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特許7261068塗装体、自転車、および塗装体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】塗装体、自転車、および塗装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/023 20190101AFI20230412BHJP
   B62J 6/20 20060101ALI20230412BHJP
   B05D 1/36 20060101ALI20230412BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20230412BHJP
   B32B 33/00 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
B32B7/023
B62J6/20 Z
B05D1/36 Z
B05D5/06 B
B32B33/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019074176
(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公開番号】P2020172046
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000112978
【氏名又は名称】ブリヂストンサイクル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】中島 陽子
(72)【発明者】
【氏名】野坂 学
(72)【発明者】
【氏名】川島 健佑
(72)【発明者】
【氏名】山中 桂太
(72)【発明者】
【氏名】山岡 京史
(72)【発明者】
【氏名】小池 駿介
【審査官】福井 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-155693(JP,A)
【文献】特開平06-171054(JP,A)
【文献】特開平06-170330(JP,A)
【文献】特開平05-050030(JP,A)
【文献】特開平04-059252(JP,A)
【文献】特開2000-335309(JP,A)
【文献】特開2001-150624(JP,A)
【文献】特開2007-256433(JP,A)
【文献】特開2004-301977(JP,A)
【文献】実開昭53-079659(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B62J 6/20
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、および前記基材の外面に配設された塗膜を備えた塗装体であって、
前記塗膜は、
前記基材の外面側に配設された着色反射層と、
前記着色反射層の外面側に並べられて配設された複数の再帰反射体と、
前記着色反射層の外面側に配設された無色の透明層と、を備え、
前記透明層は、複数の膜体が積層されて構成され
前記再帰反射体は球状に形成され、
複数の前記膜体の各厚さは、前記再帰反射体の直径より薄く、
前記再帰反射体は複数の前記膜体に接すると共に、前記再帰反射体において、前記再帰反射体に接する前記膜体のうち、前記基材の外面から膜厚方向に最も離れて位置する膜体に埋設された部分の体積は、前記再帰反射体の体積の半分未満となっている、塗装体。
【請求項2】
数の前記膜体のうち、前記基材の外面から膜厚方向に最も離れて位置する第1膜体の外面は、前記再帰反射体より膜厚方向の外側に位置し
前記塗膜は、前記着色反射層の外面、および前記再帰反射体に接着されたバインダ層を備え、
前記再帰反射体は、複数の前記膜体のうち、最も前記基材の外面の近くに位置する第2膜体の外面から膜厚方向の外側に突出している、請求項1に記載の塗装体。
【請求項3】
前記塗膜は、複数の前記再帰反射体のうちの一部に対して外部からの入射光を遮蔽する遮蔽層を備える、請求項1または2に記載の塗装体。
【請求項4】
前記遮蔽層の外面は、前記透明層により被覆されている、請求項3に記載の塗装体。
【請求項5】
前記遮蔽層、および前記着色反射層は、同色となっている、請求項3または4に記載の塗装体。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の塗装体を有する、自転車。
【請求項7】
前記基材はフレームである、請求項6に記載の自転車。
【請求項8】
請求項1から5のいずれか1項に記載の塗装体を形成する塗装体の製造方法であって、
前記透明層を形成するに際し、
塗料の塗布、およびその硬化を繰り返して、複数の前記膜体を膜厚方向の内側から外側に向けて順次形成する、塗装体の製造方法。
【請求項9】
基材、および前記基材の外面に配設された塗膜を備えた塗装体であって、
前記塗膜は、
