(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】除細動カテーテルシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/39 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
A61N1/39
(21)【出願番号】P 2019570695
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(86)【国際出願番号】 JP2019002978
(87)【国際公開番号】W WO2019155941
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】P 2018020529
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 慎一郎
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-220778(JP,A)
【文献】特開2017-176349(JP,A)
【文献】米国特許第05522850(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N、A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠近方向に延在しているカテーテルと、
前記カテーテルと接続されており、印加電圧を発生させる電源部と、
心内電位を測定する心電計と、を有する除細動カテーテルシステムであって、
前記カテーテルの遠位側には、第1電極と、前記第1電極よりも近位側に配置されている第2電極と、が設けられており、
前記電源部には、
前記第1電極と前記第2電極により前記心内電位を測定する第1モードと、
前記第1電極と前記第2電極により前記心内電位を測定しながら
前記第1電極と前記第2電極に前記電圧を印加する第2モードと、に切り替える切替部が接続されており、
前記第1電極および前記第2電極が、前記切替部を介して前記電源部に接続されており、
前記第1電極および前記第2電極が、スイッチ部を介さずに前記心電計に接続されていることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記切替部は、互いに並列接続されている複数の第1スイッチと、互いに並列接続されている複数の第2スイッチとを有し、
前記カテーテルは、複数の前記第1電極と、複数の前記第2電極と、を有し、
複数の前記第1電極が、それぞれ前記第1スイッチを介して前記電源部に接続されており、
複数の前記第2電極が、それぞれ前記第2スイッチを介して前記電源部に接続されている請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1スイッチと前記第2スイッチが多極単投形である請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記電源部には、電圧を印加する電極を選択する電極選択スイッチが接続されている請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記電源部と前記心電計の間に、200Ω以下の抵抗が設けられている請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記電源部と前記心電計の間に、過電圧から前記心電計を保護する過電圧保護回路が設けられている請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1電極と前記第2電極の間に、前記第1電極と前記第2電極の間のインピーダンスを測定するインピーダンス測定回路が接続されており、
前記第1電極が、第3スイッチを介して前記インピーダンス測定回路に接続されており、前記第2電極が、第4スイッチを介して前記インピーダンス測定回路に接続されている請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記カテーテルの遠近方向において、前記第1電極と前記第2電極の間に前記心内電位を測定する第3電極がさらに設けられている請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記カテーテルの遠近方向において、前記第2電極よりも近位側に前記心内電位を測定する第4電極がさらに設けられている請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
少なくとも第1電源部と第2電源部から構成されている複数の前記電源部と、少なくとも第1切替部と第2切替部から構成されている複数の前記切替部と、が設けられており、
前記カテーテルは、少なくとも第1-1電極と第1-2電極とから構成されている複数の前記第1電極と、少なくとも第2-1電極と第2-2電極とから構成されている複数の前記第2電極を有し、
前記第1電源部に前記第1切替部が接続され、前記第2電源部に前記第2切替部が接続されており、
前記第1-1電極および前記第2-1電極が、前記第1切替部を介して前記第1電源部に接続されており、
前記第1-2電極および前記第2-2電極が、前記第2切替部を介して前記第2電源部に接続されており、
前記第1-1電極、前記第1-2電極、前記第2-1電極および前記第2-2電極が、スイッチ部を介さずに前記心電計に接続されている請求項1~9のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除細動を行うためのカテーテルシステムと、除細動の際に印加する電圧波形の生成や印加電極の選択等を行うための電源装置およびその装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心房細動や心室細動等の不整脈の治療では、電気的刺激を付与することで心臓のリズムを正常に戻す除細動が行われる。除細動には、自動体外式除細動器(Automated External Defibrillator:AED)、植え込み型除細動器(Implantable Cardioverter Defibrillator:ICD)、除細動パドルシステム、除細動カテーテルシステムが用いられる。特に、除細動カテーテルシステムは、カテーテルの表面に設けられた電極を通じて心臓に電気的刺激を直接付与しつつ、この電極により心内電位を測定することもできる。また、除細動カテーテルシステムは、体外式除細動器に比べて低エネルギーの電圧波形を用いることができるため、患者の負担が軽減され、さらには不整脈のカテーテル検査や焼灼手術中に使用することもできる点で有利である。
