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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20230412BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20230412BHJP
   A23L 3/36 20060101ALN20230412BHJP
【FI】
F25D23/00 302D
F25D23/00 302M
F25D23/00 301L
F25D11/00 101B
A23L3/36 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019070225
(22)【出願日】2019-04-01
(65)【公開番号】P2020169747
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 由紀
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-172905(JP,A)
【文献】特開2019-013193(JP,A)
【文献】特開2011-007487(JP,A)
【文献】特開2000-258028(JP,A)
【文献】特開2018-115857(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130774(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 1/00 ~ 31/00
A23B 4/00 ~ 9/34
A23L 2/00 ~ 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷蔵庫本体と、
前記冷蔵庫本体の内部に設けられた第1貯蔵室及び第2貯蔵室と、
圧縮機と、前記圧縮機から吐出される冷媒が供給され空気を冷却する冷却器と、を有する冷凍サイクルと、
前記冷却器で冷却された空気を前記第1貯蔵室及び第2貯蔵室へ送風するファンと、
前記ファンから前記第1貯蔵室及び前記第2貯蔵室に送風される空気量を制御する切替手段と、
前記冷凍サイクル、前記ファン及び前記切替手段を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記冷却器へ冷媒を供給しつつ、前記ファンを駆動して前記冷却器で冷却された空気を前記第1貯蔵室及び前記第2貯蔵室へ供給する冷却運転と、前記冷却器への冷媒の供給を停止又は低減しつつ、前記ファンを駆動して前記冷却器に付着した水分から生成した加湿空気を前記第1貯蔵室及び前記第2貯蔵室の少なくとも一方へ供給する加湿運転を実行する冷蔵庫において、
前記制御部は、前記加湿運転の実行中に前記第2貯蔵室より前記第1貯蔵室に優先して加湿空気を供給するように前記切替手段を制御することで、前記第1貯蔵室の温度及び湿度を所定範囲に維持し、前記第1貯蔵室内の食品を熟成させる熟成運転を実行する冷蔵庫。
【請求項2】
前記ファンから前記第1貯蔵室へ供給する空気を除菌する除菌手段を備える請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記第1貯蔵室内を除菌する光を照射する照射装置を備える請求項1又は2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記熟成運転の実行可能な時間を設定する設定手段を備える請求項1~3のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項5】
前記第1貯蔵室内の食品の熟成度合いを判定する熟成判定手段を備え、
前記熟成判定手段において検出された熟成度合いが所定条件を満たすと使用者に報知する報知手段を備える請求項1~4のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項6】
前記熟成判定手段は、前記第1貯蔵室内のにおいの強さを検知するにおいセンサを備え、前記においセンサの検出結果から前記第1貯蔵室内の食品の熟成度合いを検出する請求項5に記載の冷蔵庫。
【請求項7】
前記熟成判定手段は、前記第1貯蔵室内を撮像する撮像手段を備え、前記撮像手段の撮像結果から前記第1貯蔵室内の食品の熟成度合いを検出する請求項5又は6に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記熟成判定手段は、使用者が前記第1貯蔵室に収納された食品を入力する第1モードと、前記撮像手段の撮像結果から前記第1貯蔵室に収納された食品を特定する第2モードとを備え、
前記第1モードと前記第2モードとで食品の熟成度合いを検出する処理が異なる請求項7に記載の冷蔵庫。
【請求項9】
前記熟成判定手段は、前記第1貯蔵室内のにおいの強さを検知するにおいセンサと、前記第1貯蔵室内を撮像する撮像手段と、を備え、
前記においセンサが前記撮像手段より前記第1貯蔵室における空気流れ方向の下流側に配置されている請求項5~8のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項10】
前記制御部は、前記冷却運転と前記熟成運転とを繰り返し実行する請求項1~9のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項11】
前記制御部は、前記熟成運転の実行後に前記冷却運転を実行する場合、前記冷却器で冷却された空気を前記第1貯蔵室より前記第2貯蔵室へ優先して供給するように前記切替手段を制御する請求項1~10のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【請求項12】
前記ファンによって送風された空気を前記第1貯蔵室へ供給する吹出口が前記切替手段より空気の流れ方向の上流側に設けられ、前記ファンによって送風された空気を前記第2貯蔵室へ供給する吹出口が前記切替手段より空気の流れ方向の下流側に設けられている請求項1~11のいずれか1項に記載の冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、冷蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食肉や果物などの食品を熟成する冷蔵庫が提案されている。しかし、このような冷蔵庫は大型の業務用の装置であり、一般家庭での比較的少量の食品を熟成するためにこれを使用することは実際的でない。
【0003】
