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特許7261073食肉を内部に有する卵加工食品及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】食肉を内部に有する卵加工食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 15/00 20160101AFI20230412BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20230412BHJP
【FI】
A23L15/00 D
A23L13/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019079470
(22)【出願日】2019-04-18
(65)【公開番号】P2020174583
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-02-14
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトへの掲載(掲載日 2019年1月15日、https://www.tablemark.co.jp/pdf/tm190115_01.pdf)により公開
(73)【特許権者】
【識別番号】714004734
【氏名又は名称】テーブルマーク株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】599162646
【氏名又は名称】マルイ食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098187
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 正司
(72)【発明者】
【氏名】中尾 恒政
(72)【発明者】
【氏名】山下 美保
(72)【発明者】
【氏名】大迫 小百合
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-167661(JP,A)
【文献】◆ちょっと贅沢 生ハムとチーズオムレツ◆、cookpad[online]、2015年3月17日[検索日:2022年12月24日]、インターネット<URL:https://cookpad.com/recipe/3072173>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食肉を内部に有する卵加工食品の製造方法であって、
食肉材料を卵液に浸漬して表面に卵白調整液が付着した食肉を準備する工程と、
型閉じ可能な且つ共に凹所を有する第1、第2の型を備えた焼成型を準備する工程と、
前記食肉を前記第1型の前記凹所に投入して加熱する工程と、
前記食肉が充填された前記第1型の前記凹所に第1卵白液を充填して加熱する工程と、
前記第2型の前記凹所に第2卵白液を充填して加熱する工程と、
前記第1型及び/又は前記第2型の前記凹所に卵黄液を充填して加熱する卵黄充填工程と、
前記第1型を前記第2型の上で反転させて型閉じした状態で加熱する型閉じ工程と、
該型閉じ工程の次に、前記焼成型から卵加工食品を取り出す工程を含む、卵加工食品の製造方法。
【請求項2】
前記卵黄充填工程において、前記卵黄液が前記第1型及び前記第2型に充填され、前記第1型及び前記第2型には、前記第1型の中の前記第1卵白液及び前記第2型の中の前記第2卵白液の表面及び中央部分が流動性を有する状態で前記卵黄液が充填されることにより該卵黄液が前記第1卵白液及び前記第2卵白液の中で沈降する、請求項に記載の卵加工食品の製造方法。
【請求項3】
前記型閉じ工程において、前記第1型及び前記第2型の中の前記第1、第2の卵白液が完全に凝固していない状態で型閉じされて、前記第1型の中の第1卵白液の一部が前記第2型の中に流下する、請求項に記載の卵加工食品の製造方法。
【請求項4】
前記食肉が、ハム片、ベーコン片、食肉の小塊、カツから選ばれた一つの食肉である、請求項のいずれか一項に記載の卵加工食品の製造方法。
【請求項5】
前記卵加工食品が、チーズ、野菜のうち少なくとも一つを更に含む、請求項に記載の卵加工食品の製造方法。
【請求項6】
前記第1、第2の型の少なくとも一つの型が上方に向けて開放し且つ下方に凸の断面アーチ状の凹所を有する、請求項のいずれか一項に記載の卵加工食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハム、ベーコンなどの食肉を内部に有する卵加工食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
