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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】経鼻胃チューブ通路がある呼吸マスク
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/06 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
A61M16/06 A
【請求項の数】 27
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019216637
(22)【出願日】2019-11-29
(62)【分割の表示】P 2016550214の分割
【原出願日】2015-02-26
(65)【公開番号】P2020049234
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2019-12-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】61/945,034
(32)【優先日】2014-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504298349
【氏名又は名称】フィッシャー アンド ペイケル ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】ジェ、ユン、リム
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】井上 哲男
【審判官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0285448(US,A1)
【文献】米国特許第4328797(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸マスク用のクッション(58)であって、
使用者の顔面に接触し且つ前記使用者の鼻および/または口を包囲する顔面接触部分を備え
前記顔面接触部分は、前記クッション(58)の周囲のまたは隣接する部分よりコンプライアンスが高くかつ可撓性がある少なくとも1つの形状適合または高コンプライアンス領域(72)であって、前記顔面接触部分(90)と使用者の顔面との間の前記チューブ(54)の配置に適応するようになされるようにチューブ(54)の周囲で伸張および変形する前記形状適合または高コンプライアンス領域を含み、
前記形状適合または高コンプライアンス領域(72)の外面、前記チューブ(54)が存在していない状態で前記顔面接触部分の残りの部分と同じ輪郭に従い、前記形状適合または高コンプライアンス領域内に及び前記形状適合または高コンプライアンス領域に隣接して、前記顔面接触部分において切れ目または他の中断がないクッション(58)。
【請求項2】
前記形状適合または高コンプライアンス領域はまたは各形状適合または高コンプライアンス領域は、薄肉領域を含む請求項1に記載のクッション(58)。
【請求項3】
使用時、前記少なくとも1つの形状適合または高コンプライアンス領域(72)が、前記使用者の前記顔面と適切なシールを実質的に維持しながら、前記チューブの形状に適合するようになされている、請求項1又は2に記載のクッション(58)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの形状適合または高コンプライアンス領域(72)が、前記顔面接触部分(90)の側部に配置されている、請求項1または2に記載のクッション(58)。
【請求項5】
形状適合または高コンプライアンス領域(72)は少なくとも2つ設けられ、
前記少なくともつの形状適合または高コンプライアンス領域(72)が、前記顔面接触部分(90)の各側部に形状適合または高コンプライアンス領域を含む、請求項1又は2に記載のクッション(58)。
【請求項6】
一方の側部の前記形状適合または高コンプライアンス領域(72)が、相対的に大きい形状適合または高コンプライアンス領域であり、かつ他方の側部の前記形状適合または高コンプライアンス領域が、相対的に小さい薄肉領域である、請求項5に記載のクッション(58)。
【請求項7】
形状適合または高コンプライアンス領域(72)は少なくとも2つ設けられ、
前記少なくともつの形状適合または高コンプライアンス領域が、前記顔面接触部分の一方の側部に2つ以上の形状適合または高コンプライアンス領域を含む、請求項1又は2に記載のクッション(58)。
【請求項8】
前記2つ以上の形状適合または高コンプライアンス領域のうちの第1形状適合または高コンプライアンス領域および第2形状適合または高コンプライアンス領域が、互いから間隔を空けて配置されている、請求項7に記載のクッション(58)。
【請求項9】
前記第1形状適合または高コンプライアンス領域および前記第2形状適合または高コンプライアンス領域が、前記顔面接触部分の外周部に沿って間隔を空けて配置されている、請求項8に記載のクッション(58)。
【請求項10】
前記2つ以上の形状適合または高コンプライアンス領域が、少なくとも1つの相対的に大きい形状適合または高コンプライアンス領域と、少なくとも1つの相対的に小さい形状適合または高コンプライアンス領域とを含む、請求項9に記載のクッション(58)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの形状適合または高コンプライアンス領域が、前記顔面接触部分の内縁から前記顔面接触部分(90)の外縁に向かう方向に延在している、請求項1又は2に記載のクッション(58)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの形状適合または高コンプライアンス領域が、内端部分から外端部分まで前記クッション(58)の水平軸に対して下方に角度がつけられて延在している、請求項1又は2に記載のクッション(58)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの形状適合または高コンプライアンス領域が、5度~45度の角度で下方に角度がつけられて延在している、請求項12に記載のクッション(58)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの薄肉領域と前記顔面接触部分の隣接部分との間に厚さの平滑な遷移部をさらに備える、請求項2に記載のクッション(58)。
【請求項15】
前記遷移部が実質的に直線状である、請求項14に記載のクッション(58)。
【請求項16】
前記少なくとも1つの薄肉領域の厚さが、前記顔面接触部分(90)との隣接部分の厚さの5パーセント~80パーセントである、請求項2に記載のクッション(58)。
【請求項17】
前記少なくとも1つの薄肉領域の前記厚さが、前記顔面接触部分の前記隣接部分の前記厚さの10パーセント~30パーセントである、請求項16に記載のクッション。
【請求項18】