前記基材の外面側に配設された着色反射層と、
前記着色反射層の外面側に並べられて配設された複数の再帰反射体と、
前記着色反射層の外面側に配設された透明層と、を備え、
前記透明層は、複数の膜体が積層されて構成され
前記塗膜は、複数の前記再帰反射体のうちの一部に対して外部からの入射光を遮蔽する遮蔽層を備える、塗装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装体、自転車、および塗装体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材、および基材の外面に配設された塗膜を備えた塗装体として、例えば下記特許文献1に示されるような、塗膜が、基材の外面側に配設された反射層と、反射層の外面側に並べられて配設された複数の再帰反射体と、反射層の外面側に配設され、再帰反射体が埋設された着色層と、着色層の外面に配設された透明層と、を備えた構成が知られている。この塗装体では、再帰反射体に対する入射光を、再帰方向に反射させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-23896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の塗装体では、透明層を形成する際、特に透明層の厚さが比較的厚い場合に、例えば、塗料の塗布厚さを高精度にすること、並びに、外面に気泡を発現させにくくすること等が困難で、透明層を精度よく形成することが困難であるという問題があった。
【0005】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、透明層を精度よく形成することができる塗装体、自転車、および塗装体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明の塗装体は、基材、および前記基材の外面に配設された塗膜を備えた塗装体であって、前記塗膜は、前記基材の外面側に配設された着色反射層と、前記着色反射層の外面側に並べられて配設された複数の再帰反射体と、前記着色反射層の外面側に配設された透明層と、を備え、前記透明層は、複数の膜体が積層されて構成されている。
【0007】
この発明によれば、透明層が、複数の膜体が積層されて構成されているので、各膜体を形成するのに塗料を塗布したときの塗布厚さを薄くすることができる。したがって、比較的厚さの厚い透明層を単層で形成する場合と比べて、塗料の塗布厚さを高精度にすること、並びに、外面に気泡を発現させにくくすること、が可能になり、透明層を精度よく形成することができるとともに、透明層の接着強度を向上させることができる。
各膜体を形成するのに塗料を塗布したときの塗布厚さが薄くなることから、例えば、基材の外面が湾曲した周面を有する場合等であっても、硬化前の塗料がこの周面から自重で垂れやすくなるのを抑制することができる。
塗膜が、着色反射層を備えているので、再帰反射体に対する入射光を、再帰方向に反射させること、並びに、着色反射層に対する入射光を、着色光として反射させること、を同一の層で実現することが可能になり、塗膜の層構成を簡略にすることができる。このような着色反射層として、例えば、着色された透明な層に、例えば微小な金属片等の反射材を混入させた構成を採用してもよい。なお、金属片は、例えばアルミニウム合金等で形成されてもよい。
【0008】
ここで、前記再帰反射体は球状に形成され、複数の前記膜体の各厚さは、前記再帰反射体の直径より薄く、複数の前記膜体のうち、前記基材の外面から膜厚方向に最も離れて位置する第1膜体の外面は、前記再帰反射体より膜厚方向の外側に位置してもよい。
【0009】
この場合、再帰反射体の直径が、膜体の厚さより大きいので、再帰反射体の直径を大きく確保することが可能になり、再帰反射光の輝度を高くすることができる。
膜体の厚さが、再帰反射体の直径より薄いので、透明層を精度よく形成すること、および透明層の接着強度を向上させることを確実に実現することができる。
第1膜体の外面が、再帰反射体より膜厚方向の外側に位置しているので、再帰反射体の直径を大きくしても、再帰反射体が塗膜の最外面に露出することがなく、意匠性の悪化を防ぐことができる。
【0010】
また、前記塗膜は、前記着色反射層の外面、および前記再帰反射体に接着されたバインダ層を備え、前記再帰反射体は、複数の前記膜体のうち、最も前記基材の外面の近くに位置する第2膜体の外面から膜厚方向の外側に突出してもよい。
【0011】
この場合、塗膜が、着色反射層の外面、および再帰反射体に接着されたバインダ層を備えているので、再帰反射体を強く固定することができる。
【0012】
また、前記塗膜は、複数の前記再帰反射体のうちの一部に対して外部からの入射光を遮蔽する遮蔽層を備えてもよい。
【0013】
