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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】シート化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/34 20060101AFI20230412BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 8/368 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20230412BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/02
A61K8/368
A61K8/41
A61K8/86
A61Q19/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019047474
(22)【出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2020147537
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小川 綾乃
(72)【発明者】
【氏名】木下 英利
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/084615(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/146398(WO,A1)
【文献】特開2015-093859(JP,A)
【文献】特開2003-095906(JP,A)
【文献】特開2015-117239(JP,A)
【文献】特開2010-163418(JP,A)
【文献】特開2007-176850(JP,A)
【文献】特開2004-075555(JP,A)
【文献】特開2002-212056(JP,A)
【文献】特開2003-095842(JP,A)
【文献】特開2016-088882(JP,A)
【文献】特開2013-209343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
殺菌剤、下記式(1)で表される化合物、ノニオン性界面活性剤およびエタノールを含有し、
殺菌剤が、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、ヒノキチオール、トリクロサン、およびサリチル酸からなる群から選ばれる1種以上を含み、
下記式(1)で表される化合物の含有量が0.005~5.0質量%であり、
ノニオン性界面活性剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、およびポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油からなる群から選ばれる1種以上を含み、
ノニオン性界面活性剤の含有量が0.01~5.0質量%であり、
エタノールの含有量が50.0~90.0質量%であることを特徴とする皮膚外用剤組成物(但し、疎水化ヒドロキシアルキルセルロースと、分子量が150以上であるエステル化合物とを含む組成物を除く)がシート基材に含浸されてなるシート化粧料
【化1】
(式中、nは0~2の整数を表す)
【請求項2】
殺菌剤の含有量が0.01~2.0質量%である、請求項記載のシート化粧料
【請求項3】
式(1)で表される化合物の含有量が、0.005~0.02質量%である、請求項1または2記載のシート化粧料。
【請求項4】
ノニオン性界面活性剤がポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテルである、請求項1~3のいずれか一項に記載のシート化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、殺菌効果の持続性を有する皮膚外用剤組成物がシート基材に含浸されてなるシート化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
人に不快感を与える腋臭は、汗が皮脂と混ざり、汗および皮脂が皮膚常在菌によって分解されることにより生じる。従来、この不快な腋臭を防止するため、殺菌成分を含有する皮膚外用剤組成物が用いられている。例えば、特許文献1~3には、殺菌成分を含有するデオドラント組成物等が記載されている。
【0003】
しかしながら、これらのデオドラント組成物は、塗布後に腋などの塗布対象物に殺菌成分が充分に残存しにくいという問題がある。このため、塗布後時間が経過すると、殺菌作用が充分に得られなくなり、殺菌効果の持続性の観点からは満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-95906号公報
【文献】特開2006-76997号公報
【文献】特開2002-370958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、塗布後に殺菌成分の塗布対象物での残存性に優れ、さらに使用感に優れた皮膚外用剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の化合物およびノニオン性界面活性剤を配合することにより、殺菌成分の残存性に優れ、かつ使用感に優れた皮膚外用剤組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は
〔1〕殺菌剤、下記式(1)で表される化合物、ノニオン性界面活性剤およびエタノールを含有し、下記式(1)で表される化合物の含有量が0.005~5.0質量%であり、ノニオン性界面活性剤の含有量が0.01~5.0質量%であることを特徴とする皮膚外用剤組成物、