家庭用の冷蔵庫では、食品の保存性能の向上について種々検討されているが、食品を熟成することについて考慮されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-6820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、食品の保存及び熟成が可能な冷蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の冷蔵庫は、冷蔵庫本体と、前記冷蔵庫本体の内部に設けられた第1貯蔵室及び第2貯蔵室と、圧縮機と、前記圧縮機から吐出される冷媒が供給され空気を冷却する冷却器と、を有する冷凍サイクルと、前記冷却器で冷却された空気を前記第1貯蔵室及び第2貯蔵室へ送風するファンと、前記ファンから前記第1貯蔵室及び前記第2貯蔵室に送風される空気量を制御する切替手段と、前記冷凍サイクル、前記ファン及び前記切替手段とを制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記冷却器へ冷媒を供給しつつ、前記ファンを駆動して前記冷却器で冷却された空気を前記第1貯蔵室及び前記第2貯蔵室へ供給する冷却運転と、前記冷却器への冷媒の供給を停止しつつ、前記ファンを駆動して前記冷却器に付着した霜を融解して生成した水分を前記第1貯蔵室及び前記第2貯蔵室の少なくとも一方へ供給する加湿運転を実行する冷蔵庫において、前記制御部は、前記加湿運転の実行中に前記第2貯蔵室より前記第1貯蔵室に優先して水分を供給するように前記切替手段を制御することで、前記第1貯蔵室の温度及び湿度を所定範囲に維持し、前記第1貯蔵室内の食品を熟成させる熟成運転を実行するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態の冷蔵庫の断面図
図2図1の要部拡大図
図3】除菌装置の断面図
図4図1の冷蔵庫の制御構成を示すブロック図
図5】食品の種類に対応して記憶された色度の比率と色差の一例を示す図
図6】撮像手段に基づく食品の熟成度合いの検出する制御を示すフロー図
図7】本発明の変更例1の冷蔵庫の要部を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態の冷蔵庫1について図面に基づき説明する。
【0009】
(1)冷蔵庫1の構成
図1に示すように、冷蔵庫1は、前面に開口する断熱箱体からなる冷蔵庫本体2を備える。冷蔵庫本体2は鋼板製の外箱と真空成形により設けられる合成樹脂製の内箱との間隙に真空断熱パネルやウレタンフォームなどの断熱材を配置し、前面を開口し内部を貯蔵空間とした縦長の断熱箱体からなる。冷蔵庫本体2の内部に形成された貯蔵空間は、断熱仕切壁2aによって上方の冷蔵空間と下方の冷凍空間に断熱区画されている。
【0010】
冷蔵空間は、内部がさらに仕切板2bによって上下に区画され、仕切板2bの上方に複数段の棚板3bを設けた冷蔵室3が設けられ、仕切板2bの下方に引出式の収納容器を配置する野菜室4が設けられている。
【0011】
冷蔵室3及び野菜室4は、冷蔵温度帯(例えば、0~4℃)に冷却される貯蔵室である。冷蔵室3の前面開口部は、該開口部を幅方向に区分する観音開き式の左右一対の断熱性の冷蔵室扉3aにより閉塞される。この冷蔵室扉3aは、冷蔵庫本体の左右両側に設けたヒンジにより回動自在に枢支されている。冷蔵室扉3aの前面には、使用者から冷蔵庫1の設定等を受け付けたり、冷蔵庫1の設定状況等を表示する操作表示部7が設けられている。
【0012】
冷蔵室3の内部は、複数の棚板3bによって上下に複数段に区画されている。最下段の棚板3bの下方空間は、上下に重ねて設けられた上容器40及び下容器41を収納するチルド室3cが設けられており、冷蔵室3内に設けられた小貯蔵室を構成する。このチルド室3cは、後述する熟成モードの実行中に食品の熟成を行う熟成空間となる。
【0013】
冷蔵室3の背面には、冷蔵室3の庫内温度を測定するための冷蔵温度センサ23が設けられ、チルド室3cの背面には、チルド室3cの庫内温度を測定するためのチルド温度センサ24が設けられている。また、冷蔵室3の前面開口部の周縁部には、冷蔵室扉3aの開閉を検知する扉センサ9が設けられている。
【0014】
野菜室4の前面開口部は、引出し式の野菜室扉4aにより閉塞されている。野菜室扉4aの庫内側には、貯蔵容器を保持する左右一対の支持枠が固着され、開扉動作とともに貯蔵容器が庫外に引き出されるように構成されている。
【0015】
断熱仕切壁2aの下方の冷凍空間は、冷凍温度帯(例えば、-18℃~-20℃)に冷却保持される空間であり、製氷室、第1冷凍室5と、第2冷凍室6とを備える。製氷室及び第1冷凍室5は、断熱仕切壁2aを介して野菜室4の下方に左右に並べて設けられている。製氷室及び第1冷凍室5の下方には、下部ケースと上部ケースを備えた第2冷凍室6が配置されている。
【0016】
製氷室、第1冷凍室5及び第2冷凍室6の開口部は、野菜室4と同様、引き出し式の扉5a,6aにより閉塞されている。
【0017】
また、第2冷凍室6の背面には、第2冷凍室6の庫内温度を測定するための冷凍温度センサ25が設けられている。
【0018】
チルド室3c及び野菜室4の後部には、エバカバー12で前後に仕切られた冷蔵冷却器室13が設けられている。冷蔵冷却器室13には、冷蔵冷却器10、冷蔵ファン11及び除菌装置50等が収納されている。冷蔵冷却器室13は、開度制御が可能なダンパ30を介して冷蔵室3の背面に設けられた背面ダクト14が接続されている。エバカバー12にはチルド室3cに設けられた上容器40の上面開口部より上方位置に開口する吹出口12aが設けられ、背面ダクト14には冷蔵室3の背面に開口する吹出口14aが上下方向に間隔をあけて設けられている。
【0019】
冷蔵冷却器10は、冷蔵冷却器室13の空気を冷却して、例えば、-10~-20℃の冷気を生成する。
【0020】
図1及び図2に示すようなダンパ30が背面ダクト14への流路を開放した状態で冷蔵ファン11が回転すると、冷蔵冷却器室13で生成された冷気は、背面ダクト14を介して吹出口14aから冷蔵室3に供給されるとともに、エバカバー12に設けられた吹出口12aからチルド室3cに供給される。この時、ダンパ30が開度を調整することで、冷蔵室3及びチルド室3cに供給する空気量を調整する。
【0021】
また、ダンパ30が背面ダクト14への流路を閉塞した状態で冷蔵ファン11が回転すると、冷蔵冷却器室13で生成された冷気は、吹出口14aから冷蔵室3に供給されることなく、吹出口12aからチルド室3cのみに供給される。
【0022】
つまり、ダンパ30は、背面ダクト14への開度を調整することで、冷蔵室3及びチルド室3cに供給する空気量を調整する切換手段として機能する。
【0023】