この場合、塗膜が遮蔽層を備えるので、塗膜が備える複数の再帰反射体のうち、膜厚方向の外側から遮蔽層で覆われている再帰反射体には、塗膜の外部からの光が直接入射されないため、この再帰反射体からは再帰反射光が出射されない一方、他の再帰反射体からは再帰反射光が出射される。これにより、塗膜に対して、視認者の見る向きと同じ向きの光が外部から入射されたときに、視認者に遮蔽層の平面視形状を視認させることが可能になり、意匠性を向上させることができる。
【0014】
また、前記遮蔽層の外面は、前記透明層により被覆されてもよい。
【0015】
この場合、遮蔽層の外面が、透明層により被覆されているので、遮蔽層を透明層により保護することが可能になり、例えば遮蔽層の剥離等を抑えることができる。
【0016】
また、前記遮蔽層、および前記着色反射層は、同色となってもよい。
【0017】
この場合、遮蔽層、および着色反射層が、同色となっているので、塗膜に対して、視認者の見る向きと異なる向きの光が入射されたときに、着色反射層から出射された着色光によって、これと同色の遮蔽層を視認者に視認させにくくすることができる。
【0018】
本発明の自転車は、本発明の塗装体を有する。
【0019】
この発明によれば、自転車が塗装体を有するので、夜間走行時に、自動車等のライトからの光が塗装体の塗膜に入射したときに、この入射光を、再帰反射させて塗装体の塗膜から出射させることが可能になり、自動車等の運転者に自転車の存在を確実に認識させることができる。
【0020】
ここで、前記基材はフレームであってもよい。
【0021】
この場合、基材が自転車のフレームとなっているので、夜間走行時に、自動車等のライトからの光を塗膜に入射させやすくすることが可能になるとともに、フレームが例えば暗色等であっても、自動車等の運転者に自転車の存在を確実に認識させることができる。
【0022】
本発明の塗装体の製造方法は、本発明の塗装体を形成する塗装体の製造方法であって、前記透明層を形成するに際し、塗料の塗布、およびその硬化を繰り返して、複数の前記膜体を膜厚方向の内側から外側に向けて順次形成する。
【0023】
この発明によれば、複数の膜体が積層されてなる透明層を有する塗膜を、容易かつ精度よく形成することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、透明層を精度よく形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る一実施形態として示した自転車の側面図である。
図2】本発明に係る第1実施形態として示した自転車の一部拡大断面図である。
図3】本発明に係る第2実施形態として示した自転車の一部拡大断面図である。
図4】本発明に係る第3実施形態として示した自転車の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る自転車1の一実施形態を、図1を参照しながら説明する。
以下の説明にあたり、自転車1の通常の走行方向に合わせて、自転車1の前側(図1の右側)を前側、自転車1の後側(図1の左側)を後側として説明する。また、前後方向、および上下方向の双方向に対して直交する方向を左右方向という。
【0027】
フレーム10は、フロントフォーク11、ヘッドチューブ12、ダウンチューブ13、トップチューブ14、シートチューブ17、シートステー15、およびチェーンステー16を備えている。なお、フレーム10は、本実施形態に限らず適宜変更してもよい。
【0028】
フロントフォーク11は、自転車1の前部に配置されており、フロントフォーク11の上端部にヘッドチューブ12が接続されている。ヘッドチューブ12に、ハンドルステム23が挿通されている。ハンドルステム23は、ヘッドチューブ12に対して回動可能に配設されている。ハンドルステム23の上端にはハンドル24が取り付けられている。
ヘッドチューブ12における後部には、ダウンチューブ13の前端部が接続されている。ダウンチューブ13は、前方から後方に向かうに従い下方に向かって延びている。ヘッドチューブ12におけるダウンチューブ13が接続された部位の直上部に、トップチューブ14の前端部が接続されている。トップチューブ14は、前方から後方に向かうに従い下方に向かって延びている。
【0029】
トップチューブ14の後端部は、シートチューブ17に接合されている。シートチューブ17は、上方に向かうに従い後方に向かって延びている。シートチューブ17の上端部に、シートポスト25が嵌め込まれている。シートポスト25の上端に、サドル26が取り付けられている。シートチューブ17における上端部の後側に、シートステー15の前端部が接続されている。シートステー15は、前方から後方に向かうに従い下方に向かって延びている。シートステー15の後端部は、前後方向に延びるチェーンステー16の後端部に接続されている。チェーンステー16の前端部は、シートチューブ17の下端部に接続されている。
【0030】
フロントフォーク11の下端部に、前輪21が回動可能に取り付けられ、シートステー15の後端部とチェーンステー16の後端部との接続部に、後輪22が回動可能に取り付けられている。後輪22には、図示しないスプロケット(以下「後方スプロケット」という)が後輪22と同軸上に配置されて取り付けられている。
