(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 25/60 20230101AFI20230412BHJP
H04N 25/76 20230101ALI20230412BHJP
G01T 1/20 20060101ALN20230412BHJP
【FI】
H04N25/60
H04N25/76
G01T1/20 E
G01T1/20 G
(21)【出願番号】P 2019112620
(22)【出願日】2019-06-18
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】関根 裕之
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-093298(JP,A)
【文献】特開2001-116846(JP,A)
【文献】特開平05-030427(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/00-25/79
G01T 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素と、
制御回路と、を含み、
前記画素の回路構成は、
フォトダイオードと、
前記フォトダイオードの一方端に第1定電位を与える第1線と、
前記フォトダイオードに他方端に第2定電位を与える第2線と、
一方端が前記フォトダイオードの前記他方端に接続されている容量素子と、
前記容量素子の他方端に制御信号を与える制御線と、
を含み、
前記制御回路は、
前記第1線及び前記第2線を介して前記フォトダイオードに前記第1定電位と前記第2定電位とを与えることによって、前記フォトダイオードを逆バイアス状態にし、
前記逆バイアス状態における前記フォトダイオードに対する光照射により変化した前記フォトダイオードの前記他方端の電位に対応する信号を読み出し、
前記信号を読み出した後に、前記容量素子と前記第1線との間において前記フォトダイオードに順方向電流が流れるように、前記制御線を介して前記容量素子に時間変化する電位を与え、
前記順方向電流が流れるように前記制御線を介して前記容量素子に前記時間変化する電位を与えた後、前記第1線及び前記第2線を介して前記フォトダイオードに前記第1定電位と前記第2定電位とを与えることによって、前記フォトダイオードを逆バイアス状態にする、
撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記フォトダイオードは、アモルファスシリコンフォトダイオードである、
撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記時間変化する電位は、基準電位から所定電位を介して前記基準電位に戻るパルスである、
撮像装置。
【請求項4】
請求項3に記載の撮像装置であって、
前記パルスの幅は、前記フォトダイオードの前記他方端の電位に対応する信号を読み出す期間より短い、
撮像装置。
【請求項5】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記第2線と前記フォトダイオードとの間にスイッチトランジスタを含み、
前記制御回路は、
前記スイッチトランジスタをオン状態にして、前記第2線を介して前記フォトダイオードの前記他方端の電位に対応する信号を読み出し、
前記信号を読み出した後に前記スイッチトランジスタをオフ状態にして、前記容量素子と前記第1線との間において前記フォトダイオードに順方向電流が流れるように、前記制御線を介して前記容量素子に時間変化する電位を与え、
前記容量素子に時間変化する電位を与えた後に、前記スイッチトランジスタをオン状態にして前記第1線及び前記第2線を介して前記フォトダイオードに前記第1定電位と前記第2定電位とを与えることによって、前記フォトダイオードを逆バイアス状態にする、
撮像装置。
【請求項6】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記フォトダイオードの前記他方端の電位の増幅用トランジスタと、
前記増幅用トランジスタからの前記フォトダイオードの前記他方端の電位に対応する信号を伝送する信号線と、
前記増幅用トランジスタから前記信号線への出力の有無を切り替えるオンオフする第1スイッチトランジスタと、
前記第2線と前記フォトダイオードとの間の第2スイッチトランジスタと、
をさらに含み、
前記制御回路は、
