(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-04-11
(45)【発行日】2023-04-19
(54)【発明の名称】複合シートの製造方法及び複合シートの製造装置
(51)【国際特許分類】
B29C 65/08 20060101AFI20230412BHJP
【FI】
B29C65/08
(21)【出願番号】P 2020183771
(22)【出願日】2020-11-02
【審査請求日】2022-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北野 修
(72)【発明者】
【氏名】丸山 浩志
(72)【発明者】
【氏名】黒田 圭介
【審査官】清水 研吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-093467(JP,A)
【文献】特開2019-188802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1シート及び第2シートが接合した複数の接合部を有し、第1シートにおける前記接合部以外の少なくとも一部が、第2シート側と反対側に突出した凸部を形成しており、且つ前記接合部に貫通孔を有する複合シートの製造方法であって、
互いに噛み合う凹凸を周面に有する第1ロール及び第2ロールを、両ロールの噛み合い状態下に互いに逆方向に回転させながら、両ロールの噛み合い部に第1シートを導入して該第1シートを凹凸形状に変形させる賦形工程と、
凹凸形状に変形させた第1シートを第1ロールの周面に保持しつつ搬送し、搬送中の第1シートに第2シートを重ね合わせる重ね合わせ工程と、
重ね合わされた第1シート及び第2シートを、第1ロールの凸部と融着機との間に挟んで両シートが融着してなる複数の前記接合部が形成されてなる接合シートを得る接合部形成工程と、
凹凸形状に賦形された部分が第1ロールの凹凸部に嵌まり合った状態で搬送される前記接合シートを、第1ロールの凸部と超音波融着機の超音波ホーンとの間に挟んで複数の前記接合部の少なくとも一部に前記貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
を含み、
前記貫通孔形成工程に先立ち、前記接合シートを冷却して、該接合シートの温度を低下させる温度調節を行う、複合シートの製造方法。
【請求項2】
前記貫通孔形成工程に先立ち、前記接合シートを、第1ロールに対向配置された第3ロールによって第1ロールの周面に押さえながら搬送する、請求項1に記載の複合シートの製造方法。
【請求項3】
前記貫通孔形成工程において、前記貫通孔を、前記接合シートにおける幅方向の中央域に形成する、請求項1又は2に記載の複合シートの製造方法。
【請求項4】
前記貫通孔形成工程において、前記接合シートにおける幅方向に沿って、前記貫通孔が形成された領域と、前記貫通孔が形成されていない領域とが交互に設けられるように、前記貫通孔を形成する、請求項1又は2に記載の複合シートの製造方法。
【請求項5】
前記貫通孔形成工程において、前記接合シートにおける幅方向に沿って連続して且つ搬送方向に沿って間欠的に、前記貫通孔が形成された領域が設けられるように、前記貫通孔を形成する、請求項1又は2記載の複合シートの製造方法。
【請求項6】
前記貫通孔形成工程において、前記接合シートにおける搬送方向に沿って、前記貫通孔が形成された領域と、前記貫通孔が形成されていない領域とが交互に設けられるように、前記貫通孔を形成する、請求項1又は2に記載の複合シートの製造方法。
【請求項7】
前記超音波ホーンとして、回転するロール状ホーンを用いる、請求項1、2、4又は5に記載の複合シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合シートの製造方法及び複合シートの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、第1シートと第2シートとを重ね合わせて形成した複合シートを凹凸ロールと超音波ホーンとの間に挟んで超音波振動を印加して、貫通孔を有する接合部を有する複合シートの製造方法が開示されている(同文献段落[0022」]~[0033]、
図3等)。また、特許文献2には、第1シートと第2シートとを重ね合わせて形成した複合シートを押し当て部で凹凸ロールに押し当てながら、凹凸ロールと超音波ホーンとの間に挟んで超音波振動を印加して、貫通孔を有する接合部を有する複合シートの製造方法が開示されている(同文献段落[0017]~[0028]、
図3等)。さらに、特許文献3には、ドラムとドラムの周面と対向する位置に複数の超音波ホーンとを備えたシール装置において、複数の超音波ホーンにより複数の接合部を形成することが開示されている(同文献段落[0017]~[0024]、
図1等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-188802号公報
【文献】特開2019-93467号公報
【文献】特開2004-330622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1及び特許文献2に記載の技術では、1つの超音波溶着機でシートの融着と開孔とを同時に行っていたため、シートの接合部と開孔部とがシートの流れ方向及び幅方向において同じ箇所に形成されることとなり、接合領域と貫通孔領域とを分けることができなかった。すなわち、接合部の形成と貫通孔の形成とを1つの超音波融着機を用いて行っているので、接合部と貫通孔とを同じ位置にしか形成できなかった。また、上記特許文献3に記載の技術では、複数の超音波ホーンを有するものの、接合領域と貫通孔領域とを分けることができなかった。
【0005】