【0031】
シートチューブ17の下端部と、チェーンステー16の前端部と、の接続部に、図示しないスプロケット(以下「前方スプロケット」という)を介してクランク27の一端部が取り付けられており、クランク27の他端部には、ペダル28が取り付けられている。クランク27は、左右方向に延びる回動軸周りに回動可能に配設されている。ペダル28は、クランク27の他端部に位置し、左右方向に延びる回動軸周りに回動可能に配設されている。なお、クランク27およびペダル28は、自転車1の左側にも設けられており、自転車1は、1対のクランク27および1対のペダル28を備えている。
【0032】
前方スプロケットおよび後方スプロケットには、チェーン29が巻きまわされている。ペダル28に運転者などの踏力が加えられると、前方スプロケットが回転する。前方スプロケットの回転は、チェーン29を介して後方スプロケットに伝達されて後方スプロケットが回転し、後方スプロケットの回転によって後輪22が回転する。
【0033】
自転車1は、前輪用泥除け30、後輪用泥除け31、およびチェーンカバー32をさらに備えている。
前輪用泥除け30は、フロントフォーク11の下端部にステー30aを介して取り付けられ、後輪用泥除け31は、シートステー15の後端部とチェーンステー16の後端部との接続部にステー31aを介して取り付けられている。チェーンカバー32は、チェーンステー16に取り付けられている。
【0034】
そして、本実施形態では、自転車1が、基材、および基材の外面に配設された塗膜51を備えた塗装体50を有している。以下、基材がフレーム10である例に基づいて説明する。
なお、基材は、フレーム10、前輪用泥除け30、後輪用泥除け31、およびチェーンカバー32のうちの少なくとも1つであってもよく、塗膜51は、例えば、フレーム10のうちの一部の外面、若しくは後輪用泥除け31の外面のうち、後方を向く部分に限って配設するなど適宜変更してもよい。
【0035】
図2に示されるように、塗膜51は、フレーム10の外面側に配設された着色反射層52と、着色反射層52の外面側に並べられて配設された複数の再帰反射体53と、着色反射層52の外面側に配設された無色の透明層54と、を備えている。
本実施形態では、塗膜51は、フレーム10の外面に接着された下塗層55と、着色反射層52の外面に接着されたバインダ層56と、をさらに備えている。着色反射層52は、下塗層55の外面に接着されている。透明層54は、クリア層であり、バインダ層56の外面に接着されている。なお、下塗層55、およびバインダ層56を配設しなくてもよい。
【0036】
着色反射層52は、着色された透明な層に、例えば微小な金属片等の反射材が混入されて構成されている。なお、金属片は、例えばアルミニウム合金等で形成される。着色反射層52への入射光は、反射材により反射されて塗膜51から出射される。
【0037】
再帰反射体53は、透明な球状に形成されている。再帰反射体53は、例えばガラス若しくは樹脂などにより形成されている。複数の再帰反射体53は、着色反射層52の外面に、膜厚方向に直交する沿面方向に敷き詰められて配設されている。複数の再帰反射体53は、膜厚方向に重複して配設されておらず、膜厚が再帰反射体53の直径と同等で、かつ沿面方向に沿って延びる1つの層をなすように配設されている。
再帰反射体53の直径は、バインダ層56、および着色反射層52の各厚さより大きくなっている。例えば、再帰反射体53の直径は、着色反射層52の厚さの約1.5倍となっている。
【0038】
再帰反射体53のうちの少なくとも一部は、着色反射層52に埋設されている。図示の例では、再帰反射体53における膜厚方向の内端部が、着色反射層52に埋設されている。再帰反射体53は、着色反射層52の内面より膜厚方向の外側に位置している。再帰反射体53のうち、着色反射層52に埋設された部分の体積は、再帰反射体53の体積の半分未満となっている。再帰反射体53は、バインダ層56を膜厚方向に貫いている。バインダ層56は、再帰反射体53に接着されている。
【0039】
透明層54は、複数の膜体54a、54b、54cが積層されて構成されている。複数の膜体54a、54b、54cの各厚さは互いに同等になっている。なお、複数の膜体54a、54b、54cの各厚さを互いに異ならせてもよい。
複数の膜体54a、54b、54cのうちの少なくとも1つの厚さは、再帰反射体53の直径より薄くなっている。図示の例では、複数の膜体54a、54b、54cの各厚さは、再帰反射体53の直径より薄くなっている。例えば、再帰反射体53の直径は、膜体54a、54b、54cの各厚さの約3倍となっている。
【0040】
複数の膜体54a、54b、54cのうち、フレーム10の外面から膜厚方向に最も離れて位置する第1膜体54cの外面は、再帰反射体53より膜厚方向の外側に位置している。本実施形態では、第1膜体54cの外面は、塗膜51の最外面となっている。
