(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】溶射された中間層を用いた溶接できない金属の抵抗溶接
(51)【国際特許分類】
B23K 11/20 20060101AFI20230412BHJP
B23K 11/34 20060101ALI20230412BHJP
B23K 11/11 20060101ALI20230412BHJP
B23K 11/14 20060101ALI20230412BHJP
B23K 11/06 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
B23K11/20
B23K11/34
B23K11/11
B23K11/14
B23K11/06
(21)【出願番号】P 2019546234
(86)(22)【出願日】2018-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2018053892
(87)【国際公開番号】W WO2018153785
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2021-02-02
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591064047
【氏名又は名称】オウトクンプ オサケイティオ ユルキネン
【氏名又は名称原語表記】OUTOKUMPU OYJ
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】デムケス, クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンドゲン, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】リンドナー, シュテファン
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-090093(JP,A)
【文献】特開平06-007952(JP,A)
【文献】国際公開第2015/190325(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/146511(WO,A1)
【文献】特開2006-175502(JP,A)
【文献】特開平07-024581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/20
B23K 11/34
B23K 11/11
B23K 11/14
B23K 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直接溶接できない少なくとも2つの材料を、重ね継手構造において
抵抗溶接で接合する方法であって、
鋼の基材(1)の表面に溶射法によりアルミニウムの表面保護層を形成する第1のステップと、
抵抗溶接プロセスを用いて、材料構成全体に脆弱な金属間化合物相を有さずに、前記表面保護層(2)を、加えられたアルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム又はマグネシウム合金の薄板(3)に溶接する第2のステップと
からなる一連の2ステップが用いられ、前記基材(1)と前記表面保護層の接触領域の温度は350℃未満であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記表面保護層が、熱機械的コーティング法により形成されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記表面保護層(2)が、アルミニウム、アルミニウム基合金、又はアルミニウムと炭化物の組み合わせであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記表面保護層(2)が、溶接接合、スポット溶接、プロジェクション溶接又はローラーシーム溶接などの抵抗溶接法により、加えられた前記薄板(3)と溶接されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
スポット溶接(4)の到達直径に対する前記表面保護層(2)の厚さの比が、0.25mm以下であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
