(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】観察装置、観察方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20230412BHJP
G01N 21/84 20060101ALI20230412BHJP
C02F 3/12 20230101ALI20230412BHJP
G03B 15/03 20210101ALI20230412BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20230412BHJP
【FI】
G01N21/17 A
G01N21/84 Z
C02F3/12 P
G03B15/03 V
G03B15/00 T
(21)【出願番号】P 2019023580
(22)【出願日】2019-02-13
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】390014074
【氏名又は名称】前澤工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 亮
【審査官】小野 健二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0201792(US,A1)
【文献】特開2003-080236(JP,A)
【文献】特開2010-190912(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N21/17-G01N21/61
G01N21/84-G01N21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に含まれる被写体を観察する観察装置において、
前記被写体に光を照射する照射手段と、
前記被写体に近接するとともに、前記照射された光のうち前記被写体を通過した光を受光する受光部を有し、前記受光部によって受光された光を画像信号に変換する変換手段とを備え、
前記変換手段は
、前記受光部に固定され前記受光部を保護する保護手段を有し、
前記受光部は水平方向に対して0.5度以上10度以下の範囲で傾斜して
おり、
前記保護手段は前記被写体を保持し、前記受光部とともに一体的に傾斜していることを特徴とする観察装置。
【請求項2】
前記被写体は採水された水に含まれる微生物又は水中の濁質を除去する際に生成されるフロックであることを特徴とする請求項1記載の観察装置。
【請求項3】
前記変換手段は前記画像信号を格納する格納手段を有することを特徴とする請求項1又は2記載の観察装置。
【請求項4】
前記変換手段に接続され、前記変換手段から前記画像信号を受信する情報処理装置を備え、
前記情報処理装置は、
前記画像信号を受信して画像データを生成するとともに、前記画像データの特徴量を抽出する抽出手段と、
前記特徴量に基づいて前記被写体を含む水の情報を特定する特定手段と、を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の観察装置。
【請求項5】
液体に含まれる被写体に光を照射する照射手段、前記被写体に近接する受光部、及び前記受光部に固定された保護手段を備え、前記受光部は水平方向に対して0.5度以上10度以下の範囲で傾斜して
おり、前記保護手段は前記被写体を保持し、前記受光部とともに一体的に傾斜している観察装置を用いて前記被写体を観察する観察方法において、
前記被写体に照射された光のうち前記被写体を通過した光を前記受光部が受光する受光ステップと、
前記受光部が受光した光を画像信号に変換する変換ステップとを有することを特徴とする観察方法。
【請求項6】
液体に含まれる被写体に光を照射する照射手段、前記被写体に近接する受光部、及び前記受光部に固定された保護手段を備え、前記受光部は水平方向に対して0.5度以上10度以下の範囲で傾斜して
おり、前記保護手段は前記被写体を保持し、前記受光部とともに一体的に傾斜している観察装置を用いて前記被写体を観察する観察方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記観察方法は、
前記被写体に照射された光のうち前記被写体を通過した光を前記受光部が受光する受光ステップと、
