(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】内燃エンジンを洗浄するための装置の改善
(51)【国際特許分類】
F02B 77/04 20060101AFI20230412BHJP
F02D 19/12 20060101ALI20230412BHJP
B60S 5/00 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
F02B77/04
F02D19/12 Z
B60S5/00
(21)【出願番号】P 2019551556
(86)(22)【出願日】2018-03-19
(86)【国際出願番号】 IB2018051821
(87)【国際公開番号】W WO2018172910
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-12
(32)【優先日】2017-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518106319
【氏名又は名称】フレックス フューエル - エナジー デベロップメント
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ル ポール セバスチャン アラン
【審査官】池田 匡利
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-138623(JP,A)
【文献】特開2010-090833(JP,A)
【文献】特開2014-163363(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 77/04
F02D 19/12
B60S 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンと、ガス循環回路と、を備える動力化システムの洗浄装置であって、前記エンジンが、可燃性の製品を受け入れるように構成された複数の入口と、排気ガス出口と、を備え、前記ガス循環回路が、前記エンジンの前記入口の1つに適したガス混合物を供給するために共に配置された、複数のパイプ及び複数の可動部と、を備え、前記エンジンの前記入口の1つに洗浄流体を注入することによって前記動力化システムの洗浄シーケンスを実行するように適合された注入装置を備えており、さらに、少なくとも1つの前記可動部の不備のレベルの関数として前記動力化システムの汚れのレベルを
決定するように適合された診断手段と、前記洗浄シーケンスを実行する洗浄パラメータを前記注入装置に供給するように適合された前記注入装置の制御手段と、を備え、前記洗浄パラメータが、前記動力化システムの汚れのレベルの関数であることを特徴と
し、前記診断手段が、不備のレベルの決定対象となる可動部以外の可動部が固定位置に保持される2つの極限位置間における可動部の動きを命令するように適合され、前記可動部の前記2つの極限位置間におけるストロークの関数及び理論的最大ストロークの関数として、前記可動部の不備のレベルを決定する、動力化システムの洗浄装置。
【請求項2】
前記エンジンの前記排気ガス出口において利用可能な排気ガスの一部を含む、適したガス混合物を前記エンジンの前記入口に供給するように適合されたガス循環回路を備える動力化システムに適合された、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ガス循環回路の前記複数の可動部が、入口バルブ及び/又はEGRバルブ及び/又はターボ圧縮機の可動部分を備える、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記診断手段が、前記動力化システムに紐づいた故障メモリを読み取り、可動部の故障に関する情報が前記故障メモリに格納されている場合、前記可動部の前記2つの極限位置間を移動するストロークの関数として、前記論理的最大ストロークの関数として、及び前記故障メモリに読み込まれた故障に関する情報の関数として、前記可動部の不備のレベルを
決定する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記診断手段が、それぞれの可動部の不備のレベルを連続的に
決定するように適合された、
請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記診断手段が、前記可動部の不備のレベルが既定値よりも大きい場合、最初の洗浄シーケンスの実行を命令し、前記可動部の不備のレベルを再度
決定し、前記可動部に関して再度
決定された不備のレベルが前に
