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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】基板処理装置およびその搬送制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20230412BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20230412BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20230412BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/68 A
H01L21/304 648A
H01L21/306 R
H01L21/30 569C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019058734
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020161609
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】河原 啓之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 光治
(72)【発明者】
【氏名】菊本 憲幸
(72)【発明者】
【氏名】墨 周武
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/216476(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0345680(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0064727(US,A1)
【文献】特開2018-147994(JP,A)
【文献】特開2020-017618(JP,A)
【文献】特開2019-087687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304-21/308
H01L 21/02 -21/033
H01L 21/67 -21/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に液体を供給して前記基板の表面を液膜で覆う第1処理部と、
前記液膜を担持する前記基板を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構により搬送される前記基板を受け入れて所定の処理を実行する第2処理部と、
前記基板の表面に形成された前記液膜を撮像する撮像部と、
記液膜が形成されてから前記搬送機構により前記第2処理部へ搬入されるまでの間前記撮像部により撮像された画像を含む複数の画像の差分に基づき、前記搬送機構の動作を制御する制御部と
を備え
前記差分は、2つの画像間の画素ごとの差分の積算値として求められ、
前記制御部は、前記液膜が理想的に担持された状態の前記基板に対応する画像として予め準備された理想画像と、前記基板が前記搬送機構により搬送開始されるよりも前に前記撮像部により撮像された搬送前画像との差分に基づき、前記搬送機構による前記基板の搬送を開始するか否かを判断する、基板処理装置。
【請求項2】
基板に液体を供給して前記基板の表面を液膜で覆う第1処理部と、
前記液膜を担持する前記基板を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構により搬送される前記基板を受け入れて所定の処理を実行する第2処理部と、
前記基板の表面に形成された前記液膜を撮像する撮像部と、
前記液膜が形成されてから前記搬送機構により前記第2処理部へ搬入されるまでの間の互いに異なる時刻にそれぞれ前記撮像部により撮像された複数の画像の差分に基づき、前記搬送機構の動作を制御する制御部と
を備え、
前記差分は、2つの画像間の画素ごとの差分の積算値として求められ、
前記制御部は、前記複数の画像から求めた差分が予め定められた基準量を超える場合と超えない場合との間で、前記第1処理部から前記第2処理部までの搬送にかかる時間を異ならせる、基板処理装置。
【請求項3】
前記第1処理部は、処理チャンバ内で前記基板に対する前記液膜の形成を行い、
前記撮像部は、前記処理チャンバ内に設けられた第1カメラを有する、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
基板に液体を供給して前記基板の表面を液膜で覆う第1処理部と、
前記基板を保持する保持部材を有し、前記液膜を担持する前記基板を搬送する搬送機構と、
前記搬送機構により搬送される前記基板を受け入れて所定の処理を実行する第2処理部と、
前記搬送機構に設けられて前記保持部材と共に移動する第2カメラを有し、前記基板の表面に形成された前記液膜を、前記基板の搬送中に撮像する撮像部と、
前記液膜が形成されてから前記搬送機構により前記第2処理部へ搬入されるまでの間の互いに異なる時刻にそれぞれ前記撮像部により撮像された複数の画像の差分に基づき、前記搬送機構の動作を制御する制御部と
を備え、
前記差分は、2つの画像間の画素ごとの差分の積算値として求められ、
前記制御部は、搬送中に随時撮像された画像と当該画像より先に撮像された画像である基準画像との差分が予め定められた基準量を超えるか否かにより、前記基板へ前記液体を補充するか否かを判断する、基板処理装置。
【請求項5】
前記搬送機構は、搬送される前記基板に前記液体を供給する液体供給機構を有し、
前記制御部は、前記差分が前記基準量を超えると、前記液体供給機構に前記基板への前記液体の供給を行わせる、請求項記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記差分が前記基準量を超えると、前記搬送機構により前記基板を前記第1処理部に戻させ、前記第1処理部に前記液膜の再形成を行わせる請求項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記液体は有機溶剤であり、前記第2処理部は前記基板に対し超臨界乾燥処理を実行する、請求項1ないし6のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項8】
基板に液体を供給して前記基板の表面を液膜で覆う第1処理部と、前記液膜を担持する前記基板を受け入れて所定の処理を実行する第2処理部と、前記第1処理部と前記第2処理部との間で前記基板を搬送する搬送機構とを有する基板処理装置の搬送制御方法において、
前記液膜を撮像して得られた画像を含む複数の画像の差分に基づき、前記搬送機構の動作を制御し、
前記差分は、2つの画像間の画素ごとの差分の積算値として求められ、
前記液膜が理想的に担持された状態の前記基板に対応する画像として予め準備された理想画像と、前記基板が前記搬送機構により搬送開始されるよりも前に撮像された搬送前画像との差分に基づき、前記搬送機構による前記基板の搬送を開始するか否かを判断する、基板処理装置の搬送制御方法。
【請求項9】
基板に液体を供給して前記基板の表面を液膜で覆う第1処理部と、前記液膜を担持する前記基板を受け入れて所定の処理を実行する第2処理部と、前記第1処理部と前記第2処理部との間で前記基板を搬送する搬送機構とを有する基板処理装置の搬送制御方法において、
前記液膜が形成されてから前記第2処理部へ搬入されるまでの間の互いに異なる時刻にそれぞれ前記液膜を撮像し、撮像された複数の画像の差分に基づき、前記搬送機構の動作を制御し、
前記差分は、2つの画像間の画素ごとの差分の積算値として求められ、
前記複数の画像から求めた差分が予め定められた基準量を超える場合と超えない場合との間で、前記第1処理部から前記第2処理部までの搬送にかかる時間を異ならせる、基板処理装置の搬送制御方法。