前記受光部が受光した光を画像信号に変換する変換ステップとを有することを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は微生物等の被写体を観察する観察装置、観察方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、下水等の排水を、有機物を酸化分解する微生物を含む活性汚泥によって処理する排水処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1記載の排水処理装置は生物処理槽及び最終沈澱池を備える。生物処理槽では、活性汚泥によって生物処理が実行され、処理対象の排水に含まれる有機物等が除去される。次いで、生物処理が実行された後の排水(以下、「処理済水」という。)は最終沈澱池に移送される。最終沈澱池では、処理済水に含まれる活性汚泥が処理済水から沈降分離される。続いて、活性汚泥が沈降分離された処理済水(以下、「汚泥除去水」という。)は消毒されて河川等に放流されるとともに、処理済水から沈降分離された活性汚泥は生物処理槽に返送される。
【0003】
ところで、生物処理槽で実行される生物処理に関する運転方法を間違えると、活性汚泥に含まれる微生物の種類や分布を示す菌叢が変化し、排水処理が円滑に実行されない場合がある。具体的に、生物処理槽の運転方法を間違えると、糸状に増殖する糸状性微生物が活性汚泥に繁殖し、その結果、活性汚泥は沈降性の悪いバルキング汚泥に変化するときがある。
【0004】
活性汚泥がバルキング汚泥に変化すると、バルキング汚泥は最終沈澱池で沈降し難いため、処理済水からバルキング汚泥が沈降分離されないバルキング現象が発生し、汚泥除去水が適切に得られない。したがって、バルキング現象が発生したとき、適切な措置を施す必要があるが、バルキング現象の原因は多岐に亘るとともに、活性汚泥を構成する微生物も多種多様であるため、バルキング現象に対する措置は複数存在し、複数存在する措置の中から適切な措置を選択することは容易でない。また、バルキング現象が発生したとき、その菌叢をバルキング現象が発生する前の正常な菌叢に戻す必要があるが、菌叢の正常化には長い時間がかかるため、排水処理の機能は長期間停止する。
【0005】
これに対応して、活性汚泥に含まれる微生物の各々の変化を連続的又は一定の時間毎に観察すれば、バルキング現象に対する適切な措置を選択するのに役立ち、また、活性汚泥中の微生物の菌叢変化が初期段階で認識されるので、生物処理槽の運転条件の調整によってバルキング現象が短期間で解消するのに役立つと期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、現在、微生物は顕微鏡によって観察され、その微生物の観察は高い専門性を必要とするため、排水処理装置が設置されている全ての排水処理場の微生物を顕微鏡で観察することは人材を確保する観点から困難である。したがって、微生物等の被写体を連続的又は一定の時間毎に確実に観察することは事実上行われていないという実情がある。
【0008】
本発明の目的は、被写体を連続的又は一定の時間毎に確実に観察することができる観察装置、観察方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の観察方法は、液体に含まれる被写体を観察する観察装置において、前記被写体に光を照射する照射手段と、前記被写体に近接するとともに、前記照射された光のうち前記被写体を通過した光を受光する受光部を有し、前記受光部によって受光された光を画像信号に変換する変換手段とを備え、前記変換手段は、前記受光部に固定され前記受光部を保護する保護手段を有し、前記受光部は水平方向に対して0.5度以上10度以下の範囲で傾斜しており、前記保護手段は前記被写体を保持し、前記受光部とともに一体的に傾斜していることを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明の観察装置は、液体に含まれる被写体に光を照射する照射手段、前記被写体に近接する受光部、及び前記受光部に固定された保護手段を備え、前記受光部は水平方向に対して0.5度以上10度以下の範囲で傾斜しており、前記保護手段は前記被写体を保持し、前記受光部とともに一体的に傾斜している観察装置を用いて前記被写体を観察する観察方法において、前記被写体に照射された光のうち前記被写体を通過した光を前記受光部が受光する受光ステップと、前記受光部が受光した光を画像信号に変換する変換ステップとを有することを特徴とする。