【化1】
(式中、nは0~2の整数を表す)
〔2〕殺菌剤が、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、ヒノキチオール、トリクロサン、およびサリチル酸からなる群から選ばれる1種以上を含む、〔1〕記載の皮膚外用剤組成物、
〔3〕殺菌剤の含有量が0.01~2.0質量%である、〔1〕または〔2〕記載の皮膚外用剤組成物、
〔4〕〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の皮膚外用剤組成物がシート基材に含浸されてなるシート化粧料、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、塗布後の殺菌成分の残存性および使用感に優れた皮膚外用剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<皮膚外用剤組成物>
本実施形態に係る皮膚外用剤組成物は、殺菌剤、式(1)で表される化合物、ノニオン性界面活性剤およびエタノールを必須の成分として含有する。また、水を含むことが好ましい。なお、本明細書においては、殺菌剤を「成分(A)」;式(1)で表される化合物を「成分(B)」;ノニオン性界面活性剤を「成分(C)」;エタノールを「成分(D)」;水を「成分(E)」と称する場合がある。
【0010】
本実施形態に係る皮膚外用剤組成物に含有される上記各成分の含有量は、それぞれ、皮膚外用剤組成物中の合計の含有量が100質量%以下となるように、記載の範囲内から適宜選択することができる。なお、本明細書において、「~」を用いて数値範囲を示す場合、その両端の数値を含むものとする。
【0011】
[成分(A):殺菌剤]
本実施形態において使用可能な殺菌剤としては、特に制限されないが、残存性および塗布後の殺菌効果の持続性を効果的に高める観点からは、イソプロピルメチルフェノール、塩化ベンザルコニウム、ヒノキチオール、トリクロサンおよびサリチル酸が好ましい。なかでも、殺菌効果、安全性および安定性の観点から、イソプロピルメチルフェノールを含む殺菌剤が特に好ましい。成分(A)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
皮膚外用剤組成物100質量%中の成分(A)の含有量は、殺菌効果の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.10質量%以上がさらに好ましい。また、安全性の観点からは、2.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がより好ましく、0.50質量%以下がさらに好ましい。
【0013】
[成分(B):式(1)で表わされる化合物]
本実施形態に係る皮膚外用剤組成物は、下記式(1)で表わされる化合物を含有する。なお、下記式(1)で表わされる化合物は不斉炭素原子を有しており、これらの化合物のラセミ体のみならず、これらの化合物の光学活性体、立体異性体およびそれらの混合物や単離されたものも包含する。
【化2】
(式中、nは0~2の整数を表す)
【0014】
成分(B)を皮膚外用剤組成物に配合することにより、塗布後における前記殺菌剤の残存性を顕著に改善することができる。
【0015】
成分(B)としては、入手のし易さの観点から、nが1である3-(メントキシ)プロパン-1,2-ジオールが好ましく、3-(l-メントキシ)プロパン-1,2-ジオールがより好ましい。成分(B)は、式(1)で表わされる化合物のうち、1種単独で用いてもよく、2種以上の混合物(光学異性体や立体異性体を含む)であってもよい。
【0016】
成分(B)は、冷感効果を有する成分として知られている化合物であり、特公昭61-48813号公報、特開平9-217083号公報等に記載されている方法に準じて合成することができる。また、3-(メントキシ)プロパン-1,2-ジオールおよびその光学活性体については、高砂香料工業(株)等より市販されているものを利用することができる。
【0017】
皮膚外用剤組成物100質量%中の成分(B)の含有量は、殺菌剤の残存性向上効果の観点から、0.005質量%以上であり、0.010質量%以上が好ましく、0.015質量%以上がより好ましい。また、成分(B)の含有量は、使用感(べたつき防止)の観点から5.0質量%以下であり、3.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.2質量%以下がさらに好ましい。
【0018】
[成分(C):ノニオン性界面活性剤]
本実施形態に係る皮膚外用剤組成物は、ノニオン性界面活性剤を含有する。ノニオン性界面活性剤は、成分(A)および成分(B)の可溶化剤としても作用し、また、成分(B)による殺菌剤の残存性向上効果をより一層高める役割を果たす。
【0019】
成分(C)としては、特に限定されないが、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド等が挙げられる。なかでも、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルおよびポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油が好ましい。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル等が挙げられる。成分(C)は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
