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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20230412BHJP
   B60C 9/08 20060101ALI20230412BHJP
   B60C 5/00 20060101ALI20230412BHJP
   B60C 13/02 20060101ALI20230412BHJP
   B60C 15/00 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
B60C13/00 D
B60C9/08 Z
B60C5/00 H
B60C13/02
B60C15/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018236569
(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公開番号】P2020097327
(43)【公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】橋本 由彦
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-269503(JP,A)
【文献】国際公開第2018/155441(WO,A1)
【文献】特開2007-050854(JP,A)
【文献】特開2006-168411(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00- 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ幅方向に配置される左右一対のビード部と、
前記左右一対のビード部に架け渡されるとともに、タイヤ幅方向内側から、前記ビード部を包んでタイヤ幅方向外側に折り返され、タイヤ幅方向外側でタイヤ径方向外方へ巻き上げられるカーカスプライと、
該カーカスプライをタイヤ幅方向外側から覆うとともにサイドウォール部を構成するサイドウォールゴムと、を備え、
前記サイドウォール部のタイヤ径方向における最大幅位置を含む所定範囲内に、凹部を有し、
前記カーカスプライの巻き上げ部分の少なくとも一部が、タイヤ径方向において前記所定範囲とオーバラップする位置に設定され、
前記所定範囲は、タイヤ径方向寸法Hを基準として、タイヤ最大幅位置Wを中心としてタイヤ径方向外側及び内側にそれぞれ10%の範囲で、
前記凹部は、少なくとも1つのタイヤ周方向に延びる凹部で形成され、
前記カーカスプライの巻き上げ端部は、前記凹部のタイヤ径方向中央を中心としてタイヤ径方向外側および内側に10%の範囲に対応する位置に配置されている空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記少なくとも1つの凹部は、前記最大幅位置を含むタイヤ径方向位置に配置されている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記凹部は、少なくとも前記空気入りタイヤの車両装着時における外側に形成されている、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記カーカスプライの巻き上げ端部は、前記サイドウォール部の最大幅位置よりもタイヤ径方向外側に設定されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記凹部は、タイヤ周方向に延びる複数の凹部でなる凹部群で形成され、
前記カーカスプライの巻き上げ端部は、前記凹部群のタイヤ径方向中央を中心としてタイヤ径方向外側および内側に15%の範囲に対応する位置に設定されている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記凹部の底面部は、タイヤ径方向に対して傾斜して延びるリッジを複数並設してなるセレーションが備えられている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、特許文献1に開示されているように、空気入りタイヤ(以下、「タイヤ」ともいう)のカーカスプライは、該タイヤのトレッドの内側からサイドウォールゴムの内側にかけて配置され、さらに、ビード部を包んで、タイヤ幅方向内側から外側に折り返され、タイヤ幅方向外側でタイヤ径方向外側へ巻き上げられている。
【0003】