したがって、本発明の課題は、接合領域と貫通孔領域とが分けられた複合シートを得ることに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、第1シート及び第2シートが接合した複数の接合部を有し、第1シートにおける前記接合部以外の少なくとも一部が、第2シート側と反対側に突出した凸部を形成しており、且つ前記接合部に貫通孔を有する複合シートの製造方法であって、互いに噛み合う凹凸を周面に有する第1ロール及び第2ロールを、両ロールの噛み合い状態下に互いに逆方向に回転させながら、両ロールの噛み合い部に第1シートを導入して該第1シートを凹凸形状に変形させる賦形工程と、凹凸形状に変形させた第1シートを第1ロールの周面に保持しつつ搬送し、搬送中の第1シートに第2シートを重ね合わせる重ね合わせ工程と、重ね合わされた第1シート及び第2シートを、第1ロールの凸部と融着機との間に挟んで両シートが融着してなる複数の前記接合部が形成されてなる接合シートを得る接合部形成工程と、凹凸形状に賦形された部分が第1ロールの凹凸部に嵌まり合った状態で搬送される前記接合シートを、第1ロールの凸部と超音波融着機の超音波ホーンとの間に挟んで複数の前記接合部の少なくとも一部に前記貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、を含む複合シートの製造方法を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、第1シート及び第2シートが接合した複数の接合部を有し、第1シートにおける前記接合部以外の少なくとも一部が、前記第2シートと反対側に突出した凸部を形成しており、且つ前記接合部に貫通孔を有する複合シートの製造装置であって、互いに噛み合う凹凸を周面に有し且つ回転軸が互いに平行になるように配置された第1ロール及び第2ロールと、第1ロールの周面に対向するように配置された融着機と、前記融着機よりも下流側に位置し且つ第1ロールの周面に対向するように配置された超音波ホーンを有する超音波融着機と、を備え、前記超音波融着機は、前記接合部のうち少なくとも一部に対して超音波振動を印加して前記貫通孔を形成するに足る幅及び/又は長さを有する、複合シートの製造装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、接合領域と貫通孔領域とが分けられた複合シートを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の複合シートの製造方法及び装置により製造される複合シートの一例を示す要部斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す複合シートを第1シート側から見た拡大平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の複合シートの製造方法の第1実施形態及び本発明の複合シートの製造装置の第1実施形態を示す概略図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す第1ロールの要部を拡大して示す斜視図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す超音波融着機の腰部を示す図であり、
図3中の左側から見た状態を示す図である。
【
図6】
図6は、
図3に示す複合シートの製造装置における超音波処理部の拡大図である。
【
図7】
図7(a)は、
図6の丸C部分の拡大断面図であり、
図7(b)は、超音波ホーンの先端部に断面円弧状の振動印加面を有しない場合の
図7(a)相当図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の複合シートの製造装置の他の構成を示す図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の複合シートの製造装置のさらに他の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、接合部と貫通孔との配置パターンを示す図である。
【
図11】
図11は、接合部と貫通孔との配置パターンを示す他の図である。
【
図12】
図12は、接合部と貫通孔との配置パターンを示すさらに他の図である。
【
図13】
図13は、第1ロールの周面の形状を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明をその好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。まず、本発明の複合シートの製造方法又は製造装置により製造される複合シートについて、
図1を参照しつつ説明する。
【0011】
図1に示す複合シート10は、本発明の複合シートの製造装置又は製造方法により製造される複合シートの一例であり、
図1に示すように、第1シート1及び第2シート2が接合した複数の接合部4を有し、接合部4に貫通孔14が形成されている。なお、後述するように、複合シート10は、接合部4に貫通孔14が形成されている接合部4aと接合部4に貫通孔14が形成されていない接合部4とを有しているが、ここでは、両者を区別せずに接合部4として説明又は図示する。
【0012】
複合シート10は、第1シート1及び第2シート2が接合した接合部4をX方向及びX方向と直交するY方向のそれぞれに複数有している。複合シート10における接合部4の配置パターンは、特に制限されるものではないが、
図1に示す複合シート10においては、接合部4は、千鳥状に配置されている。より具体的には、複数の接合部4が直列した列が多列に形成されており、互いに隣接する列における接合部4は、X方向にずれて配置されており、より具体的には、半ピッチずれて配置されている。
【0013】
複合シート10は、接合部4を部分的に有する平坦なシートであってもよい。例えば、接合部4を、
図1に示す複合シート10と同様の千鳥パターンとする一方、接合部4と接合部4との間に、凸部5が実質的に形成されていないものであってもよく、例えば、複合シート10は、接合部4以外の部分の厚みが、第1シート1の厚みと第2シート2の厚みとの合計に対して1.2倍以下であってもよい。
【0014】
複合シート10は、第1シート1における接合部4以外の部分の少なくとも一部が、第2シート2側とは反対側に突出した凸部5を形成している。また、複合シート10は、X方向及びY方向のそれぞれにおける隣り合う接合部4間に凸部5を有している。