【0003】
心房細動の治療では、心室筋が反応しないように絶対不応期に電圧を印加する必要がある。もし、絶対不応期以外に刺激を付与した場合、心室筋が反応すると心室細動に移行するおそれがある。このため、除細動カテーテルシステムでは、R波に同期させて電圧を印加する必要がある。
【0004】
このような除細動カテーテルシステムの一例として、特許文献1には、除細動カテーテルと、カテーテルの電極に直流電圧を印加する電源装置と、心電計を備えたカテーテルシステムが開示されている。しかし、このシステムでは、除細動と心内電位の測定の切り替えに1回路2接点の切替スイッチを用いているため、除細動用の通電エネルギーのチャージ中および除細動実行中に心内電位を得ることはできなかった。
【0005】
そこで、心腔内除細動実行時に心内電位を測定することができるシステムが開発されている。例えば、特許文献2には、心腔内除細動時に心電計と電極カテーテルとの接続を完全に遮断してしまうのではなく、保護抵抗を介して電極カテーテルの一部の電極(RA電極およびCS電極)を心電計と接続することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-220778号公報
【文献】特開2017-176349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に示す心腔内除細動システムでは、オンオフスイッチがオフ状態となる心腔内除細動時には、心内電位信号が比較的大きな抵抗値を持つ保護抵抗を介して心電計に供給されるため、オンオフスイッチがオン状態となる心内心電図測定時と比較して、心電計に表示される心内電位波形は減衰したものとなっていた。また、心腔内除細動時には、電極カテーテルショートスイッチがショート状態となっており、8個のRA電極の電位が平均化された1つの測定電位が得られ、8個のCS電極の電位が平均化された1つの測定電位が得られるため、心内心電図測定時と比較して、RA電極およびCS電極の心電図波形がなまったものになり、各電極で独立した心内電位を得ることができなかった。さらに、8個のCS電極と8個のRA電極にそれぞれ独立したオンオフスイッチが必要であるため、回路規模が大きく制御も煩雑になっていた。そこで、本発明は除細動時であっても、心内心電図測定時と同様に心内電位の観測ができ、かつシステムを容易に制御できる除細動カテーテルシステム、除細動用電源装置およびその装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し得た本発明の除細動カテーテルシステムは、遠近方向に延在しているカテーテルと、カテーテルと接続されており、印加電圧を発生させる電源部と、心内電位を測定する心電計と、を有する除細動カテーテルシステムであって、カテーテルの遠位側には、第1電極と、第1電極よりも近位側に配置されている第2電極と、が設けられており、電源部には、心内電位を測定する第1モードと、心内電位を測定しながら電圧を印加する第2モードと、に切り替える切替部が接続されており、第1電極および第2電極が、切替部を介して電源部に接続されており、第1電極および第2電極が、スイッチ部を介さずに心電計に接続されている点に要旨を有する。このように本発明の除細動カテーテルシステムは、第1電極および第2電極がスイッチ部を介さずに心電計に接続されているため、除細動時であっても各電極における局所電位を測定することができる。
【0009】
上記除細動カテーテルシステムにおいて、切替部は、互いに並列接続されている複数の第1スイッチと、互いに並列接続されている複数の第2スイッチとを有し、カテーテルは、複数の第1電極と、複数の第2電極と、を有し、複数の第1電極が、それぞれ第1スイッチを介して電源部に接続されており、複数の第2電極が、それぞれ第2スイッチを介して電源部に接続されていることが好ましい。
【0010】
上記除細動カテーテルシステムにおいて、第1スイッチと第2スイッチが多極単投形であることが好ましい。
【0011】
上記除細動カテーテルシステムにおいて、電源部には、電圧を印加する電極を選択する電極選択スイッチが接続されていてもよい。
【0012】
上記除細動カテーテルシステムにおいて、電源部と心電計の間に200Ω以下の抵抗が設けられていることが好ましい。
【0013】
上記除細動カテーテルシステムにおいて、電源部と心電計の間に、過電圧から心電計を保護する過電圧保護回路が設けられていてもよい。
【0014】
上記除細動カテーテルシステムにおいて、第1電極と第2電極の間に、第1電極と第2電極の間のインピーダンスを測定するインピーダンス測定回路が接続されており、第1電極が、第3スイッチを介してインピーダンス測定回路に接続されており、第2電極が、第4スイッチを介してインピーダンス測定回路に接続されていることが好ましい。
【0015】
上記除細動カテーテルシステムは、カテーテルの遠近方向において、第1電極と第2電極の間に心内電位を測定する第3電極がさらに設けられていることが好ましい。
【0016】
上記除細動カテーテルシステムは、カテーテルの遠近方向において、第2電極よりも近位側に心内電位を測定する第4電極がさらに設けられていることが好ましい。
【0017】
上記除細動カテーテルシステムにおいて、少なくとも第1電源部と第2電源部から構成されている複数の電源部と、少なくとも第1切替部と第2切替部から構成されている複数の切替部と、が設けられており、カテーテルは、少なくとも第1-1電極と第1-2電極とから構成されている複数の第1電極と、少なくとも第2-1電極と第2-2電極とから構成されている複数の第2電極を有し、第1電源部に第1切替部が接続され、第2電源部には第2切替部が接続されており、第1-1電極および第2-1電極が、第1切替部を介して第1電源部に接続されており、第1-2電極および第2-2電極が、第2切替部を介して第2電源部に接続されており、第1-1電極、第1-2電極、第2-1電極および第2-2電極が、スイッチ部を介さずに心電計に接続されていることが好ましい。
【0018】
