(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】チャイルドシート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/28 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
B60N2/28
(21)【出願番号】P 2019096537
(22)【出願日】2019-05-23
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】508189474
【氏名又は名称】ニューウェルブランズ・ジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河野 治生
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-065279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
座面部と背もたれ部とを含む座席本体と、
前記背もたれ部の前面上に重なって、上下方向に摺動可能なスライド部材と、
前記スライド部材の高さを所定位置に固定するロック機構とを備え、
前記ロック機構は、前記スライド部材を上下方向に摺動させるための持ち手部を含み、
前記持ち手部は、前記スライド部材から突出しない収納位置と、前記スライド部材
の前面側から前方に突出する機能位置とを取り得る、チャイルドシート。
【請求項2】
座面部と背もたれ部とを含む座席本体と、
前記背もたれ部の前面上に重なって、上下方向に摺動可能なスライド部材と、
前記スライド部材の高さを所定位置に固定するロック機構とを備え、
前記ロック機構は、前記スライド部材を上下方向に摺動させるための持ち手部を含み、
前記持ち手部は、前記スライド部材から突出しない収納位置と、前記スライド部材から突出する機能位置とを取り、
前記持ち手部は、前記スライド部材に対して回転可能に設けられる操作レバーである
、チャイルドシート。
【請求項3】
座面部と背もたれ部とを含む座席本体と、
前記背もたれ部の前面上に重なって、上下方向に摺動可能なスライド部材と、
前記スライド部材の高さを所定位置に固定するロック機構とを備え、
前記ロック機構は、前記スライド部材を上下方向に摺動させるための持ち手部を含み、
前記持ち手部は、前記スライド部材から突出しない収納位置と、前記スライド部材から突出する機能位置とを取り、
前記持ち手部が前記収納位置の場合に、前記スライド部材は、前記背もたれ部に対する移動が規制される
、チャイルドシート。
【請求項4】
前記持ち手部は、操作可能な操作部を含み、
前記ロック機構は、前記操作部の操作により、前記スライド部材を上下方向に摺動させる移動部を含む、請求項1
~3のいずれかに記載のチャイルドシート。
【請求項5】
前記操作部は、上下移動可能な押しボタンである、請求項
4に記載のチャイルドシート。
【請求項6】
前記持ち手部は、前記持ち手部を前記収納位置に付勢する付勢手段を含む、請求項1~
5のいずれかに記載のチャイルドシート。
【請求項7】
前記座席本体に設けられた一対の肩ベルトをさらに備え、
前記スライド部材は、前記一対の肩ベルトを貫通させる一対の肩ベルト通し穴を含む、請求項1~
6のいずれかに記載のチャイルドシート。
【請求項8】
前記背もたれ部は、前記一対の肩ベルト通し穴を通過した前記一対の肩ベルトを背面にまで貫通させる、上下方向に長い一対の長穴を含み、
前記ロック機構は、
前記背もたれ部の前記一対の長穴に沿って、上下方向に間隔をあけて設けられる複数の受け入れ穴と、
前記スライド部材に設けられ、前記受け入れ穴に貫通するピン部材とさらに含み、
前記持ち手部が前記収納位置の場合に、前記ピン部材が前記受け入れ穴に貫通する、請求項7に記載のチャイルドシート。
【請求項9】
前記スライド部材は、子供の後頭部を保護する立壁部と、子供の側頭部を保護する一対の側壁部とを含むヘッドレストであり、
前記持ち手部は、前記立壁部の上方に設けられる、請求項1~8のいずれかに記載のチャイルドシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、チャイルドシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、子供の成長に応じて背もたれ部上に重なるバックプレートの高さ位置を調節することが可能なチャイルドシートとして、たとえば、特開2005-255149号公報(特許文献1)および特開2012-116465号公報(特許文献2)が知られている。
【0003】