【請求項10】
基板に液体を供給して前記基板の表面を液膜で覆う第1処理部と、前記液膜を担持する前記基板を受け入れて所定の処理を実行する第2処理部と、前記第1処理部と前記第2処理部との間で前記基板を搬送する搬送機構とを有する基板処理装置の搬送制御方法において、
前記液膜が形成されてから前記第2処理部へ搬入されるまでの間の互いに異なる時刻にそれぞれ前記液膜を撮像し、撮像された複数の画像の差分に基づき、前記搬送機構の動作を制御し、
前記差分は、2つの画像間の画素ごとの差分の積算値として求められ、
搬送中に随時撮像された画像と当該画像より先に撮像された画像である基準画像との差分が予め定められた基準量を超えるか否かにより、前記基板へ前記液体を補充するか否かを判断する、基板処理装置の搬送制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数の処理部の間で基板を搬送する基板処理装置に関し、特に基板表面に液膜が形成された状態での搬送の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体基板や表示パネル用ガラス基板などの基板の製造プロセスにおいては、異なる処理をそれぞれ個別の処理部で実行するために、複数の処理部間での基板の搬送が必要になってくる。この場合において、搬送中の基板表面の露出に起因する表面の酸化や、搬送経路上の浮遊物の基板表面への付着、さらには基板に形成された微細パターンの倒壊等の問題を未然に防止する必要性から、基板の表面を液膜で覆った状態で搬送が行われるケースがある。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の従来技術においては、それぞれ基板を液体により処理する処理システム間の搬送においては、基板は、搬送トレイに溜められた液体に浸漬された状態で、あるいは上面全体に液盛りされた状態で搬送される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-182817号公報(例えば図9
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板の搬送においては、搬送経路上での加減速や振動、また液体の揮発による減少等に起因して、搬送中に基板表面の一部が周囲雰囲気に露出してしまうことがあり得る。このことは製品不良の原因となる。特に、微細パターンが形成された基板では、表面が露出することは直ちにパターン倒壊を引き起こすため、たとえ短時間であっても許容されるものではない。
【0006】
上記従来技術は、基板を搬送トレイに収容しているためある程度安定した搬送が期待されるが、上記のような振動、液体の揮発等に起因する一時的な基板表面の露出まで防止する機能を有するものではない。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板表面を液膜で覆った状態で基板を搬送する基板処理装置において、搬送中の振動や液体の揮発等に起因する基板表面の露出を防止することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る基板処理装置の一の態様は、上記目的を達成するため、基板に液体を供給して前記基板の表面を液膜で覆う第1処理部と、前記液膜を担持する前記基板を搬送する搬送機構と、前記搬送機構により搬送される前記基板を受け入れて所定の処理を実行する第2処理部と、前記基板の表面に形成された前記液膜を撮像する撮像部と記液膜が形成されてから前記搬送機構により前記第2処理部へ搬入されるまでの間前記撮像部により撮像された画像を含む複数の画像の差分に基づき、前記搬送機構の動作を制御する制御部とを備えている。ここで、前記差分は2つの画像間の画素ごとの差分の積算値として求められ、前記制御部は、前記液膜が理想的に担持された状態の前記基板に対応する理想画像と、前記基板が前記搬送機構により搬送開始されるよりも前に前記撮像部により撮像された搬送前画像との差分に基づき、前記搬送機構による前記基板の搬送を開始するか否かを判断する。
また、この発明に係る基板処理装置の他の一の態様は、基板に液体を供給して前記基板の表面を液膜で覆う第1処理部と、前記液膜を担持する前記基板を搬送する搬送機構と、前記搬送機構により搬送される前記基板を受け入れて所定の処理を実行する第2処理部と、前記基板の表面に形成された前記液膜を撮像する撮像部と、前記液膜が形成されてから前記搬送機構により前記第2処理部へ搬入されるまでの間の互いに異なる時刻にそれぞれ前記撮像部により撮像された複数の画像の差分に基づき、前記搬送機構の動作を制御する制御部とを備えている。ここで、前記差分は2つの画像間の画素ごとの差分の積算値として求められ、前記制御部は、前記複数の画像から求めた差分が予め定められた基準量を超える場合と超えない場合との間で、前記第1処理部から前記第2処理部までの搬送にかかる時間を異ならせる。
また、この発明に係る基板処理装置の他の一の態様は、基板に液体を供給して前記基板の表面を液膜で覆う第1処理部と、前記基板を保持する保持部材を有し、前記液膜を担持する前記基板を搬送する搬送機構と、前記搬送機構により搬送される前記基板を受け入れて所定の処理を実行する第2処理部と、前記搬送機構に設けられて前記保持部材と共に移動する第2カメラを有し、前記基板の表面に形成された前記液膜を、前記基板の搬送中に撮像する撮像部と、前記液膜が形成されてから前記搬送機構により前記第2処理部へ搬入されるまでの間の互いに異なる時刻にそれぞれ前記撮像部により撮像された複数の画像の差分に基づき、前記搬送機構の動作を制御する制御部とを備えている。ここで、前記差分は2つの画像間の画素ごとの差分の積算値として求められ、前記制御部は、搬送中に随時撮像された画像と当該画像より先に撮像された画像である基準画像との差分が予め定められた基準量を超えるか否かにより、前記基板へ前記液体を補充するか否かを判断する。
【0009】
また、この発明の他の態様は、基板に液体を供給して前記基板の表面を液膜で覆う第1処理部と、前記液膜を担持する前記基板を受け入れて所定の処理を実行する第2処理部と、前記第1処理部と前記第2処理部との間で前記基板を搬送する搬送機構とを有する基板処理装置の搬送制御方法である。
その第1の態様では、前記液膜を撮像して得られた画像を含む複数の画像の差分に基づき、前記搬送機構の動作を制御し、前記差分は、2つの画像間の画素ごとの差分の積算値として求められ、前記液膜が理想的に担持された状態の前記基板に対応する画像として予め準備された理想画像と、前記基板が前記搬送機構により搬送開始されるよりも前に撮像された搬送前画像との差分に基づき、前記搬送機構による前記基板の搬送を開始するか否かを判断する。
また、その第2の態様では、前記液膜が形成されてから前記第2処理部へ搬入されるまでの間の互いに異なる時刻にそれぞれ前記液膜を撮像し、撮像された複数の画像の差分に基づき、前記搬送機構の動作を制御し、前記差分は、2つの画像間の画素ごとの差分の積算値として求められ、前記複数の画像から求めた差分が予め定められた基準量を超える場合と超えない場合との間で、前記第1処理部から前記第2処理部までの搬送にかかる時間を異ならせる。
また、その第3の態様では、前記液膜が形成されてから前記第2処理部へ搬入されるまでの間の互いに異なる時刻にそれぞれ前記液膜を撮像し、撮像された複数の画像の差分に基づき、前記搬送機構の動作を制御し、前記差分は、2つの画像間の画素ごとの差分の積算値として求められ、搬送中に随時撮像された画像と当該画像より先に撮像された画像である基準画像との差分が予め定められた基準量を超えるか否かにより、前記基板へ前記液体を補充するか否かを判断する。
【0010】