卵料理は家庭や外食で良く食べられていることから、加熱調理済みの様々な卵を使った加工食品、例えば目玉焼き、オムレツなどが販売され、また、これに関連して様々な提案が行われている。特許文献1は、卵焼き、オムレツ、スクランブルエッグ、親子丼などで卵料理特有のふんわりとしたソフトな食感を維持できる製造方法を提案している。具体的には、特許文献1は卵黄と油脂とを混合した組成物に卵白を更に混合して、これを加熱して卵加工食品を製造することを提案し、そして、適用可能な卵黄、卵白として、卵を割った生卵液に含まれる卵黄、卵白に限られず、予め殺菌を施したもの、冷凍したものを解凍したもの、乳化剤、糖類、デンプン類、調味料などを添加したものを含むと開示し、調味料の例示として、食塩、砂糖、グルタミン酸ナトリウム、トレハロースなどを挙げて調味卵液を作ることを開示している。
【0003】
特許文献2は、冷凍オムレツなどの卵様組成物として、アルギン酸及びデンプンを含有する卵黄部と、水溶性セルロースエーテル、乳清タンパク質及びカルシウム塩を含有する卵白部とを含む組成物を提案している。
【0004】
特許文献3は、解凍することで、作りたての目玉焼きの卵黄のホクホク感を再現できる冷凍目玉焼きを提案している。特許文献3が提案する冷凍目玉焼きは、卵白と卵黄とが接着する部分を除く卵黄部分を薄膜で被覆し、この薄膜をα化デンプン及び/又は増粘剤を加えた凝固卵白で構成したことを特徴としている。
【0005】
目玉焼きは、卵黄が卵白の上方に盛り上がった形状を有している。卵黄の盛り上がった部分は型崩れし易く、また、風味の劣化を招き易いという商品価値の問題に対して、特許文献4は、卵黄をその上下から卵白でサンドイッチする製造方法を提案している。特許文献4に開示の第1実施例では、目玉焼きを焼成するための受け皿及び閉じ蓋を有し、この受け皿及び閉じ蓋は共に上方に開放した断面コ字状の凹所を有している。受け皿、閉じ蓋は、各々、ガスバーナ等の直火で加熱される。目玉焼きの第1工程において、卵を割って卵白と卵黄とからなる生卵液が取り出される。そして、この生卵液は、受け皿の凹所の中に投入され加熱される。これとは別の工程として、卵を割って、そして卵黄を取り除いた生卵白を閉じ蓋の凹所の中に充填して加熱して生卵白をほぼ硬化させる。そして、次の工程で、閉じ蓋の上で受け皿を反転させて型閉じする。この型閉じした状態を所定時間保持した後に型開きして焼成した目玉焼きを取り出す。
【0006】
特許文献5は、卵本来の外観を呈する目玉焼き様加工食品及びその製造方法を提案している。具体的には、特許文献5は、第1の型と第2の型とを準備し、第1の型に第1の卵白液を充填して完全に凝固した第1卵白部を得る工程と、第2の型に第2卵白液を充填し、少なくとも表面が流動性を有する第2卵白部を得る工程と、第2の型に卵黄液を充填して卵黄部を得る工程と、第1の型を第2の型の上で反転させて第1卵白部を第2卵白部及び卵黄部とを結着させる工程を含んでいる。そして、特許文献5は、第2の型として卵黄液を位置決めする凹所を形成することを提案している。
【0007】
特許文献6は、卵の薄皮の内部に流動性を有する具(例えばチーズ)を有し且つ優れた外観を有する卵加工食品(具体例としてオムレツを挙げている)及びその製造方法を提案している。この卵加工食品は、卵混合液の加熱凝固物からなる外層の内部に一部又は全部が流動性を有する具を含み、上部外層と下部外層との継ぎ目が卵加工食品の底面から卵加工食品の1/2厚よりも底面側に位置していることを特徴としている。この卵加工食品は、含気させた卵混合液を容器に注入して加熱により部分凝固させる工程と、この卵混合液の中に一部又は全部が流動性を有する具を入れる工程と、更に卵混合液を加熱して多孔質状に凝固させる工程とを含む製造方法によって作られる。特許文献6は、具の具体例として、ペースト状の具の他に、肉、野菜などの小片の固体物を含む液状の具を挙げており、また、卵混合液として、液全卵、植物油脂、デンプン、食塩、グアーガム、清水の混合液などの幾つかの種類の調味された混合液を例示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-161939号公報
【文献】特開2005-224168号公報
【文献】特開平10-146170号公報
【文献】特開2005-323511号公報
【文献】特許第5214559号公報
【文献】特許第4737439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
卵と肉とは相性が良いことから、例えばハムエッグ、ベーコンエッグ、オムレツなど数多くの卵料理に食肉が用いられる。食肉を内部に有する卵加工食品を量産する場合、食肉の焦げや過加熱による硬化が発生してしまう恐れがある。また、内部に位置する食肉の位置に個体差が大きいと外観や商品性を損なう原因となり易い。
【0010】
