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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】発泡性エアゾール組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20230412BHJP
   A61K 8/02 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 8/04 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 8/42 20060101ALI20230412BHJP
   A61K 8/69 20060101ALI20230412BHJP
   A61Q 17/02 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
A61K8/60
A61K8/02
A61K8/04
A61K8/42
A61K8/69
A61Q17/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019064671
(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公開番号】P2020164437
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福積 京子
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-264703(JP,A)
【文献】特開平09-059606(JP,A)
【文献】特開2015-006996(JP,A)
【文献】特開2003-012414(JP,A)
【文献】特開2012-017464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A01N 1/00-65/48
A01P 1/00-23/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキルグルコシドと害虫忌避剤と水とを含む原液と、液化ガスとを含み、
前記害虫忌避剤の含有量は、前記原液中、~35質量%であり、
前記水の含有量は、前記原液中、50~89.9質量%であり、
害虫忌避剤および液化ガスを含む油相と、水を含む水相とが均一相を形成する、発泡性エアゾール組成物。
【請求項2】
アルキルグルコシドと害虫忌避剤と水とを含む原液と、液化ガスとを含み、
前記害虫忌避剤の含有量は、前記原液中、3~35質量%であり、
前記水の含有量は、前記原液中、50~94.9質量%であり、
液化ガスは、ハイドロフルオロオレフィンを含み、
害虫忌避剤および液化ガスを含む油相と、水を含む水相とが均一相を形成する、発泡性エアゾール組成物。
【請求項3】
前記アルキルグルコシドは、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、ミリスチルグルコシド、アルキル(C8-C16)グルコシド、アルキル(C12-20)グルコシド、アラキルグルコシドまたはヤシ油グルコシドのうち、少なくともいずれかを含む、請求項1または2記載の発泡性エアゾール組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性エアゾール組成物に関する。より詳細には、本発明は、適用箇所において塗り伸ばしやすく、べたつきが少ない泡を作製することができ、噴射時に使用者が吸引して咳き込むことを抑制することができる発泡性エアゾール組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有効成分を含み、泡で吐出する発泡性エアゾール製品が開発されている。特許文献1には、ディートと非イオン性界面活性剤、水からなる組成物と噴射剤とからなる発泡性害虫忌避エアゾール剤が開示されている。特許文献2には、アルキルグルコシドと高級アルコールと水とを含む原液に、液化ガスまたは圧縮ガスを配合したエアゾール型フォーム製品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平2-264703号公報
【文献】特開平9-59606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発泡性害虫忌避エアゾール剤は、害虫忌避剤であるディートを含んでいることにより、べたつきやすく、泡立ちが悪く、吐出後にすぐに消泡しやすい。そのため、噴射されたエアゾール剤は、塗り伸ばしにくく、かつ、液化して垂れ落ちやすい。また、特許文献2に記載のエアゾール型フォーム製品は、プロピレングリコールを多く含んでいるため吐出後に形成される泡が、べたつきやすく、かつ、塗り伸ばしにくい。
【0005】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、適用箇所において塗り伸ばしやすく、べたつきが少ない泡を作製することができ、噴射時に使用者が吸引して咳き込むことを抑制することができる発泡性エアゾール組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明には、以下の構成が主に含まれる。
【0007】