また、タイヤのカーカスプライは、シート状のゴム部材で形成されている。シート状のカーカスプライは、タイヤ周方向に巻き付けられ、かつ、その両端部を互いに重複させることで環状に形成されている。この重複部は、カーカスプライが2重で重なるため、他の部位に比べて剛性が高くなる。これにより、空気入りタイヤに空気を充填した際に、カーカスプライの重複部は延び難く、サイドウォール部において、凹み部となって現れる場合がある。
【0004】
これに対して、特許文献2には、タイヤのサイドウォール部に環状の凹凸模様を設けることで、上述のカーカスプライの重複部における凹み部を目立ちにくくする空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-157579号公報
【文献】特開2014-061820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、タイヤは、サイドウォール部の径方向における最大幅位置付近で歪が生じやすいため、この部分の剛性を高めておく必要がある。一方で、この最大幅位置付近には、特許文献2のような環状の凹凸模様を設ける場合がある。この場合、凹凸模様の凹部では、サイドウォール部を形成するサイドウォールゴムの厚さが薄くなる傾向があり、剛性が低下しやすい。すなわち、サイドウォール部の最大幅位置付近に凹凸模様を有する空気入りタイヤにおいて、サイドウォール部の最大幅位置付近の剛性を確保するためには改善の余地がある。
【0007】
本発明は、サイドウォール部の最大幅位置付近に凹部を有する空気入りタイヤにおいて、タイヤのサイドウォール部の剛性の低下を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、タイヤ幅方向に配置される左右一対のビード部と、前記左右一対のビード部に架け渡されるとともに、タイヤ幅方向内側から、前記ビード部を包んでタイヤ幅方向外側に折り返され、タイヤ幅方向外側でタイヤ径方向外方へ巻き上げられるカーカスプライと、該カーカスプライをタイヤ幅方向外側から覆うとともにサイドウォール部を構成するサイドウォールゴムと、を備え、前記サイドウォール部のタイヤ径方向における最大幅位置を含む所定範囲内に、凹部を有し、前記カーカスプライの巻き上げ部分の少なくとも一部が、タイヤ径方向において前記所定範囲とオーバラップする位置に設定され、前記所定範囲は、タイヤ径方向寸法Hを基準として、タイヤ最大幅位置Wを中心としてタイヤ径方向外側及び内側にそれぞれ10%の範囲で、前記凹部は、少なくとも1つのタイヤ周方向に延びる凹部で形成され、前記カーカスプライの巻き上げ端部は、前記凹部のタイヤ径方向中央を中心としてタイヤ径方向外側および内側に10%の範囲に対応する位置に配置されている空気入りタイヤを提供する。
また、好ましくは、前記少なくとも1つの凹部は、前記最大幅位置を含むタイヤ径方向位置に配置されていてもよい。
【0009】
本発明によれば、空気入りタイヤが、最大幅位置を含む所定範囲内に凹部を有する場合であっても、該所定範囲とオーバラップする位置にカーカスプライの巻き上げ部の少なくとも一部が位置しているので、サイドウォール部がカーカスプライの巻き上げ部分によって効果的に補強される。これにより、サイドウォール部の剛性の低下を抑制することができ、タイヤの旋回性能および限界性能を確保することができる。
【0010】
また、好ましくは、前記凹部は、少なくとも前記空気入りタイヤの車両装着時における外側に形成されている。
【0011】
本構成によれば、タイヤの車両装着時の外側には、車両の旋回時において荷重がかかるとともに、デザインのための凹部を施したい要請がある。したがって、上述の効果がより顕著になる。
【0012】
また、好ましくは、前記カーカスプライの巻き上げ端部は、前記サイドウォール部の最大幅位置よりもタイヤ径方向外側に設定されている。
【0013】
本構成によれば、歪が生じやすく剛性を確保したいタイヤの最大幅位置よりもタイヤ径方向外側に、カーカスの巻き上げ端部を設けているので、歪が生じやすいタイヤの最大幅位置の部分を、カーカスの巻き上げ部分によって確実に補強できる。
【0014】
また、好ましくは、前記凹部は、少なくとも1つのタイヤ周方向に延びる凹部で形成され、前記カーカスプライの巻き上げ端部は、前記凹部のタイヤ径方向における略中央部に対応する位置に配置されている。
【0015】
本構成によれば、サイドウォール部の最大幅付近、かつ、歪が生じやすいタイヤ周方向に延びる凹部のタイヤ径方向における略中央部よりも径方向内側部分をカーカスプライの巻き上げ部分によって補強することができる。これにより、最大幅付近にタイヤ周方向に延びる凹部を有するタイヤにおいて、重量の増加および乗り心地性能の悪化の抑制と、サイドウォール部の剛性の確保による旋回性能および限界性能の向上とを両立させることができる。