前記少なくとも1つの形状適合または高コンプライアンス領域の端部が曲線状である、請求項1又は2に記載のクッション(58)。
【請求項19】
前記少なくとも1つの形状適合または高コンプライアンス領域の内端部が、前記顔面接触部分(90)の内縁から外側に間隔を空けて配置されている、請求項1又は2に記載のクッション(58)。
【請求項20】
前記少なくとも1つの形状適合または高コンプライアンス領域の外端部が、前記顔面接触部分(90)との外縁から内側に間隔を空けて配置されている、請求項1又は2に記載のクッション(58)。
【請求項21】
前記クッションが、前記使用者の鼻および/または口の周囲にシールを生成するようになされている、請求項1又は2に記載のクッション(58)。
【請求項22】
前記クッションが、前記クッションの下部に対して前記クッションの上部が前方に偏向されることができるように構成されている、請求項1または2に記載のクッション(58)。
【請求項23】
前記形状適合または高コンプライアンス領域(72)の外面は、前記形状適合または高コンプライアンス領域(72)が前記クッション(58)の残りの部分と同じ輪郭に実質的に従うような形状とすることができる請求項1又は2に記載のクッション(58)。
【請求項24】
前記形状適合または高コンプライアンス領域(72)の前記顔面接触部分及び前記クッション(58)の隣接するかもしくは周囲の部分の前記顔面接触部分は、連続的なまたは中断されない表面を画定する、請求項1又は2に記載のクッション(58)。
【請求項25】
前記形状適合または高コンプライアンス領域(72)の形状適合またはコンプライアンスは、少なくとも部分的に、前記クッション(58)の周囲のまたは隣接する部分に対して形状適合または高コンプライアンス領域(72)において異なる材料を使用する結果である、請求項1又は2に記載のクッション(58)。
【請求項26】
前記異なる材料は、前記クッション(58)の周囲のまたは隣接する領域の材料と比較して、より高い弾性または異なる弾性係数を有する、請求項25に記載のクッション(58)。
【請求項27】
請求項1~26のいずれか一項に記載のクッションを備える患者インターフェース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
任意の優先権出願に対する参照による援用
外国または国内の優先権の主張がなされるあらゆる出願は、参照により本明細書に組み込まれ、本開示の一部とされる。
【0002】
本開示は、概して、非侵襲的換気(NIV)で使用されるように意図されたものなどの呼吸マスクに関する。より詳細には、本開示は、NIVマスクまたは他のマスク用のシールまたはクッションであって、たとえば、経鼻胃(NG)チューブ、経鼻空腸(NJ)チューブおよび/または経口胃(OG)チューブ等のチューブと組み合わせて使用されるとき、マスクの封止機能を向上させるシールまたはクッションに関する。
【背景技術】
【0003】
NIVマスクは、一般に、薬剤の供給または送達のためにNG、NJおよび/またはOGチューブも必要な患者に使用される。従来、NIVマスクは、NG、NJおよび/またはOGチューブと組み合わせて使用されるように設計されておらず、したがって、こうした組合せが望まれる場合、NIV治療の効力が損なわれる可能性がある。
【0004】
従来のNIVマスクは、気密シールをもたらすために患者の顔面に形状が適合するシリコーンまたは熱可塑性エラストマー(TPE)シール/クッションを有している。これらのクッションは、一般に可撓性があるが、クッションが非常に小さい顔の造作に適合し得るほどではない。NG、NJおよび/またはOGチューブがNIVマスクと組み合わせて使用されることが望まれる状況では、通常、マスクはチューブの上部の上に配置される。チューブは、クッションを患者の顔面から離れるように持ち上げ、チューブの周囲に間隙をもたらし、それにより、シールが破損し漏れが発生することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
間隙を最小限にし、漏れを低減させるために、現在のところいくつかの技法が使用されている。これらの技法としては、患者に対してマスクをより堅く締め付けること、粘着パッドを用いてチューブとクッションと患者の顔面との間の間隙を充填すること、またはNG、NJおよび/もしくはOGチューブをマスクのポートに通すことが挙げられる。マスクを堅く締め付けることは、患者に不快である可能性があり、圧力関連の皮膚損傷に至る可能性がある。マスクの密な嵌合によってNG、NJおよび/またはOGチューブが変形する可能性があり、これによりチューブ内の閉塞がもたらされる可能性もあり得る。粘着パッドの使用により、NGチューブまたは他のチューブおよびマスクを適合させている臨床医に対して余分な作業がもたらされ、それは、粘着パッドが、適合および位置合わせしなければならない別の構成要素であるためである。さらに、チューブが大きすぎるかもしくは小さすぎる場合、またはチューブおよび/もしくはパッドが正しく位置合せされない場合、パッドは、間隙を有効に閉鎖できない可能性がある。NG、NJおよび/またはOGチューブをマスクのポートに通すことにより、シールにおいてチューブによってもたらされるいかなる破断もなくなるが、多くの場合、マスクを取り外すためにチューブを取り外す必要がある。NG、NJおよび/またはOGチューブを取り外して交換することは、患者に対して不快であり得るとともに、刺激をもたらす可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に記載するシステム、方法および装置は、革新的な態様を有し、そのうちのいずれも不可欠であることはなく、かつそれらの望ましい属性に対して単独で原因となることもない。請求項の範囲を限定することなく、有利な特徴のうちのいくつかについてここで要約する。
【0007】
実施形態のいくつかの特徴、態様および利点は、マスクと患者の顔面との間を通るNG、NJおよび/またはOGチューブに適応するように設計されたクッションを備える呼吸マスクを含む。クッションは、NG、NJおよび/またはOGチューブの形状に適合するように設計されている所定の薄肉領域を有し、その領域は、クッションと患者の顔面との間に本来もたらされる可能性がある、漏れをもたらす間隙を低減させるかまたは最小限にするのに役立つことができる。
【0008】
いくつかの構成では、呼吸マスク用のクッションは、顔面接触部分と、少なくとも部分的に顔面接触部分内にある少なくとも1つの薄肉領域とを含む。薄肉領域は、顔面接触部分と使用者の顔面との間のチューブの配置に適応するようになされている。
【0009】
いくつかの構成では、使用時、少なくとも1つの薄肉領域は、使用者の顔面と適切なシールを実質的に維持しながら、チューブの形状に適合するようになされている。
【0010】
いくつかの構成では、少なくとも1つの薄肉領域は、顔面接触部分の側部に配置されている。
【0011】
いくつかの構成では、少なくとも1つの薄肉領域は、顔面接触部分の各側部に薄肉領域を含む。
【0012】
いくつかの構成では、一方の側部の薄肉領域は、相対的に大きい薄肉領域であり、かつ他方の側部の薄肉領域は、相対的に小さい薄肉領域である。