皮膚外用剤組成物100質量%中の成分(C)の含有量は、塗布後の殺菌剤の残存性および塗布後の殺菌効果の持続性の観点から、0.01質量%以上であり、0.03質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましい。また、成分(C)の含有量の上限は、皮膚外用剤組成物の形態に応じて適宜調整することができるが、使用感(べたつき防止)の観点から、5.0質量%以下であり、3.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。なかでも、ローションやジェル等のエタノールおよび水をベースとする形態である場合は、0.80質量%以下が好ましく、0.60質量%以下がより好ましく、0.40質量%以下がさらに好ましい。
【0021】
[成分(D):エタノール]
本実施形態に係る皮膚外用剤組成物は、成分(A)および成分(B)を可溶化し、また使用時の速乾性を向上する目的で、エタノールを含有する。
【0022】
本実施形態に係る皮膚外用剤組成物の成分(D)の含有量は、成分(A)および成分(B)を可溶化し、また使用時の速乾性を向上させるという理由から、10.0質量%以上が好ましく、20.0質量%以上がより好ましく、30.0質量%以上がさらに好ましい。また、安全性の観点からは、90.0質量%以下が好ましく、80.0質量%以下がより好ましく、70.0質量%以下がさらに好ましい。
【0023】
[成分(E):水]
本実施形態に係る皮膚外用剤組成物は、水を含有することが好ましい。本実施形態において使用する水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水等が挙げられる。
【0024】
本実施形態に係る皮膚外用剤組成物中の成分(E)の含有量は、特に制限されず、成分(A)、(B)、(C)、(D)およびその他の成分を除いた残部を、その含有量とすることができる。皮膚外用剤組成物100質量%中の成分(E)の含有量は、水溶性成分の溶解性を担保する観点から、9.0質量%以上が好ましく、19.0質量%以上がより好ましく、29.0質量%以上がさらに好ましい。また、速乾性および使用感の向上の観点からは、89.0質量%以下が好ましく、79.0質量%以下がより好ましく、69.0質量%以下がさらに好ましい。
【0025】
[その他の成分]
本実施形態に係る皮膚外用剤組成物は、上記成分(A)、(B)、(C)、(D)および(E)以外の成分(その他の成分)を含有していてもよい。その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、制汗剤、ノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤、増粘剤、保湿剤、消臭剤、オイル成分、金属イオン封鎖剤、防腐剤、清涼剤、抗炎症剤、植物エキスおよび香料等が挙げられる。
【0026】
制汗剤としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム塩およびパラフェノールスルホン酸亜鉛等が挙げられる。アルミニウム塩としては、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(カリミョウバン)、硫酸アルミニウムアンモニウム(アンモニウムミョウバン)、酢酸アルミニウム、クロルヒドロキシアルミニウムおよびアラントインクロルヒドロキシアルミニウム等が挙げられる。なかでも、クロルヒドロキシアルミニウム、パラフェノールスルホン酸亜鉛および硫酸アルミニウムカリウムが好ましい。制汗剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0027】
皮膚外用剤組成物100質量%中の制汗剤の含有量は、制汗効果の観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.10質量%以上がより好ましい。また、安全性および使用感の観点からは、30.0質量%以下が好ましく、20.0質量%以下がより好ましい。
【0028】
ノニオン性界面活性剤以外の界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸石鹸、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、アルキルエーテルリン酸エステル、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシルメチルタウリン塩、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルグリシン塩、N-アシルグルタミン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルカルボン酸塩、アルキルフェニルエーテルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸およびその塩、N-アシルサルコシンおよびその塩、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸塩等のアニオン界面活性剤;アルキルアミン塩、脂肪酸アミドアミン塩、エステル含有3級アミン塩等のアミン塩、モノアルキル型4級アンモニウム塩、ジアルキル型4級アンモニウム塩、トリアルキル型4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム型4級アンモニウム塩等のアルキル4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等の環式4級アンモニウム塩、塩化ベンゼトニウム等のカチオン界面活性剤;アルキルグリシン塩、カルボキシメチルグリシン塩、N-アシルアミノエチル-N-2-ヒドロキシエチルグリシン塩等のグリシン型両性界面活性剤、アルキルアミノプロピオン酸塩、アルキルイミノジプロピオン酸塩等のアミノプロピオン酸型両性界面活性剤、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアミノ酢酸ベタイン型両性界面活性剤、アルキルヒドロキシスルホベタイン等のスルホベタイン型両性界面活性剤等の両性界面活性剤等が挙げられる。