基材(1)、表面保護層(2)、及び加えられる薄板(3)を含む全体の板厚が、1.5mmから6.0mmであることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記表面保護層(2)の厚さが、0.25から1.5mmまでであることを特徴とする、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
溶射を受ける前記基材(1)が、0.65%を超える炭素当量(CEV)を有する炭素鋼であり、CEVが式(重量%による元素含有量)
CEV=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5
を用いて計算されることを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
溶射を受ける前記基材(1)が、炭素鋼材料、好ましくは亜鉛メッキの表面コーティングを備えた炭素鋼であることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
溶射を受ける前記基材(1)が、ステンレス鋼であることを特徴とする、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記基材(1)の表面が、洗浄及びブラストにより前処理されることを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(ステンレス)鋼の表面に特定の厚さ、表面粗さ及び遷移抵抗を有するアルミニウム溶射層を形成することにより、アルミニウムと(ステンレス)鋼のような溶接できない金属の組み合わせを抵抗溶接可能にすることに関する。次に、第2のステップで抵抗(スポット)溶接プロセスが続く。用いられる溶接パラメータは、アルミニウム層と(ステンレス)鋼の間に脆い金属間化合物相を有することなく、アルミニウム同士の接触領域のみが溶けるように選択されなくてはならない。
【背景技術】
【0002】
抵抗溶接は、金属製造産業で最もよく用いられる溶接手段の1つである。抵抗溶接は、溶接された白物家電、燃料タンク、自動車、鉄道又はトラックの車体構造を得るために、例えばスポット溶接、ローラーシーム溶接、プロジェクション溶接、又は溶接接合によって行われることができる。しかし、熱間成形されたマルテンサイト系ステンレス鋼や2つ及び3つの接合材の組み合わせなどの、抵抗溶接プロセスで溶接性を有しない多くの材料がある。これらの材料には、材料に機械的なはんだ付け又はろう付け蓄積を作成するいくつかの考えがある。しかし、これらの機械的なはんだ付け又はろう付け蓄積は、材料と機械的なはんだ付け又はろう付け蓄積との間の良好な結合を有するために又は良好な閉鎖を形成するために、材料の変形及び/又は切断を必要とする。更に材料を従来の抵抗溶接プロセスで処理すると、溶接部は通常は結果として冷間割れの脆性破壊挙動となり、したがって強度レベルが低くなり、動力伝達が低くなる。
【0003】
自動車の車体エンジニアリング産業全体が、異材接合部を用いたマルチマテリアル設計で(ステンレス)鋼とアルミニウムなどの異種の金属を使用することを望んでいる。最先端の利用可能な熱溶接方法はなく、接着と機械的接合のみが使用できる。従来の溶接方法では、アルミニウムと(ステンレス)鋼の間に脆い金属間化合物相が生じる。本発明により、安価で速いサイクル時間の抵抗スポット溶接を使用することができる。更に、(接触)耐食性を高めることができる。本発明により、同種のアルミニウムの接合部のような接合力が、異種の組み合わせについて達成されることができる。
【0004】
特許文献1は、2つの接合部間の電気抵抗溶接及び処置による最新の永久接続により、第1の接合パートナーと第2の接合パートナーを接合する方法に関する。目的は、接合補助及び溶接プロセスを使用して、第1の接合パートナーと第2の接合パートナーを接合する別の方法を提供することであり、特に少なくとも一方が酸化物層を含む接合する異種の部品、特に異種の接合パートナーを追加する方法を提供することである。
【0005】
特許文献2は、防食のための溶射、例えばアルミニウム溶射に関する。一実施形態では、第2の金属部と組み合わせられる第1の金属部と、第1及び第2の部分の間の接合部と、防食層と、少なくとも一部の接合部カバーとを含む耐食アセンブリが提供され、ここで防食層はアルミニウム又は亜鉛である。
【0006】
