(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】ボックス内コンシューマーレディ野菜、キノコまたはハーブの改善された生産方法
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20230412BHJP
A01G 9/02 20180101ALI20230412BHJP
【FI】
A01G31/00 601A
A01G31/00 604
A01G9/02 D
A01G9/02 F
(21)【出願番号】P 2018538155
(86)(22)【出願日】2017-01-20
(86)【国際出願番号】 EP2017051249
(87)【国際公開番号】W WO2017125588
(87)【国際公開日】2017-07-27
【審査請求日】2019-11-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-11-08
(32)【優先日】2016-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】500502222
【氏名又は名称】ライク・ズワーン・ザードテールト・アン・ザードハンデル・ベスローテン・フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(72)【発明者】
【氏名】ウィルヘルムス・ペトルス・アドリアヌス・ルーラント・フールマンス
(72)【発明者】
【氏名】ジャネット・ディアナ・ファン・デル・ラーケン
【合議体】
【審判長】住田 秀弘
【審判官】前川 慎喜
【審判官】佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/056869(WO,A1)
【文献】特表2015-534463(JP,A)
【文献】特開2009-72075(JP,A)
【文献】特開2003-274764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00-31/06
A01G 9/02- 9/029
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)野菜、キノコまたはハーブを密閉容器内で適当な生育条件下に十分生育するまで栽培するステップ;および
b)該十分生育した野菜、キノコまたはハーブの入った該容器を小売販売所に移すステップを含む、コンシューマーレディの野菜、キノコまたはハーブを生産する方法において、
野菜、キノコまたはハーブを、野菜、キノコまたはハーブを入れるための植物コンパートメント、およびそれとは別の、水および栄養物を入れるための水コンパートメントを含む容器内で栽培し、ここで、該2つのコンパートメントの一方に、汚染物および病原体が植物コンパートメントに入るのを阻止しながら水および栄養物が植物コンパートメントに入るのを可能にする手段が提供されて
おり、
植物コンパートメントが水コンパートメントの内部に配置され、植物コンパートメントの底が、水および栄養物を透過させるが汚染物および病原体、例えばウイルス、細菌、真菌、原生生物または昆虫は透過させないフィルタを含
み、
植物コンパートメントが、植物コンパートメントに入る水および栄養物を植物、キノコまたはハーブに届ける手段を含
み、
水を届ける手段が、毛管手段、例えばマットであ
り、
野菜、キノコまたはハーブが、フィルタと接触するマットの上に育成する、方法。
【請求項2】
植物コンパートメントが、水コンパートメントに入れられた水に浮いている、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
水および栄養物を、植物コンパートメントの底と水コンパートメントの底の間の空間に入れる、請求項
1または2に記載の方法。
【請求項4】
水コンパートメントが、水および栄養物を透過させるが汚染物および病原体、例えばウイルス、細菌、真菌、原生生物または昆虫は透過させないフィルタを備えるバッグの形態を有し、該バッグが植物コンパートメントの内部に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
