(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】軸受及びそれに用いられる連結機構、及び連結機構に用いられる予圧付与方法。
(51)【国際特許分類】
F16C 17/02 20060101AFI20230412BHJP
F16C 17/10 20060101ALI20230412BHJP
F16C 27/02 20060101ALI20230412BHJP
F16C 17/04 20060101ALI20230412BHJP
【FI】
F16C17/02 Z
F16C17/10 Z
F16C27/02 Z
F16C17/04 Z
(21)【出願番号】P 2020124066
(22)【出願日】2020-07-20
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】松本 敏朗
【審査官】日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/166663(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/00-17/26,33/00-33/28
F16C 21/00-27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッドをサポートに対して傾動可能に連結し、予圧が与えられた第1ボール部と第1ソケット部とを備えるティルティングパッド軸受用の連結機構であって、
前記第1ボール部と前記第1ソケット部との接触面が第1摺動球面となり、
第2摺動球面となる接触面で接触する第2ボール部と第2ソケット部とが更に備えられ、
前記第1摺動球面の曲率中心と前記第2摺動球面の曲率中心とが一致している、ティルティングパッド軸受用の連結機構において、
前記曲率中心は前記第1及び第2摺動球面と前記パッドの摺動面との間、若しくは前記第1及び第2摺動球面からみて該摺動面の反対側に存在し、
前記第1及び第2摺動面を貫通するシャフトが備えられ、前記シャフトの一端側は前記第2ボール部へ固定され、前記シャフトの他端側は前記サポートへ螺合により固定され、
前記第1ボール部と前記第2ソケット部は前記パッドに対して固定され、前記第1ソケット部は前記サポートに対して固定され、前記第2ボール部は前記シャフトを介して前記サポートに対して固定され、
前記シャフトの前記他端側と前記サポートとの螺合の状態を調整することで、前記第2ボール部が前記第2ソケット部へ押圧され、該第2ソケット部に加えられた押圧力が前記第1ボール部に伝わり、前記第1ボール部と
前記第1ソケット部との間の与圧が確保される、連結機構。
【請求項2】
パッドをサポートに対して傾動可能に連結し、予圧が与えられた第1ボール部と第1ソケット部とを備えるティルティングパッド軸受用の連結機構であって、
前記第1ボール部と前記第1ソケット部との接触面が第1摺動球面となり、
第2摺動球面となる接触面で接触する第2ボール部と第2ソケット部とが更に備えられ、
前記第1摺動球面の曲率中心と前記第2摺動球面の曲率中心とが一致している、ティルティングパッド軸受用の連結機構において、
前記曲率中心の位置は、これと前記第1及び前記第2摺動球面までの距離より、これと前記パッドの摺動面までの距離が遠く、
前記第1及び第2摺動面を貫通するシャフトが備えられ、前記シャフトの一端側は前記第2ボール部へ固定され、前記シャフトの他端側は前記パッドへ螺合により固定され、
前記第1ボール部と前記第2ソケット部は前記サポートに対して固定され、前記第1ソケット部は前記パッドに対して固定され、前記第2ボール部は前記シャフトを介して前記パッドに対して固定され、
前記シャフトの前記他端側と前記パッドとの螺合の状態を調整することで、前記第2ボール部が前記第2ソケット部へ押圧され、該第2ソケット部に加えられた押圧力が前記第1ボール部に伝わり、前記第1ボール部と
前記第1ソケット部との間の与圧が確保される、連結機構。
【請求項3】
前記第1ボール部と前記第2ボール部とへともに交差する、前記曲率中心からの仮想放射線上において、前記第1摺動球面の曲率半径が前記第2摺動球面の曲率半径より長い、請求項1又は2に記載の連結機構。
【請求項4】
前記第1摺動球面の中心と前記曲率中心とを結ぶ仮想線上に前記第2摺動球面の中心が存在する、請求項1~3のいずれかに記載の連結機構。
【請求項5】
前記第1摺動球面において前記曲率中心側の両端と前記曲率中心とで形成される仮想二等辺三角形における前記曲率中心側の第1内角は60~180度である、請求項1~4のいずれかに記載の連結機構。
【請求項6】
前記第2摺動球面において前記曲率中心側の両端と前記曲率中心とで形成される仮想二等辺三角形における前記曲率中心側の第2内角は60~150度である、
請求項5に記載の連結機構。
【請求項7】
前記第1内角≧前記第2内角である、請求項6に記載の連結機構。
【請求項8】
前記シャフトの他端側のねじ部は前記サポートを貫通し、該貫通したねじ部にナットが螺合される、請求項1に記載の連結機構。
【請求項9】
前記第1ボール部及び前記第1ソケット部の摺動面の少なくとも一方に第1固体潤滑材を含んだ第1摺動層が形成され、
前記第2ボール部及び前記第2ソケット部の摺動面の少なくとも一方に第2固体潤滑材を含んだ第2摺動層が形成される、請求項1~8のいずれかに記載の連結機構。