特許文献3は、少なくとも2つの要素を接合する方法に関するものであり、プロセス及び生産の技術的に簡単な方法で、2つの要素の信頼できる接続が可能である。溶接ナゲットは、接合補助部材と第2の要素(鋼)の内側との間で中心に形成される。これにより、偏心材料固定接続の欠点、並びに不良なレンズ形成、接合補助要素の傾き、細孔及び空隙の形成、及び同位体強度特性が減少する。材料の厚さを超えるドームの直径は、要素のヘッドの直径よりも小さく、2つの要素間にまだ許容される間隙が得られるような高さの大きさにのみにされることができる。
【0007】
特許文献4は、電気泳動槽で最終的に下塗り又は塗装された2つの剛性の鋼板部品をスポット溶接するプロセスに関するものであり、溶接位置で鋼板間に小片、好ましくは低炭素鉄などの溶接しやすい金属の小片を配置することを含む。この方法は、高張力鋼で作られた2つの板金部品をスポット溶接し、次いでこれを電気泳動槽で塗装するか、又は塗装する。
【0008】
特許文献5は、要素、特に金属材料で作られた板金部品の抵抗加熱又は誘導加熱によるスポット溶接又ははんだ付けの方法、並びに補助部材の接合を行う特定の方法に関する。抵抗加熱又は誘導加熱を使用したスポット溶接又ははんだ付けのプロセスは、溶接又ははんだ付けされる要素間に挿入された接合補助要素の選択された断面形状に応じて、電流強度と接合力の制御された変更によって熱導入を決定することを含む。
【0009】
特許文献6及び特許文献7は、部品を接合する方法、接合要素、及び部品を接合するための部品に関する。接合要素により、2つ以上の接合部品、特に金属板及び/又はプラスチック板が1つに接合される。要素を結合する際にリベット又はボルトを供給することができる。接合される要素には、開口部、特に接合要素を挿入できる孔が設けられる。部品を互いに配置し、接合要素のはんだ付けによって接合する。有利には、従来の溶接として従来の溶接ガンが使用されることができるが、はんだ付けのために必要な熱入力は溶接に比べて著しく小さい。
【0010】
特許文献8は、特に複合材全体の最終製造前に部分的な複合材とする2つ以上の要素の簡単な事前の固定により、製造がより容易な3つ以上の要素の複合材、及び異なる材料の要素を組み合わせる方法に関する。改良された複合材要素の第1成分は、第2成分及び第3成分を可能にするように実施され、補助接合手段の提供は補助接合によって2つの成分の1つの複合材の部分を製造し、接合補助による要素の2つの貫通と、要素の2つと接合具の間の積極的及び/又は非積極的接続と、部分的な複合材を貫通する接合補助の残りの1つの要素への加圧溶接による接合を備える。
【0011】
特許文献9は、平らな材料要素から形成された3つ以上の物を接合するための抵抗要素溶接用のセルフパンチング締結要素に関する。上述のタイプのセルフピアス締結要素は、3つ以上の構成要素の接合に適しており、これらの構成要素の少なくとも1つは、非塑性変形材料から形成されることもできる。
【0012】
特許文献10は、鋼、特に熱成形された高強度鋼の板金部品と、アルミニウムの少なくとも1つの板金要素との間に少なくとも与えられる接合部を製造する方法に関する。この方法は、安全な輸送を確保するために、最初にはんだ付着物を板金部品の1つにアーク又はレーザー加工で固定し、次にはんだ付着物が配置された板金部品と板金要素の間にはんだ付着物を配置し、鋼の板金部品とはんだ付着物の間及びアルミニウムの板金要素とはんだ付着物の間に溶接若しくははんだ付けが形成されるようにして、接合部の領域において電流を印加して圧縮力を適用するか又は誘導加熱によって加熱されることによる。
【0013】
特許文献11は、突合せ継手構造を使用して溶接シームをV字形の突合せ継手に溶射する方法に関する。溶射材料は同時に溶接シームである。
【0014】
特許文献12は、摩擦攪拌溶接法を記載している。この溶接法では、特殊な冶金を生成するために2つの金属の間に粉末を軽く塗布して、例えばアルミニウム合金を硬化させる。
【0015】
最先端の技術では、(ステンレス)鋼へのアルミニウムのような異種金属の組み合わせを接合する溶接方法はなく、接着又は機械的接合(両方とも低動力伝達)のみが機能する。従来の(抵抗)溶接では、溶接接触領域が溶けて、350℃を超える温度領域でFeAI3及びFe2AI5の脆い金属間化合物相を生じる。
【0016】
車体エンジニアリングについてマルチマテリアル設計を増やす過程で、製造業はアルミニウムと(ステンレス)鋼を同時に使用している。抵抗スポット溶接は、車体エンジニアリングで主に用いられる接合方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】欧州特許出願公開第2679328号明細書