前記第1スイッチトランジスタ及び前記第2スイッチトランジスタがオフ状態にある期間において前記逆バイアス状態における前記フォトダイオードに対する光照射により変化した前記フォトダイオードの前記他方端の電位に対応する信号を、前記第1スイッチトランジスタをオン状態にして、前記信号線を介して読み出し、
前記信号を読み出した後に、前記容量素子と前記第1線との間において前記フォトダイオードに順方向電流が流れるように、前記制御線を介して前記容量素子に時間変化する電位を与え、
前記容量素子に時間変化する電位を与えた後に、前記第2スイッチトランジスタをオン状態にして前記第1線及び前記第2線を介して前記フォトダイオードに前記第1定電位と前記第2定電位とを与えることによって、前記フォトダイオードを逆バイアス状態にし、
前記フォトダイオードを逆バイアス状態にした後に、前記第1スイッチトランジスタ及び前記第2スイッチトランジスタをオフにする、
撮像装置。
【請求項7】
請求項1に記載の撮像装置であって、
前記フォトダイオードの前記一方端はアノードであり、前記フォトダイオードの前記他方端はカソードである、
撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子にフォトダイオード(PD)を用いたイメージセンサが知られている。このイメージセンサは複数の画素回路を含み、各画素回路は、フォトダイオードと、フォトダイオードによる信号を読み出す画素回路を選択するためのスイッチトランジスタとを含む。
【0003】
イメージセンサは、以下のような駆動方法により光信号を検出する。イメージセンサは、時刻T1から時刻T2の期間において、スイッチトランジスタをオン状態にし、フォトダイオードの両端に逆バイアス電圧を印加する。時刻T2から時刻T3の期間において、スイッチトランジスタをオフ状態にする。この期間に、フォトダイオードに光が照射されると、フォトダイオードに保持された電荷が減少し、フォトダイオードのカソード電位が下がる。
【0004】
イメージセンサは、時刻T3から時刻T4の期間において、再びスイッチトランジスタをオン状態とする。これにより、照射光量に応じて減少した電荷を補う分だけの電流が信号線に流れる。この電流を積分することで照射光量を検出する。
【0005】
従来のフォトダイオードを用いたイメージセンサ、特に、a-Siフォトダイオードを用いたイメージセンサにおいて、残像が発生することが知られている。特許文献1は、イメージセンサの残像を解消する方法を開示している。この方法は、画素内に2つのTFT(Thin Film Transistor)を設け、一方のTFTをオンにしてフォトダイオードの信号電荷を読み出した後に、もう一方のTFTをオンにして、ある期間フォトダイオードに順バイアス電圧を印加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の技術は、イメージセンサの残像を低減することができる。しかし、この技術は、個々のフォトダイオードの閾値電圧ばらつきを考慮して、ある程度大きな順方向バイアス電圧を印加する必要がある。そのため、順方向バイアスを印加する期間に大電流が流れ、その電流により電磁界ノイズ及び消費電力が増大し、また、発熱による熱ノイズが増大する。このため、イメージセンサの出力信号品質が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様の撮像装置は、画素と、制御回路と、を含む。前記画素の回路構成は、フォトダイオードと、前記フォトダイオードの一方端に第1定電位を与える第1線と、前記フォトダイオードに他方端に第2定電位を与える第2線と、一方端が前記フォトダイオードの前記他方端に接続されている容量素子と、前記容量素子の他方端に制御信号を与える制御線と、を含む。前記制御回路は、前記第1線及び前記第2線を介して前記フォトダイオードに前記第1定電位と前記第2定電位とを与えることによって、前記フォトダイオードを逆バイアス状態にする。前記制御回路は、前記逆バイアス状態における前記フォトダイオードに対する光照射により変化した前記フォトダイオードの前記他方端の電位に対応する信号を読み出す。前記制御回路は、前記信号を読み出した後に、前記容量素子と前記第1線との間において前記フォトダイオードに順方向電流が流れるように、前記制御線を介して前記容量素子に時間変化する電位を与える。前記制御回路は、前記順方向電流が流れるように前記制御線を介して前記容量素子に前記時間変化する電位を与えた後、前記第1線及び前記第2線を介して前記フォトダイオードに前記第1定電位と前記第2定電位とを与えることによって、前記フォトダイオードを逆バイアス状態にする。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によれば、撮像装置の出力信号品質の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態1において、撮像装置の例である、イメージセンサの構成例を示すブロック図である。