再帰反射体53は、複数の膜体54a、54b、54cのうち、最もフレーム10の外面の近くに位置する第2膜体54aの外面から膜厚方向の外側に突出している。第2膜体54aは、再帰反射体53により膜厚方向に貫かれている。
複数の膜体54a、54b、54cのうち、第1膜体54cと第2膜体54aとの間に位置する第3膜体54bに、再帰反射体53における膜厚方向の外端部が埋設されている。再帰反射体53のうち、第3膜体54bに埋設された部分の体積は、再帰反射体53の体積の半分未満となっている。第3膜体54bの外面は、再帰反射体53より膜厚方向の外側に位置している。
【0041】
次に、フレーム10の外面に塗膜51を配設して塗装体50を形成する方法について説明する。
【0042】
まず、フレーム10の外面に、第1塗料を塗布して硬化させ下塗層55を形成する。
次に、下塗層55の外面に、第2塗料を塗布し着色反射塗膜を形成する。第2塗料は、有色透明で、かつ微小な金属片が含有された樹脂材料となっている。
次に、第3塗料と再帰反射体53との混合物を、完全に硬化する前の着色反射塗膜の外面に吹き付ける。この際、複数の再帰反射体53が、膜厚方向に重複しないように、着色反射塗膜の外面に敷き詰められるとともに、再帰反射体53の前記内端部が、着色反射塗膜の外面にめり込み、また、第3塗料が、着色反射塗膜の外面に塗布される。その後、加熱して第3塗料、および着色反射塗膜を硬化させ、バインダ層56および着色反射層52を形成する。
次に、第4塗料の塗布、および加熱、硬化を繰り返して、第2膜体54a、第3膜体54b、および第1膜体54cを、膜厚方向の内側から外側に向けてこの順に形成する。これにより、フレーム10の外面に塗膜51が配設された塗装体50が形成される。
【0043】
以上説明したように、本実施形態による塗装体50によれば、透明層54が、複数の膜体54a、54b、54cが積層されて構成されているので、各膜体54a、54b、54cを形成するのに塗料を塗布したときの塗布厚さを薄くすることができる。したがって、比較的厚さの厚い透明層54を単層で形成する場合と比べて、塗料の塗布厚さを高精度にすること、並びに、外面に気泡を発現させにくくすること、が可能になり、透明層54を精度よく形成することができるとともに、透明層54の接着強度を向上させることができる。
【0044】
各膜体54a、54b、54cを形成するのに塗料を塗布したときの塗布厚さが薄くなることから、例えば、基材の外面が湾曲した周面を有する場合、あるいは塗料の硬化前に基材を移動させる場合等であっても、硬化前の塗料が基材から自重で垂れやすくなるのを抑制することができる。
塗膜51が、着色反射層52を備えているので、再帰反射体53に対する入射光を、再帰方向に反射させること、並びに、着色反射層52に対する入射光を、着色光として反射させること、を同一の層で実現することが可能になり、塗膜51の層構成を簡略にすることができる。
【0045】
再帰反射体53の直径が、膜体54a、54b、54cの各厚さより大きいので、再帰反射体53の直径を大きく確保することが可能になり、再帰反射光の輝度を高くすることができる。
膜体54a、54b、54cの各厚さが、再帰反射体53の直径より薄いので、透明層54を精度よく形成すること、および透明層54の接着強度を向上させることを確実に実現することができる。
第1膜体54cの外面が、再帰反射体53より膜厚方向の外側に位置しているので、再帰反射体53の直径を大きくしても、再帰反射体53が塗膜51の最外面に露出することがなく、意匠性の悪化を防ぐことができる。
【0046】
塗膜51が、着色反射層52の外面、および再帰反射体53に接着されたバインダ層56を備えているので、再帰反射体53を強く固定することができる。
再帰反射体53の直径が、複数の膜体54a、54b、54cのうちの少なくとも1つの厚さより大きいので、再帰反射体53の直径を大きく確保することが可能になり、再帰反射光の輝度を高くすることができる。
複数の膜体54a、54b、54cのうちの少なくとも1つの厚さが、再帰反射体53の直径より薄いので、透明層54を精度よく形成すること、および透明層54の接着強度を向上させることができる。
【0047】
本実施形態による自転車1によれば、以上のように構成された塗装体50を有するので、夜間走行時に、自動車等のライトからの光が塗装体50の塗膜51に入射したときに、この入射光を、再帰反射させて塗装体50の塗膜51から出射させることが可能になり、自動車等の運転者に自転車1の存在を確実に認識させることができる。
【0048】
基材が自転車1のフレーム10となっているので、夜間走行時に、自動車等のライトからの光を塗膜51に入射させやすくすることが可能になるとともに、フレーム10が例えば暗色等であっても、自動車等の運転者に自転車1の存在を確実に認識させることができる。
【0049】
本実施形態による塗装体50の製造方法によれば、複数の膜体54a、54b、54cが積層されてなる透明層54を有する塗膜51を、容易かつ精度よく形成することができる。
