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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】無線通信システム及び基地局
(51)【国際特許分類】
   H04W 52/38 20090101AFI20230412BHJP
   H04W 4/06 20090101ALI20230412BHJP
   H04W 4/42 20180101ALI20230412BHJP
   H04W 16/08 20090101ALI20230412BHJP
   H04W 28/06 20090101ALI20230412BHJP
   H04W 72/0446 20230101ALI20230412BHJP
【FI】
H04W52/38
H04W4/06
H04W4/42
H04W16/08
H04W28/06 110
H04W72/0446
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020013078
(22)【出願日】2020-01-30
(65)【公開番号】P2021119644
(43)【公開日】2021-08-12
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】大機 慎太朗
(72)【発明者】
【氏名】中野 雄介
【審査官】青木 健
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-519243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一の周波数を使用する複数の基地局を備えた無線通信システムにおいて、
各基地局が同一のデータを送信する第1の期間と、各基地局が異なるデータを送信できる第2の期間とがあり、
各基地局は、送信出力のレベルを変化させないモードと、送信出力のレベルを変化させるモードとを有し、前記第2の期間が到来する毎に、部分的に重なり合う無線エリアを有する2つの基地局の間でモードが異なり且つ前回とは異なるモードになるように、交互にモードを切り替えることを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
請求項に記載の無線通信システムにおいて、
前記複数の基地局は、所定の経路に沿って間隔を置いて配置されていることを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
無線エリアが部分的に重なり合う近隣の基地局と同一の周波数を使用する基地局であって、
前記近隣の基地局と同一のデータを送信する第1の期間と、前記近隣の基地局とは異なるデータを送信できる第2の期間とがあり、
当該基地局は、送信出力のレベルを変化させないモードと、送信出力のレベルを変化させるモードとを有し、前記第2の期間が到来する毎に、近隣の基地局との間でモードが異なり且つ前回とは異なるモードになるように、交互にモードを切り替えることを特徴とする基地局。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一の周波数を使用する複数の基地局を備えた無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両のように所定の経路上を移動する移動体に搭載された端末局(以下、移動局)と、該経路に沿って配置された基地局との間で無線通信を行う無線通信システムが実用されている。このような無線通信システムでは、1つの中央装置と複数の移動局が限られた無線リソースを取り合うために、制御伝送を行う制御チャネルと呼ばれる機能チャネルが使用されている。しかしながら、線状の経路上で且つ無線リソースが限られたケース、例えば、列車無線システムでは複数の基地局が周波数1対(上り方向及び下り方向)を共用して1つのゾーンを形成するケースでは、基地局間の周波数精度差に起因する同一波障害が起きていた。
【0003】