【文献】ドイツ国特許出願公開第102016106756号明細書
【文献】ドイツ国特許出願公開第102014011599号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1582283号明細書
【文献】ドイツ国特許出願公開第10251414号明細書
【文献】ドイツ国特許出願公開第102004025493号明細書
【文献】ドイツ国特許出願公開第102004025492号明細書
【文献】ドイツ国特許出願公開第102012013325号明細書
【文献】ドイツ国特許出願公開第102012013589号明細書
【文献】国際公開第2010/022709号明細書
【文献】米国特許第5273204号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0089977号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の着想は、(ステンレス)鋼の表面に特定の厚さ、表面粗さ及び遷移抵抗を有するアルミニウム溶射層を形成することにより、(ステンレス)鋼へのアルミニウムのような溶接できない金属の組み合わせを又は熱間成形マルテンサイトステンレス鋼のような一般的に溶接できない材料を、抵抗溶接可能にすることである。次に、第2のステップで抵抗(スポット)溶接プロセスが続く。用いられる溶接パラメータは、アルミニウム層と(ステンレス)鋼の間に脆い金属間化合物相を有することなく、アルミニウム同士の接触領域のみが溶けるように選択されなくてはならない。
【0019】
相成長の式は、放物線の成長曲線Xm
2=k・tで定式化することができる。ここで、
Xm=平均侵入深さ=金属間化合物相の厚さ、
k=成長係数、文献値:873Kで8.46・10-15m2/s
t=溶接時間
である。
【0020】
放物線の成長曲線式は、典型的なスポット溶接の層厚に関する情報を与える。これは、アルミニウム基材と比較して強度が50%以上低下することを意味する。
【0021】
スポット溶接の一般的な層の厚さは15μm以上である。これは、アルミニウム基材(280N/mm2)と比較して強度が50%以上低下することを意味する。このために、本発明は、溶接中の金属間化合物相のいかなる成長も回避しなければならない。
【0022】
本発明に関する熱機械的コーティング方法は、フレーム溶射、アーク溶射、プラズマ溶射、レーザー溶射、コールドスプレー、爆発溶射、高速フレーム溶射又は溶融池溶射からなることができる。
【0023】
そのプロセスでは、溶射材料は、ワイヤ、ロッド、バー、コード、粉末又は溶融池として供給される。
【0024】
本発明の方法によって用いられる溶射層なしでは直接溶接できない材料としては、例えば、非合金鋼、低合金鋼若しくはステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム基合金、マグネシウム又はマグネシウム基合金を挙げることができる。
【0025】
本発明によれば、溶射層は、アーク、レーザービーム、電子ビーム、スタッド又はプラズマ溶接により、好ましくは抵抗スポット溶接、溶接接合、抵抗ローラーシーム溶接又はプロジェクション溶接のような抵抗溶接プロセスにより、加えられる薄板と溶接される。当然ながら、他の溶接方法を本発明による溶接プロセスに使用することができる。
【0026】
スポット溶接の到達直径に対する溶射層の厚さの比は、0.25mm以下である。
【0027】
基材、溶射層、加えられる薄板を含む全体の板厚は、1.5mmから6.0mmの間であり、溶射層と基材の間の移行帯は350℃未満である。輸送用途での薄い座席構造部品用の1つの典型的な厚さの組み合わせは次の通りとすることができる。
T[mm]=t基材+t溶射層+t加えられる薄板=0.5mm+0.25mm+0.75mm=1.5mm
厚さの設計の別の例は、Bピラーや電気自動車用のバッテリーハウジングの結合などの乗用車の衝突関連構造部品について作成されることができる。
T[mm]=t基材+t溶射層+t加えられる薄板=1.7mm+1.5mm+2.8mm=6.0mm
ここでTは、t基材+t溶射層+t加えられる薄板を合計した全体の板厚[mm]である。t基材は基材の板厚[mm]であり、上述の例では(ステンレス)鋼の板厚[mm]である。t溶射層は溶射層の厚さ[mm]であり、上述の例ではAIMg3のワイヤを用いたアーク溶射プロセスで製造された溶射層の厚さ[mm]である。少なくともt加えられる薄板は、熱機械コーティング層に加えられる薄板の厚さ[mm]であり、上述の例ではENAW-6081合金のアルミニウム板の厚さ[mm]である。