【0013】
いくつかの構成では、少なくとも1つの薄肉領域は、顔面接触部分の一方の側部に2つ以上の薄肉領域を含む。いくつかの構成では、2つ以上の薄肉領域のうちの第1薄肉領域および第2薄肉領域は、互いから間隔を空けて配置されている。いくつかの構成では、第1薄肉領域および第2薄肉領域は、顔面接触部分の外周部に沿って間隔を空けて配置されている。いくつかの構成では、2つ以上の薄肉領域は、少なくとも1つの相対的に大きい薄肉領域と少なくとも1つの相対的に小さい薄肉領域とを含む。
【0014】
いくつかの構成では、記少なくとも1つの薄肉領域は、顔面接触部分の内縁から顔面接触部分の外縁に向かう方向に延在している。
【0015】
いくつかの構成では、少なくとも1つの薄肉領域は、内端部分から外端部分まで水平軸に対して下方に延在している。いくつかの構成では、少なくとも1つの薄肉領域は、約5度~約45度の角度で下方に延在している。
【0016】
いくつかの構成では、クッションは、少なくとも1つの薄肉領域と顔面接触部分の隣接部分との間に厚さの平滑な遷移部を含む。いくつかの構成では、遷移部は実質的に直線状である。
【0017】
いくつかの構成では、少なくとも1つの薄肉領域の厚さは、顔面接触部分の隣接部分の厚さの約5パーセント~約80パーセントである。いくつかの構成では、少なくとも1つの薄肉領域の厚さは、顔面接触部分の隣接部分の厚さの約10パーセント~約30パーセントである。
【0018】
いくつかの構成では、少なくとも1つの薄肉領域の端部は曲線状である。
【0019】
いくつかの構成では、少なくとも1つの薄肉領域の内端部は、顔面接触部分の内縁から外側に間隔を空けて配置されている。
【0020】
いくつかの構成では、少なくとも1つの薄肉領域の外端部は、顔面接触部分の外縁から内側に間隔を空けて配置されている。
【0021】
いくつかの構成では、チューブは栄養チューブである。
【0022】
いくつかの構成では、クッションは、チューブの適切な位置を示す視覚的位置合わせ指標をさらに備える。
【0023】
いくつかの構成では、患者インタフェースは、顔面接触部分と、少なくとも部分的に顔面接触部分内にある少なくとも1つの薄肉領域とを備えるクッションを含む。薄肉領域は、顔面接触部分と使用者の顔面との間のチューブの配置に適応するようになされている。
【0024】
いくつかの構成では、クッションは、使用者の鼻および/または口の周囲にシールを生成するようになされている。
【0025】
いくつかの構成では、クッションは、クッションの下部に対してクッションの上部が前方に偏向されることができるように構成されている。
【0026】
いくつかの構成では、ヘッドギアが、患者インタフェースを使用者の頭部に保持する。いくつかの構成では、フレーム部分がヘッドギアとインタフェースし、クッションはフレーム部分とインタフェースする。
【0027】
いくつかの構成では、クッションは、顔面接触部分を画定する相対的に軟質な部分と、相対的に軟質な部分から離れるように面する相対的に剛性な部分とを備える。
【0028】
いくつかの構成では、少なくとも1つの薄肉領域は、顔面接触部分の側部に配置されている。
【0029】
いくつかの構成では、少なくとも1つの薄肉領域は、顔面接触部分の各側部に薄肉領域を含む。
【0030】
いくつかの構成では、少なくとも1つの薄肉領域は、顔面接触部分の一方の側部に2つ以上の薄肉領域を含む。
【0031】
いくつかの構成では、少なくとも1つの薄肉領域は、内端部分から外端部分まで水平軸に対して下方に延在している。
【0032】
いくつかの構成では、クッションは、少なくとも1つの薄肉領域と顔面接触部分の隣接部分との間に厚さの平滑な遷移部を含む。
【0033】
いくつかの構成では、少なくとも1つの薄肉領域の厚さは、顔面接触部分の隣接部分の厚さの約5パーセント~約80パーセントである。いくつかの構成では、少なくとも1つの薄肉領域の厚さは、顔面接触部分の隣接部分の厚さの約10パーセント~約30パーセントである。
【0034】
いくつかの構成では、患者インタフェースは、チューブの適切な位置を示す視覚的位置合わせ指標を含む。
【0035】
図面を通して、参照要素間の全体的な対応を示すために参照番号を再使用する場合がある。図面は、本明細書に記載する実施形態例を示すために提供され、本開示の範囲を限定するようには意図されていない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】呼吸マスク(たとえば、NIVマスク)を着用している患者の図を示し、呼吸マスクは、下方にかつ患者から見てマスクの左下側から出るように延在するチューブ(たとえば、NGチューブ)と組み合わせて、本開示のいくつかの特徴、態様および利点に従って配置および構成されている。
図2】破線で示す標準的なマスクと比較してNGチューブに適合するかまたは形状が適合する図1のマスクのシールまたはクッションの輪郭図である。
図3】NGチューブが存在しない、図1のマスクのクッションの輪郭図である。
図4】クッションの薄肉領域の曲線的な輪郭を示す、図1のマスクの一部の斜視図である。
図5】クッションの薄肉領域の角度が付けられた向きを示す、図1のマスクの一部の背面図である。
図6】薄肉領域を含むクッションの一部を通って断面が描かれている図1のマスクの一部の背面図である。
図7図6の薄肉領域を含むクッションの断面部分の拡大図である。
図8図6の線8-8に沿った薄肉領域を含むクッションの部分の断面図である。
図9】平坦状態にある薄肉領域の形状の輪郭である。
図10】クッションの各側部の薄肉領域の対を示すマスクの背面図であり、同じ側部の薄肉領域はサイズが異なり、薄肉領域は側部の間で対称的である。
図11A-B】クッションに対するチューブの位置決めを容易にするためにタイプの異なる視覚的位置合わせ指標を有する2つの異なるマスクの部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
NG、NJおよび/またはOGチューブがNIVマスクと組み合わせて使用される状況では、望ましくない高い漏れ率が一般に発生する。漏れ率が高いことにより、患者が受ける治療の質が損なわれる可能性があり、漏れを改善するために現在使用されている方法により、望ましくない副作用がもたらされる可能性がある。開示する実施形態のいくつかの特徴、態様および利点は、これらの漏れに対処しかつそれを低減させる現在既知の手法に対する有用な代替物を提供しようとするものである。
【0038】
いくつかの実施形態のいくつかの特徴、態様および利点の以下の記述は、NGチューブと組み合わせて使用されるように設計および構成され、または使用されるようになされた呼吸マスクについて言及するが、マスクはまた、NJチューブ、NGチューブおよびNJチューブ両方(より一般的である)、またはNJチューブ、NGチューブもしくはOGチューブの任意の組合せと込み合わせて使用し得ることが理解されるべきである。呼吸マスクはまた、マスククッションまたはシールと患者の皮膚との間を通すことが望まれる他のタイプのチューブと使用されるか、使用されるようになされることができる。したがって、本明細書においてNGチューブについて言及する場合、それはまた、NJチューブ、OGチューブ、他のチューブ(たとえば、流体排出チューブ)またはNGチューブ、NJチューブ、OGチューブおよび他のチューブの任意の組合せも指すことができる。