植物コンパートメントが、水および栄養物を透過させるが汚染物および病原体、例えばウイルス、細菌、真菌、原生生物または昆虫は透過させないフィルタを備えるバッグの形態を有し、該バッグが水コンパートメントの内部に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
容器が透過性膜で密閉され、該膜は、好ましくは酸素(O
2)、二酸化炭素(CO
2)および水蒸気を透過させるが
、汚染物および病原体、例えばウイルス、細菌、真菌、原生生物または昆虫は透過させない、請求項1~
5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
野菜、キノコまたはハーブの栽培に先立ち、野菜もしくはハーブの種子、発芽した種子、実生苗もしくは苗、またはキノコの菌糸体を植物コンパートメント中に配置し、容器を密閉する、請求項1~
6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
野菜が、葉菜類、特にレタス、特にリーフレタス、ヘッドレタスもしくはベビーリーフレタス、エンダイブ、ルッコラ、ラムズレタス、コーンサラダ、チャード、リーフビート、ホウレンソウ、ラディッシュ、スプラウト野菜、特にクレス、ビートスプラウト、アルファルファ、ブロッコリスプラウト、豆もやし、フェンネルスプラウト、キャベツスプラウト、ガーリックスプラウト、リーキスプラウト、豆苗、ひよこ豆スプラウトであるか、またはハーブが、チャイブ、パセリ、バジル、ディルウィード、コリアンダー、シラントロ、ミント、オレガノ、ローズマリー、タイム、マジョラム、レモンバームから選択される、請求項1~
7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
種子をシードマットまたはシードバンドの形で提供する、請求項1~
8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
容器に、野菜、キノコまたはハーブに関する情報を記載したラベルを付ける、請求項1~
9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
野菜、キノコまたはハーブの十分な生育までの栽培を、小売販売所において、または小売販売所の近辺で行う、請求項1~
10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
コンシューマーレディの野菜、キノコまたはハーブを生産するための、容器、播種または植え付け材料、および透過性膜を含むセットにおいて、容器が、野菜、キノコまたはハーブを入れるための植物コンパートメント、ならびに水および栄養物を入れるための水コンパートメントを含み、ここで、該2つのコンパートメントの一方に、汚染物および病原体が植物コンパートメントに入るのを阻止しながら水および栄養物が植物コンパートメントに入るのを可能にする手段が提供されて
おり、
該膜は、好ましくは酸素(O
2
)、二酸化炭素(CO
2
)および水蒸気を透過させるが、汚染物および病原体、例えばウイルス、細菌、真菌、原生生物または昆虫は透過させず、植物コンパートメントが水コンパートメントの内部に配置され、植物コンパートメントの底が、水および栄養物を透過させるが汚染物および病原体、例えばウイルス、細菌、真菌、原生生物または昆虫は透過させないフィルタを含み、植物コンパートメントが、植物コンパートメントに入る水および栄養物を植物、キノコまたはハーブに届ける手段を含み、水を届ける手段が、毛管手段、例えばマットであり、野菜、キノコまたはハーブが、フィルタと接触するマットの上に育成する、セット。
【請求項13】
植物コンパートメントが、水コンパートメントの内部に適合して該
植物および
水コンパートメントの底の間に水および栄養物を入れるための空間を残す形状を有する、請求項
12に記載のセット。
【請求項14】
水コンパートメントが、植物コンパートメントの内部に適合して該
植物コンパートメント中に野菜、キノコまたはハーブの収穫段階(ready-to-harvest stage)までの生育のための十分な空間を残すバッグの形状を有する、請求項
12に記載のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンシューマーレディ(consumer-ready)の野菜、キノコまたはハーブの改善された生産方法に関する。本発明は、該方法を実施するための成分と、任意の生育段階にある野菜、キノコまたはハーブを含む容器とを含むセットにも関する。
