、ジメチルポリシロキサン処理、アルキルアルコキシシラン処理等が挙げられ、フッ素処理としては、パーフルオロアルキルリン酸エステル処理、パーフルオロアルキルアルコキシシラン処理等が挙げられ、脂肪酸処理としては、ステアリン酸処理、ミリスチン酸処理等が挙げられ、N-アシルアミノ酸処理としては、ラウロイルリジン処理、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa処理、ステアロイルグルタミン酸2Na処理、ラウロイルアスパラギン酸Na処理等が挙げられる。
疎水化処理としては、塗布後の肌のムラづき、キメの目立ちを抑制し、密着感を向上させ、安定したピッカリングエマルジョンをつくる観点から、シリコーン処理、フッ素処理から選ばれる1種または2種以上が好ましく、メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、ジメチルポリシロキサン処理、アルキルアルコキシシラン処理、パーフルオロアルキルアルコキシシラン処理から選ばれる1種または2種以上がより好ましく、アルキルアルコキシシラン処理、パーフルオロアルキルアルコキシシラン処理から選ばれる1種または2種以上がさらに好ましく、少なくともアルキルアルコキシシラン処理を含むものがよりさらに好ましい。
アルキルアルコキシシランとしては、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、カプリリルトリメトキシシラン、カプリリルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン等が挙げられ、塗布後の肌のムラづき、キメの目立ちを抑制し、密着感を向上させ、安定したピッカリングエマルジョンをつくる観点から、カプリリルトリエトキシシランが好ましい。
【0010】
着色顔料を疎水化処理するには、通常の方法により、乾式処理、湿式処理等を行えばよい。
処理量は、着色顔料の質量に対して、0.1~20質量%であるのが好ましく、0.5~10質量%がより好ましく、1~7質量%がさらに好ましい。
なお、成分(A)の含有量は、疎水化処理した剤を含めての質量を意味する。
【0011】
成分(A)の着色顔料は、メイクアップ効果を付与するだけでなく、安定したピッカリングエマルジョンをつくる点から、体積平均粒子径が0.01~50μmであるのが好ましく、0.02~20μmがより好ましく、0.03~10μmがさらに好ましい。
ここで、体積平均粒子径は、レーザー回折/散乱法による粒度分布測定機によって、測定される。具体的には、エタノールを分散媒として、レーザー回折散乱式粒度分布測定器(セイシン企業社製、LMS-350)で測定された値である。
【0012】
成分(A)は、1種又は2種以上を用いることができ、塗布時の肌のべたつき、塗布後の肌のムラづきを抑制し、密着感を向上させる観点から、含有量は、全組成中に3~30質量%であり、3.5~25質量%が好ましく、4~20質量%がより好ましく、4.5~10質量%がさらに好ましい。
【0013】
成分(B)の揮発性油において、揮発性とは、35~87℃の引火点を有するものである。
揮発性油としては、揮発性シリコーン油、揮発性炭化水素油が挙げられる。
揮発性シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン(1cs)、ジメチルポリシロキサン(1.5cs)、ジメチルポリシロキサン(2cs)等の直鎖状ジメチルポリシロキサン;メチルトリメチコン、トリス(トリメチルシリル)メチルシラン、テトラキス(トリメチルシリル)シラン等の分岐状シロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の環状ジメチルシロキサンなどが挙げられる。
これらのうち、直鎖状ジメチルポリシロキサン、環状ジメチルポリシロキサンから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、油中水型のピッカリングエマルジョンの界面に着色顔料を配列させ、安定したピッカリングエマルジョンをつくる観点から、直鎖状ジメチルポリシロキサンを含むのがより好ましい。
【0014】
揮発性炭化水素油としては、例えば、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン等のパラフィン系炭化水素油;イソデカン、イソドデカン、水添ポリイソブテン等のイソパラフィン系炭化水素油;シクロデカン、シクロドデカン等の環状パラフィン炭化水素油が挙げられる。これらのうち、炭素数8~16の炭化水素油から選ばれる1種又は2種以上が好ましく、炭素数10~16の炭化水素油から選ばれる1種又は2種以上がより好ましく、炭素数12の炭化水素油がさらに好ましい。