【0015】
複合シート10は、吸収性物品の表面シート等として好ましく用いられる。吸収性物品の表面シートとして用いられるときには、第1シート1が、着用者の肌側に向けられる面を形成し、第2シート2が、着用時に吸収体側に向けられる面を形成する。
【0016】
接合部4及び凸部5は、複合シート10の面と平行な一方向であるX方向に、交互に且つ一列をなすように配置されており、そのような列が、複合シート10の面と平行で且つX方向に直交する方向であるY方向に、多列に形成されている。互いに隣接する列における接合部4及び凸部5は、それぞれ、X方向にずれて配置されており、より具体的には、半ピッチずれて配置されている。
【0017】
複合シート10において、Y方向は、製造時における流れ方向(MD、搬送方向)と一致し、X方向は、製造時における流れ方向に直交する方向(CD、幅方向)と一致している。
【0018】
第1シート1及び第2シート2は、シート材料から構成されている。シート材料としては、例えば、不織布、織布又は編み地などの繊維シートやフィルムなどを用いることができ、肌触り等の観点から繊維シートを用いることが好ましく、特に不織布を用いることが好ましい。第1シート1と第2シート2とを構成するシート材料の種類は同じものであっても、異なるものであってもよい。
【0019】
第1シート1及び第2シート2を構成するシート材料として、不織布を用いる場合の不織布としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、レジンボンド不織布、ニードルパンチ不織布などが挙げられる。これらの不織布を2種以上組み合わせた積層体や、これらの不織布とフィルム等とを組み合わせた積層体を用いることもできる。
【0020】
不織布を構成する繊維としては、各種の熱可塑性樹脂からなる繊維を用いることができる。不織布以外のシート材料としても、構成繊維や構成樹脂が、各種の熱可塑性樹脂からなるものが好ましく用いられる。
【0021】
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブデン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸アルキルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。これらの樹脂は、1種を単独で又は2種以上のブレンド物として用いることができる。また、芯鞘型やサイド・バイ・サイド型などの複合繊維の形態で用いることができる。
【0022】
複合シート10は、第1シート1側の面に、X方向及びY方向の両方向において凸部5に挟まれた多数の凹部3を有しており、個々の凹部3の底部に、貫通孔14を有する接合部4(接合部4a)又は貫通孔14を有しない接合部4が形成されている。複合シート10は、全体としてみると、第1シート1側の面に、凹部3と凸部5とからなる起伏の大きな凹凸を有し、第2シート2側の面には、平坦であるか、第1シート1側の面に対して相対的に起伏が小さい略平坦面となっている。
【0023】
複合シート10における個々の接合部4は、
図2に示すように、Y方向に長い略長方形状の平面視形状を有しており、それぞれの内側に、平面視形状が略長方形状の貫通孔14が形成されている。すなわち、個々の接合部4は、貫通孔14を囲む環状に形成されている。貫通孔14は、接合部4の位置との関係において予め決められた特定の位置に形成されていることが好ましい。また、貫通孔14は、平面視形状が接合部4の外周縁の平面視形状と相似形であっても、相似形でなくてもよいが、相似形であることが好ましい。なお、貫通孔14は、全ての接合部4に設けられているわけではない。
【0024】
接合部4においては、第1シート1及び第2シート2の少なくとも一方を構成する熱可塑性樹脂が溶融固化していることによって第1シート1と第2シート2とが結合している。第1シート1及び第2シート2が、不織布等の繊維シートから構成されている場合、接合部4においては、第1シート1及び第2シート2の構成繊維は、溶融するか溶融した樹脂に埋没して、目視においては繊維状の形態を観察できないこと、すなわち、外観上フィルム化した状態となっていることが好ましい。
【0025】
次に、本発明の複合シートの製造装置及び製造方法について説明する。本発明の複合シートの製造方法においては、
図3に示す複合シートの製造装置20を用いて、前述した複合シート10を製造する。
【0026】
図3に示す複合シートの製造装置20について説明すると、複合シート10の製造装置20は、第1シート1及び第2シート2が接合した複数の接合部4を有し、第1シート1における接合部4以外の少なくとも一部が、第2シート2側と反対側に突出した凸部5を形成しており、且つ接合部4に貫通孔14を有する複合シート10を製造する装置である。
【0027】
複合シート10の製造装置20は、超音波ホーン42を備えた超音波融着機41と、超音波ホーン52を備えた超音波融着機51と、周面に凹凸を有する第1ロール31及び第2ロール32とを有する。第1ロール31及び第2ロール32は、回転軸が互いに平行になるように配置されている。ここで、超音波融着機41は、第1シート1及び第2シート2を接合させるための融着機であり、超音波融着機51は、2つのシートが接合されて形成される複合シート10の接合部4に貫通孔14を形成するための融着機である。
【0028】
なお、
図8に示したように、超音波融着機51の代わりに回転式の超音波融着機71を用いてもよい。超音波融着機71は、回転式超音波ホーン(回転式超音波融着部)72を有しており、ロール状ホーンとなっている。回転式超音波ホーン72が回転しながら複合シート10の接合部4の少なくとも一部に貫通孔14を形成する。また、複合シート10の搬送方向に対して間欠の接合部4を有する複合シート10を形成してもよい。
【0029】
また、