冷凍空間に設けられた貯蔵室(製氷室、第1冷凍室5、第2冷凍室6)の背部には、ダクト18を形成するカバー体17によって冷凍温度帯の貯蔵室と区画された冷凍冷却器室19が設けられている。
【0024】
冷凍冷却器室19の内部には、冷蔵冷却器10より低い温度に冷却される冷凍冷却器15と冷凍ファン16等が設けられている。冷凍冷却器室19に設けられた冷凍ファン16は、冷凍冷却器15で冷却した冷凍冷却器室19内の空気をダクト18を介して製氷室、第1冷凍室5及び第2冷凍室6に供給することで、製氷室、第1冷凍室5及び第2冷凍室6を冷却する。
【0025】
冷蔵冷却器10及び冷凍冷却器15は、冷蔵庫本体2の背面下部に設けられた機械室20内に収納された圧縮機21や不図示の凝縮器とともに冷凍サイクルを構成する。冷凍サイクルは、圧縮機21から吐出された冷媒が切替弁22(図4参照)によって冷蔵冷却器10及び冷凍冷却器15の一方に供給されることで、冷蔵冷却器10及び冷凍冷却器15をそれぞれ交互に所定温度に冷却する。冷蔵冷却器10には、冷蔵冷却器10の温度を検出する冷蔵冷却器センサ26が設けられ、冷凍冷却器15には、冷凍冷却器15の温度を検出する冷凍冷却器センサ27が設けられている。
【0026】
また、冷蔵庫本体2の外側、例えば、冷蔵庫本体2の天井壁の上面後部には、冷蔵庫1を制御するマイコン等を実装した制御基板からなる制御部28が設けられている。
【0027】
(2)チルド室3cの構造
チルド室3cの構造について、図2に基づいて説明する。
【0028】
最下段の棚板3bとその下方に設けられた仕切板2bとで冷蔵室3内に区画された空間には、幅方向一方側に寄せて不図示の製氷タンクを収納するタンク室が区画され、幅方向他方側に上下に重ねて設けられた上容器40及び下容器41を収納するチルド室3cが区画されている。
【0029】
最下段の棚板3bは、チルド室3cの天井壁を構成し、その前端部にヒンジによって回動自在に設けられた蓋体42が吊り下げられている。
【0030】
上容器40は、平面形状が略矩形状の上面に開口する合成樹脂製の容器からなり、上面に食品などの貯蔵物を出し入れする開口部(取出口)が設けられ、上容器40内部に貯蔵物を収納する収納空間が形成されている。上容器40の底面前部には、下容器41と連通する通気口43が設けられている。
【0031】
上容器40は、図1に示すようなチルド室3cに収納された状態において、上容器40の前壁と最下段の棚板3bとの間に形成された開口が蓋体42によって閉塞され、上容器40の上面開口部が棚板3bによって閉塞されている。チルド室3cに収納された上容器40を前方へ引き出すと、蓋体42を前方へ回動させながら棚板3bの前方へ上容器40が移動し、上容器40の上面開口部が開放され貯蔵物を出し入れできるようになる。
【0032】
上容器40の後方には、エバカバー12に設けられた吹出口12aが開口している。この例では、吹出口12aが上容器40の上面開口部より上方位置に設けられており、冷蔵冷却器室13で生成された冷気は、吹出口12aより吹き出して上容器40の上面開口部から内部に導入される。
【0033】
下容器41は、平面形状が略矩形状の上面に開口する合成樹脂製の容器からなり、上面に貯蔵物を出し入れする開口部(取出口)が設けられ、下容器41内部に貯蔵物を収納する収納空間が形成されている。この例では、下容器41は、チルド室3cに収納された状態において、上面開口部が上方に設けられた上容器40の底面によって閉塞され、下容器41を前方へ引き出すことで下容器41の上面開口部が開放され貯蔵物を出し入れできるようになる。
【0034】
下容器41の底面後部には、排気口44が開口している。排気口44は、仕切板2bの後端部に設けられた吸込口2cと対向している。
【0035】
上容器40及び下容器41では、エバカバー12に設けられた吹出口12aからチルド室3cへ吹き出した冷気が、上容器40の上面開口部の後方から導入され、上容器40内を冷却しながら前方へ向かって流れ、通気口43を通って下容器41に流れ込む。上容器40から下容器41に流れ込んだ冷気は、下容器41内を冷却しながら後方へ向かって流れ、下容器41の底面後部に設けられた排気口44から外部へ排出され、排気口44と対向する吸込口2cからリターンダクト31に流れ込み冷蔵冷却器室13に戻って再び冷蔵冷却器10によって冷却される。
【0036】
このようなチルド室3cには、撮像手段70と、においセンサ80が設けられている。具体的には、図2に示すように、撮像手段70は、最下段の棚板3bの下面における幅方向中央部であって前後方向中央部より後方側に設けられている。撮像手段70は、CCDカメラ等のカメラからなり、上容器40に収納された収納物(食品)を上方から撮影する。撮像手段70は、撮影した画像を検知情報として制御部28へ出力する。
においセンサ80は、チルド室3cにおける排気口44の近傍やリターンダクト31における吸込口2cの近傍など、チルド室3cに収納された上容器40及び下容器41の後方に設けられている。においセンサ80は、チルド室3c内のにおいの強さを検知するセンサであって、例えば、トリメチルアミンや硫化水素やメチルメルカプタン等の所定の臭気物質の濃度を検出する熱線型半導体センサ等のセンサからなる。においセンサ80は、下容器41内を後方へ向かって流れてきた冷気に含まれる臭気物質の濃度を検出し、チルド室3c内のにおいの強さを示す情報(におい情報)を検知情報として制御部28へ出力する。
【0037】
(3)除菌装置50の構成
除菌装置50は、図2に示すように、冷蔵冷却器室13における冷蔵冷却器10より空気流れ方向の下流側に設けられ、冷蔵空間へ供給される空気を除菌する装置である。この除菌装置50は、図3に示すように、フレーム51と、このフレーム51の上部と下部に配置された一対の発光装置52と、これら一対の発光装置52間に配置された2枚のフィルタ53とを備えている。このうち、フィルタ53は、空気の流通が可能で可視光応答型光触媒54が担持されている。
【0038】
可視光応答型光触媒54とは、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、酸化タングステンおよび炭化珪素からなる群より選択される少なくとも一種類に、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅からなる群より選択される少なくとも一種類の不純物元素をドーパントとして加えたものや、光触媒粒子の表面にハロゲン化白金化合物を含有させて光触媒としたものであって、1~360nmである紫外線の波長で触媒活性を示す通常の光触媒、例えば、最も一般的な光触媒である酸化チタンは270nmの紫外線で活性化するのに対して、それより低エネルギーの360~760nmの可視光領域の光でも活性化する光触媒であり、例えば、窒素ドープによる酸化チタン可視光応答型光触媒や、白金担持酸化チタンなどが知られている。