【0015】
成分(B)の揮発性油としては、塗布時の肌のべたつき、塗布後の肌のムラづきを抑制し、密着感を向上させる観点から、揮発性シリコーン油を含むのが好ましく、直鎖状ジメチルポリシロキサンを含むことがより好ましい。
成分(B)中における直鎖状ジメチルポリシロキサンの質量割合(直鎖状ジメチルポリシロキサン/(B))は、塗布時の肌のべたつき、塗布後の肌のムラづきを抑制し、密着感を向上させる観点から、0.5~1が好ましく、0.65~0.98がより好ましく、0.75~0.95がさらに好ましい。
【0016】
成分(B)は、1種又は2種以上を用いることができ、塗布時の肌のべたつき、塗布後の肌のムラづき、キメの目立ちを抑制し、密着感、明るい仕上がりを向上させる観点から、含有量は、全組成中に5~60質量%であり、10~50質量%が好ましく、15~40質量%がより好ましく、20~30質量%がさらに好ましい。
【0017】
本発明において、成分(C)の水の含有量は、塗布時の肌のべたつき、塗布後の肌のムラづき、キメの目立ちを抑制し、密着感、明るい仕上がりを向上させる観点から、全組成中に0.1~60質量%であり、5~55質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、35~45質量%がさらに好ましい。
【0018】
本発明において、成分(B)に対する成分(C)の質量割合(C)/(B)は、塗布時の肌のべたつき、塗布後の肌のムラづき、キメの目立ちを抑制し、密着感、明るい仕上がりを向上させる観点から、0.1~5が好ましく、0.3~4がより好ましく、0.7~2.5がさらに好ましく、1.46~1.9がよりさらに好ましい。
【0019】
成分(D)の第四級アンモニウムイオンで置換されたカチオン変性粘土鉱物は、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されないが、ベントナイト、ラポナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム等の層状粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理して、層状粘土鉱物の層間のナトリウムイオンが、第四級アンモニウムイオンで置換されたカチオン変性粘土鉱物が好ましい。
【0020】
ここで層状粘土鉱物としては、例えばスメクタイド属に属する層状ケイ酸塩鉱物で一般に下記式(1):
(X,Y)2-3(Si,Al)4O10(OH)2Z1/3・nH2O (1)
〔式(1)中、XはAl、Fe(III)、Mn(III)又はCr(III)を示し;YはMg、Fe(II)、Ni、Zn、Li又はMn(II)を示し;ZはK、Na、1/2Ca又は1/2Mgを示す〕
で表される三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウム等の粘土鉱物が好ましいものとして挙げられる。
上記層状粘土鉱物を処理する第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤は、
下記式(2):
【0021】
【0022】
〔式(2)中、R1は炭素原子数10~22のアルキル基又はベンジル基を示し;R2はメチル基又は炭素原子数10~22のアルキル基を示し;R3及びR4はそれぞれ独立に、炭素原子数1~3のアルキル基又はヒドロキシアルキル基を示し;Xはハロゲン原子又はメチルサルフェート残基を示す〕
で表される化合物である。
【0023】
具体的には、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、セチルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジメチルエチルアンモニウムクロリド、ミリスチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、セチルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジエチルメチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルミリスチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルベヘニルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルメチルエチルステアリルアンモニウムクロリド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジベヘニルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、および上記各化合物のクロリドに代えてブロミド化合物としたもの等、さらにジパルミチルプロピルエチルアンモニウムメチルサルフェート等が挙げられる。