図9に示したように、複合シートの製造装置20は、超音波融着機41と超音波融着機51との間、すなわち、超音波融着機41よりも下流側で、超音波融着機51よりも上流側に押さえロール80を配置してもよい。このように、押さえロール80を配置することにより、複合シート10に発生するシワを伸ばしたり、シワの発生を抑制したり、シートのずれを防止したりできる。なお、超音波融着機41と押さえロール80との間に、加熱冷却部81を配置して、複合シート10の温度を制御してもよい。加熱の場合、熱アンビルロール、熱風、レーザなどを用いた装置であってもよく、また、冷却の場合、冷風、冷却アンビルロールなどを用いた装置であってもよい。なお、押さえロール80及び加熱冷却部81の配置順序は、両者が超音波融着機41と超音波融着機51との間に配置されていれば、順序は問わない。
【0030】
このように、両シート(1,2)の接合後に加熱することにより、接合時のシートの軟化状態が維持され、シートの剛性が低下するので、貫通孔形成工程において、せん断力によるシートの開孔効率が向上する。例えば、シート材料がPP(融点160℃)やPE(融点125℃)の場合に効果的である。
【0031】
また、両シート(1,2)の接合後に冷却することで、接合後のシートのフィルム化が促進され、材料の脆性が向上するので、貫通孔形成工程において、せん断力によるシート破壊により開孔効率が向上する。例えば、シート材料が、PET(融点260℃)の場合に効果的である。
【0032】
ここで、
図10~
図11を参照して、超音波ホーン52の周面の凹凸形状と、複合シートに形成される接合部4及び貫通孔14について説明する。
【0033】
例えば、
図10(a)に示したように、第1ロール31の幅方向の長さに対して、超音波融着機51の超音波ホーン52の幅(第1ロール31の回転軸方向に対する長さ)を短くすれば、
図10(b)に示したように、貫通孔14を有する接合部4aは、搬送方向(MD方向)に対しては連続的に並ぶのに対して、幅方向には中央の3つの接合部4aに貫通孔14が設けられ、両側の接合部4には、貫通孔14が設けられていないようにすることが可能となる。すなわち、複合シート10(第1シート1及び第2シート2)の接合幅に比べて、貫通孔14が設けられている接合部4aが加工される幅を小さくすることで、複合シート10の中央部付近に貫通孔14が設けられた複合シート10を形成できる。なお、ここでは、幅方向に設けられた5つの接合部4に対して中央の3つの接合部4aに貫通孔14が設けられた例で説明をしたが、これには限定されず、例えば、貫通孔14を有する接合部4aは、幅方向に対して一部の接合部4aに貫通孔14が設けられていればよい。このように、本実施形態においては、接合領域と貫通孔領域とが分けられた複合シート10を得ることができる。
【0034】
同様に、
図11(a)に示したように、第1ロール31の幅方向の長さに対して、超音波融着機51の超音波ホーン52の幅(第1ロール31の回転軸方向に対する長さ)を複合シート10の幅に近い長さとすれば、
図11(b)に示したように、貫通孔14を有する接合部4aは、搬送方向(MD方向)に垂直な方向であるCD方向の全幅に渡って形成されるようになる。つまり、接合部4aは、MD方向に対しては間欠的に並び、CD方向には連続的に並んで設けられている。このようなパターンの接合部4aを形成する場合、超音波融着機51の超音波ホーン52を間欠動作させる、もしくは超音波ホーン52を動作させつつ、超音波ホーン52を第1シート1及び第2シート2に対して第1ロールの半径方向に接触、離隔を繰り返すことにより、MD方向に対して間欠の貫通孔14を形成できるようになる。このように、本実施形態においては、接合領域と貫通孔領域とが分けられた複合シート10を得ることができる。また、
図12に示したような、接合領域と貫通孔領域との分け方であってもよい。すなわち、
図12(a)に示したようにCD方向に1列おきに貫通孔14を有する接合部4が現れるような配置パターンであっても、
図12(b)に示したように、MD方向に1列おきに貫通孔14を有する接合部4が現れるような配置パターンであってもよい。
【0035】
図4は、第1ロール31の要部を拡大して示す斜視図である。また、
図13は、第1ロール31の周面の部分拡大斜視図である。
図4には、第1ロール31の周面部の一部が示されている。第1ロール31は、所定の歯幅を有する平歯車31a,31b,・・・を複数枚組み合わせてロール状に形成したものである。各歯車の歯が、第1ロール31の周面部における凹凸形状の凸部35を形成しており、凸部35の先端面35cが、後述する超音波融着機41の超音波ホーン42の振動印加面42tとの間で、接合対象である第1シート1及び第2シート2を加圧する加圧面となっている。
【0036】
各歯車の歯幅(歯車の軸方向の長さ)は、複合シート10の凸部5におけるX方向の寸法を決定し、各歯車の歯の厚み(歯車の回転方向の長さ)は、複合シート10の凸部5におけるY方向の寸法を決定する。隣り合う歯車は、歯のピッチが半ピッチずつずれるように組み合わされている。その結果、第1ロール31は、周面が凹凸形状となっている。
【0037】
本実施形態においては、各凸部35の先端面35cは、第1ロール31の回転方向が長辺で、軸方向が短辺の矩形状となっている。先端面35cは、回転方向に沿う長さが軸方向に沿う長さより長い形状であると、第1ロール31の個々の凸部35と、超音波ホーン42の振動印加面42tとの接触時間を長くし、第1シート1及び第2シート2の加圧部位の温度を上げやすくすることができるので好ましい。
【0038】
第1ロール31における各歯車の歯溝部は、第1ロール31の周面における凹凸の凹部を形成している。各歯車の歯溝部の底部には、吸引孔34が形成されている。吸引孔34は、ブロワや真空ポンプなどの吸引源(図示せず)に通じ、第1ロール31と第2ロール32との噛み合い部から、第1シート1と第2シート2との合流部までの間の吸引が行われるように制御されている。したがって、第1ロール31と第2ロール32との噛み合いによって凹凸形状に変形された第1シート1は、吸引孔34による吸引力によって、第1ロール31の凹凸に沿った形状に変形した状態に維持された状態で、第1シート1と第2シート2との合流部及び超音波融着機41による超音波振動の印加部36に搬送される。
【0039】
この場合、