【0050】
次に、本発明の第2実施形態に係る塗装体60を、図3を参照しながら説明する。
なお、この第2実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0051】
本実施形態の塗装体60では、再帰反射体53が、着色反射層52より膜厚方向の外側に位置している。再帰反射体53の前記内端部が、バインダ層56に埋設されている。再帰反射体53は、バインダ層56の内面より膜厚方向の外側に位置している。再帰反射体53のうち、バインダ層56に埋設された部分の体積は、再帰反射体53の体積の半分未満となっている。再帰反射体53は、第2膜体54a、および第3膜体54bを一体に膜厚方向に貫いており、再帰反射体53における膜厚方向の内端部、および外端部が、第2膜体54aの内面、および第3膜体54bの外面から各別に膜厚方向に突出している。再帰反射体53の前記外端部が、第1膜体54cに埋設されている。再帰反射体53は、第1膜体54cの外面より膜厚方向の内側に位置している。再帰反射体53のうち、第1膜体54cに埋設された部分の体積は、再帰反射体53の体積の半分未満となっている。
【0052】
本実施形態による塗装体60においても、前記実施形態と同様に、少なくとも透明層54を精度よく形成すること、透明層54の接着強度を向上させること、並びに、塗膜51の層構成を簡略にすること等ができる。
【0053】
次に、本発明の第3実施形態に係る塗装体70を、図4を参照しながら説明する。
なお、この第3実施形態においては、第1実施形態における構成要素と同一の部分については同一の符号を付し、その説明を省略し、異なる点についてのみ説明する。
【0054】
本実施形態の塗装体70では、塗膜51が、複数の再帰反射体53のうちの一部に対して外部からの入射光を遮蔽する遮蔽層71を備えている。遮蔽層71、および着色反射層52は、同色となっている。遮蔽層71は、第1膜体54cの内面と第3膜体54bの外面との間に配設されており、遮蔽層71の外面は、透明層54により被覆されている。遮蔽層71の厚さは、複数の膜体54a、54b、54cの各厚さより薄くなっている。遮蔽層71の平面視形状は、例えば文字、図形、若しくは記号等となっている。
【0055】
塗装体70の製造方法について説明する。
【0056】
まず、前記実施形態と同様にして、下塗層55、着色反射層52、およびバインダ層56を形成するとともに、再帰反射体53を配設した後に、第4塗料の塗布、および加熱、硬化を繰り返し、第2膜体54a、および第3膜体54bを、膜厚方向の内側から外側に向けてこの順に形成し、その後、平坦な第3膜体54bの外面に、所定形状に切り出したフィルム体を配設した後に加熱し、フィルム体を第3膜体54bの外面に接着させて遮蔽層71を形成する。そして、遮蔽層71の外面を覆うように、第3膜体54bの外面に、再度第4塗料を塗布した後に加熱して第4塗料を硬化させ、第1膜体54cを形成する。
【0057】
本実施形態による塗装体70においても、前記実施形態と同様の作用効果を有する。
さらに、塗装体70が遮蔽層71を備えているので、塗膜51が備える複数の再帰反射体53のうち、膜厚方向の外側から遮蔽層71で覆われている再帰反射体53には、塗膜51の外部からの光が直接入射されないため、この再帰反射体53からは再帰反射光が出射されない一方、他の再帰反射体53からは再帰反射光が出射される。これにより、塗膜51に対して、視認者の見る向きと同じ向きの光が外部から入射されたときに、視認者に遮蔽層71の平面視形状を視認させることが可能になり、意匠性を向上させることができる。
【0058】
遮蔽層71の外面が、透明層54により被覆されているので、遮蔽層71を透明層54により保護することが可能になり、例えば遮蔽層71の剥離等を抑えることができる。
遮蔽層71、および着色反射層52が、同色となっているので、塗膜51に対して、視認者の見る向きと異なる向きの光が入射されたときに、着色反射層52から出射された着色光によって、これと同色の遮蔽層71を視認者に視認させにくくすることができる。
【0059】
なお、本発明の技術範囲は、前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0060】
例えば、前記実施形態では、自転車1が塗装体50、60、70を有する構成を示したが、塗装体50、60、70を他の物に適用してもよい。
透明層54は、2つ、若しくは4つ以上の膜体により構成されてもよい。
前記第3実施形態では、透明層54は、単一の層により構成されてもよく、また、遮蔽層71を、第1膜体54cの外面に配設してもよい。
【0061】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 自転車
10 フレーム(基材)
50、60、70 塗装体
51 塗膜
52 着色反射層
53 再帰反射体
54 透明層
54c 第1膜体(膜体)
71 遮蔽層
図1
図2
図3
図4