【
図2】実施形態1において、画素の等価回路構成例(画素回路構成例)を示す回路図である。
【
図3】実施形態1において、画素に与えられる信号を示す。
【
図4】実施形態1において、画素に与えられる走査信号、制御信号及びノード電位(フォトダイオードカソード電位)のタイミングチャートを示す。
【
図5】実施形態1において、順バイアス電圧により、フォトダイオードを通って、バイアス線から容量素子に、順方向電流が流れる様子を示す。
【
図6】実施形態2において、画素の構成例(等価回路構成例)を示す。
【
図7】実施形態2において、画素に与えられる走査信号、制御信号、制御信号、及びノード電位(フォトダイオードカソード電位)のタイミングチャートを示す。
【
図8】実施形態2において、画素の他の構成例(等価回路構成例)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を説明する。実施形態は本開示を実現するための一例に過ぎず、本開示の技術的範囲を限定するものではない。説明をわかりやすくするため、図示した物の寸法、形状については、誇張して記載している場合もある。
【0012】
以下において開示する撮像装置は、1以上の画素を含み、各画素は、光電変換素子としてフォトダイオード(PD)と、1以上のスイッチトランジスタと、を含む。従来のa-Siフォトダイオードを用いたイメージセンサ(撮像装置の例である)において、残像が発生することが知られている。
【0013】
残像の一つの要因は、スイッチトランジスタの電流駆動能力不足による充電率の低下であり、他の一つの要因は、a-Siの価電子帯と伝導帯との間のバンドギャップ内に存在する欠陥等の特定準位にトラップされた光励起キャリア(電子及びホール)が、確率的に放出され、信号電荷に混入することである。
【0014】
トラップから再放出されたキャリアと、光により励起されたキャリアとを区別することができず、上記特定準位にトラップされるキャリアの数は、入力する光が強い程多くなるため、残像として視認されるようになる。a-Siフォトダイオードに限らず、キャリアが特定の準位にトラップされるフォトダイオードにおいても、残像が起こり得る。
【0015】
本開示の撮像装置は、フォトダイオードに容量素子を介して順バイアス電圧を印加して、容量素子において順方向電流を流す。順方向電流により、キャリアが高い確率で特定準位にトラップされ、光励起キャリアトラップの影響を大きく低減することができる。さらに、容量素子を介して順バイアス電圧を与えることで、フォトダイオードを流れる順方向電流を少なくすることができる。
[実施形態1]
【0016】
図1は、撮像装置の例である、イメージセンサの構成例を示すブロック図である。イメージセンサ10は、例えば、X線透過像の撮像のために用いられる。イメージセンサ10は、画素マトリクス101、走査回路170、及び検出回路150を含む。イメージセンサ10は、さらに、光照射側に配置されて画素マトリクス101を覆う不図示のシンチレータを含む。走査回路170及び検出回路150は、制御回路に含まれる。なお、本開示の特徴は、他の撮像装置、例えば、可視光イメージセンサ、ラインセンサ等に適用することができる。
【0017】
画素マトリクス101は、マトリックス状に配列された画素102を含む。画素マトリクス101は、センサ基板100上に形成されている。センサ基板100は、絶縁性基板(例えばガラス基板)である。画素102は、フォトダイオード103、薄膜トランジスタ(TFT)104、及び容量素子110を含む。
【0018】
画素102は、
図1における縦方向に延び横方向に配列された複数の信号線106と、横方向に延び縦方向に配列された複数の走査線105との各交点に配置されている。画素102は、それぞれ、
図1の縦方向に延び横方向に配列されたバイアス線107及び制御線111に接続されている。
図1において、一つの画素、一つの信号線、一つの走査線、一つのバイアス線及び一つの制御線のみが、それぞれ、符号102、106、105、107及び111で指示されている。
【0019】