図4に示すように、隣り合う歯車間に所定の空隙Gを設けておくと、第1シート1に無理な伸長力を加えたり、第1ロール31及び第2ロール32の噛み合い部で、第1シート1を切断したりすることを制御することができ、第1シート1を第1ロール31の周面に沿った形状に変形させ得るので好ましい。
【0040】
また、
図13の部分拡大斜視図に示したように、
図4の要部拡大図に示した平歯車が、連続的に並んで、第1ロール31の周面の凹凸を形成している。
図13においては、平歯車の先端面の形状は一定ではなく、中央付近が搬送方向に長い縦長の矩形状をしており、中央部の両側では、平歯車の形状は、正方形に近い形状をしている。そして、第1ロール31は、回転しながらシートを搬送し、凸部35において、超音波融着機41,51によりシートの融着と開孔とが行われる。
【0041】
第2ロール32は、周面に、第1ロール31の周面の凹凸と互いに噛み合う凹凸形状を有している。第2ロール32は、吸引孔34を有していない以外は、第1ロール31と同様の構成を有している。そして、互いに噛み合う凹凸を有する第1ロール31及び第2ロール32を回転させながら、第1ロール31及び第2ロール32の噛み合い部に、第1シート1を導入することにより、第1シート1を凹凸形状に変形させることができる。噛み合い部においては、第1シート1の複数箇所が、第2ロール32の凸部によって第1ロール31の周面の凹部に押し込まれ、押し込まれた部分が、製造される複合シート10の凸部5となる。第2ロール32の周面には、第1ロール31の凹部に挿入される複数の凸部が形成れているが、第2ロール32に、第1ロール31の凹部のすべてに対応する凸部が形成されていることは必須ではない。
【0042】
超音波処理部40,50は、
図3及び
図5に示すように、超音波ホーン42,52を備えた超音波融着機41,51を有しており、凹凸形状に変形させた状態の第1シート1上に第2シート2を重ね合わせた後、重ね合わせられた第1シート1及び第2シート2を第1ロール31の凸部と超音波ホーン42,52との間に挟んで部分的に超音波振動を印加することで、貫通孔14を形成するとともに、貫通孔14を有する接合部4を形成する。
【0043】
超音波融着機41,51は、
図3に示すように、超音波発振器(図示せず)、コンバータ43、ブースタ44及び超音波ホーン42,52を備えている。超音波発振器は、コンバータ43と電気的に接続されており、超音波発振器により発生された周波数15kHz~50kHz程度の波長の高電圧の電気信号がコンバータ43に入力される。
【0044】
コンバータ43は、ピエゾ電圧素子等の電圧素子を内蔵し、超音波発振器から入力された電気信号を電圧素子により機械的振動に変換する。ブースタ44は、コンバータ43から発せられた機械的振動の振幅を調整、好ましくは、増幅して超音波ホーン42,52に伝達する。超音波ホーン42,52は、アルミ合金やチタン合金などの金属の塊でできており、使用する周波数で正しく共振するように設計されている。ブースタ44から超音波ホーン42,52に伝達された超音波振動は、超音波ホーン42,52の内部においても増幅、又は減衰されて、接合対象である第1シート1及び第2シート2に印加される。超音波融着機41としては、市販の超音波ホーン、コンバータ43、ブースタ44、超音波発振器を組み合わせて用いることができる。
【0045】
本実施形態の超音波融着機41,51における超音波ホーン42,52の先端部には、
図6及び
図7に示すように、第1ロール31の回転軸31cに直交する断面の形状(以下「軸直交断面形状」という)が、回転軸31cから離れる方向に向かって凹んだ円弧状である振動印加面42tが形成されている。なお、以下の説明においては、超音波融着機41を例に説明をするが、超音波融着機51も超音波融着機41と同様の構成を有している。
【0046】
本実施形態における振動印加面42tは、アルミ合金やチタン合金等の金属からなる超音波ホーン42の本体部分の先端面42mからなり、第2シート2に直接当接するが、
図9(a)に示すように、アルミ合金やチタン合金等の金属からなる本体部分の先端面からなる振動印加面42tの表面に、蓄熱層等の表面被覆層が設けられ、第2シート2に直接当接する面が、表面被覆層の表面であってもよい。蓄熱層は容射により形成された接続層を介して固定されている。ここで「振動印加面」は、超音波ホーン42の振動印加面42tと第1ロール31の凸部35の先端面35cとの間で、接合対象である第1シート1及び第2シート2を加圧する際にも、軸直交断面形状が、回転軸31cから離れる方向に向かって凹んだ円弧状を維持する硬質材料、例えば、アルミ合金やチタン合金等の金属等の硬質材料からなることが好ましい。なお、蓄熱層等の表面被覆層の表面、すなわち、超音波振動の印加時に第1ロール31の凸部35と対向させる表面が、接合対象である第1シート1及び第2シート2を加圧する際にも、本体部分の先端面からなる振動印加面42tと同様の、回転軸31cから離れる方向に向かって凹んだ円弧状の軸直交断面形状を維持する場合、表面被覆層の表面を振動印加面42tと考えてもよい。
【0047】
超音波融着機41は、可動台上に固定されており、可動台の位置を、第1ロール31の周面に近づく方向に向かって進退させることで、超音波ホーン42の振動印加面42tと、第1ロール31の凸部35の先端面35cとの間のクリアランス及び積層された第1シート1及び第2シート2に対する加圧力を調節可能となっている。
【0048】
そして、第1ロール31の凸部35の先端面35cと超音波融着機41の超音波ホーン42の振動印加面42tとの間に挟んで加圧しながら、接合対象である第1シート1及び第2シート2に超音波振動を印加することにより、第1シート1における、凸部35の先端面35c上に位置する部分のそれぞれが、第2シート2に接合し、接合部4が形成されるとともに、第1シート1及び第2シート2を貫通する貫通孔14が、接合部分に囲まれた状態に形成される。
【0049】
本実施形態の複合シートの製造装置20によれば、超音波ホーン42の先端部に断面円弧状の振動印加面42tが形成されているため、