本発明には、心電計および電極を有するカテーテルにそれぞれ接続されて、印加電圧を発生させる除細動用電源装置も含まれる。本発明の除細動用電源装置は、カテーテルの遠位側に設けられる複数の電極に接続される第1接続部と、心電計に接続される第2接続部と、印加電圧を発生させる電源部と、電源部に接続されており、心内電位を測定する第1モードと、心内電位を測定しながら電圧を印加する第2モードとに切り替える切替部と、を有し、第1接続部が、切替部を介して電源部に接続されており、第1接続部が、スイッチ部を介さずに第2接続部に接続されている点に要旨を有する。本発明の除細動用電源装置では、第1接続部が、スイッチ部を介さずに第2接続部に接続されているため、除細動時であっても各電極における局所電位を測定することができる。
【0019】
本発明には、心電計および電極を有するカテーテルにそれぞれ接続されて、印加電圧を発生させる除細動用電源装置の制御方法も含まれる。除細動用電源装置の制御方法は、除細動用電源装置が、心内電位を測定する第1モードと、心内電位を測定しながら電圧を印加する第2モードと、に切り替える切替部と、コンデンサとを有し、切替部が第1モードである時に、印加電圧がコンデンサに充電される充電工程を含む点に要旨を有する。上記制御方法によれば、コンデンサの充電中にも各電極での独立した、かつ、なまりのない心内電位を測定することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の除細動カテーテルシステムおよび除細動用電源装置によれば、除細動時に各電極での心内電位を測定することができる。また、本発明の除細動用電源装置の制御方法によれば、コンデンサの充電中にも各電極での独立した、かつ、なまりのない心内電位を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係る除細動カテーテルシステムの構成を示す模式図を表す。
【
図2】本発明の実施の形態に係る除細動カテーテルシステムの通電波形の例を表す。
【
図3】本発明の実施の形態に係る除細動カテーテルシステムの第1モードの状態を示すブロック図を表す。
【
図4】本発明の実施の形態に係る除細動カテーテルシステムのインピーダンス測定状態を示すブロック図を表す。
【
図5】本発明の実施の形態に係る除細動カテーテルシステムの第2モードの状態を示すブロック図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0023】
本発明の除細動カテーテルシステムは、遠近方向に延在しているカテーテルと、カテーテルと接続されており、印加電圧を発生させる電源部と、心内電位を測定する心電計と、を有しており、カテーテルの遠位側には、第1電極と、第1電極よりも近位側に配置されている第2電極と、が設けられており、電源部には、心内電位を測定する第1モードと、心内電位を測定しながら電圧を印加する第2モードと、に切り替える切替部が接続されており、第1電極および第2電極が、切替部を介して電源部に接続されており、第1電極および第2電極が、スイッチ部を介さずに心電計に接続されている。このように本発明の除細動カテーテルシステムは、第1電極および第2電極がスイッチ部を介さずに心電計に接続されているため、除細動時であっても各電極における局所電位を測定することができる。
【0024】
図1~
図5を参照しながら、本発明の除細動カテーテルシステム1および除細動用電源装置2について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る除細動カテーテルシステム1の構成を示す模式図を表し、
図2は、本発明の実施の形態に係る除細動カテーテルシステム1の通電波形の例を表す。
図3~
図5は、本発明の実施の形態に係る除細動カテーテルシステム1のブロック図を表し、
図3は心内電位を測定する第1モードの状態を示しており、
図4はインピーダンスの測定状態を示しており、
図5は心内電位を測定しながら電圧を印加する第2モードの状態を示している。ここで、カテーテル20の近位側とはカテーテル20の延在方向に対して使用者(術者)の手元側の方向を指し、遠位側とは近位側の反対方向(すなわち処置対象側の方向)を指す。また、カテーテル20の近位側から遠位側への方向を遠近方向と称する。
【0025】
(実施の形態1)
図1に示すように、カテーテル20は遠近方向に延在しているものであり、その遠位側には第1電極21が、第1電極21よりも近位側には第2電極22が設けられている。カテーテル20を心腔に挿入し、第1電極21と第2電極22を心房や心室または血管の内側面で接触させると、第1電極21と第2電極22により心内電位を測定することができる。また、第1電極21と第2電極22に電圧を印加することにより、心臓に刺激を与えることができる。具体的には、第1電極21から生体を経て第2電極22へ向かって、または第2電極22から生体を経て第1電極21へ向かって電流が流れるように電圧が印加される。
【0026】
カテーテル20としては、筒状に形成された樹脂チューブが挙げられる。樹脂チューブは例えば押出成形によって製造することができる。カテーテル20を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。中でも、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂が好適に用いられる。
【0027】
カテーテル20は、単層から構成されていてもよく、複数層から構成されていてもよい。カテーテル20は、遠近方向または周方向の一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよい。また、カテーテル20は1つまたは複数の内腔を有していてもよい。
【0028】
カテーテル20を心腔に挿入したときに、第1電極21は冠静脈洞に対応する位置に配置されていることが好ましく、第2電極22は右心房に対応する位置に配置されていることが好ましい。このように第1電極21と第2電極22を配置することにより、心房細動の除去を効率よく行える。
【0029】
第1電極21と第2電極22は、各々異なる極性の直流電圧が印加されることが好ましい。例えば、
図2のような二相性の直流電圧を印加することにより、少ないエネルギーで細動を除去することができる。
【0030】
カテーテル20は、複数の第1電極21と、複数の第2電極22を有していてもよい。電極が複数設けられていれば、様々な位置での心内電位を取得することができる。例えば、隣り合う第1電極21どうしの電位差を測定することで、各第1電極21間の心内電位を測定することができる。第2電極22についても同様である。さらに、電極が複数設けられていれば、心臓の広範囲に電圧を印加でき、効率のよい除細動を行える。