特許文献1には、肩ハーネス挿通孔を有するバックプレートが、ロッド高さ調整機構により本体シェルに対して昇降可能であることが開示されている。ロッド高さ調整機構は、バックプレートの背面側に取り付けられ、チャイルドシートの背面側からつまみを操作することにより、バックプレートの高さ位置を変更することが可能である。
【0004】
特許文献2には、バックプレートに取り付けられたロッド高さ調整機構のつまみが、背もたれ部の前面側または背面側から操作可能であり、つまみを操作することで、バックプレートの高さ位置を変更できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-255149号公報
【文献】特開2012-116465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
引用文献1,2のロッド高さ調整機構は、つまみを操作することでバックプレートの高さ位置を変更することが可能であるが、つまみが小さいため、操作性が悪い。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、操作性が良好なチャイルドシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的のため本発明の一態様に係るチャイルドシートは、座面部と背もたれ部とを含む座席本体と、背もたれ部の前面上に重なって、上下方向に摺動可能なスライド部材と、スライド部材の高さを所定位置に固定するロック機構とを備え、ロック機構は、スライド部材を上下方向に摺動させるための持ち手部を含み、持ち手部は、スライド部材から突出しない収納位置と、スライド部材から突出する機能位置とを取り得る。
【0009】
好ましくは、持ち手部は、スライド部材に対して回転可能に設けられる操作レバーである。
【0010】
好ましくは、持ち手部は、操作可能な操作部を含み、ロック機構は、前記操作部の操作により、前記スライド部材を上下方向に摺動させる移動部を含む。
【0011】
好ましくは、操作部は、上下移動可能な押しボタンである。
【0012】
好ましくは、持ち手部は、持ち手部を収納位置に付勢する付勢手段を含む。
【0013】
好ましくは、座席本体に設けられた一対の肩ベルトをさらに備え、スライド部材は、前記一対の肩ベルトを貫通させる一対の肩ベルト通し穴を含む。
【0014】
好ましくは、持ち手部が収納位置の場合に、スライド部材は、背もたれ部に対する移動が規制される。
【0015】
好ましくは、背もたれ部は、一対の肩ベルト通し穴を通過した一対の肩ベルトを背面にまで貫通させる、上下方向に長い一対の長穴を有し、ロック機構は、背もたれ部の一対の長穴に沿って、上下方向に間隔をあけて設けられる複数の受け入れ穴と、スライド部材に設けられ、受け入れ穴に貫通するピン部材とさらに含み、持ち手部が収納位置の場合に、ピン部材が受け入れ穴に貫通する。
【0016】
好ましくは、スライド部材は、子供の後頭部を保護する立壁部と、子供の側頭部を保護する一対の側壁部とを含むヘッドレストであり、持ち手部は、立壁部の上方に設けられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、操作性が良好なチャイルドシートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施の形態に係るチャイルドシートの斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係るチャイルドシートの一部分を取り出して示す斜視図である。
【
図3】本実施の形態に係るチャイルドシートの一部分を取り出して示す斜視図である。
【
図4】本実施の形態に係るチャイルドシートのスライド部材が上下方向に摺動可能であることを示す模式図であり、(A)はスライド部材が下方に位置することを示し、(B)はスライド部材が上方に位置することを示す。
【
図5】スライド部材を取り出して背面から見た斜視図である。
【
図6】スライド部材を取り出して示す正面図であり、(A)は持ち手部が収納位置の状態、(B)は持ち手部が機能位置の状態、(C)は持ち手部が機能位置の状態で押しボタンを押圧した状態を示す。
【
図8】
図6のスライド部材から持ち手部および移動部を取り出して示す斜視図である。
【
図9】持ち手部に設けられる回転体を取り出して示す図であり、(A)は斜視図であり、(B)は平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0020】