図7(b)に示すように、超音波ホーン42の先端面42mが平坦で、第1ロール31の凸部35の先端面35cの軸直交断面形状が外方に向かって凸の円弧状である場合に比して、第1シート1及び第2シート2における、凸部35の先端面35c上に位置する部分のシートの移動方向eにおける前端Paと後端Pbとの間の各部、例えば、
図7(b)に示すP1部、P2部、P3部に対して相対的に長時間の加圧及び超音波振動の印加を行うことができる。そのため、第1シート1
や第2シート2の予熱を省略したり、予熱の程度を抑えても、第1シート1及び第2シート2における、超音波ホーン42の振動印加面42tと凸部35の先端面35cとで挟んだ部分を効果的に溶融させたりすることができる。また、超音波ホーン42の先端部に、軸直交断面形状が円弧状の振動印加面42tが形成されているため、第1シート1及び第2シート2の溶融した部分にかかるせん断力が向上し、容易に貫通孔14を形成することができる。
【0050】
このような作用により、複合シートの製造装置20によれば、超音波融着機41を用いて、第1シート1及び第2シート2に貫通孔14を有する接合部4を効率よく形成することができる。また、超音波融着機の超音波ホーン42の位置を、第1ロール31の回転に伴う凸部35の移動に連動して、第1ロール31の周方向に移動させる必要もない。
【0051】
図7(a)には、
図7(b)に示すP2部に対応する部位が溶融し、且つ溶融した樹脂が前後に移動して貫通孔14が形成された状態が示されている。
【0052】
超音波ホーン42の振動印加面42tには、ローレット加工等の摩擦力を高める加工を施すことも、接合部4に一層確実に貫通孔14を形成させる観点から好ましい。また、本実施形態においては、超音波ホーン42の先端面と第1ロール31の凸部35の先端面との間のクリアランス(隙間の距離)は、個々の凸部35の、第1ロール31の回転方向の前端と後端と前後端間の中央部とで同一であるが、第1シート1及び第2シート2を上端面上に保持した状態で、超音波ホーン42の先端面の対向部位に先に移動する前端(第1シート1及び第2シート2の導入側)のクリアランスを、後端(第1シート1及び第2シート2の出口側)のクリアランスより大きくすることも、超音波処理部に第1シート1及び第2シート2をスムーズに導入する観点から好ましい。
【0053】
超音波ホーン42の先端部に形成する振動印加面42tは、
図6に示すように、第1ロール31の凸部35の先端が通る円形の軌道Ctに沿って湾曲していることが、超音波ホーン42の先端部と第1ロール31の凸部35とによる第1シート1及び第2シート2の挟み込み及び接合部4形成後の時間を長くする観点から好ましく、軸直交断面において、超音波ホーン42の振動印加面42tの曲率半径は、円形の軌道Ctの半径dに対して、好ましくは、100%以上であり、また、好ましくは、500%以下、より好ましくは、200%以下であり、また、好ましくは、100%以上500%以下、より好ましくは、100%以上200%以下である。
【0054】
また、本実施形態における第1ロール31の個々の凸部35は、
図7に示すように、第1ロール31の回転軸31cに直交する断面の形状が、回転軸31cから離れる方向に向かって凸の円弧状の先端面35cを有しており、個々の凸部35の先端面35cと振動印加面42tとで軸直交断面における湾曲の向きが一致している。
【0055】
軸直交断面において、超音波ホーン42の振動印加面42tの曲率半径は、第1ロール31の凸部35の先端面35cの曲率半径に対して、好ましくは、100%以上であり、また、好ましくは、500%以下、より好ましくは、200%以下であり、また、好ましくは、100%以上500%以下、より好ましくは、100%以上200%以下である。
【0056】
振動印加面42tは、第1ロール31の回転軸31cと平行な方向の全域に亘って、軸直交断面形状が
図7(a)に示す円弧状の形状を有しているが、回転軸31cと平行な方向における凸部35と対向しない部位等に、異なる断面形状の部分を設けてもよい。例えば、
図4に示すように、第1ロール31を構成する隣り合う歯車間に空隙Gを設けた場合、超音波ホーン42の先端面における空隙Gと対向する部位に、円弧状の振動印加面42tから突出しない平坦な部分等を設けてもよい。
【0057】
複合シートの製造装置20は、第1ロール31内に配置されたヒータ61を有する予熱手段6を備えている。より具体的には、第1ロール31内に配置されたヒータ61等の加熱手段、超音波振動を印加する前のシートの温度を計測可能な測温手段(不図示)及び測温手段の測定値に基づき、ヒータ61の温度を制御する温度制御部(不図示)を備えている。測温手段による測定値に基づき、ヒータ61による第1ロール31の周面の加熱温度を制御することにより、超音波振動を印加される直前の第1シート1の温度を所望の温度に高精度に制御できる。
【0058】
ヒータ61は、第1ロール31の長軸方向に沿って埋め込まれている。また、ヒータ61は、第1ロール31の回転軸の周囲における外周部の近傍に、周方向に間隔を設けて複数配置されている。ヒータ61による第1ロール31の周面部の加熱温度は、図示しない温度制御部によって制御されており、複合シートの製造装置20の運転中、超音波振動の印加部36に導入される第1シート1の温度を所定の範囲の温度に維持することができる。
【0059】
予熱手段6は、加熱対象物に外部から熱エネルギーを加えて加熱する加熱手段を備えることが好ましい。加熱手段としては、例えば、電熱線を用いたカートリッジヒータが挙げられるが、これに限られず、各種公知の加熱手段を特に制限なく用いることができる。超音波融着機は、接合対象物に超音波振動を印加し、これにより接合対象物を発熱及び溶融させて接合させるものであり、ここでいう加熱手段には含まれない。
【0060】
本実施形態の製造方法においては、
図3に示すように、第1ロール31及び第2ロール32を矢印a方向に回転させながら、原反ロール(不図示)から繰り出した第1シート1を両ロール(第1ロール31及び第2ロール32)の噛み合い部に導入して、凹凸形状に変形させる(賦形工程)。そして、凹凸形状に変形させた第1シート1を、第1ロール31上に保持しつつ搬送し、搬送中の第1シート1に、第1シート1とは別の原反ロール(不図示)から繰り出した第2シート2を重ね合わせる(重ね合わせ工程)。