【請求項10】
前記第1ボール部及び前記第1ソケット部の摺動面の少なくとも一方に第1摺動材を含んだ第1摺動層が形成され、
前記第2ボール部及び前記第2ソケット部の摺動面の少なくとも一方に第2摺動材を含んだ第2摺動層が形成される、請求項1~8のいずれかに記載の連結機構。
【請求項11】
前記第1摺動材及び前記第2摺動材は固体潤滑材と樹脂バインダ樹脂からなる、請求項10に記載の連結機構。
【請求項12】
前記第1ボール部及び前記第1ソケット部の摺動面の少なくとも一方に第1テクスチャ加工面が形成され、
前記第2ボール部及び前記第2ソケット部の摺動面の少なくとも一方に第2テクスチャ加工面が形成される、請求項1~11のいずれかに記載の連結機構。
【請求項13】
パッドをサポートに対して傾動可能に連結し、予圧が与えられた第1ボール部と第1ソケット部とを備えるティルティングパッド軸受用の連結機構であって、
前記第1ボール部と前記第1ソケット部とは第1摺動球面で接触し、
第2ボール部と第2ソケット部とが更に備えられて、これらは第2摺動球面で接触し、
前記第1摺動球面の曲率中心と前記第2摺動球面の曲率中心とは一致し
第2ボール部と第1ソケット部とがリジッドに連結され、第2ソケット部と第1ボール部とがリジッドに連結され、前記第2ボール部と前記第2ソケット部とを相互に近づけることで、前記第1ボール部と前記第1ソケット部とは相互に近づくように予圧される、連結機構において、
前記第1ボール部と前記第2ソケット部は前記パッド又は前記サポートに対して固定され、前記第1ソケット部と前記第2ボール部は前記サポート又は
前記パッドに対して固定される、連結機構。
【請求項14】
前記第1ボール部及び第2ボール部において前記曲率中心側の上縁は開放されている、請求項13に記載の連結機構。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の連結機構及びパッドを備えてなるティルティングパッド軸受。
【請求項16】
前記パッドの摺動面は、該パッドの傾動方向に沿って凹状、凸状若しくは平板状である、請求項15に記載の軸受。
【請求項17】
前記パッドの摺動面にはテクスチャ加工面が形成される、及び/又はPEEK複合材、PTFE複合材、ホワイト合金、アルミニウム合金及び銅合金から選ばれる1種又は2種以上で形成される、請求項15又は16に記載の軸受。
【請求項18】
前記パッドを
前記摺動面と直交する側からみたとき、その投影面の重心と前記曲率中心とが変位している、請求項15~17のいずれかに記載の軸受。
【請求項19】
前記パッドの摺動面は、該パッドの傾動方向に沿って凹状であり、前記パッドを平面からみたとき、該パッドの摺動面の最下端と前記曲率中心とが一致する、請求項16に記載の軸受。
【請求項20】
該サポートは前記パッドとで前記連結機構を挟むように配置される、請求項16~19のいずれかに記載のティルティングパッド軸受。
【請求項21】
パッドをサポートに対して傾動可能に連結し、第1ボール部と第1ソケット部とを備え、
前記第1ボール部と前記第1ソケット部との接触面が第1摺動球面となり、
第2摺動球面となる接触面で接触する第2ボール部と第2ソケット部とが更に備えられ、
前記第1摺動球面の曲率中心と前記第2摺動球面の曲率中心とが一致しており、
前記曲率中心は前記第1及び第2摺動球面と前記パッドの摺動面との間、若しくは前記第1及び第2摺動球面からみて該摺動面の反対側に存在し、
前記第1及び第2摺動面を貫通するシャフトが備えられ、前記シャフトの一端側は前記第2ボール部へ固定され、前記シャフトの他端側は前記サポートへ螺合により固定され、
前記第1ボール部と前記第2ソケット部は前記パッドに対して固定され、前記第1ソケット部は前記サポートに対して固定され、前記第2ボール部は前記シャフトを介して前記サポートに対して固定されるティルティングパッド軸受用の連結機構において、前記第1ボール部と前記第1ソケット部との間に与圧を与える与圧付与方法であって
前記シャフトの前記他端側と前記サポートとの螺合の状態を調整することで、前記第2ボール部が前記第2ソケット部へ押圧し、該第2ソケット部に加えられる押圧力が前記第1ボール部に伝わり、前記第1ボール部と
前記第1ソケット部との間の与圧を与える、連結機構の与圧付与方法。
【請求項22】
パッドをサポートに対して傾動可能に連結し、第1ボール部と第1ソケット部とを備え、
前記第1ボール部と前記第1ソケット部との接触面が第1摺動球面となり、
第2摺動球面となる接触面で接触する第2ボール部と第2ソケット部とが更に備えられ、
前記第1摺動球面の曲率中心と前記第2摺動球面の曲率中心とが一致しており、
前記曲率中心の位置は、これと前記第1及び前記第2摺動球面までの距離より、これと前記パッドの摺動面までの距離が遠く、
前記第1及び第2摺動面を貫通するシャフトが備えられ、前記シャフトの一端側は前記第2ボール部へ固定され、前記シャフトの他端側は前記パッドへ螺合により固定され、
前記第1ボール部と前記第2ソケット部は前記サポートに対して固定され、前記第1ソケット部は前記パッドに対して固定され、前記第2ボール部は前記シャフトを介して前記パッドに対して固定されるティルティングパッド軸受用の連結機構において、前記第1ボール部と前記第1ソケット部との間に与圧を与える与圧付与方法であって、