図1~4を参照して、本発明の実施の形態に係るチャイルドシート1について説明する。チャイルドシート1の説明において、前後方向は、チャイルドシート1の前後方向に対応し、左右方向は、チャイルドシート1の前方から見た左右方向に対応している。
【0021】
図1は、チャイルドシート1の斜視図であり、
図2は、
図1のチャイルドシート1からベース本体2およびクッションなどの被覆部材を取り外した状態を示す斜視図であり、
図3は、
図3の状態からスライド部材6を取り外した状態を示す斜視図である。
図4は、スライド部材6が上下方向に摺動可能であることを示す模式図である。
【0022】
特に
図1を参照して、本実施形態に係るチャイルドシート1は、自動車の座席の上に配置され、乳児や幼児などの子供を安全に乗車させるための装置である。チャイルドシート1は、ベース本体2および座席本体3を備える。
【0023】
ベース本体2は、乗用自動車の座席シート上に載置され、座席本体3を下方から支持するベース部20を含む。ベース部20の前方端には、乗用自動車の床面に向かって伸びるレッグサポート21が設けられている。ベース部20の後方端には、乗用自動車の座席シートのアンカーに連結するISOFIX22が設けられている。ベース部20の上方には、ベース本体2に対して回転可能に支持される座席本体3が設けられている。
【0024】
座席本体3は、ベース本体2の上側に取り付けられ、ベース本体2に対して回転自在に支持される。
図1では、座席本体3上において、柔らかい布製部材、たとえばクッション材などの被覆部材が装着されている状態が示されている。なお、座席本体3は、シート体30を介して、ベース本体2に対して回転可能に設けられてもよい。シート体30は、座席本体3を左右後方から包囲している。座席本体3は、シート体30に固定されており、座席本体3とシート体30は、ベース部20に対して回転可能に設けられる。
【0025】
座席本体3は、座面部4と背もたれ部5と含む。座席本体3には、子供が着座する。そのため、座面部4は、子供の臀部を支持し、背もたれ部5は、座面部4の後方から立ち上がり、子供の背部を支持する。なお、
図2に示すように、背もたれ部5の前面上には、スライド部材6が重なっている。スライド部材6については、後述する。
【0026】
図3に示すように、背もたれ部5は、背もたれ部本体51と、背もたれ部本体51に設けられ、上下方向に長い一対の長穴52と、一対の長穴52に沿って設けられる複数の受け入れ穴53とを含む。長穴52は、左右方向に間隔をあけて設けられる。長穴52は、後述する一対の肩ベルト11(
図1)を背面にまで貫通させる。ここでいう背面は、背もたれ部本体51とシート体30との間である。受け入れ穴53は、上下方向に間隔をあけて5つ設けられる。受け入れ穴53には、後述するスライド部材6のピン部材77(
図5)が貫通するため、スライド部材6の高さを5段階に調節することができる。なお、受け入れ穴53は、典型的には貫通孔であるが、ピン部材77と係合することができれば、たとえば凹部、切り欠きなどであってもよい。
【0027】
図1に示すように、座席本体3には、子供の体を拘束するベルトが複数設けられている。これらのベルトは、5点ベルトである。具体的には、背もたれ部5には、子供の両肩を拘束する一対の肩ベルト11が設けられる。肩ベルト11は、スライド部材6および背もたれ部5を貫通するように配置されている。肩ベルト11は、背もたれ部5に装着されており、背もたれ部5に固定されていることに限定されず、チャイルドシート1の後方から前方までループしている状態も含む。
【0028】
また、座面部4には、座席本体3に着座した子供の両太腿の間を延びる股ベルト13と、子供の腰を拘束する一対の腰ベルト12とを含む。これらのベルト11,12,13は、股ベルト13の先端に設けられる連結具14により、子供の腹部付近で連結される。なお、ベルト11,12,13および連結具14についても、
図1のみにおいて示されており、他の図では省略されている。
【0029】
次に、
図2,
図5を参照して、スライド部材6について説明する。
図5は、スライド部材6を背面から見た斜視図である。
【0030】
図5に示すように、スライド部材6は、背もたれ部5の前面に重なって、上下方向に摺動可能である。スライド部材6は、ヘッドレストとして機能する。そのため、スライド部材6は、子供の後頭部を保護する立壁部61と、子供の側頭部を保護する一対の側壁部62とを含む。側壁部62は、立壁部61の左右方向両端部に取り付けられ、前方に向かって突出する。なお、スライド部材6上においても、座席本体3と同様に、やわらかい布製部材、たとえばクッション材などの被覆部材が装着されていてもよい。
【0031】