決定された不備のレベルと大きい又は等しい場合、故障した可動部を報告する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記制御手段が、
・複数の洗浄サイクルを備える洗浄シーケンスの洗浄パラメータを決定し、前記洗浄パラメータが洗浄サイクル数を含み、注入パラメータがそれぞれの洗浄サイクルについて前記洗浄サイクルの期間及び/又は前記洗浄サイクル中に注入される流体の量を備えること、及び、
・決定された前記注入パラメータに従って前記注入装置によって前記洗浄シーケンスの実行を命令すること、
に適合された、
請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記注入装置に送られる前記注入パラメータが、それぞれの洗浄サイクルについて、さらに、
・前記注入される流体の温度及び/又は圧力、
・注入される前記流体の状態、及び/又は
・注入される前記流体の組成、水素の割合
を含む、
請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記制御手段が、
・前記動力化システムの汚れのレベル及び/又は前記可動部の不備のレベルの関数として、洗浄シーケンス中の少なくとも1つの可動部の動作パラメータを決定すること、及び、
・決定された前記動作パラメータに従って、前記注入装置によって実行される前記洗浄シーケンス中に前記可動部の動作を命令すること、
に適合された、
請求項7又は8に記載の装置。
【請求項10】
前記診断手段が、前記可動部の少なくとも1つの不備のレベルの関数として及び前記エンジンを含む前記動力化システムの固有パラメータの関数として、エンジンの汚れのレベルを
決定するように適合された、
請求項7~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記診断手段が、前記動力化システムの使用条件の関数としてもエンジンの汚れのレベルを
決定するように適合された、
請求項7~10のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジンを備える動力化システムを洗浄するための装置に関し、エンジンに洗浄流体を注入するように適合された注入装置を備えるタイプの装置である。本発明は、特に、車、オートバイ、ボートなどの自動車のメンテナンスに役立ち、エネルギー生産に使用されるエンジンなどの産業用エンジンのメンテナンスにも役立つ。
【背景技術】
【0002】
エンジンの動作を最適化する目的は、多くの場合、燃焼温度を低下させ、運転時にエンジン内で利用可能な酸素の量を減らすことである。これによって、エンジンのパフォーマンスが改善し、特にディーゼル動力化システムの場合、NOx、特に汚染窒素化合物の生成が減少する。
【0003】
燃焼温度を低下させ、酸素の量を制限するために、1970年代に開発された1つの技術は、不活性排気ガスの一部をエンジンの燃料‐空気混合物入口に向け直すことである。流量可変であるEGR(exhaust gas recirculation, 排気ガス再循環)バルブは、排気口と入口との間の再循環回路上に配置され、バルブを開くと、エンジンの入口の方向にEGRバルブが通す排気ガスの量が定義され、開度は、排気ガスの測定温度、エンジンからの要求出力などの動力化システムのパラメータの関数として、車両のコンピュータによって制御されている。窒素酸化物の生成は、特に燃焼中の温度及び酸素の存在に依存しており、既燃ガスの導入は、両方のパラメータ、温度及び酸素の割合、に作用する。
【0004】
燃焼温度を低下させることによって、NOxの生成を減らし、エンジンのパフォーマンスを向上させるが、それは欠点がある。実際、中でも酸素含有量が減少することによって、エンジンにおける燃焼が少なくなり、そして、より多くの炭化水素と、より多くの粒子及び煤と、を生じる。これは、特に、エンジンの回路、既燃ガス排気回路、及び排気ガス再循環回路を汚す結果となる。そのため、かなりの煤の堆積物が吸気マニホールド、ターボ圧縮機、及びEGR調節バルブに形成され、しばしばエンジン障害メッセージを表示させる。EGR調節バルブもまた、開位置に刺さっていてもよく、これは、全負荷時に大量の排気ガスが燃焼空気と混合されることを意味する。自動車の場合、車両が加速する時に黒煙の雲があり、出力が損失する。そのため、低温における燃焼は、動力化システムの効率を低下させ、動力化システムによって生じる汚染を増加させる。
【0005】