このように構成された発明では、基板表面の液膜が撮像され、基準となる他の画像の差に基づき搬送機構の動作が制御される。このため、基板表面の液膜の状態の変化を検知し、それを搬送制御に反映させることが可能である。例えば、振動を低減するために搬送速度を抑制したり、液膜の厚さが低下すれば液体を補充したりすることが可能である。これにより、基板表面を安定的に液膜で覆った状態で搬送することができ、基板表面の露出を防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
上記のように、本発明によれば、搬送中の基板表面の液膜を撮像しその変化を搬送制御に反映させるので、基板表面の液膜を安定させた状態で基板を搬送することが可能である。これにより、搬送中の振動や液体の揮発等に起因する基板表面の露出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る基板処理装置の一実施形態の概略構成を示す図である。
図2】センターロボットの構成および設置環境を示す図である。
図3】湿式処理を実行する基板処理ユニットを示す図である。
図4】超臨界乾燥処理を実行する基板処理ユニットを示す図である。
図5】この基板処理装置の動作を示すフローチャートである。
図6】移送処理の第1の態様を示すフローチャートである。
図7】移送処理の第2の態様を示すフローチャートである。
図8】移送処理の第3の態様を示すフローチャートである。
図9】第3の態様の移送処理を含む基板処理動作を示すフローチャートである。
図10】移送処理の第4の態様を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明に係る基板処理装置の一実施形態の概略構成を示す図である。より具体的には、図1(a)は本発明の一実施形態である基板処理装置1を示す平面図であり、図1(b)は基板処理装置1を示す側面図である。なお、これらの図は装置の外観を示すものではなく、装置の外壁パネルやその他の一部構成を除外することでその内部構造をわかりやすく示した模式図である。この基板処理装置1は、例えばクリーンルーム内に設置されて基板に対し所定の処理を施すための装置である。
【0014】
ここで、本実施形態における「基板」としては、半導体基板、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として半導体基板の処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。
【0015】
図1(a)に示すように、基板処理装置1は、基板Sに対して処理を施す基板処理部10と、この基板処理部10に結合されたインデクサ部20とを備えている。インデクサ部20は、基板Sを収容するための容器C(複数の基板Sを密閉した状態で収容するFOUP(Front Opening Unified Pod)、SMIF(Standard Mechanical Interface)ポッド、OC(Open Cassette)など)を複数個保持することができる容器保持部21と、この容器保持部21に保持された容器Cにアクセスして、未処理の基板Sを容器Cから取り出したり、処理済みの基板を容器Cに収納したりするためのインデクサロボット22を備えている。各容器Cには、複数枚の基板Sがほぼ水平な姿勢で収容されている。
【0016】
インデクサロボット22は、装置筐体に固定されたベース部221と、ベース部221に対し鉛直軸周りに回動可能に設けられた多関節アーム222と、多関節アーム222の先端に取り付けられたハンド223とを備える。ハンド223はその上面に基板Sを載置して保持することができる構造となっている。このような多関節アームおよび基板保持用のハンドを有するインデクサロボットは公知であるので詳しい説明を省略する。
【0017】
基板処理部10は、平面視においてほぼ中央に配置されたセンターロボット15と、このセンターロボット15を取り囲むように配置された複数の基板処理ユニットとを備えている。具体的には、センターロボット15が配置された空間に面して複数の(この例では4つの)基板処理ユニット11A,12A,13A,14Aが配置されている。これらの基板処理ユニット11A~14Aは、それぞれ基板Sに対して所定の処理を実行するものである。これらの処理ユニットを同一の機能のものとした場合には、複数基板の並列処理が可能となる。また、機能の異なる処理ユニットを組み合わせて、1つの基板に対し異なる処理を順番に実行するように構成することもできる。
【0018】
後述するように、この実施形態の基板処理装置1は、基板Sを所定の処理液により湿式処理した後、基板Sを乾燥させるという一連の処理に使用される。この目的のために、4つの基板処理ユニットのうち2つの基板処理ユニット11A,12Aは、基板Sに対する湿式処理を担い、これを可能とするための構成を内部に備えている。また、他の2つの基板処理ユニット13A,14Aは、湿式処理後の基板Sから残存液を除去し基板Sを乾燥させる処理(乾燥処理)を担い、これを可能とするための構成を内部に備えている。
【0019】
各基板処理ユニット11A~14Aでは、基板Sに対する処理を実行する基板処理主体が、センターロボット15に面する側面に開閉自在のシャッターが設けられた処理チャンバ内に収容されている。すなわち、基板処理ユニット11Aは、処理チャンバ110と、処理チャンバ110のセンターロボット15に面する側面に設けられたシャッター111とを有する。シャッター111は処理チャンバ110のセンターロボット15に面する側面に設けられた開口部(不図示)を覆うように設けられており、シャッター111が開かれると開口部が露出し、該開口部を介して基板Sの搬入および搬出が可能となる。また、処理チャンバ110内で基板Sに対する処理が実行される際には、シャッター111が閉じられることで、処理チャンバ110内の雰囲気が外部から遮断される。
【0020】
同様に、基板処理ユニット12Aは、処理チャンバ120と、処理チャンバ120のセンターロボット15に面する側面に設けられたシャッター121とを有する。また、基板処理ユニット13Aは、処理チャンバ130と、処理チャンバ130のセンターロボット15に面する側面に設けられたシャッター131とを有する。また、基板処理ユニット14Aは、処理チャンバ140と、処理チャンバ140のセンターロボット15に面する側面に設けられたシャッター141とを有する。
【0021】
そして、このように水平方向に配置された基板処理ユニットのセットが上下方向に複数段(この例では2段)配置されている。すなわち、図1(b)に示すように、基板処理ユニット11Aの下方には基板処理ユニット11Bが設けられている。基板処理ユニット11Bの構成および機能は、基板処理ユニット11Aと同じである。また、基板処理ユニット12Aの下方には、基板処理ユニット12Aと同一構成、同一機能の基板処理ユニット12Bが設けられている。同様に、基板処理ユニット13Aの下部にも基板処理ユニット13B(図2)が、また基板処理ユニット14Aの下部にも不図示の基板処理ユニットが設けられる。なお、基板処理ユニットの段数は、ここに例示する2に限定されず任意である。また1段当たりの基板処理ユニットの配設数も上記に限定されない。
【0022】
図2はセンターロボットの構成および設置環境を示す図である。センターロボット15は、インデクサロボット22から未処理の基板Sを受け取ることができ、かつ処理済みの基板Sをインデクサロボット22に受け渡すことができる。より具体的には、センターロボット15は、基台部151と、昇降ベース152と、回転ベース153と、伸縮アーム154と、ハンド155とを備えている。基台部151は、基板処理部10の底部フレームに固定されており、センターロボット15の各構成を支持している。昇降ベース152は基台部151に取り付けられ、昇降ベース152の上部に回転ベース153が取り付けられている。昇降ベース152は鉛直方向に伸縮自在となっており、この伸縮運動により回転ベース153を昇降させる。
【0023】