【0039】
上下一対の発光装置52には、厚さ方向に貫通した貫通孔55が複数個形成されていて、冷蔵冷却器室13を流れる冷気が発光装置52に設けられた貫通孔55を通過する。そして、上側の発光装置52の下面には複数個の光源56が下向きに設けられ、また、下側の発光装置52の上面にも複数個の光源56が上向きに設けられている。これら各光源56は、フィルタ53に担持した可視光応答型光触媒54を励起する波長帯の光を含む可視光を発光するもので、例えば、例えばLED(発光ダイオード)により構成されている。このような一対に発光装置52は、可視光応答型光触媒54を担持したフィルタ53の上下に間隔をあけつつ光源56を設けた面をフィルタ53に向けて配置されている。
【0040】
除菌装置50は、発光装置52に設けられた光源56を点灯させてフィルタ53に担持された可視光応答型光触媒54を活性化することで、冷蔵冷却器室13を流れる空気に含まれた細菌などを分解除去する。これにより、冷蔵冷却器室13から冷蔵室3、チルド室3c及び野菜室4へ除菌された空気を供給することができる。
【0041】
(4)冷蔵庫1の電気的構成
冷蔵庫本体2の上部に設けられた制御部28には、図4に示すように、操作表示部7、扉センサ9、冷蔵ファン11、冷凍ファン16、圧縮機21、切替弁22、冷蔵温度センサ23、チルド温度センサ24、冷凍温度センサ25、冷蔵冷却器センサ26、冷凍冷却器センサ27、除菌装置50、撮像手段70及びにおいセンサ80等の冷蔵庫本体2の内側又は外側に設けられた電気部品が電気接続されている。そして、制御部28は、各種センサから入力される信号や、使用者の操作によって操作表示部7から入力される信号などが入力されると、予めメモリに記憶された制御プログラムに基づいて、冷蔵ファン11、冷凍ファン16、圧縮機21及び切替弁22の動作を制御することで、圧縮機21や冷蔵ファン11及び冷凍ファン16の運転、切替弁22による冷蔵冷却器10と冷凍冷却器15への冷媒切換え、操作表示部7の表示など、冷蔵庫1の動作全般を制御する。
【0042】
また、制御部28は、チルド室3cの上容器40内を撮像する撮像手段70と、チルド室3c内のにおいの強さを検知するにおいセンサ80とともに、チルド室3c内の食品の熟成度合いを判定する熟成判定手段を構成する。
【0043】
(5)冷蔵庫1の冷却運転
冷蔵庫1は、庫内を冷却する冷却運転として、冷蔵温度センサ23及び冷凍温度センサ25によって検出された冷蔵空間の庫内温度及び冷凍空間の庫内温度に基づいて、冷蔵温度帯の冷蔵室3、チルド室3c及び野菜室4を冷却する冷蔵冷却運転と、冷凍温度帯の製氷室、第1冷凍室5及び第2冷凍室6を冷却する冷凍冷却運転とを切り替えて実行する。
【0044】
(5-1)冷蔵冷却運転
制御部28は、冷蔵冷却開始条件を満たすと、圧縮機21を所定周波数で駆動しつつ切替弁22の冷蔵冷媒流路側の出口を開放して冷蔵冷却器10に冷媒を流し、更に、ダンパ30を開放して冷蔵冷却器室13と冷蔵室3を連通した状態で冷蔵ファン11を回転させて冷蔵冷却運転を開始する。冷蔵冷却開始条件の一例を挙げると、例えば、冷蔵温度センサ23の検出温度が冷蔵空間に対して設定されているON温度Tr1(例えば、5℃)以上になる場合がある。
【0045】
冷蔵冷却運転では、冷蔵冷却器10に流れ込んだ低圧、低温の冷媒が気化することで冷蔵冷却器室13で冷気を生成する。生成した冷気は、冷蔵ファン11の送風作用により、背面ダクト14を介して吹出口14aから冷蔵室3に供給されるとともに、エバカバー12に設けられた吹出口12aからチルド室3cに供給される。
【0046】
吹出口14aから冷蔵室3に供給された冷気は、冷蔵室3内を流れた後、一部が仕切板2bに設けられた吸込口2cからリターンダクト31を通って冷蔵冷却器室13に戻り、他の一部が仕切板2bに穿設された導入口2dを通って野菜室4へ流れ込む。野菜室4に流れ込んだ冷気は、野菜室4内を冷却した後、野菜室4の背面に設けられた吸込口4bからリターンダクト31に流れ込み冷蔵冷却器室13に戻る。
【0047】
また、吹出口12aからチルド室3cへ供給された冷気は、上容器40の上面開口部の後方から導入され、上容器40内を冷却しながら前方へ向かって流れ、通気口43を通って下容器41に流れ込む。上容器40から下容器41に流れ込んだ冷気は、下容器41内を冷却しながら後方へ向かって流れ、下容器41の底面後部に設けられた排気口44から外部へ排出され、排気口44と対向する吸込口2cからリターンダクト31に流れ込み冷蔵冷却器室13に戻る。
【0048】
冷蔵冷却器室13に戻った冷気は、冷蔵冷却器10によって冷却された後、再び冷蔵室3、チルド室3c及び野菜室4へ送風される。
【0049】
そして、冷蔵冷却運転の実行中に冷蔵冷却終了条件が満たされると、制御部28は、冷蔵冷却運転を終了する。冷蔵冷却終了条件の一例を挙げると、例えば、(1)冷蔵温度センサ23の検出温度が冷蔵空間に対して設定されているOFF温度Tr2(例えば、2℃)に達した時、(2)冷蔵冷却運転を開始してから最長冷却時間(例えば、40分間)以上が経過した時、(3)冷凍温度センサ25の検出温度が冷凍空間に対して設定されているON温度Tf1(例えば、-18℃)以上になった時、のいずれかの場合がある。
【0050】
冷蔵冷却運転を終了すると、制御部28は、圧縮機21を所定周波数で駆動しつつ切替弁22の冷凍冷媒流路側の出口を開放して冷凍冷却器15に冷媒を流し、さらに冷凍ファン16を回転させて冷凍冷却運転を開始する。
【0051】
(5-2)冷凍冷却運転
冷凍冷却運転では、冷凍冷却器15に流れ込んだ低圧、低温の冷媒が気化することで冷凍冷却器室19で冷気を生成する。生成された冷気は、冷凍ファン16の送風作用により製氷室、第1冷凍室5及び第2冷凍室6内を循環し、所定の冷凍温度帯になるように製氷室、第1冷凍室5及び第2冷凍室6を冷却する。
【0052】
製氷室、第1冷凍室5及び第2冷凍室6内を循環した冷気は、第2冷凍室6の背面に設けられた吸込口から冷凍冷却器室19に戻り、冷凍冷却器15により冷却され、その後、再び製氷室、第1冷凍室5及び第2冷凍室6へ送風される。
【0053】
そして、冷凍冷却運転の実行中に冷凍冷却終了条件が満たされると、制御部28は、冷凍冷却運転を終了する。冷凍冷却終了条件の一例を挙げると、例えば、(1)冷凍温度センサ25の検出温度が所定温度(例えば、-21℃)に達した時、(2)冷凍運転を開始してから最長冷却時間(例えば、90分間)以上が経過した時、(3)冷蔵温度センサ23の検出温度が冷蔵空間に対して設定されているON温度Tr1(例えば、5℃)以上になった時、のいずれかの場合がある。
【0054】
(6)加湿運転