エンジン及びその回路を洗浄するための既知の技術は、エンジン運転中に水素と酸素との混合物などの洗浄流体を入口回路に注入することである。水素の酸化は燃焼を改善し、水蒸気と二酸化炭素ガスとを生じ、高温では、水蒸気及び二酸化炭素が炭素堆積物と反応するため炭素堆積物を除去することができる。同じ出願人の特許出願FR15/02059には、この技術を実施する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】仏国特許出願第FR15/02059号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明は、動力化システムを洗浄する既知の装置の効率を改善することを目的とし、内燃エンジンと、ガス循環回路と、を備える動力化システムの洗浄装置であって、前記エンジンが、可燃性の製品を受け入れるように構成された複数の入口と、排気ガス出口と、を備え、前記ガス循環回路が、前記エンジンの前記入口の1つに適したガス混合物を供給するために共に配置された、複数のパイプ及び複数の可動部と、を備え、前記複数の可動部が、少なくとも1つの可動部を備える。前記洗浄装置は、前記エンジンの前記入口の1つに洗浄流体を注入することによって前記動力化システムの洗浄シーケンスを実行するように適合された注入装置を備える。
【0008】
本発明に係る装置は、さらに、少なくとも1つの前記可動部の不備のレベルの関数として前記動力化システムの汚れのレベルを決定するように適合された診断手段と、前記洗浄シーケンスを実行する洗浄パラメータを前記注入装置に供給するように適合された前記注入装置の制御手段と、を備え、前記洗浄パラメータが、前記動力化システムの汚れのレベルの関数であることを特徴とする。
【0009】
本発明に係る装置では、洗浄流体の注入が、少なくとも1つの可動部の不備のレベルの関数として動力化システムの汚れのレベルを考慮して調整される。そのため、洗浄シーケンスは、エンジンの汚れの統計的な状態にのみ基づいているのではなく、エンジンの真のニーズに適合されている。これは、全ての動力化システムに効果的な洗浄を保証する。これは、装置の洗浄流体の総消費量及び洗浄装置の総使用時間をより適切に制御することをも可能にする。
【0010】
本発明に係る装置は、前記エンジンの前記排気ガス出口において利用可能な排気ガスの一部を含む、適したガス混合物を前記エンジンの前記入口に供給するように適合されたガス循環回路を備える動力化システムに適合されることもできる。
【0011】
本発明の文脈において考慮される動力化システムの複数の可動部は、入口バルブ(排気ガスを伴う又は伴わない空気を含むガス混合物の流れを調節し、当該ガス混合物は、エンジンの入口の1つに到達する)、及び/又はEGRバルブ及び/又はターボ圧縮機の可動部分を備えることができる。
【0012】
一実施形態によると、前記診断手段が、前記複数の可動部の他の可動部が固定位置に保持される2つの極限位置間における可動部の動きを命令するように適合され、前記可動部の前記2つの極限位置間におけるストロークの関数及び前記可動部の理論的な最大ストロークの関数として、前記可動部の不備のレベルを決定する。したがって、診断は、前記部分の不備のレベルに関する正確な情報を得るように、洗浄される可動部に対して直接行われ、その後洗浄シーケンスに応じて調整される。
【0013】
あるいは、診断手段は、前記動力化システムに紐づいた故障メモリを読み取り、可動部の故障に関する情報が前記故障メモリに格納されている場合、前記可動部の前記2つの極限位置間を移動するストロークの関数として、前記論理的最大ストロークの関数として、及び前記故障メモリに読み込まれた故障に関する情報の関数として、前記可動部の不備のレベルを決定することができる。したがって、診断手段は、到達した診断を確認する又は精密にするために、エンジンの環境によって既に検出されている情報を考慮する。
【0014】
前記診断手段は、それぞれ連続的な可動部の不備のレベルを決定するように適合されることができる。したがって、それぞれの可動部は、動力化システムの診断をさらに精密にし、洗浄シーケンスの結果をさらに改善するために、他の可動部と独立して診断される。
【0015】
一実施形態によると、前記診断手段は、前記可動部の不備のレベルが既定値よりも大きい場合、最初の洗浄シーケンスの実行を命令し、前記可動部の不備のレベルを再度決定し、前記可動部に関して再度決定された不備のレベルが前に決定された不備のレベルと大きい又は等しい場合、故障した可動部を報告する。これによって、可動部が汚れすぎて正しく洗浄できない場合に役に立たない完全な洗浄シーケンスを実行することを回避することができる。この場合、部品を交換することがより好ましい。
【0016】
それらの部分では、前記制御手段が、
