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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20230412BHJP
   H01G 2/08 20060101ALI20230412BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20230412BHJP
   H01G 11/82 20130101ALI20230412BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20230412BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20230412BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20230412BHJP
   H01M 10/6557 20140101ALI20230412BHJP
   H01M 10/6563 20140101ALI20230412BHJP
   H01M 10/6567 20140101ALI20230412BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20230412BHJP
   H01M 50/264 20210101ALI20230412BHJP
   H01M 50/51 20210101ALI20230412BHJP
【FI】
H01M50/262 S
H01G2/08 A
H01G11/12
H01G11/82
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6557
H01M10/6563
H01M10/6567
H01M50/209
H01M50/264
H01M50/51
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019127537
(22)【出願日】2019-07-09
(65)【公開番号】P2021012850
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100183081
【弁理士】
【氏名又は名称】岡▲崎▼ 大志
(72)【発明者】
【氏名】守作 直人
(72)【発明者】
【氏名】植田 浩生
(72)【発明者】
【氏名】奥田 元章
(72)【発明者】
【氏名】森岡 怜史
(72)【発明者】
【氏名】奥村 素宜
(72)【発明者】
【氏名】菊池 卓郎
【審査官】鈴木 雅雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-142459(JP,A)
【文献】特開2018-113124(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143464(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0187084(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0023380(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0084223(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/262
H01G 2/08
H01G 11/12
H01G 11/82
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 10/6557
H01M 10/6563
H01M 10/6567
H01M 50/209
H01M 50/264
H01M 50/51
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の蓄電モジュールを有し、積層方向に隣り合う前記蓄電モジュール同士が導電板を介して電気的に接続されている、積層体と、
前記積層方向において前記積層体の両側を挟む一対の拘束板と、
前記一対の拘束板を連結し、前記一対の拘束板を介して前記積層方向の両側から前記積層体に拘束荷重を付加する連結部材と、を備え、
前記拘束板は、前記積層方向から見て前記積層体と重なる中央部と、前記中央部から前記積層方向に直交する方向に延在すると共に前記積層方向から見て前記積層体と重ならない縁部と、を有し、
前記縁部は、前記連結部材が係合される係合部を有し、
前記係合部における前記積層方向の外側を向く係合部外面は、前記中央部における前記積層方向の外側を向く中央部外面よりも前記積層方向の内側に位置しており、
前記係合部には、前記積層方向に延在する貫通孔が形成されており、
前記連結部材は、前記貫通孔に挿通されており、
前記積層方向における前記連結部材の端部は、前記中央部外面と同一平面上に位置しているか前記中央部外面よりも前記積層方向の内側に位置しており、
前記係合部における前記積層方向の内側を向く係合部内面は、前記中央部における前記積層方向の内側を向く中央部内面よりも前記積層方向の内側に位置しており
前記縁部は、前記積層方向に直交する第1方向に沿って延在しており、
前記縁部は、前記第1方向に沿って互いに離間するように配置された複数の前記係合部を有し、
前記縁部において隣り合う前記係合部の間には、前記係合部よりも前記積層方向の厚さが薄い薄肉部が形成されている、蓄電装置
【請求項2】
前記縁部は、前記薄肉部における前記積層方向の内側を向く内面に立設された壁部を有する、請求項に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記壁部は、隣り合う前記係合部同士を接続するように前記第1方向に沿って延在している、請求項に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記導電板には、前記第1方向と前記積層方向とに直交する第2方向に延在し、冷却用流体が流通する冷却用流路が形成されており、
前記係合部内面と前記壁部における前記積層方向の内側の端部とは、前記導電板よりも前記積層方向の外側に位置している、請求項又はに記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記複数の蓄電モジュールのうち積層端に位置する蓄電モジュールと前記拘束板の前記中央部との間には、前記積層端に位置する蓄電モジュールと電気的に接続された導電部材が配置されており、
前記導電部材には、電極端子が電気的に接続されており、