(1)アルキルグルコシドと害虫忌避剤と水とを含む原液と、液化ガスとを含み、前記害虫忌避剤の含有量は、前記原液中、0.1~35質量%であり、前記水の含有量は、前記原液中、50~99質量%である、発泡性エアゾール組成物。
【0008】
一般的なエアゾール組成物は、害虫忌避剤を含むことにより、発泡しにくく、べたつきやすい。しかしながら、本発明の発泡性エアゾール組成物は、原液が所定量の水を含有し、アルキルグルコシドと併用することで、害虫忌避剤を含有しているにも関わらず、適用箇所において塗り伸ばしやすく、べたつきの少ない泡を作製することができる。また、一般に、害虫忌避剤は微細な粒子でスプレー状に噴射されると舞い散りやすく、使用者がむせやすい。本発明の発泡性エアゾール組成物は、泡(フォーム)を形成するため、害虫忌避剤が舞い散ることがなく、使用者がむせにくい。発泡性エアゾール組成物は、腕や脚等の適用箇所において垂れ落ちにくく、塗り伸ばしやすいため、均一に優れた害虫忌避効果を付与しやすい。
【0009】
(2)前記液化ガスは、ハイドロフルオロオレフィンを含む、(1)記載の発泡性エアゾール組成物。
【0010】
このような構成によれば、発泡性エアゾール組成物は、より発泡し、泡(フォーム)を形成しやすい。このようなフォーム状のエアゾール組成物は、適用箇所においてより塗り伸ばしやすく、べたつきが少ない。また、特に、ハイドロフルオロオレフィンは、害虫忌避剤と油相を構成し、水、アルキルグルコシドを含む水相と均一相を形成しやすい。そのため、ハイドロフルオロオレフィンを含む発泡性エアゾール組成物は、エアゾール容器に充填された状態において、液化ガスがより分離しにくい。その結果、発泡性エアゾール組成物は、温度が上昇した場合であっても内圧が上昇しにくく、安全性がより優れる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、適用箇所において塗り伸ばしやすく、べたつきが少ない泡を作製することができ、噴射時に使用者が吸引して咳き込むことを抑制することができる発泡性エアゾール組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<発泡性エアゾール組成物>
本発明の一実施形態の発泡性エアゾール組成物(以下、エアゾール組成物ともいう)は、アルキルグルコシドと害虫忌避剤と水を含む原液と、液化ガスとを含む。害虫忌避剤の含有量は、原液中、0.1~35質量%である。水の含有量は、原液中、50~99質量%である。以下、それぞれについて説明する。
【0013】
(原液)
原液は、アルキルグルコシドと害虫忌避剤と水を含む。
【0014】
・アルキルグルコシド
アルキルグルコシドは、害虫忌避剤および液化ガスを含む油相と、水を含む水相とからなるエアゾール組成物が外部に吐出されたときに、吐出物中に含まれる液化ガスが気化することにより発泡し、泡(フォーム)を形成する。また、アルキルグルコシドが含まれていることにより、エアゾール組成物は、エアゾール容器中では、油相と水相とが均一相を形成しやすくなる。
【0015】
アルキルグルコシドは特に限定されない。一例を挙げると、アルキルグルコシドは、セテアリルグルコシド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、ミリスチルグルコシド、アルキル(C8-C16)グルコシド、アルキル(C12-20)グルコシド、アラキルグルコシド、ヤシ油グルコシド、POEメチルグルコシド、POEジオレイン酸メチルグルコシド等である。アルキルグルコシドは、併用されてもよい。これらの中でも、アルキルグルコシドは、油相と水相とを乳化して均一相を形成しやすい点から、セテアリルグルコシド、デシルグルコシド、ラウリルグルコシド、ミリスチルグルコシド、アルキル(C8-C16)グルコシド、アルキル(C12-20)グルコシド、アラキルグルコシド、ヤシ油グルコシド等であることが好ましく、セテアリルグルコシド、アラキルグルコシド、ヤシ油グルコシドであることがより好ましい。
【0016】
アルキルグルコシドの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、アルキルグルコシドの含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましい。また、アルキルグルコシドの含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。アルキルグルコシドの含有量が上記範囲内であることにより、アルキルグルコシドは、害虫忌避剤および液化ガスと馴染みやすい。そのため、エアゾール組成物は、油相と水相とが均一相を形成しやすい。また、エアゾール組成物は、界面活性剤を多量に使用せずに乳化することができ、べたつきの少ない泡を作製できる。また、エアゾール組成物は、吐出後にべたつきの少ない泡(フォーム)を形成しやすい。
【0017】
・害虫忌避剤
害虫忌避剤は、皮膚に付着することによって害虫忌避効果を発揮するために配合される。
【0018】
害虫忌避剤は特に限定されない。一例を挙げると、害虫忌避剤は、N,N-ジエチル-m-トルアミド(ディート)、ジ-n-ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、エチル-ブチルアセチルアミノプロピオネート、イカリジン(ピカリジン)、p-メンタン-3,8-ジオール、3-[アセチル(ブチル)アミノ]プロピオン酸エチル、2-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン-1-カルボン酸1-メチルプロピル、ハーブエキス等である。