上記目的を達成するために、本発明のプログラムは、液体に含まれる被写体に光を照射する照射手段、前記被写体に近接する受光部、及び前記受光部に固定された保護手段を備え、前記受光部は水平方向に対して0.5度以上10度以下の範囲で傾斜しており、前記保護手段は前記被写体を保持し、前記受光部とともに一体的に傾斜している観察装置を用いて前記被写体を観察する観察方法をコンピュータに実行させるプログラムであって、前記観察方法は、前記被写体に照射された光のうち前記被写体を通過した光を前記受光部が受光する受光ステップと、前記受光部が受光した光を画像信号に変換する変換ステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、被写体を連続的又は一定の時間毎に確実に観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る観察装置によって観察される排水を処理するための排水処理装置を概略的に示すブロック図である。
【
図2】
図1における生物反応槽に含まれる活性汚泥を観察する観察装置を説明するために用いられる図である。
【
図3】
図2の観察装置によって実行される活性汚泥の観察処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図2の観察装置によって観察される微生物を含む画像示す写真である。
【
図5】
図2の観察装置に接続される情報処理装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る観察装置20によって観察される排水を処理するための排水処理装置10を概略的に示すブロック図である。
【0014】
図1の排水処理装置10は、沈砂池11、最初沈殿池12、生物反応槽13、最終沈澱池14、及び滅菌槽15を備える。処理される排水は、まず、沈砂池11に流入し、排水中に含まれる石や木片等の比較的大きな異物が排水から除去され、比較的大きな異物が除去された排水は最初沈殿池12に流入する。最初沈殿池12では、沈砂池11で除去されなかった比較的小さな異物(以下、「初沈汚泥」という。)が除去され、初沈汚泥が除去された排水は生物反応槽13に流入する。生物反応槽13では排水中の有機物等が活性汚泥に含まれる微生物によって除去され、有機物等が除去された排水は最終沈澱池14に流入する。
【0015】
なお、生物反応槽13はポンプPを備え、活性汚泥が分散されている排水がポンプPによって生物反応槽13から採水される。最終沈澱池14では、活性汚泥が除去され、活性汚泥が除去された排水は滅菌槽15に流入し、消毒された後に河川等に放流される。また、最終沈澱池14で除去された活性汚泥の一部は返送汚泥として生物反応槽13に返送される。
【0016】
図2は、
図1における生物反応槽13に含まれる活性汚泥を観察する観察装置20を説明するために用いられる図であり、
図2(A)は観察装置20の構成を説明するために用いられる図であり、
図2(B)は観察装置20の外観を示す図であり、
図2(C)は
図2(B)の観察装置20の部分断面図である。
【0017】
図2(A)の観察装置20は、CCDセンサやCMOSセンサ等のイメージセンサである撮像素子21(変換手段)、撮像素子21を保護する保護ガラス22(保護手段)、及び光源23(照射手段)を備え、保護ガラス22は撮像素子21に近接して配置し、例えば、絶縁性の接着剤を用いて固定される。これにより、撮像素子21が排水に接触しないので、排水に汚染されるのを防止することができる。光源23は、例えば、LEDランプであり、光源23から照射された光は保護ガラス22を介して撮像素子21(受光部21a)に到達する。
【0018】
撮像素子21は受光した光をデジタル画像信号に変換する。撮像素子21は、例えば、情報処理装置50に接続され、デジタル画像信号を情報処理装置50に出力し、情報処理装置50は撮像素子21によって変換されたデジタル画像信号を受信してデジタル画像信号に基づく画像データを生成する。このとき、観察装置20はHDD等の記憶媒体(格納手段)を備えていてもよく、撮像素子21によって変換されたデジタル画像信号はその記憶媒体に格納される。生成された画像データは情報処理装置50に格納されるとともに、例えば、情報処理装置50に接続される表示装置24に表示される。なお、撮像素子21の画素数は100万画素(1MP)以上がよい。