回転ベース153は、昇降ベース152に対して鉛直軸周りに回動可能となっている。回転ベース153には伸縮アーム154の基部が取り付けられ、伸縮アーム154の先端部にハンド155が取り付けられている。伸縮アーム154は水平方向に所定の範囲で伸縮する。ハンド155は、その上面に基板Sを載置して保持することができ、しかも、インデクサロボット22のハンド223との間で基板Sの受け渡しが可能な構造となっている。このような構造のハンド機構は公知であるので、詳しい説明を省略する。
【0024】
伸縮アーム154が水平方向に伸縮することで、ハンド155に保持した基板Sを水平方向に移動させることができる。また、回転ベース153が昇降ベース152に対し回動することで、基板Sの水平移動の方向を規定することができる。また、昇降ベース152が回転ベース153を昇降させることで、基板Sの高さ、すなわち鉛直方向位置を調整することができる。
【0025】
回転ベース153には、上向きに延びる支持部材156が取り付けられている。ハンド155の伸縮と干渉しないように、支持部材156は伸縮アーム154の伸長方向とは反対側の回転ベース153の側面に取り付けられている。支持部材156の上端にはCCDカメラ157が取り付けられている。CCDカメラ157の光軸方向は水平方向から少し下方を向いており、ハンド155に保持された基板Sを斜め上方から俯瞰して撮像視野に収めている。これにより、基板Sの上面が撮像される。撮像データは制御ユニット90に送信される。
【0026】
また、回転ベース153には補充液ノズル158が設けられている。補充液ノズル158はハンド155に保持される基板Sの上方で下向きに開口している。補充液ノズル153は図示しない低表面張力液供給部(後述)に接続されており、必要に応じて低表面張力液供給部から供給される低表面張力液を基板Sに供給する。
【0027】
上記のように構成された基板処理装置1では、次のようにして基板Sに対する処理が実行される。初期状態では、容器保持部21に載置された容器Cに未処理の基板Sが収容されている。インデクサロボット22は、容器Cから1枚の未処理基板Sを取り出してセンターロボット15に受け渡す。センターロボット15は、受け取った基板Sを、当該基板Sに対する処理を実行する基板処理ユニットに搬入する。
【0028】
例えば基板処理ユニット11Aに基板Sを搬入する場合、図2に示すように、センターロボット15は、昇降ベース152により回転ベース153の高さを調整して、ハンド155に保持した基板Sを基板処理ユニット11Aの処理チャンバ110側面のシャッター111の高さに位置決めする。シャッター111が開かれ、伸縮アーム154が処理チャンバ110側面の開口部に向かって伸長することで、基板Sが処理チャンバ110へ搬入される。伸縮アーム154が退避した後、シャッター111が閉じられて、処理チャンバ110内で基板Sに対する処理が実行される。他の基板処理ユニットへの基板Sの搬入も同様にして行うことができる。
【0029】
一方、基板処理ユニット11Aから処理済みの基板Sを取り出す際には、シャッター111が開かれた処理チャンバ110に伸縮アーム154が進入して処理済みの基板Sを取り出す。取り出された基板Sについては、他の基板処理ユニットに搬入されて新たな処理が実行されてもよく、またインデクサロボット22を介して容器Cに戻されてもよい。この実施形態における具体的な処理シーケンスについては後に詳しく説明する。
【0030】
図2に示すように、センターロボット15は、側方および上方が隔壁101により外部空間から隔てられた搬送空間TSに設置されている。基板処理ユニット11Aは、処理チャンバ110のシャッター111が設けられた側面を搬送空間TSに臨ませて隔壁101の側部に取り付けられている。他の基板処理ユニットも同様である。
【0031】
上記の他、基板処理装置1には、装置各部の動作を制御するための制御ユニット90が設けられている。制御ユニット90は、少なくともCPU(Central Processing Unit)91と、メモリ92とを含む。CPU91は、予め用意された制御プログラムを実行することで、装置各部に所定の動作を実行させる。また、メモリ92は、CPU91が実行すべき制御プログラムや、その実行により生じるデータ等を記憶する。上記したインデクサロボット22およびセンターロボット15の動作、各処理チャンバにおけるシャッターの開閉や基板Sに対する各種処理等に関わる動作は、制御プログラムを実行するCPU91によって制御される。
【0032】
図3は湿式処理を実行する基板処理ユニットを示す図である。より具体的には、図3(a)は基板処理ユニット11Aの構成を示す図であり、図3(b)および図3(c)は基板処理ユニット11Aの動作を説明するための図である。ここでは基板処理ユニット11Aの構成について説明するが、湿式処理を実行する他の基板処理ユニット11B,12A等の構成も基本的に同じである。
【0033】
基板処理ユニット11Aは、基板処理主体としての湿式処理部30を処理チャンバ110内に備えている。湿式処理部30は、基板Sの上面に処理液を供給して基板Sの表面処理や洗浄等を行う。また、湿式処理後に搬出される基板Sの上面が周囲雰囲気に露出するのを防止するために、湿式処理部30は、湿式処理後の基板Sの上面を低表面張力液の液膜で覆う、液膜形成処理を併せて実行する。
【0034】
この目的のために、湿式処理部30は、基板保持部31、スプラッシュガード32、処理液供給部33および低表面張力液供給部35を備えている。これらの動作は制御ユニット90により制御される。基板保持部31は、基板Sとほぼ同等の直径を有する円板状のスピンチャック311を有し、スピンチャック311の周縁部には複数のチャックピン312が設けられている。チャックピン312が基板Sの周縁部に当接して基板Sを支持することにより、スピンチャック311はその上面から離間させた状態で基板Sを水平姿勢に保持することができる。
【0035】
スピンチャック311はその下面中央部から下向きに延びる回転支軸313により上面が水平となるように支持されている。回転支軸313は処理チャンバ110の底部に取り付けられた回転機構314により回転自在に支持されている。回転機構314は図示しない回転モータを内蔵しており、制御ユニット90からの制御指令に応じて回転モータが回転することで、回転支軸313に直結されたスピンチャック311が1点鎖線で示す鉛直軸周りに回転する。図3においては上下方向が鉛直方向である。これにより、基板Sが水平姿勢のまま鉛直軸周りに回転される。
【0036】
基板保持部31を側方から取り囲むように、スプラッシュガード32が設けられる。スプラッシュガード32は、スピンチャック311の周縁部を覆うように設けられた概略筒状のカップ321と、カップ321の外周部の下方に設けられた液受け部322とを有している。カップ321は制御ユニット90からの制御指令に応じて昇降する。カップ321は、図3(a)に示すようにカップ321の上端部がスピンチャック311に保持された基板Sの周縁部よりも下方まで下降した下方位置と、図3(b)に示すようにカップ321の上端部が基板Sの周縁部よりも上方に位置する上方位置との間で昇降移動する。
【0037】
カップ321が下方位置にあるときには、図3(a)に示すように、スピンチャック311に保持される基板Sがカップ321外に露出した状態になっている。このため、例えばスピンチャック311への基板Sの搬入および搬出時にカップ321が障害となることが防止される。
【0038】
また、カップ321が上方位置にあるときには、図3(b)に示すように、スピンチャック311に保持される基板Sの周縁部を取り囲むことになる。これにより、後述する液供給時に基板Sの周縁部から振り切られる処理液が処理チャンバ110内に飛散することが防止され、処理液を確実に回収することが可能となる。すなわち、基板Sが回転することで基板Sの周縁部から振り切られる処理液の液滴はカップ321の内壁に付着して下方へ流下し、カップ321の下方に配置された液受け部322により集められて回収される。複数の処理液を個別に回収するために、複数段のカップが同心に設けられてもよい。