【0031】
複数の第1電極21は、それぞれ同じ極性(プラスまたはマイナス)の電圧が印加されることが好ましく、複数の第2電極22は、それぞれ同じ極性(マイナスまたはプラス)の電圧が印加されることが好ましい。例えば、
図2のような二相性の直流電圧を印加する場合では、通電の前半は第1電極21がマイナス、第2電極22がプラスとなり、右心房から冠静脈洞側に向かって電流を流し、通電の後半は第1電極21がプラス、第2電極22がマイナスとなり、冠静脈洞から右心房側に向かって電流を流すことができる。
【0032】
なお、カテーテル20が、複数の第1電極21を有している場合、第2電極22は、最も近位側に配置されている第1電極21よりも近位側に配置されていることが好ましい。このように第1電極21と第2電極22を配置することにより、除細動を効率よく行える。
【0033】
図1および
図3に示すように、カテーテル20の遠近方向において、第1電極21と第2電極22の間に心内電位を測定する第3電極23がさらに設けられていることが好ましい。このように第3電極23を設けることにより、第1電極21と第2電極22の間に対応する位置での心内電位も測定することができる。第3電極23は電源部6に接続されていないことが好ましい。これにより、第3電極23を心内電位の測定の専用電極として使用することができる。
【0034】
図1および
図3に示すように、カテーテル20の遠近方向において、第2電極22よりも近位側に心内電位を測定する第4電極24がさらに設けられていることが好ましい。このように第4電極24を設けることにより、第2電極22よりも近位側での心内電位を測定することができる。第4電極24は、例えば上大静脈に対応する位置に配置することができる。第4電極24は電源部6に接続されていないことが好ましい。これにより、第4電極24を心内電位の測定の専用電極として使用することができる。
【0035】
以下では、第1電極21、第2電極22、第3電極23および第4電極24をまとめて「電極」、第1電極21、第2電極22、第3電極23および第4電極24のことをそれぞれ「各電極」ということがある。
【0036】
各電極の数は特に限定されず、各電極の数は同じであっても異なっていてもよい。中でも第1電極21の数と第2電極22の数は同じことが好ましい。これにより、第1電極21と第2電極22の表面積を容易に同じにすることができる。各第1電極21と各第2電極22の表面積が同じであり、同じ数の電極が均等に配置されていることで、効率の良い除細動が行え、かつ、心内心電図の計測の精度を高めることができる。
【0037】
第3電極23の数は、第1電極21の数以下であることが好ましく、また第1電極21の数以下かつ第2電極22の数以下であることがより好ましい。このように第3電極23の数を設定することにより、心臓の各位置での心内電位を好適に測定することができる。例えば、第1電極21と第2電極22を各8つ、第3電極23を6つにすることができる。
【0038】
第4電極24の数は、第1電極21、第2電極22および第3電極23の数以下であることが好ましい。例えば、第1電極21と第2電極22を各8つ、第3電極23を6つ、第4電極24を4つにすることができる。このように第4電極24の数を設定することにより、上大静脈に対応する位置の電位を好適に測定することができる。
【0039】
各電極は、樹脂チューブの外周の半分以上の領域に存在していることが好ましく、リング状に形成されていることがより好ましい。このように電極を形成することにより、心臓との接触面積が増大するため、心内電位の測定や電気刺激の付与が行いやすくなる。
【0040】
電極が複数設けられる場合、隣り合う電極の配置間隔、すなわち一方の電極の遠位端と、一方の電極よりも遠位側に設けられる他方の電極の近位端との離間距離は、1mm以上10mm以下に設定することができ、3mm以上8mm以下が好ましい。また、電極の幅は、例えば0.5mm以上5mm以下に設定することができる。各電極の幅は同じであってもよく、異なっていてもよい。このように電極の離間距離や電極幅を設定することにより心内電位を適切に測定することができる。心筋への接触条件を統一するためには、電位を測定する2つの電極は同幅または同じ表面積であることが好ましい。なお、電極の幅は、遠近方向における電極の長さを指す。
【0041】
第1電極21のうち最も近位側に配置されている電極と第2電極22のうち最も遠位側に配置されている電極の離間距離は、第1電極21どうしの離間距離よりも長く、かつ第2電極22どうしの離間距離よりも長いことが好ましい。このように第1電極21と第2電極22の離間距離を設定することにより、離間距離を目安にしながら心臓の所定位置に電極を配置しやすくなる。例えば、第1電極21を冠静脈洞、第2電極22を右心房に配置できるように電極の配置とその離間距離を設定してもよい。ここで第1電極21どうしの離間距離とは、隣り合う2つの第1電極21の離間距離のうち最長の離間距離を指す。第2電極22どうしの離間距離も同様である。
【0042】
各電極は、白金、ステンレス等の導電材料を含有していればよいが、X線透視下で電極の位置を把握しやすくするためには、白金等のX線不透過材料を含有していることが好ましい。
【0043】
図1に示すように、カテーテル20の遠位端部には、先端チップ25が設けられていてもよい。先端チップ25は、遠位側に向かって外径が小さくなっているテーパ部を有していることが好ましい。先端チップ25は導電材料から構成されていてもよい。これにより、先端チップ25を電極として機能させることができる。また、先端チップ25は高分子材料から構成されていてもよい。さらに、カテーテル20との接触から体内組織を保護するために、先端チップ25の硬度を樹脂チューブの硬度よりも低くしてもよい。
【0044】
図示していないが、樹脂チューブの内腔には、カテーテル20の遠位側を曲げるための操作ワイヤやばね部材が配置されていてもよい。具体的には、操作ワイヤの遠位端部が樹脂チューブの遠位端部または先端チップ25に固定されており、操作ワイヤの近位端部が後述するハンドル26に固定されていることが好ましい。
【0045】