なかでも、塗布後の肌のムラづき、キメの目立ちを抑制し、密着感、明るい仕上がりを向上させる観点から、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリドから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ジメチルジステアリルアンモニウムクロリドがより好ましい。
【0024】
層状粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤で処理して得られるカチオン変性粘土鉱物としては、塗布後の肌のムラづき、キメの目立ちを抑制し、密着感、明るい仕上がりを向上させる観点から、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト、ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライトから選ばれる1種又は2種以上が好ましく、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライトがより好ましい。また、市販品としては、ベントン38、ベントン38VCG、ベントン27(以上、エレメンティスジャパン社製)等が挙げられる。
【0025】
成分(D)のカチオン変性粘土鉱物は、作業性向上の点、油の増粘効果に優れる点、塗布後の肌のムラづき、キメの目立ちを抑制し、密着感、明るい仕上がりを向上させる観点から、溶媒によって希釈された分散液として用いるのが好ましい。具体的には、カチオン変性粘土鉱物を予め溶媒に分散させたプレミックス組成物を用いることが好ましい。溶媒としては、カチオン変性粘土鉱物によって増粘可能であれば制限されないが、作業性向上の点から、成分(B)の揮発性油に分散させてプレミックス組成物として使用することが好ましい。
【0026】
成分(B)の揮発性油を分散液とするプレミックス組成物中において、成分(D)のカチオン変性粘土鉱物の含有量は、作業性向上の点、油の増粘効果、塗布後の肌のムラづき、キメの目立ちを抑制し、密着感、明るい仕上がりを向上させる観点から、6~20質量%が好ましく、8~18質量%がより好ましく、10~16質量%がさらに好ましい。
プレミックス組成物には、成分(B)に加え、さらに、炭酸プロピレン、エタノール及び水から選ばれる1種以上を加えることで、プレミックス組成物中の(D)カチオン変性粘土鉱物の層間の剥離を促進し、作業性をより向上させることができる。
プレミックス組成物としては、ベントンゲルEUGV、ベントンゲルMIOV、ベントンゲル VS-5 PCV(以上、エレメンティスジャパン社製)等の市販品を用いることができる。
【0027】
成分(D)は、1種又は2種以上を用いることができ、塗布後の肌のムラづき、キメの目立ちを抑制し、密着感、明るい仕上がりを向上させる観点から、含有量は、全組成中に0.01~5質量%であり、0.05~3質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましく、0.7~1.3質量%がさらに好ましい。
【0028】
本発明において、成分(D)に対する成分(A)の質量割合(A)/(D)は、塗布時の肌のべたつき、塗布後の肌のムラづき、キメの目立ちを抑制し、密着感、明るい仕上がりを向上させる観点から、1~40が好ましく、2~20がより好ましく、4.2~12.8がさらに好ましく、5.2~9.4がよりさらに好ましい。
【0029】
成分(E)の非イオン界面活性剤としては、通常の化粧料に用いられるものであれば制限されず、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンフィトスタノールエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロースエーテル、ポリオキシエチレンコレスタノールエーテル、ポリオキシエチレンコレステリルエーテル、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリオキシアルキレン・アルキル共変性シリコーン、ポリオキシアルキレン・フルオロアルキル共変性シリコーン等が挙げられる。
【0030】
これらのうち、塗布時のべたつきを抑制し、油中水型のピッカリングエマルジョンの形成を阻害しない点から、アルキルグリセリルエーテル変性シリコーン、ポリオキシアルキレン変性シリコーンを1種又は2種以上含むことが好ましく、ポリオキシアルキレン変性シリコーンを含むことがより好ましい。