冷蔵庫1では、冷蔵冷却運転及び冷凍冷却運転を切り替えて順次実行する中で、所定の加湿開始条件を満たすと加湿運転を実行する。
【0055】
加湿運転は、冷蔵冷却器10に付着した霜を融解により除去するとともに、融解した霜の水分を冷蔵空間へ供給することで、冷蔵空間を加湿する運転である。
【0056】
具体的には、制御部28が、切替弁22の冷蔵冷媒流路側の出口を閉塞したり、圧縮機21を停止又は運転周波数を低減したりすることで、冷蔵冷却器10への冷媒供給を停止又は低減ししつつ、冷蔵ファン11を駆動する。
【0057】
これらの制御の結果、0℃より高温の冷蔵空間の空気が冷蔵冷却器室13内に導入され、霜の付着した冷蔵冷却器10と熱交換した後、再び冷蔵空間に戻される。
【0058】
これにより、冷蔵冷却器10の温度を上昇させて冷蔵冷却器10に付着した霜を融解するとともに、融解した霜の水分を気化して加湿空気を生成する。生成した加湿空気は、冷蔵ファン11の送風作用によって冷蔵室3及びチルド室3cへ送風され、冷蔵室3及びチルド室3cや、冷蔵室3と連通する野菜室4を加湿する。
【0059】
このような加湿運転において、制御部28は、ダンパ30の開度を0%(全閉)から100%(全開)の範囲内で調整することで、冷蔵室3及びチルド室3cに供給する加湿空気量を制御したり、チルド室3cのみに加湿空気を供給する。
【0060】
加湿開始条件の一例を挙げると、例えば、(1)冷蔵冷却器センサ26の検出温度Tsが所定温度(例えば、ー10℃)以下である時間の積算時間が所定時間(例えば、180分間)以上に達した時、(2)扉センサ9が検出した冷蔵室扉3aの開閉回数が所定回数(例えば、50回)以上に達した時、(3)扉センサ9が検出した冷蔵室扉3aの開放時間の積算時間が所定時間(例えば、2分間)以上に達した時、のいずれかの場合がある。
【0061】
加湿運転を終了する条件の一例を挙げると、例えば、冷蔵冷却器センサ26で検出される冷蔵冷却器10の温度が所定温度(例えば、3℃)に達した時などがある。
【0062】
(7)熟成モード
また、冷蔵庫1では、所定の熟成実施条件を満たすと、制御部28は、上記した加湿運転中に熟成運転を行う熟成モードを設定し、チルド室3cに収納した食肉や果実などの食品を熟成させる運転を実行する。
【0063】
熟成実施条件の一例を挙げると、例えば、使用者が操作表示部7から所定操作を行って熟成モードを指示した時がある。
【0064】
熟成モードが設定されると制御部28は、冷蔵冷却運転及び冷凍冷却運転を切り替えて順次実行する中で、加湿開始条件を満たすと熟成運転を実行する。
【0065】
熟成運転を実行する場合、制御部28は、加湿運転の実行中にダンパ30の開度を所定値(例えば、開度を50%以下)に制御して、加湿運転によって生成された加湿空気を、冷蔵室3よりチルド室3cに優先して供給する。つまり、制御部28は、加湿運転の実行中にダンパ30を全閉にする、あるいは、ダンパ30の開度を小さく変更して、加湿運転によって生成された加湿空気を、冷蔵室3に比べてチルド室3cへ多く供給する。これにより、制御部28は、チルド室3cの温度及び湿度を所定範囲に維持し、食肉や果実などの食品を熟成させる。
【0066】
熟成運転の実行中におけるチルド室3cの温度及び湿度は、例えば、1℃以上3℃以下で湿度を60%以上80%以下、あるいは、食品が凍り始める温度(氷結点)以上0℃以下で湿度を70%以上85%以下とすることができる。
【0067】
加湿運転が終了すると、制御部28は、加湿運転時よりダンパ30の開度を大きくした後(例えば、開度を50%より大きくした後)、冷蔵冷却運転及び冷凍冷却運転を切り替えて順次実行する。ここで冷蔵冷却運転時を実行する場合、冷蔵冷却器室13で生成された冷気を、チルド室3cに比べて冷蔵室3へ多く供給するようにダンパ30の開度を設定してもよい。
【0068】
そして、制御部28は、冷蔵冷却運転、冷凍冷却運転及び加湿運転を繰り返し実行する中で、所定の熟成終了条件を満たすまで、加湿運転中に加湿空気をチルド室3cに優先して供給する熟成運転を実行し、チルド室3cに収納された食品の熟成を促す。
【0069】
なお、熟成モード中は、冷蔵冷却器室13に設けられた除菌装置50を動作させ、冷蔵冷却器室13を流れる加湿空気に含まれた細菌などを分解除去した後、チルド室3cへ供給することが好ましい。
【0070】
(8)熟成モードの終了
制御部28は、所定の熟成終了条件を満たすと、加湿運転時におけるダンパ30の開度を大きく設定し(つまり、背面ダクト14への流路の開度を大きく設定し)、加湿運転の実行中にチルド室3cへ供給する加湿空気量を熟成運転中に比べて減少させ、熟成運転を終了する。なお、熟成運転の終了時に設定するダンパ30の開度は、冷蔵冷却運転時におけるダンパ30の開度と同じ開度に設定してもよい。
【0071】
熟成終了条件の一例を挙げると、(1)使用者が操作表示部7から所定操作を行って熟成モードの終了を指示した時、(2)制御部28、撮像手段70及びにおいセンサ80から構成させる熟成判定手段において検出された熟成度合いが所定条件を満たした時などが挙げられる。
【0072】
(9)熟成判定手段における熟成度合いの判定
制御部28は、撮像手段70が撮像した上容器40に収納された収納物の画像と、においセンサ80から出力されたにおい情報に基づいて、チルド室3cに収納された食品の熟成度合いを検出する。
【0073】
(9-1)撮像手段70に基づく食品の熟成度合いの検出
制御部28は、食品の種類に対応して熟成度合いを検出する判定条件がメモリに記憶されている。制御部28は、チルド室3cに収納されている食品の種類を特定し、特定した食品の種類に対応する判定条件をメモリから呼び出し、呼び出した条件に基づいて熟成度合いを判定する。この熟成度合いの判定にあたって、制御部28は、使用者が操作表示部7等から食品の種類を入力する場合と、使用者が食品の種類を入力せず、撮像手段70が取得した画像から食品の種類を特定する場合とで、判定条件が異なっており熟成度合いを検出する処理が異なる。
【0074】
具体的には、制御部28には、熟成モードの終了の目安となる色度の比率(a/b)と色差(ΔE)が食品の種類に対応して記憶されている(図5参照)。
【0075】
そして、制御部28は、図6に示すような制御に基づいて熟成度合いを判定する。
【0076】
すなわち、熟成開始条件を満たし熟成モードを開始すると制御部28は、使用者の操作によって操作表示部7からチルド室3cに収納された食品の種類が入力されたか否か判断する(ステップS1)。なお、食品の種類の入力方法としては、所定の操作を行い操作表示部7に食品の名称やイラスト等を表示させ、その名称やイラストから使用者がチルド室3cに収納した食品を選択するなど、公知の方法によってチルド室3cに収納した食品の種類を入力することができる。そして、操作表示部7から入力があればステップS10に進み第1判定モードを実行し、入力がなければステップS20へ進み第2判定モードを実行する。