前記シャフトの前記他端側と前記パッドとの螺合の状態を調整することで、前記第2ボール部が前記第2ソケット部へ押圧し、該第2ソケット部に加えられた押圧力が前記第1ボール部に伝わり、前記第1ボール部と
前記第1ソケット部との間の与圧を与える、連結機構の与圧付与方法。
【請求項23】
前記第1ボール部、前記第2ボール部、前記第1ソケット部及び前記第2ソケット部はいずれも別体であり、かつ前記第1ソケット部と前記第2ボール部との間に前記第1ボール部と前記第2ソケット部とが挟まれ、
前記シャフトの軸心は前記第1及び第2摺動球面の曲率中心と一致する、
請求項1又は請求項2に記載の連結機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軸受及びそれに用いられる連結機構、及び連結機構に用いられる予圧付与方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受はパッドを有し、パッドには摺動面が備えられる。このパッドの摺動面に支えられて被摺動部材が摺動する。
パッドの摺動面の摺動方向以外の方向に、被摺動部材には強い力がかかることがある。例えば、風力発電のタービン軸(被摺動部材)には、台風時に、その軸と交差する方向に強い力が非連続的にかかることがある。
従って、パッド自体を傾動可能にして、かかる摺動方向以外の力を吸収することが検討されてきた。これにより、軸受の機械的な損傷が防止され、耐久性が向上する。かかる傾動可能なパッドはティルティングパッドと呼ばれ、ティルティングパッドに適用される軸受はティルティングパッド軸受(この明細書では、単に「軸受」ということがある)と呼ばれる。
【0003】
特許文献1に開示のティルティングパッド軸受では、パッドとサポートとの間に、サポートに対してパッドの傾動を許容する連結機構が備えられる。この連結機構には相互に摺動するボール部とソケット部とが備えられ、これらを摺動させることでパッドを傾動させる。なお、ボール部とソケット部との間にはこれらが相互に近づく方向へ予圧が与えられる。変動荷重による摺動面の圧力振幅を小さくすることで摩耗を抑制するためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1が提案する連結機構によれば、ボール部とソケット部とを摺動させることで、パッドの傾動を可能とする。これにより、被摺動部材にかかる既述の外力が吸収される。
かかる連結機構においては、ボール部とソケット部との予圧はばね要素により与えられる。この場合、時間の経過とともにばね要素の弾性力に変化が生じるおそれがある。また、ばね要素が存在すると、パッドが傾動しても、傾動角度に起因したモーメントが発生してしまうため、軸受の最適な状態を維持できないおそれがある。換言すれば、パッドの傾動の際、ばね要素の弾性力が抵抗となって、パッドが傾動することの抵抗となりかねない。
そこでこの発明は、ばね要素を用いなくとも、ボール部とソケット部とに予圧を与えられる新規な連結機構を提案することを目的とする。
この発明の連結機構は、ばね要素の適用を妨げるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねてきた。
そこで、かかるばね要素の機能を奏する機械要素として、第2ボール部と第2ソケット部とを使用することに気が付いた。
連結機構に第1ボール部と第1ソケット部のセット(第1可動部)及び第2ボール部と第2ソケット部のセット(第2可動部)を設けて、これら連動させるためには、第1ボール部と第1ソケット部との摺動球面(第1摺動球面)の曲率中心と、第2ボール部と第2ソケット部との摺動球面(第2摺動球面)の曲率中心とを一致させる必要がある。
【0007】
よってこの発明の第1局面は次のように規定される。即ち、
パッドをサポートに対して傾動可能に連結し、予圧が与えられた第1ボール部と第1ソケット部とを備えるティルティングパッド軸受用の連結機構であって、
前記第1ボール部と前記1ソケット部との接触面が第1摺動球面となり、
第2摺動球面となる接触面で接触する第2ボール部と第2ソケット部とが更に備えられ、
前記第1摺動球面の曲率中心と前記第2摺動球面の曲率中心とが一致している、ティルティングパッド軸受用の連結機構。
【0008】
ばね要素を備える連結機構では、ばね要素がボール部(第1ボール部)とソケット部(第1ソケット部)とに予圧を与える他、ばね要素が存在する部位において、パッドが傾動するときの連結機構における遊びが設けられていること、換言すれば連結機構においてばね要素のある領域は第1ボール部と第1ソケット部との摺動を許容する可動領域でもある。
ここに、ばね要素の代替手段としての第2ボール部と第2ソケット部を検討する。例えば、第2ボール部を第1ソケット部に連結し、かつ第2ソケット部を第1ボール部に連結しておいて、第2ボール部と第2ソケット部とを相互に近づけるように付勢することにより、第1ボール部と第1ソケット部とが相互に近づくように付勢されれば、第1ボール部と第1ソケット部とに予圧を与えられる。そして、第2ボール部と第2ソケット部は摺動するので、連結機構における可動領域も確保できる。
そこで、この発明の他の局面は次のように規定される。即ち、