【0016】
具体的には、カーカスプライの巻き上げ端部を凹部のタイヤ径方向における略中央部よりも径方向外側に設けることによる乗り心地性能の悪化および重量の増加と、カーカスプライの巻き上げ端部を凹部のタイヤ径方向における略中央部よりも径方向内側に設けることによるタイヤの剛性不足とを解消し得る。したがって、トレードオフの関係にある乗り心地性能の悪化および重量増加の抑制と、剛性の確保とを両立しながら、最大幅付近にタイヤ周方向に延びる凹部を設定することができる。
【0017】
また、好ましくは、前記凹部は、タイヤ周方向に延びる複数の凹部でなる凹部群で形成され、前記カーカスプライの巻き上げ端部は、前記凹部群のタイヤ径方向中央を中心としてタイヤ径方向外側および内側に15%の範囲に対応する位置に設定されている。
【0018】
本構成によれば、サイドウォール部の最大幅付近、かつ、歪が生じやすいタイヤ周方向に延びる凹部群のタイヤ径方向における略中央部よりも径方向内側部分を補強することができる。これにより、最大幅付近にタイヤ周方向に延びる凹部群を有するタイヤにおいて、重量の増加および乗り心地性能の悪化の抑制と、サイドウォール部の剛性の確保による旋回性能および限界性能の向上とを両立させることができる。
【0019】
また、好ましくは、前記凹部の底面部は、タイヤ径方向に対して傾斜して延びるリッジを複数並設してなるセレーションが備えられている。
【0020】
本構成によれば、サイドウォール部の凹部の底面部に、セレーションが備えられているので、飛び石等に対する接触面積を低減することができる。これにより、タイヤのサイドウォール部における外傷性を向上することができる。
【0021】
また、セレーションによって、タイヤ成形時に周方向に巻き付けられるカーカスプライ等のゴム部材が重複すること等に起因するサイドウォール部に生じる凹凸(以下、「サイド凹凸」ともいう)を目立ちにくくすることができる。これにより、サイド凹凸による外観不良に対する目隠し効果が期待できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るサイドウォール部の最大幅付近に凹部を有する空気入りタイヤにおいて、タイヤのサイドウォール部の剛性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの子午線断面図。
図2】第1実施形態に係る空気入りタイヤの車両装着時における外側の側面図。
図3】第1実施形態に係る空気入りタイヤの凹部と、カーカスプライの巻き上げ端部との位置関係を示す図1の要部拡大図。
図4】第1実施形態に係る空気入りタイヤのセレーションを示す図2における矢印A部分の拡大図。
図5】第1実施形態に係る空気入りタイヤのセレーションの図4におけるB-B断面図。
図6】第2実施形態に係る空気入りタイヤの凹部と、カーカスプライの巻き上げ端部との位置関係を示す図1の要部拡大図。
図7】第3実施形態に係る空気入りタイヤの凹部と、カーカスプライの巻き上げ端部との位置関係を示す図1の要部拡大図。
図8】空気入りタイヤの凹部と、所定範囲との位置関係の変形例を示す図1の要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0025】
図1は、本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤ(以下、「タイヤ」ともいう)1の子午線方向における半断面図であり、タイヤ赤道線CLに対して一方側のみを示している。図1に示すように、空気入りタイヤ1は、トレッド面2aを有するトレッド部2と、そのタイヤ幅方向外側の両側端部2bに連なってタイヤ径方向内側に延びる一対のサイドウォール部3と、各サイドウォール部3の内径端に位置する一対のビード部4とを備えている。トレッド部2およびサイドウォール部3の内側には、一対のビード部4の間に架け渡されるようにカーカスプライ50が配設されている。
【0026】
トレッド部2のカーカスプライ50のタイヤ径方向外側には、ベルト層60とベルト補強層70とが順に配設されており、この更に外側にトレッドゴム20が配設されている。カーカスプライ50の内側には、空気圧を保持するためのインナープライ80が配設されている。
【0027】