【0061】
そして、重ね合わせた第1シート及び第2シート2を第1ロール31の凸部35と超音波融着機41の超音波ホーン42の振動印加面42tとの間に挟んで超音波振動を印加して、両シート(1,2)が融着してなる複数の接合部が形成されてなる接合シートを得る(接合部形成工程)。そして、第1シート1の凹凸形状に賦形された部分が第1ロール31の凹凸部に嵌まり合った状態で搬送される接合シートを、第1ロール31の凸部35と超音波融着機51の超音波ホーン52との間に挟んで、超音波振動を印加することにより、複数の接合部の少なくとも一部に貫通孔14を形成する(貫通孔形成工程)。このように、本実施形態では、接合部形成工程と貫通孔形成工程とを異なる超音波融着機41,51で行うので、超音波融着機41,51の負荷が減り、超音波融着機41,51の摩耗を低減させることができる。
【0062】
本実施形態の製造方法においては、貫通孔14の形成に先立って、接合シート又は第1シート1若しくは第2シート2に対して、シートの融点未満、融点より50℃低い温度以上に加熱しておくことが好ましい。すなわち、超音波振動の印加に先立ち、以下の(1)及び(2)のいずれか一方又は双方を行うことが好ましい。(1)第1シート1を第1シート1の融点未満、融点より50℃低い温度以上に加熱しておく。(2)第2シート2を第2シート2の融点未満、融点より50℃低い温度以上に加熱しておく。
【0063】
好ましくは、第1シート1を第1シート1の融点未満、当該融点より50℃低い温度以上に加熱しておくとともに、第2シート2を第2シート2の融点未満、当該融点より50℃低い温度以上に加熱しておく。
【0064】
第1シート1を第1シート1の融点未満、当該融点より50℃低い温度以上とする方法としては、例えば、第1ロール31上の第1シート1の温度を、第1ロール31及び第2ロール32の噛み合い部と、超音波融着機による超音波振動の印加部36との間において測定し、その測定値が、上述の特定の範囲内の測定値となるように、第1ロール31の周面の温度を制御する。第1シート1を、特定の範囲の温度に予熱する方法としては、第1シート1が、特定の範囲の温度となるように、第1ロール31の周面の温度を第1ロール31の内部に配したヒータにより制御する方法に代えて、多様な方法を用いることができる。例えば、第1ロール31の周面の近傍にヒータや熱風の吹き出し口、遠赤外線の照射装置を設け、これらにより、第1シート1を沿わせる前又は後の第1ロール31の周面の温度を制御する方法、噛み合い部において第1シート1に接触する第2ロール32を加熱して、周面の温度を制御することにより第1シート1の温度を制御する方法、第1ロール31に沿わせる前の第1シート1に対して、加熱されたローラに接触させたり、高温に維持した空間を通過させたり、熱風を吹き付けたりする方法等が挙げられる。
【0065】
他方、第2シート2を第2シート2の融点未満、当該融点より50℃低い温度以上とする方法としては、第1シート1と重ね合わせる前の第2シート2の温度を第2シート2の搬送路中に配置した測温手段で計測し、その計測値が、上述の特定の範囲内の測定値となるように、第2シート2の搬送路中に配した第2シート2の加熱手段(不図示)の温度を制御することが好ましい。第2シート2の加熱手段は、加熱されたローラ等を接触させる等の接触方式でもよいし、高温に維持した空間を通過させたり、熱風を吹き付けたり貫通させたり赤外線を照射する等の非接触式でもよい。
【0066】
第1シート1及び第2シート2の融点は、以下の方法により測定される。例えば、Perkin-Elmer社製の示差走査熱量測定装置(DSC)PYRIS Diamond DSCを用いて測定する。測定データのピーク値から融点を割り出す。第1シート1又は第2シート2が、不織布等の繊維シートであり、構成繊維が、芯鞘型、サイド・バイ・サイド型等の複数成分からなる複合繊維である場合、そのシートの融点は、DSCにより測定した複数の融点の内、最低温度の融点を複合繊維シートの融点とする。
【0067】
本実施形態の複合シート10の製造方法においては、このように、重ね合わされた第1シート1及び第2シート2を、第1ロール31の凸部と超音波融着機の超音波ホーン42の振動印加面42tとの間に挟んで超音波振動を印加し、貫通孔14を有する接合部4が形成される。本実施形態においては、第1シート1及び第2シート2の少なくとも一方を、上述した特定の範囲の温度に予熱しておき、その上で、一方又は双方が予熱された状態で、第1シート1及び第2シート2に対して、超音波振動を印加するのが好ましい。このとき、超音波振動を印加する際の条件、例えば、印加する超音波振動の波長、強度、両シート(1,2)を加圧する圧力等を調節して、超音波振動により、両シート(1,2)が溶融して接合部4が形成されるとともに、両シート(1,2)を貫通する貫通孔14が溶融部分に囲まれた状態に形成されるようにすることが好ましい。
【0068】
本実施形態の複合シートの製造方法によれば、超音波ホーン42の先端部に断面円弧状の振動印加面42tが形成されているため、
図7(b)に示すように、超音波ホーン42の先端面42mが平坦で、第1ロール31の凸部35の先端面35cの軸直交断面形状が外方に向かって凸の円弧状である場合に比して、第1シート1及び第2シート2における凸部35の先端面35c上に位置する部分のシートの移動方向eにおける前端Paと後端Pbとの間の各部、例えば、
図7(b)に示すP1部、P2部、P3部に対して相対的に長時間の加圧及び超音波振動の印加を行うことができる。そのため、第1シート1や第2シート2の予熱を省略したり、予熱の程度を抑えたりしても、第1シート1及び第2シート2における超音波ホーン42の振動印加面42tと凸部35の先端面35cとで挟んだ部分を効果的に溶融させることができる。また、超音波ホーン42の先端部に、軸直交断面形状が円弧状の振動印加面42tが形成されているため、第1シート1及び第2シート2の溶融した部分にかかるせん断力が向上する。
【0069】