前記電極端子は、前記導電部材における前記第1方向と交差する側面から突出している、請求項2~4のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記縁部は、前記薄肉部における前記積層方向の外側を向く外面に立設され、前記第1方向と前記積層方向とに直交する第2方向に延在する外側リブを有し、
前記外側リブは、前記中央部から離れるにつれて前記薄肉部の前記外面に近づくように、前記中央部と前記薄肉部の前記外面とを接続する傾斜面を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記係合部外面は、前記中央部における前記積層方向の内側を向く内面よりも前記積層方向の外側に位置している、請求項1~のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項8】
積層された複数の蓄電モジュールを有し、積層方向に隣り合う前記蓄電モジュール同士が導電板を介して電気的に接続されている、積層体と、
前記積層方向において前記積層体の両側を挟む一対の拘束板と、
前記一対の拘束板を連結し、前記一対の拘束板を介して前記積層方向の両側から前記積層体に拘束荷重を付加する連結部材と、を備え、
前記拘束板は、前記積層方向から見て前記積層体と重なる中央部と、前記中央部から前記積層方向に直交する方向に延在すると共に前記積層方向から見て前記積層体と重ならない縁部と、を有し、
前記縁部は、前記連結部材が係合される係合部を有し、
前記係合部における前記積層方向の外側を向く係合部外面は、前記中央部における前記積層方向の外側を向く中央部外面よりも前記積層方向の内側に位置しており、
前記係合部には、前記積層方向に延在する貫通孔が形成されており、
前記連結部材は、前記貫通孔に挿通されており、
前記積層方向における前記連結部材の端部は、前記中央部外面と同一平面上に位置しているか前記中央部外面よりも前記積層方向の内側に位置しており、
前記係合部における前記積層方向の内側を向く係合部内面は、前記中央部における前記積層方向の内側を向く中央部内面よりも前記積層方向の内側に位置しており、
前記係合部外面は、前記中央部における前記積層方向の内側を向く内面よりも前記積層方向の外側に位置している、蓄電装置。
【請求項9】
積層された複数の蓄電モジュールを有し、積層方向に隣り合う前記蓄電モジュール同士が導電板を介して電気的に接続されている、積層体と、
前記積層方向において前記積層体の両側を挟む一対の拘束板と、
前記一対の拘束板を連結し、前記一対の拘束板を介して前記積層方向の両側から前記積層体に拘束荷重を付加する連結部材と、を備え、
前記拘束板は、前記積層方向から見て前記積層体と重なる中央部と、前記中央部から前記積層方向に直交する方向に延在すると共に前記積層方向から見て前記積層体と重ならない縁部と、を有し、
前記縁部は、前記連結部材が係合される係合部を有し、
前記係合部における前記積層方向の外側を向く係合部外面は、前記中央部における前記積層方向の外側を向く中央部外面よりも前記積層方向の内側に位置しており、
前記係合部には、前記積層方向に延在する貫通孔が形成されており、
前記連結部材は、前記貫通孔に挿通されており、
前記積層方向における前記連結部材の端部は、前記中央部外面と同一平面上に位置しているか前記中央部外面よりも前記積層方向の内側に位置しており、
前記係合部における前記積層方向の内側を向く係合部内面は、前記中央部における前記積層方向の内側を向く中央部内面よりも前記積層方向の内側に位置しており、
前記縁部は、前記積層方向に直交する第1方向に沿って延在しており、
前記縁部は、前記第1方向に沿って互いに離間するように配置された複数の前記係合部を有し、
前記導電板には、前記第1方向と前記積層方向とに直交する第2方向に延在し、冷却用流体が流通する冷却用流路が形成されており、
前記縁部には、前記冷却用流路の端部に対向して前記第1方向に沿って延び、前記冷却用流体を流通させるダクトが固定されている、
蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層された複数の蓄電モジュールを有する蓄電装置が知られている(例えば特許文献1)。このような蓄電装置では、複数の蓄電モジュールが一対の拘束板によって積層方向に拘束される。特許文献1では、複数の連結部材は、拘束板の縁部に沿って配置された複数の係合部に係合され、一対の拘束板を介して積層方向に複数の蓄電モジュールに荷重を付加している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-125124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような蓄電装置は、搭載対象物(例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両等)に搭載される。このため、蓄電装置には、搭載対象物に対する搭載性が求められる。また、比較的大きい応力がかかる拘束板(特に連結部材が係合される係合部)には、このような応力に耐え得る強度を確保することが求められる。すなわち、蓄電装置には、搭載性と拘束板の十分な強度とを両立させることが求められる。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、拘束板の変形又は破損を抑制しつつ、搭載性の向上を図ることができる蓄電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る蓄電装置は、積層された複数の蓄電モジュールを有し、積層方向に隣り合う蓄電モジュール同士が導電板を介して電気的に接続されている、積層体と、積層方向において積層体の両側を挟む一対の拘束板と、一対の拘束板を連結し、一対の拘束板を介して積層方向の両側から積層体に拘束荷重を付加する連結部材と、を備え、拘束板は、積層方向から見て積層体と重なる中央部と、中央部から積層方向に直交する方向に延在すると共に積層方向から見て積層体と重ならない縁部と、を有し、縁部は、連結部材が係合される係合部を有し、係合部における積層方向の外側を向く係合部外面は、中央部における積層方向の外側を向く中央部外面よりも積層方向の内側に位置しており、係合部には、積層方向に延在する貫通孔が形成されており、連結部材は、貫通孔に挿通されており、積層方向における連結部材の端部は、中央部外面と同一平面上に位置しているか中央部外面よりも積層方向の内側に位置しており、係合部における積層方向の内側を向く係合部内面は、中央部における積層方向の内側を向く中央部内面よりも積層方向の内側に位置している。
【0007】