サイドウォール部3のカーカスプライ50のタイヤ幅方向外側には、サイドウォールゴム30が配設されている。なお、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、トレッド部2の外端部2bの径方向外側にサイドウォールゴム30の外径端部が配設された、所謂サイドウォールオーバートレッド(SWOT)構造とされている。サイドウォールゴム30とトレッドゴム20の上下関係はこの逆であってもよい。
【0028】
ビード部4は、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア41と、ビードコア41に連設されてタイヤ径方向外側に延びる断面三角形状の環状のビードフィラー42とを有する。
【0029】
図1および図2に示すように、タイヤ1の車両装着時における外側となるサイドウォール部3には、タイヤ周方向に延びる複数の凹部31、32、33からなる凹部群30Aが設けられている。該凹部群30Aは、サイドウォール部3の径方向における最大幅位置Wを含む所定範囲W1内に配置されている。
【0030】
凹部群30Aは、タイヤ径方向外側から順に、第1凹部31と、第2凹部32と、第3凹部33とが並べて配置されている。なお、タイヤ最大幅位置Wは、タイヤ子午線面において、サイドウォール部3の輪郭線がタイヤ幅方向外方に最も張り出す位置である。
【0031】
図3に示すように、第1~第3凹部31、32、33は、サイドウォールゴム30の輪郭線を形成する基本面部30aをタイヤ幅方向の内側に凹ませることで形成されている。サイドウォール部3は、第1~第3凹部31、32、33によって、基本面部30aに対してサイドウォールゴム30のタイヤ幅方向における厚さが薄く形成されている。
【0032】
第1~第3凹部31、32、33は、それぞれタイヤ周方向に延びる底面部31a、32a、33aと、底面部31a、32a、33aのタイヤ径方向外縁部からタイヤ幅方向外側に立ち上がる外側壁部31b、32b、33bと、底面部31a、32a、33aのタイヤ径方向内縁部からタイヤ幅方向外側に立ち上がる内側壁部31c、32c、33cとを有している。
【0033】
第1~第3凹部31、32、33の間には、基本面部30aがタイヤ周方向に延びるように残されている。これにより、サイドウォール部3に、基本面部30aと第1~第3凹部31、32、33とによってタイヤ周方向に延びる凹凸模様が形成される。
【0034】
なお、本実施形態において、第1~第3凹部31、32、33は、例えば、標章表示部等が設けられている部位35、35においてタイヤ周方向で途切れて形成されているが、必要に応じて、タイヤ周方向に連続して一周して形成されてもよい。
【0035】
一般に、タイヤ1において、サイドウォール部3の最大幅位置Wは、歪が生じやすく剛性を高めたい部位であり、本実施形態における「タイヤ最大幅位置Wを含む所定範囲W1」は、最大幅位置W付近の歪が生じやすい部分としてもよい。例えば、タイヤ1の歪分布に基づいて、タイヤ径方向寸法Hを基準として、タイヤ最大幅位置Wを中心として、タイヤ径方向外側および内側にそれぞれ10%の範囲としてもよい。
【0036】
すなわち、第1~第3凹部31、32、33は、サイドウォール部3最大幅位置W付近の歪が生じやすい部分に設けられているとともに、第1~第3凹部31、32、33が設けられたサイドウォールゴム30は、第1~第3凹部によってゴムの厚さを確保し難く剛性が低下しやすい部位である。
【0037】
本発明に係る空気入りタイヤ1は、サイドウォール部3の剛性の低下を抑制するためのカーカスプライ50の構成を有しているので、以下に詳細を説明する。
【0038】
図1および図3に示すように、カーカスプライ50は、タイヤ幅方向内側から、ビード部4を包んでタイヤ幅方向外側に折り返され、タイヤ幅方向外側でタイヤ径方向外方へ巻き上げられる巻き上げ部分51を有している。
【0039】
図3に示すように、カーカスプライ50の巻き上げ部分51のタイヤ径方向外方の巻き上げ端部52は、サイドウォール部3の最大幅位置Wよりも径方向外側に配置されている。これにより、巻き上げ部分51によって、歪が生じやすく剛性を高めたいタイヤの最大幅位置W付近が補強されている。
【0040】
また、カーカスプライ50の巻き上げ端部52は、サイドウォール部3の凹部群30Aのタイヤ径方向における略中央部(例えば、略中央部は、凹部群30Aのタイヤ径方向中央を中心としてタイヤ径方向外側および内側に15%の範囲)に位置している。本実施形態においては、カーカスプライ50の巻き上げ端部52は、サイドウォール部3の第2凹部32のタイヤ径方向における中央部32Aに位置している。
【0041】