【0039】
図示する呼吸マスクはNIVマスクであるが、本明細書に記載する特徴、態様および利点は、他のタイプのマスクに同様に適用することができる。本マスクのいくつかの特徴、態様および利点について、成人に治療を提供することに関して記載するが、本開示のいくつかの特徴、態様および利点を、限定されないが新生児、幼児および小児患者を含む、あらゆる年齢層に対する呼吸マスクに適用することも可能である。
【0040】
図1は、NGチューブ54と組み合わせて呼吸(たとえば、NIV)マスク52を着用している使用者または患者50を示す。図示するマスク52は、マスク本体またはインタフェース56を含み、それは、使用者の顔面に接触しかつ使用者の鼻および/または口を包囲するクッションまたはシール58を含む。インタフェース56はまた、インタフェース56を1つまたは複数のガス導管(図示せず)に接続するのを可能にする導管コネクタ60を含み、またはそれに接続されている。図示する構成では、導管コネクタ60は、エルボの形態である。インタフェース56にヘッドギア62が結合され、インタフェース56を患者の顔面の適所に保持する。
【0041】
インタフェース56、導管コネクタ60およびヘッドギア62は、多くの異なる形態をとることができる。たとえば、インタフェース56は、使用者の鼻のみを覆う鼻インタフェースであるか、または鼻および口の両方を覆うフルフェイスインタフェースであり得る。フルフェイスインタフェース56が図示されているが、本開示は、インタフェースクッションまたはシールと使用者の顔面との間にチューブを通すことが望まれる他のインタフェースタイプに適用することができる。インタフェース56は、額当てを含むことができ、または省略することができる。さらに、インタフェース56(いくつかの構成では、導管コネクタ60)は、一体型構造とすることができ、または図示するようにいくつかの構成要素のアセンブリとすることができる。図示するインタフェース56はクッションモジュール64を含み、クッションモジュール64は、いくつかの構成では、比較的剛性のあるハウジング66と比較的軟質のシール58とを含む。インタフェース56はまたフレーム68を含み、それは、クッションモジュール64を支持することができ、ヘッドギア62用の接続位置または係留位置を提供することができる。ヘッドギア62は、単ループ構成または多ループ構成を含む、任意の好適な構成であり得る。
【0042】
典型的には、NGチューブ54は、鼻から頬に向かって伸びマスク52の側部から出る。従来のマスクでは、図2において破線によって示すように、この構成により、マスクシールと使用者の顔面70の対応する面との間に間隙が形成されることになる可能性がある。従来のクッションは、可撓性があるが、クッションと使用者の顔面70との間の間隙を通る望ましくないほどの高い率でのガス漏れを防止するために必要な程度まで、チューブ54に形状に適合することができない。代わりに、クッションの比較的大きい長さが、使用者の顔面70から持ち上がり、チューブ54の上で湾曲して、チューブ54のいずれかの側に間隙を残し、そこに漏れが発生する可能性がある。一般に、NGチューブ54の直径が大きいほど、間隙のサイズが大きくなる。
【0043】
本実施形態のいくつかの特徴、態様および利点は、使用者の顔面70との適切なシールを生成または維持するために十分な程度までNGチューブ54に形状が適合することができる、形状適合または高コンプライアンス領域72を、マスククッション58に提供することにより、NGチューブ54が使用されるときにマスククッション58と使用者の顔面70の表面との間に形成される間隙を低減しようとするものである。形状適合または高コンプライアンス領域72は、クッション58の隣接するかまたは周囲の部分に対してクッション58の一部の形状適合性またはコンプライアンスを増大させる任意の好適な構成であり得る。本明細書に記載するように、形状適合または高コンプライアンス領域72は、他のあり得る構成の間で、薄肉化材料の領域または異なる材料の領域であるかまたはそれを含むことができる。
【0044】
好ましくは、形状適合または高コンプライアンス領域72により、本クッション58は、従来のマスククッションより、使用者の顔面70との優れたシールを生成または維持することができる。いくつかの構成では、本クッション58は、従来のクッションと比較して、クッション58と使用者の顔面70との間のガス漏れが少なく、NGチューブ54を収容することができる。いくつかの構成では、本クッション58は、クッション58と使用者の顔面70との間にガス漏れがないかもしくは実質的になく、または処方された治療に対して不利益であると考えられる率を下回るガス漏れで、NGチューブ54を収容することができる。いくつかの構成では、形状適合または高コンプライアンス領域72内でNGチューブ54を収容する本クッション58による漏れ率は、処方された(たとえば、NIV)治療に対する公称圧力または流量範囲で約25L/分以下である。いくつかの構成では、漏れ率は、約20L/分未満、約15L/分未満または約10L/分未満である。
【0045】
図2は、クッション58と使用者の顔面70との間を通るNGチューブ54の輪郭図を示す。形状適合または高コンプライアンス領域72が、クッション58の周囲のまたは隣接する部分よりコンプライアンスが高くかつ可撓性があるチューブ通路をもたらす。いくつかの構成では、形状適合または高コンプライアンス領域72は、クッション58の他のいかなる部分よりもコンプライアンスが高くかつ可撓性がある。図2は、形状適合または高コンプライアンス領域72がチューブ54の周囲でいかに伸張および変形し、それにより、チューブ54の側部における間隙が、特別に構成されたチューブ通路のないクッションよりはるかに小さくなるかを示す。間隙のサイズは、使用されているチューブサイズに大きく依存する。図2において、チューブ通路を含まない従来のマスククッションと同じ程度までNGチューブ54を収容するために、マスククッション58が、顔面70から持ち上がらないことが明らかである。
【0046】
NGチューブ54は、使用者の顔面70から離れる方向に延在する断面寸法または直径74を有している。好ましくは、形状適合または高コンプライアンス領域72により、クッション58は、使用者の顔面70に接触しないNGチューブ54の少なくとも実質的な部分に接触するかまたは形状が適合することができる。いくつかの構成では、形状適合または高コンプライアンス領域72により、クッション58は、使用者の顔面70とは反対側のNGチューブ54の面の少なくとも外側1/3 76と、接触し続けるかまたは形状が適合することができる。いくつかの構成では、形状適合または高コンプライアンス領域72により、クッション58は、NGチューブ54の表面の少なくとも外側1/2 78と接触し続けるかまたは形状が適合することができる。いくつかの構成では、形状適合または高コンプライアンス領域72により、クッション58は、NGチューブ54の表面の少なくとも外側2/3 80と接触し続けるかまたは形状が適合することができる。いくつかの構成では、形状適合または高コンプライアンス領域72により、クッション58は、使用者の顔面70と接触していないNGチューブ54の表面の実質的に全体と接触し続けるかまたは形状が適合することができる。