・前記複数の可動部の可動部の不備のレベルの関数として動力化システムの汚れのレベルを決定すること、
・前記動力化システムの汚れのレベルから複数の洗浄サイクルを備える洗浄シーケンスの洗浄パラメータを決定し、前記洗浄パラメータが洗浄サイクル数を含み、注入パラメータが特にそれぞれの洗浄サイクルについて前記洗浄サイクルの期間及び/又は前記洗浄サイクル中に注入される流体の量を備えること、及び、
・決定された前記注入パラメータに従って前記注入装置によって前記洗浄シーケンスの実行を命令すること、
に適合される。
【0017】
診断に続いて、制御手段は、洗浄されるエンジンの実際の状態に合った効果的な洗浄シーケンスのための適したパラメータを決定する。
【0018】
注入パラメータは、特に、それぞれの洗浄サイクルについて、前記洗浄サイクルの期間及び/又は注入される流体の量を備える。それらは、さらに、
・前記注入される流体の温度及び/又は圧力、
・注入される前記流体の状態、及び/又は
・注入される前記流体の組成、特に水素の割合
を備えることができる。
【0019】
一実施形態によると、前記制御手段は、
・前記動力化システムの汚れのレベル及び/又は前記複数の可動部の前記可動部の不備のレベルの関数として、洗浄シーケンス中の少なくとも1つ又はそれぞれの可動部の動作パラメータを決定すること、及び、
・決定された前記動作パラメータに従って、前記注入装置によって実行される前記洗浄シーケンス中に前記又はそれぞれの可動部の動作を命令すること、
に適合される。
【0020】
したがって、洗浄シーケンス中、可動部は、動力化システムの汚れのレベル及び/又は可動部の不備のレベルに適した動作パラメータに従って動作時に運転される。洗浄流体の注入中の可動部の動作は、動力化システムの全ての要素の効率を改善し、より深くかつ効果的に部分それ自体/それら自体を洗浄するために、動力化システム全体の洗浄流体の循環の管理を改善する。可動部は、それぞれの可動部をより効果的に洗浄するために、好ましくは、順々に連続的に動かされる。
【0021】
補完的な実施形態によると、前記診断手段は、前記複数の可動部の前記可動部の少なくとも1つ(又はそれ以上)の不備のレベルの関数として及び前記エンジンを含む前記動力化システムの固有パラメータの関数として、エンジンの汚れのレベルを決定するように適合される。動力化システムの固有パラメータは、例えばエンジンのジオメトリ又は循環回路のジオメトリに関連するパラメータであり、シリンダの数及び容積(少なくとも1つ)、入口の形及び部品、ガスパイプの形及び部品等である。1つ又はそれ以上の可動部の不備のレベルに加えて動力化システムの固有パラメータを考慮することによって、動力化システムの汚れのレベルをより良く定義し、それがエンジン及び再循環回路内で循環するとき、洗浄流体の最適効率のための条件をより良く定義することができる。
【0022】
補完的な実施形態によると、前記診断手段は、前記動力化システムの使用条件の関数としてもエンジンの汚れのレベルを決定するように適合される。動力化システムの使用条件は、例えば自動車エンジンでは走行キロメートル数、又は最初の始動から又は最初の洗浄からのエンジンの使用時間、自動車の動力化システムでは例えば都市環境等のエンジンの最も頻繁な使用の状況を代表する定性的なパラメータを備える。
【0023】
したがって、洗浄シーケンスのパラメータは、動力化システムの一般的な状態を考慮して、扱われる動力化システムに最も適合され、前記状態は、動力化システムで行われたメンテナンスと同様に動力化システムの使用に依存する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明に係る装置に接続された、自動車の古典的な動力化システムの全体図である。
【
図2】
図2は、
図1に係る装置の動作の1モードを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明に係る洗浄装置の実施形態の以下の説明に照らして、本発明はより理解され、本発明の他の特徴及び利点が明らかになるだろう。これらの例は、非限定的な例である。説明は、添付の図面と併せて読まれるべきである。
【0026】
上述のように、本発明に係る装置は、内燃エンジン及びガス循環回路を備える動力化システムを洗浄するための装置である。
図1は、例として、自動車の既知の動力化システムを示し、動力化システムのガス循環回路は、排気ガスの一部をエンジンの入口の1つに向け直す。
【0027】
エンジンは、燃料入口2a(直接注入)、空気を含むガス混合物のための入口2b、及び排気ガス出口3をそれぞれ備える複数のシリンダ1(