これにより、カーカスプライ50の巻き上げ部分51は、タイヤ径方向において第2凹部32の中央部32Aよりも下側の部位および第3凹部33とオーバラップしている。その結果、第2凹部32および第3凹部33によってサイドウォールゴム30が薄くなる部位のタイヤ幅方向内側には、カーカスプライ50の巻き上げ部分51が配置されているので、サイドウォールゴム30が薄くなることによって剛性が低下することが抑制されている。
【0042】
上述のように、カーカスプライ50の巻き上げ部分51は、サイドウォール部3の最大幅位置W付近で歪が生じやすい部分、かつ、第1~第3凹部31、32、33によってサイドウォールゴム30の厚さを確保し難く剛性が低下しやすい部位に対応した位置に設けられている。
【0043】
以上の構成により、サイドウォール部3の最大幅W付近、かつ、歪が生じやすいタイヤ周方向に延びる第1~第3凹部31、32、33のタイヤ径方向における略中央部よりも径方向内側部分を補強することができる。これにより、最大幅付近にタイヤ周方向に延びる凹部を有するタイヤにおいて、重量の増加および乗り心地性能の悪化の抑制と、サイドウォール部の剛性の確保による旋回性能および限界性能の向上とを両立させることができる。
【0044】
本実施形態においては、第1~第3凹部31、32、33は、車両の旋回時において荷重がかかるとともに、デザインのための凹部を施したい要請があるタイヤ1の車両装着時の外側に設けられている。したがって、上述の効果がより顕著に得られる。
【0045】
ところで、カーカスプライ50の巻き上げ端部52をタイヤ径方向外側に配置するほど、サイドウォール部3におけるカーカスプライ50の巻き上げ部分51の領域が、タイヤ径方向において広く確保されることになり、サイドウォール部3の剛性が高まる。一方、サイドウォール部3を高剛性化することは、乗り心地性能を悪化させる傾向にあり、両者はトレードオフの関係にある。また、カーカスプライ50の巻き上げ部分51の領域を広くすることは、重量の増加を招く虞がある。
【0046】
本実施形態によれば、サイドウォール部3の最大幅位置W付近、かつ、歪が生じやすいタイヤ周方向に延びる第1~第3凹部31、32、33のタイヤ径方向における中央部32Aよりも径方向内側部分を補強することができる。これにより、最大幅位置W付近にタイヤ周方向に延びる凹部を有するタイヤにおいて、重量の増加および乗り心地性能の悪化の抑制と、サイドウォール部3の剛性の確保による旋回性能および限界性能の向上とを両立させることができる。
【0047】
具体的には、カーカスプライ50の巻き上げ端部52を第2凹部32のタイヤ径方向における略中央部32Aよりも径方向外側に設けることによる乗り心地性能の悪化および重量の増加と、カーカスプライ50の巻き上げ端部52を第2凹部32のタイヤ径方向における略中央部32Aよりも径方向内側に設けることによるタイヤの剛性不足とを解消し得る。したがって、トレードオフの関係にある乗り心地性能の悪化および重量増加の抑制と、剛性の確保とを両立しながら、最大幅位置W付近にタイヤ周方向に延びる第1~第3凹部31、32、33を設定することができる。
【0048】
また、サイドウォール部3に凹部が設けられる場合、サイドウォールゴム30の厚さが薄くなることに起因して、サイドウォール部3に対する飛び石等によって外傷性が悪化しやすくなる。
【0049】
これに対して、本実施形態における空気入りタイヤの第1~第3凹部31、32、33の底面部31a、32a、33aには、図4に示すように、セレーション90…90が備えられている。
【0050】
セレーション90…90は、タイヤ径方向に対して傾斜して延びるリッジ91を、所定のピッチで複数並設して形成されている。図5は、図4のB-B線に沿った断面図であり、第2凹部32の複数のリッジ91…91の延在方向と垂直な断面を示している。図5に示すように、複数のリッジ91…91は、いずれも三角形状の断面形状に構成されている。図示は省略するが、第1凹部31および第3凹部33の底面部31a、33aに設けられたリッジ91も同様に、三角形状の断面形状に構成されている。
【0051】
上述のように、サイドウォール部3の第1~第3凹部31、32、33の底面部31a、32a、33aに、セレーション90…90が備えられているので、サイドウォール部3に対する飛び石等の接触面積を低減することができる。これにより、タイヤ1のサイドウォール部3における外傷性を向上することができる。
【0052】
また、タイヤ成形時に周方向に巻き付けられるカーカスプライ50のゴム部材が重複すること等に起因して、サイドウォール部には意図しない凹凸(以下、「サイド凹凸」ともいう)が生じる場合がある。特に、サイドウォールゴム30の厚さが薄くなる第1~第3凹部31、32、33の底面部31a、32a、33aにおいては、このサイド凹凸が目立ちやすくなる。