【0077】
第1判定モードでは、制御部28が所定時間(例えば、6時間)経過したか否か判断し(ステップS10)、所定時間が経過するまでこのステップS10を繰り返す(ステップS10のNo)。所定時間が経過するとステップS11へ進み、上容器40に収納された食品を撮像手段70によって撮像し、食品の画像を取得する。その後、制御部28は、ステップS11で取得した画像から食品の色度a、bと、色度の比率(a/b)を検出する(ステップS12)。
【0078】
そして、制御部28は、使用者が入力した食品の種類に対応する色度の比率(a /b )をメモリから呼び出し、ステップS12において検出した色度の比率(a/b)と比較する(ステップS13)。検出した色度の比率(a/b)がメモリに記憶されている色度の比率(a /b )より小さい場合(ステップS13のNo)、チルド室3cの食品の熟成が不十分であるとしてステップS10に戻り、所定時間経過した後、再びチルド室3cの食品の画像を取得し(ステップS11)、色度の比率(a/b)と比率(a /b )とを比較する(ステップS12,S13)。
【0079】
そして、検出した色度の比率(a/b)がメモリに記憶されている色度の比率(a /b )以上になるまでステップS10~S13を繰り返し、色度の比率(a/b)が比率(a /b )以上になると(ステップS13のYes)、チルド室3cの食品が熟成したと判断し、熟成モードを終了するとともに、チルド室3cの食品が熟成した旨を操作表示部7に表示する(ステップS2)。
【0080】
第2判定モードでは、まず、上容器40に収納された食品を撮像手段70によって撮像し、その画像を取得する(ステップS20)。そして、制御部28は、取得した画像に写っている食品の種類を画像解析することにより、上容器40に収納された食品の種類を検出するとともに、取得した画像から初期状態における食品の明度L 及び色度a 、b を検出する(ステップS20)。なお、画像解析による食品の種類の検出方法としては、公知の検出方法を採用することができる。例えば、取得した画像から輪郭線や色彩などの所定の情報を抽出し、予めメモリに記憶されている食品データと比較することで、取得した画像に写っている食品の種類を特定することができる。
【0081】
そして、制御部28が所定時間(例えば、6時間)経過したか否か判断し(ステップS22)、所定時間が経過するまでこのステップS22を繰り返す(ステップS22のNo)。所定時間が経過するとステップS23へ進み、上容器40に収納された食品を撮像手段70によって撮像し、食品の画像を取得する。その後、制御部28は、ステップS23で取得した画像から食品の明度L 及び色度a 、b と、初期状態における食品の色を基準とする色差ΔEを検出する(ステップS24)。
【0082】
そして、制御部28は、ステップS24において検出した色差ΔEとメモリに記憶されている色差ΔEとを比較する(ステップS25)。検出した色差ΔEがメモリに記憶されている色差ΔEより小さい場合(ステップS25のNo)、チルド室3cの食品の熟成が不十分であるとしてステップS22に戻り、所定時間経過した後、再びチルド室3cの食品の画像を取得し(ステップS23)、色差ΔEと色差ΔEとを比較する(ステップS24,S25)。
【0083】
そして、検出した色差ΔEがメモリに記憶されている色差ΔE以上になるまでステップS22~S25を繰り返し、色差ΔEが色差ΔE以上になると(ステップS25のYes)、チルド室3cの食品が熟成したと判断し、熟成モードを終了するとともに、チルド室3cの食品が熟成した旨を操作表示部7に表示して使用者に報知する(ステップS2)。
【0084】
なお、本実施形態では、所定時間毎に撮像手段70が食品の画像を取得する場合について説明したが、所定時間が経過し撮像手段70が食品の画像を取得する時が到来しても、冷蔵室扉3aの開放時は撮像手段70が画像の取得を延長し、冷蔵室扉3aが閉扉された後に画像を取得してもよい。このように冷蔵室扉3aの開放時に撮像手段70の画像取得を延長することで、撮像時の冷蔵室3内の照度が一定となり、精度良く食品の熟成度合いを判定することができる。
【0085】
また、撮像手段70が食品の画像を取得する場合、冷蔵室3内を照明する照明装置を点灯させて撮像手段70が撮像を行っても良く、また照明装置を消灯させて撮像手段70が撮像を行っても良いが、照明装置を消灯させて撮像することがより好ましい。このように照明装置の消灯時に撮像することで、撮像対象の食品に影が映り込むことがないため、精度良く食品の熟成度合いを検知することができる。
【0086】
また、撮像手段70によって食品の熟成度合いの判定する場合、冷蔵室扉3aの開扉を扉センサ9が検知すると、制御部28は、撮像手段70によってチルド室3cを撮像して収納された食品の配置に変化があるか否か検知してもよい。
【0087】
(9-2)においセンサ80に基づく熟成度合いの検出
制御部28には、所定のにおい成分毎に熟成度合いを検出する条件が記憶されている。ここでは、熟成度合いを判定する条件として、制御部28には熟成モードの終了の目安となる閾値が記憶されており、例えば、トリメチルアミンの閾値は0.0005ppm、硫化水素の閾値は0.02ppm、メチルメルカプタンは0.002ppmである。
【0088】
制御部28は、においセンサ80から出力されたにおい情報が、予め記憶されている閾値以上である場合に、チルド室3cの食品が熟成したと判断し、熟成モードを終了するとともに、チルド室3cの食品が熟成した旨を操作表示部7に表示して使用者に報知する。
【0089】
なお、においセンサ80は、任意のタイミングでチルド室3c内のにおい情報を検知することができるが、冷蔵室扉3aの閉扉中や冷蔵ファン11の停止中に、におい情報を検知することが好ましい。このようなタイミングでにおい情報を検知することで、チルド室3c内の空気流れが少ない時に検知するため、精度良くにおい情報を検知することができる。
【0090】
(10)効果
本実施形態の冷蔵庫1では、冷蔵室3よりチルド室3cに優先して供給するため、チルド室3cに収納された食品を熟成に適した加湿空気に曝すことができ、食品を熟成させ旨味成分を増加させることができる。
【0091】
しかも、熟成運転時にチルド室3cへ供給する加湿空気は、冷蔵冷却器10に付着した霜を除去する加湿運転時に発生する空気であるため、熟成運転を実行するために冷凍サイクルの運転制御を新たに追加する必要がなく、専用の熟成保存庫等を用いることなく食品を熟成させることができる。
【0092】