ポリオキシアルキレン変性シリコーンとしては、例えば、東レ・ダウコーニング社製のSH3771M、SH3772M、SH3773M、SH3775M、SH3749、DC5200や、信越化学工業社製のKF-6011、KF-6012、KF-6013、KF-6015、KF-6016、KF6017、KF-6004等の市販品を用いることができる。
【0031】
非イオン界面活性剤は、成分(A)、(B)、(C)、(D)、(F)のピッカリングエマルジョンの形成を阻害しない観点から、HLB値が1以上、7以下であるのが好ましく、HLB値が2以上、6以下がより好ましい。
【0032】
ここで、HLB(親水性-親油性のバランス〈Hydrophilic-Lypophilic Balance〉)は、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものであり、非イオン界面活性剤については、グリフィン(Griffin)の式により求められるものである。
2種以上の非イオン界面活性剤から構成される混合界面活性剤のHLBは、次のようにして求められる。混合界面活性剤のHLBは、各非イオン界面活性剤のHLB値をその配合比率に基づいて相加算平均したものである。
【0033】
混合HLB=Σ(HLBx×Wx)/ΣWx
HLBxは、非イオン界面活性剤XのHLB値を示す。
Wxは、HLBxの値を有する非イオン界面活性剤Xの重量(g)を示す。
【0034】
成分(E)の非イオン界面活性剤は、1種又は2種以上を用いることができ、塗布時のべたつきを抑制する観点から、含有量は、全組成中に0.8質量%以下であり、0.6質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.3質量%以下がさらに好ましく、実質的に含有しないことがよりさらに好ましい。また、全組成中に0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましい。
【0035】
成分(F)の微粒子酸化亜鉛は、通常の化粧料に用いられるもので、塗布後の肌のムラづき、キメの目立ちを抑制し、密着感、明るい仕上がりを向上させる観点から、比表面積10~100m2/gであるのが好ましく、比表面積15~95m2/gがより好ましい。
なお、本発明において、比表面積とは、単位質量当たりの表面積のことをいい、本発明では、BET法(N2)により得られた比表面積を意味する。
比表面積は、80℃で15時間減圧乾燥させたサンプルについて、測定サンプル約0.1gを測定セルに小数点以下4桁まで精量し、比表面積の測定直前に120℃の雰囲気下で10分間乾燥した後、比表面積測定装置(1点式BET比表面積測定装置 フローソーブIII 2305、島津製作所製)を用いて窒素吸着法(BET法)により測定する。
【0036】
また、微粒子酸化亜鉛は、塗布後の肌のムラづき、キメの目立ちを抑制し、密着感、明るい仕上がりを向上させる観点から、平均粒子径は、5~50nmであるのが好ましく、10~40nmがより好ましい。
平均粒子径は、透過電子顕微鏡写真から、粒子の長軸と短軸の相加平均として求められる値である。
成分(F)の微粒子酸化亜鉛は、そのまま用いることができるほか、必要に応じて、成分(A)と同様に、疎水化処理したものを用いることもできる。
【0037】
成分(F)は、1種又は2種以上を用いることができ、塗布時の肌のべたつき、塗布後の肌のムラづき、キメの目立ちを抑制し、密着感、明るい仕上がりを向上させる観点から、含有量は、全組成中に0.1~20質量%であり、0.5~17質量%が好ましく、1~15質量%がより好ましく、5~10質量%がさらに好ましい。
【0038】
本発明において、成分(F)に対する成分(D)の質量割合(D)/(F)は、塗布時の肌のべたつき、塗布後の肌のムラづき、キメの目立ちを抑制し、密着感、明るい仕上がりを向上させる観点から、0.01~0.8が好ましく、0.03~0.5がより好ましく、0.07~0.28がさらに好ましく、0.1~0.17がよりさらに好ましい。
【0039】
本発明の油中水型乳化化粧料は、前記成分以外に、通常化粧料に用いられる成分、例えば、前記成分(A)及び(F)以外の粉体、前記成分(B)以外の油成分、水溶性高分子、酸化防止剤、香料、色素、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、保湿剤、清涼剤等を含有することができる。
【0040】
成分(B)以外の油成分としては、25℃で液状の油剤が挙げられる。
25℃で液状の油成分は、25℃で流動性を有する油性成分であり、流動性を有する限りペースト状の油性成分も含まれる。