このような問題を解決するために、D-STBC(Differential Space-Time Block Coding;差動時空間ブロック符号)等の同一波干渉除去技術が使用されている(例えば、特許文献1参照)。D-STBCは、共通の送信信号列から、互いに直交する2系列(便宜上、「A系列」及び「B系列」と呼称)の信号を生成し、それらを各々の直前の送信信号との位相差分をとることにより、時間方向に分散して送信する。このようにして送信された信号は、無線電波の特性に応じて、複数の伝搬経路を辿って移動局のアンテナに合成して入力される。移動局では、A系列及びB系列の合成信号から最も尤度の高い信号を抽出することで、原信号(送信信号)を取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-134729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実運用上では、1ゾーンでの扱いだけでなく、どの基地局が電波を受信しているのか等の詳細情報が必要なケースがある。このようなケースは、移動体に搭載された別システム等を用いて解決されることもあるが、基本的には無線通信システム内で閉じた運用ができることが理想とされている。このことから、実際には、複数フレームで構成されたスーパーフレームのうちの1フレームを、基地局固有の情報を伝送するためのフレームとしていることがある。しかしながら、このフレームでは基地局毎に異なるデータを伝送することになるので、基地局間の無線エリアの干渉領域では不受信や誤受信となる可能性がある。
【0006】
上記の問題について、図4及び図5を用いて説明する。
図4に例示する従来の無線通信システムは、中央装置110と、基地局装置120と、移動局装置130とを備えている。基地局装置120は、移動局装置130が移動する所定の経路(例えば、線路)に沿った線状の無線エリアをカバーすべく、ある程度の間隔を置いて複数台が設置される。図4では、基地局装置120-1~120-4の4台が設置されている。
【0007】
中央装置110は、移動局宛ての送信データを複数の基地局装置120に一斉送信する。すなわち、中央装置110から、複数の基地局装置120に対して同一タイミングで同一の送信データが送信される。
【0008】
基地局装置120は、制御部121と、第1送信機122と、第2送信機123と、第1アンテナ124と、第2アンテナ125とを備える。制御部121は、移動局宛ての送信データをA系列及びB系列の各々直交する時空間符号信号に変換し、A系列の信号を第1送信機122に出力し、B系列の信号を第2送信機123に出力する。第1送信機122は、A系列の信号を所定の電力レベルに増幅し、第1アンテナ124より所定の周波数で空間へ送出する。第2送信機123は、B系列の信号をA系列と同じ電力レベルに増幅し、第2アンテナ125よりA系列と同じ周波数で空間へ送出する。すなわち、基地局装置120は、移動局宛ての送信データに、D-STBC等の干渉除去のための信号変換を施して、空間に送出する。
【0009】
図4に示す無線エリアA11~A14は、それぞれ、基地局装置120-1~120-4からの送信データが届く範囲を示している。隣り合う基地局間で無線エリアが重なり合うエリアでは、電波の衝突が生じる可能性がある。
【0010】
移動局装置130は、基地局装置120から送信された信号を受信し、必要な処理を行う端末局である。図4では、移動局装置130が時間の経過に伴って図面左側から右側に移動する様子を、符号130-1,130-2,130-3で示してある。移動局装置130-1は、基地局装置120-1と120-2の双方の電波が干渉しているエリア(つまり、無線エリアA11とA12が重なり合うエリア)に存在している。移動局130-2は、基地局装置120-2の電波を安定して受信できるエリア(つまり、無線エリアA12)に移動している。移動局装置130-3は、基地局装置120-2と120-3の双方の電波が干渉しているエリア(つまり、無線エリアA12とA13が重なり合うエリア)に移動している。
【0011】
図5には、従来システムによる時分割データ伝送の例を示してある。上述のとおり、原則として、中央装置110から各基地局装置120に対して同一タイミングで同一の送信データが与えられる。基地局装置120は、送信データを所定単位(例えば40ms単位)の時間長のフレームに区分し、連続する複数のフレームで構成されるスーパーフレームと呼ばれる一連のデータの固まりを繰り返し送信することで、時分割データ伝送を実現している。これらのデータは、基地局装置120-1~120-4のそれぞれが同一のデータを送信するという前提において、送信ダイバーシチにより基地局間の干渉エリアにおいても移動局装置130で正しく受信することができる。
【0012】
一方、スーパーフレーム内にある「基地局1情報」~「基地局4情報」のフレームは、基地局装置120の各々に固有の情報(例えば、基地局番号)を伝送するために用いられる。このフレームでは基地局毎に異なる情報を伝送するので、移動局装置130の位置によっては、電波干渉により不受信や誤受信となる可能性がある。つまり、干渉エリアにいる移動局装置130-1や130-3では、不受信や誤受信となる可能性がある。
【0013】