【0028】
溶射を受ける基材は、鋼材料、好ましくは溶融及び電解亜鉛めっきの表面コーティングを備えた非合金鋼又は低合金鋼からなることができる。より好ましくは、酸化クロムのパッシベーション層を備えたステンレス鋼である。更に、本発明の方法に適した使用材料はまた、スケールが形成された表面を備えた又はアルミニウム-シリコン若しくは亜鉛層コーティングの表面保護層を備えた熱間成形又はプレスハードニング鋼であり得る。
【0029】
この方法は、800MPaを超える引張強度を有する高張力鋼などの脆性材料について特に有効である。また、溶射を受ける基材は、炭素当量(CEV)が0.65%を超える非合金鋼又は低合金鋼にされることができ、ここでCEVは、次の式(重量%による元素含有量)を用いて計算される。
CEV=C+Mn/6+(Cu+Ni)/15+(Cr+Mo+V)/5
【0030】
また本発明によれば、基材表面は、洗浄又は脱脂、及びブラスト又はピーニングによって前処理されることができる。その場合、ブラスト又はピーニング用のブラスト研磨剤は、コランダム、鋼線、炭化ケイ素、及びハードキャストのグラベル(gravel)又はガラス玉からなることもできる。
【0031】
本発明は、これらの異種溶接の高動力伝達を示す。破壊挙動は、加えられた薄板領域に集中し得る。したがって本発明により、最新技術での材料の1つの同種溶接に関する同じ厚さの組み合わせと比較して、同等以上の動力伝達を実現することが可能である。
【0032】
好ましくは、本発明の方法で用いられる抵抗溶接プロセスのステップは、スポット溶接、ローラーシーム溶接、プロジェクション溶接又は溶接接合などの様々な種類の抵抗溶接によって行われることができる。
【0033】
以下、図面を参照して本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の先行技術に記載された、二元系Fe/Alのアルミニウムと鋼の間での金属間化合物相の成長を示す。
【
図2】本発明の先行技術に記載された、金属間化合物層の厚さと生じる強度レベルとの関係を示す。
【
図3】本発明の(ステンレス)鋼基材での溶射層の一つの好ましい実施形態を側面図で概略的に示し、ベース材料/基材にアルミニウム層を溶射する第1のステップを示す。
【
図4】本発明のアルミニウム平板が抵抗スポット溶接された溶射アルミニウム層の更なる好ましい実施形態を側面図で概略的に示し、別のアルミニウム平板を備えた溶接溶射層/ステンレス鋼が示されている。
【発明を実施するための形態】
【0035】
例の1つは、拡散、接着、層の機械的連結、化学結合の作用を使用して、ステンレス鋼の上面にアルミニウム溶射層を生成し、ステンレス鋼でのその層はアルミニウム基合金からなり、この組み合わせは加えられるアルミニウム板と抵抗溶接によって溶接されて、金属間の脆性相を避ける。
【0036】
図1に二元系についての理論的背景を示す。これは、無限に長い冷却速度でのみ機能し、それにより抵抗スポット溶接は約1,500K/sの冷却速度を有し、脆い金属間化合物相のFeAI
3及びFe
2AI
5を備える。Fe/AIの二元系
*は、温度範囲で表される。
*出典は、Guimaraens, E., バイロイト大学, 2005年である。
【0037】
図2に、放物線の成長曲線で定式化された相成長の理論的背景を示す。金属間化合物層の厚さと引張強度の関係が示されている。結果として、典型的なスポット溶接の層厚は15μm以上である。曲線は、アルミニウム基材(280N/mm
2)と比較して50%以上の強度低下を示している。その現象のために、これに関する本発明の方法では、溶接中の金属間化合物相のいかなる成長も避ける必要がある。
【0038】
図3に、本発明の好ましい実施形態の概略側面図を示す。溶射中間層(2)に製造された熱機械的又は機械的なAl合金表面コーティングは、互いに直接溶接できないステンレス鋼のような基材(1)の表面にある。
【0039】
図4は、本発明の好ましい実施形態の概略側面図を示し、基材(1)の溶射コーティング層(2)と加えられたアルミニウム板(3)との間の従来の抵抗溶接プロセスが、材料の組み合わせの接合に使用される。基材(1)、溶射中間層(2)及びアルミニウム板(3)の間にスポット溶接部(4)がある。基材(1)と溶射コーティング層の接触領域の温度は、摂氏350度未満である。
【符号の説明】
【0040】
1 基材
2 溶射中間層、溶射コーティング層
3 アルミニウム板
4 スポット溶接部