各電極には第1導線31(リード線)がそれぞれ接続されている。具体的には、樹脂チューブの外周面に設けられている側孔を介して、電極の内周面と、樹脂チューブの内腔に配置されている第1導線31の一方端部とが接合される。第1電極21または第2電極22に接続されている第1導線31の他方端部は、後述するように除細動用電源装置2の第1接続部11に好ましく接続される。第3電極23または第4電極24に接続されている第1導線31の他方端部は、後述するように電源装置2の第4接続部14に好ましく接続される。第1導線31は、コネクタ等の接続部材で連結されている複数の導線であってもよい。後述する第2導線32、第3導線33も同様である。
【0046】
樹脂チューブの近位側には、カテーテル20を作動させる際に使用者が把持するハンドル26が設けられてもよい。ハンドル26の形状は、特に制限されないが、樹脂チューブとハンドル26の接続箇所への応力集中を緩和するためには遠位側に向かって外径が小さくなる錐形状に形成されていることが好ましい。ハンドル26の大きさは、使用者が片手で把持するのに適していれば特に制限されず、例えば、長さは5cm以上20cm以下、最外径は1cm以上5cm以下にすることができる。ハンドル26の材料としては、例えば、ABSやポリカーボネート等の合成樹脂や、ポリウレタン発泡体等の発泡プラスチックを用いることができる。ハンドル26の近位端部(より好ましくはハンドル26の近位端面)に開口が設けられており、該開口から第1導線31の一部が延在していてもよいし、該開口に固定されたコネクタに第1導線31が接続されていてもよい。
【0047】
心電計40は、各種電極を通じて心内電位を測定する。心電計40としては公知のものを使用することができる。
【0048】
図1、
図3~
図5には、心電計40および電極を有するカテーテル20にそれぞれ接続されて、印加電圧を発生させる除細動用電源装置2を示している。以下では、除細動用電源装置を単に「電源装置」ということがある。
【0049】
本発明には、心電計40および電極を有するカテーテル20にそれぞれ接続されて、印加電圧を発生させる除細動用電源装置2も含まれる。除細動用電源装置2は、カテーテル20の遠位側に設けられる複数の電極に接続される第1接続部11と、心電計40に接続される第2接続部12と、印加電圧を発生させる電源部6と、電源部6に接続されており、心内電位を測定する第1モードと、心内電位を測定しながら電圧を印加する第2モードとに切り替える切替部7と、を有し、第1接続部11が、切替部7を介して電源部6に接続されており、第1接続部11が、スイッチ部を介さずに第2接続部12に接続されている。本発明の電源装置2では、第1接続部11が、スイッチ部を介さずに第2接続部12に接続されているため、除細動時であっても各電極における局所電位を測定することができる。
【0050】
電源装置2には電源装置2の入切、印加エネルギー量の設定、電圧の充電、電圧の印加、印加電極の選択等の各種操作を行うための操作部3が設けられる。操作部3としてはボタンスイッチ、レバー等の公知の入力手段を用いることができる。操作部3は後述する制御部4と接続されており、操作部3からの入力信号は制御部4に伝達される。
【0051】
電源装置2には、操作部3からの入力信号に基づき、電源部6および切替部7の制御を行う制御部4が設けられている。制御部4は、切替部7を介して電源部6からの直流電圧を電極に出力するための出力回路を有する処理部5に接続されている。処理部5の出力回路では、第1電極21と第2電極22に対して正負異なる極性の直流電圧を印加する。通電波形は、途中で極性が反転する二相性であってもよく、極性が一定である一相性であってもよいが、二相性の方がより少ないエネルギーで刺激することができるとされているため好ましい。生体に付与される通電エネルギーは、例えば1J以上30J以下に設定することができる。
【0052】
電源部6は、カテーテル20と接続されており、印加電圧を発生させる。電源部6には、直流電圧を発生するための電源回路が設けられる。電源回路は、例えば直流電圧を昇圧する昇圧回路と、印加電圧を充電するコンデンサから構成される。
【0053】
電源部6には、心内電位を測定する第1モードと、心内電位を測定しながら電圧を印加する第2モードとに切り替える切替部7が接続されている。第1電極21および第2電極22は、切替部7を介して電源部6に接続されている。このため、
図3に示すように切替部7を構成するスイッチが開状態となることで第1モードが選択されているときには、第1電極21および第2電極22は電源部6から絶縁されているため、除細動を行わずに第1電極21および第2電極22を用いて心内電位を測定することができる。また、
図5に示すように切替部7を構成するスイッチが閉状態となることで第2モードが選択されているときには、第1電極21および第2電極22は電源部6に電気的に接続されるため、心臓に電圧を印加することができる。
【0054】
切替部7は、操作部3への入力に連動して作動することが好ましい。例えば、操作部3が電源装置2を起動する電源ボタンと除細動のスイッチである印加ボタンを有しており、電源ボタンを押したときに自動的に第1モードが選択され、印加ボタンを押すと第2モードが選択されることが好ましい。印加後、自動的に第1モードが選択されることが好ましい。第2モードである時間は可能な限り短いことが好ましい。これにより、心電図を高精度に得ることができる。操作部3は、コンデンサを充電する充電ボタンを備えることが好ましい。充電中は第1モードが継続され、印加ボタンが押される直前まで第1モードが継続されることが好ましい。除細動電圧の印加の瞬間は、心臓は大きなエネルギーを受けるため、心電計40に表示される心内電位は大きく乱れる。しかし、このように第2モードの時間を可能な限り短くすることで、除細動電圧印加により心内電位が大きく乱れる瞬間以外は、波形の減衰やなまりのない高精度な心内心電図を継続して観測できるようになる。
【0055】
第1電極21および第2電極22は、スイッチ部を介さずに心電計40に接続されている。換言すれば、第1電極21および第2電極22と心電計40を結ぶ電路の途中にはスイッチ部は設けられない。ここでスイッチ部は、電路の開閉をしたり、電流が流れる方向を切り替えたりする部分である。このため、第1電極21または第2電極22から心電計40までの電路は開閉されない、または切り替えられないため、第1電極21および第2電極22と心電計40は、常に接続されることになる。したがって、本発明の除細動カテーテルシステム1によれば、除細動時であっても各電極での心内電位を測定することができる。