図1には1つのみ示される)を備え、ガス入口及び出口は、バルブを動かすことによって閉じられている。すべてのシリンダは、同一であり、それぞれそのガス入口を介してガスが並行に供給される。図示されない変形例によると、エンジンは、燃料‐空気、又は燃料‐空気‐排気混合物を受け入れるように適合された単一の入口を備える。
【0028】
図1のガス循環回路もまた知られており、それは、排気ガスの一部を備えるガス混合物をエンジンの入口に供給するために共に配置された、複数のパイプ6及び複数の可動部7を備える。特に、EGRバルブ7aは、排気ガスの一部を排出して、入口2bに直接再注入するように排気することを可能にする。排気ガスによって運転されるターボ圧縮機7bは、入口の空気圧を高めてシリンダの充填を改善することを可能にする。ターボ圧縮機は、排気パイプ内に置かれたタービン及び入口パイプ内に置かれた圧縮機を備え、2つの部分はシャフトによって接続されており、フィルタは、ターボ圧縮機に入る空気をろ過し、流量計は、ターボ圧縮機に入る空気の流量を監視し、ターボ圧縮機の可動部分は、ターボ圧縮機内を循環する空気の流量を調整する。シリンダの空気入口にある入口バルブ7cは、シリンダに注入される空気の量を調節することができ、ターボ圧縮機の出口とバルブ7cとの間では熱交換器が圧縮された空気を冷却する。排気ガスは、通常、ターボ圧縮機のタービンを介して触媒体及び粒子フィルタに排気され、その後大気に捨てられる。動力化システムのコンピュータは、可動部7の動作、特に、EGRバルブの開度、入口バルブの開度、及びエンジンの期待される性能の関数としてのターボ圧縮機のパラメータを制御する。時間が経ちエンジンが使用されるにつれて、煤の堆積物が、次第に生じて、可動部及びガスパイプ6の使用可能な部分の動作を制限する。
【0029】
洗浄装置は、洗浄されるエンジンの入口の1つに洗浄流体を注入することによってエンジンを洗浄するシーケンスを実行するように適合された注入装置を備える。
【0030】
一実施形態では、洗浄装置に使用される洗浄流体は、水素及び酸素の混合物であり、それが使用する洗浄流体をそれ自身が製造するという意味で完全に自律的である。この目的のために、装置は、箱状の構造体10内に、水タンクと、水の電気分解のプロセスによって水素及び酸素を製造する既知の手段と、を備える。装置は、洗浄流体をエンジン入口に注入するのに適合された流体注入装置をも備える。エンジンが、特に空気及び燃料を含むガス混合物を受け入れるように適合された単一の入口を備える場合、入口バルブの上流側において、洗浄装置の注入装置の出口は、当該入口に接続される。エンジンが,少なくとも2つの入口を備えている場合、洗浄装置の注入装置の出口は、特に空気を含むガス混合物を受け入れるように構成された入口、又は燃料を受け入れるように構成された入口(いわゆる直接噴射エンジン)のいずれかに接続可能である。
図1の例では、注入装置の出口は、ターボ圧縮機の空気入口に接続され(太い破線)、そして空気を含むガス混合物を受け入れるように構成された入口に接続される。
【0031】
構造体の上部には、ユーザインターフェース13が設けられており、ユーザに、装置を調整し、装置の動作に必要なパラメータを入力し、洗浄シーケンスを起こし、洗浄シーケンスの進捗を通知し、可動部分を制御すること等を可能にする。ユーザインターフェースは、特に、情報表示画面と、所定の時間に画面に表示された情報を選択するための手段と、を備える。選択手段は、例えば、画面上のカーソルの動作を可能にするマウス、及び表示画面を覆うタッチ感応層等を備える。図面に示されていない変形例では、ユーザインターフェースは、持ち運び可能であり(スマートフォン、タブレット、ラップトップコンピュータ等)、Bluetooth(登録商標)リンク、wifiリンク等のような無線リンクを介して装置と通信する。
【0032】
本発明に係る装置はまた、動力化システムの状態を診断する手段と、行われた診断に従って適合された洗浄シーケンスを実行する制御手段と、を備える。診断手段及び制御手段の必須の技術的機能は、
図2に実線で示されている。付加的な機能は、破線で示されている。
【0033】
実際の実施の観点から、使用される例において、診断手段及び制御手段は、プログラムメモリに関連付けられたマイクロプロセッサから成る。マイクロプロセッサは、洗浄される動力化システムの全動作を制御する動力化システムのコンピュータに接続されており、動力化システムのコンピュータは、特に可動部の動作を制御する。マイクロプロセッサは、洗浄流体注入装置にも接続されており、それは、その動作を制御する。プログラムメモリは、マイクロプロセッサによって実行可能なプログラムが格納され、当該プログラムは、本発明の文脈において、診断手段の機能及び制御手段の機能の実行に適した複数のコード行を備える。