パッドをサポートに対して傾動可能に連結し、予圧が与えられた第1ボール部と第1ソケット部とを備えるティルティングパッド軸受用の連結機構であって、
前記第1ボール部と前記第1ソケット部とは第1摺動球面で接触し、
第2ボール部と第2ソケット部とが更に備えられて、これらは第2摺動球面で接触し、
第2ボール部と第1ソケット部とがリジッドに連結され、第2ソケット部と第1ボール部とがリジッドに連結され、前記第2ボール部と前記第2ソケット部とを相互に近づけることで、前記第1ボール部と前記第1ソケット部とは相互に近づくように予圧される、連結機構。
このように規定される他の局面に規定の連結機構によれば、第2ボール部と第2ソケット部とにより、第1ボール部と第1ソケット部とへ予圧を与えることができる。さらに、第2ボール部と第2ソケット部とは摺動しながら相互の位置を変える(変位する)ことができるので、パッドが傾動するときの、第1ボール部及び第1ソケット部の摺動を許容する、連結機構の可動領域となる。
ここでリジッドは、一対の要素が固定されて相互に変位することなく連結されている態様を指す。
【0009】
ここに、連結機構において可動部が第1ボール部と第1ソケット部のみであると、第1ボール部と第1ソケット部との間に予圧を与えることができない。第1ボール部と第1ソケット部とに予圧を与えるためには、第1ボール部が連結されるパッド(又はサポート)と第1ソケット部が連結されるサポート(又はパッド)とを繋ぐ連結部を設け、当該連結部により両者へこれらが相互に近づく力を付与する必要がある。従って、パッドの傾動を許容するには、この連結部の少なくとも一部に可動領域が必要となる。
【0010】
この発明では、かかる可動領域を第2ボール部と第2ソケット部とが担う。第2ボール部と第2ソケット部との可動を確保するには、連結機構において両者の摺動を拘束しないようにする。例えば、第2ボール部において曲率中心側に開放した空間部を形成することができる。当該空間部は第2ボール部の摺動面(第2摺動球面)が存在する仮想球面より外側に広がっている。これにより、パッドの傾動時に第2ボール部が第2ソケット部から外れても、第2ボール部の摺動面が他の要素に干渉することはない。パッドの傾動時においても第2ボール部の全摺動面が第2ソケット部と接触状態にあれば、当該空間は不要となる。
【0011】
よって、この発明の他の局面は次のように規定される、即ち
パッドをサポートに対して傾動可能に連結し、第1摺動球面で接触する第1ボール部と第1ソケット部とを備えるティルティングパッド軸受用の連結機構であって、前記第1ボール部は前記パッドに対して固定され、前記第1ソケット部は前記サポートに対して固定される連結機構において前記第1ボール部と前記第1ソケット部とに予圧を与える予圧付与方法であって、
前記サポートに対して固定される第2ボール部と前記パッドに対して固定される第2ソケット部とを前記第1摺動球面の曲率中心と同じ曲率中心をもつ第2摺動球面において接触させつつ、前記第2ボール部と前記第2ソケット部とを相互に近づけることで、前記第1ボール部と前記第1ソケット部とに予圧を与える、予圧付与方法。
このように規定されるこの発明の更に他の局面によれば、パッドを傾動させる機能を連結機構に確保しつつ、簡易な構成で第1ボールと第1ソケットとに予圧を与られる。
【0012】
この発明の更に他の局面は次のように規定される。即ち、
パッドをサポートに対して傾動可能に連結し、第1摺動球面で接触する第1ボール部と第1ソケット部とを備えるティルティングパッド軸受用の連結機構であって、前記第1ボール部は前記サポートに対して固定され、前記第1ソケット部は前記パッドに対して固定される連結機構において前記第1ボール部と前記第1ソケット部とに予圧を与える予圧付与方法であって、
前記パッドに対して固定される第2ボール部と前記サポートに対して固定される第2ソケット部とを前記第1摺動球面の曲率中心と同じ曲率中心をもつ第2摺動球面において接触させつつ、前記第2ボール部と前記第2ソケット部とを相互に近づけることで、前記第1ボール部と前記第1ソケット部とに予圧を与える、予圧付与方法。
このように規定されるこの発明の更に他の局面によれば、パッドを傾動させる機能を連結機構に確保しつつ、簡易な構成で第1ボールと第1ソケットとに予圧を与られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1はこの発明の実施形態のティルティングパッド軸受の構造を示す断面図である。
【
図2】
図2はこの発明の他の実施形態のティルティングパッド軸受の構造を示す断面図である。
【
図3】
図3はこの発明の他の実施形態のティルティングパッド軸受の構造を示す断面図である。
【
図4】
図4はこの発明の他の実施形態のティルティングパッド軸受の構造を示す断面図である。
【
図5】
図5はこの発明の他の実施形態のティルティングパッド軸受の構造を示す断面図である。
【
図6】
図6はこの発明の他の実施形態のティルティングパッド軸受の構造を示す断面図である。
【
図7】
図7は第1摺動球面と第2摺動球面の位置関係を示す模式図である。
【
図8】
図8は第1摺動球面と第2摺動球面の他の態様の位置関係を示す模式図である。
【
図9】
図9は第1摺動球面と第2摺動球面の他の態様の位置関係を示す模式図である。