上記蓄電装置では、係合部外面が中央部外面よりも積層方向の内側に位置することにより、積層方向における連結部材の端部が中央部の外面よりも積層方向の外側に突出しない構成が実現されている。これにより、車両等の搭載対象物に対する蓄電装置の搭載性を向上させることができる。さらに、上記蓄電装置では、拘束板の縁部が積層方向から見て積層体と重ならないように配置されると共に、係合部内面が中央部内面よりも積層方向の内側に位置することにより、係合部の肉厚(すなわち、係合部外面から係合部内面までの厚み)が確保されている。これにより、連結部材が係合されて比較的大きい応力がかかる係合部の強度を適切に確保することができる。その結果、拘束板の変形又は破損を抑制することができる。従って、上記蓄電装置によれば、拘束板の変形又は破損を抑制しつつ、搭載性の向上を図ることができる。
【0008】
縁部は、積層方向に直交する第1方向に沿って延在しており、縁部は、第1方向に沿って互いに離間するように配置された複数の係合部を有し、縁部において隣り合う係合部の間には、係合部よりも積層方向の厚さが薄い薄肉部が形成されていてもよい。上記構成によれば、係合部の肉厚を確保して係合部の強度を確保する一方で、係合部と比較して強度を確保する必要がない部分である隣り合う係合部の間の部分を薄肉部とすることにより、拘束板の軽量化を図ることができる。
【0009】
縁部は、薄肉部における積層方向の内側を向く内面に立設された壁部を有してもよい。上記構成によれば、薄肉部によって拘束板の軽量化を図りつつ、壁部によって薄肉部の剛性を確保でき、薄肉部の変形を抑制できる。さらに、壁部は、隣り合う係合部同士を接続するように第1方向に沿って延在していてもよい。この構成によれば、隣り合う係合部同士の間の薄肉部の変形をより効果的に抑制できる。
【0010】
導電板には、第1方向と積層方向とに直交する第2方向に延在し、冷却用流体が流通する冷却用流路が形成されており、係合部内面と壁部における積層方向の内側の端部とは、導電板よりも積層方向の外側に位置していてもよい。上記構成によれば、導電板の冷却用流路の入口又は出口が、係合部及び壁部のいずれによっても覆われない。これにより、各導電板の冷却用流路に冷却用流体を好適に流通させることができる。
【0011】
複数の蓄電モジュールのうち積層端に位置する蓄電モジュールと拘束板の中央部との間には、積層端に位置する蓄電モジュールと電気的に接続された導電部材が配置されており、導電部材には、電極端子が電気的に接続されており、電極端子は、導電部材における第1方向と交差する側面から突出していてもよい。上記構成によれば、導電部材における係合部又は内側リブと対向しない側面から電極端子を引き出すことにより、電極端子と係合部又は内側リブとの干渉を確実に防止することができる。
【0012】
縁部は、薄肉部における積層方向の外側を向く外面に立設され、第1方向と積層方向とに直交する第2方向に延在する外側リブを有し、外側リブは、中央部から離れるにつれて薄肉部の外面に近づくように、中央部と薄肉部の外面とを接続する傾斜面を有してもよい。上記構成によれば、縁部の延在方向(第1方向)に直交する第2方向に延在する外側リブにより、薄肉部の第1方向の剛性を効果的に向上させることができ、薄肉部の湾曲等の変形を好適に抑制することができる。さらに、外側リブを中央部から離れるにつれて薄肉部の外面に近づくように傾斜する形状とすることにより、搭載対象物の一部が薄肉部の外面に近接する位置に配置される場合等において、拘束板と搭載対象物の一部との干渉を好適に抑制することができる。
【0013】
係合部外面は、中央部における積層方向の内側を向く内面よりも積層方向の外側に位置していてもよい。この構成によれば、中央部と縁部の係合部とを連続的に設ける場合において、中央部の厚み及び係合部の厚みの両方を適切に確保できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、拘束板の変形又は破損を抑制しつつ、搭載性の向上を図ることができる蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る蓄電装置の斜視図である。
図2図1に示される蓄電装置の側面図である。
図3図1のIII-III線に沿った断面図である。
図4図1のIV-IV線に沿った断面図である。
図5】拘束板の外面を示す斜視図である。
図6】拘束板の内面を示す斜視図である。
図7図5のVII-VII線に沿った断面図である。
図8】搭載対象物に対する蓄電装置の取付例を示す図である。
図9図8におけるIX-IX線に沿った断面図である。
図10】蓄電装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図11】変形例に係る拘束板の内面を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0017】
図1図7を参照して、本実施形態に係る蓄電装置1について説明する。図1は、蓄電装置1の斜視図である。図2は、蓄電装置1の側面図である。図3は、図1のIII-III線に沿った断面図である。図4は、図1のIV-IV線に沿った断面図である。図5及び図6は、拘束板8の詳細な形状を示す図である。図7は、図5のVII-VII線に沿った断面図である。図5及び図6以外の図面においては、拘束板8の形状を簡略化して図示している。
【0018】
蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、及び電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、モジュール積層体2と、拘束部材4と、を備えている。モジュール積層体2は、積層された複数の蓄電モジュール3を含んでいる。拘束部材4は、モジュール積層体2に対して、蓄電モジュール3の積層方向の両側から拘束荷重を付加する。蓄電モジュール3は、積層方向から見て、例えば矩形状を有する。本明細書では、説明の便宜上、積層方向をZ軸方向とし、積層方向から見た蓄電モジュール3の長手方向をY軸方向(第1方向)とし、蓄電モジュール3の短手方向をX軸方向(第2方向)としている。
【0019】
モジュール積層体2は、複数(本実施形態では7つ)の蓄電モジュール3と、複数(本実施形態では8つ)の導電板5と、を含む。蓄電モジュール3は、一例としてバイポーラ電池である。蓄電モジュール3は、例えばニッケル水素二次電池及びリチウムイオン二次電池等の二次電池である。ただし、蓄電装置1は、上記二次電池に限られず、例えば電気二重層キャパシタであってもよい。本実施形態では、蓄電装置1は、ニッケル水素二次電池である。
【0020】