【0047】
図3は、NGチューブ54なしで使用されている図2のマスククッション58の輪郭図を示す。図3は、NGチューブ54が存在しないときに、形状適合または高コンプライアンス領域72が、使用者の皮膚70に大きく寄りかかりかつ接触することを示す。形状適合または高コンプライアンス領域72の外面は、形状適合または高コンプライアンス領域72または管通路が、マスククッション58の残りの部分と同じ輪郭に実質的に従うような形状とすることができる。こうした構成は、形状適合または高コンプライアンス領域72が患者の顔面70と封止するのに役立ち、それにより、好ましくは、NGチューブ54がない場合に形成される漏れ通路がごくわずかでしかなくなる。形状適合または高コンプライアンス領域72が、クッション58の残りの部分の形状に実質的に従うことが有益であり、それは、こうした構成により、マスク52が、本来可能であるより広範囲の使用者において使用されるのにより汎用性がありかつ好適なものとなるためである。たとえば、チューブと使用される必要とは無関係に、NIV治療が必要なあらゆる使用者または患者に対して、図示するマスク52を使用することができる。好ましくは、形状適合または高コンプライアンス領域72の患者に面するかもしくは接触する面、またはクッション58の隣接するかもしくは周囲の部分の接触面は、連続的なまたは中断されない表面を画定する。すなわち、好ましくは、形状適合または高コンプライアンス領域72内にまたはそれに隣接して、患者に面するかまたは接触する面において切れ目または他の中断はない。
【0048】
いくつかの構成では、クッション58の外面にわずかな段があり得る。わずかな段は、意図的であるか、または形状適合または高コンプライアンス領域72を生成するために使用された材料、構成または製造プロセスの結果であり得る。段は、発生する漏れが最小限であるように十分小さくすることができる。形状適合または高コンプライアンス領域72は、膨張部分が、表面の段が本来もたらす可能性があるいかなる間隙も充填するように、治療によって加えられる空気圧下で膨張するのに十分な可撓性があり得る。
【0049】
上述したように、形状適合または高コンプライアンス領域72は、チューブ54またはマスク56と使用するように意図されたチューブのタイプまたはサイズに対して適合性を提供する任意の好適な構成であり得る。いくつかの構成では、形状適合または高コンプライアンス領域72は、クッション58の周囲のまたは隣接する部分より実質的に形状適合性またはコンプライアンスが高い。いくつかの構成では、形状適合またはコンプライアンスの増大は、少なくとも部分的に、クッション58の周囲のまたは隣接する部分に対して形状適合または高コンプライアンス領域72において異なる材料を使用する結果である。たとえば、形状適合またはコンプライアンスの増大は、より弾性があり可撓性がある材料を局所的に使用することによって達成することができる。異なる材料は、クッション58の周囲のまたは隣接する領域の材料と比較して、より高い弾性または異なる弾性係数を有することができる。材料は、たとえば限定なしに、より硬質なまたはより可撓性のあるTPEである、異なるグレードのシリコーンを含むことができる。いくつかの構成では、異なる材料はまた、クッション58の周囲のまたは隣接する領域の材料と比較して異なる厚さ(たとえば、より小さい厚さ)を有することも可能である。クッション58の周囲のまたは隣接する領域の材料に、たとえば限定なしに、接着剤または化学結合または共成形またはオーバモールドプロセスを含むことができる、任意の好適なプロセス、または他の任意の好適な方法によって、異なる材料を結合することができる。形状適合または高コンプライアンス領域72に対して異なる材料が利用される構成では、異なる材料は、形状適合または高コンプライアンス領域72を越えて延在することができる。たとえば、こうした構成は、2つの材料を互いに接合するためにより広い表面積の部分的重なりを提供することができる。
【0050】
いくつかの構成では、形状適合または高コンプライアンス領域72は、薄肉化材料の領域であるかまたはそれを含む。図4図8の図示する構成では、形状適合または高コンプライアンス領域72は、クッション58の周囲のまたは隣接する領域の材料と同じ材料である薄肉化材料の領域を含む。したがって、薄肉化材料の領域は、クッション58の周囲のまたは隣接する領域と一体的に形成することができる。以降、形状適合または高コンプライアンス領域72を、薄肉領域または薄肉化領域と呼ぶことにする。しかしながら、形状適合または高コンプライアンス領域72に対する代替構造を考慮すると、このように薄肉領域と呼ぶ場合、それはまた、概して、他のタイプの形状適合または高コンプライアンス領域も同様に含むことができる。形状適合または高コンプライアンス領域72は、クッション58と使用者の顔面70との間のNGチューブ54または他のチューブの通過に適応する1つまたは複数のチューブ通路を画定することができ、したがって、本明細書ではチューブ通路と呼ぶことも可能である。いくつかの構成では、1つまたは複数のチューブ通路72は、クッション58の隣接する部分より薄いように形成される。いくつかの構成では、1つまたは複数のチューブ通路72は、クッション58の他のいかなる部分よりも薄いように形成される。
【0051】
図4図8は、マスク52の他の部分とは別個のクッションモジュール64を示す。上述したように、クッションモジュール64は、ハウジング66およびシールまたはクッション58を備えている。図示する構成では、シール58の形状適合または高コンプライアンス領域72は、薄肉領域であるかまたはそれを含む。好ましくは、薄肉領域72は、シール壁によって画定され、その薄肉領域72は、クッション58の周囲の、隣接するまたは他の部分に対してチューブ54により形状が適合することができる。クッション58は、概して、患者顔面接触部分または面90と、顔面接触部90の前方の部分または面92とを有している。顔面接触部分90は、概して、後方に面しており、使用者の顔面70と接触する。顔面接触部分90は、使用者の顔面70と接触するように配置されると変形することができ、後方に面する部分の全体が、すべての使用者の顔面とは、またはすべての状況もしくは治療の下で接触しない可能性がある。図示する構成では、クッション58の上部をクッション58の下部に対して前方に偏向させることにより、あり得る使用者の鼻形状のばらつきにより適合することができる。こうした構成の例は、本出願人のPCT出願国際公開第2014/062070号パンフレットに開示されており、その内容全体は、参照により本明細書に組み込まれ、本開示の一部とされる。クッション58は、たとえば限定なしに、シリコーンまたはTPE等の1種または複数種の概して可撓性がある材料から作製することができる。