【0019】
ここで、一般的なエアゾール組成物は、害虫忌避剤を含むことにより、発泡しにくく、べたつきやすい。しかしながら、本実施形態のエアゾール組成物は、害虫忌避剤を含有している場合であっても、適用箇所において塗り伸ばしやすく、べたつきの少ない泡を作製することができる。そのため、エアゾール組成物は、腕や脚等の適用箇所に均一に優れた害虫忌避効果を付与しやすい。また、一般に、害虫忌避剤は微細な粒子でスプレー状に噴射されると舞い散りやすく、使用者がむせやすくなる。本実施形態では、エアゾール組成物は、泡(フォーム)を形成するため、害虫忌避剤が舞い散ることがなく、使用者がむせにくくなる。
【0020】
害虫忌避剤の含有量は、原液中、0.1質量%以上であればよく、0.5質量%以上であることが好ましい。また、害虫忌避剤の含有量は、原液中、35質量%以下であればよく、30質量%以下であることが好ましい。害虫忌避剤の含有量が0.1質量%未満である場合、エアゾール組成物は、充分な害虫忌避効果を発揮しにくくなる傾向がある。また、害虫忌避剤の含有量が0.1質量%未満である場合、エアゾール組成物は、泡立ちにくくなる。一方、害虫忌避剤の含有量が35質量%を超える場合、エアゾール組成物は、泡立ちにくくなったり、べたつきを生じやすくなる傾向がある。
【0021】
なお、本実施形態のエアゾール組成物は、害虫忌避剤以外に、適宜、油溶性有効成分を含んでもよい。油溶性有効成分は、吐出されたエアゾール組成物が適用箇所に適用された際に、適用箇所において所望の効果を発揮するために配合される。
【0022】
油溶性有効成分は特に限定されない。一例を挙げると、油溶性有効成分は、パラメトキシケイ皮酸エチルヘキシル、パラメトキシケイ皮酸イソプロピル、パラメトキシケイ皮酸オクチル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、エチルヘキシルトリアゾン、オクトクレリン、オキシベンゾン、ヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸、ジヒドロキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、パラアミノ安息香酸等の紫外線吸収剤、α-トコフェロール、ジブチルヒドロキシトルエン等の酸化防止剤、レチノール、dl-α-トコフェロール、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、フィロキノン、メナキノン等のビタミン類およびこれらの誘導体、l-メントール、カンフル等の清涼化剤、ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロトレート、ミリスチン酸アセトフェノン、酢酸ベンジル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸メチル等の消臭成分、親油性香料等である。油溶性有効成分は、併用されてもよい。
【0023】
油溶性有効成分の含有量は特に限定されない。油溶性有効成分の含有量は、油溶性有効成分を配合することによる効果が得られ、エアゾール組成物の泡立ちを低減しにくく、べたつきを生じにくい量であればよい。
【0024】
・水
水は、エアゾール組成物において、アルキルグルコシドや水溶性有効成分などを可溶化するための溶媒として、また、発泡しやすくし、泡の塗り伸ばしやすさやべたつきを改善するために、配合される。
【0025】
水は特に限定されない。一例を挙げると、水は、精製水、イオン交換水、生理食塩水、滅菌水等である。
【0026】
水の含有量は、原液中、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましい。また、水の含有量は、原液中、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、適用箇所において塗り伸ばしやすく、べたつきの少ない泡を作製することができる。
【0027】
(任意成分)
本実施形態の原液は、上記成分以外に、適宜任意成分が含まれてもよい。一例を挙げると、任意成分は、水溶性高分子、油分、アルコール類、有効成分、界面活性剤、粉体等である(ただし上記した害虫忌避剤および油溶性有効成分を除く)。
【0028】
・水溶性高分子
水溶性高分子は、原液の粘度等を調整するために配合され得る。水溶性高分子は特に限定されない。一例を挙げると、水溶性高分子は、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム等のセルロース系多糖類;カラギーナン、キサンタンガム、アラビアゴム、トラガントゴム、カチオン化グアガム、グアガム、ジェランガム、ローカストビーンガム等のガム質;ポリエーテルウレタン、ゼラチン、デキストラン、カルボキシメチルデキストランナトリウム、デキストリン、ペクチン、デンプン、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、アルギン酸ナトリウム、変性ポテトスターチ、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等である。
【0029】