信号線106は、それぞれ、異なる画素列に接続されている。走査線105は、それぞれ、異なる画素行に接続されている。制御線111は、それぞれ、異なる画素行に接続されている。信号線106は検出回路150に接続され、走査線は走査回路170に接続される。バイアス線107は、共通バイアス線108に接続されている。共通バイアス線108のパッド109にバイアス電位が与えられる。
【0020】
図2は、画素102の等価回路構成例(画素回路構成例)を示す回路図である。画素102は、光電変換素子であるフォトダイオード103、スイッチング素子である薄膜トランジスタ104、及びフォトダイオード103に順方向電流を流すための容量素子(静電容量C)110を含む。薄膜トランジスタ104のゲート端子は、走査線105に接続され、ソース/ドレイン端子の一方は信号線106に接続され、ソース/ドレイン端子の他方はフォトダイオード103のカソード端子に接続される。フォトダイオード103のアノード端子は、バイアス線107に接続されている。
【0021】
容量素子110の一方端子は、フォトダイオード103のカソード端子と薄膜トランジスタ104のソース/ドレイン端子との間のノードに接続されている。容量素子110の他方端子は制御線111に接続されている。
【0022】
薄膜トランジスタ104は、例えば、a-Si(アモルファスシリコン)薄膜トランジスタ、又は、酸化物半導体薄膜トランジスタである。フォトダイオード103は、例えば、a-Siフォトダイオードである。以下において、フォトダイオード103は、a-Siフォトダイオードであるとする。
【0023】
X線の撮像装置として用いられるイメージセンサ10は、フォトダイオード103に保持されたX線の照射量に対応して蓄積された信号電荷に対応する信号電流を、その画素102に配置された薄膜トランジスタ104を導通させて読み出す。
【0024】
具体的には、フォトダイオード103のアノード端子はバイアス線107に接続されており、信号線106は、検出回路150によりリファレンス電位に維持される。そのため、フォトダイオード103にはバイアス線107のバイアス電位とリファレンス電位との差分電圧が充電される。この差分電圧は、アノード電位に対しカソード電位の方が高くなる逆バイアス電圧に設定される(逆バイアス状態)。バイアス線107(第1線)のバイアス電位(第1定電位)及び信号線106(第2線)のリファレンス電位(第2定電位)は、変化しない一定の直流電位である。
【0025】
フォトダイオード103に逆バイアス電圧を印加する理由は、光により励起したホール電子対を電界によりソース/ドレイン領域へ輸送するためである。逆バイアス電圧を印加しなくともPN接合により内部電界が発生するが、電界が小さいため検出できる光量は小さい。検出可能光量を大きくするために、逆バイアス電圧が印加される。なお、逆バイアス電圧が大きくなると暗電流も大きくなるので、用途に応じて最適な電圧が設定される。
【0026】
逆バイアス状態におけるフォトダイオード103に光が照射されると、光励起により信号電荷(光励起キャリア)が生成される。光励起によるキャリアの生成により、フォトダイオード103の両端の電圧が減少する。バイアス線107のバイアス電位は一定であり、フォトダイオード103のカソード電位が下がる。フォトダイオード103を容量と見た場合に、その容量に保持された電荷が減少する。
【0027】
走査回路170は、走査線105を順次選択し、薄膜トランジスタ104をオン状態とするパルスを印加する。照射光量に応じて減少したフォトダイオード103の電荷を補う分だけの電流が信号線106に流れる。フォトダイオード103を、この逆バイアス電圧にまで再充電するために必要な電荷は、フォトダイオード103に照射された光量に依存する。検出回路150は、この電流を積分することで照射光量を検出する。
【0028】
また、走査回路170は、走査線105の選択と同期して、制御線111にフォトダイオード103に順バイアス電圧与えるための制御信号を出力する。制御線111は容量素子110の容量結合を介して、フォトダイオード103のカソード端子に制御信号(順バイアスのための電位)を与える。制御線111が与える電位はバイアス電位よりも低く、フォトダイオード103のアノード端子からカソード端子に順方向電流が流れる。これにより、光励起キャリアトラップの影響を大きく低減することができる。
【0029】
図3は、画素102に与えられる信号を示す。信号線106は検出回路150により、定電圧であるリファレンス電位DMが印加され続けていると見なすことができる。例えば、検出回路150は電荷検出回路(積分回路)であり、検出回路の入力が常に一定の電位になるように帰還容量に電圧を印加することで、電荷の積分を行う。その積分動作により、信号線106は定電位に維持される。