立壁部61には、一対の肩ベルト11を貫通させる一対の肩ベルト通し穴63が設けられる。一対の肩ベルト通し穴63は、立壁部61の下方側に設けられる。肩ベルト通し穴63が背もたれ部5と対面する位置には、長穴52(
図3)が設けられている。これにより、肩ベルト通し穴63を通過した肩ベルト11は、背もたれ部5の長穴52をさらに通過する。そのため、スライド部材6の高さを調節することで、肩ベルト11の高さを調節することができる。具体的には、
図4(A)から
図4(B)の範囲で、スライド部材6の高さ位置を変化させて、肩ベルト11の支持位置、つまり肩ベルト通し穴63の高さ位置を変化させることができる。これにより、本実施の形態のチャイルドシート1は、子供の成長に応じて肩ベルト11の高さ位置の調節を容易に行うことができる。
【0032】
立壁部61には、立壁部61の左右方向両端部から下方に突出して延びる一対の延出部64が設けられる。一対の延出部64には、
図2,
図5において、破線で示すカバー部65が掛け渡されていてもよい。その場合、カバー部65は、薄手の素材であり、例えばハンモック素材などである。
【0033】
立壁部61の上方には、スライド部材6の高さを所定位置に調節するための持ち手部70が露出している。立壁部61の上端縁には、持ち手部70全体が露出するように、持ち手部70の形状に沿った凹部61aが設けられている。また、
図5の破線で示すように、立壁部61の内部には、持ち手部70の操作により、上下方向に移動する移動部73が設けられている。持ち手部70と、移動部73と、背もたれ部5の受け入れ穴53とで、スライド部材6の高さを所定位置に固定する「ロック機構」を構成する。
【0034】
図6~
図9を参照して、持ち手部70および移動部73について説明する。
図6は、スライド部材6を示す正面図であり、スライド部材6の前面カバーを取り外した状態を示している。特に、
図6(A)は持ち手部70が収納位置の状態、
図6(B)は持ち手部70が機能位置の状態、
図6(C)は持ち手部70が機能位置の状態で押しボタン72を押圧した状態を示している。
図7は、
図6の部分拡大正面図であり、
図8は、
図6のスライド部材6から持ち手部70および移動部73の示す斜視図である。また、
図9は、持ち手部70に設けられる回転体90の斜視図である。なお、
図6,
図7において、理解容易のため、立壁部61の枠部、第1ストッパ66および第2ストッパ67にハッチングをして示している。
【0035】
持ち手部70は、スライド部材6を上下方向に摺動させるためのものである。持ち手部70は、上述のように、スライド部材6の立壁部61の上方に設けられる。具体的には、持ち手部70は、立壁部61の左右方向中央部に設けられる。これにより、持ち手部70は、使用者が手で掴みやすい位置に設けられるため、操作を容易に行うことができる。持ち手部70は、スライド部材6に対して移動可能に設けられる操作レバー71と、上下移動可能な押しボタン72とを含む。
【0036】
操作レバー71は、スライド部材6から突出しない収納位置(
図6(A)と、スライド部材6から突出する機能位置(
図6(B),(C))とを取り得る。操作レバー71が収納位置の場合に、スライド部材6は、背もたれ部5に対する移動が規制される。収納位置とは、操作レバー71がスライド部材6の凹部61aに納められている状態における操作レバー71の位置である。機能位置とは、操作レバー71がスライド部材6の凹部61aから出ている状態における操作レバー71の位置であり、前方に突出する場合だけでなく、たとえば左右、後方などに移動した状態を含む。
【0037】
操作レバー71は、使用者が掴むことができる取っ手であればよく、棒状だけでなく、たとえば凹部、ノブ状なども含まれる。また、操作レバー71は、使用者の3本以上の指で掴める程度の大きさであることが好ましい。操作レバー71の前後方向の幅は、立壁部61の前後方向の幅と略同一か、それよりも小さいことが好ましい。さらに、持ち手部70が収納位置にある場合に、持ち手部70の上端縁は、立壁部61の上端縁に沿った形状となる。これにより、操作レバー71は掴みやすい大きさであるにも関わらず、操作レバー71が収納位置にある場合に、邪魔にならず、持ち手部70の存在が目立たない。
【0038】
図7(A)を特に参照して、操作レバー71は、スライド部材6に対して回転可能に設けられる。具体的には、操作レバー71は、軸部81を中心に、右方から前方に向かってたとえば略95度回転可能に設けられる。軸部81は、押しボタン72の下端に固定されて、後述する回転体90まで延びている。さらに、軸部81は、リンク部82を貫通している。リンク部82は、立壁部61の凹部61aの下端と第1ストッパ66の上端との間に固定されている。リンク部82には、操作レバー71(軸部81)を常に収納位置に付勢する付勢手段(図示せず)が内蔵されている。付勢手段は、たとえばねじりばねである。これにより、操作レバー71は、使用者が操作する場合を除き、常に収納位置で維持される。軸部81の下端には、回転体90が取り付けられる。