【0019】
保護ガラス22が固定された撮像素子21及び光源23は、例えば、筺体に格納され、撮像素子21及び光源23の距離は一定に保持されている(
図2(B)及び
図2(C))。このとき、光源23は撮像素子21の中央に光を照射するように位置し、その光の光軸(
図2(A)中の光軸L)は保護ガラス22及び撮像素子21の受光部21aにほぼ直交している。なお、光源23から照射された光が撮像素子21に集光されるようにレンズや反射鏡又は光筒(
図2(C)中の光筒25)が用いられてもよい。また、微生物を含む排水を保護ガラス22上に滴下可能なように、筐体は開放可能に構成されていてもよい。
【0020】
図3は、
図2の観察装置20によって実行される活性汚泥の観察処理の手順を示すフローチャートである。
【0021】
図3において、まず、ポンプPが生物反応槽13から、微生物を有する活性汚泥が分散されている排水(以下、「観察対象水」という。)を採水し(S301)、観察対象水は保護ガラス22の上に滴下される(S302)。次いで、光源23から保護ガラス22の上に滴下された観察対象水に対して光が照射され(S303)、撮像素子21は光源23から照射され且つ観察対象水を通過した光を受光し(S304、受光ステップ)、受光した光をデジタル画像信号に変換する(S305、変換ステップ)。
【0022】
この場合において、微生物が観察対象水に含まれているとき、光源23から照射された光は微生物を透過するが、その透過率は100%ではない。すなわち、光源23から照射された光は観察対象水に含まれる微生物の透過率に応じて撮像素子21に到達する。したがって、撮像素子21は光源23から照射された光のうち観察対象水及び保護ガラス22を順次通過した光を受光し、受光した光をデジタル画像信号に変換する。その後、撮像素子21が変換したデジタル画像信号は、例えば、撮像素子21に接続された情報処理装置50に出力され、情報処理装置50は画像データを生成する(S306)。生成された画像データは、例えば、情報処理装置50に接続されている表示装置24に表示される。
【0023】
図3の観察処理によれば、光源23から照射され且つ観察対象水を通過した光はデジタル画像信号に変換されるが(S305)、微生物が観察対象水に含まれているとき、光源23から照射された光は観察対象水に含まれる微生物の透過率に応じて撮像素子21に到達する。その結果、微生物が含まれる観察対象水に基づくデジタル画像信号から生成される画像データには、光源23からの光の少なくとも一部を透過しない微生物の形状に応じた影又はその輪郭が含まれる(
図4)。したがって、観察対象水に含まれる微生物の形状が目視で把握されるので、例えば、観察対象水の採水(S301)及び観察対象水の保護ガラス22への滴下(S302)が連続的又は一定の時間毎に自動的に行うように制御されるとき、微生物等の被写体を連続的又は一定の時間毎に確実に観察することができる。
【0024】
また、観察対象水は保護ガラス22の上に滴下されることによって観察されている(S302)。保護ガラス22は撮像素子21が有する受光部21aに固定されているので、観察対象水は保護ガラス22に接触するとともに、撮像素子21に極めて近接している。したがって、観察対象水及び保護ガラス22を順次通過した光が受光部21aに受光されるまでに拡散しないので、観察対象水に含まれる微生物等の形状に応じた輪郭が不明瞭になるのを防止することができる。
【0025】
ところで、観察対象水が保護ガラス22の上に滴下されると、所定の厚みを有する観察対象水の水滴がガラス上で形成されるため、光源23から保護ガラス22の上に滴下された観察対象水に対して光が照射されたとき、所定の厚みを有する観察対象水に対して照射された光が観察対象水中の複数の微生物や微粒子を通って撮像素子21に到達する場合がある。このとき、撮像素子21によって変換されたデジタル画像信号に基づいて生成される画像データは、複数の対象物の影が合成された陰を示し、微生物の形状に応じた影又はその輪郭は画像データから把握されない。
【0026】
これに対応して、撮像素子21が水平方向に対して傾斜してもよい。具体的に、撮像素子21は水平方向に対して0.5度以上10度以下の範囲で傾斜する。これにより、保護ガラス22の上に滴下された観察対象水の重力に基づいて余分な観察対象水が撮像素子21の傾斜方向に流れ、個々の微生物を観察するのに最適な観察対象水の水滴の厚さを保護ガラス22の上に確保することができる。その結果、観察対象水に対して照射された光が保護ガラス22の上に残存した微生物による光の透過率に応じて撮像素子21に到達するので、撮像素子21が形成したデジタル画像信号に基づいて生成される画像データから微生物の形状に応じた影又はその輪郭が把握されることができる。