【0034】
本発明によれば、動力化システムの診断は、それが洗浄される前に行われる。
【0035】
最初に、1つの可動部の不備のレベルが決定される(ET12)。この目的のために、マイクロプロセッサは、その2つの極限位置の間における当該可動部の動作を命じる命令を動力化システムのコンピュータに送り、他の可動部は、動かないままであり、動力化システムのコンピュータは、当該部分を動かし、前記可動部の動作の後、前記可動部の2つの極限位置の決定値をマイクロプロセッサに送り、マイクロプロセッサは、関係する前記部分の不備のレベルを計算する。
【0036】
2つの極限位置は、関連する可動部(EGRバルブ、入口バルブ、可変形状のターボ圧縮機の可動部分など)の開位置及び閉位置に対応する。可動部の動作を妨げる煤がない場合、後者は、可動部の上流側においてパイプの理論的な流量の100%と等しくなる位置と可動部を通る流体流量が0となる位置との間において、理論的な最大ストロークC0全体で移動可能である。動力化システムが使用されると、煤が可動部の周りに溜まり、その結果可動部がより開きにくくなり(許容される流量の最大値が減少し)、より閉じにくくなり(流量の最小値が増加してゼロではなくなり)、その結果、時間とともにその2つの極限位置の間におけるそのストロークCが減少する。したがって、可動部のストロークは、その不備のレベルを、
TD=(C0-C)/C0
と定義することができる。
【0037】
なお、いくつかの可動部は並進運動し、この場合、部分のストロークは、例えばミリメートル単位で測定される直線距離に対応し、これは、ターボ圧縮機又はEGRバルブの可動部分の例における場合である。他の可動部は回転運動し、この場合、部分のストロークは、例えば角度で測定される角距離に対応し、これは、入口バルブの例における場合である。あるいは、可動部の開度(%で表される)は、可動部のストロークの測定値として使用可能であり、バルブの開度は、例えば、バルブが通ることを許容するガスの割合を定義し、バルブの開度は、それが完全に閉じている時に0であり、バルブが完全に開いている時に100%に等しく、バルブのストロークは、開度の最大値から診断時における開度の最小値を引いたものに等しく、理論的な最大ストロークは100%に等しい。
【0038】
不備のレベルの決定は、それぞれの可動部に対して繰り返し行われ、可動部を次々に診断する。可動部が診断される順序は、予め定義されてもよく、プログラムメモリに格納される。使用される例では、診断の効率のために、第1の可動部の診断の前に、マイクロコントローラが、動力化システムの通常のコンピュータに命令を送信し、当該コンピュータの故障メモリを読む(ET11)。それが例えばEGRバルブ等の可動部の1つの故障に関連する情報を返送する場合、故障している可動部が最初に診断される。故障メモリが読まれた後(ET11)、又は不備のレベルの決定後、故障メモリは消去可能である(ET12b)。
【0039】
マイクロプロセッサは、可動部の不備のレベルTDが許容される最大値よりも大きいか検証する(ET13)。許容最大値は、例えばTD=100%であり、ストロークC=0、すなわち移動できなくなった部分に対応する。安全対策として、許容最大値を90%とすることが可能である。可動部の不備のレベルTDが許容最大値よりも大きい場合、マイクロプロセッサは、初期の洗浄シーケンス(ET21)の実行に適した注入パラメータを注入装置に送信し、初期のシーケンスは、例えば短時間(例えば数十分間続く単一の洗浄サイクル)であるが、激しい。初期の洗浄シーケンスの後、同じ可動部の不備のレベルは再度決定され(ET22)、マイクロプロセッサは、2つの極限位置間における同じ可動部の動作を命じる命令をコンピュータに送信し、部分の動作(又は動作の不在)の後、2つの極限位置の決定値を代わりに受け取り、部分の2つの極限位置が前と同じである場合、再度決定された不備のレベルは、許容最大値よりも大きく(ET23)、これは、初期の洗浄が部分の一般的な状態を改善することができなかったことを意味し、この場合、マイクロプロセッサは、長くかつ集中的な洗浄でさえも効果的である見込みが少ないとみなし、可動部を交換する必要があることを通知する警告(不備部分警告)を表示手段に送信する。
【0040】
具体的かつ明確に非限定的な例では、初期の洗浄シーケンスは、例えば10~30分間程度等の短時間であるが、2~5分間ごとに開閉する部分のこの交互の動作と並行して、700l/時間程度の洗浄流体量であり、激しい。
【0041】