【0056】
第1電極21および第2電極22が、切替部7を介さずに心電計40に接続されていることが好ましい。第1モードと第2モードを切り替える切替部7は、複数の第1電極21どうし、および複数の第2電極22どうしをそれぞれ接続または切り離すために設けられるため、本発明のスイッチ部に含まれるからである。第1電極21と心電計40を結ぶ電路および第2電極22と心電計40を結ぶ電路の途中にスイッチ部は設けられないため、第1モードであっても第2モードであっても、第1電極21および第2電極22は、常に心電計40と接続される。このため、除細動時であっても各電極で心内電位を測定することができる。
【0057】
第1電極21および第2電極22が、あらゆるスイッチ部を介さずに心電計40に接続されていることがより好ましい。これにより、第1電極21および第2電極22を常時心電計40に接続することができる。
【0058】
切替部7が第2モードに選択されていても、心電計40の入力部が耐除細動形装着部に対応していれば、電源部6から心電計40に向かって過度に電流が流れ込むことはないため、第1電極21および第2電極22は、スイッチ部を介さずに心電計40に接続されていてもよい。JIS T0601-1:2017 -医用電気機器-第1部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項- 8.5.5.1 除細動保護の項によれば、医療機器の耐除細動形装着部の入力部は、50Ωの抵抗を介して入力される5kVの放電に耐えられることが要求されている。除細動カテーテルシステム1の印加電圧は、例えば最大600Vであり、5kVに対しては十分小さい電圧が印加される。したがって、後述するように第1電極21と心電計40の間、および第2電極22と心電計40の間に好ましくは200Ω以下の抵抗、より好ましくは50Ω以上200Ω以下の抵抗を接続することもあいまって、十分に心電計40を過電圧から保護できる。
【0059】
電源部6と心電計40の間に、200Ω以下の抵抗が設けられていてもよい。200Ω以下の抵抗であれば、カテーテル20で取得した心内電位の波形をなまらせることなく、心内電位を心電計40に伝達することができる。電源部6と心電計40の間に設けられる抵抗は150Ω以下、または100Ω以下であってもよく、50Ω以上、または70Ω以上であってもよい。
【0060】
切替部7は、一または複数のスイッチを有していてもよい。
図3に示すように切替部7は、互いに並列接続されている複数の第1スイッチ7Aと、互いに並列接続されている複数の第2スイッチ7Bとを有していることが好ましい。カテーテル20が、複数の第1電極21と複数の第2電極22とを有している場合、複数の第1電極21がそれぞれ第1スイッチ7Aを介して電源部6に接続されており、複数の第2電極22がそれぞれ第2スイッチ7Bを介して電源部6に接続されていることが好ましい。すなわち、複数の第1電極21と複数の第2電極22は、それぞれ異なるスイッチを介して電源部6に接続されていることが好ましい。これにより複数の電極を電気的に分離することができるため、各電極で独立して心内電位を取得することができる。
【0061】
図示していないが、第1スイッチ7Aと第2スイッチ7Bが多極単投形であることが好ましい。多極単投形であれば、1回の操作で多数のスイッチを連動して動作させることができるため、各電極における電圧印加のタイミングの精度を高められる。
【0062】
図3に示すように、第1スイッチ7Aと第2スイッチ7Bは、単極単投形であってもよい。単極単投形であれば、各スイッチを個別に作動させることができるため、特定の電極にのみ電圧を印加しやすくなる。
【0063】
第1接続部11には、第1電極21または第2電極22に接続されている第1導線31の他方端が接続されている。また、第1接続部11と切替部7が第4導線34を介して接続されている。これにより、第1電極21および第2電極22が電源部6に接続されるため、電圧の印加が行える。第1電極21および第2電極22と電源部6とは、コネクタなど異なる接続部材を介して接続されてもよい。
【0064】
電源装置2とカテーテル20の接続を容易にするためには、第1接続部11が凹部を有しており、第1導線31の他方端が凸部を有する第1コネクタに固定されており、上記凹部と上記凸部が係合可能であることが好ましい。
【0065】
第2接続部12には、第1電極21または第2電極22に対応する心電計40の入力端子41に接続されている第2導線32の他方端が接続されている。また、第2接続部12が第5導線35によって第4導線34に接続されている。第4導線34および第5導線35にはスイッチ部は設けられない。これにより、第1電極21および第2電極22がスイッチ部を介さずに心電計40に接続されるため、除細動時であっても第1電極21および第2電極22を通じて心内電位を測定することができる。ここで、第4導線34、第5導線35は、配線材であってもよく、プリント基板に設けられた配線パターンの一部であってもよい。第2接続部12が凹部を有しており、第2導線32の他方端が凸部を有する第2コネクタに固定されており、第2接続部12の凹部と第2コネクタの凸部が係合可能であることが好ましい。これにより、電源装置2と心電計40の入力端子41との接続が容易になる。
【0066】
電源装置2は、心電計40から出力された心電図波形を制御部4に送信する第3接続部13を有していてもよい。第3接続部13には、心電計40の出力端子42に接続されている第3導線33と制御部4が接続されている。これにより、心電計40から出力された心電図波形を制御部4に送信することができるため、除細動時にR波と同期するように電圧を印加するタイミングを制御することができる。第3接続部13が凹部を有しており、第3導線33の他方端が凸部を有する第3コネクタに固定されており、第3接続部13の凹部と第3コネクタの凸部が係合可能であることが好ましい。これにより、電源装置2と心電計40の出力端子42との接続が容易になる。
【0067】