積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール3同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。本実施形態では、複数の(8つ)の導電板5は、複数(6つ)の導電板5Aと、複数(2つ)の導電板5B(導電部材)と、によって構成されている。導電板5Aは、積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール3間に配置されている。導電板5Bは、複数の蓄電モジュール3のうち積層端に位置する蓄電モジュール3の積層方向の外側に配置されている。一方の導電板5Bには、正極端子6(電極端子)が接続されている。他方の導電板5Bには、負極端子7(電極端子)が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、導電板5Bの縁部から積層方向に交差する方向(Y軸方向)に突出している。正極端子6及び負極端子7を介して、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0021】
図3及び図4に示されるように、導電板5Aの内部には、冷媒を流通させる複数の冷媒流路5a(冷却用流路)が設けられている。ここで、冷媒とは、空気、水等の任意の冷却用流体である。冷媒流路5aは、積層方向(Z軸方向)及び正極端子6及び負極端子7の引き出し方向(Y軸方向)の両方に直交する方向(X方向)に沿って延在している。導電板5Aは、冷媒流路5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール3で発生した熱を放熱する放熱板として機能する。導電板5は、積層方向から見て、例えば矩形状を有する。本実施形態では、積層方向から見た導電板5の面積は蓄電モジュール3の面積よりも小さいが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は蓄電モジュール3の面積と同じでもよく、蓄電モジュール3の面積よりも大きくてもよい。
【0022】
図1図2及び図4に示されるように、蓄電装置1は、蓄電モジュール3を冷却するための冷媒を流通させる導入ダクト21(第1ダクト)及び導出ダクト22(第2ダクト)を有する。ここで、図4は、積層方向における一の導電板5Aの中央部を通る平面に沿った断面を示している。図4では、説明の便宜上、一の導電板5A、導入ダクト21、及び導出ダクト22のみが図示されている。
【0023】
導入ダクト21は、各導電板5Aの各冷媒流路5aの一方の端部5bに対向してY軸方向に沿って延びるように設けられている。導入ダクト21は、冷媒を流通させて冷媒流路5aへと冷媒を導入するように構成されている。導入ダクト21のY軸方向における一端には、導入ダクト21に冷媒を導入するための導入口21aが設けられている。導入ダクト21から冷媒流路5aの端部5bへと導入された冷媒は、冷媒流路5aを流通し、冷媒流路5aの他方の端部5cから導出される。
【0024】
導出ダクト22は、各導電板5Aの各冷媒流路5aの端部5cに対向してY軸方向に沿って延びるように設けられている。導出ダクト22は、冷媒流路5aの端部5cから導出された冷媒を流通させるように構成されている。導出ダクト22のY軸方向における一端には、導出ダクト22から外部に冷媒を排出するための導出口22aが設けられている。導出口22aには、例えば、導出ダクト22内の冷媒を吸引するブロワ等が接続される。
【0025】
図1及び図2に示されるように、拘束部材4は、モジュール積層体2を積層方向の両側から挟む一対の拘束板8(負極端子7側の拘束板8A及び正極端子6側の拘束板8B)と、一対の拘束板8を連結する連結部材9と、を含む。連結部材9は、一対の拘束板8を介して積層方向にモジュール積層体2に拘束荷重を付加する。本実施形態では、連結部材9は、一対の拘束板8を締結するボルト9a及びナット9bによって構成されている。拘束板8は、積層方向から見た蓄電モジュール3及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。各拘束板8と導電板5Bとの間には、例えば樹脂フィルム等の絶縁フィルムFが配置されている。絶縁フィルムFにより、拘束板8と導電板5Bとの間が絶縁されている。絶縁フィルムFは、積層方向から見て、例えば矩形状を有する。本実施形態では、積層方向から見た絶縁フィルムFの面積は、蓄電モジュール3及び導電板5よりも大きく、拘束板8よりも小さい。
【0026】
拘束板8は、積層方向から見てモジュール積層体2と重なる中央部11と、中央部11から積層方向に直交する方向(本実施形態ではY軸方向)に延在すると共に積層方向から見てモジュール積層体2と重ならない縁部10と、を有する。本実施形態では、一対の縁部10は、X軸方向における中央部11の両側に設けられている。すなわち、中央部11は、一対の縁部10に挟まれている。一対の縁部10は、拘束板8の長手方向(Y軸方向)に延在する外縁部分である。一対の縁部10は、積層方向から見てモジュール積層体2と重ならないように配置されている。
【0027】
図5に示されるように、本実施形態では一例として、中央部11は、複数のリブ12と、複数のリブ12によって画定された複数の薄肉部13と、を有する。中央部11に複数の薄肉部13が形成されることにより、拘束板8の軽量化が図られている。一方、中央部11に複数のリブ12が形成されることにより、拘束板8の剛性が確保されている。ただし、中央部11は、このようなリブ及び薄肉部を有さなくてもよく、平板状に形成されてもよい。本実施形態では、中央部11における積層方向の外側を向く中央部外面11a(すなわち、モジュール積層体2とは反対側の面)は、積層方向における複数のリブ12の外側端部によって規定されている。
【0028】
中央部外面11aは、取付面Aを含む。取付面Aは、例えば車両等の搭載対象物に連結されるブラケットB(図8及び図9参照)を取り付けるための領域である。本実施形態では、複数(ここでは4つ)の取付面Aが、中央部11の四隅の各々の近傍に形成されている。各取付面Aには、取付面Aに開口すると共に積層方向に延在する複数(本実施形態では6つ)の孔部Hが形成されている。本実施形態では、孔部Hは、中央部11を積層方向に貫通しない非貫通孔である。すなわち、孔部Hは、中央部11における積層方向の内側を向く中央部内面11bには開口していない。ただし、孔部Hは、中央部内面11bにも開口する貫通孔であってもよい。また、孔部Hは、後述するようにネジ溝が形成された孔であってもよいし、ネジ溝が形成されていない下穴の状態のものであってもよい。
【0029】
各取付面Aにおいて、複数の孔部Hは、一例として3列2行(X軸方向に3列、Y軸方向に2行)に配列されている。本実施形態では、拘束板8Aの各取付面Aにおいて、複数の孔部Hのうち特定の孔部H1(本実施形態では、中央部11の隅部から第2行第2列に位置する孔部H)の内面にのみネジ溝が形成されている。具体的には、拘束板8Aにおける孔部H1以外の孔部H及び拘束板8Bに形成された全ての孔部Hは、鋳造段階で成型された下穴の状態であり、ネジ溝が形成されていない。一方、孔部H1は、鋳造段階で成型された下穴に対して、例えばタップ等を用いた後加工を行うことによってネジ溝が形成されたネジ穴である。孔部H1は、蓄電装置1にブラケットBを固定(ネジ留め)する際に利用される。下穴である孔部Hは、上述した後加工によるネジ溝形成に適した大きさ(孔径)に形成されている。