かかる25℃で液状の油成分としては、通常の化粧料に用いられるものであれば良く、例えば、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン等の直鎖又は分岐の炭化水素油;アボガド油、マカデミアナッツ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、小麦胚芽油、アマニ油、綿実油、大豆油、パーム油、ヤシ油、ヒマシ油、ホホバ油、ヒマワリ油、ツバキ油、トウモロコシ油等の植物油;液状ラノリン等の動物油;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸オレイル、イソノナン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソステアリル、リシノレイン酸オクチルドデシル、ヒドロキシステアリン酸オクチル、モノイソステアリン酸ジグリセリル、パルミチン酸エチルヘキシル、エチルヘキサン酸セチル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、酢酸トコフェロール、炭酸プロピレン、リンゴ酸ジイソステアリル、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジイソステアリン酸ジグリセリル、ジイソステアリン酸プロパンジオール、モノイソステアリン酸モノミリスチン酸グリセリル、ジイソステアリン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、ジ(カプリン酸/カプリル酸)プロパンジオール、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル、トリエチルヘキサノイン、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラオクタン酸ペンタエリスリチル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリット、テトライソステアリン酸ペンタエリスリトール、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2、オクタカプリル酸ポリグリセリル-6、(イソステアリン酸/セバシン酸)ジトリメチロールプロパンオリゴエステル、トリポリヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)、イソステアリン酸トレハロースエステルズ、テトライソステアリン酸ジペンタエリスリチル、ペンタイソステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヒドロキシステアリン酸エチルヘキシル、フィトステロール脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、dl-α-トコフェロール、ニコチン酸dl-α-トコフェロール等の脂肪酸エステル;オクチルドデカノール等の高級アルコール;アルキル-1,3-ジメチルブチルエーテル、ジカプリリルエーテル、ジカプリリルエーテル等のエーテル油;ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性オルガノポリシロキサン、トリス(トリメチルシロキシ)メチルシラン、トリメチルペンタフェニルトリシロキサン等の不揮発性シリコーン油;フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーン等のフッ素油;ペースト状として、トリラノリン脂肪酸グリセリル、軟質ラノリン脂肪酸、ワセリン、分岐又はヒドロキシル化した脂肪酸コレステリル、ジペンタエリトリット脂肪酸エステル(ヘキサオキシステアリン酸ジペンタエリトリット等)、イソステアリン酸硬化ヒマシ油、モノヒドロキシステアリン酸硬化ヒマシ油、トリ(カプリル・カプリン・ミリスチン・ステアリン酸)グリセリド、乳酸ミリスチル、ダイマージリノール酸水添ヒマシ油、ダイマージリノール酸(フィトルテリル/イソステアリル/セチル/ステアリル/ベヘニル)、オレイン酸フィトステリル、ラウロイルグルタミン酸ジ(フィトステリル・ベヘニル・オクチルドデシル)等が挙げられる。
【0041】
25℃で液状の油剤は、1種又は2種以上を組合わせて用いることができ、塗布後の肌のムラづきを抑制し、明るい仕上がりを向上させる観点から、含有量は、全組成中に1~20質量%が好ましく、3~16質量%がより好ましく、5~12質量%がさらに好ましい。
【0042】
本発明の油中水型乳化化粧料は、通常の方法に従って製造することができる。
成分(D)のカチオン変性粘土鉱物は、予め成分(B)の一部に分散させてプレミックス組成物を調製して、混合するのが好ましい。プレミックスを調製する際には、作業性向上の点から、さらに、炭酸プロピレン、エタノール及び水から選ばれる1種以上を混合するのが好ましい。