【0030】
制御線111には制御信号CLが与えられ、バイアス線107にはバイアス電位BIASが与えられ、走査線105には走査信号GNが与えられる。フォトダイオード103のカソード、薄膜トランジスタ104のソース/ドレイン及び容量素子110の接続ノードは、電位VCを有している。
【0031】
図4は、画素102に与えられる走査信号GN、制御信号CL及びノード電位(フォトダイオードカソード電位)VCのタイミングチャートを示す。走査回路170は、時刻T1に走査信号GNをLレベルからHレベルに変化させ、時刻T1から時刻T2の期間において、薄膜トランジスタ104をオン状態にする。検出回路150は、時刻T1から時刻T2の期間において、信号線106に流れる電流(フォトダイオード103のカソード電位に対応する信号)を読み出すことで、照射光量を検出する。
【0032】
走査回路170は、時刻T2に走査信号GNをHレベルからLレベルに変化させ、時刻T2から時刻T5の期間において、薄膜トランジスタ104をオフ状態にする。走査回路170は、時刻T3において、制御信号CLにおいて負極性パルスを容量素子110に与える。負極性パルスは電圧ΔVclを有する。
【0033】
制御信号CLは、時刻T2の後の時刻T3においてHレベル(基準電位)からLレベル(所定電位)に変化し、時刻T4においてLレベルからHレベルに戻る。制御信号は、HレベルからLレベルを介してHレベルに戻る。この期間において、フォトダイオードに順方向電流が流れる。時刻T4は、時刻T5の前の時刻である。このように、走査回路170は、制御線111を介して容量素子110に時間変化する電位を与える。制御信号CLは、容量素子110の容量結合を介してノード電位VCを下げることができれば負極性パルスと異なる波形(時間変化)を示してもよい。時刻T2と時刻T3が同時であってもよい。制御信号CLは時刻T4においてHレベルに戻らなくてもよい。
【0034】
走査回路170は、時刻T5において走査信号GNをLレベルからHレベルに変化させ、時刻T5から時刻T6の期間において、薄膜トランジスタ104をオン状態にする。この期間において、フォトダイオード103の両端に逆バイアス電圧が印加される。走査回路170は、時刻T6において走査信号GNをHレベルからLレベルに変化させ薄膜トランジスタ104をオフ状態にする。時刻T6から時刻T1までの期間において、フォトダイオード103に光が照射されると、フォトダイオード103に保持された電荷が減少し、フォトダイオードのカソード電位が下がる。
【0035】
ノード電位(フォトダイオードカソード電位)VCは、時刻T1から、信号線106からの再充電により徐々に増加する。ノード電位VCは、時刻T3において、制御信号CLの電位が下がることにより、容量素子110の容量結合を介して、バイアス電位BIASよりも低い電位まで低下する(部分201)。
【0036】
ノード電位VCが、バイアス電位BIASよりも低く、フォトダイオード103の両端に順バイアス電圧VRVが印加されている。
図5に示すように、順バイアス電圧により、フォトダイオード103を通って、バイアス線107から容量素子110に、順方向電流210が流れる。これにより、キャリアが高確率でフォトダイオード103の準位にトラップされ、光励起キャリアトラップの影響を低減でき、結果として残像を低減できる。
【0037】
フォトダイオード103を流れる順方向電流210により、ノード電位VCは、急激に略バイアス電位BIASまで増加する(部分202)。フォトダイオード103の両端に順バイアス電圧が印加される期間TRVは短く、順方向電流210により、フォトダイオード103の順バイアス電圧は急激に減少する。ノード電位VCは、バイアス電位BIASと略等しくなる。
【0038】
上述のように、制御回路は、容量素子110の電位を変動させ、フォトダイオード103に一時的に順バイアス電圧を印加する。順バイアス電圧が急激に減少する為、フォトダイオード103に大電流が流れることはない。流れる電流は最大でも容量素子110に保持された電荷量(C*ΔVcl)である。
【0039】
時刻T4において制御信号CLの電位が上がると、容量素子110の容量結合を介して、ノード電位VCも上昇する(部分203)。さらに、時刻T5において薄膜トランジスタ104がオンにされ、ノード電位VCは、信号線106からのリファレンス電位に近づいていく(部分204)。フォトダイオード103に、所定の逆バイアス電圧が書き込まれる。
[実施形態2]
【0040】