【0030】
図5及び図6に示されるように、本実施形態では一例として、各縁部10は、複数(本実施形態では5つ)の係合部14を有する。係合部14は、連結部材9が係合される部分である。各縁部10において、複数の係合部14は、拘束板8の長手方向(Y軸方向)に沿って互いに離間するように配置されている。本実施形態では、複数の係合部14は、拘束板8の長手方向における縁部10の一端から他端まで等間隔に配置されている。係合部14における積層方向の外側を向く係合部外面14aは、中央部外面11aよりも積層方向の内側に位置している。なお、本実施形態では、係合部外面14aは、係合部14及び後述する外側リブ17が設けられていない部分における縁部10の外面10aよりも積層方向の外側に位置しているが、例えば図1において簡略化して示したように、係合部外面14aと縁部10の外面10aとは同一平面上に位置してもよい。
【0031】
係合部14には、積層方向に延在する貫通孔14b(係合部貫通孔)が形成されている。貫通孔14bは、係合部外面14aから係合部14における積層方向の内側を向く係合部内面14cまで貫通している。積層方向から見て、拘束板8Aに設けられた複数(ここでは10個)の貫通孔14bは、拘束板8Bに設けられた複数の貫通孔14bと重なっている。図1及び図2に示されるように、連結部材9は、貫通孔14bに挿通されている。具体的には、ボルト9aの軸部が各拘束板8の貫通孔14bに挿通されている。本実施形態では一例として、ボルト9aの頭部は、拘束板8Aの係合部外面14a上に配置されている。ボルト9aの軸部の先端部(ネジ先)は、拘束板8Bの係合部外面14aから突出している。ボルト9aの先端部には、ナット9bが螺合されている。ナット9bは、拘束板8Bの係合部外面14a上に配置されている。これにより、複数の蓄電モジュール3及び複数の導電板5が、拘束板8A,8Bによって挟持されてモジュール積層体2としてユニット化されている。また、積層方向の拘束荷重がモジュール積層体2に対して付加されている。
【0032】
図2に示されるように、積層方向における連結部材9の端部(以下、単に「連結部材9の端部」)は、取付面A(すなわち、中央部外面11a)よりも積層方向の外側に突出していない。すなわち、連結部材9の端部は、取付面Aと同一平面上に位置しているか、或いは取付面Aよりも積層方向の内側に位置している。本実施形態では、連結部材9の端部は、取付面Aよりも積層方向の内側に位置している。連結部材9の端部とは、連結部材9を構成する部分のうち最も積層方向の外側に位置する部分である。本実施形態では、拘束板8A側の連結部材9の端部は、ボルト9aの頭部の端部(座面とは反対側の面)である。図2のようにボルト9aの軸部の先端部がナット9bの端部(座面とは反対側の端部)から突出しない場合には、拘束板8B側の連結部材9の端部は、ナット9bの端部である。一方、ボルト9aの軸部の先端部がナット9bの端部から突出する場合には、拘束板8B側の連結部材9の端部は、ボルト9aの軸部の先端部である。
【0033】
また、図2及び図6に示されるように、係合部内面14cは、中央部内面11bよりも積層方向の内側に位置している。すなわち、係合部14の内側端部を中央部内面11bよりも積層方向の内側に延ばすことにより、係合部14の肉厚が確保されている。このような構成は、係合部14が積層方向から見てモジュール積層体2と重なっていないことにより、実現可能となっている。
【0034】
また、図5及び図7に示されるように、縁部10において隣り合う係合部14の間には、係合部14よりも積層方向の厚さが薄い薄肉部15が形成されている。上記構成によれば、係合部14の肉厚を確保して係合部14の強度を確保する一方で、係合部14と比較して強度を確保する必要がない部分である隣り合う係合部14の間の部分を薄肉部15とすることにより、拘束板8の軽量化を図ることができる。
【0035】
また、縁部10は、薄肉部15における積層方向の内側を向く内面15aに立設された内側リブ16(壁部)を有する。内側リブ16は、隣り合う係合部14同士を接続するように拘束板8の長手方向に沿って延在している。本実施形態では、縁部10は、縁部10における中央部11側の縁に沿って延在する内側リブ16Aと、縁部10における中央部11とは反対側の縁(すなわち拘束板8の長手方向に沿った外縁)に沿って延在する内側リブ16Bと、を有する。上記構成によれば、薄肉部15によって拘束板8の軽量化を図りつつ、内側リブ16によって剛性を確保でき、薄肉部15の変形を抑制できる。特に、内側リブ16が隣り合う係合部14同士を接続するように拘束板8の長手方向に沿って延在していることにより、隣り合う係合部14同士の間の薄肉部15の変形をより効果的に抑制できる。また、本実施形態では、薄肉部15の変形をより好適に抑制するために、隣り合う係合部14同士の間(本実施形態では中間位置)に、補助リブ16Cが設けられている。補助リブ16Cは、薄肉部15の内面15aに立設され、内側リブ16Aと内側リブ16Bとを接続するように拘束板8の短手方向(X軸方向)に沿って延在している。
【0036】
図2及び図7に示されるように、係合部内面14cと内側リブ16における積層方向の内側の端部16aとは、いずれの導電板5Aよりも積層方向の外側に位置している。すなわち、X軸方向から見て、係合部内面14cと内側リブ16の端部16aとは、複数の導電板5Aのうち最外層に位置する導電板5Aよりも積層方向の外側に位置している。すなわち、いずれの導電板5Aの冷媒流路5aの入口(端部5b)又は出口(端部5c)も、係合部14及び内側リブ16のいずれによっても覆われない。これにより、導電板5Aの冷媒流路5aに冷媒を好適に流通させることができる。すなわち、導入ダクト21から冷媒流路5aへと冷媒を円滑に導入させることができると共に、冷媒流路5aから導出ダクト22へと冷媒を円滑に導出させることができる。
【0037】
また、上述したように、正極端子6及び負極端子7は、導電板5Bにおける短手方向(X軸方向)に沿った側面(Y軸方向と交差する側面)から突出している。このように、導電板5Bにおける係合部14又は内側リブ16と対向しない側面から電極端子(正極端子6及び負極端子7)を引き出すことにより、電極端子と係合部14又は内側リブ16との干渉を確実に防止することができる。また、本実施形態のように、モジュール積層体2における長手方向(Y軸方向)に沿った側面に対向する位置に導入ダクト21及び導出ダクト22を設ける場合には、電極端子と導入ダクト21又は導出ダクト22との干渉も防止することができる。