診断が一度得られると、制御手段は、それぞれの可動部の不備のレベルの関数として、動力化システムの全体的な汚れのレベルを決定する(ET31)。使用される実施形態によって、動力化システムの汚れのレベルは、考慮される全ての可動部の不備のレベルの最大値に等しくされる。他の実施形態によると、それぞれの可動部の不備のレベルは、エンジンの通常の動作における当該可動部の故障の重要性又はエンジンの動作上の前記可動部の故障の結果の重要性(エンジンの永久的なダメージ、可動部の交換に係る高コスト、高レベルの汚染の生成など)の代表的な係数によって重み付けされ、動力化システムの汚れのレベルは、考慮される可動部の重み付けされた不備のレベルの関数として決定される。
【0042】
あるいは、可動部の不備のレベルに加えて動力化システムの全体的な汚れのレベルを決定するために、制御手段は、例えば、
・エンジンのジオメトリ、エンジンの排気量、シリンダの数、シリンダの容量、燃料のタイプなど
・空気流量、通常の動作条件下においてシリンダに入る排気ガスの流量
・動力化システムに紐づいた汚染除去システムの固有パラメータ(例えばEGRバルブ及び/又は粒子フィルタFAPを有する排気ガス再循環回路)
・ターボ圧縮機の固有パラメータ
のような動力化システムの固有パラメータを考慮可能である。
【0043】
任意で前のものと組み合わせ可能であるさらなる変形例によると、制御手段は、例えば
・動力化システムの使用期間、例えば動力化システムがインストールされた車両が走行したキロメートル数によって定義される期間、動力化システムがインストールされた産業用機械の動作時間数
・動力化システムの動作が開始された日付(又は車両の循環が開始された日付)
・動力化システムが最も頻繁に使用される通常の状況の関数として決定される重み付け係数(例えば車両の場合、都市、道路上、高速道路上、混合、での使用)
・動力化システムにおいて使用される燃料のタイプの関数として決定される重み付け係数
・その汚れレベルを制限するために動力化システムの燃料に追加された任意の添加剤の関数として決定される重み付け係数、など
のような動力化システムの使用条件もまた考慮可能である。
【0044】
動力化システムの汚れのレベルの決定後、装置の制御手段は、複数の洗浄サイクル、少なくとも1つの洗浄サイクルを備える洗浄シーケンスを制御する。このため、動力化システムの汚れのレベル関数として、制御手段は、洗浄パラメータを決定し(ET32)、当該洗浄パラメータは、特に洗浄サイクルの数と、それぞれの洗浄サイクルについて前記洗浄サイクルの期間及び/又は当該洗浄サイクル中に注入される流体の量を備える注入パラメータと、を備える。注入パラメータは、それぞれの洗浄サイクルにおいて、
・注入される流体の温度及び/又は圧力、
・注入された流体の状態、及び/又は
・注入された流体の組成、特に水素の割合
をも備えていてもよい。
【0045】
次に、制御手段は、決定された注入パラメータに従って洗浄シーケンスを実行するように注入装置に命令する(ET32)。
【0046】
使用される例でも、制御手段は、
・動力化システムの汚れのレベル及び/又は複数の可動部の可動部の不備のレベルの関数として、洗浄シーケンス中の少なくとも1つ又はそれぞれの可動部の動作パラメータを決定すること、及び
・決定された動作パラメータに従って、注入装置によって実行された洗浄シーケンス中に前記又はそれぞれの可動部の動作を命令すること
にも適合される(ET33)。
【0047】
具体的かつ明確に非限定的な例では、3つの洗浄サイクルが連続して実行され、それぞれ30分から1時間30分続き、サイクル中に使用される洗浄流体は、流量が500l/hから700l/hまでの酸素及び水素ガスの化学量論的混合物である。最初のサイクル中、EGRバルブは動き、2から10分までの予め定義された第1の時間の間、最初のサイクルの始めに、バルブが50%開き(それは、それが受けるガスの50%が通ることを許容する)、2から10分程度の予め定義された第2の時間の間、EGRバルブが0%開き(バルブが閉じている)、5から15分程度の予め定義された第3の時間の間、EGRバルブが、0.5秒ごとに交互に開閉(極限位置)する(交互動作)。第2のサイクル中、入口バルブが、同様の挙動で動く。第3のサイクルでは、ターボ圧縮機の可動部分が、同様の挙動で動く。それぞれのサイクルについて、洗浄流体の流量、温度、及び圧力は、当該サイクル中動く可動部の不備のレベルの関数として調整される。
【符号の説明】
【0048】
1 シリンダ
2a 燃料入口
2b ガス入口
3 排気ガス出口
6 ガスパイプ
7 可動部
7a EGRバルブ
7b ターボ圧縮機
7c 入口バルブ
10 箱
13 ユーザインターフェース