【背景技術】
【0002】
野菜、キノコおよびハーブは昔から、専門の栽培家によって温室または畑で生産されている。そのような農産物は、収穫後、小売販売店に輸送する必要がある。輸送コストは最終的な小売価格に影響する。さらに、農産物はしばしば、販売前に貯蔵する必要がある。そのために、農産物によっては、特殊な貯蔵設備が必要でありうる。
【0003】
WO2014/056869には、
a)野菜、キノコまたはハーブを密閉容器内で適当な生育条件下に十分生育するまで栽培するステップ;および
b)該十分生育した野菜、キノコまたはハーブの入った該容器を小売販売所に移すステップ
を含む、コンシューマーレディの野菜、キノコまたはハーブの生産方法による、コストを低下し農産物の新鮮さを高めて野菜、ハーブおよびキノコを生産するための新たな方法が開示されている。
【0004】
この系においては、密閉容器内の湿度が高まり過ぎ、植物の生育に悪影響が及びうることがわかった。さらに、生育培地が病原体により汚染されるリスクが高く、このことは、生育培地が細菌増殖を助長する栄養物を含む場合に特に当てはまる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、上記問題点の一方または両方を解消する、改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に至った研究において、植物を水および栄養物から隔離しておくと、植物の汚染が回避されることがわかった。
【0007】
したがって、本発明は、
a)野菜、キノコまたはハーブを密閉容器内で適当な生育条件下に十分生育するまで栽培するステップ;および
b)該十分生育した野菜、キノコまたはハーブの入った該容器を小売販売所に移すステップ
を含む、コンシューマーレディの野菜、キノコまたはハーブを生産する方法において、
野菜、キノコまたはハーブを、野菜、キノコまたはハーブを入れるための植物コンパートメント、およびそれとは別の、水および栄養物を入れるための水コンパートメントを含む容器内で栽培し、ここで、該2つのコンパートメントの一方に、汚染物および病原体が植物コンパートメントに入るのを阻止しながら水および栄養物が植物コンパートメントに入るのを可能にする手段が提供されている、
方法に関する。
【0008】
水および栄養物が植物コンパートメントに入るのを、汚染物および病原体が該内部コンンパートメントに入るのを阻止しながら可能にする手段は、好適にはフィルタで形成される。フィルタは好ましくは、該容器の水と接触する面、通常、底に一体化される。
【0009】
2つのコンパートメントは、相互に隔てられるが、フィルタを介する液体連絡があり、したがって、植物、キノコまたはハーブの生育のための、水コンパートメントから植物コンパートメントへの水の供給が可能である。後述するある特定の態様において、一方のコンパートメントが他方のコンパートメントの内部に配置される。
【0010】
ここで、フィルタは、水および栄養物を透過させることができるが、細菌、カビ、酵母、またはコンパートメント内の野菜、ハーブもしくはキノコの生育に影響を及ぼしうる他の微生物の通過は阻止する、任意の材料で製造されていてよい。そのような、液体を滅菌するフィルタおよび濾過方法は、当分野において知られている。濾過用に、ナイロン、ポリカーボネート、酢酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリエーテルスルホン(PES)を含むいくつかの材料が知られ、使用されている。このようなフィルタ材料によって異なりうる、タンパク質保持、流速、および溶出物質の存在、といった、3つの重要な側面がある。もう1つの重要な側面は、フィルタに適用される孔サイズである。孔サイズは、排除すべき微生物の種類にも関係する。細菌に対して、よく知られた孔サイズは0.22および0.45μmである。
【0011】