本発明は、上記のような従来の事情に鑑みて為されたものであり、複数の基地局が同じ周波数で異なるデータを送信する際に、基地局間の無線エリアの干渉領域において送信データの不受信や誤受信が発生することを抑制することが可能な無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明では、上記目的を達成するために、無線通信システムを以下のように構成した。
すなわち、同一の周波数を使用する複数の基地局を備えた無線通信システムにおいて、各基地局が同一のデータを送信する第1の期間と、各基地局が異なるデータを送信できる第2の期間とがあり、部分的に重なり合う無線エリアを有する2つの基地局の少なくとも一方が、第2の期間における送信出力のレベルを他方の基地局とは異なるように変化させることを特徴とする。
【0015】
このような構成によれば、2つの基地局の無線エリアが重なり合うエリアでは、第2の期間中にそれぞれの基地局から送信されるデータの受信レベルに強弱が生じる。その結果、送信出力のレベルが高い方の送信データについては受信しやすくなり、不受信や誤受信の発生を抑制することができる。
【0016】
ここで、一構成例として、各基地局は、送信出力のレベルを変化させないモードと、送信出力のレベルを変化させるモードとを有し、第2の期間が到来する毎に、2つの基地局の間でモードが異なり且つ前回とは異なるモードになるように、交互にモードを切り替えるようにしてもよい。これにより、2つの基地局の無線エリアが重なり合うエリアでは、一方の基地局から送信されるデータを受信しやすい状態と、他方の基地局から送信されるデータを受信しやすい状態とが交互に切り替わるので、双方のデータを正しく受信できるようになる。
【0017】
なお、複数の基地局を、所定の経路に沿って間隔を置いて配置してもよい。これにより、所定の経路に沿った線状の無線エリアを有する無線通信システムにおいても、上記のような効果を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の基地局が同じ周波数で異なるデータを送信する場合に、基地局間の無線エリアの干渉領域において送信データの不受信や誤受信が発生することを抑制することが可能な無線通信システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る無線通信システムの構成例を示す図である。
図2図1の無線通信システムによる時分割データ伝送の例を示す図である。
図3図1の無線通信システムによる時分割データ伝送の別の例を示す図である。
図4】従来の無線通信システムの構成例を示す図である。
図5】従来システムによる時分割データ伝送の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る無線通信システムについて、図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る無線通信システムの構成例を示してある。図1に例示する無線通信システムは、中央装置10と、基地局装置20と、移動局装置30とを備えている。基地局装置20は、移動局装置30が移動する所定の経路(例えば、線路)に沿った線状の無線エリアをカバーすべく、ある程度の間隔を置いて複数台が設置される。図1では、基地局装置20-1~20-4の4台が設置されている。
【0021】
中央装置10は、移動局宛ての送信データを複数の基地局装置20に一斉送信する。すなわち、中央装置10から、複数の基地局装置20に対して同一タイミングで同一の送信データが送信される。
【0022】
基地局装置20は、制御部21と、第1送信機22と、第2送信機23と、第1アンテナ24と、第2アンテナ25とを備える。制御部21は、移動局宛ての送信データをA系列及びB系列の各々直交する時空間符号信号に変換し、A系列の信号を第1送信機22に出力し、B系列の信号を第2送信機23に出力する。第1送信機22は、A系列の信号を所定の電力レベルに増幅し、第1アンテナ24より所定の周波数で空間へ送出する。第2送信機23は、B系列の信号をA系列と同じ電力レベルに増幅し、第2アンテナ25よりA系列と同じ周波数で空間へ送出する。すなわち、基地局装置20は、移動局宛ての送信データに、D-STBC等の干渉除去のための信号変換を施して、空間に送出する。
【0023】
図1に示す無線エリアA1~A4は、それぞれ、基地局装置20-1~20-4からの送信データが届く範囲を示している。隣り合う基地局間で無線エリアが重なり合うエリアでは、電波の衝突が生じる可能性がある。
【0024】