【0039】
処理液供給部33は、処理チャンバ110に固定されたベース331に対し回動自在に設けられた回動支軸332から水平に伸びるアーム333の先端にノズル334が取り付けられた構造を有している。回動支軸332が制御ユニット90からの制御指令に応じて回動することによりアーム333が揺動し、アーム333先端のノズル334が、図3(a)に示すように基板Sの上方から側方へ退避した退避位置と、図3(b)に示すように基板S上方の処理位置との間を移動する。
【0040】
ノズル334は制御ユニット90に設けられた処理液供給部(図示省略)に接続されており、処理液供給部から適宜の処理液が送出されるとノズル334から基板Sに向けて処理液が吐出される。図3(b)に示すように、スピンチャック311が比較的低速で回転することで基板Sを回転させながら、基板Sの回転中心の上方に位置決めされたノズル33から処理液Lqを供給することで、基板Sの上面Saが処理液Lqにより処理される。処理液Lqとしては、現像液、エッチング液、洗浄液、リンス液等の各種の機能を有する液体を用いることができ、その組成は任意である。また複数種の処理液が組み合わされて処理が実行されてもよい。
【0041】
低表面張力液供給部35も、処理液供給部33と対応する構成を有している。すなわち、低表面張力液供給部35は、ベース351、回動支軸352、アーム353、ノズル354等を有しており、これらの構成は、処理液供給部33において対応するものと同等である。回動支軸352が制御ユニット90からの制御指令に応じて回動することによりアーム353が揺動する。アーム353先端のノズル354は、湿式処理後の基板Sの上面Saに対して液膜を形成するための低表面張力液を供給する。
【0042】
上記した図3(b)の説明における「処理液Lq」、「アーム333」、「ノズル334」をそれぞれ「低表面張力液Lq」、「アーム353」、「ノズル354」と読み替えることにより、低表面張力液供給部35の動作が説明される。ただし吐出されるのは低表面張力液であり、一般に処理液とは異なる種類の液体である。
【0043】
処理対象となる基板上面Saが微細な凹凸パターン(以下、単に「パターン」という)を形成されたものであるとき、湿式処理後の濡れた基板Sが乾燥する過程において、パターン内に入り込んだ液体の表面張力によりパターン倒壊が生じるおそれがある。これを防止するための方法としては、パターン内の液体をより表面張力の低い液体に置換してから乾燥させる方法、基板上面Saを昇華性物質の固体で覆い昇華性物質を昇華させる昇華乾燥法、本実施形態で採用する超臨界乾燥法などがある。
【0044】
高温、高圧状態を必要とする超臨界乾燥処理を行うためには、湿式処理を行うチャンバとは別の高圧チャンバを必要とする。このため、湿式処理後の基板Sを高圧チャンバへ搬送する必要が生じる。搬送中のパターンの露出に起因する倒壊を避けるため、基板上面Saを液体または固体で覆っておくことが望ましい。このとき基板上面Saを覆う液体は、表面張力によるパターン倒壊をより確実に防止するという観点から、処理液よりも表面張力の小さい液体であることが望ましい。本明細書ではこのような性質の液体を「低表面張力液」と称している。
【0045】
この実施形態では、基板上面Saを低表面張力液の液膜で覆った状態で搬送を行う。液膜は以下のようにして形成される。図3(b)に示すように、基板Sが所定の回転速度で回転された状態で、制御ユニット90に設けられた低表面張力液供給部(図示省略)から供給される低表面張力液Lqがノズル353から吐出されることで、基板上面Saは低表面張力液の液膜LFで覆われた状態となる。低表面張力液としては、湿式処理に用いられる処理液との混和性が良く、かつこれよりも表面張力が小さいものが望ましい。例えば処理液が水を主成分とするものであるとき、イソプロピルアルコール(IPA)を好適に利用可能である。こうして基板上面Saの全体が低表面張力液の液膜LFで覆われた状態となる。
【0046】
また、処理チャンバ110内において、スピンチャック311に保持される基板Sの上方には、CCDカメラ351および照明光源352が配置されている。CCDカメラ351の光軸方向は水平方向から少し下方を向いており、スピンチャック311に保持される基板Sを斜め上方から俯瞰して撮像視野に収めている。照明光源352は、撮像のための照明光を基板Sに向けて照射する。これにより、基板Sの上面が撮像される。撮像データは制御ユニット90に送信される。
【0047】
上面Saが液膜LFで覆われた状態で基板処理ユニット11Aから搬出される基板Sは、基板処理ユニット13Aに搬送されて乾燥処理を受ける。すなわち基板処理ユニット13Aは、水平姿勢で搬入される基板Sの上面Saに形成されている液膜LFを除去し、基板Sを乾燥させる乾燥処理を、基板処理として実行する機能を有する。乾燥処理としては、基板Sを超臨界流体で覆ってから超臨界流体を(液相を介することなく)気化させ除去する、超臨界乾燥が適用される。ここでは基板処理ユニット13Aの構成について説明するが、乾燥処理を実行する他の基板処理ユニット13B,14A等の構成も基本的に同じである。
【0048】
図4は超臨界乾燥処理を実行する基板処理ユニットを示す図である。より具体的には、図4は基板処理ユニット13Aの内部構造を示す側面断面図である。超臨界乾燥処理の原理およびそのために必要な基本構成は公知であるため、ここでは詳しい説明を省略する。基板処理ユニット13Aは高圧チャンバ130を備え、その内部に、乾燥処理の実行主体としての乾燥処理部40が設けられている。乾燥処理部40では、基板Sを載置するためのステージ41が高圧チャンバ130内に設置されている。ステージ41は吸着保持または機械的保持により、上面Saが液膜に覆われた基板Sを保持する。高圧チャンバ130は高圧となるため、これに耐えるために内部構成は比較的簡素であり、また高圧に耐え得る部材が使用される。
【0049】
ステージ41の下面中央には回転支軸42が下向きに延びている。回転支軸42は高圧チャンバ130の底面に高圧シール回転導入機構43を介して挿通されている。高圧シール回転導入機構43の回転軸431は回転機構432に接続されている。このため、制御ユニット90からの制御指令に応じて回転機構432が作動すると、基板Sがステージ41と共に、1点鎖線で示す鉛直方向の回転軸周りに回転する。
【0050】
高圧チャンバ130の内部でステージ41の上方には流体分散部材44が設けられている。流体分散部材44は、平板状の閉塞板441に対し上下に貫通する貫通孔442を複数設けたものである。高圧チャンバ130の上部には二酸化炭素供給部45から二酸化炭素ガスが必要に応じて供給され、二酸化炭素ガスは流体分散部材44により整流されて、基板Sの上方から均一に基板Sに向けて供給される。
【0051】
また、高圧チャンバ130内には窒素供給部46から窒素が必要に応じて導入される。窒素は必要に応じて種々の形態で、つまり常温または昇温されたガスとして、あるいは冷却されて液化した液体窒素として、高圧チャンバ130内のガスをパージしたりチャンバ内を冷却したりする目的に応じて供給される。
【0052】
さらに、高圧チャンバ130には排出機構48が接続されている。排出機構48は、高圧チャンバ130内に導入される気体や液体等の各種流体を必要に応じて排出する機能を有する。排出機構48は、このための配管やバルブ、ポンプ等を備える。これにより、必要な場合には高圧チャンバ130内の流体を速やかに排出することができる。
【0053】
図示を省略するが、制御ユニット90は、高圧チャンバ130内の圧力や温度を検出するための構成およびこれらを所定値に制御するための構成を有している。すなわち、制御ユニット90は、高圧チャンバ130内の圧力および温度を所定の目標値に制御する機能を有している。
【0054】