【
図10】
図10は第1摺動球面と第2摺動球面の他の態様の位置関係を示す模式図である。
【
図11】
図11は第1摺動球面と第2摺動球面の他の態様の位置関係を示す模式図である。
【
図12】
図12はこの発明の他の実施形態のティルティングパッド軸受の構造を示す断面図である。
【
図13】
図13は第1摺動球面と第2摺動球面の位置関係を示す模式図である。
【
図14】
図14は第1摺動球面と第2摺動球面の他の態様の位置関係を示す模式図である。
【
図15】
図15は第1摺動球面と第2摺動球面の他の態様の位置関係を示す模式図である。
【
図16】
図16は第1摺動球面と第2摺動球面の他の態様の位置関係を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明を実施の形態に基づき更に詳細に説明する。
図1にこの発明の第1実施形態のティルティングパッド軸受1を示す。
この軸受1は連結機構10、パッド50及びサポート60を備える。なお、この明細書では、便宜上パッド50のある位置を上側、サポート60のある位置を下側として説明を進めていく。
連結機構10は第1ボール部12及び第1ソケット部13からなる第1可動部11を備える。この第1可動部11において第1ボール部12と第1ソケット部13とは第1摺動球面15で接触する。
第1ボール部12は中心Oの球を2つの並行平面でカットした形状であり、その中央には貫通孔14が形成されている。
貫通孔14には突出部53の小径部53aが挿入されて固定される。この突出部53はパッド50の下面から突出している。
【0015】
第1ソケット部13はリング状の部材であって、第1ボール部12に対向する内周面(接触面)は仮想球面上にあり、この仮想球面の曲率半径は第1ボール部12の外周面(接触面)の曲率半径と等しい。
第1ボール部12の外周面(接触面)と第1ソケット部13の内周面(接触面)とが接触する仮想球面を第1摺動球面15という。この第1摺動球面15の曲率中心は
図1において点Oで示される。
【0016】
第1ソケット部13はサポート60の上面側の大径凹部61に嵌合して固定されている。
第1ソケット部13の内周面と、大径凹部61の底面、第1ボール部12の下縁及び突出部53の下縁とで空間部65が形成されている。これにより、第1ソケット部13に対して第1ボール部12が傾動したとき、第1ボール部12や突出部53の下縁が大径凹部61の底面や第1ソケット部13の内壁に干渉することがない。
なお、
図1において基端部71の上面と凹部54との上面をそれぞれ球面として相互に接触させてもよい。この球面の曲率中心は点Oである。
このように、第2ボール部22及びそれに付随する要素(この例では基端部71)が周囲の要素に対して摺動可能であれば、空間部55は無くてもよい。
【0017】
連結機構10は第2ボール部22及び第2ソケット部23からなる第2可動部21を備える。この第2可動部21において第2ボール部22と第2ソケット部23とは第2摺動球面25で接触する。第2ボール部22は中心Oの球を2つの平行平面でカットした形状であり、その中央には貫通孔24が形成されている。
貫通孔24にはシャフト70の基端側の大径部70aが挿入される。シャフト70の基端部71は拡径されて第2ボール部22の上面に当接しこれが図示上側への移動を規制するとともに、図示下方側、即ち第2ボール部22を第2ソケット部23側へ押圧可能とする。
【0018】
第2ソケット部23はリング状の部材であって、第2ボール部22に対向する内周面(接触面)は仮想球面上にあり、この仮想球面の曲率半径は第2ボール部22の外周面(接触面)の曲率半径に等しい。
第2ボール部22の外周面(接触面)と第2ソケット部23の内周面(接触面)とが接触する仮想球面を第2摺動球面25という。この第2摺動球面25の曲率中心は
図1において点Oで示される。
第2ソケット部23は突出部53の上縁側に設けられた凹部53bに挿入されて固定される。
【0019】
シャフト70の基端部71は、パッド50の下面に穿設された凹部54内に挿入される。この凹部54に対向するように、突出部53の凹部53bの上縁側が拡径されている(拡径凹部53c)。かかる凹部54及び拡径凹部53cにより空間部55が形成される。かかる空間部55の存在により、基端部71が凹部54の周壁と干渉しない。
シャフト70の先端部70b側(他端側)にはねじ部が形成されている。この先端部70bはサポート60の大径凹部61の底壁の中央に穿設された貫通孔62に挿通され、下側からナット74が螺合される。ナット74を締め付けることにより、シャフト70の基端部71が第2ボール部22を第2ソケット部23側に押圧する。サポート60の下面にはナット74を収納する収納凹部68が形成されている。
【0020】
第2ソケット部23に加えられた押圧力は第1ボール部12に伝わり、第1ボール部12を第1ソケット部13へ押し付ける。これにより、第1ボール部12と第1ソケット部13との間の予圧が確保される。
予圧の大きさは、ナット74の締付具合で調節できる。
【0021】
図1に示すティルティングパッド軸受1を、例えば風力発電用のタービン軸に適用するときは、タービン軸の周りに均等な間隔をあけて、複数(3つ以上)配置される。紙面厚さ方向に配置されるタービン軸には、台風などにおいてはあらゆる方向から力がかかるおそれがある。