【0027】
また、異なる対応として、撮像素子21が水平方向に対して傾斜していない場合であっても、観察対象水の粘性や濁度等に応じて観察対象水を水で希釈し、希釈された観察対象水を保護ガラス22の上に滴下してもよい。これにより、上記と同様の効果、すなわち、微生物の形状に応じた影又はその輪郭を把握することができる。
【0028】
なお、観察装置20は観察対象水に含まれる微生物を観察するときに使用されることを上述したが、これに限られない。例えば、河川等の原水から飲料水を得るために原水に施される上水処理が知られている。上水処理は原水中の濁質を除去するために原水に凝集剤を添加する凝集剤添加工程を有する。凝集剤添加工程において、まず、凝集剤が原水に添加されると、原水中に原水の濁質が凝集するための凝集核が形成され、次いで、形成された凝集核に濁質が凝集してフロック(集塊)が形成され、フロックは原水中に分散される。フロックが分散される原水や凝集核を有する原水を観察対象水とした場合、観察装置20は観察対象水に含まれるフロック又は凝集核を観察するときにも使用される。すなわち、観察装置20は液体に含まれる微小な固体を被写体として観察するときに使用され、液体に含まれる被写体の形状に応じた影又はその輪郭を把握することができる。
【0029】
図5は、
図2の観察装置20に接続される情報処理装置50の構成を概略的に示すブロック図である。
【0030】
図5の情報処理装置50はCPU51(抽出手段、特定手段)、RAM52、ROM53、及びHDD54を備え、これらは互いに接続されるとともに、CPU51は観察装置20に接続されている。ROM53又はHDD54はプログラム及び各種データ等を格納する。各種データは、例えば、撮像素子21が出力したデジタル画像信号及びそのデジタル画像信号に基づいて生成された画像データ、並びに、これらの画像データに各画像データに関する情報を関連付けた学習データである。
【0031】
したがって、観察対象水に含まれる微生物が観察装置20によって観察され、撮像素子21がデジタル画像信号を出力したとき、ROM53又はHDD54はそのデジタル画像信号及びこれに基づいて生成された画像データ、並びに、菌叢状態を数値化した活性汚泥性状データを関連付けた学習データを格納する。なお、当該学習データには他の情報、例えば、観察対象水の窒素の量及びリンの量等の水質データを関連付けてもよい。
【0032】
また、観察対象水に含まれる凝集核が観察装置20によって観察され、撮像素子21がデジタル画像信号を出力したとき、ROM53又はHDD54はそのデジタル画像信号及びこれに基づいて生成された画像データ、並びに、凝集核が成長して将来形成されるフロックの特徴や観察対象水の濁度等(以下、「凝集核関連データ」という。)を関連付けた学習データを格納する。
【0033】
CPU51は、ROM53又はHDD54に格納されたプログラムをRAM52に展開して実行し、また、ROM53又はHDD54に格納されたデジタル画像信号に基づいて画像データを生成する。さらに、CPU51は学習データを活用して深層学習を実行する。また、CPU51は深層学習を実行した後に、新たな画像データを取得し、その画像データに含まれる微生物から活性汚泥性状データを特定し又はその画像データに含まれる凝集核から凝集核が成長して形成されるフロックの形状等の詳細な情報を特定する。
【0034】
続いて、CPU51が実行する深層学習の方法及び深層学習後に新たな画像データを取得してその画像データに含まれる被写体に関する情報を特定する方法について説明する。ここでは、CPU51が微生物を含む画像データ及びその画像データに関連付けられている活性汚泥性状データを学習し、その後、微生物が含まれる画像データから当該微生物に関する活性汚泥性状データを特定する方法について説明する。
【0035】
ROM53又はHDD54は、例えば、撮像素子21が出力したデジタル画像信号に基づいて生成された画像データ、並びに、菌叢状態を数値化した活性汚泥性状データを関連付けた学習データを格納している。ここで、学習データには、画像データに応じて算出された特徴量も付加されている。