このような作用により、本実施形態の複合シートの製造方法によれば、超音波融着機41,51を用いて、第1シート1及び第2シート2に貫通孔14を有する接合部4を効率よく形成することができる。また、超音波融着機の超音波ホーン42の位置を第1ロール31の回転に伴う凸部35の移動に連動して、第1ロール31の周方向に移動させる必要もない。
【0070】
本実施形態の複合シートの製造方法によれば、第1シート1及び第2シート2の少なくとも一方、好ましくは、両方を、ヒータ等の加熱手段によりシートが溶融しない程度の高温に予め加熱しておき、その上で、第1ロール31の凸部35と超音波融着機の超音波ホーン42の振動印加面42tとの間で加圧しつつ超音波振動を印加し、貫通孔14を有する接合部4を形成させることにより、両シート(1,2)を予熱しない場合に比べて、貫通孔14を有する接合部4をより確実に形成することができるとともに、両シート(1,2)を融点を超える温度に予熱した場合に生じやすい不都合、例えば、溶融樹脂の搬送手段への付着やシートの搬送ロールへの巻き付き等の不都合も生じにくいため、装置のメンテナンス負担も小さい。
【0071】
本実施形態の複合シートの製造方法により得られる複合シート10は、凹凸を有する上に凹部の底部に貫通孔14を有する接合部4を一部に有するため、肌触りや平面方向における液の拡散防止性に優れており、また、通気性や液の引き込み性にも優れている。複合シート10は、かかる特性を生かして、吸収性物品の表面シートとして好ましく用いられるが、複合シート10の用途はそれに限られるものではない。
【0072】
前述した一又は二以上の効果が確実に奏されるようにする観点から、本実施形態の製造装置及び製造方法は、以下の構成を有することが好ましい。(1)第1シート1は、第1シート1の融点より50℃低い温度以上、当該融点未満に予熱することが好ましく、第1シート1の融点より20℃低い温度以上、当該融点より5℃低い温度以下に予熱することが更に好ましい。(2)第2シート2は、第2シート2の融点より50℃低い温度以上、当該融点未満に予熱することが好ましく、第2シート2の融点より20℃低い温度以上、当該融点より5℃低い温度以下の温度に予熱することが更に好ましい。
【0073】
第1シート1及び第2シート2それぞれの予熱温度は、貫通孔14の形成しやすさの観点から、好ましくは、100℃以上、より好ましくは、130℃以上であり、また、搬送手段への付着防止や搬送ロールへの巻き付き防止の観点から、好ましくは、150℃以下、より好ましくは、145℃以下である。
【0074】
また接合部4、貫通孔14の形成しやすさの観点、第1ロール31の凸部35の先端面35cと超音波ホーン42の先端面との間に挟んで第1シート1及び第2シート2に加える加圧力は、好ましくは、10N/mm以上、より好ましくは、15N/mm以上であり、また好ましくは、30N/mm以下、より好ましくは、25N/mm以下であり、好ましくは、10N/mm以上30N/mm以下、より好ましくは、15N/mm以上25N/mm以下である。
【0075】
ここで、加圧力は、いわゆる線圧であり、超音波ホーン42の加圧力(N)を超音波ホーン42と触れる凸部35の歯幅(X方向)の合計(第1ロール31の凹部は含まない)の長さで除した値(単位長さあたりの圧力)で示す。
【0076】
また、接合部4、貫通孔14の形成のしやすさの観点から、印加する超音波振動の周波数は、好ましくは、15kHz以上、より好ましくは、20kHz以上であり、また好ましくは、50kHz以下、より好ましくは、40kHz以下であり、また好ましくは、15kHz以上50kHz以下、より好ましくは、20kHz以上40kHz以下である。
【0077】
〔周波数の測定方法〕
レーザ変位計等でホーン先端の変位を計測する。サンプリングレート200kHz以上、精度1μm以上にすることで周波数を測定する。
【0078】
また、接合部4、貫通孔14の形成のしやすさの観点から、印加する超音波振動の振幅は、好ましくは、20μm以上、より好ましくは、25μm以上であり、また好ましくは、50μm以下、より好ましくは、40μm以下であり、また好ましくは、20μm以上50μm以下、より好ましくは、25μm以上40μm以下である。
【0079】
〔振幅の測定方法〕
レーザ変位計等でホーン先端の変位を計測する。サンプリングレート200kHz以上、精度1μm以上にすることで振幅を測定する。
【0080】
複合シート10は、接合部4の配置パターンや、複合シート10の単位面積当たりの接合部4の面積率等を制御することにより、複合シート10の性能例えば、液の透過性、硬さ等を所望の値に調整することができる。
【0081】
本発明の複合シート10は、第1シート1及び第2シート2が接合した接合部4をX方向及びY方向のそれぞれに複数有しており、X方向及びY方向のそれぞれに複数の接合部4を有するものであった。しかし、例えば、複合シート10は、X方向とY方向とが90度以外の角度、例えば、30度以上150度以下の角度や45度以上135度以下の角度で交差し、X方向及びY方向のそれぞれに複数の接合部4を有するものであってもよい。
【0082】
また、複合シート10の凸部5は、四角錐台形状であったが、半球状等であってもよい。また、互いに隣接する列における凸部5及び接合部4が、それぞれ、X方向にずれる程度は、1/2ピッチに代えて、1/3ピッチ、1/4ピッチ等であってもよく、更に、X方向にずれていなくてもよい。また、接合部4及び貫通孔の平面視形状は、楕円形、円形、角部を丸めた多角形(正方形、長方形、三角形、菱形等)等としてもよい。
【符号の説明】
【0083】
10 複合シート
1 第1シート
2 第2シート
3 凹部
4 接合部
4a 接合部
14 貫通孔
5 凸部
6 予熱手段
61 ヒータ
11 シート片
20 複合シートの製造装置
31 第1ロール
32 第2ロール
34 吸引孔
35 凸部
35c 先端面
36 超音波振動の印加部
40 超音波処理部
41 超音波融着機
42 超音波ホーン
50 超音波処理部
51 超音波融着機
52 超音波ホーン
71 超音波融着機
72 回転式超音波融着部(回転式超音波ホーン)
80 押さえロール
81 加熱冷却部