【0038】
また、図5及び図7に示されるように、縁部10は、外側リブ17を有する。外側リブ17は、薄肉部15における積層方向の外側を向く外面(すなわち、縁部10の外面10a)に立設され、拘束板8の短手方向(X軸方向)に延在している。本実施形態では、互いに隣り合う係合部14間に、複数(ここでは3つ)の外側リブ17が等間隔に配置されている。外側リブ17は、中央部11から離れるにつれて薄肉部15の外面10aに近づくように、中央部11と薄肉部15の外面10aとを接続する傾斜面17aを有する。上記構成によれば、縁部10の延在方向(Y軸方向)に直交するX軸方向に延在する外側リブ17により、薄肉部15のY軸方向の剛性を効果的に向上させることができ、薄肉部15の湾曲等の変形を好適に抑制することができる。さらに、外側リブ17を中央部11から離れるにつれて薄肉部15の外面10aに近づくように傾斜する形状とすることにより、例えば搭載対象物の一部(例えば車体の一部等)が薄肉部15の外面10aに近接する位置に配置される場合等において、拘束板8と搭載対象物の一部との干渉を好適に抑制することができる。
【0039】
また、図5に示されるように、一方の縁部10(冷媒流路5aの一方の端部5b側の縁部10)の薄肉部15には、導入ダクト21を固定するための固定ネジ18A(第1締結部材)が挿通される孔部19(第1縁部貫通孔)が設けられている。また、他方の縁部10(冷媒流路5aの他方の端部5c側の縁部10)の薄肉部15には、導出ダクト22を固定するための固定ネジ18B(第2締結部材)が挿通される孔部19(第2縁部貫通孔)が設けられている。本実施形態では、各縁部10において、4つの孔部19が、拘束板8の長手方向中央部に位置する係合部14以外の4つの係合部14の近傍に設けられている。具体的には、孔部19は、係合部14と当該係合部14に隣接する外側リブ17との間に設けられている。一例として、孔部19は、積層方向に薄肉部15を貫通する貫通孔であり、固定ネジ18A,18Bが螺合するネジ溝が内面に形成されたネジ穴である。図1に示されるように、導入ダクト21及び導出ダクト22は、延在部21b及び延在部22bを有する。延在部21b,22bは、薄肉部15において孔部19が設けられた部分に対向するように、積層方向に直交する平面(XY平面)に沿って延在している。延在部21b,22bは、係合部14及び外側リブ17と干渉しない形状及び大きさに形成されている。延在部21b,22bには、孔部19に対応する貫通孔が形成されている。固定ネジ18A,18Bは、当該貫通孔に挿通され、孔部19に螺合されている(図9参照)。これにより、導入ダクト21及び導出ダクト22は、縁部10に固定されている。すなわち、一方の縁部10の孔部19に挿通された固定ネジ18Aが、導入ダクト21を介して、拘束板8(一方の縁部10)に取り付けられている。また、他方の縁部10の孔部19に挿通された固定ネジ18Bが、導出ダクト22を介して、拘束板8(他方の縁部10)に取り付けられている。
【0040】
積層方向における固定ネジ18Aの端部及び積層方向における固定ネジ18Bの端部は、取付面A(すなわち、中央部外面11a)と同一平面上に位置しているか、或いは取付面Aよりも積層方向の内側に位置している。すなわち、固定ネジ18A及び固定ネジ18Bは、連結部材9と同様に、取付面Aよりも外側に突出していない。
【0041】
次に、図8及び図9を参照して、搭載対象物(ここでは、車両の一部である取付壁部C)に対する蓄電装置1の取付例について説明する。図8は、複数(ここでは4つ)のブラケットB(固定部材)を介して取付壁部Cに固定された蓄電装置1を示す平面図である。図9は、図8におけるIX-IX線に沿った断面図である。本実施形態では一例として、ブラケットBは、Z形状の板金部材である。具体的には、ブラケットBは、部分B1と、部分B2と、部分B3と、を有する。部分B1は、部分B2と部分B3とを接続する矩形板状の部分である。部分B2は、部分B1の長手方向における一端部に立設された矩形板状の部分である。部分B3は、部分B1の長手方向における他端部に立設され、部分B2の延在方向とは反対側に延在する部分である。
【0042】
ブラケットBの部分B1は、蓄電装置1の側方(導入ダクト21又は導出ダクト22が設けられた側)において積層方向に延在するように配置される。また、各ブラケットBの部分B2は、蓄電装置1の側方(すなわち、部分B1の一端部)から拘束板8Aの取付面Aに対向する位置までX軸方向に沿って延在するように配置される。各ブラケットBの部分B3は、取付壁部Cに対向するように配置される。部分B2における取付面Aに対向する部分には、積層方向に孔部H1と重なる貫通孔H2が設けられている。言い換えれば、拘束板8Aの取付面Aに用意されていた複数の孔部Hのうち特定の位置に設けられた孔部H1が、ブラケットBの部分B2の貫通孔H2に対応する孔部である。このため、ブラケットBの部分B2をネジ留めするために、孔部H1にネジ溝が形成されている。固定ネジ31が貫通孔H2に挿通され、孔部H1に螺合されることにより、部分B2は取付面Aに固定される。また、各ブラケットBの部分B3にも、部分B2と同様に、積層方向に貫通する貫通孔H3が設けられている。固定ネジ32が貫通孔H3に挿通され、予め取付壁部Cに設けられたネジ穴H4に螺合されることにより、部分B3は取付壁部Cに固定される。このようにして、蓄電装置1は、ブラケットBを介して取付壁部Cに固定される。
【0043】
以上説明したように、蓄電装置1には、例えば車両等の搭載対象物(本実施形態では取付壁部C)に蓄電装置1を固定するためのブラケットBが取り付けられる場合がある。蓄電装置1では、係合部外面14aが取付面Aよりも積層方向の内側に位置することにより、連結部材9の端部(ボルト9aの頭部の先端部)が取付面Aよりも積層方向の外側に突出しない構成が実現されている。これにより、上述したようなブラケットBを、拘束板8(本実施形態では拘束板8A)の取付面Aに適切に取り付けることができる。以下、これについて詳細に説明する。本実施形態では、図9に示されるように、ブラケットBと連結部材9とが積層方向に重ならないようにブラケットBの取付位置(すなわち、取付面Aの位置)が調整されている。このため、仮に連結部材9の端部が取付面Aよりも積層方向の外側に突出していたとしても、ブラケットBの部分B2が連結部材9と干渉することはない。しかし、連結部材9の端部が取付面Aよりも積層方向の外側に突出している場合、ブラケットBの部分B2が連結部材9と干渉しないように、予め、ブラケットBの形状又は配置を工夫したり、拘束板8における係合部14又は取付面Aの位置を調整したりする必要が生じる。その結果、蓄電装置1又はブラケットBの設計自由度が損なわれる。一方、蓄電装置1では、ブラケットBをどの位置に配置したとしても、ブラケットBと連結部材9とが干渉する虞がない。具体的には、蓄電装置1において、仮にブラケットB及び取付面Aの位置をY軸方向に沿ってずらすことによって、ブラケットBの部分B2を連結部材9と積層方向に重なるように配置したとしても、部分B2と連結部材9とが干渉することがない。また、図8に示されるブラケットBよりもY軸方向における幅が大きいブラケット(すなわち、積層方向から見て連結部材9と重なる部分を有するブラケット)を利用することも考えられるが、そのような場合においても、蓄電装置1によれば、ブラケットと連結部材9との干渉を回避することができる。以上により、蓄電装置1によれば、蓄電装置1を固定するためのブラケットの拘束板8への取付に適した構造を実現できる。