本実施形態では、熟成運転時に除菌装置50で除菌した加湿空気をチルド室3cへ供給するため、チルド室3cに収納された食品に付着する菌や冷蔵空間を浮遊する菌を除菌することができ、熟成対象の食品の腐敗を抑えたり、冷蔵庫内における細菌の増殖を抑えることができる。
【0093】
本実施形態では、食品の熟成度合いを検出する熟成判定手段として、撮像手段70とにおいセンサ80が設けられているため、撮像手段70により精度良く食品の熟成度合いを検出しつつ、撮影できない位置に食品があってもにおいセンサ80によって食品の熟成度合いを検出することできる。
【0094】
また、本実施形態では、においセンサ80が撮像手段70よりチルド室3cにおける空気流れ方向の下流側(風下側)に設けられているため、チルド室3cにおいて空気の流れが淀みやすい位置ににおいセンサ80を配置することができ、においセンサ80においてにおい情報を精度良く検出することができる。
【0095】
また、本実施形態では、使用者がチルド室3cに収納された食品の種類を入力する場合に第1判定モードを実行して食品の熟成度合いを判定し、撮像手段70が撮像した画像からチルド室3cに収納された食品の種類を特定する場合に第2判定モードを実行して食品の熟成度合いを判定するため、第1判定モードでは、熟成対象の食品の種類を正確に特定することができるため、より食品に適した熟成度合いに仕上げることができ、第2判定モードでは、使用者による食品の種類を特定する必要が無く簡便に食品を熟成させることができ、使い勝手を向上することができる。
【0096】
(変更例1)
本実施形態では、冷蔵冷却器室13に設けた除菌装置50によってチルド室3cに供給する空気を除菌する場合について説明したが、これに換えて、あるいはこれに加えて紫外線などのチルド室3cを除菌(殺菌)する光を照射する照射装置90を設けてもよい。
【0097】
図7に示すように、照射装置90は、例えば、チルド室3cの背面(つまり、エバカバー12の前面)に配置されている。照射装置90は、例えば複数個の紫外線発生可能なLED(発光ダイオード)92を基板94上にマトリックス状に配列したものである。
【0098】
照射装置90は、少なくとも熟成モードの実行している間、制御部28からの駆動電力を受けることで継続してあるいは断続的に紫外線を発生して、チルド室3cの上容器40及び下容器41に収納された食品、上容器40、下容器41、及びチルド室3cの内壁部分に発生した紫外線を照射する。これにより、これらを除菌することができ、熟成対象の食品の腐敗を抑えたり、冷蔵庫内における細菌の増殖を抑えることができる。
【0099】
なお、照射装置90は、上記したようなチルド室3cの背面以外に、チルド室3cの天井壁を構成する最下段の棚板3bの下面など、任意の位置に配置してもよい。
【0100】
また、照射装置90は、撮像手段70によってチルド室3cの食品の画像を取得する時に、紫外線を照射してもよく、また、紫外線の発生を停止してもよいが、撮像時の冷蔵室3内の照度が一定となり、精度良く食品の熟成度合いを判定することができる点で、撮像手段70が撮像している間は紫外線の発生を停止することが好ましい。
【0101】
(変更例2)
本実施形態では、チルド室3cの食品の熟成度合いを判定する熟成判定手段として、撮像手段70及びにおいセンサ80を設ける場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、撮像手段70及びにおいセンサ80のいずれか一方のみを用いてチルド室3cの熟成度合いを判定してもよく、あるいは、熟成モードの実行時間(つまり、熟成運転の実行可能な時間)からチルド室3cの熟成度合いを判定してもよい。
【0102】
熟成モードの実行時間からチルド室3cの熟成度合いを検知する場合、使用者が操作表示部7等から入力した時間を熟成モードの実行時間としたり、あるいは、使用者による操作表示部7等からの入力や撮像手段70で取得した画像などによってチルド室3cに収納された食品の種類を特定し、特定した食品の種類に対応する熟成モードの実行時間を予め制御部28が記憶するテーブルから呼び出し、呼び出した時間を熟成モードの実行時間としてもよい。
【0103】
このような変更例では、チルド室3cに収納された熟成度合いを簡便に判定することができる。
【0104】
(変更例3)
上記した本実施形態において食品の熟成を行う熟成空間(チルド室3c)の底面に、食品を載置する金属トレイを設けてもよい。貯蔵空間に金属トレイを設けることで、熟成対象の食品を速やかに冷却することができ、食品の腐敗を抑えることができる。
【0105】
なお、金属トレイとしては、アルミニウムなどの良熱伝導性の金属で形成されたトレイを採用することができ、ダイヤモンド粒子を含有するフッ素樹脂で表面がコーティング(ダイヤモンドコーティング)されていたり、トレイに複数の貫通孔が設けられていたり、食品を載置する面に複数の突起が設けられていたりすることが好ましい。
【0106】
金属トレイの表面がダイヤモンドコーティングされていると熱伝導率が良好になり、食品の腐敗を抑えることができる。また、金属トレイに貫通孔や突起を設けることで、熟成モードを実行している間、金属トレイに載置された食品の下面を加湿空気に曝すことができ、食品の腐敗を抑えつつ、食品全体を均一の熟成させることができる。
【0107】
(変更例4)
本実施形態では、所定時間毎に撮像手段70が食品の画像を取得して熟成度合いを検出する場合について説明したが、任意のタイミングで撮像手段70が画像を取得して熟成度合いを検出してもよい。
【0108】
例えば、冷蔵庫1に接近した使用者を検知するセンサを設け、当該センサが使用者を検出した時に撮像手段70が画像を取得したり、あるいは、においセンサ80がにおい情報を検知して、食品の熟成度合いを判定してもよい。
【0109】
これにより、使用者が冷蔵室扉3aを開けて庫内環境を変更する前に、撮像手段70及びにおいセンサ80が画像及びにおい情報を取得することができ、精度良く熟成度合いを検知することができる。
【0110】
なお、冷蔵庫1に接近する人の検知にあたり、冷蔵庫1に人感センサを設けてもよく、また、冷蔵室扉3a等の所定の扉の開放を補助する扉開放装置を備える冷蔵庫であれば、使用者が扉の開放を指示するための開扉センサによって冷蔵庫1に接近する人を検知してもよい。
【0111】
(変更例5)
本実施形態では、冷蔵室3に区画されたチルド室3cを熟成モードの実行中に食品の熟成を行う熟成空間とする場合について説明したが、野菜室4などのような冷蔵室3と別の扉により閉塞された貯蔵室を熟成空間としてもよい。
【0112】