電源装置2は、心内電位の測定の専用電極である第3電極23および第4電極24と心電計40をそれぞれ接続する第4接続部14および第5接続部15を有していてもよい。第4接続部14には、第3電極23または第4電極24に接続されている第1導線31の他方端が接続されている。第5接続部15には、第3電極23または第4電極24に対応する心電計40の入力端子41に接続されている第2導線32の他方端が接続されている。また、第4接続部14と第5接続部15は、第6導線36を介して接続されている。ここで、第6導線36は、配線材であってもよく、プリント基板に設けられた配線パターンの一部であってもよい。第1接続部11~第3接続部13と同様の理由から、第4接続部14および第5接続部15がそれぞれ凹部を有しており、第4接続部14の凹部と第1コネクタの凸部が係合可能であり、第5接続部15の凹部と第2コネクタの凸部が係合可能であることが好ましい。
【0068】
第1接続部11~第5接続部15の凹部としては、公知のジャックやリセプタクルが挙げられ、第1コネクタ~第3コネクタの凸部としてはピン端子やプラグが挙げられる。
【0069】
図示していないが、電源装置2は、電圧を印加する電極を選択する電極選択スイッチを有していてもよい。これにより、特定の電極にのみ電気刺激を付与することができる。電極選択スイッチが設けられる位置は特に限定されないが、電源部6に電極選択スイッチが接続されていることが好ましく、処理部5の出力回路内に電極選択スイッチが設けられることがより好ましい。電極選択スイッチは、切替部7を構成するスイッチ(例えば第1スイッチ7Aと第2スイッチ7B)とは別に設けられていてもよく、切替部7を構成するスイッチの少なくとも1つが電極選択スイッチであってもよい。
【0070】
図3に示すように、電源装置2には安全用のスイッチ(安全スイッチ10)が設けられていてもよい。これにより、切替部7が故障したときなどに、意図せず患者に電圧が印加されることを抑制できるフェールセーフ機能を電源装置に持たせることができる。安全スイッチ10は、切替部7と電源部6の間に接続されていることが好ましく、処理部5と切替部7の間に接続されていることがより好ましい。安全スイッチ10が設けられる数は特に限定されないが、複数の第1電極21に対して少なくとも1つ設けられており、複数の第2電極22に対して少なくとも1つ設けられていることが好ましい。なお、
図3では、一の安全スイッチ10が処理部5と第1スイッチ7Aに接続されており、他の安全スイッチ10が処理部5と第2スイッチ7Bに接続されている例を示した。
【0071】
図示していないが、電源装置2には、スイッチの遮断時に発生する高電圧を吸収する保護回路が設けられていてもよい。これにより、各スイッチの破損を防ぐことができる。
【0072】
図示していないが、電源装置2には、電源部6と心電計40の間に、過電圧から心電計40を保護する過電圧保護回路が設けられていてもよい。これにより、心電計40が過電圧の印加によって破損するのを防ぐことができる。
【0073】
図3~
図5に示すように、第1電極21と第2電極22の間に、第1電極21と第2電極22の間のインピーダンスを測定するインピーダンス測定回路8が接続されており、第1電極21が、第3スイッチ9Aを介してインピーダンス測定回路8に接続されており、第2電極22が、第4スイッチ9Bを介してインピーダンス測定回路8に接続されていることが好ましい。これにより、第1電極21と第2電極22の間のインピーダンスを測定することができるため、患者に合った印加波形を設定することができる。
図3~
図5では、各第1電極21に対して1つの第3スイッチ9Aが設けられ、各第2電極22に対して1つの第4スイッチ9Bが設けられている例を示している。
【0074】
電極選択スイッチ、安全スイッチ10、第3スイッチ9Aおよび第4スイッチ9Bは、第1スイッチ7Aおよび第2スイッチ7Bと同様に、単極単投形であってもよく多極単投形であってもよい。
【0075】
(実施の形態2)
図示していないが、実施の形態1に記載の電源部6が複数設けられている態様とすることもできる。例えば、少なくとも第1電源部と第2電源部から構成されている複数の電源部6と、少なくとも第1切替部と第2切替部から構成されている複数の切替部7と、が設けられており、カテーテル20は、少なくとも第1-1電極と第1-2電極とから構成されている複数の第1電極21と、少なくとも第2-1電極と第2-2電極とから構成されている複数の第2電極22を有し、第1電源部に第1切替部が接続され、第2電源部に第2切替部が接続されており、第1-1電極および第2-1電極が、第1切替部を介して第1電源部に接続されており、第1-2電極および第2-2電極が、第2切替部を介して第2電源部に接続されており、第1-1電極、第1-2電極、第2-1電極および第2-2電極が、スイッチ部を介さずに心電計40に接続されていることが好ましい。このように電源部6を複数設けることにより、電源部6に内蔵されるコンデンサとして、容量が比較的小さいコンデンサを用いることができる。また、コンデンサの容量を小さくすることにより通電エネルギ-のチャージ時間を短縮するとともに装置を小型化できる。
【0076】
実施の形態2に係る除細動カテーテルシステム1では、操作部3および制御部4はそれぞれ1つ設けられており、制御部4に複数の電源部6が接続されており、各電源部6に対して処理部5および切替部7が接続される態様とすることができる。
【0077】
図示していないが、第1-1電極と第2-1電極と、第1-2電極と第2-2電極に電圧を印加するタイミングを同期する同期回路が、第1電源部と第2電源部に接続されていることが好ましい。このように同期回路を設けることにより、異なる電源部で電圧を発生させても各電極への電圧の印加タイミングを同期することができるため、絶対不応期内に電圧の印加を完了させやすくなる。
【0078】
各電源部6に2以上の電極が接続されていることが好ましく、4つ以上の電極が接続されていることがより好ましい。具体的には、複数の第1電極21(例えば、第1-1電極、第1-3電極)と複数の第2電極22(例えば、第2-1電極、第2-3電極)が第1切替部を介して第1電源部に接続されており、他の複数の第1電極21(例えば、第1-2電極、第1-4電極)と他の複数の第2電極22(例えば、第2-2電極、第2-4電極)が第2切替部を介して第2電源部に接続されていることが好ましい。その場合、第1切替部は、第1-1電極に接続されている第1-1スイッチと、第1-3電極に接続されている第1-3スイッチと、第2-1電極に接続されている第2-1スイッチと、第2-3電極に接続されている第2-3スイッチを有しており、第2切替部は、第1-2電極に接続されている第1-2スイッチと、第1-4電極に接続されている第1-4スイッチと、第2-2電極に接続されている第2-2スイッチと、第2-4電極に接続されている第2-4スイッチとを有していることが好ましい。このように各電極にスイッチが設けられることにより、各電極で独立して心内電位を取得したり、電圧の印加を行える。なお、各電源部6に接続されている電極の数は、同じであっても異なっていてもよいが、制御を容易にするためには同じであることが好ましい。