【0053】
これに対して、上述のように、本実施形態における空気入りタイヤ1の第1~第3凹部31、32、33の底面部31a、32a、33aには、セレーション90…90が設けられているので、サイド凹凸を目立ちにくくすることができ、サイド凹凸による外観不良に対する目隠し効果が期待できる。
【0054】
[第2実施形態]
次に、図6を参照しながら、第2実施形態に係る空気入りタイヤ100について説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成について図6において同一の符号を用いるとともに、説明を省略する。
【0055】
図1図2および図6に示すように、第2実施形態の空気入りタイヤ100は、第1実施形態同様に、タイヤ100の車両装着時における外側となるサイドウォール部103には、タイヤ周方向に延びる凹部131が設けられている。該凹部131は、サイドウォール部3の径方向における最大幅位置Wを含む所定範囲W101内に配置されている。
【0056】
図6に示すように、凹部131は、サイドウォールゴム130の輪郭線を形成する基本面部130aをタイヤ幅方向の内側に凹ませることで形成されている。サイドウォール部103は、凹部131によって、基本面部130aに対してサイドウォールゴム130のタイヤ幅方向における厚さが薄く形成されている。
【0057】
凹部131は、タイヤ周方向に延びる底面部131aと、底面部131aのタイヤ径方向外縁部からタイヤ幅方向外側に立ち上がる外側壁部131bと、底面部131aのタイヤ径方向内縁部からタイヤ幅方向外側に立ち上がる内側壁部131cとを有している。これにより、サイドウォール部103に、タイヤ周方向に延びる凹部模様が形成される。
【0058】
すなわち、凹部131は、サイドウォール部103最大幅位置W付近の歪が生じやすい部分に設けられているとともに、凹部131が設けられたサイドウォールゴム130は、凹部131によってゴムの厚さを確保し難く剛性が低下しやすい部位である。
【0059】
第2実施形態に係る空気入りタイヤ100は、第1実施形態同様に、サイドウォール部103の剛性の低下を抑制するためのカーカスプライ150の構成を有している。
【0060】
図1および図6に示すように、カーカスプライ150は、タイヤ幅方向内側から、ビード部4を包んでタイヤ幅方向外側に折り返され、タイヤ幅方向外側でタイヤ径方向外方へ巻き上げられる巻き上げ部分151を有している。
【0061】
図6に示すように、カーカスプライ150の巻き上げ部分151のタイヤ径方向外方の巻き上げ端部152は、サイドウォール部103の最大幅位置Wよりも径方向外側に配置されている。これにより、巻き上げ部分151によって、歪が生じやすく剛性を高めたいタイヤの最大幅位置W付近が補強されている。
【0062】
また、カーカスプライ150の巻き上げ端部152は、サイドウォール部103の凹部131のタイヤ径方向における略中央部(例えば、略中央部は、凹部131のタイヤ径方向中央を中心としてタイヤ径方向外側および内側に10%の範囲)に位置している。本実施形態においては、カーカスプライ150の巻き上げ端部152は、サイドウォール部103の凹部131のタイヤ径方向における中央部131Aに位置している。
【0063】
これにより、カーカスプライ150の巻き上げ部分151は、タイヤ径方向において凹部131の中央部131Aよりも下側の部位とオーバラップしている。その結果、凹部131によってサイドウォールゴム130が薄くなる部位のタイヤ幅方向内側には、カーカスプライ150の巻き上げ部分151が配置されているので、サイドウォールゴム130が薄くなることによって剛性が低下することが抑制されている。
【0064】
上述のように、カーカスプライ150の巻き上げ部分151は、サイドウォール部103の最大幅位置W付近で歪が生じやすい部分、かつ、凹部131によってサイドウォールゴム30の厚さを確保し難く剛性が低下しやすい部位に対応した位置に設けられている。
【0065】
以上の構成により、サイドウォール部103の最大幅W付近、かつ、歪が生じやすいタイヤ周方向に延びる凹部131のタイヤ径方向における中央部131Aよりも径方向内側部分を補強することができる。これにより、最大幅付近にタイヤ周方向に延びる凹部を有するタイヤにおいて、重量の増加および乗り心地性能の悪化の抑制と、サイドウォール部の剛性の確保による旋回性能および限界性能の向上とを両立させることができる。