本発明は、加工食品製造に際して発生し易い上記の問題点を改善することのできる食肉を内部に有する卵加工食品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の技術的課題は、本発明によれば、
食肉を内部に有する卵加工食品の製造方法であって、
食肉材料を卵液に浸漬して表面に卵白調整液が付着した食肉を準備する工程と、
型閉じ可能な且つ共に凹所を有する第1、第2の型を備えた焼成型を準備する工程と
前記食肉を前記第1型の前記凹所に投入して加熱する工程と
前記食肉が充填された前記第1型の前記凹所に第1卵白液を充填して加熱する工程と、
前記第2型の前記凹所に第2卵白液を充填して加熱する工程と
前記第1型及び/又は前記第2型の前記凹所に卵黄液を充填して加熱する卵黄充填工程と、
前記第1型を前記第2型の上で反転させて型閉じした状態で加熱する型閉じ工程と、
該型閉じ工程の次に、前記焼成型から卵加工食品を取り出す工程を含む、卵加工食品の製造方法を提供することにより達成される。ここに、卵液は、卵白液、卵黄液、全卵液を含む意味を有する。
【0013】
本発明の作用効果及び他の目的は以下に説明する実施例の詳細な説明から明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例の製造方法に用いられる焼成型を説明するための図である。
図2図1のII-II線に沿って切断した断面図であり、焼成型に含まれる第1、第2の型の断面形状を説明するための図である。
図3】ハム片を加熱する前の準備工程を説明するための図である。
図4】ハムエッグを製造する工程を説明するための図である。
図5図4に続いてハムエッグを製造する工程を説明するための図である。
図6】実施例の方法に従って製造したハムエッグの平面図である。
図7図6に図示のハムエッグの底面図である。
図8図6に図示のハムエッグの側面図である。
図9図6のa-a線に沿って切断した断面図である。
図10】変形例のハムエッグを説明するための図であり、図7に対応した底面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例
【0015】
以下に、添付の図面に基づいて本発明の具体的な適用例であるハムエッグ及びその製造方法を例示的に説明する。図1は、ハムエッグを焼成するための焼成型を示す。焼成型2は、複数の第1型4が直列に並んだ平面視長方形の第1の型列6と、第1型4に対応した第2型8が直列に並んだ平面視長方形の第2の型列10とで構成され、第1、第2の型列6、10は、その互いに対向する長辺同士が複数のヒンジ12によって互いに連結されている。図1は、第1型4と第2型8が型開きした状態を示している。ヒンジ12の軸線を中心にして第1の型列6又は第2の型列10が回動することにより、第1、第2の型4、8を型閉じさせることができる。第1、第2の型列6、10からなる焼成型2はコンベアによって搬送されながら制御された加熱処理が行われてハムエッグを焼成し、そして、出来上がったハムエッグは焼成型2から取り出される。
【0016】
第1型4と第2型8は共に上方に開放した凹所4a、8aを有する。第1型4と第2型8は実質的に同じ形状を有していることから、第1型4を代表して説明する。第1型4に含まれる凹所4aの平面視形状は任意であるが、実施例では凹所4aは平面視楕円形の開口を有している。この凹所4aの開口は平面視円形であってもよい。また、凹所4aは、図2から分かるように、上方に向けて開放し且つ下方に凸の断面アーチ状の形状を有している。図2に示す参照符号14は直火の加熱手段の一例であるガスバーナを示す。以下に、焼成型2を使ったハムエッグの製造方法を説明する。
【0017】
ハム片準備(図3
図3を参照して、ハムエッグを製造する準備工程として、第1型4に投入するハム片を準備する工程を説明する。ハム材料20をデンプン粉24を収容した第1容器26に投入し、ハム材料20の表面にデンプン粉を付着させる(第1工程)。ハム材料20は、生のハムであってもよいし冷凍のハムでもよい。冷凍のハムを使用するときには、解凍した後に第1容器26に投入される。次に、卵白調整液28を収容した第2容器30にハム材料20を浸漬してハム材料20の表面に卵白調整液28を付着させ(第2工程)、次いでハム材料20を第2容器30から取り出す(第3工程)。図3の第3工程に示す参照符号32は、上述した準備が終わった後の第1ハム片を示す。第1ハム片32は、ハム材料20と、その表面に付着したデンプン粉24及び卵白調整液28とで構成されている。
【0018】
第1ハム片32の変形例として、第1工程を省いた第2ハム片34であってもよい。すなわち、第1工程は必須ではない。第1工程を省くことにより、第2ハム片34は、ハム材料20と、その表面に付着した卵白調整液28とで構成される。
【0019】