【0052】
図4および図5において、クッション58の外面に輪郭図によって、薄肉領域72の位置を示す。しかしながら、好ましくは、薄肉領域72は、図6図8に示すように、クッション58の内面によって画定された凹部94によって画定される。薄肉領域72の形状は、マスク52とともに使用されるように意図されたチューブのサイズまたは形状に一致するように構成されるかまたはなされ得る。いくつかの構成では、薄肉領域72は、クッション58の顔面接触部分90内に少なくとも部分的にまたは完全に配置することができる。図5を参照すると、薄肉領域72は、顔面接触部分90の内縁96から顔面接触部分90の外縁98に向かう方向において概して延在している。いくつかの構成では、薄肉領域72は、内縁96および外縁98の一方または両方から間隔を空けて配置することができる。いくつかの構成では、図4に示すように、薄肉領域72は、顔面接触部分90の外縁98を越えて、クッション58の前方部分92内に延在することができる。
【0053】
いくつかの構成では、薄肉領域72は、クッション58またはクッションモジュール64の水平軸100に対して角度が付けられている。垂直軸102が、クッション58またはクッションモジュール64を垂直方向に二分することができ、水平軸100は、垂直軸102に対して垂直であり、クッション58またはクッションモジュール64の横方向に延在している。薄肉領域72の軸104および水平軸100は、それらの間に、約5度~約45度、または望ましい場合はそれより大きい角度を画定することができる。一構成では、軸104と水平軸100との間の角度は約20度である。図示する構成では、中心線または垂直軸102に近い方の薄肉領域72の内端106は、中心線または垂直軸102から遠い方の薄肉領域72の外端108より高い。こうした構成は、図1に示すようなNGチューブ54の典型的な通路に対応する。しかしながら、必要に応じて他の用途に適合するように薄肉領域72を他の向きで提供することができる。たとえば、経口胃(OG)チューブが、約0度でまたは概して水平軸100に沿ってクッション58を通って延在することができる。したがって、特定のチューブ、チューブの向きまたは他の関連要素を考慮して、必要に応じて薄肉領域72の所定の向きを選択することができる。
【0054】
薄肉領域72は、マスク52と使用されるように意図されたチューブのサイズまたは形状に適合するように構成されるかまたはなされるような任意の好適なサイズまたは形状を有することができる。図示する構成では、薄肉領域72は、内端106と外端108との間に延在する実質的に直線状の側縁110および112を画定している。側縁110および112は、互いに実質的に平行であり得る。軸104は、側縁110、112に対して平行かつそこから等距離の線として定義することができる。いくつかの構成では、内端106および外端108の一方または両方は、図4および図5に示すように、曲線的なまたは実質的に半円形輪郭を有することができる。この形状により、クッション58の相対的に厚い側壁構造がNGチューブ54の円周まで突出し、薄肉領域72が相対的に厚い側壁とチューブ54との間で変形することになる。クッション58を患者の顔面70から離れるように著しく持ち上げることなくマスク52が使用されるように意図されるかまたは認められるNGチューブ54にわたって、変形しかつ伸張するのに十分なだけ薄肉領域72を薄くすることができる。いくつかの構成では、持上りは発生しないかまたは実質的に発生しない。形状適合領域72の端部106、108の曲線状の形状により、NGチューブ54が、クッション58の壁部分に隣接する相対的に厚い部分によって変形するかまたは圧迫される可能性を最小限にすることができる。
【0055】
図6図8は、クッション58の薄肉形状適合領域72の断面図を示す。図示する構成では、クッション58の内面は、外面が実質的に変化しないままであり得る一方で、相対的に厚い壁部分から相対的に薄くかつより形状適合する部分72まで縮小するかまたは徐々に下がって、内側凹部94を画定することができる。換言すれば、外面は、薄肉領域72とクッション58の隣接するかまたは周囲の部分との間で連続的であり中断されない。しかしながら、いくつかの構成では、外面が、内側凹部94に加えてまたはその代わりに凹部を含むことができ、チューブ54がない場合に使用者の顔面70とシールを形成するために、内部ガス圧の結果としての膨張に依存することができる。
【0056】
凹部94は、軸104に沿った方向に長さ114を画定し、軸104に対して垂直な方向に高さ116を画定することができる。典型的なまたは予測された動作条件下で使用者の顔面70と接触する可能性がある顔面接触部分90の長さに沿って延在するように、長さ114を選択することができる。いくつかの構成では、長さ114は、約15mm~約20mmである。長さ114は、クッション58のサイズによって変化することができ、または異なるサイズのクッション58間で一定のままであり得る。たとえば、長さ114は、小型のクッション58の約15.5mmから、大型のクッション58の場合の約19mmまたは19.3mmまで変化することができる。マスク52が使用されるように設計されるかまたは意図されるチューブの直径または断面寸法と適応するように、高さ116を選択することができる。いくつかの構成では、高さ116は、マスク52が使用されるように設計されるかまたは意図される最大チューブサイズの直径より幾分か大きいように、実質的に等しい。いくつかの構成では、高さ116は、約5mm~約15mmであるか、または約10mm~12mmである。高さ116は、超小型クッションの場合の約9mm、小型および中間クッションの場合の約10mmおよび大型クッションの場合の約11mm等、クッション58のサイズによって変化することができる。別法として、高さ116は、クッションサイズ間で一定のままであり得る。
【0057】
薄肉領域72は、薄肉領域72に隣接するかまたはそれを包囲するクッション58の部分の肉厚120より小さい肉厚118を画定する。好ましくは、薄肉領域72の肉厚118は、肉厚120より小さい。いくつかの構成では、肉厚118は、肉厚120の約5パーセント~約80パーセント、または約10パーセント~約30パーセントである。いくつかの構成では、肉厚118は、約70パーセント~約95パーセント、または約80パーセント~約90パーセントの肉厚120に対する厚さの低減を表す。たとえば、いくつかの構成では、肉厚120は、約1.49mmまたは1.5mmとすることができ、肉厚118は、約0.1mm~約0.5mm、または約0.15mm~約0.3mmとすることができる。いくつかの構成では、肉厚118は約0.3mmである。凹部94内の肉厚118は、実質的に一定である(凹部94とクッション58の周囲のまたは隣接する部分との間の遷移部分を含まない)として示されている。しかしながら、他の構成では、肉厚118は凹部94内で変化することができる。
【0058】