ある好ましい態様において、容器の植物コンパートメントは、植物コンパートメントに入る水および栄養物を植物、キノコおよびハーブに運ぶ手段をさらに含む。この手段は好適には、水および栄養物を、生育する植物の種子または根に届けるよう植物コンパートメント中に分布させる毛管手段である。そのような手段は好ましくは、担体、とりわけマットで形成される。マットは既に種子を含んでいてよく、あるいはマット上またはマット中に種子を配置する。マットの構造は、フィルタを通って入る水および栄養物を、毛管作用により植物コンパートメント中で輸送し分布させるのに好適なものである。本書において用語「マット」、「シードマット」および「毛管マット」は互換的に用いられる。
【0012】
ここで、シードマット(シードクロスとも称される)は、該シードマット中に含まれる種子からの植物の生育に適当な任意の材料で形成される。そのようなシードマットに用いられる既知の材料は、ファブリックもしくは紙またはそれらの組み合わせである。
【0013】
水コンパートメントと、最初は種子を含み、発芽後は植物を含む植物コンパートメントとの、直接の接触を回避することによって、種子および植物の病原体汚染が回避される。汚染回避のために、栄養物を含む水が病原体を含まないことを、水コンパートメントへの導入前に確実なものとしうるが、それは必須ではない。さらに、水が汚染されることがあっても、フィルタによって病原体を植物から隔てておくことができる。
【0014】
2つのコンパートメントを密閉するために、容器にさらに半透過性フォイルを適用する。このフォイルは、ガスおよび(水)蒸気の交換を可能にするが、環境中に存在しうる病原体および汚染物は遮断する。
【0015】
一態様においては、水および栄養物を、植物コンパートメントと水コンパートメントにより規定される空間、すなわち、フィルタを含む植物コンパートメントの底と、水コンパートメントの底(この態様においては事実上、容器全体の底でもある)との間の空間に入れる。植物を上下逆さまに栽培すること、したがって水容器の底が容器全体の上面となることも、通常好ましくはないが、当然可能である。
【0016】
植物の根は、水および栄養物を、それを分布させ根に提供する運搬手段、とりわけマットから吸収する。したがって、野菜、キノコまたはハーブの根は、マット上面の上に、また、マット中に、およびマットを通って伸長しうる。
【0017】
他の一態様においては、水コンパートメントは、水および栄養物を含むバッグで形成される。バッグは、植物コンパートメント底と水コンパートメント底により規定される空間に代わるものである。マットは好適には、バッグの上部の上に配置され、野菜、キノコまたはハーブを、そのマット中またはマット上に生育させる。この態様において、フィルタは、バッグの、使用時にマットに接する面に配置される。これは通常、バッグが植物コンパートメント底の上に配置される場合にバッグ上面でありうる。
【0018】
他の一態様においては、水コンパートメントは、適切な扱いのために、硬質材料製である。植物コンパートメントは好適には、バッグの形態である。そのようなバッグ用の材料は、どのような化合物も透過させないものであることが好ましい。バッグの形態の植物コンパートメントは、シードマットおよびフィルタを含む。フィルタは、水コンパートメントおよびシードマットの両方に接し、それにより、水および栄養物を、発芽する(生育し始める)種子、菌糸体もしくは胞子、および/または生育する野菜、キノコもしくはハーブに提供する。
【0019】
種子は好ましくは、滅菌されており、浮遊しないようにマット中に組み込まれる。あるいは、種子は、接着剤または糊によってマットに固定される。水および栄養物は好適には、標準的な水耕用の水で構成される。しかしながら、本発明の方法を用いて野菜、キノコまたはハーブの生育を最適に促進するために、より特別な配合を適用することができる。
【0020】
野菜、キノコまたはハーブの十分な生育までの栽培は、好適には小売販売店、または小売販売店の近辺で行われる。好適には、農産物は小売販売店の貯蔵室または地下室で栽培される。このようにして輸送コストが抑えられる。さらに、農産物は、収穫から販売場所への輸送までの間の貯蔵の必要がなく、したがって、より新鮮である。小売販売店は好適にはスーパーマーケットであるが、他の種類の店であってもよい。
【0021】
本発明の方法は、必ずしも小売販売店自体が実施する必要はない。地域の複数の小売販売店に物品提供する地域施設において農産物を生育することも可能であり、この場合も輸送コストが低いという利点は部分的に保たれる。
【0022】