【0036】
具体的に、CPU51は、画像データに、例えば、拡大、縮小、トリミング等の画像サイズの変更、輝度調整、又は色調整の画質の調整等の加工を施す。次いで、CPU51は、画像データの局所的な特徴量を抽出するフィルタ処理である畳み込み演算処理、畳み込み演算処理によって抽出された特徴量を残してデータを圧縮するプーリング演算処理、又は畳み込み演算処理やプーリング演算処理によって得られる全ての画像データを一つに結合し、活性化関数によって一次元データに変換して出力する全結合型演算処理を加工が施された判別対象画像データに施して特徴量を算出する。
【0037】
本実施の形態では、(1)畳み込み演算処理、(2)プーリング演算処理、(3)複数回(例えば、2~9回)の畳み込み演算処理、及び(4)全結合型演算処理をこの順で施し、これにより、画像データについて最終的に0~1の間の特定の値が特徴量として算出される。算出された特徴量は画像データに付加され、水質データが関連付けられた学習データとしてROM53又はHDD54に格納される。
【0038】
一方、微生物の新たな状態が観察されるとき、撮像素子21は新たにデジタル画像信号を形成して情報処理装置50に出力する。続いて、CPU51は、撮像素子21が出力したデジタル画像信号に基づいて画像データ(以下、「判別対象画像データ」という。)を生成し、判別対象画像データに、例えば、拡大、縮小、トリミング等の画像サイズの変更、輝度調整、又は色調整の画質の調整等の加工を施す。次いで、CPU51は、畳み込み演算処理、プーリング演算処理、又は全結合型演算処理を加工が施された判別対象画像データに施す。本実施の形態では、(1)畳み込み演算処理、(2)プーリング演算処理、(3)複数回(例えば、2~9回)の畳み込み演算処理、及び(4)全結合型演算処理をこの順で施す。これにより、判別対象画像データについて最終的に0~1の間の特定の値が特徴量として算出される。
【0039】
その後、CPU51は判別対象画像データ及び判別対象画像データに基づいて算出された特徴量と、ROM53又はHDD54に格納された学習データとから、判別対象画像データに対応する活性汚泥性状データを特定する。特定された活性汚泥性状データは、判別対象画像データ及び特徴量と関連付けられてログデータとしてROM53に記録されるとともに、学習データとしてROM53又はHDD54に格納される。
【0040】
図5の情報処理装置50によれば、深層学習を実行したCPU51が判別対象画像データ及び判別対象画像データに基づいて算出された特徴量と、ROM53又はHDD54に格納された学習データとから、判別対象画像データに対応する活性汚泥性状データを特定する。判別対象画像データに対応する活性汚泥性状データが特定されると、その判別対象画像データから微生物の菌叢状態が把握される。これにより、高い専門性を必要とする顕微鏡を使用した微生物の観察が困難な場合であっても微生物は連続的又は一定の時間毎に自動的に観察されるので、活性汚泥中の微生物についての菌叢変化を容易に把握することができる。
【0041】
また、情報処理装置50は凝集核を含む画像データと、凝集核関連データとを関連付けた学習データを学習し、その後、凝集核を含む新たな判別対象画像データを取得したとき、微生物を含む画像データから当該微生物に関する活性汚泥性状データを特定するのと同様に、その判別対象画像データに対応する凝集核関連データを特定することができる。すなわち、情報処理装置50は画像データに含まれる被写体及びその被写体に関連付けられている情報を学習した後に、新たな画像データを取得した場合、新たな画像データに含まれる被写体に関連付けられるべき情報を特定することができる。
【0042】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらの実施の形態に何ら限定されるものではない。
【0043】
本発明は上述の実施の形態の1以上の機能を実現するプログラムをネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1以上のプロセッサーがプログラムを読み出して実行する処理でも実現可能であり、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【符号の説明】
【0044】
20 観察装置
21 撮像素子
22 保護ガラス
23 光源
24 表示装置
50 情報処理装置
51 CPU