クッション58は、薄肉領域72の高さおよび薄肉領域72の外端108の位置において患者接触部分90の最後方点から前後方向に、深さ121(図8)を定義することができる。十分な高さ121があることは、クッション58が、NGチューブ54が適所にあって使用者の顔面70と接触し続けるのに役立つことができる。しかしながら、好ましくは、深さ121は大きすぎず、すなわち、薄肉領域72は、クッション58の不要な脆弱化を回避するように、クッション58の前方部分92に向かってまたはその中に極端に延在しない。マスク52が使用されるように設計され、意図されまたは認められるチューブ54のサイズに、深さ121を関連付けることができる。いくつかの構成では、深さ121は、約10mm~約20mm、または約15mm~約18mmである。深さ121は、超小型クッションの場合の約14mmもしくは14.3mm、中型クッションの場合の約15.7mmもしくは約16mm、または大型クッションの場合の約17.8mmもしくは18mm等、クッション58のサイズによって変化することができる。別法として、深さ121は、クッションサイズ間で一定のままであり得る。
【0059】
いくつかの構成では、凹部94とクッション58の隣接するかまたは周囲の部分との間の厚さの遷移部は、比較的急峻であり得る。急峻な遷移部により、チューブによってもたらされる可能性がある変形を、クッション58の相対的に薄肉の領域72に制限する、折曲げ点を生成することができる。相対的に薄肉の領域72は、相対的に厚い壁部分に遭遇するまで、変形し、伸張し、かつ/または塊になることができ、それにより、それ以上の変形を制限することができる。他の構成では、図7において凹部94の縁における破線によって示すように、厚さの遷移部はそれほど急峻でない場合もある。たとえば、製造可能性の理由等、他の理由で、平滑なまたはそれほど急峻ではない遷移部が好ましい場合がある。好ましくは、遷移部は、凹部94から比較的小さい距離、または凹部94を包囲する比較的小さい領域に限定される。たとえば、遷移部は、実質的に直線状とすることができ、かつ/または薄肉領域72を有する成形されたクッション58の金型からの実際的な取外しを可能にするのに十分な角度であり得る。いくつかの構成では、遷移領域は、好ましくは、薄肉領域72の幅または長さ以下の距離、薄肉領域72から離れて延在し、好ましくは、薄肉領域72の幅または長さ一部以下(たとえば、薄肉領域72の幅または長さの1/2、1/3または1/4未満)、延在する。
【0060】
図9は、平坦化状態にある凹部または薄肉領域72の輪郭の一例を示す。実際には、マスククッションの多くの患者接触面は横方向および/または垂直方向において湾曲しているため、薄肉領域72は、形状が湾曲しているかまたは3次元である可能性がある。図9において、薄肉領域72の各端部106、108は、それぞれの中心122を中心とする半円形の形状である。したがって、中心122間の距離124に各端部106、108の半径を合計したものは、薄肉領域72の長さ114全体に等しい。図示する薄肉領域72では、側縁110、112は、互いに平行であり、各端部106、108は半径が等しい。しかしながら、他の構成では、薄肉領域72は他の好適な形状を有することができる。
【0061】
図10に示すもの等、いくつかの構成では、形状適合薄肉領域またはチューブ通路72を、複数の位置に設けることができる。図10は、2つのチューブ通路72が、クッション58の外周部に沿って互いから間隔が空けられ、マスク52の各側に対称的に配置されている、クッション58の背面図を示す。マスク52の各側に通路72があることにより、NGチューブ54を患者の顔面70のいずれの側にも固定することができる。鼻腔内の刺激および組織損傷を低減させるために、患者の鼻孔間でNGチューブ54を交互に使用することは一般に行われている。マスク52に対称的なチューブ通路72があることにより、臨床医が、NGチューブ54が固定される側を変更し、同じマスク52を使用し続けることができる。こうした構成により、器具の無駄な損失が低減し、臨床医に対する作業を低減させることができる。さらに、両側にチューブ通路72があることにより、NGチューブ54およびNJチューブの両方が同時に使用されるときに、クッション58を封止することができる。
【0062】
図10にまた、2つの異なるチューブ通路72サイズも示す。NGチューブ54には種々のサイズのものがあるため、チューブ通路72が任意のサイズまたは少なくとも一般に使用されるサイズに適合することができることが有益である。少なくとも許容可能な漏れ率性能でより広範囲のチューブ径をカバーするために、マスク52に2つ以上の通路サイズがあることが望ましい場合がある。チューブがチューブ通路72に対して小さすぎる場合、クッション58の相対的に厚い壁部分は、薄肉領域72の変形を適切に制限することができない可能性があり、間隙が形成される可能性があり、この間隙によって漏れがもたらされる可能性がある。チューブ通路72のサイズを、ある一定の範囲のチューブ径に適合するように定義することができる。上述したように、チューブ通路72の丸い/円形輪郭は、概してチューブ径に相関しまたは一致することが望ましい。チューブ通路72をチューブ54に厳密に一致させるかまたは概して相関させることにより、相対的に厚い壁部分によって、薄肉領域72は強制的にチューブ54の周囲に形状が適合することができる。
【0063】
チューブ通路72が多すぎるかまたはチューブ通路72が大きすぎないことが好ましく、それは、それらによってクッション58の構造的完全性が低下する可能性があるためである。クッション58の相対的に厚い壁部分を、マスク52に対して構造および支持を提供するように設計することができる。クッション58に、マスク52が患者50に締め付けられているときに、クッション58がつぶれる可能性を低減させるかまたはなくす構造を設けることができる。クッション58がつぶれると、漏れが発生する可能性があり、剛性プラスチックのマスクフレーム68が患者の顔面70に押し付けられて、不快をもたらす可能性がある。したがって、クッション58の構造が損なわれる可能性が低くなるように、チューブ通路72の数およびサイズを制限することができる。クッション58は、たとえば図10に示すチューブ通路72のうちの任意の1つまたは任意の組合せを含むことができる。いくつかの構成では、クッション58は、一方の側に単一のチューブ通路72を含むか、各側に単一のチューブ通路72を含むことができる。各側に少なくとも1つのチューブ通路72がある構成では、チューブ通路72は、同じサイズを有するかまたは異なるサイズを有することができる。たとえば、クッション58は、一方の側に相対的に小さいチューブ通路72、他方の側に相対的に大きいチューブ通路72を含むことができる。いくつかの構成では、クッション58は、各側に小さいチューブ通路72および大きいチューブ通路72を含む。
【0064】