生育設備は好ましくは、適切な強度および色の光、特に、よく知られた同化照明を提供するよう設計された、特別な照明システムを備える。そのようなシステムは、野菜、キノコまたはハーブの種類に特に適合する明暗サイクルを提供するよう、自動的にコントロールされうる。さらに、温度および湿度のレベルを注意深く調節することが好ましい。また、システム内の気流レベルは、適用される空気の質と同様に、非常に重要である。感染の可能性を最小限にするために、空気を濾過することが好ましい。
【0023】
野菜、キノコまたはハーブの栽培に先立ち、野菜もしくはハーブの種子またはキノコの胞子を、植物コンパートメントの底またはバッグの上、特に、植物コンパートメントの底またはバッグ(水コンパートメントを形成する)の上に配置される毛管マットの上もしくは中に配置する。2つのコンパートメントが容器を構成し、これを次いで密閉する。あるいは、種子または胞子の代わりに、野菜もしくはハーブの発芽した種子、実生苗もしくは苗、またはキノコの菌糸体を用いる。
【0024】
種子または胞子は、発芽するために、液体、例えば水または緩衝液と接触する必要がある。好適には、容器の密閉は、そのような液体を容器の水コンパートメントに入れた後に行う。農産物が消費に供される時まで容器は開封されないので、容器には、十分生育した農産物を得るのに必要なすべての栄養物および液体を密閉前に入れておくべきである。
【0025】
好適には、容器を透過性膜で密閉する。膜は、例えば酸素(O2)、二酸化炭素(CO2)および水蒸気を透過させるが、汚染物および病原体、例えばウイルス、細菌、真菌、原生生物または昆虫は透過させないことが好ましい。このようにして、農産物は、汚染物および病原体のない環境で生育する。農産物の抵抗性要件は、農産物を温室または畑で生育させる場合と比較してはるかに緩やかであるかまたは無くてもよい。各植物またはキノコは個別に包装され、他の植物に混入すること、または混入されることはあり得ない。したがって、小売販売者は、抵抗性のより低い種子を使用することができ、したがって、生育コストがより低く抑えられるので、コストの点でより有利である。
【0026】
種子もしくは胞子の播種、または発芽した種子、実生苗、苗もしくは菌糸体の植え付けの後、容器を、農産物が販売され消費者が開封するまでは開封されない膜で密閉する。したがって、農産物は、それ自体の取り扱いの必要はなく、極めて衛生的に保たれる。
【0027】
一態様においては、シードマットは、生育容器内で水と接触させられる。このこととマットの毛管作用によって、種子の発芽が誘発され、発芽した種子から苗が生育しうる。
【0028】
本発明の方法は、葉菜類、特にレタス、エンダイブ、ルッコラ、コーンサラダ、チャード、リーフビート、ホウレンソウ、ラディッシュに特に好適である。野菜は、スプラウト野菜、例えばクレス、ビートスプラウト、アルファルファ、ブロッコリスプラウト、豆もやし、フェンネルスプラウト、キャベツスプラウト、ガーリックスプラウト、リーキスプラウト、豆苗、ひよこ豆スプラウト、ラディッシュスプラウトであってもよい。
【0029】
レタスの例は、リーフレタス、ヘッドレタスまたはベビーリーフレタスである。ベビーリーフレタスについては、複数の異なるレタス品種を用いて魅力ある混合物を得ることができる。一態様においては、2種またはそれ以上の異なるレタス品種の種子を用いて、異なるリーフレタスまたはヘッドレタス植物の混合物を得る。
【0030】
レタスのような葉菜類は、十分生育するのに約4~5週間を要しうる。レタスは収穫されるのではなく容器ごと販売されるので、シェルフライフは4週間でありうる。レタスは販売後3週間以内に消費されることが好ましい。本発明によって生育される農作物のシェルフライフには複数のファクターが影響するが、そのうちの2つについて特に説明する。十分生育した農産物を貯蔵する温度が重要である。十分生育した農産物の入った容器は、0~10℃の温度で貯蔵することが好ましい。容器を2~6℃の温度で貯蔵することがより好ましい。もう1つ重要なのは、容器上の半透過性フォイルの存在である。十分生育した農産物の入った容器の湿度レベルを良好に調節するために、半透過性フォイルを、ガス交換のための透過性がより低い蓋またはフォイルで覆うことが好ましい。しかしながら、元の半透過性フォイルを覆う場合でも、ある程度のガス交換は依然可能であるべきである。