本発明の油中水型乳化化粧料は、例えば、成分(D)を成分(B)の一部(さらに、エタノール等)に分散させてプレミックス組成物を調製し、これを、残りの成分(B)及び(E)を含む油性成分並びに成分(A)及び(F)を含む粉体成分の混合物に加えて混合し、さらに、成分(C)を含む水相成分を混合することにより、製造することができる。
【0043】
本発明の油中水型乳化化粧料は、液状、乳液液、ペースト状、クリーム状、ジェル状等の剤型にすることができ、乳液状、クリーム状が好ましい。
また、本発明の油中水型乳化化粧料は、化粧下地、ファンデーション、コンシーラー;ほお紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、オーバーコート剤、口紅等のメイクアップ化粧料;日やけ止め乳液、日焼け止めクリーム等の紫外線防御化粧料;スキンケア乳液、スキンケアクリーム、BBクリーム、美容液等のスキンケア化粧料などとして適用することができる。なかでも、メイクアップ化粧料が好ましく、化粧下地、リキッドファンデーション、クリームファンデーションがより好ましい。
本発明の油中水型乳化化粧料は、単品のみの使用においても、リキッドファンデーションやパウダーファンデーション・白粉等の粉体化粧料の重ね付けにおいても使用することができる。
【実施例】
【0044】
実施例1~9、比較例1~3
表1に示す組成の油中水型乳化化粧料(リキッドファンデーション)を製造し、塗布時の肌のべたつきのなさ、塗布後のムラ付きのなさ、塗布後の肌の密着感、塗布後の肌の明るい仕上がり及び塗布後の肌のキメの目立ちにくさを評価した。結果を表1に併せて示す。
【0045】
(製造方法)
成分(D)を、成分(B)の一部とエタノールの混合物に分散させてプレミックス組成物を調製し、これを、残りの成分(B)及び成分(E)を含む油性成分並びに成分(A)及び成分(F)を含む粉体成分の混合物に加えてディスパーで混合し、その後、成分(C)を含む水相成分を添加し、ディスパーで混合した後、さらに、ホモミキサーで撹拌することにより、油中水型乳化化粧料(リキッドファンデーション)を得た。
【0046】
(評価方法)
(1)塗布時の肌のべたつきのなさ:
専門評価者5名が、各油中水型乳化化粧料を指で塗布したとき、塗布時の肌のべたつきについて、下記の5段階で官能評価した。結果を、専門評価者5名の合計点で示した。なお、塗布時の肌のべたつきとは、指に油中水型乳化化粧料を取り、肌に塗布した時に、指が肌に貼り付く感じがあり、伸びが重くなることを示す。
5;べたつきが全く感じられない。
4;べたつきがほとんど感じられない。
3;べたつきがやや感じられる。
2;べたつきが感じられる。
1;べたつきが非常に感じられる。
【0047】
(2)塗布後のムラ付きのなさ:
専門評価者5名が、各油中水型乳化化粧料を指で塗布した後、ムラ付きしているかについて、下記の5段階で官能評価した。結果を、専門評価者5名の合計点で示した。
5;ムラ付きが目立たない。
4;ムラ付きがほとんど目立たない。
3;ムラ付きがやや目立つ。
2;ムラ付きが目立つ。
1;ムラ付きがかなり目立つ。
【0048】
(3)塗布後の肌の密着感:
専門評価者5名が、各油中水型乳化化粧料を指で塗布したとき、肌への密着感について、下記の5段階で官能評価した。結果を、専門評価者5名の合計点で示した。なお、密着感とは、塗布後の肌が、粉体が浮き上がって見えず、見た目で滑らかに感じられることを示す。
5;肌への密着感が非常に感じられる。
4;肌への密着感が感じられる。
3;肌への密着感がやや感じられる。
2;肌への密着感がほとんど感じられない。
1;肌への密着感が全く感じられない。
【0049】
(4)塗布後の肌の明るい仕上がり:
専門評価者5名が、各油中水型乳化化粧料を指で塗布した後、仕上がりの肌の明るさについて、下記の5段階で官能評価した。結果を、専門評価者5名の合計点で示した。
5;仕上がりが非常に明るい。
4;仕上がりがやや明るい。
3;仕上がりが明るい。
2;仕上がりがあまり明るくない。
1;仕上がりが全く明るくない。
【0050】
(5)塗布後の肌のキメの目立ちにくさ:
専門評価者5名が、各油中水型乳化化粧料を指で塗布した後、肌のキメが目立つかどうかについて、下記の5段階で官能評価した。結果を、専門評価者5名の合計点で示した。
5;肌のキメが目立たない。
4;肌のキメがほとんど目立たない。
3;肌のキメがやや目立つ。
2;肌のキメが目立つ。
1;肌のキメがかなり目立つ。
【0051】
【0052】
処方例1
実施例1~9と同様にして、表2に示す組成の油中水型乳化化粧料を製造した。
得られた油中水型乳化化粧料は、塗布時の肌のべたつきや、塗布後のムラ付きがなく、肌への密着感が感じられ、塗布後に肌が明るく仕上がり、肌のキメが目立ちにくいものである。
【0053】