水溶性高分子が配合される場合、水溶性高分子の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましい。また、水溶性高分子の含有量は、原液中、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましい。水溶性高分子の含有量が上記範囲内であることにより、泡の弾性や、粘調性等の物性が調整されやすい。
【0030】
・油分
油分は特に限定されない。一例を挙げると、油分は、流動パラフィン、スクワレン、スクワラン、イソパラフィンなどの炭化水素油;アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸ミリスチル、オレイン酸デシル、乳酸セチル、ステアリン酸イソセチル、アジピン酸ジイソブチル、セバシン酸ジイソプロピル、コハク酸ジエトキシエチル、リンゴ酸ジイソステアリル等のエステル油;メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、メチルシクロポリシロキサン、テトラヒドロテトラメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリグリセロール変性シリコーン等のシリコーンオイル;ヤシアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、セテアリルアルコール、アラキジルアルコール、ラノリンアルコール等の高級アルコール;イソステアリン酸等の液体脂肪酸;アボカド油、マカダミアナッツ油、シア脂、オリーブ油、ツバキ油等の油脂;ミツロウ、ラノリンロウ等のロウ類;等である。
【0031】
油分が配合される場合、油分の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。また、油分の含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。油分の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、害虫忌避剤とともに油相を形成しやすい。
【0032】
・アルコール類
アルコール類は、水に溶解しにくい有効成分を可溶化させる溶媒として、また塗布後の乾燥性を調整する等の目的で好適に配合され得る。
【0033】
アルコール類は特に限定されない。一例を挙げると、アルコール類は、エタノール、プロパノールなどの炭素数が2~3個の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコールなどの多価アルコール等である。
【0034】
アルコール類が配合される場合、アルコールの含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、アルコールの含有量は、原液中、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましい。アルコールの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、水に溶解しにくい有効成分を含有しやすく、泡質を維持しやすい。
【0035】
・有効成分
有効成分は特に限定されない。一例を挙げると、有効成分は、コラーゲン、キシリトール、ソルビトール、ヒアルロン酸、カロニン酸、乳酸ナトリウム、dl-ピロリドンカルボン酸塩、ケラチン、カゼイン、レシチン、尿素等の保湿剤、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、フェノキシエタノール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化クロルヘキシジン、感光素、パラクロルメタクレゾール等の殺菌消毒剤、安息香酸メチル、フェニル酢酸メチル等の消臭成分、グリシン、アラニン、ロイシン、セリン、トリプトファン、シスチン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニンなどのアミノ酸、パントテン酸カルシウム、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸ナトリウム等のビタミン類、親水性香料などの水溶性有効成分等である。
【0036】
有効成分が配合される場合、有効成分の含有量は、原液中、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましい。また、有効成分の含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。有効成分の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、有効成分を配合することによる効果が適切に得られやすい。
【0037】
・界面活性剤
界面活性剤は、溶媒に溶解しにくい有効成分を乳化・分散させる、有効成分を適用箇所に付着・浸透しやすくする等の目的で好適に配合され得る。
【0038】
界面活性剤は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルなどの非イオン性界面活性剤等である。界面活性剤は、併用されてもよい。
【0039】