図6は、実施形態2に係る画素の構成例(等価回路構成例)300を示す。本実施形態の画素300は、フォトダイオードの信号を増幅して読み出す。増幅器を介してフォトダイオードのカソード電位に対応する信号を読み出すことで、高いS/N比を実現できる。画素300は、フォトダイオード308、第1のスイッチング素子である薄膜トランジスタ310、第2のスイッチング素子である薄膜トランジスタ311、増幅用薄膜トランジスタ309、及び、フォトダイオード308に順方向電流を流すための容量素子312を含む。
【0041】
薄膜トランジスタ310は、フォトダイオード308の信号の読み出しを制御する。薄膜トランジスタ311は、フォトダイオード308に対する逆バイアス電圧の付与を制御する。薄膜トランジスタ309は、フォトダイオード308から読み出す信号を増幅する。薄膜トランジスタ309、310、311は、例えば、a-Si薄膜トランジスタ、又は、酸化物半導体薄膜トランジスタである。フォトダイオード308は、例えば、a-Siフォトダイオードである。
【0042】
薄膜トランジスタ310のゲート端子は、走査線306に接続され、ソース/ドレイン端子の一方は信号線304に接続され、ソース/ドレイン端子の他方は、薄膜トランジスタ309のソース/ドレイン端子に接続されている。信号線304は検出回路150内部で、高い抵抗値を有する抵抗、または定電流源を介して定電位に接続されている。
【0043】
薄膜トランジスタ309のゲート端子は、フォトダイオード308のカソード端子に接続され、ソース/ドレイン端子の一方は電源線303に接続され、ソース/ドレイン端子の他方は薄膜トランジスタ310のソース/ドレイン端子に接続されている。
【0044】
フォトダイオード308のアノード端子は、バイアス線301に接続されている。フォトダイオード308のカソード端子は、薄膜トランジスタ311を介して、逆バイアス電圧用の電源線302に接続されている。薄膜トランジスタ311のゲート端子は、制御線305に接続され、一方のソース/ドレイン端子は逆バイアス電圧用の電源線302に接続され、他方のソース/ドレイン端子はフォトダイオード308のカード端子に接続されている。
【0045】
ここで、フォトダイオード308のカソード端子、薄膜トランジスタ309のゲート端子、容量素子312及び薄膜トランジスタ311のソース/ドレイン端子の接続ノード313の電位をVCとする。
【0046】
容量素子312の一方端子は、フォトダイオード308のカソード端子と薄膜トランジスタ309のゲート端子との間のノードに接続されている。フォトダイオード308のカソード端子は、薄膜トランジスタ309のゲート端子、薄膜トランジスタ311のソース/ドレイン端子、及び容量素子312の一方端子に接続されている。容量素子312の他方端子は制御線307に接続されている。
【0047】
走査線306には走査信号GNが与えられる。制御線307には、容量素子312を介してフォトダイオード308のカソード電位を制御する制御信号CLが与えられる。制御線305には、フォトダイオード308に与える電圧を制御する制御信号RSTが与えられる。
【0048】
電源線303には、フォトダイオード308の出力を増幅するための電位PAが与えられる。バイアス線301にはバイアス電位BIASが与えられ、電源線302には逆バイアス電圧をフォトダイオード308に与えるためのプリセット電位PRが与えられる。電位PA及びPRは、変化しない一定の直流電位である。電源線302(第2線)に与えらえられるプリセット電位PR(第2定電位)は、バイアス電位BIAS(第1定電位)より高く、フォトダイオード308には、プリセット電位PRとバイアス電位BIASの差の逆バイアス電圧が与えられる。
【0049】
例えば、走査回路170は、走査線306の信号GN、制御線305の信号RST、制御線307の信号CLを制御する。検出回路150は、信号線304を介してフォトダイオード308の増幅された信号を読み出す。検出回路150又は走査回路170は、電源線303に電位PAを与え、バイアス線301にバイアス電位BIASを与え、電源線302にプリセット電位PRを与える。
【0050】
走査回路170は、走査線306を順次選択し、薄膜トランジスタ310をオン状態とする信号を印加する。照射光量に応じて減少したフォトダイオード308のカソード電位に応じた電流が信号線304に流れる。フォトダイオード308のカソード電位は、逆バイアス電圧状態のフォトダイオード308を照射された光量に依存する。信号線304には、フォトダイオードのカソード電位に応じた電圧が、増幅用薄膜トランジスタ309を介して出力され、検出回路150が、その電圧を読み出す。