図1の軸受1によれば、タービン軸に対するこのような方向、即ちいかなる方向からの外力に対しても、その力にそってパッド50は傾動する。これは、第1可動部11を構成する第1ボール部12と第1ソケット部13とが球面(第1摺動球面)で摺接しているため、曲率中心Oを中心に自由に変位可能だからである。
【0022】
第1ボール部12に対し突出部53を介して第2ソケット部23がリジッドに、即ち、相互に固定されて相互の位置をずらす(変位する)ことなく、連結され、第1ソケット部13に対してサポート60、シャフト70を介して第2ボール部22がリジッドに連結されている。したがって、第1ボール部12と第2ソケット部23とは同時に変位して、第1ボール部12が第1ソケット部13に対して摺動するとき、第2ソケット部23が第2ボール部22に対して摺動する。
ここに、第2ボール部22の変位は空間部55により何ら規制を受けない。同様に第1ボール部12の変位も空間部65により何ら規制を受けない。
上記において、サポート60の収納凹部68の上面とナット74との間及び/又は第2ボール部22と基端部71との間にばね要素を介在させることで、予圧の調節を行うこともできる。かかるばね要素には、皿ばね、コイルばねや弾性高分子材料製の板を用いることができる。
【0023】
上記において、第1ボール部12、第1ソケット部13、第2ボール部22及び第2ソケット部23は、少なくともその接触面側部位が軸受鋼で形成されている。かかる軸受鋼としてSUJ2、SUJ3等を採用できる。軸受鋼の代わりに、ステンレス鋼を採用することもできる。
これらの接触面の少なくとも一方の表面は摺動層を備えることができる。この摺動層は固体潤滑剤とバインダ樹脂からなる表面樹脂層とすることができる。
ここに、固体潤滑剤としてグラファイト、h-窒化ホウ素(h-BN)、三酸化モリブデン、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、メラミンシアヌレート、フッ化カーボン、フタロシアニン、グラフェンナノプレートレット、フラーレン、超高分子量ポリエチレン、Nε-ラウロイル-L-リジン等の1種以上を選択できる。
バインダ樹脂としてポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、およびエラストマーの一種以上を採用でき、ポリマーアロイであってもよい。
表面樹脂層の膜厚は1μm~1mmとすることが好ましい。
表面樹脂層はコーティングで形成しても、樹脂シートを貼り付けたものでもよい。
【0024】
第1ボール部12、第1ソケット部13、第2ボール部22及び第2ソケット部23の接触面の少なくとも一方はテクスチャ加工されることが好ましい。
テクスチャ加工された接触面の表面粗さはRz6.3以下とすることがきる。
【0025】
パッド50は被摺動部材に応じてその摺動面51は任意に設計される。
図2には摺動面151を凸状にした軸受2示す。また、
図3には摺動面154を平板状にした軸受3を示す。
図2及び
図3において、
図1と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
パッド50の摺動面の材質は、パッド50に要求される使用条件等により任意に設計される。例えば、摺動材としてPEEK複合材、PTFE複合材、ホワイト合金、アルミ合金、銅合金の少なくとも1種を用いることができる。このパッドの摺動面をテクスチャ構造とすることもできる。パッド摺動面の表面粗さはRz6.3以下とすることが好ましい。
連結機構10の回転中心Oに対してパッド50の重心(摺動面方向から見たとき)は、パッド50に対する被摺動部材の摺動方向に、変位していることが好ましい。耐久性を向上させるためである。
【0026】
シャフト70は、パッド50とサポート60とを相互に近づける方向に力を与えつつこれらを連結する連結部として機能するものであれば、任意の構造を採用できる。この連結部は、換言すれば、第1ボール部を第2ソケット部に対してリジッドに連結し、第1ソケット部を第2ボール部に対してリジッドに連結する部材である。
図1の例では、シャフト70の先端部70bのねじ部にナット74を螺合して締め付けることにより、第1ボール部12と第1ソケット部13とに予圧を与えている。そして、締付の度合いを調整することで予圧が調節される。
【0027】
図4の軸受4では、ナットを省略して、シャフト70の先端部70bのねじ部をサポート60に直接螺合している。螺合の度合い(シャフト70の軸方向の位置)を調整することで予圧の調節が可能である。なお、
図4において、
図1と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0028】
図5の軸受5では、シャフト70の先端部70bに段差部75が設けられる。この段差部75はサポート60の大径凹部61の底面に当接する。段差部75から基端部71の下面までの距離を、大径凹部61の底面から基端部71の下面までの距離より短くすることで、第1ボール部12と第1ソケット部13との間に予圧が与えられる。そして、両者の距離を調整することで予圧の調整も可能になる。
図5において、
図1と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