【0039】
図9を特に参照して、回転体90は、貫通孔91と、円周部92と、円周部92を切り欠いた切り欠き部93とを含む。
図9(B)に示すように、切り欠き部93間の幅寸法L2は、円周部92間の幅寸法L1よりも小さく設計されている(L2<L1)。
【0040】
ここで、
図7(A)に示すように、回転体90は、操作レバー71が収納位置の場合に、切り欠き部93が前方側を向くように取り付けられている。回転体90は、左右方向の寸法がL1となり、立壁部61に設けられる第2ストッパ67間の寸法L3よりも大きくなる(L1>L3)。このため、回転体90は、立壁部61の第2ストッパ67の上端に当接する。これにより、操作レバー71が収納位置の状態では、押しボタン72を押圧することができない。
【0041】
図7(B),
図7(C)に示すように、操作レバー71を略95度回転させて、機能位置にすると、回転体90は、軸部81の回転に合わせて回転し、円周部92が前方側を向く。これにより、回転体90の左右方向の寸法がL2となり、第2ストッパ67間の寸法L3よりも小さくなる(L2<L3)。このため、操作レバー71が機能位置にある状態で、押しボタン72を押圧すると、立壁部61に設けられる第2ストッパ67の間に回転体90を移動させることができる。これにより、回転体90の下方に設けられる移動部73が下方にスライド移動する。
【0042】
上述のように、操作レバー71は、軸部81を中心に回転し、軸部81には、回転体90が取り付けられている。これにより、操作レバー71、軸部81および回転体90の回転は連動する。さらに、押しボタン72は、軸部81の上端と連結されている。これにより、押しボタン72、軸部81および回転体90の上下移動は連動する。したがって、操作レバー71を収納位置から機能位置にして、押しボタン72を上方から下方に押圧することで、回転体90を下方に移動させ、移動部73を下方に移動させることが可能となる。つまり、スライド部材6の高さ位置を変更させるためには、操作レバー71を操作し、さらに押しボタン72を操作する必要がある。
【0043】
このように、本実施の形態のロック機構は、ロックを解除するために2つの動作を必要とする「ダブルロック機構」である。これにより、誤操作を防ぐことができ、安全性を向上させることができる。また、操作レバー71を握り、押しボタン72をたとえば親指などで押圧することで、片手で簡単に操作することができる。
【0044】
図8を特に参照して、移動部73は、回転体90を下方から支持する支持部79と、支持部79に連結する横材74と、横材74の両端から下方に延びる縦材75とを含む。支持部79は、回転体90の上下方向の動きを横材74および縦材75に伝える役割を果たす。横材74は、上方部分74aと、支持部79を固定する下方部分74bと、上方部分74aと下方部分74bとを連結する連結部74cとを有する。上方部分74a、下方部分74bおよび連結部74cは、略棒状である。
【0045】
縦材75は、上方部分74aの両端に連結する棒状部75aと、棒状部75aの下端に設けられる平板部75bとを有する。棒状部75aは、図示しないコイルバネが内蔵されている。コイルバネは、移動部73を常に上方に付勢している。平板部75bは、前面から後方に突出して設けられ、略中央部に傾斜穴76が設けられている。傾斜穴76は、前方から後方に向かって下降する。傾斜穴76には、ピン部材77が挿入されている。
【0046】
ピン部材77は、上述した背もたれ部5の受け入れ穴53(
図3)に貫通する。ピン部材77は、略L字状であり、短尺状の短尺部77aと、長尺状の長尺部77bとを有する。短尺部77aは傾斜穴76内に挿入している。これにより、移動部73が通常の状態(操作レバー71が収納位置の状態)では、短尺部77aは傾斜穴76の下方に位置し、
図8(A),
図8(B),
図5に示すように、長尺部77bは、スライド部材6の背面から外方に突出し、
図3の背もたれ部5の受け入れ穴53に貫通する。移動部73が下方に移動した状態(操作レバー71が機能位置の状態)では、短尺部77aは傾斜穴76の傾斜に沿って上方に移動し、
図8(C)に示すように、長尺部77bは受け入れ穴53から引き抜かれる。
【0047】
次に、スライド部材の高さを所定位置に固定するためのロック機構の動作について説明する。
【0048】
図6(A),
図7(A),
図8(A)の状態の操作レバー71を手で握り、95度前方に回転させる。さらに、