移動局装置30は、基地局装置20から送信された信号を受信し、必要な処理を行う端末局である。図1では、移動局装置30が時間の経過に伴って図面左側から右側に移動する様子を、符号30-1,30-2,30-3で示してある。移動局装置30-1は、基地局装置20-1と20-2の双方の電波が干渉しているエリア(つまり、無線エリアA1とA2が重なり合うエリア)に存在している。移動局30-2は、基地局装置20-1よりも基地局装置20-2の方を受信しやすいエリア(つまり、無線エリアA1からやや無線エリアA2寄りのエリア)に移動している。移動局30-3は、基地局装置20-2の電波を安定して受信できるエリア(つまり、無線エリアA2)に移動している。
【0025】
図2には、本例の無線通信システムによる時分割データ伝送の例を示してある。上述のとおり、原則として、中央装置10から各基地局装置20に対して同一タイミングで同一の送信データが与えられる。基地局装置20は、送信データを所定単位(例えば40ms単位)の時間長のフレームに区分し、連続する複数のフレームで構成されるスーパーフレームと呼ばれる一連のデータの固まりを繰り返し送信することで、時分割データ伝送を実現している。これらのデータは、基地局装置20-1~20-4のそれぞれが同一のデータを送信するという前提において、送信ダイバーシチにより基地局間の干渉エリアにおいても移動局装置30で正しく受信することができる。
【0026】
一方、スーパーフレーム内にある「基地局1情報」~「基地局4情報」(以下、基地局n情報)のフレームは、基地局装置20の各々に固有の情報(例えば、基地局番号)を伝送するために用いられる。このフレームでは基地局毎に異なる情報を伝送するが、各基地局からの送信出力の電力レベルがその近隣にある別の基地局とは異なるように制御される。例えば、基地局装置20-1~20-4を基地局番号が奇数番の基地局グループと偶数番の基地局グループとに分けた場合に、偶数番の基地局グループ(つまり、基地局装置20-2,20-4)は、奇数番のスーパーフレームで送信出力の電力レベルをアッテネータ等で低下(減衰)させる。同様にして、奇数番の基地局グループ(つまり、基地局装置20-1,20-3)は、偶数番のスーパーフレームで送信出力の電力レベルを低下させる。ここでは、各基地局装置20が、A系列及びB系列の各信号を区別せずに電力レベルの制御を行うことを想定している。
【0027】
図1には、奇数番のスーパーフレームにおける無線エリアの様子を破線B2,B4で示してある。このように、奇数番のスーパーフレームでは、偶数番の基地局グループの無線エリアB2,B4が縮小し、奇数番の基地局グループの無線エリアA1,A3に干渉しないようなっている。なお、偶数番のスーパーフレームにおける無線エリアの様子については、図示を省略してある。
【0028】
このような制御を行った場合、無線エリアA1とA2が重なり合う干渉エリアに存する移動局装置30-1は、奇数番のスーパーフレームの送信期間では、基地局装置20-1の固有情報は受信できるが、基地局装置20-2の固有情報は電波が弱められるので受信できない。一方、偶数番のスーパーフレームの送信期間では、基地局装置20-2の固有情報は受信できるが、基地局装置20-1の固有情報は電波が弱められるので受信できない。つまり、移動局装置30-1は、基地局装置20-1の固有情報と基地局装置20-2の固有情報を交互に受信できるようになる。なお、移動局装置30は、所定数のスーパーフレームで連続して同一の基地局番号を受信できるまで自局の位置情報を更新しないので、直前の位置情報を合理的に保持することができる。
【0029】
その後、無線エリアA1からやや無線エリアA2寄りのエリアに移動した移動局装置30-2は、奇数番のスーパーフレームの送信期間では、基地局装置20-1の固有情報は受信しにくくなるが、基地局装置20-2の固有情報は受信できるようになる。また、偶数番のスーパーフレームの送信期間では、基地局装置20-2の固有情報をより受信しやすくなるが、基地局装置20-1の固有情報は受信できない。このように、移動局装置30-2は、基地局装置20-2の固有情報を所定数連続して受信できるようになるので、自局の位置情報を適切に更新することが可能である。
【0030】
その後、無線エリアA1から無線エリアA2に移動した移動局装置30-3は、スーパーフレームが奇数番か偶数番かに関わらず、基地局装置20-1の固有情報は全く受信できないが、基地局装置20-2の固有情報は良好に受信することができる。このため、移動局装置30-3は、自局の位置情報を基地局装置20-2の無線エリアA2に安定的に維持することが可能となる。
【0031】
以上のように、本例の無線通信システムは、同一の周波数を使用する複数の基地局装置20を備えており、各々の基地局装置20が同一のデータを送信する第1の期間(基地局n情報以外の送信フレーム)と、各々の基地局装置20が異なるデータを送信できる第2の期間(基地局n情報の送信フレーム)とが設けられている。そして、部分的に重なり合う無線エリアを有する2つの基地局装置20のうちの一方(例えば、基地局装置20-2)が、第2の期間における送信出力の電力レベルを他方の基地局(例えば、基地局装置20-1)とは異なるように低下させる構成となっている。