【0066】
また、第2実施形態によれば、サイドウォール部103の最大幅位置W付近、かつ、歪が生じやすいタイヤ周方向に延びる凹部131のタイヤ径方向における中央部131Aよりも径方向内側部分を補強することができる。これにより、最大幅位置W付近にタイヤ周方向に延びる凹部を有するタイヤにおいて、前述のように、トレードオフの関係にある重量の増加および乗り心地性能の悪化の抑制と、サイドウォール部103の剛性の確保による旋回性能および限界性能の向上とを両立させることができる。
【0067】
なお、第2実施形態における凹部131の底面部131aには、第1実施形態同様に、図4および図5に示すセレーション90…90が設けられているので、サイドウォール部103における外傷性を向上させることができるとともに、サイド凹凸の目隠し効果が期待できる。
【0068】
[第3実施形態]
次に、図7を参照しながら、第3実施形態に係る空気入りタイヤ200について説明する。なお、第3実施形態において、第1実施形態と同様の構成について図7において同一の符号を用いるとともに、説明を省略する。
【0069】
図1図2および図7に示すように、第3実施形態の空気入りタイヤ200は、第1実施形態同様に、タイヤ200の車両装着時における外側となるサイドウォール部203には、タイヤ周方向に延びる複数の凹部231、232からなる凹部群230Aが設けられている。該凹部群230Aは、サイドウォール部203の径方向における最大幅位置Wを含む所定範囲W201内に配置されている。凹部群230Aは、タイヤ径方向外側から順に、第1凹部231と、第2凹部232とが並べて配置されている。
【0070】
図7に示すように、第1および第2凹部231、232は、サイドウォールゴム230の輪郭線を形成する基本面部230aをタイヤ幅方向の内側に凹ませることで形成されている。サイドウォール部203は、凹部231によって、基本面部230aに対してサイドウォールゴム230のタイヤ幅方向における厚さが薄く形成されている。
【0071】
第1および第2凹部231、232は、それぞれ、タイヤ周方向に延びる底面部231a、232aと、底面部231a、232aのタイヤ径方向外縁部からタイヤ幅方向外側に立ち上がる外側壁部231b、232bと、底面部231a、232aのタイヤ径方向内縁部からタイヤ幅方向外側に立ち上がる内側壁部231c、232cとを有している。
【0072】
第1凹部231と第2凹部232との間には、基本面部230aがタイヤ周方向に延びるように残されている。これにより、サイドウォール部203に、タイヤ周方向に延びる凹凸模様が形成される。
【0073】
すなわち、第1および第2凹部231、232は、サイドウォール部203最大幅位置W付近の歪が生じやすい部分に設けられているとともに、凹部231が設けられたサイドウォールゴム230は、第1および第2凹部231、232によってゴムの厚さを確保し難く剛性が低下しやすい部位である。
【0074】
第3実施形態に係る空気入りタイヤ200は、第1実施形態同様に、サイドウォール部203の剛性の低下を抑制するためのカーカスプライ250の構成を有している。
【0075】
図1および図7に示すように、カーカスプライ250は、タイヤ幅方向内側から、ビード部4を包んでタイヤ幅方向外側に折り返され、タイヤ幅方向外側でタイヤ径方向外方へ巻き上げられる巻き上げ部分251を有している。
【0076】
図7に示すように、カーカスプライ250の巻き上げ部分251のタイヤ径方向外方の巻き上げ端部252は、サイドウォール部203の最大幅位置Wよりも径方向外側に配置されている。これにより、巻き上げ部分251によって、歪が生じやすく剛性を高めたいタイヤの最大幅位置W付近が補強されている。
【0077】
また、カーカスプライ250の巻き上げ端部252は、サイドウォール部203の凹部群230Aのタイヤ径方向における略中央部(例えば、略中央部は、凹部群230Aのタイヤ径方向中央を中心としてタイヤ径方向外側および内側に8%の範囲)に位置している。本実施形態においては、カーカスプライ250の巻き上げ端部252は、サイドウォール部3の凹部群230Aのタイヤ径方向における中央部230Bに位置している。
【0078】
これにより、カーカスプライ250の巻き上げ部分251は、タイヤ径方向において凹部群230Aの中央部230Bよりも下側の部位とオーバラップしている。その結果、凹部群230Aによってサイドウォールゴム230が薄くなる部位のタイヤ幅方向内側には、カーカスプライ250の巻き上げ部分251が配置されているので、サイドウォールゴム230が薄くなることによって剛性が低下することが抑制されている。