図6(B),
図7(B),
図8(B)に示すように、押しボタン72を下方に押圧すると、
図6(C),
図7(C),
図8(C)に示すように、移動部73が下方に移動し、傾斜穴76も下方に移動する。傾斜穴76に貫通しているピン部材77の短尺部77aは、傾斜穴76の傾斜に沿って上方に移動し、ピン部材77の長尺部77bは、背もたれ部5の受け入れ穴53から引き抜かれる。つまり、ピン部材77と背もたれ部5の受け入れ穴53(
図3)との係合状態が解除される。これにより、スライド部材6のロック状態が解除される。
【0049】
操作レバー71から手を離すと、押しボタン72の押圧により縮んでいた移動部73のコイルバネおよび持ち手部70のねじりばねは、その付勢力よって、
図6(A),
図7(A),
図8(A)に示す位置に復帰する。これにより、ピン部材77の短尺部77aは、傾斜穴76の傾斜に沿って下方に移動し、ピン部材77の長尺部77bは、背もたれ部5の受け入れ穴53(
図3)に貫通する。これにより、スライド部材6は、背もたれ部5に対する移動が規制される。
【0050】
子供の成長に応じて、スライド部材6の高さを移動させる際の動作は、次の通りである。
【0051】
まず、収納位置にある操作レバー71を手で握り、95度前方に回転させて持ち手部70を機能位置にする。その状態で押しボタン72を上方から押圧し、スライド部材6のピン部材77を背もたれ部5の受け入れ穴53からそれぞれ引き抜く。その状態で、スライド部材6を所望の高さまで移動させて、操作レバー71から手を離す。持ち手部70および移動部73は、持ち手部70のねじりばね、および、移動部73のコイルバネの付勢力によって、元の位置(収納位置)に復帰し、一対のピン部材77がそれぞれ受け入れ穴53に貫通し、スライド部材6の移動が禁止する。このように、子供の成長に合わせて、一番低い高さの
図4(A)の位置から、一番高い高さの
図4(B)の位置まで、所定の位置でスライド部材6の高さを調節することが可能である。
【0052】
これにより、使用者は、スライド部材6の高さを調節する場合に、持ち手部70を操作するだけでよいため、操作性が良好である。また、操作レバー71が機能位置にある場合に、掴みやすくて操作しやすいが、操作レバー71が収納位置にある場合に、邪魔にならず、操作レバー71の存在が目立たない。
【0053】
なお、上記実施の形態において、スライド部材6には、肩ベルト通し穴63が設けられるとして説明した。しかし、スライド部材6は、肩ベルト通し穴63が必ずしも設けられなくてもよく、少なくとも子供の背中を保護するものであればよい。また、スライド部材6がヘッドレストである場合、スライド部材6は、子供の頭部を保護する立壁部61だけで形成されていればよく、側壁部62は必ずしも設けられていなくてもよい。これにより、子供の頭部の高さ位置に応じて、スライド部材6の高さ位置を調節することが可能となる。
【0054】
また、上記実施の形態において、持ち手部70は、操作レバー71と押しボタン72とを備えるダブルロック機構を有するとしたが、押しボタン72は設けられていなくてもよく、操作レバー71の操作だけで移動部73が上下方向に移動してもよい。
【0055】
さらに、上記実施の形態において、押しボタン72は、上下移動可能であるとしたが、スライド部材6を上下方向に摺動させるものであればよく、たとえば左右方向、前後方向など移動方向に限定されない。また、押しボタン72は、押しボタンという形状に限定されず、たとえば摘みなど、操作可能な操作部であればよい。
【0056】
以上、図面を参照してこの発明の実施の形態を説明したが、この発明は、図示した実施の形態のものに限定されない。図示した実施の形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 チャイルドシート、2 ベース本体、3 座席本体、4 座面部、5 背もたれ部、6 スライド部材、11 肩ベルト、12 腰ベルト、13 股ベルト、14 連結具、20 ベース部、21 レッグサポート、30 シート体、51 背もたれ部本体、52 長穴、53 受け入れ穴、61 立壁部、61a 凹部、62 側壁部、63 肩ベルト通し穴、64 延出部、65 カバー部、66 第1ストッパ、67 第2ストッパ、70 持ち手部、71 操作レバー、72 押しボタン、73 移動部、74 横材、74a 上方部分、74b 下方部分、74c 連結部、75 縦材、75a 棒状部、75b 平板部、76 傾斜穴、77 ピン部材、77a 短尺部、77b 長尺部、79 支持部、81 軸部、82 リンク部、90 回転体、91 貫通孔、92 円周部、93 切り欠き部。