次に、上記のように構成された基板処理装置1の動作について説明する。これまでに説明したように、この基板処理装置1は基板Sに対し湿式処理および乾燥処理を順番に実行する装置である。この処理の主な流れは、湿式処理を実行する基板処理ユニットに基板Sを搬送して処理液による処理を行った後、低表面張力液による液膜を形成し、乾燥処理を実行する基板処理ユニットにこの基板Sを搬送して液膜を除去し基板Sを乾燥させる、というものである。以下、その具体的な処理内容について説明する。
【0055】
ここでは1つの基板Sに対し基板処理ユニット11Aが湿式処理を実行し、基板処理ユニット13Aが乾燥処理を実行するものとして説明するが、湿式処理を実行する基板処理ユニットと乾燥処理を実行する基板処理ユニットとの組み合わせはこれに限定されるものではなく任意である。また、以下の説明においては、各基板処理ユニットの役割を明示するために、湿式処理を実行する基板処理ユニット11A等を「湿式処理ユニット」と、また乾燥処理を実行する基板処理ユニット13A等を「乾燥処理ユニット」と、それぞれ称することがある。
【0056】
図5はこの基板処理装置の動作を示すフローチャートである。この動作は、CPU91が予め準備された制御プログラムを実行して装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。最初に、インデクサロボット22が未処理基板を収容する容器Cの1つから1枚の未処理基板Sを取り出す(ステップS101)。そして、基板Sはインデクサロボット22からセンターロボット15に受け渡され(ステップS102)、センターロボット15は湿式処理を実行する基板処理ユニット(湿式処理ユニット)11Aに基板Sを搬入する(ステップS103)。
【0057】
基板Sが搬入された基板処理ユニット11Aは、基板Sに対し湿式処理を実行する(ステップS104)。湿式処理の内容は、先に説明したように、基板Sに処理液を供給して基板上面Saの加工や洗浄を行うというものである。湿式処理後の基板Sに対しては、低表面張力液による液膜LFを形成するための液膜形成処理が実行される(ステップS105)。
【0058】
液膜形成処理により上面Saに液膜LFが形成された基板Sは、センターロボット15により基板処理ユニット11Aから取り出されて、乾燥処理を実行する基板処理ユニット(乾燥処理ユニット)13Aに搬入される。すなわち、基板処理ユニット11Aから基板処理ユニット13Aに基板Sを移送する、移送処理が行われる(ステップS106)。移送処理としては各種の態様が考えられるため、それらについては後にまとめて詳述する。
【0059】
基板Sが搬入された基板処理ユニット13Aは、基板Sに対し、付着している液体を除去して基板Sを乾燥させる乾燥処理を実行する(ステップS107)。基板処理ユニット13Aでは、超臨界流体を用いた超臨界乾燥処理が実行される。すなわち、高圧チャンバ130内に二酸化炭素供給部45から二酸化炭素が導入され、チャンバ内圧を十分に高めることで二酸化炭素が液化する。または、液状の二酸化炭素が高圧チャンバ130に導入されてもよい。液状の二酸化炭素は基板上面Saを覆う。液化した二酸化炭素は有機溶剤をよく溶かす。したがって、パターン内に残存するIPA等の溶解液は液状の二酸化炭素によって置換される。
【0060】
続いて、高圧チャンバ130内の温度および圧力が、二酸化炭素を超臨界状態とする条件に調整される。これにより高圧チャンバ130内の二酸化炭素が超臨界流体となる。超臨界状態の流体は極めて流動性が高く表面張力が小さい。特に二酸化炭素から生成された超臨界流体は、IPA、アセトン等の有機溶剤をよく溶かす。このため、二酸化炭素の超臨界流体は微細なパターンの奥深くまで入り込み、残存する有機溶剤成分をパターン内から運び去る。比較的低圧、低温で超臨界状態となる点も、二酸化炭素が超臨界乾燥処理に適している理由の1つである。
【0061】
そして、高圧チャンバ130内が急激に減圧されることにより、超臨界流体は液相を経ることなく直接気化し基板Sから除去される。これにより、基板Sは液体成分が完全に除去されて乾燥した状態となる。パターン内に残存する液体成分は超臨界流体によって置換され、超臨界流体が直接気化することにより、パターン内の液体の表面張力に起因するパターン倒壊の問題は回避される。
【0062】
処理後の基板Sはセンターロボット15により基板処理ユニット13Aから取り出される(ステップS108)。取り出された処理後の基板Sはセンターロボット15からインデクサロボット22へ受け渡され(ステップS109)、インデクサロボット22は基板Sを容器Cの1つへ収容する(ステップS110)。処理済みの基板Sが収容される容器Cは、未処理状態の当該基板Sが収容されていた容器でもよく、また別容器でもよい。
【0063】
さらに処理すべき基板がある場合には(ステップS111においてYES)、ステップS101に戻り、次の基板Sに対し上記した処理が実行される。処理すべき基板がなければ(ステップS111においてNO)、処理は終了する。
【0064】
以上、1枚の基板Sを処理する場合の流れについて説明したが、実際の装置では複数基板に対する処理が並行して実行される。すなわち、1枚の基板Sが1つの基板処理ユニット内で処理を受けている間、同時にインデクサロボット22およびセンターロボット15による他の基板の搬送、ならびに他の基板処理ユニットによる基板処理の少なくとも1つを並行して実行することが可能である。
【0065】
より具体的には、例えばステップS102において基板Sがインデクサロボット22からセンターロボット15に受け渡された後では、インデクサロボット22は新たに容器Cにアクセスして他の基板を取り出すことが可能である。また例えば、ステップS103において1枚の基板Sが基板処理ユニット11Aに搬入された後、センターロボット15は他の基板を他の基板処理ユニットに搬入する、あるいは他の基板処理ユニットで処理された他の基板を搬出することが可能である。
【0066】
したがって、複数枚の基板Sに対し順次処理を行う必要がある場合には、各基板Sを処理するための装置各部の動作シーケンスを適宜に調節することで、複数枚の基板への処理を並行して進行させる。こうすることで、基板処理装置1全体としての処理のスループットを向上させることが可能となる。具体的な動作シーケンスは、処理の仕様、上記各ステップの所要時間や同時処理の可否等に応じて適切に定められる必要がある。
【0067】
次に、上記した基板処理における移送処理(図5のステップS106)の幾つかの態様について説明する。移送処理の目的は、上面Saに液膜LFが形成された基板Sを基板処理ユニット11Aから搬出し、液膜LFを維持したまま、つまり基板上面Saを露出させることなく基板処理ユニット13Aまで搬送することである。この目的のために、この実施形態では、基板処理ユニット11Aに設けられたCCDカメラ351およびセンターロボット15に設けられたCCDカメラ157により撮像される画像が使用される。
【0068】
図6は移送処理の第1の態様を示すフローチャートである。最初に、基板処理ユニット11Aの処理チャンバ110内において、液膜形成処理直後の基板SがCCDカメラ351により撮像される(ステップS201)。このとき、実際には基板上面Saを覆って形成された液膜LFが形成される。基板上面Saを覆う液膜LFの全体が画像に収められることが望ましい。撮像された画像のデータは基準データとして制御ユニット90のメモリ92に保存される。
【0069】
続いて、センターロボット15のハンド155が処理チャンバ110内に進入して基板Sを保持し(ステップS202)、ハンド155が水平移動することで基板Sの搬送が開始される(ステップS203)。搬送中、センターロボット15に設けられたCCDカメラ157により随時、基板上面Saの液膜LFが撮像される(ステップS204)。CCDカメラ157により撮像される画像とCCDカメラ351により撮像される画像との間で、画像内に占める基板Sの位置、大きさおよび仰角が同じであることが望ましい。
【0070】