【0029】
増粘剤としては、グアーガム、デキストリン、デンプンおよびペクチン等の植物由来多糖系化合物;キトサンおよびヒアルロン酸等の動物由来多糖系化合物;キサンタンガム、シクロデキストリン、プルランおよびヒアルロン酸等の微生物由来多糖系化合物;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース等の非イオン性セルロース;カルボキシメチルセルロース等の陰イオン性セルロース;塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース等のカチオン化セルロース;塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]グアーガム等のカチオン化グアーガム等;カルボキシビニルポリマー;アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体が挙げられる。増粘剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
保湿剤としては、ソルビトール、グリセリン等が挙げられる。オイル成分としては、炭化水素類、エステル油、シリコーン等が挙げられる。清涼剤としては、l-メントール等のメントール、成分(B)以外のメントール誘導体およびカンファー等が挙げられる。
【0031】
本実施形態に係る皮膚外用剤組成物は、医薬品、医薬部外品、化粧品等として使用することができる。また、ローション、エアゾール、スティック、ロールオン、クリーム、ジェル、乳液、シート化粧料等の種々の形態に用いることができ、製剤化については、一般に知られている方法により製造すればよい。
【0032】
<シート化粧料>
本実施形態に係る皮膚外用剤組成物をシート基材に含浸させることにより、シート化粧料が得られる。シート化粧料の形状はシート状である。これにより、肌を拭く使用形態での使用性に優れ、携帯性にも優れる。シートの平面形状は、特に限定されないが、例えば、四角形(例えば、正方形、長方形等)、三角形等の多角形;円形、楕円形、半円形;三日月形;樽形;鼓形;キャラクターの形状等が挙げられ、生産性、使用性や梱包性の観点からは四角形が好ましい。また、シート化粧料には、切れ込み部、くり抜き部、凹凸部等の成型が施されていてもよい。シート化粧料のシートの片面の表面積は、特に限定されないが、使用性、携帯性、包装性等の観点から100~500cm2が好ましい。
【0033】
シート化粧料は、シート基材に本実施形態に係る皮膚外用剤組成物を含浸させることにより製造することができる。シート基材に皮膚外用剤組成物を含浸させる方法は、特に限定されず、例えば、折りたたまれた状態のシート基材に皮膚外用剤組成物を注入し含浸させる方法、シート基材に皮膚外用剤組成物をスプレーする方法、印刷法を用いてシート基材に皮膚外用剤組成物を含浸させる方法、皮膚外用剤組成物中にシート基材を浸す方法等が挙げられる。
【0034】
シート基材の材料は、上記皮膚外用剤組成物を含浸可能であれば特に限定されず、通常化粧品として用いられるシート基材を適宜使用可能である。
【0035】
シート基材としては、例えば、天然繊維、合成繊維または半天然繊維からなる織布または不織布等が挙げられる。含浸性および使用感をより一層良好にする観点からは、上記シート基材は、不織布が好ましい。
【0036】
上記天然繊維としては、綿、パルプ、シルク、セルロース、麻、リンター、およびカボック等が挙げられる。上記合成繊維としては、ナイロン、ポリエステル繊維、ポリアクリル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、およびポリエチレンテレフタレート繊維等が挙げられる。上記半天然繊維としては、レーヨン、およびアセテート等が挙げられる。上記の繊維は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
シート基材の表面は、エンボス加工されていてもよい。また、上記シート基材には、フィルム基材が含まれる。
【0038】
シート化粧料における、シート基材に対して含浸された本実施形態に係る皮膚外用剤組成物の質量割合は、特に限定されないが、使用感の観点から、シート基材100質量部に対して、100質量部以上が好ましく、250質量部以上がより好ましい。また、使用感の観点から、600質量部以下が好ましく、500質量部以下がより好ましい。
【0039】
シート化粧料は、乾燥防止、外出時の携帯性、使用時の取り扱い性等の観点から、包装容器に収納されることが好ましい。シート化粧料は、1枚ごとに個別包装されていてもよいし、生産コスト、生産効率等の観点から、複数枚のシート化粧料が同一包装容器内に収納されていてもよい。1つの包装容器に収納されるシート化粧料の枚数は、特に限定されないが、2~50枚(/1包装容器)が好ましい。特に、シート化粧料は複数枚積層し保存した後に使用する際に上下間で使用感の差異が小さいため、10枚(/1包装容器)以上であってもよい。シート化粧料は、二つ折り、三つ折り、四つ折り、十字四つ折り等に折り畳んで包装容器に収納されていることが好ましい。
【0040】
包装容器としては、例えば、袋体(包装袋)、箱状容器等が挙げられる。上記包装容器は、本実施形態に係る皮膚外用剤組成物の揮発を抑制できるものが好ましい。上記包装容器の材質としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂;アルミニウム等の金属等が挙げられる。上記包装容器としては、軽量であり優れた揮発防止効果を有する観点から、表面に金属層が積層または蒸着された樹脂製の包装容器(特に、包装袋)が好ましく、表面にアルミニウム蒸着された樹脂製の包装袋がより好ましい。
【0041】