典型的には、NGチューブ54は、患者の鼻の下側から患者の唇を横切り、頬を横切って出るように伸びる。チューブ54は、通常、テープを用いて鼻に固定される。1つまたは複数のチューブ通路72は、好ましくは、臨床医による使用が容易であるようにおよそ従来の位置で患者50にチューブ54を固定することができるように、患者の鼻の下面とおよそ整列するかまたは幾分か低いように、クッション58に配置される。圧迫創の発生を最小限にするために、頬骨の下方の任意の場所で、患者の頬の軟質部分の上にチューブ54が配置されることが有益であり得る。チューブ通路72をクッション58の上にこのように配置することにより、臨床医は、NGチューブ54を適合させかつ固定する従来の技法を使用し続けることができる。いくつかの構成では、クッション58の下半分またはクッション58の下1/3に、チューブ通路72が配置される。フルフェイスクッション58の最も広い箇所に、その近くにまたはその幾分か上方に、チューブ通路72を配置することができる。いくつかの構成では、チューブ通路72は、クッション58の内縁の最下点の上方に間隔を空けて配置される。
【0065】
図11Aおよび図11Bは、視覚的位置合わせ指標130を有するマスク52のクッションモジュール64の実施形態を示す。指標130は、臨床医に、患者の顔面70のNGチューブ54の上部の上にマスク52を位置合わせする視覚的手掛りを提供するように意図されている。図示するマスク52が有効に作用するために、NGチューブ54がマスククッション58の上のチューブ通路72に対して正確に位置合わせされることが望ましい。正しく位置合わせされないことにより、漏れ率が増大する可能性がある。位置合わせ指標130は、NGチューブ通路72の方向を指す矢印またはラベルの形態であり得る。指標130を、チューブ通路72に近接して、図11Aに示すようにクッション58の上に配置することができ、または図11Bに示すようにマスク本体(たとえば、ハウジング66またはフレーム68)の上に配置することができる。マスク52の上に指標130を形成するために、エンボス加工、印刷、レーザエッチイング、成形または他のマーキング技法を使用することができる。
【0066】
文脈において明示的な別段の要求がない限り、本明細書および特許請求の範囲を通して、「備える」、「備えている」等の語は、排他的なまたは網羅的な意味とは対照的に包含的な意味で、すなわち、「含むが、それに限定されない」という意味で解釈されるべきである。特に、「できる」、「可能性がある」、「あり得る」、「場合がある」、「たとえば」等、本明細書で用いる条件付きの文言は、別段明確な定めがない限り、または使用されている文脈内で他の意味に理解されない限り、概して、いくつかの実施形態は、いくつかの特徴、要素および/または状態を含むが、他の実施形態は含まないことを示唆するように意図されている。したがって、こうした条件付きの文言は、概して、特徴または要素が1つまたは複数の実施形態に対して必ず必要であることを示唆するようには意図されていない。
【0067】
「複数」という用語は、項目が2つ以上であることを指す。「約」または「およそ」という用語は、量、寸法、サイズ、配合、パラメータ、形状および他の特徴が、正確である必要はなく、必要に応じて許容可能な公差、変換係数、丸め、測定誤差等、および当業者に既知である他の要素を反映して、近似されかつ/またはより大きいかもしくは小さい可能性があることを意味する。「実質的に」という用語は、列挙される特徴、パラメータまたは値が正確に達成される必要はなく、たとえば、公差、測定誤差、測定精度限界および当業者に既知である他の要素を含む偏差または変動が、その特性が提供するように意図された効果を排除しない量で発生する可能性があることを意味する。
【0068】
本明細書では、数値データを範囲形式で表現しまたは提示している場合がある。こうした範囲形式は、単に便宜上および簡潔にするために使用されており、したがって、範囲の上下限として明示的に列挙される数値を含むように柔軟に解釈されるだけでなく、その範囲内に包含される個々の数値または下位範囲のすべてを、各数値および下位範囲が明示的に列挙されているかのように含むように解釈されるべきである。例示として、「約1~5」という数値範囲は、約1~約5の明示的に列挙した値のみを含むように解釈されるのではなく、示された範囲内の個々の値および下位範囲も含むように解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、2、3および4等の個々の値と、「約1~約3」、「約2~約4」および「約3~約5」、「1~3」、「2~4」、「3~5」等の下位範囲とが含まれる。この同じ原理は、1つの数値のみを列挙する範囲(たとえば、「1より大きい」)に適用され、範囲の広さまたは記載されている特徴に関わらず適用されるべきである。
【0069】
便宜上、複数の項目を共通のリストに提示している場合がある。しかしながら、これらのリストは、リストの各要素が別個のかつ一意の部材として個々に識別されるかのように解釈されるべきである。したがって、こうしたリストのいかなる個々の要素も、反対であるという指示なしに共通のグループに提示されているということのみに基づいて、同じリストの他のあらゆる要素の事実上の均等物であるものとして解釈されるべきではない。さらに、「および」および「または」という用語は、項目のリストとともに使用される場合、列挙された綱目のうちの任意の1つまたは複数を単独でまたは他の列挙された綱目と組合せて使用することができるという点で、広く解釈されるべきである。「別法として」という用語は、2つ以上の選択肢のうちの1つの選択を指し、文脈において明確な別段の指示がない限り、列挙された選択肢のみ、または列挙された選択肢のうちの1つのみに選択を限定するようには意図されていない。
【0070】
本明細書においていかなる従来技術に対する言及も、その従来技術が、世界のいかなる国においても努力傾注分野において共通の一般知識の一部を形成すると認めることまたはいかなる形態のそのような示唆でもなく、かつそのようなものとして解釈されるべきではない。
【0071】
上述した記載において、既知の均等物を有する完全体または構成要素について言及している場合、それらの完全体は、個々に示されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0072】
本発明は、広義には、本出願の明細書において個々にまたは集合的に言及されるかまたは示される部品、要素および特徴と、前記部品、要素または特徴のうちの2つ以上のあらゆる組合せとにあると言うことも可能である。
【0073】
本明細書に記載する現在のところ好ましい実施形態に対するさまざまな変形形態および変更形態が、当業者に明らかになるであろうことは留意すべきである。こうした変形形態および変更形態は、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、かつその付随する利点を低減させることなくなし得る。たとえば、さまざまな構成要素は、必要に応じて位置を変えることができる。したがって、こうした変形形態および変更形態は本発明の範囲内に含まれることが意図されている。さらに、本発明を実施するために、特徴、態様および利点のすべてが必ずしも必要であるとは限らない。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲によってのみ定義されるように意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A-B】