撮像により得られた画像は最初に撮像された基準画像と比較される。すなわち、CCDカメラ157により新たに撮像された画像と、処理チャンバ110内でCCDカメラ351により撮像された画像との差分が求められる(ステップS205)。その結果、両画像に有意な差異があれば、基板S上の液膜LFに何らかの変化があったと考えられる。例えば両画像間で画素ごとの差分の絶対値を画像内で積算し、その値が予め定められた基準量(閾値)を超えるか否かにより、有意な差があるか否かを判断することができる。液膜の厚さの違いは表面での反射率の変動や干渉縞の発生状況の違いとなって現れる。画像の差分を求めることでこのような違いを検出することができる。
【0071】
搬送中の液膜に起こり得る変化としては、振動に伴う液面の揺れ、落液や揮発による液量の減少が主なものと考えられる。これらに対しては、低表面張力液を基板Sに補充することが有効である。そこで、液膜の有意な変化があった場合には(ステップS206においてYES)、センターロボット15に設けられた補充液ノズル158から所定量の低表面張力液が補充される(ステップS207)。これにより、液量の減少に起因する液膜の破れを防止することができる。有意な変化が見られなかった場合には(ステップS206においてNO)、液補充は行われない。
【0072】
基板Sが目標位置、つまり基板処理ユニット13Aの高圧チャンバ130内に到達するまで、上記したステップS204~S207が繰り返される(ステップS208においてNO)。したがって、基板Sが移送される間、液膜LFの状態が常時監視され、必要であれば低表面張力液の補充が行われる。これにより、基板S上の液膜が安定に維持される。目標位置に到達すると(ステップS208においてYES)、基板Sはセンターロボット15から高圧チャンバ130内のステージ41に移載され(ステップS209)、これにより基板Sの移動が完了する。
【0073】
図7は移送処理の第2の態様を示すフローチャートである。この態様では、第1の態様におけるステップS207に代えてステップS221が設けられている。これ以外の処理内容は第1の態様と同じであるので、同一処理には同一符号を付して説明を省略する。第1の態様における液補充に代えて第2の態様で実行されるステップS221では、センターロボット15による基板Sの搬送速度が変更される。
【0074】
例えば振動や急な加減速によって基板Sから低表面張力液が落下するようなケースでは、基板Sをよりゆっくり搬送することにより落液を抑制することができる。すなわち、この場合には搬送速度を低下させればよい。例えば液膜の表面が波打っているような場合には、振動により液膜LFが揺れていると見なすことができる。一方、液体の揮発による液量の減少は、基板S全体での液膜の膜厚低下となって現れる。このような場合には搬送速度を増加させて、より短時間で搬送を完了させることが好ましい。なお、この態様を単独で実施する場合においては、補充液ノズル157を省くことも可能である。
【0075】
図8は移送処理の第3の態様を示すフローチャートである。また、図9はこの移送処理を含む基板処理動作を示すフローチャートである。この態様では、移送処理の内容の違いに起因して基板処理の動作自体にも改変が必要となる。ここでも、先に説明した処理と同一内容の処理については同一符号を付して説明を省略する。図8に示すように、第3の態様の移送処理では、ステップS206において液膜の画像に有意な変化があった場合には、以後の処理を異ならせるための例外フラグがセットされる(ステップS231)。この場合、基板Sの移送は中断される。
【0076】
図9に示すように、この態様の基板処理では、移送処理(ステップS106)の後に例外フラグがセットされているか否かを判断するステップS121が追加されている。フラグがセットされている場合には(ステップS121においてYES)、センターロボット15は基板Sを湿式処理ユニット11Aに戻し入れる(ステップS122)。これとともに、例外フラグはリセットされる(ステップS123)。そして、湿式処理ユニット11Aで再度液膜形成処理が実行されてから(ステップS105)、再び移送処理が実行される(ステップS106)。
【0077】
この態様では、基板S上の液膜LFに変化があった場合、基板処理ユニット11Aで液膜LFが再形成される。例外フラグがセットされていなければ(ステップS121においてNO)、液膜LFに大きな変化はないので、引き続き乾燥処理(ステップS107)が実行される。このようにすることで、液膜LFに破れが生じた状態で基板処理ユニット13Aに搬入されることは回避される。すなわち、安定的に液膜LFを維持した状態で基板Sを移送することができる。なお、この態様においても、単独で実施するに場合には補充液ノズル157を省くことが可能である。
【0078】
図10は移送処理の第4の態様を示すフローチャートである。図10においても、図6に示す移送処理と同一の内容については同一符号を付して説明を省略する。この態様では、ステップS201においてCCDカメラ351による液膜の撮像が行われると、その画像が予め準備されている理想画像と比較される。すなわち、撮像された画像と理想画像との差分が求められる(ステップS241)。理想画像とは、基板Sの上面Saが所定厚さの液膜LFにより一様に覆われた理想的な状態に対応する画像である。
【0079】
この処理は、基板Sに適切な液膜LFが形成されているか否かを検証するための処理である。すなわち、湿式処理後の基板Sでは、処理の結果として表面の凹凸や濡れ性の変化が生じることに起因して、一様な液膜を形成することが困難な場合が生じ得る。特に処理後の基板表面が撥液性を有する状態であると、一様な液膜を担持させることが難しい。また、液膜を形成するための装置構成の動作異状や基板Sの保持態様によって、当初より適切な液膜が形成されていない場合もあり得る。液膜形成直後の基板Sの画像を理想画像と比較することで、このような異状を直ちに検知することができる。また、理想画像との差分の大きさに基づき、液膜形成のための液供給量や基板Sの回転速度を調整するようにしてもよい。
【0080】
撮像された画像と理想画像との間に有意な差異があれば(ステップS242においてYES)、適宜のエラー処理(ステップS243)を経て移送処理は中止される。エラー処理の内容は任意であり、例えばオペレータに異状発生を報知する、このときの画像を表示出力する等が考えられる。異状が検知された基板Sについては処理が中止されても、異状のない基板に対する処理は継続されることが望ましい。
【0081】
異状が検知されなければ(ステップS242においてNO)、撮像された画像を基準画像としてステップS202以降の移送処理が実行される。ここでは第1の態様の移送処理を実行することとしているが、第2または第3の態様の処理が実行されてもよい。
【0082】
また、上記各態様の処理は適宜組み合わされてもよい。例えば、CCDカメラ157により撮像された画像と基準画像との差分の大きさについて複数の基準量を設定しておき、差分の大きさによって以後の処理が変わるようにしてもよい。
【0083】
現実の基板処理においては、後続の処理の都合等により、処理チャンバ110に基板Sが載置されその上面Saに液膜LFが形成されてから基板Sの搬送が開始されるまでに長時間待機する場合があり得る。こうした状況への対応として、例えば図10に示す処理を部分的に変更し、以下のようにしてもよい。基板Sに液膜LFが形成されてから搬送が開始されるまでの間の互いに異なる複数の時刻において、処理チャンバ110内のCCDカメラ351により液膜LFを撮像する。それらの画像を比較し、撮像された最新の画像と理想画像または最初に撮像された画像との間で液膜に有意な差異が認められるとき、液体の補充または適宜のエラー処理(ステップS243)を行う。
【0084】
このように、本実施形態の基板処理においては、基板Sに液膜LFが形成されてから搬送を終了するまでの間の異なる時刻で撮像された複数の液膜の画像を比較し、その結果に応じて以後の搬送動作が定められる。このため、搬送中の振動や揮発による液膜の変動を遅滞なく検知し、状況に応じて搬送動作を変更することができる。こうすることで、本実施形態では、表面に液膜を安定的に形成した状態で基板を搬送することが可能であり、搬送中の振動や液体の揮発等に起因する基板表面の露出を防止することができる。