シート化粧料は、殺菌効果の持続性に優れることから、体臭予防を目的とする化粧料として好適に使用される。本実施形態に係るシート化粧料により拭き取る部位としては、特に限定されず、例えば、顔面(例えば、額、頬、口元等)や、腕、肘、手の甲、指先、足、膝、かかと、首、脇、背中等が挙げられる。
【実施例
【0042】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。なお、配合量は、特記しない限り、有効成分の配合量であり、「質量%」で表す。
【0043】
以下、実施例および比較例において用いた各種材料をまとめて示す。
ノニオン性界面活性剤1:青木油脂工業(株)製のブラウノンDC-620(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル)
ノニオン性界面活性剤2:日本エマルジョン(株)製のEMALEX HC-40(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)
ノニオン性界面活性剤3:太陽化学(株)製のサンソフトQ-8C-C(カプリル酸ポリグリセリル-3)
【0044】
<殺菌剤の残存性試験>
表1および表2に示した組成(配合量)に従い調製した実施例1~10および比較例1~4の皮膚外用剤組成物(20μL)を、ピペットマンで上腕内側部に塗布した。塗布してから60分後に、綿球を使用して、塗布した皮膚外用剤組成物を回収した。具体的には、800μLのエタノールを含浸させた直径14mm、綿100%の綿球(尾崎工業(株)製の綿球#14)を使用して、その一方の面で5往復拭き取り、さらに反対の面で5往復拭き取りを行った。これらの動作を、新しい綿球に交換して計3回実施し、最後にエタノールを含浸させていない綿球で拭き取りを行った。この際も、その一方の面で5往復拭き取り、さらに反対の面で5往復拭き取りを行った。拭き取った綿球は全て同じ50mLチューブに入れ、20mLのエタノールで抽出した。これらを液体クロマトグラフイーで分析を行い、各殺菌剤の面積値を測定した。各殺菌剤の残存性は、成分(B)および成分(C)を含有しない基準比較例(表1では比較例1;表2では比較例4)の面積値を基準値とし、当該基準値に対する増減率を求め、下記の基準に従って評価した。
+++:基準品と比べて面積値が2.0倍以上になっている。
++:基準品と比べて面積値が1.5倍以上、2.0倍未満になっている。
+:基準品と比べて面積値が1.1倍以上、1.5倍未満になっている。
±:基準品と比べて面積値が0.9倍以上、1.1倍未満になっている。
-:基準品と比べて面積値が0.9倍未満になっている。
【0045】
<使用感の評価>
表1および表2に示した組成(配合量)に従い調製した実施例1~10および比較例1~4の皮膚外用剤組成物を、左上腕内側部に0.2g塗布し、右手の人差し指、中指、薬指の三本で組成物が乾くまで塗り広げた。塗り広げてから2分経過後の肌の状態を2名の専門パネルが官能的に評価し、各評価員の評価を総合して決定した。なお、評価結果は下記の基準に従って評価した。
A(優れる):べたつきが全く感じられない。
B(良好):べたつきがほとんど感じられない。
C(不良):明らかにべたつきが感じられる。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】
表1および表2の結果より、殺菌剤、式(1)で表される化合物、ノニオン性界面活性剤およびエタノールを配合した本発明の皮膚外用剤組成物は、塗布後の殺菌成分の残存性および使用感に優れることがわかる。
【0049】
処方例1 シート化粧料
不織布100質量部に下記組成からなる皮膚外用剤組成物400質量部を含浸させて、シート化粧料とした。
イソプロピルメチルフェノール 0.10質量%
3-(メントキシ)プロパン-1,2-ジオール 0.30質量%
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル 0.05質量%
パラフェノールスルホン酸亜鉛 0.10質量%
エタノール 60.00質量%
精製水 残部
合計 100質量%
【0050】
処方例2 ローション
イソプロピルメチルフェノール 0.10質量%
3-(メントキシ)プロパン-1,2-ジオール 0.50質量%
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル 0.40質量%
グリセリン 1.50質量%
1,3-ブチレングリコール 5.00質量%
クエン酸 0.05質量%
クエン酸ナトリウム 0.10質量%
フェノキシエタノール 0.20質量%
エタノール 15.00質量%
精製水 残部
合計 100質量%
【0051】
処方例3 クリーム
イソプロピルメチルフェノール 0.10質量%
3-(メントキシ)プロパン-1,2-ジオール 1.00質量%
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル 2.00質量%
モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 1.50質量%
流動パラフィン 5.00質量%
パラフィン 5.00質量%
ベヘニルアルコール 3.10質量%
ステアリン酸 1.00質量%
トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリル 5.00質量%
グリセリン 1.50質量%
キサンタンガム 0.05質量%
カルボキシビニルポリマー 0.30質量%
フェノキシエタノール 0.20質量%
エタノール 10.00質量%
水酸化カリウム 適量
トコフェロール 適量
エデト酸二ナトリウム 適量
香料 適量
精製水 残部
合計 100質量%
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の皮膚外用剤組成物は、殺菌効果の持続性および使用感に優れた皮膚外用剤組成物として利用できる。