【0079】
上述のように、カーカスプライ250の巻き上げ部分251は、サイドウォール部203の最大幅位置W付近で歪が生じやすい部分、かつ、凹部群230Aによってサイドウォールゴム230の厚さを確保し難く剛性が低下しやすい部位に対応した位置に設けられている。
【0080】
以上の構成により、サイドウォール部203の最大幅W付近、かつ、歪が生じやすいタイヤ周方向に延びる凹部群230Aのタイヤ径方向における中央部230Bよりも径方向内側部分を補強することができる。これにより、最大幅付近にタイヤ周方向に延びる凹部を有するタイヤにおいて、重量の増加および乗り心地性能の悪化の抑制と、サイドウォール部の剛性の確保による旋回性能および限界性能の向上とを両立させることができる。
【0081】
また、第3実施形態によれば、サイドウォール部203の最大幅位置W付近、かつ、歪が生じやすいタイヤ周方向に延びる凹部群230Aのタイヤ径方向における中央部230Bよりも径方向内側部分を補強することができる。これにより、最大幅位置W付近にタイヤ周方向に延びる凹部を有するタイヤにおいて、前述のように、トレードオフの関係にある重量の増加および乗り心地性能の悪化の抑制と、サイドウォール部203の剛性の確保による旋回性能および限界性能の向上とを両立させることができる。
【0082】
なお、第3実施形態における第1および第2凹部231、232の底面部231a、232aには、第1実施形態同様に、図4および図5に示すセレーション90…90が設けられているので、サイドウォール部203における外傷性を向上させることができるとともに、サイド凹凸の目隠し効果が期待できる。
【0083】
なお、本発明は、上記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0084】
例えば、本実施形態では、複数の凹部31、32、33からなる凹部群30Aすべてが、最大幅位置Wを含む所定範囲W1内に配置されているが、図8に示すように、凹部群330Aの一部が所定範囲W1内から外側に配置されていてもよい。この場合、カーカスプライ350の巻き上げ端部352は、所定範囲W1内に配置されている凹部群330Aの略中央部(例えば、略中央部は、凹部群330Aのタイヤ径方向中央を中心としてタイヤ径方向外側および内側に8%の範囲)に位置していることが好ましい。図8においては、カーカスプライ350の巻き上げ端部352は、所定範囲W301内に配置されている凹部群330Aのタイヤ径方向における中央部330Bに位置している。
【0085】
なお、図8では、凹部群330Aのうちタイヤ径方向内側に位置する凹部が、所定範囲W301の外に配置されている例について示しているが、凹部群330Aのうちタイヤ径方向外側に位置する凹部が所定範囲W301の外側に配置されていてもよい。この場合においても、カーカスプライ350の巻き上げ端部352は、所定範囲W301内に配置されている凹部群の略中央部に位置していることが好ましい。
【0086】
例えば、本実施形態において、サイドウォール部3には、1個~3個の凹部が設けられていたが、凹部の個数はこれに限られるものではなく、4個以上の凹部が設けられていてもよい。この場合、カーカスプライ50の巻き上げ端部52は、略凹部群の略中央部(例えば、略中央部は、凹部群のタイヤ径方向中央を中心としてタイヤ径方向外側および内側に12%の範囲)に配置されることが好ましい。
【0087】
例えば、本実施形態において、カーカスプライ50の巻き上げ端部52は、第2凹部32の中央部32Aの位置に設けられているが、車両に要求される乗り心地性能と操縦安定性能との関係によっては、カーカスプライ50の巻き上げ端部52が第1凹部31の外側側壁部31b付近に設けられてもよい。
【0088】
例えば、本実施形態では、複数の凹部31、32、33が、空気入りタイヤ1の車両装着時における外側に位置するサイドウォール部3の形成される場合について説明したが、複数の凹部は、タイヤ1のサイドウォール部3の車両装着時における外側に加えて内側に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 空気入りタイヤ
3 サイドウォール部
4 ビード部
30 サイドウォールゴム
31、32、33 凹部
31a、32a、33a 底面部
50 カーカスプライ
51 巻き上げ部分
52 巻き上げ端部
90…90 セレーション
91…91 リッジ
W 最大幅位置
W1 所定範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8