【0085】
以上説明したように、上記実施形態においては、湿式処理ユニットである基板処理ユニット11A等が本発明の「第1処理部」として機能し、乾燥処理ユニットである基板処理ユニット13A等が本発明の「第2処理部」として機能している。そして、センターロボット15が本発明の「搬送機構」として機能している。また、処理チャンバ110が本発明の「処理チャンバ」として機能している。
【0086】
また、上記実施形態では、ハンド155が本発明の「保持部材」として機能している。そして、CCDカメラ157、351がそれぞれ本発明の「第2カメラ」、「第1カメラ」として機能しており、これらが本発明の「撮像部」を構成する。また、補充液ノズル158が本発明の「液体供給機構」として機能している。また、制御ユニット90が本発明の「制御部」として機能している。そして、液膜形成直後にカメラ351により撮像される液膜の画像が、本発明にいう「搬送前画像」に相当している。
【0087】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態は、本発明の「第1処理部」、「第2処理部」、「搬送機構」にそれぞれ相当する基板処理ユニット11A、基板処理ユニット13A、センターロボット15が1つの筐体に収められて一体の処理システムを構成するものである。しかしながら、本発明は、互いに独立して設けられた第1処理部および第2処理部と、これらの間で基板を搬送する搬送機構とを有する処理システムに対しても適用可能である。
【0088】
また、上記実施形態では処理チャンバ110内のCCDカメラ351により撮像された液膜の画像が基準画像とされているが、基準画像はこれに限定されない。例えば、搬送の初期段階でCCDカメラ157により撮像された画像が基準画像とされてもよい。その場合には、搬送中の液膜の状態を観察するという目的においては処理チャンバ110内のCCDカメラ351は不要である。また、特にCCDカメラ157がハンド155と一体的に移動するように構成されていれば、搬送中の各段階においてハンド155に保持される基板SとCCDカメラ157との位置関係が不変となる。このような構成によれば、画像間の比較において相互の位置合わせが不要であり、また差分算出の精度をより向上させることができる。
【0089】
また、上記実施形態では、基板Sの搬送時に基板Sと共に移動するセンターロボット15にCCDカメラ157が取り付けられている。これに代えて、例えば基板Sの搬送経路に沿って固定的に設けられたカメラにより、搬送される基板Sを撮像するようにしてもよい。特に微細パターンが設けられた基板Sでは、パターン倒壊を防止するためには、たとえ短時間といえども基板表面が露出することは許容されない。したがって、この場合には搬送経路上に複数のカメラを配置し、基板Sと共に搬送される液膜を短い時間間隔で撮像することが可能な状態としておくことが好ましい。もしくは、カメラを基板Sの移動に追従させるための機構を設けてもよい。
【0090】
また、センターロボット15に、搬送中の基板Sから落下する液体を受け止め回収するための構成がさらに設けられてもよい。
【0091】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明において、例えば、第1処理部は、処理チャンバ内で基板に対する液膜の形成を行い、撮像部は、処理チャンバ内に設けられた第1カメラを有する構成とされてよい。このような構成によれば、形成直後の液膜を撮像することが可能であり、例えばこの画像に含まれる液膜を基準として以後の液膜の状態を評価することができる。
【0092】
また例えば、搬送機構が基板を保持する保持部材を有し、撮像部は搬送機構に設けられて保持部材と共に移動する第2カメラを有していてよい。このような構成によれば、搬送中の各時刻において随時撮像を行うことができ、基板上の液膜の変化を遅滞なく検知して必要な対策を講じることが可能となる。
【0093】
また例えば、制御部は、複数の画像から求めた差分が予め定められた基準量を超える場合と超えない場合との間で、第1処理部から第2処理部までの搬送にかかる時間を異ならせてよい。液膜の変化の原因の1つとして搬送中の振動や急な加減速があり、搬送速度を変化させることによって変化を抑えることが可能となる。
【0094】
また例えば、搬送機構は、搬送される基板に液体を供給する液体供給機構を有し、制御部は、複数の画像から求めた差分が予め定められた基準量を超えると、液体供給機構に基板への液体の供給を行わせる構成であってよい。このような構成によれば、必要に応じて液膜を構成する液体を補充することで、基板上の液膜を維持しつつ搬送を継続することができる。特に液膜が揮発性の高い材料で構成されている場合には、搬送中の揮発により液膜の厚みが減少することが基板表面の露出の原因となり得る。搬送部に液体を補充する機能を設けることで、この問題を解消することが可能である。
【0095】
また例えば、制御部は、複数の画像から求めた差分が予め定められた基準量を超えると、搬送機構により基板を第1処理部に戻させ、第1処理部に液膜の再形成を行わせるように構成されてよい。このような構成によれば、液膜を形成するのに必要な構成を備える第1処理部で液膜の再形成を行うので、搬送中に液体を補充するための構成を別途設けなくても、搬送中の液膜の破れを防止することができる。
【0096】
また例えば、液膜を構成する液体が有機溶剤であり、第2処理部は基板に対し超臨界乾燥処理を実行する構成であってよい。超臨界乾燥処理は高圧下で実施されるため専用の高圧環境が必要となる。また高圧に耐える部品が用いられる必要がある。したがって常圧下で実施可能な湿式処理とは別の場所で行われるのが現実的である。このような場合に、湿式処理後の基板の搬送が必要となってくるが、本発明を適用することで、基板表面を露出させることなく搬送することが可能となる。超臨界流体との親和性の点から液膜形成には有機溶剤が使用されることが好ましいが、その揮発性の高さによって搬送中に失われやすい。本発明の適用により液膜の状態を観察することで、このようなケースにおいても基板表面を確実に液膜で覆いつつ搬送することが可能である。
【0097】
また例えば、複数の画像は、基板が搬送機構により搬送開始されるよりも前に撮像された搬送前画像を含むものであってよい。このような構成によれば、搬送開始時点で基板表面が適切に液膜で覆われていたか否かを把握することが可能であり、状況に応じて必要な措置を講じすることが可能となる。例えば制御部は、液膜が理想的に担持された状態の基板に対応する理想画像と搬送前画像との差に基づき、搬送機構による基板の搬送を開始するか否かを判断することができる。こうすることで、表面が適切な液膜で覆われないまま基板が搬送に供されることを回避することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
この発明は、互いに異なる処理を実行する処理部の間での基板の搬送を、基板表面を液膜で覆った状態で行う基板処理技術全般に適用することができる。例えば、湿式処理後の基板を超臨界乾燥処理により乾燥させる処理に好適である。
【符号の説明】
【0099】
1 基板処理装置
11A 湿式処理ユニット、基板処理ユニット(第1処理部)
13A 乾燥処理ユニット、基板処理ユニット(第2処理部)
15 センターロボット(搬送機構)
90 制御ユニット(制御部)
110 処理チャンバ(チャンバ)
130 高圧チャンバ
155 ハンド(保持部材)
157 CCDカメラ(撮像部、第2カメラ)
351 CCDカメラ(撮像部、第1カメラ)
158 補充液ノズル(液体供給機構)
LF 液膜
S 基板
図1
図2
図3
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図10