【0044】
また、蓄電装置1は、導入ダクト21及び導出ダクト22を備える。上記構成によれば、隣り合う蓄電モジュール3間に配置された導電板5Aの冷媒流路5aを介して、導入ダクト21から導出ダクト22へと冷媒を流通させることができる。これにより、各蓄電モジュール3において発生した熱を効果的に外部に放出することができる。さらに、導入ダクト21及び導出ダクト22は、固定ネジ18A及び固定ネジ18Bを介して拘束板8の縁部10に連結されている。また、積層方向における固定ネジ18Aの端部及び積層方向における固定ネジ18Bの端部は、取付面Aよりも積層方向の外側に突出していない。これにより、ブラケットBをどの位置に配置したとしても、ブラケットBと固定ネジ18A又は固定ネジ18Bとが干渉する虞がない。すなわち、本実施形態のように、部分B2と固定ネジ18A又は固定ネジ18Bとを干渉させることなく、ブラケットBの部分B2を固定ネジ18A又は固定ネジ18Bと積層方向に重なるように配置することができる。従って、上記構成によれば、導入ダクト21及び導出ダクト22によって蓄電モジュール3の放熱を効果的に行う構成を実現しつつ、ブラケットの取付に適した構造を実現できる。また、本実施形態では、ブラケットBは、導入ダクト21の導入口21a又は導出ダクト22の導出口22aを覆わないように配置される。これにより、導入ダクト21又は導出ダクト22における冷媒の流通がブラケットBによって阻害されない構成が実現されている。また、ブラケットBは、導入ダクト21又は導出ダクト22を外側から覆う態様で配置されている。これにより、導入ダクト21又は導出ダクト22に対する外側からの衝撃を、ブラケットBによって好適に低減させることができる。すなわち、ブラケットBが盾となることにより、導入ダクト21又は導出ダクト22を好適に保護することができる。
【0045】
また、係合部内面14cは、中央部内面11bよりも積層方向の内側に位置している。これにより、連結部材9の端部が取付面Aよりも積層方向の外側に突出しない構成を実現しつつ、係合部14の肉厚を確保することができる。具体的には、上述したように、蓄電装置1では、係合部外面14aが中央部外面11aよりも積層方向の内側に位置することにより、連結部材9の端部が中央部外面11aよりも積層方向の外側に突出しない構成が実現されている。これにより、車両等の搭載対象物に対する蓄電装置1の搭載性を向上させることができる。さらに、蓄電装置1では、拘束板8の縁部10が積層方向から見てモジュール積層体2と重ならないように配置されると共に、係合部内面14cが中央部内面11bよりも積層方向の内側に位置することにより、係合部14の肉厚(すなわち、係合部外面14aから係合部内面14cまでの厚み)が確保されている。これにより、連結部材9が係合されて比較的大きい応力がかかる係合部14の強度を適切に確保することができる。その結果、拘束板8の変形又は破損を抑制することができる。従って、蓄電装置1によれば、拘束板8の変形又は破損を抑制しつつ、搭載性の向上を図ることができる。
【0046】
また、図2に示されるように、係合部外面14aは、中央部内面11bよりも積層方向の外側に位置している。この構成によれば、中央部11と縁部10の係合部14とを連続的に設ける場合において、中央部11の厚み及び係合部14の厚みの両方を適切に確保できる。
【0047】
次に、図10を参照して、蓄電装置1の製造方法の一例について説明する。図10は、蓄電装置1の製造工程の一例(ステップS1~S3)と蓄電装置1を車両等の搭載対象物に固定する工程(ステップS4)とを示すフローチャートである。まず、上述したように複数の蓄電モジュール3と複数の導電板5とが積層されてなるモジュール積層体2が準備される(ステップS1)。また、ステップS1と並行して、一対の拘束板8(拘束板8A,8B)が準備される(ステップS2)。ステップS2は、以下のステップS21、ステップS22、及びステップS23を含む。
【0048】
まず、ステップS21において、下穴が形成された拘束板が準備される。具体的には、上述したように、拘束板の中央部11において取付面Aに開口するように積層方向に延在し且つネジ溝を有さない複数の下穴(孔部H)が形成された拘束板が準備される。当該拘束板は、取付面Aに形成された複数(ここでは6つ)の孔部Hの全てが下穴である点(すなわち、本実施形態における孔部H1に相当する孔部Hにネジ溝が形成されていない点)で、拘束板8と相違している。すなわち、ステップS21において準備される拘束板は、孔部H1にネジ溝を形成する前の状態のものであり、ダイカスト(鋳造)等によって一律に形成されたものである。ネジ溝を有さない孔部Hの加工は比較的容易であるため、ステップS21において準備される拘束板は、共通の金型を用いた鋳造によって容易に製造することができる。ステップS21において準備される拘束板に形成された複数の下穴(孔部H)は、予め想定される複数の取付条件(後述)に対応可能とするために用意されたものである。
【0049】
ここで、蓄電装置1が搭載される車種及び取付場所等に応じて、使用されるブラケットの形状及び規格、或いは取り付け方(取付方向等)等の取付条件が異なる。そして、このような取付条件によって、ブラケットを固定するために用いられる孔部Hが定まる。そこで、ステップS22において、蓄電装置1に対するブラケットの取付条件が決定される。本実施形態では、使用されるブラケットとして上述したブラケットBが決定されると共に、図8及び図9に示したような取り付け方が決定される。
【0050】
続いて、ステップS23において、ステップS22で決定された取付条件に応じた下穴が特定される。すなわち、取付面Aに設けられた複数の孔部Hのうちから特定の孔部H1が特定される。そして、特定された孔部H1の内面にネジ溝が形成される。これにより、孔部H1の内面にネジ溝が形成された拘束板8が得られる。なお、ネジ溝は、例えばタップ等を用いた後加工によって形成される。