図6の例においても、シャフト70の先端部70bに段差部75が設けられる。この段差部75の作用は
図5の例と同じである。
図6において、
図5と同一の要素には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0029】
図7~
図11は、第1摺動球面15と第2摺動球面25との位置関係を示す模式図である。
第1摺動球面15と第2摺動球面25とはそれぞれの曲率中心を点Oにおいて一致させる。ここで、一致とは物理的に曲率中心の座標が一致することの他、パッド50を傾動可能な範囲内においてのマージンが許されるものとする。
図7は、
図1の例を模式的に表している。
図7において、符号12は第1ボール部を、符号22は第2ボール部を模式的に表している。それぞれの周面が第1摺動球面15、第2摺動球面25である。
【0030】
図7の例では、第1ボール部12上縁の両端D1,D1(曲率中心Oから第1ボール部12をみたときの円形上面に描かれる直径の両端)と曲率中心Oとを結ぶ仮想線上に、第2ボール部22の上縁の両端d1、d1(曲率中心Oから第2ボール部22をみたときの円形上面に描かれる直径の両端)が存在する。
第1ボール部12の第1摺動球面の中心P1、第2ボール部の第2摺動球面の中心P2を結ぶ仮想線上に、曲率中心Oとパッド50の摺動面51の最下点Q1が存在する。
曲率中心Oを頂点としてこれと両端D1,D1(d1、d1)とを結ぶ仮想二等辺三角形の頂点の内角は60~180度とすることが好ましい。更に好ましい角度は90~150度である。
【0031】
図8に示す例では、
図7の例に比べて、第2ボール部22aを小径化した。換言すれば、曲率中心Oを頂点としてこれと第1ボール部12の両端D1,D1を結ぶ仮想二等辺三角形の頂点の角度より、曲率中心Oを頂点としてこれと第2ボール部22aの両端d2、d2を結ぶ仮想二等辺三角形の頂点の角度の方が小さい。O,d2,d2からなる二等辺三角形の頂点角度は60~150度とすることができる。更に好ましい角度は60~120度である。
図9の例では、
図7の例に比べて、第1ボール部12を小径化した。換言すれば、曲率中心を頂点としてこれと第1ボール部12の両端D2,D2を結ぶ仮想二等辺三角形の頂点の角度より、曲率中心Oを頂点としてこれと第2ボール部22の両端d1、d1を結ぶ仮想二等辺三角形の頂点の角度を大きくする。
【0032】
図10に示す例では、
図7の例に比べて、第1ボール部12bの第1摺動球面15の中心P1、第2ボール部22bの第1摺動球面15の中心P2及び曲率中心0とは一直線上に存在しない。
図11の例では、
図7の例に比べて、第1摺動球面15及び第2摺動球面25の曲率中心Oの位置がパッド50の摺動面51の上側に存在する。
【0033】
図7~
図11では、第1ボール部及び第2ボール部へともに交差する、曲率中心Oからの仮想放射線が存在する。かかる放射線の位置にシャフトを通すことで、第2ボール部にかかる力が第1ボール部側へ直接的に伝達されることとなる。
第1摺動球面15の曲率半径が第2摺動球面25の曲率半径より長くされている。
図7~
図10では、曲率中心Oが第1ボール部の外周面及び第2ボール部の外周面とパッド50の摺動面51との間に存在する。
図11では、曲率中心Oと第1ボールの外周面及び第2ボール部の外周面との間にパッド50の摺動面51が存在する。換言すれば、曲率中心Oは第1及び第2摺動球面からみてパッド50の摺動面51の反対側に存在する。
【0034】
図12に、他の実施の形態のティルティングパッド軸受8を示す。
この軸受8は連結機構110、パッド150及サポート160を備える。
連結機構110は第1ボール部112及び第1ソケット部113からなる第1可動部111を備える。この第1可動部111において第1ボール部112と第1ソケット部113とは第1摺動球面115で接触する。
第1ボール部112は中心Oの球を2つの並行平面でカットした形状であり、その中央には貫通孔114が形成されている。
貫通孔114にはサポート160から突出した突出部163が挿入されて固定される。
【0035】
第1ソケット部113はリング状の部材であって、第1ボール部112に対向する内周面(接触面)は仮想球面上にあり、この仮想球面の曲率半径は第1ボール部112の外周面(接触面)の曲率半径と等しい。
第1ボール部112の外周面(接触面)と第1ソケット部113の内周面(接触面)とが接触する仮想球面を第1摺動球面115という。この第1摺動球面115の曲率中心は
図12において点Oで示される。
【0036】
第1ソケット部113はパッド150の下面側の大径凹部153に嵌合して固定されている。
第1ソケット部113の内周と、大径凹部153の上面、第1ボール部112の上縁及び突出部163の上縁とで空間部155が形成されている。これにより、第1ソケット部113に対して第1ボール部112が相対的に傾動したとき、第1ボール部112や突出部163の上縁が大径凹部153の上面や第1ソケット部113の内壁に干渉することがない。
【0037】
連結機構110は第2ボール部122及び第2ソケット部123からなる第2可動部121を備える。この第2可動部121において第2ボール部122と第2ソケット部123とは第2摺動球面125で接触する。第2ボール部122は中心Oの球を2つの平行平面でカットした形状であり、その中央には貫通孔124が形成されている。