【0051】
また、走査回路170は、走査線306の選択と同期して、フォトダイオード308に逆バイアス電圧与えるための制御信号RSTを制御線305に出力する。薄膜トランジスタ311がON状態に変化されると、電源線302がプリセット電位PRをフォトダイオード308のカソード端子に与える。フォトダイオード308には、プリセット電位PRとバイアス電位BIASとの間の逆バイアス電圧が与えられる。
【0052】
走査回路170は、制御線307にフォトダイオード308に順バイアス電圧与えるための制御信号を出力する。制御線307は容量素子312の容量結合を介して、フォトダイオード308のカソード端子に制御信号(順バイアスのための電位)を与える。制御線307が与える電位はバイアス電位BIASよりも低く、フォトダイオード308のアノード端子からカソード端子に順方向電流が流れる。これにより、光励起キャリアトラップの影響を大きく低減することができる。
【0053】
図7は、画素300に与えられる走査信号GN、制御信号RST、制御信号CL、及びノード電位(フォトダイオードカソード電位)VCのタイミングチャートを示す。走査回路170は、時刻T1に走査信号GNをLレベルからHレベルに変化させ、時刻T1から時刻T7の期間において、薄膜トランジスタ310をオン状態にする。検出回路150は、時刻T2の信号線304の電位を読み出すことで、照射光量を検出する。
【0054】
走査回路170は、時刻T2の後の時刻T3において、制御線307を介して容量素子312に時間変化する電位を与える。具体的には、走査回路170は、制御信号CLにおいて負極性パルスを容量素子312に与える。負極性パルスは電圧ΔVclを有する。制御信号CLは、時刻T2の後の時刻T3においてHレベルからLレベルに変化し、時刻T4においてLレベルからHレベルに戻る。
【0055】
この期間において、フォトダイオードに順方向電流が流れる。制御信号CLは、容量素子110の容量結合を介してノード電位VCを下げることができれば負極性パルスと異なる波形(時間変化)を示してもよい。
【0056】
走査回路170は、時刻T4の後の時刻T5において、制御信号RSTをLレベルからHレベルに変化させ、時刻T5から時刻T6の期間において、薄膜トランジスタ311をオン状態にする。時刻T5から時刻T6の期間において、電源線302からフォトダイオード308のカソード端子にプリセット電位PRが与えられる。この期間において、フォトダイオード308の両端に逆バイアス電圧が印加される。
【0057】
走査回路170は、時刻T6において制御信号RSTをHレベルからLレベルに変化させた後、時刻T7において走査信号GNをHレベルからLレベルに変化させて、薄膜トランジスタ310をオフ状態にする。時刻T7から時刻T1までの期間において、フォトダイオード308に光が照射されると、フォトダイオード308に保持された電荷が減少し、フォトダイオード308のカソード電位が下がる。
【0058】
ノード電位(フォトダイオードカソード電位)VCは、時刻T1から時刻T3において、照射光量に応じた電位を示す。ノード電位VCは、時刻T3において、制御信号CLの電位が下がることにより、容量素子312の容量結合を介して、バイアス電位BIASよりも低い電位まで低下する(部分351)。ノード電位VCが、バイアス電位BIASよりも低く、フォトダイオード308の両端に順バイアス電圧VRVが印加されている。
【0059】
順バイアス電圧により、フォトダイオード308を通って、バイアス線301から容量素子312に、順方向電流が流れる。これにより、キャリアが高確率でフォトダイオード308の準位にトラップされ、光励起キャリアトラップの影響を低減でき、結果として残像を低減できる。
【0060】
フォトダイオード308を流れる順方向電流により、ノード電位VCは、急激に略バイアス電位BIASまで増加する(部分352)。フォトダイオード308の両端に順バイアス電圧が印加される期間TRVは短く、順方向電流により、フォトダイオード308の順バイアス電圧は急激に減少する。ノード電位VCは、バイアス電位BIASと略等しくなる。
【0061】
制御回路は、容量素子312の電位を変動させ、フォトダイオード308に一時的に順バイアス電圧を印加する。順バイアス電圧が急激に減少する為、フォトダイオード308に大電流が流れることはない。流れる電流は最大でも容量素子312に保持された電荷量(C*ΔVcl)である。
【0062】