また、本実施形態では、チルド室3cに設けた上下2段の上容器40及び下容器41の両方を、熟成モードの実行中に食品の熟成を行う熟成空間とする場合について説明したが、例えば、熟成運転に上容器40のみに加湿空気を導入し、上容器40のみを熟成空間としたり、あるいは、チルド室3cに上下に分割されていない1段の容器を配設し、当該容器内部を熟成空間としても良い。
【0113】
このようにチルド室3cにおいて空気流れ方向の上流側(風上側)に位置する上容器40のみを熟成空間としたり、上下に分割されていない1段の容器内部を熟成空間とすることで、熟成に適した湿度及び温度の加湿空気を食品に吹き付けることができ、良好な熟成空間を形成することができる。
【0114】
(変更例6)
本実施形態では、熟成判定手段において検出されたチルド室3cの食品の熟成度合いが所定条件を満たすと、熟成モードを終了する場合について説明したが、例えば、食品が所定の熟成度合いに達したことを使用者に報知し、熟成モードの終了と熟成モードの延長とを使用者に選択させ、使用者から熟成モードの終了が指示されると熟成モードを終了し、延長が指示されると、更に熟成モードを継続してもよい。
【0115】
また、熟成判定手段において検出されたチルド室3cの食品の熟成度合いが所定条件を満たす前であっても、これまで実行した熟成時間や熟成度合いを、操作表示部7等に数値表示したりイラスト表示して、使用者に食品の熟成の進捗状況を知らせてもよい。
【0116】
(変更例7)
本実施形態では、撮像手段70を最下段の棚板3bの下面における幅方向中央部であって前後方向中央部より後方側に設ける場合について説明したが、チルド室3cに収納された収納物を撮像できる位置であれば任意の位置に撮像手段70を設けることができる。
【0117】
例えば、最下段の棚板3bの左側や右側など幅方向の任意の位置に撮像手段70を設置したり、最下段の棚板3bの前側や前後方向中央部など前後方向の任意の位置に撮像手段70を設置したりすることができる。
【0118】
また、撮像手段70の設置位置につき、チルド室3cへ冷気が吹き出す吹出口12aと前後に重なる位置に撮像手段70を設置してもよく、吹出口12aと左右方向及び上下方向の少なくとも一方へずらして撮像手段70を設置してもよい。
【0119】
また、本実施形態では、図2に示すように、撮像手段70を最下段の棚板3bの下面に設置する場合を示したが、上容器40の底板や、チルド室3cの後壁を構成するエバカバー12の前面や、チルド室3cの前壁を構成する蓋体42等に上容器40の内部へ向けて撮像手段70を設置してもよい。
【0120】
(変更例8)
本実施形態では、においセンサ80をチルド室3cの後方下部に設け、においセンサ80が、後方へ向かって流れてきた冷気に含まれる臭気物質の濃度を検出する場合について説明したが、チルド室3c内におけるにおいの強さを検出することができる位置であれば任意の位置ににおいセンサ80を設けることができる。
【0121】
例えば、上容器40内部や下容器41内部の左側や右側や中央部など幅方向の任意の位置ににおいセンサ80を設けたり、上容器40内部や下容器41内部の前側や後側や中央部など前後方向の任意の位置ににおいセンサ80を設けることができる。また、においセンサ80が、前方へ向かって流れてきた冷気や下方へ向かって流れてきた冷気に含まれる臭気物質の濃度を検出してもよい。
【0122】
また、においセンサ80の設置位置につき、撮像手段70と上下に重なる位置ににおいセンサ80を設置してもよく、撮像手段70と左右方向及び前後方向の少なくとも一方へずらしてにおいセンサ80を設置してもよい。また、においセンサ80をチルド室3cの上部や上下方向中央部に設置したり、においセンサ80を撮像手段70の上方や撮像手段70と同じ高さ位置に設置してもよい。
【0123】
また、においセンサ80の設置位置は、撮像手段70より空気流れ方向の下流側に設定しても、撮像手段70より空気流れ方向の上流側(風上側)に設定してもよいが、においセンサ80によって精度良く臭気物質の濃度を検出することができる点で、撮像手段70より空気流れ方向の下流側(風下側)に設定することが好ましい。
【0124】
(変更例9)
本実施形態では、撮像手段70を最下段の棚板3bの下面に設け、撮像手段70によって上容器40内部を撮像し、においセンサ80をチルド室3cの後方下部に設け、上容器40及び下容器41を流れた後の空気に対してにおいの強さを検出する場合について説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0125】
例えば、上容器40の底板下面など、下容器40内部の撮像が可能な位置に撮像手段70を設け、下容器40の底板上面など、下容器40内部ににおいセンサ80を設けてもよい。かかる場合において、においセンサ80より撮像手段70を空気流れ方向上流側(つまり、においセンサ80より撮像手段70を前方に)に配置してもよく、また、撮像手段70よりにおいセンサ80を空気流れ方向上流側(つまり、撮像手段70よりにおいセンサ80を前方に)に配置してもよい。
【0126】
あるいはまた、最下段の棚板3bの下面など、上容器40内部の撮像が可能な位置に撮像手段70を設け、上容器41の底板上面など、上容器40内部ににおいセンサ80を設けてもよい。かかる場合において、においセンサ80より撮像手段70を空気流れ方向上流側(つまり、においセンサ80より撮像手段70を後方に)に配置してもよく、また、撮像手段70よりにおいセンサ80を空気流れ方向上流側(つまり、撮像手段70よりにおいセンサ80を後方に)に配置してもよい。
【0127】
(変更例10)
本実施形態では、冷蔵冷却器室13において冷蔵冷却器10より空気流れ方向下流側に除菌装置50を設ける場合について説明したが、冷蔵空間の空気が流通する箇所であれば任意の位置に除菌装置50を設けることができる。
【0128】
例えば、除菌装置50より空気流れ方向下流側にチルド室3cを設け、更に下流側ににおいセンサ80を設けたり、除菌装置50より空気流れ方向上流側に冷蔵冷却器10を設け、更に上流側にチルド室3cを設けたり、撮像手段70より空気流れ方向下流側に除菌装置50を設け、更に下流側ににおいセンサ80を設けたりしてもよい。
【0129】
(その他の変更例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0130】
1…冷蔵庫、2…冷蔵庫本体、3…冷蔵室、3a…冷蔵室扉、3c…チルド室、7…操作表示部、9…扉センサ、10…冷蔵冷却器、11…冷蔵ファン、12…エバカバー、12a…吹出口、13…冷蔵冷却器室、14…背面ダクト、14a…吹出口、28…制御部、30…ダンパ、40…上容器、41…下容器、50…除菌装置、70…撮像手段、80…においセンサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7