ハム材料20を浸漬する卵白調整液28は、冷凍卵白を解凍した卵白液又は生卵白液に澱粉、増粘剤、食用油脂、グリセリン脂肪酸エステルなどの乳化剤に加えて、食塩、天然及び/又は化学調味料などの調味料などが添加されている。澱粉は、コーンスターチ、加工澱粉及び未加工澱粉を含む。食用油脂としては、菜種油及び大豆油などを例示的に挙げることができる。
【0020】
ハムエッグ製造(図4図5
図4図5は、ハムエッグを製造する工程を説明するための図である。焼成型2は制御された加熱が行われていることを前提に以下に各工程を説明する。
【0021】
第1工程(ハム片を第1型に投入)
図4に示す第1工程において、第1型4の凹所4aにハム片32(又は34)が投入され、ハム片32(又は34)の加熱が行われる。ハム片32(又は34)はその表面に卵白調整液28が付着していることから、第1型4にハム片32(又は34)が接着するのを防止でき、また、ハム片32(又は34)の焦げ付きを防止できる。
【0022】
第2工程(第1型に卵白液を充填)
第1型4の凹所4aに第1卵白液40を充填して加熱する。第1卵白液40は、鶏卵を割った生卵液から卵黄を分離した卵白液に植物油、食塩、増粘剤、加工デンプンなどを添加することで調味された卵白液が用いられる。この卵白液は、上述した卵白調整液28と同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、生卵液から抽出した卵白液に代えて凍結卵白を解凍した卵白液を使用してもよい。このことは、上述した卵白調整液28でも同様である。
【0023】
第3工程(第2型に卵白液を充填)
第2型8に第2卵白液42を充填して加熱する。第2卵白液42は、上述の第2工程で説明した第1卵白液40と同じ卵白液を採用するのが好ましい。第2型8に充填する第2卵白液42の量と、第1型4に充填する第1卵白液40の量とを比較すると、任意であるが、第2卵白液42の量が相対的に多くなるように設定されている。勿論、第1、第2の卵白液40、42は同量であってもよいし、第1卵白液40の量が相対的に多くなるように設定してもよい。
【0024】
第4工程(卵黄液の充填)
図5に図示の第4工程において、第2型8に卵黄液44を充填する。卵黄液44は、鶏卵を割った生卵液から卵白を分離した卵黄液又は冷凍卵黄を解凍した卵黄液に、水飴などの糖類、植物油、食塩、粉寒天、ゼラチン、化学及び/又は天然調味料、ゲル化剤などを添加することで調味された卵黄液が好ましくは用いられる。変形例として、予め加工及び調味した加工卵黄液を用いてもよい。
【0025】
卵黄液44を第2型8に充填するタイミングは、第2型8の第2卵白液42の内部及び上表面が流動性を有している状態で行うのが好ましい。これにより、卵黄液44は第2型8の凹所8aに充填されたときに第2卵白液42の中で自重及び重力により適度に沈降することができる。この作用を奏するのに、卵黄液44は第2卵白液42よりも比重が大きいのが好ましい。
【0026】
第5工程(型閉じ)
ヒンジ12を中心にして第1の型列6を反転させ、反転した第1型4を第2型8の上に載置することで型閉じが行われる。型閉じは、第1型4の第1卵白液40がある程度の流動性を有している状態つまり第1卵白液40が完全に凝固していない状態で行うのが好ましい。これにより、型閉じにより第1型4の中の第1卵白液40の一部が第2型8の凹所8aの中に流下し、また、反転した第1型4の内部において、図5の第5工程に図示のように、第1卵白液40の上表面の盛り上がりを平坦化することができる。この型閉じ状態で第2型8の加熱を継続することでハム、卵白、卵黄が一体化したハムエッグ50が焼成される。この第5工程において、更に好ましくは、第1型4の第1卵白液40と同様に、第2型8の第2卵白液42もある程度の流動性を有している状態つまり第2卵白液42が完全に凝固していない状態で型閉じするのがよい。
【0027】
前述した第4工程(卵黄液の充填)の変形例として、第2型8に代えて第1型4に卵黄液44を充填してもよく、或いは第1型4と第2型8との双方に卵黄液44を充填するようにしてもよい。これらの変形例において、卵黄液44を第1型4に充填するタイミングは、第1型4の第1卵白液40の内部及び上表面が流動性を有している状態で行うのが好ましい。また、これらの変形例において、上記第5工程の型閉じは、第1型4及び第2型8の第1、第2卵白液40、42がある程度の流動性を有している状態つまり第1、第2卵白液40、42が完全に凝固していない状態で型閉じするのがよい。
【0028】
第6工程(取出し)
型開きして第2型8の中に位置しているハムエッグ50を焼成型2から取り出す。取り出した後のハムエッグ50は冷した後に包装され、そして必要であれば冷凍保存される。
【0029】