界面活性剤が含まれる場合、界面活性剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、界面活性剤の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、界面活性剤の含有量は、原液中、5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。界面活性剤の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、有効成分の分散効果が優れ、かつ、吐出後に適用箇所上に残りにくく、べたつきや刺激がない。
【0040】
・粉体
粉体は、有効成分を吸着して効果を持続させる、べたつきを抑え使用感を向上させる等の目的で好適に配合され得る。粉体は特に限定されない。一例を挙げると、粉体は、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、カオリン、雲母、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸亜鉛、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、シリカ、ゼオライト、セラミックパウダー、炭粉末、ナイロンパウダー、シルクパウダー、ウレタンパウダー、シリコーンパウダー、ポリエチレンパウダー等である。粉体は、併用されてもよい。
【0041】
粉体が含まれる場合、粉体の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、粉体の含有量は、原液中、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。また、粉体の含有量は、原液中、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。粉体の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、有効成分の効果を持続させる効果や、べたつきを抑える効果が優れる。また、エアゾール組成物は、吐出される際に、噴射部材の噴射通路や噴射孔において詰まりにくい。
【0042】
原液の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、原液の含有量は、エアゾール組成物中、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることが好ましい。また、原液の含有量は、エアゾール組成物中、99質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましい。原液の含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、吐出された後に、充分に発泡し、濃密でキメが細かいフォームを形成しやすい。
【0043】
原液の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、原液は、水にアルキルグルコシドを加え、これに害虫忌避剤や油溶性溶媒などの油性成分を加え、乳化・分散させることにより調製され得る。
【0044】
(液化ガス)
液化ガスは、エアゾール容器内では大部分が液体であり、原液に可溶化されて均一相を形成しており、外部に吐出されると気化して原液を発泡させてフォームを形成する。また、液化ガスは、エアゾール容器内において、一部が気化して気相を構成している。
【0045】
液化ガスは特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスは、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンおよびこれらの混合物である液化石油ガス、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エン、トランス-2,3,3,3-テトラフルオロプロパ-1-エンなどのハイドロフルオロオレフィン、ジメチルエーテル、およびこれらの混合物等である。液化ガスは、併用されてもよい。
【0046】
これらの中でも、液化ガスは、ハイドロフルオロオレフィンを含むことが好ましい。液化ガスがハイドロフルオロオレフィンを含んでいることにより、エアゾール組成物は、害虫忌避剤が含まれているにもかかわらず、噴射後に発泡しやすい。また、特に、ハイドロフルオロオレフィンは害虫忌避剤と油相を構成して、水相と均一相を形成しやすい。そのため、ハイドロフルオロオレフィンを含む発泡性エアゾール組成物は、エアゾール容器に充填された状態において、液化ガスがより分離しにくい。その結果、発泡性エアゾール組成物は、温度が上昇した場合であっても内圧が上昇しにくく、安全性がより優れる。
【0047】
液化ガスにハイドロフルオロオレフィンが含まれる場合において、ハイドロフルオロオレフィンの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、液化ガス中、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。また、ハイドロフルオロオレフィンは、液化ガス中、100質量%であってもよい。ハイドロフルオロオレフィンの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、害虫忌避剤が含まれているにもかかわらず、噴射後に発泡しやすく、安全性が優れる。
【0048】