時刻T4において制御信号CLの電位が上がると、容量素子312の容量結合を介して、ノード電位VCも上昇する(部分353)。さらに、時刻T5において薄膜トランジスタ311がオンにされ、ノード電位VCは、電源線302からのプリセット電位PRに近づいていく(部分354)。フォトダイオード308に、所定の逆バイアス電圧が書き込まれる。
【0063】
検出回路150は、時刻T6から時刻T7の期間において、フォトダイオード308の光照射により変化したカソード電位に対応する信号を補正するために、プリセット電位PRに対応する増幅用薄膜トランジスタ309の出力(基準信号)を読み出す。検出回路150は、光照射による信号の検出において、基準信号と読みだし信号との差分を計算することで、増幅用薄膜トランジスタ309のオフセットをキャンセルする。
【0064】
図8は、実施形態2に係る画素の他の構成例(等価回路構成例)380を示す。
図6に示す回路構成との差異を主に説明する。画素380は、第1のスイッチング素子である薄膜トランジスタ382、増幅用の薄膜トランジスタ381を含む。
【0065】
薄膜トランジスタ382は、フォトダイオード308の信号の読み出しを制御する。薄膜トランジスタ381は、フォトダイオード308から読み出す信号を増幅する。薄膜トランジスタ381、382は、例えば、a-Si薄膜トランジスタ、又は、酸化物半導体薄膜トランジスタである。
【0066】
薄膜トランジスタ382のゲート端子は走査線306に接続され、ソース/ドレイン端子の一方は電源線303に接続され、ソース/ドレイン端子の他方は、薄膜トランジスタ381のソース/ドレイン端子に接続されている。薄膜トランジスタ381のゲート端子は、フォトダイオード308のカソード端子に接続され、ソース/ドレイン端子の一方は信号線304に接続され、ソース/ドレイン端子の他方は薄膜トランジスタ382のソース/ドレイン端子に接続されている。
【0067】
フォトダイオード308のカソード端子、薄膜トランジスタ381のゲート端子、容量素子312及び薄膜トランジスタ311のソース/ドレイン端子の接続ノード313の電位をVCとする。
【0068】
容量素子312の一方端子は、フォトダイオード308のカソード端子、薄膜トランジスタ381のゲート端子、及び薄膜トランジスタ311のソース/ドレイン端子との間のノードに接続されている。フォトダイオード308のカソード端子は、薄膜トランジスタ381のゲート端子、薄膜トランジスタ311のソース/ドレイン端子、及び容量素子312の一方端子に接続されている。
【0069】
上述のように、
図8の画素回路構成例380と、
図6の画素回路構成例300との間において、信号を読み出す画素を選択するための第1スイッチ薄膜トランジスタ及び増幅用薄膜トランジスタが、入れ替わっている。制御信号の変化及びノード電位VCの変化は、
図7を参照して説明した通である。
【0070】
実施形態1及び実施形態2において図面を参照して説明した画素回路の薄膜トランジスタの導電型は、n型であるが、画素回路内の薄膜トランジスタの導電型はp型であってもよい。フォトダイオードの接続の向きは、実施形態1及び実施形態2において図面を参照した例と逆であってもよい。フォトダイオードを順バイアス状態にするためにアノード端子に正のパルスを与えてもよい。a-Siフォトダイオードにおいてはホールの移動度が小さいのでため、光照射面にアノード端子が向いていることが好ましい。
【0071】
以上、本開示の実施形態を説明したが、本開示が上記の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、上記の実施形態の各要素を、本開示の範囲において容易に変更、追加、変換することが可能である。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0072】
10 イメージセンサ、100 センサ基板、101 画素マトリクス、102 画素、103 フォトダイオード、104 薄膜トランジスタ、105 走査線、106 信号線、107 バイアス線、108 共通バイアス線、109 パッド、110 容量素子、111 制御線、150 検出回路、170 走査回路、210 順方向電流、300 画素、301 バイアス線、302、303 電源線、304 信号線、305、307 制御線、306 走査線、308 フォトダイオード、309、310、311 薄膜トランジスタ、312 容量素子、313 接続ノード、BIAS バイアス電位、CL 制御信号、DM リファレンス電位、GN 走査信号、PA 電源電位、PR プリセット電位、RST 制御信号、VC ノード電位