図6ないし図9は、上記の工程を経て焼成したハムエッグ50を説明するための図である。図6は平面図、図7は底面図、図8は側面図、図9図6のa-a線に沿って切断した断面図である。ハムエッグ50の卵黄部分52を上に位置させ、ハム54を下に位置させる食事の時の状態に基づいて「上」「下」又は「上下方向」という言葉を使用すると、図9を参照して、ハムエッグ50は卵黄部分52が卵白部分56によって包囲された形態を有している。卵白部分56のうち、卵黄部分52の上方に位置する卵白表層56aは第2型8に充填した第2卵白液42によって構成される。
【0030】
上述したように、第2卵白液42が凝固する前に卵黄液44が第2型8の凹所8aに充填され、卵黄液44は第2卵白液42の中に沈降する。これにより、ハムエッグ50の卵黄部分52の上方に位置する卵白表層56aの厚みD1は、任意であるが、卵黄部分52の下方に位置し且つハム54の上に位置する中間卵白層56bの厚みD2との対比で相対的に薄い。ハムエッグ50の中心鉛直軸における中間卵白層56bの厚みD2は例えば5mm程度であり、上方の卵白表層56aの厚みD1はこれよりも薄い。勿論、上方卵白表層56aの厚みD1と中間卵白層56bの厚みD2との関係は任意であり、また、中間卵白層56bの厚みD2、約5mmも任意である。例えば、上方卵白表層56aの厚みD1が中間卵白層56bの厚みD2よりも相対的に厚くてもよい。
【0031】
第1、第2の型4、8は、共に断面アーチ状の凹所4a、8aを有し、この中に第1、第2の卵白液40、42が充填される。第1型4に充填した第1卵白液40が完全に凝固していない状態のときに、第1型4を反転して型閉じすることにより、前述したように、ハム54の周囲に位置する下方卵白部分56cは、前述したように比較的フラットな底面を形作ることができる。他方、卵黄部分52の周囲及び上方に位置する卵白表層56aを含む上方卵白部分56dの表面は、第2型8の断面アーチ状の輪郭によって断面アーチ状に形作られる。
【0032】
図10は、変形例のハムエッグ50(1)を示す、図7に対応した底面図である。実施例のハムエッグ50では平面視矩形のハム54(図7)が採用されているが、図10に図示するように、変形例のハムエッグ50(1)では平面視円形のハム54(1)が採用されている。
【0033】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明は、これに限定されず以下の変形例を包含する。
(1)第1、第2の型4、8の凹所4a、8aは共に断面アーチ状の形状を有しているが、変形例として第1型4又は第2型8又は双方の型4、8の凹所4a、8aが上方に開放した断面コ字状の形状を有していてもよい。
【0034】
(2)ハムエッグ50に代えてベーコンエッグに対しても本発明を適用することができる。この場合には、ハムの代わりに同じ畜肉の一種であるベーコンが採用されることになる。
【0035】
(3)第1型4、第2型8に第1、第2の卵白液40、42を充填する代わりに、全卵液を充填してもよい。この全卵液は、卵白、卵黄に加えて調味料などを混合して調製されるのがよい。
(4)焼成型2は、第2型8無しの第1型4だけで構成されていてもよい。この変形例では、第1型4の凹所4aに充填される卵液として全卵液を採用して例えばオムレツ風の加工食品を製造してもよい。
(5)焼成型2は、凹所4a無しの第1型4と、凹所8aを含む第2型8とで構成してもよい。この場合には、第1型4は第2型8に対する蓋として機能することになる。
【0036】
(6)ハム片やベーコン片の代わりに、ハムカツや豚カツなどのカツ食材を採用してもよく、また小さく切断した鳥肉などの食肉の小さな塊を採用してもよい。これらは、本発明に従う卵加工食品において、その上部又は下部或いは内部の所定位置に食肉が位置するという特色ある卵加工食品を提供することができる。
【0037】
(7)ハムエッグ50では、第1、第2の型4、8の凹所4a、8aを平面視円形の輪郭形状にして平面視円形のハムエッグ50を作ったが、本発明を適用する卵加工食品の平面視の形状は任意であり、オムレツのように平面視楕円形の形状を有していてもよい。勿論、この形状は焼成型2の成形面の輪郭形状によって形作ることができる。
【0038】
(8)本発明に従って製造される卵加工食品及びその製造工程において、卵加工食品が食肉だけでなくチーズや野菜を含むようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
2 焼成型
4 第1型
4a 第1型の凹所
8 第2型
8a 第2型の凹所
20 ハム材料
26 第1容器(デンプン粉)
28 ハム材料に付着させるための卵白調整液
32 第1ハム片(ハム材料+その表面の卵白調整液及びデンプン粉)
34 第2ハム片(ハム材料+卵白調整液)
40 第1型に充填する第1卵白液
42 第2型に充填する第2卵白液
44 卵黄液
50 ハムエッグ
52 卵黄部分
54 ハム
56 卵白部分
56a 卵白表層
56b 中間卵白層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10