【0031】
ハーブは例えば、チャイブ、パセリ、バジル、ディル、コリアンダー、シラントロ、ミント、オレガノ、ローズマリー、タイム、マジョラム、レモンバーム、タラゴン、セージから選択される。ある特定の態様においては、ハーブの混合物、例えばイタリアンハーブミックスまたはフレンチハーブミックスを生産しうる。
【0032】
キノコの混合物も、複数の異なる胞子を用いることにより生産しうる。本発明の方法は、ポルトベロマッシュルームのような大型キノコを1つまたは少数得るために用いることもできる。
【0033】
特定の態様において、種子は、種子担体の形で、例えばシードマット、シードバンドまたは任意の他の形で提供しうる。これは、種子担体をコンパートメントに配置することで自動的に適切な種子間隔を得るように、特に野菜またはハーブの混合物の場合に実用的である。
【0034】
容器は好適には、野菜、キノコまたはハーブのための栄養物を含む。農産物の種類に応じて、適当な量の栄養物を水に添加することができる。
【0035】
容器には、野菜、キノコまたはハーブに関する情報を記載したラベルを付けることが好ましい。そのような情報には、例えば、野菜の名称、栄養成分、賞味期限および価格が含まれる。そのような販売に必要な情報に加え、他の情報、例えば調理法を含めることもできる。容器にそのような情報を含む包装紙を適用してもよい。
【0036】
ラベルまたは包装は、容器の密閉前または密閉直後に適用しうる。ラベルまたは包装は、小売販売所に運ぶ直前に適用することが好ましい。ラベルまたは包装を適用する際は、容器上面を、容器内への光を遮るように覆うことがないように、注意すべきである。
【0037】
本発明は、コンシューマーレディの野菜、キノコまたはハーブを生産するための、容器、播種または植え付け材料、および透過性膜を含むセットにおいて、容器が、野菜、キノコまたはハーブを入れるための植物コンパートメント、ならびに水および栄養物を入れるための水コンパートメントを含み、ここで、該2つのコンパートメントの一方に、汚染物および病原体が植物コンパートメントに入るのを阻止しながら水および栄養物が植物コンパートメントに入るのを可能にする手段が提供されている、セットにも関する。
【0038】
別の態様においては、水コンパートメントは、水および栄養物を含む、フィルタを備えるバッグであり、該バッグは容器の内部に含まれ、野菜、キノコまたはハーブは、バッグ上部またはその上において、特にバッグ上部の上に配置される毛管マットの中または上で、生育させる。バッグに入れられた水および栄養物がマットに入るのを許すフィルタは、マットに接触させられ、したがって、好適にはバッグ上部に配置される。予め調製されたバッグを用いることの利点は、栄養物を含む水を、病原体のない環境で調製しバッグに充填することができ、汚染の可能性のあるさらなる取り扱いに付す必要がない、ということである。バッグは好適には容器内に配置される。好適には、バッグの形態の水コンパートメントを含む容器の上部を、本書中に説明するように半透過性フォイルで密閉する。
【0039】
他の一態様においては、水コンパートメントは、適切な取り扱いのために、硬質材料製である。植物コンパートメントはバッグの形態である。そのようなバッグ用の材料は、どのような化合物も透過しないものであるべきであり、適当なフィルムまたはフォイルから製造される。バッグの形態の該植物コンパートメントは、シードマットおよびフィルタを含む。フィルタは、水コンパートメントおよびシードマットの両方に接する。マットは、その毛管吸収力によって、水および栄養物を、発育する種子、菌糸体もしくは胞子、および/または生育する野菜、キノコもしくはハーブに供給する。植物コンパートメントは、上部が開放されているか、または上面に穴を有し、そこを通って野菜、キノコまたはハーブは発育および生育することができる。
【0040】
本発明の方法およびセットの両方に関して、容器の大きさおよび形は、生産する十分生育した野菜もしくはハーブの大きさおよび形、または生産するキノコの量に対応することが好ましい。容器は、任意の他の形であってもよい。
【0041】
好適には、密閉用の膜は少なくとも部分的に、特に縁部分において、粘着性である。あるいは、密閉用の膜をヒートシーラーによって容器に取り付ける。そうして、密閉用の膜を、容器の開放部に対して容器を密閉するように容易に貼り付けることができる。