液化ガスの含有量は特に限定されない。一例を挙げると、液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることが好ましい。また、液化ガスの含有量は、エアゾール組成物中、30質量%以下であることが好ましく、25質量%以下であることがより好ましい。液化ガスの含有量が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、吐出された後に、充分に発泡し、泡(フォーム)を形成しやすい。
【0049】
エアゾール製品の調製方法は特に限定されない。一例を挙げると、本実施形態のエアゾール組成物は、先ず原液が開口を有する耐圧性の容器本体に充填される。容器本体の開口にはエアゾールバルブが取り付けられてエアゾール容器が作製され、エアゾールバルブから液化ガスが充填され、さらに、エアゾールバルブに噴射部材が装着されることによりエアゾール製品が製造される。エアゾール組成物は、噴射部材が操作されることにより、エアゾール容器内と外部とが連通すると、エアゾール容器内と外部との圧力差に基づいて、エアゾール組成物が容器本体内からエアゾールバルブ内に導入され、気化する液化ガスとともに、噴射部材の噴射孔から吐出され、フォームが形成される。
【0050】
エアゾール容器に充填されたエアゾール組成物は、25℃における圧力(ゲージ圧)が0.15MPa以上であることが好ましく、0.20MPa以上であることがより好ましい。また、エアゾール組成物は、25℃における圧力が0.60MPa以下であることが好ましく、0.50MPa以下であることがより好ましい。圧力が上記範囲内であることにより、エアゾール組成物は、低温時でも発泡性に優れると共に、高温時の安全性も優れる。
【実施例
【0051】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。
【0052】
(実施例1)
25℃において、以下の表1に示される原液処方(単位:質量%)にしたがい、原液1を調製した。43.8g(87.6質量%)の原液1を、透明なガラス製容器に充填し、液化ガス(1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)、0.44MPa(25℃))を6.2g(12.4質量%)充填し、エアゾールバルブおよび噴射部材を取り付けて、エアゾール組成物およびエアゾール組成物を充填したエアゾール製品を作製した。原液と液化ガスとの割合(体積%)は、89.4/10.6とした。
【0053】
(実施例2~16、比較例1~4)
表1~表4に示されるように、原液の処方およびエアゾール製品の処方を変更した以外は、実施例1と同様の方法により、それぞれの原液、エアゾール組成物およびエアゾール製品を作製した。なお、表中のガスの種類における「ze」は、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)を示し、「LPG」は、液化石油ガス(0.45MPa(25℃))を示す。
【0054】
【表1】
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
実施例1~16および比較例1~4のエアゾール組成物およびエアゾール製品に関し、以下の評価方法により、吐出物の泡質を評価し、結果を表2~表4に示す。また、実施例1~6のエアゾール組成物およびエアゾール製品に関し、以下の評価方法により、5℃、25℃、45℃、55℃におけるエアゾール容器の内圧を測定し、結果を表2に示す。
【0059】
<吐出物の泡質>
エアゾール製品(ガラス容器)を25℃に調整された恒温水槽中に1時間浸漬し、エアゾール組成物を25℃に調整した。恒温水槽からガラス容器を取り出し、手のひらに吐出した。吐出後のエアゾール組成物の状態を、以下の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
〇1:吐出されたエアゾール組成物は、きめ細かなフォームを形成した。
〇2:吐出されたエアゾール組成物は、クリームのように滑らかフォームを形成した。
△:吐出されたエアゾール組成物は、発泡したものの速く消泡した。
×:吐出されたエアゾール組成物は、発泡しなかった。
【0060】
<エアゾール容器内の圧力>
エアゾール製品(ガラス容器)を、それぞれ、5℃、25℃、45℃、55℃に調整された恒温水槽にて1時間浸漬し、エアゾール組成物をそれぞれの温度に調整した。恒温水槽からガラス容器を取り出し、圧力計を用いてエアゾール容器内の圧力(MPa)を測定した。
【0061】
表2~表4に示されるように、本発明のエアゾール組成物を充填したエアゾール製品は、いずれも発泡し、泡(フォーム)を形成した。また、噴射後に形成されたフォームは、べたつきにくく、かつ、塗り伸ばしやすかった。さらに、表2に示されるように、液化ガスとして1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)を用いた場合は、ほぼ同じ蒸気圧の液化石油ガスを用いた場合と比較して、高温で保管した場合のエアゾール容器内の圧力上昇が小さく、安全性が優れていた。
【0062】
一方、非イオン性界面活性剤を使用した比較例1~3はいずれも発泡せず、泡(フォーム)を形成することができなかった。また、原液1、2と同じアルキルグルコシドを用いているにも関わらず、害虫忌避成分を含有せず、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze)を使用した比較例4は発泡せず、泡(フォーム)を形成することができなかった。