【0079】
電源部6の数は、第1電極21および第2電極22の数に応じて設定することができるが、第1電源部および第2電源部を含む3つ以上の電源部6が設けられていることが好ましい。電源部6の数が多いほどコンデンサの容量を小さくすることができるため、通電エネルギ-のチャージ時間を短縮するとともに装置を小型化できる。ただし、電源装置2の複雑化を防ぐために、電源部6の数は10以下であることが好ましく、8以下であることがより好ましい。
【0080】
以下では、実施の形態1に係る除細動カテーテルシステム1を用いて、心内電位の測定および電圧の印加の操作について説明するが、除細動カテーテルシステム1および除細動用電源装置2の構成は本態様に限定されるものではない。
【0081】
(ステップ1:心内電位の測定)
図1および
図3に示すように、電源装置2とカテーテル20と心電計40を接続する。カテーテル20を心腔に挿入し、電極を心臓の所望の位置に配置する。
【0082】
図3に示すように、切替部7において心内電位を測定する第1モードにする。例えば、切替部7を構成するスイッチを全て開状態とすることで第1モードにすることができる。第1電極21と第2電極22は、第1接続部11と第2接続部12を介して心電計40に接続されている。各電極の測定電位が心電計40に伝達されるため、心電計40またはこれとは別途に設けられる表示手段に心内心電図波形が表示される。
【0083】
電源装置2の電源を立ち上げた初期状態において、切替部7が第1モードになっていることが好ましい。これにより、電源の立ち上がりと連動して心内心電図の測定を開始することができ、早期に異常を検出することができる。
【0084】
(ステップ2:印加エネルギー量の設定)
操作部3より、印加するエネルギー量を設定する。例えば、1J~30Jまでの任意のエネルギー量を設定できる。
【0085】
(ステップ3:印加エネルギーの充電およびインピーダンスの測定)
除細動用電源装置2は、心内電位を測定する第1モードと、心内電位を測定しながら電圧を印加する第2モードと、に切り替える切替部7と、コンデンサとを有している。操作部3の充電ボタンを操作することで、電源部6において、電源部6に内蔵されたコンデンサに電圧をチャージする。すなわち、心電計40および電極を有するカテーテル20にそれぞれ接続されて、印加電圧を発生させる本発明の電源装置2の制御方法では、切替部7が第1モードである時に、印加電圧がコンデンサに充電される充電工程を含むことが好ましい。これにより、コンデンサの充電中にも各電極での独立した、かつ、なまりのない心内電位を測定することができる。ステップ2で設定した印加エネルギー量に相当する電圧がチャージされたら、その電圧を維持する。充電ボタンを操作したとき、電圧のチャージと並行して第1電極21と第2電極22の間のインピーダンスを測定することが好ましい。具体的には、
図4に示すように、切替部7は第1モードの状態で、インピーダンス測定回路8に接続されている全てのスイッチ9A、9Bを閉状態にする。これにより、通電前の生体インピーダンスの値を取得することができるため、患者の生体インピーダンスに合わせて通電波形を適切に設定することができる。インピーダンスの測定で印加される交流電圧は、インピーダンスを計算できるだけの周波数と電圧を持ったものであり、除細動時の印加電圧よりも十分に小さい電圧でよい。インピーダンスの値の取得中は、スイッチ9A、9Bが閉じられて、各第1電極21と各第2電極22がそれぞれ接続された状態となるため、各局所の心内電位が平均化された心内電位波形となる。そのため、インピーダンスの測定時間は短いほどよく、数十m秒から数百m秒が望ましい。また、インピーダンスの測定後には第3スイッチ9Aおよび第4スイッチ9Bを開状態にする。
【0086】
本発明のシステム1は、第1電極21と第2電極22がスイッチ部を介さずに心電計40に接続されているため、通電エネルギーのチャージ中およびチャージ電圧を維持している間にも各電極での局所電位を取得することが可能である。
【0087】
(ステップ4:除細動)
操作部3の印加ボタンを操作することで、第3接続部13に入力された心電計40からの心電図波形のR波に同期して、患者に除細動電圧を印加する。詳細には、第1スイッチ7Aおよび第2スイッチ7Bを含む切替部7の全てのスイッチを閉状態にすることで切替部7を第2モードに移行し、制御部4ではステップ3で決定された通電波形および通電エネルギーが選択される。電源部6はコンデンサを放電し、処理部5は、制御部4からの情報に基づいた二相性の印加波形となるよう各電極に電圧を印加する。心室筋が反応して心室細動に移行することを防ぐために、電圧の印加は絶対不応期に行われる。電圧の印加は、心電計40からの心電図波形のR波に同期するように行えばよい。電圧印加が完了した後は、即時に第1スイッチ7Aおよび第2スイッチ7Bを含む切替部7の全てのスイッチを開状態にする。第1電極21および第2電極22は、スイッチ部を介さずに心電計40に接続されているため、除細動時であっても第1電極21および第2電極22での局所電位を継続して測定することができるため、早期に除細動前後の心臓の反応を観測することができる。
【0088】
本願は、2018年2月7日に出願された日本国特許出願第2018-20529号に基づく優先権の利益を主張するものである。2018年2月7日に出願された日本国特許出願第2018-20529号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0089】
1:除細動カテーテルシステム
2:除細動用電源装置(電源装置)
3:操作部
4:制御部
5:処理部
6:電源部
7:切替部
7A:第1スイッチ
7B:第2スイッチ
8:インピーダンス測定回路
9A:第3スイッチ
9B:第4スイッチ
10:安全スイッチ
11:第1接続部
12:第2接続部
13:第3接続部
14:第4接続部
15:第5接続部
20:カテーテル
21:第1電極
22:第2電極
23:第3電極
24:第4電極
25:先端チップ
26:ハンドル
31:第1導線
32:第2導線
33:第3導線
34:第4導線
35:第5導線
36:第6導線
40:心電計
41:心電計の入力端子
42:心電計の出力端子