貫通孔124にはシャフト170の基端側の大径部170aが挿入される。シャフト170の基端部171は拡径されて第2ボール部122の下面(曲率中心O側の面)に当接し図示下方側への移動を規制するとともに、図示上方側、即ち第2ソケット部123側へ押圧可能とする。
【0038】
第2ソケット部123はリング状の部材であって、第2ボール部122に対向する内周面(接触面)は仮想球面上にあり、この仮想球面の曲率半径は
第2ボール部122の外周面(接触面)の曲率半径に等しい。
第2ボール部122の外周面(接触面)と第2ソケット部123の内周面(接触面)とが接触する仮想球面を第2摺動球面125という。この第2摺動球面125の曲率中心は
図8において点Oで示される。
第2ソケット部123は突出部163の下縁側に設けられた凹部163bに挿入されて固定される。
【0039】
シャフト170の基端部171は、サポート160の下面に穿設された凹部164内に挿入される。かかる凹部164より空間部165が形成される。かかる空間部165の存在により、基端部171が凹部164の周壁と干渉しない。
シャフト170の先端部170b側(他端側)にはねじ部が形成されている。この先端部170bはパッド150の大径凹部153の底壁の中央に穿設されたねじ穴158に螺合される。このねじのねじ込み具合を調節することで、第2ボール部122から第2ソケット部123へ加える押圧力が調整される。
第2ソケット部123に加えられた押圧力は第1ボール部112に伝わり、第1ボール部112を第1ソケット部113へ押し付ける。これにより、第1ボール部112と第1ソケット部113との間の予圧が確保される。
【0040】
図12の軸受を構成する各構成要素の材質等は
図1の軸受と同じである。
シャフト170の先端部170b側に段差部を設け、該段差部と基端部171との距離を調節することで、第1ボール部112と第1ソケット113とに与える予圧を調節できる。
なお、基端部171と
第2ボール部122との間にばね要素を介在させることで、予圧の調節をすることもできる。
【0041】
図13~
図16に、
図7~
図11に倣って、第1摺動球面115と第2摺動球面125との関係を示す。
第1摺動球面115と第2摺動球面125とはそれぞれの曲率中心を点Oにおいて一致させる。
図13は、
図12の例を模式的に表している。
図13において、符号112は第1ボール部を、符号122は第2ボール部を模式的に表している。それぞれの周面が第1摺動球面115、第2摺動球面125である。
【0042】
図13の例では、第1ボール部112下縁の両端D1,D1と曲率中心Oとを結ぶ仮想線上に、第2ボール部122の上縁の両端d1、d1が存在する。
第1ボール部112の中心P1、第2ボール部122の中心P2を結ぶ仮想線上に、曲率中心Oとパッド150の摺動面151の最下点Q1が存在する。
曲率中心Oを頂点としてこれと両端D1,D1(d1、d1)とを結ぶ仮想二等辺三角形の頂点の内角は60~180度とすることが好ましい。更に好ましい角度は90~150度である。
【0043】
図14に示す例では、
図13の例に比べて、第2ボール部122aを小径化した。換言すれば、曲率中心Oを頂点としてこれと第1ボール部112の両端D1,D1を結ぶ仮想二等辺三角形の頂点の角度より、曲率中心Oを頂点としてこれと第2ボール部122aの両端d2、d2を結ぶ仮想二等辺三角形の頂点の角度の方が小さい。O,d2,d2からなる二等辺三角形の頂点角度は60~150度とすることができる。更に好ましい角度は60~120度である。
図15に示す例では、
図13の例に比べて、第1ボール部112を小径化した。換言すれば、曲率中心Oを頂点としてこれと第1ボール部112の両端D2,D2を結ぶ仮想二等辺三角形の頂点の角度より、曲率中心Oを頂点としてこれと第2ボール部122の両端d1、d1を結ぶ仮想二等辺三角形の頂点の角度の方が大きい。
【0044】
図16に示す例では、
図13の例に比べて、第1ボール部112bの中心P1、第2ボール部122bの中心P2及び曲率中心Oとは一直線上に存在しない。
【0045】
図13~16では、第1ボール部及び第2ボール部へともに交差する曲率中心Oからの仮想放射線が存在する。かかる放射線の位置にシャフトを通すことで、第2ボール部にかかる力が第1ボール部側へ直接的に伝達されることとなる。
第1摺動球面115の曲率半径が第2摺動球面125の曲率半径より長くされている。
曲率中心Oは、第1ボール部及び第2ボール部より、パッド150の摺動面151から離れている。
【0046】
この発明は、上記発明の実施形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。本発明の摺動部材を用いた内燃機関等の軸受機構使用装置は、優れた摺動特性を発揮する。
【符号の説明】
【0047】
1~6、8…ティルティングパッド軸受
10、110…連結機構
11、21、111、121…可動部
12、112…第1ボール部
13、113…第1ソケット部
22、122…第2ボール部
23、123…第2ソケット部
15、115…第1摺動球面
25、125…第2摺動球面
50、150…パッド
51、151…摺動面
60、160…サポート