【0051】
続いて、ステップS3において、複数(本実施形態では10個)の連結部材9によって一対の拘束板8(拘束板8A,8B)が連結され、一対の拘束板8を介して積層方向の両側からモジュール積層体2に拘束荷重が付加される。これにより、上述した蓄電装置1が得られる。続いて、ステップS4において、ステップS22で決定されたブラケットBを介して、蓄電装置1が搭載対象物(本実施形態では、取付壁部C)に固定される(図8及び図9参照)。
【0052】
以上説明した蓄電装置1の製造方法(ステップS1~S3)によれば、上述した効果を奏する蓄電装置1を製造することができる。また、上記製造方法では、一対の拘束板8を準備するステップ(ステップS2)において、まず、ネジ溝を有さない複数の下穴が予め取付面Aに形成された拘束板が準備される(ステップS21)。ネジ溝を有さない下穴の加工は比較的容易であるため、このような拘束板は、共通の金型を用いた鋳造によって容易に製造することができる。そして、予め複数の下穴を用意しておくことにより、多種多様なブラケットの取付条件に適切に対応することが可能となる。さらに、上記製造方法では、蓄電装置1に対するブラケットの取付条件(使用されるブラケットの形状、規格、取り付け方等)が決定された後に、複数の下穴のうちネジ溝が必要な下穴にのみネジ溝が形成される。すなわち、蓄電装置1に取り付ける予定のブラケットB及びブラケットBの取り付け方に応じた下穴(孔部H1)にのみネジ溝が形成される。これにより、無駄なネジ溝加工(すなわち、孔部H1以外の孔部Hに対するネジ溝加工)を行うことなく、ブラケットBの取付に適した拘束板8を準備することができる。
【0053】
また、上記製造方法によって製造された蓄電装置1の拘束板8には、当初予定されていたブラケットBを取り付けるための孔部H1以外の孔部H(下穴)が形成されている。このため、例えば上記ステップS3の後に、蓄電装置1に取り付けられるブラケット又は蓄電装置1の搭載対象となる車種等が変更され、ブラケットを拘束板に固定するために使用される孔部が変更された場合にも容易に対応可能となる。具体的には、モジュール積層体2から一対の拘束板8を外した後に、当該拘束板8に設けられた複数の孔部Hのうち変更後の取付条件に応じた孔部Hにネジ溝を形成する加工を行った後に、再度ステップS3及びステップS4を実行するだけでよく、拘束板自体を取り替える必要がない。
【0054】
また、複数の下穴(孔部H)は、中央部11を積層方向に貫通しない非貫通孔である。これにより、蓄電装置1の外部から蓄電装置1の内部への下穴(特にブラケットBの取付に用いられず、中央部外面11a側の開口が外部に露出している孔部H)を介した異物等の侵入を確実に防止することができる。つまり、下穴を貫通孔として形成した場合に生じる可能性のある異物等の侵入を防止することができる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、各部の形状及び材料等は、適宜に変更されてもよい。
【0056】
また、複数の下穴(孔部H)は、中央部11を積層方向に貫通する貫通孔であってもよい。つまり、孔部Hは、中央部内面11bに開口していてもよい。この場合、例えばタップ等の工具を特定された下穴(孔部H1)の一端(すなわち、中央部外面11a側の開口端)に進入させて当該下穴の内面にネジ溝を形成する過程で生じた金属の切りくず(切粉)等を、当該下穴の他端(すなわち、中央部内面11b側の開口端)から容易に排出することができる。従って、上記ネジ溝加工を容易且つ適切に行うことができる。
【0057】
また、上記実施形態では、導電板5Bは導電板5Aと同一の形状を有する部材であったが、導電板5Bは、積層端に位置する蓄電モジュール3と電気的に接続された任意の形状を有する導電部材(例えば正極端子6又は負極端子7と一体的に形成された部材)であってもよい。
【0058】
また、拘束板8における取付面Aの個数及び位置は、上記実施形態に限定されない。また、取付面Aに設けられる複数の孔部Hの配置も上記実施形態に限定されない。また、1つの取付面Aに設けられる孔部Hの個数は2以上であればよい。また、上記実施形態では、1つの取付面Aにつき1つの孔部H(孔部H1)のみにネジ溝が形成されたが、必要に応じて1つの取付面Aにつき2以上の孔部Hにネジ溝が形成されてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、一方の拘束板8AにのみブラケットBが取り付けられたが、取付条件に応じて、拘束板8Bにブラケットが取り付けられてもよいし、拘束板8A及び拘束板8Bの両方に共通のブラケット又は別々のブラケットが取り付けられてもよい。また、一方の拘束板(拘束板8A又は拘束板8B)にのみブラケットが取り付けられる場合には、当該一方の拘束板にのみ取付面Aが設けられてもよい。
【0060】
また、蓄電装置1の拘束板8以外の部分を搭載対象物に固定する場合等には、拘束板8に取付面A(すなわち、複数の孔部Hが形成された領域)は設けられなくてもよい。また、導入ダクト21及び導出ダクト22は、省略されてもよい。この場合、拘束板8の縁部10において、孔部19は設けられなくてもよい。導入ダクト21及び導出ダクト22がない場合でも、自然対流により空気等の冷媒を導電板5Aの冷媒流路5aに流通させることができる。
【0061】
また、上記実施形態では、拘束板8の外面(中央部外面11a)にリブ12が設けられていたが、図11に示される変形例に係る拘束板8Cのように、拘束板8Cの外面ではなく、拘束板8Cの内面(中央部内面11b)にリブ12が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…蓄電装置、2…モジュール積層体(積層体)、3…蓄電モジュール、5A…導電板、5B…導電板(導電部材)、5a…冷媒流路(冷却用流路)、6…正極端子(電極端子)、7…負極端子(電極端子)、8,8A,8B…拘束板、9…連結部材、10…縁部、11…中央部、11a…中央部外面、11b…中央部内面、14…係合部、14a…係合部外面、14b…貫通孔(係合部貫通孔)、14c…係合部内面、15…薄肉部、16,16A,16B…内側リブ(壁部)、16a…端部、17…外側リブ、17a…傾斜面、18A…固定ネジ(第1締結部材)、18B…固定ネジ(第2締結部材)、19…孔部(第1縁部貫通孔、第2縁部貫通孔)、21…導入ダクト(第1ダクト)、22…導出ダクト(第2ダクト)、A…取付面、B…ブラケット(固定部材)、H,H1…孔部。
図1
図2
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図5
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図9
図10
図11