【0042】
セットの一態様において、容器内に既に種子が配置され、容器は既に膜で密閉されている。この態様において、容器内に水分が存在すべきではないが、これは、水分は早過ぎる発芽をもたらしうるからである。そして、容器に、流体の導入のために、容器の植物コンパートメントと水コンパートメントの間の空間への流体の進入を可能にする手段を提供する。そのような手段は例えば、汚染物および病原体の進入を防ぐバルブ手段である。
【0043】
本発明はさらに、本発明の方法によって得られる、野菜、キノコまたはハーブを含む容器に関する。容器は好適には、農産物の形に適合するものである。容器は角形のボックス、長い角形のボックスもしくはチューブ、または任意の他の形でありうる。ある特定の態様においては、容器は二重底を有し、その間に、植物が十分生育するために必要な水および栄養物を収容する空間が規定される。一態様においては、二重底は、2つのボックスを使用し、一方を他方の中に配置して、内部ボックスの底と外部ボックスの底の間に空間を残すことにより形成される。その場合、内部ボックスは植物コンパートメントであり、外部ボックスは水コンパートメントである。
【0044】
本発明は、栽培家の手によることなく実施できる。小売販売者は種子または種子マットを種子会社から直接仕入れることができる。野菜供給プロセスの1ステップがもはや不要であるから、小売販売者は、野菜、キノコおよびハーブを自らの手で顕著に低下されたコストで生産することができる。
【0045】
本発明を添付の図面によりさらに説明する。図面間で同様の参照番号は、同じかまたは対応する部分を指す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】
図1は、本発明の容器の一態様の分解立体図である。
【
図4A】
図4Aは、初期段階にある、本発明の別の態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1に示す態様は、植物コンパートメントを形成するボックス1、および水コンパートメントを形成する、より大きいボックス2を含む。さらに、ボックス1中に適合する、種子4を伴うマット3を示す。ボックス1はその底にフィルタ5を有する。膜6は、2個のボックスにより構成される容器を密閉するためのものである。ボックス2には水7が入れられている。
【0048】
図2Aは、
図1の容器の側面図である。
図2Bは、ボックス1および2の2つの底8および9が、それらの間に空間10を形成していることを示す。この空間10には、水および栄養物を含む液体培地3が入れられている。植物コンパートメントを形成する内部ボックス1の底8には、水3を空間10からボックス1内に進入させるが、微生物が水コンパートメントから植物へと通過するのは阻止し、生育する植物が栄養物を取り込むことは依然可能にする、フィルタ6が含まれる。この態様において、シードマット4の使用が想定される。シードマットは毛管作用を有し、栄養物および水の取り込みを促進する。
図2Cに示すように、根11はシードマット5内に伸長することができるが、ボックス1の底8を貫通しない。したがって、根は、空間10に入れられた水および栄養物と接触しない。
【0049】
図2Dは、十分生育した野菜15を伴う、ほぼ完成した生産物を示す。水3は該植物によって消費し尽くされており、ボックス1および2の底8および9の間の空間10は無くなっている。
図3には、ボックスにラベルが付けられ、小売販売所に並べる用意ができているものを示す。
【0050】
図4Aには、水コンパートメントが外部ボックスではなく植物コンパートメント19の底18の上に配置されたバッグ17である、別の態様を示す。この場合、植物コンパートメントが外部ボックスである。バッグ17は、液体培地20、すなわち水および栄養物を含み、その上面には、植物コンパートメント15への水および栄養物の進入のみを許し、液体培地中に存在しうる汚染物および病原体は進入させないフィルタ21が提供されている。バッグ17の上に毛管マット22が配置されている。種子が該マットの上に配置されるか、または該マットと一体化される。植物コンパートメントを形成するボックスは、ガス交換を可能にするが汚染物および病原体はやはり透過させない透過性膜24で密閉される。
【0051】