【0032】
このような送信電力制御を行うことで、2つの基地局装置20の無線エリアが重なり合うエリアでは、第2の期間中にそれぞれの基地局から送信されるデータの受信レベルに強弱が生じる。その結果、該当エリアに存する移動局装置30は、送信出力の電力レベルが高い方の送信データは受信しやすくなり、不受信や誤受信の発生が抑制される。
【0033】
また、本例の無線通信システムは、各々の基地局装置20が、送信出力の電力レベルを低下させないモードと、送信出力の電力レベルを低下させるモードとを有している。そして、第2の期間が到来する毎に、2つの基地局装置20の間でモードが異なり且つ前回とは異なるモードになるように、交互にモードを切り替える構成となっている。これにより、2つの基地局装置20の無線エリアが重なり合うエリアに存する移動局装置30は、2つの基地局装置20の一方の送信データを受信しやすい状態と、他方の送信データを受信しやすい状態とが交互に切り替わるので、双方の送信データを正しく受信することができる。
【0034】
なお、無線通信システムが本例のようなD-STBC方式の場合には、A系列及びB系列の各信号についても、送信出力の電力レベルを交互に低下させるように制御してもよい。この場合の時分割データ伝送の例を、図3に示してある。同図では、A系列の信号については、偶数番の基地局グループ(例えば、基地局装置20-1)は奇数番のスーパーフレームで送信出力の電力レベルを低下させ、奇数番の基地局グループ(例えば、基地局装置20-2)は偶数番のスーパーフレームで送信出力の電力レベルを低下させる。一方、B系列の信号については、偶数番の基地局グループは偶数番のスーパーフレームで送信出力の電力レベルを低下させ、奇数番の基地局グループは奇数番のスーパーフレームで送信出力の電力レベルを低下させる。このように、送信ダイバーシチも考慮して送信出力の電力レベルの制御を行うことで、基地局間の無線エリアの干渉領域における送信データの不受信や誤受信の発生を更に抑制することが可能となる。
【0035】
ここで、上記の説明では、隣り合う2つの基地局装置20のうちの一方が、送信出力の電力レベルを低下させることで、他方とは送信出力の電力レベルが異なるように制御しているが、送信出力の電力レベルの制御態様はこれに限定されない。例えば、2つの基地局装置20のうちの一方が送信出力の電力レベルを低下させると共に、他方が送信出力の電力レベルを増加させるように制御してもよい。送信出力の電力レベルを増加させる場合、電波が強すぎてデータが破損する可能性があるが、その次のスーパーフレームで正しく受信することが可能である。なお、全てのスーパーフレームで送信出力の電力レベルを制御することは必須ではなく、送信出力の電力レベルを制御しないスーパーフレームが存在してもよい。
【0036】
以上、本発明について一実施形態に基づいて説明したが、本発明はここに記載された無線通信システムに限定されるものではなく、他の無線通信システムに広く適用できることは言うまでもない。例えば、D-STBC方式に代えてSTBC方式を用いても、同様の効果を得ることが可能である。また、本発明は上記のような送信ダイバーシチ機能が必須ではなく、送信ダイバーシチ機能を有しない無線通信システムにも当然に適用することが可能である。
【0037】
また、本発明に係る無線通信システムは、本例のように列車無線システムに適用すると効果的であるが、所定の経路を移動する移動局(例えば、高速道路を走行する自動車)と通信する他の無線通信システムでも当然に有効である。また、本発明は、移動局の移動が想定される経路に沿った線状の無線エリアを確保する無線通信システムに限定されず、2つの基地局間における同一波干渉対策技術として利用することが可能である。
【0038】
また、本発明は、例えば、本発明に係る処理を実行する方法や方式、そのような方法や方式を実現するためのプログラム、そのプログラムを記憶する記憶媒体などとして提供することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、同一の周波数を使用する複数の基地局を備えた無線通信システムに利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
10,110:中央装置、 20,120:基地局装置、 30,130:移動局装置、 21,121:制御部、 22,122:A系列側の送信機、 23,123:B系列側の送信機、 24,124:A系列側のアンテナ、 25,125:B系列側のアンテナ
図1
図2
図3
図4
図5